鳴り響く非常ベル 「不意打ち」

白黒の古い映画。
豪邸の中に、エレベーターがある。
そのエレベーターに閉じ込められた女性がいる。

彼女は助けを求めて、ベルを鳴らす。
非常ベルが表に鳴り響く。
表には車が通り、人もいるはずなのに助けが来ない。

彼女は思う。
自分も非常ベルが鳴っているのを、無視したことがある。
今度、誰かの家でベルが鳴っていたら、助けよう。


これ、何の映画だっただろう?
その部分だけ、覚えているんです。
結構、嫌な気持ちになった映画だった気がする。

そうしたら、ついに見つけてしまったその映画。
「不意打ち」。
1964年ごろの映画らしい。

いやー、すっきりした。
でもすっきりしたのは、記憶の整理だけ。
なかなか、嫌なシチュエーション、嫌な展開の映画でした。

「風とともに去りぬ」のオリヴィア・デハビランドが主演。
この主人公が腰を痛めたため、2階との行き来にエレベーターを使っていたんですね。
彼女は息子と二人暮し。

息子は週末、旅行に行ってしまう。
その時、息子の車が引っ掛けた梯子が原因で、電線に異常が発生。
主人公の豪邸が、停電してしまう。

エアコンも止まり、エレベーターも止まる。
火曜日まで息子は帰って来ない。
3メートルの空中に宙吊り状態になった主人公は、助けを呼ぶが誰も来ない。

これです。
しかし話はここから始まったんですね。
来たのは助けではなく、近所の浮浪者だった。

彼は金目の物を盗み、助けずに去っていってしまう。
不愉快。
金目のものを売り払った彼は、今度は知り合いの売春婦とともにまた盗みに入る。
不愉快。

ところが浮浪者が高級トースターを換金しているのを不審に思った不良グループの3人が、後を追ってくる。
そして浮浪者を殺し、今度は自分たちが盗みを働く。
このリーダーがなかなか横暴で残酷。
不愉快。

彼は売春婦も、目撃者である主人公も殺すことを考える。
だが逆に空中3メートルのところにいる主人公のところには、来られない。
家中を物色している彼らが見つけたのは、主人公宛の息子の手紙。

その手紙には何と、主人公である母親の拘束に耐えられず、自殺すると書いてあった。
絶望のあまり、気絶する主人公。
笑う不良たち。
不愉快。

しかし助けを求めて売春婦は、転売屋に電話をしていた。
金目のものが取れるところがあるから、来てちょうだいと言うその電話に乗って、転売屋がやってくる。
彼らはギャングで、不良グループをぼこぼこにして、金目の物を横取りしていった。
不愉快。

その間に、主人公の女性は、エレベーターのドアを開けることに成功した。
不良が自分を殺すために置いた脚立を利用して、エレベーターから脱出する。
落下したため、這いずって外に出て叫ぶが、誰も気づかない。

白バイも通過して行ってしまう。
車も止まらない。
不愉快。

主人公が逃げたことに気づいた不良のリーダーが追ってくるが、主人公は手に入れていたボルトで彼の目を刺す。
目が見えなくなった彼から、2人の仲間は笑って逃げてしまう。
不愉快。

リーダーは車道に出て、頭をタイヤで轢かれる。
やっと車が止まり、クラクションが鳴り響き、人がやってくる。
うー、不愉快!

浮浪者を殺した時、「これで電気椅子だ」と言っていたが不良たちも警官に捕まる。
おそらく、自分たちが言ってた通りになるんでしょう。
転売屋のギャングは、捕まるのだろうか。

何度もかかってきていた電話は、もしかしたら息子か、息子が自殺しようとしたのを知らせる電話だったかもしれない。
もしくは、自殺してしまったことを知らせる電話か。
それについては何も語られない。

家に侵入してきた奴らを「怪物!」「化け物!」と罵っていた主人公。
自分自身が、息子にとって「怪物」で「化け物」だったことに気づく。
確かに冒頭、息子に対する態度が妙にベタベタしていた。

だとしても家の中が荒らされる様子も、それを見ているしかない状態も、不愉快。
弱い立場の人間を蹂躙し、略奪することしかしない発想と描写が非常に不愉快。
うーん、これを去年の締めくくりに見てしまった。

