第28話、「何でも屋の加代、求婚される」。


夏も近いある日、風鈴を売って歩く加代は、様子がおかしい男に行く手を遮られる。
子犬を抱いたまだ少年の面影が残るような若い男が、男から加代をかばってくれる。
騒動の最中、見回りの主水に行き当たった為、男を追い払うことが出来た。
「そこまで飲むこたあ、ねえだろ」と主水が言う程、男は酔っているように見えた。

野良の子犬を抱いた若い男は真吉といって、加代を食事に誘って、車を引いてくれた。
その後があると思っていた真吉だが、加代は男を引っぱたいて車を引いて去る。
加代の様子に真吉は、本気で惹かれてしまったようだった。

主水は死体が見つかったと呼ばれたが、その死体は先ほど加代ともめた男だった。
小間物問屋の紅屋の弥七で、アヘン中毒を疑った主水は医師の矢沢玄斉に診てもらう。
だが、玄斉はアヘン中毒ではないと言う。

加代に本気になった真吉は、竜のところで組紐を買って加代の元へ行こうとしていた。
昨日、弥七が真吉ともめたのを見ていた主水は真吉を呼び止めるが、そこに和泉堂から迎えが来る。
宿などないと言った真吉だが、実は紙問屋の和泉堂の若旦那だったのだ。

真吉を送って行った主水は、昨日、紅屋の主人ともめていたことを話し、それを聞いた母親のお甲は顔色を帰る。
紅屋と和泉堂は知り合いだったのだ。
だが、主人の甚兵衛は主水にもっと話を聞こうと思ったお甲をたしなめる。

真吉が加代を訪ねた時、加代は政と一緒にいた。
政に食事はしていかないかと聞くが、政は出て行く。
真吉が食べると言って、加代に組紐を渡すが、加代は相手にしない。
しかし、真吉が抱いている子犬が食べるのを見て、思わず加代も微笑んでしまう。

加代は風鈴売りに出た途中、神社の境内で2人の男に脅される。
体なら諦めるが命は助けてと口走る加代は、人を見つけて逃げる。
助けを求めた男は甚兵衛で、2人の男は番頭の伊十と、手代の丈八だった。
甚兵衛は加代に名乗ると、真吉に近寄らないように忠告する。

真吉とあわよくば一緒になって、和泉堂に入り込む魂胆か、と甚兵衛は言った。
加代は、付きまとっているのは真吉の方だと言った。
だが伊十に顔に匕首の刃を突きつけられ、もう真吉には会わないと叫ぶ。
それを聞いた甚兵衛は、お前は真吉が好きになりそうな女だと言う。

さらに意外なことに金を出して、真吉と付き合うのは勝手だが、和泉堂の嫁にはできない。
この金で一緒に江戸を出ろと言った。
大事な息子ではなかったのか、と加代が言うと、いいから江戸を出ろと言って3人は引き上げていく。
金を見つめていぶかしげな加代が振り返ると、加代の車を壱が引いてやってくる。

「壱!」
「驚いたね、無理やりせがれを駆け落ちさせようなんて、変わった親だよ」。
「あんた、見てたの」。
「うん。端っから」。

「ばか!どうして助けてくれないのよ!この薄情もん!」
「ほれ、姐さんの綺麗な顔を傷つけちゃいけないと思ってよ」。
「何て男なんだい!いいよ、いいよ。命は取り留めたし、大金は入ったし」。
加代はじっと金を見つめる。

壱は車から離れながら、「じゃあ、少しまわしてくれよ」と手を出す。
加代は壱の手を叩いて、「ふん!どいて!」と車に戻る。
「そんなに喜んでいいのかよ。おめえさん、駆け落ちしなきゃいけねんだよ。江戸に居たら、殺されちまうんだよ」。
ハッとした加代は「どうしよう…」と言う。

その頃、主水は和泉堂について調べていた。
和泉堂の先代の主人で、お甲の夫であり、真吉の父は数年前、急死していた。
養生所の玄斉によって心臓発作と診断されていたが、なぜ玄斉が出てくるのか、主水は疑問に思う。

後家になったお甲と番頭だった甚兵衛が、一緒になったのだ。
だから加代を利用して真吉を追い払えば、身代は真吉に譲らなくていいのだ。
主水は、加代にそれを告げた。

和泉堂では甚兵衛がお甲に、加代はどうしようもない女で、金をやって追い払ったから安心していいと言った。
本当は真吉を心配してくれていたのだ、とお甲は甚兵衛に礼を言う。
その時、和泉堂に女が駆け込んできて、アヘンをまけてくれと頼み込む。
番頭はとぼけるが、女はお前たちがアヘンの売人なのは知っていると言って2部差し出す。

甚兵衛が出て来て、アヘンは1両と言う。
どんどん値を吊り上げて…と女が言い、店先でもめ出した。
アヘンをくれないなら、出るところに出てやると女は言って飛び出す。
夜道で女は玄斉にいきなり、刺される。

追ってきた伊十たちを見て、不用意な事態を玄斉は責める。
だが、奥に見えた壱を見て逃げ出す。
壱はとっさに伊十たちを追い、倒れた女のところに戻って来る。
女は完全に息絶えていた。

翌日、甚兵衛は玄斉の養生所を訪ね、夕べのことを報告する。
玄斉はアヘンを製造し、甚兵衛がそれを流していたのだ。
その頃、お甲が加代を訪ねて来た。
駆け落ちもそんなに簡単にはできない、と加代は言う。

加代の言葉に驚いたお甲は、加代と話をする。
甚兵衛に駆け落ちを勧められたと知ったお甲は、加代に気にしないように言った。
ちょうどその時、真吉がやってきた。

母親と話すのを拒否する真吉に加代は、「聞きなさい」と諭す。
年上の貧乏ったしい女と付き合うな、と言うんだろうと言われ、加代は顔を伏せた。
立ち上がったお甲に真吉は、本気で加代が好きだと言う。
「わかったら帰って、あんたの亭主にも聞かせてやれよ」と真吉が言った時だった。

「こら!母親に対して、何て口の利き方すんのよ!」
真吉は飛び出して行ってしまった。
お甲は言った。
「真吉は本当は心の優しい子なんです。あんな風になったのは、みんな私のせいなんです」。

お甲は5年前、主人にしなれて、今の夫と一緒になったと加代に話す。
それが真吉には気に入らなかったのだろう、と。
ずっと後家を通せばよかったのかもしれない。

「奥様、そんなことおっしゃらないで、元気出してくださいよ。そのうち、あの子もわかってくれますよ」。
加代の思いやり深い言葉に、お甲は「ありがとう」と言った。
そして、「加代さん、お願いがあります」と言う。

真吉が加代が好きなのを知ったお甲は、加代さえ良ければ一緒になってやってくれと頼む。
和泉堂の嫁として、お甲は加代を迎えたいと言う。
それを聞いた加代は、その夜、屋台で飲んでいる真吉を探し出した。

お甲だって女性だ、女性の幸せを求めて亭主を求めたって悪い事はないじゃないか、と加代は言う。
先代の主人にしなれて、意気消沈していたお甲に甚兵衛が近づいた。
仏壇の前でお甲が押し倒されるのを、真吉は庭から見ていたのだった。

翌朝、お甲は加代に会ったことを甚兵衛に話した。
真吉は和泉堂の跡取り、加代と一緒にさせてこの店を継がせるとお甲はきっぱり言い渡した。
すると、甚兵衛はもうお甲も真吉もいらないと豹変する。

5年前から、2人にはいつ消えてもらおうか考えていた。
世間ももう、疑わないだろう。
そう言うと、甚兵衛はお甲の首を絞めた。

加代は酔っ払った真吉を担ぎながら歩くと、真吉は加代に一緒になってほしいと頼む。
「そうはいかないのよ…、お前さん」。
加代が呼ぶと、壱が現れる。
壱の背中に加代が回る。

「あたしのいい人」。
真吉が息を呑む。
「俺の女に、手を出すんじゃねえ」。

「こんの野郎」と壱に飛びかかった真吉だが、壱に殴り飛ばされてしまう。
「わかったかい?つきまとうんじゃないよ」。
そう言って子犬を真吉に返した加代の手を、壱が引いて去っていく。

倒れている真吉を見つけた丈八が、お甲が倒れたと知らせに走ってくる。
真吉は急いで、和泉堂へ向かう。
それを見た壱と加代が、出てくる。

「これでいいのさ…」。
加代の前に、壱が手を出す。
「はい、ご苦労さん」と加代が財布から金を出して、手に乗せる。
「ほい」と壱が首をかしげる。

だが、壱は真吉がいなくなった方を見て、動かない。
振り返った加代に「俺、ちょっと気になるわ。行ってくらあ」と真吉の後を追う。
丈八に連れられた真吉は、家に帰る道が違うと立ち止まった。

「お前の帰る家は、もうねえんだ」という声がして、甚兵衛が現れる。
「それはどういう意味でえ」。
「お甲はもう、いねえよ」。

「あの世へ行っちまった」。
「まさか。お前が…」。
「5年前も、お前のおとっつあんをわしが…」。

甚兵衛は5年前の主人殺しも告白する。
「てめえ!」
子犬を放り出した真吉は、「殺してやる」と飛び掛る。
もめている足元で、子犬が吠える。

だが真吉は甚兵衛に刺されてしまう。
子犬がかなしそうな声をあげる。
壱が走ってくる。
誰もいないと思ったが、子犬が鳴く声が聞こえる。

壱が子犬に気づき、抱き上げた時、「いてえよ」と這っている真吉に気づく。
「しっかりしろ!」と壱が駆け寄る。
真吉は「殺してやる、殺してやる」と壱の胸倉を懸命につかむ。

