土曜の夜はパラダイス 「俺たちひょうきん族」

年が明けてから、懐かしの歌謡曲など、過去の名曲を特集する番組を良く見るような気がします。
昨日も70年代~80年代の歌謡曲の名シーンなどを集めた番組を放送していました。
一昨日はスプーン曲げで騒ぎになったユリ・ゲラーやUFOや未確認生物の映像を集めた番組をやってましたし、今日はお笑い系の番組を集めた特集が放送されるみたいです。

局が違うので、「みごろたべごろ笑いごろ」はないですが、「ひょうきん族」はありますね。
これは本当に今では考えられないすごいメンバーが毎週レギュラー。
80年代の最強のお笑い番組でした。
というか、ここから一流、超一流になったメンバーがいた、というべきでしょうか。

これは最終回。




「ひょうきんベストテン」という、「ザ・ベストテン」をもじったコーナーがあり、こんな風にたまに大物芸能人が出てくれました。
これはYMO。




最後に「ひょうきん懺悔室」というコーナーがあって、本番でNGを出した人が懺悔して審判を下されます。
許された場合は紙ふぶきが降ってきますが、許されなかった場合はバケツの水をかけられます。

こちらはナイターで「ひょうきん族」が続けざまに中止になっていた時、後のフジテレビ会長・日枝氏が局長として懺悔させられたシーンです。
こういうことをしてしまうところが、人気だったんですね。
当時の上層部の方もシャレが利きましたねー。
内輪ネタで芸能人が遊ぶ悪ふざけにせず、ギリギリの境界線で視聴者を楽しませていた番組だったと思います。




煌く才能が集まって偶然のようにできた奇跡。
その後のバイブルとなる番組という点で、「傷だらけの天使」と同じだと思いました。

これでエンディング曲になると、「楽しかった~」という思いと「終わりだな~」というちょっと寂しい思いがしたものです。
良い番組を見た後って、ジャンルを問わずこんな気持ちになりますよね。




たけちゃんマンと対決するさんまちゃん。
ブラックデビル、あみだババア、パーデンネンなど名キャラクターが次々出てきました。


スポンサーサイト

敵は警視庁、尊王討奸 「226」

1989年作品。
ちょうど平成元年ですか。

冒頭、失業にあえぎ、自分が作った米を口にすることもなく、兵士たちの姉や妹は身を売らねば食べていけない、庶民の塗炭の苦しみが述べられます。
「天皇陛下はこのような国民の惨状を決してお望みではない!」。
そう檄を飛ばし、陛下の周りにいて国民の本当の姿を教えない特権階級に対して「昭和維新」を起こすことを決意する皇道派の陸軍青年将校たち。
鮮やかな紅葉の時に集まった青年将校たちは、白い雪の東京で決起する。

始まって30分、「226事件」が描かれます。
「親を殺されるのを黙ってみている子供がいますか!私を殺してください!」
「お父様が!」
「私を殺してください!」
「なぜ、なぜこんなことを!」
邸宅に踏み込み、泣き叫ぶ家族の面前で重臣たちを「天誅!」と言って殺害する将校たち。

ええ、ずいぶんと前ですが「右翼」の方にインタビューしたという記事を読んだことがあります。
彼らは殺害する相手に全く個人的な恨みはない。
ただ、日本の為にならないと思うから殺す。
だからちゃんと殺した後は服役するし、殺した相手には敬意を払うし、命日には墓参りもする。
その方はそう語っていました。
いや、凄まじい話ですが、「信念がなくて人が殺せるものか」と言うその精神の前に私なんぞが何を言っても、と思いました。

226の彼らは将校ですから暮らしぶりを見ても立派なお雛様があったり、おもちゃがあったりと、あんまり生活には困っていたようには見えないんですね。
つまり、彼ら自身は別に困ってなかったんじゃないかと。
それなのに彼らは決起した。
彼らは部下の家族の窮状を、そして本当に陛下の、日本の為と思っていたのでしょうね。
「尊王討奸」。
しかし、青年将校たちは逆賊の汚名を着ることとなります。

彼らは別れてきた家族を思う。
風邪を引いていた妻、一緒に相合傘で歩いた妻、「子供ができました」とうれしそうに耳元で囁いた妻、洗濯物を干す妻と縁側で遊ぶ子供、海辺の近くで遊ぶ妻と子、お雛様を前に眠っている妻と子…。
その時、彼らの脳裏には「私を殺してください!」と嘆き叫ぶ、彼らが討伐した政治家たちの家族の姿がよぎります。
「すぐに戻ってくるよ」と言って出て行った家。
もう二度と会うことがない家族。

このまま投降しなければ、同じ陸軍同士で戦わなければならなくなる。
助けようとした部下たちまでが逆賊と呼ばれ、処罰される…。

同じ陸軍の友人・伊集院少佐(松方弘樹)と対峙した安藤大尉(三浦友和)は叫びます。
「お前が部下たちの為に何をしてやったと言うんだ!」と言われ、「俺はこれが終わったら死ぬよ」と言う伊集院少佐。

今ならただ上官である自分たちの命令に従っただけだということで、許される。
部下たちを開放して命を助けてやろうと言う、野中大尉(萩原健一)。
時が早いのではないか、失敗すれば逆賊の汚名を着ると言っていた安藤は話し合った時に野中がハンカチに記した決意の書を取り出し、これが俺を熱くしたのだと責める。
言葉もない野中。

安藤大尉は部隊を解放した後、自決。
野中は安藤に返されたハンカチを燃やす。
しかしもう安藤は恨んでいない。
野中と安藤は固い握手を交わして、別れる。
部屋に1人になった野中は、ひな祭りの干菓子を包んでいた紙を開くと妻への詫び状をしたためる。

そして事態は収拾。
投降したそれぞれの将校たちは起立の姿勢で階級章をむしりとられ、帽子をひったくられていく。
彼らが背にした扉の向こうで、野中が自決する銃声が響く。
彼らからは見えませんでしたが、野中大尉は一度、ピストルをくわえるも引き金を引けず、二度目で自決します。
それはみっともないのではなく、彼らが「青年将校」という得体の知れない存在などではなく、人間であったということ。

青年将校たちは、銃殺刑に決まった。
彼らが家族と過ごした姿に重なる辞世の句。
とどろく銃声。
襲撃の際、負傷して熱海の病院で治療されていた河野大尉が自決している姿。
「天皇陛下万歳」という野中大尉の声、海辺で家族と過ごす笑顔と銃声で終わります。

彼らは最年長でも30代前半だったそうです。
本当に戦前、戦中の人は成熟するのが早いと言うか、それだけ時代が過酷だったというか。

映画では描かれていませんが、彼らが大切にしていた家族はどうなったんでしょうね。
逆賊と呼ばれたんですから、その後大変だったことでしょう。
坂井中尉(加藤雅也)がすごく凛としていて、しかも部下思いで、人間らしくて良かったです。

思想や美学に彩られることなく、彼らに青春があり、家族がある普通の人間だったことをきちんと描いたこの映画。
結果的にこれで彼ら皇道派と対立していた統制派が権力を握り、軍国主義へひた走る原因になってしまったのですが、皇道派VS統制派などが描かれてはいないので、この辺はわかりにくいです。
でも、この映画は彼らの苦悩と人間性を描いたのですから、これでいいのかも。

彼らの要求は農地解放や、財閥解体。
終戦後になされたことでした。
つまり、226事件とは彼らが権力闘争の末に起こした事件ではないこと。
226事件への誤解も解けるかもしれない、豪華なキャストと骨太な音楽。
いい映画です、ショーケンがこういう映画に出ていてくれて良かった~。


五社英雄監督。
寒そうだなあ、昭和11年の2月26日の東京。

226 [DVD]226 [DVD]
(2009/02/25)
萩原健一三浦友和

商品詳細を見る


この記事を2月27日になって書いてるところが、自分・ダメダメです。

傷だらけの天使、最終回、ラスト

最終回、今回は見事なまでの崩壊劇です。

最終回、辰巳もボロボロ。
この変貌振りが過酷な潜伏生活と、貴子への思いを感じさせますねえ…。
修を刺すのではないかと思うほど、辰巳の顔は思いつめて見えました。
声だけは、いつものクールな辰巳でしたが。

「あの人のことだからうまくやっているはず」「そうだな」と、修にも京子にも言われていた辰巳。
その辰巳が今回取った行動、それはいつも修と亨がやるようなことだった。
損得抜きで動く修と亨の裏をかいたりしていた辰巳は、それを笑う側だった。
その辰巳は最後に海津警部に思いっきり「みっともねえ」と言われ、あざ笑われ、手錠に繋がれた。

そして貴子。
「日本はもうダメよ!」と叫んでいた貴子。
警察に追われるようなことも合ったけれど、それ以外で何かとても傷ついて失望していたよう。
ついに日本を捨てる覚悟を決めた。
そして貴子が最後の最後に長い逃亡への旅になる時に選んだのは、辰巳にも京子よりも下の立場のはずの修だった。

中華料理店に修が来るまで、貴子は1人で脱出するつもりだったんでしょうか。
中華料理店のマスターに、「あなたに捨てられたおもちゃの兵隊」と言われて、気持ちが動いたんでしょうか?
貴子にとって修って何だったんでしょう?