「何がジェーンに起こったか?」
「震えて眠れ」
「回転」
「たたり」

白黒映画で怖い映画っていくつか思い出せますけど、これも怖い。
監督にこれ以降、あんまり恵まれた仕事が来なかったらしいけど、そんなところも含めて「怖い」映画でした。
やっぱり見た人は不愉快だったんだろうか。

だいたい、あんな道路隔てたお向かいにスラムのような街が広がっているのに無用心じゃないかな。
治安悪そうだし、あんな豪邸作るなら、もっと違う場所にした方が良いと思うの。
嫌な映画ですが、それって良くできている映画ってことなのかもしれません。


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シャチとの絆 「テンタクルズ」

一時、動物パニック映画が流行った時期がありました。
きっかけは大きなサメが暴れる「ジョーズ」だったのでしょうか。
「グリズリー」という巨大な熊が人を襲ったり、ピラニアが襲い掛かったり。

この前、見直したのは「スクワーム」。
ある街で、高圧電流が地面に流れたことがきっかけでミミズが凶暴化。
人々を襲いだす話です。

どうしてこの映画を作ろうと思ったのか、聞きたくなりました。
「フェノミナ」も食欲なくなりますけど、これもですね。
翌日、麺類がダメになる。
襲われている人の頭が見える画が、まるでスパゲティの中で溺れているみたいだというと、わかっていただけるでしょうか。

その動物パニック映画の中で大きなタコが人を襲う「テンタクルズ」という映画がありました。
伝説の海の怪物、クラーケンってこれか!という。
たぶん、私はテレビで見ました。

以来、何十年ぶりに見ました。
もっと怖かった気がするんですが、私はスレてしまったのか。
展開がだるくて、途中、ちょっと寝ました、すみません。
でも襲われた人の足が海中から出て、船にいる女性の前を移動していくシーンとか、海辺のベビーカーが消えるところはおもしろかった。

ビックリしたのは、ヘンリー・フォンダが出ていること。
どうして?と思いました。
製作者側に、お友達がいたのでしょうか。
話の中心人物も何だか誰に焦点を絞ってるのか、わからなかったぐらいの映画。

それと覚えていたのは、人間と心を通じ合った2頭のシャチが巨大タコを倒すこと。
間違っていなかった。
やっぱり、シャチが倒した。

映画自体は途中寝ちゃったぐらいですが、最後の人間ピンチ!にシャチが来るところは感動しました。
海に逃げても良いよ、と言って放したので、海に帰ったのかと思っていました。
サマーとウインターの2頭のオスメスのシャチ。

助けられ、海から船にあがってきた人間。
しかしシャチはいない。
人間はガックリしたのか、今度はアフリカに行こうかななんて、言っていると無事、シャチが現れる。

やったー!と言って歓声を上げる。
人間との絆に、ジンとします。
単純な観客です。
シャチ良いね!

でもね、タコがただのタコをアップで映しただけなのは、やっぱり残念。
タコの触手が船に伸びてくるシルエットなんかは、良かったですよ。
クライマックスもタコの足をシャチが齧っている。
シャチが良かったので、タコも模型ぐらい作れば良かったのにと思います。


どこまでもどこまでも追ってくる 「悪魔の追跡」

深夜の放送、または昼間の放送で何度か見た覚えがある映画「悪魔の追跡」。
ピーター・フォンダが出ています。
70年代に作られた映画。

ある2組の夫婦が新車の豪華なキャンピングカーを手に入れ、旅行に出る。
そしてある夜、夫たちは山の中の滞在地で妙な儀式を目撃する。
男女が集まり、女性が裸になる。
夫たちは興味深いものが見られる好奇心とスケベ心で、儀式を見続けた。

しかし儀式が佳境に入った時、1人の女性が胸を剣で貫かれて殺された。
殺人の目撃だ。
見たことがわかったら、危ない。

そう思った時、妻の1人が夫たちを呼び戻しに来た。
「まだ帰ってこないの~?」
「声を出すな!」

「灯りを落とせ!」
「何?」
気が付かない妻は、無神経に声を立てる。
灯りも消さない。

イライラするシーンなんだろうけど、これはしかたない。
まさか、そんなことが起きているなんて思わないから。
そもそも、好奇心でのぞいていた夫も悪いんだから。

もう遅い。
相手はこちらに気づいてしまった。
それは悪魔崇拝の儀式であり、女性はいけにえだった。
この時から2組の夫婦の旅は、得体の知れない団体に追いかけられる恐怖の旅行になってしまった。