「死ぬんじゃねえ、この野郎!」と壱が抱きかかえる。
しかし、真吉の手は力なく、垂れ下がってしまった。
「ついてねえなあ、おい…」。
壱が顔をしかめる。

翌日、加代は真吉が抱いていた子犬に、貰った組紐をかけてやっていた。
「坊や、悪い気はしなかったよ。あたしだって女だからね」。
「掟どおり、闇の会通さなきゃならねえぜ」と主水が言う。

「あたしだってね、甚兵衛から貰ったお金、ネコババする気ないよ」。
「金にゃあ、縁がねえ女だなあ」。
闇の会が開かれる。

相手は、玄斉、甚兵衛、番頭・伊十、手代・丈八。
仕事料は20両。
依頼人の面通しには、組紐をかんでいる子犬がいた。
驚く闇の会の仕事人たちを前に、「お引き受けします」と加代が言う。

加代は仕事人たちに仕事料を配って歩く。
帰り道、路地から手が差し出される。
壱を見た加代は「こんにちは、いいお天気ですねえ」と言って小走りに去って行こうとする。

「おい、おい。そりゃ、ねえだろ」。
壱は加代を路地に引っ張る。
「死に水取ったのは、俺なんだよ」。
そう言って懐から手を出した壱に、加代は金を渡すと「あーあ、またからっけつだ」と言った。

和泉堂で、玄斉が甚兵衛とアヘンの売り上げを分けていた。
伊十と丈八に見送られて、玄斉が帰って行く。
向かいの屋根の上に、竜がいる。

玄斉が帰り、伊十が中に入った時、竜が狙いを定めて紐を投げ、丈八の首をとらえる。
丈八が引きずられていくのを、入りかけた伊十が見る。
政が走ってくる。

丈八が政の前を、竜に引っ張られていく。
走りながら、政が手槍を組む。
丈八を追って外に出た伊十が振り向くと、政がジャンプする。

一撃で伊十の胸元に、手槍を叩き込む。
伊十が倒れる。
向かいの壁では、宙吊りになった丈八の首ががくりと下がる。

和泉堂では上機嫌の甚兵衛が、廊下を歩き、厠に入る。
壱が廊下を歩き、手水に手を浸す。
厠の窓の外に立ち、「ご気分、よろしいですか」と聞く。
「…お前は。誰だ」。

「ちょいと用事がありましてね。町の噂」。
甚兵衛は逃げる。
それを見た壱が戸の前に走る。
戸を開けた甚兵衛の前に、手をかざした壱が立っている。

正面から甚兵衛の首をつかむ。
グキッという音がする。
壱はそのまま、甚兵衛を厠に突き飛ばす。

夜道を歩く玄斉を、「先生ー!ちょっと来てください!」と捕まえる。
「夜間の往診は…」とあわてる玄斉を、加代は引っ張っていく。
町外れの塀で、男がうずくまっていた。
加代が「診てやってください」と叫ぶ。

しかたなく玄斉が近寄る。
すると、男ではなく、かかしだった。
驚く玄斉に「アヘンが切れて苦しんでるんだ。恵んでやんなよ、玄斉先生」という声が響く。

思わず、玄斉が刀に手をやる。
側にある、横倒しになっている大きな樽から、主水が出てくる。
「お前はいつかの町方の…」。
斬りかかってくる玄斉を抑え、主水が腹を刺す。

仕事を終えて戻った主水を、りつが迎える。
風呂にするか、食事にするかと、聞かれた主水は食事にした。
隣の部屋では、せんが寝ている。

ご飯を茶碗からかき込む主水に、りつが「あなた、もっとゆっくり」と言う。
すると主水は、ゆっくりゆっくり食べ始める。
突然、せんが「ムコ殿!さっさと召し上がれ!何時だと思ってらっしゃるんですか!」とうるさそうに布団をかぶる。

しかたなく、再び茶碗からご飯をかき込みだす主水の横で、りつがうとうと寝始める。
主水がりつをじっと見つめる。
りつの首ががくり、と下がり、主水は1人、急いでご飯をかき込む。



久々の激闘編です。
加代が若い男性に、求婚されるお話。
結構、いや、この真吉、すごく本気。
加代ちゃん、何度か若い男性に求愛されますよね。

あのたくましさが、いいんでしょうか。
綺麗だし。
根性も悪い、性悪じゃないし。

順之助も加代がしっかり、担当してましたよね。
一人ぼっちで生きてきた仕事人らしく、真吉のお甲に対する態度をたしなめる。
加代のこういうところが、好き。

お甲は加代の本質を見抜いて、加代を正式に嫁にすると言い出す。
ところが、お甲も、真吉も殺されてしまう。
主水じゃないけど、加代はつくづく、玉の輿に乗りかけては縁がなくなるんですね。

真吉は当時、人気だった若手タレントの新田純一さん。
友達がファンでした。
最期がすごくかわいそうで、無念そうで。
いつも子犬を抱いているところから、優しい子なんだなとわかります。

この連れている野良犬ちゃんが、すごーくかわいい。
ちゃんと吠えて、その後、寂しそうに立ち尽くして演技してました。
あのぐらいの子犬があんな風に立ち尽くしていると、かわいそうでたまらない。

悪党に蹴っ飛ばされたりしないかと、ドキドキしました。
加代にプレゼントの組紐をかけられて、最後に頼み人になってました。
それだけしてくれるんだから、あの子、加代が手伝って、どこかに引き取られたんだと思ってます。

政と竜は、ほとんど関わりません。
それでも政は、加代が魚を焼くのを手伝って、それで加代がご飯食べていけばなんて言ってます。
この2人は、お姉さんと弟みたいなんでしょうか。

それで今回も加代と一緒になって出てくるのが、壱。
順ちゃんより、加代といいコンビな気がします。
連れ込まれた加代が助けてくれなかったと怒ってますが、いざという時は出て来てくれたはず。
加代の男の振りをして、真吉を追い払う時に大人の余裕を感じさせます。

真吉を追い払った後、加代以上にしっかりしていて、ちゃんと報酬を要求してますけど。
しかし、先日、和泉堂絡みで女が殺されたのを見ているし、仕事人の勘が働くのか、真吉に不穏なものを感じて戻っていく。
「死ぬんじゃねえ、この野郎!」というのが、壱らしい激励。

「ついてねえなあ」は、自分が関わった青年を助けられなかった、やりきれなさから出た言葉だと思います。
甚兵衛に話しかけるかる~い感じが皮肉に響く、「ご気分、よろしいですか」。
お金で動いているようでいて、青年を殺した甚兵衛に対して、怒りが感じられました。
分け前とかは口実で、きっと真吉の恨みを晴らしてやりたかったんですよね。

玄斉を刺した後、家でお腹空いたとご飯食べる主水って、考えたらすごい。
せんに叱られて、ものすごくゆっくりになるところがおかしい。
怒られてまた急いで、りつが見てなくて、何だかヤケになって食べているのがまた、おかしい。
中村家は、主水が血なまぐさい世界から戻ってくるのに必要なんですね。


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2017.01.30 / Top↑
第27話、「主水、トカゲのしっぽ切りに怒る」。


ある雨の日、軒下で雨宿りしている加代は出前で商売繁盛しているお藤を見る。
縄張りを荒らすなと言う加代だが、やがてお藤と組んで仕事を始める。
吟味役の神尾は、奉行から呼び出される。

神尾の賄賂が発覚しそうになったのだ。
そこで神尾は勘定組頭の安藤と部下の村田に命じ、無理やり金を受け取らせた下役の男に罪をなすりつけ、自害に追い込んだ。
病弱の妻も道連れに自害した男の話は広まり、主水たちは上から賄賂はおろか、町で茶の一杯もご馳走になるなときつく言い渡される。

加代とお藤は仕事の帰り、お藤の妹婿の若杉仙太郎とバッタリ会う。
お藤は早くに両親をなくし、親代わりに妹の綾野を育てて来た。
その夫となった仙太郎は成績優秀で、この度、勘定方に迎えられ、出世した。


お藤はこれからは学問が重要と言って綾野を学問所に通わせ、綾野はそこで仙太郎と知り合ったのだった。
仙太郎は旗本の三男坊なので、婿に来てくれた。
お藤は仕事の合間に瓦版屋の朝日堂の倉吉を手伝い、仙太郎と綾野が幸せになるのを、楽しみにしていたのだ。
加代はお藤に触発され、政の姉代わりとして政の世話を焼き始める。

仙太郎は神尾公認で、越後屋から金を受け取り、その金で綾野とお藤に竜の作る組紐を買った。
翌日、仙太郎は越後屋から大奥御用達の許しを貰った祝いの席に呼ばれた。
仙太郎は廊下を歩いている時、高価な買い物をしているのを見た同僚たちが、仙太郎が賄賂を受け取っているのではないかと噂しているのを耳にする。
その夜、仙太郎は心配しながらも神尾も来るという座敷に行き、慣れない酒を飲む。

酔って足元がふらつく仙太郎は駕籠に乗せられ、越後屋から袖の下を渡された。
しかし、仙太郎は何も覚えていなかった。
帰宅した仙太郎を介抱した綾野は、仙太郎が大金を持ち帰ったのを見つける。
仙太郎はこれは料亭の支払いだと言うが、出勤してから越後屋に金を返しに行く。

