カウントダウンの中、シャンパングラスを手に立つ実那子と輝一郎が立っていた。
直希は2階のデッキから見ている。
照明が落とされる。

「7,6,5,4,3,2,1…ゼロ!」の声で、鐘が鳴り響きイブが明けた。
時効成立。

晴れやかな顔の輝一郎。
拍手、クラッカーの音、祝福の声、聖歌隊の歌。
カメラのフラッシュが次々光る。

実那子が目をつぶる。
その時、激しいフラッシュにより、実那子にフラッシュバックが起きた。

暖炉の前、炎に赤く照らされた男が振り向く。
実那子の記憶が全て蘇る。

輝一郎が貴美子を放し、自分のところへやってくる、握らせた包丁、雨の中で自分を見ていた直巳、そして離れたところから自分を見ていた輝一郎。
病院にいた実那子の車椅子を押しながら、輝一郎は言った。

「いい子だなあ、実那子ちゃんは。約束ちゃんと守ってくれたんだね。俺はいつも実那子ちゃんの側にいるからね。それをよぅく憶えておくんだよ」。
輝一郎が、実那子の車椅子を押しながら、階段に向かう。
車椅子が落ちる寸前、輝一郎は車椅子を止めると、「また来るからね」と言った。

隣の輝一郎の顔を見る実那子。
その目の色に輝一郎は、実那子の記憶が蘇ったことを知る。
「いいんだよ、それで。さあ、実那子、俺を憎んでくれ」。

強い力で握り締めた実那子グラスの柄が折れ、床に落ちた。
グラスが割れて飛び散り、直希が駆け寄ろうとする。
ウエイターがすぐに駆けつける。

実那子が後ずさりしていく。
純白の手袋が、グラスを割った時の血で赤く染まっていた。
「いやああああっ!」
悲鳴を上げる実那子、輝一郎は哀しそうに実那子を見つめて黙ったまま動かない。

直希は人をかきわけながら、実那子に近づこうとした。
その時だった。
グラスの片づけをしていたウエイターのが、輝一郎の前に立った。
ウエイターがメガネを外す。

その顔をいぶかしげに見た輝一郎の顔色が変わる。
国府だった。
「時効成立おめでとう…」。

次の瞬間、国府は輝一郎の体を抱き寄せた。
「心配するな、急所は外してある。死にはしないよ」と国府が囁く。
輝一郎にナイフが刺さる。
気絶しそうになった実那子を、直希が抱きとめる。
「何でだ…、ちゃんと殺せよ」。

国府は囁いた。
「俺はまた刑務所へ入る。仮出所になって、またおまえを刺しに来る。どこに隠れたって必ず見つけ出してやる。次もまた急所を外してやる。俺は捕まって、何年か経ったら、またおまえの前に現われて、一生それの繰り返しだ。俺がおまえの前に現われる度、おまえにはこういう傷がまた増えてゆくんだ」。
輝一郎の顔が恐怖と苦痛に歪む。

「わかるか?濱崎。これがおまえが一生をかけて味わう地獄だ。おまえにふさわしい地獄だ」。
国府が取り押さえられると、輝一郎は倒れた。
押さえられた国府は、実那子と直希を見た。

国府が叫び声をあげ、自分を押さえていた手を振り切る。
直希が実那子をかばおうとすると、国府は実那子に言った。
優しい目だった。
「すまない。実那子ちゃんを傷つけるつもりはなかったんだ」。

国府が連れて行かれる。
壁にもたれかけるように倒れた輝一郎は自分に刺さっていたナイフを引き抜くと、実那子へ差し出す。
「実那子…、もっと深く、もっと深く刺してくれ。殺してくれよ、おまえの手で」。

実那子が近づいていくのを、直希は息を詰めて見守る。
ひざまづいた実那子は、輝一郎を見つめ、ナイフを受け取る。

だが実那子は受け取ったナイフを床に置くと、純白の手袋をした手を輝一郎の傷口へ当てる。
輝一郎から血があふれ出る。
実那子は泣きながら、あふれ出る輝一郎の出血を自分のショールで必死に抑えた。
そんな実那子を輝一郎が見る。
直希が涙ぐむ…。

担架で運ばれていく輝一郎の顔が白く照らされ、麻紀子が近づく。
「来てくれたんだね。俺がやった事、全部見てるんだろ?」
麻紀子は言った。
「生きるのよ。生きて、生きて、生き続けるのよ」。
そう言った麻紀子に輝一郎が手を伸ばす。

輝一郎が伸ばした手の先には、誰もいなかった。
そのまま、輝一郎は運ばれていく。
直希に抱きかかえられた実那子は「眠い」と言った。
直希は言う。
「全部、全部悪い夢だから」。

1ヵ月後。
実那子は直巳のところにいた。
結局、実那子は、輝一郎を憎みきれなかった。
自分を騙し、愛した輝一郎を。

国府の恐怖から逃げられなかった輝一郎は、狂気の世界へ逃避してしまった。
輝一郎は狂ったまま自由を奪われ、生きて、生きて、生き続ける。
重症患者を収容する部屋で、1人、麻紀子の絵に向かって、延々と「生きて、生きて、行き続ける」とつぶやき続ける輝一郎。
 
直希は東京で暮らし、働いていた。
実那子に直希から「再会のやり直しをしないか。場所は、俺たちの眠れる森」と書かれた手紙が届く。
3人で熱いスープが飲みたいと直巳に言って、実那子は森に向かった。
約束の日、直希は仕事中、物を落とし、駅に向かう途中、盛大に転んだ。

列車が2人の故郷の「中之森」へと向かっている途中、実那子に似た少女が乗ってきた。
直希が落としたみかんを、少女が拾った。
何故か上手く動かない手で、直希は少女にみかんを手渡す。
左手で不器用にみかんをむいている直希を、少女が見ていた。

「どこまで?」と直希に聞かれた少女は直希と同じ行き先、「中之森」と答えた。
あっちで、母親が待っていると言う。
「俺もいるよ、待っている人」。

列車は「中之森」駅に到着した。
少女がホームにいたつ母親の元へ駆け寄る。
母親と改札に向かった少女は、列車を振り返った。

直希が降りてこない。
列車の扉が閉まる。
じっと見ていた少女は母親にうながされ、歩き出す。
列車が動き出したが、直希は列車の中にいた。

通路にみかんが落ちている。
駅に行く前、買った蘭の花が直希の膝から落ちる。
眠っているように見える直希の顔は白く、唇には色がない。
直希の目から、涙が流れる。

その頃、実那子は再会を夢見て、森のハンモックに揺られていた。
列車は直希を乗せたまま、走って行った。



あー、終わりました。
見るのは2度目なんですが、おもしろかった~。

実那子の記憶がカメラのフラッシュで完全に蘇り、隣にいる男が殺人者とわかるシーンはすごかったですね~。
「いいんだよ、それで。さあ、実那子、俺を憎んでくれ」から、「時効成立おめでとう…」、「何でだ…、ちゃんと殺せよ」の流れも、ものすごかったですね。
実那子の悲鳴も音に出さず、「黒の慟哭」が流れて、動きがスローモーションのようになる。

最終回は、記憶のシーンといい、陣内さんと仲村さんが演技でも火花散らしてたように思います。
結果、この2人のシーンは迫力あるものに。

「いいんだよ、それで。さあ、実那子、俺を憎んでくれ」。
「殺してくれよ、おまえの手で」。
実那子がかわいそうなのはもちろんですが、こんな風にしか愛せない輝一郎もかわいそうというか。
この人はこんな異常な自分の人生を、愛する人に終わらせてほしかったんでしょうか。

それに対する実那子の答えが、輝一郎の傷口を抑えることだったとは…。
この実那子の行為が、世の中は憎悪と悪意にまみれていると思って生きてきた男の心を打ち砕いちゃったんでしょうね。
彼女が刺してくれれば、憎悪してくれれば、輝一郎は満足して救われたかもしれない。

輝一郎を愛してたというのもあるけど、目の前で血を流している人にとっさに手を差し伸べてしまうような女性がいて、その女性が自分が殺した家族の生き残り。
国府の恐怖もですけど、もともと病んでいた精神なら、もう崩壊するんじゃないでしょうか。

でも国府さん、待たせている春絵さんはどうするのでしょうか。
実那子に謝ったというのは、良かったですね。
「お兄ちゃん」って呼んであげたくなるような、優しい目をしてました。

事件さえ起きなかったら、良いお兄ちゃんになったんでしょうね。
実那子ならきっと、国分さんに会いに行ってあげたんじゃないでしょうか?
しかし冤罪で15年って、大変なことになるんじゃないですか、これ。

国府さんも実那子をあそこまで怖がらせなくてもって思わなくもないですけど、輝一郎が側にいて婚約までしている実那子に感付かれるわけにいかなかったんでしょう。
しかも自分の目が実那子に光っているのを知っていれば、輝一郎も妙な行動に出ないだろうし。

直希のことは、輝一郎のスパイかどうかわからないですもんね。
直希にも謝ってあげてくださいね、痛かったし、怖かったと思いますよ。
…って、謝れなくなっちゃった!

そして直希、当時も言われていましたが、「高校教師」みたいな最期でしたね。
余計な話ですが、直希が転んだ時、「蘇る金狼」を思い出しました。
この主人公は全ての勝負に勝って成功者となったのに、彼を愛した女性が彼を失いたくないあまりに刺す。
主人公は彼女を手にかけてしまい、自分も飛行機内で壮絶に死んでいくんです。

主人公が全ての出発となるはずだった空港で、平然と歩いていたのに突然、盛大に転ぶシーン。
もしかしてあれ、やりたかったんじゃ…?
関係ないけど、「蘇る金狼」のあのシーン、空港を歩く主人公を上からずっと映して追っていて、すごくおもしろいと思いました。

さて、「眠れる森」のラストシーンに関しては、本放送の時も「直希はどうなったの?」という問い合わせが殺到したらしいです。
やっぱり直希は死んでいるそうで、サンタクロースとの格闘の時の傷が原因ということなのですが、ライターがうまくつけられない、最後は仕事中物を落とす、転ぶ、みかんがむけないなど、いろいろと伏線を散りばめていたようですが、致命傷になっていたというのがわかりにくかったんでしょうね。

良く、頭を殴って気絶して目が覚めると…、というシーンがありますが、目が覚めないこともあるのであれは危険です!とお医者さんが以前言ってました。
いや、やらないですって、そんなこと。

本放送当時、キムタクが転んだのを、「あはははは」と笑い、死んでいるのがわからなかった彼氏のことを、「何て鈍感な人なんだろう。バカなんだと思った」と、友人が言ってたのを思い出します。
そ、そこまで思わなくても、って。

それで、当時も言われていたのは、あそこで直希が死ぬ必要ってあったのか、と。
70年代のドラマって、全部終わった後にああいう無残な最後が唐突にあって、最後まで油断できなかったんですね。
それが心に残るラストシーンには、なっていたんですが。

このドラマよりずっと後ですけど、現在、活躍しているある監督が「後味悪くさせるのなんて、簡単なんですよ。
最後に主人公を『えっ?』って思うような死なせ方しちゃえばいい。だけど必要もないのに、そういうことはしたくない。
観客の心に残すのに、やりきれなくしちゃえばいいってもんじゃない。だいたい、今の時代に、それって安易な終わらせ方でしょう」みたいなことを言ってました。

