「JOKER」再放送

現代で「必殺」やってくれたともいえる、「JOKER 許されざる捜査官」の再放送があるんですね。
4月から堺雅人さん主演のドラマが始まると聞いて、「JOKER」の続編かという期待もあったんですが、違いました。
題材としても、今の社会的な状況も考えると、やっぱり、あの続編は難しいのかな。

「JOKER」はその後の展開と、残る謎にいろんな想像ができる状態で終わり。
そういうラストで良いのかもしれないですが、「仕事人」のようなSPも見たい。
話の筋を通すのがなかなか難しそうな組織だから、それを全解明して見せろとは言いません。
組織の謎にちょっと触れるぐらいでいいから、また見たい。


今、「助け人」見ていると、棟梁が度々、「助け人の仕事に間違いがあっちゃいけない」「取り返しがつかない」と言ってます。
何度も基本に立ち返ってるんですね。
そして、裏の仕事にかける相手が金で命乞いをしようと、どんなに金を持っていようと、裏の稼業の人たちはその金を持ち帰ることはほとんどなかったと思います。
「仕事屋稼業」でまだ素人っぽかった半兵衛さんの依頼のない殺しもありましたが、ほとんどの人たちは金を貰わなければ動かなかった、動けなかったとも思います。

ただ、半兵衛さんにしても絶対、罪もない人を殺す外道の殺しではない。
殺しをしないと世の中、霞がかかったようになると言う鉄でも「外道にだけはなりたくない」と言っていました。
そこが殺人鬼にならない、ギリギリの線なんですね。

こういう職業だから、ただの人殺しや外道にはならないことで、人間でいられるギリギリの線で生きている。
そして、こういう職業だから、普通の幸せは得てはいけないと思っている。
いや、得られないと、思っている。

彼らは実は厳しく自分を制し、覚悟を決めて生きている。
だから、別のところでは、どこか常軌を逸するようなところも出てくる。
ここがまた、魅力になっていたりもするんですが。
自分はごくごく平凡なイチ庶民ですから、ドラマの中でしか見ないこういう主人公たちはおもしろい。

表では解決できない犯人を裁く存在は、正義なのか。
確かに真っ当な正義では、ないのかもしれない。
許されざる存在であるかもしれない。
でも、必要としている時があるのは確か。

だが、罪もない人間を秘密保持の為に抹殺してしまったら?
それは、本当に許されない存在になってしまわないのか?
「必殺」では裏稼業を知られた場合、仲間になったり、別の悪党に殺されてしまったり、結局頼み人になったり、ターゲットになったりして解決していました。

ところが「JOKER」では、知った相手は闇の捜査官を全否定した。
やめなければ告発するつもりだったので、抹殺してしまった。
しかも知った相手は「JOKER」を知りさえしなければ、良い関係でいられたであろう人間だった。
「JOKER」は裏稼業を知られた男が最悪の状況に陥った話でもあり、それを全編通してやった作品でもあったんですね。

ちょうど、再放送の「助け人走る」では、裏稼業の一員である為吉が捕えられ、拷問の末に口をつぐんだまま息絶えた「悲痛大解散」を放送していました。
為吉を助けられないと知った助け人たちは、為吉を見殺しにするか、自分たちの手で始末するか、あるいは楽にしてやった方がよいか。
あるいは為吉が白状してしまったら、どうなるのか。

いろいろと覚悟をしなければならず、決断を迫られました。
しかし、為吉を前にした利吉は為吉を刺すことはできず、匕首を置いて去るしかなかった。
彼は保身のため、為吉を殺すことはおろか、苦しむ為吉を楽にしてやるという心の重荷を下ろすような行為さえもできなかった。

そして為吉は、そんな心配は必要ないとばかりに、沈黙の掟を貫いて死んで行った。
殺しも担当していなかった為吉が。
この回は、今まで人助けの延長上に殺しがあった助け人たちにも、重い影がのしかかってきた回なのでした。

「必殺」を見て、今、全部、展開がわかってまた見直す「JOKER」も、おもしろいのでは。
おそらくこちらもまた見てしまうと思います。
「許されざる」再放送にならないよう?!


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さ、始めましょうか 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (5/5)

冴子の部屋から出た久遠とあすかが、並んで歩く。
「伊達さんに会わなくていいの?」
「会っても…、何話していいかわかりませんから」。

「そう。じゃあ、俺とはまた会ってくれる?」
「考えときます」。
「おお、一歩前進じゃん!」

あすかは足を止めると、久遠を見る。
「久遠さん。必ず作って見せますから。『JOKER』なんて必要のない世の中を」。
久遠は笑った。

「楽しみにしてるよ。あ、もちろん、チューの方ね」。
いつものように、あすかは言う。
「そんな約束、してませんから」。

久遠は笑って、「じゃあ、また」と言って歩いて行った。
あすかは、ずっと見ていた。
久遠と初めて会った日のことを、思い出す。

あすかの肩を抱いて、久遠は自己紹介した。
警察に泊まった伊達に、あすかは頭を下げていた。
伊達が、あすかに手品を見せる。
あすかの目が丸くなる。

老人ホーム放火殺人の時は、病院で去っていく伊達の背中にあすかが食い下がっていた。
椎名の事件では、ライブハウスの前で殺した娘の父親の慟哭に、椎名が嘲笑していたのを見たあすかは、どうしたら被害者家族を救えるのかとやりきれない気持ちで伊達に言った。

伊達はそれには答えなかったが、椎名に殺された娘の父親が椎名を殺そうとしたのを阻止した時の傷を見せ、料理をしていて切ったと言った。
その為、父親は罪に問われなかった。

虐待殺人事件と、自分の過去を重ね合わせて落ち込む久遠の横に、あすかが座った。
入院した伊達、そして見舞いに来ていた久遠の前にあすかが報告に来る。
伊達のおかげであすかが事件を解決したと聞いて、満足そうに伊達が微笑んだ。