ずっとずっと「傷だらけの天使」はあれで終わりと思っていました。
だから続編はないことを前提に話しています。

貴子は劇中では捕まってないからわからないですけど、あそこまで海津警部が来ていたんだからろくなことにならなかった気がするんですね。

修を一人前のワルに育てる…、本当にそれで連れて行くつもりだったんでしょうか?
貴子の行方を探りに行った弁護士事務所での修の脅し。
女性の顔にピッタリ顔を寄せながら、下から「やっちゃうぞ、おい、やっちゃうぞお!」。
「あんたじゃ話になんねえや」と修がドアに行くと、「警察呼びますよ」と言われる。
「おぅ、呼んでくれよ、早く!」と言ったが、女性が受話器を取ると急いで取り上げ「冗談だろう!」。
それを見た女性がバカにしたように修を見るけど、急に大人しくなった修は、「あのぅ…、もし何かわかったら、さっき教えた電話番号にかけて…、お願いします」と言うとお辞儀をして出て行っちゃう。

そんな修が本当のワルになれると思ってたんでしょうか。
そうじゃなくて、長い逃亡生活となるはずの旅の傍らに修がいてほしかった…のではないでしょうか。

そして亨。
どうしてもいつも置いていかれてしまう亨。
誰かの大切な人になれない亨。
今度も辰巳の頭からも、貴子の頭からも亨の存在は消えていた。
いつもそうだからこそ、亨は修にとってかけがえのない存在になりたかった。

亨には常に、常に!修にも去られるのではないかという不安があった。
亨にとって修は全てだった。
修になら、自分の心臓もくれてやったかもしれないほどの存在。

それなのに修は離れていこうとする。
しかも、体の自由がきかなくなりかけている、そんな時なのに。
だから亨は苦しくて、つらくて、寒くて、修にすがり付いていた。
寂しくて、怖くて、ひたすら修に居て欲しかった。

修にとって亨は何だったのか。
空気だったと思うんですね。
存在感がないという意味ではなく、そばに居ることさえ意識していない当たり前の空気のような存在。
いなくなるなんてことを前提にしていないほど、当たり前の存在。

あの、「アニキいー」「アニキ」「アニキ」「行かないでおくれよ」は一生、修の耳に残りますね。
修を呼ぶ声は、亨のすがりつくような目と共にずっと、ずっと修の中に蘇っていくのだろうと思いました。
身をよじるような後悔にさいなまれながら、修はその声を聞き続ける。
…たまらないですね。

修に言いたいのは、亨は修を恨んだかっていうと、そんなことはなかったと思う、ということ。
修があの時でも、その後でもいい、とにかく亨のところへ帰ってきたのを見ることができたなら、亨はきっとうれしそうに笑ったと思う、と。
だって亨は修の事を慕って、呼び続けていたじゃない、と。
(いや、だからたまらないというのはわかりますが)。
でもこの2人の中には誰も入る余地なんかない。
だから、こんなこと言うのは余計なことなんですね、きっと。

「傷だらけの天使」世界ではピラミッドの一番上にいた綾部貴子も、その下の辰巳も破滅し、もちろん修も、そして亨も見事に幸せになれなかった。
「傷だらけの天使」はそれはもう、続編はできないほど(と思ってました)徹底的にその世界を壊して終わります。
謎の中国人マスターが話した通り、「お遊びの時間、もうおしまいね、みなお開きよ」になったわけです。

タイトルは「祭りのあとにさすらいの日々を」。
人生のお祭り騒ぎが終わって、修は1人生きていかなければいけない。
あとには色あせた日常が残っているだけ。
もうあの街には誰もいない。

その後、修はどうしたんだろう。
私はそれでも修は空しさを抱えながら、一人でちゃんと生き抜いていったと思うんです。

まるで、「新・必殺仕置人」のラストシーンで仲間を失いながら、たった一人残され、仲間が誰もいなくなった町で袖の下を貰い、笑みを浮かべて日常に戻っていった中村主水のように。
修は修のやり方で。


日本ドラマ史に残るショーケン・修、傷天についてはまた書きたいと思いますが、レビューはこれで終わりです。
いや~もう、終われた~。
読んでくださった方、本当にお疲れ様でした。
ありがとうございます。

傷だらけの天使、最終回、その3

咳をする亨と座り込む修はトランクを挟んで、向かい合った。
「向こうから手紙出すからな」と修は振り切るようにして立ち上がり、部屋を出て行く。
「ちょっと待ってよアニキ」と亨が床を這って行く。
「ねえ、アニキ待ってよ、どこ行くんだよ」。
修はペントハウスの階段を走って下りていく。
「待ってよ~、アニキ」。

振り向いた修、ペントハウスを見上げながら「出世したらよお、きっと帰って来るからよ」。
「口ばっかしじゃねえか、アニキはよぉ~」
「俺がそんなに信用できねえのか」
「誰が信用するかよぉ~」
「てめえ、ふざけんなよなあ、俺が絶対帰ってこねえと思ってんのか!」

亨がペントハウスの階段を這いずって下りてくる。
「ああ、わかったよ、今度こそ、アニキって人間がわかったよ。調子ばっかし良くってよ、結局自分のことしか考えてない、血も涙もない人間なんだよ…」。
亨が階段を下りて、屋上の床に着く。

「わかんなかった俺がしょうがねえんだけどよ。しょせん、赤の他人同士なんだから」。
亨が屋上で這っている姿を後ろに、修はビルの入り口を降りていく。
「アニキぃ~、病人を粗末に扱いやがってよ。嘘つきぃ~」。
屋上への入り口から亨が這ってくるのが見える。

降りていったはずの修の靴が、入り口の影から見える。
「アニキいー、アニキいぃー」。
亨が修が消えた入り口に向かって弱々しく修を呼び、大きく咳き込む。
「アニキいぃ」。
しかし、修は階段を降りていった。
「アニキいい、アニキいー」。

亨は仰向けになると、「とうとう行っちまいやがった…」と言った。
「ちょっと寒いな…」。
そう言って自嘲気味に笑うと、ポケットから馬券を出して見た。
「2-7の穴があるからよ、これさえ当たればあいつなんか戻って来なくたっていいんだからよ。ラジオ、聞かなきゃ。ラジオ」と言いながら亨は来た道をまた、這いずりながら戻っていった。

修はタクシーの運転手に横浜に行く前に、日曜日でも開いている薬屋を探してくれと頼む。
運転手は「今の風邪は注意しないとすぐ肺炎になるって、ラジオで言ってましたからね。急性肺炎になったら一晩でコロリだそうですよ」と言った。
「…だから、行ってやりたいんだよ…。見舞いに」。

横浜港では人々が船のタラップを踏んで乗り込んでいた。
それを影から布のバッグを持って見ている男。
労働者風の身なりにセットしていない髪、無精ひげが生えかかっているが、辰巳だった。
時計は3時を少し過ぎたところだった。

ペントハウスの階段をそっと修が登ってくる。
部屋のドアを開けると、散らかった部屋。
「亨あ。戻ってきたわけじゃねえぞ」と、部屋の真ん中で毛布に包まっている亨に声をかける。
「亨…、亨よ?こんなとこで寝てたら、体壊すぞ」。
返事はない。
「おい、おいっ。時間ねえんだからさ」。

毛布の塊を抱き起こすと、「おい、風邪薬飲めよ」と、毛布の中から亨の顔を出す。
だが亨の目は閉じたままだった。
修は亨の顔を覗き込む。
「亨ぁ…」。

しかし修が手を離すと亨の体はそのまま、後ろに倒れた。
目を閉じた亨は、そのまま床に頭をぶつけても何の反応もなかった。
開け放したドアや窓から、駅の電車の発車ベルの音が鳴る。
「おいっ?!冗談じゃねえぞ…、亨。え?!亨っ!」。
電車が発車する音が響く。
「亨あっ!」

