こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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永遠の中村主水

最強の殺し屋は、恐妻家。
このコピーを見て、中村主水を思った人は多いのではないでしょうか。
つくづく、うまいキャラクターだと思います。

「仕置人」で登場した、中村主水。
だいたいが「仕置人」のキャラクターは強烈なんです。
しかし、中村主水は強烈なキャラクターたちに囲まれてこそ、活きる。

自分より強烈なキャラクターは存在してはいけない。
そんなものがいたら、自分はかすんでしまう。
なんてことはあり得ません。
中村主水は、そんな柔なキャラクターではないのです。

まず、鉄。
この男、とにかく、何物にも縛られない。
法律や常識も、鉄にはあまり関係がない。

自分の正義や基準があり、感情に従って生きている。
一歩間違えれば野獣。
だがそこは、元僧侶という異色の経歴の男。

鉄には知性があり、正義感や倫理観もちゃんと強いものを持っているんです。
錠は字が読めなくて、鉄に読んでもらってましたから。
その基本があって、それを崩しているから鉄はすごいんですね。

鉄は僧侶と言う、人よりもずっと制約が多い世界の人間だったんです。
だからそれを破る快感も、行き過ぎてはいけないこともわかっている。
とはいえ、仕置に快楽を感じる危ないところはどうしても、エスカレートしていきますが。

ただ、彼は最後に「俺は外道にだけはなりたくねえよ」という、ただそれだけの理由で死ぬことになる。
そこまで、彼は彼なりの踏み外してはいけないものをきちんと持っていたわけです。
これこそが、鉄の魅力。

そしてこの男が、中村主水が裏の仕事に足を踏み入れた時の最初の仲間にいた。
いわば戦友のように付き合っていたと言うことが、主水にとってもとても大きかったと思います。
本当なら鉄は、主水と関わる時、同心と犯罪者としてしか関わりようがなかったはずです。
実際に佐渡の金山で、役人と囚人として付き合ったことが始まりのような描写がありました。

本来なら取り締まる側と、取り締まられる側でしかないはずの付き合い。
それが、一蓮托生の仲間になる。
全くの関わりのないはずの立場を超えるには、強い絆と感情が必要です。

心の底には同じものがあったと思います。
彼らは、全く違う立場でありながら、主水と同じ気持ちを持っているんです。
いや、一番、譲れない部分で同じものを持っている。
だから彼らは、主水にとってもう一人の自分であったと思うのです。

特に、鉄。
貢。
剣之介を見ていると、そんな気になります。

彼らは、主水が道を踏み外した時、ああなったであろうもう一人の自分であったような気がします。
だから主水は、彼らと仲間になれる。
彼らもまた、主水と同じ気持ちを共有しながら、主水がこちら側に来られないことを熟知している。

こいつが同心であることが、俺たちの仕事には必要だ。
鉄はそう言いましたが、それは確かです。
しかし、それだけではないものがあったと思うのです。

こいつだけは、無事に見逃されるように。
踏み外さないようにしてやろう。
便宜上都合がいい、それ以上にそんな気持ちがあったように思えます。
だから彼らは、主水を巻き添えに破滅することを望まない。

市松は最後の最後までギリギリの選択だったように思いますが、やはり、こいつも仲間だと叫んだりはしていない。
殺し屋としてのプライド以外に、何かがあったように思えるのです。
そして主水もまた、彼らが闇の中で息絶えていく時、もう一人の自分が死んでいく思いにとらわれていたはずです。

何もかもなくした喪失感。
人生の一番楽しい時間と仲間を失う。
理解者を失う。

後に待っているのは、味気ない日常。
喪失感と哀しみを心の中心に持ち、埋まらない穴を抱えて、主水はしかしつまらない日常に戻って行く。
袖の下を受け取り、ニヤニヤする日常に。

この傷が、主水と言うキャラクターをより一層、深くするんでしょうね。
哀愁を漂わせる。
「新・仕置人」のラストがなぜ、必殺ファンの心に残るのか。
それは、ここのところを実に的確に表現しているからなのでしょう。

あれだけの修羅場を生き抜き、仲間を失った主水が見せる小役人ぶり。
主水があの笑顔からは想像もできない経験をし、闇を抱えているのを私たちだけが知っているから。
だからあのラストが、心に残る。

必殺シリーズの中村主水を見続けた時、このキャラクターをどうしようもなく好きになるのはこのためではないでしょうか。
俳優としての藤田さんは、主水がこんなに愛されるなんて予想もしていなかったかもしれません。
中村主水は藤田さんや当初の製作者の思いを超えて、このシリーズを見る者に愛され続ける。
時がたてばたつほど、そう思います。