夏樹の事件で、夏樹の携帯のメールを久遠が復元し、伊達とあすかがそれを見る。
また、別の時、あすかと久遠は、向き合って話をしていた。
久遠は笑っていた。

去っていく久遠の後姿を見て、あすかは思い出していた。
「また」。
あすかはそうつぶやくと、歩き出す。

伊達は東京拘置所で、三上と面会していた。
「そろそろ、時間です」。
促されて立ち上がった三上は、伊達に言った。

「これからどうするんだ」。
「自分の決めた道を行くだけです」。
伊達は三上をまっすぐに見て、言った。

「そうか」。
伊達が「JOKER」を続けることを三上は確信した。
だが、突如、空気が不安になる。

「一つだけ、忠告しておく」と三上が言う。
「組織を、探るな」。
三上の目が、伊達を捕えていた。

伊達が、まばたきをする。
三上の目が優しくなる。
子供に言い聞かせるように三上は伊達に、「いいな」と言った。

伊達はそれには答えなかった。
「また来ます」と言って伊達は頭を下げ、出て行く。
三上が少し微笑んだ目で、伊達を見送る。

休業中のバーMIKAMIに、伊達と久遠がいた。
久遠は、赤と黒に染め分けしたCD-Rを見せる。
組織について、調べてみたと久遠は言った。
「アンダーグラウンドファイブ」。

「何かわかった?」
「俺、誰だと思ってんだよ」。
「イケてる鑑識員でしょ。友達がいない」。

その言葉を聞いた久遠は「ぜってー教えない」と言い、伊達は「うそ、うそ、うそ」となだめた。
「よう」。
そこに入ってきたのは、井筒元課長刑事だった。

「あー、来た。久しぶりっすね」と久遠が言うと「真打は遅れて登場するもんなんだよ」と言って、井筒が2人の席にやってくる。
「何がわかった?」
久遠が笑って、CD-Rをかざす。

伊達も微笑む。
「さ、始めましょうか」。
伊達が立ち上がり、久遠がパソコンにCD-Rを入れる。

井筒が久遠の隣で、パソコンを見つめる。
伊達が2人のいる席の後ろにやってくる。
3人はパソコンを見つめる…。


おおっ、何でしょうか、この続編が作れる終わり方は!
「JOKER」は書くのが遅かったので早足で書いていたんですが、その分、回想シーンがある特別編が長くなってしまいました。
1時間のドラマを何回に分けて書くんでしょうか、自分。
先週終わったドラマなのに。

もったいぶったように小出しにするのは嫌なので、全部書き終わったら1週間経ってました。
遅い~。
そんな遅い記事を読んでくださる方、お礼申し上げます、ありがとうございます。

特別編、期待以上におもしろかったです。
冴子の部屋を整理しに来た久遠、そしてあすかが過去を振り返ることで総集編として機能していましたし、伊達の最初の事件を取り上げてくれていたので、一層三上とのシーンや伊達の背景が深くなりました。

しかし、伊達さんは女心がわかってない。
冴子さんは引き止めて欲しいというか、一言欲しかったのに「そんな資格はないよ」って真面目すぎる。
でも、手品を取っておいたというのが、冴子さんがずっと伊達さんに心があった、ということみたいで。

冴子さん、あれを見て笑っていたこともあるんだな、と。
基本的に伊達さんは、優しい。
優しいから「JOKER」になったんだな、と思いました。

あすかちゃんは親戚に頼まれて整理に来たけど、久遠は誰に頼まれたか言葉を濁してました。
頼んだのは、やっぱり伊達さんですよね。
冴子さんの部屋を整理する資格は、「JOKER」である自分にはないと思ってそう。

それに冴子さんの部屋を整理することで、愛する人との本当の永遠の別れを思い知らされる。
愛する人と別れるのは、もうたくさん…って心境もあったかもしれません。
三上の罪を再度、意識してしまうかもしれないですし。

結果として伊達は「JOKER」であることを選んだんですが、それはラスト、組織を調べていることから組織を知る為であることもわかりました。
でも、それだけじゃないと思うんですよね。

井筒はそうかもしれないですけど、伊達は「JOKER」の存在意義を確かめたい気持ちが強いように思います。
いや、井筒もやっぱり、そして久遠も、「JOKER」を善か悪か決めかねているから知りたいのかも。
みんな、答えを見つけたい。

そして、最初の事件が描かれる。
相手は、息子の入院費の為に、違法行為をし始めた警察官。
動機としては責められないものがあるにしても、罪もない配達員を殺した辺りからはもう、かばいきれない。

家族を殺されて容疑者が裁かれなかった三上は、同じような被害者家族を救う為、これ以上の血を流させない為、「JOKER」となった。
しかし人を救う為に、今度は罪もない人を殺すに至った。

どこか2つの事件は、繋がっていると思えました。
人は何かを守ろうとする為に始めたことでも、いつしか変わってしまって、非道なこともできるようになってしまうという点で。
そして、犯人にだって家族はいただろうし、守りたいものだってあったかもしれないという視点。

三上は自分の罪を自覚して、裁いてもらおうとしてましたけど、中崎はもう、自分のしていることが誰を傷つけているのか、もうわからなくなっていた。
「人の明日を奪う」と三上は言ったけど、そういう痛みと視点を伊達は最初の事件で知った。
伊達が何故、いつも制裁前にラーメンを食べているのかも、わかりました。

「法で裁けるものは、法で裁く」を、肝に命じているわけも。
人の痛みを忘れて、万能感を持って暴走しない為だったんでしょう。
だから、伊達は三上が言う、泣く人間を作るかもしれない、人の明日を奪う「十字架」として、ラーメンを制裁前に食べる。
ここで既に「人を裁きながら、自分自身を裁いている」わけですね。

