オリンピックも佳境。

一昨日は注目の女子フィギュア。
真央ちゃん、本当にお疲れ様でした。

泣いている姿さえも、いじらしく、そしてかわいらしく、美しかった。
世界女子難易度最高級の技を決めるなんて、相当かっこいい。
伊藤みどりさんの言う通り、金メダルも銀メダルも銅メダルも、メダルは大会があれば必ず出るもの。
だけど真央ちゃんのオリンピック初っていう偉業は、それとは別に残っていくことでしょう。

それから、銅メダルのロシェット選手。
直前にお母様をなくし「欠場を本気で考え」、とても演技どころではなかった時。
そうでしょうね、本当に。

でもお母様の「私はあなたに『強くなりなさい』って言ってきたでしょう」という声を聞き、出場を決意したオリンピック。
そこで、「マオ(浅田)にも感謝したい。果敢にトリプルアクセルに挑んだ姿を見て、私は悲しいことなんか忘れて正直、燃えたわ。ありがとう」との言葉。
真央ちゃんの果敢な技へのチャレンジは、他の選手のフィギュア魂にも火をつけたんだな、と思いました。

素晴らしい姿を見せてくれて、本当にありがとう、真央ちゃん!
そして、価値ある銀メダル、おめでとう!


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2010.02.28 / Top↑
19歳で上京。
(写真をかわいいと言われ、照れてます)。

「ツテもない、ほとんど荷物もない。夜行列車みたいな、本当に電車乗って。東京駅の前に有楽町とかあの辺り行くと下、見えるじゃないですか。そうすると一杯人がいて、大阪がすごい都会だと思っていたのに、東京の人の多さにビックリして。今は僕は無名だ。いつか全員、この人たちが絶対俺のこと知るようになる!っていう。夢見る少年みたいなことを思ってました」。

「東京に着いて、まず寝るとこ探そうと思って、繁華街行って、バイト今日からお願いしますって探そうと思って。バイトその日に決めて、カラオケバーみたいなところで、時給が1100円。500円でいいですって」。
「500円で、1100円以上の働きしたら重宝がられるだろうなって。その代わりに店で寝かせてもらって。誰よりも早く行って、綺麗にして、外でビラも撒いて。500円から800円になって、それから1100円って言われたので『それはいいです』って言って。だったら1500円にしてくれる時、教えてくださいって言って」。

「半年後1500円になりました。500円からだから、上がりやすいんです。お金なかったんで、僕は俳優になる為に来ているんでと言ったら、みなさん応援してくれて」。
「エキストラから始めて、セリフいただくことってなくて。エキストラってセリフないのがほとんどなんですよ」。

質問:助監督に嫌がられたって?
「それは何度も。スーツ持ってきてくれ、サラリーマンだから歩いてくれって。エキストラは何の作品かもわからないんですよ。でも自分のプランとしては夕方だったらネクタイゆるめて、疲れた感をやろうかな、と。で、おまえうるさいよ、帰れって」。

「僕はエキストラの方と今も良く話すんですけど、そうやって一生懸命やってる方って大好きです。そういう人のおかげで今、あったりするんで」。
「昔、帰らせた助監督と、仲良く今でもつきあってますよ。『あん時、帰らせたよね』って」。
質問:覚えてました?
「覚えてました!」

質問:19歳の時に思ったところに、近づいているって実感は?
「(きっぱり)あります!すごく。まずここに出ている。道歩いていて、握手してくさいって言われる。何よりも、テレビや映画に出てる。当たり前のことと思わない。すごいことだと思う。このポジションにいるってことを感謝している。目指した仕事をやってるってのが答えだし、感謝してますが、ここがゴールじゃない。まだまだやりたいです」。

スタジオのお客さんからの質問:北村さんの思う、カッコイイ男って何ですか?
「負けて笑ってる奴。自分がやりたいこと、生きたいように、人に合わせながら、受身になりながら生きるのって難しいけど、そういう奴の方が強かったりすると思います。良い時って誰もが良く振舞えるけど、悪い時が人間出ると思う。失敗したり、なくしたり、全部失ったり。そういう時にも強くいられるのが」。

スタジオのお客さんからの質問:色気が増してるんですが、自分で出すようにしてるんですか?見本になる人がいるんですか?
「(色気出そうとして鏡見て…)するわけねーじゃん!(笑)。そういう色気とかは自分ではわからないです」。

「自分の思うカッコイイ男は、プロとしてプロのカッコよさがあると思うし、俳優のカッコよさっていうのは、スターみたいな人ってわけじゃなくて、本気で一つのことに向き合っているってカッコイイし、そういう人になりたいですね」。

質問:これからの目標は?
「無謀なチャレンジしてみたい。本音でいえば、周りが皆反対するようなこと。いつもあるんですよ、これまでは多少誰にどう見られるか、考えなきゃいけないことってありましたが、人からどう思われるかわからないですが、自分の誇りの為にやってみたい」。

最後の質問:演じるってことは何ですか?
「うーん、むずかしいな…。…。…死ぬ前に答えが出そうな気がする」。
「いろんな考え方がありますよね…。ほぼ自分だと思います。人生の自分のほとんどです」。
「なので演じるってのは…。…。……。うーん…。…仕事です」。

「誇りを持ってする仕事です。仕事って冷たい言い方じゃなくて。仕事としてやっとかないと、プロじゃないだろうし。プロというのはちゃんとお金もらってるし。仕事することだろうし、好きだけではできないことって多々あると思うんです。そういう厳しいプロの世界でやっていきたいと思っているので、あえて仕事というのかもしれません」。

箭内さん「その存在感、他にはないと思うんですが、身にまとっている空気の緊張感なのか、誇りなのか。自分を追い詰めると言うか、どうやったらこういう人ができるのかと思いながら見てました」。

「これからも精一杯、頑張ります。ありがとうございました」。
笑顔でお辞儀しながら退場する北村さんでした。



これ聞いて、19歳でも男の人っていうのはこういうことができるなあ、と思いました。
19歳の女の子だと、ちょっと違ってきますよね。
時給交渉とか、なかなかのやり手。
でも辛抱もいりますよね。
俳優の時と同じ。

それで、エキストラから始めたので、エキストラの人や芽が出ないけど頑張っている人、裏方さんなんかへの思いやりがすごい。
だから、業界の女性に聞いた好きな人のベストテンに入るんでしょう。

エキストラから始めてるんだから、19歳の時に考えた場所の近くに今現在いるって、もちろん思いますよね。
その頃のことを考えたら、握手求められたり、テレビや映画に出てることをすごいって思えるでしょうね~。

いつの間にか当たり前になっちゃうんですけどね、仕事で日常になると。
そうすると、感謝の気持ちってどっかに置いてきちゃうんですけど、北村さんはそうじゃないんだ。
えらいなー。
ほんとにほんとに、苦労して来た好きな道なんだなあと思います。

「カッコイイ男とは?」の質問の答えが、「負けて笑ってる奴」だけ聞くと、根性ないわーと思われそうだけどそうじゃなくて。
要するに追い詰められた時に人間性が出るって言われてますが、自分なんか全然その点は良い行動できる自信ってないなあ、と。

色気に関しては、国際的大スターですけど、アラン・ドロンなんかも「美しいって言われても、そういうのはわからない」って言ってたのを思い出しました。
割りと天然でカッコイイ人が、そういうこと言うんですけど、そうなのか。

演じるってことは何ですか?には、すごく考えてましたね。
それでプロとしてありたい、と言いました。

傍から見たら、何であんな苦しいことやるんだろうって思えることをやってる人っていますね~。
好きだから、とか理由はいろいろありますけど、好きだけじゃ越えられない時がある。
でも越えるのは、才能があって見出されて歩んだ道とかじゃなくて、自分で選んで苦労して歩んでいる道だからでしょうか。

本当なら別の道歩んだって構わないのに、どうして?って言われると、どうしてそこまでしたんだろう?って。
売れていい思いしたいとか、スターになりたいとか、そういうのもないみたいで。
すごく考えてましたが、いわば本能、無意識でやってるみたいなものなのかなと思いました。
だから言葉では表せない。
この方にとって、俳優は天職だと思います。

「死ぬ前にわかるんじゃないかな」。
これが本当のところなんでしょうね。

いろいろと語ってくれてましたが、たぶん、自分の内面を話すのは苦手だし、話すもんじゃないと思っているんじゃないかな?と思いました。
闘志やら何やら、全部、内に秘めていると思います。
だけど一生懸命、語ろうとしていましたね。

今の自分を常に壊したいという欲求もあるみたいで、だからか「天地人」「宿命」とちょっと今までと違うタイプの役を演じてる。
それはわかるし、似たような役ばかり得意だからってやっていると先細りになるのもわかるんですが、またたまには得意とする役柄もやってください。
やっぱり、感情移入できるワル、これほど魅力的に演じられる俳優さんもいないので。
それでもこういう人は強いし、実力と魅力は群を抜いていると思いますしね。

それで、また言ってしまいますが、これは自分の好みの話ですが、こういう、スターを横で見ていた遅咲きの人って好きです。
周囲に思いやりもあるし、本業はしっかりしてるし。

4日に渡って、話を引っ張ってしまいました。
北村さんの「トップランナー」を知りたかった方は、さぞかしイライラしたことと思います。
すみません。
お付き合いくださった方、ありがとうございます。


2010.02.28 / Top↑
ここでお付き合いの長い奥田瑛二さんのインタビュー。

北村さんについて、「浮遊する爬虫類。爬虫類って蛇は這っているし、カエルは池を泳いでいるし、トカゲは陸にいるけど、神出鬼没に出た場合ドキッとするから。君の場合、飛んでいる。お前、蛇が空飛んでたら怖いよ。それもピューじゃなくて」。

「そういう役者だよね、僕にとっては最大限の誉め言葉なんですけど。角生えてきて、たてがみ出て来て、じき龍になるっていうそんな感じですね。僕は絶対天下とって見せますから見ててくださいよって…、1年ぐらい前に…、2年は経ってない、僕に言いましたから。よしやれるもんならやってみろ!北村、行け。お前の濃い顔で天下取った奴はいないから、そのまま行け!でも今、楽しみですよね」。

北村さん、下向いて、「いやいや…」と照れ、「そういう流れで…(言っただけで)。ビックリですよ、そんなこと言いますかね、こういうところで」。

質問:北村さんにとっての天下とは?
「自分自身の問題ですよね。そのぐらいの気持ちでやっていくっていうことで、僕たちの仕事って結果が数字で出ない。野球選手みたいに何割バッターとか数字に出ませんのでね。そのぐらいの意識を持って結果が出なくても、毎回ぶつかって行くっていうか。そういう気持ちですよね」。

質問:顔については奥田さんも、あの、顔って言ってた顔ですが…。
「あの、濃いです。言わなくてもいいことかもしれませんが、俳優にとっては悩むまではいきませんが、いろんな役をするのに、すごく障害になることが多いと思います。そう見えないだろうな、と思うことが良くあります。だから俳優としてはダメだと思います。なので、いろんな変えたりとかするんだと思います」。

ドラマ「その時までサヨナラ」(2010)。
「デビューから22年目。主演ドラマが相次いでいる。この作品では子育てと仕事に悩むシングルファーザー役。ここ数年は生活に根付いた役をやる機会も増えている。脇役から主役へ」。