事件を通報したが、保安官も怪しいと主張する、ピーター・フォンダのロジャー。
だって道を教えないうちから、右に曲がって現場にたどり着いている。
考えすぎだと言われても。

彼の妻はプールで泳いでいても、こちらを見ている人たちの視線が怖ろしくなる。
考えすぎだと思っても、誰も彼もが追跡者に見える。
やがて、ペットの犬のジンジャーが殺され、キャンピングカーのドアに吊るされる。

ロジャーたちが「ドアが壊されている!誰か音を聞かなかったか!」と叫んでも、キャンプ場の人間は反応がない。
誰も彼もが敵に見える。
泣く妻に、「死んだものはしかたがない、明日埋葬しよう」と言うロジャー。
しかしキャビネットを開けると、そこにはガラガラヘビがいる。

ピンチの連続。
しかたがないと言ったロジャーだけど、犬のジンジャーを埋めると、首輪と自分のペンダントを置く。
妻には見せなかった涙を、サングラスを外してぬぐう。
うう、かわいそうだ。

途中のガソリンスタンドで、警察に連絡をしようとするが、電話が通じなくなる。
最後は前と後ろ、横を車で固められて事故を起こさせられそうになる。
そしてカーチェイス。

天窓からガソリンが入れられ、火をつけられたら…という事態にもなる。
最初はためらっていたロジャーにも、火がつく。
ショットガンで撃退しながら、逃げる。

一度目の襲撃を振り切った後、事故かと思って止まろうとするが、日曜日にスクールバスが事故を起こすはずがない。
あれもこれも、全部、敵なのだ!
ボロボロになりながらも、追跡は振り切った。

ほっとした4人は、空腹を抱えながらも乾杯をしようとする。
その時…。
キャンピングカーの外が、炎に包まれる。

近づいてくる人たち。
キャンプ場で陽気に話しかけてきた夫婦が、無表情で近づいてくる。
保安官もいる。
あちこちで見かけた人たち、全部がそこにいた…。


全員が、追跡者だったんだという衝撃。
途中のスタンドで、車の修理を頼んだ男までがカーチェイスの時にいた。
その怖さもあるけど、アメリカの田舎町の怖さも感じました。

よそ者に対して敵意がある。
ここで何かされても、町全部で隠されて、おそらく事件にもならない。
殺されてもわからないかもしれないという恐怖を感じます。

閉鎖的なのは、「八つ墓村」だけじゃないんだな。
アメリカの田舎町もなかなか、怖い舞台になる。
いや、閉鎖的な場所って、心って恐怖の舞台になるんですね。

ロジャーたちはさっさと都会に、家に帰れば良かったのにと思う。
妻はそう主張した。
でも「3万6000ドルしたキャンピングカー」で、「5年モーテル勤めをしてやっともらった休暇」で旅行に出た。
「今さら、引き返せない!」思いがあったんでしょうね。

結局、「道迷い遭難」という本に書かれていたように「窮地に陥らないために、変だと思ったら引き返せ」ができなかった。
それで最悪の結末に至った。
一流俳優のピーター・フォンダも、ウォーレン・オーツが出演している、いわゆるB級ホラー映画。
誰も助からないのが衝撃。

ピーター・フォンダの「イージー・ライダー」は最後、通りかかった田舎町の住民に友人が「おい、髪を切れ」と言われる。
中指を突き立てて返事をした彼に向かって、農民のおっちゃんはショットガンをぶっ放した。
倒れる友人。

驚いたピーター・フォンダがバイクを降りて、彼の最期の言葉を聞く。
友人に革ジャンをかけてやり、おっちゃんたちのトラックを追ってくる。
すると、トラックがUターンして近づいてくる。

そしてピーターに向かって、もう一発、ショットガンが発射される。
ピーターのハーレーが宙を飛び、炎上する。
上空からの映像。
ピーターの姿は見えないが、バイクは炎上し、壊れて道端に転がっていく…。

この時、閉鎖的なアメリカの田舎の怖さを感じました。
地元の人間が全部口裏を合わせるし、保安官も味方なんだろうな。
きっとこれは事件にもならないんだろう。

相手はよそ者だし、ましてや当時のヒッピーなんだから。
そう思って、一層、ゾッとしました。
もちろん、「悪魔」は儀式で崇拝した「悪魔」ではなくて、追ってくる人間ですね。