何度、どこから声をかけても、亨は動かなかった。
「亨、亨!よお!亨っ!」
馬乗りになって揺り起こしても亨は起きなかった。
電車が走っていく音がする。
「…いっちゃった」。

港で寒さに震えていた辰巳は、はっとした表情を浮かべると走っていく。
目線の先にはタクシーがあり、船のタラップの下に止まると、綾部貴子が降りて来た。
杖をついた貴子は辺りを見回す。
港にある時計の4時への針がまたひとつ進む。
貴子は辺りを見回していたが、タラップをゆっくりと上り始める。
布のバッグをを抱えながら見守る辰巳。

貴子が乗船した時、港のトラックの陰から海津警部が現われた。
貴子の姿を見上げていた辰巳は、海津警部に気づいた。
バッグのファスナーを開くと、中から出てきたのは長く、大きな包丁だった。
海津がバスの横を通った時、辰巳は包丁を手に海津をバスに押し付けた。
「動くな、海津!」

貴子は船の上からまだ港を見ている。
海津に包丁を突きつけながらも貴子の姿を目で追っていた辰巳。
「何のつもりだ!」
船が発つドラが鳴る。
「一緒に見送りましょうよ…」と言うと、辰巳は海津の首元に包丁を突きつけた。
「貴子さん…」。
船は曳航され、港を離れていく。

「ああ、辰巳さん、おめえさんの勝ちだ」と海津は辰巳の包丁を持った手を、ポンポンと叩いた。
船を見送りながら辰巳はなおも海津の背後に回り、海津を歩かせる。
「そういや、昔、こんな場面、どっかで見たような気がするな」。
「ペペルモコです」と辰巳。

「知ってるよ、昔、新宿の武蔵野館で見た。主演の刑事、イカしたなあ」
「僕の時代は池袋の人生座でした。懐かしのジャンギャバン主演で」
海津は「ペペルモコのつもりか、え?」と言うと、「ギャバンさん、吸わねえか?」とタバコを出した。
辰巳の目は遠く、船を追っている。
辰巳が船を見ながらタバコを受け取った瞬間、海津は辰巳の肩を押すと転ばせた。
包丁を振りかざした辰巳の右手に、海津の手錠がかかる。

辰巳は左手で包丁を拾うと手錠で繋がった海津に向かって、「離せ!離せ!逃げたいんだ!」と振り回した。
「みっともねえ声出すな…」と言う海津に向かって、辰巳は包丁を振り回す。
海津は「青二才!」と言うと、辰巳の足を蹴った。
辰巳は見事に地面に転んだ。

修は暗くなったペントハウスで横たわっている亨の前にいた。
「亨あ…、お前…。風邪で死ぬなんて、おっかしくて涙も出ねえよ…。アトラクションボーイなんてやるから、いけねえんだぞ?」
修の声は優しかった。
「あんなのやって、お前、いくらになるんだ。お前、ほんっとにバカだよお。俺…、もうどこにも行かねえから…」。

「亨よ。寒いだろう?風呂入れてやるよ。な?風呂!」
修は泣きながら風呂を炊いていた。
亨は風呂の中で崩れ落ちていく。
「あったかいだろう?亨あ…。今、女抱かせてやるからな」とすすり泣きしながら、ヌードグラビアを亨の体に貼り付ける。
「あったかい?」

修は亨を拭いて、着替えさせる。
亨の頭には青いタオルが巻かれている。
その時、解体工事に来た男が2人、入ってきて「何だ、君たちは!」と驚く。
「…何だてめえら。人んち土足で入ってきやがって!」
修は激怒して工事の人間を追い出した。
「主任!」という声がして、建設会社の名刺をくれた男が「あ、まだいらしたんですか?」と、入ってきた。

そして「すいませんが、ここだけ今夜中に取り壊すことになったんで、すみませんが出てってもらえますか?」と言った。
動かない亨を見て、「どうかなさったんですか?病気ですか?」と言う男に修は「ええ、病気なんです」と答えた。
男は荷物の方は自分たちでまとめて運ぶと言うと、「お大事に」と出て行った。
窓の外からは解体工事の音が聞こえてきた。

窓の外を見ていた修は亨に向かって「出てけってよ」と言った。
「行こう」。
亨を大切に抱えて起こすと、上着を着せる。

亨を背負って修は階段を降り始める。
「亨…、亨。亨よ…、返事しねえな、亨」
修は一歩、一歩、階段を降りる。
背中の亨に向かって修は叫ぶ。
「まだよぉ、まだ墓場には行かねえからよ!」
屋上を歩きながら修は叫ぶ。
「俺、今日おごってやる、一杯!行くぞおーっ!」

翌朝、紙くずが舞い散る、ゴミ捨て場・夢の島でドラム缶をリカヤーに載せて引いてくる修が遠くに見えた。
修はリヤカーを止めると、ドラム缶を下ろした。
ドラム缶を横にすると、地面に転がす。
ドラム缶の中には、頭に青いタオルを巻いたままの亨が納まっていた。
ドラム缶と亨がクルクルと回る。

修はドラム缶を見下ろしていた。
ドラム缶を見ながらリヤカーに戻った修は、もう一度ドラム缶を振り向いて見た。
そして振り切るように修は走る。
振り返らないで走る。

もう誰もいない。
修は1人きりで、ただ走る。

傷だらけの天使、最終回、その2

翌日、修は中華街にいた。
一軒の中華料理店を見つけると、中に入る。
「しばらくだねえ~、修ちゃん。今、あんた、何してるね?」と迎えてくれた日本語が少々怪しい黒メガネのマスター(下川辰平)。
修に顔を寄せると「綾部さんのことかい?」と聞いてきた。

「知ってんのか?」
「もちね。みな、悪事の末の最後、私のとこに相談来るからね」と言うと、修を奥に連れて行こうとしたが修は「ここでいいよ」。
マスターは「あの人、もういないよ」と言った。

ナホトカ経由でロシア抜けてヨーロッパ、港で自分が見送ってきたと言う。
辰巳は別のルートで脱出するつもりらしいと、マスターは言った。
そして修に「あんたもどこか行くか?パスポート作ってあげようか?お安くしとくよ」と言う。
無言で出て行こうとした修を呼び止めるとマスターは、「お遊びの時間、もうおしまいね、みなお開きよ」と言った。

マスターは、「困ったことがあったらまた来いよ」と言ったが、修が出て行くと「綾部さん、お待たせしました」と声をかけた。
「帰ったようね」と綾部貴子が階段を降りてくる。
「帰るとこないね、あの男」と、マスター。
「あの男、あなたのおもちゃ箱から落ちた鉛の兵隊さん。川に落ちたおもちゃの兵隊さんどこ流れていくか。遊びが過ぎたのよ、貴子さん」。
貴子はマスターを見ると、「ありがとう」とだけ答えた。

修の部屋で電話が鳴る。
京子からだった。
どうしても会わなきゃいけない用事ができたので、明日の朝、9時、新宿駅西口で待っていると京子は言った。

京子は大学時代の友人のアパートにいたと言う。
バラバラに逃げたので辰巳のことはわからないが、辰巳のことだから、きっと安全なところに居るだろうと京子は言った。
「だろうな」と修も言った。

「会えて良かったよ、俺1人おいてきぼりを食ったかと思った」と言う修に京子は「私、時間がないの。用件だけ言うわね、社長からよ」と言うと、バッグから封筒を出した。
「金か」と言う修に「いいえ、パスポート。もちろん偽物」。
「夕方4時に横浜、大桟橋を出るナホトカ経由の船に乗ってちょうだい。社長も一緒よ」
「社長まだ日本に居るのか」。
「あなただけは連れてていくらしいわ」と言う京子。

「社長みたいな本当のワルってどこまでもかっこいい。私も憧れたけど結局ダメね。私みたいな中途半端が一番惨めよ」と言うと、京子は修に「あなたもこのままで居たら新宿のクズで終わってしまうわよ」と言った。
「ここらで心を決めて、ワルなら悪に徹することよ。クズで終わりたくなかったら社長についていくのよ、どこまでも!」
「京子ちゃんは?」と聞いた修に京子は、長崎に帰るのだと言った。
故郷にはフィアンセがいて、「女の子ってこういう時便利よね、つぶしがきいてダメならかわいいお嫁さんになりゃそれでかっこがつくんだもん」と言う。

