しばらく見ていないと、すご~く見たくなるもの、それは「必殺」。
見てないなーと思うと、見たくなって見たくなってしかたがなくなる。
先週、「破獄」がテレビ東京で放送されていましたが、なかなか良かったです。

山田孝之さんの目に、すごみがありました。
良い俳優さんですよね。
緒形拳さんの「破獄」も、一度見たら忘れられないドラマでした。
同じく、緒形拳さんが牢に捕らわれる話、それが「必殺必中仕事屋稼業」にもあります。

第5話、「忍んで勝負」。

小伝馬町の牢内。
博打の借金が返せない男が1人、殺された。
「おめえたちも博打の借金が返せなきゃ、こうなるんだ」。

牢名主のもぐらの留三の言葉に、囚人たちが震え上がった。
役人がやってくるが、「いつものことか」と言って去っていく。
この牢名主の留三には、できないことはないと留三は豪語する。

留三の殺しの依頼が、仕事屋に来た。
月の10日に牢内で行われた博打の借金を、牢の外にいる囚人の身内に届けさせる。
払えなければ、殺される。

留三は牢役人、牢番とグルになっている。
捌きがあれば磔、獄門の悪人なので留三は役人たちに金をばら撒いて裁きを受けないようにしている。
そのため、留三は絶対に外には出ないのだ。
これをどうやって仕留めるか。

仕事の依頼を受けて戻ってくる半兵衛に、源五郎が声をかける。
家まで来た源五郎は、お春と話す。
源五郎はお春に、どうも半兵衛は博打をやっているようだと言う。

「あたしの調べたところじゃどうも、賭場に出入りしているようね」。
「親分さん、ちょっと牢にでもぶち込んでくださいよ」。
お春の言葉に、半兵衛の手が止まる。
留三が牢から出ないのなら、自分達が牢に行けば仕留められるのではないか。

賭場に行く半兵衛と政吉。
その後を、源五郎がついていく。
半兵衛と政吉はそれに気づいていながら、大きな声で博打の話をする。

賭場で半兵衛と政吉が博打をしている時だった。
「動くな!」という源五郎の声がした。
手入れだ。

「うわあああ」という叫び声がして、逃げようとする者と捕り方で鳥羽は大混乱に陥った。
捕り方相手に暴れる半兵衛の手をとった源五郎が「半ちゃん、逃がしてあげるから、おいでこっちへ」と言う。
その時、政吉が源五郎の額を金物でコツン、と打った。

額を押さえてうずくまる源五郎。
半兵衛と政吉は大の字に寝転び、その上に捕り方たちが重なる。
2人は捕まった。

奉行所でも反抗的な2人は、留三の牢に入れられた。
新入りとして2人は散々殴られたが、政吉は留三に賄賂を贈ることで、何とか免れた。
しかし半兵衛は殴られ続ける。
その横で政吉は、水を飲ませてもらう。

押さえつけられた半兵衛は、懐に潜ませていたかみそりを見つけられてしまった。
かみそりを持ち込んだ理由を聞かれた半兵衛は、ひげの手入れがしたいと言う。
すると留三は、自分の手入れをしろと言う。
半兵衛は留三に、かみそりを押し付ける。

だがかみそりを持つ半兵衛の手に数人の子分が、張り付くように見る。
とてもではないが、仕事はできない。
あげく、半兵衛は牢内の囚人全部のひげをそるはめになる。

さらに翌日になると、牢内で博打が始まる。
牢番も何も言わない。
この博打は、半兵衛や政吉を絶対に勝つことができないように仕組まれていた。

明らかなイカサマだけではない。
出た目を違う目と言わされたりして、半兵衛と政吉は10両の借金を作らされた。
これを同心の小坂とその手下の平八が、家族に取り立てに行くのだ。
返せない囚人は留三に殺されるが、その死は小坂と平八が自然死として扱う。

その頃、お春は源五郎に、半兵衛が捕まったことを知らされていた。
「ええ?!牢に?だから言わないこっちゃないのよ」。
「あたしもさ、半ちゃん助けようと思ってさ、いろいろやってみたんだけどね、すごいのよ。あの2人とも暴れちゃって。見てよこのコブ!」
「あらっ、まあ」。

