こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。

天真爛漫 朝丘雪路さん

女優の朝丘雪路さんが、お亡くなりになりました。
最近お見かけしなくなり、認知症…という噂も耳に入っていました。

トーク番組でお話しする朝丘さんは、」天真爛漫な方でした。
津川さんのお母様はお嫁さんである朝丘さんに、ちょっとした意地悪もしたことがあったようです。
ところが朝丘さんはそれに気が付かず、後で人に言われてああ、あれはそういうことだったのかと思ったとか。

お父様に溺愛されていた朝丘さんは、芸能界入りしてからは映画会社の社長さんの家で暮らしていたそうですね。
家に一緒に暮らしていたのは朝丘さんと、小山明子さんだけだったとおっしゃっていました。
買い物の時にお財布を持たなかったので、切符が買えないとか、スケールの大きなお話もされていました。
そういうことが嫌味にならない、かわいらしさを持った女優さんでした。

時代劇でもたくさん、出演作があります。
それこそ「仕置人」では鉄にも主水にも「あなたの子よ!」と迫るちょっと困った女性・お波を演じました。
22話、「楽あれば苦あり親はなし」
お波がそんなことをする理由は、怖ろしい盗賊の頭の旦那・藤造から子供を守るためだった。

この藤造、生まれた子供に「俺がいろいろ教えてやるからな、人のばらし方とか」と言う。
とんでもないあやし方をするような男。
それが時間が経つと、「どうも俺の子じゃねえ」と言い出す。
言い出しては子供もろとも、妻を殺してしまう。

伊藤雄之助さんの恐怖の名演。
夜中にお波が目を覚まして、ふっと横を見ると子供をじっと見る藤造がいる。
ぎゃあああ…、と叫びそうな恐怖です。

お波の最後の涙を浮かべながらの笑顔がとても美しく、哀しかった。
彼女の必死に伸ばした手に鉄が「何だ?!何がしてほしいんだ!」と叫ぶ。
「仇をとって。お願い」。
「あの子は本当はあなたの子なんです」。

ほんとは鉄の子だと言われた時の鉄の表情。
「わかったよ、俺の子だからな!」
この後の鉄たちの仕置、敵討ちが一層鮮やかに映ります。
「てめえにな、こんなことを三度までもやらせるわけにいかねえんだ」。

墓参りをする仕置人たち。
「もう一度、あんたの子だって追っかけられてみたいぜ」と主水が言う。
おきんが「死ねば会えるよ」と慰めの言葉を言う。

すると鉄が言う。
「いや、ダメだな。俺たちが行くのは地獄だからよ」。
お波や子供は天国。
自分たちは地獄。

主水も言う。
「待っているのは藤造みたいな奴ばっかり、か」。
他にも朝丘さんの名演はたくさんありますが、これもまた朝丘さんの魅力が発揮されたお話。
朝丘さんのご冥福をお祈りします。


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スターらしいスター

♪リンゴとハチミツ、とろ~りとけてる♪
カレーのルーにリンゴとハチミツが入っているのを知ったのは、このCMでした。
続いて「秀樹、感激ぃ!」
インパクトすごかったですねー。

西城秀樹さんがお亡くなりになりました。
まだお若いのに!
お子さんがまだ成人してらっしゃらないのでは。
残念です。

リハビリしている姿を見せていましたからね。
それで、応援している人や勇気をもらった人も多いでしょう。
だからショック受けている人も多いと思います。

「ちびまる子ちゃん」でまるちゃんのお姉ちゃんが、秀樹の大ファン。
郷ひろみさん、野口五郎さんとともに新・御三家と呼ばれ、一時代を築いてきた人です。
生涯アイドルで、と答えていて、それを揶揄するのは簡単ですけど、できる人はそうそういない。

歌唱力もありました。
ヒット曲は印象的なものが多い。
歌唱力もあり、美形だし、スタイルは良いし、ワイルド。
男の子のファンも多かったと思います。

ヒット曲で言えば、「YMCA」はもう、別格。
「ローラ」、彼女は外国人?
恋愛の歌に「ブーメラン」!
「ブーツを脱いで朝食」?なんて突っ込みも楽しかった。

夏場に「明日、プール行くから『ギャランドゥ』にならないようにしなくっちゃ」なんて言う人もいました。
秀樹、ワイルドだったから…。
そんな風に、秀樹のヒット曲って生活になじんでいたんですよ。

「ブルースカイブルー」も、いい曲ですね。
「ちびまる子ちゃん」で「走れ正直者」を歌ってくれた時は、感激しました。
秀樹、健在!だと思いましたよ。

知り合いの実家の近くに一時、西城さんのお住まいがあったんです。
ご近所さんによると、気さくな良い方だったそうです。
ゴミ出しなんかも来ていて、気さくにお話してたとか。

還暦も迎えてね、これからまた、違ったステージで…。
ずっとついているファンの方もいて。
アイドルもずっとアイドルでいる時代に来て、まさに西城さんはまたその開拓者で。

子供の頃から当たり前のように見ていた方が亡くなるのは、本当に悲しい。
寂しいものです。
西城秀樹さん、スターらしいスターでした。
ご冥福をお祈りします。


私は犬だって大好き

猫と暮らし、猫がいなければ耐えられない私ですが、犬も大好きです。
小さい頃は家に犬も猫もいました。
先週、GW最終日の夜に、警察犬が出て来るサスペンスドラマを放送していました。

この警察犬がシェパードじゃなくて、モフモフした大型のワンちゃん。
今は警察犬もいろんな犬種がいるんですね。
小さいワンちゃんもいる。

犬が関わるサスペンスって、良い話が多くて今でも覚えているドラマがいくつかあります。
「太陽にほえろ」では勝野洋さんが演じるテキサス刑事と、強盗犯が操るシェパードの交流話がありました。
あの時、ドーベルマン犬を強盗に使う映画が流行ったんですが、それにヒントを得た話だと思います。

シェパードを使って現金強奪に成功するものの、1頭だけ事故で帰れなくなる。
その犬を介抱するのが、テキサス刑事。
犬の名前が、ナポレオンでした。
ナポレオンと絆ができたと思われたテキサス刑事ですが、土壇場で犯人はナポレオンにテキサスを襲うように命令。