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最強の殺し屋は恐妻家

通勤電車の中で見ている広告に、「最強の殺し屋は恐妻家だった」というものを見つけました。
伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ「AX」(アックス) 。
この広告で私が思い出すのは、もちろんというか、例によって「中村主水」です。

つくづく、中村主水って言うのは良くできたキャラクターです。
緒形拳さんが梅安のことを、「裏の顔と表の顔が明確に分かれているキャラクターは演じてておもしろい」って言いました。
さらに緒形さんは、自分が「必殺」で演じた殺し屋は武士じゃないけど、中村さんは武士だからねと言ってました。
だから同じ殺し屋で、表と裏の顔があっても違うって言っていたような気がします。

中村主水って、本当に良くできているキャラクター。
あの落差、実に魅力的。
俳優だったら、演じてみたいキャラクター。
作家だったら、描いてみたいキャラクターなんでしょうねえ。


マンガ的、アニメ的?

「暗闇仕留人」では貢のかざした三味線のバチの刃に、仕留め直前の貢が映ったりしてる。
耽美というのではないけど、苦悩するインテリの仕留人・貢の仕留シーンは、ずいぶん凝っていると思いました。
「仕置屋稼業」では、もちろん、沖雅也さんが演じる市松ですね。
市松の場合、見せ方もですが、特に人物像も「必殺」的に凝ったように思います。

親子二代にわたっての、殺し屋。
本当の父親は幼い市松を残し、仲間の罠にはまって死ぬ。
市松は父親を殺した男に育てられ、人に対してまるで感情を動かさない殺し屋となる。
だが感情がないのではない。

手ぬぐいを扇に乗せて標的に渡し、女の子の目の前に竹串をかざすクールさ、冷酷さ。
殺しを目撃したと思った途端、小さい女の子にも手をかけそうな青年。
しかし女の子が見ていないとわかると、実に優しそうな笑みを浮かべ、女の子を抱き上げる。

この捉えどころのなさ。
移り変わる表情。
スタッフが沖雅也という素材を得て、それを十分に生かそうと作り上げたのが市松であることがわかります。
後にスタイリッシュとは、こういうことなのか、と思いました。

仕業人では、やいとや又右衛門の赤く焼けた針と、痙攣する悪党を見た時、アッと思いました。
この辺りに来ると定番とも思える、針を使った仕置を新しく見せる手腕。
常に常に、新しいことを考えていたんだなと思います。

真っ暗闇の中、ふーっ、ふーっと赤く、小さな火花を散らしながら灯る灯り。
勝負に勝つ必要などはない。
一瞬のスキで仕留めれば良いだけ。
腕っぷしに自信はない色男であるやいとやという男の、底知れない怖さを感じる殺しでもあります。

仕事人シリーズを見ていると、三味線屋の勇次のシーンがすごく凝っていることに気付きます。
髪の具合、うつむいた顔に映る陰影。
悪へのクールさ、冷酷さ。
それは悪への怒りでもある。

勇次の殺し方って、すごく苦しいですよね。
本人もしばし、地獄の責め苦を味わせている。
被害者には溜飲の下がるやり方なのかもしれません。

同時に、あんなに苦しめるということに嫌悪感を持つ人もいるかも。
諸刃の刃の殺し。
秀だって、かんざしを刺したまま、しばし、ピン止めされた虫状態にしていることもありますが。

勇次の着物に書かれた南無阿弥陀仏には、驚きましたけど。
あれは吊るされている悪党に対して、弔いの言葉でしょうか。
それとも、あなたはもう終わりだよ、と冷酷に告げているのでしょうか。
中条きよしさんならではの、スタッフの仕掛けですね。

思えば必殺って、マンガ的、アニメ的なものを実写化したかもしれません。
何気なく見える並びも、奥に行くほど影が濃かったり。
当時は、本当にものすごい実験的な映像だったんだろうな、と思います。


越前・金四郎・中村主水

必殺シリーズでは、もらえる給料は決まっているし、それなら最小限の仕事しかしたくない熱意のない人たちの集まりとして描かれることが多い奉行所。
融通が利かず、人情がなく、庶民からは厄介で威張り散らす人たちと思われている。
つまり、あんまり機能していない。

機能してしまうと、裏の仕事する人たちが必要なくなってしまいますから、これで良いんでしょう。
それでもシリーズ中頃までは、結構怖い組織でもありました。
中村主水が市松に「おめえは組織の怖さを知らねえ」なんて言うぐらい。
汚職もはびこっており、熱意を持った清廉潔白な同心は、汚職まみれの同僚先輩上司に殺されたりもする。

