こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2017年10月 ≪  123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫ 2017年12月

世にも怖ろしい一枚 「レディ・ジェーン・グレイの処刑」

テレビ東京の土曜日、夜10時から放送されている「美の巨人たち」。
11月4日はこの番組で、「怖い絵」展で見られるドラローシュの絵が取り上げられました。
展覧会の、メインともいえるこの絵。

中央に若い女性が目隠しをされている。
白いサテン地らしきドレス。
伸ばした手。

画面の左端に嘆きのためにもう、涙も出ないと言った女性がいる。
その右には、後ろ向きの女性もいる。
その背中からは慟哭が聞こえてくるよう。

目隠しの少女の横に寄り添うのは、聖職者。
画面一番右に立っている、筋骨隆々の大きな男性。
眉をひそめた表情からは、深い悲しみと労りが伝わって来る。
下ろしている手には、大きな斧。

少女が白い手を伸ばした先にあるのは、台形の木の置物。
四方に鉄の輪がついている。
その木の下には、わらが敷いてある。

この絵は「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
中央の目隠しされた少女は、レディ・ジェーン。
少女が手を伸ばすのは、断頭台。

斧を手にした男は、処刑人。
わらは、血を吸わせるためのもの。
処刑の執行の直前の絵。
それがわかった時、この美しい絵はぞっとする、世にも怖ろしい一枚となる。

レディ・ジェーンは、元女王。
15歳で、玉座に座らされた。
「女王ジェーン・グレイ」とサインする時、15歳の少女はその重圧に震えていたと言う。

壮絶な権力闘争に巻き込まれ、望まなかった女王にされた。
だがその後ろ盾、ジェーンを使って権力を握ろうとした者が失脚。
反逆罪で捕らえられた時から、ジェーンの運命も決まった。

ロンドン塔に幽閉となったジェーン。
ジェーンに代わって玉座についたのは、叔母でもあるメアリー。
私はお酒は飲めませんが、ブラッディマリーというカクテルは知っています。

トマトジュースとウォッカのカクテル。
このカクテルの元になったのが、このメアリー女王だということ。
血まみれメアリー。

当初、ジェーンには温情をかけていたメアリーだが、「夢よもう一度」と思ったか。
反乱軍にジェーンの父は、参加した。
ジェーンが生きている限り、こういうことが起きるのだ。
そう判断したメアリーは、ジェーンの刑の執行書にサインした。

絵の中で嘆いているのは、ジェーンの侍女2人。
ジェーンから外されたケープを手に、虚ろな目は何も見ていない。
斬首の時、ケープは邪魔だから、とらなくてはいけないのだ。

実際の処刑は、ロンドン塔の庭で行われた。
しかしこの絵は、暗い室内で刑の執行がされている。
その暗い室内、暗い壁を描くことで絶望感が増している。

ロンドン塔。
権力闘争に負けて幽閉されていた人たちが、壁に刻んだ文字がある。
壁には、ジェーンの夫が刻んだ「JANE」の文字もある。

実際のジェーンは、黒いケープ、黒いガウンというしきたり通りの服装だったらしい。
しかしドラローシュは、絵のジェーンに白いドレスを着せた。
白いドレスを着せることで、ジェーンの潔白を表した。
その白いドレスが、どうなるか。

執行を忠実に記した版画では、執行人は黒い仮面をつけている。
表情はわからない。
だがこの絵の執行人には、深い悲しみと労りが見える。

彼もまた、ジェーンの潔白を知っている。
しかし、彼にはどうすることもできない。
彼はジェーンより、やや大きく描かれている。

それは圧倒的な、もうひっくり返すことは無理な状況であることを表現しているという。
ジェーンは、執行人にささやいたと言われてる。
「早く、済ませてくださいね」と。

だが解説では、本当の怖さはジェーンの手にあると言う。
その手は自らの首を斬り落とす断頭台を探しているのだ、と。
四方の鉄の輪は、動かないように固定するためのもの。

ジェーンが膝まづくときに当てられるクッションは、その身分の高さを物語るような豪奢なもの。
この虚しさ怖ろしさ。
毅然と、伸ばされた指先。

16歳の、何の陰謀もなかった少女が処刑される。
その少女が、毅然として運命を受け入れている。
王族の血を引く者なのだから、そうしなければならない。

自分の理不尽な運命さえも、受け入れるしかない。
そう思わせるほどの、すさまじい権力闘争の日々。
王族の誇り。

わずか15,6歳の少女がそれを受け入れる時代。
状況。
人が本当に怖いと思うのは、そこなのだと解説されている。


上野の森美術館で開催中の「怖い絵」展。
この絵はこの展覧会で、メインの絵です。
展覧会は大好評の大混雑で、閉館時間が20時に延長になったとか。
チケットだけは手に入れたんですが、まだ行けていません。

この絵は普段は、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにあります。
『怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック』によると、ナショナル・ギャラリーは、こう言ったそうです。
「この絵を見るために、年間600万人もの人がここ(ロンドン・ナショナル・ギャラリー)に来ます」。

「この絵を半年、貸すと、300万人の人がこの絵を見られなくなります」。
「あなたたちはそれに代わる何かを、私たちに示せるのですか」。
「美の巨人たち」でも言っていましたが、レディ・ジェーンは悲劇的な最期を迎えました。
しかしそれをこの絵が描いたことで、彼女の存在は永遠のものとなった。

彼女の存在は人々に忘れられることなく、生き続けることとなったのだ、と。
そして遠い日本でも、この絵によって彼女の存在が知られることになるのだ、と。
これが、この絵が日本にやって来る理由になるのではないでしょうか。



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放送!

先週、「シン・ゴジラ」がテレビ放送されてました。
私はなぜか、9時前に眠くて眠くて、ベッド入っちゃったんです。
それで寝ながら見ようと思っていて、眠ってしまった。
録画してましたけど。

作品の性質上、当たり前なのかもしれませんが、この映画。
改めてみると、男がカッコいいですよね。
男っぽい男が出て来る。

すでに国連決議で、熱核攻撃が決定。
しかし日本は、最後の希望、ゴジラ凍結に賭ける。
矢口とカヨコの会話。

カヨコが「この国で好きを通すのは難しい」と言う。
矢口「ああ」。
「僕、1人じゃな」。

里見臨時総理代理に矢口の作戦の実行の、承認をしてくれと言う泉政調副会長。
「こんなことで、歴史に名前を残したくはなかったなあ…」とぼやいていた臨時総理代理。
実に哀しそうな声。
平泉成さん、うまいなあ。

「しかしなあ、泉ちゃん。もう国連決議まで出ちゃってるしな」。
泉「米国はゴジラの存在を隠匿していた事実をうやむやにするために、早期の幕引きを図っている節もあります」。
「そんなことはわかってるよ。泉ちゃんだって我が国の立場をわかってるだろう」。

「ですけど総理。自国の利益のために他国に犠牲を強いるのは覇道です」。
キッパリ。
「…わが国では人徳による、王道を行くべきということか」。

泉の言葉は、総理の心に響いた。
国連決議、アメリカにも粛々と従っていた赤坂内閣総理大臣補佐官が口を開く。
「総理。そろそろ好きにされたらいかがでしょう」。
「そうだな。で、どれにハンを押せばいいんだ」。