恐怖で支配されていたナポレオンは、思わずテキサスを襲ってしまいます。
囚われたテキサスに、すまなそうに寄り添うナポレオン。
良いんだよと慰めるテキサス。

最後のクライマックスは、もう、おわかりですね!
ナポレオンを恐怖で支配していた犯人は、ナポレオンに逆襲される。
テキサス刑事はナポレオンにサポートされ、見事、解放されて犯人を逮捕する。

このナポレオンは後に警察犬として活躍し、テキサス刑事と再会。
さらにテキサス殉職後、このナポレオンはテキサスの敵討ちもしてくれます。
それが犬の耳で記憶している電話番号が、事件解決につながるんです。

ボスが電話のダイヤルを回すと、ナポレオンが鳴く。
その番号が決まっているところから、ボスが気づいて電話番号を割り出すというもの。
荒唐無稽な話に思えますが、犬好きの子供や大人は感動して見ていました。
「凍える牙」など、犬とサスペンスドラマは相性が良いです。

覚えている方はいないかもしれませんが、「仕事人」のお加代ちゃんこと、鮎川いずみさんが出た火曜サスペンス劇場。
これもシェパードが出るサスペンスでした。
鮎川さんは敵側。
愛人の女性と夫が共謀して、資産家の妻を殺害しようと計画します。

それをことごとく阻止するのが、妻の愛犬。
しかし愛犬が雷の音に怯えたところにヒントを得た夫は、音を利用し、最後には犬を毒殺しようとします。
これに至って妻の我慢も限界。
妻の目に殺意が宿ります。

その妻と目が合った愛犬の目が、光ります。
地下のワイン蔵で、気持ち良く酔っぱらった夫。
珍しく愛犬が夫に尻尾を振ります。

それを見た夫は「そうだよなあ。お前はただの犬だ。それが俺たちに敵対するなんて考えすぎだったな」と笑う。
階段を上った夫に、犬が上から飛びかかる。
足を踏み外して、転落していく夫。
見つめる犬。

夫の死因は、事故死ということになった。
海辺で犬を連れた妻は、愛人と向かい合う。
「あなたに負けたんじゃないわ」と愛人が言う。

「その、犬に…、負けたのよ」。
愛人の言葉を無視した妻は、傍らの犬に声をかける。
「さあ、帰りましょう」。

マドンナたちのララバイが流れる…。
タイトルも忘れてしまいましたが、これも良いドラマでした。
犬とサスペンスドラマは、相性が良いです。


あれから時間が経ちましたが 「太陽への道」

ゆがんだ太陽」の続編、「太陽への道」。
オサムもめぐみも大人になっていて、オサムは少年刑務所を出所。
保護司をしている森と言う作家の元で、暮らし始める。
気がかりは、約束の場所へ行けなかっためぐみのこと。

保護司の小説家の森は行かない方が良いと止めるが、オサムは故郷の街へ行く。
オサムの姿を見た組の男たちは、「おい」「オサムが帰って来た」と騒ぎだす。
めぐみの母親に会ったオサムだが、めぐみはいなかった。

「年を取った…!」
めぐみの母親の様子に、オサムは少なからずショックを受ける。
母親が言うには、めぐみは千葉のおじの家にも行っていなかった。
めぐみは、どこかに行ってしまった。

「あなたのせいよ!」
「帰って!」
罵倒されたオサムは、黙って頭を下げた。

帰り道、オサムは元・日向組のチンピラに声をかけられる。
日向組は今は、岩瀬が組長になり、岩瀬組となっていた。
オサムは次郎を思い出して、どうしているか聞く。
するとチンピラは言う。

「あいつは死んだよ」。
自分で自分を撃っちまってな」。
次郎が死んだ…!
仲が良かった次郎の死にオサムは、ショックを受けた。

それには構わず、チンピラは言う。
拍が付いたな、オサム。
2年も臭い飯食ってるとよ。
岩瀬と張り合うなら、人集めるぜ。

だがオサムは席を立った。
バカげた勢力争いは、お前たちだけでやるがいい。
もう、この街には戻らない…。
オサムの胸に、次郎、めぐみの面影が去来する。

出版社に勤めたオサムに、初めての給料が出る。
オサムはそれを保護司の小説家に、すべて預ける。
パッと使っちゃえばいいのに、と家政婦が言うが、オサムは「あんたにまかせるよ」とだけ言って部屋を出た。

家政婦はオサムのことを最初は怖いと言って、あの子何したのと興味を持っていた。
だが、このオサムの態度で、家政婦の気持ちは急激にオサムに傾いた。
彼女は夜、寝間着姿でオサムの部屋に行く。

小説を書いていたオサムは、彼女に帰るように言う。
私は構わないのよとオサムの手を握る家政婦に、オサムは言う。
部屋へ帰れ。
家政婦に見向きもしないオサムに、彼女のプライドは傷ついた。

翌朝も無表情のオサムに対し、彼女は腹の虫がおさまらない。
出社したオサムを、社員たちが避ける。
彼らの陰口を聞いたオサムは、自分が少年刑務所に入っていたことがばらされているのに気づく。
「森先生のとこの家政婦が言ってたぜ」。

孤立したオサムは、それでも真面目に淡々と働く。
めぐみの言葉を思い出す。
高校で、孤立していたオサムにめぐみは言った。

「あなたが殻をかぶっているからよ」。
「待っているだけじゃ友達はできないわ」。
確かにそうだった。

オサムの態度が変わると、生徒たちの態度も変わった。
父親が逮捕されるまで、わずかな間だった。
それでも、生徒たちはオサムを受け入れ始めていた。

だが、オサムは思う。
「あの時、めぐみに言われたことは…」。
「大人の世界じゃ、通用しない」。

やがて、オサムを2代目にし、現在の岩瀬組長に対抗しようと、あのチンピラがやってくる。
出版社にも、保護司の森の家にも来た。
森は言う。
「出て行くんじゃないよ」。

オサムはハッとした。
「どこにいても見つかってしまう。それなら、ここに居た方が良い」。
オサムは森の家を出ようと思っていたのだ。

やがて、オサムの小説は完成した。
森はその出来栄えに驚く。
想像以上だ。
その小説は新人賞に入選した。

雑誌に載った小説は、家出して、ある喫茶店で住み込みで働いていためぐみの目に留まる。
めぐみは、オサムを訪ねて行った。
「お久しぶり」。

出版社に来ためぐみに、オサムは驚く。
休憩時間まで、近くの喫茶店で待つと言うめぐみ。
めぐみが、めぐみが来ている!