質問:主役は心構えが違う?
「芝居のことだけ、100%考えられない。主演というよりは座長という感じで。全員がこの仕事をやっていて、楽しんでるかってことで気も遣わなきゃならないですし。僕たちの仕事っていうのは、ものすごく回りに気を遣われるんで、言動も気をつかわないといけない」。

「もちろん不機嫌になることもあるんですけど、そういうことを言ってしまうと現場が必要以上に止まってしまったり、ってあると思うんですよ。だから、そういうことも考えられる人にならなきゃいけないし、そういうことも含めての主演だと思うんです」。

質問:演じる上での違いはありますか?
「主役をやることは、やっぱり受けるほうが大事かなと思います。周りを立たせる、逆に自分は周りに立たせられるものだと思うので。主演というものは周りが立てば立つほど上がります、きっと。持ち上げられるもの。自分で上がろうと思うと線の細い主演になると思うんですよ。スター映画みたいになっちゃうと思うんです」。

「僕は周りに…、周りの関係性を作って、周りが上がることによって上がるって行ったところにドラマ性があると思うんですよね。そういう作品の方が、おもしろいと思うんで。それぞれみんなが、いろんなお芝居を、ああしたいこうしたいという時はなるべく受ける。自分がどうしたいって言うよりも、受ける。人を信じなきゃダメだろうなと思います」。
「…芝居語っちゃってる」。

質問:どっちがおもしろいですか?
「どっちもおもしろいです。脇役でも、ポジションによりますけど、2番手3番手になると主役を立てなきゃ、良く見えるように、主役が良く見えるように。セリフ早めたり。バレーボールで言う、トスを上げるって言うんですか?ものすごく打ちやすいトスを打ち上げる。それはやってる方はわかるんで、終わって『ありがとう』って言われるとうれしかったり」。

「連ドラで主演させてもらったのも、勉強になりました。役が大きいとか小さいとからとかいうよりも、どっちもおもしろいですし。ただ、子供の頃、昔憧れたのは主演ですから。夢を与えられる役とかもっとやりたいなと思いますし。主演…、単純にカッコイイと思います(笑)」。
「遠回りしてきた分、すぐに主演出来る方もいる世界じゃないですか。だから遠かった分、重みを感じますよ」。

質問:これまでに人に行ってない秘密を。
「船の学校に行ってて、外国にも行って、船や車で周ってますが、乗り物酔いがひどいんですよ。ロケなんかバスで移動しますよね、その時にカツラとかつけてたりすると現場について2~30分走って、1時間は動けない。船の学校も、瀬戸内海に浮いてる小さな島にあるんですが、そこに行く為に乗るフェリーで酔ってました毎回。

「子供の頃、乗り物酔いして大人になると治ると聞いてたんですけど、いつ(その時期が)来るのかなと思ってたんですが、どうも…。特にバスはダメです」。

(幼稚園の頃の写真。そして中学生の頃の写真は、女の子ばっかり周りにいます)。
ナレーション「学校では目立つ存在で、当時から映画俳優に憧れていた」。

「インディ・ジョーンズとか、小学校の時にスーパーマン、スターウォーズですから。すごく見に行ってました」。
「自分で忘れてたんですが、地元に帰って友達と話したんですが、小学校の頃から映画に出るって言ってたって。みんな言うんで、自分では忘れてたんですが」。

ナレーション「自立心の強い子供だった」。
「家で1人で、妄想っていうんでしょうか。考えてると、5時間6時間。子供から見た、何で大人はこうなんだとか、そういうことですけど」。

ナレーション「中学を出て、全寮制の船の高等専門学校へ進学」。
「外国ただで行けるかなって。国立で全寮制で、家にもそんな迷惑かけないかなって。そう言うことも考えましたし、あとはやっぱり出たかった。街を、自分がいるポジションを、客観的に見たくて。正しいと思っていた大人、先生を、本当にそうなのかって見たかった」。

「(船の専門学校に行こうと思った時は)乗り物酔いのことは、忘れてます。乗り物酔いするから行かない、とかじゃなくて、行きたいか、行きたくないか。(乗り物酔いは)後でどうでも考えりゃいいって、治らなかったんですけど」。

「しかし、自分が思い描いていたものと違いました。練習で航海に出るんですが、自分が思っていた船と違う。もっと自由なものだと思ってたけど。実習1回目から『あっ、間違えた』って。でもここで辞めると逃げたって思われるんで、とりあえずいましたけど」。




奥田さん、上手いこと言うなあと思いました。
「浮遊する爬虫類」なんて、何のこっちゃという感じですが、言われて見るとなるほど、と。
あるべきところにいてもドッキリするのに、意表をついたところに出てこられると、本当にドッキリする。
想像外の人、ってことですよね。

それで爬虫類で終わるかっていうと、「じき龍になる」。
上手いこと言ってくれますよね。
後輩に対する余裕と愛を感じます。

顔については、俳優としては良くないと考えているそうです。
若い頃の三国連太郎さんタイプじゃないかと、私なんかは思いました。
大丈夫ですよー、北村さん。
あんな感じに、ずっと活躍されるのではないでしょうか、って話早すぎ、先過ぎ。

主演は座長という考え、主役なんだからことさら目立とうとしない、受身でいい、と。
それで今の「宿命」が、おとなしめなのでしょうか。
あれはもっと、ガンガン行ってほしいんですけど、確かに新境地ですね。
それに小池さんとか、すごく立ててあげてると思います。
かつての北村さんポジションに立てて、持ち上げてあげていると思います。

それで何年か前、誰から聞いたんだろう?
業界の女性に聞いた、好きな俳優のベストテンの中に北村さんが入っていたという。
これ、業界の女性だから、見た目が好きとかタイプだからという以外に、一緒に仕事してどうだったかというのが、ものすごく大きな要素になってたんですね。

それで選ばれるっていうことは、北村さんが俳優さん仲間以外に、裏方さんにも気を配れる人だっていうことですよね。
他にもベストテンに悪役の方とか、結構入ってました。
それはやっぱり、裏方やエキストラの苦労を知っているからできることで。
この話も、また後で出てきます。

「人を信じなきゃダメだろうなと思います」。
やっぱり、この方、人との関係をきちんと結べている方ですね。
愛情を持てる人なんだと思いました。

「遠かった分、重みを感じます」。
主演バンバンやって、バンバン人気が出てる人を見ていた遅咲きの人は違うと思うんです。
大切に演じていくと思うし、遠かった分、実力も精神力も強い。

それで、これは自分の好みの話ですが、こういう、スターを横で見ていた遅咲きの人って好きです。
周囲に思いやりもあるし、本業はしっかりしてるし。

長いので、続きますが、次で終わりです。
お付き合いしてくれてる方、ありがとうございます。
(2/4)、時代劇云々の部分、少し書き直しました。


2010.02.27 / Top↑
さて、北村さんにまつわる「3つの伝説」。
まず、「鬼火」出演の時のこと。
ここでの役は、心優しいゲイバーのママ。
「役作りの為、新宿二丁目に通いつめた」伝説。

「ゲイの役を演じる時に、やっぱりゲイの人って、どういう人なのかわからないわけじゃないですか。振りはできますけど、内面からどういう…、本物に近づこうという意識があって。知った上で排除するのは自由なんですが、ゲイっていうのが、どういう人たちなんだろうって。取材ですよね。その一環として」。

「15年ぐらい前で金銭的に余裕があるわけじゃなかったので、街に出たら、一杯、声かけられて。とりあえずついてってみようかな、と。お酒をご馳走になりながら、多少触ってきますけどね。(手で太ももを払いながら)こうしながら、あのいろんなことを聞いたり。そんなことです」。

「ちゃんと理由も説明して。僕は俳優でこうこうこうで。ちょっといろいろ聞きたいんで、いいですかって。ちゃんと本当に知ってみないとだめだよって、みんな言ってくるんですけど。教えてあげるって」。

質問:そこまではしなかった?
「そこまで知る必要はないと思います。はい。そんなの例えば変な役やってる時に、本当に悪いことしなきゃいけないじゃないですか!多少の嘘は必要ですし、後は現場でどういうふうになるかっていうのは作っていきますけど」。

「僕あんまり役作りっていうのも考えてなくて、ただ脚本はすごく読みますし、調べられる範囲は調べますし。後は考えるって事はギリギリまでしますけど、特別に何かはしないと思います。試験勉強みたいなもんだと思いますけど。現場に来たら試験の当日みたいで、もうやるしかなくて。それまでの練習であり勉強であり、そういうのを隙間なくやればやるほど、それが対処できる準備になるわけで」。

「チンピラを演じる為に前歯を抜いた」伝説。

質問:何本抜かれたんですか。
「抜いた歯と削った歯といろいろあるんですよね。チンピラということで昔に…(言葉を選ぶ)。ダメなことをやってた昔を想像させるために溶けたような歯を作ろうと思って、削って抜けるとこは抜いて。根っこから抜けるとこと先々抜けるとこと、削るとこと。全部でいじったの11本で、抜いたのは8,9…」。

質問:そんなに抜いたんですか?!
「見えるとこだけね」。
「JOKER 疫病神」のワンシーン。
質問:周りの反応はどうでした?
「いや、触れてこなかったと言うか、びっくりしてましたけど。まあ、髪の毛切るみたいなことですよね」。

質問者:いや、いや、いや…。
「人によっての考え方でしょうけど、僕は少しでも見る人がわかりやすい方が良いっていうのがあるんです。子供が見てもわかるような。僕はいつも子供目線ってものは絶対、考えてんですよね。昔から怖い役はほんとに怖く、子供から見ても怖く」。

「それがリアルな演技じゃなくったって、わかりやすくたって良いんですよね。別に誉められる為に演技してるんじゃなくて、楽しませる為にお芝居をしたいわけであって。わかりやすい、こういうの大好きだったんですよね。昔から。それだけですよね。後は何にも考えてないし、聞かれることもあるんですが」。

「役者バカみたいなこと聞かれて、そういうのもあんまり好きじゃないですよね。よく飲みに行って演技みたいなことを語ったり、どうこうって言うのも、あんまり僕は得意じゃないし、話すもんじゃないと思ってるし。テレビはこういうのだ、映画はどう。そんなのって自分が見た範囲だけのことじゃないですか。そういうのも決めたくないし、いつも自分を安定っていうのかな、否定したいっていうか、固まりたくない」。

「タランティーノ監督を突撃訪問?」伝説。
「宿泊先のホテルで待ち伏せして、向こうから出演依頼をされたんです。握手してもらったら、I know youって言われて、びっくりじゃないですか。間違えてるのかなと思ったら、そのまま部屋に連れて行かれて。三池監督の作品が好きでビデオも持って来てて、これにサインしてくれって言われて。いや俺もサイン欲しいんだけどって」。

「俺の映画好きなのか?って聞かれて、もちろん好きで会いに来たんだって言ったら、オーディションも全部終わって決まったところで、残念だ、もう少し早く会いたかった。もし少しの役でもあったら、お前は来てくれるのかって言われて、そりゃもちろんって。そこだけの話かなあと思っていたら、一週間経ったら事務所に電話かかってきて作れるかどうかわからないけど、現場見に来るかって言われて」。