だってあんなにかわいい、ジンジャーが…。
これで自分は、敵側が嫌いになりました。
「イージー・ライダー」の怖さを倍増したような、ピーター・フォンダの「悪魔の追跡」。
♪すっごいしつこい すっごいしつこい どこまでもどこまでもついてくる あ~♪の「爪水虫」並みのしつこさでした。


名作ホラー「チェンジリング」

1968年。
アメリカのコロラド州デンバーで、作曲家は格安の豪邸に入居。
しかし屋敷には毎日、何かを叩くような音が響き、ドアが勝手に開閉する。

2階の衣装部屋の壁がおかしい。
壁を壊すと、階段が現れた。
その先の部屋には、9歳の少年の日記があった。

障害を持っていた少年は、この部屋に閉じ込められボールで遊んでいたらしい。
友人に勧められ、降霊術をすると少年の霊が現れる。
映画同様、少年の霊は自分が殺された経緯を語り、自分が埋められている場所を教え、メダルが埋められていることを伝えた。

しかし怪奇現象は収まらず、家を解体しようとしたブルドーザーは突然の爆発で崩れた壁に押し潰された。
作曲家は引っ越し先でも霊現象に悩み、お祓いしてやっと落ち着いた。
この話が元になって作られたのが「チェンジリング」だそうです。

いや、怖い。
スプラッタなシーンはなくても、すごく怖い。
気配の怖さでしょうか。
ジワジワ来て、姿を見せて、現象の理由がわかった時は、たまらなく怖い。

「リング」の監督、これ見てると思いました。
同じ監督が作った「幻想ミッドナイト」の「破壊する男」のワンシーンにも、階段から誰もいないのにボールが落ちて来る。
「ほの暗い水の底から」も思い出します。
というより、原作者が見てるのかな。

井戸に埋められている遺体。
アピールの仕方。
這い出てくる幽霊。

あれ?蛇口閉め忘れた?みたいなところから始まるところがうまい。
ドア開いた?風かな?たてつけ悪いのかしら?
そう思うような現象から始まる。
ジワジワ来る。

音に至って、住んでる人にはわかる。
おかしい。
でも外部の人には、そういうこともありますよ、ってところ。
そしてついに視覚に現れる。
水から浮かび上がる子供の、哀れにして無気味な姿。

音の正体が判明した時なんか、鳥肌もの。
あれは苦しがる少年がもがいて叩いた浴槽の壁の音。
殺された時間に始まり、苦しんだ間続いて、息絶えた時間で終了する。
怖い前半から、謎解きを経て、亡霊に同情する後半。

妻子をなくした心の痛みに、少年の幽霊が呼応する。
追い払っているのではない。
ちゃんと何かを伝えて来るんだ。
ラッセルがわかってやれるということは、彼の心が傷ついているから。

どれひとつとっても、普通なら、いや、自分なら震え上がって逃げる。
助けにならない。
音だけでも、ドアだけでもダメ。
水道なんてもっとダメ。

浴槽のシーンなんて、気絶する。
寝込む。
ボールは、その場で逃げる。

このボール、娘のボールなんですよね。
それを捨てる。
すると戻って来る。

怖いけど、後から考えると少年の「そんな風に忘れてしまわないで!」という叫びみたいですね。
考えてみたら、そういう方法で訴えるしかない。
議員にアプローチできなかったラッセルに、今や全力で文句を言う少年の霊。

ラッセルは、「ワガママ言うなー!」って怒りまで表す。
この霊は少年らしく、筋の通らない八つ当たりみたいなことをするから。
父親らしく。

でも少年の霊は、ラッセルに大ケガはさせない。
邪魔する警部には容赦ない。
霊は、明らかにラッセルの悲しみに呼応し力を増幅させて行く。

後半はホラーというより謎解きミステリー。
早く見つけてやれ。
復讐もやむなしという気持ちになる。

考えたら、取り替えられた議員もかわいそうなんだけど、自分を見つけるのを権力使って握りつぶそうとするからしかたない。
彼の魂が、館に呼ばれて焼かれるのがわかるクライマックス。
でもきっと、父親にも何か起きてたと思うよ、あれは。