オサムは待ちきれない思いで、仕事を終え、喫茶店に急ぐ。
ニッコリと笑って迎えためぐみだが、バッグから出したのはタバコだった。
眉を顰めるオサムの前で、めぐみはタバコを吸った・

「あの時…」。
「どうして来てくれなかったの」。
めぐみは、うつむき、涙をこぼした。

ずっと待っていた。
約束の時間が過ぎても、夜になっても。
夜の誰もいなくなった駅で、めぐみは泣いていた。

「知らなかった?!」
オサムは驚愕した。
めぐみと逃げようとしたオサムは、そのことを告げようと日向組にむかった男を刺した。
そして、捕まったのだ。

めぐみは、そのことを知らなかった。
オサムに裏切られたと思って、荒れていたのだった。
そして、めぐみに好意を持つバンドマンと、心ならずも付き合うことを選んでいた。

喫茶店を出た2人は、別れる。
別れ際オサムは言った。
「この2年間で、あんたのことを忘れたことはない」。

今さら、何を言うのか。
そう思っためぐみに。
意を決したオサムは、口を開きかけた。
あの日、俺が行けなかった理由は…。

その時、めぐみと付き合っているバンドマンがめぐみを見つけて声をかけた。
オサムは言いそびれた。
「じゃあ、日向君」。

オサムは森の家に戻った。
保護司の作家の森が描く女性に、共通の何かを感じたオサムは森に言う。
先生が描く女性ヒロインには、気性の激しい女性もおしとやかな女性もすべて共通のものがあるように感じます。

すると、森は言う。
愛する女性を投影しているんじゃないかな。
昔、実らなかった恋の。

森は独身だった。
出版社の社員たちが、独身の森が日向を引き取った理由をおもしろおかしく語ったことがあった。
オサムはそれに対し、自分のことなら何とでも言えばいいと言った。
だが森に対してそれ以上、侮辱するようなことを言うなら自分は黙っていない。
その眼光に、騒いでいた社員たちは黙ったものだった。

実らずに終わった恋の…。
オサムは小説を書きながら思う。
これが、俺の道なのかもしれない。

その頃、めぐみは、母親に会いに帰った。
母親は思わず、グラスを落とした。
あんた、一体、今までどこに…!

めぐみの母親は、この前、元の従業員もここを訪ねてきたことを話した。
今から思うと、あれは自分が悪かった。
日向に刺されても、しかたなかった、と言っていたと。

「日向くんが、刺したの…?」
驚くめぐみに、母親はすべて話した。
『この2年間、あんたのことを忘れたことはなかった』。
日向の言葉が蘇る。

自分のために、自分たちのために、オサムは人を刺した。
そして逮捕され、刑に服していた。
裏切ったのではなかった。

会いに来られなかったのだ。
めぐみは、声を出して泣いた。
号泣した。

雨の夜だった。
あのチンピラに呼び出されたオサムは、ナイフを突きつけられた。
チンピラは、日向の帰還と彼を担ぎ出そうとする勢力を恐れた岩瀬に、オサムを殺すように強要されたのだ。
その時、めぐみのいる喫茶店で、めぐみと付き合っているバンドマンの男は雑誌を見ていた。

雑誌には、しおりが挟まれていた。
そのページには日向の小説が載っていた。
「日向くん」とめぐみが呼んでいた男のことを、彼は思い出した。
彼は日向に会おうと、店を出た。

オサムはあの雨の夜、自分が人を刺した夜のことを思い出した。
ナイフが自分の方を向いている。
オサムは足を滑らせた。
ナイフは、オサムの目に当たった。

仰天したのは、チンピラもだった。
硬直しているところに、バンドマンが駆けつける。
雨の中、血が流れていく。
オサムは病院に運ばれた。

バンドマンに、めぐみのいる喫茶店のマスターが告げていた。
めぐみは出て行った。
もう、戻らないだろう。
「あんたに『すまない』と言っていたよ」。

オサムの目は光を失った。
1人、絶望するオサム。
その時だった。
「もう離れない」。

めぐみ?
オサムの手にめぐみの手が触れた。
「あなたの目になるわ」。
オサムは思った。

「俺の望んでいた太陽は」。
「今、この手の中に」。
オサムは、めぐみを抱きしめる。


おー、続編だ!と喜んで読みました。
でも、どうしても「ゆがんだ太陽」のイメージが強く、大人になった2人の絵に最初はなじめなかったのを覚えています。
確かあれから2年だったような記憶があります。
マンガの中でも、2年という言葉が何度か出て来ています。

出所してめぐみの家に行き、めぐみの母親を見て「年を取った…」と驚くオサム。
めぐみがいなくなったことを知る。
その後、オサムは次郎のことを日向組、今は岩瀬組の組員から聞いて、さらにショックを受ける。
「あいつは死んだよ。自分で自分を撃っちまってな」。

この辺りは、「わたり鳥は北へ」になっていますね。
あの話は、衝撃的でした。
読者がショックだったんですから、オサムも当然、ショックを受ける。
めぐみと次郎の面影を胸に、オサムはもうこの町には戻らない…と決心する。

ずっと読んで来た読者には、感慨深いシーンです。
めぐみは、というと、あれから家出していて、ある町の喫茶店で、住み込みで働いていた。
この喫茶店のマスターが、何か訳有を承知でめぐみを引き受けてた感じです。

めぐみがバンドマンと付き合っていても、何かお見通しって感じでした。
堂々とアタックするバンドマン、「別に好きな人なんていないわ」と答えて、事実上、彼を受け入れるめぐみ。
マスターは、それを複雑な顔で見ているんです。

そして、ある日、めぐみは雑誌で新人賞を取った小説に、オサムの名前を見つける。
オサムに会いに行くめぐみ。
後に、バンドマンもこれでオサムの家に行っています。
この辺りの個人情報がわかってしまうのは、時代ですねえ。

驚き、近所の喫茶店で待っていると言われ、「めぐみに会える!」と歓喜しながら仕事を終え、駆けつけるオサム。
しかしめぐみは、オサムの前でタバコに火をつける。
めぐみらしからぬ行動に、オサムが顔をしかめる。

