幻の回と言われている「怪奇大作戦」の「狂鬼人間」。
少し前、いやだいぶ前、日本ではなく、外国関連で、これを見る機会がありました。
なるほど、見れば、この回が封印されてしまった理由はいくつか挙げられるでしょうね。

言葉の問題もあるでしょう。
放送禁止となった用語が、連発されている。
これ、消していたら話がわかんなくなっちゃう。

誤解を与える恐れもある。
現在、精神の病に苦しむ人を、ただでさえ苦しい闘病をもっとつらい思いをさせてしまうかもしれない。
それを思うと、封印せざるを得ない。
なるほど。

しかしこれは、決して、人を怖れさせようとか、そういう意図で作ったんじゃないと思います。
この回はある機械によって、人間を狂気に追いやり、犯罪を起こしても無罪にさせる女性を描いた話です。
その女性がなぜそんなことをするのかというと、彼女が夫と子供を殺されたのに犯人が無罪となった過去を持っているからです。
だけど、この話が誤解を呼ぶ恐れがあると判断する人がいるのもわかる。

なので以下、これを読みたい方だけクリックしてお読みください。
この話に関して、不愉快になるかもしれない方は、そんなつもりでは書いたのではありませんが、お控えください。
たまたまこの話を見られた人間の、単なるイチ・レビュー、感想と思っていただける方はお読みください。


... 続きを読む
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2013.05.02 / Top↑
26話「ゆきおんな」。


雪深い山奥の温泉宿に、小竹和夫という青年が、ぜんそくの為に滞在していた。
その温泉宿に足の悪い男はいないかという電話が、かかってくる。
小竹は「いない。客は自分しかいない」と答えた。

だが、その宿にはもう1人、角田彦次郎という男が滞在していた。
小竹は角田に「親父さん。またかかってきたよ。だいぶ探されているらしいな。一体何をやったんだ?」と声をかけていた。
毎日絵を描いているその男は、人が来れば逃げ回る。

小竹の質問に対し、角田の答えはなかったが、温泉で角田は小竹に頼みがあると言う。
娘に会いたい。
会ってきたらいいと言う小竹に角田は、そんなに簡単に会えるなら頼みはしないと言った。
「礼は十分にする」と言う角田に、小竹は「何かよっぽどのことをやったらしいな」と返す。

その頃、SRIのさおりは、友人の井上秋子から、差出人の書いていない招待状を受け取ったという相談を受けていた。
この招待状はもしかして、ずいぶん前になくなった父からではないかと秋子は言う。
父はずいぶん前になくなったと聞いていたのだが、最近、知らない人から電話がかかり、ずいぶんしつこく父のことを聞かれていた。
そこで秋子はもしかして、父は生きているのではないかと言う思いにとらわれていた。

さおりは秋子の付き添いに行くことに決め、SRIに協力を頼んだ。
秋子は招待状に書いてあった、那須ハイツへ向かった。
そのホテルには電話で秋子が泊まる部屋の予約があって、5日分の滞在費が送られてきたのだった。
ホテルでは、既にボーイとして野村が待っている。

到着した秋子とさおりは、いきなり「おめでとうございます。あなたがたが当ホテルの1万人目のお客様になりました」と祝福される。
だが記念品を渡したのは、三沢であり、カメラマンは的矢所長。
エレベーターをいじっている修理工は牧で、町田警部も来ていた。

秋子とさおりが通された部屋には、壁に絵がかかっていた。
野村は思わず、その絵に注目する。
絵は、山を背景に大きく浮かび上がった白い女性の絵だった。

黒メガネをかけて、ビリヤードをしている男がいた。
そこにもう1人、男が秋子の到着を知らせに来た。
報告を受けた男は「奴の娘が?」と聞き返す。

「そうだ、奴はこの那須に隠れている」と、もう1人が言う。
「娘から目を離すな。向こうから出てくるのを待つんだ」。
どうやら、秋子を見張っているようだった。

野村は、的矢所長たちに、秋子の部屋にかけられていた絵が盗まれたと報告する。
なぜなら、このホテルの部屋には全部同じ絵がかけられている。
なのに、秋子の部屋だけ、あの白い女性の絵なのだ。

立ち話しているSRIのメンバーに、従業員に扮した町田警部が「目立つ」と言って部屋に招きいれた。
町田警部に絵の話をするが、三沢にも盗まれた絵は大して価値があるものには見えない。
野村は雪女の絵が飾ってあったと言うと、町田警部はそれは犯人が絵を盗み、その雪女の絵を飾ったのだと言う。

的矢所長は秋子とさおりに電話をして、部屋に閉じこもらず、外にスケートに行くように言った。
スケートをしている秋子に小竹が近づき、さおりから引き離して連れて行く。
あわてるさおりに、的矢所長は1人で泳がせるのも手だと言いに来る。

「雪女の絵は見たかい?親父さんからのプレゼントなんだ」と小竹は言う。
驚いた秋子は「お父さんはどこにいるの」と聞いた。
「会いたいかい。でも出てくるわけにいかないんだ」。
そう言って小竹は去っていく。

ホテルの喫茶店にいる秋子に「お父さんにはもう、お会いになりましたか?」とビリヤードの男が近づく。
「そう、15年前に我々の前から姿を消した、あなたのお父さんに、ですよ」。
秋子が「知りません、父は死んでしまったはずです」と言うと男は、「それが生きている。だからあなたも会いに来たんだ」と言った。

黒ずくめの男はいきなり口調を変え、「どこにいるんだ。奴が那須に入っていることはもう、つかんでいるんだぜ」と凄む。
「あなた、父とどういう関係があるんですか」。
秋子の問いに男は「15年前から、切っても切れない縁ができているんだ。知らなきゃ教えてやろうか。おめえの親父さんはな」と言いかける。

そこまで男が言った時、修理工に扮した牧が植木鉢を割ってしまう。
ホテルの従業員に扮してやってきた三沢に、牧が「すみません」と頭を下げる。
三沢はさおりと男に近づき、「お騒がせしてすみません」と謝る。
すると、男は無言で立ち去った。

ホテルの一室で、町田警部はイライラと歩き回る。
そこへ的矢所長が、秋子に近づいた男の写真を持ってやってくる。
町田警部は、さっそく本庁に照会してみると言った。

ホテルのショーを見ている秋子とさおりに、昼間の男から飲み物が送られてくる。
2人が男のほうを向くと、SRIが仕込んでいたカメラが男をとらえる。
別室でカメラの画面を見ている的や所長の元に、町田警部が男の正体がわかったと言って来る。
15年前のダイヤ盗難事件で指名手配になっている一味の1人、野田だった。

