マンガ的、アニメ的?

「暗闇仕留人」では貢のかざした三味線のバチの刃に、仕留め直前の貢が映ったりしてる。
耽美というのではないけど、苦悩するインテリの仕留人・貢の仕留シーンは、ずいぶん凝っていると思いました。
「仕置屋稼業」では、もちろん、沖雅也さんが演じる市松ですね。
市松の場合、見せ方もですが、特に人物像も「必殺」的に凝ったように思います。

親子二代にわたっての、殺し屋。
本当の父親は幼い市松を残し、仲間の罠にはまって死ぬ。
市松は父親を殺した男に育てられ、人に対してまるで感情を動かさない殺し屋となる。
だが感情がないのではない。

手ぬぐいを扇に乗せて標的に渡し、女の子の目の前に竹串をかざすクールさ、冷酷さ。
殺しを目撃したと思った途端、小さい女の子にも手をかけそうな青年。
しかし女の子が見ていないとわかると、実に優しそうな笑みを浮かべ、女の子を抱き上げる。

この捉えどころのなさ。
移り変わる表情。
スタッフが沖雅也という素材を得て、それを十分に生かそうと作り上げたのが市松であることがわかります。
後にスタイリッシュとは、こういうことなのか、と思いました。

仕業人では、やいとや又右衛門の赤く焼けた針と、痙攣する悪党を見た時、アッと思いました。
この辺りに来ると定番とも思える、針を使った仕置を新しく見せる手腕。
常に常に、新しいことを考えていたんだなと思います。

真っ暗闇の中、ふーっ、ふーっと赤く、小さな火花を散らしながら灯る灯り。
勝負に勝つ必要などはない。
一瞬のスキで仕留めれば良いだけ。
腕っぷしに自信はない色男であるやいとやという男の、底知れない怖さを感じる殺しでもあります。

仕事人シリーズを見ていると、三味線屋の勇次のシーンがすごく凝っていることに気付きます。
髪の具合、うつむいた顔に映る陰影。
悪へのクールさ、冷酷さ。
それは悪への怒りでもある。

勇次の殺し方って、すごく苦しいですよね。
本人もしばし、地獄の責め苦を味わせている。
被害者には溜飲の下がるやり方なのかもしれません。

同時に、あんなに苦しめるということに嫌悪感を持つ人もいるかも。
諸刃の刃の殺し。
秀だって、かんざしを刺したまま、しばし、ピン止めされた虫状態にしていることもありますが。

勇次の着物に書かれた南無阿弥陀仏には、驚きましたけど。
あれは吊るされている悪党に対して、弔いの言葉でしょうか。
それとも、あなたはもう終わりだよ、と冷酷に告げているのでしょうか。
中条きよしさんならではの、スタッフの仕掛けですね。

思えば必殺って、マンガ的、アニメ的なものを実写化したかもしれません。
何気なく見える並びも、奥に行くほど影が濃かったり。
当時は、本当にものすごい実験的な映像だったんだろうな、と思います。


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越前・金四郎・中村主水

必殺シリーズでは、もらえる給料は決まっているし、それなら最小限の仕事しかしたくない熱意のない人たちの集まりとして描かれることが多い奉行所。
融通が利かず、人情がなく、庶民からは厄介で威張り散らす人たちと思われている。
つまり、あんまり機能していない。

機能してしまうと、裏の仕事する人たちが必要なくなってしまいますから、これで良いんでしょう。
それでもシリーズ中頃までは、結構怖い組織でもありました。
中村主水が市松に「おめえは組織の怖さを知らねえ」なんて言うぐらい。
汚職もはびこっており、熱意を持った清廉潔白な同心は、汚職まみれの同僚先輩上司に殺されたりもする。

しかし、当たり前のようですが、奉行所を主人公にしたドラマでは、みんな精一杯頑張って治安と秩序を守っている。
庶民が安心して暮らせるようにしてくれている。
「大岡越前」や「遠山の金さん」などのお奉行様は、部下に理解を示し、信頼して任せ、責任は自分が負う覚悟。
理想の上司です。

部下である与力、同心はその上司に認めてもらいたくて、さらに頑張る。
その上司のためにも頑張る。
良い循環です。

そのお奉行様が命をかけて、奉行では太刀打ちできないほどの地位の者に向かっていく時がある。
「大岡越前」では、越前が仕える吉宗の宿敵・尾張宗春の元に乗り込んでいきました。
その時、南町奉行所の与力・同心・岡っ引きは全員、尾張藩の門前に集合していました。
全員、死に装束です。

お奉行様が無礼者として成敗された時は、全員、後を追う覚悟です。
越前の言うことにカッとなった宗春を、家老が制します。
吉宗の信頼厚い片腕の越前を斬ったとあれば、それはただでさえ大変なことになる。

