こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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磐城の土を殺してはならぬ 「超高速!参勤交代」

参勤交代。
「下に~、下に!」の声がかかり、大名行列が通る。
庶民は殿に顔を向ける失礼をしないよう、顔を下に向け、行列が去るまで、お辞儀をし続ける。
土下座し続ける。

長い行列なら、通り過ぎるまで時間が掛かる。
顔を上げようものなら、「頭(ず)が高い!」と言われ、行列を横切ろうものなら無礼討ちにされる。
またはお駕籠に向かって「おねげえでごぜえますだ~!」と直訴に走ってくる人がいる。
時代劇ではおなじみのシーンであります。

徳川幕府は、大名の妻子を江戸に住まわせた。
いうなれば、謀反を起こさないための人質。
そのため大名は1年おきに江戸と、故郷を行き来する。
参勤交代ですね。

江戸と故郷を旅するのには何日も、何十日もかかった。
そうなるとこの日数に行列を形成する人々を連れての旅の費用は、莫大なもの。
経費節減のため、1日のうち、相当な距離を歩いたらしい。

2つの家に家来を滞在させるのにも、かなりの費用が掛かる。
これは大名の力をそぐのに、かなり有効な手立てだったのでしょう。
徳川幕府の政策は、もちろん今はこんなの無理だけど、施政者にとってはかなり効果的なものだったんだなと思います。

参勤交代の人数は、石高によって決められていたらしいですね。
20万石以上の大名は、馬上20騎、足軽130人、仲間・人足300人、全部で450人。
馬の面倒を見る人間も必要だったでしょうし、相当な人数が移動する。
おかげでこの道中も栄えたし、交通網も整備されたみたいですけど、大人数だから、これに遭遇した旅の庶民はろくに宿も食事も取れなかったでしょうね。


無敵の徳川幕府対たった7人の弱小藩。
「超高速!参勤交代」。
享保20年。
8代将軍・徳川吉宗の世。

磐城国の湯長谷藩の藩主・内藤政醇は、1年間の江戸の滞在を終え、参勤交代して帰国。
湯長谷藩は石高わずか、1万5千石。
しかも、天候による飢饉もあった。
さらに内藤本家の磐城平藩が飢饉にあったため、備蓄米を送ってしまっていたため、蔵は空っぽだった。

だが藩主の政醇は、年貢の引き上げをしない。
すれば民が死んでしまう。
政醇は百姓に慕われており、百姓も殿の姿を見ると収穫された大根を持って駆け寄る。
すると政醇は大根の泥を落としてかぶりつき、そのうまさを誉めるのだった。

ところが老中・松平信祝が隠密からの報告で、湯長谷藩で金山が見つかったことを知った。
信祝はそれを我が物にするため、湯長谷藩の取り潰しを謀る。
それは帰ったばかりの湯長谷藩をもう一度、江戸に出仕させることだった。

しかも8日から10日かかる道中を、5日で江戸に来いというものだった。
参勤交代で江戸に期限どおり来ないということは、徳川幕府に対して忠誠心がないということになる。
藩は取り潰し、藩主は切腹ものである。

だがもはや、湯長谷藩には参勤するための費用がない。
「幕府に直訴」「賄賂を贈って勘弁してもらう」
家臣たちの意見もさまざまであった。

江戸では信祝に参勤交代を考え直してもらうため、家臣が信祝が差し出した鳥の餌を食べていた。
この姿を信祝は大笑いし、もはや決まったことだとはねつけた。
それを知った政醇は家臣と民を守り、弱小藩の意地のため、参勤交代を決行する決心をする。
家老の知恵者・相馬兼嗣の策は、少人数で山中を走り抜け、幕府の役人のいる宿場だけは渡りの中間を雇って行列の体裁を整えるというものだった。

策を話し合っている政醇と相馬の屋敷の屋根裏に、雲隠段蔵という忍びが現れた。
素人に山道を行くのは、無理だ。
段蔵はかつて日本一と言われた忍びだったが、今は抜け忍となっていた。
10両と酒飲み放題を条件に、段蔵は道案内を買って出た。

金なし
人なし
時間なし
湯長谷藩の、必死の超高速!参勤交代が始まった。

政醇の参勤交代を知った信祝は、湯長谷藩が江戸にたどり着けないよう、忍びを使って妨害する。
忍びの頭領は、夜叉丸。
宿場には、政醇の家紋をお尋ね者として配布した。

山中で野宿する政醇に忍びが襲い掛かる。
忍びと退治した段蔵は、礼金を受け取ったら政醇を放り出す計画であることを告げ、自分が離れた後は政醇を好きにするが良いと言う。
そんなことを知らない政醇は段蔵に感謝し、家宝の小刀を与える。

1人、浪人姿となった政醇は、牛久の宿に到着する。
そこでは客の取り合いでもめた宿場女郎のお咲が、折檻のために縛り付けられていた。
政醇はお咲を解放するために指名し、お咲が部屋にやってくる。

まだ子供のお咲は人買いに手篭めにされ、この宿屋に売られた。
苦労をしたんだな…と、政醇がつぶやく。
その思いやりのこもった言い方に、お咲の心が開く。

政醇もまた、自分の子供の頃の境遇を話す。
幼い頃の乳母の折檻で蔵に閉じ込められたことが原因で、政醇は用を足すにも扉を開けなくてはならない閉所恐怖症になったのだった。
まだ子供に、バカなことをするとお咲はつぶやく。