源五郎の額のコブを見たお春は、驚く。
「それで、うちの人はどんな具合なの」。
「いじめられてるみたいね」。

源五郎は、半兵衛の牢内での様子を知っていた。
それを聞いてお春は、いてもたってもいられない。
「何とか牢から出す方法は、ないのかしら」。

「ないことは、ないんだけど」。
「どうすればいいの」。
「お金よ」。
「お金…」。

お金と聞いて、お春は「お金ね、ちょと待ってて」と言って、奥に入った。
たんすから3両出すと、少し考えて2両を持って出る。
「あのね、今、うちにこれしかないの」と言って、源五郎に2両を渡す。
「だからあの、親分の力で何とか出してやってください」。

源五郎はお春から渡された小判を見て、「2両…」と少し考えた。
「2両、よし、何とかあたし、半ちゃんのためにやってみるわ」。
「お願いします」。
「じゃね」。

源五郎の働きで、半兵衛と政吉は牢から出された。
「半ちゃん」と源五郎が寄ってくる。
「良かったねえ」。
そう言って、隣にいる政吉を突き飛ばす。

「もうだめよ、暴れたりしちゃ」。
「そっと、逃がしてあげようと思ったんだからさ」。
「今度だって半ちゃんのために、いろんなところに手を回して苦労したのよ」。

政吉が寄ってくる。
そして源五郎のコブを指して「親分、これ、かなり腫れましたな」と言う。
「…行け」。

源五郎の顔が強張る。
「にやけやがって。行けえ!」
そう言って政吉を突き飛ばした。

「あいたあっ!」
そして「半ちゃん。行こう?」と半兵衛の手をとった。
「行こう」。

坊主そばで、半兵衛はお春に怒られていた。
お春は情けないと嘆いた。
政吉は小紫のいる女郎屋で、手当てを受けた。

そして2人は再び、嶋屋へ集まった。
おせいは髪結いの最中だった。
髪結いの娘との話が聞こえてくる。

この髪結いの娘の父親は、牢内に髪結いに行くらしい。
囚人だって年に一度、床屋の手入れをしてもらえる。
床屋は回り持ちで牢内に行くのだ。

牢名主なんかになると、髪を結っている時なんかも外に出ないと娘は言う。
みんな嫌だから、牢に行くのはくじ引きで決めるらしい。
その当番は月の10日だが、誰も行きたがらない。

半兵衛と政吉が、すっといなくなる。
2人がいなくなったのに気づいたおせいの目が笑う。
半兵衛と政吉は、髪結いのところにいた。

政吉が髪結いの男に、小判を渡す。
半兵衛は髪結いの道具をそろえる。
風呂から帰ってきたお春の髪を、半兵衛が結ってやる。
髪結いの練習だ。

一方、政吉はさいころを作る。
丁寧に紙にさいころの作りを書き、型から作る。
さいころを型にこめるところから始める。

たくさんのさいころが転がっている。
政吉はそのさいころをどかし、作ったさいころを投げる。
半!

もう一度投げる。
半!
また投げる。

半!
「できた…」。
政吉が笑った。

風呂から帰ってきたお春の髪を、半兵衛は結った。
留三を仕留めるための髪結いの練習なのだが、お春は「実は他にお目当てがあるんじゃないの」と疑った。
どきりとした半兵衛にお春は「嫌よ、若い子に変な気起こしちゃ」と言った。
お春の焼きもちと気づいた半兵衛は「俺にはお前が似合いだよ」と笑った。

10日は、あさってに迫った。
小坂と平八は、留三の博打で借金を作らされた囚人の家に金の取立てに行っている。
ある囚人の父親は、頭を擦り付けるようにして、待ってくれと言う。
だが小坂から息子が病と聞いて、親はおろおろした。

小坂と平八は父親に、明日の昼まで何とかしろと言って出て行く。
この前の金では足らないと言われている女郎がいる。
女郎は、みんなから聞いたと言って怒った。

「旦那方は牢に入った囚人につけこみ、金を搾り取っている」と。
牢に入ってしまえば生かすも殺すも、自分たち次第だと言って、脅している。
しかし小坂と平八は、それがどうしたと開き直る。
金を待ってるぜと言われた女郎は泣くしかない。