「眠れる森」に、ではないですが、「やりきれなくする為に安易に死なせるドラマや映画、大嫌い」と怒っていた友人もいましたし。
ラストをやりきれないものに持っていって後味を苦く残すかどうかは、作る人それぞれの好みや時代だと思いますが、「眠れる森」に関しては、この監督の意見の通りな気がしたんですね。
直希をあそこで死なせる意味はあったのか、と。

しかし後に野沢さんが「死があっけないほど、残される人間の虚無感は深い。この虚無を描くことによって、死は甘美なものではないと訴えることができる。
苦しいのは死ぬ側でなく、生き残る側だ。視聴者は予想もしなかった直希の死を見て、それを引きずって生きる実那子を思う。これは悲恋の物語でもある」と語っていたそうで、これで納得しました。

「苦しいのは生き残る側」というのは、確かに最後の「殺してくれ」って言っていたのに生きさせられる輝一郎の「生きる地獄」にも現れてましたね。
さらにこれは、悲恋物語でもあるそうで、それで、ああ、そうなのか、それで直希を死なせたのか、とわかりました。

うーん、でも野沢さんの言う通りで、やっぱり、あの後の実那子の悲嘆を思うとつらいんですね。
だけどきっと、実那子はこの事件で失われたあまりの多くの人の為に、しっかり生きていく女性なんじゃないかって思うんですが。
カウンセラーかなんか、直巳パパとともに、とにかく同じように傷ついた人の力になろうという方向にエネルギーを注いでいける強さを持った女性であると思いたいですね。

それでオープニングの映像ですけど、由里が眠るように倒れて、敬太が木から飛び降りる。
輝一郎が胸を押さえて倒れ、それを国府が確認したように背を向ける。
全部、暗示してたんですね!

そして、眠り続ける実那子。
花を持ち、走る直希。
ハンモックを背に立つ実那子。
直希が到着した時、実那子はいない。

揺れるハンモック。
目覚めた実那子。
2人は結局、会えない…。
と、ここまで表してたんですね~!

ちゃんと最初から物語の着地点を決めて、しっかり作ってたんだなあと感心したのはここです。
さらに黒い服装なのは輝一郎、表が黒いコートでも中は白い国府、白い服の直希、実那子で、犯人は輝一郎!ということもちゃんと表現していたんですね。

そうそう、当時、どこかの最終回を予想するという掲示板で、最終回当日だか前日に国府が輝一郎を刺して、言うセリフまで書き込まれていたそうです。
当時、家にパソコンがなかった私は知らなかったのですが、読んだ友人は「まさか~、こんなすごい展開」と思ったそうなんですが、ピッタリだったらしく、驚いてました。

この後、現実にいろいろと起きたことを考えると、現実は本当に厳しくて、これは怖ろしいけれど美しいファンタジーだったんだなと思えました。
中山美穂も、キムタクも輝いていたし、陣内さんは不気味でよかった。
明日から、楽しみがなくなってしまった感じです。


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2010.02.03 / Top↑
深層催眠によって12歳に戻った実那子は言った。
「そうよ、あの人よ…、国府さんが…、私に近づいてきた。その手には包丁が…」。

玄関のドアが激しく叩かれ、自分の靴を取りに玄関へと向かった国府だが、実那子の目を見たままだった。
ただ立ち尽くす実那子の側に来た国府は、包丁を持った手で実那子の脇にあった鏡を叩き割り、「俺のことをしゃべったら、お前を殺しに来るぞ。忘れるな。絶対に忘れるな」と脅した。
「しゃべってないかどうか、確かめにくるからな」と言った国府は、包丁を実那子の手に握らせると、裏口から出て行った。
裏口から国府の姿が消えたと同時に、玄関を打ち破って誰かが飛び込んできた。

「玄関から入ってきたのは誰だった?その人が警察に連絡したんだよね?」と直巳が尋ねる。
倒れている両親、暖炉の前で姉を抱きしめて泣いている男。
包丁を持って立ち尽くしているのは、実那子。

警察官が駆けつけ、男は「まだ息があります。早く何とかしてください!」と叫ぶ。
その叫んだ男も国府だった。
実那子は眉をひそめる。
「時間が混乱している」と直巳は言った。

次に実那子は、将人くんとタイムカプセルを埋める時の記憶を蘇らせ始める。
直希が止めようとするのを、直巳が制する。
実那子はタイムカプセルを埋めた時の自分に戻っていた。

手の中のペンダントを見ている実那子は、埋める前にもう一度、本当の父の顔を見ておきたいと言った。
直巳は無言のうちに、直希の同意を求めていた。
「じゃあ、こうしよう。そのロケットを開けた時、君の時間旅行は終わる。1983年から現在に戻って来る。いいね?」
「はい」。

実那子の手がロケットを開く。
そして、現実に戻ってくる。
照明が切られる。

「もう一度、君の手で埋めるんだ」と直巳がロケットを実那子へ返す。
ロケットを開いた実那子が若き日の直巳の姿を確認し、「本当のことなの?」と聞いた。
「俺も最近知った」と直希が言った。

直巳は、実那子の不幸は、全部自分の責任なのだと言った。
だから、事件の記憶も虐待も、本当の父親の記憶も、全て消してやりたかったが、結果としてそれは実那子を苦しめるだけだった。
「私たち…」。
「幸せになれよ」と、直希は実那子の手を握った。

12月24日、実那子と輝一郎の結婚式の日。
それは15年前の事件の時効の日。
結婚式の船は港を出発し、直巳は岸壁へ花束を置いた。
「おめでとう」。
 
結婚式は始まり、直希も招待客の中にいた。
直希はパーティー会場を抜けて、バーのカウンターのある部屋でタバコに火をつけた。
クリスマスの鐘まで、あと1時間。
招待客がデッキへ移動する。

直希の携帯電話が鳴る。
恩田刑事だった。
敬太の通話記録を調べて、おもしろいことがわかったと言う。
敬太が最後にかけた携帯電話の番号だ。

おそらく闇ルートで手に入れた電話なのだろう、相手の名前は解らなかったが、相手のいる場所はわかった。
そしてその相手は、今、君がいる船の上だ、と恩田刑事は言った。
敬太が最後に連絡を取った相手は、直希を襲ったサンタクロースだろうか。
そしてそれは、15年前の真犯人だろうか?

船内に敬太の名で、呼び出しのアナウンスが流れる。
この呼び出しに反応を示す人間。
船から海へ、携帯を投げ捨てる男に、「連絡取れました?」と声をかける直希。
「証拠隠滅ですか。連絡取る時はこれを使えって、敬太に渡されたんでしょう?」
振り返った男は、輝一郎の父、正輝だった。

正輝と直希は、さきほど直希がタバコを吸っていた無人のバーのある部屋で向き合った。
「あんたが由里を殺すよう、頼んだんですか?」
だが正輝は、由里から写真のことで連絡があったのだと言った。
そしてその後、敬太がやってきた。

敬太が金に困っているのがわかったので、正輝は敬太の欲しい額の10倍払う、と言った。
しかし、殺してくれと頼んだのではなく、写真を取り戻してくれと言ったのだと話す。
淡々と語る正輝の胸倉を、直希はつかんだ。
「じゃあ、あのサンタクロース誰なんだよ!あんた誰かばってんだよ!」
正輝がかばいたい人間、それは1人しかいない。

ドアが開き、誰かがやってくる。
「俺だよ」。
逆光で顔が見えなかった男が歩いてくる。
輝一郎だった。
直希の脳裏に、サンタクロースに襲われた時のことが蘇る。

輝一郎は言った。
直希を殺すつもりはなかった、と。
国府が指名手配になれば、それでよかったのだ。
輝一郎は正輝に「親父、こんな所で何してるんだよ。夫婦の誓いの儀式はもうすぐだよ、側にいてくれなきゃダメじゃないか」と平然と言った。

正輝は、「輝一郎、自首してくれ!」と叫んだ。
輝一郎は笑いが混じった声で、「何言ってるんだよ。時効成立まで、あと30分ないんだよ、行こうよ。母さんもきっと来てるよ」。
父親を促し、行こうとする輝一郎。

「ちょっと待てよ!」と、直希は怒鳴る。
「何があったんだよ、15年前!」と詰め寄る直希に、輝一郎は面倒くさそうに言う。
「好きになっただけだよ、森田貴美子を」。
輝一郎は、15年前の事件を語り始める。

大学時代、輝一郎にアリバイ作りを頼んで国府は森田貴美子と出かけていく。
国府と腕を組んで微笑む貴美子の後姿を、じっと輝一郎は見つめていた。

国府は貴美子の父親に交際を反対されていることを、よくこぼしていた。
輝一郎は親身になって相談にのってやった。
国府には、どうしても敵わない。
だから輝一郎は考えた。
「国府にお似合いの地獄ってやつを」。

輝一郎は目を閉じ、うっとりと思い出す。
「貴美子の体に刃物がスーッて入っていった。それが心臓に突き当たる感触。目の前の女が自分のものになったっていう実感だったよ」。
輝一郎は貴美子を刺した包丁を抜き、床に置いていた。
黒い皮手袋を外し、貴美子の唇にそっと触れ、瀕死の貴美子をだきしめてつぶやく。
「愛しているよ。貴美子。もう僕だけのものだ。誰にも渡さない」。

誰かの気配に、輝一郎が振り向く。
そこにいたのは、身動きもできず凝視視している12歳の実那子。
輝一郎は限りなく優しい声で「ちょっと待っててね。すぐ終わるから」と貴美子に呼びかけると、床に寝かせる。

「何見てんだよ」。
殺意を持った声に、立ち尽くす実那子。
輝一郎は実那子に近づいた。

その時、突然、ドアを叩く音がする。
「森田さん!森田さん!国府です!」と言う声。
異様な気配を察知したのか、声は「貴美子!貴美子!」と貴美子の名を呼ぶ。

輝一郎は包丁を持った手で実那子の脇にあった鏡を叩き割り、「俺のことをしゃべったら、お前を殺しに来るぞ。忘れるな。絶対に忘れるな」と脅した。
「しゃべってないかどうか、確かめにくるからな」と言った輝一郎は、包丁を実那子の手に握らせると、裏口から出て行った。
裏口から輝一郎の姿が消えたと同時に、玄関を打ち破って誰かが飛び込んできた。

呆然自失で立ち尽くす実那子に、国府が声をかける。
「実那子ちゃん、どうした?」
部屋を覗いた国府は惨劇を前に、息を呑む。

輝一郎、国府が貴美子と駆け落ちすることを知っていた。
「何でその時、国府を殺さなかった」と言われて輝一郎は苛立ち、テーブルを叩いた。
「それじゃあ、意味がないんだよ!あいつには恋人の家族を逆恨みして、恋人と無理心中しようとしたのに、自分一人だけ惨めに生き残ってしまった卑劣で情けない男として刑務所に入って欲しかったんだ!」

正輝は息子の言葉に、力なくイスに体を崩す。
「だけど難しかったよ。完全犯罪にするのは」と言う輝一郎に直希は、「あんたの犯罪、全部見られてたからな」と答える。

雨の中、靴を手に持って裏口から飛び出てきた輝一郎は、家の裏手を走る。
表に出た輝一郎は、靴を履く。
顔を上げると、マリアがいた。
森田家の裏にあった教会のマリア像。
雨に打たれたマリア像の目から落ちる水滴は、まるで泣いているように見えた。