「会えないかもって、考えないんですよね。ダメで元々っていう感じですよね。元々全てのことがダメで元々だと思ってるので、結果よりも自分がそこに行くっていう行動の方が。会えるから行くっていうんじゃなくて、こっち向いてくれるから行くんじゃなくて。自分が行きたいから」。



伝説その1は、ゲイのことを知らないので、心情を理解する為に取材をした、ということですね。
気持ちがわからないで真似することはできるけど、それでは見る人が見たら楽しめない、または共感できないということでしょうか。

しかし、入り込んでしまわずに、「そこまで知る必要はない」と、ちゃんと境界を引くことが出来る。
健全ですねー。
しっかりしてますね。

「多少の嘘は必要」なのはドキュメントではないから、かといって、丸っきりの嘘でもない。
その世界を堪能させてくれる、夢を見せてくれるものが、やっぱり見ていて楽しい。
「必殺」にしても「子連れ狼」にしても、SFにしても、アクションでもそうですよね。

時代劇だとあまりに時代考証無視でもうそ臭いし、だけど事実だからといって女性にお歯黒なんかされるとちょっと入り込めないし、と考えると、多少の嘘は必要。

でも、丸っきりの作り事であるありえない技やマシンガンなんかも出てきたりする。
それでもその世界を嘘として全否定せず楽しめるのは、そこにいる人間に感情移入させてくれるからじゃないでしょうか。
そして、それをさせてくれるのは特撮でもなければ殺陣でもない、登場人物だけ。
その登場人物に命を吹き込むのが、俳優。

人間をしっかり感じさせてくれれば、荒唐無稽なアクションでもSFでも感情移入はできる。
私はそんな風に考えています。

伝説その2は、ショーケンが主演した「JOKER 疫病神」のエピソード。
出ました。
出るでしょうね、やっぱり誰が聞いてもすごいエピソードですよね。

三国連太郎さんも若い時、役の為に歯を抜くということをやったことあるみたいですが。
そういえば三国さんも若い時、濃い顔でした。
この「濃い顔」については、また後で話が出てきます。

「髪の毛切るみたいなこと」って言って、MCのSHIHOさんが「いや、いや、いや…」って言ってました。
髪の毛みたいって表現すると異様な感じがしますが、たぶん、北村さんとしては歯を抜くことをヘアカットと同等の意味しかないってことじゃなくて、役に入る為に外見を変えるっていう意味で同じって言ったんだと思いますが。
やっぱり、歯を抜くという行為が生理的な痛みを連想させますから。

人間が我慢できない痛みの一つが、歯痛ですから、もう、それは想像しただけで痛いし。
だからSHIHOさんは「いや、いや、いや…」って言ってしまったんだと思いますね。

そこまでやって誰の為に演技しているかってというと、「誉められる為に演技してるんじゃない」。
つまり楽しませる為にしているから。

確かに、このチンピラの生い立ちとか性格とか、描かれなくても見てわかりやすい。
その為の行為だと。
わかるし、見ている側としては楽しめますけど…、やっぱりすごいですよ。
いや、そこまでしてくださって、ありがとう。

それと北村さんは子供感覚、一般人感覚を忘れたくない。
それで「自分が見た範囲だけのこと」で「決める」ことを嫌がってるんだな、と。
だから「宿命」の、悪としては中途半端なお坊ちゃんを演じてるんでしょうか。
北村さんお得意の人間像にするのは簡単だし、受けるけどそこに収まりたくない、と?
確かに、女性を手玉にのし上がる男ってわけでもないですねえ、崇は。

伝説その3、タランティーノ監督を突撃訪問。
いや、ポジティブだー!
その前にも思ったんですが、この方、暗くないですよね。
人間は突き詰めればみんな暗いとは思うんですが、そういうことも踏まえて、すごく前向き。

「ダメで元々」。
「会えるから行くっていうんじゃない。こっち向いてくれるから行くんじゃない。自分が行きたいから」。
口で言うのは簡単ですけど、実践するのは難しい。
「これはダメだったけど、今度は大丈夫かもしれない」って、人について、希望を持てる。
ちゃんとした愛情を知っている人が、言えることですねー。
いや、健全な人だなあと思いました。

もったいぶってるみたいで申し訳ないです、続きます。


2010.02.26 / Top↑
NHKトップランナーに、ついに北村一輝さんが登場。
すごい声援が飛んでましたね、とMCのSHIHOさん。
あの辺、と前列を指して、気絶しそうだねと同じくMCの箭内道彦(やない みちひこ)さん。
北村さん、「参ったね」と笑います。

まず、北村さんの経歴を。
「19歳でデビュー。
しかし新人賞をもらったのは30歳と、遅咲き。
日本黒社会(1999)の一場面」。

「チンピラや犯罪者など癖のある人物を演じてきた」というナレーションと共に、「夜王」(2006)の「ロミオ」を攻撃してきたアゲハに逆襲する「ホストをなめるな」のシーンが。
「嫉妬、狂気、欲望。人間の業を演じさせれば彼の右に出るものはいない」。
「ホカベン」(2009)、そして去年の「天地人」。

質問:一つの役を1年通して演じるのは初めて?
「13ヶ月、14ヶ月は最長ですね」。
質問:長丁場の撮影は、どうでしたか?
「正直飽きるかと思ったら、飽きずに最後まで楽しんで演じられました」。

質問:何で飽きるんですか?
「月曜から金曜までNHKに通って…。タイムカードがあるわけじゃないけど、いや、普段同じところに通うってことがない」。
質問:飽きっぽいんですか?
「そういう時もあるかもしれないですけど(笑)。そうですね」。

質問:どんな現場でした?
「スタッフもキャストも仲良くて楽しかった」。
質問:共演者とは毎回仲良く?
「仲良くなるように努力します。努力って言うと作っているようですが、やはり仕事だから。もちろんライバルでもあるわけですけど、いろんな考え方ってあるんですが、一つのものを作る、そういうもの見かたをする時は皆で協力した方がいいわけですよね、競争するよりも。コミュニケーションを取る時に良い方向に向く方がいいんじゃないかなと。昔は違いましたけど」。

ここで「映画の中の人と話してるみたい」と言われ、スーツのことを「こんなん着てるから…」と。
「こう、キュッと上目遣いで…」と言われ、「地なんですか?作ってるんですか」と聞かれると、「いやいや、作ってないです。普通です普通。変ですか?」。
「かっこいいです」と言われて、「いや、いや…」と照れます。

「皆月」(1999)の奥田瑛二さんとのワンシーン。
「映画やテレビの出演作は150以上。役どころも実に様々」。
「鬼火」(1997)ではゲイの男性。
NHK「坊さんが、ゆく」(1998)ではお坊さん。

「リミットもしも我が子が」(2000)では、非道な誘拐犯。
「ゴジラ ファイナルウォーズ」(2004)が映り、果ては地球制服をもくろむ宇宙人まで。
役柄をまとめたフリップを出され、ゲイバーのママ、チンピラ、ヤクザ…と読み上げながら、「NHKで全部読んでrいいんですか?」という声が。

殺人鬼、幽霊。
それを聞いて、「こう、並びたてられると、ちょっと…、そうですね」と言う。
「犯罪に手を染めてる感じありますね」と言われ、苦笑。

「最近は別に選んでるわけじゃないですけど、徐々にいい役がくるようになったりして」と言うと、「これらは悪い役ですか」と聞かれる。
「いや、良いイメージがないような役が多かったんですけど、こういう仕事やってる上では楽しめる役ではあるんですよね。いい役をどんどんしてちゃうと、こういう役ができなくなっちゃうんで、今のうちにしておけっていうのはありましたよね」。



いや~、この方、本当にいろんな役やってますよね。
蟲男なんてありましたよ、妖怪ですね。
「あなたの隣に誰かいる」。

この荒唐無稽な物語に説得力を与えてたのが、北村さん。
テロリストとか犯罪者やってると、本当に怖かった。
白石美帆さんもキレた良い演技してましたけど、北村さんが引っ張ったんじゃないかな、って思いました。
最後に灯油かけて、ポリタンクぶつける時、ほんとにこの蟲男にむかついてるんじゃないかって。

「沈黙のアリバイ」の犯罪者は怖かったし、渡辺謙さんが特別に2人の対決シーンを作ってもらったのも納得。
自分でやっつけなきゃ、すっきりしませんもん。
そのぐらい、いや~な犯罪者でした。
いえ、誉めてるんです。

「タスクフォース」とか「タイムリミット」の国籍不明テロリストは、ああ、国籍わかんないな、と。
誉めてるんですよー!
すごく手ごわそうで、怖くて、逃げられる気がしない。
絶対、狙われたくないと思います。

それで、若い頃、変質者とか放火魔演じたらシャレにならないぐらいで、今は渋い石橋蓮司さんじゃないですけど、北村さんはやっぱり「今の内にやっておけ」って役をやっていたと私も思います。

長いので続きます。


2010.02.25 / Top↑
2月22日の「SMAP×SMAP」に、初代にして最後の旧ソ連大統領、ノーベル平和賞受賞のミハイル・ゴルバチョフが登場!
驚きましたね~。
どうして?と思いました。
いやいや、もう、国賓級の来店じゃないですか。

米ソと言われ、西側と東側に分かれた冷戦。
世界が2つに分かれていた時の片側の国のトップですよ、って何だか日本語がおかしいな。
それだけじゃない、この人が出てきたことで世界が、世界地図が変わったんですよねー。
いや、ゴルバチョフ氏がいなかったら、世界は今と違っていたんじゃないでしょうか。

私はベルリンの壁崩壊の時、留学中の友人を訪ねてロンドンにいたんですが、大騒ぎのニュースを見て、日本語じゃないから(当たり前だ)「私は何かきっと勘違いしてるんだろうなあ」と思ってました。
本当だとわかってビックリして、イギリスの新聞を買い込んだ。
いや、記念にと思って…。

最初にゴルバチョフがどれほどすごい人か、池上彰さんとお勉強。
これはSMAPが知らないから、というより、ゴルバチョフ氏をリアルタイムで知らない人の為、または復習の為でしょうか。
ベルリンの壁崩壊は、SMAPが結成された前の年だそうです。

そしてついに、ゴルバチョフ氏が来店。
すごいな、本当にすごい。
ふっくらされましたね、ゴルビー!

