こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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俺たちは初めから一蓮托生なんだ 「暗闇仕留人」第26話

第26話、「拐かされて候」。


露天でおきんが怪しげな「ギヤマン」とガラスを売っている横で、浪人の筧弾正がガマの油を売っている。
そこに雨が降ってくる。
人はすぐに引き上げて行く。
おきんが店をたたみ、弾正にそっと傘をさしかける。

「ついてないね、お互いに」。
「こりゃどうも」。
「今夜は雪になっちゃうよ」。
「これはかたじけない」。

おきんと弾正は連れ添って帰ると、雨は雪に変わっていく。
弾正の家では娘のおさきが、食事の支度をして待っていた。
その時、屑伝と言われる目明しがやってきて、弾正に借金の返済を迫った。
屑伝は火消しでありながら金貸しをしている松五郎の手先になって、おさきを妾に差し出させようとしていた。

その松五郎が、おさきに執心なのだ。
弾正は屑伝を追い返そうとして刀を抜き、もみ合いになる。
屑伝は今日のところはおさきの顔を立てて帰るが、明日は駕籠で迎えに来ると言って帰った。
だが翌朝、おさきは何者かに誘拐された。

迎えに来た屑伝は、弾正の元に投げ込まれたという誘拐文を読んだが、信用しない。
番所まで弾正を屑伝が連れて行き、主水が応対に出る。
誘拐には身代金が付き物だが、弾正に金があるはずはない。
屑伝は主水を番屋の外に呼び出し、これは弾正の芝居だと言う。

弾正の妻は長患いの末、去年の秋なくなったが、薬代を松五郎に借りていた。
それが利子が重なって、百両にもなった。
主水は貸す方も貸す方だと言うが、松五郎はおさきを妾に差し出せば百両は棒引きにしてやると言っているのだ。
だからこれはおさきを差し出したくない弾正の狂言誘拐だと、屑伝は言う。

その頃、おさきはおきんの家で、役者に変装させられていた。
おきんは男伊達が売りのはずの火消しなのに、高利貸しをしている松五郎が、そもそも気に入らない。
だから、松五郎におさきを渡したくない。
御上を騙すことになるのだから、おさきは父も自分もお咎めがあるのではないかと怖がるが、その時、おきんの家の戸の方で気配がした。

おきんがあわてて「ユキさま」と言って、後姿のおさきに抱きつく。
訪ねて来たのは、大吉だった。
うっとりとしたおきんを、息を詰めて戸の陰から大吉が見ている。
だが大吉に気づいたおきんが「何だ、お前かぁ!」と声を出す。

おきんと大吉は貢と主水に、事の次第を話していた。
大吉はおきんが役者とねんごろになっているのかと驚いたと言い、おきんは笑う。
だが主水は、おさきの面倒をいつまで見るのかと聞いた。

おきんはほとぼりの冷めた頃、江戸から逃がしてやるつもりだと言うが、主水は「ばかやろう!世の中そんなに甘かねえぞ」と叱咤する。
主水が言うには、おきんはおさきを拐かした、れっきとしたお尋ね者だと言う。
「危ない橋渡りやがって」と主水は怒り、大吉も人助けなんか柄じゃないと言った。

貢も、余計なおせっかいだったと言った。
だが、おきんは人が良い弾正が好きだと言う。
おきんは自分ひとりでもやると言って、走っていく。

夜、おきんの家でおさきが寝ようとしていた時、表の戸が激しく叩かれる。
「誰だい」とおきんが出て行くと、弾正が飛び込んでくる。
屑伝に後をつけられたと言う。
「早く!」

おきんが弾正とおさきを匿う。
家に近づいてくる屑伝を、おきんが息を詰めて見ていた時、「屑伝の」と主水が声をかけた。
「中村様」。
なぜ主水が見回りからはずれている、この辺にいるのか。

主水は見回りの途中で気になる奴を見つけて、ここに来たと言う。
それを聞いた屑伝が、それはどちらに行ったか聞くと、主水は適当に答える。
すると屑伝は、言われた方へ走っていく。

屑伝がいなくなると主水がおきんに「おきん。早く寝るんだ」と、戸越しに声をかける。
「八丁堀…」と、おきんが微笑む。
「おやすみ」。

松五郎の家で、屑伝は、「おさきはすぐにあぶりだせる」と言っていた。
しかし、気になることがひとつ。
おさきがかどわかされた一件は中村と言う同心が担当なのだが、とそこまで屑伝は言うと、松五郎に耳打ちする。
それを聞いた松五郎は、今さらその昼行灯が弾正に手を貸しているとは思えないが、それがあんな場所にあの時間にいたことが気になる。

とりあえず、主水が邪魔にならないように手を打つと、松五郎は屑伝に約束した。
弾正を引っ張って吐かせるという手があるが、それは最後の手段だ。
松五郎は親思いの優しい、身も心も無垢なままのおさきがほしいのだ。
おさきの純粋さを失わせるような真似は、極力避けたい。

翌日、奉行所でさっそく、主水は与力の名島に呼ばれた。
名島は主水に、おさき誘拐の解決の目処が立っていないことを理由に反省しろと言って、10日間のお役御免を言い渡す。
それを聞いた主水は薄笑いを浮かべ、首を振る。

おさきの誘拐は公開捜査となり、おさきの人相書きが町中に貼られることとなった。
それに対し、弾正が百両の借金を返済していないことから、弾正も尾行と見張りをつけられる。
その頃、おきんの家では妙心尼が経を上げていた。
貢と大吉が、棺おけをかついで外に出る。

外には屑伝たちがいるが、妙心尼は「なりませぬ!御仏のお通りです。お下がりなさい」と一喝する。
屑伝たちが道を空けると、貢と大吉が棺おけを車に載せる。
大吉が車を引き、おきんと貢と妙心尼が長屋を離れていく。
屑伝の手下が1人、車の後をずっとつけてくる。

池のほとりを歩き、おきんが立ち止まって、最後尾にいる貢に何か言うと、貢は列を離れていく。
おきんが振り返り、振り返り、道を行く。
するとついていく屑伝の手下を、背後から貢が手ぬぐいで締めた。

大吉の家についた妙心尼たちは、おさきを棺おけから出してやる。
おさきが深く頭を下げると、大吉は何か暖かいものを作ってやった方がと、提案し、おさきが着替える。
それを大吉が見ている。
おきんが気づいて大吉を引っ込ませると、妙心尼はおさきを連れて寺に入る。

主水と貢も来て、大吉とおきんと話をする。
暗い家の中で大吉が貢に「やったのか」と聞く。
「ああ、顔を見られたからな。だから」。
主水が「こうなったら、おめえ、やってもやらなくても同じことだ。そのうち、屑伝は俺たち4人のことをしつこく追い込んでくるぞ」と言う。

屑伝の後ろには松五郎がおり、その松五郎は北多町の鬼与力・名島帯刀と繋がっている。
主水をお役御免にしたということで、「足元に火がついたな」と主水が言うと、おきんが「あたいが悪いんだよ」と言う。
「ようし、こうなったら!」と、おきんが立ち上がった。
大吉が「おきん、どうするんだ?」と聞くとおきんは「決まってるよ!自分でまいた種だ。自分で刈るよ!」と言う。

出て行こうとするおきんを大吉が呼び止めようとした時、主水が引き戻す。
「何すんだよう!ほっといておくれよ!」
「おきん!」
おきんは主水に引っぱたかれ、悲鳴をあげる。

もはやおきん1人、ガタガタしたって始まらないと言われ、おきんは頬を押さえて座る。
貢に、「俺たちは初めから一蓮托生なんだ」と言われ、思わずおきんは泣き始めた。
「泣くな!」
主水はおきんの顔を上げて怒鳴る。

松五郎のところに、屑伝が報告に行く。
名島も来ていた。
その頃、弾正は古物商に、刀を売りに来ていた。

弾正の刀は無名だが名刀で、祖先が伊達政宗より拝領した刀だと言う。
こえrは、どんなことがあっても手放すまいと思っていた宝だ。
しかしそれを手放す決意をした弾正に、古物商の男も「ほかならぬ筧様の刀だから」と小判を4枚出した。

古物商の前に、屑伝と手下が来ていた。
小判を取り上げられそうになった弾正は逃げ、蕎麦屋の店先でおきんに出会うと「もういい。ここまでで精一杯。あんたに会えたのは地獄に仏だ」と言う。
そしておさきに先ほどの4両を渡して、「自分に構わず秋田へ落ち延びろと行ってくれ」と言うと、「わしはもう、疲れました!」と表に来ている屑伝たちを睨んだ。

弾正の、亡くなった妻の父が、秋田の横手で居酒屋を営んでいるのだ。
「奉行所に連れて行ってもらおうか!」と言った弾正を、屑伝たちは連行して行った。
何事かと見ていた蕎麦屋の客たちも、屑伝に睨みを利かされると、こそこそと見ない振りをした。

おさきは夕方、寺で落ち葉を集めて燃やしていた。
大吉がそれを見ていると、おきんがやってくる。
おきんはおさきを探すと、弾正から預かってきた財布を渡す。

屑伝がつきまとっているので、弾正はここまで来られないと言うと、おさきは大金を不思議がる。
その夜、弾正は松五郎の屋敷で、叩きの拷問を受けていた。
だが元は槍一筋の武家だっただけに、弾正は屑伝も汗をかくほど責めても一口も口を利かない。

同じ夜、おきんはおさきと一緒に秋田まで行こうかと言った。
だがおさきは、父と一緒でなければ行かないと言う。
松五郎から借りた薬代は、5両だった。

人の良い弾正は利子の仕組みも知らず、借金はたちまち膨れ上がった。
近頃では弾正は、自分の命で支払うと言っていたのだ。
一体、父に何があったのかと、おさきは不安がり、外に行こうとするが、おきんは「お願いだからここにいておくれ」とすがる。

翌朝、江戸のゴミ捨て場にゴミを捨てに来た男たちが、弾正の死体を見つけた。
弾正が死んだのを知って、名島は松五郎と屑伝を怒った。
責めが過ぎたのではないと言い訳する松五郎に、名島は言う。

弾正が惜しかったのではない。
中村主水への手がかりを失ったのが、惜しいのだ。
屑伝はそれに関しては必ずつかむと、約束した。

大吉の家に、妙心尼が駆け込んできた。
弾正を心配し、また自分が行けば誰も不幸な目にあうことはないと思ったのだろう。
おさきは書き置きを置いて、松五郎の元へ行ってしまったのだ。
小判はもう、自分には必要のないものだから置いて行くとあった。

主水が仕留人たちに、今朝、弾正の死体がゴミ捨て場に捨ててあったことを話す。
おきんが松五郎の家から駕籠が出て、根岸の御殿に着いたのを突き止めてきた。
町火消しの親方が、あんな御殿を持っていること自体が驚きだ。

おきんが話している最中、主水が弾正の財布に「4両、入ってるな」と言う。
「決まった!」とおきんが叫んで行こうとするところを、主水が押さえつけて、部屋に引きずり込む。
早くおさきを助けたいと焦るおきんに主水は「おめえに命がけで頼みてえことがあるんだ」と言った。

名島が歩いていく先に、粋な遊び女風に装ったおきんが「お殿様」と声をかける。
耳打ちすると、名島は「何?松五郎が?」と聞く。
「そうなんですよ。あたしはね、聞いちゃったんですよ。旦那は知りすぎた人物だから、御老中に話して、甲府の山猿たちの仲間入りをさせたほうがいいだろう、って」。
「わしを甲府勤番に?おのれ、下郎め!」

おきんはホホホと笑って「下郎に気を許したお殿様がいけないのさ」と言う。
松五郎は急ぐ。
夕闇に照らされて、松五郎の屋敷から駕籠が出て行く。

門の前で主水が財布を出し、貢と大吉が1両ずつ取っていく。
それぞれに散っていく。
名島が歩いてくる。
主水が待っている。

「名島様、何か事件ですか」。
「何でもない!」と、名島は憤然とした様子で答える。
主水は密かに刀を抜いて、背後に隠す。

「事件ならば、わたくしめにもお言いつけください」。
「しつこい奴だな!帰れ!」
名島がそう言った途端、主水が名島を刺す。

刺された名島が倒れる際に、門の戸が開く。
名島がそのまま、門の向こうに倒れる。
主水が門から離れ、あくびをする。

そっと庭に通じる松五郎の屋敷の戸が開き、大吉が庭に入ってくる。
座敷に忍び寄ると、黒ずくめの貢も現れる。
松五郎が屑伝に「ご苦労様」と、小判を渡している。

部屋の戸が開き、おさきが弾正に会わせてくれと言って、座っている。
屑伝がおさきを松五郎の元に、「親分さんとよぅく相談するんだよ」と言って連れて、自分は出て行く。
まず、杯をと、松五郎がおさきの手を取る。

「あっ、いや!」
おさきが逃げようとするのを、松五郎が抑える。
隣の部屋で屑伝と用心棒が「へっ」と言って、酒を飲みながら笑っている。
その時、胡桃がすり合わされる音がする。

「何だ?」
屑伝と用心棒が立ち上がり、廊下に出る。
暗い廊下の先に、名島が座っている。

「名島様あ」。
名島が倒れると、背後に大吉の胡桃をすり合わせる手が見える。
大吉の影が、ゆっくりと現れる。
灯りに照らされて、大吉の顔が見える。

「貴様、何者だ」と用心棒が刀を構える。
屑伝が逃げる。
大吉が砕いた胡桃を、用心棒に投げつける。
用心棒が思わず、顔を覆う。

大吉が用心棒に飛び掛ると、刀を受け止める。
もう一度切りかかろうとした用心棒の心臓を、つかむ。
用心棒が倒れると、屑伝が十手を手に廊下を逃げていく。
大吉が胡桃を投げる。

屑伝が胡桃を踏んで、転んだ。
大吉は屑伝の足を引きずっていき、押さえつけると十手を持つ手を左手で押さえる。
右手を構え、屑伝の心臓をつかむ。
屑伝が動かなくなると、大吉は懐から下駄を出し、庭からそっと出て行く。

座敷では、おさきが松五郎に追い詰められようとしていた。
松五郎がおさきを捕まえた時、ふと気配がした。
「誰だ!」と言って、松五郎が振り向く。
廊下に面した障子を見て、松五郎は灯りを吹き消す。

暗闇の中、障子に黒い影が映り、歩いていく。
ピンという音がして、矢立から針が出る。
ザザザと音がして、障子が破けていく。

戸が開くと、松五郎が針を見てハッとする。
貢は矢立を持ったまま、近づいていく。
松五郎が逃げようとするが、黒ずくめの貢が押さえつける。
組み伏せると、こめかみを一気に刺し貫く。

松五郎が悶絶する。
おさきが逃げる。
貢が無表情に針を抜き、おさきを見て、消えていく。

廊下に出たおさきに、屑伝の死体の前におきんが張ってくる。
「おさきちゃん」と手招きをし、おさきを連れて夜道を走っていく。
必死に走っていく2人を見た主水が、反対方向に歩いていく。
木枯しが吹いていた。



まず、おきんと弾正のお仕事シーンが映り、おきんが弾正を良く思っていることがわかる。
弾正に好感を持てなくては、この話、おきんが弾正とおさきに肩入れする意味がない。
そしておきんがおさきを匿ったことで、主水が怒る。
「危ない橋渡りやがって」。

それに対しておきんは声を低くして、「八丁堀よう。じゃあ、あんた、危ない橋渡ってないとでも言うのかい?」と言う。
「てやんでえ。散々、泥水飲んできたくせに、奇麗事言うんじゃねえや」。
なかなか、ドスがきいてます。

