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「問題は、どんな終わり方をするか」 復活の日

ある外国の監督の映画を観に行って、友人になかなか良かったよと言ったら、「その監督のその作品は日本の○○監督の『○○』という作品の、ほとんどパクリだよ」と笑われました。
それで普段ほとんど観ない、その監督の作品を観せられました。
…私の映画を観る目は、あんまり当てにできないようです。

それでもこの映画。
もう10年以上前に観て、それっきりですが、不謹慎にも、今のこの状況で思い出しました。
不謹慎ですね、ごめんなさい。




1981年の冬、東ドイツの陸軍細菌研究所から新種のウイルスが盗まれた。
ウイルスを盗んだ小型の飛行機は悪天候の為、アルプスに激突。
アンプルは粉々に割れて、中身が飛び散る…。

春になるとイタリア風邪と言われるこの新種のインフルエンザは、世界中で猛威を振るい始める。
そしてついに日本にも上陸。
主人公の南極観測隊員の吉住(草刈正雄)は恋人・浅見則子(多岐川裕美)と別れ、昭和基地にいた。
看護師の則子が勤務している病院も患者で溢れ、ワクチンは何の効き目もない。
野外にも溢れる患者、戦時下のような状況に土屋教授(緒形拳)も則子も疲労困憊する。
家に帰ると、家族の様子もおかしい。

人々が次々と倒れていき、都市機能は麻痺する。
享楽的に踊り狂う人。
絶望し、自殺する人。
思い出の写真を抱きしめ死ぬ人。
自衛隊は溢れる遺体を集め、火炎放射器で焼却する…。

無力感と絶望で泣き出す則子に土屋はかすかに微笑み、水槽に浮いた魚を前に「どんな事にも必ず終わりはあるよ」と言う。
だが、「問題は、どんな終わり方をするか、だ」と言うと、感染していた助手(小林稔侍)ともども死んでしまう。
死相漂う則子はお腹の吉住の子も失い、友人で吉住と同僚の辰野隊員(渡瀬恒彦)の妻(丘みつ子)と子供も死ぬ。
則子は最後に南極に行きたいと願い、モーターボートを海に走らせる。

情報もほとんどない昭和基地だったが、辰野隊員はある外国の少年と無線で交信していた。
そこで少年の家族が全滅し、少年が自殺したことで自分の家族も同じだと、辰野は錯乱。
山内博士(千葉真一)や真沢隊員(森田健作)や松尾隊員(永島敏行)を振り切ると、ブリザートが吹きすさぶ中、飛び出して行ってしまった。

ホワイトハウスでも連日閣議が開かれていたが、バークレイ上院議員(ロバート・ヴォーン)も、リチャードソン大統領(グレン・フォード)も、もはやウイルスに感染していた。
大統領は南極基地に「生きる努力を続けてほしい」と伝えると、息絶える。
このウイルスを盗み出す計画を実行したガーランド将軍(ヘンリー・シルバ)は、もうソビエトも存在しないというのに「アカを攻撃しろ!」とわめき、ホワイトハウス地下の対ソ連ミサイル攻撃の自動報復システムのスイッチを押すと、笑い声と共に息絶える。

1982年、秋。
ウイルスは-10℃以下だと活動しない、低温に弱い特性があった。
南極に863人を残し、人類は死滅した。
女性は8名。
種の存続の為、女性はたくさんの男性の子供を生むことを義務付けられ、生まれた子供はみんなの子供として育てられることが決定される。
ソ連の潜水艦が、南極へ上陸の申請をして来た。

基地に、ウイルスを持ち込ませるわけには行かない。
同じソ連出身のロペス大尉は、断腸の思いで上陸を拒否する。
しかし、潜水艦は上陸を決行すると言う。
だが、ウイルス拡散前に水中で任務についていたマクラウド艦長(チャック・コナーズ)率いるイギリスの原子力潜水艦が、ソ連の潜水艦を攻撃して沈めた。

しかし1年後、生き延びた800余名にも危機が迫る。
アメリカに直下型の大地震が起きることが、予測された。
アメリカのミサイル防衛システムはこれをソ連からの核攻撃と判断して核ミサイルを発射するだろう。
ソ連側の報復として、南極にもミサイルが飛んでくる…。
ワシントンの地下に行き、誰かがこれを止めなければならない。

ウイルスが蔓延する中、アメリカ軍人のカーター少佐(ボー・スベンソン)は自分が行くしかないと決意。
そして吉住は、クジで選ばれた。
1人で行く決意のカーターだが、吉住の一緒に行く気持ちは固かった。
これは死への旅だ。
吉住と心を通わせていたマリト(オリビア・ハッセー)だが、もう個人の恋愛は禁じられている。
しかし、吉住が出発する前の晩、マリトと吉住は力をこめて抱き合う。

滅亡した世界への旅。
吉住とカーターはホワイトハウスの地下にたどり着くが、地震による落下物の下敷きになったカーターは死亡。
吉住はわずかに遅れ、報復システムは作動する。
吉住は、白骨化したガーランドを蹴飛ばすが、どうにもならなかった。
だが、上陸直前に投与したワクチンは効いていた。

核ミサイルがアメリカもソ連も、世界中を破壊していく。
アメリカにある南極基地も…。
世界は死滅した。
そして、同時にウイルスも死滅していた。
吉住は死滅した世界を、「南へ」「仲間がいる南へ」と旅をする。
そしてついに南極にたどり着いた吉住は、マリトとの再会を果たす。