その様子をずっと、半兵衛は見ていた。
小坂と平八は、人気のない路地に入った。
後ろから半兵衛が来る。
前からは、政吉。

「だんな」と、半兵衛は声をかけた。
「その節には」。
「借りてた銭を持ってまいりました」。

そう言うと半兵衛は突然、小坂の首筋を切り裂く。
政吉は小坂の方を振り向いた平八を刺した。
倒れた2人を半兵衛と政吉は引いてきた大八車に乗せ、上にむしろをかけた。
小坂と平八を仕留め、後は留三だけだ。

10日。
牢屋敷に髪結いが入る日が来た。
役人が一人一人、髪結いの名前を呼ぶ。
留三の担当が来て、「手前でございます」と半兵衛が名乗る。

「赤坂新町の勘兵衛」。
それに…、「牛込浜町の政太郎でございます」と政吉も名乗る。
「よろしく」。

役人が「牢名主の他はみんな出ろ」と命じると、ぞろぞろと囚人が牢から出て来る。
残った留三に向かい、半兵衛と政吉は「どうも牢名主さん、その節はどうも」とお辞儀をした。
2人に気づいた留三は「なあんだ、おめえたちか」と言った。

「約束の金10両、確かに持ってまいりました」。
留三は金を受け取ると「殊勝な心がけだな」と言う。
「牢名主さん、名前を消してください」。

半兵衛の申し出に留三は、名簿の半兵衛の名前を消した。
「ああ、確かに消えましたよ」と半兵衛が確認する。
さて、「お水はそこですよ。「失礼いたします」と留三の髪結いに入る。

「その節はお世話になりまして」。
「シャバはどうだ」。
「不景気でございますね」。

「襟足から当たらせてもらいます」。
半兵衛は留三の首筋にかみそりを立てるが、牢番や辺りの様子を見てひっこめた。
政吉が半兵衛を見る。
牢番が、あくびをする。

半兵衛が政吉に、目配せした。
政吉の懐から、さいころが転がり出る。
「あらっ、いけねえ!とんだものをお見せしちゃって」と政吉は笑った。

それを留三が見逃すはずがなかった。
「おいおめえ、あんなに負けてまだやってんのか」。
政吉はそれが、牢を出てからずっとつきっぱなしだと笑う。

「おめえ、金もってんのか」。
「ええ、ここに10両ばかりあるんですけどね」。
留三は目を輝かせた。

博打は、何の楽しみもない牢内での楽しみ。
「見て見ぬ振りしてくださるぜ」との声に牢番はすっと後ろを向いた。
博打が始まる。

政吉は「こないだみたいなのは無しですよ」と笑う。
「勝負は三番勝負。いいな」。
「いいでしょう」。

さいころ勝負が始まった。
「半!」
政吉が言う。

掛け金は、有り金10両全部。
「よし」。
10両で勝負だ。

「勝負!」
さいころの目は半だった。
「あはははあ、名主さん、だから言ったでしょう。このところ、ずっとついてるって」。
政吉が笑う。

「今度は俺だ」。
今度は、留三から巻き上げた20両で勝負だ。
留三がさいころを投げる。

「勝負!」
政吉が言う。
「受けた」。

「勝負!」
さいころの目はやはり、半だった。
「あはは。ついてるなあ。しかし名主さん、取り巻き連中がいないと、全然だめですなあ」。
政吉が楽しそうに言う。

「このへんでやめますか」。
「いや」。
「じゃあ今度は、最後の一番ですよ」。

「まあ、このサイはなあ」。
留三はそう言いながら、さいころをころがす。
「いかさまだなんて、おっしゃるんですか」。

留三は合点がいかないようだったが、さいころのイカサマは見破れないようだった。
「そうじゃねえようだがなあ…」。
さいころを転がしながら、「おめえのサイだからなあ」と言う。

「ああっ、じゃあ親分が好きなもので」と政吉が申し出る。
「これだ」。
「あ、花ですか」。

留三が出したのは、花札だった。
「いいですね」。
政吉と留三がやりとりしている後ろで、半兵衛は長い柄の櫛の先を研いでいる。
櫛の先が、鋭く鋭く細くなっていく。

札が慣れた手つきで切られ、並べられる。l
政吉が手元の札を見る。
札を差し出す。

留三がそれを取る。
慣れた手つきで、札を切る。
札を置く。
だが、留三の手の中には札が一枚、残っている。

「ああ、名主さん今度はいくらかけるんですか」。
積んである札を取ろうとした政吉が、手を止めて聞く。
「全部だよ」。
「ああ、じゃ、出してくださいよ」。

政吉はそう言うが、留三の手元にはもう、金はない。
「なんだねえのか、それじゃ勝負にならねえよ」。
「証文を書く」。
「またまたあ、こんどはその手にはひっかからねえよ」。