たかがお駕籠代と越後屋は笑ったが、仙太郎は返してしまった。
このことは、すぐに神尾に報告された。
安藤は、既に仙太郎が賄賂を取っているという噂が流れていると言う。
神尾は奉行に報告し、老中への出世が控えている奉行は神尾に徹底した処分をと、言い渡す。

仙太郎は謹慎を言い渡された挙げ句、夜道で安藤と沼田に斬られてしまう。
夫の帰りを待っていた綾野だが、仙太郎は屋敷前で息絶える。
仙太郎の遺体を見た綾野は号泣。
安藤たちは賄賂の噂を仙太郎に問い詰めたところ、手向かってきたので斬ったと言っていた。

お藤が綾野の家に行くと綾野は自害し、果てるところだった。
妹夫婦の墓参りをしながら、お藤はこの一件を調べると言った。
一年前にも同じようなことがあって調べたのだが、お上から瓦版には書くなとお達しがあったのだった。
だが今度は負けない。

お藤と一緒に墓参りをしていた倉吉は戻ると、過去の瓦版を調べ始める。
瓦版屋の不穏な動きは、安藤の耳に入る。
その夜、瓦版を書いていた倉吉のところに、安藤と沼田が忍び込む。
「やっぱり、あんたたちが仙太郎さんを殺ったんだな!」

倉吉はそう叫ぶが、安藤と沼田に刺し殺されてしまう。
安藤と沼田が朝日堂を出た時、夜道を歩いていた壱が通りかかる。
不穏な空気を察した壱が朝日堂をのぞくと、倉吉が倒れていた。

お藤と加代が戻り、倉吉の遺体を見た。
「遅かったよ。たった今、2人の侍が出てったよ。俺、だいたい見当ついてんだ」。
「倉さん!」

お藤は、倉吉の名前を呼びながら遺体に取りすがる。
「俺、こういうの苦手なんだ」。
お藤を背に、壱は加代の横を通り過ぎて出て行く。

闇の会が開かれ、神尾と安藤、沼田、そして越後屋が仕事に掛けられる。
依頼人の面通しには、やつれきったお藤がいた。
頼み料は10両。
「お引き受けいたします」と加代が言った。

町角で茶を飲んでいた主水に加代が接触し、蕎麦屋に入った加代を主水が追ってくる。
蕎麦を頼む加代の背後の窓に主水が立ち、横に縁日の面を持った壱が立つ。
壱は「奴ら、トカゲのしっぽ切りだと笑ってましたよ」と言った。

主水は「人殺して、何がしっぽ切りだ。トカゲが聞いたら、あきれけえるぞ」と言う。
窓越しに加代が主水と壱に、仕事料を渡す。
政と竜にも、それぞれ仕事料を配って歩く。

その夜、料亭に集まった神尾たちを、壱が庭から伺っている。
越後屋が神尾の屋敷に向かうと、廊下の外に潜んでいた壱が立ち上がる。
沼田が芸者の1人の手を引いて、部屋を出て行く。

廊下を歩く沼田を見ながら、壱がついていくように外を歩いていく。
一つの部屋に潜むと、戸を開け、廊下から沼田に手を引かれた芸者を戸の中に引き入れる。
手を引いて先を歩いていた沼田は、突然芸者の手が外れたので前のめりに転びそうになる。

振り向くと、先ほどまで手を引いていた芸者がいない。
「おい!」
壱は芸者を部屋に引き入れると、気絶させていた。

芸者が引き込まれた戸まで、沼田が戻って来る。
暗い部屋の入り口に立った沼田の前に、無表情の壱が立つ。
沼田が驚いて声をあげる前に、壱の手が沼田の喉をとらえる。

苦しんで口を開けた沼田を、壱が喉をとらえたまま部屋まで引っ張り込む。
グキリ、と音をさせて沼田の喉が砕かれる。
壱が手を離すと、沼田はそのまま座り込む。

もう一つの部屋では障子に安藤の影が映り、隣の部屋では芸者が帯を解いている。
廊下に潜む竜が狙いを定めて紐を投げる。
障子が破れ、安藤の首を紐がとらえ、安藤が杯を落とす。
隣の部屋にいる芸者は、何も気づかない。

庭にいる竜が、紐を締める。
安藤の顔が障子を破る。
竜が締め、安藤が倒れる。
芸者が部屋に入ってくるが、安藤はそのまま崩れ落ちる。

神尾の屋敷では、神尾と越後屋が笑っている。
加代の声が響く。
「トカゲのしっぽ切りと笑った奴…、地獄から命の出前を頼まれました」。

神尾が廊下に出て、加代の後姿を見る。
「何奴!」
加代を追って神尾が走る。
越後屋が部屋から出て、様子を伺う。

その後ろに政が来て、部屋にそっと入る。
怯えきった越後屋は、部屋に戻る。
その越後屋の背後に、政が降りてくる。
気配に振り向いた越後屋を押さえつけ、政が首の後ろを刺す。

加代を追った神尾は、灯りがついている一つの部屋を覗く。
部屋を駆けると、衝立が見える。
神尾は刀を抜き、衝立を横にどける。

だがそこには、誰もいない。
さらに奥の戸を開ける。
横を見て刀を振り上げた神尾は、仰向けに引っくり返る越後屋を見た。
驚く神尾の背後に、刀を抜いた主水がいる。

神尾が気配を察して振り向き、主水に斬りかかる。
主水は神尾の刀を受け、いち早く神尾の腹に刀を突き立てる。
斬られた神尾がよろめくと、主水は廊下から部屋の中に倒れかかった神尾を突き放し、放り込んだ。

自宅に戻った主水は、せんとりつとそうめんを食べる。
これは肥前屋からのそうめんだ。
そうめんの箱を見た主水は、そうめんの間に小判が挟まっているのを見る。

「お返ししましょう」。
「ムコ殿はさっき、いただくものはいただけとおっしゃったじゃありませんか」
「母上のおっしゃるとおり」と、りつは言う。
小判を巡って主水とせんとりつは、もめ始めた。



中村家の庭に、トカゲが現れて、しっぽを切って逃げて行きました。
トカゲのしっぽ切り。
私は猫を相手にこれをやっているのを、見たことがあります。

でも、逃げた先にも猫がいた場合、せっかくしっぽを切ったのに、その猫がつかまえちゃうんですよ。
ああっ、しっぽが切れるのは一度だけ。
残酷う。
見ているこちらは「やめなさいよー」と声をかけることしかできなかった。

しっぽが新しく生えてきたであろう、トカゲも見たことがあります。
真ん中あたりのしっぽから先、色が違うんです。
体の色は灰色っぽいのに、しっぽは鮮やかな緑色だった。
友人に報告したら、「あたし、そういう話ダメ!気持ち悪い!」と逃げられてしまいました。

さて、トカゲのしっぽが切れるのを見て、せんは大騒ぎ。
りつと役所で本物のトカゲのしっぽきりに合わないか心配する。
それで、この話は下っ端に罪をなすりつけて逃げる、「トカゲのしっぽ切り」という行為について展開となります。

「必殺」には、割りとある話ですよね。
しかし、神尾役は「仕置屋稼業」で主水の上司、しかも良い上司だった村野さま役の宗方勝巳さん!
「仕置屋稼業」では主水を叱咤もしましたが、激励もし、主水の手柄に結びついたりもしました。

でもこれ以後は割りと、悪い役やってますね。
主水に刺されると、村野さまが刺されているような妙な気分になります。
お藤役は「助け人」で文さんの妹役がかわいらしかった、佐野アツ子さん。

倉吉とお藤は、憎まれ口を叩き合いながら、この2人、実は好き合っているんだろうなという感じ。
しかし、「必殺」の展開はこの2人を幸せにはしないのであった。
最初は加代はお藤に絡むが、お藤の商才に感嘆し、次には一緒にお仕事をしていました。

加代が始めた美人を酒の席に呼ぶ仕事って、今で言うコンパニオン派遣サービス?
座敷に行くと、壱がいた。
にこやかに手を振る壱に驚いた加代は、女性たちを廊下で待たす。

「何よ、これ!」
「そんなとこ、姐さんが座っちゃいけない。上座へ座らなきゃ。姐さんの席だよ、ここは」と、壱は加代を上座に座らせる。
料理を見た壱、「ちょっと…、贅沢かな?」。

加代は「当たり前じゃないのよ!いつもあたしからふんだくって!こんな豪華なもん頼んで!女、3人も呼んで!」と手を握り締める。
「一体、誰が払うの!」
「いいとこ目をつけてるよ!俺はよ、だから姐さんに来てもらったんだよ」と壱が声を潜める。

つまり、お金はなかったわけですね。
加代を呼んで、助けてもらったわけですね。
「冗談じゃない」と加代は立ち上がる。
すると加代の扱いが上手い壱。

「姐さんよ、評判良いんだぜ。何でもうまくやってくれる、って世間じゃ評判だよ。美しくて綺麗で、な!」とおだてる。
なぜか、加代、「う、生まれつきだからね」と受けてしまう。
「パッと行くってよ!」と廊下にいた女性3人を壱が呼ぶ。
つまり、加代は壱のお金を払うはめになったようで。