「後で、つい寄付なんかしちゃったよ。良く似てたんだよ。子供の頃に描かされたマリア像にさ。覚えているだろう?母さんがまだ」と正輝に麻紀子の話をしようとしたが、正輝はもう絶望のあまり、答えなかった。
思うような反応をしない正輝に対し、つまらなそうにした輝一郎は語りだす。
「忙しい一日だったなあ~」。

雨の中、救急車が貴美子を乗せて走り去る。
担架に乗って運ばれる、実那子の両親。
それを呆然と見る実那子に傘をさしかける刑事。
警察の車には、やはり呆然となった国府の姿。

野次馬が集まる中、離れた木の下にもう一つ、白い傘があり、輝一郎がいる。
唇を吊り上げて笑った輝一郎は雨の中、去っていく。

福島から急いで横浜へ駆けつけたら、正輝はまだいなかった。
25日午前0時、失踪宣告成立の瞬間を2人で一緒に迎える約束だった。
だが輝一郎には好都合だった。

麻紀子の肖像画を次々と並べていき、シャンパンを冷やし、料理を並べる。
キャンドルも一度つけようとして、折って短くして火をともした。
燃焼時間を考えたのだ。
おかげで正輝にも運転手にも、輝一郎はずいぶん前から帰宅して、正輝を待っていたと思わせる事ができた。

「確かめに行ったよ。あの娘が本当に俺との約束を守るかどうか」。
輝一郎は病院で車椅子を押されている実那子を見た。
実那子の表情はない。
「一目見てわかったよ。実那子は、とても裁判で証言できるような状態じゃなかった。よくキャッチ・ボールをしてくれた優しいお兄さんが、一家皆殺しの犯人だったってことが、よっぽどショックだったんだなー」。

でも輝一郎は、その後も実那子をずっと見つめ続けた。
「いつか思い出すんじゃないかって、やっぱり俺不安だったからさ」。

実那子が直巳の治療を受けている時、輝一郎はやってきていた。
そこで輝一郎は家の外の森から家を見つめるひとりの少年を見たが、少年は気づかなかった。
それは直希だった。
少年が見つめている窓には、実那子がいた。

東京に引っ越してきた実那子は何もかも忘れたように、平凡な学生生活を送った。
「実那子と顔を合わせる事になったのは、言ってみれば不測の事態ってやつでさ」。
コンサート・ホールの異臭事件。
咳き込む実那子に輝一郎は、ハンカチを差し出した。

そして実那子の行った病院に偶然を装った輝一郎は、実那子と再会した。
「安心したよ。実那子は俺の顔を見ても、一家皆殺しの真犯人だと思い出しはしなかった。森のコテージで受けていた治療がどんなものだったのか想像がついたよ。君のお父さんにお礼を言いたい気分だった」。
そう言うと、輝一郎は笑った。

「俺は実那子を愛し始めた。貴美子に似てたからじゃないんだ。実那子は心の奥に闇を抱えてる。そう思うと、俺どうしようもなく実那子を抱きしめたくなるんだ。わかるか?どうしてかわかるか?実那子の心の闇は俺の手によって与えられたものだからだよ!」
「実那子を愛せば、家族全員殺した罪が償えるとでも思ったのかよ?」と言う直希に、「俺たちの結婚式はあの夜から15年後のクリスマスイブ。新しい人生が始まる時効成立のイブじゃなきゃダメだったんだ」と言う。

「異常だよ、あんた!」
「異常?異常なのは俺だけか?心の隠れ家にいつまでも記憶を隠し続ける実那子も異常だ!その実那子との再会を15年間も待ち続けたおまえだって異常者だ!」

「全てを思い出した実那子が、許すと思ってんのかよ?!」
輝一郎は、まるでイタズラがばれた子供のようにため息をつきながら、言う。
「許してはくれないだろうな。でもそれこそが時効が成立した後も、俺が受けなきゃいけない罪の罰なんだよ」。

直希は、ポケットから携帯電話を出した。
そして「もし、もし、恩田さん。聞こえました?」と言った。
「今からヘリを向かわせる」と言う恩田刑事の答えが帰って来る。

しかし輝一郎は、「遅いよ。今から逮捕状を取っても起訴に持ち込むのは無理だ」と平然と言う。
直希が言う。
以前に海外勤務になって、部長の娘がマレーシアまで追いかけて行った時のこと。
「日本を離れてる間、時効ってね、止まるんだよ」と言われ、輝一郎の顔色が変わった。
だがすぐに平静に戻った輝一郎は言う。

確かに部長の娘は追いかけて来て、一緒に帰ってくれと空港で泣いた。
だからその日のうちに帰国した。
「海外での滞在が1日に満たない場合、時効に向かって時を刻む時計の針は止まらないんだ。知らなかったのか?俺の時効は間違いなく、あと5分20秒後に成立だ」。

アナウンスが、外のデッキで行われるクリスマスのカウントダウンと、実那子と輝一郎の夫婦誓いの儀式が始まると放送する。
「もうこれ以上、邪魔しないでくれ。俺が裁かれるなら、実那子に裁かれたい。いつかそういう時が来るって、そう思っているよ」。
輝一郎はそう言うと、部屋を出て行った。

正輝がうめく。
「私のせいだ…、私があんな怪物に育ててしまった」。
「止めなくていいのか?」と言う正輝に直希は、「実那子が自分で憎んで、自分で裁く時まで、俺は最後までちゃんと見てなきゃいけないんです。過去は自分で背負わなきゃいけないんです」と言い、デッキへと向かう。

スポットライトの中の実那子と輝一郎。
2階のデッキから見守る直希。
「30、29、28…」。
カウントダウンが始まっていた。

 

本放送では、本当にイブ当日に放送したんだと思います。
しかし前編と後編にするとは、ノーカットで放送ですか!?

幼い頃に戻った実那子、口調と表情があどけなくなります。
それからロケットを手にして、埋める前に大事そうに握り締めて中を見るシーンがあるんですが、この辺りの演技、中山さん頑張りました。

はい、いよいよ犯人が明らかになりました。
もう、この頃には怪しいリストに入っていた輝一郎が犯人でした。
同じシーンを同じセリフで、陣内孝則さんと仲村トオルさんが演じましたが、まさに演技対決?
2人とも、それぞれの怖さを見せました。

しかし、やりますね~。
やっぱり第一発見者を装った国府?と思わせて、次は正輝?!と思わせて輝一郎。

由里が実那子に「負けないでください」って言ったのは、犯人が輝一郎と知ったからなんですね。
あまりにも実那子を待つ運命が、過酷だから。
だって全てがわかったら、家族を殺した男と結婚しようとしてたってことを知るんですよ!
由里、直希のことで感情的になっていたけど、本当は良い子じゃないですか…。

追い詰められた敬太は不幸にも輝一郎の「殺してしまえば自分のもの」という、利己的な愛情に呼応してしまったんですね。
いえ、あれが由里との無理心中としたら、それを自分の行為の正当化に使ったというべきか。

実那子と輝一郎を直希が眠れる森に置いて帰って来た時、私ならこんな森、道案内がいなければ帰れないよーと思いました。
もしかしてそれも伏線?と後で思ったのは、輝一郎が犯人だとわかった時、輝一郎にに土地勘があったってことなのかな、と思ったからなんですね。
たぶんこれは全然、考えすぎ!

12年前、いや、まだ11年前ですが、今でも覚えているのは、輝一郎の何だか日常の会話をしているみたいな口調の告白。
怖ろしいことを淡々と、まるで普通のことを語るように語っている。
そこがこの人の異常さを、際立たせていましたっけ。

まあ、しかし、今まで隠しておいたことを時効が近いせいなのか、しゃべる、しゃべる。
いきなり凶悪になる、異常性見せるというか、崩れたー、壊れたー。
普通にしゃべるなー、怖いー。
時効はきちゃいますが、こんなことがわかって今後の社会生活は、どうするつもりだったんでしょうか。

愛する女性を殺して自分のものにするのが動機って、弱いんじゃないかと当時も言われてました。
私は、彼の動機というか、引き金になったのは貴美子の愛が得られないことだったでしょうが、奥底には母親の麻紀子の愛が無条件で自分に向けられていると感じられなかったことがあると思います。

それで、どうも麻紀子は輝一郎に殺されてるんじゃないかって、思うんですよ。
そう思った理由はこの後のシーンに出てきますが、しかも正輝はそれを知っていたんじゃないかって思うんですね。

思うような才能を持った子供でなかったから、愛してもらえなかった。
だから殺した。
または、酒瓶片手に出て行こうとした母を、殺してしまった。

しかし、輝一郎は母的な優しさを持つ女性に惹かれる。
貴美子も実那子も、母的なおおらかさを持った女性ですよね。
母親から得られなかった愛を、輝一郎は貴美子から得ようとした。
でも彼女は国府を愛していた。

それは輝一郎にとって、母の拒絶と同じことだったんでしょう。
国府は自分から母を奪っていく男のようだった。
だから輝一郎は、国府を憎んだ。

正輝は息子の歪んだ母親への愛が、怖ろしい形に発達していくのをおそらく、幼い頃から見ていたんでしょう。
ここには描かれないですけど、麻紀子が失踪した後から、輝一郎には何度か正輝をヒヤリとさせるようなことがあったのだと思います。
そしてその度、罰するのではなく、かばってきた。
怪物にしてしまったというのは、そういう思いなのではないでしょうか?

想像する余地を与える。
全部描いてしまわないのが、このドラマをより一層、不気味にしているのだと思います。


2010.02.03 / Top↑
第10回(追記訂正:11回)、再放送なのに、本放送見てるのに、すごい盛り上がってます。

早朝の河原で倒れている由里。
その首には絞殺された跡が残っていた。

警察病院に呼ばれた直希が通されたのは、霊安室だった。
呆然としていた直希に、由里を確認するよう声をかける刑事。
直希が寝かされた遺体の、顔にかけられた白い布を取ると、由理だった。

膝をついて、泣き崩れる直季。
由里の額に手を当てたが、その感触に違和感を覚えたかのように手を乗せてやれない。
涙にぬれた直希の目が由里から離れると、憎しみに光る。

敬太の連絡を受けた実那子が輝一郎と駆けつけると、敬太はうなだれて座っていた。
連絡をありがとうと言われても、魂が抜けたように顔を上げるだけだった。
霊安室に入った実那子の目に入ってきたのは、由里が安置された横で床に座り込んでいる直希だった。

商店街を猛然と歩く直希。
敬太が懸命に後をついてくる。
由理があのフィルムを現像したなら、近所のはずだ。
直希はフィルムの件を、警察には話していなかった。

何故話さなかったんだ?と問う敬太に、写真撮られたぐらいで由里を殺すか?と直希は言った。
国府がそこまでする必要は、ない。
「俺たちでやる、由里を殺した犯人を見つけてやる」と言う直希に、自分たちだけで何ができる、と敬太は言う。
苛立った直希は敬太の胸倉をつかみ、「お前、由里が好きだったんだろ?」と言う。