三上は伊達に、重いものを背負わせてしまった、と言う。
でも被害者の痛みを知り、被害者家族の悲しみを知り、犯人への憎悪も経験している伊達だから背負えると思っている。

柔らかい強さだからわかりにくいけど、伊達は、実はとても強い人なのかも。
そんな伊達を見て来たあすかもまた、伊達のしていることを完全否定はできない。
だから「必ず作ってみせますから。『JOKER』なんて必要のない世の中を」と言う。

これがあすかの出した、「JOKER」との戦い方。
そしてあすかは「さよなら」でなく、「また」と、別れじゃない言葉を口にした。
伊達のような優しい人間が、こんなことをしなくて済むようにしてみせる、という決意、それができた日を思っての「また」。

「JOKER」はそれぞれの登場人物の再出発のドラマでもあると思いましたが、「特別編」の後日談で、それぞれのスタートが描かれていたと思います。
さて、これで続編をやるとなると、今度は「アンダーグラウンドファイブ」の存在が善か悪か、はっきりしてくるのかも。

うーん、ネッシーのように?これ、永遠の謎でいい気がしますし…、でもドラマはもっと見たい気もしますし…。
このまま余韻を残して終わっても良いし、この後があっても不思議はない。
どっちでもいいように、綺麗に終わっていました。
でも伊達と久遠の活躍を描くSPなんかあったら、喜んで見ちゃいますね。


さて、改めてキャストを見て、錦戸さんですが、やっぱり実力と魅力があるから世に出て来たんだと思いました。
アイドルだとか重みがないとか決めないで、生かし方ですよね。
すごく良かったと思います。

あと、三上の伊達に対する厳しい表情、「組織を探るな」が緊張感あった。
危機感感じました。
これで続編というか、「JOKER」という組織の善悪で続編ができるのかな、と思ったぐらい。

でもその後は父親のような、穏やかな優しいまなざしになる。
あれを見て思ったんですが、彼は裁かれる身とはなりましたが、こうなってみて、やっと心の平穏を得たのではないか。
大杉さん、セリフ以外のもので語る演技、良かった~。

それから、堺さん。
叫んだり泣いたり、怒ったりとおおぶりの演技じゃないのでつい、表も裏も区別がないように思えるかもしれませんが、こうして改めて見ると、目が笑ってたり、笑ってなかったりします。
伊達の内面が自然に現れているし、インタビューにあったようなコーヒーに砂糖を入れないとか、何気ないシーンにこだわって繊細な演技してますね。

最近、登場人物に距離を持って見るようにしているのに、感情、入り込みましたから。
特にこの手の話は最後、悲しい結末になるのが普通なので、距離を置いて見ようとしていたのに、伊達に気持ち、入って見てましたから。
堺さん、それから大杉さん、良かったと思います。

犯罪者役の俳優さん、女優さんは、思い切った目一杯の演技をしてくれてました。
みなさん、上手かったけど、特に4話の椎名役の窪田正孝さん、狂気の表情からガラリと変わるのがすごかった。
そしてまた、正常な時から狂気の表情に。
前と後、同じ狂気なんですが、心神喪失と違う悪意に満ちた狂気の表情に変わるのが見事でした。

そうそう、この方、別のドラマで最近見ましたが、別人じゃないですか!
当たり前のようですけど、いい俳優さんですねえ~。

7話、8話の日向役の忍成さん。
この方はいつも思うんですが、見事に悪役をこなしてくれますよねー。
もうほんと、嫌な役をきちんとやって、見ている方を盛り上げてくれます。

このお2人が、若いのに本当にすごかった。
よかった。

6話の文弥の父親の広之役の高杉亘さんは、体は大きいけれど弱い父親を演じて、現実感を持たせてました。
5話の女性弁護士役の鈴木砂羽さんも、「相棒」の役とは全然違う、いや~なインテリが上手かった。
3話の山原役の黄川田さんはもう、若いのにベテランさん。

2話の春日役の鈴木浩介さんは取調室の緊張で盛り上げてくれました。
最後に勝ち誇ったように出て行くところなんか、もう。
第1話の木内役の細田さんは、最初に物語に引き付けてくれましたねえ。

9話の佐野さんの存在感は、言うまでもなし。
もう、ほんとに利己的で残酷で、反省の色がなくて、みなさん、良くぞ盛り上げてくれました!
犯人役が中途半端だと、説得力ないですから!

そして井筒課長…、いえ、元課長。
今、何してるんでしょう。
ちょっとの出番でも、気になる鹿賀さんでした。

終わってしまって火曜の夜が寂しいですね、って、火曜の夜にはなかなか見られなかったくせに、自分。
エンディングに流れる主題歌、RIP SLYMEの「SCAR」にまで馴染んで、この夏は良く聴いてました。
この暑い夏がしみこんだ曲は、これになりました。
あ~、特別編でまでこんなにも楽しませてくれるなんて、ありがとうございました!です。


テーマ : ジョーカー 許されざる捜査官
ジャンル : テレビ・ラジオ

お前に明日は来ない! 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (4/5)

冴子の部屋でファイルを見ながら、あすかは冴子が追いきれなかった時効事件も「JOKER」なら解決できたと言う。
認めながらも、あすかは「でもそんなやり方しかないなんて…、悲し過ぎます」と言った。
イスに座った久遠は「『JOKER』の連中だって、みんなそう思ってるはずだよ」と言う。
「だから苦しんでる」。


久遠の脳裏に、日向との対決した時のことが蘇る。
「あなたは今、迷ってるはずだ。自分がやってる行いが、正義なのか、どうなのか」。
美代子に銃を向けながら、やってきた伊達と久遠に向かって日向は言った。