夜の町を遊びから帰る壱は、倉吉殺害に遭遇。
ただ遊んでいるわけじゃなくて、壱は夜、出歩くことによって、こういうことに出くわすわけですね。
嘆くお藤を見て、壱は「俺、こういうの苦手なんだ」と背を向けて出て行く。

仕事人だけど、罪もない人が殺されて、罪もない人が嘆き悲しむのは見ていられない。
こういうところが、壱の憎めないところ。
なぜか壱を許してしまう加代の気持ちが、わかる。

しかし、妹さん、お姉さんが苦労して育てたんでしょう。
気持ちはわかるし、立場もあるだろうけど後追いなんかしないで、もうちょっとがんばって生きていってほしかった。
あの後、お藤さんはどうなったんでしょう。
気丈だから大丈夫だとは思いますが、気になります。

奉行所では賄賂に関する取締りが厳しくなり、主水もいつものように小銭を差し出されるのを断って歩く。
断られたほうが、ちょっと笑っている。
しかし、最後におそうめんから小判が…。
サブタイトルが、「主水とせんりつ、そうめんでもめる」じゃなくて、良かった。


2016.10.17 / Top↑
「必殺仕事人V 激闘編」第26話、「主水、殺しに遅刻する」。


すみません、突然の「仕事人V 激闘編」。

浜野屋が経営する女郎屋で、浜野屋の女房に折檻されていた女郎が逃げ出し、川に飛び込む。
女郎は壱が夜釣りをしていた網にかかるが、死んでしまった。
死ぬ間際、女郎は「うらやす」と言い残した。
陣屋から自害した娘が流れ着くかもしれないから、よろしく頼むと言われていた奉行所では、女郎の死に何の疑問も持たなかった。

浦安では、浜野屋が代官と結託し、村を借金のカタに取っては次々と打ち壊していた。
網元が漁師たちに相談を受けて、集まっていたところ、一揆の疑いで代官に踏み込まれ、殺害されてしまった。
それを密かに見ていた漁師の息子の朝次は逃げ出し、江戸に向かった。

朝次は網元が書いた書状を持って、主水のところに訴え出たが、書状は勘定奉行あて。
主水が受け取るわけにも、行かなかった。
田中さまに仕事振りを叱られた主水は、市中の見回りに行く。
その頃、壱は金が払えず、女郎屋に居残りとして下働きをしていた。

壱が居残っている女郎屋には、浦安出身の女郎がいた。
せんとりつは、町で安売りの干物を買う。
1人につき、一度しか買えないので、二度目は変装して買いに行った。
いぶかしがられながらも買い求めると、1度目に買って路地に置いてあった干物は猫に食べられていた。

朝次は町で浜野屋の手下の勝吉に見つかり、とっさに父親の持っていた銛を振り回す。
しかし、銛は使い物にならなかった。
危ういところを、政に助けられる。

政の家に匿われた朝次だが、直訴状をなくしたことに気がついた。
直訴状を探そうとする朝次に、直訴は死罪だと政は止める。
朝次は、門前仲町の旅籠の増屋を探す。
そこに母親のおとよが働いていると聞いていたからだ。

だが、門前仲町の増屋といったら、女郎屋しかない。
増屋は女郎屋で、壱が話した浦安出身の女郎が、おとよだった。
勝吉は増屋に出向き、朝次が来たらすぐに知らせるように言う。
朝次は謀反の疑いあり、と言われていた。

そっと朝次が門前仲町を歩く姿を見たおとよだが、女郎に身を落としているのでは会えないと泣く。
壱が朝次に接触すると、朝次は鍛冶屋の政に世話になっていると言った。
おとよは壱を相手に、身の上を語った。
浜野屋がどんどん土地を買い占めるので、おとよたちは段々海で働けなくなった。

そして借金を重ね、いい奉公先を紹介してやると浜野屋に言われ、騙されて女郎屋に来たのだと言う。
浜野屋が来て、浦安の海はダメになった。
壱は嘆くおとよに、酒を注いでやる。
浜野屋と代官は結託しているので、誰も手が出せないのだった。

母親が見つからなかった朝次は、政の家に帰る。
直訴前に、母親に会いたかったと言う。
政は浜に帰ってやり直すように進言し、朝次の銛も綺麗に直しておいてくれた。
朝次は感激する。

浜野屋たちは、勘定奉行に手を回していた。
朝次は、お尋ねものになってしまった。
浦安に帰ったはずの朝次がまだ江戸にいるのを見た壱は、政に知らせる。
政は飛び出していくが、朝次は勘定奉行の屋敷前で待ち構えていた勝吉たちに囲まれた。

直してもらった銛を手に、朝次は抵抗するが、あえなく勝吉に刺される。
政が朝次を救出に入る。
壱はおとよを呼びに走る。

瀕死の朝次とおとよが、対面する。
小屋の外で、壱が立っている。
朝次は「ダメなんだよな。金の力にゃ勝てねえんだよな」と言う。
それを聞いた政は、悔しがる。

闇の会が開かれた。
頼み人は、おとよ。
仕事料は5両。
場所は浦安だった。

主水は渋るが、「潮の流れに乗りゃあ、いっとき」と壱は言う。
「抜け目のない兄さんたよ」と加代が言う。
仕事の夜、壱と加代は、主水と待ち合わせをした。
主水が裏の仕事に赴こうとした時、せんとりつが干物に当たったのか、腹痛を起こした。

あわてて薬を探す主水だが、腹痛の薬が見つからない。
苦しむせんとりつ。
主水は焦り、頭痛薬を煎じて飲ませることにした。

仕事の約束の時間が来ても、主水が来ない。
潮の流れが変わると言って壱は、加代を乗せて出発した。
政も竜も、浦安に向かう。
浦安では浜野屋が客人を招いて、浜辺で宴を催していた。

松の木の上から竜が、浜野屋の女房を狙う。
客に酒を持って行った女房は、木の上から竜に吊るされた。
酒を載せた盆が落ちるが、誰も気づかない。

加代は勝吉の前に姿を現し、逃げる。
女郎と間違えた勝吉は、加代を追ってきた。
海沿いの漁師小屋に、政が潜む。
追ってきた勝吉に飛び掛るが、力の強い勝吉は政をはねのける。

壁まで跳ね飛ばされた政の目に、立てかけてある銛が映る。
迫る勝吉に、政は銛を刺す。
刺されて動けなくなった勝吉に向かって、政は手槍を刺す。

浜野屋に壱が来る。
女房に頼まれた按摩だと言って、壱は奥の座敷に通してもらう。
浜野屋は喜び、布団の上に横になった。
壱に揉まれた浜野屋は、「気持ちいいや。明日も頼む」と言う。

「いや、もう来れねえから」と、壱が答える。
「え?」と言った浜野屋の首を、壱が捕える。
浜野屋の喉を砕くと、浜野屋は動かなくなった。
「楽になりますよ」と言って、壱は戸を閉める。

壱は、代官所の庭に潜んでいた。
主水が駆けつけるのを見た壱は、「これはこれは、お早いお着きで」と皮肉を言う。
「この年になって、夜中にかけっこするとは思わなかった」。
代官は奥の寝所にいる、と聞いた主水は廊下に上がる。

驚く代官に主水は廊下で名乗ると、朝次殺しの一件で来たと話す。
「町方風情が!」
憤慨した代官は、廊下まで出てくる。

だが、廊下には誰もいない。
しかし既に、主水は代官の背後にいた。
「あなた様か犯人と言っております」。
主水は代官を刺す。

急いで家に戻った主水。
主水が腹痛の薬を買ってきたと言うが、せんとりつは頭痛薬ですっかり良くなって笑いあっていた。
ホッとする主水に、2人は大量の干物を見せる。
主水が、げんなりする。



一応、第1回で壱は目明しの仕事をしていたのですが、奉行所の人間はわからなかったのでしょうか。
今回もお女郎さんを引き上げたり、朝次の母親と交流したり、壱が大きく関わっている。
それから政が朝次と大きく関わる。

銛を直しておいてやるとか、直訴を心配するとか、政が相変わらず良い人で、最後は怒りに燃える。
漁師ができるように直してやった銛は、やっぱり武器にはならなくて、朝次は死んでしまう。
そして、銛で勝吉が刺されるという、因果応報が効いてました。

勝吉ね、坊主頭の大男なんですが、坊主頭に刺青があるんです。
すごい迫力。
演じたのは、広瀬義宣さん。

竜が今回も、あんまり関係ない。
壱が居残っている女郎屋に、組紐を届けるぐらい。
下働きをせっせとする壱を見て、「似合ってるぜ」。

言われた壱は「この姿、見たらかわいそうと思わねえか」。
竜とも仲間意識ができてるんですね。
でも、それだけ。
竜の出番は、本当にない。

仕事の舞台は浦安。
今は東京ディズニーランドとディズニーシーで語られる、浦安です。
ここでは、ささやかな漁師町です。

壱は船を用意する頼りになる奴なんですが、せんとりつが冒頭に買い求めた干物に当たった主水は待ち合わせに行けない。
それで主水は浦安まで、マラソンして駆けつけたんです。
すごいわ!
浦安から徒歩で帰るなんてなかなか、できない気がする…。

せんとりつの干物を食べちゃった猫が、すごくかわいらしかった。
そして、どうして頭痛薬が効いたのかしら。
砂糖をなめさせて効いてしまう子供レベルだったのか、頭痛薬が万能だったのか。
不思議~。