「ああ!お前よりもな!」と、敬太もつかみ返す。
「だったら、早く行けよ!」と怒った直希は、敬太を突き放す。
歩いていく直希の後姿を、敬太は冷たい表情で見送った。

直希は、由里が現像に出した店を突き止めた。
店員の話だと由理は午後3時ちょうどに写真を受け取り、店の入り口で写真を見ていたらしい。
 
遺体の発見現場の河原で、直希は敬太に、午後3時から死亡推定時刻の10時まで、由里は何をしていたんだろうと言った。
犯人は由理が犯人が写っている写真を持ってることに、どうやって気づいたんだろう。
直希は由理が連絡を取ったのだろう、と思った。
さらに、殺人現場は別の場所だと推理した。

なぜなら、写真を持っているのは由里だ。
主導権を持っているのは由里なのに、わざわざ人気のない知らない場所で犯人と会うなんてことを選ぶはずはない。
犯人と会った場所は、別にある。
そう推理しながら、直希は痛む後頭部を押さえた。
敬太は直希の頭の怪我を心配したが、直希はさっさと進む。

「オーキッド・ハウス」に、実那子への手紙が届いた。
差出人は、由里だった。
そこには、12月10日午後8時 この手紙を書いていることが記されていた。

今夜、自分に何が起きるのかわからないが、これだけは実那子に伝えておきたいとあった。
「あなたは自分の過去から目をそらすべきではありません。負けないでください。私も負けません。直季の苦しみを分け合って、直季と幸せになる為に」。
実那子の顔が、悲痛な表情を浮かべる。
 
輝一郎と暮らすはずのマンションで、実那子は輝一郎に結婚式の中止を訴えた。
式の当日、国府は『クリスマスプレゼント』を持ってやってくる。
だが輝一郎はだったらなおさら、中止はできないと言った。
国府になど、負けてたまるか。
 
その頃、国府は偽名の高橋でイベント会社に就職することに成功していた。
国府は同僚ともなじみ、人付き合いも良く働いていたが、1人になった時、その表情は一変する。
港で、国府は輝一郎と実那子の船上結婚式の船を見つめていた。
 
直希のアパートに、敬太が訪ねてきた。
由里の母親が、直希に持ってて欲しいと言って持って来た封筒がある。
中には定期入れが入っていて、その中に由理と直季の写真が入っていた。

この写真は直希と敬太と由里で撮ったのだが、敬太は切られており、由里と直希が並んでいた。
写真をじっと見る敬太、目をそらす直希。
そして、定期入れの中にはレシートがあった。

由里はレシートをこんな風に取って置くようなことをしていただろうか?
直季は由里が、自分の足取りを伝えようとしてたのだと思った。

直希は、レシートを見ていく。
レシートの時間と場所を見て、地図で由理が立ち寄った場所をたどっていく。
すると死亡推定時刻には、芝公園付近にいたことになる。
由理は写真を受け取ると南青山に行き、乃木坂、六本木、東麻布、芝公園と移動した。

地図の上に由里が移動したラインを描いた直希は、「あの道だ」とつぶやく。
それは直希と由里が、一緒に歩いた道だった。
由里の行き先が、直希にはわかった。
そのビルに直希は行き詰まると、良く行っていたのだ。

正輝は実那子の絵を完成させ、輝一郎には実那子の絵を新居に飾り、麻紀子の絵は処分するように言ってあると実那子に話した。
輝一郎が福島の大学を選んだのは、そこが麻紀子の故郷だったので、失踪した母が戻ってくるのを待っていただったのかもしれない。

ビルの屋上で直季と敬太は2人だけで、由里の葬式をした。
直希と敬太は屋上で、ウォッカを飲もうとした。
「お前いつか言ってたよな。俺が照らした由里に惚れたって。それ違うよ。結局、俺、最後まで由里に何の光も与えてやれなかった」と直希は言った。
乾杯はしたが、敬太は酒を口にしていなかった。

直希は、由里は自分の身代わりで殺されたと言う。
敬太はフィルムのせいだと言う。
直希がサンタクロースの顔なんか撮るからだ、と。
サンタクロースの正体は、15年前の真犯人のはずだ。
だが、あのサンタクロ-スが由理を殺したのだろうか?

敬太は「決まってんだろ、国府だ」と言うが、直希は「サンタの他に、もう1人いるとしたら?」と言った。
あの写真で真犯人を脅迫して、金を取ろうとしていた人間がいる。
その為、写真を由里から取り上げて、由里の口を封じたのではないか?

しかし、あの写真の存在知ってるのは由里と直希しかいないと言う敬太に、直希は言う。
「いや、いる。お前だよ」。
直季は言う。
「いや、お前もだよ。あの写真のことを知ってるのは、由里と、今ここにいる俺とお前だけだよ」。
「何が言いたいんだよ、お前」と敬太は返す。

直希は立ち上がり、あちこちを探し始める。
「ひょっとしたら犯行現場に、犯人が何か残してるかもしれない」。
そして直希は、敬太に、「それどうしたの?」と敬太の左腕に残っている爪あとを指摘する。
「俺ずっと気になってんだよ。どういうことがあったら、そんなキズになるのかな、って」。

敬太は、いつもの取立て屋だ、いい加減にしてくれ、と言った時、直希が何かを見つけて身をかがめる。
「何だ、これ?」
直希は敬太の前に、タバコの吸殻を見せた。

「こんな短くなるまで吸うなよ」。
敬太が「犯人がそんなもん、残しとくかよ。犯行現場に唾液のついた吸殻なんか」と言った途端、直希は「お前ここにいただろう」と言った。
「お前だろ、敬太」。
敬太は沈黙する。

「ふざけんなよ!」と敬太に近づいた直希は、敬太を殴り倒す代わりに抱きしめた。
「何でだよ。お前、由里のこと、あんなに好きだったじゃないか。何でお前が殺してんだよ!」
呆けたように敬太は、「俺、死ねば5千万になるんだ。生命保険、受取人は町金(町金融)。命と引き換えに借金返さなきゃならなくてさ」と言った。
「金かよ」と言った直希に敬太は、「そうじゃねえよ」と言った。

「由里が好きだったから。由里を俺の女にしたかったから」。
そう言う敬太に直希は、「お前自分のした事が、どういうことか、わかってんのか!」と叫んだ。
敬太は「わかってるよ。俺の手で由里の人生、止めてやったんだ。俺の女になったんだ」と抑揚のない声で言った。

あの夜、直希に電話をした後、由里はこの屋上に上がった。
深呼吸をした由里は、サンタクロースの後姿を見た。
サンタクロースへ歩いていく由里は、振り向いたサンタクロースの顔を見て驚いた。
「敬太?!」

「どうして…、どうして敬太がいるの!?」
敬太は由里に、「写真持って来たんだろう?俺にそれ、譲ってくれねえか」と言った。
「どうして私がここに来るって知ってたの?」
そうだ、由里が連絡したのは、サンタクロースの中にいた人間のはずだ。
では何故、敬太がそれを知っているのだろう?

それには答えず、敬太は由里に跳びかかった。
敬太の手が、由里の首に手をかける。
必死で由里が、敬太の手を引っかく。

由里の首を締めながら、敬太は「由里、好きなんだ」とつぶやいていた。
やがて由里は、大きく見開いた目を閉じた。
動かなくなった由里を敬太が涙を流しながら、抱きしめる。

「お前から由里を奪ってやった…、もう由里は俺のものだ」と敬太は薄く微笑んだ。
さらに敬太は言う。
「俺、15年前、森田貴美子を殺した犯人の気持ちがよくわかったよ」。

その言葉を聞いた直希は「誰なんだ?お前、知ってるんだろう!」と叫んだが、敬太は「せいぜい頭働かして考えるんだな」と嘲笑うように言って、フェンスを乗り越え、ビルの外側の端に立つ。
「お前何やってんだよ!」と言う直希に、敬太は「来るなーっ!」と叫び、フェンスの外の縁を移動していく。
戻れと言う直希に、敬太は本当にろくでもない人生だった、ここまでだとは思わなかったと言った。

敬太は「ひとつ聞いていいか?俺、ほんとにハイライトの吸殻なんか残してた?」とl聞いた。
直希は自分のポケットから、ハイライトのタバコの箱を取り出して見せた。
「やられた…!」と言った敬太は、直希の方を向くと、「何だか俺たち、ずっと騙し合いだったな」と言った。
敬太は取り出した由里の写真を見た。
それは、由里が持っていた、3人で写っていた写真の、敬太が切り取られていない写真だった。

「怖えよ。何だか由理に会うのが。許してくれねえよな、俺のこと」と敬太は言った。
ビルの角に向かって歩いた敬太は投げやりに涙声で、「もう生きるのなんかたくさんよ」と言った。
直希は必死に、「どんな過去があっても、過ちがあっても、人間はとにかく生きるしかないんだ!」と呼びかけた。

「俺にどんな人生のやり直しができるっていうんだ?」
「違う!やり直しなんかできない!やり直しなんかじゃないんだ!死ぬことが償いになると思ってるのか?死んで楽になることが、償いになると思ってるのか?」
だが涙声で敬太は言う。
「もう苦しくってさ、俺。つらくって」。

直季は「つらいんだろう。だから生きろって言ってんだよ!お前、自分がどうして生きてるのか知りたいと思ったこと、あるんだろう!」と叫ぶ。
敬太は泣きながら、「間違えたんだよ。間違えて生まれてきたんだよ」と言う。
「まだ25だろお前。もっと生きてみなきゃ、そういうことはわかんねえんだよ」と直希は言う。

ビルの下を見下ろす敬太に直希は、「そっちに道なんかねえだろ。道があるのは、こっちだろ!戻ってこいよ。大丈夫だよ。俺も一緒に歩いてやるから」と声をかけ、敬太に向かって、手を差しのべる。
「大丈夫だって」と直希がフェンスから身を乗り出し、両手を差し出す。
敬太が直希の手をつかんだ。

泣き笑いの顔で、「隠れ家に眠ってる」と言うと、敬太は直希の手を振り解く。
直希の方を向いたまま、敬太は両手を広げて落ちる。
敬太を捕まえようとした直希は、思わずフェンスの外へ前のめりに転がる。
フェンスの外の狭い場所で、直希は頭を抱えて泣く。

警察では、由里の捜査をしている恩田刑事が直希と向かい合っていた。
由里の遺体の手から、敬太の皮膚が検出された。
DNA鑑定をすれば、決定的になるだろう

屋上で敬太と何を話したのか聞かれても、直希はうつろな目をして答えなかった。
「…追い詰めたのか?」と刑事は言った。
敬太は直希に罪を詫びて飛び降りたのか、と。

ショック状態の直希は、ぽつんとした声で、「話、後でいいですか?またやらなきゃいけないから…、友達の葬式」と言った。
それ以上の質問を、刑事が諦める。

その夜、実那子も1人、マンションの寝室の暗闇の中にいた。
電話が鳴る。
国府かもしれないと思いながら、実那子は恐る恐る受話器をとる。

「もしもし」と呼びかけるが答えはない。
そう思った時、「俺、伊藤直希」と直希の声がした。
「あなただったの」と実那子がホッとする。

直希は立ち尽くしながら、「俺たちの幼馴染が昨夜死んだ」と言った。
「敬太がビルから飛び降りた。由里を殺したのは敬太だった。敬太を殺したのは、…俺だ」と直希は言った。
実那子は息を詰めて聞いている。