木村さんが花束を、草なぎさんが熊のぬいぐるみを渡しました。
(追記:私は最初、香取さんと書いたのですが、「草なぎさん」でした。大変申し訳ありません。う~、ごめんなさい。教えてくださった方、ありがとうございます、すみません。失礼しましたが、引き続き応援させてください…)
ゴルバチョフさんの名前のミハイルは、クマという意味だそうで、喜んでくれました。

思い出す、ゴルバチョフ来日の日を。
朝から窓の外を見ていた先輩が、「ジル(大統領専用車)が来たわよ!」と叫んだ日を。
銀座の天ぷら店に飾られた、ゴルバチョフ夫妻の写真を。

それでゴルバチョフ氏は、天ぷらをオーダー。
おつまみも欲しいということで、うなぎもオーダー。
うなぎはおつまみなのか…。
もう70代というのに、さすが、精力的ですねえ。

ゴルバチョフ氏は、天ぷらが好き。
ロシアでは今、日本食がブームだそうです。
実際、暗殺されたリトビネンコ氏も寿司バーでやられたらしいですが、ロシアの人は寿司バーを見ると入らずにはいられない人も多いと聞きました。

料理のできる間に中居さんが、アメリカの大統領で印象的な人とかいろいろ質問。
レーガン大統領と会った時のこと、お互いの印象を話していました。
いや~、すごい歴史的な瞬間でしたから。

ゴルバチョフ氏はレーガンさんを「恐竜だな」と言い、レーガンさんは「共産主義者」と言ったそうですが、確か2人が会うきっかけになったのはサッチャーさんじゃなかったかな。
関係ないけど、サッチャーさんがフォークランド紛争に勝利した時は「女だって戦争して勝てるんだなあ」と言われてました。

やっぱり、ゴルバチョフさんも若い時は自分の国は良いと思っていたらしいですが、世界を知った時、ソ連はこのままじゃいけないと思ったそうです。
貧しいし、自由がないし。

自分の国が幸せになってほしいと思って、まずグラスノスチ・情報公開。
あ~、懐かしいこの響き。
そしてペレストロイカ・改革。
当時の写真を見ると、こんなにも若い時に歴史を変えたのか、と思いました。

赤の広場で狙われていたこともあるし、実際、暗殺計画なんかもいっぱいあったみたいですね。
当時、誰もが、世界一狙われている政治家だと思ってましたしね。
3月に結婚するお孫さんがスタジオに来ていて、かわいかった。
彼女のお姉さんにお子さんがいる、つまりゴルバチョフさんには、ひ孫がいらっしゃるんですねえ。

ゴルバチョフさんの気分転換、好きなことは散歩。
なくなったライサ夫人が数歩後をついてきて、2人でずいぶん歩いたそうです。
コーカサスの綺麗な風景が映りました。

草なぎさんと香取さんのチームは、天ぷらを富士山のように飾り、うなぎは太巻きにしました。
のりの苦手な外国人の方の為に、香取くんがNYで見つけたソイシートでカラフルに。
ゴルバチョフさん、おいしいとおっしゃって食べていました。
それで、ゴルバチョフさんは生姜がお好きだそうで、生姜を全部食べて香取さんがビックリしてました。

木村さんと稲垣さんのチームは、アワビや醤油で下味をつけたマグロ、マツタケの天ぷら、うなぎはせいろ蒸しにして、ご飯にもうなぎを混ぜました。
こちらもゴルバチョフさん、おいしいと。

饒舌なゴルバチョフ氏、どちらかを選んでくださいと言われても、自分のペースで話す、話させてくださいよ、って。
それで決めるのは来週にします、って、いやいや、どちらか選んでくださいと言われて、「私は天ぷらが好きなので、こちら(草なぎさん・香取さん)を思ったのですが」と、一瞬、草なぎさん・香取さんかと思ったんですが…。
うなぎで思うところがあったようで、木村さん・稲垣さんの方を選びました。

木村さん・稲垣さんは、ゴルビーのサイン入りマトリョーシカ人形をもらってました。
そうそう、香取さんが口からマトリョーシカを出した時、「それは食べ物じゃないよ」、と。
そしてゴルバチョフ氏は、「まず第一に男であること。次に人間であること」が大事だとおっしゃってました。

そういえば、何年前だか、電波少年だったか、ゴルバチョフ氏に会いに行ったことがありました。
会ってもらえて、地球環境について話すゴルバチョフ氏に「つまり、ゴミは分別しろってことですね?」とか何とか聞いて、「ニエット!」違う!って言われていたような。
あの時からゴルバチョフ氏はかなり饒舌な方、お話好きな方じゃないかな、と思いました。

こうやって各国の20年ほど前の指導者を見ると、レーガン氏もサッチャー氏もミッテラン氏もコール氏もト小平も(追記:「ト」の字を漢字にすると絵になってしまったので、カタカナに)、みんなカリスマみたいだったなあ、と。
今は良い悪いとか別にして、やっぱり…、プーチンがカリスマだなあと思います。
い…、いつの日か、ぷ、プーチン閣下が…、来てくださるでしょうか…。

私の友人は「私なんかさあ…、ゴルビーのテレフォンカード持ってたよ…」って。
私はね、ロンドンで買ってきた、バニーガール姿のサッチャーさんのポストカード持ってるよと言えなかった。
日本の政治家では考えられなかったから、政治家が国民に愛されてる、親しまれているってことでもあるなあと思ったものです。

それでやっぱり、ゴルバチョフ氏のオーラはすごい。
大物オーラ、なんて言うのも失礼な方なんですが、さすが、目に力がありますね。
ゴルバチョフ氏は穏やかで、懐が大きいと思いました。
お元気で良かったです。

そして人それぞれ役割があるんですけど、草なぎさんみたいな人っていうのは、こういう時に妙に自己主張をしないでいられる。
今日の主役が誰で、誰を立てればいいかをしっかり心得ている大人な人だと思いました。
はい。
そんなことも思った、ゴルバチョフ氏来店でした。


2010.02.24 / Top↑
弥太郎が江戸に来て1年。
土佐藩江戸中屋敷で、弥太郎は勉学に励んでいた。
第8回「弥太郎の涙」。

八平が世を去り、坂本家は龍馬の兄・権平が継ぎ、やっと挨拶周りが終わった時、龍馬は大勢で1人を袋叩きにしている場面に遭遇した。
庄屋の島田便右衛門は、お侍さんの手を煩わせるようなことではないと笑って去って行ったが、袋叩きにされていたのは弥太郎の父の弥次郎だった。

江戸では、溝渕が弥太郎に手紙を持って来た。
その手紙を読んだ弥太郎は呆然。
手紙には「父が大怪我をしたので、すぐに戻ってきて欲しい」とあった。

当時、江戸から土佐まで男の足で30日。
日本橋、三河、大坂、讃岐、「どこまで息子の邪魔をしたら、気が済むがぜよ!」と叫びながら、弥太郎は16日で土佐に到着。
家では、龍馬と美和が弥次郎を看病していた。
「生きちゅうがが…」と言う弥太郎に気づき、名前を呼ぶ父の弥次郎。

庄屋の便右衛門は、田んぼに引く川の水を独り占めにした。
それに抗議した弥次郎は、滅多打ちにされたのだ。
手伝いをする龍馬に弥太郎は「世話になったのう、龍馬」と言いながら「けんどもうええ、これはわしらの問題ぜよ」と言うとその足で、庄屋の島田の家に乗り込んだ。

「親父が死に掛けたと聞いたら、帰らんわけにはいかん!」と言って、刀を抜こうとした弥太郎だが刀が抜けない。
やっとのことで全力で抜いた刀を見て、便右衛門たちは大笑いする。
「何ちゅう、サビだらけの刀じゃ!」

弥太郎の刀は錆び付いて、それでなかなか抜けなかったのだ。
「やかましい!侍をあんな目に遭わせて、ただで済むと思うちゅうがか!」と怒鳴る弥太郎に便右衛門はすまして、この一件については安芸奉行がとうに弥次郎に非があるとお裁きを下している、と言った。
そして、「そうそう、お前さまのご友人、たしか坂本何某…、とかおっしゃいましたろうか。事の次第を話せだの、弥次郎さまに謝れだの…。まこと迷惑しましたきに、あの方もどうにかしてくださいませ」と言う。

奉行所に抗議に行った弥太郎は、あっさりと放り出された。
役人は、「坂本にも厳しゅう言うたはずやが」と言った。
坂本家では龍馬に権平が「面倒なことに関わるな」と言っていた。

だが、姉の乙女はそれを聞くと、「器が小さいのう」と言う。
妻も「お父上がお嘆きになります」と言い、幼い娘も「ごめんなさい、おじいさま」と手を合わせる。
ばつが悪くなった権平は龍馬に謝るが、龍馬も兄に謝る。

龍馬は武市道場に行き、奉行が端から庄屋の言い分だけを聞いておかしいと訴えるが、半平太は冷たい目をして「弥太郎に関わって何の得があるがじゃ」と言う。
「異国が日本を狙っている。日本は一つになってアメリカを追い払わんといかんがじゃ!こんまいことに関わっとる暇はないがぜよ!」と言う半平太の言葉に龍馬はショックを受ける。

そんな龍馬の様子には一向に構わず、半平太は「江戸行きの許しが出た」と告げた。
自分には今、120名以上の門人がいる。
土佐一の道場主である自分が、剣術修行に江戸に行きたいと言えば藩も承知する。
さらに金まで出してくれた。
収二郎と以蔵の分も、だ。

だが剣術修行は表向きの理由で、半平太は各藩の攘夷派と会うことが目的だった。
「黒船はでかいだの、異国の方が進んでるというが、日本人はそんなことでは怯まん」。
そして龍馬に向かって半平太は、「もう攘夷の機運は止められんがぜよ!」と言い放った。
半平太の様子に、龍馬は狂信的なものを感じる。

その帰り、子供と遊ぶ龍馬と加尾が出会った。
西町に行くと言う加尾と龍馬は一緒に行く。
うれしそうな加尾だが、その後姿を兄の収二郎が見送る。

加尾が龍馬に言う。
兄の収二郎も、すっかり半平太を尊敬している。
ご公儀はもう開国を進めてるというのに、攘夷は本当にできるのか。
弥太郎が、武市はわかってない、力ずくで攘夷などできないと言っていたと加尾は言う。

そう思って龍馬は武市の仲間に入らなかったのか?と聞く加尾に龍馬は、幼馴染の半平太を先生というのが馴染めないと笑った。
加尾は、そんな龍馬を龍馬らしいと笑った。
いつもふらふらしている人が、誰かの家来になるなんて想像ができないと言う加尾に、龍馬もまた、誉められてるのかけなされてるのかと笑う。

その時、饅頭屋の長次郎が声をかけて来て、2人を冷やかす。
しかし長次郎は龍馬が土佐で羽を伸ばせるのも今の内だと言い、江戸一番の道場主の千葉定吉先生に目をかけられるのは大変なことだと言った。
その言葉で、龍馬が再び江戸に修行に行ってしまうことを知った加尾は去ってしまう。

見送る龍馬に、長次郎は「岩崎の一件に関わっておられるとか?」と聞いた。
長次郎には、奉行が庄屋を贔屓するのは当たり前と言った。
庄屋は常日頃から奉行にある時は米、ある時は金と、付届けをしている。

しかも、奉行は初めから事を荒立てたくない。
このことがお城に知れたら、ケンカ一つ収められないと責められるからだ。
弥次郎1人を泣き寝入りさせて終わらせるつもり…、それを聞いた龍馬は、「それはちっと、むごい話よのう」とつぶやく。

帰宅した加尾は兄の収二郎に「嫁入り前のおなごが男と2人で並んで歩いたらいかん」ととがめられた。
龍馬さんは幼馴染と言った加尾に、収二郎は「我々と龍馬とは意見が違う。もう幼馴染ではない」と言う。
そして、間もなく半平太は江戸に旅立った。
いきり立つ以蔵に半平太は、「おまんはもう一人前の侍だ」と言い、以蔵は「ありがとうございます」と喜んだ。

半平太が歩いて行ったのは、龍馬や弥太郎が歩いて行った道だった。
だが、「その先に待っちょったものは、わしらとはまるで違うもんじゃった」と弥太郎は回想する。
半平太の祖母の智が外を見ながら、「半平太…、半平太」とつぶやく。
妻の富が悲しそうに抱きしめている。