それを聞いた修はくしゃくしゃになった一万円札を延ばすと、「あのお、これ少ないけど」と京子に差し出した。
「何よ」
「餞別だよ、たぶん、これが最後だと思うからさ」。
京子はフッと笑うと、「気持ちだけいただいとくわ」と言った。
「いいよ、遠慮すんなよ」と言う修に、京子は「これから本物のワルになろうって人が、こんなことして小娘泣かせるもんじゃないわ」と言うと、修の手の札を押し返し「じゃあね」と修の横をすり抜けて行った。

階段を下りていく京子に修は「よぉ!」と声をかけると立ち止まった京子は「社長のこと、頼んだわよ!」と言った。
振り向きもせず、降りていく京子に修は「幸せになってね」と言った。

ペントハウスで旅支度をし、健太の写真を見ている修。
亨が咳き込みながら階段を上がってくる。
「あにきい」と言う亨に「亨、すまねえけど、俺の頼み聞いてくれるか?」と修は切り出した。
「健太のこと頼むよ」と言った修だが、亨の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたんだ、お前」と言う修に対して、亨は「風邪だよ!」と答えた。

修の後ろのソファによりかかると苦しそうに息を吐き、「どっか行くの?」と聞く亨。
「…社長がな、俺のこと一緒に連れて行くって言ってんだよ」。
「どこに?」
「…パリか、ローマじゃねえか」。
咳をする亨。

「どっちにしろ、長いことじゃねえんだよ。俺、勝手だけどよ、あの、む、向こうで目鼻ついたらせがれとお前呼ぶから」と言う修に亨は「水をくれ」と言った。
「ちょっと急いでる」と立ち上がった修に、亨は「水をくれぇ!」と叫んだ。
「水ぅ、水…、水をくれ」と咳をしながらつぶやく亨。
乱暴にトランクを床に置くと修は、「こんの野郎、こんな時に風邪引きやがって!」と怒鳴った。

何気なく亨の額に手をやった修の顔色が変わる。
「おい…、薬飲んだのか!」
亨は「高いもの~」と言うと薄く笑った。
修が立ち上がると亨は「開いてないよ、日曜だもん」と引き止めた。

亨は修の手を握ると「アニキ、俺、足引っ張ると思われちゃやだけど、行くの、やめにしないか?」。
「ばかやろ…」と言った修の足にすがった亨、「寂しいよ、みんないなくなる」。
その亨を起こすと修は「亨っ、このままじゃな、みんな共倒れだ」と言った。
「お前、わかるだろう、誰か1人、浮かび上がらなくちゃいけないんだから!」と言い聞かせる修に亨は、「アニキは口がうめえからなあ」。

亨は「やだよ、俺も連れてっておくれよ」と言うと、子供のように修に抱きついてきた。
修に抱きついたまま、咳き込む亨を修はベッドに運んだ。
「その体じゃ無理だよ」。
亨の背中をさすりながら、「2、3日な、2、3日寝てろよ」と言うが亨は、「健太ちゃん、どうすんのよ」と言った。
「だからさっきも言っただろう!このままじゃな、みんな、共倒れになっちゃうんだよ!」。
たまりかねた修が怒鳴る。

「亨よ、健太預かってくれよ」と言う修に「そんな品物じゃあるまいし、やだよあんなションベン垂れよお~」と言う亨。
「ションベン垂れだって何だっていいんだよ。ウダウダ言ってる暇ねえんだよ!もう俺行かなくっちゃいけねえんだよ!」。
亨に覆いかぶさるようにして、怒鳴る修。
「あのなあ、行きがけに…、医者呼んできてやるからな…、もう泣くなよ」と言ってトランクを持って離れた修だが、亨はそのトランクに「アニキ、ちょっと待って。あと少しだけ話してっておくれよ」とすがり付いてきた。

傷だらけの天使、最終回、その1

祭りのあとにさすらいの日々を

今回は全面的にネタバレです。
見てなくて、これから見るという人は気を付けてくださいね。
 


たばこの吸殻、牛乳…、まるでオープニングで食べていたものが雑然と置かれているようなテーブル。
その横で修がオープニングと同じように寝ていると、突然、大きな揺れ。
カウンターで飲んでいた亨もその揺れに驚き、綾部事務所でも貴子が転び、大きく揺れる周囲を気にしながらも辰巳が駆け寄る。
悲鳴をあげる貴子。
床を這いずり回る修。
橋は落ち、ビルは崩れていく。

杖をつきながらゆっくりと歩く足、ひらめく黒いスカート。
全て黒ずくめのシルエットが倒れている辰巳に近寄ると、「辰巳さん!」と声をかける。
そのシルエットは貴子だった。
屋上で貴子は周囲を見回す。
辰巳は塀に寄りかかって、うつむいている。

貴子の声が響く。
「もう日本はダメよ!」
マントを翻しながら、後姿のまま貴子の声が響く。
「この国が私に何をしてくれたって言うの?私はいつも裏切られたわ。もう、たくさん。もうたくさん!」
貴子が振り返る。
「永久に別れのくちづけを」。

修が歩いてくる、ビルの駐車場の管理人に「昨日は大変だったね」と声をかけ、車のところに行こうとしたが…車がない。
「おじちゃん、俺の車、どうした!」と言う修に管理人は「ええ?知らなかったの?」と言う。
「何が」「持ってちゃったよ、綾部事務所の辰巳さんが」。
「いつ?」
「今朝」
契約もこれっきりになっていると言う。

綾部事務所には書類が散乱していた。
修が入ってきてその書類が煽られる。
「辰巳!」と怒鳴って事務所に入ってきた修だが、事務所は無人だった。
「京子!」と声をかけても、誰もいない。
「社長!」と2階に駆け上がって貴子のいた部屋に入ると、そこも書類やファイルが散乱し、窓が開いてカーテンが揺れている。

いつもの「マヅルカ」のレコードが流れて、貴子のいた籐椅子の辺りから紫煙が立ち昇っている。
振り返ったその顔は貴子ではなく、海津警部(西村晃)だった。
「この葉巻、上物だな」と海津警部。
「俺は仕事柄、いろんな人間に会うがな、葉巻の似合う女なんてのはそう、ざらにはいねえ」。
修が出て行こうとすると海津刑事は打って変わって、「おめえ、何で戻って来たんだい!」と鋭く言った。
そして「かわいそうになあ、おめえ、おいてきぼりくったなあ」と言った。

修は「持って回った言い方しねえでよ、物ははっきり言えよ、えっ!」と凄んでみせたが、海津警部は軽蔑したように「チンピラ癖が抜けねえな、だからお前、雑魚扱いされるんだよぉ!」と言った。
「言っとくけどよ、俺は綾部さんの片腕だからよ、気をつけて物言えよ、わかってんのか、おい!」と言った修だが、海津警部には軽くいなされてしまった。

海津警部は綾部事務所が関わった本州四国間の海底トンネルについての利権の話をしたが、修には海津の言うとおり、よくわからない。
決まっていたはずの本州と四国を結ぶ海底トンネルのルートが変わっていた、その理由を知っているか?と聞かれても、修は「知らねえよ!」としか言えない。
「お前みたいな走り使いには、本当のことなんか言うわけない。
綾部貴子は本物の悪の世界の女だ。裏でこの問題の中枢部に関わり、重要な役割をしていたんだ」と海津は語る。

「一体、何があったんですか?」
「公文書偽造、恐喝、背任横領!」と海津は言った。
それでも修にはよくわからない。
礼状を持って海津たち警察は今朝踏み込んでみたが、事務所はすでにもぬけの殻だったのだ。

海津は「お前もなあ、身を粉にして働いて、用が済みゃあ紙くずみたいにポイ、だ」と言った。
「哀れな男だ。どうだ、俺に協力したらな、身の振り方考えてやろう。ええ、じっくり人生考え直してみたらどうだ?」
海津は修をいかにもバカにしたように言いたい事を言うだけ言うと、「出る時はな、戸締りちゃんとして帰れ、物騒だよぉ」と出て行った。