主演は名優・ジョージ・C・スコット。
妻子をなくした心の痛み、寂寥を感じさせてくれます。
幽霊に同情する日本的な展開。

ホラーの枠に収まらない名作。
ラッセルみたいな、お父さんがほしかったよね。
こんなお父さんなら、良かったよね。

ラスト、燃えたチェスマンハウスで残っていた車椅子。
オルゴール。
寂しい。

少年の魂は、慰められたのだろうか。
彼は天国に行けるのだろうか。
ラッセルは何を思うのだろうか。


オトウサン…。 「チェンジリング」(3)

全部、ネタバレしてます。


翌日、夫人の息子の手伝いで床板が切られていく。
井戸が見つかったらしい。
ラッセルが床の穴に、下りていく。

土で埋められた井戸を、ラッセルが掘っていく。
何かが見つかった。
「ちょっと、懐中電灯を。何かあるみたいだ」。

ラッセルが土をどけていく。
骨だ。
「白骨だ。人間の手の」。
「警察に電話しなきゃ」と、ミセス・グレイが走っていく。

死後50年の人間の骨だった。
「何か心当たりは?」と刑事が聞いた。
「ない」。
刑事が訝しげな顔をする。

クレアは「何もかも話せば良かったのに」と言ったが、証拠がない。
メダルが見つかれば、証拠になる。
まだ見つかっていない。

クレアと別れた後、ラッセルは無人となったグレイの家に戻ってきた。
ガラスを割り、中に入る。
床下の穴にもぐりこむ。

土を掘り始めるが、手では掘れる量は高が知れている。
その時、土から何かがするすると現れ始めた。
光っている。

極細のチェーンだ。
まるでミミズが這い出てくるように、チェーンが土から出てくる。
その先端には、メダルがあった。

ラッセルが身をかがめて、それを手に取る。
メダルはジョセフのものだった。
夜明け、ラッセルはクレアを訪ねた。

「セントポール協会、1900年9月8日。ジョセフ・カトリック・カーマイケル」。
「あったのね」。
クレアは警察に言うように進言するが、ラッセルは警察は取り合わないと言う。
70年も前に事件だ。

ラッセルは飛行場で、カーマイケル上院議員を訪ねた。
警備員に阻止されながらも、ラッセルはメダルを掲げる。
議員がギョッとする。

「これにはあなたの名前が彫ってあるんです。死体と一緒に埋められていました」。
「早く出せ!」
上院議員はすぐに専用機を発たせ、警察の上層部に連絡を取らせた。

デビッド警部を呼べと、議員は言った。
その上院議員の胸にも、同じメダルが掛かっていた。
おそらく、偽物の。

ラッセルが家に戻ると、家中が鳴動した。
ドアと言うドアが、閉じていく。
「少しわがままだぞ!私にどうしろと。これ以上、どうしろと言うんだ!できるだけのことはしたんだ!これ以上は何もできんよ!」
ラッセルは怒って叫んだ。

その後、ソファで眠り込んだラッセルを、デビッド警部が訪ねてきた。
警部はラッセルが、人の家で人間の白骨を掘り出したことを指摘した。
そして今朝、飛行場で議員を呼び止めたことを非難した。
さらに、上院議員がなくしたメダルを預かっているだろうと言って、メダルを出すように迫った。

「何のことかわからんな」。
その時、クレアが訪ねてきた。
「頭に来ちゃったのよ、今朝…」と言いかけたところで、警部がいるのに気が付いた。

警部はメダルを出さないのなら、家宅捜査すると言った。
ラッセルはどうぞと言って、警部を帰した。
クレアは協会が突然、自分を解雇したこと、この家の借家契約を取り消されたことを怒った。

何の説明もなかった。
議員の圧力が掛かったのだろう。
ため息をついてラッセルは階段に座り込んだ。
誰かが屋根裏部屋から降りてきて、ラッセルを階段の上から見つめているようだった。

ラッセルは歩き、鏡の前に立った。
突然、鏡が割れ、鏡の中に警部の血まみれの顔が映った。
電話が鳴った。

クレアからの電話だった。
いきなりクレアの前を一台の車が走ってきて、道路の真ん中でひっくり返った。
他の車と接触したわけでもなかった。

そのひっくり返った車は、先に帰ったはずのデビッド警部の車だった。
警部は即死だった。
割れたガラスの中、恐怖に引きつった警部の顔は、さきほどラッセルが割れた鏡の中に映った顔とまったく同じだった。