「『隠れ家に眠っている』。それがあいつの最期の言葉だった」。
直希は、「俺たち、行かなきゃ。心の隠れ家に」と言った。

実那子の職場に来た輝一郎は、実那子が結婚準備の為に休暇を取っていると言われた。
とっさに自分が1日勘違いしていた、と取り繕った輝一郎だが、「実那子、どこに行ったんだ」とつぶやく。
 
実那子と直希は、眠れる森の、枯葉の乗ったハンモックの前にいた。
由里の実那子への手紙を読んだ直希。
直希は「眠れる森の美女」の話をし、お姫様が目覚めてすぐに王子様のプロポーズを受け入れたのをおかしな話だと言った。

王子がどれほど、彼女を目覚めさせる為に苦労したのか知らないのに。
実那子は、目と目でわかったのだと言う。
この人が運命の人で、魔女と命がけで戦ってくれた人だ、と。

実那子は直希を見つめて、「私が目覚める時、ちゃんと目の前にあなたがいてくれる?」と聞いた。
直希は、「ちゃんといる。俺がいる」と答える。
「約束よ」。
「さあ、いこう」。

直巳の診療所のベッドに実那子は横たわっていた。
実那子の周りには、いくつもの照明がセットされていた。
深層催眠が始まった。

直希がスイッチを入れた照明が、まるで稲光のように目を閉じた実那子を照らす。
直巳の言葉で、実那子は1984年の12月24日に戻っていく。
12歳の実那子は、1人で2階に追いやられてしまっていた。
「お客様がいらして」と、子供に戻った実那子は言う。

そのうち、階下から音が聞こえた。
「誰かが叫んでる」と実那子は言った。

実那子の記憶が蘇っていく。
階段の上に実那子はいた。
階下の電気がついた部屋から、影が廊下に映っている。

奇妙な叫び声がした。
音が歪む。
部屋を覗いた実那子は、母が倒れているのを見た。
そして父が。

実那子の足元へ、大量の血が流れてくる。
2人の体の下には、おびただしい血溜まりができている。

悲鳴が上がった。
姉の貴美子が逃げてこようとして、髪をつかまれた。
棚が倒れる。
貴美子の姿が見えなくなる。

実那子は、「愛してるよ、愛してるよ、貴美子。君はもう僕だけのものだ。誰にも渡さない」とつぶやいている。
直巳は「その男の顔を、君は見たね?」と問いかける。
幼い声で、実那子は言う。
「そうよ。だってその人、こっちに振り向いたんだもの」。

暖炉の火に照らされている男が、貴美子を抱きしめている。
「目が合ったんだね?誰だか教えてくれる?」
幼い様子の実那子が起き上がって言う。
「あの人だ」。

実那子の方を、男が振り返った。
その男の顔には、貴美子の血がついていた。
男と目が合った瞬間、実那子は絶叫した。
顔を血で染めた男、それは国府だった。



はい、私も思い出しました。
この回、霊安室の由里を直希が見て、オープニングが始まるんですが、曲がいつもの竹内まりやの「カモフラージュ」ではなく、「黒の慟哭」で始まったんでした。
これが緊張感に溢れてて、ゾクゾクしましたよ。

この回の見せ場は、何と言ってもユースケくんでしょう。
「踊る大捜査線」でコミカルな演技をしていましたが、あれもリズム感ありました。
音楽をやっている人なので、その呼吸のタイミングなどはうまいんだなあと思いましたが、こんな沈んだ場面もできるんだ、と感心しました。

もう、本当に情けなくてどうしようもなくて、哀しい。
何だか、いつもおどけてるユースケさん自身が秘めた哀しみを話してるんじゃないか、って思ったほどです。
だから、敬太がフェンスの外に出た辺りから、ドキドキ。

本当に飛び降りそうな気がして。
本当に飛び降りそうな人を前にして見ている気が、してきたんですよ。
もう、あんな、外と段差のない場所を歩いていて、怖いな、怖いなって。

由里の殺害シーンもすごいですけど、直希から由里を奪ってやった、もう由里は俺のものだって言いながら、そんなことできてないってわかってたと思うんですよ。
でも、後で思ったんですが、実那子の姉を殺した犯人の気持ちは、本当にわかったんだと思いますね。
「せいぜい、頭働かして考えるんだな」は、彼が唯一、直希に優越感感じた瞬間では。
ただ、最後にやっぱり一言、教えてくれますけど。

「何だか俺たち、ずっと騙し合いだったな」が、再放送ではカットされていた春絵のアパートを見張っていた夜に交わした会話に繋がってるんです。
敬太が切り取られてた写真、残酷だな、と。
あくまで、誰にも見せない範囲で悪気はなくて、ただ直希が好きでやってたことなのが、たまたま目に触れてしまっただけなので、責めるのも残酷ですが。

「もう生きるのなんかたくさんよ」と言う言葉に、本当にもう疲れたって感じが出てるんですよ。
「もう苦しくってさ、俺。つらくって」って、本当に生きることに疲れてるってわかる。
由里を殺害したのは自分のものにする為じゃなくて、これは由里を道連れにした敬太の無理心中だったのかな、と思いました。

あの時、由里が写真を渡していたら、まあ、渡す暇なんてなかった感じですけど、そうしたらその写真でお金を手に入れて、由里も直希も見なくて済む場所へ行って暮らしたかもしれない。
いや、真犯人をゆすって殺された可能性の方が高いかも。
つまり、そう考えると、敬太はもう誰かにこのままならない人生を終わらせてほしかったのかなと思いました。

大事な人を一気に2人失ってしまった満身創痍の直希は、ついに深層催眠を実那子に受けさせることを決意。
いや~、フラッシュバックで再現される殺害現場目撃は、本当に悪夢。
怖い。

暗い廊下を、子供が階段から見下ろすと電気で、廊下に影が映る。
その影が惨劇が起きていることを知らせる影だから、動きが異様なんです。

静かになって、子供がそっと中を見ると…。
足元に、血が流れてくる。
さらに後ろからお姉ちゃんが誰かに捕まってる。

もう、誰か助けてー!ですよ。
夢なら覚めて、ですよ。
子供の頃見た怖い夢が、現実化しているみたいで、まさに悪夢。
こんな風景、絶対忘れてて良かった。

このドラマ、本放送で見てなかった人には、やっぱりものすごくおもしろいみたいで、1日ごとに見られるなんて幸せだと思います。
「これ、一週間待つのつらかったでしょ?」
「もちろん!」

キムタクが苦手だという人にも、これは勧めます。
もう12年前の作品だけど、やっぱりここに出てる出演者はみんな輝いてる。
キムタクも若さゆえの残酷さとか、無鉄砲さが無理なく表現できてます。

山崎努さんが「天国と地獄」の青年を演じたのを後で自分で見た時、今ならもっと上手く演じられる、でもあの虚勢を張っているような肩とかは今はできないだろう、っておっしゃってました。
それは演技じゃなくて、その時の若い俳優だった彼自身が、周りに負けまいとしている姿がそのまま出ているから、みたいなことをおっしゃってたんですね。

その年齢の時にしかできないものがにじみ出てる時があるっていうのは、やっぱりあるんだなあと。
しかし、盛り上がりますねえ~。


2010.02.02 / Top↑
振り向いた直巳は、直希を見て言う。
「お前の言うとおり、15年前のクリスマスイブ、俺はあの家を訪ねた」。
「実那子が父親から虐待されていることは聞いていた。あの家庭はもう、限界だった。俺は実那子を引き取ることになっていた。あのクリスマスイブは、森田家の最後の団欒だったんだ」。
直巳は語る。
「ところが、俺よりも先にあの家を訪れた人間がいた」。

直巳があの家に着いた時、周りは既に警察官とマスコミと野次馬でごった返していた。
あのクリスマスイブの夜が、直巳の頭に蘇ってくる。
直巳は担架で運ばれて行く実那子と、一瞬目が合ったような気がした。
でも実那子はちゃんと直巳を認識していたのだ。
「俺はあの子の家族を殺してなんかない。本当だ」。

直希の母と知り合う前に直巳は学会の手伝いで福島に行き、学生時代に知り合った実那子の母の和子と再会した。
和子には既に夫がいた。
実那子が直巳の子供とわかったのは、ずいぶん後になってからのことだった。

何も知らない実那子は、大人の犠牲だ。
だから、和子から相談を受けた直巳は、実那子を引き取ることにした。
しかしその夜、事件が起こった。

直巳が実那子の記憶を消し、入れ替えていた頃を直希は思い出す。
夜中に悲鳴をあげた実那子を、直巳は優しくなだめていた。
その様子を見ていた自分に、父は鋭い声で「部屋に戻ってろ!」と命じた。
直希には入る隙間がなかった。
父は、自分には見せたことがないような優しい顔で実那子の治療に当たった。

直巳は自分に、父親としてではなく実那子には患者と医者として接しているのだと言い聞かせていた。
怖ろしい記憶をなくして、新しい人生を送れるようにしているのだと。
だが、やはり割り切れはしなかった。

そして今、実那子はあの頃とは別な形の苦しみの中にいる。
だから直希が実那子を救っているのなら、直希には感謝したかった。
そして、すまなかったと言いたかった。

「今夜は泊って行くんだろう?」と言われた直希だったが、黙って2階の部屋へ上がった。
直巳は直希に渡されたロケットの自分の写真を見つめると、また刃物を研ぐ。

その頃、実那子は思っていた。
「本当の父親が存在するのなら、私は結婚前夜に言ってあげたい。あなたのお世話にはならなかったけれど、あなたがいたから、私はこの世に生まれた。ありがとう。私は幸せになります」。
そして実那子は輝一郎が眠るベッドへと向かった。
 
直季は、春絵が生活するアパートが見える一角に部屋を借り、春絵を見張っていた。
敬太がやってきて、近所の人間に聞いたが、国府と思われる男が一度、サンドイッチマンの恰好で家に帰って来たのを見掛けたという情報を教える。
サンドイッチマン、つまりサンタクロースの扮装をしていたというのだ。
日銭稼ぎのバイトでもやっているんだろうと敬太は言った。

その時、春絵が出て行く。
敬太が春絵を尾行し、直希は残った。
春絵は兄の中華料理店に入った。
営業が終わると春絵は料理を持って帰り、今日も国府の帰りを待つと言う。

兄から、国府から連絡はないか聞かれた春絵は、ないと言って帰って行く。
そんな春絵を、兄はじっと見送る…。

輝一郎と実那子は、船上結婚式の式進行の説明を受けていた。
午後8時にパーティーが始まり、12時の鐘と同時に、2人の誓いの儀式が始まる。
クリスマスイブの夜の鐘の音、誓いの言葉を知らせる鐘の音。
それは実那子の一家の事件の、時効成立を知らせる鐘の音でもある。

その頃、国分は偽名を使い、職歴を偽って、2人の結婚式をとり行う会社の従業員になろうとしていた。
別人のように愛想が良い国府は、ホテルマンであったと言って、船上結婚式の経験を生かすためにここに来たと言った。
面接官は来週連絡すると言ったが、手応えは良さそうだった。