野田、坂本、中村。
盗難事件の犯人たちの写真が見せられる。
その、最後の1人がボスと見られる角田だった。

ざっと見積もっても、盗んだダイヤの金額は4千万になる。
秋子は、実は角田の娘だった。
5歳の時、叔父に引き取られたのだ。

秋子とさおりがいるテーブルに、野田が近づく。
2人が退席しようとすると、野田は秋子にピストルを向けた。
見ていた町田警部が助けに入ると、野田は逃げた。

だが外に逃げた野田は、撃たれて倒れる。
中村が撃ったのだ。
坂本に向かって中村は、「野田がヘマをやったからだ」と言って逃げる。

混乱の中、小竹が秋子に近づき、「雪女から目を離すな。そう言ってるんだ」と言う。
的矢所長が中村を取り押さえようとしたが、中村に殴り倒されてしまう。
駆けつけた三沢が中村を追い詰めるが、的矢所長に気を取られた瞬間、フラフラしながらも中村が逃げ出す。

部屋で壁に掛けられた絵を見つめていた秋子は、絵の雪女が母親の顔であることに気づく。
どうしてこんなことをしなければならないのか?
15年前の秋子の記憶は家にお客が来て、奥の部屋で怒鳴りあう声と破裂するような音がした後、母親がなくなったこと、そしてお葬式だけだった。

温泉宿で小竹が角田に、「『そいつ』を見せてもらいたい」と言う。
しかし、角田は「残念だが『それ』はここにない」と言った。
自分を狙っている男の目的は、数千万円はするダイヤだ。
それを娘に渡してやりたい。

謝礼を心配する小竹に角田は、秘密の鍵は娘に渡してあると言う。
だから、娘がそれを見つけ出すまで、守ってやってほしい。
謝礼はその中から、娘がするだろう。
「ようし、一割もらうか」と笑う小竹の後姿を、角田が苦々しい顔で見つめていた。

夜明け、ホテルの部屋で、秋子はふと目覚める。
すると、雪女の絵が溶けていくのが見える。
絵が溶けてはがれると、その裏には地図が描いてあった。
秋子は驚きながらも、地図を手に部屋を出た。

温泉の源泉の湯が流れる沢で、秋子は小さな袋を引き上げる。
袋の中には、ダイヤがぎっしり入っていた。
だが秋子に中村が近づいていた。
気づいた秋子が後ずさりした時、小竹が現れ、中村を殴り、「父親には後で必ず会わせてやるから早く逃げろ」と叫ぶ。

逃げていく秋子の姿を、影から角田が見ていた。
中村から秋子を逃がした小竹が、角田に「親父さん」と近づくと、角田はいきなり小竹を撃った。
小竹は「親父…、俺が信じられねえのか」と言う。
「当たり前だ。15年前、わしもあの宝石を見て、仲間を裏切った。お前だってきっと、あれを見りゃ」。

「ばかやろう。もう1人、てめえの仲間が…。もう1人」。
「えっ」。
そう言うと小竹は倒れた。

角田は秋子を追う。
雪原の中、秋子は今度は坂本に追われていた。
かけつけたさおりとSRIが秋子の行方を聞くと、小竹は「教えるもんか…」と言って事切れた。

秋子は追ってくる坂本に向かって、ダイヤを投げつけながら逃げた。
「ああっ、よせ!」
秋子は母の名を呼びながら、雪原を逃げる。
その時、女の笑い声が響き、空一杯に白装束の雪女が現れる。

空一杯に浮かび上がった女を見て、坂本は悲鳴をあげながら逃げる。
だが今度は女の目が空一杯に浮かび、坂本を追ってくる。
パニックを起こした坂本に向かって、長い黒髪が伸び、笑う口元が空一面に浮かぶ。
女の笑い声はどこまでも追いかけてきて、坂本は空一杯に広がった女から逃れられない。

逃げる坂本は、ついに滝の上から転落してしまう。
雪女はそれを冷たい目で見届けると振り返り、秋子が倒れている草原に戻る。
そして優しく秋子を見下ろすと、消えてしまった。

滝の下で倒れている坂本の元に、町田警部と的矢所長がやって来る。
坂本を見た町田警部は、「やられた!拳銃だ」と言う。
その時、銃声が鳴り響く。

雪原を走った町田警部は、倒れている角田を見つける。
角田の手から少し離れて、拳銃があった。
自分で自分を撃ったようだった。

さおりたちに発見された秋子は「雪女」と言った。
「雪女が私を助けてくれたのよ。見えたでしょう?」と秋子は言う。
さおりが「しっかりしてよ、秋ちゃん!」と言った。
しかし秋子は言う。

「お父様が言っていたのは、このことよ。雪女が私を守ってくれたの」。
そして、秋子は目に涙を溜めながら言った。
「私のお母さんよ!」
的矢所長が「そう。秋子さんを守ってくれたのは雪女だ。君とそっくりなお母さんだった」と言った。

牧は雪女の現象を、こう説明した。
ある気象条件が重なると、自分自身の影が雪のスクリーンに映し出されることがある。
「雪女の現象ってのは、だいたいそんなようなものなんだ」と言う。

「しかし現在は、この広い原っぱにばらまかれたダイヤモンドを探し出すことのほうが…、はるかに難しい」。
「その通りだ」。
三沢と野村と、牧が「ふう」とため息をつく。
3人は草原をダイヤを探しながら、歩いていた。



角田は、小松方正さん。
やっぱり、この方がやると味がある。
ええと、描写はなかったですが、最後は小竹を殺し、坂本を殺した後、自殺したと考えていいんでしょうね。

犯罪者の父親がいてはいけないと思って、娘にダイヤも渡したし、思い残すことはないと死んだのかな。
だけどあのダイヤ、返さなきゃいけないですよね。
秋子が貰うとも思えないし。
母親についてもちらっと秋子が語ってますけど、ダイヤの争奪で家で撃たれて殺されたと解釈していいんでしょうか。

角田は、あの雪女の絵に妻を描いていた。
秋子を守る為、出てきたとすると、最後に出てきたのは、雪女?
それとも秋子の母親?
秋子の母親が雪女だった?

牧のいう通り、ブロッケン現象っていうんですか?
あれが起きただけだったんでしょうか。
この話し、わからないことが結構あるんですが、雪の中の幻想的な物語という受け止め方をして、深く考えてはいけないんでしょうか。

しかし、温泉の描写はさすがに寒そうな雪景色でしたが、最後の草原では雪女が現れるほどの雪はなかったような。
あれ、本来はもっと雪景色の中で撮影するはずだったんでしょうね。
それから、さおりが秋子の相談に乗っている時、バックに「ブルーライトヨコハマ」が流れます。
時代を感じさせて、いいです。

さて、これで「怪奇大作戦」も終了。
これが最終回。
別に派手な事件を起こせとかいうんじゃないんですが、この話、途中にあったような、日活アクション風味の話に思えました。

これまであれだけの秀作、名作を出した「怪奇大作戦」の最終回がこれだと思うと、あんまり納得が行きません。
じゃあ、どの話が最終回なら良かったのかと聞かれると難しいんですが。
犯罪は起きても根底には愛情と不安があって、最後にやっぱり愛情は変わらなかったということで、かなり前ですが、3話みたいな話が良かったんじゃないか。
でも、あんまり後味が悪くないということで、やっぱりこれなのでしょうか。

1つ前の「京都売ります」が、あまりにも美しく哀しい一編だからかも知れませんが、どうも物足りない。
まあ、明るくエンドになりましたが、この最終回の後、もう1話、あってもいい気がしてしまう。
「京都売ります」が最終回では寂しい、という印象になるのかな?