お咲のけがを見た政醇は、持っている薬を塗ってやる。
初めて、人の優しさに触れたお咲は、役人の調べから政醇を匿ってしまう。
布団の入った押入れに、2人がこもる。

閉所恐怖症の政醇は、平気なのかと指摘されて「あっ」と気づく。
お咲と一緒なら、閉所も怖くない。
政醇を逃がしたことを知られたお咲は、再び折檻されそうになる。
そこに政醇が現れ、お咲を奪って逃げた。

家臣の荒木源八郎たちは廃寺に滞在しているところを、夜叉丸たちに襲われる。
武芸の達人である荒木源八郎たちであったが、走るために少しでも負担を軽くしようと、刀は竹光になっていた。
段蔵も逃げた後で荒木源八郎たちは、大ピンチ。

逃げた先で、谷から転落。
川に流されるが、全員無事であった。
唯一、相馬が見当たらなく、水死したと思われたが、相馬はうたた寝をして井戸に落ちていた。

段蔵は礼金の10両で芸者を呼び、派手に遊んでいた。
その様子に不安を持った宿の者が会計を頼んだので、段蔵は礼金の巾着を取り出す。
巾着から出した銭は、古銭。
そんな銭はいつのものだと笑った芸者が、さらに金をさわって泥がついたと言う。

段蔵が受け取った礼金は、小銭や古銭が丁寧にまとめてある束だった。
そしてその銭には、泥がついていた。
段蔵は絶句する。

お咲を連れて道中を急いでいた政醇だが、山中で忍びに囲まれる。
政醇は居合いの達人であったが、忍びたちはお咲を人質に取った。
自ら刀に身を投げ出そうとしたお咲のため、政醇は刀を捨てる。

お咲もろとも政醇を斬ろうとした忍びの小太郎が倒れた。
ぎょっとする虎之助の前に、段蔵が現れる。
段蔵と政醇の前に、忍びは全滅する。


途中、伊達藩の行列に遭遇する相馬たち。
伊達55万石の前に、自分たち1万5千石は道を譲らなくてはならない。
さらには伊達の行列は壮大であり、これを避けていたら取手宿に到着するのが遅れる。

そこに相馬が知恵を出した。
産婆と飛脚は行列を前にしても、通過が許される。
相馬たちは着物を脱ぎ、ふんどしになって飛脚として走りぬけた。

取手宿に到着した相馬たちだったが、渡りの中間たちは約束の期日を過ぎたと言って帰ってしまった。
行列を維持できない相馬たちは途方にくれた。
相馬は切腹の体勢を取るが、刀は竹光であった。
情けなさに相馬が泣いていると、またしても行列がやってくる。

内藤本家の磐城平藩・内藤政樹の行列だった。
理由を聞いた内藤政樹は「飢饉の時に援助してもらった」と言って、行列を貸してくれた。
取手宿を通り抜けた相馬たちに内藤政樹は、言った。
「磐岩の気骨、見せてやれ!」

江戸に入った相馬たちは、湯長谷藩江戸屋敷に向かう。
だがまだ、政醇が来ていない。
刻限は暮れ六つ。

相馬たちはとりあえず、江戸城に向かった。
お咲を連れた政醇が追いつき、江戸城に向かう。
だが橋では、信祝の「全員斬れ」との命令を受けた隠密たちが待ち受けていた。

武芸の達人たちの湯長谷藩の藩士たちと、忍び達が斬りあう。
段蔵と夜叉丸も、因縁の対決となる。
暮れ六つの鐘が鳴り終わり、間に合わなかったと信祝が笑う。
しかしその時、鐘がまた鳴り響いた。

ばかな!と信祝は言うが、老中首座の松平輝貞は鐘が鳴り終わるまでは有効と判断。
実は鐘は家臣の鈴木吉之丞が、弓を当てて鳴らしていた。
行列は無事、江戸城大手門に滑り込んだ。

輝貞の前で、政醇は金山から出た金を見せる。
それは金ではなく、黒い塊、石炭であった。
発見された時は表面が光っているので、良くわからない隠密が金だ、隠し金山だと報告したのであろう。

隠し金山を我が物にしようとしていた信祝の策略が発覚。
以前から賂を受け取り、私服を肥やしていた信祝の尻尾をつかもうとしていた輝貞によって、信祝は失脚した。
実は吉宗と輝貞は以前より信祝を疑っており、今度の湯長谷藩の参勤交代によりそれを暴こうとしたのだった。

「このたびの参勤は、上様の策でありましたか」。
「ずいぶんと襲われたであろう。不服か?余は弱い家来などいらぬ」。
「いえ、我らは良いのです。しかし…民のことを考えると肝が冷えました」。

「どういうことじゃ?」
「もし、上様がまごとに、愚かであれば、民が苦しみますゆえ」。
吉宗の顔色が変わった。
ぱちん、と扇を締める。

「はははは、そちの申す通りじゃ」。
「なぜ上様、我が藩が金山をごまかしておらぬと信じられましたか。ご老中が正しい思われたのでは」。
吉宗は、皿の上の大根の漬物を出した。

「おぬしの大根の漬物じゃ。先の参勤で、大根の漬物を献上したであろう」。
「あれは良かった。良く耕した土の味がした。あのような大根を持ってくるものに、悪い奴はおらん」。
「はっ!それがしもこの、大根が大好物なのでございます!」

政醇が笑顔になった。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに、いたしまする!」

政醇が頭を下げる。
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」
「ははっ!」

こうして、湯長谷藩の超高速!参勤交代は終わった。
お咲は何と、側室に迎えられた。
『今さらながら、参勤交代の効果で幕府は長く安泰であった。
平和を維持するための仕組みだったのかなあ…』。



いやいや、おもしろかった。
最初から、大根。
参勤交代の始まりに、水戸の幼君にバッタリ遭遇しますが、かわいい幼君も大根の漬物のおいしさに礼を言う。

内藤政醇に佐々木蔵之介さん。
なまるところがまた、温かみがあって良い。
民と大根を齧って話すお殿様は、実は居合いの達人!