祭りの夜、加尾が自分を避けているのに気づいた龍馬は言う。
確かに自分は加尾が好きだ。
それを聞いた加尾はうれしそうになるが、自分はまだ何者にもなっていない、自分が何者かになるまで加尾とは一緒になれない、と言う龍馬。

その頃、弥太郎は連日奉行所に行って訴えていた。
追い返された弥太郎が家に戻ると龍馬がいて、手伝っている。
「何をしゅうがぜよ、おまん」と言った弥太郎を母の美和がたしなめ、父の弥次郎もたしなめる。

いまいましげに弥太郎は、薪割りを始める。
その弥太郎に龍馬は、自分が知った話をする。
庄屋と安芸奉行が繋がっている、訴え続けてもどうにもならん、と言う龍馬。
「このまま泣き寝入りせいゆうか」と弥太郎の目が燃える。

「確かに親父の酒癖の悪さはひどいもんじゃ。酔うたらすぐにケンカ、博打好きで金にだらしのうて」。
その言葉は弥次郎の耳に入っていた。
「わしゃ、何べん泣かされてきたことか。けんどのう、わしにとってはこの世でたった一人の親父なかじゃ!親父が半殺しにされて、罪を全部被らされて、黙っちょられるわけなかろうが!」

じっと聞いている弥次郎、そして弥次郎を見つめている美和。
「訴えても訴えてもどうにもならんが」と言う龍馬に向かって弥太郎はかがみこみ、懸命に錆びた刀を抜き、「じゃったらわしはもう、庄屋を斬る!それを止めるなら、おまんも斬るぜよ!」と叫ぶ。

じっと聞いていた龍馬は、「わしも父上をなくしたばかりじゃ」と言う。
その言葉に弥太郎が静かになる。
「こたびの一件は、わしも腹がたっちゅう。腹が立って夜中に目が覚めるがぜよ」。
その言葉に、弥太郎が泣きそうになる。

「けんどのう、おぬしが庄屋を斬ったら、今度はお父上が斬られるぞ。しかえしに庄屋の息子を斬ったら、おまんのお母上が斬られる。ケンカいうのは、そういうもんじゃ」。
そう言った龍馬に弥太郎は、「どうせい言うがじゃ!」と叫んだ。

龍馬は言う。
「安芸奉行は、庄屋から金をもらったことをお城に知られたくない。そのことをわしらが知らせちゃろう」。
龍馬は兄から吉田東洋という方がいて、今は蟄居しているが、ご直参の1人を殿の親戚と知りながら酒癖の悪さを一喝したと聞いた。

そんな気骨のある方なら、話を聞いて裁きのやり直しを考えてくれるだろう。
吉田東洋にお目通りを願って訴える。
「会えるわけがない」と言う弥太郎に龍馬は「会えるかもしれんぜよ」と言った。

だが弥太郎は「わしらは下士じゃぞ!おまん、江戸に行っちゅう間に忘れたか!」と怒鳴る。
その言葉に、龍馬が黙る。
「虫けらの言うことに、上士が耳を傾けるわけがないろうが!」

家の中で、弥次郎が泣いている。
その弥次郎を美和が見ている。
田んぼの様子を見てくると行って、弥太郎は出て行こうとした。
その時、美和が言う。
「庄屋の横暴には、村のみんなが困っていた。おとやんは皆の為にケンカした」。

帰宅した龍馬に、藩から江戸行きの許しが出たという報せが待っていた。
また1年、江戸で修行が出来る。
それを聞いても浮かない顔の龍馬にみなは、「どういてそんな浮かん顔をしちゅう」と言い、「おまん、まだ岩崎家のもめごとに関わっちゅうか!」と兄は言う。

「他人事じゃぞ」と言う兄に龍馬は「友達ですきに」と言い、出立はすぐでなければいけないかと聞いた。
渋い顔の兄に姉の乙女が「ええきに、出立が少々遅れるぐらい構わんぞね」と言った。
そして兄の権平はいつも娘には、「自分さえ良かったらええゆう、考えはいかん」と言い聞かせているんだと言った。
「気いの済むようにしやれ、龍馬!困ったことがあったら、うちらが助けちゃるきに!なあ兄上?」と乙女が言い、家族がうなづく。
「ありがとうございます!」と龍馬が言った時、弥太郎が「吉田東洋の屋敷はどこぜよ!」と言いながらやってきた。

それから3日、龍馬と弥太郎は、吉田東洋の屋敷前で座り込みした。
4日目の朝、「起きや!」と東洋の家来がやって来て、龍馬たちを揺り起こした。
お目通りがかなったのだ。

だが、東洋の家来に「吉田さまが聞いてくれるが、下士の分際で吉田に直訴するからには、それなりの覚悟をしちゅうのだろうな。訴えが聞くに値せずと判断されたら、この場で手討ちにされても仕方がない」と言われ、弥太郎は緊張して言葉が出ない。
龍馬に促されて、やっと弥太郎は話し始める。

庄屋が川の水を自分らの田んぼに引き込んで独り占めしたのに抗議した父・弥次郎が、殴る蹴るの乱暴を受け、生死の境をさまよう大怪我を負ったが、安芸奉行は父1人を責め、庄屋を咎めなしにした。
その背景には、不正があった。
奉行は、庄屋から金品を受け取っていた。

「そんな理不尽が許されるのでしょうか!」と言う弥太郎に、龍馬が「お願いいたします!」と頭を地面にこすり付けて願う。
着替えをしていた東洋が「坂本龍馬と言ったな。どういておんしがここにおる?」と聞いた。

「私は…、大怪我をされた弥次郎殿の姿を見、さらに不正な裁きに許しがたきものを感じたからでございます」と龍馬が言った。
しかし東洋は「けんどそんな話は、どこにでも転がっていちゅう」と言った。
「わざわざ、わしが聞かねばならんことではないろうが」。
「泣き寝入りせいと?!」と言った龍馬に東洋は「他に何ができる、おんしら」と言うと奥へ去っていく。

「おまちくだされ!」と言った龍馬に、家来が刀を抜きかける。
龍馬は、東洋が殿の親戚と知っていながら酒癖の悪い直参を叱った話をする。
殿の前で、その松下という直参を東洋は殴った。
職を解かれることを覚悟で殴った東洋なら、きっと自分たちの無念をわかってくれると思ったのだと龍馬は訴える。

それを聞いた東洋は「黙れ!」と一喝した。
龍馬も弥太郎も緊張する。
「わしは殴ってもええがじゃ」。

龍馬も弥太郎も沈黙した。
東洋は言う。
「天才じゃきに」。

龍馬は口をポカンと開く。
「そのうち、わしはまた藩政に返り咲く。わしがいかに有能か、お殿さまはわかっておられるきにのう。そんな人間は何をしてもええがじゃ!」
そう言うと東洋は言った。

「岩崎弥太郎。おんしは何を持っとる?坂本龍馬。おんしに何が出来る?何の力もないものは黙っておるしかないがじゃ!それが世の中ぜよ」。
龍馬は東洋の言葉に呆然。
口を開けたまま隣を見ると、弥太郎はこらえきれず涙を流していた。

雨の中、弥太郎は龍馬を責めていた。
「騙された、おまんに騙された。吉田東洋に訴えたら、何とかなる言うたはおまんじゃ。何とかなるどころか殺されるところじゃった!」
そして、「おまんは江戸に1年いて、何をしていた?」と言った。
龍馬は「未熟なことは、わかっちゅう」と力なく答えた。

「もう、わしらに構うな。殴られなかっただけありがたいと思え!」と言う弥太郎に龍馬が何か言いかけると弥太郎は、「お前、東洋に言われたこと忘れたか、わしら下士には何ちゃあできんがぜよ!」とまくしたてた。
「もう止めた!もう止めた!」と去っていこうとする弥太郎を「待て。止めてどうするがじゃ」と聞いた龍馬に答えず、弥太郎は去っていく。
無力さに唇を噛み締める龍馬。

早朝、誰もいない安芸奉行所の前、弥太郎は苦労して、錆びた刀を抜く。
おもむろに奉行所の扉に、何か刻み始める。
「やっぱりか。おまんが、あのまま引き下がるとは思えんきにの。それは落書きか」と龍馬の声がした。
「落書きじゃ」と弥太郎が答える。
「情けない…、の」と言う龍馬に、弥太郎が「ああ、情けない」と答える。

奉行所の扉に刻み続ける弥太郎を、龍馬は見つめる。
弥太郎は言う。
「けんどのう、これが今のわしにできる精一杯の…」と言いかけた時、龍馬が言った。
「弥太郎!おまん、自分のことを頭がええとか、世渡り上手じゃとか言うとったが、それは勘違いぜよ。おまんはの、不器用な男じゃ」。

すると弥太郎が「なら聞くがのう、龍馬。おまんは何じゃ。わしらの家族には何の関わりもないのに、吉田東洋に手討ちにされそうになってまで、何でわしにつきあうがじゃ」と聞いた。
龍馬は言った。

「おまんが帰って来た日じゃ。あれだけの強い思いで江戸まで行ったのに、岩崎弥太郎はお父上の為に帰って来た。あの時、おまんの泥にまみれた姿を見た時、わしは…」。
そう言うと龍馬は胸をポンポンと叩き、「震えが来たがじゃ」と言った。

振り向いた弥太郎と龍馬は見詰め合う。
口が動かない弥太郎は、やがて首を振ると、やっとのことで搾り出すように「な、何ちゅう、つまらん理由じゃ」と言った。
「聞いて損した!」

そう言うとまた、ふうふう言いながら扉を削り始める。
龍馬が立ち上がる。
「実はの、弥太郎。わしはまた江戸に行くことになったがじゃ」。
弥太郎が振り返る。

「すまん」。
龍馬を見つめる弥太郎。
「ま…こと、恵まれちゅうのう」。
弥太郎の顔が歪む。
龍馬は、ばつが悪そうだった。

弥太郎は「今度は無駄にせんことじゃ」と言う。
龍馬が笑うと、弥太郎はまた削り始める。

奉行所の前は人だかりが出来、騒ぎになっていた。
饅頭屋の長次郎がやってきて、扉に刻まれた文字を読む。
役人は、下がれ下がれと言っていた。

「官が賄賂をもってなし。獄は愛憎をもってなす」。
読んだ長次郎は、ふっと笑い、「全く持ってその通り」と言った。

弥太郎が刀を金に代えた。
その金を持って、龍馬は岩崎家に来た。
美和は、「途方にくれとったがです。この人は働けんし」と言って、頭を下げた。
しかし、あんな錆びた刀が良くお金になった、と。

背中を向けていた弥次郎が「いや、あいつはようやった。わしゃ溜飲が下がったぜよ」と言う。
「それはわしも同じです」と言った龍馬に弥次郎は、「いや、おまんはいかん。坂本さん、どういておまんも牢に入らんがじゃ?わしゃ、がっかりじゃ」と言った。
美和がそれを聞いて「お父はん、それはおまはんじゃ!」とたしなめる。

龍馬は「お父上のおっしゃる通り、かも」と、ばつが悪そうに言った。
後姿の弥次郎が泣いているのに、龍馬は気づいていた。
弥次郎を見つめる龍馬。

弥太郎は入牢させられた。
牢から顔を出しながら、弥太郎は「見ちょれ、龍馬!わしは必ず、こっから這い上がってみせるぜよ!」と叫んでいた。
その頃、龍馬は江戸行きの道中にあった。
「見ちょれよ、弥太郎。わしはまた、ようけ学んでくるぜよ!」



これ、実話なんですよねえ…、弥太郎~。
かわいそうだよ、弥太郎~。

30日かかるところを16日で帰国する間、割りとこざっぱりした感じで江戸の土佐藩邸で勉強していたというのに、どんどん弥太郎の荷物はどっか行っちゃって、着物はどんどんボロボロになり、土佐に到着した時は裸足。
足の指から痛々しく流れる血。

今までを考えても、すごい部類の汚れ方。
監督、弥太郎汚すの、楽しんでませんか?
でも、それだけにものすごいエネルギーを使って戻ってきたところに、弥太郎の愛を感じました。

そんな風に必死に帰って来たら、龍馬が家にいて、家族全員に感謝されてる。
ムカ。
俺が必死に、ボロボロになって帰って来たっていうのに、コイツは何だか、いっつもいいとこ取りしてる!