それにしても「怪奇大作戦」が昭和40年代に放送されてから、40年の月日が流れたんですね。
科学はこの時とは比べ物にならない、いや、想像の上を行く発達さえしてます。
時代も、風景も変わりました。

でも「怪奇大作戦」は、時代を感じさせながらも、色褪せて見えない。
情念や哀しみや怒り、憎しみや愛情といった人間の感情は、今も変わらないから。
理由なき犯罪などもあったけど、ここで描いた闇は現代の方がより深くなっているようだから。

愛憎や欲望が起こす犯罪でも、理由なき犯罪でも、犯罪を起こしているのは人間。
その人間を描いているから、「怪奇大作戦」は今も鑑賞に堪えるドラマになっているのだとわかりました。
SFでも、時代劇でも、現代劇でも、人を描けているものは残りますよね。

そして、この番組がテーマにしたものは古くなるどころか、現在はまさにその通り。
いや、それ以上の現象が起きています。
すごい番組です。

岸田森さんも、ほんと、堪能させていただきました。
後に個性的で強烈な悪役で印象を残してくれた岸田さんですが、本当に素敵な良い俳優さんです。
ちゃんと悪役に回ってくれていたんだなあ、と思いました。
岸田さんに対して、悪役の印象が強い方には、ぜひ一度、見ていただきたい。

見られて良かった~!
最終回が「ゆきおんな」ですから、雪の季節に終わらせることができて良かった。
そして最終回は、「ダイヤモンドは永遠に」ではなく、「人の人を想う心は永遠に」でした。
「怪奇大作戦」も永遠に!


2012.02.17 / Top↑
25話「京都買います」。


京都の町。
仏像が次々消えていく。
SRIが捜査に乗り出す。

消えた仏像は全て、藤森教授が研究していた。
牧に藤森教授は、仏像が消えたことを残念だと思う一方、ホッとしていると言う。
理由を尋ねた牧に藤森教授は言う。

教授は「考えても御覧なさい。近頃の京都の変わりよう」とため息をつく。
「古代の仏像が、安心して住めるところでは、あらしまへん」。
「科学者の先生にしては珍しいご意見ですね」。

研究室にあった仏像の一部を手にした牧は、「それ触ったらあかん!」と言われてあわてた。
その時、1人の女性が入ってきた。
「いらっしゃいませ」。
「お邪魔してます」。

教授は彼女を助手の須藤美弥子と、紹介した。
「彼女も仏像の美しさに心を奪われた1人です」。
仏像を教授に言われて運び、丁寧に扱い、微笑む美弥子を見ていた牧に思わず笑みが浮かぶ。

その日、さおりに誘われたディスコで、牧は踊りにも加わらず、うんざりしていた。
牧がフロアを見ると、美弥子が踊っていた。
美弥子は1人の青年に、「ねえ、あなたたち、京の都を売らない?京の都を売ってくださいな」と話しかけていた。
「俺の町やあれへんもんな」と笑う青年に「京都の市民なら売る権利があるわ。どお?ねえ、思い切って売らない?」

「姉ちゃん、一体どないすんのや」。
「ほんまやな」。
だが若者は笑って、「ようし決まった、京の町売ろう!」と言う。
「じゃ、これにサインして」と、美弥子は若者達に署名をさせた。

牧はディスコの入り口で美弥子に声をかけると、美弥子は外へ走り出した。
「君!京都の町を買うって一体?」
質問する牧に、「誰も京都なんか愛してないって証拠です。それだけのことです」と言うと、美弥子は走り出した。
「待ってくれ!」

美弥子を追う牧だが、雲水たちの中に入った美弥子を見失いかける。
雲水の持つ鈴の音が響く。
やっと美弥子に追いついた牧は「京都の町を買おうとおっしゃてましたね。あれはどういう意味なんですか」と聞く。
「買ってしまいたいんです。仏像の美しさをわからない人たちから、京の都を」。

歩きながら牧は聞く。
「買ってどうなさるんです」。
「仏像の美しさをわかる人たちだけの都を作りたい」。

「何ですって?」
「そんな気持ち、あなたにおわかりになりまして?」
「いや、僕は」。

「おわかりにならないでしょうね。それでいいんです」。
「それでいい?」
「ええ。仏像は私だけのもの。そう思いたいからです」。

京都の町を見下ろしながら美弥子は牧に言う。
「御覧なさい、この風景を」。
「誰がこの都会を、1千年前、美しい文化の栄えた町だと信じられましょう」。

「大学の藤森先生の影響ですか」。
「牧さん。あなたご自身はどうお考えですか」。
牧はふと笑いながら、「僕は、仏像より現実に生きた人間の方が好きかもしれない」と言った。

茶店に行った美弥子は牧に、「初めてですわ、わたくし。男の方とこんなところへ来たのは」と言う。
「大学の研究室で、仏像ばかりながめていないで、たまにはこんなところに来るのもいいもんでしょう?」
「でも私、それで幸せなんです…」。
しかし美弥子は微笑んで「わたくし、生きている男の方と話をするのも悪くない…、今はそう思っていますわ」と牧を見つめて言った。

そしてまた、事件は起きた。
町田警部は、仏像が消えた寺には、人が入った気配はないと説明を受けていた。
まさか仏像が1人で歩き出すわけはない。
牧の耳に、僧侶が持って歩きながら鳴らす鈴の音が入ってくる。

思わず走り出した牧は、雲水の後を追う。
雲水は門から出て行き、後から違う雲水も歩いていく。
「雲水…。そういえば、美弥子さんの周りにもいたな」。

野村が来て、「牧さん、何考えてるんですか」と聞く。
「仏像が恋人だと言った女のことさ」。
牧の動かない視点に、驚いた野村が牧の前に手をかざす。

三沢が奇妙な機械を見つけた。
それは発信器だった。
防犯設備じゃないのかと言う町田警部だが、的矢所長は大阪大の山崎教授の所に行って、カドニューム光線について聞いてくるように言う。
カドニューム光線とは、物質を伝送させることができると言われている光線だった。

牧と美弥子は、連れ立って歩いていた。
「理由を話してほしいんだ。君が京都の町を買おうと言う理由を」。
「申し上げたはずです。私は古いまんまの京都を、そこに生きる仏像を愛していると」
「昨日の夜、また一つ仏像が消えた。あれはどういうわけなんです」。