立川の自衛隊基地の応接室で、矢口と統合幕僚長、総監らが話す。
作戦名を「長いですね」と言う矢口。
「役所のすることですから」と、フッと笑う統合幕僚長。

「ゴジラ凍結作戦も子供っぽいですから…、ヤシオリ作戦としましょう」。
「わかりました」。
「作戦の運用は五段階。朝霞で詳細に詰めてあります」。

「架設架線と軌条の復旧作業、隊員による車両の遠隔操作の訓練や、爆薬の設置作業も終了しています」。
「後は実行のみです」。
うわ、頼りになる。

強い女性もカッコいい。
女性が活躍するアクション映画は、大好きです。
だけど、この映画は強い男の王道を見た感じがします。

自衛隊なんだから、それはそうなんですが。
男が男である意味、みたいなものを見せてくれた。
男らしいって、こういうこと!って思ってしまったんですねえ。

統合幕僚長に矢口が「ありがとうございます」と言う。
すると幕僚長。
「礼はいりません。仕事ですから」。

…しびれますね。
プロ中のプロの言葉。
この人がいれば、大丈夫なんだと思わせる。

そして無人新幹線爆弾が、炸裂。
この辺りはもう、スカッとしてください!って感じですね。
今見ると、無人新幹線爆弾とは、いいとこ目を付けたな~!って思います。

その後の無人在来線爆弾、全車投入!
だけどこれ、JRよく許可しましたねえ…。
特に、新幹線。

ゴジラの体に巻き付くようにして、乗り上げていく在来線。
それがゴジラに向かって、炎を上げていく。
あんな風に電車がゴジラに向かって、登って行くのか?って、あれは電車の報復でしょう。

今回も最初の方で、宙を飛んでバラバラになる電車がありました。
いつもいつも、ゴジラやギャオスに踏みつけられ、壊される電車。
犠牲になった電車、乗客の怨念がゴジラに絡みついてる。

米軍と自衛隊の共同作戦。
めんどくさいアメリカを体現したかのような、カヨコという人物。
でも、カヨコも相当尽力してるんだろうと思いました。

ヤシオリ作戦は、成功。
ゴジラは完全に沈黙。
不思議なのは、ゴジラは怖い。
日本は、人類は、ゴジラによって滅ぼされるところだった。

この時点でも、相当な被害が出ている。
絶対、いてほしくない存在。
なのに、なぜか、ゴジラが目を閉じる時、とても哀しくなる。

熱核攻撃まで、時間は迫っていた。
赤坂「微妙なタイミングだが、フランスを説得し続けた里見臨時総理代理のおかげだ」。
フランス駐日大使に、直角に頭を下げている臨時総理代理。
背後の官僚の御名さん。

みなさん、実にカッコよかった。
この、ヒーローがいないところが、実に日本らしかった。
誰もがその立場で、その職場で自分の仕事をしている、普通と言えば普通の人たち。
その人たちが力を結集させて、解決する。

ここが実に、日本らしかった。
最初の右往左往、決まらない会議。
後手後手に回る対策。

そういうのも日本らしいなら、決まると力を合わせて行くところも実に日本らしかった。
「この国で好きを通すのは、難しい」。
「僕、1人じゃな」。

「スクラップアンドビルドで、この国はのし上がってきた」。
「今度も立ち直れる」。
震災を経験した日本に対してのメッセージ。
日本に、日本人に対してのメッセージ。

そして、凍結したまま、東京駅に存在しているゴジラ。
矢口は「日本は、いや、世界はゴジラと共存していくしかない」と言う。
このゴジラは、一体、何を象徴しているんだろうと考える。

「あなたの手段を択ばないところ、気に入っている。だから、辞めないでね」と言うカヨコに対して矢口が言う。
「政治家の責任の取り方は自らの進退だ。自分の責任は自分で取る」。
「マキと同じ、…好きにすれば」。
親愛を込めて、そう言うカヨコ。

そして最後の尻尾の分裂。
あれが群体化、有翼化すると、人類は滅びる…。
間一髪、危機は回避されたのだろうか。
それとも、まだ、うごめいているのだろうか。

白地にクラシックな「終」の文字。
今回の放送では、CMの入れ方も悪くなかったですね。
最後のエンディング、ばっさりカットはちょっとびっくりしました。

あの余韻であの曲が流れるって、やっぱり良いなって思いました。
でもあのエンディングまったくのカットで、「終」は良い終わらせ方だった。
「シン・ゴジラ」を壊さないように配慮した、放送だったのではないでしょうか。

カッコいい男たちが見られるこの映画。
放送時に、寝ていてごめんなさい。
視聴率に貢献しなくてごめんなさい…。


身動き取れなくなるようなことはやめよう 「ジェラルドのゲーム」

ジェシーは夫のジェラルドと別荘にやってきた。
夫婦はうまくいっていないことはなかったが、新鮮さを取り戻そうと休暇を利用し、やってきたのだ。
この別荘は隣の家とも車で行かなくてはならない、人里離れた場所にあった。

ジェシーは別荘の辺りをさまよう、黒い犬を見つけた。
冷蔵庫にステーキ肉があったので、犬に与えようとするが、用心深い犬は近づいてこない。
それを見つけたジェラルドは、1枚200ドルもする取り寄せた神戸牛だと笑った。

ジェラルドに手を引かれて部屋に入るとき、ドアを閉めなかった。
ちらりと、そのことをジェシーは気にした。
ステーキ肉を置いて、部屋に入ったジェシーはセクシーな白いスリップ姿となった。
ベッドに行く。

ジェラルドはベッドのジェシーに、手錠をかけた。
それは刺激的なシチュエーションをもたらすはずだった。
しかし、ジェシーの中に激しく拒絶が持ち上がった。

手錠を外して!と叫ぶジェシー。
戸惑うジェラルドの顔色が変わった。
彼は胸を押さえ、倒れた。

ジェラルドは、ベッドから落ちる。
ベッドのジェシーからは、倒れたジェラルドの腕しか見えない。
「ジェラルド?」
呼びかけに返事はない。

ジェシーの両手には、ガッチリと手錠がかかっている。
もうすぐ、日没となる。
目の前に、ジェラルドが現れた。
だがジェシーの前には、倒れたジェラルドの腕が見える。

ここには誰も来ない。
声は届かない。
携帯電話に手は届かない。

『人間は飲まず食わずで、どれだけ持つと思う?』
ジェラルドが聞いてくる。
もがくジェシー。

すると、手錠から手が外れた。
片方の手が外れたので、思い切りベッドの柵を揺すると、柵が壊れた。
ジェシーは見事、脱出できた…。

解放されたジェシーが、ベッドに縛られたままのジェシーを見下ろした。
それはもう1人のジェシー。
ジェラルドは言う。
手錠は外れないし、柵は補強された特別製のベッドだ。

もう1人のジェシーが、言う。
頭の上の棚に、水の入ったグラスがある。
ストローを使って、飲める。
がんばって。

すると、あの黒犬が現れた。
犬はジェラルドの腕の匂いを嗅ぎ始めた。
あろうことか、ジェラルドの腕に噛みつく。
「あっちへ行きなさい!」

怒鳴るジェシーが、必死に大きな音を立てる。
初めは驚いてひるんだ犬だが、ジェシーが来ないことがわかると逃げなくなる。
ピチャピチャと、おぞましい音がする。
床に血が流れる…。

夕暮れが近づいてきた。
ジェシーは、これまでの人生を思い出していく。
まだ子供のジェシーが父親と一緒に海辺のリゾート地で、日食を見ていた。

無邪気なジェシーを膝に乗せた父親。
はしゃいでいたジェシー。
しかし、子供のジェシーにも次に父親がしたことの異常さはわかった…。

その日から、ジェシーは父親を見られなくなった。
部屋にやって来た父親は、このことを母に言うように勧めた。
当然のことだ。

罰は受けると言う父に、ジェシーは誰にも言わないと言うしかなかった。
誰にも言えない。
今、お腹に子供を宿している母親がどれほどのショックを受けるか。

夜のテーブルで、母が聞く。
日食はどうだった?
ジェシーが思わず、手に力を入れた。
コップが砕けて、血が流れた。

父親がジェシーをバスルームに連れていく。
その後ろ姿を見送る母親の顔に、恐怖と疑惑が浮かんだ。
心の傷。
だがそんなジェシーが選んだのは、父親のような存在のジェラルドだった。