しかし、今回の弥次郎さんは正しい。
弥次郎さんは今回は博打で袋叩きにされたとかいうんじゃなくて、国定忠治の頃からある、水問題で袋叩きになったという。
お父ちゃん、正しいじゃないか!
なのに痛めつけられちゃうなんて、許せん。

ボロボロのまま、庄屋に猛抗議しに行ったらバカにするもんだから、武士をバカにしてただで済むと思ってるのかー!って刀抜こうとしたら、あれ?どうして抜けない?
錆びてる。
武士の魂が錆びてるう!
この後も弥太郎、いちいち、刀が抜けなくて、悲しいやら、おかしいやら。

実戦で使わなくても、武士の魂は常に磨いているというもの。
つまり、弥太郎にはほんとに武士の自覚がなかったか。
それとも武士の魂なんて磨く暇もなかったし、そんなもの持てるような生活じゃなかったということか。

しかし、悲しいかな、やはり武士。
最後は刀を抜くんですね。
それで、こういう時に武士の魂が錆びてると、非常にバカにされる結果になるんですね。
もう、武士と認めてもらえない。

龍馬は龍馬で、知性派であり、人格者であるはずの武市さんに相談に行ったんです。
そうしたら武市さんはすっかり土佐における攘夷派のカリスマみたいになっちゃってて、攘夷のカリスマに田んぼに水を引く争いなんか関係ないよみたいな感じ。

えー、武市さんってこういうことにこそ、義憤を感じてくれる人だったんじゃ…、と戸惑ってる龍馬に、そんなことより俺は江戸に行くって、もう鼻高々。
要するに天狗状態の有頂天。
今まで内に情念を秘めていたはずの半平太さん、今度は心のうちが非常にわかりやすい人になってしまいました。
それだけじゃなくて、スケールアップしたはずがかえって、非常にみみっちい男になっている…。

さて、加尾ちゃんですが、龍馬の再びの江戸行きにショック。
しかし、「ワシは今でもおまんが好きじゃ」と言われてウキウキ。
だけどねー、あの龍馬の言葉は、加尾ちゃんを縛るだけでかわいそうじゃないんですかねえ。
江戸でも佐那ちゃんが待ってますよ。
あ、佐那ちゃんの気持ちには気づいてない?
う~ん…。

しかし、加尾ちゃん、龍馬の鈍さに傷つきながらも、自分も弥太郎に対して鈍いですよね。
プロポーズされるまで、弥太郎の気持ちに全然気づかない。
それほど、眼中なかったんですか。

「弥太郎さんの塾に行ったのは学問がしたいからじゃなくって、龍馬さんに置いていかれたくなかったから」って言ってますしね。
龍馬に傷つけられてる割には、弥太郎を傷つけたことには無頓着。
恋した女には相手と自分以外、全部脇役だからしょうがないですか。
まあ、それが恋ですか。

庄屋にはお咎めがないからくりを知った弥太郎が、激怒した時の言葉がいい。
全身全霊をかけて、自分の為に動いてくれる。
こんな人間が1人いるだけで、どうしようもない人間だろうが何だろうが、生きてきて良かったと思える気がしました。

そこで龍馬の言うことが平和主義らしいというか、実に的を得ていることも確かでした。
暴力には暴力、恨みには恨みで返って来る、その連鎖はどちらかが滅びるまで終わらない不毛なものなのだ、と。
確かです。

小さい人間関係からして、そうだったりします。
相手を参らせないと気がすまない。
会議なんかでもありますけど、「でも○○は違います」とか主旨と全然違うことなのに重箱の隅をつつくようなことを見つけ出して、話が横に逸れても、その議題の大意を組んでなくても、とにかく相手を屈服させたいだけで絡む。

やってる本人は頭悪そうに見えちゃってるんですけど、そんなこと気づかない。
それで言われた方が頭が良かったり器が大きいと、「はいはい、そうですね。すみません、そうですよ」って収めちゃって、相手のプライドを満足させてやって、本質に話が進む。
でも、片方も意地になってると、細かいことばっかり言い出して、ちっとも本題が前に進まない。

そうですね、この場合、「武士」と言い出した弥次郎に「お前、前回、武士なんかどうでもいい」って言ってたじゃないかなんて弥太郎の過去発言を掘り出して言ってると、父親に手を出したことに憤っている弥太郎と本質の話が前に進まないって感じですか?
それで、この場合も、便右衛門の器が大きくないので、延々と続く可能性がある。

だから龍馬は正論なんですが、弥太郎の前では綺麗事でしかないんですね。
要するに弥太郎に「争いを避ける為には、あんたが物分り良く泣き寝入りしなさい」って言ってるだけにしか聞こえない。
しかし龍馬は一つの案を提案。
泣き寝入りじゃなくて、龍馬は吉田東洋の気骨に頼ることを提案した。

理想はもちろん大切ですけど、それを許さない現実というものがある。
自分たちの理想とは違うところで生きている人間がいて、それぞれの利益や生存を賭けているわけで。
理想を掲げつつ、その現実とどうやって折り合って収めていくのか、それができるのが大人であり、世の中を動かす立場にいる人がやることじゃないかと。

今、現にそういうお子様政治家がいるから余計、良くわかるんですが、そういうことができなければ、理想を言ったところで、「そんな話、何の役にも立ちゃしない!」って言われちゃうだけで。
世の中を動かす立場の人としては無能どころか、時には理想論言うだけに、こうやって泣き寝入り強いたりして、非常に迷惑だったりするんですね。
加えて、恵まれたところからそんなこと言ってりゃ、「お前が?お前が言うか?そんなこと、お前が言うのか?お前はいいよな」って思われちゃうだけで。

さて、龍馬たちに頼りにされた吉田東洋ですけど、これが実にあっさり龍馬たちの希望を打ち砕いてくれるんですね。
江戸に行っていて忘れたんじゃないのか、わしらの立場をって言う弥太郎の言葉はすごく現実。
そうなんです、江戸という自由の中で龍馬は忘れていたんですね。
土佐にいた弥太郎は、忘れてない。

「わしは何をしてもいいんじゃ、天才だから」って東洋さまの選民意識もすごいですけど、それだけのことはあるんですね。
これだけのことを言うからにはそれだけのことをしなければ、笑われて終わりになります。
だから余計な敵を作らない為に、嘲笑されない為に、人は身の丈にあった言動をしなきゃいけないってことを学ぶ。
しかし、東洋さまにはそんなことは必要ないんですね~、もう、すごい。

龍馬の理想論に対して、東洋の言葉はそれ以上の真実だった。
「任侠ヘルパー」じゃないですけど、「力のない愛はたわ言、愛のない力は暴力」になってる。
自分というものがどれほどものか、何者にもなっていないことを自覚させられた龍馬が震える。
一方、弥太郎は自分が何の力も持っていないことを、再確認させられただけだった。
期待が少しでもあっただけに、弥太郎の無力感といったら、わざわざそんなこと再確認させた龍馬、ありがとう!(腹が立つ意味で)。

実際、半平太が、希望を打ち砕かれた以上の絶望感だったと思います。
東洋にしてみれば、3日間の座り込みに応えてやっただけでもありがたいと思え、みたいな感じですね。
しかし、すごいですね、この東洋さまの迫力は。
私ならお話できないですよ、怖くて。

それでも、自分にできる精一杯の事をする弥太郎。
たとえ落書きという、愚かな行為であっても。
それを龍馬は見てるだけ。

いや、彼がやらなきゃいけない理由ってないし、責められるのはお門違いって感じですけどね。
でも弥次郎が言った、「あんたは何で牢に入らん?」って言葉は、結局、龍馬は恵まれた立場から、自分の身が痛まない程度にやってるだけでしょ?って言ってるようでした。

いや、十分やってますけどね、やっぱり岩崎一家みたいな人たちからしたらそんな感じ。
それを感じたから龍馬もどことなく、居心地悪くなったんじゃないでしょうか?
そんな顔、してましたよね。

弥太郎も、本当はそんなことを言いたかったのかもしれません。
でも、弥太郎だけは知っている。
確かにコイツは甘い。
理想主義者で、甘くて、そんなこと言ってられる程に恵まれていて、腹の立つ男だ。

でも、でも…、コイツは斬られるかもしれないところまでついてきた、って。
腹が立つけど、もしかしたらコイツは俺の友達なのかもしれない…。
少なくとも、コイツは俺を友達と思っているのかもしれない。

弥太郎が、ちょっと感動してます。
だって弥太郎がやったことに対して、心が震えたなんて言った人はいなかったんですから。
哀れみじゃないって思った、コイツは俺を認めてるんだと思った。

弥太郎を置いて、さわやかにまた江戸に向かう龍馬。
入牢させられる弥太郎。
この明暗。
「おまんが大嫌いじゃー!」同様、2人のすれ違っている思い。

必ず、龍馬がいるところまで這い上がる決心の弥太郎。
それは龍馬を見下す為でもあり、今度何かあった時は「優越感たっぷりに」助けてやる為でしょうか。
だけど優越感持とうがどうしようが、助けてやることには変わりはない。
弥太郎にとっては、他の人間は助けるどころか、蹴っ飛ばす対象にしか過ぎないはずなんですから。

今回、龍馬たちが受けた仕打ちはすごくきつい。
ですけど、それほどのこともしていないし、見せていないのに何だかわからないうちに主人公にみんなが魅了されて、動いてくれて、全部、主人公の思うようになる。

主人公からまだそれほどのことが感じられないのに「何から何までお任せください」という主人公に「○○様の言うことなら」と周りが言う。
まだ納得するエピソードがないうちから、「○○さまはすごかお人じゃ」と誉めそやす。
歴史上あった手柄は、全部その人物のものになり、主人公を持ち上げる為に周りを落とす。

今回は主人公がやってることがひたすら肯定されるっていう流れにならないところが、単に福山さんにブーツ履かせて袴で歩かせればかっこいいんじゃないかと思って作ってるんじゃないな、と思うところです。

大河って、そういうものだったと思うんです。
その人物を最初から聖人君子の天才のように描いて、持ち上げるんじゃない。
主人公が大成していく間に理不尽なことに遭遇し、悔しさを噛み締めながら、それを糧にして大きくなる。
最近の大河にはそれがないものが多くて、とっても浅い気がしてたんですが、その点、今年の龍馬伝はちゃんと作ってると思うのはそういうところなんです。

だからおもしろい。
それで、…弥太郎、頑張れ!