政吉の言葉に留三がカチンと来た。
「よし!俺の命張ってやるよ」。
留三の声には、凄みがあった。

「あはははあ、さすがは名主さん。震えちゃうなあ」。
政吉が笑った。
だがその笑いが、すっと消えた。
「勝負…」。

「ようし!」
政吉がひっくり返した札は、鹿ともみじの絵が描いてあった。
「しっぴん」。

そう言って留三が自分の札を取ろうとしたときだった。
留三の手の中には、札がすでにあった。
それは政吉の札に対して、いのししが描いてある札だった。

「待ったあ!」
政吉が鋭く声を出し、留三の手を押さえる。
「何しやがんでえ」。

「イカサマはいけねえよ、親分」。
「何?」
「手の中に一枚、札が入えってるだろう!そんなイカサマに引っかかってたまるかぁ!」
「おい…、正気でものを言ってんだろうな?」

留三の声が低くなる。
「もし、この手の中に札がなかったらどうする?」
留三が政吉をにらむ。

「どうするよ!」
「おう、首でも命でもくれてやらあ!四の五の言わずに開けてみろい!」
政吉も負けなかった。

留三がニヤリと笑った。
「ようし、どけろよ」。
「この、薄汚ねえ手を、どけねえかっ!」

政吉が抑えていた手をどける。
留三が手のひらを上に向ける。
手の中には、何もなかった。

ガラン!と音がして、札もさいころも吹っ飛ぶ。
留三が政吉の首根っこを押さえつけた。
「博打に言いかがりをつけたらどうなるか、そいつはてめえも知ってるんだろうな」。

「知ってるよ」。
背後から半兵衛の声がした。
「こうなるんだ」。
半兵衛が言うと同時に、研いでいた櫛の先端が留三の脳天に刺さる。

「牢名主さん?」
半兵衛の声が響く。
「牢名主さん!」

留三はひっくり返ったまま、白目をむいて動かない。
「あっ、これは卒中だ!」
「卒中だ。卒中でございますよ!」

半兵衛の声があわてる。
「お役人さまあ、大変でございますよ!ああ、ああ」。
半兵衛が倒れている留三の手を、懸命にさする。

その夜。
政吉は女郎屋で、昼間、留三が見せた手を再現しようとして花札を一枚、取っていた。
「ええい!」
だが、手の中に札は残らない。

「だめだな」。
「ううん、主さん」。
政吉がちっとも、自分のほうを見ないので、部屋の主の小紫が苛立つ。

「あいつにできて、俺にできねえはずはねえんだけどな」。
「うん!」とすねた小紫が、花札を自分の背中の方に隠す。
「あたしと言う女がありながら…、他の女と…、見合いするなんて」。
そして整えられた政吉の髪を見て、「ああ、頭なんて刈っちゃって」とすねた。

どうも、政吉は見合いをするために髪を整えたことになっているらしかった。
「いや、見合いだって俺、好きでやったわけじゃねえんだよ。ちょっと、返してくれよ」。
政吉は花札を取り返そうとした。

「じゃ、今でもあたしのこと、好き?」
小紫の問いに「とにかく、そういう難しい話は後にしてさあ」と政吉が言うと、小紫はかなしそうに視線を落とした。
しょんぼりした女郎にあわてた政吉が「好きだよ、好き!」と言う。
小紫がニッコリ笑う。

坊主そば。
半兵衛が明日の準備をしている。
「うどんやそばの出し汁は、昆布が最高だなあ」。

「ねえ」と、片づけをしているお春が声をかけた。
「ええ?」
「なんか…、足りないと思わない?」

「鰹節もう少し足すか?」
「ここにさあ、子供がいたら、言うことないわね」。
「子供?!」

「ねえ、子供ほしいと思わない?」
「いや、それは…。ほしくねえことはねえけど。…子種がねえよ、俺には」。
「そんなことないわよ!いままで博打に精出してたところを、こっちにまわせばいいじゃない!」

