2人の龍馬

見てないんですけど、今夜は「龍馬伝」の総集編を放送しているのでしょうか?

昨夜の「仁」は、大沢たかおさん、中谷美紀さん、綾瀬はるかさん、みなさん、見直すほどナイスキャスティングでしたね。
しかし、中村敦夫さんが火消しの新門辰五郎を演じた回は好きですねえ。
仁と辰五郎のそれぞれの心意気がぶつかり、相手を認め合う。
トリアージ、漢方医の協力。

炎が迫る中、逃げない仁。
守る辰五郎。
夜明け、仁がいた小屋だけが立っている。
向かいには煤だらけの火消したち。

そして、その影になった野風花魁の切なさ。
仁との絆を求めた野風の振るまいもまた、男前。
野風と未来の重なる様子と、それに揺れ動いた仁だった。

一瞬の野風の幸福感。
花魁のプライドで乗り切ろうとしている野風を抱きしめる龍馬の男前ぶりも、「雪になりとうありんす…」の野風も切なくて一途で。
緒方先生との別れと、この回は個人的に大好きです。

長屋に住む未亡人・妙さんが治療費が払えないと治療を拒否し、これで死ぬならそれが自分の運命だと言う。
そして辻斬りであっさり死んでしまう。
夕霧花魁は、泣いても笑っても同じ一生、ならば泣かずに生きていこうと、病と自分の置かれた境遇の中、手を合わせて微笑んで死んでいく。

見ていて、江戸の人は確かに、今よりはるかに命が危ない毎日だったなと思います。
だけどその分、運命を受け入れる強さがあるなと思いました。
達観、とか、諦念、というとちょっと違うんですけど、自分の運命を受け入れる覚悟みたいなのが武士から町人まであるんだなあと。
そうならざるを得ない時代だったんでしょうが、寿命が短い分、その強さにも感動しました。

別に現代を嘆いたりはしませんが。
今は今で、こういう時代だから、それぞれに変わって試練というものはあるんだろうと。
江戸の人の生き様に感じ入りながら、寒いとかヘタレながら、贅沢なこと言いながら掃除している自分の言い訳です。
はい。


しかし、「龍馬伝」の龍馬は弥太郎が嫉妬する、天性の人たらし。
対して、「仁」の龍馬は悲しいほどモテない。
いや、仁や勝を魅了してはいるんですけど、花魁や咲には全然モテてない。

しかも、「龍馬伝」の龍馬はお金に困ってないこともあるけど、非常に欲がない。
儲けとか、名声を得るとか全く眼中にない。
対して、「仁」の龍馬は、まったく欲のない仁先生に、人間の欲について説く。

人間は欲深い生き物で、国の為に死ぬという志士も、名を残したいという欲望で一杯だと言う。
自分だって、生まれてきたからには何かやりたいという欲がある。
でも欲望は悪いことばかりじゃない、欲があるから前進できる、それがない仁先生はまるで死人だ、と言う。

非常に人間らしい龍馬ですね。
こんなこと言う自体、ただもんじゃないし、欲望を良い方向にコントロールしているすごい人なんですが、まったくの欲がない「龍馬伝」の龍馬とは正反対。


夕べは「仁」で、内野聖陽さんの龍馬を見て、今日は「龍馬伝」で福山雅治さんの龍馬。
去年も年はまたぎましたが、またもや2人の龍馬を続けて見てしまうんですね。
でも、同じ人物でも、表現するところが違うというか。

内野さんの龍馬は、一般的に持たれている龍馬を忠実に映像化したような感じじゃないでしょうか。
対して福山さんの龍馬は、まだ半熟の龍馬も表現しているということもあって、一般的な龍馬のイメージとは違った部分を出してみた。
内野さんはまさに、私がイメージとして持っていた龍馬。

だから福山さんの龍馬に違和感を持つかなあと思っていましたが、同じ路線じゃなかったですからね。
大丈夫だった。
どっちも自分の龍馬を、ちゃんと演じていたと思います。


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誰よりも幸せになるでありんす! 「仁 -JIN-」追加

「仁」、終わってしまったんですが、こちらzawaさんの記事で原作者の村上もとかさんのお話を知ることができました。

http://blogs.yahoo.co.jp/ks_zawa/58875612.html

良いお話!
哀れな儚い身の上の者たちに向ける、優しい視線。
そうか、原作からして優しいんだ。
だからこのドラマもこんなにも心温まるものになったのか、と納得。

これほど老若男女、誰のファンかを問わなかったドラマも昨今、珍しいのでは?
悪役がいて、この悪役に因果応報が下る見せ場というのはドラマのクライマックスなんですが、「仁」は登場人物ほぼ全員に肩入れしたくなりましたね。

誰も不幸になって欲しくない。
みんな幸せになって欲しくて、それが気になって見てしまう。
しかも最終回がそこを外さなかったから、後味が悪くならなかったのかもしれません。

しかし、これを成立させるには全員が良いキャラクターしていること、良い俳優さんたちであることが必要不可欠。
「仁」は、どのキャストも今となってはこの人たち以外、考えられない。
キャスティングが新鮮かつ骨太だったから、タイムスリップ時代劇なんて設定にもすんなり入って行けたのかも知れません。

大沢たかおさんは良かったし、内野聖陽さんときたら、近年最高の龍馬でしょう!
龍馬がどうなってしまうか、それだけでも先が気になってしまった。
ラストで靴を履いて、勝先生の後ろではしゃいでる姿なんか見せられたら、「龍馬」をこのままこの枠でお願いしますと言いたくなります。
来年の大河「龍馬伝」に対しての嫌味でも何でもなく、「仁」の終わった寂しさを埋めるならこれだ!って感じですよ。

私にはわからなかったんですが、内野さんの土佐弁は、ちゃんとしていたそうです。
これから先の龍馬は、当分の間、内野さんの龍馬をいかに越えるかが勝負になるかも。
内野聖陽さんのキャスティングも大成功の要因だと思います。

内野さんは、今年放送された「臨場」も良かった。
その前の刑事ドラマ「ゴンゾウ 伝説の刑事」は期待以上におもしろかったけど、「臨場」「仁」とどんどん良いドラマに出て、私の中で存在感増してます。
龍馬も良いし、内野さん自体、もっと見たいです。
喜劇もうまそうだし、何か久々に男っぽい俳優さんって感じ。

中谷美紀さんは今年、NHKの「白洲正子」も良かった。
切ない、良い表情しますね。
中谷さんのキャスティングもやはり成功の要因では。
そういえば、「R-17」というドラマで桃井かおりさんが主演の中谷さんを誉めていたと思います。
綺麗なだけじゃなく、実力あるってことですよね。

確かその後、桃井さんは出演したエステ界を舞台にしたドラマに出演。
「何故この程度のことができないんだ」と相当共演者のタレントさんたちに厳しく演技指導し、彼女らと衝突。
タレントさんの一人は「そんなこと言われたって、U(彼女の名前。彼女は自分のことを「私」と言わず名前で言います)できないも~ん」と泣いて、スタッフが「まあまあ、桃井さん、良いじゃないですか」となだめた…なんて記事が出ました。
これが本当なら桃井さんは中谷さんを相当、ちゃんとした女優と思ったのではないでしょうか?