今ではもう、女性が喫煙するのは普通のことですが、当時はそうじゃなかったんですね。
まして、めぐみはまだ18歳。
オサムといた時のめぐみは、喫煙なんて考えられないような少女だった。
この時のめぐみのタバコは、それなりに荒れていたであろうめぐみの月日と内面を思わせてました。

能天気なバンドマンですが、何となくめぐみの気持ちが自分に向いていないのはわかる。
最後にめぐみがいなくなってマスターに「あんたにすまない、って言ってたよ」とだけ言われて、ちょっと呆然。
めぐみと付き合えることになって喜んでて、物語の中ではお邪魔な存在。
だけど、悪い人じゃなくて、この人もかわいそうなんです。

めぐみが母親に会いに行った時、「ゆがんだ太陽」でオサムに刺された従業員が、「あれは自分が悪かった」って言ってたという話が出てきます。
この続編はちゃんと、あのやりきれなさを回収してくれてるんですね。
だからこそ、オサムに最後、あんな悲劇が降りかかるとは。
当時は、ここまでしなくてもと思ってしまいました。

でもあれで二度とオサムは、父親のいた世界に戻らないで済むということなんでしょう。
めぐみに助けられて、オサムは作家の道を進むことでしょう。
あの切ないラストをよくここまで持ってきて、美しく成就させてくれました。
作者もあのラスト、気になってたのかな。

いや、よく最後にアメリカンニューシネマのようなラスト、どっちか、あるいは両方が死んじゃうとかしないでくれました。
その前の次郎の話は、ほんとにアメリカンニューシネマな最後だった。
もしかしたら、この辺りから時代も、作者も変わったのでしょうか。
とにもかくにも、良かった良かった。

オサムとめぐみの幸せが見えるような最後。
作家として大成しそうで、後に直木賞とか芥川賞取って、大作家になっていそう。
すると、当時の同級生や出版社の社員たちは手のひら返したように誉めそうです。



明るい

仕事が終わって外に出ると、明るい。
18時でもまだ外が明るい。
11月や12月は、もう16時になると暗くなってきた。

何時まで電気をつけなくても大丈夫か、計ってみると16時24分には真っ暗だった。
16時ぐらいで暗くなってくると、早く帰らなくてはと気が急く。
今は18時24分ぐらいまでは、大丈夫。

2時間も違う。
夏はこういうのが、良いな。
こういうところが、夏は好き。
しかし、ほんと、最近はいきなり夏の気温になりますね。


狂っていく歯車 「さびたナイフ」

河あきらさんの「さびたナイフ」。
本が手元にないので、いろいろと間違っている部分はあると思いますが、ご容赦を。
河あきらさんは、この作品の前に「故郷の歌は聞こえない」という作品を描いてました。
その中に、主人公の恋人の義理の兄が出てきます。

彼は義理の妹の主人公の恋人が好きで、親の留守中に無理やり関係を結んでしまいます。
ショックを受けた義妹は家出をし、自殺をしようとします。
電車に飛び込む寸前、ある老人に助けられ、そのままその家で暮らすことになりました。
義兄は義妹への思いを抱いたまま、同じような遊び人風の女性と付き合います。

その女性は自分の恋人が、義妹を好きであることを知りながら付き合っています。
しかし義兄は彼女が撃たれそうになった時、とっさに身を乗り出してかばって撃たれます。
その後、彼女に会った主人公は、彼女の手首にくっきり傷が残っているのに気づきました。
彼がとっさに自分をかばって撃たれたことに衝撃を受けた彼女は、彼が死んだ後、後を追おうとしようとしたのでした。

この辺りの彼女の目。
表情が非常に憂いを含んでいて、印象に残りました。
美乃はこの彼女をもっと美しく、もっとインパクト強く描かれたような感じでした。

当時のマーガレットを見た友達は「哲也も愁一も、美乃が素敵で印象に残らない」と言いました。
その後、美乃のような女性は描かれていません。
河さんの描く美女の集大成が、美乃という感じです。

美乃の生い立ちは、彼女自身から語られています。
おそらく、彼女の母親は故郷に帰った父親と音信不通になったまま、美乃を産んで亡くなったのでしょう。
それで、美乃は愁一の家に引き取られた。

しかしその家では、美乃の父親のことを良く言うわけない。
母のことも悪く言ったのでしょう。
美乃は孤立感を深め、反抗的な少女に成長しました。

でも、愁一の父母は文句を言いながらも、美乃の面倒をちゃんと見ているのです。
美乃の母の遺産があったのかもしれない、そこはわかりません。
だけど美乃は引き取られて、虐待されているわけじゃなかった。
なので、そこまでグレる必要もない気がするのも事実。

美しい容姿、ちゃんと面倒を見てくれる親戚。
今から思えば、全然恵まれている身の上に見える。
でも美乃は、傷ついている。
孤独だ。

美乃は、哲也に髪の色を指摘され時に複雑な表情を見せます。
勇の視線に対する、美乃の言葉はウンザリという風にも感じられます。
小さい時から、美少女であるがゆえに注目される。

くわえて、父も母もいない。
父の顔は知らない。
美乃はずっと、好奇の目にさらされてきていたのかもしれません。
その結果、自分を守るために、ああいう反抗的な少女にならざるを得なかった。

哲也は札付きのワルで、怖いもの知らずに見える。
だが街で美乃が見た時の哲也が語った身の上で、哲也も複雑な家庭に育っていることが伺える。
30前にしか見えない、派手目で綺麗な母親。

10歳も年をごまかして、水商売をしていると哲也は言う。
哲也の母のことを語る言葉は非常に、第三者的。
親子というより、本当に年の離れた水商売の女性と彼女に囲われるツバメのように見える。

美乃が哲也が女性をひっかけてると間違えたのも、無理はないと思える2人だった。
母親の仕事のためか、それとも母親の恋愛のためにか。
哲也は子供らしく甘えるより、母を理解しようと努めたに違いない。
結果、母を冷静に見て、思春期を迎える頃からはまるで恋人のように接するようになったに違いない。

母の恋人に邪魔にされたことも、あるに違いない。
だから哲也は、表面上は強くなった。
地元のチンピラが、哲の顔を知っているほどに。

でも哲也も、傷ついているんです。
美乃と同じく、孤独。
哲也が美乃に惹かれたのは、その栗色の髪とエキゾチックな顔の他に、自分と同じ孤独の香りを感じたから。

そして、美乃が好きだけど、その気持ちを素直に出せない秀才の愁一。
退屈な日常と、注目を浴びたい幼い跳ね返った気持ちの家出少年、勇。
今思うと愁一の犯罪計画は完全どころか、稚拙もいいところ。