中華料理店の営業が終わり、看板を入れようと外に出た春絵は、料理店の先で携帯電話で話している敬太を見た。
春絵は、敬太のことを国分のことを聞きに来た男の1人だと覚えていた。
あわてて春絵は中に入ると、電話をした。
「今、帰って来てはいけない」と受話器に向かって言う春絵を、兄が見つめていた。

「オーキッド・ハウス」で働く実那子を、直巳が訪ねてきた。
実那子は直巳と外で話をした。
もう一度、直巳の催眠療法を受けたいと直季に頼んだが、断られたこと。
直巳には二度と会わない方がいい、と言われたことを話す。

直巳はフラッシュバックで思い出すことも、催眠療法で思い出すことも、全て本物の記憶とは限らないと言った。
記憶というのは、時が経てば経つほど事実とはかけ離れて行くものなのだ。
「慌てることないんですよね。そのうち、過去の方から私を見つけてやってくるんですから」と答えた実那子に、直巳は記憶を埋め込んだことで、実那子を結局は苦しめたと謝罪した。

しかし実那子はその記憶で15年間、救われたのだと言った。
事件のことを知らないまま、中学、高校、短大と、本当に楽しく過ごせた。
しかもその記憶は全くの捏造ではなく、直季の記憶だったり、直季の夢だったりしたのだ。
父親とキャッチボールしたかった夢、家族でベランダから夕日を眺めていた夢。
実那子は、「やっぱり私たち、同じ故郷でつながっているんです。眠れる森っていう故郷で」と言った。
 
春絵のアパートが見える部屋にいる直希に、子供たちが「サンタだ」とはしゃぐ声がしてくる。
道路を見下した直希は、子供たちの中にいるサンタクロースを見た。
直希は、カメラを持って下りる。

サンタクロースは商店街を抜け、ある建物に入って姿が見えなくなった。
だが直希の前には、春絵のアパートがあった。
国府が中にいるかもしれないと思った直希が、春江の部屋のドアに耳を当てた時、少し離れた直希の背後にサンタクロースが立っていた。
直季が振り向くと、サンタクロースは階段を降りていく。
サンタクロースの後を、なおも直季は追う。

サンタを追った直希は、大きな工場跡にたどり着いた。
中に入った直希だが、サンタクロースの姿はない。
引き返そうとした時、工場の奥で音がした。

周りをうかがいながら、直希は腰を落とし、置いてあった鉄パイプを手にした。
だが、直希の背後にはサンタクロースが迫っていた。
直希が気配に振り返った時、サンタクロースは鉄パイプを振り下ろした。

倒れた直希を、サンタクロースの扮装をした男はなおも殴りつける。
直希はかろうじて逃れ、鉄パイプを構えて、攻撃を振り払おうとしたが、再び倒れた。
倒れた直希を、サンタクロースは容赦なく叩きのめし、蹴り飛ばした。
直希は、工場の柱に頭を叩き付けられた。

頭から血を流して苦痛に体を折り曲げた直希を見たサンタクロースは、立ち去ろうとした。
直希の手がポケットに伸び、カメラを取り出すと、サンタクロースに向かってシャッターを切る。
フラッシュが光り、ひげの扮装を取ったサンタクロースが振りむく。
もう一枚、直希はシャッターを押した。

サンタクロースが鉄パイプを手に、再び直季に近づいてくる。
殺気に身を丸めた直希。
その時、子供たちの「あっ、サンタだ!」という声がした。

その声にサンタクロースは鉄パイプを捨て、工場から出て行く。
子供たちの残念そうな声が聞こえる。
直希の意識が遠のく。
薄れていく意識の中で、直希は敬太が呼びかける声を聞いた。

病院の廊下。
病室に看護師が直希の名を呼びながら入ってきたが、ベッドに直希はいなかった。
抜け出して来た直希は、自分のアパートで目覚めた、
直希の前に、実那子がいた。
敬太が知らせてくれたと実那子は言った。
敬太は警察で事情聴取中だった。

「久しぶり」と言った直希に実那子は、「国府が?」と尋ねた。
「次は殺すって言ってたからね」。
実那子は、自分が思い出せば、全部解決するのだと言う。
もう直希が傷つくこともない。
直巳に催眠療法を頼むと言った実那子に、直季は首を振る。

そして全て思い出すまで、実那子は今のままでいてほしい、あの森が2人の故郷のままであってほしいと言う。
子供の頃の思い出を語る直希は、実那子と同じ思い出をできるだけ長く持っていたいのだと言った。
実那子も、「大切な思い出」と答える。
直希は眠りに落ちそうになりながら、「楽しかったな、あの頃」と言う。
「また行こうよ。眠れる森へ」。

実那子は眠ってしまった直季を見つめ、直希の額に触れようとした手を引っ込めて出て行く。
眠っている直季は、涙を落とした。
部屋の外で実那子は胸が詰まって立ち止まっていた時、由里が来た。

実那子を見た由里は、一瞬、体を硬くしたが、実那子は直希が今、眠っていること、詳しい検査はしていないようだが、骨折も内出血もしてないらしいことを告げた。
良かったと答えた由理だったが、「敬太、私より先に実那子さんに知らせたんですね」と言ってすっと直季の部屋に入って行った。

直季に付き添っているうちに眠ってしまった由理は、直季のうわごとで目を覚ました。
「敬太、カメラに写っているから、国府が、写っているから」。
由理は辺りを見回し、カメラがないことを知ると、直季の上着を探り、カメラを見つけた。
 
実那子の職場で、子供たちが騒いでいる声が聞こえる。
同僚が商店街のクリスマスのイベントが始まったと答える。
外に出た実那子は、両手に風船を持ったサンタクロースがいるのを見る。

子供たちに囲まれたサンタクロースは、まっすぐに実那子を見た。
実那子もまた、サンタクロースを見る。
国府…?

サンタクロースの表情に笑いが広がり、両手を広げて風船を宙に放す。
子供たちが飛んでしまった風船を残念そうに見送る中、サンタクロースは実那子を見つめて去って行く。
その後姿を実那子は見つめる。

国府は直希に対する傷害の容疑で指名手配になり、捕まり次第、刑務所に戻ることになった。
春絵も事情聴取された。
春絵は直希と敬太に気がついており、国府に来ないように警告をしていたらしい。

だが国府はやってきた。
直希を殺す為。
だが、今、わざわざこうして警察に追われるはめになるようなことをするだろうか?

その時、直季はサンタクロースの素顔を写したことを思い出した。
直希は敬太に現像するように言うが。カメラは上着ではなくテーブルの上にあり、フィルムはなかった。
敬太は知らないと言う。
直希のことを知らせたのは、実那子と由里だけだ。

由里だ、と直希は言った。
「あいつ、俺たちの役に立とうとしているんだ」。

その頃、由里は現像した写真を受け取っていた。
店の中で、現像した写真を見た由里。
写真にはサンタクロースが写っていた。
そして次の写真には、振り向いたサンタが写っていたが…。
 
部屋にいる直季は煙草に火を着けようとするが、右手は上手く動かず、左手でライターを扱った。
誰かが訪ねてきたで直希がドアを開けると直巳がおり、入るなり直希の頭に手を当て、めまいはしないか、手足が痺れてないかと聞いた。
直希は大丈夫だと答えたが、直巳は検査だけは受けておくように言う。

直巳は実那子から聞いて来たと言った。
職場を訪ねて以来、直巳は実那子と連絡を取るようになっていた。
そんな直巳に、直希は「仲良くなっちゃって」と言った。

実那子の結婚式が近いなと言う直巳に、直希は自分も父に紹介したい人がいると言った。
大学の頃からずっと付き合っている相手と、結婚を考えている、と。
そいつとだったら、苦しいことも楽しいことも半分ずつにわけ合えるような気がすると直希は言った。
それを聞いた直巳は、「そのうち、森に連れて来い」と答えた。
 
その夜、輝一郎は実那子に警察に国府のことを聞かれたと話をした。
国府がどこにいるか心当たりはないか。
だが、警察は輝一郎が国府と同級生だったこと、国府に殺された家族の生き残りである実那子が婚約していることを既に知っていた。

それを聞いた実那子は意外なことを言った。
確かに国府は実那子に何かしようとしているかもしれないが、それは今じゃないような気がする、と。
「どうして?」と聞く輝一郎に実那子は、「あのサンタクロース…」と言った。
「サンタクロース?」

「私の目の前に国府が現れる日は、もう決まっているような気がするの」。
「…俺たちの結婚式の日か?」
もしそのつもりでも、国府はもう指名手配であり、逮捕されるのは時間の問題だろうと輝一郎は言った。
しかし実那子は、国府は必ず来るだろうと確信していた。

夜になり、直希の携帯に由里からの連絡があった。
どこに行ってたんだと怒る直希に、由里は何もかも終わってから、直希に報告しようとしたと言う。
「言ったでしょ?苦しみは半分ずつって。直季の苦労を私に半分背負わせてほしいの」と言う由里。
「そんなもの背負わなくていいから、すぐ帰って来いよ。俺、お前に言いたいことがある。お前に直接」と言う直希の言葉に由里は、「本当?ドキドキしちゃうな」と笑った。

どこにいるのか直希はきいたが由里は、「今、ちょっとだけ言って。好きだって一言。じゃないと私、怖くて逃げ出しちゃいそうだから」と言った。
由里の背後に、東京タワーが見えていた。
「怖くて?何しようとしてるんだよ?」
「言って、お願い。好きだって」。

「好きだ」と言う直希に由里は、もう一回と言った。
「お前が、好きだ」と言った直希に、由理の返事はなかった。
直希が呼びかけると、「嬉しいな」という声が返ってきた。
「お前、どこにいるんだよ!」という直希の問いかけに、呼吸音が聞こえ、やがて由里は「待っててね」と言うと電話は切れた。

由理は、東京タワーが近くに見えるビルの屋上にいた。
向こうに、サンタクロースが見えた…。
 
輝一郎の父の正輝は、アトリエで酒を煽っていた。
指で絵の具を取ると、実那子の肖像画に手を加え始めた正輝。
実那子の肖像画の向こうに、麻紀子がいた。

「どうしちゃったの、あなた。そんな女に魂を奪われるなんて。輝一郎と同じね」と麻紀子は微笑みながら言った。
「本当だったのか、輝一郎が、お前が生きているって…」。
しかし麻紀子は、「許さないから。あなたや輝一郎をダメにする女は」と言うと、笑いかけ、部屋のドアに向かった。

麻紀子の姿が消え、追おうとした正輝は倒れそうになる。
正輝は顔を覆うと、口を手で抑え、身を震わせて泣き始めた。

真夜中、目を覚ました実那子は、輝一郎の横顔を見つめて考えた。
自分を見つめ続けてくれた人。
そして、もう1人、同じように見つめ続けてくれた人がいる。
輝一郎の寝息がすぐ間近に聞こえる、幸福の実感。

実那子が幸せを噛み締めている時、電話が鳴った。
寝室を出た実那子は、電話を取る。
「もしもし…、もしもし?」と実那子は呼びかけるが、返事はない。
「誰?」と言って、輝一郎も起きてきた。

「国府…、さんですか」と聞いた実那子に、笑い声が聞こえてくる。
笑いながら、奇妙にも聞こえるその声は、「サンタクロースはプレゼントをたくさん持ってくる。どんなクリスマスプレゼントが欲しい?」と言った。