美弥子は立ち止まると、表情をこわばらせる。
「美弥子さん。話してください」。
しかし美弥子は「知りません。私、何も」と言うばかりだった。

歩き出した美弥子に牧は「待ってください」と言う。
「さよなら」と駆け出す美弥子を、牧は追って止める。
牧と見詰め合った美弥子は目を伏せ、牧は美弥子を捕まえた手を離す。
「美弥子さん…」。

「許してください。私は仏像を愛した女なんです」。
美弥子はそう言うと、牧の前から走っていく。
牧は美弥子の後姿を見ていた。
遠ざかる美弥子の後ろに、雲水たちが歩いていく。

その夜、三沢はSRIで食事している中、カドニューム光線の原理を説明していた。
様子がおかしい牧に、三沢がどうしたのか尋ねる。
するとさおりが「牧さんは恋をしている。あの京都の町を買って歩いている人に」と言う。
「うるさい!」

牧は怒鳴ると、ばたりと後ろに倒れる。
SRI全員が驚く。
的や所長が京都府警が調べたところ、どうも仏像が消えた寺に必ず美弥子が訪れていたと話す。
では美弥子が発信器をとりつけたのか。

だがそういう証拠もないらしい。
牧の頭の中に、美弥子の姿が浮かぶ。
同時に雲水の鈴の音が響いた。

美弥子はまた、法性寺で仏像を見ていた。
仏像を見上げる美弥子の目から、涙が流れる。
牧はそれを外から見ていた。

美弥子は立ち上がると、部屋の隅に歩いて行く。
外に出た美弥子に見つからないよう、牧は身を翻す。
すぐに寺の中に入り、美弥子が何かをした柱をさぐると、機械が取り付けられていた。

牧は京都府警に行く。
「どうしたんですか。まるで恋人にでも振られでもしたような顔してますね」。
牧はその言葉には応えず、機械を地図の上に出した。
「これは…、どこで見つけたんだ!京都府警が手分けして朝から探していたものを!」と町田警部が驚く。

牧は哀しそうな笑みを浮かべた。
「すごい!いやあ、さすがに牧くんだ」。
「美弥子さんが、法性寺に取り付けたんです」。
「じゃあ、やっぱり彼女が」。

「そうか。早速手配しよう」。
「待ってください。そんなことをしたって、彼女が自白するかどうかわかりませんよ。それより…」。
「今夜の発信を待ってみる?」
「そうすれば、受信装置のある場所が突き止められます」と牧は言った。

通信は夜の12時らしかった。
12時。
藤森教授と美弥子が並んでいた。
その後ろには、経を唱える雲水たちがいる。

やがて目の前が光り、仏像が転送されてきた。
藤森教授は「見てごらん」とかたわらの署名のことを話す。
「京の町を売ってもええという市民たちのサインや」。

「売っちゃおう、こんな町」という若者たちの声が蘇ってくる。
「こんだけ仰山の人たちが、この町の持つ文化に関心がない」。
「先生、作りましょう」と美弥子が言う。
「1日も早く、この仏像たちの町を」。

「この仏像たちが生まれた場所に、仏像たちを帰してやりましょう」と藤森教授が言った時、町田警部たちが踏み込んだ。
警察の背後にいた牧を見た美弥子の唇が震える。
「牧さん…、あなた…」。

藤森教授は「さあ、逮捕してください」と言った。
美弥子は牧から目をそらす。
藤森教授に手錠がかかる。

「先生!」と美弥子が呼ぶ。
「かわいそうに仏像たちはまた、騒音とスモッグの町で観光客の目にさらされて…。運命。運命かも知れんな、それが」。
教授の声は笑っていた。

駆け出した美弥子を、牧は追った。
「美弥子さん!」
牧は美弥子の肩をつかんで、止める。
「美弥子さん」。

美弥子の前で、藤森教授がパトカーに乗せられる。
「美弥子さん!」
「仏像以外のものを信じようとした…、私が間違っていた。それだけのことです」。

美弥子はそう言うと、牧から目をそらし歩き出す。
夜の中、美弥子が遠ざかっていく。
牧はじっとそれを見ている。

1人、京都の町を歩く牧。
美弥子と行った茶店に行き、ふと後ろを振り返る。
雪がちらつくが、誰もいない。
牧は1人、京都の町を歩き、寺を巡る。

ある寺に入った牧は、庭に1人、尼僧がたたずんでいるのを見た。
「ちょっとお尋ねしますが」。
牧の言葉に尼僧が振り向く。
尼僧の顔は、美弥子だった。

牧の口が開き、「美弥子さん…」と言った。
尼僧は目を伏せた。
牧はそれ以上、近づけなかった。
「正連尼と申します」。

立ち尽くす牧に尼僧は言う。
「須藤美弥子は、一生、仏像とともに暮らすとお伝えしてくれとのことでした」。
牧は視線を落とす。

「きっと、その方がお幸せだと思います。どうぞ、貴方様もお忘れになって下さいませ」。
何も言えず、牧の指が唇をなぞる。
牧はコートの前を合わせて、立ち去ろうとした。

振り向いた牧の口が、あんぐりと開く。
はらり、と尼僧の頭巾が落ちる。
頭巾の落ちた尼僧の姿は、仏像だった。

牧が思わず、額に手を当てる。
雲水の鈴が響く。
仏像の目から涙がこぼれる。

牧が顔を覆う。
都会の喧騒が戻って来る。
牧は耐え切れず、走って、寺から出て行く。

工場の吐く煙。
車の音。風にはためくビニール。
塔の横に立つ、塔より高い建物。
淀んで流れる川。

雪が降っていく。
新幹線がけたたましく走る。
空に伸びる煙突。
だが、そこは確かに京都の町だった。



これは、完全に牧さんと仏像を愛した女性との、実らなかった恋物語。
子供向けじゃないというよりも、完全に大人に向けて作ってるのでは。
いや、これ、大人の恋愛ドラマじゃないですか。

30分に、事件とこの悲恋物語が、不自然でなくちゃんと収まっているのにも驚き。
研究室で美弥子の微笑に目が留まり、次に出会った時、美弥子に惹かれていく牧の表情。
ここの岸田さんの演技が実に自然で見事だから、牧の心の動きが手に取るようにわかって、30分枠でも不自然じゃなくしているのかも。

恋する牧さんは、さおりの言葉に、珍しく余裕がなく怒ってます。
そして牧さんは美弥子の犯罪を目にすると、まるで失恋したかのような、雨にぬれた犬のような表情になります。
警察の後ろにいるところを美弥子に目撃されると、哀しそうなやり場のない顔。
岸田森さんの繊細な演技が堪能できます。

雲水は、藤森教授の考えに共鳴していた人たちなんですね。
この雲水の演出も美弥子が歩くと、雲水に囲まれて牧が美弥子を見失うなど、幻想的です。
鈴の音が効果的に、あちこちの場面で流れます。

美弥子の心が仏像以外にも、牧という生きた男性に開いたのもつかの間。
仏像以外を信じた自分が悪いと言われ、止める術がない牧。
ここでひっかかるのは、仏像を盗む為の、機械を取り付けた美弥子はパトカーに乗せられないのか、ということ。