2010.02.22 / Top↑
日系人を描いて印象的なものでは「山河燃ゆ」の他に、「ベストキッド」という映画にありました。
いじめられっ子が、ハワイ移民の日系人のミヤギというおじいちゃんに空手を習って強くなる映画なんですが、このおじいちゃんが酔っ払うシーンがあるんです。

軍服姿で酔っぱらって「ミヤギ軍曹!」と名乗って、敬礼して「ドイツ兵を殺しました!」と言うんです。
このおじいちゃんのいた部隊が、「山河燃ゆ」の勇のいた日系人部隊だったようなんですね。
死傷率30%以上、第二次大戦中、最も多くの勲章を受けた部隊だそうです。

そうやっておじいちゃんが戦っている間、奥さんは収容所で出産し、子供と共に命を落としてしまった。
医者が日系人の収容所に、間に合わなかったんです。
それを酔っ払ったおじいちゃんが少年に語る、というより、酔っ払うといつもつぶやいてるんでしょうね。
聞いた少年は空手の師匠という以上の気持ちを、おじいちゃんに抱く。

パット・モリタさん、良かった。
「ベストキッド」は単なる子供向け映画じゃないなあ、と思いました。
それに、アメリカ人が良くこんなシーンを入れてくれたなあ、と。

さらに、ずいぶんと前になりますが、日系アメリカ人の作家ジョン・オカダが書いた「ノー・ノー・ボーイ」という本を読みました。
スパイダースの歌とは、全然関係ない小説です。

第二次世界大戦中、日系人の強制収容所でされた2つの質問。
「米国に忠誠を誓い、日本への忠誠を放棄するか?」
「米軍に従軍する意思があるか?」

これに2つとも「イエス」であって、軍で働けると判断されると男性は戦場へ。
2つとも「ノー」と答えると、敵性外国人ということになる。
この質問に2つとも「ノー」と答えたのが、小説の主人公。
主人公の親友は「イエス」「イエス」と答えて戦場に行き、片足を失います。
2つの国の間で悲劇に見舞われる日系人たちを見て主人公は、自分とは一体何なのだろうと悩む。

こんなことを思い出していたら、草なぎさんのドラマが、ますます楽しくなりました。
日本人としてのアイデンティティーを問われざるを得なかった時代の、日系一世、二世には描くことがたくさんあるんだと思います。
そんな人たちの物語を「ハルとナツ」の橋田壽賀子さんが「JAPANESE AMERICANS」と題して描く。

草なぎさんにはものすごいプレッシャーであるかもしれませんが、確実に新たなるステップとなるのではないでしょうか?
ドラマにも草なぎさんにも、ものすごく期待ですよ。
それにしても橋田さんが草なぎさんありきで、脚本を書かれるとは…。
そう話したら、「任侠ヘルパー」見ていた70代の人も「だって、あの子はうまいじゃない」と。
う~ん、草なぎさん、全方位にファン獲得か!
それにしても、すごく良い機会を与えてもらいましたね~。

草なぎさんだからこれにまた全力投球して、ステップアップして、また成長することでしょう。
がんばってください、期待してます!


2010.02.21 / Top↑
藤田まことさんの演じた中村主水が、盟友というか戦友というか、特別な思いを持っているはずの鉄。
鉄と絶妙なコンビで仕置きしたシーンが見たくなり、「新・仕置人」の「夢想無用」を見ました。
いや、やっぱりおもしろい。
そしてジワジワ悲しくなって来ました。

最初はほんの遊びだった娘・おたみに子供ができたと言われ、当惑する正八(火野正平)。
おたみは料亭に勤めており、そこでは食中毒による死亡事故が起きていた。
しかしそれは料亭の板前・仁吉が協力し、食中毒に見せかけて、借金を踏み倒すべく仕掛けられた毒殺だった。
正八を追いかけて料亭をやめたおたみのことを、悪人3人は自分たちがやった毒殺事件の真相を知っているんじゃないかと疑う。

おりしもその事件の被害者の遺族が仕置を依頼し、寅の会で鉄が落札した為、正八がその探索を行っていた。
上の空の正八は姿を目撃されてしまい、そこでおたみと繋がっていたことから悪人たちはおたみと正八が真相をつかんでいるものと誤解した。

おたみが子供を流産するよう仕向けたりもした正八だが、次第におたみの一途さと、お腹にいる子供がいとおしくなる。
子供の親になり、おたみと所帯を持つ。
そうなるともう、人を殺す稼業は嫌だ。

しかし、彼は仕置人の探索係、いわば、目と耳。
殺しこそしていないけれど、どっぷりと仕置人稼業に浸かっている身であるがゆえ、鉄は、この稼業、棺桶行くまで抜けられねえと言う。
第一、仕置人で組織された「寅の会」が許さないだろう。

「江戸離れるまで生かしておいてくれるほど、寅は甘くねえぞ」と言う鉄に、「そんなことやってみなきゃわかんないじゃないか、こっちだって必死なんだから」と答える正八。
「てめえ、女に惚れやがったな」と言う主水。
しかし、主水も言う。
「1日でも長生きしてえなら、やめろ」と。

何が何でも抜ける!と言う正八に、「どうしても行くっていうなら、俺が女、ひねり殺してやる」と鉄は言う。
鉄に殴り倒され、ぜいぜい言って起き上がる正八を、主水が着物をはたいてやりながら声をかける。
「別に嫁、もらうなって言ってるわけじゃねえ。俺だってカカアはいる。だが足洗うのは止めろ!」
「俺が許さねえ」と言う鉄、「もう頼まない」と出て行く正八。
「あの野郎、本気だな」と言う主水に、己代松も「無理だな」と言う。

「じゃあしょうがねえな。俺が殺してやる」。
そう言って階段を上がっていく主水を見る己代松。
煙管を吸いながら、「しょーがねえ野郎だ」と言う鉄。
「一度言い出したら聞かねえからな」と言って、己代松も出て行く。
鉄は1人残り、煙を吐きながら、考え込む。

仕置人たちが心配する中、悲劇は起きた。
「今夜のうちに江戸を出る」と正八が言って支度に家を空けた時、仁吉におたみが刺されてしまった。
正八を心配して近くにいた己代松が、逃げていく仁吉と瀕死のおたみを発見する。
己代松は長屋で寝転がっている鉄に、正八の女が大変なことになったと報せに来る。

戻った正八は、おたみの様子がおかしいことに気づき、動転した。
錯乱するおたみを「どうしたの、おたみ!正ちゃんでしょ!」と正八が抱きかかえた。
正八の腕の中、おたみは正八と行っていた海のことを思い、「海、海」と言って息を引き取る。
「正八さんが海よりも好き」と、海が大好きなおたみは言っていた。

おたみを背負って、部屋中を歩き回り、江戸を出ること、子供は女の子がいいと懸命に話す正八。
夢想した、平凡な2人の未来を。
動かないおたみと添い寝した時、正八は思い出す。
「女、ひねり殺してやる」と言った鉄の言葉を。

正八は匕首を持って走る。
もはや意味不明のことを叫びながら、鉄の家に行き、斬りかかった。
己代松からおたみが殺されたことを聞いていた鉄は避けるが、正八は斬りかかって来る。
だが鉄は正八を避けるのみで、叩きのめさない。

興奮した正八を押さえつけ、おたみを殺したのは仁吉だと己代松は言う。
探索の時に姿を見られていたことで、悪事を知られたと思ったんだろう。
「てめえがヘマしたのよ!」
怒鳴られてわれに返った正八。

己代松が鉄の鎖骨のところから血がわずかに出ているのを、見る。
畳に刺さった匕首を取りに鉄が近づく。
匕首を抜いた鉄は、正八の目の前に差し出す。

「こればっかりは誰にも譲れねえだろう。仁吉を殺るか?」
鉄の目が正八をとらえている。
差し出された匕首を正八が両手で受け取ると、鉄は己代松に「八丁堀呼んで来い、今夜殺る」と言う。

己代松は出て行く。
「一度人を刺したら、もう足を洗おうなんて甘いこたぁ言えねぇぞ」。
鉄の言葉に正八は、「もう思い残すことねえもん」と言う。
泣きそうな正八を見て、鉄がニヤリと笑う…。

仕置きは博打場であがりの金を受け取った男が、鉄のバキバキと指を鳴らす音を不審に思って奥の座敷を覗く。
すると暗闇に座っている主水のシルエットが浮かびあがる。
「誰だ?!」と言う男に主水が振り返ると、顔がわずかな光に照らされて明らかになる。

近づく男の頭を上から捕らえるのは、鉄の手。
男が宙吊りになる。
主水が刀を抜く。
一文字に斬り捨てる。

物音に感付いたもう1人の悪党がやってくる。
仲間が殺されたのに気づいて刀を抜いて襲い掛かってくるのを、主水が受け止め、押さえつける。
鉄が上からひらり、と降りてきて、ふすまの前から外をうかがう。
博打場では、誰も気づいていない。

主水に口を抑えられ、はがいじめにされた男の前で、鉄が指を鳴らす。
鉄の手が悪党の骨を折る。
男が崩れ落ちると、鉄と主水は無言のうちに目で合図を交わし、右と左にすっと別れる…。

仁吉は厠へ立っていた。
廊下の外の庭には匕首を奪われないように、手に手ぬぐいで巻きつけた正八、正八が危ない時の為に己代松が控えている。
正八の肩を己代松が叩いて、落ち着かせる。
仁吉が厠から出て、廊下の角を歩いて来た時、正八が飛び出す。
驚いた仁吉だが、正八の手から匕首を取り上げようとして、2人、廊下に倒れる。

争う2人を竹鉄砲の導火線に火をつけたまま、見守る己代松。
正八が仁吉に廊下の壁に押し付けられた時、仁吉に匕首が刺さり、仁吉は倒れた。
仁吉が死んでいるのを確認した己代松は、放心状態の正八に導火線を差し出す。
手で火を消した正八は熱さに「おうっ」と言うと、己代松も同じ仕草をし、2人で逃げていく。

仕置きが終わって、正八は1人、海にいた。
波に洗われた正八は、夫婦茶碗を割り、産着を海に放り出して海から上がる…。
「海よりも好き」。



いや~、仕置きの時の主水の顔!
殺し屋の顔。
凄んでいるわけじゃないのに、人を恐怖させる。
黙って見据えてくるその目。
殺気というよりも、もっと冷静な目、しかし殺しに来たとわかる目。

鉄との無言のうちの仕置きは、見事!
もう、プロの仕事です。
息もピッタリ。
俳優さん同士としても、お互い成熟した演技で、絶妙なやり取りができていたんでしょうね。

良く言われている「後年の主水には対等の存在がいない」というのは、こういうことかな、と思いました。
いや、みんないなくなっちゃった、主水だけが生き残ったんだから、主水より若手が仲間になっちゃうのは、しようがないんですが。