ジェラルドが言う。
「うまくいかないわけだ」。
ジェシーはどこか、ぎこちなかったのだ。

夜が来た。
犬はやってきて、ジェラルドを食べていく。
そして死神もやってきた。
幻かと思ったが、血でできた、犬ではない足跡があった。

ここから先はネタバレしてます。


ジェラルドと、もう1人の自分とジェシーは会話を続ける。
何とか、ストローで頭上の棚のグラスの水を飲むことに成功する。
ジェシーは、決心した。

手錠から抜けるため、ジェシーは手の皮と肉をそぎ取るる。
血で手が濡れれば、滑って抜けやすくなるだろう。
手錠から抜けるために、大きな結婚指輪を抜き取る。
床に転がる結婚指輪。

ジェシーは大切に飲んでいた水の入ったグラスを割る。
もう、後戻りはできない…。
グラスの破片を木の棚に突き刺し、ジェシーは覚悟した…。

まるで手袋を脱ぐように、片方の手の皮と肉をそぐジェシー。
絶叫。
見事、手錠から解放される。

自由になった手で、テーブルの上のカギを手にする。
手錠からの解放は、過去の自分からの解放でもあった。
犬はいない。
部屋をふらふらと歩くジェシーの前に、あの死神が現れた。

床に転がっている結婚指輪を、ジェシーは死神に与える。
これを持って、帰って。
その代わり、私を連れていかないで。
死神は指輪を受け取った。

ジェシーは必死に車まで戻り、車を発進させる。
途中、痛みと疲れが襲ってきて、意識が朦朧とする。
自分を振り立たせるが、ついに力尽き、車は木に衝突する。
その音とクラクションで、隣の家の人が駆けつけてくれた。

ジェシーは気が付いたら、病院にいた。
手には包帯が巻かれている。
助かった…。

ジェラルドの会社の人間が、ジェラルドの死因を発表しないように警察に話をしてくれた。
結婚指輪は見つからなかった。
少しずつ、回復したジェシーは社会福祉に力を注ぐようになる。
特に、虐待を受けた子供たちを救う仕事に。

ある日、ジェシーは墓荒らしをしていた男の新聞記事を読んだ。
それはあの別荘地近辺だった。
あの死神は、墓荒らしだったのだ。

男は先端肥大症により、異様に高い身長と仮面のような顔を持っていた。
そして、殺人まで犯していた。
ジェシーは、男の裁判を傍聴する。

誰もが恐れる男の前にジェシーは進み出て、笑顔を残す。
もう、彼女には恐れも憎しみもない。
脳裏に子供のジェシーが現れる。
大人のジェシーが近づく。

血のように赤い日食の風景が、消えていく。
暗闇から現れた太陽は、黄金色に輝いている。
子供のジェシーも、大人のジェシーも微笑んでいた。


スティーブン・キングは、こういうシチュエーションから脱出する話、うまいですね。
「クージョ」とか。
あれは、怖かったです。

絶体絶命になると人は、いろんなことを一瞬で思い出すらしいです。
これは何とかしてサバイバルする方法が、今までの経験の中にないか。
頭が必死に探すせいらしいですね。

ジェシーもそのように、今までの人生を思い出していきます。
封印されていた、記憶も蘇ります。
なぜ、ジェラルドのような男性を選ぶのか。
それは父親との間の、トラウマが原因だった。

しかしジェシーはその記憶を固く封印しているため、心の傷がいつまでも癒えない。
どうも、ジェラルドもジェシーがちょっとぎこちないと思っていたらしい。
描写はされないけれど、おそらく夫婦の生活でそういうことがあったんでしょう。

父親的存在を求めての、ジェラルドとの結婚。
結婚指輪を抜き取るのは、庇護を求める弱い自分との決別に見えます。
そして、手錠からの解放はもちろん、過去に縛られた自分からの解放。
弱い自分からの脱皮。

スリラーと思ったら、これは1人の女性のトラウマ克服の話だった。
途中、グロテスクなシーンもあります。
いたーい!

でも、最後はとっても解放的。
感動的。
トラウマになっていた日食の太陽が、普通の日の出となって輝く。

社会復帰したジェシーは、ジェラルドの代わりに立派な役員となっている。
200ドルの神戸牛って、すごい。
トランプ大統領も堪能してましたね、ステーキ。
おいしそうなお肉だけど、犬は…。

これ、ジャンルとしてはホラー、スリラー、サスペンスになるのかな。
心理ドラマがメインなんですけどね。
これはスリラーであり、生命の危機に直面したジェシーが、今までの人生を振り返る話。
そして長年、封印してきたトラウマを克服する話でした。

ジェシーの中で「1922」と違って、こちらの後味は良いです。
開いたドアを気にするって、犬が入って来る伏線だったんですね。
いくら周りに家がなくて、人が来ないとはいえ、やっぱり戸締りはしましょう。
それと、いくら遊びでも自分が身動き取れなくなるような状況はやめましょう。



神がいなければ地獄もない 「1922」

一人の男が、レターペーパーに向かって告白文を書いている。
1930年。
男の名はジェイムズ。
告白は、1922年に妻を殺害したことだった…。

ジェイムズは、80エーカーの土地で農業を営んでいた。
1922年の当時、男が誇りにしていたのは自分の土地。
そして自分の息子だ。
妻は裁縫が好きだった。

そして、農家の暮らしに興味がなかった。
妻が父親の、100エーカーの土地を相続した。
すると妻は、土地を売って街へ出て行きたがった。

オマハの街、セントルイスでも良い。
そこに引っ越して、ヘンリーも学校に通わせる。
ジェイムズは「街はバカが澄むところだ」と言う。
ヘンリーも街には住みたくないと言う。

ちょうど、隣家の娘、隣家と言っても車を走らせなくては行けない距離だ。
そこの娘のシャナとヘンリーは、付き合い始めていたのだ。
妻は言った。

父親の土地を残してくなんて、ありえない。
ならば俺が買い取ると、ジェイムズは言った。
「買えると思ってるわけ?」
「8年、10年かけて支払う」。

妻は鼻で笑った。
「パディントン社なら、一気に払ってくれる」。
父親の土地と一緒に、自分たちの土地も売る。

鉄道に近い土地を欲しがっているパディントン社なら、高く買ってくれるだろう。
そうしたらお金は半分、分ける。
だから離婚しろと妻は言った。

もちろん、まだ14歳のヘンリーは自分が引き取る。
ジェイムズは理不尽だと怒った。
すると妻は「人生はたいてい、理不尽なものよ。特にここではね!」と怒鳴った。

最新式の車が、家の前に止まる。
そこから、帽子にワンピース姿で降りて来る妻。
ちらりとジェイムズを見て、声もかけずに家に入る。
法廷で争えば、いいのかもしれない。

妻は言う。
「あなたが争うのは、パディントン社よ!」
法廷で争う。
だが何かが、ジェイムズを引き留めた。

田舎でのゴシップ騒ぎを恐れたのではない。
それは妻への憎しみだった。
どんな人間でも、心の中にもう一人の誰がいる。
自分の中の見知らぬ誰かが、しきりに持ち掛けて来る。

井戸を見つめる、ジェイムズ。
ついに、ジェイムズは決心した。
妻を殺す…。

そしてジェイムズはヘンリーの、シャナへの恋心を利用した。
ここを離れたくないヘンリーの…。
ジェイムズは、妻を殺害する計画をヘンリーに話す。

そして妻に、土地を売ることに同意すると伝えた。
すると妻は飛びあがって、喜んだ。
私の夫が、家族が帰って来たと言った。
妻はお祝いだと言って、その夜、酔った。

酔って、ベッドに入った。
ジェイムズはを殺害する時、ヘンリーに押さえつけさせた。
部屋中に、血が飛び散った。

妻の遺体は、井戸に放り込まれた。
身の回りの物を詰めたトランクも一緒に、放り込もうとした。
そのため翌日、井戸の蓋を開けた。

中を見ると、すでに妻の体にネズミがたくさんいた。
ふと見ると、妻の口から何か、ひものようなものが出ていた。
それは紐ではなかった。
ネズミの尻尾だった。

妻の口の中に、ネズミが入り込んでいる。
体中にいるはずだった。
ジェイムズは気分が悪くなり、ネズミに失せろ!と言って石を投げた。
そして、井戸の蓋を閉めた。

妻は愛想をつかし、金を持って出て行ったとジェイムズは人に話した。
パディントン社の弁護士は、怪しんだが妻が見つからないことにはどうにもならない。
井戸を封鎖しなければならない。
怪しまれないよう、ジェイムズは牛を井戸の蓋の上に誘導した。