「俺がやってることを、正義だとは言わない」。
伊達が日向に言う。
「人は人を裁けない。だが、それでも裁かなくてはいけない現実がある」。

次々、日向は人を撃ち、「悪人に制裁を」という文字が書かれた紙を血まみれの遺体の上に置いていった。
その光景に、伊達の声が響く。
「その重みもわからずに、人の命を奪うお前のやり方は間違っている」。
殺人が終わると、日向は仮面を外していた。

伊達が日向に、銃を向ける。
「お前は、ただの人殺しだ」。
「社会のクズを始末するのが、僕たちの役目だろう!だったら片っ端から殺せばいい」と日向がわめく。

伊達の隣にいた、久遠が言う。
「俺も一歩間違えれば、お前みたいになってた。でも、伊達さん見てわかったよ。人の明日を奪うってことが、人を裁くってことが、どんなに痛みを伴なうものか。お前は伊達さんとは違う」。
伊達が言う。
「法から逃れた者を裁きながら、俺はずっと自分自身を裁いてきた。これからもそれは変わらない」。


久遠の意識が、あすかといる冴子の部屋に戻る。
あすかが久遠を振り返る。
「いや、俺は『JOKER』なんて知らないけどね」と久遠が笑う。
「いつから…、そんな苦しみを味わうようになったんでしょうね」とあすかが考える。

久遠が「いつから…、って」と言い、あすかの持つファイルの「2007年、11月10日」と書いたページの中崎を見る。
プロフィールの「ラーメン店 大王」と書かれた文字を、久遠が驚きを持って読み上げる。
久遠の様子にあすかが、「どうかしました?」と聞く。
「このラーメン屋…」。


3年前。
「はい、おまたせしました」という声がして、ラーメンが置かれる。
三上と伊達がテーブル席にいる。
「あれが中崎の女房か?」と三上が尋ねる。

中崎由里、38歳。
夫の中崎道彦との間には9歳の子供がいて、5歳の頃から病気で入院生活を送っている。
中崎は警察の情報を流しているだけではなく、違法カジノや臓器売買に目をつぶって金を受け取っている。
息子の入院費用の為に始めたことだったが、いつのまにか押さえが聞かなくなっていたってことか?と、三上が聞く。
伊達が小さく何度もうなづく。

既に伊達は中崎に何度も自首するよう、説得していた。
「法で裁けるなら、それに越したことはありませんから」。
「でも、だめだった」。
三上の言葉に伊達はうなづいた。

中崎がラーメン店に入ってきて、カウンター越しに厨房にいる妻に封筒に入った金を渡す。
振り向いた中崎は、三上と伊達に気づき、「こんなとこまで、何しに来たんだよ」と声を荒げた。
周りの客がいっせいに中崎を見、妻が「ちょっと、お客さんいるんだから」と制止した。

「どうやって作ったお金ですか」と言う伊達に「うるせえな。お前には関係ねえだろう」と言うと中崎はポケットに手を入れて店を出て行く。
厨房の人間も、客も見ていた。
「すみません」と妻が取り繕うように頭を下げると、みんな元のように視線を戻した。

テーブル席にいる伊達は「中崎がいなくなったら、奥さんが1人で子供の面倒を見るんですね」と三上に言う。
「そうだな。今のあいつは完全に自分を見失っちまってる」。
その夜、レインボーブリッジが見える公園。

中崎の前に、黒尽くめの伊達が現れる。
「またお前か」。
「これで最後だ。自首して罪を償え」。

「しつけえな。何度も言ってるだろ。俺は警察に守られてるんだ。誰も俺を裁けねえ」。
「だったら俺が裁く」。
銃を向ける伊達。
だが、伊達はそのまま固まっている。

伊達の動揺を見た中崎は、「怖いか。そんなもん、こっちは慣れっこなんだよ」と言った。
中崎が近づいていく。
だが、伊達は撃てない。

中崎は銃をそらすと、伊達を張り飛ばした。
伊達が地面に手をつきながら、中崎に銃を向ける。
中崎が銃を払い、銃が飛んでいく。

伊達に中崎が飛びつくと「今くたばるわけにはいかねえんだよ!」と叫び、伊達を殴ろうとする。
中崎の拳をブロックした伊達は口から血を流しながら、「自首しろ。息子を悲しませるな」と言った。
拳をブロックされながら中崎は「悲しませてるのは、お前の方だろう」と言う。

伊達は、自分の上に覆いかぶさっている中崎を振り払った。
離れたところに転がった銃を、伊達は拾いに行く。
中崎がそれを追う。
伊達が銃を拾い、地面に倒れたまま中崎に向ける。

中崎が、足を止める。
伊達は銃を向けたままだった。
「俺を撃てば、傷が残るのはお前の方だぞ」。
向かい合って中崎が言う。

伊達は中崎に照準を合わせたまま、動かない。
「わかってんのか!」
伊達はそのまま、動かない。
中崎が近づいてくる。

伊達は、麻酔銃を撃った。
中崎が胸を押さえ、驚いたように胸を押さえた手を見る。
伊達を見て、あえいだ中崎は両手で撃たれた場所を押さえ、倒れた。

少し離れたところに横たわった中崎を、伊達は見た。
中崎は、伊達を見ていた。
伊達は中崎の目を見ていたが、やがて中崎は目を閉じた。
隠れていた三上が近づいてくる。

立ち上がった伊達に「お前はコイツの明日を奪った。だが代わりに多くの人間が救われた」と三上が言う。
2人は中崎を見下ろしていた。
「運ぶぞ」と、三上がうながす。
伊達はまだ平常には収まらない息をしながら、中崎を見ていた。


中崎の妻の店で、ラーメンが伊達の前に運ばれる。
「はい、お待たせしました」と言った妻は伊達に、「刑事さん、主人の行方はまだわかりませんか?」と聞いた。
伊達は「すいません、まだ捜査中です」と穏やかに答えた。
妻は微笑むと、「そうですか。ごゆっくり」と言って戻った。