中谷さんは映画「嫌われ松子の一生」で大きくチェンジしたと言われていますが、かわいらしいお嬢さん女優のイメージを払拭したのは、「沙粧妙子 帰還の挨拶」だった気がします。

このドラマ、草なぎ剛さんも中谷さんとペアの凶悪犯で出ていました。
怖かったですよ~。
そういえば、今年、草なぎさんもピンチをチャンスに変えたと言っていいほど、良かった。
再放送してましたけど、「任侠ヘルパー」、やっぱり良かったですよ。
「沙粧妙子 帰還の挨拶」で犯人を演じた2人が、今年とても輝いてた。
最終回、中谷さんと仁の別れは見せ場でした。

「誰よりも幸せになるでありんす!」
力強くてちょっと悲しいこの言葉が野風から出て、未来のことで全てに踏み出していけなかった仁もまた、野風同様、新しく生きていける。
仁は野風を救ったけれど、仁もまた野風に救われたんだと思います。

綾瀬はるかさんは「ホタルノヒカリ」とは違う、しっかりした武家娘でした。
この女優さんも、演技派ですよね。
同じ年に華やかに売れてる人が多いですが、彼女は彼女で堅実に行ってる感じがします。

藤田まことさんの降板は残念だし心配ですが、中村敦夫さんの「仁」への出演はうれしかった。
中村さんで良かったんじゃないかと思います。
武田鉄也さんも良かった。
「鈴屋」の温かみのある主人、六平直政さんも良かったですね。
いや、このドラマ、ゲストも含めて「ダメだったな~」という人がいなかったかも。

TBSは続編を否定しているみたいですが、あのラストは今は予定なくても続編作ることができる終わり方ですよね。
期待はしてしまう。
「仁」に関してはTBSを怒りません、怒ってないから続編やってください!


以下、「沙粧妙子 帰還の挨拶」の中谷さんの様子です。
ネタバレしてますので、注意。

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「では皆様、おさらばえ」 「仁 -JIN-」最終回(2/2)

終わったー!

最後までオトコマエな女性2人。
中谷さん、うまいですよー。
野風はほんと、中谷さんで良かった!
見せ場、持って行きましたね~。

綾瀬はるかさんも、ひたむきでかわいらしくて、良かった。
この2人、ほんと、嫌味なかったですもんね。

野風って、仁に命預けてるんですよね。
いわであることを否定された野風の笑みは、仁への絶大な信頼だけじゃない。
仁が死ねって言うなら死ぬんだ、と言っているんです。

それでも怖い。
症状を目の当たりにして怖い。
怖いですよ、触感でわかる病気なんて…。
仁、何て残酷なことをしてるんだ…、と思う。

しかし仁に手術を申し出られ、野風は自分の為、そして何より仁たちの医療の研鑽の為になると思い、歓喜する。
ああ、自分の身は無駄にはならないんだ、と。
大門を出た野風に、もう怖いものはない。
空を見上げ、自分は心も体も自由になった。

花魁下駄で歩き、白無垢を着て大門を出る野風。
「空がちいと高うござんす」という粋な言葉。
万華鏡を龍馬に見せて、人の世を語る野風。
花魁は教養あるなあ~。
これはやっぱり、身を売るだけの女郎じゃないだろう。
売ってる時間、空間が全然違うだろう。

龍馬の気持ちは最後まで受け入れなかったけど、教養ある野風は人を観る目もあるから、龍馬のことは最初に思っていたような調子の良い男じゃなくて、すごい男だってことがもうわかってる。
仁が知らず知らず咲を頼っているように、龍馬に連れ添うのは自分じゃない、こんな男にはこんな男にふさわしい女がいるってわかる。
そして自分にも。

咲は、ひたすらいつも仁に向かって走ってる。
今回はもう、婚礼の衣装を脱ぎ捨て、足袋を汚しながら走る。
彼女も仁に命預けてる。
そんな妹を行かせる為の、兄の一世一代の芝居。
お兄ちゃん、器小さくなんかないじゃない!
成長しちゃった?!

いなくなってわかったけど、仁はいつも咲に助けられていたんですね。
そんな咲から仁を取り上げることなど、してはいけないことだって、野風みたいな女性なら思う。
2人とも大好きだから、好きな人の幸せを願うのが本当だから。
最後に仁にキスして野風は吹っ切る。

去っていく野風、雪が舞い散ると、いつか、「雪になりとうござんす」と泣いた野風の思いが舞っているような気がしたのか龍馬が叫ぶ。
しかし、振り向いた野風はしたたかで、お茶目な花魁の時の野風。
愛する人に貰った命を、新しく生きていこうという考え。
「まっぴらごめん!」
ああっ、ほんとにこの反応、この考えに至るなんて野風は教養あるんだから!

講義している未来と塾を開く野風は、やっぱりどこか繋がっているってことでしょうか?
「ありんす」言葉を一生懸命抜こうとしている野風が、かわいい。
咲の「水は形を変え、いつも傍にある」というのは、野風のような、未来のような人を指しているんでしょうか。
どんな形になっても、その存在は消えることはないんだという意味でしょうか。

しかし、前回、タイムスリップしたかと思っていた龍馬、漁師のところで世話になっていたとは…。
脱力しました。
どこまでも、意表をつく男…。
しかもどこでも馴染めてしまう魅力があるんですねえ。

野風の為、それこそある藩の侍と藩医が言う「女郎」の為に頭をさげてしまう。
行き場がなくなった野風でも、引き取ってしまう。
妙なプライドにこだわらないオトコマエな男は、オトコマエな女が好きなんだな、とふと思いました。

まあ、確かに、この男と幕末を生きていく女がちゃんと現れるんですけど。
ここでの龍馬は偉人になる前の、その片鱗を十分に感じさせる龍馬でした。
おちゃらけているようだけど、しっかり1本、芯が通っている。
ああ、この龍馬が幕末を生きていく様子が見たい。

内野聖陽さんで、龍馬のドラマをやってほしいです。
見ていた人のかなりの数の人が思ったはずですが、この後、龍馬を演じる俳優さんは内野聖陽さんとの戦いですよ、これはもう。

未来のことなど聞いてもしかたがない、聞いたところで毎日を生きていくだけと言う龍馬。
そして龍馬を惜しみつつ、また誰かが出てくる、世の中ってのはそういうもんだと言う勝。
現代人の仁にはない、たくましさとか、時代の厳しさを感じます。

「もう未来に一喜一憂せず、目の前のことだけを見て、懸命に生きればいいんだ。そうすれば、もっとずっと、ずっと生きやすくなる」。
「人生はきっと思う以上に美しいはずなのだから、何かに縛られることなく、歩いていけ」という、仁にも野風にも向けられた言葉が最終回のメッセージ?
「仁」は、しがらみに縛られていた2人が生き直すドラマでもあったわけですね。
「越えられない試練はない」とか、前向きなドラマだったな~。

しかし、ホルマリンの胎児も、包帯男も、何一つわからなかったな~。
最後に仁をまた頭痛が襲い、胎児が目を開くって、あまりに余韻と謎を残しすぎ。
仁が現代に戻れるのかどうかも、わからないですし。

原作がまだ終了していないから、しかたがないのでしょうか?
この解決はつける予定があるのかな?
もしかしたら、映画で?