ペントハウスに戻ってきた修。
風呂に入ったままの水が、春まだ浅い陽を反射して光っていた。
その水を意味なく、屋上に撒き散らしていると修たちの部屋の階段から男が降りてきた。
「あんた、誰?」
男(森本レオ)は小暮さん?と聞くと、お帰りをお待ちしていたんですよ、と言って名刺を出した。
男は建設会社の社員でこのビルの取り壊し工事を請け負ったのだと言う。
このビルはマンションになるのだと男は言った。

「ここは綾部さんの建物なんだよ」と言う修に帰ってきた返事は、「今は違いますよ、前は知りませんけど」だった。
本当は明日にでも取り壊したいのだが、修たちの事情もあるだろうから一応1週間という事で「強制立ち退きなんて面倒かけないように」と言うと、男は去っていった。

修はベッドに寝転がり、目の前の電話を見る。
跳ね起きて、亨が勤めている先に電話をしてみた。
しかし亨は職場を退職していた。
「…野郎、綾部のババアにちゃんと落とし前つけてもらうぞ!」。
他にも電話をかけ始めた修だが、やがて電話を放り出す。

修は綾部事務所の経理を担当していた弁護士事務所に押しかけると、受付にいる女性に脅しをかけてみた。
しかし警察を呼ぶとあしらわれ、すごすごと退散するしかなかった。
次に修は、『伏竜会事務所』と書いたビルから出てきた。
修に対応した男は、「でけえ声じゃ言えねえけどよ、組長が言うには関わりになるのはごめんだとよ」。
「じゃ、やっぱり辰巳さんが」と言いかけた修を男は遮り、「あんたな、どういうつもりで嗅ぎまわってるか知らねえけど、サツみたいな真似はよしな。悪いことは言わねえから。綾部事務所のことは口にしちゃあ、ダメ」と言った。

ネオン街を背中を丸めて歩く修。
すれ違ったオカマさんが、「ちょっとお兄さん、あたいのこと覚えてる?」と寄って来た。
「お兄さぁん」と別の着物を着たオカマさんが寄ってくる。
すると道にいた一番上っぽいオカマさん(石田太郎!)が、「修ちゃん、修ちゃーん」と擦り寄ってきた。
「お、元気か?」と修。
そのオカマさんは「聞いて、聞いて、あたしね、お店持ったのよ」と言って修を店に連れ込んだ。

店に入った修。
その修の前でひらひらしたブラウスの袖を脱ぎ捨て、横たわるオカマさんの上にのしかかった男はまぎれもなく亨だった。
亨が顔を上げたその前には「アキラァッ!」と、牙をむいたように呼ぶ修が。
亨は、雨がしとしと降る外へ走って逃げる。
追いかけてきた修は「亨、水臭いじゃねえか」と搾り出すような声で言うと、「ごめんよ」と言う答えが返ってきた。

「お金が欲しかったんだよ」と言う亨に、「金が欲しかったらオカマでも何でもやっていいのか!」と怒る修。
「アトラクションボーイをやってるんだよ!」。
綾部のところは当てにならないし、仕事は大したお金にならないと言う亨を修を蹴った。
「だってさあ、お金のありがたみを教えてくれたのはアニキでしょう!」と言う亨を修はひっぱたく。
「もうこれっきりにしよう」と背中を見せて去っていく修に「これっきりってそればっかしじゃない、アニキは」と言った亨だが、「アニキ、アニキ」とすがり付いてきた。
その亨を「触るなあっ、風呂入って来いっ!」と修は殴った。
その時、店に連れて行ったオカマさんが泣きながら止めに入ってきた。

「ばか、ばか、あんた、ばかよ!」
雨は小雪に変わっていた。
「亨ちゃんの気持ちも知らないでさ、あんたもどうして黙ってんのよ!どうしてあれ見せないのさ!」。
「まだ早すぎるよ」と言う亨を制して、ポケットからオカマさんは何かを出すと、「一週間前にあたしのとこ来てさ、これ、これを見せに来たのよ!」と修に見せた。
それは山のふもとにある土地だった。

「綺麗だろう?この町!スモッグもなければ地震もない。こんな町でアニキと健太ちゃんと3人で出直したい。それにはまとまった金が要る、だから石にかじりついても頑張るからって。あたしはもう、聞いてて涙が出ちゃって…、かわいいじゃないの、立派じゃないの!誉めてやっておくれよ修ちゃん!」。
オカマさんは泣いていた。

ドラム缶の焚き火の前のベンチに修が座りこむと、オカマさんは亨を横に座らせる。
修は下を向いたまま「亨ぁ…、痛かったか?」と聞いた。
子供のように首を横に振った亨は、「アニキぃ」と薄く笑った。
その時、店から集団が出て来て囃し立てながら亨を連れて行った。
修は写真を握り締めたまま、顔が上げられない。
オカマさんは、「太鼓持ちみたいなもんね。土地成金のバカ息子がカモだから結構お金になるのよ」と説明した。
顔を上げた修、その後ろでオカマさんが泣いている。

修が握り締めて、くしゃくしゃになった写真。
後ろが山でそのふもとに小さな町が広がっている。

亨は噴水のところで、クイズを出していた。
クイズの答えを言われてしまった亨は男や毛皮を着た女に囃し立てられながら、噴水の中に入った。
亨は心の中で、枯れすすきを歌う。
水をかけられ、亨は噴水の水が出ているところにまで行く。
その様子をオカマさんに連れられた修が見ていた。
まるで夏のプールではしゃぐように、亨は水の中にいた。

亨ぁ…、あんまり割のいい仕事じゃねえなあ…。
もうしばらくの辛抱だぞ。
綾部のババアとっつかまえたらよ、金持ってくるからよ。
そしたら東京、離れような。
なぁ、亨。

厳しい2月でしたが

最近、なんだか電化製品を換えるはめになっています。

最初はトースター。
これはある人が使って、壊してくれました。
再起不能。
しかしなぜか家の中にあった、もう1台のオーブントースター。
これを設置してOK。

次に全く死んでしまったのが、ハロゲンヒーター。
パソコンがある部屋に置いてあったので、先週半ばからパソコン部屋が寒い。
あ、ファンヒーターつければいいんだ。
う~ん。
ハロゲンヒーター、7年も持ってくれたから良いといえば良いんですけどね。
まあ、すぐに転倒したら消えるはずが消えなくなっちゃったり、タイマーがきかなくなったりしましたが。
日本製ってやっぱり優秀なんだなあ、と思いましたっけ。

次に何だかおかしいのが、電気ポット。
音頭設定をすると、解読不能な文字が出て来て動かない。

そして携帯電話の会社から、3月末までに新しい機種に替えてくれという連絡が。
2年使ったんですけどね。

花粉症、あんまりひどくないなと思っていましたが、やっぱりへくしょい、全く反応なしというわけにはいきませんでした。

こうして厳しい2月を実感していた私。
その私に、ショーケンの作品をもう一度あれこれ、見せてくださるという方がいらっしゃいました。

あ、ありがとうございますー!!
本当に、本当に、ありがとうございますー!
おかげで20年ぶりに見ることができる作品もあります。
この場を借りて、お礼を申し上げます。
本当にありがとうございます。

この週末は、「豆腐屋直次郎の裏の顔」の2時間スペシャル第一弾を見せていただきました。
覚えているようでやっぱり、すごく忘れているもんですね。
「傷だらけの天使」を終わらせなければいけないですが、ショーケンの出演作、またあれこれ見て、レビューさせていただきたいと思います。

時を越えて見て、思うのは、ショーケンの変わらない魅力。
本当に魅力的な役柄を、魅力的に演じているんだなあと思いました。
「ああ、やっぱり時代が変わったのか、ぴんと来ないなあ」とは、思いませんでした。

ショーケンだけじゃなくて、70年代、80年代のドラマを見直す機会があって思うことは、しっかりしたものが描けていればその時代性というものはあるにせよ、いつの時代に見直しても楽しめる、ってことです。
良い邦画ってそうやってちゃんと残ってますが、テレビドラマにしてもそうなんですね。
そして、ショーケンはそういうものにたくさん、携わってきてるんだなあ、と思いました。

そうそう、映画「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞。
短編アニメ賞では、「つみきのいえ」が受賞。
ノミネートされるだけでもすごいことなのに、邦画界、いえ、日本にとって、うれしいニュースです。
出演者、監督さん、スタッフさん、おめでとうございます。

そして、ショーケンにもまだまだ、頑張ってほしいです(最後にどうしてもこの文がついてしまう)。

一筆啓上不倫が見えた、後編

岡崎は机にあった書類の中から、志乃の筆跡で数字が書いてある紙を見つけてしまう。
志乃を問い詰める岡崎、泣き崩れる志乃。
翌朝、岡崎は奉行所で切腹していた。
出勤してきた主水がそれを見つける。