牛が井戸に落ちたからと言って、井戸を封鎖した。
ある夜、牛小屋で牛が鳴いていた。
ジェイムズが行くと、ネズミが牛の乳をかじっていた。

銃で追い払おうとすると、ネズミは排水溝に逃げた。
その先は、井戸につながっているはずだ。
ジェイムズにとって、ネズミは殺した妻とつながるものだった。

妻がネズミを操って、自分に復讐している。
ネズミとともに、妻がやってくる。
そんな妄想が、ジェイムズを支配し始める。

ヘンリーは落ち込むことが多くなり、シャナは心配した。
母親を殺害したことを忘れるように、彼はシャナにのめり込んだ。
そしてついに、シャナが妊娠した。

シャナの両親は、シャナを修道院に入れ、生まれた子供を養子に出すと言った。
ヘンリーはシャナを連れて、駆け落ちした。
ジェイムズは一人になった。

部屋には排水溝から入り込んだ、ネズミがうろうろし始めた。
ジェイムズはネズミを踏みつける。
その飛び散った血を拭いていると、妻を殺害した夜を思い出す。
ジェイムズも次第に、おかしくなっていく。

そしてある夜、ネズミに手をかじられた。
地下室に向かうジェイムズは、階段で足を踏み外した。
下まで落ちて、動けないジェイムズの元に誰かが階段を下りて近づく。
ネズミが階段を下りて来る。

足が見える。
ネズミを従えた、血まみれの妻だった。
妻はジェイムズの耳元でささやく。
あの子が、どうしているか教えてあげよう。

駆け落ちしたヘンリーだが、妊娠したシャナを抱えて、暮らして行けるはずもない。
ヘンリーは手っ取り早く金を手に入れるため、強盗となった。
銀行でも商店でも、少年と思って油断した相手に銃を向け、金をひったくって逃げた。
しかしある日、商店の主人は逃げるヘンリーを追いかけて来て、銃を発射した。

弾丸はシャナに命中した。
2人が隠れている廃屋で、シャナは命を落とした。
絶望したヘンリーは、銃で自分を撃ち抜いた。

果たして、妻がささやいた通りにヘンリーは見つかった。
少年強盗について、マスメディアは派手に報道した。
ジェイムズは、ネズミにかじられた傷がもとで、片方の手を失った。

その時、ジェイムズは妻の遺体が見つかったことを聞いた。
しかし、世間は金を持って出た妻が、強盗に遭って殺害されたと思った。
強盗が隠した遺体が、今になって発見されたのだと。
ヘンリーの遺体を引き取りに行くが、それはネズミが食い荒らしていた。

シャナの両親を訪ねると、母親は傷心のあまり、出て行ってしまっていた。
友達だった隣人は、ジェイムズに言う。
今年の初めには、俺たちには子供がいた。

だが今はいない。
もう二度と、来ないでくれ。
ヘンリーはボロボロの家を修理もできず、部屋に雪が降っていた。

牛と、部屋で暮らしているというじゃないか。
おかしくなったと、みんな言っているぞ。
雪の中、ジェイムズが家に戻ると一緒に住んでいいる牛がもがいていた。
どうにもできず、牛を銃で撃って安楽死させた。

結局、ジェイムズは土地を売った。
妻が売ろうと言った値よりも、ずっとずっと安く買い叩かれた。
破格の安値だった。

そして大恐慌が来た。
シャナの父親も、ジェイムズの周りの農家も、銀行に土地を取られた。
ジェイムズは街に出て働いたが、「奴ら」は追ってきた。

土地を売った金は、2年で尽きてしまった。
酒を飲んでいない時は、ヘンリーの生きた軌跡をたどろうと、ジェイムズはヘンリーが強盗した先を回る。
お客と思った従業員の愛想の良い笑顔は、嫌悪感に変わる。

家出する前の、ヘンリーの言葉が蘇る。
『他に方法はあった』。
『ないはずはない』。

だが1922年、ジェイムズの中に潜んでいた男はこの方法を選んだ。
ヘンリーがジェイムズの前に現れた。
「2度と神に祈れない」。
「ひざまずいたら、神に殺される気がする」。

「神なんていなければいい」。
「人殺しはみんな、そう思うはずだ」。
「神がいなければ、地獄もない」。

ヘンリーはそう言った。
ジェイムズは語り掛けた。
母さんを殺したのは、俺だ。
違うよ、2人でやったんだ

ジェイムズは言う。
愛してる。
だがヘンリーは言う。
「でも、愛される資格がない」。

そう言って、ヘンリーは消えた。
オマハのホテルで、ジェイムズは告白する。
ネズミの声がする。

「父さん、すぐに終わる」。
体中にネズミをまとわりつかせた3人がいる。
妻と、ヘンリーと、シャナ。

部屋の壁の穴から、ネズミが大量に入って来る。
「運命からは誰も逃れられない…」。
ジェイムズの手紙は、そこで終わっていた。



スティーブンキングの原作の映像化。
これ、嫌な話でしてね…。
映画もやっぱり、嫌な話でした。

確かに奥さんは派手で、高圧的で、どちらかというと素朴な感じの夫の方に肩入れしたくなる。
酔って、シャナとのことをからかう言葉も、母親がそんな下品なこと言うなって感じです。
こんなこと平気で言う人の服なんて、と思ってしまう。
しかし、息子に妻殺しを手伝わせるところから、この夫も嫌な人間だということがわかってくる。

本の表紙には、井戸とネズミが描かれてます。
超常現象なのか、いや、彼らの心が起こした幻影と破滅ではないか。
どんどん、悪いことばかりが起きて、救いがない。

破滅を呼び込んでるのは、自分だという感じがするのも救いがないんです。
ヘンリーなんて、完全にそうです。
ジェイムズももとはと言えば、土地を守って、農家を守りたかったためにしたこと。

なのに、何もならなかった。
最後には何にもなくなってしまったのも、救いがない。
土地を売らないで頑張っても、結局は大恐慌が来てしまいますしね。
シャナの両親の家もそうだし、みんなどうにもならない時代が来る。

うーん、つくづく、嫌な話。
最後の最後に、他のやり方があったと回顧する。
ジェイムズはネズミにかじられて死んだ…と思ったら、自殺だったんです。
映画では、3人の亡霊が現れ、ネズミが部屋にあふれるところで終わってます。

今、夕暮れからあっという間に暗くなるでしょう。
ただでさえ、精神的な病気が悪化する時期らしいんですね。
そこに来て、休みの日の夕暮れにかかる時間にこんなの見ちゃって…。
いや、映画としてはいい出来だと思うんですが、それだけにガックリ。

あー、猫!
猫、お願いしまーす!
猫ー!

スティーブン・キングって、本当に嫌な話、うまい。
誉めてるんですけど。
想像力とか、心理描写が怖かったりするので、映像化は難しいのかなとも思います。

ジェイムズは、これまたキング原作の映画「ミスト」のトーマス・ジェーン。
「ミスト」も、きついお話でしたねえ…。
ほんと、スティーブン・キング、さすが。

凝っちゃって

肩が凝っちゃって、凝っちゃって、しかたないんです。
1日、パソコンの画面見てるんですから、当たり前ですけど。
「フッフッフ、四十肩、五十肩」ってうれしそ~うに教えてくれる人もいます。

昨夜の「border」。
3年ぶりの放送だそうです。
昨夜のSPは、連続ドラマのラストシーンから開始。

本編と関係ないところで、感心したのは…。
みなさん、容貌変わらない!
キープしてる!