こんな疑問が残ってしまった最終回ですが、仁とその周りの人々に一応の区切りを残して納得させてくれた。
しっかり、前向きなメッセージは伝えてくれた。
良いシーンはたくさんあったし、俳優さんたちは良かった。
だから謎だらけで終わりましたが、後味は悪くなかったです。

毎回、仁に助けられ、仁を助ける人々、それぞれの人の生き様が清廉潔白なだけではなく、それぞれに苦悩しているとことを描いていた「仁」。
それでも毎回、みんな希望ある結論を見つけていた。

医療ドラマとしても、幕末時代劇としても良かったです。
いや、これはまさに人間ドラマでした。
人間がちゃんと描けていれば、時代劇でもSF設定でも真面目に見られるんだと改めて思いました。

続編が作れそうなラストだったのも、今後に期待を持たせてくれたということで、「やればできるぞTBS!」と思いました。
ではまた、いつか再会するかもしれないドラマ「仁」。
とりあえずは仁先生、「おさらばえ」。



「神は乗り越えられる試練しか与えません」 「仁 -JIN-」最終回(1/2)

最終回「タイムスリップの果て」。

龍馬と共に転落した仁。
浮かび上がったのは仁だけで龍馬の姿はなかった。
龍馬の死体は下流に流されたのではと言われ、面倒を恐れた久坂は追っ手をかけず、京都へ旅立った。

仁は橘家に走り、夜明けに恭太郎たちと龍馬を探しに河原へ向かったが、龍馬は見つからなかった。
勝と龍馬が落ちた場所にいた仁は、龍馬の草履を見つける。
「龍の字のだな」と、勝は言い、「当分海軍はなしってことか」とつぶやいた。
「日本は坂本龍馬なしで進むってことですか?」と言う仁に勝は、「そうさ、だが先生。あいつがなくなりゃあ、あいつの代わりになる奴がおのずと出てきて、あいつがやるはずだったことをやるもんさ」と言った。
「世の中ってのはそういうもんだと俺は思うんだ」と言った勝は、「ま、もう少し探すさ」と言う。

仁は龍馬のことは心配しないわけではなかった。
だが、仁には半ば確信があった。
おそらく龍馬はタイムスリップし、そしてあの患者として病院に運ばれ、ものめずらしいみやげとして救急用のパッキンやホルマリンを盗もうとした。
龍馬のやりそうなことだった。

だけど龍馬があの患者として戻ったということは、仁はもう戻れないってことだろうか?
もう誰一人秘密を分かち合ってくれる人もなく、仁はここで1人生きていくのだろうか。
「見慣れていた江戸の町が別の町に見える」と仁は思った。
龍馬がいないまま、それぞれをあるべき船に乗せ、時は流れる。

咲は夫となる相手と対面し、野風の身請けは目前に迫った。
「先生は野風さんを見殺しにしようとしたんじゃないんですか?未来さんの為に」。
「この子が生まれんことで、悲しむもんも困るもんも、誰ちゃおらんぜよ」。
咲と龍馬の言葉が、仁の脳裏に蘇る。

佐分利が「乳のいわのことならお役に立てるかもしれまへん」と言って、本を持って来た。
詳細に書き込まれたその本を見た仁は、「すごいですね」と感嘆した。
女郎たちに金を払って、乳のいわを見せてもらっていたのだと佐分利は言った。
洪庵ともこれがきっかけで知り合ったと言った佐分利は、乳にいわがある患者がいるなら自分にも診せてくれと頼んだ。

仁がこれ以上の治療は望まれていないと言うと佐分利は、「南方先生らしくない、いつもは切るなと言われても切るのが南方先生でっしゃろに」、と言って佐分利は「もう一遍調べてみませんか?いわではないこともあるかもしれませんし」と再診断を勧める。
その頃、野風は胸にますますの異常を感じていた。

その時、仁からの文が届いた。
「ガンじゃないことだってありえるんだよな」と、つぶやく仁。
悲壮な表情の野風。
再診に臨む仁。
最後の診断は、佐分利にゆだねられた。
いくつか野風に質問をした佐分利は、まだ脇の下には何もないが、まず「いわ」に間違いないだろうと言った。

しかし仁はそうとも限らないのではないか、と言った。
それを聞いた佐分利は驚愕し、「間違いなくいわですって!」と言った。
胸にメスを入れるのは大変なことだ。
身請け話も潰してしまうかもしれない。
「私にはまだ判断が…」と言う仁に、野風が言った。
「南方先生がそうおっしゃるのなら、切らぬほうが良いのでありんしょう」。

納得していない佐分利は仁に帰り道、「自分の見立ては信用してもらえないってことですよね」と言った。
仁は、自分に切る勇気がないだけだと言ったが、佐分利は「だから信用してもらえないってことですよね」と言うと憤然と去った。
ペニシリン製造所に戻った仁は、純庵から佐分利は華岡流の免許皆伝だと聞かされる。
佐分利は女郎から手術を依頼され、成功したのだが、女郎は感染症でなくなった。
そして佐分利を嫉妬した者たちに「人斬り医者」と中傷され、身を隠すように洪庵のもとにやってきたのだ、と。

佐分利はエーテルより深く効く、華岡流の麻酔、「通仙散(つうせんさん)」を作る用意もしていた。
「秘伝なのに…」と言う仁に純庵は、佐分利は腑分けのことを償いたいのだと思うと言った。
良いものは流派にこだわらず広めて行きたいと語っていた佐分利。
洪庵が生きていたら、さぞ喜ぶことだろうと仁は思った。

咲が持たせてくれた重箱を見つめ、仁は「もういないんだよなあ…」とつぶやく。
その頃、恭太郎は坂本から連絡がないか仁に聞きに行こうと思ったのだが、と咲に言うが、咲はついていくとは言わず、恭太郎に「いってらっしゃいませ」と言う。
恭太郎は初音のところに行き、咲の相手について語る。
家柄は橘家よりも上、人物も申し分ない、と。
「だが、咲には別に慕っている男がおる。あいつの性分ではうまくやれない気がする。しかしもう断れる時期ではない」と考え込む恭太郎。
初音は「あの方ならどうなさりんしょうか」と言う。
「あの奇策の得意な…」。
龍馬のことを2人は思い出す。

「何かいつの間にか1人だ」とつぶやきながら、仁は洪庵の墓参りに行く。
二日酔いで製造所にやってきた佐分利を純庵は「南方先生とて人間なのだ。自信のないこともある」となだめていたその時、入り口に龍馬が現れた。
純庵たちは驚く。
相変わらず豪快に笑う龍馬は、気づいたら海近くの村にいて、魚がうまく、土佐を思い出し、村に馴染むうち日が経ってしまったと言う。
「浦島太郎か…」と純庵たちは龍馬に驚嘆するばかりだった。

洪庵のお墓に向かって、仁はに打ち明ける。
野風は多分、未来の祖先で、野風が身請け先に行かなければ未来は生まれなくなるかもしれない。
咲には軽蔑され、龍馬には未来が生まれなくなって一体誰が悲しむのかと言われ…、佐分利の気持ちを踏みにじり、野風の気持ちに甘えて…。
「最低です、私は」と言った仁は、「だけど、やっぱりできませんよ。できないです、私には」と言う。

戻った龍馬は勝の元にいた。
龍馬は勝に質問する。
「先生、目の前で先生の子が死にかかっちょる。けど、この子を助ければ代わりに先生の別の子が殺される。その時、先生は目の前の子を助けるかね?」
勝は「俺はそんな下手たはうたねえよ」と言ったが、「いっそ誰かに決めてもらうかな…、銭を投げて貰って決める、とかな。どっちをとっても後悔が残るとしたら、運を天にまかせるのもひとつの手さ」と答えた。

その日、吉原では野風の最後の宴が開かれていた。
野風の隣で鈴屋の主人・彦三郎は、「ご家門の妾になるなど、女郎としては最高の栄華。おまえのおかげで、これからまたみな夢を見られる」と微笑んだ。
幼い野風が逃げ出した後、彦三郎に言われ、「あたい、菩薩になるよ」と決心した日のこと。
「菩薩にはなれんしたけんどなあ」と笑う野風。
「行きとうないと、居座っておりんす。…煩悩が」と胸に手を当てる野風。

吉原の灯りを見上げていた仁が背後から胸をもまれて振り返ると、大声で笑う龍馬がいた。
驚いて声も出ない仁に龍馬は、「ほれ、足もついちょるぜよ!漁師のとこで世話になっちょったぜよ!」と言うと「先生、ちっと!」と陰に仁を連れて行った。
そこで龍馬は土下座し、「野風を助けとうせ!」と頭を下げた。