心情的には、犯罪を犯している気など、全然なかったでしょうが。
美弥子は無罪放免?
その後、1人で美弥子と巡った京都を巡る牧の姿は傷心旅行といったところ。
ところが…。

美弥子だった尼僧に出会い、驚き、そして言葉を失う牧。
以前にしたように今度は手を引いて、引き止めることさえできない。
すると、もう一つ、最後にどんでん返し?がありました。

はらりと落ちた頭巾から現れたのは、美弥子ではなく青銅の仏像だった。
それだけじゃない。
仏像は涙を流す。

あの仏像は美弥子?
美弥子は死んじゃったんでしょうか?
だけど仏像になって、最後に牧にだけは会いに来たのでしょうか。

それとも愛した仏像に、美弥子の心が乗り移って、牧に別れを告げた?
いや、全ては美弥子を失った牧が見た哀しい幻影?
わからない。
ひとつ、わかっているのは、2度と会えないということ。

それを悟った牧の、絶望のポーズ。
自分がそうしてしまった、身を切るような哀しさに走り去るしかない牧。
ここで、町の喧騒が戻ってきます。

それまでは、静けさの中にいたことがわかります。
あまりに静かだったことが、喧騒が戻ってわかる。
もしかして、牧は現実とは違う別世界にいたのではないか?と思ってしまう。

そして、京都の町とは思えない工場、道路、建物が映る。
美弥子の嘆きが、響いてくる。
科学者として先端を行く牧と、取り残されたもので町をひっそりと作ろうとする古きものを愛した女性。
2人は正反対ゆえに惹かれあい、正反対ゆえに結ばれない。

もう戻らない古都。
こうして日本は進んでいく。
古都・京都を舞台に高度成長期に製作された、古い伝統が失われる代わりに近代化する日本を表現した、まさに「怪奇大作戦」といった作品。

牧さんにとって、京都は切ない思い出の町になってしまった。
生涯、足を踏み入れないかもしれないほどの。
鈴の音、降る雪。
まるで、一編の映画のような、美しく哀しい牧の恋の話でした。


2012.02.14 / Top↑
23話「呪いの壺」。


骨董品の壷を鑑賞している老人がいた。
壷の蓋を取り、中を覗き込む。
静まり返った中、外から鳥の声が聞こえる。

どこからかセミの鳴くような、ジリジリとした音が聞こえてくる。
その途端、老人は目を黄色く光らせ、その場に倒れた。
目の周りを黒く焼け焦げさせた老人の傍らには、壷が転がった。

SRIの的や所長と三沢、牧、野村の4人と町田警部はこの事件が起きた京都に来ていた。
京都府警の解剖医は、同様の事件が5件起きているが、被害者5人が5人とも神経線だけを真っ赤に焼け焦がしていると言う。
他には何の異常もないが、目の周りを火傷しており、神経は完全に破壊されている。
的矢所長はその報告を聞くと、遺伝の可能性を聞くが、それは低いと言われる。

帰りかけた的矢所長と三沢に、声をかける男がいた。
「市井商会」という、骨董品店の従業員・日野統三だった。
被害者が全員、自分の店の客であることが気になると行った統三だが、突然、激しく咳き込んだ。

鐘の音が鳴り響く京都の町。
的矢所長と三沢、牧と野村はは統三に案内されて、市井商会へ行く。
店主は京都の骨董好きの金持ちとはほとんど、取り引きがあると言う。
一番後ろを歩いていた統三が「警察に協力するのは、私らの常識です。それに時には偽物事件もあることですし」と言うと、店主が鋭い目をして振り返った。

その時、電話が入り、客の1人が死亡したと店主の娘が伝える。
現場に急行するSRIと付き添おうとする店主に統三が突然、実家に帰らせてもらうと言い出す。
この忙しいのにと店主が文句を言うと、忙しいのは事件で店ではないと統三は去っていく。

町田警部は当分の間、店を休むことを提案する。
牧はひそかに三沢と野村に、統三の後をつけるように言う。
何かある。

町を歩く統三に、先ほどの店主の娘・信子が話しかけてきた。
「あんたとうちのお父ちゃん、一体何があったんえ?それと今度の事件、何か関係があるの?」
「そんなことは、あんたが心配せんでもええことや」。
「いいえ、知る権利があります。あんたかて、うちに話す義務がある。そうやろ?」

すると統三は「こんな肺病病みに将来のこと、任せて失敗やったな。え?信子はん?」と言った。
「藤堂さん!病気のことなんか気にしてへん。うちはあんたが好きなんや。そやからこの頃、お父さんとあんたの仲が変なのが、とても気になるのや」。
「こんど、家においで。それが一番ええことや」。
そう言って振り返った統三は、尾行に気づいたようだった。

被害者宅で壷を見た的矢所長は、調べるには壷を割ってもらうしかないと店主に言われる。
的矢所長の見たところ、中国の唐時代のもので、店主が言うには8百万するとのことだった。
亡くなられた方に売られた壷を集めてくださいませんかと的矢所長に言われ、店主は苦々しい顔を隠せなかった。

汽車で実家に戻った統三に、信子はついてきていた。
駅で目を閉じ、ほくそえむ統三に信子がどうしたのか聞くと、統三は「いや、別に」と返事をする。
実家に入った統三に父親は「何でこんなところにお嬢さんを。ここは市井の旦さんしか…」と言うが、統三は「そんなことかまへん。信子さんはみんな知っているさかいにな」と言うと父親は「ほうか」と黙った。

そして「あれ、もう、売れたんか?」と聞く。
「あれはまだや。市井の親父は元大臣の川上洋三に売りつけるつもりらしいけど、ちょっとした騒ぎで開店休業ってとこや」。
「騒ぎ?何の騒ぎや?わしが作ったこと、バレかけたんか?!」
「そうやない。お父の腕は確かなもんや。唐時代、奏時代。客はみんな騙されとんのや」。

「それなら何や?」
「お父の壷を買うた金持ちが、次々と死んでいきよる…」。
父親が驚く。

「なあ、お父。もう市井の親父への義理は、ちゃんと果たしたはずやないか。いい加減にお父の名で、壷を発表してもええのんとちゃうか?」
父親が目を見開く。
「市井の親父なんて呼び捨てにする奴があるかい!統三よ、それはそうはいかんのや。わしんとこは爺さんの代から市井家には面倒を見てもろうとるんやからな。今さら勝手なことは言えん。なあ、信子はん?見てみい、ええのができたぞ!」

父親が、見事な青磁の壷を見せる。
「この壷はお父とは関係ない、どっかの金持ちの家に飾られるわけだ…」。
統三が壷を撫ぜる。

信子の市井の家は、代々統三の家を偽物作りに使ってきたのだ。
もし統三が体が丈夫部だったら、まもなく父親の後を継ぐはずだった。
「それであんたはうちを…」と信子が言うと、統三は信子の顎をつかみ「それと言うのも、あんたと一緒になって偽物をどんどんはびこらせ、成金どもを心の底から笑うてやりたかったからや!」と言う。