輝一郎が実那子から受話器を取ると言った。
「国府か。今どこにいるんだ。お前は指名手配になっているんだぞ!」
だが輝一郎が言い終わるそばから、電話は何も答えず、切れた。

怯えて座り込んだ実那子は言う。
「何が欲しいかって。クリスマスプレゼント」。
輝一郎は、怯える実那子を抱きしめた。

早朝、電車が鉄橋を渡る。
その鉄橋の下の河原の枯れた草むらの中、バッグの中身が散乱している。
その先には、横たわった由里が目を閉じ、片方の手を上げて硬直している…。



今日、ドアに肩をぶつけました。
結構痛かったです。
それなのに、こんなに鉄パイプで殴るのってとんでもなく痛いし、危険と思いました。
直希、またしてもしたたかに殴られる。

出ました、季節もの、サンタクロース。
しかし、サンタクロースがここまで不気味に映るとは。
私は子供の頃、ピエロが怖かったんですが、これは良い勝負。
表情が読めないからですかね。

それでええと、やっぱり再放送だと、カットしている部分がありますよね?
春江の部屋が電気も消えて、見張ってた直季のところに敬太がやってくるシーンがあったんですよ。
それで敬太が、あの、ちょっとふくぶくしいドジョウひげで髷を結って、細い目で笑ってる大きな頭の人形を被ってくるんですよ。
よく、ビートたけしさんが被って怒られてたような被り物。

それで直希の分も買ってきてる。
変装だと言って。
敬太が由理とはどうなってるのか、直希に聞くんですね。
すると直希は返事をしないで、被り物を被っちゃう。

敬太が、「俺がさらっちゃおうかな」みたいなことを言うと、直希がそれ、ずっと言ってるって。
すると敬太が、借金取りに追われて殴られるような、どうしようもない人生だけど、由理は自分にとって光り輝く星だ、みたいなことを言うんです。

それで敬太も被り物を被って、言うんです。
由理が輝いているのは、直希のおかげだって。
直希がライトで照らしてやるからだ、って。

だけど、直希は敬太と笑っている時の由里が一番好きだって言うんですね。
自分は由里にあんな顔させられない、って。
その言葉に敬太がうれしそうに笑って、被り物を外すんです。

お互い、被り物をとってるんですけど、直希が「いつまで被ってるんだよ」とか言うんです。
敬太はもう被ってないって言うんですけど、直希は何か、敬太が自分に対して仮面を被って接しているような気がしてしかたがない。

このシーン、直希と敬太と由里のそれまでの関係、そして今の微妙な敬太の直希への感情をすごくよく表していたんですが、カットされてました。
直希の背後に被り物2つが置いてあるシーンは、あったんですけど。
ここ、すごく良いシーンだったから、カットしないで欲しかった。

変装で本当の顔が見えない、感情が読めないっていうのは、サンタも同じで、どこか含みある場面でした
でもこの回はものすごい迫力ある展開で、他のどのシーンも抜けられないから、謎解きに支障がないこのシーンのカットはしかたがないのかな。

いや~、ついに実那子、国府と対面。
実那子を見て、風船から手を離す国府、意味ありげ。
でも当時、国府の笑みは敵意がないように思えたんですね。
実那子も何となく、少なくとも今、自分に何かしようとはしてないんじゃないかって思ったんですけど、そんな感じ。

陣内さん、目だけの演技だけど、上手かったんですね。
しかしあのサンタと実那子の前にいたサンタ、身長とか体形が違う気がしてました。

最後の笑い声を含んだ言葉は、怖かったですけど。
会社にもぐりこもうとしてるのは、何だかすごかったですけど。
おお、これは何か起こると。
夜中にあんな声であんなこと言われたら、すぐ、けーさつ…、警察呼んじゃう~。

それで、直巳が直希に対して厳しくて、実那子にはものすごく優しかった理由もわかったんですね。
子供を追い払うのはしかたないのかもしれないけど、お父さん、あまりにも怖かった、厳しかった。
そんなことしてたせいか、やっぱり、それでこの直巳直希親子も言葉が足りないというか、微妙な関係になってる。
直希は少なくとも実那子がいる間は、直巳に優しくしてもらえてなかった感じがして、大人になった今、直巳への直希の接し方がちょっとシビアでひねちゃってる。

直巳はものすごく直希を愛してるんだけど、子供らしい要求にちっとも応えてあげてなくて、すまなかったと思ってる。
直巳は直希との間に生じた距離を、なかなか埋められないと思っていて、専門家なのに、息子へはすごく不器用。
直希がライターうまくつけられなかった理由は後でわかったんですが、ちゃんと意味があったんですね。

今回、輝一郎じゃなくて正輝さんが麻紀子さんを目撃。
ということは、本当にいるんですか?
それにしちゃ動きが不審なんですけど…、正輝さん、荒れ過ぎなんですけど、と思ってました。

そして…、由里ちゃん、何やってるの!
危ないでしょ、1人で!
相手は人を襲ってるし、殺人犯かもしれないのよ!
1人で人気のない場所で会ったりしちゃ、ダメでしょ~!

何で何も言わないの!って、これは後でわかるんですけど、その時はほんとに無謀だと思いました。
けなげ過ぎ、でも無茶過ぎ。

1人で東京タワーのライトが光る、夕方で高いところからそんな電話してるあの風景がすごく不気味でした。
電話の様子も、とんでもなく不吉。
好きだって言葉をわざわざ聞きたくて、その言葉で勇気付けなきゃいけないほど怖い事態なんて、尋常じゃない。
由里から見えるサンタがすごく怖い。
このドラマ、本当にこういう雰囲気に持って行くのが上手い。

思ったんですけど、あの時、実那子と会わなければ、由里ちゃん、そこまで無理しなかった気がして。
でも直希の言葉が聞けて、うれしかったと思う。
直希が待ってるってわかって、自分と一緒になってくれるんだってわかったんじゃないかな。
いや、だからこそ、無事で帰って欲しかったんですけどね。

青い空気の中、早朝…、ぎゃー、由里ちゃん!でした。
この回って怖くて、その反面、いろいろ良いシーンとか、良い言葉とか一杯あった。
バランスいいというか、ほんとに上手いというか。

いや~、10回目。
イブへのカウントダウンが始まった感じがしました。


2010.01.30 / Top↑
第9回。

国府は直希をトランクに拉致し、森へ運ぶ。
森に着いた国府はトランクから直希を出すと、深く大きな穴を掘り始める。
そして掘った穴に抵抗する直希を蹴とばして落とすと、土をかけ始める。

恐怖に襲われた直希は国府に声をかける。
「あんたに会って、どうしても聞きたい事があったんだ。15年前の犯人は別にいる、なのにどうしてあの時、あんたは冤罪だって訴えなかったんだ!どうして実那子に近づく?!」

しかし国府は冷酷に「小僧。檻の中で15年だ。それがどんなものかわかるか?」と答えた。
「どこを向いたって壁ばっかりだ。壁の中で生きるんだ。俺が今、何をしたいか教えてやるよ。…パーティだ!」
そう言うと、国府は笑い声を上げる。

誰もいない暗い森の中、直希の体の上に土がかけられていく。
直希は必死に訴えかけた。
あんたは恋人の貴美子が殺されたショックで、裁判などどうでもよかったんだろう?しかし、その沈黙が罪を認めているように受け取られた、貴美子の後を追って死ぬ

ことも考えた、だが結局、生きる道を選んだ。
だからこそ、15年、監獄の中で耐えたのだ。

直希の上半身にも土がかかる。
国府が実那子のロケットを取り出して、直希の上半身の横に放り投げる。
そして直希を見下ろすと「誰だ、こいつは?」と言う。
直希は答えない。

土が直希を覆い始める。
「怖いか?」
「…怖い」と直希は言った。
「怖いです、だ。言ってみろ!」
「怖いです」。

すると国府は「じゃ、言ってみろ。『助けてください』」。
直希は沈黙した。
再び、土がかけられる。
どんどん、土がかけられていく。

「腐るか?ここで」。
その鬼気迫る様子に、直希は恐怖した。
「…助けてください」。

直希がつぶやいた時、国府はナイフを直希に突きつけた。
「これ以上、俺を探すな。次は殺す」。
直希にそう告げると、ナイフを直希の目の前の土に突き刺し、国府は車に戻る。
国府は写真を見つめた。
写真には、15年前の実那子が映っていた。
 
由里が実那子の「オーキッド・ハウス」を訪ねてきた。
直季がいない、仕事も無断欠勤していると由里は心配する。
最後に直希とどんな話をしたのか聞く由里に、実那子は「眠れる森」での直希のことを話した。

国府に置き去りにされた直希だったが、国府と入居するはずの春絵を見張っていた敬太のところまでやってきた。
刑務所で国府と同じ房だった兄の経営する料理屋に、電話がかかってきた。
春絵は上海蟹の話をしていたようだが、やがて「3日後ですね」と返事をした。

市場からだったと春絵は言うが、見ていた兄は15年間を無駄にする気かと伝えてくれと言った。
来週、居場所がわからないようなら、警察が動き出す。
春絵は承知しながら、メモを書きとめる。
12月7日、午後3時。

敬太は15年前の事件の担当刑事と会えると話した。
ちょうど元刑事が福島に里帰りしているところを、直希と敬太は会いに行った。
廃墟の森田家に元刑事と直希、敬太は入る。

担当刑事は当時の様子を語りながら、初動捜査にミスはなかったと言った。
そして、3人が倒れていた場所、実那子が茫然自失して立ち尽くしていた場所を教える。
「鏡、ですね…」と直希は言った。

実那子は鏡に包丁を持った自分がいた、服は血まみれだったと言っていた。
刑事の話も、確かにその通りだった。

そこに父親、そしてそこに母親、と刑事は話し、暖炉の前に貴美子、第一発見者は国府と教えた。
国府は貴美子を抱きしめて、泣いていた。
当日、国府は貴美子と駆け落ちの約束をしていたが、その約束よりも早い時間に国府は森田家を訪れていたのだ。
それを疑問に思われた国府は貴美子が父親が駆け落ちに気づいているようだと言っていたし、嫌な予感がしたからと言っていた。

その後、国府は憔悴しきって、証言どころではなくなった。
実那子の法廷での証言には、ドクターストップがかかった為、証言はできなかった。
その後、国府は3人を殺した後、逃走、着替えて第一発見者を装って通報したと思われた。

では何故、国府が犯人になったのだろう。
「動機です」と刑事は言った。
貴美子の父親に謂れのない中傷を受け、国府は大学も追われた。
そこで父親への恨みを爆発させた…、貴美子と心中を図った、ということだったが、国府は沈黙した。

その沈黙は罪を認めたとしか、見えなかったのだ。
検事に国府は、自分を殺してくれと訴えていた。
それはつまり、死刑にしてくれということだと判断された。

だが国府は、服役すると人が変わったように模範囚となった。
服役して2年目の夏、刑事は国府に面会に行った。
その時、国府は言ったのだ。
「牢獄にいるのは、自分だけじゃない。恐怖という牢獄に」と。