「乳のいわかもしれんのじゃ。先生が迷う気持ちはわかる。しかしここはどうか、わしの為に手術をしてくれんかい」と言う龍馬。
「わしの為に?」
そう尋ねる仁に龍馬は「考えたぜよ、ここで野風の乳を切れば野風の身請けの話は消える。さすがの野風も心細くなる。そこでわしの出番じゃ!乳なんぞあろうかなかろうか構わん!わしがおまんの面倒を見る!…これはきくぞ~、さすがの野風も『ははーっ』と言って落ちるぜよ」。

何か言おうとした仁を龍馬は、「やかましいがじゃ!切れっちゅうたら切れ!いいかい、切っていいが言うのはわしじゃ。先生は黙って切ればいい。何もかんもわしのせいじゃ」と遮る。
そして「野風を助けとうせ」と懇願する。

仁は翌日、辰五郎が好きだった女を、壊した建物の下敷きにして死なせてしまった話で、隣に座っている辰五郎に「その人が家にいるのを知っていたら壊しましたか
」と質問してみた。
「そんなもん知るかよ!」と答えた辰五郎だが、「ただ、あいつは壊せって言ったかも知れねえなあ」と答える。
仁は未来との会話を思い出す。
「本当に良いのか未来」と聞く仁に未来は、「これが成功すれば、大勢の人がこれから希望を持つことができる。もし失敗しても、その礎となれるんだとしたら、この手術は無駄じゃないわ」と答えていた。

仁は佐分利の下へ走る。
「通仙散の処方をお願いします!」と叫んだ仁に佐分利は驚き、次に「はい!」と答えた。

佐分利は野風に、転移の可能性を話す。
それを聞いた野風は「もしうまくいかずとも、あちきの手術は先生方のご研鑽の一つとなりんしょうか」と聞いた。
「もちろんです!」と言った佐分利に、「あちきなぞが医術のお役に立てるのならば、これ以上の喜びはありんせん。…この命お預けします」と言うと、野風は涙を流した。
「ちいと気が弱く…」と言う野風に仁は言った。
「治しますよ、野風さん。全力で」。

仁は鈴屋の主人夫婦に、野風の手術を申し出た。
女将は冗談じゃない、身請け話は壊れる、野風は傷物になるじゃ、良いことないじゃないかと言ったが、彦三郎は「野風にはたくさん稼いでもらった。贔屓も増やしてもらった。これ以上、欲はかきますまい」と言うと、「あの子をよろしくお願いします」と承知した。
廊下で野風はそれを聞いていた。

翌日、野風は吉原を出た。
見送りに出た鈴屋の主人や女郎、使用人を前に野風は「長らくお世話になりんした」とお辞儀をした。
白無垢を着た野風は「みなさま、おさらばえ」と言った。
女将は「白無垢で出て行くとはねえ…」と言い、彦三郎は「野風らしい」と見送った。
「あたい菩薩になるよ」と言った、幼い日の野風。

野風の胸に、これまでのことが蘇る。
「ありがとござんした」とお辞儀をした時。
「先生をお守りくださいなんし」と大門を前に祈った時。
「雪になりとうありんす」と龍馬の胸で泣いた時。

野風は花魁が町を練り歩く時に履く下駄で、八文字歩きをしていく。
ついに大門の外に出た野風。
大門の外空を見上げた野風は「あんれ…」と言う。
花魁下駄を脱いで、はだしになった野風は「空が、ちょいと高うなりんした」と笑った。

その頃、野風を身請けしようとしていたある藩の大殿は藩医の三隅に「傷物など願いさげじゃ!」と言っていた。
そして「しかし三隅、そなたは『いわ』を全く見抜けなかったのか」と言うと、三隅は「あの時は南方も見抜けなかったのです」と土下座していた。
「藩医を続けたくば、研鑽を積め!」と言われた三隅は大殿が去ると、頭を上げた。
その額には泥がついており、「この屈辱忘れんぞ…、南方め」とつぶやく。

手術室で野風は「不束者でござりんすが、よろしゅうお頼み申します」と頭を下げた。
佐分利が橘家に来る。
咲に「これもごちそうさまでしたって」と重箱を返し、仁に手術に必要なものを持ってくるように言われたと言うと咲は「手術することになったのでございますか?あの、いつ?」と驚いた。

仁はいつもの丘にいた。
箱に入れた未来の写真を埋めている。
丘に来た咲は「何をなさっているんですか?」と声をかけると仁は、「写真埋めようと思って」と答えた。
「野風さんの手術をすることになったので…、手術前に見るとまた決心が鈍るかもしれない」と言う仁に咲は「申し訳ございません!」と謝った。
「後先も考えず、勢いで軽々しいことを申し上げ…。先生がどれほどのお気持ちで」と言った咲に仁は、咲に言われたからじゃないと言った。

「もしかしたら、未来が生まれなくなるとは限らない。
手術が終わった後、意外に元に戻ってたり、私が手術される側になっていたり…。
元々こんな信じられないことが起きているのだから、何が起きても不思議はない」と言いながら、仁は笑った。
「神は乗り越えられる試練しか与えません。試練の後にはきっと素晴らしい未来が…」と言う咲。
「ありがとうございます、咲さん」と言う仁。
咲の結納は、明日、手術の日だった。

見舞いに来た龍馬に野風は万華鏡を見せながら「世というのは、万華鏡みたいなものではないかと思うことがありんす」と話した。
「人という珠が筒の中に入れられており、誰かの手がそれを回すのでござりんす。ほんの少し回すだけで、隣り合う珠が変わりんす。すると、現れる模様もがらりと変わる、浮世のおもしろさでありんすよ」と言う野風。
「その話というのを、いつかしてやってくれんかい、南方仁に、目に見える模様は違えど、実は中にある珠は決して変わらんという話を」と言う龍馬。

仁は思い出していた。
辻斬りにあって命を落とした喜市の母、タエを。
感謝して笑って死んでいった夕霧を。
仁を大きく見守ってくれた洪庵を。

助けても助けられなかった命。
俺ごときが何をしようと、生まれるものは生まれ、死ぬ者は死ぬ。だとしたら未来が生まれないということだけはない、という考えも絶対ある。

龍馬は、手術の間、待つというのがどうも性に合わないと言って出て行くと言う。
「大丈夫じゃ、先生!全部上手く行く!先生やったらできる!」と仁に微笑む龍馬。
「はい」と仁もまた、微笑む。
何の確証もないのなら、そう信じよう。
「神は乗り越えられる試練しか与えませんから」と、龍馬に言う仁。

その頃、藩医の三隅が、野風を身請けするはずだった大殿の藩の侍たちに「市井の者で、まるで大殿が女郎ごときに袖にされたように言っている者もおる」と言っていた。
大殿に無礼を働いた女郎。
もしその女郎の手術の間に何か起きたら…?と言うと、三隅は金を差し出す。
侍は黙って受け取った。

仁は手術前の説明をしていた。
リンパ節が大丈夫なら、乳房を残したまま切除することも可能と言う仁に、佐分利は驚く。
結納の衣装を前に、咲は座っていた。
野風に麻酔が効いた。
「始めます」と仁の声がかかる。

橘家に、咲の結婚相手の使者がついた。
「まいりましょうか」と栄。
「はい」と立ち上がる咲。

手術が始まった。
仁は「咲さん、メス」と言った。
その時、廊下を歩いていた咲は、仁の声がした気がして振り返った。

咲の目が仁友堂を見る。
仁の周りも、しん、とする。
咲はいないのだ。
ハッとした仁は、「ああ、すみません。メスをお願いします」と言う。

使者を前に栄と並んだ咲は、「申し訳ございませぬ!」と叫ぶ。
「兄上、そしてお使者さま、あいすみませぬが、この結納の品をお受けすることができませぬ!」。
「咲、何を!」と栄が悲鳴をあげる。
「わたくしには参らねばならぬところがございます!ある方の汗を拭きにまいらねばならぬところがございます!」
その言葉を聞いた恭太郎が、「このうつけものが!」と怒鳴り、咲の襟首をつかむと庭に放り出した。