映画が終わって気持ちが重くなったのは、最後に人間が出てこなかったから。
そうか、「復活」するのは人類とは限らない…。
地球にはもはや害悪となっていた人類が死滅して、地球が「復活」するという意味…だったら怖い。

も~ちろん、この映画、突っ込みどころもたくさんあります。
大統領にも内緒でウイルス盗むのに、あの小型飛行機で定員オーバーで墜落ってどうなんですか、とか。
モーターボートで南極行く…、という突っ込みもあるでしょうが、ここはもう死相漂う多岐川さんが哀しい。
きっとボートの中で…、なんだろうなあと思いました。

俳優陣が良いです。
緒形拳、多岐川裕美。
キレたガーランド将軍が笑いながらスイッチを押して、息絶えるところ。
そして男っぽいカーター少佐。
やっぱりハリウッド俳優だ、すごいんだなあと思いました。

ウイルスで人類が次々死滅していく様子、混乱から無政府状態に陥る世界。
南極への上陸を拒否され、撃沈される潜水艦と拒否する側。
8名しかいない女性への非情な措置。
人類滅亡、決してロマンではないシビアな描写。
パンデミックという言葉も知りませんでしたが、怖ろしかった。

中世のペスト大流行も、こんなだったのでしょうか。
「ペスト大流行」については、「吸血鬼ノスフェラトゥ」という映画の描写がリアルでしたが。

浮上した潜水艦が見る、廃墟と化した東京。
そして、南極の美しいこと!
これはもう、近年に「プラネット・アース」とか見ましたが、遜色なかったぐらい綺麗に撮っていたと思います。

原作では確か、吉住の南極への旅はこんな風には描かれていなかったはずです。
生物は絶えたと思われた海辺で、魚にむさぼりつく吉住。
無人と化した教会で白骨と会話するシーンなんかがあり、入れて良かったと思います。
ラストも原作では、いくら(当時の)ソ連でも南極へミサイルを向けるようなことまではしていなかった…、南極にいる人々は無事だった…というオチでした。

映画では避難できた人を除いて死んでしまうので、吉住がたどり着いた時点で人類は数十人になっていました。
その代わり、ウイルスも核ミサイルで消滅、ここは当時も突っ込まれてた記憶が。
でも原作も映画も人類は絶滅危惧種になってるところは、同じ。

エンディング、吉住とマリトの再会。
マリトが連れていた吉住の子供(この部分は、ちょっと記憶が曖昧)。
マリトに抱きしめられ、「…ライフ・イズ・ビューティフル(人生は素晴らしい)」という吉住のつぶやきと南極の素晴らしい風景、ジャニス・イアンの流れる曲には感動でした。

いろいろな突っ込みどころもありますが、この映画、角川さんは真面目に作っているのではないかと思いました。
何でも角川氏が映画製作を行うようになったのは、この映画がきっかけらしいです。
この作品は24億円とヒットはしましたが、製作費が巨額で結局は赤字だったとか。
この為に角川映画は1980年代には、角川春樹事務所所属のアイドル映画を手がけるようになったそうです。

原作者の小松左京氏は、この時、直下型大地震について調べたことが、後の「日本沈没」に繋がったとか。
一番驚いたのは、昭和39年にこの原作が書かれているということ。
小松左京氏、早い!
そして、南極を守ろう、環境はやっぱり大切にしよう。
そう思いました。
 
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地獄を見たかい? 「汚れた英雄」

大藪春彦さん原作の角川映画、草刈正雄さん主演の「汚れた英雄」。
「0.1秒のエクスタシー」。




「汚れた英雄」のテーマ曲。
ローズマリー・バトラーさんが歌っています。



主人公・北野は、レースチームを維持するのにかかる莫大な資金をジゴロという手段で得ている。
クライマックスのレースに北野と張り合った若いレーサーは、事故を起こす。
命に別状はなかったものの、担架で運ばれていく若いレーサー。
その放心した顔に向かって北野が聞く、「地獄を見たかい?」。
若いレーサーは、黙ってうなづく。
「また、戻っておいで」。

地獄を見て、一人前か…、と思いました。

北野を支えるチームの一員で、北野が信頼するかつてのライダー仲間の緒方(奥田瑛二)。
息子の和也にとって、北野は憧れ、そして英雄。
緒方の妻でマネージャーのあずさ(浅野温子)は、北野を好きになりかかっていた。
緒方はそんな様子を何となく察しながら、レース後、北野の後姿を見つめるあずさに声をかけ、車に乗るよう、うながす。

北野はその後、世界選手権に挑戦する。
最初は何度もリタイア。
それからは10位以下だったり、7位ぐらいだったり。
やがて2位、そしてその翌年、ついに優勝。

そしてさらにその翌年。
北野の死亡のテロップが流れて、映画は終わりました。
テーマ曲も草刈正雄氏も、バイクのシーンも、めちゃくちゃカッコよかった。
この頃の映画って、今観ると「男っぽいなあ~」と思います。
男っぽい映画、多かったですよね。
だから女性が観られなかったかというと、そんなことなかった気が。

私の友達はこれを見た後、バイクでカーブを曲がりきれず事故りました。
気分は北野だったんだね…、M子ちゃん。
「地獄を見たよ~」。
それで今も、バイク乗ってますけどね。
[ 2009/05/18 ] 映画・人間ドラマ | TB(0) | CM(8)