「…がんばってみるよ」。
お春は、今日の売上金をざるから取る。
うれしそうだった。

お春が座敷に、布団を敷き始める。
枕を二つ、並べる。
「ねえ、もう休まない?」
お春の声は弾んでいた。

「いや、もうちょっと…、これやっちゃうよ」。
半兵衛の声があわてる。
お春が帯を解いている。
半兵衛はそれを、そっと覗き見る。



今回、笑えるシーンが一杯。
源五郎のシーンもおかしい。
政吉と小紫もおかしい。

まず、坊主そばで。
お春が、「ちょっとちょっとあんた、これ見てよ」と言う。
「どじょう」。
これをそばに入れてみたらどうか、と、お春が言う。

「食べようよ、食べようよ」と、源五郎が言う。
「あ、ちょうどいいわ。親分さんに試食してもらおうよ」。
お春が言うと半兵衛が「いや、それはやめたほうが良いよ。親分さん忙しい人だからさ」と止める。
すると源五郎が「半ちゃん」と、体をくねらせる。

「はい」。
「あんたあたしのこと、早く帰す気なの?」
源五郎が半兵衛をつねる。
「痛い、痛いなあ。そんな気、ありませんよ」。

その後、半兵衛が「ああ、でも、これ、俺、殺すのは嫌だよ」。
「なあんで、簡単よ、きゅってひねれば」とお春。
「やだよ!」
「なあんでよ」。

「生き物殺すの、嫌いなんだ」。
ここで半兵衛の裏の仕事を知っている視聴者は、笑ってしまう。
いやいや、何となくわかるけど。

するとお春「なあに、情けないわね」。
「お前やりゃあいいじゃん」。
「あたしはいいわよ」。

お春もやっぱり、嫌。
「じゃ、どうすんだよ」。
「じゃ、もったいないけど、どぶにでも捨てるか」。
そう言った時、源五郎がどじょうの入っているざるを奪う。

目つきが、爛々としている。
ざるの中を凝視して、「…あたしにやらせてよ!」
どじょうを手に取り、「あたし、こういうの殺すの、とっても好きなんだから…」。
ひええええ。

場面が変わって、政吉がいる女郎屋の部屋。
「殺す?」
小紫という、ちょっと良い着物を着て髪を結っている女郎が首をかしげる。
「ああ、もぐらをな」。

「もぐらって穴の中にいるあれでありんすか」。
「そのもぐらを穴の中からほじくり出して、食っちまおうってんだ」。
「あんなもの、食べられるんでありんすか」。
すると、政吉、片目をつぶり、「ぜひとも、食いてえ!」