遠藤憲一さんが体型も若さも保ってるのは、すごいんじゃないでしょうか。
いやー、俳優さんってすごい。
妙なところで感心。
話は…、というと、後に書きたいんですが、これ、また続編作って!

たぶん、これが好きな人は「JOKER」や「沙粧妙子 最後の事件」も好きじゃないのかな。
って、自分がそうなんですが。
どちらも続編が見られないので、borderさん、お願いします。
でもこういうの見てるから、肩が凝るんですかね。


ようこそ、こちら側の世界に

小栗旬さん主演で放送されたドラマ「ボーダー」。
続編が来週、放送なんですね。
あの最終回で、続編ができるとは思っていなかったというか。
逆に続編がないと納得できないというか。

主人公の刑事は事件を望んでいるわけじゃないけど、仕事中毒気味。
そんな彼がある夜、銃撃を受け、生死の境をさまよった。
この時に頭に留まった弾丸のため、幽霊が見えるようになった。

見えるようになった、というより、事件現場に彼が行く。
すると、成仏できていない死んだばかりの被害者が霊になって呼び寄せられてしまうというべきか。
土曜日に、ダイジェストで再放送がありました。
全部やってくれると良かったんだけど、続けて見るには、ちょっと話が重い?

通して見ていると、幽霊が見えることから彼がどんどん、刑事として道をそれていくのがわかるんですけどね。
普通の捜査がまどろっこしくて、裏社会の力を借りることが多くなる。
死者の無念や痛みを感じるため、どんどん被害者と同化していく。

服装も白っぽいものから、だんだんとダークな色調のものになって行く。
小栗さんが、徐々におかしくなっていく。
目に狂気が宿っていく。

主人公にかつての純粋な自分を見ていた上司は、彼の変化に気付く。
タイトルの「ボーダー」は、あちらの世界とこちらの世界のことだけではなかった。
正義と悪、道を踏み外す意味もあった。

犯人を殺し、その幽霊に「ようこそ、こちら側の世界に」と言われた主人公に、何が待っているのか。
やっぱり、破滅しちゃうのかなと気になります。
スペシャル番組、楽しみです。

地獄の道連れ、誰にする? 「新・必殺仕置人」第3話

第3話、「現金無用」。
げんなま無用。
2話は、こちらで以前に書いております。
3話だって書いているじゃないかって、すみません。
書いたものが消えてしまって、しばらく立ち直れないので、また後で書きます。

旗本、沖田政勝の屋敷前で、中元が自害して果てた。
沖田政勝に、妻を奪われた恨みだった。
腹を切り、苦しむ中元を沖田は介錯と斬って捨てた。
駆けつけた妻は「お恨み申し上げます」と言って、自害して果てた。

沖田の屋敷に絵草紙屋として出入りしていた正八は、ことの顛末を見ていた。
今日はこの騒ぎで、絵草紙どころではないだろうと、用人の堀内新兵衛が正八を追い払った。
「許してください。私が至らないばかりに」。
沖田の後妻・お梶が、そう叫んで走ってきた。

寅の会に、沖田の仕置きがかけられた。
鉄と伊三郎、そして柔術家の玄達で競り合った。
収拾がつかなくなりそうになった時、寅が制止した。
結局、仕置は入れ札となり、伊三郎に決まってしまった。

仕事を持って帰らなかった鉄に、仕置人たちは不平を言う。
みんな、仕置料を頼りにしていたのだ。
主水もやってくるが、当てが外れたと言われる。

「5両でも10両でもいいじゃねえか、やりがいのある仕事なら!」
「世の中にゃ晴らせぬ恨みつらみで、がんじがらめになって泣いてる連中がたくさんいるんだ」。
主水はそう言うと、「もう、おめえに任しておくわけにゃいかねえな」と鉄に言った。
そのの言葉に、正八も同意する。

寅の会抜きでやればいいのではないか。
そうすれば、寅の会に上前もはねられない。
だが鉄は「八丁堀、おめえ寅の会のこと、よく知らねえからそんなこと言うんだ」と止める。

すると主水は「おめえもすっかりタガが緩んだな。いつからそんな腰抜けになったんだ」と言う。
「とにかく虎のことは甘く見るな」。
仕置人たちに向かって、鉄は「おめえたちもだ」と言った。
「でねえと、虎に必ず仕置きされることになるぞ」。

「仕置人が仕置きされるってか」と立ち上がる己代松に「そういう冗談じゃすまねえんだよ」。
そして、自分を見る主水に鉄は「恨みがましい目で見るな」と言った。
「しょうがねえじゃねえか」と言って、鉄は頭を抱えた。

しかし、鉄が落札できなかった沖田政勝は、仕置きの前に心臓発作でなくなった。
虎がふすま越しに頼み人に「あなた様よりご依頼の沖田政勝に突然、不幸があり、私どもの手で仕置きできませんでしたので、このお金はお返しいたします」言った。
向こうには、頼み人がいる。

死神が、部屋の向こうの頼み人に金を持っていく。
部屋には、沖田の後妻のお梶がいた。
死神が言う。
「死因に不審がありました場合、その落とし前としてお命頂戴いたします」。

不審に思った死神は、沖田の遺体を掘り返した。
沖田の死因は、背骨が折れたことによるものだった。
真夜中、不穏な気配に起き上がった鉄は家から出ようとするが、戸は既に押さえられて開かない。

気を落ち着かせる為に水を飲んでいると、背後の障子に死神の影が映った。
「おっ?!何だ、何の真似だ?」
死神は「お前は裏切った」と言った。
鉄は「何だ」と取り合わずに寝に入ったが、死神は「証拠がある」と言う。

「沖田の死因は背骨折り。コイツはお前の手口だ」。
「冗談じゃねえよ」。
だが死神は「お前は虎を裏切った。この落とし前は虎の元締めがつけてくださる」と無機質な声で告げた。
「ちょっと待ってくれよ!」

鉄は跳ね起きた。
「そりゃあ、お前、なんかの間違いだよ。この証は必ず立てるから5日待ってくれよ」。
答えない死神に鉄は「いや、3日でいい!」と言った。

翌日、奉行所にいる主水を、主水の犬のコロを使い、正八が呼び出した。
鉄のところに来る途中、正八から話は聞いたと言う主水。
「だったら、すぐすっ飛んで来い!俺の命に関わる問題なんだから!」と鉄は言う。
しかし主水は「おめえ、本当にやったんじゃねえのか」と言った。

「何、おめえまで俺のこと疑ってるのか」。
「いや、信用してるぜ。なあ、1人で仕事するような、そんなきたねえ男じゃねえよ」。
「だが、背骨折りとくりゃあおめえしかねえな!」

主水の言葉に鉄は「やっぱりおめえ、俺のこと疑ってんじゃねえか!」と叫んだ。
鉄は主水につかみかかった。
「それじゃおめえ、みんなに納得いくような言い訳してみやがれ」。

「だからそれができねえから、みんなにこうして集まってもらったんじゃねえか」。
「3日のうちに証を立てねえと、俺は虎に仕置されちまうんだ」。
「とにかく、虫が良すぎるよ」と巳代松が言う。

おていも「あたしもそう思うよ」と言った。
正八も「俺もなんだかよくわかんねえけど、そう思うよ」と言った。
みんな、当てにしていた寅の回の仕置料が入ってこなかったことに、まだこだわっていた。

「そうか」。
鉄が怒り出した。
「おめえら、それが仲間に言うセリフか!」
「ようし、わかった!」

「いい、わかった」。
「俺も地獄に堕ちるのは1人じゃ寂しい!みんな、道連れになってもらおうじゃねえか」と言い出した。
「地獄堕ちは、にぎやかな方がいいや」。

すると主水は「冗談じゃねえや。割り切れねえ気持ちのまま、おめえと一緒に死ねるかい!ええ?」
「だいたい、競りに外れっぱなしってのがおかしい」。
「おう、俺は俺のやり方で、ちゃんと調べさせてもらうぞ!」と言った。