咲を地面に叩きつけた恭太郎は、「自害せよ!」と怒鳴った。
「女だてらに医術に夢中になり、ようやくまともになったかと思えばこのざま!今日という今日は許さん!」
怒鳴った恭太郎は、「自らできぬというのであれば」と懐剣を咲に押し付けた恭太郎に使者は、「橘どの!何もそこまでせぬとも!」と叫んだ。
兄を見つめた咲に恭太郎は小声で、「行け!あとは私が何とかする!」と囁き、次の瞬間「お主のツラなど二度と見とうないわ!」と突き飛ばした。
恭太郎に突き飛ばされ、咲は走る。

打掛を脱ぎ捨て、咲は走った。
裾を巻くりあげ、走る。
手術をする仁は、汗が目に入り、思わず目を閉じて顔をしかめた。
三隅に雇われた侍たちがやってくる。

「我が藩の殿に恥じをかかせた女郎がここにかくまわれていると聞いた!調べさせてもらう」と言って侍たちは踏み込んできた。
ペニシリン製造所にいた純庵を、侍たちは突き飛ばす。
野風の手術は進む。

手術室の前で純庵は、「おやめください!手術が行われております。手術中に踏み込まれたら患者は死にます!」と叫んでいた。
騒ぎを聞いた仁だが、「続けましょう」と言う。
侍たちが戸を破ろうと、叩く。
振動で天井からも落ちてくる。
「出血が多い。止血しきれない!」と佐分利が焦る。

その時、「おやめくださいませ!」と咲の声が響いた。
「何人たりとも消毒せずに手術室に入ることは許されません!ここは医者の聖域にてございます。何人たりとも許可なく入ることはかないませぬ。どうぞお引き取りを」。
毅然と告げた咲に侍たちは「女の出る幕ではないわ!どけ!」と怒鳴った。
すると咲は「どうしてもとおっしゃるなら…」と懐剣を抜いた。
侍たちに緊張が走る。

咲は喉元に懐剣を突きつけ、「ここで自害いたします。どこのご家中か存じませぬが、このような所業は討ち入りも同然!あなたがたもご覚悟めされませ!」と言った。
その声は手術室にも聞こえた。
「咲さん…」。
仁は言った。
「続けます!」

止血完了!の声がして仁は「縫合に入ります」と言った。
喉に懐剣の先が当たり、血が流れる。
咲はハッとする。
それを見た侍は「脅しだ。自害などできるわけがない」と言う。
見守っている純庵は、「南方先生、お早く…」と祈っていた。

「脅しではございませぬ!」と言った咲は懐剣を再び自分に向け、覚悟した。
その時、「何の御用でしょうか」と仁が戸を開いた。
侍たちは「我が藩の大殿さまを侮辱した女郎を渡していただこうか」と迫った。
「大殿さまが彼女を捕えろとおっしゃったのですか?」と仁は聞く。
侍たちが押し黙る。

「鈴屋から、『いわ』の件を話したら、『残念だが、しかたがない。養生するように』と温かい言葉をいただいたと聞きました。これは本当に大殿さまのご指示なんですか?」
そう聞かれた侍たちは、何も言わず、退いて行く。
咲の首を見た仁は、「咲さん、首!」と驚く。
「このぐらい、何とも」と言った咲に、「今日って結納じゃ?」と仁は聞いた。

咲の美しい衣装は乱れ、足袋は汚れていた。
「もう、もうあんまり無茶ばっかりしないでください」と仁は言ったが、「咲さん。本当にありがとうございました」と頭を下げて礼を言った。

咲は野風の寝顔を見守っていた。
「俺はあらゆる想像をした。未来が消えてしまっている以外のあらゆる未来(みらい)を。試練の後には必ず素晴らしい未来があるはずだ、と」。
そう思いながら、仁は埋めた木箱を掘り出し、蓋を開けた。
仁の目が見開かれる。

野風の目も開いた。
咲の笑顔が目に入ってくる。
野風が目を覚ましたことを知らせに、咲は走る。
それを見た純庵は、「いつも走ってばかりですなあ、咲様は。南方先生のところに」と笑う。

丘に座り込んでいる仁。
「先生?」と声をかけた咲に仁は、「写真…、消えてしまって」と答えた。
「未来さんがですか?」
「いえ、写真そのものが消えてしまったんです」。

「どういうことなんでしょうね。単に未来(みらい)であの写真を撮った瞬間が消滅してしまったのか。私と未来が出会うという未来(みらい)そのものがなくなってしまったということなのか。それとも、私も未来も生まれない未来(みらい)を作ってしまったということなのか…。わからなくなってしまいました」。
それを聞いた咲は、「ある日突然、出てきたりするかもしれません。突然消えたわけですし」と言う。
「でもね、咲さん。一つだけ確かなことは…、私が解放されたってことなんですよ」と仁は言った。
「これでもう未来(みらい)に一喜一憂する必要もないじゃないですか」。

仁は続ける。
「これからは目の前のことだけ見て、ただ懸命に生きればいい。ずっと生き易くなる。未来のことが何もわからなくなることで、うろたえて絶望してもいいはずなのに…、涙も出ないんですよね。ほっとしている自分がいるんですよ。私は本当にひどい」。
すると咲は「ひどいのはわたしくです」と言った。
「未来(みらい)から解放されたとおっしゃる先生に、わたくしはほっとしております。ひどい女でございましょう?先生がひどいなら、わたくしもひどうございます」と言うと、咲は「あちらで待っておりますので」と去ろうとした。

しかし仁は「ここにいてくれませんか。いてください」と言い、2人で並んで江戸の町を見下ろす。
咲が野風が気がついたことを伝え、「血色もよろしくて」と言う。
「よかったです」。
仁は「よかったんですよね、これでよかったんですよね」と言う。
「はい」と咲が言う。
「よかったんですよね」。
「はい」。

仁はそれから何度も、これでよかったんですよねとつぶやき続け、咲はその度にはいと答えていた。
それ以外に朝を迎える方法を知らなかった、と仁。

野風を診察する仁の手にすっと器具を渡す咲。
それを見た野風は、「かないませんねえ」とつぶやく。
頭痛も写真も、仁の前に再び現れることはなかった。

野風は龍馬相手に話していた。
これからどうするのか聞いた龍馬は、しばらく仁の手伝いでもしたらどうかと言うが、野風は笑って、「先生がお困りなるとフッと現れ、先生がさっと手を出されると、ポンと望むものを渡されるのでありんすよ、咲様は」と言う。
「そしたらわしんとこに来るかい。構わんきに」と言う龍馬に野風は、「坂本様はとてつもないものを秘めたお方…。あちきなどではお相手はつとまりんせん」と言う。
「おなごみんな、そう言うてわしを袖にするぜよ」と龍馬が言うと、野風は笑った。

「けんどおまんは、まっことそれでええがかえ?」と聞いた龍馬の手を野風は取ると、胸に当てた。
「あっ!」とドギマギする龍馬に、野風は言う。
「見事に治していただきありんした。これ以上望んではバチが当たりんすよ」。
「まっこと…」と龍馬は野風を見つめる。

野風が退院する日が来た。
仁は、「何かあったらすぐに言って下さい」と言う。
野風は、「では南方様最後にひとつだけお願いがありんす。すこしこちらへ…」と言った。
仁が野風に近づいた途端、野風は仁にキスをする。