2016.10.11 / Top↑
第25話、「主水、紫陽花の下に金を隠す」。


そろそろ走り梅雨、という時期。
主水は、せんとりつに、桃の節句も端午の節句もいつ祝えるのかと嫌味を言われる。
ふと、主水が庭を見ると、紫陽花があるのでなぜかと聞くと、りつが植えたのだと言う。
りつが主水に優しいので、せんが不機嫌になる。

芝居手踊り一座の市川菊之丞が、半年振りに江戸に戻ってきた。
菊之丞は到着すると、そっと芝居小屋から出てくる。
そして、荷物に紛れ込ませていた佐渡から持って来た金塊を取り出す。

すると、横川がやってきて、菊之丞はそれを横川に渡す。
「あとはよしなに」。
「わかっておる」。

江戸では若い女の身投げが続いていた。
見物人から離れながら、「生きてりゃいい目に逢うこともあんのにさあ」と加代が言う。
加代は、お里という娘に仕立物を届ける。

お里の義兄で金座で役人をしている平岡誠之助が、まだ幼い息子の清太郎を預けに来る。
加代は、朝預かって夕方返すなんて面倒なことをせず、一緒になっちゃえばと言う。
お里は「そんな」と頬を染める。

金座では、小判を製造している。
そこを見回っている平岡は、ちょっと気に留めることがあり、上司の三野田左太夫に報告をした。
どうも、金座の金の使用量が腑に落ちない。

不正があるのではと、平岡は言う。
だが、佐渡より送り込まれた金と、鋳造された金の重さに差があるのかというと、帳簿上はない。
しかし、平岡は金がどこかでくすねられ、密造小判になっているのではないかと考えていた。
その会話を横川が立ち聞きしている。

今日は訴えに来る人間がいなくて、主水は朝から暇だった。
田中さまは、なぜなら芝居小屋に人が殺到しているからですよ、と教える。
混雑している小屋の前の交通整理に行くと言って、田中さまは主水を連れて行く。

一座の座頭の仙蔵は、田中さまに「一度ご覧になってやってください」と言う。
田中さまが見に行くので良い席をと言われ、主水は小屋の中へ入る。
一座の花形娘・お美津は大変な人気で、主水も立ち見をする。

ひときわ大きな声で声援を送っているのは、壱だった。
「若けえの、おめえも好きだな」。
「八丁堀の旦那も、おみっちゃんに肩入れですか。一緒に見ましょうよ」と壱が言う。
壱は加代に、加代にお美津への付文を頼むほどだった。

竜には札差の大黒屋・利平から、お美津に金糸銀糸を使って豪華に組紐を作ってくれと依頼が来た。
だが竜は「金糸銀糸など私の手に余ります。どうかお引取りを」と断る。
外に出ながら、案内してきた男が、「すみません」と謝っていた。
「いいんだよ、お金の有難みを知らない男もいるもんだね」と大黒屋は不愉快そうだった。

その夜、大黒屋と横川が、平岡が目をつけた密造小判の件で料亭で密談していた。
密造と言っても、同じ金座の職人がそれと知らずに作った小判だ。
「それを大名に貸し付ければ、金蔵の一つや二つ、わけなく作れます」。
大黒屋と横川は、そう言って笑う。

平岡は、小判の密造を突き止めた。
職人たちが気づかず作ったものを、大黒屋に横流ししているのではと三野田に言う。
三野田は、「では金座の中に内通者が?」と聞いた。
証拠はないが、平岡は横川に目をつけていた。

その夜、平岡は大黒屋に料亭に呼ばれた。
料亭に向かうと、座敷には横川がいた。
「ゆっくり話をしてもらいたい」。
「何の話ですか」。

横川は、かぎまわれると困るので、話をしておこうと思ったと言う。
一座の座頭・仙蔵も来た。
仙蔵は、一座を隠れ蓑に、佐渡から金塊を運んでくれるのだ。
打ち明けてしまえば気が楽だと、横川が笑う。

そして、今人気のお美津を呼んでいると言われるが、平岡は帰る。
お美津が止めるように言われて、やってくる。
平岡は「お美津と言ったな。そなたの噂は知っている」と言う。

「悪いことは言わん。今の一座は辞めた方がいい」。
「どうしてですか」。
「何も知んのか。芸で生きるつもりなら、一座は抜けたほうがいい」。

平岡が通された、さらに奥の座敷には三野田もいた。
三野田は「そのうちに、我が身かわいさに泣きついてくる」と言う。
しかし、「それにしては知られすぎた」と横川と仙蔵は話す。
「抱き込めぬとあれば、平岡を斬るまで」。

その話を、戻ってきたお美津が聞いていた。
仙蔵がお美津を座敷に引きずり込む。
横川が刀でお美津の首を背後から締め上げ、お美津が倒れた。

夜の橋の上、仙蔵がお美津をかついで来る。
大黒屋が橋の上にお美津下駄をそろえ、遺書をその上に置く。
そして、お美津の遺体を川に投げた。

政が見ていて、大黒屋と仙蔵が走り去った後、飛んでくる。
急いで川の中を見る、お美津は見えない。
政は遺書を手に取る。
翌朝、お美津の遺体があがる。

駆けつけた仙蔵が泣く。
主水はお美津の首に、不審なあざがあるのを見た。
仙蔵はお美津が平岡を追って料亭を出るのを見たと、戻って一座の者に話をする。
では、お美津は平岡さまに冷たくされて?と一座の者が聞く。

瓦版には、平岡への失恋が原因でお美津は自殺したと書かれた。
平岡は義妹と祝言を挙げる為、お美津と手を切ったので、お美津はショックを受けたのだと書いてあった。
蕎麦屋で壱は瓦版を読んでいた。

政が外から壱を見てやってくる。
壱はボーっとしている。
「あああああ、、もったいねえなあ、若けえ身空で…、あー、惜しいなあ」と壱が嘆く。

「どうしたい、ボケッとした面してよ」。
「食欲なくなっちまった。おめえ食えよ、あああああ」と言いながら、壱は立ち去った。
政が残された瓦版を読む。
「勝手なこと書きやがって。裏にからくりがあるとも、知らねえでよ」と憤慨する。

三野田に呼ばれた平岡は、「小娘に手を出して、揚句の果てに死なせるとは」と叱責される。
平岡は、身に覚えがないことだと反論した。
すると、横川が現れ、「察しが悪いぞ。潔く死んでわびろと言われているのが、わからんか」と言った。

「もう誰も信用しない。三野田さまも、な」と言われて、顔を上げが平岡は全てを知った。
三野田もグルだった。
平岡は、ガックリと肩を落とす。

町では、清太郎が子供たちに「お前の父ちゃん、悪い奴」といじめられている。
お里が来て、清太郎を慰める。
そこに平岡が来た。
平岡はお里の家を借り、そこで書状を書き始める。

仕立物を届けに行くお里をふと、呼び止めた。
振り向いたお里に平岡は「何でもない」と言った。
お里は出て行く。

夜、平岡は上申書を書き上げた。
後ろでは清太郎が遊んでいる。
平岡は、「まだ眠くないのか」と膝に乗せた時、誰かが戸を叩いた。
「あ、おばちゃんだ」と清太郎が出るが、入ってきたのは横川だった。

横川はいきなり、平岡を刺した。
清太郎は仙蔵が抱いて、隣の部屋の向こうに去る。
「清太郎!」
「父上!」

仙蔵が表情を歪ませ、力を入れる顔が見える。
横川は平岡を座らせ、正面から腹を刺して切腹の形を取る。
書いてあった上申書を持ち去るが、平岡は這って行き、紙に血のついた指で書き残す。
「みのだ、よこかわ、だいこくや、せんぞう」。

そして、息絶えた。
加代がお里のところへ、「お仕立物頼むわ」とやってきて、倒れている平岡を見る。
お里が帰って来る。

倒れている平岡に「お兄さま!」と駆け寄る。
隣の部屋では、清太郎も殺されていた。
加代が血文字の書かれた紙を見て、そっと取りあげる。
お里は清太郎を抱きしめ、泣いている。

誰か来て、加代はあわてて書を隠す。
横川と大黒屋が来て「こうなると思った、全く子供を道連れになんてことだ」と言った。
翌日の瓦版には、平岡は子供を道連れに心中した、情け知らずの男と書かれる。
それを見て、横川と仙蔵はほくそえむ。

誠之助と清太郎の位牌を前に、加代がお里に血文字で書かれた書を見せる。
やっぱり思った通り、平岡は切腹などしていなかった。
子供を道連れになどしない、これが何よりの証拠。
最後の力を振り絞って、真実を伝えようとしたのだ、とお里は泣く。

闇の会が開かれ、平岡の書にあった三野田たちが仕事にかけられる。
仕事料は20両。
頼み人は、お里。
お里はこの為に、身を売った。

主水に仕事料を渡しながら、「今度と言う今度は、つくづく嫌になったよ」と加代は言う。
竜の家の外に加代が立つと、竜が戸を開く。
塀に加代が、仕事料を置いて行く。

加代の家の前に壱がいる。
「何しに来たんだい」。
「仲間はずれは、さびしじゃねえかよ」と壱が言う。
手を差し出す壱に、「仕事にならないと思ってさ。今のお前さんじゃ、ぼーっと気が抜けたまんまじゃ、さ」と加代が言う。