帰ってきたカーマイケル上院議員が、警部に電話をする。
そして、警部が事故にあって亡くなったことを知る。
「何てことだ!」

上院議員は、家にラッセルを呼び寄せた。
「議員がお待ちです」。
ラッセルは議員の執務室に通された。

クレアはラッセルの館に電話をかけ続けたが、話中だった。
たまらなくなったクレアは、ラッセルの館に行く。
「心当たりがあるはずです。だから私を呼んだんでしょう」。
「忙しいんだ」。

ラッセルはチェスマンハウスで妙なことが起きる話をした。
あそこには、何かがいる。
「空港でお話しようとしたのは、これのことです」。
ラッセルはメダルを取り出した。

「なくしたと言ったそうですね。でもこれは少年が埋まっていた古井戸で私が見つけたんです」。
「これは私の推測ですが、間違ってはいないはずです」。
「病弱だった少年は、あの家の屋根裏部屋で殺されたんですよ」とラッセルは言った。

「私はその光景を見たんです。リチャード・カーマイケル、つまりあなたの父親が実の子供、ジョセフ・カーマイケルを殺したんです」。

議員は鋭い目で、ラッセルを凝視していた。
「そして替え玉の少年が孤児院から連れてこられ、スイスに連れて行かれて、病気が治ったと偽って帰国し、遺産を相続した。その替え玉は、あなただ」。

ラッセルも目をそらさなかった。
議員が近づいてくる。
「なるほど。うまくでっちあげたな」。
「そう言いたいでしょうね」。

「いくらだ」。
議員は小切手帳を取り出し、金額をうながした。
「冗談じゃない」。
「とぼけるな。ばかばかしい話をでっちあげて、いくらほしい」。

「ゆすりに来たんじゃ、ありません」。
「わしはな、君のような手合いは長年、扱い慣れてるよ」。
「真実は隠しおおせるものじゃない」。
「あなたにもこれが、真実だとわかるはずだ」。

議員はラッセルをにらみつけると、「出て行け!」と命じた。
「ここにあるものすべてがあなたのものじゃない!」とラッセルは手を広げた。
「さっさと出て行け!でたらめもいいかげんにしろ!」
「ここにあるものは、すべて、死んだ少年のもの!」

ラッセルは議員を指差して、「知らないとは言わせない!」と言った。
「あなたは本当のジョセフじゃない。残酷際まる殺人者からのおこぼれに預かった、哀れな替え玉だ!」
「違う!わしの父は断じて人殺しではない!」
今度は議員が叫んだ。

「そんなことは、誰にも言わせんぞ!父は偉大な人だった」。
テーブルの上には、リチャードの肖像画が写真立てに入れられて置いてあった。
「愛情に溢れた…、その父をあろうことか、言うにことかいて…、人殺しなどと…、許せんぞ!」
「父の名誉を傷つけるようなことは、誰にも言わせない!」

ラッセルはかばんから、封筒を取り出した。
「役所の記録室で探した、資料と降霊術の録音テープです。コピーはありません。どうぞ。私はもう、要りませんから」。
そう言うとラッセルは「失礼」と言って出て行こうとした。

「ラッセル!もしも君がこのことを一言でも口外したら…」。
断固とした口調だった。
「誰にだろうと!一言でも!わしは君を許さん!それだけは覚えておけ!」
ラッセルは冷ややかな、哀れみの目で議員を見ると、無言で出て行った。