「お前にとってこのラーメンは、十字架みたいなものか」。
三上が言った。
伊達は箸を取ると、三上に渡した。
三上と伊達は黙って、ラーメンをすすっていた。


そして、今現在。
久遠とあすかは、冴子の部屋の片づけを終えた。
また、久遠は思い出す。


夜明けの青い光の中、銃を持った三上に伊達が歩み寄っていく。
2人は向き合った。
そこは子供の頃の伊達と三上が出会った、埠頭だった。

三上が伊達を見つめる。
伊達も三上を見つめる。
三上は銃、伊達は麻酔銃を手にしていた。

そこへ向かう車で伊達は久遠に「三上さんは『JOKER』を守る為、より多くの人を救いたかっただけなんだ」と言った。
だが刺された久遠に、そんな理由はわからない。
「でも、そうだとしても」。

夏樹が刺された時のことが蘇る。
「罪もない人間殺していいことには、なんねえだろ」。
夏樹を刺した三上の顔は、苦しそうに歪んでいた。

さらに、冴子に向かって三上のナイフが光る。
冴子の目が見開き、三上が正面から冴子を刺す。
三上の顔が悲しそうに、冴子の頭に寄り添うように傾く。


「だから裁かれたいんだよ」と埠頭に向かう車の中、伊達は久遠に言った。
「死よりも重い罰を受ける為に」。
久遠が伊達を見ると、伊達は前を向いたまま、つぶやく。
「あの人は…、俺だ」。

埠頭で、向かい合う伊達と三上。
三上がこめかみに銃が押し付ける。
すばやく、伊達の銃が発射される。
伊達は、まっすぐに三上を見ていた。

三上のこめかみに銃を押し当てた手が、離れていく。
かすかに微笑んで、三上は膝をついた。
伊達は三上を、まっすぐに見ていた。

連行される三上は、伊達に言った。
「伊達。俺がしたことは、組織とは関係ない。夏樹も冴子も小僧も、全て俺の独断でやった。だから…、やめるなよ。やめないでくれ。法から逃れた悪を闇に葬れるのは…、お前しかいない」。

パトカーに向かって、三上は進んでいった。
三上の手に、あすかが手錠をかける。
あすかが立っている伊達と、久遠を見る。

「ひとつだけ…、聞いてもいいですか」。
事件の後、夏樹の墓の前で、あすかが伊達に聞いていた。
「あなたも『JOKER』の1人だったんですか」。

伊達は、答えなかった。
墓地から海が見えていた。
伊達は、墓地の前に広がる海を、黙って見ていた。


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ジャンル : テレビ・ラジオ

正義だとは言わない 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (3/5)

冴子の部屋で、あすかは「でも不思議ですよね。どうして怪しいと思った時点で制裁しないんでしょうか」と言った。
「普通、容疑者が特定できたら裁こうとするはずです。でも『あの人』は、どの事件も必死で捜査して解決しようとしていた」。
あすかは思い出す。

春日に取調室で伊達は、「自首してもらえませんか」と言っていた。
だが、春日は「終わりにしましょう」と言って出て行こうとした。
「春日さん、本当に罪を償う気がないんですね」。

「償うも何もやってませんから。全部あのマヌケな医者がやったことですよ。医者って本当に身勝手ですからね」。
伊達は見つめる。
春日は勝ち誇ったように、伊達を見る。

「私を疑ってるんですか?」と、ストーカー殺人事件を装って婚約者を殺した山原も言っていた。
「はい」と伊達は言う。
「何か証拠でも?」

「証拠はありません。だからお話を伺いに来たんです」。
山原の前に、伊達は座る。
「できれば、正直に話していただきたい」。

しかし山原は「部活の指導があります。お引取りください」と去っていこうとする。
伊達は、殺された晴香の母親が、山原は晴香がやっとつかんだ幸せだったと言ったことを話す。
山原は顔色一つ変えず、出て行った。

久遠は、文弥という男の子が虐待を受けていると文弥の同級生の女の子から相談された事件があった。
だが、結局文弥は父親にころれて閉まった。
久遠は自分ひとりで父親を眠らせ、埠頭に連れて行った。

車のトランクの中で、文弥の父親に銃を向ける久遠。
しかし、町を荒らしていた連続窃盗団の見張りが、ベランダから文弥を落とす父親を目撃していた。
逮捕できる。
法で裁けると伊達は言った。

だが、久遠は納得しない。
「ダメだよ」。
三上が「久遠!」と叱咤する。

「ぱくってムショに入れたところで、いつか出てくる。人、殺してんのに」。
久遠が苦しそうな表情をする。
「あんなひどい仕打ちしてんのに。こんなクズ、いなくなったほうがいいんだよ」。

「それは君が決めることじゃない」と伊達が言う。
「法で裁ける人間は、法で償わせる!俺たちがやっているのは、復讐じゃない!」
久遠は結局、銃を父親に向けて撃たなかった。

「ねえ、もし、日向のアリバイが崩れたら、どうするの」。
日向という刑事が、「JOKER」を模倣して次々人を殺していた事件。
伊達は「もちろん、法で裁く。それが俺たちのやり方だ」と言った。


冴子の部屋で、久遠があすかに言う。
「あすかちゃんの言う『あの人』が誰だか知らないけど、本当は法で裁きたいんじゃないかな。『JOKER』は…」。
「なのに、制裁を続けている。どうして…」。


あすかは思い出す。
テレビの画面を見て、来栖が悔しそうに叫んでいたことがあった。
2年前、横浜で起きた無差別殺人。
椎名という犯人の少年が心神喪失を認められ、無罪になった。