己代松も「念には念を入れ、だ」と言う。
主水と巳代松の会話に、鉄はそう言うと頭を抱える。
「そうしろ、そうしろ」。
「ったく!」

「鉄。おめえ、なんか心当たりねえのか?」と聞く主水に、鉄は思い出す。
「俺もそのこと、ずっと考えてたんだ」。
「今度の競りで、最後まで張り合って外れた野郎が、俺の他n1人いる」。
「誰だそれは」。

「玄達といって、柔術家の表看板を下げている野郎だ」。
「俺が当たってみる」。
巳代松の言葉に、鉄が目をまん丸にした。
「それに沖田の屋敷も探りを入れる必要があるな」。

そちらは、絵草子で出入りをしている正八が請け負った。
沖田の屋敷には跡取り息子の政高がいて、おふみという下働きの少女といつも仲良く遊んでいた。
政高が転ぶと、おふみが飛んでくる。

泣きそうになった政高は、すんでのところで泣くのをこらえた。
若様を誉めるおふみ。
正八が行くと、おふみがお梶に取り次ぎに行った。

「お姉ちゃんと仲がいいね。お姉ちゃん、好きなの?」
「うん、大好き!」と政高は元気よく答えた。
「母上とどっちが好き」。

正八の問いに政高は「母上は大嫌いだ」と答えた。
「母上嫌いなの。う~ん、じゃ、おじちゃんと一緒だ!」
おふみが来て、お梶は誰にも会いたくないと言っていたと告げる。
正八は帰った振りをして、屋敷に忍び込んだ。

天井裏に潜んだ正八が見たのは、用人・堀内新兵衛とお梶の密会現場であった。
しかもお梶は、子供を身ごもっていた。
その父親は新兵衛だった。

一方、賭場に忍び込んだ己代松は、80両という大きな借金を玄達が全て返済しているのを知った。
親分は玄達は命拾いしたな、と笑った。
このことから主水は、お梶が新兵衛との間の子ができて、それがわかってしまう前に政勝を殺したと予測した。

だが、おていは門前で殺された中元夫婦の恨みも相当なものだと言う。
妻が沖田に奪われたうえ、夫が殺され、妻は後を追ったのだから。
己代松は、寅の会は頼み人が死んだら、頼み料は返さなくてはいけないことに目をつけた。

玄達が寅の会を通さずに、じかに頼み人と取り引きしたとしたら?
寅の会を通さないのだから、頼み両はそのまま、玄達に入る。
頼み人にしたら、安くも済むだろう。

主水は、問題は、玄達とお梶たちがどこでどう繋がっているかだと言う。
のんびりしている正八に鉄は「俺の首が飛ぶかどうか、あと2日しかねえんだぞ!」と怒った。
鉄が外を見ると、長屋の外ではやはり死神が見張っていた。

主水が帰ると、せんが寝込んでいた。
りつも傷だらけだった。
50両が5本も当たるという富くじを買いに行き、殺到する人のなかで転んだのだった。
「何もかも、あなたの甲斐性のないせいです!」

翌日、その主水が玄達を仕置人として捕まえてきたと奉行所で騒ぎになった。
「昼行灯が?」
「仕置人なんて本当にいたのか!」

態度が大きい玄達に対して主水は怒ったが、玄達は悠然としている。
「わしを知らんのか」。
「身元保証人でもいるのか」。
すると玄達は、旗本の沖田政勝の奥方・お梶が自分のことは知っていると言った。

「よく調べてみろ」。
その通り、玄達の身元を、お梶が保証したのだ。
上に叱り飛ばされ、畳に頭をこすりつけて詫びた主水。

だが、1人になると「これで玄達とお梶の線は繋がった」とつぶやいた。
開放された玄達の後を、鉄が尾行する。
玄達は沖田の屋敷に入った。

屋根裏に侵入した鉄は、お梶と新兵衛、玄達の3人の会話を聞く。
「全くマヌケな同心だ」。
新兵衛が嘲笑う。
「本物の仕置人を捕まえておきながら…」。

「その点、お梶は抜け目がない。セリで負けた念仏の鉄というやつの手口で、殿を殺して」。
お梶の声がする。
「もし、わたくしたちが玄達殿と知り合いでなければ300両の頼み料が80両になるなどということは」。
「ふふふふ」。

「ところでご用は」と玄達が聞く。
「玄達殿、今一人片づけてほしいのですが」。
「と、おっしゃいますと、誰です」。

「政高です」。
「若様を?」
「百両出します」。
「百両」。

「しかしあの子は沖田家の嫡子、沖田家は断絶に」。
「嫡子はおります」。
「わたくしのお腹の中に」。

「なるほど、新兵衛との間に…。わかりもうした」。
「ではこれを」。
玄達は赤い薬の包みを、懐から出した。
「食あたりと言うことにいたせば」。

それを廊下でおふみが聞いていた。
おふみは部屋に戻ると、政高の顔を見る。
鉄は飛んで帰った。

「沖田のせがれが殺される?」
主水も、正八もおていも、己代松も驚愕の目で鉄を見た。
「グズグズしちゃいられねえんだ」と鉄はウロウロと歩き、焦った。
「鉄!こうなったら、いちかばちだ。玄達の抜き差しならねえ証拠を、寅に突きつけるしかねえ!」

「玄達、はめるんだ!」
「はめるったって、どうやって…」。
表には死神がいる。

「鉄!ちょっと来い!」という主水の声で、仕置人は輪になった。
声を潜める仕置人たち。
玄達に仕置きを依頼して、寅の会を通さずに仕置きするところを死神に見せるのだ。
「まずはあたしの出番だね」。

おていに、「ヘマは許さねえぞ」と主水の声がかかった。
だが、誰かが玄達に仕置きされなければならない。
殺される役は誰がやる。
「そいつは俺がやる」と己代松が言った。

町中でまず、おていが日本橋の商人から財布をスリ取った。
主水は商人を呼び止め、財布をやられたことを教える。
集金したお金が30両。

青くなる商人に、主水は取り返してやるから奉行所に届けるなと言う。
次々、おていは商人の懐を狙ってスリをやる。
その後を主水がつける。
商人たちにすられたことを知らせ、奉行所には届け出るな、自分が何とかしてやると言い含めて歩く。

鉄のあんまに、正八がやってくる。
死神が見張っているので正八は客を装って、事の首尾を鉄に伝えに来たのだ。
鉄が長屋を出ると、死神もついてくる。

玄達が通る道で、鉄はおていが玄達から財布をスルのを待った。
その通りに、おていが玄達の財布をすった。
途端、玄達は「待て!」とおていの手をつかんだ。

「けえしてくれ、胴巻きだ」。
「胴巻き?ご冗談でしょ?」
とぼけるおていを玄達は物陰に連れて行った。
「裸にすりゃわかるんだ!」とおていの着物を脱がしにかかった。

その途端、おていの懐から大量の小判が落ちる。
小判の数に、玄達は驚いた。
「この金はどうした!言え!言うんだ!」とおていを押さえつけた。

「言いますよ。言うから離してくださいよ」。
「この江戸に仕置人っていう、人殺しをしてくれるって商売があるっていうんで、その為に貯めたお金なんですよ」。
「その話、誰から聞いた」。

玄達とおていの会話は、鉄をつけてきた死神も聞いていた。
「ただ噂に聞いただけなんですけどね。どうしても殺してもらいたい男がいるんですよ」。
「お金がこれで足りなきゃ、いくらでも」。