それに加えて、南町奉行所の与力・同心が全員、尾張藩の門前で腹を切ったとあれば、どうか。
天下の徳川御三家の尾張藩であろうとも、ただではすまない。
この男、尾張藩と心中する気だ。

門前では帰ってこない奉行に、いよいよ覚悟を決める。
その時、越前が姿を現す。
結局、越前の覚悟に宗春が折れたのだった。
越前と与力・同心・岡っ引きとの絆と信頼関係に、胸が熱くなるシーンです。

「遠山の金さん」では、遠山金四郎が薩摩藩の藩邸に乗り込んでいく。
島津藩主に向かって、彼のためにどれほどの命が失われたか、抗議する。
その中には金さんに惚れ込んだため、江戸を混乱に陥れる計略を実行せず死を選んだ、優秀な蘭学者もいた。

薩摩藩に対して北町奉行が意見するなど、とんでもない。
怒る藩主に向かい、金四郎は薩摩藩と心中すると言い切る。
藩主の目から怒りの炎が消え、反省と後悔と相手に対する尊敬が満ちてくる。

門前では普段は和ませるお笑い担当の伊東四朗始め、北町奉行所の与力・同心が揃っている。
みな、奉行が帰ってこない時は討ち入り、死ぬ覚悟だ。
「遅すぎます」。
「そろそろだな」。

死ぬ覚悟を固めた時、金四郎が出てくる。
この時の金四郎役は、杉良太郎さん。
ニッと笑う笑顔が伊達男というか、粋とというか、いなせというか。

「悲壮な顔して何してんだい?」みたいな奉行に対し、無事であることに涙する部下たち。
いつもは「お奉行~!」と困り果てている伊東四朗の、涙。
わかっている。

何を言っていても、お互いがお互いのために死ぬことができる間柄だということが。
彼らの信頼関係に、やはり胸が熱くなる。
ちょっとやそっとで、こんな関係は築けない。
この勝利は奉行の覚悟と、その奉行について行った彼らの勝利だ。

奉行はもちろん、彼らも全員、昨夜には家族に明日は戻ってこられないかもしれないことを告げているはず。
待っていた与力・同心・岡っ引きも生きた心地はしなかっただろうけど、彼らの家で待つ家族も同じ思いだったはず。
彼らと、彼らの家族の心の中はどれほどつらかっただろう。
どれほど、安堵したことだろう。


…うーん、この中に中村主水がいる想像がつかない。
こんな奉行の下で、こんな奉行所だったら、中村主水は本来の正義を屈折させることなく発揮しているはず。
昼行灯であることはまず、ないと思う。
華々しく活躍はしなくても、鋭い洞察力で同僚・上司に頼りにされ、庶民からは人情のわかる同心として慕われたと思う。

裏稼業の暗い宿命など背負わなくて良かった。
普通に家庭を持ち、何の屈託もなく仕事に邁進できた。
そう考えると、中村主水があの奉行所にいるって、結構な悲劇です。

せんとりつは、どうかな。
主水を待つ、せんとりつは想像ができるんだけど。
戻ってこないかもしれない覚悟の主水って、何度か見てますから。
何度か見ているけど殊勝な妻と姑として、主水を支えているだろうか。


中村主水 鬼神のごとく阿修羅のごとく

中村主水が、どれだけすごいか。
彼は闇にまぎれて不意打ちをする殺し屋というだけでは、ないんです。
剣豪なんです。
それをわかってもらうために人に主水の殺陣を見せるとしたら、どれを選ぶだろう?

最も有名なのは、やはり「新・仕置人」最終回でしょう。
正体のわかっていない3人目の殺し屋。
誰もそれが主水であることを、知らない。
昼行灯の主水を侮っていた諸岡は、主水に斬り刻まれる。

巳代松の痛みを思い知らせるかのように、主水は諸岡に止めを刺さない。
諸岡はもがきながら主水の刃に刺し貫かれ、辰蔵の屋敷に放り込まれる。
次に主水は辰蔵の配下の者を、鉄の痛みを思い知らせるかのように次々に斬っていく。

殺気全開。
持てる能力の全てを開放。
この主水に、殺し屋たちもなすすべがない。

まさに鬼神。
阿修羅。
辰蔵は、匕首を持ったまま、逃げるしかない。
「茜雲」の音楽と共に斬りまくる主水の、しびれるようなかっこ良さ。


「暗闇仕留人」第17話、「仕上げて候」。
仕上屋の本拠地に乗り込んだ主水は刀を抜くと、構えていた1人を斬る。
襲い掛かってきた1人の刀を受け止めると、胴を斬る。
斬りかかって来た1人を斬り、もう1人も斬る。