久遠は椎名は正常だというが、一度「無罪」と判決が出た裁判は、後で容疑者に不利な証拠が見つかっても判決は覆らない。
だから、伊達は無駄だと言った。
わかってると久遠は言う、では何故。
久遠は椎名が正常なら、法から逃れた犯罪者だと言う。

コインを投げ、裏か表か当てるのが椎名の癖だった。
突然、深夜に精神病院を退院させられた椎名。
コインをかざしながら、椎名は「言ったろ?俺は選ばれた人間なんだよ。俺を裁くことなんてできないの」と楽しそうに笑った。

伊達は椎名に向かって銃を向け、「だから俺が裁く」と言った。
椎名の顔色が変わる。
「ふざけんな」。
凶暴な目をして、椎名はブロックの塊を手に伊達に近づいていく。

久遠が息を呑んで見守る。
「ふざけんな。ふざけんな!」
伊達に近寄った椎名が、ブロックを振り上げる。

「お前に明日は来ない」。
伊達が麻酔銃を撃つ。
椎名が崩れ落ち、その向こうに久遠が立っている。

久遠が椎名を運ぼうとした時、突然椎名が久遠の手をつかみ、「俺が精神鑑定で心神喪失を装えたって本気で思ってんのか」と言った。
「お前らは何にもわかっちゃいねえよ」と嘲笑った椎名だが、久遠に蹴飛ばされ、今度は本当に眠りについた。

伊達は椎名の事件を担当した女性・人権弁護士の氷川成美に、会った。
椎名の精神鑑定をした医師の幸田が、精神鑑定を偽ったという遺書を残して姿を消していた。
成美は、自責の念から自殺を思い立ったのだろうと言うが、伊達は違うと言った。

幸田には、妻の京香との間に過失で死なせた3歳の息子がいた。
そのことを、成美はセンセーショナルにまるで京香が殺したような記事をマスコミに発表すると示唆した。
成美はそれを盾に、幸田に自殺をほのめかしたのだった。

「こんな記事を預かりました。これが世間に出たらどうなることか」。
眉をひそめ、いかにも心配そうな表情を成美は装った。
「ふざけるな。こんなの出鱈目だ」と幸田は怒りで震えた。
「真実なんて、どうでもいいんですよ。それを書いた記者は早く掲載したくてしょうがないらしいんで」。

原稿を握りつぶした幸田は「どうすればいい」と聞いた。
「手は…汚したくありません」。
「死ねというのか」。
「私は何も言ってません」。

1人、夜中に事務所に残り、次の裁判の不正の相談をしていた成美は忍び込んできた伊達を前に不敵に笑う。
「私の言動は法に触れていない。法は犯さなくても人は殺せるのよ。法律はね、弱者を救う為にあるんじゃないの。元々、選ばれた人間の為にあるの。権力を持つものだけが得をするように作られてるのよ」。

ここまで言うと、成美は声を立てて笑った。
嘲笑った。
「利用できない人間がバカなのよ」。

伊達は、成美に銃を向けた。
一瞬、成美の表情が凍るがすぐに、「はっ、私を撃つつもり?」と不敵な表情に戻る。
「法の裁きを逃れても、お前の罪は消えない」。
「カッコつけないでよ。こんなことしてただで済むと思ってるの!」

「お前に明日は来ない!」
伊達は成美を撃った。
「うっ」と言って、成美はイスに崩れ落ちた。


冴子の部屋で、再び、あすかはファイルを見ていた。
あすかは「この時も妙だと思ったんですよ。無罪判決は引っくり返らないのに事件を洗いなおすだなんて…、でも、『JOKER』だったら裁ける」と言った。
久遠は黙っている。

「私は傷ついた人たちを守る為に、警察官になりました。自分のような被害者遺族を、1人でも作らないように」。
そう、あすかは言った。
あすかによって、回想される数々の事件。

椎名に娘を殺された父親が泣きながら、椎名に詰め寄る。
成美によって自殺に追い込まれた、幸田の妻の泣き顔。
子供が生まれるというのに、夫を殺された美代子。

鈴川に娘を殺され、時効を迎えた母親が娘の写真に謝ってくれと泣いていた。
あすかは伊達と一緒に、この光景を見て来た。
「でも、現実は解決できない事件がこんなにもある」。


あすかの知らないところで、黒尽くめの伊達が、これらの犯罪者に麻酔銃を向けていた。
「お前に明日は来ない」。
木内、春日、山原、椎名、成美、銃を持った日向。
それぞれ、撃たれて倒れた。

女子高生バラバラ殺人で、「俺が殺した」と鈴川は伊達に告白していた。
腕を組み、何ということはないことのように「しょうがなかったんだよ。女房と別れてくれってウルセエし、成績甘くしてやったら勘違いしちゃってさ。ほんと、迷惑なガキだったよな」と言う。

美咲が鈴川に刺される。
「どうすりゃいい?」
伊達が顔をあげる。
「どこにでも行くよ。どうせ時効は成立してるんだしさあ」。

夜のギャラリーで、女性を脅迫する電話を1人、かけていた鈴川。
黒尽くめの伊達を見ても、「残念だな。もう殺人罪じゃ問えない。俺は罪を清算したんだ」と言って立ち上がる。
伊達が麻酔銃を向ける。
鈴川が硬直する。

「今の自白で十分だ」。
「撃つな。待ってくれ、頼む」。
鈴川は伊達に向かってストップの形をした手を向けながら、後退していく。

「俺には家族がいるんだ。俺がいなくなったら、家族が悲しむ。いいのか?お前のせいで周りの人間が傷つくんだぞ。
「それでも、俺はお前を裁く」。
引き金に手がかかる。
「お前に明日は来ない」。


テーマ : ジョーカー 許されざる捜査官
ジャンル : テレビ・ラジオ

こいつに明日は来ない 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (2/5)