「何だったら、その仕置人とかに俺が話をつけてやってもいいぞ」。
「あんたが?」
「ああ」。
「その代わり、礼金は百両!」

その頃、正八は沖田の屋敷で、絵草子を政高に読んでやっていた。
お梶が、政高の食事に玄達から渡された薬を注ぐ。
それを、おふみがそっと見ている。

お梶が食事だと言って、政高を連れて行った。
廊下に出た正八を、おふみが呼び止めた。
「あのお」。

「何だ、どうした?」と立ち止まった正八を見た新兵衛が、「絵草子屋!」と呼ぶ。
「用が済んだら引き取ってもらおう」。
おふみは「この絵草子、お返しします」と言って、自分が持っていた絵草子を差し出した。
「あ、そうですか。それじゃあまた、新しいのを何か一つ」と言った正八に、おふみは丁寧に頭を下げた。

その思いつめたような様子に、正八が不安を感じる。
屋根裏から、正八がお梶と政高を見ている。
「今、食べたくありません」。

食事をしようとしない政高に、お梶は「さあ、いただくのです」と強要した。
「そのようなワガママは許しませんよ」。
政高は、しかたなく手をつけようとした。

その時、おふみが飛んできた。
「若様、飲んではいけません!」
政高が飲もうとしていた椀を、おふみは跳ね飛ばした。

新兵衛が「おふみ、貴様!来いっ!」と怒る。
おふみを引っ張って行く。
正八はそれを、屋根裏で聞いている。

「おふみー!おふみー!」と叫ぶ政高の声。
新兵衛が刀を抜く。
政高の叫び。

「静かになさい!」というお梶の声。
そして、静かになる。
天井裏にいた正八が顔をゆがめ、いたたまれず背中を向ける。

正八が鉄の家にいる。
預かってきた絵草子の中には、おふみの書いた書付と小判が2両、包んではさんであった。
煙管をくわえた鉄が、書付を読む。

「わたしにもしものことがあったときは どうかわたしのうらみをはらしてください」。
「このおかねはなくなったおくさまにいただいたものです」
「鉄つぁんよう」。

正八の声は震えていた。
「俺、この子の恨み、晴らしてやんないと気が済まねんだよ!」
「安いけど頼むから、競り落として」。
鉄はタバコをふかしながらも、小判を見つめ、しっかりとうなづいた。

その夜、おていは玄達に、飲み屋で飲んだくれている己代松を見せた。
「あれがそうなんですよ」。
玄達は己代松を路地裏に連れ込む。

そして、バタバタと暴れる己代松の骨を折った。
「ぎゃっ」という声をあげ、己代松は動かなくなった。
その一部始終を、死神が見ていた。

玄達が走り去ると、鉄が路地裏に飛び込んできた。
「松!」
「松!」
動かない己代松の胸を押すと、己代松は息を吹き返す。

「あばらが折れてら」。
「おめえに昔、右やられて今度は左だ。釣り合いが取れていいや」。
己代松が痛みをこらえながら言う。
そう言って痛みにうめく己代松の頭を、鉄はそっと抱き寄せる。

寅の会。
「本日、寅の会番外として、皆様にお集まりいただきました」と死神が言う。
「この寅の会の中に、掟を破る裏切りの事実があったからです」。

仕置人たちの間に、緊張が走る。
「この裁きは虎の元締め、自らの手で仕置きされます」。
仕置人たちが硬直する。

虎が立ち上がる。
玄達の目が泳ぐ。
下を向く。

座っている仕置人たちの前に、虎が進み出る。
虎の足が、玄達の前で止まった。
玄達がハッと、顔を上げる。

虎が棍棒を、玄達に向かって振り下ろす。
玄達は「うわっ!」と言うと、勢いで部屋の奥まですべった。
そして、障子を破って止まった。
虎は勢いに押された仕置人たちの前を通り、何もなかったように元の席に座る。

「なお、今回の件、頼み人については、私の身内の調べが甘く、不行き届きがありましたので、このように処分いたしました」と虎が言う。
死神が、仕置人たちの隣り合った部屋のふすまを開ける。
中には、いつも句を読みあげる喜平が、不自然な姿で硬直していた。
仕置人たちは背筋を寒くする。

「この件に関わり、番外の依頼がありました。頼み料は2両です」と死神が言い、虎が短冊に書く。
「頼み料は、2両です」。
「沖田の妻、梶」。
「堀内新兵衛」。

「2人で2両…」。
「見送りだね」。
その中、鉄は「1両!」と声をあげる。

仕置人たちが鉄を呆れた顔で見る。
「他にありませんね。なければ1両にて、念仏の鉄さんに落札いたします」。
鉄が頭を下げる。
うっすらと笑う。

地下室で、「あらかじめね、小銭に両替しておいた」と正八が言い、小銭が分けられる。
「早くしろ早く」。
「できてるよ」。
「3朱と20文」。

次々と、小銭を受け取って行く仕置人。
「この小銭は、小判よりずっと、値打ちがあるぜ」。
主水の言葉が、重い。

にっこりするおてい。
胸に包帯で板添木を結び付け、小銭を取る己代松。
鉄は主水に死神が目を光らせているので、今度の殺しは俺がやると言う。

己代松にもその体じゃ無理だと言った。
だが己代松は「冗談じゃねえよ、もう大丈夫だ、ほら」と言って、添え木を叩いてみせる。
鉄がわずかに笑みを浮かべて、顔をそらす。

夜の町、仕置きに向かう鉄はウキウキしている。
隣には、胸に手をやっている己代松がいる。
沖田家では、お梶と新兵衛が政高を早く殺す相談をしていた。

新兵衛がお梶を抱き寄せようとする。
お梶は、はばかりに立つ。
片袖を脱いだ鉄が、厠の外で指を鳴らす。

鉄は、厠の窓をそっと開けた。
中にいるお梶を、見下ろす。
身支度を整えたお梶が、立ち上がる。

鉄がお梶の背後の、戸の格子から手を伸ばす。
お梶の首根っこを、まるで猫の子をつかむように背後からつかむ。
首根っこをつかまれたお梶が、ヒュッと息をのむ。
鉄に背後から首筋を引っ張られ、お梶は首を回して背後を確認する。

お梶を見下ろし、睨む鉄と目が合う。
鉄に睨まれたお梶の目が、恐怖のあまり、見開く。
息が荒いのに、声も出ない。

お梶の前で鉄は人差し指と中指を伸ばし、手を鳴らして見せる。
ぐきり、ぐきり。
震え上がったお梶が呼吸を止め、目を細めた。
その瞬間、鉄の手が戸を突き破り、お梶のあばらを折った。

鉄が指を抜いた瞬間、お梶は目と口を開いた。
お梶は声もなく、扉の向こうで崩れ落ちる。
鉄はそれを見下ろして、確認すると格子を閉める。

寝床でお梶を待っていた新兵衛に、己代松が近寄る。
新兵衛が己代松に気づき、「誰だ!」と叫んだ。
火花が散る。

だが、新兵衛は肩を撃たれただけだった。
絶対に的を外さないはずの己代松。
それが、的を外したのだ。

「はっ!」
己代松が、自分の失敗に気付いた。
肩を押さえながら新兵衛は、刀を取る。
怒りの新兵衛は、己代松に向かって刀を振り下ろす。

最初の一撃は、避けた。
だが痛みに耐える己代松は、追い詰められる。
燃え尽きた鉄砲を手にした己代松が、とっさにそれで自分の頭をかばおうとする。

斬られる!
鋭い金属音が響く。
新兵衛の刀は、己代松の頭に届かなかった。

主水が障子の向こうで、新兵衛の刃を受け止めていた。
そのまま主水は刀を横に払う。
新兵衛は蚊帳の上に、倒れた。

「八丁堀…」。
胸を押さえたまましゃべる己代松を支え、主水は外に出る。
表に出ようとした鉄は、死神がいるに気付く。

「八丁堀、死神がいる」。
そう言って、主水を止めた。
「すまなかったなあ、俺の為に」。
鉄はニヤつくのを、止められない。

そんな鉄を見た主水は、「勘違いするなよ。別におめえの為だけにやったわけじゃねえや」と言った。
己代松も「そうだよう」と言う。
鉄は2人を下がらせると死神に愛想良く、戸を開けて外に出て行く。