殿に従う7人の藩士たち。
7人ってところが、「七人の侍」のオマージュっぽくて良い。
知恵者の家老に西村雅彦さん。

荒木源八郎は、寺脇康文さん。
剣の達人。
秋山平吾は上地雄輔さん。
上地さんを、初めて良いと思いました…、ってすみません。

弓の達人・鈴木吉之丞を知念侑李さん。
良かったですよ。
増田弘忠を柄本時生さん。
とぼけているようで、彼も強い。

今村清右衛門を六角精児さん。
槍の達人。
徳川吉宗を市川猿之助さん。

松平輝貞は石橋蓮司さん。
もう、この重厚感ったらないです。
すばらしい。

松平信祝を陣内孝則さん。
「とどのつまりは、生まれがすべてよ」。
嫌ですね~。
傲慢ですね~。

何、この選民意識。
徹底して嫌な官僚って感じを出してくれます。
これがひっくり返される快感。
時代劇の悪は、こうでなくちゃ!

知恵者の家老・相馬兼嗣は西村雅彦さん。
もう、落ち武者のような姿になって熱演。
西村さんの熱演で、本当に見ごたえある映画になってます。

内藤政樹を甲本雅裕さん。
情けは人のためならず、のエピソードが泣けます。
磐城の意地、見せたれ!の言葉が、カッコいい。

夜叉丸は忍成修吾さん。
この俳優さん、どんどん良くなりますね。
夜叉丸、良かったなあ。
好きな俳優さん。

雲隠段蔵は、伊原剛志さん。
見せ場がたっぷりの役でした。
小銭の束を見た時の、後悔。
最後は去って行きましたが、一生、政醇に仕えてしまいそう。

政醇の人柄。
本家の飢饉に備蓄米を差し出す。
案内役の忍びに、家宝の小刀を惜しみなく与える。
お咲の手当てをする。

政醇の人柄が、結局は藩を救うという設定も良かった。
閉所恐怖症で気さくな殿さまという設定は、昼行灯の中村主水が剣の達人であるような設定で、非常に魅力的。

伊達藩も出てくる。
大藩らしい、壮大な行列。
その横をふんどしで、飛脚を装って走る。
時代劇好きなら、この設定には笑わずにはいられません。

男ばかりで展開する中、すれた飯盛り女・お咲は深田恭子さん。
いくらなんでも、側室になるというのはありえないでしょうが、そこはもう、いいじゃないですか~。
徹底した時代考証のもと、作られる文芸作品も良いけど、こういうところも許せないとチャンバラ楽しくない。
側室になったときは、さすがに美しい。

そして、この藩は東北にある。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに(この訛りが良い)、いたしまする!」
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」

「晴れれば、それは良い日」。
絶体絶命の中にあって、そう言える強さ。
「よく耕した土の味がする」。
この映画、東北への応援のように感じました。

決してエリートではないし、良い血統ではないけれど、意地とプライドと義を通す武士たち。
その彼らが上の理不尽な命令に、金なし、人なし、時間なしのピンチを乗り越える。
天下無敵の徳川幕府の幕僚に、対抗する。
時代劇のこの世界に、自分の世界を重ね合わせて見て、つかの間の夢を見て、希望を持つ。

良い時代劇。
良い脚本。
悪は徹底して悪。
最後に悪が滅ぶ。

やっぱり、こういうチャンバラおもしろい。
好き。
俳優さんたちも良かった。

隠密が「我ら、死して屍、拾う者なし!」と何度か言うのも爆笑!
時代劇好きなら、クスッとはしてしまうはず。
あっという間に見てしまった。

とんでも時代劇、笑える映画と思わせて、実は深いメッセージがこめられている。
強さと優しさに満ちている。
いやいや、作れるじゃないですか、こういう時代劇。

「磐城の気骨、見せてやれ!」
このセリフ、心に残りました。
磐城だけじゃなくて、日本人の、という感じに受け取りました。
良い映画、見ました。

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幸せなシャコーグレイド

映画「超特急!参勤交代」。
時代劇なので、当たり前ですが、馬が出ます。
最後の出演者のクレジットに、馬の名前もありました。

シャコーグレイド。
えっ、シャコーグレイド?!
あのシャコーグレイドだよね?!

トウカイテイオーが、父親のシンボリルドルフと同じく、無敗でダービーを勝った。
その時、8着に来たのが、シャコーグレイド。

シンボリルドルフは、クラシックレース3つを全て勝ち、3冠馬となっている。
しかも無敗。
今も日本競馬の最強馬と言う人がいます。

シャコーグレイドの父親も、シンボリルドルフの前の年にやはりダービーを勝ち、3冠馬になったミスターシービー。
この最強馬同士の対決は、話題になったはずです。
この子供同士がダービーで、ワンツー。
競馬は血の繋がりというのが、納得です。

トウカイテイオーの引退の日。
シャコーグレイドはレースを勝ちました。
自分たち世代の強さを見せて、同期の引退を送ったように感じました。

そのシャコーグレイドの名前が、映画のクレジットにあったんです。
シャコーグレイドは、引退後、誘導馬になっていたと思いました。
誘導馬引退していたんですね。
それで、元気だったんですね。

この映画は私には、シャコーグレイドとのうれしい再会となりました。
このあと、シャコーグレイドは老衰で亡くなったらしい。
老衰で亡くなることを、幸せの条件にあげている人もいる。
シャコーグレイドは、幸せな馬生だったと思います。