捕まらないわけがない。
この辺りの現金強奪がうまく行くという幻想は、三億円事件が影響しているのでしょうか。
あと、今思うといくら現金強奪犯だとしても、日本の警察があの状態で、未成年に威嚇射撃はしないでしょうね。

愁一の死因は、破傷風。
私の母親が子供の頃には、裸足で遊んでいて釘を踏んで、黙っていた兄が祖母にぶん殴られて怒られたなんて話があったそうです。
破傷風を恐れたんですね。

この頃、CMがものすごく怖かった映画「震える舌」がありました。
テレビのCMも、ポスターも怖かった。
エクソシストかと、悪魔憑依のオカルトホラーかと思えるような怖さでした。

ラジオのDJが休憩中、廊下で「震える舌」のCM聞いたけど、こわいねえ~!と言ってたぐらいです。
あれは水たまりで遊んでいて、傷を作り、破傷風に感染した幼い娘とその父母の闘いを描いた映画なんです。
原作もあります。
その症状が本当に怖くて、悲惨。

だからこそ、回復した時に本当に安堵し、生命力の強さに感動できるんですが。
私はあれで、土いじりが大嫌いになりました。
予防注射している世代ですけど。
学校で定期的に校庭の土壌検査とかやってましたが、あれは破傷風菌などがないか調べてたんですね。

「動物のお医者さん」というマンガでは、主人公たちが何の菌か当てる試験が出てきます。
シャーレをうっかり割ったのを見た講師は顔色を変え、消毒をして翌日まで誰も立ち入らないように言い渡します。
主人公たちはそれで、破傷風菌だ!と判断し、「あぶねー!」と騒ぎになっていました。

実は講師のひっかけで、破傷風菌ではなかったんですが。
そんな危ない菌、お前たちに扱わせるか!と。
(この答えはヤクルトミルミルの乳酸菌)。

市川崑監督・萩原健一主演の時代劇映画「股旅」でも、主人公と旅をする3人のうちの1人が破傷風で死にます。
カッコいい渡世人になれず、未熟で、弱くて、惨めな若者3人。
そのとどめが、破傷風での死。
これもかなりきつく、ホラーとは違うけど怖い映画でした。

河さんはこの辺りの映画に影響を受けて、愁一の死因を破傷風にしたのかもしれません。
「バッドエイジ」シリーズの主人公たちには、当時のスターの面影を感じるからです。
アメリカンニューシネマの影響を受けていた時代なのか。
彼らは、映画やドラマの中で良く破滅していました。

ラストは、読んだ子供には衝撃的な記憶として残ったほどに、全員が破滅する。
「俺たち、何であんなことしたんだろうな」と言う勇の言葉。
彼らは普通に感情をこじらせ、普通に思い通りになったりならなかったりの青春を過ごし、大人になるはずだった。
だがその歯車は、狂ってしまった。

全員、子供過ぎて、自分たちのやっていることの重大さがわかっていなかった。
ちょっとした冒険で、若い日の無茶で終わるなら、良かった。
この後の美乃は、どうなったんでしょうか。

おそらく、愁一が道を踏み外した挙句、死んだのは美乃のせいだと言われたでしょう。
愁一の父母が美乃を恨み、憎んだことは容易に想像できます。
少年院に送られたであろう美乃が出所しても、当然、引き取りは拒否したでしょう。

こうなると、美乃は孤児になってしまう。
だから、美乃の父親が探し出された。
日本に残した娘が、そんなことになっているのを知った父親は仰天した。

それで、美乃に連絡を取って来た。
一緒に暮らそうと言った。
日本に居づらい美乃は父親を頼って、ギリシャに行くことにした。
それで結婚を前に思い出の残る場所にやってきた勇と、再会。

河さんは、若い時の一時の無茶で、一生消えない後遺症や傷を抱えたり、死んでしまう主人公たちを良く描きました。
無茶をするのは良いけど、ほどほどにしないと。
一生抱えてしまうような傷を残しては、いけない。
子供や若い読者にそんな警告するために、最悪の破滅を描いたのでしょうか。

勇はともかく、美乃は幸せになれたでしょうか。
確かに、美乃のしたことは愚かだし、犯罪。
反社会的行為。

河さんはちょっとしたことから、若者の歯車が狂って行くドラマを描かせたら、右に出る者はいなかったと思います。
この「さびたナイフ」と「わたり鳥は北へ」は、その代表みたいな作品です。
ゴーゴー喫茶とか、時代もすごく出ているので、本当に復刊してほしい。

言葉もおそらく、あまり通じない国に行った美乃。
ずっと離れていた父親は、美乃に愛情を持っていたでしょうか。
あまり明るい想像は、できません。
それでも美乃は、幸せを見つけたのだと思いたいです。


白く輝くナイフのように 「さびたナイフ」

「錆びたナイフ」といえば、石原裕次郎さんの有名な歌。
しかし私には「さびたナイフ」という、河あきらさんのマンガの記憶です。
70年代後半の作品だったと思います。


風の強い海沿いの崖の上。
1人の女性が、立っている。
そこにもう1人、青年がやってくる。

女性の容貌は、ショートカットでエキゾチックな美人だった。
2人は顔を見合わせる。
「勇…?」と、女性が尋ねる。
「美乃さん?」


7年前。
大音響。
ワイワイと騒ぐ、若い男女。
黙々と煙草の煙が、視界を煙らせている。

ゴーゴー喫茶。
その喧騒の中、美乃は1人うつむいて座っている。
ふと顔を上げると、1人の男と目が合った。

男はじっと、美乃を見ていたようだった。
目が合った瞬間、男はニッと笑った。
美乃はハッとして、横にいる女の友達に聞く。

「あいつ、知ってる?」
「誰?」
「カウンターの…、革ジャンの男」。
「誰?いないよ」。

「え?」
美乃が見ると、その席にはもう誰も座っていなかった。
女友達は、笑いながら言った。

「美乃の顔っ、てエキゾチックだからね。男の気を引くんだよ」。
「ふふっ、我々にしちゃ、うらやましい限り!」
しかしその言葉を聞いた美乃は、再びうつむいた。

帰り道、別の女友達と美乃は、駅で制服に着替える。
今週は期末試験だ。
その友達は、美乃がうらやましいという。
一つ屋根の下に暮らす、秀才。

キッスのひとつもすりゃ、個人授業してくれるでしょ!
それを聞いた美乃は、「はっ?!あの堅物が?悪いじょーだんだ」と笑う。
「ばぁーい」と手を振る友達を見送りながら、「ほんと、悪い冗談…」と美乃はつぶやく。