翌日、主水はおていがすった金を、あちこちに返して回っていた。
「間違いねえな?」
「30両、確かにございます」。

「礼なんか言われる筋合いはねえけどな」。
お店の主人は、金がちゃんと戻って安心していた。
「間違いはねえな」。

「はい、確かに30両…、あ」。
主人は笑って頭を下げると1両包み「些少ではございますが」と言って主水に渡す。
「みっともねえから何度も同じこと言わすなよ」。

「これは、ご無礼致しました」。
主人はもう一度、笑って頭を下げた。
羽織の袖を翻し、主水はちょっと渋い顔をした。



この3話、大好きな話です。
お梶を演じるのは、美しい花には毒がある。
本阿弥周子さん。
良い役でも、悪役でも、見ていて目が楽しい素敵な女優さん。

おふみ役はこの主題歌「あかね雲」の歌手、当時13歳の川田ともこさん。
玄達は大好きな悪役、今井健二さん。
悪役も良いですね。
13話の江幡高志さんとか。

正八が「手負いのオオカミ」という凶暴さ。
恩人の医師もアッサリ、手にかけようと言う凶悪さ。
この時、寅の会の仕置は頼みんにが死んで取り下げのはず。
そこを鉄たちが助けてしまう。

あれ、医師は気づいていたと思うんです。
誰かが、助けてくれたと。
あんなに一致団結して自分たちのところに居座っていた盗賊たちが、逃亡を前に、仲間割れなんかするわけがない。
首領は鉗子で留められてるわけですし。

この回の殺しは、己代松もうまい。
鉄は見事。
これぞ暗殺者、仕置人。

主水の殺しは、一瞬で決める。
その凄まじさ。
正八が改めて主水の顔を見るほど。
って、後で13話の時に書けばいいのに、自分!

主水が、寅の会を軽視する。
すると鉄が、甘く見るなとくぎを刺す。
まさに玄達が寅の会を通さずに仕置して、手数料を払わなくて済む頼み人お梶が登場する。

最初の沖田の殺しを落札できず戻って来た鉄に、主水が言う。
「5両でも10両でもいいじゃねえか、やりがいのある仕事なら!」
そして旗本殺しについて、仕置人たちが旗本相手だったら安くは請け負えないと言っている。
全部、これ、最後につながるんですね。

仕置人たちの描写としては、すねる鉄がおかしい。
「だが、背骨折りとくりゃあおめえしかねえな!」
「やっぱりおめえ、俺のこと疑ってんじゃねえか!」

「とにかく、虫が良すぎるよ」。
「あたしもそう思うよ」。
「俺もなんだかよくわかんねえけど、そう思うよ」。

「ようし、わかった!」
「俺も地獄に堕ちるのは1人じゃ寂しい!みんな、道連れになってもらおうじゃねえか」。
「地獄堕ちは、にぎやかな方がいいや」。
この辺りの粋のピッタリ合ったところが、すごくおかしい。

前にも書きましたが、お梶たちの話をしている時、鉄の家でみんな、餅焼いてる。
それで主水が「奥方の腹がぷうーっと膨れてきたってんで」と言うと、網の上の餅が膨れてくる。
「おう、膨れてきた膨れてきた。それでやべえからと、旦那を殺したんだ」。
怖い話を平然と、おかしくしているところがさすが、裏稼業の人たち…。

死神がいるから客を装って来た正八を揉み治療しながら鉄ちゃん、「銭、ちゃんと払えよ」と言う。
「冗談じゃねえ、これ仕事のうちじゃないか」。
「お客さん、だいぶ凝ってますね!」

「俺、払えないよ」。
「払わなきゃ払わなくていいんだよ」。
頭、グキッといきそう。

「あー!払います!」。
「お客さん、いつもおおげさなんだから」。
もう、鉄ちゃんいるだけでこんなにおかしくなる。

正八が政高に絵草子読んでるんですが、それが「食うに困ったかぐや姫は、しかたなく吉原に身売りをすることになり」。
「おもしろいか?」
「うん!もっと続けて!」
「続けていいのかな?」

その後、お梶が「どの絵草子にするか、決まりましたか?」
「はい!かぐや姫にします!」。
「ありがとうございます」。
えー!

子供とのやり取りの中、さりげなく正八が「母上とどっちが好き」と言う。
大して意味があったわけじゃない。
でも政高は「母上は嫌いだ」と言う。
正八が「おじちゃんとおんなじだ!」と言う。

明るく見えても、仕置人。
普通の生い立ちで、普通の生活をしている青年が関わる世界じゃない。
この正八に、どんなことがあったのだろうと一瞬、思わせる。

さてかぐや姫の絵草子の後、話は悲壮な方向へ行く。
このようにいろんなことが散りばめられているから、仕置人は目が離せない。
おふみが殺されるのをわかっても、なすすべもない正八。

つたない文字で書かれた書付が、涙を誘う。
「わたしにもしものことがあったときは どうかわたしのうらみをはらしてください」。
「このおかねはなくなったおくさまにいただいたものです」。

正八の声が、は震えている。
「俺、この子の恨み、晴らしてやんないと気が済まねんだよ!」
「安いけど頼むから、競り落として」。

幼いおふみが必死に今まで奉公し、もらった小遣いを貯めた2両。
その頼み料に、名乗る仕置人はいない。
悪いと言ってるんじゃなくて、ものすごく危険なことをするんだから、それに見合う金額が欲しいと言うのはしかたがない。

でもこの中で「いちりょう!」とはっきり手を挙げる鉄は、たまらなくカッコ良い。
そして「この小銭は小判より値打ちがあるぜ」と言う主水も、たまらなくカッコ良い。
もちろん、己代松も見せ場あり。

死ぬ危険を冒してまで、鉄の為に玄達にやられる。
虫が良いと言っていた己代松の協力に、鉄でさえ初めは目を丸くしている。
「右やられて今度は左でちょうどいいや!」って言って痛みに耐える己代松も、たまらなくカッコ良い。

玄達が仕置きされるシーンで、虎を演じる藤村さんの現役時代のフィルムが入る。
虎の元締めの仕置きが、太い棍棒で打つんですが、それは迫力があって当たり前。
藤村さんをキャスティングするって、すごい考えたなあ。

死神がいるから主水はやらなくて良いと言う鉄もまた、主水を思っている。
己代松にやらなくて良いと言うのも、己代松を思っているから。
それを拒絶する己代松を見た鉄の、しみじみとした笑み。
この時から鉄は、主水と己代松のためには死ぬつもりでいたのだと思います。

だけど仕置の後には、ニヤニヤしちゃう。
すると主水「おめえの為だけにやったんじゃねえや」。
己代松「そうだよ」。
みんな素直じゃないねえ。

仕置きのシーンの鉄はもう、ホラー。
お梶じゃなくても、夜道で会ったら腰抜かしそう。
これは、凶悪な面相です。
肩袖脱いで見えている、赤の襦袢が不吉なほど鮮やか。

光と影の使い方、本当にうまい。
まるで子猫をつかむような、お梶の捕まえ方が鉄の圧倒的な力を感じさせます。
死神に言われていた「寅の会を騙したら…」が、現実にやってきたことに恐怖するお梶。

3話っておもしろいけど、考えたら子供は殺されるわ。
悪女とはいえ、お腹に子供がいるお梶は仕置されるわ。
今じゃ絶対、作らない話なんですね。

百発百中の己代松が、怪我のために仕損じる。
彼の技は、しくじると後がない。
やられる。

ここでカキーンという音。
姿を現す主水。
こんなにもカッコ良い主水。

小銭が小判より価値があると言った主水。
なのに小銭をせびるラストの主水。
この対比も、すごく良いんですね。
大好きなエピソードです。