国府は模範囚となり、仮出所を待っていたのだ。
そして仮出所となった国府は姿を消したことを昔の知り合いに聞いた時、刑事は嫌な予感がした。

犯人は3人を殺害した後、子供だろうが何だろうが、実那子も殺すつもりでいた。
しかし誰か、それは国府だったということになっているのだが、誰かが来たので実那子を殺すことはできずに、玄関から自分の靴を取った。
逃走経路はいずれにしても、ここしかないと言う刑事と一緒に、直希と敬太は裏口から外に出た。

枯れ草が体に当たる裏道を通りながら、直希は想像する。
雨の中、息も荒く、犯人はここを走って逃げていく。
扉を開ける。
敷地の外に出る。
外に出た直希が目にしたのは、あのマリア像だった。

あの事件の夜、この教会ではイブのミサが行われていたが、目撃者はいなかった。
そう言う刑事に直希は言った。
「マリアが見ていた…」。

光るマリアの目。
神父によると、それはダイヤモンドなのだった。
森田一家の事件の後、匿名で2百万という寄付金が贈られたのだ。
それでマリアの目にはダイヤモンドが、はめこまれた。

寄付をしたのは犯人だろう、と直希は予測した。
犯人が恐怖と懺悔の為、2百万という大金を寄付したのではないか?
だとしたら犯人は国府ではない。
国府はその時、服役中だったのだから。

刑事は言う。
事件が起きた時、集まった群集の前で担架に乗せられて運ばれる実那子は「お父さん」とつぶやいた。
刑事は実那子に付き添っていたので、はっきり聞いている。

父親が殺されたのを、実那子は目の前で見ている。
だから群集に向かってつぶやいた言葉は、混乱した頭でつぶやいた言葉だろう、と刑事は思った。
しかし、直希は思った。
あの夜、実那子の本当の父親がここにいたのではないだろうか?
直希はゾッとして、コートの襟をつかむ。

その頃、美那子は、輝一郎の父の正輝の絵のモデルになっていた。
実那子は久々の意欲をかきたてるモデルだと、正輝は言った。
正輝の描く妻・麻紀子の絵には十字架が全て描きこまれている。

最初は妻のリクエストだったのだが、そのうち自分の絵のトレードマークになってしまったのだと正輝は言う。
15年前に失踪宣告が受け入れられた麻紀子。
輝一郎はその夜、福島から東京に戻ってきて、2人で一晩中飲み明かしたと言った。
実那子は輝一郎から正輝と2人のお通夜だったと聞いていたことを話す。

その夜だ、自分が一人ぼっちになったのは。
正輝の筆を持つ顔色が、瞬間、変わる。
だが輝一郎が入ってきて、実那子は食事の支度にキッチンへ入って行った。

輝一郎は正輝に、もし麻紀子が生きていたら許すかと聞いた。
輝一郎と正輝が話していた時、輝一郎は窓の外に人影を見かけた。
外に出た輝一郎の前に、麻紀子がいた。
輝一郎が一歩進むと、麻紀子は一歩、後退する。

近づくのを諦めながらも輝一郎は、「おかえり」と声をかける。
「親父も待ってるよ…、ねえ、母さん、あの夜、何処にいたんだ?」
「15年前のクリスマスイブね…」と言うと、微笑んだ麻紀子。
「何してるの?」
実那子の声で振り返った輝一郎が再び、前を向くと麻紀子の姿は消えていた。

輝一郎が実那子と家に戻ると、家の前の生垣に白いエプロンがかけてあった。
「エプロン…、どこから飛んできたのかしら?」と、実那子は言う。

その夜、直希の仕事先から直希と別れた後、タクシーを待っていた敬太は、道を探しながら歩いている由里を見つけた。
1人、ライトをセッティングする直希の前に、「やっと見つけた!」と由里がやって来た。
こんな風にいなくなられるのはつらい、と由里は言うが、直希は由里を無視してライトをセットし始める。

由里は実那子を助ける必要がなくなったのなら、自分を助けてくれないかと言う。
直希がいなくては生きていけない、こんな自分を。
由里は直希を背後から抱きしめると、「私だって直季を救えると思う…。こうやって寄り添っていれば、少しは、あったかくなるでしょ?」と言った。

「私だって寒くない。寒くなったら、こうしてあったかくなる。苦しいことがあれば苦しみは半分に、楽しい事があったら分け合う。一緒に生きるって、そういうことでしょ?私は直希とそうやって生きて行きたいの」。
由里は泣いていた。
直希も、いつの間にか泣いていた。
「私にだって、直季を救う事くらいできるんだから」。

直希がライトアップした光に照らされ、直希は振り向いて由里を抱きしめた。
由里の額に直希が自分の額を押し付ける。
直希が由里をしっかりと抱きしめる。

その2人をライトアップされた木の間から、敬太が見ていた。
その目に、はっきりとした憎悪が宿る。
涙を流しながら、目に憎悪の光をたたえた敬太は残酷な笑みを浮かべた。
敬太が去ったビルの壁に、直希と由里の影が映っている。
影になった2人の頭は、一つの陰になった。

マンションに戻った実那子は、輝一郎に言った。
母の不倫を父が許せなくて自分を虐待していたのなら、もしかしたら自分は不倫相手の子供なのではないか…?
輝一郎は、もし本当の父親がいるとしたら、やっぱり本当の父親に会ってみたいかと聞いた。
実那子は、「母が愛した男の人ってどんな人だったんだろう。会ってみたい」と答えた。
「花嫁の父、だもんな」。
壁には昼間、実那子が来たウエディングドレスがかかっていた。

山の中の一軒の家、落ち葉を踏みしめて直希は扉を開けた。
直希の父の直巳は、暖炉に向かって刃物を研いでいた。
入ってきた直希に背を向けたまま、直巳は「おかえり」と言う。
キャッチボールも、結局一度もしてやれなかったと直希に謝る直巳だが、直希はそんなことはもういいと言う。

父の背中に直季は話し始める。
15年前のクリスマスイブ、どこにいたのか、と。
直巳は、大学病院の頃の知り合いに会いに行っていたはずだと言う。
だが、直希は本当はどこにいたのか、と聞く。

直希は刃物を研いでいた直巳の手に、あのロケットを落とす。
12歳の実那子が一番大切にしてた物だ、と直希は言う。
実那子が埋めたものを、直希が掘り返してきた。
15年前のクリスマスイブの夜、実那子は群集の中に直巳の姿を見たのだろう。
自分の本当の父親。

直希は言う。
どうして実那子だけが、生き残ったのか、やっとわかった…。
国府が来たから、実那子を殺せずに逃げたんじゃない。
真犯人は実那子を殺さなかったんじゃなくて、殺せなかったのだ。
実の娘だから…。

何故、直巳が実那子の記憶を消そうとしたのかわかった。
忘れて欲しかったからだ。

「マリア像とは、目、合ったか?2百万の寄付のダイヤで光る、綺麗な目だったよ」。
直巳は何も言わない。
「違うんだったら、違うって言えばいいじゃないか!違うって言えよ!何で一言、違うって言えねえんだよ?!」と直希は叫ぶ。
「それは、あの一家をあんたが殺したからだろう?!」
背を向けていた直巳が、直希を振り返る。


話が動きましたね~、迫力がどんどん増して来ました。
サブタイトルが「マリアは見ていた」ですよ、不気味なあの、目が光るマリア像のことでしょう。
いや~、センスいいですね~。
それで、何で目が光ってるかといったら、ダイヤが埋め込まれてるんだそうで、不気味な演出じゃなかったのねと。

しかもそのダイヤが埋め込まれるようになった経緯が不可解な寄付金ということで、懺悔の為に犯人がやったんじゃないかと直希は予測。
そうですね、国府も真犯人は恐怖という檻の囚人って言ってましたからね、相当な恐怖と後悔の中で殺人を犯して逃げる時、最初に目に入ったマリアに何かしたかったかも。
そう、誰も見ていなかった。
でも、「マリアは見ていた」から。

そこでマリアの目にはダイヤモンドが入った。
マリアの目にダイヤを埋め込まれたなら、犯人は自分を見たマリアの目が覆われてホッとしたんじゃないか、なんて思ってしまいました。
これで目をつぶってくれたような、そんな気がしたか…?

国府、ものすごく怖いけど、この回で真犯人から外れましたね。
15年の味気ない日々。
積もった恨み。
壁、という言葉でそれが上手く出てましたよ。

絶望した国府は死刑にならずに無期懲役になり、希望のない長い長い日を過ごすことになった。
その間、真犯人に気づいた国府は、絶望を復讐に変えて、生きる気力にした。
この味気ない、平坦な日々は復讐の炎を燃やす為の時間だ。
無意味で、退屈な日々であればあるほど、国府の憎しみは純粋培養された。
そんな感じでしたね。

こんな純粋培養された憎悪を持った相手に直希が、いや、自由がない世の中にいた人間が敵うわけがない。
だから怖い。
全然、説得が通じない相手が怖い。

いや、国府が何故、直希まで敵視していたのかは後でしっかり、納得したんですけどね。
まあ、本気で埋めることはなかったと思いますよ。
脅して、それで去って行ったとは思いますけど、あの状況で抵抗できる人なんていませんって。
だけど、「誰だ?」ってロケットの写真、国府も知らないのか~、と。

そうしたら、幼い実那子の群集に向かっての「お父さん」発言。
実の父親が現場にいたって?
俄然、実の父親が重要な容疑者に浮上。
なんと、直巳だったとは。
それじゃ、実那子の記憶をなくした理由も辻褄あっちゃったんですね。

ロケットの中、若い頃の夏八木さんのお写真ですね。
直希と実那子は異母兄弟だー!というと、すごく古くからあるドラマのパターンみたいですけど、ミステリーを前面に出しているせいか、あんまりそういう感じがしない。
むしろ直巳が容疑者ってことに神経が行っちゃう。
振り向いた直巳は、犯人に見えなくもない。

だから直希、由里を受け入れたのかなあという気もしましたが、いや~、由里ちゃん、嫉妬と憎しみのあまり、実那子に会いに行った時は怖かったですけど、悪い子じゃないのは今回の実那子への態度でもわかる。
直希が由里を抱きしめたのは、傷ついた者同士が寄り添うような感じがしました。
今の直希にとって、由里は自分の痛みを一番よくわかってくれる相手なんだろうなと思いました。

だけど、恋っていうのは知らず知らず、他人を傷つけているものなんですね。
恋してる者には、相手と自分しか目に入っていない。
だから自分が人を傷つけたことに、気がつかない。

敬太の涙と、涙とは裏腹の憎しみに満ちた目、コミカルでちょっと悪党だった敬太の顔じゃない。
口に浮かべた笑は、まさに残酷な微笑み。
自分も、相手も、全て傷つけてやろう、という…。

ユースケさんの表情が上手かったですよ~。
「踊る大捜査線」での真下さんとは、全然違う。

この登場人物たちは「愛」ゆえに狂っていくんだな、と思いました。
最終回でその思いはさらに深くなりました。

それから、クライマックスでかかる、あのドラマチックな曲。
静かに始まり、やがてパニックのような旋律をオーケストラが奏でる、印象的なあの曲は「黒の慟哭」というのだそうです。
すごくいいですよね、この曲!
クライマックスで流れると、ゾクゾクします。
 
9回目、あと3回、10回、11回、そして最終回へとものすごい展開ですよ。
やっぱりこれでイブの夜の最終回へ、ものすごい盛り上がっていきましたね。


2010.01.29 / Top↑