「何かあったんですか?」
秘書がやってきた。
「何もない!あっちへ行け!一人にしてくれ!」

クレアがチェスマンハウスへ到着した。
灯りはついていた。
ドアをノックしようとすると、玄関のドアはひとりでに開いた。

訝しげな顔をしたが、クレアは「ジョン」と呼びかけながら入ってきた。
「何度も電話した…」。
その時、「待っていたんだ」と声がした。

「ジョン?どこにいるの?」
クレアは声がした方へ、階段を上っていく。
踊り場で、2階を見渡した。
誰もいない。

クレアは、さらに上に登っていく。
「クレア」。
「ジョン、何をしているの?」

「ジョン?」
「上だよ」。
「ジョン?」
クレアは屋根裏に到達した。

「クレア、もっと上だ」。
クレアは屋根裏へ行く。
ドアを開ける。

「ジョン」。
「お願い、あたし、そこに登っていきたくないの」。
「クレア」。
「ジョン?」

クレアは屋根裏部屋のドアを開けた。
部屋には誰もいなかった。
すると、車椅子がひとりでに回転し、クレアの方を向いた。
クレアは悲鳴を上げ、階段を駆け下りていく。

その後を、車椅子が走って追う。
クレアは下へ走っていく。
必死に走るクレアは、階下へ転落した。
悲鳴をあげたクレアに、ジョンが駆け寄る。

「大丈夫、落ち着いて!」
「あなたが、あなたが上にいると思って!」
シャンデリアが揺れていた。

「あなたの声が、あなたの声が、ほんとに聞こえたのよ!」
クレアと一緒に外に出たジョンは、クレアに車の中にいるように言うが、クレアは「ダメ!」と叫んだ。
家の中に戻ってはいけない!

「大丈夫、すぐ戻る」。
家に戻ったラッセルは「なぜ!もうやめろ!」と叫び、階段を上ろうとした。
風が吹いてきた。

ラッセルが途中で止まらなくてはいけないほど、強い風だった。
風は、うなり声をあげていた。
ラッセルは手すりに捕まりながら、階段を上りきった。
風で扉が開き、ラッセルが押し出される。

踊り場から手すりにぶら下がったラッセルは、風で階下に落ちた。
倒れたまま、動けない。
階段の手すりを、炎が降りてくる。
炎は階段を下り、ラッセルの1階までやってきた。

その頃、議員はメダルを見つめていた。
父親の肖像画に、そのメダルをかけたときだった。
「オトウサン…」。
「オトウサン…、オトウサン」。

議員は肖像画を凝視した。
「僕のメダル…」。
「ぼくの、メダル…」。
「オトウサン…」。

メダルが揺れ始めた。
いや、肖像画が揺れている。
肖像画だけではない。
机が揺れている。

肖像画を見ている議員の顔が、赤く照らされている。
「オトウサン、僕のメダル…」。
議員も揺れている。
だが憑かれたように、目が離せない。

「僕のメダルぅ…」。
「オトウサン」。
「僕のメダル」。

「僕のメダル」。
「僕のメダル」。
声がこだまする。

議員はチェスマンハウスにいた。
炎に包まれた階段を上っていく。
「僕のメダル」。

議員が階段を上りきった時、炎の中、階段は崩落した。
シャンデリアが揺れている。
ラッセルは倒れたまま、それを見ていた。

館中に、あの音がこだましていた。
シャンデリアが落ちてくる。
ジョンは体をかわし、避けた。

「ジョン!」
クレアがドアを叩いていた。
ラッセルはよろよろと外に出ると、クレアの車に乗り、チェスマンハウスを離れた。
「僕のお父さん」。

「僕のお父さん」。
「僕のお父さん」。
屋敷の窓と言う窓が、明るい。
3階の屋根裏部屋の窓も、炎を映して明るい。

議員は屋根裏部屋へ向かっていた。
「お父さんお願い」。
「お父さんやめて」。
「たすけてええ」。

ごおん、ごおん。
音が響く。
「お父さん、やめて」。

ジョセフの脚を、リチャードが持っている。
少年が、もがく。
部屋中が揺れる。

議員の部屋。
リチャードの肖像画のメダルが揺れる。
肖像画の前、微動だにしない議員がいる。
ただ、見ている。

その顔に炎が反射し、赤くなる。
「苦しい!」
ジョセフが叫んだ。

「うううっ」。
議員も喉を押さえ、苦しみだす。
チェスマンハウスが爆発とともに、吹っ飛ぶ。
議員が倒れた。

ラッセルがカーマイケル議員の家に到達した時、救急車が来ていた。
議員の遺体が担架に載せられ、運び出される。
サイレンを鳴らして、救急車が遠ざかる。

ラッセルとクレアは、無言でそれを見ていた。
救急車が病院へ急ぐ中、入れ違いに消防自動車がサイレンをあげて走る。
チェスマンハウスへ走る。

焼け跡となったチェスマンハウス。
車椅子がこちらを向いている。
誰もいない。

燃え残った車椅子の横にあった、オルゴールが開いた。
メロディが流れ出す。
屋敷跡。
形あるものは、それだけだった。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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