「仕事は別だ。それにおみっちゃんの仇討ちだろ。違うか」。
「相変わらず、地獄耳だねえ」。
加代が仕事料を分ける。
「助っ人なしじゃ、無理だよ」と壱が言う。

「はい」。
加代が分けて渡した仕事料ではなく、壱は加代が持っている方を取って「俺はこっちがいいな」と持ち去る。
壱を見送りながら加代が、「何であたしはあいつにだけ、弱いんだろ…」と小判を見つめる。

その夜、菊之丞一座の小屋に、竜が入る。
楽屋を見ると、一座の人間が博打を売っている。
仙蔵が、離れたところに壁を背にして座っている。

「半年たてば、また山吹色のご当地」と独り言を言って、仙蔵は笑う。
窓の外に竜が見える。
竜は窓の格子の隙間から、紐を投げると、紐は間を抜けて、仙蔵の首にかかる。

仙蔵は紐に引きずられて、壁に引き寄せられていく。
窓の外にいる竜を見る。
竜が紐をひっぱると、仙蔵の首が絞まる。
誰も気がつかないが、仙蔵の体がずるずると壁から落ちていく。

大黒屋では、「月末にはあと千両」と三野田と横川、大黒屋が笑っている。
すると、屋敷の中外から三味線の音が聞こえる。
いぶかしげな横川と大黒屋が出て行く。

政が手槍を組み立てる。
ギリギリという音がして、政が構えて背後をうかがう。
横川と大黒屋が入ったが、座敷には誰もいない。

戸を開けてみたが誰もいない。
すると、座敷の戸の影から、三味が飛んでくる。
加代が逃げて行く。

横川が加代を追うが、刀にやった手を政が抑える。
刀が飛び、大黒屋の前の畳みに刺さる。
驚いた大黒屋が、ひっと言うが、政は横川にとび蹴りをする。

庭に下りると、小刀を持った横川の手を抑え、首の後ろを刺した。
横川を仕留めると、政はそっと離れる。
庭で突っ伏して、横川は倒れる。

大黒屋は逃げようとするが、隣の間への戸が開かない。
障子を開けようとすると、廊下から障子を突き破って壱の手が出て来る。
うわっとおののく大黒屋は、あわてて座敷の奥へ逃げ込む。
大黒屋は逃げ場を失い、部屋をうろうろと歩き回る。

隣へ行く戸が開けると、影から壱が出て来て、その横顔を見た大黒屋はあわてて戸を閉める。
大黒屋は、後ろに下がっていく。
思い切って廊下への障子に向かって走るが、障子に手を上げた壱の影があるのを見て止まる。
壱の手がこちらに向いて、手を握りそうにして構えている。

大黒屋は、部屋の中を見回しながら逃げ場を探して歩く。
壱が手を突っ込んで破れた障子が、風で揺れている。
ふと、大黒屋が振り返ると、壱の手が向かってくる。
グキリという音がして、首をつかまれた大黒屋が座りこむと、首が反対側に回る。

廊下を主水が歩いてくる。
三野田のいる座敷に主水が入ってきて、三野田が「何奴」と言う。
主水は、金座に不正があると言う。

協力すると言って、主水が近寄ると「よい!」と三野田が断る。
「三野田さま、暗ろうございましょう」と主水が燭台を持って、三野田を照らす。
三野田が無言で、敵意に満ちた目で、主水を見る。

「我々下々は、このような大金見たことがございませんぬ。一度だけよろしゅうございますか」。
主水が千両箱の中を見る。
「ほう、見事でございますな。この色、この艶」。

主水が持っていた小判を懐に入れようとした。「きさま!」
見ていた三野田が、と主水の手を取る。
主水がすかさず、三野田の小刀を取り腹を刺す。

三野田が主水を見る。
倒れた三野田は、千両箱にしがみつきながら、死ぬ。
主水が小判をたたきつけて、帰って行く。

翌朝、雨の中、せんとりつが庭の紫陽花が咲いたと言う。
「我が家は平和ですねえ」と言うと、りつが「山吹色の花まで咲きました」と言った。
土に埋めておいた瓶が割れて、紫陽花の根元にあった。
せんが「へそくりの話が咲いた」と言い、主水がガックリと肩を落とす。



このあたりになると安定した展開に入ったという感じがしますが、笑っちゃったのは壱と加代のやり取りです。
蕎麦屋にいる加代の前に、手紙が出される。
「何これ」と加代が見る。

すると壱が加代の前に立っている。
「何、モジモジしちゃって」。
壱が、ふふふと笑う。
まあ、ふふふ、ですよ。

「見りゃわかるだろ」。
「見ればわかるって?」
「この、俺の、思いを、さ」。

壱が胸に手を当てて、加代の隣に座る。
「思い?…やだこれ、付け文?」
「ああ」。
加代が手紙をまじまじと見て、次に壱を見る。

壱がうれしそうに笑い、加代の声が弾み出す。
「ちょっと、ちょっと待ってよ、そんな。あたしだっていきなり」。
加代が、中身を見る
「あたしだってさ、都合ってもんがあんじゃないのー!?」

言葉とは裏腹に、弾んだ声の加代に「え?」と壱が不思議そうな顔をする。
「え?」と、加代がまじまじと手紙を見る。
「恋しい恋しいお美津さま?」と書いてある。
「舞台姿に一目惚れ」と、壱が言う。

そうです、相手は加代じゃなく、お美津さんにでした。
「今、評判のお美津さんかあ。あたしゃてっきり…」。
「誰だと思ったの?」
「あ?ああ」と、加代はごまかす。

「別に」。
「会ってくれとか、付き合ってくれというのではなくて、舞台姿に一目惚れした熱き思いを」と壱が説明すると、加代はさっきとは別人のように「自分で届けたら?」とそっけない。
「おめえ!何でも屋だろ、仕事選ぶのかよ!」と壱が言う。
すると、加代は「はい、高いよ」と手を出す。

「俺から金取るのお?友達でしょ友情でしょ、ねえお願いしますよ」と懐く壱に「それとこれとは別!」と加代は言う。
「しっかりしやがって」と、壱はお金を渡す。
壱が出したお金に加代、「ちょっとちょっと!これじゃ蕎麦代にもならないじゃないの!」
「木戸銭、楽屋に運ぶ花とからっけつだから、ね、これでお願いします」と壱が頭を下げる。

手の中に小銭を握らせられて「どうしようもない男だね!」と加代が怒鳴る。
今度は壱が「それよりよお、闇の会どうなってんだよ」と声をひそめる。
加代は、つんとそっぽを向く。
「そっちの方頼むわ」と言うと、壱は出て行く。

こんな具合なんですが、まー、加代と壱がおもしろくて笑っちゃう。
いいコンビ。
自分では遊びにお金を使っちゃって、頼むのにはお金がないなんて加代としては普通、絶対ダメなんですよ。
そんなの、絶対許さない!

だけど、壱のねだり方がかわいらしすぎるのか。
クネクネするのが、おかしい。
加代みたいなタイプに対して、壱は甘え上手というか。
直感的に、加代に甘える方法を心得ているような気がします。

お金を取られて、普通だったら加代はやかましく怒鳴るか、付きまとう。
だけど、壱に対しては「どうしてあたしはあいつに弱いんだろ」とつぶやいて終わり。
これが政だったり、竜だったりしたらありえない。
主水に対しても、うるさい。

壱がその気になったら、仕事人同士で恋仲になるなんて、展開があるのかもしれません。
前回はそれと走らず、仕事人同士の恋が壱にあったわけですが。
「新・仕置人」で鉄もカタギの娘さんに惚れ込んじゃったことがあります。

まあ、どこまで本気なんでしょうかね。
正八みたいに裏の仕事からは、たぶん鉄も壱も抜けないでしょうし。
そうすると、カタギさん相手じゃ決して成就しないでしょうし。

「仕置人」の鉄は、お順さんが最期まで冷血漢を思っていたのを、皮肉に言いつつも丁寧に弔ってやっていた。
裏の裏を見てしまう自分の仕事を自覚していればいるほど、異性に対しては刹那的にならざるを得ない。
だから本当は騒いで、ウキウキしている範囲を超えてないのかもしれません。
逆に秘めている方が、本気度が高い。

前回、秘めた恋物語があっただけに、今回の壱の軽さが印象に残ります。
その壱は仕事は別だ、と本当に別の顔を見せる。
こういう顔を知っているからこそ、加代は壱に甘いのかも。

派手に刹那的に。
そうでなければ、秘めるべし。
これもまた、裏稼業なら覚悟していることなのかもしれません。


2012.01.02 / Top↑
第24話、「主水、上方の元締と決闘する」。


闇の会に所属する仕事人たちが、女を含む謎の集団に襲われる。
1人はとっさに、政の家に逃げ込んだ。
死体を見た主水はすぐにプロの仕事と見抜き、加代の家へ行った。
玄関先で寝ている加代に主水は、「色気も何もあったもんじゃねえな、なんだその寝相は!」と言う。

「おめえが眠っている間に2人やられちまった」。
「ご同業かい」と加代は言う。
「竜と政にも言っておけ」と注意を促し、主水は加代の家を出る。

政の家に逃げ込んだ仕事人だが、体中に毒が回っている夜までは持たない。
竜が政の家にいるが、あまり係わり合いにならないほうがいいんじゃないかと言う。
その時、何かの気配に政が外を見る。

突然の雨に、壱が寺の軒下に雨宿りに入る。
若い女性の先客がいる。
女性を見た壱が、これ使えやと手ぬぐいを出す。

すると女性は冷たく、「いいんです」と断る。
「ほんとに気持ちだけで結構です」と女性が言った途端、雷鳴が轟く。
冷たかった女性が突如、「きゃあっ」と悲鳴をあげて壱に抱きつく。