みなは「自ら悪事が露見する前に身を処したのだ」と言うが、主水は岡崎の家へ走る。
だが、岡崎の家には誰もいなかった。
主水は岡崎の机の上に離縁状があるのを見る。

捨三の釜場で主水は捨三に「やけに入れ込んでますな、旦那」と言われる。
主水は「なあ、捨三。俺は所詮、奉行所では昼行灯だ。出世も望めなけりゃ明日がどうなるかわからねえ半端者だ。だがなあ、こうやってヌクヌクと生き永らえてるところを見ると何だかてめえの生き様に自信が持てるような気がするんだ」と言う。

捨三は「旦那、悪運が強いんだ」と言うが、主水は「その俺に比べるとあの岡崎って男は完璧な人間だった。良いかみさんを貰って出世を約束された。出世頭だ。俺みてえに道を踏み外すような男じゃねえんだがな…」と納得がいかない。
そういうのに限って、ころっと道を踏み外すと捨三は言うが、主水は「あのかみさんもそうだ。どうしてあんなことになっちまったんだろう」と言って、相模屋に貰った小判を出した。
「どうしても知りたい。後ろで糸を引いているのは三州屋だ」。

おさすり地蔵ではおこうが主水が最近すっかり疎遠になったと言っていた。
奉行所の仕事が忙しいという主水だが、「奥さん暇って言ってましたで!」と言われてしまい、相模屋の件を持ち出されてしかたなく1両差し出した。

三州屋は工事の手抜きをするように弥助に指示し、うるさい岡崎がいなくなったことを「女房の不始末で切腹までしてくれるとは」と笑っていた。
人足に混じっていた捨三は、その会話をしっかり聞いていた。

捨三の報告に耳を疑う主水。
清吉の名前を聞いた印玄は、清吉が女郎屋で派手に遊んでいたことを知らせる。
印玄は清吉の事を、遊び人だがどこか醒めていたと言うのだが、主水は「志乃さんはそんな男にたぶらかされるようなお人じゃねえぞ」と言って納得しない。
しかし市松は「女の本性なんてわかりゃしねえよ」と言い放つ。
その言葉に、さすがにムッとする主水。
志乃は、はめられたのではないかと言う捨三。
主水はそんな話は聞きたくないが、本当なら許せないと言うと相模屋に貰った小判を出した。

印玄はなじみの女郎から、清吉は女郎にかんざしを売るのに毎晩この辺りをうろついていると教えてもらった。
それを聞いた主水は清吉を捕まえ、三州屋の悪巧みの事、志乃の事を聞いた。
いくら貰った?と聞く主水に清吉は5両と答えた。

「たった5両で町方の女房手篭めにするとは、てめえもてえした色男だ」と言う主水に、清吉は「だんな、俺はあの女、手篭めにした覚えはねえぜ」と答えた。
「何だと?いい加減なこと抜かしやがるとタダじゃすまねえぞ」。
「本当だよ、女なんてなぁ、一皮向けばどれもこれも薄汚ねえメス猫だ。嘘だと思うんなら俺の長屋に行ってみりゃあわかる。あの女、俺の帰り待ってるぜ。昨日の朝、飛び込んできやがった。迷惑な話だ」
「おめえみてえな野郎は地獄に落ちろ」と吐き捨てる主水。

主水と別れた後、走って岡場所から離れようとする清吉。
そこを印玄が、網を使ってとっつかまえた。
屋根の上に連れて行くと網に入ったままの清吉を振り回し、そのまま投げ落とす。

主水は清吉に言われた通り、長屋に行ってみた。
すると清吉の家から「清吉さん?」という、聞き覚えのある声がした。
主水が障子を開けると、中からうれしそうな志乃が迎えに出てきた。
主水を見て、驚く志乃。
志乃は「中村様、お願いでございます。どうぞこのまま、お引取りになってくださいな」と頭を下げた。

かいがいしく食事の支度をする志乃。
主水は家の中に入ると「岡崎さんは切腹しましたよ」と言った。
すると志乃は普通の声で、食事の支度をしながら「存じてます。あの人とは離縁しました。何のかかわりもありません」と平然と答えた。
「奥さん、あんた、それじゃあ本気で清吉と?」

主水が「あんた、騙されてるんだよ」と言うと、志乃は「嘘です。あの人はそんな人じゃございません。今、お夕食の支度をしているんです。あの人が帰ってきたら一緒に食べようと思って。かんざしを作って売り歩いてるんです。すごく綺麗…」。

主水はそのうっとりとした志乃の言葉を、背中で聞いていた。
志乃はかんざしをみがくと、自分の髪にいくつもつけた。
主水は立ち上がると、「奥さん、清吉は帰ってきませんぜ」と言った。
志乃は主水を一度も見なかったが、その言葉にだけは振り返った。
しかし、もう主水はいなかった。

橋の工事現場では弥助が人足たちをこき使っていた。
怒鳴っている弥助の後ろに、市松が立つ。
市松は弥助の陰に隠れて見えない。
大きな木が持ち上げられ、弥助の姿が完全に隠れたその時、市松が弥助の首筋を刺した。
木が下ろされた一瞬だけ、市松の姿は見えた。
しかしまた次に木が持ち上がり、それが降りた時には市松の姿はどこにもなかった。
弥助は人足たちが掘った、深い穴に落ちる。

それを見た捨三は人足に、「おーい、ここは危ねえぞ、早く埋めろ」と言う。
人足たちは急いで穴を埋め、弥助は誰にもわからないまま埋まっていった。

三州屋は小判を数えていた。
その後ろに主水が立つ。
小判に夢中な三州屋は主水に気がつかない。
主水の刀の鯉口が鳴った音で、三州屋は振り返った。
その瞬間に主水は振り上げた刀を下ろす。
三州屋が口にくわえた小判が真っ二つに切れる。
三州屋も顔に赤い一直線を刻んで、崩れ落ちた。

岡場所で志乃は「清吉さんに会いませんでしたか」と聞きまわっていた。
「飾り職人の清吉さん知りません?」と聞く志乃は、女郎たちに「知らないよ!」「邪魔だよ!」と突き飛ばされる。
その様子を離れた柳の木の下で主水が見ていた。
声を張り上げて「誰か知りません?」と言う志乃。
「どなたか、本当に知りません…?」
志乃は泣き顔になりながら、岡場所の奥の方へ、奥の方へと入っていく…。

帰宅した主水に、りつが玄関ではなく庭に回れと言う。
「庭へ?」
庭から家に入ろうとすると、せんがお茶を飲みながら「婿殿、あなたのお仕事も残しておきました。その障子張りをすぐにしなさい」と言う。
「え、じゃあ飯は?」と言う主水にりつが「それを全部張り替えてからです」と答える。

せんとりつは、「おいしいこと」と言いながらお茶を飲む。
「わかりました!やりましょう!」
主水は同心羽織を脱ぐと、さっさと糊を手に障子張りにかかった。
そして、「いいんだ、いいんだ、これでいいんだ」とつぶやく主水だった。


必殺にたまにある「怖い女」の話。
しかしこの怖い女・志乃は悪女ではなく、むしろ良妻の鏡。

岡崎との味気ない生活を送る志乃の、うつろな様子。
どこか満たされない志乃。
そういう隙を清吉のような男は見逃さない。

清吉は遊び人でいながら、どこかなげやり。
過去に女性に対して醒めてしまうような何かがあったんでしょうね。

寺田さんは「仕置屋」ではこの前に一度、9話「一筆啓上偽善が見えた」で、被害者となる絵草子作家・文鳥をコミカルに演じていますが、ここでは打って変わってクールな清吉です。
それが仕置きの時、どーしてあんなに「高いの怖い~!」「目が回る~!」と崩れるのか。
いや、笑っちゃいましたけど。

主水の解釈では、岡崎も志乃もはめられ、絶望していたはずなのですが…。
清吉に「何もわかっちゃいない」といった感じに言われた主水。
岡崎が切腹したことを告げても志乃は平然と一言、「存じています」。

志乃の心は全く痛まない。
志乃は岡崎にしていたのと同じように、清吉に尽くす。
いや、もっとうれしそうに。
良い奥さんと思っていた志乃を見る主水の目が、まるで得体の知れない怪物を見るように変わって行く。
主水も眼中にない志乃へ、「清吉はもう帰ってこない」という一言だけ残して出て行く主水。