しかし、当たり前のようですが、奉行所を主人公にしたドラマでは、みんな精一杯頑張って治安と秩序を守っている。
庶民が安心して暮らせるようにしてくれている。
「大岡越前」や「遠山の金さん」などのお奉行様は、部下に理解を示し、信頼して任せ、責任は自分が負う覚悟。
理想の上司です。

部下である与力、同心はその上司に認めてもらいたくて、さらに頑張る。
その上司のためにも頑張る。
良い循環です。

そのお奉行様が命をかけて、奉行では太刀打ちできないほどの地位の者に向かっていく時がある。
「大岡越前」では、越前が仕える吉宗の宿敵・尾張宗春の元に乗り込んでいきました。
その時、南町奉行所の与力・同心・岡っ引きは全員、尾張藩の門前に集合していました。
全員、死に装束です。

お奉行様が無礼者として成敗された時は、全員、後を追う覚悟です。
越前の言うことにカッとなった宗春を、家老が制します。
吉宗の信頼厚い片腕の越前を斬ったとあれば、それはただでさえ大変なことになる。

それに加えて、南町奉行所の与力・同心が全員、尾張藩の門前で腹を切ったとあれば、どうか。
天下の徳川御三家の尾張藩であろうとも、ただではすまない。
この男、尾張藩と心中する気だ。

門前では帰ってこない奉行に、いよいよ覚悟を決める。
その時、越前が姿を現す。
結局、越前の覚悟に宗春が折れたのだった。
越前と与力・同心・岡っ引きとの絆と信頼関係に、胸が熱くなるシーンです。

「遠山の金さん」では、遠山金四郎が薩摩藩の藩邸に乗り込んでいく。
島津藩主に向かって、彼のためにどれほどの命が失われたか、抗議する。
その中には金さんに惚れ込んだため、江戸を混乱に陥れる計略を実行せず死を選んだ、優秀な蘭学者もいた。

薩摩藩に対して北町奉行が意見するなど、とんでもない。
怒る藩主に向かい、金四郎は薩摩藩と心中すると言い切る。
藩主の目から怒りの炎が消え、反省と後悔と相手に対する尊敬が満ちてくる。

門前では普段は和ませるお笑い担当の伊東四朗始め、北町奉行所の与力・同心が揃っている。
みな、奉行が帰ってこない時は討ち入り、死ぬ覚悟だ。
「遅すぎます」。
「そろそろだな」。

死ぬ覚悟を固めた時、金四郎が出てくる。
この時の金四郎役は、杉良太郎さん。
ニッと笑う笑顔が伊達男というか、粋とというか、いなせというか。

「悲壮な顔して何してんだい?」みたいな奉行に対し、無事であることに涙する部下たち。
いつもは「お奉行~!」と困り果てている伊東四朗の、涙。
わかっている。

何を言っていても、お互いがお互いのために死ぬことができる間柄だということが。
彼らの信頼関係に、やはり胸が熱くなる。
ちょっとやそっとで、こんな関係は築けない。
この勝利は奉行の覚悟と、その奉行について行った彼らの勝利だ。

奉行はもちろん、彼らも全員、昨夜には家族に明日は戻ってこられないかもしれないことを告げているはず。
待っていた与力・同心・岡っ引きも生きた心地はしなかっただろうけど、彼らの家で待つ家族も同じ思いだったはず。
彼らと、彼らの家族の心の中はどれほどつらかっただろう。
どれほど、安堵したことだろう。


…うーん、この中に中村主水がいる想像がつかない。
こんな奉行の下で、こんな奉行所だったら、中村主水は本来の正義を屈折させることなく発揮しているはず。
昼行灯であることはまず、ないと思う。
華々しく活躍はしなくても、鋭い洞察力で同僚・上司に頼りにされ、庶民からは人情のわかる同心として慕われたと思う。

裏稼業の暗い宿命など背負わなくて良かった。
普通に家庭を持ち、何の屈託もなく仕事に邁進できた。
そう考えると、中村主水があの奉行所にいるって、結構な悲劇です。

せんとりつは、どうかな。
主水を待つ、せんとりつは想像ができるんだけど。
戻ってこないかもしれない覚悟の主水って、何度か見てますから。
何度か見ているけど殊勝な妻と姑として、主水を支えているだろうか。


中村主水 鬼神のごとく阿修羅のごとく

中村主水が、どれだけすごいか。
彼は闇にまぎれて不意打ちをする殺し屋というだけでは、ないんです。
剣豪なんです。
それをわかってもらうために人に主水の殺陣を見せるとしたら、どれを選ぶだろう?