裏切りごめん! 「隠し砦の三悪人」

戦国時代。
秋月、山名、早川の三つの国があった。
だが秋月は、山名との戦に敗れた。

百姓であったが、戦に参加し、一旗挙げようと考えていた太平と又七はヘトヘトになっていた。
そこに秋月の雪姫を捕らえた者、居場所を伝えた者に黄金10枚の褒美がもらえるとの話が伝わってくる。
また、秋月の隠した黄金2百貫の噂も入ってくる。

2人は山名の侍たちに捕らえられ、人足にされる。
山名の侍たちは、お前たちは人間じゃないと言い放った。
その扱いに耐え切れなくなった百姓たちは、脱走を企てる。
幾重もの列で銃を発射され、多くの百姓が倒れたが、2人は逃げおおせる。

逃げた2人は米泥棒をして、飢えをしのいでいた。
鍋で米を炊いていた時、薪にした木から黄金が出て来る。
もしや、秋月の隠し金では。
薪を拾った場所に向かった2人を、1人の屈強な男がつけてくる。

男は、自分は真壁六郎太だと名乗った。。
だが真壁六郎太と言えば、秋月の侍大将だ。
こんな山賊のような男であるはずがない。

そう言って笑った2人の前に、美しい娘が現れる。
娘の美しさと威厳に、2人はこれはもしや、秋月の雪姫ではと思う。
しかし六郎太はあれは自分のものだから、手を出したら殺すと言った。

それに秋月の雪姫は、すでに捕らえられて処刑されているはず。
雪姫を捕らえ、報奨金を手にしたのは自分だと言って、六郎太は黄金を見せた。
だが処刑されたのは、雪姫の身代わりになった六郎太の妹の小冬であった。
雪姫が死んだと山名が思っている間が、脱出のチャンスだった。

姫の身代りになるなど、小冬も家臣として果報者であると言う六郎太に、雪姫は激怒する。
自分も16。
小冬も16。
命に軽い重いはない。

妹を犠牲にして涙ひとつこぼさない六郎太を、雪姫は責めた。
乳母は殿が嫡男に恵まれなかったため、雪姫を男のように育てたことを嘆いていた。
六郎太を責めているが、雪姫こそ、小冬のために涙ひとつこぼさないではないか。
しかし六郎太に怒りをぶつけた雪姫は、隠し砦の頂上で、小冬のために号泣していた。

太平と又七は故郷に帰るため、秋月と同盟関係にある早川領に入ることを考えていた。
しかも山名勢に道が占領されているため、わざわざ山名の関所を通る考えだった。
それを聞いた六郎太は、自分と姫が2人の道連れになり、その方法を取ることに決めた。

六郎太はお家再興の黄金を、金の延べ棒にして薪の中に仕込んでいたのだ。
太平と又七に協力させ、薪を運ぶと装い、馬に乗せて黄金を運ぶことにする。
問題は姫をどう隠すかだ。

いくら百姓娘の格好をさせても、人品はごまかせない。
そこで六郎太は、姫が口をきけないことにする。
こうして秋月の家臣たちは、六郎太に姫を祈る思いで託し、見送る。

道中、山名の兵に見つかりそうになったため、六郎太は馬で敵を追いかけ、斬る。
関所を越える時、薪に黄金が隠されているのをごまかすため、六郎太はわざと1本、薪を差し出す。
こんなものを拾ったと言う。
黄金を見た山名の家臣たちは薪を取り上げ、色めきだす。

六郎太は山名の兵に見せた薪を返せと言い、教えたのだから褒美を寄越せとごねる。
すると山名の侍たちは、六郎太を邪険に追い払う。
追い払った後で、殺したはずの雪姫が替え玉だった知らせが来る。

男3人、女1人で薪を運ぶ者は、すべて捕らえよ!という命令だ。
今の4人が、雪姫たちだった。
六郎太を追い払った兵の顔色が変わる。

雪姫たちは宿場町に到達した。
そこで、六郎太は見事だから馬を譲ってくれと言われ、銀を手に握らされ、馬を持っていかれてしまった。
雪姫は虐待を受けている娘を、その金で買い取った。

黄金を自分たちで運ばなくてはならなくなった太平と又七は文句を言うが、そこに雪姫たちを探しに山名の兵がやってくる。
しかし六郎太たちは馬も持っておらず、宿場町で買い取った娘もいたため、人数も変わっている。
山名の兵たちは、六郎太たちが雪姫一行とは気づかない。

さらに途中、六郎太は知己の間柄の山名の武将・田所兵衛と出会う。
2人の槍の勝負。
延々と場所を移りながら、2人は勝負を繰り広げる。

長い槍を振り回し、幕を引き裂きながら勝負は続く。
勝負は六郎太の勝利だった。
首をはねられるため、大地にひざまずいた兵衛に六郎太は「また会おう」と言って去っていく。

この六郎太の留守中に、雪姫の脚と眠る顔の美しさに、太平と又七は良からぬことを考えた。
しかし姫に助けられた百姓娘が石を振り上げて、2人をにらむ。
2人は、姫に手が出せない。