電車に乗った美乃の隣に、いきなり、あのゴーゴー喫茶で目が合った男が座った。
「さっきの男…」。
どっかりと美乃の隣に陣取った男に、美乃は「何だよあんた!」と言った。
「大きな声出すよ!」

「もう出してるじゃないかよ」。
そして「綺麗だったから」と、美乃を追ってきた理由を言った。
「ふん、月並みな誘い文句」。
「髪が、さ」。

三つ編みに編みこまれた、美乃の髪。
「ライトで光って見えた」。
「あん時ゃ、気が付かなかったけど、すげえ栗色してんだな。本物か?」
その男の言葉に、美乃は複雑な表情を見せた。

【追記:
美乃が暮らす家では、愁一が机に向かっている。
母親が夜食を持って入って来た。
その気配に気づいた愁一は、さっとノートを隠した。

ノートの横には一冊の本があった。
「犯罪百科」。
愁一は母親に「美乃は?」と聞いてみた。

母親は「さあ…。あの人のことはもう、気にしないことにしたの」と言った。
「どこでどういう友達がいるのか」。
母親が出て行った後、愁一は心の中でつぶやいてみる。
どこで、どういう友達がいるか、か。】

やがて美乃は、家に着いた。
表札を見た男は「俺、同じ苗字の上級生知ってるぜ」と言った。
「え、学校どこ?」
男は哲也と名乗って、学校と高校2年であることを話した。

「そんなことまで聞いてない」と、美乃は冷たかった。
家に入ろうとした美乃の前に、哲也が立ちはだかった。
「キスして良い?」
「…やってごらん。噛みついてやるから」。

その様子を、2階からその家の息子・愁一が見ていた。
「美乃…」。
2階からはまるで、2人が恋人のように見える。
だが哲也は「やめた!」と言って、離れた。

「ほんとに、噛みつきそうな顔してる」。
手を振る哲也に美乃は「フン」と、鼻を鳴らす。
シャッ!とカーテンが閉まるのを美乃は見た。
「あいつ、見てた?」

美乃は翌日も学校の帰り、街に出た。
街でまた、哲也を見かけた。
哲也は綺麗な、明らかに年上の女性と一緒に居た。

美乃の視線に気づいた哲也は、その女性に「じゃあな」と別れを告げた。
「あん、哲ちゃんたら」、と女性は言った。
「よお」。

「見てただけよ、また女、ひっかけてると思って」。
「あの女、高校生のガキがいるんだぜ」。
「噓ばっかり。どう見たって、30歳前だわ」。
「ほんとだって、俺のおふくろだもん」。

美乃は、哲也を見た。
「若く見えるだろ。10(とお)も歳ごまかして水商売やってるぐらいだから」。
そこに警官が子供のように見える男の子を追いかけて来るのに、出会った。

少年の逃げた先を知らないか、聞かれた哲也は少年が隠れているのを知りつつ、知らないと答えた。
美乃も、そう言った。
家出少年らしいんだが、と警官は去って行った。

「おい、もう出て来ていいぞ」。
そう言われて出てきた少年は、だが走って逃げた。
「何だあいつ」。

哲也は、学校で愁一に美乃を知っているのかと聞かれたらしい。
「てきとーに答えといたけどよ」。
それを聞いた美乃は、帰宅してから愁一の部屋を訪ねた。
秀才の愁一は、勉強をしていたらしい。

見るともなしに開かれていたノートを見ていた美乃は、「え?」と驚いた。
そこに愁一が戻ってきて、美乃はとっさにノートをセーターの中に隠してしまう。
美乃は愁一が哲也に自分のことを聞いた話をした。

「あの男は評判が悪いんだ。付き合って良い男じゃない」。
「そんなこと、本人見りゃあ、わかるわよ」。
「自分の評判が下がるからでしょ」。

愁一は、答えなかった。
「偽善者!」
美乃はそう言うと、出て行く。

翌日、美乃は哲也を探していた。
哲也は昨日の少年が、男に声をかけられているのを見ていた。
そして哲也はその男に「俺のダチに何か用か」と聞いた。
男は「哲か。お前の友達なら良いんだ」と言って去っていく。

少年は勇と言った。
「何だよ、お前」。
「あいつ、何て言ってた?」
「行くと来ないなら、世話してやるって」。

「その年で、ヤクザの仲間入りする気か?」
勇は、びっくりした。
美乃が「あたし、行くわ」と言ったとたん、勇が倒れた。
「おい?」

勇の前に、食事が並んでいた。
「美乃おねーちゃんが、おごるってさ」。
勇はもう、何日もろくに食べていなかった。
「構わない。どうせ遊びに使っちまう金だから」。

「お前、いくつだ?」
「せいぜい、12~3にしか見えないぜ」。
「14だよ!」
勇がムッとして答えるが、その直後に「い、いや16」と言い直した。

「嘘つけ」。
「それ食ったら、家に帰れよ」。
「嫌だ!」

勇は家にいて、代わり映えもしない毎日が嫌だったらしい。
そのうち、何か世間をあっと言わせることをしてやる。
「…似たようなこと考えてる」と、美乃は笑った。
「偶然だな。俺もだよ」。

その後、美乃と勇は哲也の部屋に行った。
美乃は哲也に、愁一のノートを見せた。
勇は美乃を、じっと見ていた。
「何よ」。

「お前、外人みたいだな。あいのこか?」
「ハーフって言ってほしいね。年下にお前呼ばわりされるの、感じ悪いよ」。
「美乃おねーちゃんって呼べってよ」。
「どことのハーフ?」と、哲也が聞いた。