空が晴れ、壱が河原で着物を干している。
「襲ったりしねえよ、俺は初心で通ってるんだから。俺の名前、壱助っていうんだ。おめえは?」
女性は名乗らない。

「それはねえだろう、こっちが名乗ってるんだから」と言うと、女性は「か、も、め」と答えた。
女性は不思議そうな壱に、「お兄さん、カモメ知らないの」と言った。
「ほんというとね、男には教えないことにしてんの。名前も住まいも。しつこくつきまとうから」。
壱は「気に入ったぜ、おい、かもめなんて名前も粋だな。よし俺が干してやる」と言うと、「きゃあっ」と悲鳴をあげたかもめの着物を取り上げて干す。

その夜、政のところにいた男は死んだ。
竜と政が掘って、埋めようとしている。
誰かに見られている。

「仕掛けてみるか?」
「何もこっちから正体見せるこたあねえ」と言って、政が逃げた。
2人の男が、竜に襲い掛かり、竜が2人相手にしながら「政あ、俺売ったな!」と叫んだ。

奉行所の主水のところに、加代が来ている。
「鍛冶屋と組紐屋が、襲われたんだよ」。
昨夜、政は竜を助けようと戻ったが、竜はもう、いなかったと言う。

「組紐屋はさあ、鍛冶屋が敵に売ったと思ったらしいんだ」。
政は主水に、自分は竜を助けようとしたと言う。
それを聞いた主水は「できちまったもんはしようがねえ」と言うと、加代に竜を探せと言った。

闇の会が開かれた。
元締めは、闇の会が存続の危機にあると言う。
10日で、仕事人が7人殺された。
そこで元締めが、お願いをする。

依頼人は元締め、仲間の恨みを晴らしてくれ。
仕事料は百両。
加代の目が輝く。

「今回に限り、どなたでも結構です。首尾よく討ち果たしたら、後払い」。
相手の正体は一切わからない。
ただ上方の元締めである天満屋利平が、月初めにこちらに向かった。
それなのに、いまだ挨拶がないので、この男が闇の会を乗っ取るつもりなのかもしれない。

壱は、かもめと2人、博打をして負けている。
楽しそうだったが、かもめは突然黙る。
帰ると言い出したかもめに、壱は「どうしたんだ?どうした?」と聞く。

かもめは悲しそうに壱を見る。
「好きになりそう。壱さんのこと」。
かもめを抱きしめて外を見た壱の目に、加代が百両と書いてあげた凧が目に入る。
その凧を政も見ている。

凧は、神社の鳥居に引っかかる。
加代が凧を取っていると、その前に2人の男が現れる。
「加代はんですな。すまないけど、元締めにおうてもらいましょう」。
「上方ってのは、あんたたちだね?帰って元締めに言ってやんな。江戸で仕事するなんてな、大きな間違えだってね」。

2人は加代を連れ去ろうとする。
加代は大声を上げた。
「お願い!助けて!」
その声で、政が駆けつける。

政と2人は戦いながら、橋の下の川まで下りる。
加代が上からのぞきながら、「助けてえ」と叫ぶ。
神社の神官が巫女とやってくる。
2人の男と、政も逃げていく。

かもめが家に戻ると、政を襲った2人が縁側にいて、「お帰りやす」と声をかけた。
「おとうちゃんは?」
「奥です」。

かもめが父親がいると言われた奥に入ろうとすると、男の1人が「お嬢さん、あの男だけはやめときなはれ」と言った。
ぎくりとしたかもめに男は「ありゃあ、江戸の仕事人ですわ」と言った。
「えっ」。

奥の座敷に進んだかもめは、戸の前に座る。
「お帰り」と中から声がして、戸が開く。
するとそこには、父親であり、上方の元締めの天満屋・彦兵衛がいた。

「おかげで、お前の仕事が一つ出来たわけや」。
驚くかもめに彦兵衛は言う。
「ええか、しくじったら、お前の命を落とすことになんのやで。誓って、ようよう考えるこっちゃ。命を粗末にしたらあかん」。
「体を張って仕掛けるのもいい。正面から当たるのもいい。だが狙うのは耳」。

お景の後ろで、利平は針を持って言う。
「この奥を傷つけられるとな、人間はよう立ってられんようになる。まっすぐ歩こう思っても歩かれん。後はどうにでも始末ができる」。
そして、彦兵衛は加代を連れてくるのに失敗した仲間を殴り飛ばす。
お景が庭に出てつつじの花を見ながら、思いつめた顔をする。

政が竜の家に行くと、竜はいなかった。
加代は「冗談じゃないよ、なんであたしまで狙われなきゃいけないんだ」とぼやきながら、家に板を張り、戸締りをしていた。
そこに政がやってくる。

「ずいぶんと念入りなこったな」。
加代が「組紐屋は…、まさか死んじまったんじゃないだろうな」と言うと政は「俺に対する恨みは忘れちゃいねえ」と否定した。
「そうだよね、きっとそうだよね」。

加代の家の戸締りをくぐって、壱が入って来る。
「どっから入って来たんだい」。
「どっからって、これじゃどっからだって入れんだろが、おい。大工の修業しろ!」

「あんたも気をつけたほうがいいよ。組紐屋がやられちまった」。
「誰に」。
「上方から、仕事人が流れ込んできたんだよ」。
それを聞いた壱は「上方…ふうん」と言った。

かもめとの待ち合わせの場所で、壱が座り込む。
海から飛んで来たのか、かもめが飛ぶのが見える。
壱が、池のほとりにたたずむ。

お景がやってきて、壱に軽く石を投げる。
壱が笑って受け止める。
しかし、突然、お景に鋭く石を投げてよこす。
お景の手が横に伸び、すばやくそれを受け止める。

壱の顔が、鋭くなっている。
お景が、悲しそうに壱を見る。
壱が表情を崩して、笑う。

竹やぶに、一軒家が建っている。
塀を軽々越える影があり、笠をかぶっている。
家の中には、組み紐が張り巡らされている。

男が侵入するが、天井から紐が飛んで来て男を吊るす。
竜は男を仕留めた。
ひらりと天井から降り、外をうかがう。

料亭で、お景が壱を膝枕している。
お景は、壱に耳かきをしていた。
口から針を出し、そっと手に取る。

壱に向かって、針を持った手を下ろそうとする。
「膝がふるえてるよ」と壱が言う。
途端、お景が飛びのく。
壱が起き上がる。

衝立の向こうにお景が身を潜める。
「やっぱり、そういうことだったのか」。
衝立を、どかすお景。

「お景、おめえ端っから、そのつもりで俺に近づいて来たのか」。
針を構えたまま、お景が首を振る。
「あの雨宿り、偶然だったんだよな」。

お景がうなづく。
「ちえっ」と壱が言う。
「お互い、いい偶然じゃなかったな」。

壱が身を翻すと、隣の部屋から縄が飛んで来る。
お景、隣の部屋に駆け込む。
壱が身を翻すと、2人は逃げて行った。

1人、壱が部屋に戻る。
壱の乾いた笑いが、部屋に響く。
ご飯を食べている加代は、「うーん、百両か。うまく仕留めりゃ、どこか温泉に行ける」と言った。
その時、何かの気配を感じた加代は引き出しから包丁を出す。

戸の向こうには、竜がいた。
「組紐屋!生きてたのかい!」
「そう簡単にくたばってたまるかい」。

「だったらどうしてもっと早く、つなぎをとってくんないんだい」。
「すまねえ、ずっと狙われてたんだ。政の奴、裏切りやがった」。
「あんたの思い過ごしだよ」。
「とにかく、この決着どうにでもつけてやる」。

蕎麦屋で蕎麦を食べている主水に、外の窓から近づく男がいる。
「相変わらず昼行灯ですか。昔から要領のいい人やった。お久しぶりです、中村さん」。
天満屋だった。

「おめえいってえ、誰だい」と主水はとぼける。
「ずーと昔、若い昔、お忘れですか」。
「海猫の彦兵衛か。久しぶりだったな。おい、何か用かい?」
窓の外から、彦兵衛がのぞく。

彦兵衛は、主水を屋敷に連れてきた。
お景と3人の男が並ぶ。
一段高い明るい座敷に、彦兵衛と主水が来た。

「この者どもが、鳥の軍団でございます」と彦兵衛が紹介した。
「右の方からカラスの兆冶、とんびの銀、ふくろうの辰、そいから娘のかもめのお景でございます」。
お景がお辞儀をする。

「もう1人おりましたが、ゆんべ殺されました。…紐屋の竜」と、助六という男が竜に殺されたことを話す。
「やりゃあやりかえされるのが、この稼業だい」と主水が言う。
「思った通り、中村さんたちのところの手駒が、一番手強い」。
「冗談言うねえ。俺が別に束ねているわけじゃねえや」。

「闇の会から、足を抜いてもらうわけにはいきまへんやろな」。
「おめえの身内ちになれってのかい」。
「どうです、闇の会に代わって、わてと一緒に江戸仕切っては」。

「あいにくだが、できねえ相談だな」。
「あきまへんか」。
「返事は一回こっきりに決めてるんだ。これ以上の誘いは無用だぜ」。

「そういうところは、昔とちょっとも変わってませんな。悪が増える、人がいる。今の上方だけでは、とてもおまんまにありつけねえ」と彦兵衛は言った。
「世知辛い世の中になったもんだ。まあ、せいぜい気い入れて向かって来い」。
「お別れに一杯やりましょうか」。
「けりつけんのが先だぜ」と主水は立ち上がる。