山名は火祭りの開催を利用して、薪を集めることを考えた。
祭りなら、薪が集まって来る。
薪を積んだ車を集め、そこから金を積んだ車を探すのだ。

六郎太は祭りのために集まった車と一緒に、薪を運ぶ。
知らない人々は、運ぶのを手伝う。
山名の兵が、薪を燃やすのを見張っている。

薪の中に金がしこまれていることを気づかれない為に、炎にためらいもなく薪を投げ入れた。
祭りが始まった。
人々が歌い、踊る。

人の命は火と燃やせ
虫の命は火に捨てよ
思い思えば闇の夜や
浮き世は夢よただ狂え

歌を歌い、踊る人々。
その生命力に魅了された雪姫も、輪の中に加わる。
歌を歌う。

翌朝、太平と又七は薪の燃え跡から金を探していた。
その頃ついに、雪姫と六郎太は捕らえられる。
黄金を拾った太平と又七だが、やって来た山名の兵に奪われてしまった。

六郎太と雪姫と百姓娘は、牢に捕らえられていた。
見張りの兵は、集まってくる兵たちに「金2百貫はまたと拝めんぞ」と言う。
だがさらに「拝むなら雪姫だ」と言う。
「これこそ目の果報。だが明日には打ち首とは」。

押し寄せる兵たち。
「寄るな寄るな」「頼む、拝ませろ」との応酬。
そこにやってきたのは、六郎太と勝負した田所兵衛だった。

兵衛は首実験に来たと言って、牢に入っていく。
気づいた六郎太は「おお、田所兵衛!」と声をかける。
扉が閉まる。
陰のシルエットとなった兵衛は、何も答えない。

「どうした兵衛」。
兵衛が入ってくる。
するとその顔の額から頬にかけて、斜めに大きな傷が走っている。
顔に裂け目ができたような、深い傷だった。

「どうしたその顔は」。
兵衛は黙っている。
「おぬし、人が変わったの」。
「変わりもしようぞ」。

「わけを話せ。敵味方に分かれても、貴公と俺は百年の知己だ」。
「知己?」
屈託のない六郎太の口調に、兵衛の顔がこわばる。

「なぜならなぜこの俺に。勝負に敗れたこの俺に。なぜ情けをかけた!」
「勝負に勝って相手の首を取らぬのは、情けと見えてこれ以上むごい仕打ちはないぞ!見ろ、この俺を」。
「見ろ!満座の中で大殿に罵られ、したたか打たれたこの傷を!」

すると雪姫が叫んだ。
「愚かな!」
「これが音に聞く田所兵衛か」。

「人の情けを生かすも殺すも、己の器量次第じゃ。また家来も家来なら、主(あるじ)も主じゃ!敵を取り逃がしたと言って、その者を満座の中で罵り打つ」。
「このわがままな姫にも、ようできん仕業じゃ!」
兵衛が沈黙する。

すると、百姓娘が「姫は私です!」と叫ぶ。
だが雪姫は「もうよい!志はありがたいがこれまでじゃ」と言う。
「姫は潔よう死にたい」。

六郎太も言う。
「姫!この六郎太、申し訳もありません。姫の身には、耐え難いこれまでの苦難。その甲斐もなく…」。
すると雪姫は言った。

「違うぞ六郎太!姫は楽しかった!この数日の楽しさは城の中では味わえぬ!」
「人の世を。人の世の美しさを。人の醜さを、この目でしかと見た。六郎太、礼を言うぞ!これで姫は悔いなく死ねる…」。
「姫!」

「六郎太!あの祭りはおもしろかった。あの歌も良い」。
そう言って、火祭りの時の歌を雪姫は歌う。
百姓娘は、泣き出した。

人の命は火と燃やせ
虫の命は火に捨てよ
思い思えば闇の夜や
浮き世は夢よただ狂え

処刑の日。
後ろ手に縛られ、馬の上に載せられた姫と六郎太。
百姓娘はただ、歩かされている。

兵衛はそれを、座って見ていた。
雪姫と六郎太が、後ろの兵衛を振り返る。
兵衛も2人を見る。

後ろには、野山が見える。
あれを越えれば、早川の国である。
それを見ながら兵衛は、歌を口ずさんだ。

人の命は火と燃やせ
虫の命は火に捨てよ
思い思えば闇の夜や
浮き世は夢よただ狂え

「ええい!」と言って、兵衛が立ち上がる。
「ようし燃やすぞ!馬の向きを替えい!」と兵に命じた。
「…いや、替えるな!」

そう叫ぶと兵衛は、金を積んだ馬を逃がしてしまう。
追おうとした兵に向かって、兵衛が槍を突き出す。
たちまち山名の兵たちは斬られ、1人2人と馬上から落ちる。
うろたえる雑兵たち。