「地球儀出そうか?」
「ばーか」。
「…父が、ギリシャ人らしいんだけどね。会ったこともない」。

母親が亡くなってから、美乃は愁一の家に預けられた。
「あの家でずっと、父や母の悪口を聞いてきた」。
「金が出来たら、あの家を出て父親のいる国に行ってやる」。

「一昔前の、父を訪ねて三千里だな。お涙ちょうだいだ」。
「ただ行ってみたいだけよ」。
勇はますます、美乃をじっと見つめていた。

「何よ、ハーフがそんなに珍しい?」
「別に!」
ノートを見ていた哲也が「何だ、こりゃあ!」と叫んだ。
「誰が書いたと思う?」

「まさか」。
「愁一」。
それは、綿密な犯罪計画だった。

「なあ…。もしかしてこの通りにやったら、完全犯罪になるんじゃねえか」。
「…でしょう」。
勇も目を輝かせた。
『やってみるか?』

呼び出された愁一は、青い顔をしていた。
「お前たち正気か!」
「これだけのものを見せられたら、誰だってくるっちまうよ!」

哲也はこの、銀行からの現金強奪を実行しようと思っているのだった。
「なら…」。
愁一が口を開いた。
「指揮は俺が取る…!」

哲也も、美乃も、勇も驚いた。
「お前たちが捕まってこのノートが出たら、俺も共犯者だ。それは困る」。
「リーダーは俺だ!嫌ならやめろ!」

哲也も、美乃もあっけに取られていた。
だがその日から、強奪事件の打ち合わせは始まった。
「いや、それはダメだな」と、愁一は積極的に参加した。

その様子は生き生きとしていて、美乃は「愁一…?」と、いぶかしんだほどだった。
やがて、年の暮れも迫ったある日。
美乃はメガネをかけ、ストレートのミディアムヘアのウィッグをつけて銀行に向かった…。

それはボーナスを狙った強奪で、まず、店の前で勇がひったくりを起こす。
警官が追う。
その隙に発煙筒を持った哲也が、現金輸送車の前に立つ。
ダイナマイトと言って脅し、現金を奪った。

途中、警官が戻って来てしまうと美乃が外を見て悲鳴を上げる。
あそこに血だらけの男が!
その悲鳴で警官は、外に走って行く。

警報ベルを鳴らそうとした警備員に哲也は、発煙筒を投げつける。
ダイナマイトと思った警備員が、伏せる。
しかしそれはただ、煙を上げるだけだった。
非常ベルが押される。

いち、にい…。
現金の束を前に、哲也も美乃も勇も興奮していた。
だが愁一は冷静に、この札は使えないと言った。

新札で番号が揃っている。
寝かせておくしかない。
いつまで?
7年ぐらい…。

哲也もがっかりするが、愁一は言う。
「明日からは、普段通りに生活するんだ」。
「いいな。遊びは終わりだ」。

だが早速、美乃は一緒に遊んでいた女友達に呼び出される。
女友達は美乃に、事件の新聞を見せた。
「昨日、この銀行にいただろ。メガネかけてヘアピースつけてたけど、確かにあんただった」。

女友達は含み笑いをした。
「あの近くなんだ、あたしの家。人のいないところで、話をつけない?」
人気のない林に呼び出された美乃は、脅された。
「知らないって言ってるだろ、あたしじゃない」。

「昨日や今日の付き合いじゃないんだよ、間違うはずないだろ?!」
「だからさ、ちょっとこっちに遊ぶ金をまわしてくれりゃ、サツになんかいいやしないよ」。
「知らないって言ってんだろ!」
「サツに、ばらされてもいいのかい?!」

「そいつは困るな」。
「何だよ、あんた!」
物陰から、哲也が出てきた。

「女の子がね、そんな怖いこと言うんじゃないの。ケガでもしたらどうするの」。
哲也は、ナイフを出した。
「顔に傷つけられたり、さ」。
「ひっ!」

「哲…、ばか、よしなよ!」
美乃も仰天した。
「13日に見たことは忘れなさい、いいね?」

「あ…」。
友達は震えだした。
「忘れろって言ってんだよ、ほんとに傷つけるぞ!」

哲也のナイフの刃が、顔に向いた。
「わかった、忘れる!忘れるよ!」
女友達は叫んだ。

美乃は哲也に文句を言った。
「助けてやったんじゃねえか」。
「かえって、まずくなったわ!」

しかし、警察は哲也が使ったバイクから、すでに哲也にたどり着いていた。
主犯と思われる少年の自宅を家宅捜査。
愁一も哲也も美乃も勇も、一時姿をくらますことにした。

「俺は冬期講習と言って出て来るが、お前は?」と、愁一が美乃に聞く。
「黙って抜け出すのは慣れてるよ」。
こうして、哲也も美乃も勇も、そして愁一も家を出て来る。
行き先はある、海岸近くの雑木林の中の一軒家だった。

【追記:
哲也は「何が完全犯罪だよ」と、ぼやいた。
こんなに簡単にばれるなんてよ」。
すかさず美乃が「愁一のせいじゃないわよ」と言う。】

「俺んちの周りに似てる」と勇が言う。
「お前んち、こんな僻地にあんのか」と哲也が言う。
一軒家で、4人の生活が始まった。
金は海岸沿いの崖に埋めることにした。

その時、哲也が血判状を書こうと言い出した。
「雰囲気だよ、雰囲気!ほら、美乃も」。
美乃も促されて、名前を書いた。

名前の下に、血で彩った指の判を押す。
指を切るのは、哲也のナイフだ。
ナイフは白く、陽を受けて輝く。

哲也は勇相手に、野山をかけて遊んでいた。
愁一は勉強をしていた。
勇が、愁一は卒業したらどうするのか聞いた。

医者になるのだろうと思ったが、愁一は「ギリシャに行くかな」と言った。
「美乃と?」
愁一はそれには、答えなかった。

【追記:
哲也が愁一に詰め寄っている。
これからどうすればいいんだ。
「よお!秀才さんよ!」

美乃が怒った。
勝手に引き込んでおいて、今度は愁一のせいか。
哲也は出て行く。

美乃が追って来た。
哲也は「あんたはいつも、愁一の味方なんだな」と言った。
「俺、あいつが平然としていると、イライラするんだよ」。
「こっちは一生懸命、バカやって遊んで不安を紛らわせてるっていうのによ」。】