統三はそこまで言うと、咳き込む。
信子は震えながら、顔をそらす。
「しかし、それがどうや!偽物はいつまで経ってもバレへん。バレへんどころか、有名な先生方は珍しい掘り出しもんと保障し始めてしまった。このまま言ったら、親父の名は永久に出ずじまいだ。こんなことがあって、ええわけはない。許せん。絶対に許せん」。

「それであんたは…」。
「僕は死ぬまでに一切合財のけりをつけたかったのや。代々自分の名をつけられん壷を作らせてきた市井家を、ぶっつぶしたいのや!」
そしてまた、統三は咳き込む。
「親父の壷を買うた金持ちはどんどん死んで…。店は潰れる。こんな気持ちのええことはあらへん」。

信子を連れて、統三が何かを掘って取り出している。
それは黒い紙に包まれた。
それを見ていた野村は「何ですかねえ?黒い紙なんかに包んで」と訝しがる。

市井商会では、牧が6つの壷を調べ、6つとも同じ砂が入っていることを突き止めた。
聞かれた市井は、みながみな、すぐに売れるわけではない。
長いこと土蔵の中に置いたりしているので、その土だろうと答えた。

三沢と野村が帰ってきたが、市井を見て、野村が言いにくそうに的矢所長に耳打ちをした。
壷を調べている牧の肩を、三沢が抑える。
耳打ちされた的矢は市井に、ちょっと席を外してくれるように頼む。
市井は望むところだと言って、壷を壊さないように言うと出て行く。

三沢と野村が、統三が埋めていた黒い紙に包まれていた砂を見せる。
砂は白い紙に包まれ、日が当たった。
その時、的矢所長が目を抑える。
牧が「危ない!」と叫ぶ。

「大丈夫ですか!」
「大丈夫だ。しかし一体何だ、この砂は」。
牧が砂を調べる。

機械が、ビリビリと音を出し始める。
牧が「リュート線だ」と言う。
「こんなところに置いておいては、危険ですよ!」

砂を紙で覆う牧に野村が「牧さん、黒い紙はありませんか」と言う。
「黒紙?」
牧が出した黒い紙に覆うと、機械の音が止んだ。

この砂のような物質は太陽光線に当たると、リュート線を出すのだった。
「何か聞いたことがあるぞ」と牧が記憶を手繰る。
太陽光線に当たると、その物質の中にあるリュート光線を出しつくす。
そのリュート線が、人体にどのような影響を及ぼすかはわかっていない。

すると、京都府警から電話が来た。
また犠牲者が出たのだ。
壷はめったに光の中に出さないが、老人は良く見ようとして光の中に持ち出した。

普段ならわずかな光が蓄積されて、爆発するには長い時間がかかる。
「それがどうして」と的矢所長が言う。
リュート線が外部に放射される時、毒物の上薬を伴う。

「まずやられるのが…」。
牧の言葉を受けて、的矢所長が「目」と言う。
その時、青磁の壷を見た野村が三沢に見覚えがありませんか?と聞く。
統三の実家で見た、あの壷だった。

「そうだ!壷が問題なんだ!」と牧が叫ぶ。
「開店休業と言われたのは、嘘だったんですか!なぜ、この壷を売ったんです」と町田警部が市井に詰め寄る。
「そんなことはしません。何を言われるんですか」と市井はごまかす。

「この壷に見覚えはありますか」。
町田警部の追及に「それは」と市井が口ごもった時、牧が壷を割ろうとする。
市井が「この壷は唐時代の有名なものなんですよ!」とあわてる。

町田警部は「牧くん!かまうことはない!やりたまえ!」と叫ぶ。
牧が壷を粉々に叩き割ると、市井は悲壮な顔つきで「あんたがたという人は…」と声を詰まらせる。
だが町田警部が「うるさい!これはあんたのとこの日野という奴の親父が作った、偽物だろう!」と言うと、市井は唇を結んでうつむく。

土蔵で信子が統三に「統三はん!あんた、狂わはったんか!」と叫ぶ。
「どうせ、SRIに見破られる。俺は、ひとつでもようけ、売ったるで」。
「統三はん」。

信子が叫ぶ中、統三は黒い粉を壷の内部に塗りつけていた。
統三が激しく咳き込んだ時、土蔵の戸が開き、町田警部が殺人容疑で統三を逮捕すると言った。
一瞬、統三は笑い、白い小さな壷を手に立ち上がった。

「こんだけのリュート物質が、いっぺんに太陽に当たってみろ。みんな死ぬぞ!」
町田警部と三沢が、陰に身を隠す。
統三はリュート物質が入った壷を手に、降りてくる。

「捨てろ!捨てるんだ」。
「事情はみんな、わかっているんだ」。
だが統三は走りだし、「思うたより、早うかぎつけましたな。待ってましたわ」と言うと、黒い大きな紙を筒状にして、壷のリュート物質をその中に開けた。
「これで僕も犬死しないですむ」。

京都の町を統三が逃げ、町田警部と三沢が後を追う。
走った統三は咳き込み、寺に逃げ込む。
「これでいいのよ。これで…、思い通りだ!この寺は本物か、偽物か。わしの道連れやで!」

激しく咳き込む統三。
リュート物質が宙に舞う。
統三の目が焼きつき、倒れた。

宙に舞ったリュート物質で、寺が火を噴く。
寺の屋根が見る見る、炎に包まれ、炎上して崩れていく。
あっという間に大火災を起こす寺。

統三が掘り出していた土地が、掘られていく。
「何でもここは、旧陸軍の秘密研究所があったところです。リュート物質は、ここで開発されたらしいですね」と三沢が言う。
終戦の年、このあたりは山崩れで埋もれた。
「戦争のたびに科学が進歩する、か」と的矢所長が言う。

掘り出し作業を見ていた統三の父親が家に駆け戻り、叫びながら壷を割っていく。
泣き叫びながら、狂ったように壷を割っていく父親。
後を追いかけてきた的矢所長と町田警部は、その様子を黙って見つめていた。



なんだか、初期の頃の雰囲気が戻ってきたような今回。
旧陸軍の秘密研究所なんて設定がすんなり受け入れられるのは、この時代ならでは?
昔は敗戦間近いナチスが死体を生き返らせる研究をしていて、その結果、現代に蘇ったミイラが襲ってくる…なんてマンガも読みました。

すごいのは、あっという間に炎上するお寺。
壁が火を噴き、屋根が炎に包まれ、すぐに炎の中に。
そして圧倒的な炎の勢いの中、すぐに崩れていく。
何か、まるで、怪獣に襲われたみたいに圧倒的な力の前に崩れ去るんですが…、どこのお寺ですか。

すごいですね。
合成?
本当にお寺を作って、燃やしたみたいに見える迫力なんですが。
まさか、本当に燃やしてないですよね?