兵衛は雪姫の縄を切り、六郎太の縄も切る。
「六郎太、急げ!姫を!」
そう叫ぶと、百姓娘の縄も切る。

雪姫に向かって、兵衛は叫ぶ。
「あっぱれ!将に将たる器!」
「大事にせい!」と兵衛は六郎太に向かって叫ぶ。

逃げていく山名の兵を追いかける兵衛。
雪姫が叫ぶ。
「兵衛!犬死無用!志あらば、来るが良い!」
雪姫の言葉に、兵衛が「はっ!」と言って、頭を下げる。

兵衛は槍を振り回し、雑兵たちを追い払う。
姫が馬を駆って走る。
六郎太も馬で走り、百姓娘の手を取り、ヒラリと馬に乗せる。
兵衛を恐れた雑兵は、近寄れない。

「裏切り、ごめん!」
兵衛はそう叫ぶと馬に乗り、走る。
山道を、馬は走っていく。
誰も追いつけない。

国境を越えた。
頂上で姫が、下を見下ろす。
百姓娘を乗せた六郎太が笑った。

姫も金を積んで逃げる馬を指差し、大笑いする。
兵衛も笑う。
あっはははは。
金を乗せた馬が、早川領へ走り去っていく。

一方、金を手に入れられなかった太平と又七は座り込んでぼやいていた。
「金を手にした時は、どんなにうれしかっただろう」。
「村に帰ったら仲良くやっていくべよ」。

泣いている2人の前に、金を乗せた馬が走ってくる。
馬は止まり、草を食べ始めた。
「うわあああ、金だあ!」
すると今度は2人は、金は自分のものだとケンカし始める。

「半分こ、と言ったはずなのに!」
「うるさい!」
2人は、つかみあう。

もめている2人の前に、早川の武将たちがやってきた。
「秋月家のご郎党か?」
「…ただの百姓だ」。

百姓のはずの太平と又七が金を持っている。
2人は怪しいものとして、捕らえられてしまった。
牢で、2人は「あの世へ行っても仲良くすべえな」と泣き出す。

2人は牢から出された。
いよいよ処刑と怯えきった2人。
平伏した2人は「又吉、太平!おもてをあげい!」と言う声に顔を上げた。

頭を上げると、そこには雪姫がいる。
「どうした、俺じゃあ!」と六郎太が声をかける。
だが2人は、きょとんとしている。

「無理じゃ!姫も見違えた!その拝領の鎧兜、よく似合う!」と雪姫が言う。
その通り、六郎太は秋月家の家紋入りの鎧を身にまとっていた。
「真壁六郎太!男ぶりが一段と上がったぞ!」
雪姫の声に、控えていた兵衛が笑う。

「又吉、太平。雪姫の顔も見忘れたかおしじゃ。おし娘じゃ!」
2人は雪姫の顔を、まじまじと見る。
美しい着物を着た雪姫が立ち上がる。
こちらに歩いてくる。

脇に控えている六郎太と兵衛が雪姫に頭を下げ、両側から歩いて雪姫に続く。
六郎太が言う
「又七、太平。お前たちには筆舌に尽くせぬ苦労をかけた。だがあの金は、秋月家再興になくてはならぬ軍用金。わしはもちろん、姫にも自由にならぬのだ。これで許せ」。

そう言って、薪に隠した金の棒を渡す。
「ほれ。ほうれ」。
恐る恐る、手にした2人に雪姫が「仲良う分けるのじゃ!けんかはならぬぞ!」と言う。
2人は褒美をもらい、城を出て来る。

城の階段を降りながら、2人は門を振り返る。
セミの声が聞こえる。
「これ、おめえ持ちな」。
「おめえ、持っててくれよ」。

2人は金を押し付けあう。
「だって、よう」。
「いいってことよ」。

へへへ。
へへへへ。
2人は笑って、城を後にする。
セミの声が響いていた。


やっぱり、これも時代劇、いや、いろんなドラマの基本になってますね。
古いですよ、でもおもしろい。
もう、たくさんの時代劇、ドラマ、映画を見ているはず。
それでなお、この古い白黒映画が、おもしろい!

六郎太、雪姫、兵衛の3人が脱出するクライマックスは、爽快。
観客の意表をつくより、観客が期待している展開を見せてくれるこの作りが良い。
スターウォーズは、この映画を参考に作られているそうですが、「ジェダイの復讐」とか、この作りまでも、ちゃんと継いでますね。

ハンソロ救出、反乱軍が帝国軍に勝利。
騎士として主人公が父親と対決、そして皇帝と対決。
息子の危機に父親らしい気持ちがよみがえった父親が、息子を助ける。

平和とロマンスの成就。
ジェダイの騎士たちの見守り、と観客の期待を満たしてるスターウォーズ。
観客が見たいものを、ベタであろうがちゃんと見せてくれる誠実な作り。
「隠し砦の三悪人」は、これです。

太平と又七は危機には「仲良くすべえな」と言う。
でも黄金見るとケンカ。
なくなると「仲良くすべえな」と言って、くっつく。
笑っちゃうんですが、ダイレクトに、金を前にした人の欲望をすなおに描いてます。

雪姫の上原美佐さんのセリフが、意外にも棒読み。
しかしこれが段々、男勝りだが心優しい姫が、意地を張っている口調に思えて来るのが不思議。
ずっと、口がきけない娘として、セリフがない設定が効いているんです。
黒澤監督は、かなり良い判断しましたね…。

そして、美しい。
ただ美しいんじゃない。
姫であることが納得できる、品格のある美しさ。

なりは百姓娘にできるが、この品格はどうにもならないと家臣たちが黙らせることに決める。
そんなことしなくても、別に大丈夫じゃないの?とは思わないんです。
途中、人買いが雪姫を見て「こっ、この女、売ってくれっ」って言葉に詰まっちゃう。
もう、際立ってるんです。

美しいだけじゃない。
気品、それがあるのは教養と気高い精神を持っているため。
守らなくては!と思わせる姫なんです。

兵衛に山名を裏切らせるんです。
裏切るのは、太平と又七じゃないんです。
殿に打たれたとは言え、兵衛は侍大将と互角にやりあうほどの武将。
主君に仕え、家を守る誇り高い侍。

これに「裏切りごめん」と叫ばせ裏切らせるからには、雪姫にはそれだけの説得力がなければ。
美しいだけではいけない。
雪姫の気高さが、この裏切りに説得力を持たせるんです。

また、すごいのが山名の兵を追う三船さんの殺陣。
両手を離して、刀を構え、追手を斬る。
あの馬のスピードでやるんですから。
手を離してる~!って言ってしまった。

延々と続く兵衛との決闘。
長槍の扱いだって、すごい。
でも自分が一番惚れ惚れとしたシーンは、百姓娘をヒラッと馬に乗せて逃げたシーンです。

片手で、まるで紙の人形のように軽々と乗せて走る。
どういう力なの!?って思いました。
すごい。

私は女性、悪女が登場すると「おもしろくなってきたぞ~」とワクワクしますよ。
でも三船さんが演じる侍を見ると女の出る幕じゃないなあ、って思ってしまう。
そのぐらい、男っぽい。