あすかは思い出す。
ひどい運転のパトカーで現場に到着したあすかは遅刻し、来栖たちは渋い顔をしていた。
そのあすかを「かわいい」と言って久遠は前に出て来て、自分を「イケてる鑑識員」「イケ鑑」と紹介した。
2人きりで歓迎会をしようかと言う久遠を振り切ったあすかが見たのは、ジャージのズボンをはいた伊達だった。
「通称、仏の伊達。怒ったことがないから」と久遠が伊達を紹介する。

被害者は、8歳の満という子供だった。
子供は、改造銃の的にされていた。
頬に泣いた跡があった。

久遠は言った。
「こわかったろうな。どんなに泣いても誰も助けてくれなかったらしい」。
久遠は改造銃を手にすると、空のまま撃った。
「殺してやりてえ」。

「課長は殺したいほど、憎い相手っていますか」と伊達は井筒に聞いていた。
井筒は即答した。
「刑事部長」。
「即答ですね」。
井筒はふっと笑って「でも殺さない。それが人間ってもんだ」と、タバコをもみ消しながら言った。

「もし、殺したら?」
「そいつは人間じゃない。化け物だ」。
伊達は鏡の中の自分を見る。

容疑者の木内の家宅捜索をさせてくれ、と伊達は言ったが、木内の父親は検察の幹部だった。
簡単には手を出せない。
殺人現場の、今は廃屋になっているホテルに行った伊達は、文句を言うあすかには答えず、ソファに座った。

だが、木内以外に有力な容疑者がいた。
伊達は意味のないことをしているのではないか、そしてそれに自分は付き合わされているのではないか。
そう考えて苛ついたあすかは、近くにあった木を取り、壁を叩いた。

衝撃で窓をふさいでいた板が落ち、驚いた伊達は声をあげた。
「何でそんなことすんの!」
「聞こえてないかと思って」と、憤然としたあすかは伊達を見下ろしながら言った。

「ああ」という感じで、伊達はうなづいた。
木内はドアを開けたら、縛られている子供が見えたと言った。
伊達はあすかを木内が開けたというドアに立たせると、あすかが「あ」と声を出した。

「ね、そっからだと満くんの姿見えないよ」。
木内の記憶が、曖昧なだけかもしれない。
でも、そうじゃないかもしれない。

犯人は木内だった。
だが、父親が検察の幹部である木内には、手を出せない。
バーのカウンターで冴子がいちごミルクを飲む伊達に、木内ほんとにパクれないの?と聞いた。

「じゃあ、あとは神隠しを待つのみかあ…」と冴子がつぶやいた。
神隠し?と三上が聞く。
法の裁きを逃れた者のがある日、突然いなくなるのだ。

伊達は声紋を木内に見せ、銃声とタイミングから木内が子供を殺害した証拠だと突きつけた。
だが井筒が廊下で伊達に渡したものは、内容が違う供述調書だった。
「事実と反してますけど」と言う伊達に、井筒は「いいからやれよ!」と言った。

「決定事項だ」。
「圧力、ですか?」
「お前もわかってるはずだ。これも、俺たちの仕事」。

井筒がトイレでタバコを吸っているところを、あすかが怒って抗議しに来た。
この供述調書では、木内に非がないように見える。
納得できないと言うあすかに、あすかが納得しなくても関係ないと井筒は言う。

だったら上に掛け合う、このまま黙ってなんかいられないとあすかは言った。
目の前に犯人がいるのに。
弱きを守るのが警察じゃないのか。
「私は許せません、絶対に!」とあすかは猛抗議する。

あすかの前に井筒がドン、と音を立てて腕をつき、行く手を遮る。
「俺たちはね、特別な力を持ってるわけじゃない。所詮ただの人間だ。逆らえない相手だっているし…、限界だってある。な?」
口をとがらせたあすかは「じゃあ、木内は誰に裁かれるんですか」と言った。
「さあ、ねえ」と言った井筒はフフッと笑い、「正義のヒーロー…、じゃないかな」と言って出て行った。

「お前どう思う?こうして犯罪者が野放しにされる世の中を」と井筒は伊達に聞いた。
伊達は黙っていた。
「やりきれないね」と井筒。

被害者の母親が自殺未遂をした病院のロビーで、座っていた伊達が立ち上がる。
「どこ行くの」。
「帰るんだよ」。

「さすが仏の伊達さん、凶悪犯にも優しいんだね」と、久遠が個人で使っている部屋で、久遠が伊達に皮肉を言う。
伊達が足を止めて、久遠を見る。
「また犠牲者が出るかもしれないのに」。
「警察では木内を裁けない」。
久遠は、傍らのゴミ箱を思い切り蹴った。

木内に黒尽くめの伊達が「満くんを殺したのは、君だね」と言っていた。
「俺が殺した。ガキ相手に的撃ちは楽しかったなあ」と笑う。
「ちょっと当たっただけでギャアギャア泣くくんだもん、俺、興奮しちゃったよ!」と改造銃を見て、木内が歪んだ笑みを浮かべる。

無表情で近づく伊達に焦りを見せた木内が、「何だよ」と言う。
「満くんの痛みを、家族の哀しみを、今度はお前が味わう番だ」。
伊達が歩み寄っていく。
怯えた木内が後退していく。

「何言ってんだ、てめえ。うぜえんだよ!」と木内が銃を向ける。
木内が、銃を発射する。
伊達の右腕を、弾丸がかすめる。

しかし、歩み寄っていく伊達は、少しも怯まない。
表情も変えない。
木内の改造銃をつかむと、あっさりと奪い取る。
「わ」と声をあげ、木内はおびえて逃げ出す。

木内が子供を殺した時の光景が、蘇る。
泣き叫ぶ子供に向けて、木内は銃を発射する。
子供の声を聞いた木内は、口を開けて、狂気の笑いを見せた。

伊達から逃げてフェンスに行き当たった木内は「おとうさん助けて」とつぶやきながら、携帯を取り出し、ダイヤルボタンを押し始める。
だが後ろから、伊達が携帯を取り上げた。
伊達は木内に銃を向けた。