見送りに来ていた龍馬は「おおっ!」と叫ぶ。
仁から離れた野風は、「咲さま、南方先生はかように医術以外は隙だらけでありんすよ。しかとお守りを」と笑った。
「では皆様、おさらばえ」。

きっとまたいつか会えるから…いいよと言った未来。
雪が舞い落ちてくる。
去っていく野風の後姿に、龍馬が叫ぶ
「野風、まだ雪になりたいがか!」

振り向いた野風は、仁に最初に会った時のようにあかんべーをした。
「まっぴらごめんでありんす!」

そして、「これからは己の足で行きたいところに行くでありんす!そこで誰かと出会い、誰かを慕い、慕われ…、誰よりも幸せになるでありんす!」と叫んだ。
「南方先生の手で、生まれ変わらせていただいたのでありんすから。南方先生、ほんにほんにありがとうござりんした!」

それを聞いた仁も叫んだ。
「よかったです!」、と。
「私はあなたを助けられて良かったです!良かったです!野風さん!」
仁もまた、泣いていた。

咲は雪を見ながら言う。
「水というのは、不思議なものでございますね。雨になったり、湯気になったり、氷になったり、雪になったり。様々な姿になるけれど、本当は全て水。そして私たちの目には見えずとも、この世から消えてなくなることはない」。
そして仁と顔を見合わせ、「わたくしはそう思います」と言った。

丘の上で龍馬と一緒にいる仁も思う。
あれはそういうことなのか、そんな風に未来も生まれ変わって…。
野風を見送った龍馬も言う。
「ほいたら、わしも行こうかね」。

仁が「もしかしてもう知ってるかもしれませんが、私は…」と言いかけたのを龍馬は遮り、「聞いたところでどうにもならん。10年先、百年先を知ったところで、日は1日1日開けていくだけじゃ。一歩一歩進むだけじゃ。わしも先生も。地を這う虫のように」と言った。
それを聞いた仁は「じゃ、龍馬さん…、また明日」と言う。
「おう!」と龍馬が答える。

未来、あそこから出て行かない俺に、キミは本当はずっと言いたかったんじゃないだろうか?
もう一度歩いてみろ。
きっと思う以上に、美しいはずなんだから、人生は。

仁は夕陽を見る。
「手習いの塾をするので、よろしくお願いするでありんす…お願いします」と言って野風はチラシを道行く人に渡していた。
ガッカリする栄に恭太郎が「私がにぎやかにしますよ」と言うと、栄は振り返り、「あなたに縁談が来ております」と言う。
辰五郎は仁の病院の普請を始めた。
勝が外国と交渉している後ろで、龍馬は靴を履いて喜んでいた。

万華鏡が合わさる。
明治へ、そして現代へ。
「神様は乗り越えられる試練しか与えない、これ基本だから!」と講義している未来の姿。

咲に指示されながら、「為の国為の道」と書かれた額を壁にかけようとしている仁。
思わず、足場から落ちる。
そして仁は再び感じる。
あの、頭痛を。
「え?」
ホルマリンの胎児が目を見開く…。


先生が「ない」と言われるなら、ないのでありんす 「仁 -JIN-」第10話

「龍馬暗殺」
仁、第10回目、ついに!しかも「龍馬暗殺?!」。

咲を前にした仁は、激しい頭痛に襲われる。
心配する恭太郎に仁は疲労していると言った咲だが、見つけた写真の未来の姿はやはり薄かった。

咲には縁談が持ち上がっていた。
栄は咲は仁が好きだが、「夢中なのはあなただけに見える」と指摘。

仁は激しい頭痛に襲われていた。
それはタイムスリップの時と同じだった。
自分は江戸時代から、戻るのだろうか…?
「何もかもがもうすぐ、終わる」。

一方、2千5百両という大金で身請けが決まった野風は、身請け前の体の改めを慣例の体改めをする医師ではなく仁に依頼する。
吉原に案内されながら仁は鈴屋の主人から、野風が身請けされること、この前の火事の夜は野風がせめて先生との思い出を作りたかった一夜だったことを聞かされる。

身請けの話に動揺する仁だが、野風の診察を始める。
そして野風の胸にしこりを見つけるが…。
「先生、何かありんしたか」と聞く野風に、一瞬ためらいながらも仁は「いえ」と答えてしまう。
怪訝そうな顔の野風。

未来の姿が薄くなったのは未来という人間が現代に存在すること自体が危うくなったせいであり、それは未来が生まれない可能性があるということだ。
現代に未来が存在する為には、野風と身請けする男性の間に子供が生まれなければならない。
つまり、野風の身請け話に危機が訪れているのかもしれない。
野風の身請け話は成功しなければいけないのだ、と仁は考えていた。

仁は1人、考える。
野風の胸にはしこりがあった。
でも、それは小さく、感触も定かではなかった。
だから悪性か良性かなんてわからない。
だから、自分は嘘を言ってはいない。

現実に写真の未来の姿が濃くなっているのを見て、「これでいいんだ。未来には生まれる権利がある」と自分を納得させようとする。
しかし仁の脳裏には野風との出会い、そしてこれまでの関わりが浮かんでは消えている。
野風の診断を見ていた咲は、仁のおかしな様子に気づいていた。

「もう一度、お調べを」と野風は文を書いていたが、途中でやめる。
南方先生の言うことなら、間違いはないはずなのだ…。

仁は漢方医の福田に、乳房のしこりに効く薬はないかと聞く
誰か乳に岩があるのですかと聞かれて仁は、後学の為と答える。
「乳がんと言えば、華岡流でございましょうな」と答えた福田の言葉に、佐分利の顔色が変わる。
それなら佐分利が華岡流にいた、と純庵も言う。

しかし、「教えてさし上げてはどうだ」と言われた佐分利は一瞬顔色を変えたものの、明るく「その噂困るんですよね」と華岡流にいたことを否定した。

考え込む仁に龍馬は、「そんな顔するき、咲殿も怒るがぜよ」と言った。
「他のおなごのことばっかり気を取られちょるき、ヤキモチじゃ」と言われた仁は、何のことかわからない。
「まさか先生。気づいちょらんかったがか?」と言った龍馬は呆れながら、咲の気持ちが仁にあることを伝える。

「好いちょるからじゃ!信じんがやったら、誰にでも聞いてみたらええ」との言葉に、仁は思い出す。
いつもいつもひたむきに自分についてきた咲、命の危険も顧みず自分に付き従い、刺客に襲われた時は身をもって仁をかばった咲を。
「振り返ってみれば、思い当たることは山のようにあり…。気づかなかったとは言え、自分はどれだけ咲さんに酷なことをして来たのかと」。
 
その頃、兄の協力で吉原の野風を訪ねた咲は、縁談が持ち上がっていることを話す。
女郎に相談と聞いて驚き、笑う野風だが、咲はこんなことは初めてだし、野風に相談するのが一番良いと思ったと話す。
同じ人に同じ想いを抱いているのだから。

野風も仁の想い人への想いに負けたと言う。
「こういう気持ちと言うのは、思い切って嫁いでしまえば忘れられるものなのでしょうか」と聞く咲を優しく見つめた野風は、「あちきは咲様が大好きでありんすよ」と言った。
「諦められんした、と申せば嘘になりんす。けんどもうあちきには身請けに行くより他、道がないのでありんすよ」。

もとより、女郎が身請けを断ることはできぬしきたりだと。
だが大病などになれば別だ。
話がご破算になることがある。
「あちきはそれを狙っていたでありんすよ」。
そう言って胸を押さえる野風。