燃え上がるお寺を、門まで退避した町田警部と三沢、野村が見つめているんです。
本当に炎上しているとしか見えないものすごい迫力。
最近でもちょっと、こんな建物の炎上シーンは見ていないほど。
タイトルを「炎上」ってつけたいほどです。

日野統三役の俳優さん、繊細な屈折した病気の青年があってます。
ですが、あんまり見たことがない俳優さん。
金持ちと市井の主人に対する空しい復讐心を、最後の自滅に至るまで見事に表現しています。
あの歪んだ笑み。

市井店主役は、「必殺」では「仕置屋稼業」で沖雅也さんと中村敦夫さんに同時に仕留められた難敵・北村英三さん。
「仕舞人」でも憎々しげな悪役でした。
迷惑そうな顔、壷を壊されて泣きべそになる表情、その後のガックリした表情と、実にわかりやすい強欲店主ぶりです。
いい俳優さんですねえ。

娘・信子役は、度の厚い黒ぶちメガネをかけていますが、メガネの下には綺麗な瞳。
野暮ったさを出していても、整った女優さんだなあと思います。
子供向け番組のせいか、統三との関係は暗示するだけですが、おそらく計略を胸に統三が近づき、あまり男性に縁がなかった娘は本気になってしまったという経緯を感じさせます。

リュート物質を手に統三が逃げた後、思いつめた顔でうつむいていたので、残ったリュート物質で死んじゃうとか、家を燃やしちゃうんじゃないかと心配しました。
そんなことしなくても、もちろんもう、あの市井商会は社会的信用を失って終わりなんでしょうが。
好きな男性には利用されただけと言われ、彼も代々続いた暖簾も好きな男性も失った娘がかわいそう。
最後まで、彼女は顧みてもらえないですし。

腕は立派なのに、代々の恩があると言って、偽物作りと影の存在であることに満足し続けた父親が、息子の悲壮な決意を知って、全ての壷を叩き割るラストシーン。
あの後、あの父親も、どれほど自分を責めるのだろうと思いました。
全てが明るみになり、寺を道連れにした統三ですが、彼が健康で強い体を持っていたら、もっと違うやり方があったのでしょうか。

戦争のたびに科学が進歩するというセリフが最後に出てきましたが、今はもう、当時からは信じられないところまで科学は進歩してきました。
その恩恵を私たちは受けてもいるわけですが、そろそろやめないと人類が危ないんじゃないかと言われて久しい。
この時代からずっと、思われていたことなのでしょう。

犯人・統三の心情が胸に迫る。
統三、そして信子の心を投影したような、京都の町の風景。
情感たっぷりで、人間ドラマとしても素晴らしい回でした。


2012.01.31 / Top↑
22話「果てしなき暴走」。


深夜の東京。
交通量は一向に、減らない。
一台の赤いスポーツカーが走っている。

中にいるのは、大きな棒つきのキャンディを持ったタレントの眉村ユミと、マネージャーだった。
吐き出される白い排気ガス。
後続の車の前が、煙って見える。

やがて後続の車はクラクションを鳴らし、暴走を始める。
2台の車が接触しながら走り、ついに1台が丘に乗り上げて事故を起こす。
次々、後続の車が突っ込み、事故を起こして炎上する。

翌朝の新聞には、この三重衝突の事故が出ていた。
今は、半径50kmのところに、200万台の車がひしめいているのだ。
「この車が一斉に暴走したら、怖いだろうな」と牧が言う。
中古の車を買おうとしていた野村は、牧の話を嫌がる。

翌日、三沢はSRIの車・トータスでガソリンスタンドで給油していた。
それを見ていたのは、まともそうではないカップルだった。
「いただいちゃおうよ」と隙を見てトータスに乗り込むと、走らせて行ってしまう。

野村は言った通り、中古車を買っていた。
一度事故を起こしている車だからと、破格の金額で手に入れることができた。
そこへ三沢から車を盗まれたという連絡が入り、野村は急遽、SRIに戻ることになった。

とにかく、事故になる前にトータスを取り戻さなければならない。
カップルの女は「気持ちいーい」と上機嫌で、2人して童謡などを歌っている。
無線で牧が必死に、三沢の車に乗り込んだカップルに呼びかけている。

牧の言葉に女が「うーん、ムードないわねえ」と言う。
「その車はSRIの車だ」と言う言葉を聞くと、「SRIだって。かーっこいーい」と叫ぶ。
無線に笑い声が響く。
「君達!悪ふざけは止めて、車を降りてくれ」と言う三沢に「やあよー」と笑う。

トータスの背後に、眉村ユミの車がついた。
ユミの赤いスポーツカーは、トータスを追い越していった。
「あーん、抜かれちゃったー、早く早くー」と女がはやし立てる。
すると、ユミのスポーツカーから白い煙が、背後のトータスに吐き出される。

途中、トータスはユミのスポーツカーと違う道に入った。
SRIの探知機には、トータスが映っている。
「おもしろーい」と、まだ女は笑っていた。
しかし、男は突然、サングラスを外しむせはじめる。

「どうしたの?」
男は、フラフラになっている。
「どうしたのよぉ?」と女が聞く。
やがてSRIの無線に女の「怖いわタケシ、やめて、死ぬのは嫌よぉ」という声が入った。

男は女の訴えには無反応で、どんどんスピードを上げる。
「怖い、助けて、誰か来てえ。止めてえ。いやあ、助けてえ、止めて、怖い」。
タケシの意識は朦朧とし、女の悲鳴には構わず車は暴走し始める。

次にタケシが目を見開いた時、視界は赤く染まった。
道路にいた女性が、悲鳴をあげる。
トータスは女性をはね、道路脇のブロックに突っ込んで停止した。
タケシは首を振る。

パトカーのサイレンが、近づいてくる。
警察官にタケシが取調べを受けており、その横で女性が体をくねらし、タケシに手を引っ張られている。
三沢が車から降りて、カップルをにらみつける。
頭をかいて、微笑さえ浮かべている男。

三沢は唇を噛み締めると、そのタケシと呼ばれている男に近寄り横殴りに平手打ちした。
そして、カップル2人とも手で思いっきり突き飛ばす。
的矢所長と牧、怒りの三沢を止める。

「甘ったれやがって!貴様ら、人の命を何だと思ってやがる!」
「やめろ!」
「カッコばっかりつけやがって!ばかやろう!」
タケシは口を抑え、カップルともに怒る三沢を見つめていた。

殺されたのは、女子大生だった。
その夜、牧は三沢に「交通事故なら50秒に一件、犠牲者は38秒に1人だ」と言った。
「今こうして話している間にも、どこかで誰かが車の犠牲になっている。だから…、気にするなとは言えんが、彼女は運が悪かったんだ…」。
牧は三沢をそう言って、慰めるしかなかった。