「何だよ、俺を殺して英雄気取りかよ!刑事がそんなことしていいと思ってんのかよ!」
木内が叫んだ。
「法から逃れた者を裁く。それだけだ」。

伊達の声には、何の感情もこもっていなかった。
「頼む、撃たないでよ、助けてよ」と木内が叫ぶ。
「お前に明日は来ない」。
伊達はそう言うと、木内に向かって発砲した。


冴子の部屋であすかは、「久遠さんはいつ『JOKER』に気づいたんですか」と聞いていた。
「『JOKER』って何?」と久遠はとぼけた。
あすかは「じゃあ、仮に久遠さんの知り合いに『JOKER』がいたとして、どうやって気づいたと思いますか?」と質問を変える。

「知り合いねえ。例えば…『JOKER』の犯行現場に何か落ちてたとか」。
あすかが久遠を見る。
久遠が「仮の話ね」と言う。
そして、久遠は思い出す。

木内の事件の時、久遠は「ボタン取れそうだよ」と伊達のシャツのボタンが取れそうなことを指摘した。
そのボタンはあすかがつけた、ピンクのドットのボタンだった。
伊達はそれをあすかに、「変わったシャツにしてくれて、ありがとう」と言ったのだった。

木内が次に犯行を行うはずだと予測した現場に、木内はいなかった。
ターゲットとなるはずのホームレスが、久遠の背後で洗濯物を干していた。
地面に、ピンクのボタンが落ちていたのを久遠が拾った。

次の制裁現場で伊達が制裁した後、後ろから「だーてさん」という声がした。
振り向くと「やっぱあんたの仕業だったんだ」と久遠が立っていた。
木内の現場で、久遠が拾ったボタンを放って寄越す。

制裁の後、久遠を始めて埠頭に連れて行った時のこと。
アイスキャンデーを食べながら、犯罪者を運ぶ車を持って来た三上が待っていた。
「あ」と驚く久遠。

「何考えてんだよ。こんな奴勝手に引き入れて」とバーで三上は伊達に怒った。
いちごミルクを作りながら、伊達は言った。
「似てたんですよ。昔の俺に」。

火傷の跡が痛々しく残る、久遠の背中。
子供の頃の虐待を受けていた久遠。
「伊達さん。あんたは俺と違うって行ってたけど、俺も普通じゃねえんだよ。苦しいんだよ。自分がどうにかなっちゃいそうで」。

伊達をまっすぐに見つめて、久遠は言った。
「あなたが手を差し伸べてくれなかったら、俺は路頭に迷っていた」。
伊達の両親が殺された事件の雨の中、並ぶ三上と子供の伊達を思い出す。

三上は言う。
「人が増えるということは、それだけリスクを伴うって事なんだぞ。わかってんのか」。
いちごミルクを3杯、作り終えた伊達は「覚悟してます」と言って、それをカウンターに置いた。
それが久遠の「JOKER」加入だった。


冴子の部屋で久遠がイスに座り、あすかが冴子のファイルをめくっている。
老人ホーム放火殺人事件も、ストーカー殺人事件も、被疑者は行方不明になっている。

木内の事件の後、老人ホーム放火殺人事件が起きた。
容疑者は経営者の春日だったが、証拠がない。
保険金欲しさに春日は、医者の羽鳥を脅し、今回の計画を実行した。
久遠は思い出す。


焼け跡で、「証拠はない、法は俺を裁けない」と春日は言っていた。
伊達は言う。
「だから俺が裁く」。

春日は医者の羽鳥に注射をさせて入居者のスズエを眠らせ、天ぷら鍋が発火するようにした。
炎に気づいた時には、スズエは動けなかった。
「お前は多くの命を奪った。それだけじゃない、残された家族の未来も奪ったんだ」。

伊達に銃を向けられた春日は、パニックを起こしながら叫ぶ。
「ふざけんなよ、騙されるほうが悪いんだろ!どっちにしろ残り少ない命だろう、少しぐらい早く死んだって別にいいじゃねえかよ!」
わめく春日に向かって、伊達は言った。

「お前に明日は来ない」。
銃を向ける伊達に春日は、「ちょっ、ちょっと待ってくれ」と叫ぶ。
「頼む助けてくれよ!」と。

その事件の後、ストーカー殺人事件が起きた。
「僕は悪くない」と、ストーカー殺人事件の山原は言った。
山原は暴走した久遠に拉致され、自白を強要されていた。
だが、山原が自白した中に、真犯人しか知りえない凶器が指定されていた。

「罪を償う気はないんだな」。
「あるわけないだろ、貸した金返せってビービーわめくから殺しただけじゃないか!」と山原は言う。
山原が、婚約者である晴香の首をベルトで絞めていた。
それを聞いた久遠が「ふざけやがって」、と銃を手にして、山原に迫る。

「やめろ、撃つな!」と伊達が叫ぶ。
「お前に殴られても蹴られても耐えてた…、彼女の気持ちわかるか?わかるわけねえよなあ?」
久遠が引き金を引く瞬間、伊達が銃に飛びつき、弾道がそれた。
実験室のビーカーのガラスが割れる。

「殺しちゃいけない!」
銃を持つ久遠の手を抑えたまま、伊達が言う。
「終わりのない苦しみを味あわせるんだ。被害者達のように」。

伊達は怯えて逃げる山原を押さえつけると、首を後ろから羽交い絞めにした。
山原は気絶する。
「こいつに明日は来ない」。


テーマ : ジョーカー 許されざる捜査官
ジャンル : テレビ・ラジオ

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ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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