不思議に思った咲に、野風は胸にしこりがあることを打ち明ける。
自分の母親もそれでなくなったこと。
だからもしかしたら…、と思ったのだ、と。

それでは命に関わる病ではないかと驚き、もう一度診察を、と言う咲。
「怖くはないのですか」と言う咲に、野風は言った。
「南方先生が『ない』と言われるなら、ないのでありんす」。

咲と恭太郎が家に戻ると、「仁友堂」の看板がなかった。
驚いて走りこむ咲に仁はペニシリン製造所に診療所を移し、そこで寝泊りすると告げる。
咲は野風をもう一度、診てくれと頼む。
野風の胸にはしこりがあると。

「野風さんにあったんですか?」と言う仁に咲は「やはり、お気づきだったのですね」と言う。
「しこりがすべて岩とは限りません。乳腺症の可能性もあります。この時代の器具では悪性か良性か判断できないし、判断したとしてもどうにもなりません」と言う仁に咲が叫ぶ。
「それでも、今までは立ち向かってらしたではないですか!先生は野風さんを見殺しにしようとしたんじゃないんですか?未来さんの為に」。

咲は続ける。
「未来さんが大切なのは分かります。でも野風さんは先生の命を救ってくれた方じゃないんですか!」
その言葉に仁は力なく答えた。
「鬼…、ですよね。私は」。

それを聞いた咲は「医術は時として体ばかりでなく、心までも裸にしてしまいます。咲はもう、むき出しの心を見てはおられませぬ!」と言うと仁のところから走り出る。
そしてそのまま栄のところに行き、縁談を受けると告げた。
栄は娘をまっすぐに見ると、「正しい判断だと思いますよ」とキッパリ告げた。

翌朝、出て行く仁を栄、恭太郎、咲が見送った。
咲は仁に弁当を渡しながら、仁と出会い、その医術を学べたことは、自分の人生の宝だったと言う。
「私にとって医術とは生まれて初めて夢中になり、打ち込めたものでした。これからは嫁ぎ先の夫や両親や、行く行くは子供にこの知識を使えればと思っております」。

その言葉を聞いた仁は、咲は縁談が来ていることを知る。
仁は「大丈夫ですよ。私は咲さんの顔を見ると、ホッとしてましたから。きっとそういう家になるんじゃないでしょうか」と答えた。

「咲さん、お幸せに」と言うと、仁は荷物を持ち歩いていく。
仁が角を曲がって姿が見えなくなるまで、咲は思いつめた表情で見ていた。
娘の様子にいたたまれなくなった栄は家の中に入ると、恭太郎は「お前が夢中になったのは医術ではなく、南方先生だったのではないか?」と聞く。

咲の頬を次々、涙が伝って落ちる。
「先生にはおられるのでございます。その方の為になら鬼にもなろうという方が。私の出る幕など、いつまで待ってもございませぬ」。

ペニシリン製造所についた仁は、咲が持たせてくれた弁当を広げる。
中には仁がおいしいと言った揚げだし豆腐が入っていた。
「わたくしの豆腐など、いつでも食べられます」と言って仁を送り出してくれた咲を思い出し、「もう食べられなくなっちゃったな」と仁はつぶやく。

その時、龍馬が現れ、仁を連れて旅籠・川口屋に行ってしまった。
旅籠・川口屋には長州藩の久坂と、彼が連れてきた梅毒病みの男がいた。
龍馬にはじめましてと挨拶した久坂。

初めてではないと言う龍馬だが、久坂は以前会った熱き志士の龍馬と、海軍を創設しようと勝海舟の走狗となった今の軍艦奉行のような龍馬は別人だからはじめましてだと言う。
「相変わらず嫌味な奴じゃの」と言う龍馬に久坂は、「早くペニシリンとやらを見せよ!」と言った。
「これがあれば、おまんの仲間も助かるのお」と龍馬は言い、仁は梅毒病みの男にペニシリンを注射した。

みるみるうちにペニシリンの効果が表れたのを見た久坂。
いくらで買い取れるのかと聞く久坂に龍馬は金ではない、と答える。
久坂たちは長州をまとめて、幕府相手に戦を起こそうとしているが、必ず負ける。

そんな暇があったら一緒にペニシリンを夷敵に売りつけ、その金で船を造り、世界に冠たる海軍を作り、夷敵を打ちかまそうと龍馬は言う。
自分は何も変わっていない、とも。

龍馬の姿を見た仁は思う。
俺は今、ものすごいシーンを見ているのではないだろうか。

だが、夜道を行く仁は歴史を変えてしまうと恐れ、ペニシリンから手を引かせてもらいたいと龍馬に話す。
「薬は命を救うもんじゃ。薬を使うて前もって命を救っちょるだけじゃ。それのどこがいかんがじゃ」と言う龍馬に仁は、「戦で失われるべき命は、戦で失われるべきと言うか…」と曖昧な説明を始める。

枯葉を幾つか並べた仁は、「ある女の人と子供を作るとします。つまりその女の人は本来出会うはずだった男の人と出会わなくなり、生まれるはずだった子供は生まれなくなるかもしれないんです」と言ってみる。

しかし龍馬は首をかしげながら、「それならそもそも、その生まれる子の父と母になるはずやったものらは始めっから出会わんがやろ。父と母もおらん。生まれる子もおらん。その子が生まれんことで悲しむもんも困るもんもおらんぜよ」と葉っぱを吹き飛ばして答えた。
言葉に詰まる仁。

その時、龍馬は、出会った時の仁の言葉を思い出した。
初対面なのに、仁が姉の乙女の名を知っていたこと。
ペニシリンで歴史が変わってしまう、と言っていたこと。

龍馬の目が見開かれる。
「先生…、もしかして先生は、わしらの運命を知っちょるがかえ?!」。
驚く仁。

背後に何者かが迫った。
今度は仁の目が見開かれる。
龍馬は仁と向き合ったままの姿勢で、背後の刺客を刀で突き刺す。

1人、また1人。
次々現れる刺客たち。
「先生、わしはあっちに行くき、その間に逃げえ!」と龍馬は叫ぶと、「行くぜよー!」と刺客を引き連れ走り去る。
俺が歴史の針を進めたツケ、そのツケが龍馬さんに回ったと言うことか!

その時、仁にまた頭痛が起きる。
うずくまる仁。
これはタイムスリップした時の頭痛だ。
戻るのか。

「南方仁がおる限り、坂本龍馬は死なん」と言った龍馬が、仁の頭に蘇る。
目だけが見える包帯の男。
「戻るぜよ、あん世界に」。
あれは龍馬の声だった。
あの包帯男は自分だ。

万華鏡が頭の中、光る。
それは野風が見ている万華鏡だ。
俺は自分で自分を手術したのか?
ホルマリンの胎児が目を開く。

仁は立ち上がる。
囲まれ、押さえつけられた龍馬に正面から来た刺客が一撃を振り下ろそうとする。
その時、龍馬を斬ろうとした刺客が倒れた。

走ってきた仁が石で一撃したのだ。
仁の姿を見た龍馬が「何しちゅう先生!戻るぜよ!」と叫ぶ。
「死んではいけません!坂本龍馬はこんな所で死んではいけません!」
「何を言うちょる!戻るぜよ、先生!戻るぜよ」と叫ぶ龍馬。

必死に応戦する龍馬。
しかし多勢に無勢だった。
龍馬が斬られるのをかばおうと、仁は龍馬に覆いかぶさった。
「先生!」

バランスを崩した仁と龍馬は斜面を転げ落ちていく。
崖から2人は神田川に落下した。

野風が見ていた万華鏡が割れる。
咲も、野風も不吉な前兆を感じていた。
しばらくして仁は浮かび上がった。
だが、龍馬はいない。
「龍馬さん!」と仁が叫ぶ。



おおお、華岡青洲の名前が。
有吉佐和子の「華岡青洲の妻」を思い出してしまいました。

華岡青洲は、世界で最初に麻酔で乳がんの手術をした医師。
曼陀羅華(まんだらげ)からトリカブトといった薬草に麻酔効果があることを発見し、動物実験を重ねる。
麻酔薬の完成には、人による実験が必要。
その時、実母の於継と妻の加恵が実験台になってついに麻酔薬は完成。
青洲は千人を越える門下生を抱える華岡流の医師となった…って話なんですけど、これ、嫌な話でね。