また三船さんスタントではなく、自分で演じてるらしいから、すごい。
この人についていけば、大丈夫なんだよ!大将なんだから!と、思わせる強さ。
「あなたの後ろが一番安全!」と、若い青年のところからスティーブンセガールの後ろに駆けて来るヒロインの気分です。

六郎太は相手が真の武士なら、敵であろうと敬意を払う武将です。
だから捕らえられても堂々として、威厳と迫力がある。
中村敦夫さんが、三船さんは侍に成りきってしまうと言いましたが、三船さん見ていると「侍がいる…」って思います。
きっと侍ってああだったと思います。

姫の将たる資質に、山名を裏切った兵衛。
妹を犠牲にしても守る六郎太。
姫に恩義を感じ、その気高さと優しさに打たれた百姓娘も姫を守る。

対してさっさと褒賞金のために、山名側に走る太平と又七。
姫、六郎太、兵衛と百姓娘と対照的に、百姓の太平と又七には金が全て。
刹那的で愚かで卑しいが、それが戦争時の百姓でもある。

対照的な人間が存在するからこそ、違いが際立つ。
それを表現する俳優さんたち。
侍と百姓の佇まい、口調、演技が、まったく違う。
姫と百姓娘も、まったく違う。

この道中で元々、将たる資質を持った雪姫は、さらに良い主君になることでしょう。
雪姫、六郎太、兵衛が人間としての気高さを見せてくれて、太平と又七は変わったか?と思わせるラスト。
それぞれの人物があるべき場所に収まり、物語が見事に収束して行く爽快な映画です。


己の事ばかり考えれば己も滅びる 「七人の侍」

子供の頃、学生の時と見ましたが、今見るとこれはやっぱりすごいですね。
久々、本当に久々に、黒澤明監督の「七人の侍」を見ました。
マンガには手塚治虫、映画には黒澤明。
他にも、日本が今日、栄えているジャンルには奇跡のような天才がいるとは思いましたがこれはやっぱり、すごい。

今ならこういうドラマは作れるでしょうが、これを最初に作ったっていうのは、やっぱりすごい。
というか、これが原点なんでしょうね。
だって見覚えがあるシーンが出て来ますもん。

これが原点なんだって、わかります。
3時間半の映画は最初に見る前は「長い」と思いましたが、長いどころか少しも飽きることがなく、夢中になって見ていました。
今度も同じ。


島田勘兵衛・志村喬さん。
七郎次・加東大介さん。
岡本勝四郎・木村功さん。

片山五郎兵衛・稲葉義男さん。
林田平八・千秋実さん。
久蔵・宮口精二さん。
菊千代・三船敏郎さん。

これを見ると、この方たちが後に演じた役がまた、違って見えます。
この俳優さんたちにとっては、永遠の誇りでしょう。
俺は七人の侍を演じた、これはもう、宝石のように輝いて色あせなかったことでしょう。
私なんかが今さら語ることもない、名作ですが、見たらやっぱり語ります。


また生き残ったな。

すべてが終わった後、志村喬さん演じる侍・島田勘兵衛がつぶやく。
百姓たちが田植えをしながら、太鼓や笛を演奏し、踊っている。
去っていく3人の侍たちが、それを見ている。
7人の侍のうち、生き残ったのは島田勘兵衛、七郎次、岡本勝四郎の3人。

勘兵衛が去っていく。
七郎次が続いて、後を追う。
勘兵衛と七郎次が戦った、かつての戦は負け戦だった。
2人は離れ離れになり、勘兵衛は浪人として暮らした。

勘兵衛は若い武士で浪人希望の岡本勝四郎に、その暮らしのつらさを語り、考え直すように諭した。
「腕を磨く、そして戦に出て手柄を立てる。それから一国一城の主になる」。
「しかしな、そう考えているうちにいつの間にか、ほれ。このように髪が白くなる。そしてな、その時にはもう、親もなければ、身内もない」。

戦いの経験がなかった勝四郎。
今度のことで、彼は過酷な経験をした。
そして彼は結果的に、菊千代によって命が助かった。

七郎次は戦の後、勘兵衛と離ればなれになり、物売りとして暮らしていた。
平八は、明るい男だった。
つらい境遇であったが、人を思いやる心を失ってはいなかった。

久蔵は剣客で、己を磨くだけに生きているような凄腕の男だった。
しかし、心の底には優しさを持っていた。
村は野武士の襲撃に対抗するため、この7人の侍を雇った。

その村に、落ち武者狩りの武器があったのを見た時、菊千代は、はしゃいだ。
だが七郎次はじめ、侍たちは激怒した。
無口な久蔵が、この村の者を斬りたくなったと言った。

その時、菊千代は言った。
「百姓を何だと思ってるんだ?百姓ってのはな、米出せっちゃ『無え』、麦出せっちゃ『無え』。何もかも『無え』って言うんだ。ところがあるんだ。何だってあるんだ」。
「床板ひっぺがして、掘ってみな。そこになかったら、納屋のすみだ。出てくる、出てくる、瓶に入った米、塩、豆、酒」。

「正直づらして、ペコペコ頭下げては嘘をつく。戦でもありゃあ、竹槍作って落武者狩りだ」。
「百姓とはケチん坊でずるくて、泣き虫で意地悪で、間抜けで人殺しだ」。
「だがな、こんなケダモノ作りやがったのは一体誰だ?おめえ達だよ!侍だってんだよ!」