最後の1人も刺す。
5人全てが斬られ、残るは元締1人。
まったくの形勢逆転。
余裕で笑っていた元締めの顔色が、蒼白になる。

まさか。
まさか、こんな化け物だったなんて。
わかっていたら、用心棒たちに襲わせるなんて、そんなことはしなかった。


「必殺商売人」第8話、「夢売ります 手折れ花」。
おせいを見て、仇敵を前に殺された北岡菊と思った女が悲鳴を上げる。
座敷におせいが走りこむ。
用心棒たちが走ってくる。

その先に現れたのは、主水。
八丁堀だって構わない用心棒たちが、刀を振り上げる。
燃える「修羅雪姫」のようなお菊を描いた絵。
流れる殺しのテーマ曲。

剣を抜いた主水が、横になぎ払って1人を倒す。
今度は刀を振り下ろして、そしてすれ違いざまに2人、3人と倒す。
斬り合いにもならない。

4人目を払う刀で斬り、5人目は抜いた刀で刺し貫く。
勝負は、ほとんど瞬間で終わった。
この主水はぜひ見てほしいと思うぐらい、カッコいい。
そして、この時の草笛光子さんのおせいさんは確かに、獲物を仕留める時の猫の目をしている。


ちょっと話がずれますが、「新・仕置人」第8話で主水は鉄に関節を決められ、無力化します。
無力化され、誤解した仲間に殺されそうになる。
これは鉄たちに対して、主水がどれほど無防備であったかを語るエピソードだと思いました。

口で何を言っても、主水は鉄を信頼しているんですね。
鉄もまた、そうだったと思います。
だからこそ、あの時の鉄は主水を自分が殺さなければいけないと思いつめていた。
復活し、悪態をつく主水を見て、鉄はうれしそうにニヤニヤしている。


さて、話は戻ります。
先にあげた話の主水が、どれほどすごいか。
主水がいるから、圧倒的に不利な状況から逆転できる。
数を覆す強さ。

主水がいるから、無理が通る。
どれほど凄みがあるか。
しかしあの凄みはただ、強いだけじゃ、殺陣ができるだけじゃ出ない。
中村主水という人物は、非常に難しい。

主水という男は並々ならぬ剣の才能を持ちながら、それを生かす境遇にない。
そんな時代でもない。
実現したい正義はもはや、どこにも存在しない。

あるのは汚い世の中への絶望。
無力感。
そして、無力な自分への怒り。

だけどどこかに持っている。
捨てきれない。
諦めきれない希望と、正義。

そして彼は類まれな剣の腕も、正義も生かせる世界を得た。
ただ、それは闇の稼業という世界だった。
ここなら、思っていた正義が遂行できる。

主水は悪への怒りと、かすかに信じている正義のために剣を抜く。
中村主水の凄みは、まさにこういう心理から出ていると思うんです。
仲間を失い、背負っているものの重さが増すごとに、彼はますます、凄みを増していく。
これはやはり、藤田まことさんという人が背負ってきた人生も関係しているんでしょう。

本当に、表ではとことん冴えなくて、裏では壮絶に腕が立つ。
その落差が強烈なキャラクター。
これが藤田さんに、似合いすぎるほどハマった。
山崎さんに鉄が、似合いすぎるほどハマったように。

今思うと「必殺」というのは、キャラクターと俳優の奇跡のような融合だった。
もちろん、これを生み出したスタッフさんたちもすごい。
いろんな奇跡が起きた「必殺」。
道理で今見ても、満足できるわけです。


待ってました

遠藤憲一さんが、仕事人で登場?!
きゃー、待ってました!
絶対、良いよ!

松重さんもお願いします。
目立つか…?
北村一輝さんなんかも期待したいところ。
猫侍があるか。

それと、喜ぶのは、悪役ファンの私ぐらいか。
そんなこと言わないで、誰か深夜枠でお願い。
時代劇専門チャンネルさん、お願い。←勝手

必殺スペシャル

必殺仕事人本放送の頃、年に一度か二度くらいかな?
スペシャル番組として、2時間に渡るドラマが作られるようになりました。
年末年始か、お正月は必ず放送していた記憶があります。

紅白歌合戦に対抗して、大晦日に放送したこともあるんじゃないかな?
さらには結構、良い視聴率だったんじゃないかな?
「必殺忠臣蔵」や、タイトルに「初夢」が入ってるのなんか、年末年始放送作品ですね。

正統派歴史時代劇に混じって、必殺があって、なかなか楽しかった。
年の話題だった人物が、ゲスト出演する。
題材になる。
話題になったことが取り上げられ、世相が反映される。
今、見ると、ほんと、その「年」が蘇りますね~。

懐かしい。
年末年始の風物詩。
お祭り。
さすがにネタ切れ、マンネリと言われるようになりましたが、そんな番組がない今は寂しい。

毎年見ていた山田五十鈴さんや、藤田まことさんも、いらっしゃらない。
寂しい。
お正月にしんみりしちゃったけど、がんばって、名物時代劇やってほしいと思ったりしました。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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