彦兵衛は、「中村はん、今夜お待ちしてまっせ」と言った。
主水は去っていき、彦兵衛は「みんな、死ぬ気でやんのやぜ」と檄を飛ばす。
お景は黙っている。

壱は屋台で、飲んでいる。
お景との出会いを思い出している。
壱は酒を口に運ぼうとして思わず、器を握りつぶした。
酒が飛び散る。

夜道を行く主水。
彦兵衛の合図で、屋敷の灯りが消される。
屋敷の屋根の上に竜がいて、紐を構える。

庭に政が降りてくる。
飛び掛る銀に、政が構える。
銀は政に蹴られるが、後ろから辰が政を襲う。

政が壁に追い詰められ、銀に銛を突きたてられる。
銛は壁に突き刺さるが、銀は政ともみ合いになる。
突然壁を破って、手が出てくる。

銀が壁に引き込まれると、向こう側には壱がいた。
壱が壁を破って銀の首を、自分の前に引きずり込む。
グキリという音がして、銀の首が横を向く。
首が、がくりと壁から垂れ下がる。

竜が上から下りて来て、あたりを伺う。
闇の中移動し、組み紐を構える。
兆冶が上から紐を落とし、竜の足にかけて竜を吊り上げる。
辰が向こうからやってくる。

竜が紐を飛ばし、辰の足にかけて、辰を転ばせる。
兆冶が宙吊りになっている竜を手繰り寄せて行くが、後ろから政が兆冶を刺す。
竜が辰を蹴飛ばし、首に紐をかけて締める。
兆冶を仕留め、去っていく政の後姿を竜が見る。

屋敷の中では、座敷の障子に壱の影が映っていた。
戸を開け、壱が座敷の前に立つ。
お景が、匕首を持って座っている。

匕首を持って、壱に飛びかかる。
壱はそれを交わし、匕首を持つお景の手を抑える。
お景を見た壱は、お景の首をつかむ。

グキリと言う音がする。
正面から、壱はお景を見つめる。
壱の右手が、お景の左手を取り、お景を引き寄せていく。
匕首が、お景の手から落ちる。

お景の首から壱の手が離れ、背中に回り、お景を抱き寄せる。
壱の肩越しに見える、お景が目を閉じる。
お景の肩越しに壱の顔も見える。

壱の目が伏せられる。
グキリと音がする。
「あ」とお景が短い声を上げ、壱の胸の中で崩れ落ちる。

主水が暗い廊下を行く。
雷鳴轟く中、飛びかかって来る彦兵衛。
主水が受け止める。

「彦兵衛、逃げ道は開いてるぜ」。
「逃げしまへん」。
彦兵衛は主水と斬り合う。

稲光がして、その光で廊下に座っているお景の姿が浮かび上がる。
彦兵衛は、お景に近寄る。
お景は目を見開き、動かない。
彦兵衛が主水の前に座り込む。

「中村はん、やっぱりあかんわ。わしの負けや。すっぱりと、やってくんなはれ」。
そう言うと、彦兵衛は目を閉じる。
「この稼業は、やるかやられるか、二つに一つだ。俺ももうちいと、長生きしてえからな。悪く思うな」。

座り込んだ彦兵衛は、主水に打ち首になる体勢になった。
「中村はん、おおきに」。
彦兵衛が主水を見上げる。

「地獄で会おうぜ」。
主水が刀を振り下ろす。
つつじに激しい雨が降り注ぐ。

晴れた翌日、政の元へ竜が行く。
加代が仕事料を出していた。
「いいかげんにしなさいよ、ガキじゃあるまいし!いつまで突っ張らかったって、一文の得にもならないんだよ!」

だが竜は黙って仕事料を貰うと、立ち去る。
政は背を向けたままだった。
「組紐屋!しょうがないねえ」。

「ようし、おめえら拾えー!」と壱が座敷で、お金をまいている。
女郎たちがキャーキャー言って、それを拾っていた。
主水がお金を長年の報奨金だと言って、お金を見せると、りつとせんが泣き出す。

高利貸しから借りたお金と断定し、せんとりつは受け取らない。
さめざめと泣き、どこの高利貸しか、お金を返してくるとりつは言った。
「そこまで言うなら、あたしが行ってきますよ」主水は、お金を持って立ち上がる。
泣いている2人を見て、「やっぱり20両ってのは多すぎたかな」とつぶやく。



物語の最初の方で主水が、中村家に帰るとせんとりつが傘張りをしているんですね。
りつは外で働くことにしたと言う。
そして主水は10年前、5年前、現在、主水の給料で替えたお米と肴を見せられる。
今の方が、少ない。

文句の言い方が、凝っているというか、マメというか。
さらに、いかがわしそうな求人広告を見せるりつ。
「深川夢屋、お金になりそう」と、りつが言うと、主水があんたには無理!と言うんです。

すると、くやしがったりつが主水に「見てなさい!」と言う。
そんなやり取りがあって、最後、奉行所からだとお金を持って来た主水を信じずに、せんとりつが高利貸しから借りたと勘違いして泣いている、ということになるんですね。
主水を追い詰めた自覚は、あるんだー。

天満屋と主水は、旧知の仲という設定。
蕎麦屋で上方の殺し屋に声をかけられるところは、「新・仕置人」の「妖刀無用」の鉄を思い出しました。
2人は、どういう経緯で知り合ったのかは、不明。

上方では仕事人がおまんまの食いあげ、みたいな理由で江戸に進出してきたようですが、上方の闇の会はなくなっちゃったんでしょうね。
うーん、江戸の闇の会もゆるいけど、上方はもっとゆるかったから。
そして、前回も闇の会が、別の殺し屋組織に狙われる話。
今回も、闇の会は上方から来た組織に追い詰められる。

闇の会の殺し屋が襲われ、政の家に逃げ込むところも、竜が襲われて政の家に逃げるのと似ている。
今回は偶然と言ってますが、政の家って良く駆け込まれる。
いい場所にあるのだろうか。
上方はゆるすぎましたが、江戸の闇の会も加代しか請け負わない殺し屋さんばっかりですもんねー、危ないですよねー。

主水が訪ねて来た時の、加代の寝方がすごいんです。
あんな風に寝てるんですか、加代さん。
戸を閉める主水に、加代は「八丁堀、戸を開けておいておくれ」と言う。

でも、主水は加代を女性扱いしない。
「ばかやろ」と言われて、恥らう加代、「あたしだって女なんだから」。
何か、この辺が加代が壱を特別扱いしちゃう理由な気がします。

その壱は雨宿りしていて、上方から闇の会を乗っ取りに来た仕事人の娘に会ってしまう。
娘は裏を見ている娘なわけですから、男には幻想抱いてないし、最初の警戒心はすごい。
ところが、娘は壱にあっさり、心を開いてしまう。
加代が壱に弱いように、壱は女性を扱うのが根本的にうまいのかもしれない。

かもめの「きつねうどんが食べたい」の一言で、壱が上方か?と反応する。
その後、楽しそうだったお景は突然、「帰る」と言い出す。
普通に恋愛なんてできる立場じゃないという自覚が蘇り、現実に帰ったみたいに。
こんな気まぐれとも映るところがまた、魅力に映るんだろうなとも思います。

上方の仕事人が来たと知らされて、お景を思い出す壱。
お景の正体を確かめる為に、石を投げてみるところ、とっさに受けてしまうお景。
その後を暗示してる。

娘に仕事を言い渡す、非情な天満屋。
しかし、お景の死んでいる姿を見て、闘争心は失せてしまう。
娘が殺されて、完全敗北を悟る。
主水の前に潔く首を差し出して、散る。

元締めらしい、そして親らしい最期でした。
壱は、仕事の前に葛藤したのか、仕事ではすぐに殺しました。
殺しの時に見つめあう2人が哀しい。

今回のかもめのことは、壱は誰にも話さなかった。
だから壱の悲しい話は、誰も知らない。
それに仕事は淡々とこなしてるから、誰にもわからない。

しかし話さないだけに、表情と目で壱の心情は見ているこちらにはひしひしと伝わってくる。
こうして彼ら仕事人は、孤独を深めていくのか、と。
壱が最後に遊んでいるシーンは、「仕事屋」の政吉より大人だったけど、壱の傷心が表れていたと思います。

仕事の連携は、見事。
鳥の軍団は善戦したけど、主水たちの方が上。
政と竜の誤解は、仕事の連係プレーで無言のうちに解消してしまう。
竜が無言の政の背中を見る。

仕事人は、言葉より行動だから、もうわかっている。
しかし、何で竜は政を誤解するのか。
長い仕事人同士の付き合いで、信頼関係はないのか?!
壱とかもめ、主水と天満屋に比べ、まだまだ子供っぽい2人です。

梅沢さんが歌う挿入歌の「万に一つもお前とは添えないものを…」が、壱が器を砕くシーンと絶妙に合ってました。
このシーンの為に作られたのか、と思うほど。

感情を秘めた壱の表情。
主水の「やるかやられるか、二つに一つ。もうちいと、長生きしてえ。悪く思うな」の凄み。
壱とかもめ、主水と天満屋、政と竜。
前回と似ている設定もありましたが、見所があって、なかなか名作だったと思います。


2011.11.11 / Top↑