最も有名なのは、やはり「新・仕置人」最終回でしょう。
正体のわかっていない3人目の殺し屋。
誰もそれが主水であることを、知らない。
昼行灯の主水を侮っていた諸岡は、主水に斬り刻まれる。

巳代松の痛みを思い知らせるかのように、主水は諸岡に止めを刺さない。
諸岡はもがきながら主水の刃に刺し貫かれ、辰蔵の屋敷に放り込まれる。
次に主水は辰蔵の配下の者を、鉄の痛みを思い知らせるかのように次々に斬っていく。

殺気全開。
持てる能力の全てを開放。
この主水に、殺し屋たちもなすすべがない。

まさに鬼神。
阿修羅。
辰蔵は、匕首を持ったまま、逃げるしかない。
「茜雲」の音楽と共に斬りまくる主水の、しびれるようなかっこ良さ。


「暗闇仕留人」第17話、「仕上げて候」。
仕上屋の本拠地に乗り込んだ主水は刀を抜くと、構えていた1人を斬る。
襲い掛かってきた1人の刀を受け止めると、胴を斬る。
斬りかかって来た1人を斬り、もう1人も斬る。

最後の1人も刺す。
5人全てが斬られ、残るは元締1人。
まったくの形勢逆転。
余裕で笑っていた元締めの顔色が、蒼白になる。

まさか。
まさか、こんな化け物だったなんて。
わかっていたら、用心棒たちに襲わせるなんて、そんなことはしなかった。


「必殺商売人」第8話、「夢売ります 手折れ花」。
おせいを見て、仇敵を前に殺された北岡菊と思った女が悲鳴を上げる。
座敷におせいが走りこむ。
用心棒たちが走ってくる。

その先に現れたのは、主水。
八丁堀だって構わない用心棒たちが、刀を振り上げる。
燃える「修羅雪姫」のようなお菊を描いた絵。
流れる殺しのテーマ曲。

剣を抜いた主水が、横になぎ払って1人を倒す。
今度は刀を振り下ろして、そしてすれ違いざまに2人、3人と倒す。
斬り合いにもならない。

4人目を払う刀で斬り、5人目は抜いた刀で刺し貫く。
勝負は、ほとんど瞬間で終わった。
この主水はぜひ見てほしいと思うぐらい、カッコいい。
そして、この時の草笛光子さんのおせいさんは確かに、獲物を仕留める時の猫の目をしている。


ちょっと話がずれますが、「新・仕置人」第8話で主水は鉄に関節を決められ、無力化します。
無力化され、誤解した仲間に殺されそうになる。
これは鉄たちに対して、主水がどれほど無防備であったかを語るエピソードだと思いました。

口で何を言っても、主水は鉄を信頼しているんですね。
鉄もまた、そうだったと思います。
だからこそ、あの時の鉄は主水を自分が殺さなければいけないと思いつめていた。
復活し、悪態をつく主水を見て、鉄はうれしそうにニヤニヤしている。


さて、話は戻ります。
先にあげた話の主水が、どれほどすごいか。
主水がいるから、圧倒的に不利な状況から逆転できる。
数を覆す強さ。

主水がいるから、無理が通る。
どれほど凄みがあるか。
しかしあの凄みはただ、強いだけじゃ、殺陣ができるだけじゃ出ない。
中村主水という人物は、非常に難しい。

主水という男は並々ならぬ剣の才能を持ちながら、それを生かす境遇にない。
そんな時代でもない。
実現したい正義はもはや、どこにも存在しない。

あるのは汚い世の中への絶望。
無力感。
そして、無力な自分への怒り。

だけどどこかに持っている。
捨てきれない。
諦めきれない希望と、正義。

そして彼は類まれな剣の腕も、正義も生かせる世界を得た。
ただ、それは闇の稼業という世界だった。
ここなら、思っていた正義が遂行できる。

主水は悪への怒りと、かすかに信じている正義のために剣を抜く。
中村主水の凄みは、まさにこういう心理から出ていると思うんです。
仲間を失い、背負っているものの重さが増すごとに、彼はますます、凄みを増していく。
これはやはり、藤田まことさんという人が背負ってきた人生も関係しているんでしょう。

本当に、表ではとことん冴えなくて、裏では壮絶に腕が立つ。
その落差が強烈なキャラクター。
これが藤田さんに、似合いすぎるほどハマった。
山崎さんに鉄が、似合いすぎるほどハマったように。

今思うと「必殺」というのは、キャラクターと俳優の奇跡のような融合だった。
もちろん、これを生み出したスタッフさんたちもすごい。
いろんな奇跡が起きた「必殺」。
道理で今見ても、満足できるわけです。