そのうち、哲也は風邪を引いた。
咳をしている哲也は、勇を呼んだ。
「ちょっと来いよ」。

その夜だった。
美乃が寝ているところに、勇が侵入した。
それに気づいた美乃が、勇を平手打ちした。
電気がつけられた。

「何でこんなことしなきゃいけないのよ、勇!」
「どうした」。
すると哲也が「俺がそそのかした」と言った。

「勇だって男なんだよ。いつまでも我慢してるこたぁねえんだ」。
「あんた!」
美乃がカッとなった瞬間、哲也が殴られた。

床に転がった哲也は、激しくせき込んだ。
「初めて、激高したな、愁一さん」。
愁一はハッとした。

いつも冷静な愁一の、初めての感情の爆発した姿だった。
すぐに冷静さを取り戻した愁一は、「もういい。二度とこんなことはするな」と言って部屋に戻った。
その姿を見送りながら美乃は、犯罪計画を立てている時の愁一の生き生きとした様子を思い出していた。
あの時、本当の愁一を見た気がした。

だが今は、またわからなくなっている。
美乃は幼いころから、愁一が好きだった。
愁一もまた、美乃が好きだったのだ。
哲也だけが、それに気づいていた。

翌朝、すっかり回復した哲也は、美乃に任せられないと言って雑煮を作っていた。
「タフな人!」と美乃はあきれていた。
そこに愁一が外から戻ってきた。
「裏山の草を結んだのは、お前たちか?」

「あれ、あんたもひっかかったの?」と哲也は笑った。
哲也は左右からつまんだ草の端を結んで、輪を作っていた。
美乃もそのいたずらに引っかかって、哲也を追いかけた時、足を取られて転倒したことがある。
哲也の指には、傷がついて血が出ていた。

「傷が」。
「すぐ治る」。
そう言って部屋に戻った愁一だが、ふとした時に首筋がこわばる。
ガシャーン!

美乃がうっかり、皿を割った。
哲也が文句を言って、美乃が笑った。
その時だった。
愁一がけいれんを起こして、ひっくり返った。

『音が刺激となって、全身がけいれんを起こす』。
『この症状は…!』
医者志望の愁一には、わかった。
愁一の症状は、ますますひどくなる。

このままでは、危ない。
勇が、医者を呼びに行くことになった。
美乃が、呼び止める。
「勇。医者を呼んだら、その足で家に帰りな」。

「7年後に、またね」。
「サツに気を付けてね」。
その言葉を聞いた勇は「俺、医者連れて戻って来るからな!」と叫んだ。

だが、医者は来てくれなかった。
勇の風体から、診察料は払えないと見たのだ。
思い余った勇は、こっそり札束から落ちてポケットに入れていた一万円札を出した。
「金ならあるよ、ほら!」

それを見た医者は、行こうと言った。
しかし医者は奥に引っ込むと、看護師に警察に連絡しろという。
あんな汚いなりの子供が、一万円札を出した。
どこかで盗んだに違いない。

警察はすぐにやってきて、勇を確保した。
「勇君だね。ご家族から捜索願が出ているよ」。
刑事に囲まれて、勇は震えていた。
「君は、そそのかされて、あんなことをしやっただんだろ?」

勇は、戻ってこない。
医者も来ない。
愁一の苦しみは、ひどくなる一方だった。
窓の外を見た哲也は「勇の奴、ドジふみやがった」と叫んだ。

物陰に警官がいるのを、見つけたのだ。
家はすっかり、囲まれている。
「俺は行くぞ!」
哲也は逃げるという。

美乃が哲也を見る。
「悪く思うなよ。捕まるなんてまっぴらだ」。
「あんたは?」

美乃は目を伏せた。
ふっと、哲也は笑った。
「聞くだけ、野暮か」。

美乃は愁一と残る。
哲也が叫んだ。
「じゃあな!捕まったら、主犯は俺だって言えよ!」
「7年後にまた会おう!」

哲也は、出て行く。
苦しむ愁一に、美乃は笑いかける。
「美乃?」
美乃だけは残ったのが、愁一にも分かった。

警官が家を囲んでいるのを、哲也は上から見下ろしていた。
その時、哲也はわざと木を折って音を立てた。
警察が哲也に気付く。
「止まれーっ!」

「へっ、誰が言う通りにするもんかよ」。
哲也は逃げていく。
「威嚇射撃だ!」
刑事の声で、警官が発砲した。

その音で、愁一が背骨が折れるほど、のけぞる。
「愁一!」
哲也は止まらない。

警察の目を自分に引き付けて、美乃と愁一を助けるつもりだ。
「もう一発だ」。
「はいっ」。

警官が銃を向ける。
ガクン!
「!」
哲也が倒れるのと、銃声が同時に響いた。

「ぐうっ!」
愁一が目を見開き、体をそらす。
「愁一!」
「いきなり…、倒れたんです」と発砲した警官が、うろたえた。

哲也は弾丸が命中し、絶命していた。
助け起こした刑事は、哲也の足元を見た。
「これに足を取られたのか」。
哲也の足元で、草が結ばれていた。

警官が家になだれ込む。
「はっ」。
そこにいたのは、ビンの割れた口を自分の首筋に向けている美乃だった。
「馬鹿な真似はよしなさい。ビンを下に置くんだ」。

刑事の静かな口調に、美乃は従った。
「男の方は死んでいます」。
警官が言った。
美乃が涙をこぼす。


7年後。
海沿いの崖で、美乃と勇は再会したのだった。
勇が美乃に言う。

「愁一さんの死亡原因…、破傷風だってな」。
「…」。
「あの人、医者志望だったのに」。

美乃はやがて、土を掘り始めた。
「よせよ。もうとっくに警察が…」。
美乃は、やめない。
その様子に、勇も掘り始める。

「いたっ」。
美乃の指が、ナイフに当たった。
「ナイフ!」

「哲の!」
「血判状も!」
だがその血判状はボロボロで、何が書いてあるかもわからなかった。
「は…」。

勇は笑い出した。
「こんなもの。何が何だか、わかりゃしねえ!」
勇は笑いながら、泣いていた。

「美乃さん、結婚は?」
美乃は首を振った。
「俺、来月結婚するよ」。
「私は…、父が連絡してきた。ギリシャに行って一緒に暮らす」。

「そうか」。
「…俺たち、何であんなことやったんだろ」。
「今から考えたら、わかんねえ…」。

美乃は、血判状を風にさらす。
風は、血判状を持ち去る。
美乃が心の中で、つぶやく。
『たったひとつ、言えることは…』。

『私たちは、あの瞬間、瞬間を生きていた』。
美乃が持つ、ナイフは錆びていた。
『白く輝く、ナイフのように』。