場面が変わり、再び坊主そば。
前掛けをした源五郎が、そばをすすり「ああ、おいしいわぁ」と言う。
どんぶりの中を見て、「何か共食いみたいね」。

お春が寒そうに肩をすぼめる。
ゾッとしている。
半兵衛も無言で、下を向いている。
嫌なものを見たな。

「おいしいわあ、半ちゃん食べない?」
源五郎だけが楽しそう。
半兵衛はうっすら笑って、首を振る。

再び、女郎屋の政吉。
仕事料の小判を、小紫に渡している。
「主さん、こんなにいただいてもよろしいんでありんすか」。

「ああ、いいよ」と笑う政吉。
「うれしい」と、しなだれかかる小紫。
「これで主さんと、所帯を持つ資金にするでありんす」。

それを聞いて政吉、仰天。
「所帯?!よせよ!」
「あのな、それからその『ありんす』って、やめてくれないか。しらけてしょうがないんだ」。

すると小紫、「でもあちきは、ありんすって言葉しか、知らないんでありんす」。
「ほんとかよ~。お前、ところで生まれ故郷はどこだっけ」。
小紫が視線を落とす。

そういうの、ここではタブーでしょう?
「吉原でありんす」。
「いや、そうじゃねえんだよ、生まれたところなんだよ」。

「…」。
答えない小紫。
「うん、あのな、お前にだってさ、故郷ってあんだろう?」
「ここ」。

言い張る小紫。
すると政吉、きゅっと小紫の手をつねる。
小紫、びっくりして飛び上がり、鉄瓶をひっくり返してしまう。

とっさに出た言葉は「あいたたたた、何てことすんだっぺ!」
それを聞いた政吉、ニヤリ。
「ああ、火傷しちまう。顔だって着物だってこんな」。

田舎言葉丸出しで嘆く小紫の手を取った政吉「ああぁ~、なつかしいな」。
こちらもなまっている。
「俺、あの、庄内の、ずうーっと先の方なんだ!」

小紫、うれしそうに「おめ、庄内けえ?あっだし、宇都宮だああ」。
「あら、あの宇都宮か!」
2人は意気投合。

政吉「おまええ、ありんす言葉より、ずっといいぜ!」
そして小紫をこづき、「それで行け!」
思わず、口を押さえる小紫。
おかしい。

牢から帰ってきた政吉が、再び小紫と。
小紫が政吉の背中の傷に、塗り薬を塗っている。
「痛いっ!お前、乱暴だよ」。
政吉が悲鳴を上げる。

「ああ、動いたらだめだあ!」
なまりのある声で、小紫が言う。
「お前さあ、もうちょっとこう、やわらか~くできないのかよ。お、そうだよ、こっちの方、得意の『ありんす』ってやってくれよ~、なあ?」
すると小紫は「こうでありんすか」と澄ます。

「うん、まあ…、そうだな」。
政吉は満足そう。
小紫「ケンカなんかするから、いけないんでありんす」。
この2人のやり取りは、最後までおかしい。

ギャグシーンがおもしろいから、逆に仕事のシーンの緊張感がすごい。
今回はもう、留三の多々良純さん。
この名演技に尽きる!

多彩な表情とコミカルな口調、動き。
悪党なのに、すごくおかしい。
牢内で、「はいぃーっ」って前に手を伸ばして、すーはー。

ヨガです。
牢内でみんなで、ヨガやってるんです。
政吉が留三の体をもんで、柔らかいと言うと、ボソッと「ヨガやってるよ、ヨガ」って言ってる!

やってることは極悪なのに、多々良さんの留三にはたびたび、笑っちゃう。
しかし、凄むところはすごい。
眼光も鋭く、口調もまるで切りつけるよう。
この緩急のつけ方、もう、見事です。

最後、のびてる多々良さんの顔がまた、笑っちゃう。
多々良さんは「仕留人」でも殺される時の顔がおかしかった。
サービス満点、楽しませてくれる悪役さんだなあ。
若い芸者に入れあげて息子を嘆かせるご隠居なんか演じても、この方はすごくおもしろかった。

おせいの言葉から半兵衛と政吉が、髪結いとなって牢内に入り込む経緯はセリフがありません。
音楽と、半兵衛と髪結いに金を握らせる政吉が映る。
これだけで何が行われているか、わからせてしまう。

政吉との最後の博打の場面は、下から撮影している。
ガラスを張って、その下から撮影している。
だから、さいころも花札もよく見えるんです。
すごい。

ここで緊張感のある音楽が、流れる。
そしてついに有り金むしりとられた留三が、「俺の命張ってやらあ」と言う。
それまで笑っていた政吉から、すうっと笑いが消える。
半兵衛にも緊張感が走る。

「震えちゃうなあ」から「…勝負!」の流れが実にうまい。
この、命を賭けるという言葉を待っていた。
だから卒中で倒れるのも、しかたがないと思わせる。
多々良さんと林さんの、緊張溢れるやり取り。

留三のイカサマ手口も、こちらからは良く見える。
それに気づいた政吉が止める。
すると、留三が凄む。

この辺りはユーモラスな演技は跡形もなく消え、留三という男の怖さがにじみ出て来ます。
政吉をにらみつける留三の目つきの、怖いこと。
この男はこうやって、人を殺してきたんだと感じる。

押さえつけられた政吉が殺される寸前。
「知ってるよ」という低い声。
「こうなるんだ」。

緒形さんの声も相当、怖い。
今まで丁寧に接していたのが、嘘のような声。
緒形さん、林さん、多々良さんの完全なる3人芝居。

ズブッという鈍い音。
脳天に刺さる櫛。
白目をむく留三。
今度は白々しく…、見ているこちらには白々しく映る半兵衛の「ああっ」というあわてぶり。

この仕事屋の博打で仕置きのシーンは、後に津川雅彦さんが登場する回で昇華します。
留三のシーンに時間をかけているせいか、小坂と平八の仕事はあっさりですが、仕事シーンもたっぷりあるんですね。
セリフのやり取り、演技のコミカルさ、リズム。

これが私の文章では伝えられないのが、つらい。
芸達者なみなさんの演技による、緩急あるシーンの数々。
映像のこだわりといい、お勧めの回です。


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2017.04.16 / Top↑
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