清吉がいるはずの岡場所へ清吉を訪ねていく志乃。
良妻だったはずの志乃の愚かな姿。

無言の主水、家に帰れば、せんとりつ。
しかし、この時の主水にはりつが妙にホッとする存在に映る。
「いいんだ、いいんだ、これでいいんだ」と薄く笑いながら、言われたとおりに障子を張る主水。
良妻ではないけれど、少なくともりつは得体の知れない、主水の理解を超えた女ではない。

「必殺2009」ではも今週は夫婦愛の話でしたが、夫婦の話も「仕置屋」だとこんな風になる、という話でした。
 

一筆啓上不倫が見えた、前編

25話です。

主水の同僚の岡崎は真面目一方の同心でその妻、志乃(市原悦子)も良妻を絵に描いたような妻だ。
袖の下を一切受け取らない岡崎の為、志乃は内職をして家計を支えていた。
その姿を見た主水は「良い奥さんだなあ」とつぶやく。
「うちのカカアとはえらい違いだ」と言うと、亀吉が「そうですねえ。その通り、全くひどいからねえ、同情しちゃう」と言う。
さすがにムッとした主水は雨の中、亀吉を置いて傘を持って行ってしまう。

主水が帰宅するとせんとりつは「暮れの19日は大掃除の日」と言って、バタバタしていた。
「何もこんな雨の日に」と言う主水だが、せんに「日ごろあなたのお働きが悪いのでご先祖様にロクなものがお供えできません。せめてお仏壇を綺麗にして差し上げるのです」と嫌味を言われてしまった。
そう言われては一生懸命掃除するしかない。
騒がしい中村家とは対照的に岡崎の家では、岡崎が家に戻っても志乃とはほとんど会話はなく、さっさと食事になるのだった。

主水は洪水で壊れてしまう橋のことで町民たちの訴えを聞いていた。
担当の岡崎に相談すると、岡崎は与力の村野に話を持っていった。
橋を補強すれば3千両はかかるが、今は財政難。
村野は普請元たちに入れ札をさせて、誰が請け負うか決めれば少しは安くなるのではないかと提案した。

翌日、おこうのところにりつが髪結いに来ていた。
りつはおこうに主水の事を大工仕事はしてくれるし、たまには食事の支度もしてくれると働き者で優しいとアピールしていた。
おこうは「こき使われてお気の毒に」とチクリと言う。
そこへ志乃がやってくる。
りつはますます、これみよがしに主水が昨日は掃除まで手伝ってくれた話をする。

普請元の三州屋では、番頭の弥助を相手に今度の橋の工事の相談をしていた。
奉行所との繋がりができることを考えれば、多少赤字でも工事は請け負いたい。
しかし、決めるのは堅物の岡崎だ。
岡崎さえ何とかなれば…。

久しぶりに髪を結ってもらった志乃の品の良い、匂いたつような様子に、すれ違う印玄も足を止めて見送った。
その時、転びそうになった志乃に駆け寄ろうとした印玄は、後ろから走ってきた男(寺田農)に突き飛ばされて転ぶ。
男は志乃を支えると泥を拭いてやろうとする。
それを丁寧に断る志乃だが、男は志乃を見つめると「髪結いの帰りですね。いい匂いだ」と言った。

華やいだ気持ちの志乃だったが、岡崎は帰宅するとただ、「疲れた」と言い、志乃が髪結いに行ったことや、そこでりつに会ったことを話しても何の関心も持たなかった。
うきうきしていた志乃の気持ちは急激にしぼんでいく。
その時、玄関に弥助が訪ねてきた。
三州屋の使いと言う弥助を岡崎は追い返す。

その様子を弥助から聞いた三州屋は「亭主がダメなら女房、って手があるぜ。女ってものは何か一つ、必ず欲があるもんだ。そいつを探るんだ」と言った。

志乃を助けた男は地回りにかんざしを売っていた露天を壊され、品物をぶちまけられてしまった。
通りがかった志乃は男が、かんざしを拾うのを手伝う。
志乃に気づき、礼を言った男は清吉という飾り職人だった。
清吉はお礼にかんざしを差し上げたい、家にはもっといいのがある、志乃に似合うだろうと言った。

家で志乃にかんざしをあげた清吉。
「綺麗だ。とてもよく似合う」と言われてうれしそうな志乃を、清吉は突然押し倒した。
志乃は清吉にやめてくれと言ったが…。
その様子を志乃をつけてきた弥助が外から覗き見していた。

清吉は遊び人であちこちに女がいた。
水茶屋で女と会っている時、三州屋の息のかかった者が清吉を連れ出す。

そして志乃の家に清吉がやってくる。
「困ります」と言う志乃、しかし清吉は昔、世話になった人への恩があり、どうしても知りたいことがあると志乃に言う。
「二度と顔を見せないでください」と言う志乃に清吉は「この前はすまなかった。だが本気だった」と告げた。
志乃の顔色が変わる…。

帰宅した岡崎は疲れ切って机の前で寝ていた。
机の上には、普請を請け負う入れ札の価格が書かれた書類があった。
岡崎の様子を伺う志乃は、そっと書類を手にする。

翌日、普請元は1両の差で三州屋に決まった。
奉行所のみなはできすぎたその話に「岡崎さんもやるもんだなあ」と噂した。

印玄がいる女郎屋では、隣で派手に遊ぶ男がいた。
その騒ぎに隣を覗き見した印玄は「あの野郎、どこかで見たな」と言う。
すると女郎が「遊び人の清吉だよ」と教えてくれた。
しかし清吉の顔はどこか醒めていた。

おこうは相模屋に髪結いの出張に来ていた。
そこへ主水が相模屋の主人と一緒にやってくる。
相模屋は主水にわずか1両の差で三州屋に決まったことが腑に落ちない、と言われていた。
事前に自分たちの見積もり高が漏れていたとしか思えない。
主水は岡崎はそんなことはしないと言ったが、相模屋はこの入れ札に不正があったなら差し戻しができるはず、三州屋を調べてくれと主水に小判を渡した。

傷だらけの天使、第25話、後編

ここから先はネタバレしてます。 

トクはコインロッカーから紙袋を取り出し、3分間証明写真の場所で高山らしい姿に着替えたところを修に捕まった。
修は「高山の2号とできてることがバレたら、あんた詐欺罪だ。高山が承知でやらせてるなら、あいつには裏があるんだよ」と言った。
「いくら、てめえに似てるからってよ、てめえの2号くれるほど、あいつはバカか?」と言う修にトクは、「俺ぁ、知らねえよ!」と言い張った。

しかし、修は「ならいいけどな、調査依頼してきたのはな、あの2号なんだよ!」と言った。
「もし、あの2号が週刊誌にでも売ってみろ。あんたはおろか、高山の社会的地位もパーだぞ!」と言われたトクは、「高山先生に頼まれたんだよ…」と話し出した。

キャバレーでトクが高山のそっくりさんとしてショーに出演していたある日、本物の高山が来ていた。
高山に呼ばれたトクは、「僕にそっくりだ。自分がやっているのかと思った」と言われた。
その夜、トクは高山と何軒も飲み歩き、したたかに酔った。
すると高山がトクに「あんたが本当に俺に似てるかどうか、実験してみようよ」と言い出した。

トクは「こんなことして大丈夫なんですか?」とためらったが、高山は弘子のマンションにトクを連れて行った。
怯えるトクだったが弘子は何も気づかず、さっさとトクを高山と思って部屋に入れた。

「俺、嫌だって言ったんだよ」と修につぶやくトク。

トクが弘子の部屋にいる時、電話が鳴った。
高山はトクに「君はそこでは高山だ」と言って、「弘子を預かって欲しい」と言った。

高山がなぜそんなことを?と疑惑を抱く修。
弘子が邪魔になったのかもしれないが、そんなことがわかったら弘子が黙ってはいないだろう。
「俺、詐欺になるのか?」と高山。
「ああ、なるんじゃない?」と修。

翌日、亨が新聞を修に見せに走ってきた。
そこには「高山波太郎ひき逃げか 高山氏は行方不明」とあった。
しかしテレビの前に出てきた高山は、その夜は夜釣りをしていたと言う。
目撃者は確かに作家の高山波太郎だったと証言したと言われた時、高山は「そのことなんですけどね…。これは私にも心当たりあるんです」と言った。