しかし、主水だって言う。
「おきん。俺たちはな、絶対に足は残さねえ。お尋ね者になったり、目明しに付け狙われたりしたら、その時から俺たちの仕事は成り立たなくなるんだ」。
確かにその通り。
「仕置人」の最初の頃は、全然平気な感じでやってましたけどね。

大吉も言う。
「それは八丁堀の言う通りだぜ。けちな人助けなんざ、俺たちの柄じゃねえよ」。
これはいつも言っていること。

「じゃあ、あたいのやったことが間違ってるって言うの?貢。あんたどうなんだい?」
やっぱり、貢が最後にものを言う。
すると貢も「まあ、余計なおせっかいだったんじゃないのかい?おきんさん」と言う。

「そう!貢までそんな風に?」
この時のおきんの声は、主水や大吉に対する声と、ちょっと違う。
ちょっとだけ、女性らしく優しい。
貢がフェミニストだから、おきんも貢に対しては態度が柔らかいのかな。

だけど、貢にまで賛成してもらえなくて、おきんはショック。
でも貢は言ってくれる。
「しかし、やっちまったことはしょうがないじゃないか。まさか、そのおさきさんという娘。今さらキバをむいている狼どもの前に放り出すわけに行くまい」。

貢にそう言われて、おきんは「ね?ね!ね!」と元気になる。
そこで貢はさらに「八丁堀だって石屋だって、そう思ってるんじゃないのかい?」と言う。
本当は、主水だって、大吉だって、助けてやりたいと思っているのが、貢にはわかっている。
そこを言えちゃうのが、貢。

大吉は「それは俺だって」と、口ごもる。
だが主水は「あの屑伝って奴はヒルみてえな奴だ。奴に一度、しっぽをつかまれたら、ずるずるっと俺たちは芋づる式にな」と警戒している。
ここでおきんが、「あたい…、あの弾正さんが好きなんだよ」と言う。

主水がちらりと貢を見る。
それは恋愛感情なのか…と一瞬思うが、そうじゃない。
「虫一匹殺せないような弱虫なんだ、あの人。周りの人に気遣って、優しくて、優しくて損ばっかりしていて。その為に百石取りの家禄までなくしちまったんだよ」。

人として、好きで放置できないということ。
主水たちを背に、おきんは言う。
「もういいよ。いいよ!あんたたちがやらないんだったら、あたし1人だってやってやる!」
おきんの暴走に、気持ちだけはわかる仕留人3兄弟は顔を見合わせる。

屑伝が、現れた主水を不審に思い、松五郎に報告。
すると松五郎は「あの昼行灯の無駄飯食らいのと言われている、馬面さんかい?」と言う。
名島がいるから同心には詳しいんだけど、この主水の知られ方がおかしい。
結構、有名なのかも。

しかしこれで主水は、10日間、お役御免になってしまう。
それを聞いて、同心たちがちょっと笑いながら噂している。
主水は、「あっ、そう…」と納得した様子。

お役御免になった主水が、自宅で障子の張替えをやっている。
もちろん、主水はせんとりつに、何の失態をやったのか責められる。
でも今回は本当に身に覚えはなく、理不尽極まることだと言った。

すると、せんが役所では主水を無駄飯食らいとバカにしていると話すんですね。
しかし、主水は笑って「まだ他にもありますよ。昼行灯ね。無駄飯食らいの昼行灯。うちへ帰れば種無しかぼちゃか。あーあ、今年もいよいよ押し迫ってまいりましたな」とせんべいをかじる。
笑っちゃう。
もう、達観してる、しちゃうよね。

今回は妙心尼まで協力しての、おさきを長屋から脱出させる。
ここで今回は「なりませぬ!」が出る。
なかなか、尼僧としてはビシッと言う時は言う。
しかし、庭掃除するおさきを見つめる大吉に向かって、「こちの人~ん」と言う声は甘くなまめかしいんです。

そして、主水がお役御免になり、おさきを寺に預けた後、仕留人たちは大吉の家に集まって話す。
主水をお役御免にしたということは、喉笛に匕首をつきたてられているようなものと言う。
「足元に火がついたな」と主水が言うと、おきんがさすがに「あたいが悪いんだよ」と言う。
「あたいがおっちょこちょいだから、こんなことになったんだ…」と。

大吉も貢も、まずそうな顔はしている。
するとおきんが立ち上がる。
大吉が「おきん、どうするんだ?」と聞くとおきん、「決まってるよ!自分でまいた種だ。自分で刈るよ!」と言う。
「おめえまさか」。

出て行こうとするおきんを大吉が呼び止めようとした時、今度は主水がおきんを乱暴に引き戻す。
「何すんだよう!ほっといておくれよ!」と叫ぶおきんに、主水は「おきん」と言って引っぱたく。
おきんは、悲鳴をあげる。

「てめえ1人、ガタガタしたって始まらねえんだ」。
主水の迫力、凄み。
そして主水は、貢と大吉を見る。
言葉は厳しいけど、みんながそのつもりなのがわかる。

「そうだよ。八丁堀の言うとおりだ」と、貢が言う。
こういう時は、物腰の柔らかい貢だな。
「俺たちはな、初めから一蓮托生なんだ。降りかかった火の粉は、みんなで消さなきゃならないはずだぜ」。
そう言って、貢は頬を押さえているおきんの横に座る。

3話で大吉が「俺たちはな、一蓮托生なんだ」と協力を求めるのに対して、「俺は断るよ。自分でまいた種は自分で刈り取るんだな」と冷た~く断った貢が嘘のよう。
さらに「それに相手が屑伝だろうが、松五郎だろうが、鬼の帯刀だろうが!やるときゃ、みんなでやるんだ。それまではじっと息を殺して待つんだ。相手の出方をな」と言う。
貢の優しい言葉に、思わずおきんは泣いちゃう。

「泣くな!」
今度は主水が、おきんの顔を上げて怒鳴る。
怒鳴るけど、それは一蓮托生を覚悟しているから泣くな!と言う意味。

この他にも主水は、おきんの家に迫って行く屑伝をさりげなくかわしてやってる。
口ではいろいろ言うけど、主水は優しい。
仲間は絶対、助けてやる主水の魅力的なシーン。
わかったおきんが「おやすみ」と笑う。

しかし、貢も変わりましたね。
貢の口から「一蓮托生」という言葉が出るほど、すっかり、裏稼業の人になりましたね。
今回は仕留めの前に1人、絞め殺している。
「顔を見られたからな」とアッサリ言うところが、殺し屋。

おさきが松五郎の所に向かったのを知ったおきんがわめいている最中、大吉が持って来た財布を囲んで、主水も貢も輪になってる。
「何やってんだよ!早く行かないとおさきちゃん、間に合わないじゃないか!」と、おきんはわめいてる。
でも3人は全然、気にしないで、財布を見る。

すると主水が「4両、入ってるな」と言う。
貢が「ほお」と言う。
3人はおきんがわめいているのに、別世界にいる。

今回は大吉が用心棒と屑伝、2人を始末。
名島は主水。
家の廊下まで連れてこられて、座らされていたらしい。
頭に来ているから、屋敷近くに主水がいる不審さにも気づかないらしい。

貢は黒ずくめで現れる。
おさきとは、顔見知りですからこうしたんでしょうが、このスタイル、良かった。
もっと見たかった。

障子を矢立の針で破っていく。
すると、その穴から、怯えた松五郎が見える。
松五郎のこめかみを刺して行く、見ていてこれは痛い、痛い仕置き。

おきんがおさきと走っていくのを、主水が黙って見て、反対方向に歩いていく。
秋田まで、おさきは行くのだろう。
しかし、最愛の父はもう、いない。

そして最終回を前に、前回同様、仕留人たちの仲の良さが楽しい。
全てを知っていて女性たちを見送る主水に、木枯しが吹く。
音楽と共に、どこか物悲しいラストシーン。


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あなた、主水さんでしょう? 「暗闇仕留人」第25話

第25話、「晒されて候」。
とんでもなく、間が空いていて、申し訳ありません。
今、石坂浩二さんを昼間のドラマ「やすらぎの郷」で見ますが、ふと、糸井貢を思い出したりしています。
当たり前なんですが、「仕留人」を見ると、本当にみなさん若いです。


ある夜、あやが亡くなってから陰気くさい貢を何とかしようと、大吉が貢を博打に誘う。
気が乗らないと言っていた貢だが、博打場に連れられて行った。
博打が始まると、大吉のアドバイスは通用せず、逆に自分の判断で賭けをすると貢はどんどん当たり始めた。

その時、「お仲間に入れてもらいます」とどこかの女将のような身なりの女性がやってきた。
大吉が目をつけると、初めて見た顔だと言う。
貢が今、50両ほどになっていると聞いた大吉は貢の側に来て、この辺で引き上げようと言う。
しかし貢は先ほどの女性と勝負になり、女性が全てを持っていく。

この女性に興味を持った大吉は、1人、女性の後をつけるが、女性は茶屋に入っていく。
大吉が首を振りながら去っていこうとした時、1人の男とぶつかる。
男は茶屋の中に消えて行った。

その翌朝、心中した男女があがった。
野次馬が走っていく。
主水がやってきて、女性を見て「お陽じゃねえか。ドジなことしやがったな」と驚く。
すると、お陽と呼ばれた女性が目を開く。

「ええっ!」と、今度は主水が驚く。
同僚の同心がお陽に、男は死んだと声をかけると、お陽は「男?」と言って隣の男を見る。
悲鳴をあげたお陽に、同心は心中者の生き残りは3日の間、死体と共に晒された後、無宿者となって江戸ところ払いとなると言う。
主水に気づいたおようは「主水さん?あなた、主水さんでしょう」と声をかける。

「あたし、心中なんてしてないんです」と、お陽は主水にすがる。
だが、お陽は引き立てて行かれ、晒し者にされてしまった。
見物人によると、お陽は越後屋の後家で、亭主と2人、越後屋の屋台骨を作り、亭主の死後も懸命に店を守ってきたのだと言う。

主水がやってきて、見物人を追い払う。
奉行所に戻った主水は、お陽の再吟味を願い出るが、アッサリ却下される。
お陽が心中する理由が見当たらないと食い下がるが、逆に心中者に悪さをされないよう、3日間寝ずの番を申し付けられる。

その頃、大吉は貢にいくら持っているかと聞くが、貢は「何言ってるんだ、一文もないよ!」と答える。
大吉は「だからあの時、やめていれば良かったんだよなぁ~」とブツブツ言いだす。
「あの50両さえありゃあ、今頃はあんこう鍋かなんかで…、いや、それどころじゃねえなあ。芸者総揚げだな」。

「ははは」と、貢は笑う。
あの女の顔を思い出すたびに腹が立つと言った大吉に、「どうだい、この顔か」と貢が絵を見せる。
「おお、そうそう、この女だよ。なかなか良い女だったよな」。
貢が笑う。

「よお!」と主水が入ってくる。
貢が描いている絵を見て「おめえら、高札場、行きやがったな」と言った。
「高札場?」
「心中の晒し者だと聞きゃあ、目の色変えて飛んでいきやがる」。

「なぁんだい、その心中ってのは」と、貢が笑う。
主水はこの、お陽は自分のちょっとした知り合いで、今朝方、心中で打ち上げられたが、お陽だけが生き返ったと話す。
貢が「おかしいな。じゃあ、似た女かな」と言い、「この女はな、夕べ、博打場で会った女なんだよ」と教える。

「ちょいとした大店の女将さん風だったよな。紫小紋の着物かなんかこう、しゃっと着ちゃってよ」と大吉も言う。
大吉の言葉に主水が「紫小紋?で、この女は博打にひどく負けたのか?」と聞く。
「とんでもねえ。百両がとこ、かっさらってニッコリ笑って消えちゃった」。

大吉の言葉を聞いて、主水は飛び出して行った。
「おい!」
「何だ、あの野郎」。

町を行く主水は、せんとりつに出会った。
りつに当分戻れないと言うと、りつはガッカリするが、せんは手柄は近いかもしれないと笑う。
主水が高札場に来ると、お陽は相変わらず、心中などしていないと訴える。

だが、お陽がどう訴えようと、この状態は心中者にしか見えなかった。
したがって、再吟味も取り上げられなかった。
このままでは、無宿者として追放だろう。

主水からそれを聞いたお陽は、まだやることがあると言って、逃がしてくれともがいて頼む。
しかし、そんなことをして見つかれば、お陽は打ち首だ。
それよりも主水は、夕べ、島津の中間部屋でお陽が博打で百両勝った話を聞く。

お陽が夕べ、大戸を下ろし、その日の勘定を済ませ、帳尻を合わせていた時だった。
先妻の娘のお道が出かけていくのを見て、お陽はどこに行くのかと訊ねたが、お道は「自分の勝手だ」と言い放つ。
嫁入り前のお道に何かあれば、死んだ亭主に申し訳が立たない。
そう言ってお陽は心配するが、お道はお陽とは「何よ母親ぶって。あたしとあなたは血の繋がりも何もないんですからね」と言う。

番頭の荘助が「嫁入り前の娘の夜歩きは、悪い噂の元」とたしなめるが、お道は「あたしはね、女郎上がりの誰かさんとは違うんですからね。一緒にしないでちょうだい」と言うと出て行く。
荘助は、お陽が後添えに入ってからもう5年余りになるのに、困ったものだと言う。
だがお陽は、「この5年間、母親らしいことをしてやれなかったんだから」と言った。

しかし、米の仲買人の株を手に入れたのは、お陽の尽力によるものだった。
そうやって懸命に働いてきたのだから、しかたがない。
荘助は、お道にもそのうち、お陽のことがわかると言う。

その時、お陽を神田神保町の大島屋の義平次という男が訪ねて来て、いきなり、お道に百両貸した期限が今日だと言った。
義平次は、返してもらえないなら、米の仲買人の株の権利書を貰うと言う。
そこには店の判が押してある。

だがお陽は2千両もの株が、百両の担保で取られるのはあんまりだと抗議する。
しかも、この借金はお陽も知らないことだ。
すると、義平次はそれならこれから奉行所に行って、お道を語りで訴えると言った。

そうすればお道は、軽くても遠島になってしまう。
お陽は支払おうとして、店にあるはずの150両を探すが、それはもう来年の米の買い付けに為替で届けてしまっていた。
米の仲買の権利を買うのに2千両かかったから、その時にあちこちに借金をしていた為、急に金を貸してくれる知り合いなど思い当たらなかった。

しかたなく、お陽は残っている50両を渡し、後は翌日と話すが、義平次は払うまでは権利書を渡してくれと言った。
そして義平次は権利書を貰うと、お金ができたら妾にやらせている池之端の「ひさご」という出会い茶屋に持って来てくれと言う。
お陽は義平次に、「預かり書を書いてくれ」と言った。
「これはこれは御念のいったことで」と、義平次は返事をした。

だからお陽は、博打に賭けたのだ。
そして、貢と大吉が見ていた通り、勝った。
お陽はホッとして言われた出会い茶屋の「ひさご」に払いに行くと、奥の部屋に通された。
一刻ほどそこで待ったが、義平次は来なかった。

やがて、義平次の使いという船頭が来て、義平次は本家に急な用事で帰ってしまったので、舟で案内するように仰せつかったと言う。
裏に舟がつけてあると言われ、お陽は躊躇しながらも舟に乗った。
すると数人の男たちがなだれ込み、気絶させられた。
気づいた時は、あんな状況だった。

では仕組んだのは、義平次だろう。
お陽は「主水さん。助けて。あたしこのままじゃ、死んでも死に切れない」と泣いた。
主水がその船頭を覚えているかと聞くと、お陽は会ったらわかると思うと言う。

「お陽、しばらく辛抱してろ」と言うと、主水は走り出す。
夕暮れの中、作業をしている大吉に「仕事だ。すぐ高札場へ来てくれ」と言って、また出て行く。
そしてその足でおきんを呼びに行き、「おめえ、襦袢の色何色だ!」と聞く。
突然のぶしつけな質問に「何色だっていいじゃないか」と言いながらも、主水のしつこさに「赤だよ、赤!」と答えた。

「赤?間違いねえな」と言うと、おきんをお陽のところに連れて行く。
「あれ?何だよここは、心中者の晒し者じゃないか!」と言ったおきんは、お陽を見ると「ああ、かわいそうに、寒いだろうな、冷えるよこんな、下へベターッと」と肩をすくめる。
「かわいそうだと思ったらな、おきん。この女の代わりに、二晩、晒し者になってくれ」。

主水の申し出に「何言ってんだ、バカバカしい」と言っておきんが去ろうとした時、主水は夜だけ、顔さえ下を向いてればわからないと頼む。
「こりゃおきん、仕事なんだ、仕事!」
「仕事?」

主水はわらじから1両出すと、「これで請け負ってくれ。2晩だけだ、2晩!それに俺が寝ずの番で側についていてやるから心配ねえ」。
「ほんとに2晩だけ?」
「嫌ならやめとけ」と小判を取り上げられそうになると「やらせていただきます」と言って、小判を懐に入れる。

お陽の縄をおきんが「解いて」と言って、主水はお陽の縄を解く。
やがて、おきんがうつむいているところに、大吉が走ってくる。
「おい、おきんじゃねえか!」
「仕事だよ仕事!」と、おきんに「八丁堀、あっちだよ!早く行け、ほら!」と言われて、大吉が柳の下にいる主水のところに行くと、お陽がいる。

「あれ?おめえ」。
「ちょいと訳ありでな。おめえの力借りてえんだ。すまねえが、この女と一緒に町歩いて船頭1人探してもらいてえんだ。顔はこの女が知ってる。今夜を入れて2晩。その間にぜひ頼みてえんだ。晒しもの3日と言ってもな、夜は2回しかねえからな。ここはおきんと俺とで、うまくごまかしておく」。
「お願いします」と、お陽も頭を下げる。

大吉はお陽と一緒に出会い茶屋「ひさご」へ行き、中に入っていく。
だが、出会い茶屋の女将によると、この店は義平次は来たことがあるものの、義平次が妾にやらせている店ではなかった。
義平次とは、全く関係がない店だった。

大吉が義平次と待ち合わせていた女性のことを聞いたが、「ひさご」の女将は客のことはあまり話せないと言う。
だから大吉はつけた舟の船頭のことを聞いたが、女将は知らなかった。
やがて、夜が明けて青空が見えてきた。

「八丁堀よ、夜が明けてきた!バレちゃうよ、バレちゃうよ、寒い~」とおきんが焦る。
「あと一晩だ、あと一晩!」と主水に言われるが、寒いし、「やだよ、もう!こんな仕事、1両じゃ合わないよ」と言うと横の仏を見て、「ああ、気味の悪い」と肩をすくめる。
大吉とお陽が戻って来るが、成果はなかった。

その足で大吉は妙心尼のところに行くと、ぐっすり眠ってしまい、妙心尼を苛立たせる。
主水も奉行所で、おきんも自宅で、グッタリ眠っている。
相変わらず、お陽は晒し者だ。

いたたまれないお陽が、ふと見物人の後ろを見る。
お陽に冷たく、鋭い視線を送るのは、お道だった。
恋人の菊次が一緒で、お道に「お嬢さん。こんなもの、娘さんが見るもんじゃありません」と言う。
「さあ、戻りましょう」と菊次にうながされ、お道は菊次と歩いて行ってしまう。

そして、お陽が見ているのを知るとこれ見よがしに菊次に寄り添って見せる。
お陽が見送る前で、お道は菊次に肩を抱かれて店まで戻る。
荘助が店に帰ってきたお道を迎え、義平次が待っていると伝えるが、お道は「今日は会いたくない」と言った。
「わがままを言っては困る、百両を待ってもらっているのだから」と言われても、「だから後から払うからって言ってるじゃないの!」と菊次を連れて奥に行こうとする。

だが、店から義平次が出てくると、菊次は顔を背ける。
義平次は言う。
百両はいつでもいいが、それよりもこの商売は娘のお道には無理だから、婿を取るまで自分が後見人になるというはどうだろう。
するとお道は「いいようにしてください」と言うと「行きましょ」と、菊次の手を取って奥に入ってしまう。

その夜も、おきんはお陽と入れ替わった。
酔っ払いがやってきて、おきんを「あれ?おめえ、昼間の女と違うんじゃ…」と、おきんの隣のムシロを取り払った。
遺体が露わになり、おきんが悲鳴をあげる。

主水がやってきて、酔っ払いを追い払い、おきんに蕎麦を差し入れた。
主水に、おきんはお陽との関係を聞く。
「昔の女かい?」
「ま、そんなとこだな」。

「どこで知り合ったんだよお?」
「うん。根津権現裏の岡場所でな。あの女が田舎から、売られてきたばっかりの頃だった。とにかく俺が養子に行く前の話だから、ずいぶん昔の話だぜ。道場仲間に誘われて、初めて足踏み入れた岡場所で知り合った女でな。それからしばらく通い詰めてな」。

主水が、岡場所で手招きしているお陽を思い出す。
相思相愛だと思っていた。
しかし半年ばかりたつと、お陽がいなくなった。
米屋の手代と一緒になった、と聞いた。

今考えると、相思相愛と思ったのは、女郎の手管だったかもしれない。
だが、主水は良い思い出なのだと言う。
もう10年前にもなる。

今夜はお陽は、貢と一緒に、自分の店の前にいた。
貢に詫びを言うお陽だが、貢はお陽を労わる。
しかし、こんなところにじっとしていて大丈夫なのかと貢が心配した時、お陽は、今日、お道を連れ出した男は只者ではないと思っていた。
お陽は江戸中歩くより、ここにいれば、手がかりがつかめると思ったのだ。

菊次が出て行った後、眠っているように見えたお道の目から涙がこぼれる。
晒し者になっているお陽の姿。
自分を見つめる目。
いつもいつも、自分を心配するお陽。

そのお陽に自分がした仕打ちが、鮮やかに思い出される。
廊下を歩く菊次に、お陽が探している船頭の籐太が声をかけて、お道の様子を聞く。
ぐっすり眠っていると答えた菊次に籐太は、菊次はいつも、こうやって娘を引っ掛けて貢がせているらしい。

荘助が義平次に「いつもながら、シロアリの親方の仕事は鮮やかなもんだ」と言う。
その様子はいつものまじめな番頭の時とは、まるで違った。
「しかしおめえの番頭もどうにいったもんだぜ。店に住み込んでから主人に信用されるまでの早さ。助かるぜ」。
だが、荘助によると、今度はお陽がしっかりしているので大変だったらしい。

うまくお陽をさらって、大川に沈めたのだが、今度は浮かび上がって生き返ってしまった。
しかし、お陽は今夜一晩で、江戸ところ払いになる。
この店は自分たちの思うまま、食い荒らせる。

シロアリがつけば、家の形は残っても中は、がらんどう。
この家は食い尽くすだけ、食い尽くすと連中が笑った時だった。
表でお道が聞いているのに、気づく。

戸を開けて菊次と籐太を見たお道は「悪党!」と言った。
「お嬢さん、つまんねえこと聞いちまいましたね」。
逃げようとしたお道だが、部屋に引き込まれると刺されてしまった。

しかし、ここで死なせるとまずい。
また心中に見せかけるかと言われ、籐太は心中相手を探さなければいけないと言った。
店の表で貢と一緒に見張っていたお陽の前に、籐太が現れる。

お陽があの時の船頭だと気づいて、「あの男!」と声を出す。
「船頭ですか」。
歩いていく籐太を見た貢は「つけましょう」と言った。

向こうから提灯の灯りが近づいてくる。
辺りを見回した籐太に、2人が身を潜める。
籐太が路地に隠れ、男が歩いてくると突然、路地に引き込む。

路地には菊次が車に乗せて、お道を連れてきていた。
籐太が男を絞め殺し、車に乗せられたお道の上に遺体を重ねる。
見ていた貢が走ってくると、籐太が匕首を手に斬りかかる。

貢が籐太を押さえると、菊次が匕首を投げた。
匕首は、貢が羽交い絞めにしている籐太に刺さった。
菊次がハッとして、逃げていく。

貢は籐太を突き飛ばし、お道に駆け寄る。
車が下に降りたはずみで、お道が目を開ける。
お陽が走ってくる。

「おみっちゃん、しっかりして!」
「お母さん」。
「おみっちゃん」。
「義平次も、番頭の荘助も、それに菊次も、みんなグル」。

「ええっ。しっかりして」。
「あたしが悪かったわ。長い間、ごめんなさい。お母さん」。
お道は苦しい息の中、それだけ言うと、息絶えた。

「おみっちゃん!」
お道の手を取り、お陽は泣き伏した。
横で、貢が見つめる。

翌朝、お陽は江戸から追放された。
主水はそれを聞いていた。
そして、仕留人たちに小判を持って来た。
お陽が、品川に身を沈めて作った金だった。

「受け取ってくれ」。
全員が黙っていた。
貢が動いて、金を取る。
続いて、大吉、主水、おきんも取る。

小雪が舞っている道を、主水が歩いてくる。
後ろから貢と大吉が続く。
主水が2人を見ると、別れる。
貢と大吉も左右に別れる。

義平次と荘助、菊次はお道を殺したことがばれる前に今夜、江戸から逃げようと、金をありったけ持とうとしていた。
その時、表の戸を叩く音がする。
義平次にうながされ、荘助が応対に行く。

「どなたさんでございますかな」。
貢の声が「品川から参りました」と答える。
荘助が匕首を懐から出し、「ちょっとお待ちを」と言って戸を開ける。

雪が舞い込んできて、笠をかぶった貢が入ってくる。
戸を閉めると荘助に向かって、「品川の越後屋のお陽さんのお使いでうかがったんですが。今夜、期限でございます」と言う。
「お命、頂戴に参りました」。
近づいてくる貢の顔が、灯りに照らされる。

「何い?」
荘助は匕首を振り上げるが、貢に腕を持たれ、殴り飛ばされる。
店の奥によろけると、義平次も菊次もいる。
3人は横に歩きながら、菊次が思い切り、貢に向かって荘助を放り出す。

貢が荘助を捕えると、義平次と菊次は店の外に走り出る。
荘助は米俵を崩しながら、貢に押さえつけられる。
貢は荘助の背後から、首筋を刺す。

外に逃げた義平次に、胡桃が当たる。
大吉が半鐘のある階段から下りてくる。
驚いた2人が固まっている。

大吉の手の中で胡桃が砕かれ、菊次が捕まる。
逃げようとする菊次を捕まえた大吉が、菊次の心臓をつかむ。
菊次が倒れる。

1人、義平次が逃げるが、行く手に大吉がいるのを見て、反対方向に逃げていく。
やがて、義平次は高札場にたどり着く。
女が座っている。
顔を上げたその顔が、お陽に見える。

恨みの形相のお陽が、自分を怒りに燃えた目で見据える。
だがお陽に見えた女はおきんで、おきんは笑っていた。
義平次はおきんの前をうろうろし、顔を確認しようとした。

その後ろに、主水が立っている。
振り向いた義平次に、主水が近づいていく。
「くそう」と義平次が、匕首を抜いて飛びかかって来る。
主水が手を押さえ、小刀で義平次を刺す。

突き飛ばすと義平次は、仏のいたムシロに横たわる。
主水がムシロをかけ、おきんが手を合わせる。
じっと主水が見下ろしている。

品川。
女郎屋で、女郎たちがお客を手招きをしている後ろで、お陽がため息をつく。
1人、真っ暗な奉行所で、主水はまんじゅうを食べている。
ただ、口を動かし、宙を見つめている。



冒頭、貢と大吉が歩いてます。
最近、貢は大吉の家にいることが多くなりましたが、ずいぶん、打ち解けてます。
最初の頃の「自分でまいた種は自分で刈り取るんだな」と突き放していたのを思うと、仲良くなったとちょっと感動します。

「糸さんよう、元手はどれぐらい持ってるんだ」。
「2両もあれば足りるか」。
大吉が博打に誘っているようです。

「おお。それだけありゃ十分だ。だけど博打ってやつは、素人にはどうしても勝てねえような仕組みになってんだよな」。
それを聞いた貢、まじめな人らしく「やめて帰ろうよ」と言い出す。
「早まっちゃいけねえよ。だからよ、俺の言う通りに張ってりゃ、間違えねえってんだ」。
「石屋だけやりゃ、いいじゃないか」。

もうすっかり、貢は気持ちが失せている。
しかし、大吉は言う。
「だから言ってるだろう。あやさんが亡くなってから、おめえ、どうも陰気くさくていけねえよ。だから一度、博打でもやってカッとなりゃ、気分も変わるだろう」。

大吉は自分が博打やりたいのもあるけど、貢を元気にさせたい。
何とか、楽しくさせたいと思ってるんですね。
だけど貢は「どうも俺はあんまり、気が乗らないな」と言ってる。

何とか博打場に連れてくると貢、「よし、丁!」と言って札を出す。
すると大吉、「ああ~、いけねえ、いけねえ、こりゃあな、半なんだ。半!ちょいと変えさせてもらうな」と口を出す。
壷振りが「お客さん、困りますよ、変えてもらっちゃあ」と言うと、「すまねえな、だけどなこの男は今日、初めてなんだ。半だ!」と決めちゃう。
しかし、結果は丁。

大吉が言う通りに張ると、まったく当たらない。
貢が隣の大吉を、ジーッと見つめる。
外れて貢にじっと見つめられた大吉は「今晩、ちょっとついてねえなあ」と言い訳をする。
この辺りの間がおかしい。

次に貢は「半」と言うが、大吉は「今度は丁だよ」とまた口を出す。
「お客さん、ハッキリしてくださいよ」と壷振りが言う。
今度は貢が「半だよ!」と言い張る。
その通り、半だった。

貢のところに札が集まり、貢はうれしそうに札をカチカチと合わせる。
おお、かわいい。
この後、貢は当てまくり、大吉はというと、離れたところで蕎麦を食べている。
「素人のバカつきってのは、かなわねえなあ、もう」。

そこに、お陽が来るんですね。
最初は貢とお陽が勝つ。
「あの女、ちょくちょく来るのか」と大吉が聞くと、初めて見る顔だと言う。
しかし、貢がついていて、あれはもう50両になっていると言われると、大吉が「50両!」と驚く。

それで、やってきて貢に「この辺で切り上げた方がいいんじゃねえか、50両もあれば当分…」と言うが、貢は全然聞かない。
まあ、大吉は外してましたから、信用できない。
貢は「半!」と賭けてしまい、お陽が勝つ。

「ああ」と大吉が倒れちゃう。
だけど、貢は淡々としたもの。
それで博打場を出た貢と大吉だけど、大吉は女性の後姿を見て、「糸さんよう。あの女一体、何者だろうな。ちょいと、いい女だな」と興味を持つ。

貢は興味がなく「さあな」。
「よう、つけてみねえか」。
貢は番頭と別れた女性を見て、「番頭をうまくまいて、これから役者でも買いに行くんだろう。大店の女将の博打狂い、色狂いってやつじゃないのか」とクール。
だが大吉は、どこの女将か、素性ぐらい知りたいと言う。

「石屋も好きだな、俺は帰るぜえ」。
「いや、ちょっと付き合え」。
「今日はもう、くたびれたよ。ま、博打はおもしろかったけどな」と言って、貢は帰って行く。

「淡白ねえ」と、次の仕事屋なら言われちゃうところ。
お陽が出会い茶屋に入っていくと、大吉がつまらなそうに「やっぱり、貢の言う通りだったな」と言う。
しかし、これで後にお陽の言ってることが本当だとわかるわけですが。

今回は主水、表の仕事で走る、走る。
音楽は仕置人の時の、かんのん長屋でかかっていた軽快な音楽。
そこにせんとりつに出会って、主水は今夜からしばらく帰れないと言うと、りつが「あなたぁ…」とすねる。
すると、せんが「りつ!何です!男は仕事が第一!」と叱る。

あの様子なら手柄は近いと、ほくほくするせんに対して、りつは不満顔。
どうもせんは、主水とりつが仲良いと機嫌が良くない。
今回、結局、手柄にならなかった主水は後でまた、せんに嫌味を言われるのかな。
主水がおきんの襦袢を確かめて、おきんを連れてくるときも仕置人の軽快な音楽。

「おい、おきんじゃねえか!」とお陽の代わりに座っているおきんを見て、大吉が言うとおきんが「寒いです」と言う。
何かアドリブみたい。
おきんを身代わりにして大吉が来て、お陽を連れて船頭を探しに行くと音楽が仕留人の音楽に変わる。
これが良いタイミング。

そしてみんな、一晩中がんばって起きてたから、翌日眠い。
主水も、おきんも、大吉も眠ってる。
妙心尼が放置されて、すねている。

夜、入れ替わったおきんの前に酔っ払いが寄ってきて、札を読む。
そして、おきんを見て「あれ、おめえ…、昼間の女とちがうんじゃねえのかい?」と言って覗き込む。
隣の仏のムシロがめくられ、おきんが悲鳴をあげて「何すんだ、何すんだ、このバカ!」と叫ぶ。

そう、ムシロの下には心中した男の遺体があるわけですからね。
これ、冬はまだしも、夏だったらどうなっちゃうんだろう…とあまりしたくない想像が。
主水が飛んで来て追い払うと、おきん、「向こう行け、向こう行け!ワンワンワンワン」と吠える。
犬ですか!

すると主水、「おめえがギャアギャア言うことねえんだよ」と言って、蕎麦を差し入れる。
でも、ワンワン言いたくなる気持ちはわかる!
おきん、気丈夫に見えるけど、隣の仏を見て、箸で指差して「八丁堀よぉ…、気味悪いよ」と訴える。
本当に嫌そう。

主水は笑って「おめえもやっぱり、女だったんだな」と言って、ムシロを元に戻す。
「当たり前だよお」と言って、おきんが蕎麦をすする。
でも、蕎麦食べられるんだから、やっぱりおきんは気丈夫。
いや、それほど寒いのかも。

おきんに馴れ初めを語る主水。
遠くを見る、道場時代を思い出すような目。
一方、貢と一緒のお陽は貢に丁寧に「すみません、無理なお願いをして」と言う。

すると貢は「いやいや、あなたこそ疲れませんか」。
何てフェミニスト。
貢を頼りにする女性が多いのも、無理はない。

お陽は、中村玉緒さん。
「仕置屋稼業」では、今度は主水に裏の仕事を斡旋する髪結い・おこうで登場。
この時も最終回で、主水に冷たい家庭を捨てさせ、自分が食わせて行くほどの覚悟を持って、好きになっていたことがわかる。

しかし、結ばれることはなかった。
今回もそう。
主水と玉緒さんは、「必殺」世界では一緒になることがなかった。
だから「さらば浪人」の夫婦役に、ホッとしてしまう。

義平次は川合伸旺さん。
お道は、桜井浩子さん。
「ウルトラQ」「ウルトラマン」を見ていた子供には、桜井さんは紅一点の正義の味方の印象が強い。
「必殺」では、何度か悪女を演じてるんですね。

でもここでは、女郎上がりのお陽をバカにしている、わがままお嬢さんが似合ってる。
人を見る目もないし、考える力も弱い。
だからお陽に反発したって、お陽のようにはお店を切り盛りはできないし、妙な男に引っかかって夢中になってる。

なのに、店を女手ひとつで繁盛させているお陽に対し、禁句とも言える言葉を投げつける。
その上、晒し者になっているお陽に、菊次を見せ付ける。
どうしようもないお嬢さんだけど、本当は、お陽に対して慕う気持ちはあったみたい。

眠っているように見えて、お陽を思いだし、涙がこぼれてくる。
先妻である母親の苦労を知っているお道は、後妻として入ったお陽に素直になれなかっただけかもしれない…。
最後の最後に心が通じたのが、せめてもの救い。

石坂さん演じる貢と桜井さんのシーンは最期の瞬間だけで、短くて、会話もなかった。
だけど、これは「ウルトラQ」のナレーションと女性記者・由利ちゃんじゃありませんか。
「ここはすべてのバランスが崩れた、恐るべき世界なのです。これから30分、あなたの目はあなたの身体を離れて、この不思議な時間の中に入っていくのです」と貢の声が言うんですから。

主水、大吉、貢はうまく行っているようでした。
おきんも加えて、仲良さそうだった。
楽しそうだった。
今回はそういうところも見ていて、楽しかった。

主水の思い出も、お陽も、今は遠いもの。
養子に行って、奉行所で昼行灯にならざるを得ない主水にとって、お陽は楽しかった思い出、純粋だった自分の象徴のひとつだったかもしれません。
そのお陽が再び、苦界に落ちたのを止めることもできなかった主水。

ラスト、主水は、1人、暗い奉行所でまんじゅうを頬張っている。
もう少し経てば、酒を飲んでいるのかもしれないけど、ここではまんじゅう。
仕留人たちは、お陽の恨みは晴らしてやれた。
だがほんのりとした思い出が苦いものに変わってしまった主水に、まんじゅうの味は甘かっただろうか。


人間なんてのは大体が嘘つきなんだよ 「暗闇仕留人」第24話

第24話、「嘘つきにて候」。


しじみ売りの少年・佐助は中村家でせんとりつに、「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれますよ」と叱られる。
ところが佐助は「この前抜かれた舌が、生えてきました」と言いのけ、せんに「子供の癖に末恐ろしい」と言われるような少年だった。
佐助のしじみを買ってくれる米問屋「備前屋」では、主人の大八が火事で焼け出された人々に食事を振る舞っている。

一生懸命働けば、お天道様は見ていてくれる。
必ず、報われる。
人間の本当の勇気は、人の為に何かができることだ。

その言葉を聞いた佐助は、大八に尊敬のまなざしを送る。
大八は先代の主人の妻のよねに、食事を運んでいく。
よねは気が触れたということで、座敷牢にいるのだった。

町で芝居小屋の為に絵を描いている貢は、大吉と外で飯を食っていた。
佐助が忠臣蔵の芝居の絵を見て、「ちぇっ。吉良の殿様はいい殿様なんだ。忠臣蔵の芝居は、でたらめだよ」と言う。
貢のところに来て、「ねえ、絵描きさん、あんた、嘘描くのかい?おいら、三州の生まれで知ってるんだ。吉良の殿様は良い殿様でね、赤穂の殿様はケチなんだよ!」と言う。

貢は笑って、「本当はそうだったかもしれないなあ。でも本当のことは本当のこと。芝居は芝居じゃないか」と言う。
描き直しなよと佐助は言うが、大吉も「固いこと言うんじゃねえよ」と笑った。
その時、数人のならず者に、若い女性が追われて来た。
女性は助けを求めるが、誰も助けない。

大吉に女性がしがみつくが、ヤクザ者は「余計なことするな」と言う。
佐助が「かわいそうじゃないか」とかばおうとするが、ヤクザに突き飛ばされ、足を強く打ってしまう。
女性はなおも逃げようとしてヤクザに捕まるが、貢も大吉も表立って目立ったことができず、見て見ぬ振りをするしかない。

その時、佐助の頭に、大八の「人間の勇気は…」という言葉が蘇った。
決心した佐助は天秤棒を持って、「やめろ!」とヤクザ者に向かって行った。
女性を逃がした佐助は、ヤクザ者に袋叩きにあう。
大吉が見ていられず、立ち上がった時、佐助は通りかかった大八に助けを求めた。

だが大八は無言で佐助を振り切ると、歩いていく。
佐助は叩きのめされてしまった。
貢が声をかけると、佐助はフラフラと立ち上がる。

大吉が「大丈夫か」と声をかける。
佐助は「大人なんて、大人なんて嘘つきだ!」と言って、絵に絵の具をぶちまけて壊す。
「嘘つきだ!嘘つきだ!」と言って、佐助は絵に絵の具をぶちまける。

その日、よねが食事を終えて、座敷に声をかけると、座敷牢の戸が開いた。
よねは牢から出ると町に出て「助けてくれ」と騒ぐが、大八が来て、「この女は気が触れている」とみんなに教える。
そして、やってきた十手持ちの虎松に袖の下を渡し、人を追い払わせると、佐助が来る。
大吉がそれを見ているが、虎松は佐助を殴って追い出す。

大吉が茶店で、おきんを見つける。
おきんに大吉が聞いたところによると、この虎松は十手は打ち出の小槌だと言い、十手をかさにきて金を巻き上げる男だと言う。
「あれは虎松ではなく、猫松だ」とおきんは言った。
大吉は佐助のことを心配していた。

主水が奉行所に戻ると、虎松が半年前の備前屋の、前の主人の殺しを調べ直していた。
備前屋を殺した犯人は、夜烏の三次という男で、この男は島抜けをしている。
虎松が再び備前屋に現れた時、表に佐助がいた。
佐助を覚えていた虎松は、追い払おうとする。

備前屋の人足の中に、三次がいた。
三次は虎松に「自分の話を聞いてくれ」、そして「手柄にするか、儲けにするか考えてくれ」と持ちかけた。
その夜、三次を連れて虎松が絵描きの留吉を訪ねて来た。
だが留吉は今、体を悪くして休養しており、代わりにいたのは貢だった。

虎松は、ならば貢でも良いと言って、人の顔を描いてもらいたいと言う。
そして三次を呼ぶ。
手ぬぐいを取った三次の顔を、貢は凝視する。

その翌日、佐助は備前屋に入ると、座敷牢まで踏み込み、しじみをばらまいた。
大八にもしじみをぶつけ、金はいらない、施しだと言って出て行く。
「ざまあみろ!」と言うと、「おいしそうなしじみだろう」と座敷牢のよねにも、大八にもぶつける。
奉公人に「なぜこんなことをするのか」と聞かれると佐吉は、「理由は旦那様に聞いてみろ」と言う。

その時、備前屋に虎松が来た。
佐助は虎松に自分を差し出しても良いと言うが、大八は「お前も気が済んだならお帰り」と言って、虎松に会いに行った。
あしらわれた佐助は、「ちぇっ」と言って見送った。

虎松は貢の描いた人相書きを手にしていた。
貢が描いたのは、この先代の主人殺しの三次だった。
この三次が島抜けして、大八に借りを返してもらおうと帰ってきていると虎松は言う。

三次の言う、借りとは何か。
実は先代の主人殺しは三次ではなく、本当は大八がやっていた。
三次は、このことをネタに、虎松と組んで、備前屋にたかろうというのだった。

その頃、よねの前で、佐助は「人間の本当の勇気とは、人様の為に何かできるということだ」と大声を出していた。
しじみをそっと回収しながら、よねは佐助の顔を見る。
虎松が大八に「よねに会いたい」と言った時、奥から大八を呼ぶ声がした。

すると、よねにしじみの殻剥きの小さな刃物を押し付けた佐助が現れ、「女将さんを返してほしかったら、大八が自分に頭を下げて詫びに来い」と叫ぶ。
虎松がどうしてほしいんだと聞くと、大八はとりあえず、よねを取り戻したいと言う。
それを聞いた虎松が、佐助の前に出る。

よねは「奉行所へ行きましょう」と言うが、佐助は大八に「出て来て謝れ!」と言って、しじみの殻剥きを振り回す。
「みんなの前で謝れ!」
やがて追い詰められた佐助は、自身番に立てこもった。

だがよねは、佐助から逃げたりしないと言う。
佐助は「女将さん、正気なんだね?気が触れてないんだね?」と驚く。
「初めから私と一緒に、奉行所に行ってればこんなことにならなかったのに」と言われると佐助は「大人は信用できない!」と答える。

自身番の前には、人が集まってきていた。
よねは佐助にはまだわからないだろうけど、「まじめ一方の番頭だった大八をあんな風にしてしまったのは、自分かもしれない」と言う。
大八はよねがほしいばかりに、備前屋の前の主人を殺したのだ。

佐助は「出て来い」という呼びかけに対して、大八が「一人だけで入って来い」と叫び、「大八の化けの皮をはがしたい」「それまでは出て行かない」と言い張る。
叫んでいる佐助の横で、よねは懐から小判を出し、佐助に「逃げて」と言った。
「逃げられるなら逃げて、幸せになってください」。
「女将さん…!」

見物人の中、貢もやってくる。
捕り方が大勢、やってきた。
それに感付いた虎松が、戸を破って入ってきた。

捕り方が来た脇を、佐助が逃げていく。
虎松は、「あの小僧ですよ」と捕り方たちに佐助が犯人だと教える。
自身番にいるよねに、大八が迫っていた。
大八は佐助が持っていた、しじみの殻剥きをよねから取り上げる。

貢と見物人たちが見ている前で、自身番から大八の泣き叫ぶ声が聞こえる。
よねに取りすがって、大八が泣いている。
「あの小僧、女将さんを殺しやがった」。

だが貢だけは何も言わず、ただ、眉をひそめて見ている。
同心がよねを殺した凶器であるしじみの殻剥きを取り、懐紙で血をぬぐう。
貢はますます、眉をひそめる。

その夜、町には捕り方が溢れた。
大吉の家に戻って来た貢が「おーい、石屋」と声をかけるが、中は暗いままだった。
すると、家に上がった貢の後ろから「灯りをつけるなよ!」と佐助が布団をはねのけて現れる。
「お前、三州の小僧だな」と、貢が冷静な声で言う。

「そんなこと、どうだっていいや!」
「お前、大変な騒ぎを起こしたな。外に出ないほうがいいぞ」。
そう言った時、大吉が鼻歌を歌いながら戻って来る。
佐助が、土間の作業部屋に走っていく。

人の気配に気づいた大吉が「誰だい」と声をかけると、貢が「ああ、私だよ」と答える。
「糸さんか、脅かすんじゃねえよ」と言って家に入った大吉に佐吉が「し、静かにしろ」と言う。
「なんだい、こりゃあ」。

「うん?例のしじみ売りの小僧さ」と、貢が笑う。
大吉も佐助を見て、「なぁんだ、おめえかぁ」と笑う。
灯りをつけようとした貢を見て、「つけるな。つけるとこいつの命ねえぞ」と大吉を刺す振りをして言うが、大吉は「ああ~、つけたってつけなくったって同じなんだよ」と笑う。
「おめえは、えれえことやりやがったなあ」。

灯りをつけている貢に、佐助は悲壮な声で「つけるな。つけるなよぉ~」と言う。
明るくなると佐助は「ひっ」と言って、顔を伏せる。
「おめえ、備前屋の女将さん、殺したんだってなあ」。
それを聞いた佐助は大吉を振り返って「ええっ?女将さんを?!」と言った。

「おいらが?」
「私ゃ、見たんだよ」と貢が言う。
「嘘だ!」
「嘘じゃない。女将さんはな、お前が持っていた殻剥きで刺されて死んでたんだよ」。

「おいらがやったんじゃない。おいらじゃないんだ。そんなはずないんだよ。だって女将さん、おいらに逃げろってお金までくれたんだよ」。
佐助は、よねに貰った金を見せる。
「しかし、備前屋と岡っ引きが踏み込んだ時、女将さん、もう死んでたんだぞ」。
だが佐助は「おいらがやったんじゃない。おいらじゃないんだよ」と言い張る。

「糸さんよ、あんた見たんだろう」と大吉が聞く。
「ああ」。
そう言うと貢は、佐助を見る。
「しかし、女将さんが殺されるところを見たわけじゃない」。

大吉は佐助に、なぜ、女将を自身番になど引き込んだのかと言うが、佐助は「そんなつもりじゃなかった」と言う。
人様の為に何かができる人こそ、勇気のある人だと大八は言ったのに、佐助が困っていた時、知らん顔をして行ってしまった。
貢も大吉も、それは見ていたはずだ。
大八は嘘つきだ。

「嘘をついたぐらいで、あんな大それたことをしたのか」と貢が言う。
「だって!」
貢は「人間なんてのはな、大体が嘘つきなんだよ」と言い、「人のことには関わりたくねえや!」と大吉は苛立つ。

その時、表からおきんの「よっ、八丁堀!」と言う声がする。
主水がずっと、大吉の家の表で話を聞いていたのだ。
佐助は怯えるが、主水が入ってきながら言う。
「小僧、外出るんじゃねえぜ。御用提灯がウロウロしてる」。

大吉は佐助が嘘ついてるとは思えない、何とかならないかと聞く。
しかし、虎松が見ていると言うし、証拠も揃っている。
佐助の無実を証明するのは、難しそうだ。
それを聞いて、佐助は大声で泣き始めた。

「おいら、もう、どうなってもいいや!でも…、おいら、何もしちゃいねえんだよ。おいらがあんなことしたばっかりに、女将さん死なちまった。おいら、おいら、申し訳なくて!」
しかし、佐助は本当にやっていない。
本当にやった奴を探し出してくださいと言って、佐助は頭を下げた。

佐助は主水によねがどこにいるか聞くと、主水は「自身番だ」と答えた。
「謝んなくっちゃ…」と言うと、佐助は「これ、置いてきます」と貰った小判を置いて外に出る。
主水がその包みを突付き、「4両へえってるぞ」と言った時、おきんが早くしないと佐助が捕まってしまうと叫んだ。
「おい、坊主!」と主水が追っていくが、佐助は「放っておいてくれよ」と走っていく。

佐助はその足で「女将さん、おいらだよ!」と言いながら、自身番に飛び込む。
主水が戻った時、自身番には虎松がいて、土間にはムシロをかけた佐助の遺体が置いてあった。
座敷にはよねの遺体と、寄り添う大八が座っていた。
虎松によると佐助は血迷って、今度は大八にまで向かって行ったのだと言う。

手こずったが、所詮は子供。
一発でぽっくりと、と、虎松は十手を拭きながら、「まあ、これも御上のご威光ってやつですかねえ」と言う。
佐助は十手で殴り殺されたのだ。
主水は黙って、ムシロを元に戻す。

大吉の家で、戻ってきた主水の話を聞いて、大吉はどうも佐助がやったとは思えないと言う。
その横で、貢は絵を描いている。
主水は大八がよねを殺す意味があるのかと、疑問に思っている。
貢が描いていたのは、虎松が連れてきた男の人相書きだった。

それを見た主水は、三次だと気づく。
全員が驚き、虎松と三次がグルだったことがわかる。
大八がよねを殺したわけが、これでわかった。

「そうか。あの小僧、誰もやったわけじゃねえんだな」。
「そうだろう、だから俺が言ってるじゃねえか!小僧の置いて行った銭だ!」
大吉が佐助の置いて行った小判を投げ出す。

さっそく、その夜、備前屋で部屋にいる大八の元に女中が、河岸の蔵に来てくれと言う人がいると知らせに来た。
これを見ればわかると言って、大八が渡されたのは、貢が描いた三次の人相書きだった。
虎松も三次に、大八が用があるからということで、河岸の蔵に呼び出されていた。
三次にかぶせた濡れ衣のことで、大八が金を出すのだと思った2人は笑っていた。

大八が蔵の鍵を開けていると、表で女が歌う声がする。
何かと思った大八が表を見に、ほんの少し、蔵の前を離れた時、貢と大吉が蔵に入る。
歌っていたのは、おきんだった。

大八を見ておきんが笑う。
おきんを見て、大八は蔵に戻り、暗い中に灯りをともす。
表で虎松が合図をすると、大八が蔵の中から戸を開けに行く。

虎松と三次が、蔵に入ってくる。
そして、大切な用とは何かと聞く。
大八の方が虎松と三次が、自分を呼び出した用は何かと聞く。
不審に思った大八が貢の描いた人相書きを見せると、虎松が自分が持っている人相書きを出して、同じものだと言う。

どうもおかしい。
だが今はそれより、金の話だと虎松と三次は言う。
三次に罪を着せて島送りにしたのだし、よねの殺しもある。
大八がいくら出すかと話をしている陰で、米俵に米を確かめる為の竹筒が差し込まれ、さらさらと米粒がこぼれ出す。

その音に大八が、気づく。
大八が金の話をごまかしているのかと思った虎松と三次だが、大量にこぼれ出した米粒の音に2人も気づく。
三次の後ろに、人影が映る。

「だ、誰かいやがるな」。
影が見えなくなる。
「誰もいるはずはない」と大八は言う。
しかし、三次と虎松は蔵の中を探しに行く。

米俵が積まれているだけで、蔵は静寂に包まれていた。
だが、三次の耳には、胡桃のすり合わせる音が響く。
しかし虎松が米粒がこぼれている俵を見つけ、三次に「これだよ」と声をかける。
一瞬、ビクッとした三次に虎松が「誰か細工しやがった奴がいるはずだな」と言う。

三次は匕首を手に、虎松は十手を手に、探し始める。
大八は座って竹筒を手に、2人を待っていた。
ピンという、貢が矢立の仕掛けを押す音がして、大八が顔を上げる。

匕首を手に、三次が進んでいく。
貢が突如現れ、三次をつかんで、大八の方に突き飛ばす。
大八が握っていた竹筒に、三次が刺される。

血に染まった竹筒を手に、大八が震え、竹筒を投げ出して逃げる。
大八が走ってきたところを、大吉が捕える。
目の前に迫る大吉の手を、必死になった大八が握って押さえる。

すると、グキリという音がして、大八の指が握りつぶされる。
目の前で胡桃が砕かれて、落ちて来る。
大吉が心臓をつかむ。

虎松は1人、蔵の中を進む。
ふと覗き込んだ先に、主水が歩いているのが見える。
驚いた虎松は、頭を引っ込める。

十手を持ったまま、歩いていくと、俵の陰に三次が倒れているのが見える。
虎松が駆け寄るが、三次が死んでいるのを見て、怯える。
貢の矢立の音がする。
虎松が、辺りを見回す。

そっと進んでいく虎松の前に、突然、貢が現れ、虎松の目に向かって矢立を振るう。
虎松が悲鳴をあげる。
貢が刃を収める。
目を押さえて虎松は走り、大八の死体につまづく。

手探りで大八の遺体と知った虎松は、声にならない悲鳴をあげながら戸口に走る。
必死に戸を開けようとしていた時、主水が虎松に近づく。
虎松の背中から、一気に刀を振り下ろす。
悲鳴をあげた虎松を、今度は正面から斬る。

仕事を終えた主水が振り返る。
貢がいる。
おきんが蔵の前を走っていく。

大吉は妙心尼に鐘がつきたいと言った。
その為に、1両持って来ていた。
主水が戻ると、せんとりつがツンツンしながら出て行く。

貢は再び、芝居小屋でかかる見世物の絵を描いていた。
鐘をつく大吉の手に、妙心尼が自分の手を添える。
2人は顔を見合わせ、笑って一緒に鐘をつく。



佐助に、すごく見覚えがありました。
すごく懐かしかった!
金子吉延さんですね。
「仮面の忍者 赤影」「河童の三平 妖怪大作戦」「どっこい大作」。

佐助、しじみ売りの少年、というより、まだ子供。
出かけていく主水に「旦那様、いってらっしゃいまし」と丁寧に挨拶するところがわざとらしくておかしい。
貢に芝居が嘘だと言って、描き直しなよと言うのでわかるけど、融通の利かないところがある。

しかし、部屋にしじみをばらまくぐらいなら、「こらー!」でお客さんを1人なくすだけだった。
何でよねを人質にしちゃったんだー!
ばかばかー。

だけど、佐助がよねに謝りに走るところは、純粋でかわいそう。
よねはもう、死んでいるのはわかったけど、佐助が殺されているのはショック。
どっこい大作が殺されてる~。

虎松役も、すごく懐かしい。
潮建志氏です。
「悪魔くん」のメフィスト、そして何と言っても「仮面ライダー」の地獄大使!

この人に似ている人を、私は知っている。
小学校の時、近くに住んでいた人だけど。
10年ほど前に小学校を訪ねたら、この人の家はまだあった!
その人はとっても気が弱い人だったけど、まだここに住んでいるんだろうかと思った。

貢と大吉が、芝居小屋の外で一緒にいるのが、個人的におもしろい。
よく一緒に遊んでるな~と。
佐助が街のヤクザにやられているのなんか、大吉は本来なら止めたかったと思います。
頭に来た佐助が「嘘つきだ!」と言って、貢の芝居小屋の絵をメチャクチャにするのを見た貢の「あちゃー」って顔がおかしい。

大吉の家に来た貢、暗い大吉の家を見て、「なんだ、『なりませぬ』の最中じゃないだろうな」って言う。
まじめな貢の言葉だからおかしい。
「あがるぞ!」と暗い中、上がりこんだ貢は散らかっていた茶碗につまづく。
「ああ~、汚ねえ奴だなあ」と言うのも、地味におかしい。

貢、それでも崩れた茶碗を元に戻していると、後ろから佐助が現れる。
それで、佐助をまともに扱わない貢。
さらに家にいるのが佐助だとわかると、「なーんだ」って感じの大吉。

そうだよね、当たりは柔らかくても、殺し屋なんだから、佐助が怖いわけはない。
佐助の話を聞いていると、おきんが来て、表で主水が聞いているのがわかるのも上手い。
「人間なんてのは大体が嘘つきなんだよ」と、貢が話す。
貢は頭がいいし、大人だから、そういうものも許容する懐の深さがある。

仕留め仕事では、蔵の中、佐助を追い詰めた男、殺した男を散々、怯えさせる仕留人たち。
さらさら、さらさら、米が流れる音が不気味。
ここのシーン、殺人鬼が潜む蔵で、エジキになる被害者のシーンに思えるほど、緊張感があって怖い。
まさに「暗闇」仕留人。

貢が手を下すのではなくて、三次は大八に刺される形になるのが意表をついてます。
意外にも、大吉の手を押し留めようと奮闘する大八。
でもその指が折れるから、すごい。

虎松が見ると、蔵の闇の中、主水がふっと見えて消えるのが不気味。
場違いなところに、場違いなものが見えるって怖い。
静寂の世界で、貢の矢立の、ピンという音が効果的。

いつ、どこから仕留人が来るか。
そして突如現れ、襲い掛かる貢が、虎松の目を封じる。
結構、残酷。

逃げる虎松が遺体につまづき、パニックを起こす。
そこを主水がバッサリ。
仕留めシーンは潮氏の動きがメインで、潮氏の演技がこのクライマックスを支えている。

最後におきんが、仕留めが終わった蔵の前を走って行く。
大吉が妙心尼に鐘をつきたいというと、妙心尼が何か勘違いして横たわるのがおかしい。
ちゃんと代金として、1両持ってくる大吉。
2人で鐘をついているのが、微笑ましい。

その鐘が響く中、せんとりつにツンツンされる主水が対照的に映る。
絵を描いている貢も映る。
佐助と、よねの供養になる鐘の音の中、ほのぼのして終わります。


冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえ 「暗闇仕留人」第23話

第23話、「晴らして候」。


ある夜、大吉が深川で、女衒の和助を仕留める仕事を行った。
そっと相手の家を抜け出し、屋根の上を歩いて辺りを見回し、飛び降りる。
すると背後から1人の男が現れ、思わず大吉は右手を構えたところだった。

その男は大吉に気づくと軽く会釈して、屋台に寄った。
大吉が密かに後をつけると、屋台の親父は笑って男に「イイコが揃っているでしょ。そこの岡場所には」と言っていた。
夜が明け、その男は呉服屋の手代・佐吉で、与力の一家を殺した罪で、南町奉行所にお縄になった。
妹のおそのは、何かの間違いだと叫ぶ。

南町で佐吉は叩きの拷問を受けながら、同心・間宮は佐吉が与力・原の娘に懸想しており、手篭めにしようとしてついに原の一家を刺し殺すに至ったと責めた。
現場に佐吉の手ぬぐいが落ちており、返り血を浴びた着物を脱ぎ捨てた際に落としたのだと言われた。
だが、原一家を刺し殺した相手は今、間宮と共に佐吉を攻め立てている勘助であった。
佐吉は岡場所に行こうとしたが、途中で気が変わって引き返したのだと訴える。

その間宮は、湊屋郷右衛門と密談していた。
湊屋はいっそ、拷問で責め殺してはと言うが、与力殺しといえば人々の面前で処刑しなければ奉行所の面目が立たないと言う。
長引けばこちらが危うくなると言う湊屋に対して、間宮は望みを断てば良いと言った。
今、佐吉はいつかは無実とわかるという希望を持っている。

だから佐吉に絶望させ、嘘の自白をして楽になろうというように追い詰めれば良いのだ。
今、佐吉の無実を信じているのは妹のおそのだ。
佐吉の一縷の望みは、おそのだろう。
それを断てば良い。

なじみの飲み屋の主人が、通りかかった大吉に、深川の芸者が大吉を訪ねて来ていると言う。
深川の芸者と聞いて、デレデレとしてやってきた大吉だが、それはおそのだった。
大吉を見ておそのは、これで兄が救われると言った。

おそのの話を聞いた大吉は、飲み屋の外におそのを連れ出して、話を聞く。
先々月の晦日の夜、兄と出会ったことを白洲で言ってくれれば、兄の潔白が明らかになるとおそのは言う。
それで大吉はあの夜、出会った男が佐吉だと知る。
兄の佐吉は岡場所に行こうとして思い直して引き返し、その途中で大吉と会っているのだ。

佐吉は先ほど、大吉がいた飲み屋に仕事帰りに寄っていたが、そこでは大吉がいつもにぎやかに騒いでいた。
だから佐吉は大吉の顔を覚えていた。
その為、夜道でぶつかった時、大吉だとわかったのだ。
しかし、仕留め仕事の帰りだった大吉は名乗り出ることはできない。

大吉はおそのに、佐吉とぶつかった男は自分と似ているのかもしれないが、自分は深川に行ったことはない、それは人違いだと言う。
おそのの顔色が変わった。
先々月のことだから忘れているのでは?と言うおそのを振り切り、大吉は走って逃げた。

大吉が家に飛び帰ると、貢がいる。
思わず飲み干そうとして茶を噴いた大吉に、貢が何かあったのかと聞く。
大吉は女衒の和助を殺したことが、ばれると言った。

「女衒の和助?」
「弱ったなあ、こいつは」。
大吉は貢に先ほどの話をした。

「それで?おそのさんには何て言ったんだ?」
「もちろん、人違いだと突っぱねたよ」。
「そうか、それはよかった」。

これで佐吉は獄門か、磔だ。
「まあ、濡れ衣なんだから、いずれ晴れるんじゃないのか」。
「いや、晴れねえからこそ、一生懸命俺を探してたんじゃねえのか」。

飲み屋のオヤジにも口止めをしておこうと、貢に同意を求める。
絵に夢中になっている貢は返事をしなかったが、大吉が同意を求めているのに気づくと、「そうとわかったら、とっとと行けばいいじゃないか」と言う。
「けっ」と言って、大吉は出て行く。

しかし、大吉はすぐに気づいた。
大吉のほかに、佐吉を見た男がいる。
蕎麦屋の屋台のオヤジがいたではないか。

気づいた大吉が家に戻り、貢に明るく説明をすると、貢も「ああ、なるほどな」と言う。
大吉は蕎麦屋を探しに出て行く。
だが、蕎麦屋の伊三次は商売をやめて、引っ越していた。

夜が空けたら、伊三次の家はもぬけの殻になっていたらしい。
富くじが当たったということだったが、大吉に話した男は、そんなわけがないと言う。
そしてそういえば伊三次を訪ねて、若い女が来ていたとも言った。

翌日、町で大吉は、おそのの後をつける。
しかし、おそのの後をもう1人、目明しがつけているのに気づく。
伊三次を訪ねたおそのは、今は金貸しとなっている伊三次に体を強要された。
おそのは兄が牢から出たらと言うが、伊三次は先の話は当てにならないと言う。

兄の無実の証言の為、伊三次に迫られるおそのを、大吉は天井裏から見ていた。
頭に来た大吉は、その夜、家に戻ると徳利を蹴飛ばして怒った。
貢に「どこへ行くんだよ」と聞かれ、「決まってるじゃねえか!いちかばちか、俺ぁ奉行所に名乗って出る」と言う。

「あーあ」と呆れる貢に「俺は見ちまったんだぜ!兄貴を助けたい一念で、体を売った女を!」と言った。
しかし貢は「しかし、それで伊三次という男が商人になるって言うんなら、それでいいじゃないか。お前さんがそれ以上何、やることがあるんだい」と言う。
「それじゃ、おそのさんが、かわいそう過ぎるじゃねえか」。
おそのは伊三次が嫌で、必死に大吉を探したに違いない。

「もう済んだこったい!」
そう言うと、貢は矢立の刃を拭いていた手ぬぐいをたたきつける。
「かーっ、冷てえ男だな、おめえも!」

「ああ、冷てえさ。冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえんだよ!」と、貢が大吉に向かって矢立の針を突き出す。
大吉が黙る。
「お前だってわかっているはずだぜえ?俺たちにはなあ、人助けなんかできやしねえんだよ。そんなこと考えるのはな、それこそ身の程知らずってやつだい」。

「ぬ、抜かしやがって」。
「ああ、何とでも抜かしやがってやるぞ。おめえさんがわかるまではな!」
貢に口答えできなくなった大吉は、「ちくしょう、わかったよ!やめりゃあいいんだろ、やめりゃ!どうってことねえや!」と言った。

その夜、金貸しの伊三次の家から、勘助が出て行くのを見た大吉は伊三次の家に入る。
すると、伊三次は首を吊っていた。
おそでがやってきて大吉を見て「あなたさまは!」と言う。
「入っちゃいけねえよ」と大吉はおそでを連れて去っていく。

「そんな!」
「俺がこの目で見たんだ。間違いねえ」。
「どうして…、どうしてあたしたち、いつもこんな不幸なことばっかり…。せっかく明日、一緒に奉行所に行ってくれると言ったのに」。

今度のことはどうでも佐吉を下手人に仕立てないと、都合の悪い奴がいるのだろう。
伊三次が自殺などするわけない、殺されたのだ。
大吉はそれで誰か得をする奴がいないのか、佐吉はどんな罪で捕まったのかと、おそのに聞く。

おそでによると、兄の佐吉は与力の原のお嬢様には気に入られており、その為、佐吉は反物を持ってお屋敷にあがっていた。
でも佐吉は、小さい頃から虫も殺せず、からかわれていたぐらいなので人殺しなどできない。
だがどうしても大吉は、佐吉に会ったとは言えない。
他におそのに身よりはいないのかと、大吉は聞いた。

おそでが10歳の時、両親がいなくなって、16になったばかりの佐吉が、おそでの手を引いて江戸に来た。
それから2人は呉服問屋に奉公し、8年間懸命に働いた。
何一つ、悪いことなどしていない。
なのに店の者からも白い目で見られ、鬼の兄弟と言われて追い出されて、おそのは芸者となった。

佐吉の妹とわかると、どこも雇ってくれず、塩までまかれたこともある。
「誰もこの世の中で、味方になってくれる人などいません。誰も」。
おそでは涙をこぼして話すのを、大吉はただじっと黙って聞いていた。

翌日、大吉は主水に、南町の与力の間宮のことを聞いた。
主水によると、南町の切れ者だと言う。
貢から聞いていた主水は、大吉1人が殺されるならまだしも、自分たちまで巻き添えはごめんだと言った。
絶対に迷惑はかけないと言う大吉に、主水は「それならいいんだけどな」と言う。

「まかしておけって」と大吉は言うが、与力一家殺しは北町ではどう考えているのか。
主水は南町の知り合いに聞いたが、原はある抜け荷について調べていたらしい。
狙いはここ1、2年で急にのし上がった、海産物問屋の湊屋だ。
この主の郷右衛門が、なかなかしっぽを出さない。

どうも原が殺されたのは、この件ではないのか。
妻や娘まで殺したのは、目的がばれないようにだろう。
そして、間宮が郷右衛門の家に出入りしていたとなれば、どうなる?
郷右衛門と間宮がグルで、自分たちの罪を追う原を殺し、その罪を佐吉になすりつけようとしているのではないか。

「何だっていいんだよ」と大吉が立ち上がるが、主水が戸を閉める。
大吉が「何にもしやしねえよ」と笑うが、主水ににらまれて、おそのを付回していた目明しを捕まえれば、本当のことがわかると言った。
すると主水は十手を出して、大吉に押し付けると「ここ当分な、おめえを張らせてもらうぜ」と言った。

その頃、間宮は郷右衛門と、伊三次を殺したことと、大吉はどうも後ろ暗いところがあるらしく、逃げ回っていることなどを話していた。
おそのは絶望しているだろうが、間宮はあともう一押しが必要だと言う。
一方、大吉は妙心尼との逢引にも上の空だ。

どうもどっかから、義兄さんに見られているような気がする。
そんなわけはないと妙心尼が言った時、主水のクシャミが聞こえる。
背後の戸が開いて主水が見えると、妙心尼は気まずそうに大吉から離れる。

「こうなったら」と大吉は平然と妙心尼を抱き寄せるが、主水がいるのを知った妙心尼は「なりませぬ」と言う。
しかし大吉は妙心尼の耳元で、主水にナイショで行きたいところがあるから、このまま続けてくれと言う。
「なりませぬ!」と言う声に追いかけられながら、大吉は出て行く。

抜け出した大吉は、料亭の座敷に芸者のおそのを呼んだ。
おそのは大吉を見て驚いたが、頭を下げて座敷に入ってくる。
酌をしながら、大吉は、佐吉の無実を晴らすには、「本当の犯人を捜す以外に手はねえとと思うんだがな」と言った。
間宮が何かあるような気がすると言うと、おそのは「もういいんです」と言う。

「兄さんの身の証を立ててくれる人が見つかったんです」。
「本当か。どんな野郎だ」。
それは貸し本屋の直次郎で、明日の白洲で見たとおりのことを言ってくれると言った。

「その直次郎ってのは、信用おけるのかな」。
その時、その直次郎が入ってくる。
「直次郎さん!」

「おそのさん、この人ですね?」
「ええ」。
直次郎はしっかりした身なりを整えなおすと、大吉の前に座り「あなたは卑怯だ」と言った。

おそのの話を聞いたら、どう考えたって、佐吉にぶつかったのは大吉だ。
「人違いだ!」
大吉が直次郎に何を見たのか聞くと、同じ晩に岡場所から引き返す佐吉をはっきりと見たのだと言う。
直次郎は岡場所に何しに行ったと大吉が笑って聞くと、直次郎はキッパリと言う。

月の15日と晦日の日には、決まって必ず、お女郎さんたちに貸本を見せに行く。
だが先々月は翌日から上方へ新しい本の仕入れに行っていた為、事件を知らなかったのだと言う。
3日前に知って驚き、直次郎はおそのを探した。

佐吉も直次郎は知っている。
「今度こそ、きっと」と、おそのは言った。
「だけどよ、間宮って野郎は、相当の代物だぜ。気をつけねえと…、金貸しの伊三次の例もあることだしな」。
「このことを知っているのは、おそのさんとあなたと私だけです。あなたさえ、他所にもらさなければ」ち直次郎は言う。

「俺はしゃべりゃしねえよ!」
「それじゃ、大丈夫ですよ!」と言うと、直次郎はおそのに言った。
「おそのさん、佐吉さんは無実なんです。何もやっていない人が、もう三月も暗くてジメジメした牢の中で助けもなく、苦しんでいる。こんなバカなことがあって、たまりますか!」

おそのは目を伏せた。
「私は我慢できない」。
直次郎はおそのを見つめ「おそのさん、私は命なんか惜しくありませんよ。正しい者が負けるはずないじゃありませんか」。
おそのと直次郎は、大吉の前で見詰め合い、互いにうなづいた。

2人を見ていた大吉は居場所がなくなり、そっと立ち上がり、出て行く。
「おそのさん」。
「直次郎さん」。
大吉が出て行くと、2人はしっかり抱きしめあった。

翌朝、おそのと直次郎は白洲にいた。
おそのは、わずかに微笑んでいた。
佐吉が引き立てられてくる。
振り向いた佐吉を、おそのはしっかりとした視線で見つめた。

直次郎の名前が呼ばれた。
奉行から、先々月の晦日、深川の岡場所で佐吉を見たのかと聞かれ、「はい、確かにこの目で佐吉さんを見ました」と言う。
後ろで、おそのが見守っている。

「それはいつ頃か」と聞かれ、直次郎は「五つ半頃だったと思います」と答えた。
「思います?」と言われ、「五つ半でございます」と言い直す。
岡場所のどの辺りかと聞かれると、「はっ?」と言う。
「門の外で、ございます」。

「直次郎、お前、誰に頼まれた?」と間宮が言う。
「ええっ?」
白洲で偽りを申し立てれば、どうなるかと言われた直次郎は、直次郎が佐吉を見たという9月30日の翌日、つまり10月1日に直次郎を京で見たという者がいると言われる。

江戸から京までは、飛脚の足でも6日。
どうやって一晩で、直次郎は京までたどり着いたというのか。
後ろで聞いたおそのも驚く。
黙っていた直次郎だが、突然、「申し訳ございません!全部、でたらめでございます。本当はこの夏から佐吉さんには会っていませんのです」と言い出す。

「悪いのは私ではございません。ここにいるおそのです!」と直次郎はおそのを指差す。
「おそのさん、何か言ったらどうなんだ!何もかも、おそのがたくらんだことでございます!」
「何を言うの!」

「怖ろしい女だ。体で私を誘惑しておいて、根も葉もないことをお白洲で言うのは嫌だというと、やれ、家に火をつける、人殺しをした男を何人も知っていると夜叉のような顔で私を脅かすのでございます」。
これには佐吉が「嘘だ!妹はそんな女じゃない!」と叫んだ。
だが直次郎はなおも、「私だってまだ死にたくはない!殺されるぐらいならいっそ、佐吉に会ったと言った方が」と言う。

佐吉は直次郎に詰め寄ろうとして、おそのが悲鳴をあげる中、連行されて行った。
白洲で嘘を言った罪で、おそでも直次郎も縄をかけられた。
必死の訴えのおそのも、組み伏せられた。
連れて行かれる直次郎が鋭い目つきをしてうなづき、奉行の横に控えていた間宮がかすかにうなづいて合図をした。

その夜、牢の佐吉のところに間宮がやってきた。
間宮は、「おそのをかわいそうだとは思わないか」と言った。
本当ならそろそろ、好いた男と幸せになれる年頃だ。
だが今は女牢の中で、すすり泣いていることだろう。

しかし、おそのの罪は軽い。
佐吉さえ、素直になってくれれば、おそのの罪は見逃してやってもいい。
間宮はそう言うと、佐吉に「「どうだ、佐吉、白状するか?楽になれ。お前の苦しみはこのわしが一番良く知っている。さあ、楽になれ」と言った。
佐吉はむせび泣いた。

翌日、雨の中、ついに佐吉の処刑が行われた。
間宮が満足そうに見ていた。
主水が大吉に、佐吉が処刑されたことを告げに来た。
どうもおかしいと思ったら、昨日許可が下りて、今日すぐにこっそりと行われた。

直次郎はというと、おそのに脅されてやむを得ずということで、とっくに解き放しになっていた。
それを聞いて、貢も渋い顔をした。
「何もかもはめるつもりで企みやがったな」と大吉が言う。

間宮にとって、証人を作ることなどたやすい。
都合が悪ければ、握り潰す。
「おめえだってノコノコ出て行けば、今頃は…」と主水が言った時、物音がして、貢が制する。
目で「表だ」と合図する。

表の戸には目明しの勘助が張り付き、聞き耳を立てていた。
主水が刀に手をかけ、戸口に近づく。
雨戸に向かって、刀を刺し貫く。

勘助が張り付いている雨戸越しに倒れ、貢と大吉が勘助を運ぶ。
戸を閉める大吉の後ろから、おそのが現れる。
「おそのさん!」

おそのは中に入ると「あなたたちは、もしかしたら」と言う。
背中を向けたまま、主水が「もしかしたら、なんでえ」と聞く。
「お金を出せば、恨みを晴らしてくれると…?」

3人が顔を見合わせる。
おそのが金を出す。
「ここにお金があります。これで兄さんの仇を。頼みます。頼みます」。

おそのは大吉に向かって金を出し、貢に、主水に両手を合わせる。
「わかったぜ、おそのさん」。
大吉が4両を持ってそう言うと、おそのは泣きながら笑顔になった。

雨が上がり、直次郎が、湊屋も間宮も喜んでいるとひとりごちた。
その時、直次郎は外の物音に気づいて「どなたですか」と声をかける。
障子に影が映り、貢が「湊屋さんの紹介で参ったんですが」と答える。

「湊屋さん?」
「私、ちょっと趣向の変わった絵が描けるんですがね。こちらで雇ってもらえると聞いたもんで」。
「ほお?」
「何ならここで、ためしに描かせてもらえませんか?」と貢が言うので、直次郎は横柄に「そうかい。それならちょっと描いてもらおうか」と直次郎は貢を招きいれた。

貢が矢立を手に、筆を取り出し、おもむろに直次郎の前で描き始める。
直次郎が貢の持って来た絵を見て、「なかなか良く描けているね」と感心する。
貢の描いている絵が、女の顔になっていく。

ちらりと貢が、直次郎を見る。
描いている絵に髪を描き、唇に紅を入れる。
おそのの顔が浮かぶ。

直次郎が絵を取り上げ、「おそのに似ている…」と凝視する。
貢が筆を矢立に仕舞う。
直次郎が、絵を目の前に近づけて見ていく。

貢が矢立の針を、絵に押し付ける。
絵のおそのの額を貫いて、針が直次郎の額に刺さる。
おそのの額から、血のついた刃が下がる。

貢が睨む中、おそのの絵を額に押し付けたまま、直次郎が倒れる。
直次郎はおそのの絵の上で、死んでいるのを、貢が見下ろす。
刃を収め、矢立を懐に入れる。

湊屋では、間宮が郷右衛門と飲んでいた。
明日、また抜け荷の船が来るという。
そこに直次郎のところから絵を持って来た男が来たと言って、使用人が来る。
湊屋が、間宮が気に入るような絵を持って来させる約束だったらしい。

通されてきたのは、貢だった。
貢は湊屋に絵を見せ、ふと天井を見上げる。
天井の板が外れ、大吉が顔をのぞかせる。

2人は貢の持って来た絵を見ているが、最後に女の顔の絵が出てくる。
おそのの絵だった。
額に赤く、点がついている。
「おその」と間宮が言う。

「何?おその?」と湊屋が絵を見る。
「何かその絵が?」と貢が聞き、ちらりと間宮を見る。
間宮の顔が歪む。
貢を見て、「きさまぁ」と言って立ち上がる。

刀を抜いた間宮を見て、貢が「何をなさいます」と驚く。
「何奴!」
その時、胡桃をすり合わせる音がする。
間宮が気づいて、後ろを向く。

貢がすばやく間宮に近寄り、矢立を開く。
矢立から出た刃が、間宮の首筋に刺さる。
間宮が目を見開き、固まる。
貢が矢立を抜く。

突然、目の前で倒れた間宮を見て、不思議そうにしていた湊屋が仰天する。
這うように進み、置いてあった刀を抜く。
貢が矢立を構えている。

湊屋の背後で、大吉が胡桃を砕く。
その音に振り向き、大吉のほうを見た湊屋の正面の鎧の、首の部分から大吉の手が出てくる。
大吉は湊屋の心臓をつかむ。

湊屋が倒れ、大吉が睨む。
貢が矢立を仕舞い、絵を持つ。
大吉が湊屋から刀を取り、もとの場所に収める。

酔客を連れて、おそのが出会い茶屋の前にいる。
男が「部屋空いてるかい」と、茶屋に声をかけに中に入る。
おそのが先の暗闇を見ていると、貢が歩いてくるのが見える。

光に照らされて、貢がおそのを見るが、すぐに目を伏せる。
貢はただ、酔客の間を歩いて進む。
おそのが、目で追う。

もう一度、おそのが先の暗闇を見ると、今度は大吉が歩いてくる。
おそのと大吉が、見詰め合う。
大吉が止まり、おそのを見つめる。
わずかにうなづいたように、見える。

おそのもかすかに、唇に笑みを浮かべたように見える。
大吉は去っていく。
「おそのちゃん」と男が声をかける。

「はいはい」とおそのが笑いながら、男についていく。
その顔は、晴れ晴れとしている。
大吉はおそのの声を聞きながら、1人、暗い道を歩いていく。
貢が暗闇に消えて行き、大吉が後に続く。



冒頭、大吉が仕留めた相手が小判を撒き散らして絶命。
一瞬拾おうとした大吉。
ハッとして、「冥土まで持っていきやがれ!」と言って置いて行く。

いつも感心するんですが、どれほどお金があっても「必殺」の殺し屋さんたちはほとんどが頼み料以外には手をつけない。
「仕置人」で一度、鉄が金座の仕置きをした時、拾ってましたけど。
人の血がしみこんでる金ということもあるだろうし、ただの物取りじゃないということですね。

捕えられた佐吉が、拷問を受ける。
間宮が佐吉に自白を迫り、犯行の様子が語られる。
犯行が再現される。

赤い、血のような画面。
与力の娘、妻、そして与力が殺される。
しかし、「仕掛人」の音楽終了と共に振り向いた男が、佐吉じゃない。

それは目明しの勘助。
勘助が恐怖におののきながらも、手についた血をぬぐう。
ここで見ているほうには、佐吉の無実がわかり、犯人は勘助だとわかる。
うまい。

妹のおそのは、大谷直子さん。
おそのと一瞬、いい仲になりそうだった直次郎は石山律雄さん。
こちらも2度目の登場。

しかし今回は、人が良さそうで実直そうなのを逆手に取った。
これは誰でも騙されると思わせるキャスティング。
石山さんはそんな悪役を、たまにやってくれて、そういう時は本当にたちが悪くて怖い。

おそのを心配してきた大吉だけど、直次郎と言う誠実そうな証人を得たおそのは、冷たい目を大吉に向ける。
そして、おそのと直次郎の惚れあった感じに、大吉は当てられて出て行く。
この一晩のおそのは、本当に幸せだったんだろう。
翌日のお白洲で、おそのの顔が充実している。

しかし、奉行というか、奉行に入れ知恵した間宮の追及で、たちまち証言を翻し、おそのを罵倒する。
そこで、「妹はそんな女じゃない!」と怒る佐吉。
2人きりで頑張って来たという、兄妹の絆の深さがうかがえる。

今回も相変わらず貢が、大吉の家にいる。
それで、口調がさらに砕けている。
おそのに証言してくれと迫られ、あわてて振り切って家に戻った大吉が、やかんから直接茶を飲んで、すぐに噴いてしまう。
すると貢、「汚ねえ奴だなあ。 何だやばいことでもあったのかい」と言う。

さらに屋台の蕎麦屋のオヤジのことを思い出して、さっそくそのオヤジを探しに行く大吉に、「出たり入ったり忙しい奴だな、まったく」と言っている。
ところが出て行ってすぐに引き返してきた大吉、座敷にいる貢に、「おい、その飲み食いした分、ちゃんと銭置いてけよ!ここは俺んちだからな!」と言う。
ごもっとも。

しかし、貢、「ってやがんでえ、するめの足しかねえじゃねえか」と、するめを手にして言う。
かつての貢さんには、考えられない口調。
貢が大吉が訴え出ると言った時、貢は何をしているかと思ったら、矢立の手入れをしてるんですね。
分解掃除?

名乗り出ると言った大吉を諭している間、貢は矢立を磨いているんですね。
「かーっ、冷てえ男だな、おめえも!」と怒った大吉に「ああ、冷てえさ!冷えてなきゃ、こんな稼業できやしねえんだよ!」と言う。
そして、針を大吉に向ける。

最初の頃、仕留め稼業に、自分なりの理想と正義感を持って、かろうじて罪悪感を紛らわしていた貢。
それが「冷えている」と言う。
「俺たちには、人助けなんかできやしねえんだよ。そんなこと考えるのはな、それこそ身の程知らずってやつだ」という言葉は、貢が仕留めの経験で得たところから来た言葉か。

あやさんがいる時は、こういった口のききかたはしなかった。
こんな態度は、しなかったと思う。
そして、大吉に説教して、また針を磨き始める。
身も心も裏稼業に染まったように見える貢。

おそのが来た時、貢がくすんだ黄色っぽい、縞模様の着物を着ている。
珍しい。
貢のイメージって、青なんです。
でもこれも以前の貢なら考えられない服装。

この後、おそのの身の上を聞いた大吉が、今度は家で主水と火鉢に当たりながらするめを食べている。
今回は、するめばっかり?
大吉がおそのをかわいそうに思ってしまって、奉行所に行きそうなので主水も見張る。

そこで主水は、妙心尼のところにまで行っている。
お義兄さまがいるわけがないと言う妙心尼と大吉とがイチャつきはじめると、主水はクシャミで存在アピール。
しかも鼻をかむ紙を大吉に貰って、「遠慮なく、続けてくれ」と言って出て行かれても妙心尼だって困る。
情けなさそうな妙心さん。

主水の殺しは、勘助。
おそのが大吉の家に入ってくると、主水は背を向けている。
おそのに手を合わせられ、冷たいことを言っていた貢が気まずそう。
主水の殺しから、おそのが頼むまで「旅愁」が流れる。

直次郎を訪ねた貢が、絵を描き始める前に、おもむろに矢立を取り出す。
ピン、という音が響く。
緊張感。

ちらりと直次郎が見た貢の持って来た絵は、どうも責め絵らしい。
うーん、皆さん、責め絵、お好きですね!
貢の描いている絵が、女の顔になっていき、直次郎が絵を取り上げ、「おそのに似ている…」と凝視する。

筆が矢立に仕舞われ、ピン!という音がする。
針がおそのの額を貫いて、それを見ている直次郎の額に刺さるスピーディーさ。
はっきり、女の恨みだと言っているよう。
おそのの額から、血のついた刃が下がって、絵のおそのの額に血の点がつく演出もすごい。

主水が殺した目明しを貢と大吉がすっと運んだり、貢が天井を見上げると大吉がいたり、仕留め3兄弟の息がピッタリ。
湊屋で、おそのの絵の額に赤く点がついているのが怖い。
刀を抜いた間宮を見た貢が「何をなさいます」と言う口調が、とっても驚きに満ちていて、礼儀正しい。

間宮が胡桃の音で後ろを向くと、貢が矢立を首筋に押し付けてピンと開くと針が出てくる。
針が深々と、間宮の首筋に刺さる。
この動きが、とってもスピーディー。

湊屋の正面の鎧の、首の部分から大吉の手が出てくるのもすごい。
間宮が主水じゃなくて、貢なのも意外。
後の主水のシリーズなら、ここは絶対主水でしょう。

仕留めが終わった後、酔客の相手をしているおそのの前に貢が現れるのが良い。
暗闇から現れて、ちらりとおそのを見る。
仕事の完了をさりげなく、知らせている演出。
そして、助けてやれなくてすまないと思っているのかもしれない。

その後、大吉が歩いて来る。
おそのと大吉が、見詰め合う。
大吉のかすかな表情。
おそのの唇も、かすかに笑うような、笑わないような、微妙な動き。

貢にも大吉にもセリフはない。
でも、互いに言いたいことが通じ合う。
石坂浩二さん、近藤洋介さん、大谷直子さんの無言の演技がすばらしい。
寂しげな、でも暖かそうなハーモニカの音楽が流れる。

おそのがどういう境遇に落ちたのかは、言わなくてもわかる。
だけど、恨みは晴れた。
おそのはこれで、生きていけるんだ。
強い女だ。

そんな思いがするほど、おそのの最後の表情は晴れやか。
貢と大吉が、暗い道を歩いていく。
やがて闇の中に消えていくのが、闇の仕留人として象徴的。
しかし、この後、貢は大吉の家に泊まっちゃうっぽいですね。


あんな悪党、生かしておきません 「暗闇仕留め人」第21話

第22話、「怖れて候」。
ホラー並み。
ジェイソンかと思うくらい、怖い男が出て来ます。


秩父の山奥まで墓石の買い付けに来た大吉は、駕籠屋と競争しながら道を行く。
駕籠に乗っていたのは材木問屋「檜屋」の主人・喜三郎だった。
大吉が見ている目の前で、喜三郎はこれ以上山奥にはいけないと言われ、歩いて自分の店の材木の伐採場所まで行った。
喜三郎は、娘の櫛が上流から流れてきたと人足たちから聞いてやってきたのだ。

その頃、金を採掘しに来た3人組の首領・熊蔵から隙を見て逃げ出した娘のちよと喜三郎は、偶然出会った。
大吉を見つけた喜三郎は、大吉の引いている車にぐったりしたちよと、ちよの抱いている子供を乗せてくれるよう頼む。
ちよを預けた人足たちは、ちよを攫った熊蔵を探しに行く。

大吉は座ってタバコを吸っていたのだが、間もなく1人の男が大吉の前で背中に手斧を刺されて死んだ。
驚いた大吉が見に行くと、熊蔵を探しに行った者たちは1人残らず、手斧を打ち込まれて殺されていた。
ふもとの町まで降りた大吉に、喜三郎は引き続き、江戸まで連れて行ってくれと頼む。
大吉は代官所に行けば良いと言うが、こんなところに代官所はないし、第一、山の奥のことまでは関知しないだろう。

熊蔵は虎次と丑松という男たちとともにいたが、丑松はちよなど放っておいて、お上の目をかいくぐって掘った金を使おうと言う。
その途端、熊蔵は丑松を刺し殺した。
丑松の背中を通って、刃が戸を貫くほどの力だった。
仰天した虎次は、熊蔵が江戸に行ってちよを連れ帰るまで待っていると約束した。

喜三郎は奉行所に駆け込み、熊蔵がちよを取り戻しに来ると訴えた。
だが、奉行所は忙しいので、わけのわからない仕事はやりたくないと主水を寄越した。
主水が檜屋に行くと、ちよは黙り込み、喜三郎と喜三郎の死んだ女房の弟で、店のことを任せている儀助が応対に出た。

喜三郎の話はこうだった。
3年前、ちよに婿養子を取り、夫の仕事を知らなければ良い女将にはなれないと言って、婿養子と一緒に材木の買い付けに行かせた。
そこでちよの夫は熊蔵に殺され、ちよは熊蔵にさらわれたのだ。

ちよの抱いている子供の三吉は熊蔵の子供ではなく、夫の子供だ。
だが熊蔵はちよと暮らしているうち、いよいよ、三吉が邪魔になってきた。
ちよは三吉を殺されるくらいなら、山で一緒に死んだほうがましだと思い、逃げてきたのだ。

喜三郎は、奉行所に守ってほしいと頼む。
主水はそんな山奥に引っ込んでいる悪党なら、何かやましいことがあるに違いないと言う。
だから、山に逃げ込んでいたはずだ。
それがノコノコ、江戸に来るとは思えないが、気が休まるというのなら、奉行所とは別に、内密で主水が用心棒を用意すると言った。

話を終えた主水が夕焼けの中、大吉の家に行くと、貢が鍋を作っていた。
「やあ、どうしました。そんな冴えない顔をして」。
「今夜、寝ずの張り番、頼まれてな」。

その頃、大吉は浮気の疑惑をかけられ、妙心尼に責められていた。
しかし、大吉が秩父での事情を話すと妙心尼は、檜屋の先代の女将の墓がこの寺にあると言う。
妙心尼によると、若夫婦がいたが、夫は若いのに死んでしまい、若女将は2年前に行方不明になっていたということだった。
だから大吉がその若女将を見つけて連れてきたのだと言うと、妙心尼の誤解はやっと解けた。

大吉の家で、主水と貢と、寺から帰ってきた大吉が鍋を囲む。
主水は大吉が3両も貰ったのに、自分は寝ずの番で、一文にもならないと愚痴る。
「当然じゃないか、八丁堀は仕事なんだからさあ」と貢が言うが、大吉は「この3両は貰いすぎだと思う」と言った。

よほど、娘が帰ってきたのがうれしかったのか。
はたまた、怖ろしかったのか。
主水が暇なら化け物見物に来ないかと誘うが、主水は来ないと思っていた。

その夜、主水は檜屋の縁側で見張りをしていた。
夜半、うとうととした主水だが、喜三郎もちよも、儀助も一睡もできずに起きていた。
パキン、という音がして、緊張が走るが、主水が冷えたので厠を貸してくれと入ってきた。
何事もなく、夜が明けた。

取り越し苦労と言って主水は帰るが、喜三郎は今夜もお願いしたいと言う。
主水はあくまで、何もいただかずに好意で行ったことだと言って、何かあれば奉行所に来てくれと言う。
だが、ちよは熊蔵は必ず来ると断言する。

喜三郎は思いあまって、店の金子を持ち出そうとしていた。
2年前から店のことは全て預かっているという儀助が止めようとするが、喜三郎はこの金でちよを守る人を探すのだと言う。
理由を聞いた儀助は、それならと言う。

ちよは、たった一人の姪だし、自分はちよがいなくなってから体調を崩した喜三郎に代わって、仮に店を預かっているだけだ。
みんなで助け合って行こうと言う儀助に、ちよも喜三郎も涙する。
ちよは自分のことを「帰ってこなければ良かったのでは」と言うが、喜三郎はちよをもう、誰にも渡さないと決心していた。

喜三郎は道場から用心棒の武士を2名雇ったが、その夜、手斧や小刀が用心棒の目の前に打ち込まれる。
用心棒が外に出るが、夜の闇の中、相手の姿が見えない。
だが相手は確実に、自分たちに向かって刃物を打ち込んでくる。

闇の中にいて出てこないのでは、自分たちの腕も役に立たないと言って、用心棒は儀助に金を返した。
喜三郎は頼み込むが、用心棒は出て行ってしまう。
打ち込まれた手斧を取り、喜三郎は表に出て、「ちよは誰にも渡さない。出て来い、熊蔵!」と叫ぶ。

奥の部屋では赤ん坊の三吉が泣いていると、かけていたちよの着物が落ちる。
何にもいないことを確かめたちよが、ホッとした時、「わしからは逃げられねえんだ」と熊蔵の声がする。
「例え、地獄の果てまで逃げようとも、必ず連れ戻すと言っておいたはず。どんな手ぇ使っても誰もわしを捕まえたり、殺したりできん。山へ帰れ。1人でな。これ以上、手をかけさせるとそのガキも親父も叩き殺してやる」。

ちよが立ち上がり、背後の戸を凝視する。
「大人しく江戸を離れるんだ。いいか、あすび谷の小屋で待ってるからな。このことをしゃべったら、聞いた野郎が殺されることになる。いつでもお前を見張ってるからな」。
背後の戸が開き、熊蔵の顔が見えた。

喜三郎は「出て来い、熊蔵!」と叫んで、店の外で座り込んでしまい、儀助が運んでいた。
儀助は固い表情で座っているちよを見ると、儀助は喜三郎は気が張り詰めて倒れてしまったのだろうと、医者を呼んでくると言い、出て行く。
ちよは自分の為にと言って、泣いた。

儀助は外に出ると、「いるんだろう?」とささやいた。
「いるんだろう?儀助だよ」。
すると、背後からいきなり、熊蔵が現れた。

「よう、しばらくだな」。
儀助は熊蔵の口を押さえると、「約束が違うじゃないか!」と言った。
儀助と熊蔵の話からすると、人を殺して檜屋の木場に逃げ込んだ熊蔵を見逃す代わりに、儀助はちよの夫を殺してもらった。

そして、檜屋を乗っ取ったのだ。
儀助が店を手に入れたなら、熊蔵がちよを手に入れて何が悪い。
ちよを手に入れたら、もう2度と顔を見せないと熊蔵は言う。
「そう願いたいよ」と儀助は言った。

貢が居候している茶屋で、1人の女が腹を立てながら人を待っていた。
女将は留守で、女は貢に目を留める。
「あんた、いい男ね。ここの旦那?」
「いや、とんでもない」。

「あたし、乗り換えようかしら」と女は言う。
「そんなこと言って、旦那に叱られますよ」と貢が言うと、女は「ちょっと聞いてくださいよ!」と愚痴をこぼす。
女によると、男が自分を嫁にしてやると約束したのに、もう2年も放置しているらしい。
「もっとも、深川の檜屋へは、あたしのような水茶屋女が、そう簡単には入れるとは思ってませんでしたけどね!」上

女の言葉に、貢の筆を持つ手が止まる。
その時、女の待ち人がやってきたと女将が知らせに来る。
貢が立ち上がり、出て行く。
先ほどの女が会っていたのは、儀助だった。

本当の娘が戻ってきたなら、儀助、そして自分はどうなるのだとなじる女に儀助は「心配するなよ。ちよはほどなく、この江戸から出て行く」と言って酒を飲み干した。「熊蔵と言うならず者が連れて行き、2度と帰ってこない。おいぼれの方がそれを苦にしてあの世に行くのは、そう遠くはない。そうなりゃ、お前、誰に遠慮がいるもんかい」。
女は「うれしい」と儀助に抱きついた。
その話を、廊下に立っている貢は聞いていた。

翌朝、ちよが三吉を連れて店を出てしまい、喜三郎がちよの名を呼びながら外に出て行く。
儀助が、ちよは自分が必ず探して来るからと、喜三郎を店に連れ戻す。
三吉を抱いて寺に向かうちよの姿を、目を覚まして家の戸を開けて外に出た大吉が目撃する。
ちよは檜屋の墓に参りながら、自分の行く場所はないと、母親の側に行かせてくださいと言った。

眠っている三吉の首に手をかけた時、墓石の影から見ていた大吉が走ってくる。
その時、三吉が目を覚ます。
思わずちよは三吉の首から手を離すと三吉を抱きしめて、「許して」と泣き始めた。
墓を清めに来た妙心尼の前に、大吉が来る。

その後、墓の前にいるちよに妙心尼が声をかける。
妙心尼を見たちよは、激しく泣き始める。
「おかわいそうに…。さあ、参りましょう」。

妙心尼は三吉をあやしていると、ちよは何事か決心する。
喜三郎は大吉に連れられ、寺にやってくるが、喜三郎は階段で「ちよに会えない。私が何をしてやれましょう。何をしてやることもできないんです」と立ち止まってしまう。
「ちよを、私たちをこんな目にあわせた奴が憎い。なぜ、こんな目にあわなきゃならないんだ。何を私たちが悪いことをしたというんでしょう」。

そして、大吉の袖をつかんで、誰でも良い、婿の恨みを晴らしてほしい。
ちよを苦しめる奴を殺してほしいと言った。
「今はこれだけしかありませんが」と言って、2両を出すと、「たとえ50両、100両とかかろうと、自分も商人です。金で恨みを晴らさせてもらいます」と大吉に2両を握らせた。
「お願いします。私に力を貸してくださる方を、お探しください」。

ちよが妙心尼に連れられて、外に出てくる。
喜三郎と会っているところを、儀助がのぞいている。
「私の戻るところはもう、熊蔵のところしかありません」と言う。

だが喜三郎はちよを置いて、安楽に暮らせることはないと断る。
ちよは夕べ、熊蔵がやってきた、もう逃れることはできないと言って、三吉を喜三郎に託す。
妙心尼は思わず、もらい泣きをしてしまう。

その足で妙心尼は大吉の元に行き、「人が殺され、死ぬほどの苦しみを受けているのに助けてやることができない。そんなこと許されていいんですか」と訴える。
しょうがないと言う大吉に「こちの人のご返事はそれですか。なんと情けない」と言うと、「わたくしが男にうまれていたら、あんな悪党、生かしておきません!」と言って去る。
首をかしげながら、大吉が戸を開けると、座敷には主水と貢がいる。

主水が「おい、仏に仕える身としては、少々乱暴な言葉だったな」と言う。
貢が火鉢で手をかざしている。
大吉がやってきて、「俺の腹はもう、決まってんだがな」と言った。

そして自分は先に3両貰っているからと、先ほど、喜三郎に渡された2両を投げ出す。
主水に「おめえ、どうする?」と聞かれた貢は「私は一緒には行かれないよ。江戸に仕事が残ってるんだ」と言って立ち上がった。
「仕事?」
「ああ、危うく大悪を見落とすところだった。檜屋の儀助な、熊蔵と繋がってることがわかった」。

そう言いながら、貢は笠をかぶる。
「熊蔵と儀助か!」
「そうか」と主水は1両受け取り、「石屋、気をつけて行けよ」と言う。
大吉がうなづく。

ちよが江戸を離れていく。
喜三郎が三吉を抱きながら、人気のない町はずれまで見送る。
その後を儀助が、ついていく。

儀助の手には布に包まれていたが、手斧があった。
だがふと、儀助が立ち止まる。
行く手に貢がいて、絵を描いていたからだ。

儀助は顔をそむけると、貢のいる方向に歩いて行く。
すれ違う時、貢が描いている絵をチラリと見た儀助は、驚いて貢の顔を見る。
貢が描いているのは、自分の似顔絵だったからだ。

矢立を口にくわえ、絵を描く貢を通り過ぎた儀助は見つめる。
後ろを振り返りながら進み、人気のない寺まで来ると喜三郎の後ろに忍び寄ろうとした。
縁側に上がった儀助の前に、貢が座って絵を描いていた。
儀助はギョッとした。

絵には、手斧が描かれていた。
儀助は焦りながら、縁側を降りていく。
貢がチラリと、儀助を見送る。

建物の陰に見えなくなった喜三郎と三吉の後を、儀助が走って追っていく。
だが、すぐに手に手斧を持った儀助が後ろに下がって来る。
行く手に貢がいたからだ。

絵を描いていた貢が、ふと、近づいてくる。
儀助は怯え、手斧を手に襲い掛かってきた。
貢は儀助を抑えると、額に矢立を押し付ける。

矢立の仕掛けが開き、儀助に張りが刺さる。
儀助は座ったまま、息絶えていた。
その少し離れた先に、何も知らない喜三郎と三吉がいた。

山道に向かう茶店で団子を食べながら、大吉はちよを待っていた。
ちよの姿を見た大吉は、ちよの後を追う。
どんどん、ちよは山奥に、獣道に入っていく。
大吉が、ちよを見ている。

ふと、ちよの鼻緒が切れる。
ちよが座り、鼻緒を直す。
大吉がちよを見ながら、小屋に気づく。
小屋には、人のいる気配があった。

大吉が小屋に踏み込む。
頭上に人影があった。
大吉目掛けて、人が降りてくる。
虎次だった。

大吉は虎次の心臓をつかみ、虎次を仕留める。
小屋に入ってきたちよの口を塞ぐと、ちよは大吉を見て「あなたが、どうしてここへ?」と聞く。
「あんたのお父っつあんに頼まれましてね」。
「父に!」

「さあ、そこの隅でじっとしてんだぜ!」
大吉は、胡桃をすり合わせる。
戸が開き、熊蔵が入ってくる。
大吉は熊蔵を殴り、表に出す。

あわてた熊蔵の心臓をつかむが、大吉の手は何もつかめなかった。
驚いて手を抜いた大吉に向かって熊蔵は笑い、大吉を殴り飛ばした。
小屋に逃げた大吉は、手を見つめながら「ひょっとすると、奴の心の臓は右に?」と考える。

手斧を手に、熊蔵が踏み込んできた。
大吉が壁を破って、表に飛び出す。
小屋が傾き、崩れていく。

熊蔵が、手斧を振り回す。
大吉が熊蔵の手斧を叩き落すが、熊蔵は大吉の首に腰紐をかける。
締め付けようとする熊蔵に向かって、大吉は右手を振り上げるが、すぐに左手をあげ、右胸に手をめりこませる。
右胸にあった心臓をつかみ、熊蔵は「あ」というと倒れた。

ちよが走ってくる。
左手を押さえて、大吉がちよを見る。
そして大吉は、秩父に以前いった墓石の買い付けに向かうのだった。



最初、山賊の人攫い話かと思いましたが、すぐに熊蔵がとんでもない怪物であることがわかる。
何人もの人が、凄惨に殺される。
武器が手斧というのが、とっても獣じみているし怖い。
雇った用心棒も、獣じみて夜目がきき、手斧を投げてくる熊蔵に対して逃げ出す。

そこで護衛に来た主水が、「一文も貰っていない」「仕事だから!」と、袖の下アピールがおかしい。
家に戻った主水が、せんとりつに身ぐるみはがれるのもおかしい。
檜屋は金持ちなんだから、袖の下ぐらい貰ってきたと、せんとりつも思ってるんですね。
いかに檜屋が堅実か。

主水が大吉の家に行くと、貢が鍋を作っているのがおかしい。
貢は出会い茶屋と、大吉の家に居候してるのでしょうか。
大吉が感心した、小奇麗な家にいた貢が。
インテリの匂いがして、三味線を弾いていた貢が。

あやさんがいなくなって、本当に居場所がないというか、定めなくなってしまった。
それまで支えてきた生活を、本当になくしてしまった。
主水が「石屋は?」と聞くと、貢が「なりませぬ」と答えるのがおかしい。
妙心尼のところだって言うんですね。

主水が「幸せな野郎だな」と言う。
それで、貢が作った鍋を3人で囲むんですね。
「当然じゃないか、八丁堀は仕事なんだからさあ」とが言う調子も、以前とは違う。
おかしいけど、変貌した貢をうかがわせます。

もぐもぐ、主水と貢が食べているのに、大吉が食べない。
貢が「食わないのかい?」と聞く。
「あのおっかねえ殺しを見た後だ。まだ胸がムズムズする」と大吉が答え、主水に気をつけるように言う。
3人仲良く、鍋をつつくの微笑ましい。

主水は食べる一方。
大吉は飲む一方。
貢は鍋がかかっている火の具合を気にして、吹いたりしてる。

檜屋の寝ずの番から帰ってきた主水を、せんとりつは丁寧に迎える。
と思ったら、主水の着物をはぎ始める。
檜屋といえば、江戸では指折りの金持ちだから、当然、謝礼を貰ってきたと思ったんですね。

しかし、主水は本当に貰っていない。
実はさりげなく、「好意で!」「好意でやってる!」と強調して要求はしてたんですが、檜屋さんはとっても固い人らしい。
全然そんなことには気づかず、主水は手ぶらで帰ってきたんです。
その檜屋が用心棒を雇おうとする、しまいには大吉に商人なら商人の身の守り方があるとお金を出して、熊蔵を殺してくれる人を探す決心をするんだから、追い詰められたのがわかります。

妙心尼が喜三郎とちよの苦境を見て、「人が苦しみ、死ぬほどの思いをしているのに助けてやることができない。そんなこと許されていいんですか」と怒る。
大吉にも「なんと情けない」と怒り、「男にうまれていたら、あんな悪党、生かしておきません!」と言う。
主水も言いますが、仏の道に生きる女性とは思えない。
いろいろな面で仏に仕える身とは思えないことをする妙心尼さんだけど、やっぱり基本、良い人で、大吉と似ている。

儀助は、柳生博さん。
人の良さそうに見えるところを逆に利用して、全ては店を乗っ取るための計画だった。
それが大吉のところから茶屋に帰った貢に、知られてしまう。
この居候先って、案外いろいろと情報が手に入る場所なんですね~。

儀助は喜三郎と、もしかしたら子供も殺すつもりだったのか。
あの子は、跡取りだから。
手斧を持っているところからすると、熊蔵の仕業に見せかけるつもりだったんでしょう。
ここで2人を殺せば、熊蔵の仕業に見える。

その行く手に貢が現れる。
貢が絵を描いているのを見ると、儀助の似顔絵。
儀助にしたら、なかなか不気味だったでしょう。

行く先、行く先に絵を描いている貢がいる。
不気味。
絵には、手斧が描かれているのも怖い。

喜三郎と三吉の後を、儀助が走って追って見えなくなったのに、後ろに下がって来て姿がまた見える。
すると、貢が現れる。
儀助をアッサリと押さえて、貢が額に矢立の針を刺す。

座ったまま、息絶えている儀助の少し先に、何も知らない喜三郎と三吉がいる。
いかにも暗殺者。
誰も知らないけど、さりげない日常を守っていたというのが良いです。

そして最初に関わった大吉は、結局最後まで面倒を見てしまう。
喜三郎は50両でも100両でもと言うのに、2両貰ってそれっきりの大吉がいい。
最後に大吉と怪物・熊蔵。
上から大吉を見ている、虎次。

まず、この虎次を通常の仕留めのように仕留める。
そして、熊蔵が登場。
この怪力同士の対決に、小屋が壊れる!

大吉が熊蔵の心臓をつかもうとして、手が何もない宙をつかみ続けるレントゲン。
そう、熊蔵は全てにおいて、特異体質だったのです!
見抜かれた熊蔵は、大吉に心臓をつかまれる。
この時、大吉が右手をいつものように上げて、ややためらいながら左手を構えるところも細かい。

熊蔵が大吉にやられた時の「あ」という、脱力した顔が見事。
山谷初男さん、最初から最後までお見事です。
武器が手斧というのが、野蛮で怖い。
やっぱり、慣れない左手での仕留め仕事のせいか、大吉はこの後も左手を押さえている細かさ。

この後、大吉は当初の予定の、墓石の買い付けに行っているのが映る。
平穏な日常が、戻ってきた。
こういう、特異体質の男が、山奥なんかで暮らしていて、妖怪にされたのかもしれないなあ。
などと思うのでありました。