翌日、野村は三沢を買ったばかりの車に乗せてドライブしていた。
野村を追い越していくのは、あのユミの赤いスポーツカーだった。
スポーツカーの排気管からは、白い煙が出ていた。
「カッコばっかりで整備もしてないんだな、ああいうのが良く事故を起こすんですよね」と野村が言う。

だが、そう言った後、野村の様子がおかしくなる。
「ちょっとめまいが…」。
やがて、野村の意識は朦朧としはじめ、スピードを上げ始める。
「おい、スピードの出しすぎじゃないのか。具合でも悪いのか。顔色が良くないぞ」。

ヒーターを止めようとした三沢に野村は「触るな!」と怒鳴る。
人が変わったようだった。
「ノム!止めろ!」
「嫌だ!」

野村は、どんどんスピードを上げていく。
「気でも狂ったのか!」
ミキサー車に追い越された時、野村の目の色が変わる。
「危ないったら!」

野村はミキサー車を、追い越しにかかる。
執拗にミキサー車を追いかけていく。
一瞬、気が遠くなった野村が再び目を見開くと、目の前が赤く染まっていた。
事故を起こす寸前、車は、やっと止まった。

野村は車のせいにしていたが、三沢はあの時の野村は正常ではなかったと言う。
錯乱状態だった。
牧は神経ガスのようなものが原因ではないか、と言った。

「そういえば、交差点で排気ガスをさかんに出す車の後にしばらくいた」と三沢が証言する。
ヒーターをつけていたので、ファンを通して入ったのかもしれない。
三沢はその車のナンバーを、覚えていた。
そこから調べたところ、タレントの眉村ユミの車だと判明する。

三沢は深夜、横浜から番組の収録に向かう眉村ユミの車をマークした。
SRIでは。三沢の車を探知機で追っている。
やがて、眉村ユミのスポーツカーが白い排気ガスを出し始めた。
ユミの背後で車を走らせている三沢の意識が、朦朧としてくる。

三沢の脳波が乱れていると、さおりが言う。
危険を察知した的矢所長は、三沢に車から離れるように言う。
「スピードを落とせ。車を止めるんだ!」
だが深夜の道路で、三沢の車は暴走を始める。

やがて、三沢の視界が真っ赤に染まる。
SRIでは「やれ!」と言う的矢所長の指示で、牧がボタンを押す。
途端に車の屋根が開き、三沢がパラシュートで放り出される。
車はそのまま暴走し、道路の端を外れて下の墓場に落下し、炎上、爆発した。

スクラップ工場で、押しつぶされる車。
積み上げられたタイヤの山。
牧は事故を起こした車を調査し、ガスの粒子が付着していることを突き止める。

鍵はあの車のガソリンか、オイル…。
運ばれ、乱暴に投げ出される車。
鉄がそれを押しつぶしていく。

三沢は海岸で遊ぶ眉村ユミに接触し、車を調べさせてほしいと言った。
ユミは黙ってうなずく。
すると、三沢は、車のオイルがまだ新しいことに気づく。

三沢にはまったく構わず、ユミは「あったわ」と言って貝殻を拾い、笑い出す。
ユミのマネージャーの中島という男が、三沢に声をかけてきた。
「最近、車を整備に出しましたか」と聞くと、マネージャーは「それなら駐車場の整備員に全てを任せてある」と言う。

夜の東京。
相変わらず、車が道路をあふれるように走っている。
眉村ユミの赤いスポーツカーは駐車場に止まり、中からユミが走り出てくる。

離れた場所で、SRIがじっと見張っている。
誰もいなくなったユミの車に、近づく人影がある。
「ライトをつけろ」。
人影はライトに照らされて止まった。

逃げていく男を、三沢が追う。
車の影を縫うように、男が逃げていく。
三沢が追う。

その時、外で、「ギャーッ」という悲鳴がした。
逃げていた男が道路に倒れていた。
救急車が呼ばれ、的矢所長と三沢が付き添って乗る。

男は「俺じゃねえ」と苦しそうに言う。
車の中が救急車のライトで時折、赤く照らされる。
「頼まれたんだ」。

「頼まれた?誰に?」
「くるま…」。
そう言うと、男の挙げた手は落ち、動かなくなった。

「車…」。
的矢所長が「東京だけでも200万台の車があるんだ」と言う。
「それじゃあ、これから一体、何を目標に犯人を捜せばいいんだ」。
途方にくれた2人をライトが照らし、サイレンが鳴り響く。



「何を目標に犯人を捜せばいいんだ」というセリフの後、すぐにエンディングテーマ。
えっ、これで終わり?!
ビックリしました。
未解決?!

眉村ユミか、マネージャーが、犯人と思ってました。
ユミは「我関せず」過ぎるし、あまりに突拍子もなく笑い出すし、子供と言う年齢でもないのに、大きなキャンディーをペロペロなめてる。
ちょっと怖い。
もしくはユミを利用したマネージャーで、2人のうちのどちらかが車に恨みを持っているのかな、と。

しかし犯人は整備係!
解決かと思ったら、何者かに殺されてしまって終わり。
ひえー、何度も言いますけど、これ、子供番組でしょ?
こんな割り切れない終わり方するなんて。
犯人がわからないので、動機もわからない。

「霧の童話」は、人間が起こした事件だけど、その背後で、人間には計り知れない大きな力は働いたのかもしれないと思わせました。
それでも一応、怪奇現象や犯罪は、科学でちゃんと説明はしていました。
しかし、「吸血地獄」のニーナの吸血鬼化も解決はしていない。
今回もまた、科学では説明がつかなかった事件という解釈もできる。

洋画の「クリスティーン」を思い出しました。
気弱な青年が手に入れた赤いスポーツカー、クリスティーン。
彼はこの車で、自分をいじめる青年たちに復讐していく。

クリスティーンは青年に好意を持ち、青年はクリスティーンによって人が変わったようになる。
しかし、実は車のクリスティーン自体が意思を持って、この青年を操っていたのでは?という話。
最後にスクラップになったクリスティーンだが、スクラップの山からいつもかかっていたカーステレオから音楽が流れ始めて、スクラップがわずかに動く。
クリスティーンはまだ、生きているのでは?と思わせるラスト。

これも混雑した車の群れが映って、牧さんがこの車が一斉に暴走したら怖いだろうなとか言う。
スクラップ工場で、鉄くずと化す車が映る。
だから、使い捨てにされた「車」が意思を持ってやらせていたのかも?
車の人間への復讐?とも思える。

SRIの迫る気配を感じた何者かは、これで一応、犯罪は終わらせたのでしょうか。
いかにも出てきそうなんですが、町田警部は今回、出てきません。
野村くんの人が変わった演技は、うまかったです。

果てしなき暴走をするのは、正体不明の犯人とそれに操られる車なのか。
それとも現代科学と文明なのか。
「えっ?!」という終わり方でしたが、最後の赤いライトに照らされた車内で終わるラストで不気味な印象は深く残りました。
好き嫌いのある回だと思いますが、私は好きです。


2012.01.21 / Top↑