「戦のために村は焼く。田畑ふんずぶす。食い物は取り上げる。人夫はこき使う。女漁る。手むかいゃ、殺す」。
「一体百姓は、どうすりゃいいんだ?!」
「どうすりゃいいんだ!?」
「お前、本当は侍じゃないだろう」とからかわれた菊千代が、これを言う。

また、菊千代は親を失った赤ん坊を抱いて「こいつは俺だ」と泣いた。
俺もこうだったんだと言った。
七人の侍たちの、これまでの人生がうかがえる。

戦いが終わり、去っていく勘兵衛たちの前に、土で盛られた墓がある。
娘たちが、侍たちの前に歩いてくる。
もう娘たちは、侍を見ない。
挨拶もしない。

娘たちの中に、勝四郎と淡い思いを交し合った村娘・志乃がいた。
野武士に奪われた女性の二の舞を心配した父親は、志乃が侍たちに奪われることを危惧していた。
だから志乃の髪を切り、男性の格好をさせた。

勝四郎と志乃は見詰め合うが、志乃は目を伏せ、走っていく。
そして、田植えの列に戻る。
勝四郎は百姓たちを、いつまでも見ている。

だが志乃はもう、土だらけの手で汗を拭い、歌いながら田植えをしている。
元の生活に戻るのだ。
侍も、戦いもない、百姓の暮らしに。

勘兵衛は墓の前で、腕組みをしていた。
「今度もまた、負け戦だったな」。
「ほ?」
七郎次が聞き返す。

だって、自分たちは生き残った。
野武士たちは全滅した。
自分たちは、勝ったのではないか?
今度は勝ったのではないか。

だが勘兵衛は言う。
「勝ったのは、あの百姓たちだ」。
「わしたちではない」。

墓の一番上にある、4つの土盛り。
4人の侍・菊千代、平八、五郎兵衛、久蔵の墓だ。
墓には、刀が供えられている。

あの戦いの激しさ。
百姓の暮らし。
去っていく生き残った侍。
菊千代は戦いで誰よりもたくさん、野武士を斬った。

侍たちはみな、優しさを持っていた。
だがやはり、侍と百姓は違う。
侍たちは、平和な百姓の暮らしには必要がない。

勘兵衛の気持ちは、具体的に語られることはない。
だから、何を彼が思っていたのかは受け取り方による。
だが、彼の胸には勝利ではなく、敗北感が広がっているのがわかる。

流浪の身が今まで得たくて得られなかった何かを、得られるのではないか。
だが命がけで戦っても自分たち侍はもう、彼らには必要ない。
侍の自分たちが心から信頼され、ここが帰る場所になる、そんなことはありえない。

血を流して戦っても、何かを生み出す土地を得るわけでもない。
侍とは何なのか。
そんな思いが消えない。
だから勘兵衛には、今度も負け戦なのだ。

しかし、勘兵衛は言った。
「人を守ってこそ、自分も守れる」。
「己のことばかり考える奴は、己をも滅ぼす奴だ」。

百姓は、自分たちは稗や粟を食べ、侍たちに米を食べさせた。
侍たちは、その百姓たちへの義のために戦った。
なぜなら、侍だから。

そして…。
「ある山間の小さな村に、侍の墓が四つ並んでいる」。
「野心と功名に憑かれた狂気の時代に、まったく名利を顧みず、哀れな百姓たちのために戦った七人の侍」。

「彼らは無名のまま、風のように去った」。
「しかし彼らの優しい心と、勇ましい行為は今なお美しく語り伝えられている」。
「彼らこそ、侍だ」。

何も得られなくても命をかけて、戦って村を守った七人の侍。
彼らの伝説は、ずっとずっと語り継がれていたのだ。
「人を守ってこそ、自分も守れる」。
「己のことばかり考える奴は、己をも滅ぼす奴だ」。


時代劇専門チャンネルさん、放送ありがとう。
戦後70年企画にふさわしいとわかりました。
今、NHKでも、放送してほしいです。


拙者は薩摩の… 「人斬り」予告

今、時代劇専門チャンネルで映画「人斬り」の予告をやっています。
時代劇専門チャンネルの予告のうまさにはいつも感心しますが、これもまたすばらしい。
見た時、タイトルが「人斬り」なんで、人斬りが出てくるのは当たり前。
なのに、「岡田以蔵に田中新兵衛か…、人斬りだな…」と思ってしまった。

五社英雄監督。
主演・勝新太郎さん。
勝さんが土佐藩の「人斬り」、岡田以蔵を演じます。

予告見ただけで、パワフル。
その豪快な、人と一緒に窓の格子も真っ二つに斬れる殺陣が、以蔵とは怪物じみた腕の持ち主だなと感じさせる。
しかし、その怪物ぶりとは逆に、勝さんの目の綺麗なこと。
澄んだ目をした男が人斬りなんだから、これだけで悲劇だなとわかってしまう。

また、共演者がすごい。
武市半平太に、仲代達矢さん。
冷酷な独裁者的な、つまり絶対的な上から目線といった声色で、以蔵に命令してます。
「私の命ずるままに人を斬ればいい」。

そして、薩摩藩の田中新兵衛には、何と、三島由紀夫氏。
「拙者は薩摩の田中新兵衛」。
そう名乗る声に、演技はどうなのかわかりませんが、存在感はある。

田中新兵衛だから、最後に自刃して果てるシーンがあるはず。
三島由紀夫氏がそれを演じる。
映画の評価とは関係ないところでこの作品は、センセーショナルな扱いを受けたと想像がつきます。

坂本龍馬が、石原裕次郎さん。
おお、どこか育ちの良さそうな、現代風。
当時としては龍馬は革新的なんだから、これでいいのかもしれない。
放送が楽しみです。