さて代わって「新・仕置人」では正八が唯一、若い。
若いというか、殺しに直接参加してないからか、正八って普通の男の子っぽい。
だから時折、依頼人の身の上に同情して「かわいそうで、何とかしてやりたいと思うのよ」と言って、鉄にぶっ飛ばされる。
主水も鉄も己代松も、正八がいるせいか、圧倒的に大人で、プロで、殺し屋に見えるんです。
そんな正八だけどやっぱり仕置人だから、死ぬまで抜けられない。

そう言いながらも己代松は何とかしてやりたいと思ってるし、主水も厳しいことを言いつつ、どうにかできないだろうかと考えている。
鉄だって同じ。

ぶっ飛ばすのが鉄なら、落ち着いて悟らせようとしているのが主水。
そう、もっと上手くやれ、と言ってくれてる。
着物をはたいてやる仕草と、言葉に大人の優しさと余裕がある。

主水は「俺が殺してやる」って言いましたが、本当に殺したとは思えない。
おそらく、何かの手を使って、それは同心の立場を利用して殺し屋たちが追えないようにして、逃がしてやったんじゃないか、と。
怖ろしいことを言った口の悪い鉄だけど、鉄だって考えていたと思うんです。
元締めの寅に話を通してやろうとしてたんじゃないか、と。

正八が逆上して襲い掛かってきた時だって、ねじ伏せたりしない。
抜けたいと言った時にはぶっ飛ばしたのに。
匕首を避けて、無言で見ているんですね。
正八だって冷静に考えればわかるんです。
おたみを殺すなら、鉄ならあんなやり方しないだろう、ってことを。

だけどもう、正八は仲間だから、慕っていたから余計、鉄が許せないって感じ。
それを押さえつけて冷静にさせたのは、己代松。
結局、自分がおたみを死においやったという残酷な事実を突きつけられた正八。

事実を受け入れさせられた正八に匕首を差し出す鉄の顔。
正八は彼らからしたら子供っぽいし、染まってないし、だからかわいいし、無鉄砲なところがあって心配だった。
そして鉄は、そんな正八に仇を取らせてやろうという、「仕置人」の「仲間」としての優しさで迎える。

匕首を受け取って、「もう思い残すことねえもん」と言った正八に笑いかける鉄。
普通に笑いかけると表現するには、あまりに凄みがある笑いですけど。
きっと、殺し屋ってこういう風に笑うんだろうな、と思います。

そしてこの時、主水も鉄も己代松も、正八を一人前とを認めた時であり、仕置人の仲間であることを再確認した時でもある。
一生、棺桶に行くまで離れられない仲間。
おっかな~い仕置人たちの、彼らの世界以外の人間にはわからない絆。
実は誰よりも深く、厳しいけど、彼らが他では得られない絆で結ばれた仲間。

やっぱり、おもしろい「新・必殺仕置人」。
そしてやっぱり、味がある主水。
藤田まことさん、山崎努さん、中村嘉葎雄さん、火野正平さん。
この俳優さんたちが作った「新・仕置人」世界、やっぱり最高!と思いました。

おもしろいですよ、いいですよ、この時の藤田まことさんの主水。
「仕事人」とはまた違う。
機会があったら、ぜひ、見てみてください。

躍動感と渋さが、ちょうど良く混ざり合っている年代の主水。
プロとして動き、さらにそこに友情…というよりもっとハードで熱いですが、友情を感じて動いている主水。
「新・仕置人」という作品が、ハードさと笑い、全ての相反する要素が、出演者の絶妙な演技とともに混在している作品なのかもしれません。


2010.02.20 / Top↑
さて、草なぎさんが演じる日系アメリカ人、日系人には、太平洋戦争というとてつもなく大変な試練があったんですね。
祖国日本と、アメリカの間で、非常につらい立場になった。

この時代の日系人を描いたもので、いくつか、印象的なものがありました。
まず、山崎豊子さんの「二つの祖国」が原作の「山河燃ゆ」という大河ドラマが、80年代にありました。

主人公の日系二世の賢治に、松本幸四郎さん。
賢治は226事件に出会った気丈な女性・典子(大原麗子さん)との間に愛が芽生えるも、彼女の親の強い反対にあう。

アメリカ人と思っていたのに、いや、アメリカ人なのに、アメリカ人からは日本人と言われた。
日本人からはもちろん、英語を話す中身アメリカ人、外見日本人のよくわからない存在。
日系人ということで就職も出来ない、「真珠湾のしかえしだ」と殴られ、日本人からはニセ日本人と殴られる。

自分って、何なんだろう。
どこに居場所が、あるんだろう。
私はどちらの国を愛すればいいのか。
どちらも愛するな、というのか。

苦悩している賢治に、ひとつの友情が芽生える。
最初は賢治に冷たい態度を取っていたアメリカ人ジャーナリスト(だったと思います)が、賢治がリベラリストをかばった罪で特高警察に追われているとわかった時、誤解を解き、彼の逃亡に最大限に協力してくれる。

賢治を送り出す別れの時、彼が「旅には時計が必要だよ」と言って自分の腕時計を賢治に渡す。
アメリカ人から渡された、最高の友情の証。
賢治はこの時計をずっと持ち続ける。

アメリカに戻った賢治は収容所に送られるが、収容所で日系人はほとんど捕虜扱いだった。
賢治はこんな戦争の中でも少しでも両国の為になりたいと、通訳として米軍に入隊。
戦後、愛した典子は売春宿を経営し、米兵のオンリーさんという、愛人になっていた。
賢治は極東軍事裁判にも参加し、恩師たちを裁く仕事で2つの祖国の間に立ち、またしても苦悩を味わう。

もう1人の主人公、賢治の弟・忠は西田敏行さん。
日本が好きで、日本の文化を愛するが、英語で話しかけられると、「ええ、英語の方が楽です」と答える。
彼は開戦時に日本にいた為、日本軍に徴兵される。
そこで上官のいじめに遭うが、フィリピンで最後まで上官と共に生き残る。

忠は上官とやっと心が通うも、戦場で兄と再会。
銃を構えて向き合った兄弟。
この時、アメリカ軍に向かって「撃つな!撃つな!私の弟だ!」という、賢治の悲痛な叫び。
兄を前にした忠に「何してる、撃て!撃て!」と叫ぶ忠の上官。

兄を撃とうとした上官の銃を押さえてしまった忠。
「貴様、何をするか!」
兄をかばってしまった忠を助けようとして撃った兄の弾は忠の足に当たり、上官は射殺される。
この時のことが尾を引き(当たり前ですね)、戦後はしばらく兄と忠は打ち解けられない日々を送るもやがて和解。
忠は商売を営み、成功を収める。

この軍隊の話では、もう1人、非常に印象的な人物がいました。
軍隊で忠と一緒の隊にいた新吉に、矢崎滋さん。
新吉は、役場に勤めていた大人しい優しい男で、軍隊では全く役に立たない。
その為、上官からいじめの対象となっており、同じくいじめの対象であった忠と友情をはぐくむ。

傷を負って本体から離れていて米軍捕虜となり、食事を与えられていたところを写真に撮られる。
その写真は日本軍に投降を呼びかけるビラに使われ、目を塗りつぶされていたものの、新吉とわかった上官は非国民と罵る。
その分、忠は日本兵としてジャングルで必死に戦う姿を見せた。

軍隊では役立たずといじめられた新吉ですが、終戦後は忠と共に行動、商才を発揮します。
「恥さらしが、戻ってきて」と言われて納屋にいた忠に、おにぎりを持って駆けつける新吉、抱き合って泣き、いつしか軍歌を歌う2人。

成功した新吉は、すっかり打ちひしがれ、尾羽枯らした状態のかつての上官に出会う。
自分をひどくいびった男に、新吉は金を与えてやる。
上官は卑屈な、しかし高慢で悲しげな笑みを浮かべて足を引きずりながら去って行く。
その姿を悲しそうに新吉は見送る。
矢崎滋さん、もう、ピッタリでしたね。

さて、賢治と忠には弟がいる。
末っ子の勇(堤大二郎)。
自分はアメリカ人だと思っていたのに、パーティで友人のアメリカ人に銃撃されるジェスチャーをされる。
最初はふざけて止めろよなどと言っていたのが、相手は日本と日本人に対する怒りをぶつけてきた。

僕はアメリカ人だ!と言う勇は、じゃあ、お前は日本人と戦うか?と聞かれ、「戦う!」と答えて、軍に入隊。
最前線で戦う日系人部隊の一員となった勇は、ヨーロッパ戦線でドイツ軍を前にした時、その勇猛さに「お前、怖くないのか?」と言われる。
すると勇、燃える目で「あいつら、アメリカの白人どもと同じ顔してる」と言う。
聴力を失うも帰還し、戦後は勇との交際を親に禁じられていた恋人のアメリカ人と結婚。

賢治の友人、チャーリー。
貧しい日本、そこでの惨めな生活。
そんな日本を嫌い、アメリカ人であろうとする為、日本人を軽蔑する。

「弟と戦えるか」と言われる賢治、「アメリカに忠誠を尽くせ」と言うチャーリー。
ドラマの冒頭、東京裁判の時、ガムを噛んでるんですが、それが日系アメリカ人としての彼の立ち位置をすごく感じました。

皮は黄色くても中身は白い「バナナ」と呼ばれ、最後は売春婦を殴っている日本人の暴漢を止めて刺される。
華族の令嬢との婚約が決まった日で、彼はアメリカ軍の軍服を着ていなかった。
「軍服を着てりゃ良かったぜ」
「今夜はアンラッキーだな」と言って死んでいく。
演じたのは、沢田研二さん。
もう、ピッタリ。

そして、賢治を思っていながら、チャーリーと結婚したものの破局し、帰郷した広島で被爆する椰子に島田陽子さん。
チャーリーと一時恋愛関係にありながら賢治と結婚するエミーに、多岐川由美さん。
エミーは心の壁を感じながら賢治の留守中に町で浮浪者に「ジャップめ、真珠湾のしかえしだ」と言われ乱暴され、アルコール中毒になります。
エミーがアルコールで憔悴しきりながら、見舞った賢治に向かって「ゲット…、アウト」と言う時の形相がすごかった。

「兄さんはアメリカ人だろう。僕は日本人だ」。
日系人同士での対立。
日本刀を土に埋める賢治の父、日系一世は三船敏郎さんでした。

医療の前では人はみな同じ人間と言って治療するアメリカ人医師。
映画を見る青年たちを取り締まりながら、内心、自分も映画が好きな特高警察の青年。
「あなたは私の妻になるのだ」と日本軍の大尉に体を汚され、「生き抜く」ことが戦争に負けない事だと決意する典子。
愛する中国人留学生と東京大空襲の中を逃げ、かばいながら、出撃を告げる特攻隊員は、渡辺謙さんじゃなかったか。
賢治が見る、自分に向かって石を投げる日本人少女の幻。

日本人、アメリカ人、戦争。
流される人、信念を持つ人、上手くやる人、やれない人。
国を超えて友情をはぐくむ人、同じ国の人間同士で憎みあう人。
時代に負ける人、負けない人。

国とは、人間のアイデンティティーとは何かを問いかけた作品。
大河ドラマ初の時代劇以外のドラマで、視聴率はイマイチだったようですが、私は好きでした。
現代だと悲惨さがまだなまなましいのか、暗くて悲惨で嫌だという意見もあったらしいです。
でも、だいぶ記憶が飛んで間違えているところもあると思いますが、良いドラマだったと思います。


2010.02.19 / Top↑