佐分利が華岡流にいたことはないと否定していましたが、あの場にいたら…逃げるなあ。
嫌な思い出になる。
思い出したくない。
本だけで「こっわ~い…」と思ったんですから。

青洲の母親は美しく聡明な完璧な女性で、嫁はこの姑に憧れていたんだけど、姑は青洲に嫁を寄せ付けない。
次第に嫁は姑を憎むようになり、もちろん姑にとって最初から嫁は息子を奪っていく憎い女だった。
だけどお互い、表面では決していがみあわない。
「このような嫁を貰って、息子は幸せです」「お母様のような立派な女性になります」って言ってる。

それで青洲の麻酔完成の為に人体実験が必要だとわかると、競い合うように自分を実験台として差し出す。
「まあ、お母様は次の日目が覚めましたけど、わたくしは何日も目が覚めませんでしたわ」とか張り合う。
きっつい麻酔を飲みあう。
そして最後は嫁は失明して、麻酔薬は完成する。
やがて姑がなくなり、嫁はかつての姑のように完璧に美しく、献身的な賢い妻となって青洲の家にいる。

もう、青洲の愛を競ってんじゃなくて、お互いが憎くてやってるんです。
それでまた青洲はわかってて、それでも麻酔薬を完成させたくて黙って2人を実験台にしてるわけ。
医学の為に時にはそういうことにも目をつぶっていかなければならなかった、って話で、実際の青洲の母親と妻がどんな気持ちだったかはわからないけど、この話は事実を基にしてるわけで…。

ゾッとするお話でしたね。
もし、この「華岡青洲の妻」を佐分利が目の当たりにしていたのなら、嫌な思い出だろうなと思ったんです、はい。

龍馬に敵意を燃やす長州藩士・久坂玄瑞。
この人は吉田松陰の私塾・松下村塾(しょうかそんじゅく)で学び、、高杉晋作、吉田稔麿と共に村塾の三秀才といわれた人なんですね。
松陰自身は久坂が一番だと思っていたらしく、妹とも結婚させている。
1865年の蛤御門の変で自刃。

この人が龍馬に刺客を送ったんですが、史実としてはそんなことはないみたいで。
龍馬暗殺も1867年ですから、仁の世界では歴史はもう変わっちゃってる。
だから、今さらなんですよ、仁!

とは言っても、愛する未来の姿が薄くなっているのはどうにも放置できないんでしょうけど。
それはわかるけど、何で身請け先の相手との間に子供ができなきゃ未来に繋がらないと思ってるんでしょう?

咲は縁談のことを仁にも聞いてもらいたいのに、どこかに引き止めてほしい気持ちがあるのに、仁は未来の写真ばかりを見て、未来のことで頭が一杯。
母に夢中なのはあなただけ、と指摘され、どうにもならない気持ちを抱えて行ったのは、同じ人を好きになり、同じ苦しみの中にいる野風っていうのがかわいいやら、かわいそうやら。
恋敵同士、いがみあうこともなく、優しく咲を大好きでありんすよ、と言う野風。

龍馬がそんな悩める咲の気持ちをずばりと言ってくれる。
あんな娘にヤキモチなんて焼かせたら、男としていけないよ、ってこと。
それも責めるでもなく、からりと明るく言ってくれる内野聖陽・龍馬、大人の男の余裕と大きさ。
無神経に見えて人の気持ちに敏感だし、思いやれる余裕を持っている龍馬。

刺客からかばい、吉原に奉公しようとし、炎の中から逃げ出さない、咲のあれは献身的な愛ですって。
それなのに咲の気持ちに全く気づいてなかったんですね、せんせえ…。
医術のことならともかく、未来のことで頭が一杯ってそれは何だか2人の女性がかわいそう。

さすがにひどいことをしてきたと自分を責める仁。
咲に知らず知らず甘えてきたけれど、もう甘えられないと仁友堂を出る。
野風に関しても、そう思ってほしい。
思い出の一夜はどうにもならなかったにしても、その想いに答えてやれなかったことに関してだけじゃない、今度は見殺しじゃないですかー。

「鬼ですね、私は」。
野風を見殺しにして未来を取ることを選んだ仁。
これでは未来が憎まれ役ですよ、せんせい!
そんなの、仁先生じゃない!
咲に嫉妬の感情がなければ、そう言いたいところですよ。

隠しきれない仁の思いと自分の思いを前に咲は、「身体ばかりでなく、心まで裸にしてしまいます」とどうにもならないことに絶望して縁談を受けることを決意。
仁に感謝し、家族の為にこの医術を役立てたいというのは医師として、女性としての仁への決別の言葉。
それに対して、咲の幸せを願って去っていく仁。

医術ではなく、夢中だったのは先生だろう、行かせていいのか?と言いたい兄。
仁には医者としての信念を曲げても助けたい女性がいる。
自分など、それを変えてももらえない程度の存在でしかない、去るしかないではないか。

野風だって最後に一筋の希望をかけた診断を、仁が信念を曲げて下したなんて救われない。
花魁として生きてきた自分が好きになったぐらいなんだから、諦められるものではない。
女郎には身請けされる以外ない。
今度はお屋敷内の籠の鳥。
仁と会えることもなくなる。

わかっていても、鈴屋の主人にもどうしようもない。
してやれるのは、野風の想いを伝えてやることだけ。
だが、病ならば、話は立ち消えになる。
命に関わる病が怖くないのかと聞かれて、もはやもう、怖いことは自分にはない。

「南方先生が『ない』と言われるなら、ないのでありんす」。
これ、仁に対する絶大な信頼ですけど、仁が死ねというなら死にましょうってことですよ。
今回、これが一番、心にずしっと来ましたね。

龍馬はペニシリンでお金を稼ぎ、海軍を作り、日本を守ることに決めた。
要らぬ血は流さない。
戦わずして勝とう。
しかし、武闘派には龍馬は地位と金に走ったようにしか見えない。

龍馬と久坂を前にこれはすごい場面に立ち会っているんだと、改めて思う仁。
自分が歴史を変えつつあることに、不安になる。
龍馬暗殺も早まってしまった。
自分のせいだ。
坂本龍馬は、自分のせいで暗殺される。

そう思った仁は、坂本龍馬はこんなところで、自分のせいで死んではいけない!と走り出す。
今日はメソメソしていた感じの仁、女性たちがオトコマエなのに女々しかった仁、ここで頑張った!

龍馬の殺陣は、もちろん、かっこよかったですね。
仁での龍馬はお茶目な面が強調されていましたが、かっこいいんですよ、やっぱり。
理屈で考えて悩む仁に、今できることをすればいいだけじゃない?みたいな龍馬。

現代の仁は、運ばれて来た男性から胎児形腫瘍を取り出したっていうことらしく、つまりその身元不明男性は仁本人?
仁が仁を手術した?
何でそんなことに?
龍馬も一緒にいたの?
わからない~!

「戻るぜよ先生!」は、龍馬が江戸に仁を誘う声でしょうか?
仁は結局、自分が意図しないところで龍馬が助かる為にあの頭痛を起こし、タイムスリップさせたってことでしょうか?
最終回を前に、ますますわからない展開!
わからない、わからない、続きが見たいと言いつつ、終わって欲しくないこの複雑な気持ち。
次回、ついに最終回!


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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