綾部事務所で領収書を切って、弘子に渡している辰巳。
そこには高山もいた。
そこへ「調査の打ち切りってのは、どういうことだ」と修と亨が乗り込んできた。
修たちを奥に追いやった辰巳、「このたびは大変でしたね」と言うと高山は、「名前が売れるのも良し悪しだね。あいつもナイトクラブのショーで稼いでいるうちは愛嬌だったが、ひき逃げまでするとはね」と言った。

「君も災難だったな」と高山に言われ、「ええ」とうつむく弘子。
すると高山は「君もあのマンションだけで良いのか?いや、僕もね、他人の食い残しは嫌だからね」と言った。
「何言ってんだ、このやろー!てめえが仕掛けたくせによ!」と、高山に詰め寄ろうとする修。
修を押さえる辰巳、その時、貴子が2階から降りてきた。

貴子は「高山さん、うちの若い子たちって調査にかけては一流の腕前の持ち主なの。おまけに正義が三度のご飯より好き…、ね?」と優雅な口調で言う。
帰りかけた高山は「君たちは脅迫するのか?」と言った。
すかさず辰巳が弘子を高山の横へやる。
貴子は「弘子の所へ通ったのは、そっくりさんじゃなくて、そっくりさんを真似た高山さんご自身だった…」と言うと、弘子はハッとした。
貴子は更に、「つまりこれは、みんな、高山さんの悪い冗談だった…、そうでしょう?高山さん?今日あるのはみんな弘子のおかげですもんね」と言った。
うつむく弘子。

「もし、冗談じゃなかったとすると…」と言った貴子に高山は、「なるほど、こりゃあ冗談きつかった」と言って、貴子と見詰め合った。
高山は笑うと、「弘子、帰ろう」と言うと、弘子と帰っていった。

さっぱりわからないと言う亨。
「修ちゃんは?」と貴子に聞かれた修は説明しようとしたが言葉は出ず、手は空しく宙をさまよった。
「弘子はね、あの男に惚れてるの。あんな男でも」。
貴子の言葉に修はうなづいた。
その途端、亨はわかった!と叫んで、「あいつ、そっくりさんを使って弘子さんを罠にかけようとしたんだよ。それを社長が!正義だなー!」と言ったが修は「だけど、どうもよくわかんねえ。ひき逃げなんだけど、一体誰がやったの」と言う。
貴子の杖が「そこまで!」と言うように修の肩にかかった。

辰巳は「そっくりさんが」と言った。
「何でよ?!だってさあ、あの時間、俺と一緒にいたんだよ!何でひき逃げできるんだ!」と修は、警察に行って何もかも喋る、と言った。
「今日は止めても無駄だと思います」。
出て行こうとした2人、貴子は辰巳に目配せすると辰巳は新聞を持ってきた。
そこには、「ひき逃げ事件の容疑者、高山氏、無実に!高山のそっくりさん、自首する」と書いてあった。

高い、長い塀の前で亨が待っている。
トクに面会した修は「おやっさん…、どうしてこんなバカな自白したんだよ」と聞いた。
「最初っからあいつはこんな時におやっさん役立てようと思ってさ、当て馬にしたんだぞ?え?俺、証言してやっからよ、おやっさん!」
しかしトクは「ひいたのは俺だよ」と言う。

「あんた、何で俺みたいな男にそんなに構うんだよ」と言うトクに修は言った。
「俺、おやっさんみたいな男、好きなんだよ。酔っ払ってよぉ、道に倒れて演説ぶったでしょう、貧乏なくして良い国作ろう、ってよぉ。あん時、実感こもってたぞ。本当だよ。高山みてえによ、口先ばっか言ってんのと違うもんな」。

だがトクは魂が抜けたようだった。
面会時間が終わり連行されていくトクは修に、「代々木の駅前に行ってみな」と言った。
トクが高山から口止め料としてもらったのは3千万円だった。
「3千万円だよ。俺が女房に残してやれるのは、そんなことぐらいだもんな」。

修と亨が代々木の駅前に行くと、トクの妻が駅前で何人もの従業員を使って大きな店をやっているのが見えた。
修は目を伏せて歩き出した。

講演会で拍手で送り出されてきた高山。
階段を降りながら報道陣に囲まれる。
降りていった集団の後に、修がいた。
メガネをかけて変装していた修は高山の後ろに張りつく。
高山の肩に手をかけて振り向かせると、修は高山を殴り飛ばした。
あわてて助け起こされた高山は辺りを見回すが、もう修はいない。

道を歩いている修の後ろから買い物袋を持った亨が来る。
パンと牛乳を渡された修は、亨と食べながら歩いて行った。



高山とトクの2役の小松方正さん、顔は同じだけど性格が全然違う2人の演じ分けが見事です!
中でも見ものなのが高山とトクが出会うシーン。
トクと誉めながらもどこか見下している傲慢な高山と、うれしそうに笑う愚直そうなトク。
2人で入れ替わる相談の時、右にトク、左に高山という位置なのですが、トクが話している時は高山が影、高山が話している時はトクが影になるという、上手い演出になっています。

弘子が高山の人が人が変わったと疑う理由は…、辰巳さんがジェスチャーで一生懸命説明してくれます。
修ちゃんは辰巳さんに説明させるだけさせてから、納得してます。
そのとっても、とっても「個人的な理由」は、貴子さんには内緒なんですね、辰巳さん。

本編に関係なく、遊んでる場面もたくさん。
亨ちゃん、高山波太郎の表札の「…山、太郎」は読めました。
修ちゃんは高山の小説を読みながら、「全く小説ってのは失礼だなー、感じばっかり多くってよ」と文句。
この時、修ちゃんは上はジャケット姿、下は下着のパンツに靴下、と、後にこういうスタイルで主人公が登場するドラマはいくつかありますが、原点はここでしょうか?
辰巳さんに出された新聞を読む修、「ひき、げ」、すかさず辰巳さん「あ、ごめん、漢字ダメだったな」。
亨の歯の磨き方にも注目。

結局、事態は高山に邪魔にされかかっていても離れられない弘子の悲しい気持ちで収まってしまいました。
物をあてがって解決しようとする高山に、優雅な口調で釘を刺しておく貴子さん。
弘子に大人の心の解決方法を提示すると同時に「弘子の恩を忘れるな。今度、弘子を粗末にしたらただじゃおかない」という凄みをきかせます。

トクさんに、またしても感情入っちゃう修。
冴えないトクだけど、その言葉には、真心があった、実感があった。
「貧乏なくして良い国作ろう」。
でもトクが選んだのは、切ない解決方法。

庶民の味方、正義の味方なんてポーズを掲げる有名人に漂う嘘くささ。
「有名人なんてのは口先だけで、やってることは同じだ」。

だけどトクが望んだことで奥さんが幸せそうなら、もう修には口出しすることはできない。
でも修は高山に怒りの一撃を食らわせずにはいられない。
トクからの、トクの言葉がわかる修からの高山への一撃。


「傷だらけの天使」では修はずっと自分の為ではなく人の為、自分が関わった人の為にいつも怒り、嘆き、精一杯力を貸してやってました。
それは大人の世界に対して無力で実らないことも多く、見ているこちらに切なさを感じさせてくれたけれど、無力さを思い知らされても修は自分を変えたりしなかった。
修のその強さ、暖かさ、亨のいじらしさ。
探偵としては未熟かもしれないけど、修と亨はどんな結果になっても事件に関わった人の中に何かが残るような、そんな仕事をしてくれてました。
未熟な2人でも修と亨に仕事を頼みたい、そんな気持ちにさせてくれました。

こんなこと書くのは、探偵としての修と亨の仕事はこの回で終わりだからです。
ネタバレしてしまうようですが、最終回は探偵としての修と亨の話ではなく、崩壊劇なのです。
「ハイセイコーも引退、長嶋選手も引退、傷天もいよいよ最終回」「たまらんたまらん、たまらんぜ、たまらんこけたらみなこけた」なんて軽妙な予告から、当時、あれほどのラストシーンを想像できた人がどのぐらいいたでしょうか。

修が高山を殴る前辺りから流れる「ひとり」。
道を歩く修に流れる「もう誰もいない」という言葉。
あの最終回を既に知っていると、修と亨の歩くシーンが切なくてしかたなくなります。
辰巳さんとの軽妙な掛け合いも、修と亨の平和な日常のシーンも、これが最後なのですから…。

プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード