ココだけの話 「夜道の二人」#45

終電で帰って来たサラリーマン(蛍雪次郎)。
急いで改札を出たが、タクシーは長蛇の列。
「しかたがない。歩くか」と言って家への道を歩き出した。

その頃、同じく終電で帰って来たOL(新山千春)は、コンビニに立ち寄っていた。
メガネをかけて雑誌を読み、それを手に、お弁当を買って店を出た。
コンビニの前を通り過ぎたサラリーマンは小用をたしたくなったので、横道にそれて用をたしていたが、コンビニから出たOLは、それを見てしまった。

OLは、嫌な顔をして通り過ぎた。
信号が変わる。
OLはあわてて横断歩道を渡る。
もう一つ、信号を待っている間、サラリーマンが先ほどOLが渡った横断歩道で信号待ちをしていた。

信号が変わり、OLはそこを渡ると、サラリーマンも渡り、2人は同じ歩道を歩き始めた。
OLがイヤホンを耳に、音楽を聴き始める。
サラリーマンの数メートル先を、OLが行く。

歩道の横の、少し大きな道路はまだ、時たま車が通る。
コンビニや大手ドラッグストアの灯りが後ろになり、OLとサラリーマンは歩道横が石垣になっているカーブに差し掛かる。
「あ、まずいな」。

サラリーマンが心でつぶやき、後ろを振り返る。
他に歩く人はいない。
「変に誤解されるのも面倒だ。無理に追い越すこともないか」。

道路に車が止まっている。
OLが石垣に長く伸びた影で、後ろに誰かいるのに気づく。
「誰かいる」。
OLは耳から、イヤホンを外す。

後ろを歩くサラリーマンは「あ、気づいた」と思った。
OL「気づかなかったわ」。
サラリーマン「まいったな」。
OL「まいったわね」。

サラリーマンは「変に誤解されなきゃいいけど」と、思った。
OLは「変な人じゃなきゃいいけど」と、思った。
そのまま数メートル歩いた2人、やがてOLは歩道橋の階段を登る。
サラリーマンもまた、歩道橋を登る。

歩道橋の上の2人は、思った。
サラリーマン「曲がれっ!」
OL「曲がって!」

しかしOLは直進し、サラリーマンも直進した。
「頼むから、どこか曲がってくれ」。
「お願いだから、どこか曲がってよ」。
歩道橋のどこからも2人は降りず、まっすぐ進んだ。

「まさか、俺が後をつけてると、思ってるんじゃないだろうな」。
「まさか、私が『後をつけられてると思ってる』と、思ってるんじゃないかしら」。
2人は全く同じ方向を、同じ歩調で進む。

「よし、追い抜こう」。
サラリーマンは決心する。
「しかたがない。急ごう。頼むから誤解するなよ」。
OLも思う。
「お願いだから、変に勘ぐらないでね」。
「いまだ!」

同時に歩調を速める2人。
2人「…うそ」。
OL「向こうも?」
サラリーマン「まずい、これじゃ逆効果だ」。
OL「ひょっとして私、ほんとにつけられてるのかしら?」

「間違いない、彼女俺を疑っている。…そうだ!」
サラリーマンは、口笛を吹き始める。
道は公園の横に、差し掛かる。

OL「私の考えすぎか」。
夜のランニングをしている人が、通りかかる。
その人が通り過ぎた後、口笛が止んだ。

OL「何でよ、何で急に止めるの?!」
サラリーマン「まずい…、続き、忘れた」。
OL「ひょっとして、今の人、誤魔化す為に?!」
「曲の続きを忘れただけだ。お願いだから、変に勘ぐらないでくれ」

2人はなおも、同じ方向に歩く。
サラリーマン「しかたがない。彼女を先に行かせるか」。
OL「いいわ、確かめてみましょう」。
2人は同時に、歩調を緩める。

サラリーマン「嘘だろ!」
OLが、顔面蒼白になる。
「間違いない…、つけられてる!」とOLが確信する。
OLの後姿を見ながら、サラリーマンが首を振る、「誤解だ!」

公園の横の立て看板が、OLの目に入ってくる。
『連続婦女暴行魔 出現地域』とあり、背後のサラリーマンそっくりのコート姿の男が描いてあった。
「もしかして、あの男…!」と、OLが、恐る恐る振り返る。
しかし、サラリーマンの顔を確認するほどには振り返れない。
OLの足が、もつれる。

サラリーマンがいぶかしげに、「どうした?何で彼女、あんなにおびえてるんだ?」と首をかしげる。
横を向いたサラリーマンの目にも、連続婦女暴行魔の立て看板が入ってくる。
愕然としたサラリーマンがOLの後姿を見ながら、首を振る。
「何だ?ち、違う!待ってくれ、誤解だ!」と心の中で叫ぶ。

OLは祈る、「神様、どうか私の考えすぎでありますように」。
「どうすればいい、考えるんだ、考えるんだ!」とサラリーマン。
「どうすればいいの!」とOL。

OLが、恐怖に肩をすくめる。
2人は歩道から、車道に出ていた。
「そうだ、距離だ。距離をとれば、俺がつけてるわけじゃないって彼女もわかってくれるだろう。よし!」。
サラリーマンは思い切って、転んだ。

「いっつう~」と、ひざを抱える。
そして、OLの後姿を見ながら思う。
「いいぞ。これなら変に思われまい。このまましばらく痛がってみせれば…。少なくとも15mは距離が稼げるだろう」。

しかし、街灯の下で、OLの足は止まった。
「何だ?何で立ち止まるんだ?どうしてそのまま、歩き続けない!」というサラリーマンの願いも虚しく、OLは立ち止まる。
OL「どうしてわざとらしく、転んだ振りなんてするのよ?ひょっとして私が心配して、近づいたところを襲い掛かるつもりじゃ…」。
サラリーマン「いいから俺のことなんて気にするな!先に行け!」

暗い街灯の下、2人は向き合った。
OLの様子が、おかしい。
ますます、怯えている。
サラリーマン「今度は何だ?何故そんなに怯える?!」

OLの目が、恐怖に見開かれる。
サラリーマンからOLの顔は見えなかったが、OLが足をもつれさせながら後ずさりしていくのがわかる。
「何故?どうして、そんなに怯えるんだ?!」
OLが、息を呑んで考える、「まさか…、変態?!」

サラリーマンが下を向くと、ズボンのファスナーが開いて、白いシャツが見えているのに気づく。
先ほど、小用を足した時だった。
「ああああ~?!」

サラリーマンがあわてて、ファスナーを上げる。
「勘違いしないでくれ。これは、別に深い意味はないんだ!」
OL「間違いないわ、私は狙われている」。
サラリーマン「待ってくれ。誤解だ!」

サラリーマンが首を振って、近づこうとする。
「誤解なんかじゃないわ!やっぱりあの男、私を…!」
OLが、叫びそうになる。

その時、2人の横を猛スピードで車が走って行った。
OLは生垣の外から、歩道に戻っていた。
背後にいたサラリーマンを確認しようとした。

だが、サラリーマンの姿はなかった。
OL「いない。消えたわ。どこ?どこに行ったのよ?」
サラリーマンは、よろよろと生垣の間から出てきた。
サラリーマン「あ、危ないな」。

携帯の画面にひびが入ってしまっていた。
サラリーマン「あーあ、おかげで携帯が…」
暗い道で、携帯が光った。
OL「刃物だわ…、刃物を持ってる!」

OLがこちらを見ているのに、サラリーマンは気づいた。
サラリーマン「どうした?何だって言うんだ?!」
OLは、後ずさりしていく。
「このままだと、私は殺される!」

何だかわからないサラリーマンが、近づく。
OLが、口を開いた。
「誰か…」と、声を出す。
サラリーマンが、仰天する。
「よせ!」

「誰か助けて!」と、ついにOLが大声を上げる。
サラリーマンが、恐怖した。
「やめろっ!」
「誰か!」。

OLは、金切り声を上げた。
「待ってくれ!」とサラリーマンも声を上げた。
OLは、走り出す。
サラリーマンも、走り出す。
「誤解だ!」

OLは歩道から、公園の中に逃げた。
「誰か助けてぇっ!」
「いいからとまれ、とまれっ!」と、サラリーマンが追いかける。

「いやあっ、近寄らないでっ!」
OLがコンビニの買い物袋を振り上げ、横に払った。
それはサラリーマンの顔に当たり、メガネが飛ぶ。

「いいから、こっち来ないで!」
逃げるOLにサラリーマンは「頼むから聞いてくれよ!」と、近づいていく。
「わわわ、私はただ…」。
サラリーマンの視界は、全てがぼやけていた。

OLの靴のヒールが折れ、転ぶ。
サラリーマンは転んだOLにつまづき、OLの上に覆いかぶさった。
「きゃあっ、誰か!」
OLは、ますます騒いだ。

「ち、違うんだ!」
「いやあ!」
OLはコンビニの袋を振り回しながら、後退していく。
「ま、待ってくれ」とサラリーマンは這いずりながら、追いかけていく。

逃げるOLの肩をつかむと、OLのシャツが肩のところで音を立ててちぎれた。
OLは一瞬、凍りつき、次には「やめてえっ!」と言って、バッグを振り回した。
「ち、違うんだ」。
悲鳴を上げるOLに焦ったサラリーマンは「だ、黙れ!静かにしろ!」と叫び、「こいつ!」と平手打ちしてしまった。
するとOLは「きゃーっ!」と一層、大きな悲鳴を上げた。

その時、灯りがサラリーマンの顔を照らした。
懐中電灯の明かりとそれを持った影が、「そこに誰かいるのか!」と言った。
影が近づいてくる。
「ひ、ひぇ」とサラリーマンは慌てふためき、カバンを拾って逃げた。

「どうしました!大丈夫ですか!」
近づいてきたのは、パトロール中の警官だった。
安堵したOLが、泣き始める。

警察署。
上着を貸してもらったOLに、刑事が「それで、顔は見なかったんだね?」と聞いていた。
「私、近眼なもんで…、今日はコンタクトしてませんでしたから…」。
刑事がうなづく。

「すみません」。
「いえ、謝ることなんてありませんよ。あなたが無事で何よりなんですから」と刑事は優しく答えた。
部屋のドアが開き、「ご家族の方が見えました」と声がかかる。
「お通しして」。

OLの席に、ジャンパーを着た男性の後姿が近づく。
「お父さんですか?」
「は、はい!」
「ご安心ください。娘さんは無事です」。
刑事の言葉に、男性が駆け寄る。

「美佐子!」
「お父さん!」
肩を抱きしめる美佐子の父親。
それは先ほど、美佐子と争ったサラリーマンだった。

「だいじょぶか…、良かった」と言った美佐子の父親は、刑事を見上げ「で、刑事さん!」と言った。
「美佐子…、娘に何があったんでしょう」。
「暴漢に襲われまして」。
「暴漢?!そいじゃ、む、むすめ…」
「いやいや、ご心配なく」。

刑事に促され、席に着いた父親は心配そうに美佐子を見守った。
「少し、擦り傷を負っているようですが…、大事には至りませんでした」。
そう言って刑事は、最近出没している暴行魔について説明した。

駅から女性を尾行し、人気のない場所で襲い掛かること。
幸いにもパトロール中の警官がかけつけたこと。
犯人は逃亡したが、着衣や手口からして連続暴行魔の仕業に間違いないこと。
だが、今度は違う。

「今回、娘さんの勇気ある行動のおかげで、ようやく、逮捕に至りそうです」。
「勇気ある行動、って、娘が何か…?」
「娘さんがしっかりと抵抗してくれたおかげで、思わぬ物証が手に入りました」。
そう言って刑事が見せたのは、父親がなくしたメガネだった。

父親の目が見開かれ、口があんぐりと開く。
俺のメガネ…!
「私、犯人の顔、思いっきり引っぱたいてやったんです…」。
「鑑識が調べたところ、こいつには指紋もついているようですし。ま、上手く行けば2,3日中には逮捕できるでしょう」。

父親が顔面蒼白になり、口がパクパクと開く。
気づいた美佐子が言う。
「お父さん、どうしたの?顔色が悪いけど…」。
「い、いや…」。

刑事が「ご安心ください。娘さんを襲った犯人は必ず、我々が捕まえてみせますよ」と言う。
「必ずね」。
父親が力なく、ソファに崩れ落ちる。

「お父さん、どうした?お父さん?」
美佐子の声に父親は声も出せず、ソファに崩れ落ちていた。



人があまりいない夜道。
ずっと同じ方向に歩いてくる人。
歩調まで一緒。
まさか、つけられてる?

出演者は主に2人だけで、心のつぶやきで、進んでいく約15分のドラマ。
でえも、考えたら、このシチュエーションはかなり怖い。
どうやったらいいのか。
自意識過剰は恥ずかしいし、でも万が一本当だったら無事じゃすまないし。

ずいぶん前ですが、お酒のCMで夜道で自分の前を歩いている女性が、ものすごい勢いで走って行くCMがありました。
ビックリした男性が後ろを見ると、誰もいない。
「お、俺、痴漢と間違えられた?!傷ついた~!」みたいな叫びが聞こえるようなCMでした。

…こういう時の女性を、自意識過剰と笑わないでくださいね。
それに最近じゃ、怖いのは女性とは限らない。

私の会社の友人は、高校の時、駅から自宅まで、歩いたら40分というところに住んでいて、バスは当てにならないから自転車で駅まで行ってました。
ある夜、すれ違った自転車が彼女の背後で、バシーンという音を立てて引っくり返ったそうなんです。
振り返ったら、自転車ごと、人が倒れている。

「大丈夫ですか」と声をかけても、返事はない。
あたりはちょうど、畑が広がる場所。
助けに行って、もし口を塞がれて引きずり込まれたら…と思うと、近寄る気にはなれず、近くの民家まで自転車を走らせたそうです。

当時、携帯電話ってなかったですから!
それで民家の人、数人に来てもらって確認したところ、酔っ払いだった。
酔っ払って自転車に乗って、倒れたんでした。
笑い話になりましたけど、やっぱり寄らなくて正解だったと思います。

自転車に自宅近くで追いかけられたって、同級生もいましたし…。
「相手が自転車って、怖いよ」って言ってましたが、何にせよ追いかけられるなんてこと自体、怖い。

もう1人、友達を通じて知り合った人なんですが、家がある会社の保養所だったという、奥まったところにあった人がいました。
彼女の家に遊びに行ったことがあるんですが、その近辺に会社の保養所や別荘はあるんです。
でも両側が林、なんて道が途中、あるんですね。
車は通れないですけど、ここを日が暮れて通るのは、やっぱり怖いと思いました。

さて、このドラマでは、お互い、心でつぶやいていることがほとんど、同じ。
つまり、どっちも「どうしよう」って追い詰められていく。
そうであって欲しくないと思っている方へ、思っている方へ流れていく、おかしさ。
いや、怖さ。

結果的に追い詰められて、暴行魔みたいなことになってしまった。
とにかく、逃げた相手を追いかけちゃいけなかったと思います。

それにしても、考えもしないオチ。
コンビニでOLがメガネをかけていたのは、「近眼でよく見えない」の伏線だったんですね。
そして、サラリーマンがメガネをぶっ飛ばされたのも、「良く見えない」ということだった。

しかし!
親子だって、わかんないもんですかねえ。
だけど親子ならタイミングがあれだけバッチリ合ってしまったのも、同じ方向だったのも納得。
駅で会えば、問題なく一緒に帰れたのに…。

これ、やっぱり、この後、警察来たんでしょうか。
それとも警察署で事情を話して、何とかなったんでしょうか。
警察側の反応も、娘の反応も、怖い~。

暴行魔の疑いがかかった父親は、当然ダメージですけど、誤解が晴れても、いろいろとダメージありそう。
父親の対応とか、やっぱり考えちゃうものがあるだろうし。
OLさんは、小用をたしてる父親に顔をしかめてたってことだし。
親とは知らない、客観的な目で見て、顔をしかめなきゃならないことがあったっていうのも複雑な気分になりそう。

どうか、無事笑いで収まっていますように…?!
なかなか、ありそうでなさそうで、あってほしくないけど、良くできたドラマでした。


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あれから夜はどこかへ行ったわ 「夢見るシェルター人形」

いよいよ、ゴールデンウィークですね~。
明日は仕事、という方も、お休み!という方も、もうお休み気分ですね。
土、日、月、火、水の5連休は久しぶりかな?

懐かしいジューシィ・フルーツのアルバム「27分の恋 ICBM」から、「夢見るシェルター人形」。
ピコピコサウンド、テクノ、ニューウェーブのハシリみたいな感じでしたが、友達に誘われて行ったライブハウスで実際目の前で聴いたら、イリヤさんのギターがすごいこと。




元は、フランス・ギャルさんの「夢見るシャンソン人形」。
日本語バージョン。





「ICBM」、大陸間弾道ミサイル。
27分というのは、ICBMのボタンが押されてから着弾するまでの時間。
米ソ冷戦時代だったんですね。
でもこの「ICBM」にはミサイルではなく、「インター コンチネンタル バクダン ムスメ」という訳がついてました。

「ただいまから零時ちょうどをお知らせします。ピッ、ピッ、ピッ、ポーン」の時報で始まるアルバム。
最初の曲「禁星遊園地」の歌詞は「花火が花咲く地球のラストショー」「S席をありがとう」と、地球の核戦争をどこかの星の遊園地で、異星人が見ている、という設定。



「ジャポネもチャイナも七色に燃える 双眼鏡ありがとう」
書く順番が逆ですけど、ここから「夢見るシェルター人形」に突入するんです。
良かったら、続けて聴いてみてください。


イリヤさんのギターを堪能したい方は、こちらを。
http://www.youtube.com/watch?v=Qo-DD-cGo6k

「ICBM」は他にも、「いけないいけないレインドロップス」など、いかにも冷戦時代の核戦争の恐怖を歌った曲がありますが、これなんか今だと環境破壊による雨になりそうです。
ライナーノーツにある「ギターの空中戦」の間奏がすごくて、あなどれないです、ジューシィ・フルーツ。

アルバムは最後、「ただいまから零時27分をお知らせします。ピッ、ピッ、ピッ、…」で終わります。
はい、27分です、弾道ミサイル到達しました、という意味ですね。
しかし、冷戦時代なら冷戦時代で、こうやって文化や芸術ができるんですね。


中川勝彦さん、くらもちふさこさん 「ハリウッドゲーム」

中川勝彦さんの話が、出ました。
あー、うれしい。

中川勝彦さんは、現在活躍中の「しょこたん」こと、中川翔子さんの父親で、80年代、くらもちふさこさんのマンガにも登場したシンガーソングライターです。

美青年で有名でしたが、歌声は浮ついたところがなく、実力派。
これは有名になるなと思っていたら、やっぱりメジャーからデビューしました。
ファーストアルバムは、中川さんのアップの写真の「してみたい」。

しょこたんが中川さんの娘さんと知った時は、驚きました。
順調にデビューしたかと思った中川さんですが、ある日、猫雑誌で愛猫と一緒に写っており、闘病中と知り、ショックを受けました。
なくなったと知った時にはもっと、ショックでした。

だから、しょこたんはおもしろいなー、頭いいなー、かわいいなーと好きなんですが、中川さんを知っていて、応援していたということからも密かに応援してるんですね。


中川さんが登場しているくらもちふさこさんのマンガは「ハリウッドゲーム」という、テレビ局近くの高校を舞台にしたマンガ。

主人公・関田都の友人の双子(名前を失念)の1人が、中川くんが好きなんですね。
それで、ある日、彼女が本格的にダイエット始めた。

ダイエットを始めた日の朝、先生が毎朝、「中川以外の欠席者はいるか?」と聞く。
すると、生徒が「やっぱり言った」と言う。
「来てます、僕」と席に座って微笑む中川くん。
「あ」と驚く都。
先生が驚いて、「きみは出席日数が足りないぞ」とか何とか。

友人がダイエットを始めた理由を都が、「あ、そうか、ふーん、それで」と理解する。
中川くんは音楽活動に夢中で、それまであまり学校には来なかったんですね。
でも出席日数がたりないから、登校し始める。

都の友人の双子は1人は、都と同じクラス。
でももう1人は、別のクラス。
2人はたまに、先にテストを実施したクラスにいる方が、後に受ける方と入れ替わってテストを受けるということをしていた。

都の学校には松田聖子を意識した、しかし「熊本力子」というごつい名前の女の子がいる。
力子は双子の1人と同じクラスで、双子がテストの時、入れ替わっていたのを見抜いていた。
「昨日より少し、太ったわね」という一言。

それを聞いて、都はギクッとする。
実は都も、心持ち、太い方か、細い方かで双子を見分けていたのだった。
力子は入れ替わったことを黙っている条件として、自分が出場する歌合戦に審査員として出て、自分に票を入れてくれるよう頼んだ。

その歌合戦には、田原俊彦がゲストで出ていた。
それを知った俊ちゃんファンの都は「俊ちゃん出るー!あたし、代わったげるー!」と言って、双子の代わりに審査員になった。
双子は感謝、都は歌合戦に行く。

テレビの歌合戦の番組に出た力子だが、「ぐえー」とアヒルが叫んでいるようにしか聞こえない、何を歌っているかわからない。
司会者が、青ざめる。

しかし、都は票を入れなければならない。
1票、自分だけ…。
そう思った都だが、意外にも他にも票を入れた人がいた。

その人も自分以外に票なんか入れる人がいるのか、と辺りを見回した。
都と目が合った。
それは、都のいる剣道部で、剣道が強くて父親が道場を開いている迫丸(ちょっと名前がうろ覚えです)先輩だった。

ここから、先輩と都の学園ラブストーリーが展開するわけです。
自分たちの学校は、自分たちにとって、それぞれが主役の「小さなハリウッドだ」と都は思う。

中川くんが久しぶりに登校した放課後、都たちと話していて、中川くんだけは力子が何を歌ったか理解している。
その時、中川くんはタバコを吸っているんですが、教師が通りかかる。
咳払いがして、都たちが静まり返る。

「君」と声をかけられた中川くんが冷静に、「はい」と返事をして、立ち上がる。
「手を見せなさい」と言われて、手を見せるがタバコはない。
「…」と戸惑った教師は、「後で職員室に来なさい」と言って立ち去る。

その後、「あっちいー!」と中川くんが叫び、都たちが「ポケットにタバコ放り込んだの?」と呆れる。
中川くんのポケットには、穴が開いている。

力子は、歌合戦がきっかけで、あるプロダクションがスピードデビューさせてくれることになった。
実は力子は、自分の名前にコンプレックスを抱いている。
それで、芸名を都の「関田都、ふーん、かっこいい名前じゃん。決めた」と言って、都と同姓同名にしてしまう。

力子の芸名に驚いた都に「熊本さん」と呼びとめられた力子は、「やめてよ!だいっきらいなんだから…、その名前」と言う。
自分がどうして芸能界に入りたかったか、芸名よ、女の子らしい名前が欲しかったのよ、と。

その力子がデビューリサイタルを開くが、何とかして力子を振り向かせようとした後輩が本名を叫ぶ。
コンプレックスの本名を呼ばれた力子は、泣きながら楽屋へ逃げていく。
力子がいなくなって司会者が困っている時、中川くんは「何とかしてやりなよ、司会者困ってるじゃん」と言われる。

引っ込んでしまった力子を呼び戻すには、力子も好きだった迫丸を迎えによこすしかない。
迫丸も力子が好きだと思っていた都は失恋を覚悟で、迫丸を力子のところへ押し出す。
その頃、ステージでは中川くんが力子の持ち歌をものまねをしまーす、と歌ってくれていた。

「うまい、うまい」。
「観客、聞き入ってるじゃない」。
「それにしてもこの歌、こんな歌詞だったんだ」。
「初めて知った人も多いんじゃないの?」

都の友人たちのそんな声の中、中川くんの「あたし、失恋 涙が止まらない」という歌声が流れ始める。
自分も失恋と思った都は、その歌が終わり、「都!」という自分の名前と同じ声援を涙ながらに「くすぐったいの」と思って微笑む。

しかし、この後、都は、映画監督志望の迫丸が単に力子を被写体として見ていたことを知る。
結局、都と迫丸が付き合うことになるんですが、都は迫丸が、どうしても自分に気持ちがないように思えてしょうがない。
その理由は佐伯という、かつての迫丸の恋人にあると都は思った。
迫丸は今でも佐伯が忘れられないのだ…、本当に迫丸が好きなのは佐伯なのだ、と都は思う。

都は佐伯をみかけ、思わず後をついて行ってしまう。
そしてライブハウスに佐伯がいるのを見て、声をかけようとする。
しかし、それはライブハウスでの映画研究会の撮影だった。
撮影を邪魔してしまって、しょんぼりしている都は佐伯に話しかけられる。

そこで都は佐伯と迫丸は一時付き合っていたが、今は何の関係もなく、しかも佐伯も迫丸の気持ちに確信が持てずに別れてしまったことを知る。
そのライブハウスには、中川が出演していた。

中川と都は偶然、会って、その時、都は中川に迫丸のことを相談する。
都の話を聞いているようで、聞いていない中川。
「聞いてる?」
「うん、うん」。
「嘘つけ、頭の中は音符でいっぱいなくせに!」

そして都は、迫丸と話している時もこんな感じだ、と言うことに気づく。
中川は突然、流れる曲に目を輝かせて「あ、この曲、好き。こんなの、やりたい」と言って歌い出す。
そう、中川は音楽に。
迫丸は映画に気持ちが行っているだけなんだ、と都は気づく。
そして、都は迫丸への理解を深める。

中川を好きでダイエットを始めた双子は、自分が太っていることにコンプレックスを抱くが、それを救ったのも中川だった。
家庭科が得意な彼女は学校内でやるファッションショーに出ることになったが、少し痩せた時の為に作った服のボタンははじけ飛んだ。

哀しくなった彼女は、ファッションショーに出るのを止めると言い出す。
泣いている友人をかわいいと思った都は、「かわいいよ」と言うが、「そらぞらしいこと、やめてよ!」と言われてしまう。

その時、体育館の天井に吊る垂れ幕が落ちてしまったので直さなくてはいけない事態が起きた。
人間ピラミッドを作ることになったが、女性が1人、男性に混じって一番下のピラミッドに入らなくてはならなくなる。
「誰か、ガッチリした人…」と都と同じ剣道部の男性に言われ、女性は「ガッチリ…」「太ってるってことー?」と騒ぐ。

「女は敏感だなあ、この手の言葉」と言った途端、中川がこちらを向いて、「ほら」と促す。
都の友人が恐る恐る「あたし…?」と言うが、中川は少しも悪びれず「まさか、関田さんだよ。(都の友人の名前)さんなんかは小柄なんだから、一番上に乗らなきゃ」と言う。

中川は都の剣道部の友人に、「ひやっとさせんな!」と言われるが、何のことかわからない。
彼にとっては至極、当然のことを言ったまでだから。
そう、中川くんは天然さんでもあった。

都は「中川~っ、言ってくれるよ」と言いながら、一番下に入る。
その一言で、都の友人はコンプレックスと向き合う勇気が出る。
「正面に回りなよ」。
都の言葉に「出ていい?私、出ていいかな?」

友人は「出ない」と言っていたファッションショーのリハーサルに出て、そしてダイエットの空腹の余り、彼女は中川の腕の中で気絶する。
実はその瞬間、彼女はあきれたことに、心の中で「役得」とつぶやいていたことを後で都に語った。

こんな風に、俊ちゃんファンの都も、目の前の迫丸との恋を育んでいく。
きっと俊ちゃんとも、こんな風に恋を育む相手がいるのだろう、と思いながら。
最終的に芸能界で失敗した力子が、学校に都たち、そして自分のいる場所があることを知って安心して、「自分たちの小さなハリウッドに戻って」来るところで終わりました。


手元に本がないので、記憶を頼りにしました。
違うところもあるかと思います、すみません。

当時の高校生の等身大の気持ちが描かれていた、くらもちふさこさんの作品です。
くらもちさんの作品には、他にも「中川勝ちゃん」なんて文字が背景の張り紙にあったり、ちょくちょく中川さんが出て来てました。
「ハリウッドゲーム」は絶版のようですが、もう一度読みたいと思う作品です。
中川さんを知っている人にも、翔子ちゃんを知っている人にも、そうでない人にも絶対楽しめる作品だと思います。


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謎の建築物

今日、1日で明日からはゴールデンウィーク!
もう、連休気分。
そんなこと、ないですかー?
ああ~っ、開放感!


よく利用するルートに3件、薄い~!と思う建物があります。
ひとつは、駅に行く途中にあるビル。
交差点にあるんですけど、信号待ちで見ていると、つくづく薄い。

もうひとつは、電車から見える住宅街の中の家。
2軒あります。
ひとつは大きな敷地内にもう1軒、家がありますから、離れみたいな存在と思われます。
もう1軒は住宅街にあります。
最近、駅の壁が高くなって見えなくなってしまいました。

そして、もうひとつはやはり電車から見える建物。
大きな窓があって、窓に赤い縁取りがしてあって、おしゃれ~。
でも、壁のように薄い!

写真撮りたくなりますけど、一般の家とかビルって写真撮りにくいんですよね。
失礼というか、不審者っぽい。
「薄くて珍しいんで、写真撮らせてください」なんて、言えないですし。

今でも謎なのが、20年以上前、お姉さんと一軒家を借りて3人で暮らしていた友達の家に行く途中にあった家。
ちょっとモダンな、でも普通の家。
だけど、その家は地面から1メートルぐらいの高さの、太い円柱の上に乗ってるんです!
不思議~!

友達は駅に向かう途中、いつもその家を見ているそうで、一体何の為にあんな作りになっているのか、聞いたんですが、やっぱり謎。
「地面がしけってるから、地面につけたくないとか?」って言ってました。

下は確か、土。
背後は竹やぶっぽかったです。
家が回転でもするのか?と思いました。

会社に勤めてから、同僚の1人が「そういえば、テレビで見たことがあるけど、回転する家ってあったよ。足の悪い母親に景色を見せたいって、ゆっくり回転してた」と言いました。
でも私が見た家かどうかは、わからない。
そんなに眺めは良くなかったような。

円柱の上に乗っている以外は、普通の住宅街の、普通の家だったんです。
あれは何だったのか…。
未だに謎です。

思い出すと、と~っても気になってます。
ああ、写真撮りたかった。
今もあるかどうか、わからないです。

同じような家は、あれから見たことありません。
どうでもいいことのようで、おそらく一生解けない謎です。


グロテスクだった 「世にも奇妙な物語・急患」

「世にも奇妙な物語」で、もっともグロテスクに思えた話といえば、映画「感染」の元にもなった「急患」

主人公の医者が宿直当番の夜、都内の公園で倒れたという急患が運ばれてくる。
患者の体は今まで見たことのないようなグロテスクな変化を遂げており、対処のしようがない。
そして治療に当たった看護師、医者もまた、感染したのか、次々いなくなり、人間では考えられないような行動をとる…、というお話。

担ぎ込まれた急患の、ストレッチャーに乗せられた体からドロリと液体がこぼれる。
思わず、目をそむける看護師。
だが、そのドロリは、血ではなく緑色の液体だった。

医師たちが「内臓が溶け始めている」「しかし自分たちに笑いかけてきた」「吸い込まれそうな、あの目…」と会話している。
患者はどんどん溶けて、変形していくようだった。
新種のウイルスだろうか?

「厚生省に届けよう」と言う、主人公の若い医師(近藤真彦)。
新種のウイルス発見という、自分の名を売るのに絶好の機会でもあるこの状態に、厚生省に届けるのをためらうベテラン医師(佐野史郎)。

医師たちが出て行った後、患者と病室に残った看護師が悲鳴を上げる。
患者は消えていた。
そして、叫ぶ看護師の耳からも緑の液体がこぼれる。

主人公が駆けつけると、看護師はカーテンの影で死んでいた。
病室中に飛び散っている、緑の液体。
そして、次々、夜勤の看護師たちは緑の液体を流して死んで行く。
ベテラン医師は過去の、それも犯した過ちの幻を見て、涙ながらに詫びると、緑の液体を吐き、息絶える。


以下、ネタバレ注意です


主人公の医者は自分も緑の液体を持つ「何か」に感染したのかと、メスで指を切ってみる。
流れるのは赤い血だった。
ホッとした時、自分が居眠りをしているのに気がついた。
すると夢の通りに看護師が急患が来たことを告げに来る。

主人公は恐る恐る緑の液体が流れてはいないか確認をするが、患者は普通の患者だった。
「夢か…」と思った時、ストレッチャーの上の患者は起き上がった。

その姿は消えたあのベテラン医師で、手を掴まれた主人公は絶叫する。
絶叫はそのまま、メスを持って叫んでいる主人公の姿に重なった。
その指からは、赤い血ではなく、緑の液体が流れていた…。



こういう役を近藤真彦さんがやるというのも驚きでしたが、ベテラン医師は、今よりももっともっと怪しかった佐野史郎さん。
「シャイニング」じゃないけど、怖がっている姿まで何故か怖い。
何かとんでもないことをしてくれる人だろうという予感もあって、最初から最後まで不穏な雰囲気で怖かった。

ストーリーそのものもわからなくて怖いけど、映像が夜の暗い病院で、そこがまたホラーでした。
何より、緑のドロドロがグロテスク。
赤も嫌だけど、緑も嫌ですね。
ピンクかブルーだったら平気だった?

本放送時、お茶飲みながら観てたら、ちょうど急患が運ばれてきたところで、「よくこんなもの見ながらお茶が飲めるね」とか言われました。
確かに。

ストレッチャーに乗せられた患者から液体がドロリ、とこぼれていったので、さすがにお茶は中断しましたよ。
グロテスクの予感がしましたので。
予感的中。

あの患者は何なのか、あの症状は何なのか、そして医者は結局感染したのか。
最後までよくわからないけど、突然に現れた感染症で、感染した人は過去の罪を見てしまう、ということ?
近藤真彦演じるお医者さんも感染しちゃったの…?で解決つかなくて終わり。
やがて緑の液体に変化し、更に同じように人に感染させていく、ということでしょうか?
そんな緑の感染症は、いったいどこから来たのか。

全て謎でしたが、とにかくグロテスク。
このグロテスクが原因も解決も全て不明というのが、怖さ倍増。
映画になったのも納得の一編。
もう一度見たいような、もう見たくないような。


「お佐那さまのことは、生涯忘れませんきに」 龍馬伝 第17回

第17回、「怪物、容堂」

日経新聞に、佐那のお墓参りに訪れる人が多くなったとの記事が載っていました。
以前から剣術向上を願う人には知られていましたが、司馬遼太郎の小説「竜馬が行く」を契機に昭和40年代から竜馬ファンにも有名になッたとのことですが、昨年からは特に、訪れる人が増えたそうです。

龍馬の妻であったという意味の「室」の文字が裏に刻まれた、佐那のお墓。
乙女への手紙の中、龍馬は佐那の剣術、容姿、そして性格を褒め称えていたそうです。

剣の達人であり、龍馬を慕い続けた佐那。
ご住職いわく、「剣の強さと、1人の男性を愛しぬいた女性としての強さ」が佐那の魅力。
隠れていた佐那の存在に光が当たれば、佐那も喜ぶのではないか、とのことです。

「龍馬伝」では何故か、龍馬に振り向いてもらえないですけどね。
凛とした女剣士であり、女性らしい面を持ち合わせた魅力的な人だったはず。
私は加尾ちゃんより魅力感じますけど、お話の都合上でしょうか。
佐那との関係をもっと描いて欲しかった、もういっそ、里中満智子さんの「花影」をお願いしたい、と思った中で見た今回です。

ワクワクしてましたよ~、近藤正臣さんの山内容堂さまにスポットの当たる回!
覚醒した龍馬。
でも、「怪物・容堂」とタイトルがある割りに出番が少なくて、怪物振りをもっと見たかったですね。
もっと覚醒した龍馬も背筋を凍らせるところを見たかった。


咸臨丸でジョン万次郎とも会った龍馬は、勝に正式に弟子にしてもらう。
海軍ができたらその訓練の下士官を龍馬に任せると言う勝、「ワンダホー」と言う万次郎。
龍馬は万次郎から「アメリカ語」を教えてもらい、さらにアメリカを束ねる「大統領」のことも教えてもらう。

大統領は、日本のお殿さまの世継ぎ制度とは全く違い、皆で選ぶ。
我と思うものが名乗りを上げ、その中から「天下を任せられる」と判断された者が入札によって選ばれると聞く。
「これからアメリカは世界一の大国になる」と万次郎。

そんな国にいたのに、何故、日本に戻ってきたのですか?と龍馬。
ワンダホーな国にいたなら日本に戻ってくることはなかったのに…。
それに対し、勝は「いい質問だ」と言う。

「アメリカがどんなにワンダホーでもわしゃ、日本人じゃき」。
龍馬は黙ってその言葉を聞く。
「わしゃ、アメリカのすごいところを目にするたび、日本じゃち、このぐらいのことはできる、日本人じゃち、負けはせんと拳を握り締めたがじゃ」。
「万次郎さん…」。

登っていく日章旗、感動する龍馬。
こういう高揚感が大河には必要ですよね。
「坂の上の雲」がこれに繋がるのか、と思ってしまいました。

「勝さま」と呼ぶ龍馬に勝は「お前はもう弟子だから、勝さまはやめろ、先生で良いよ」と言ってくれる。
狂喜する龍馬。
今、日本はひとつになって海軍を作り、日本を守っていかなければならないと言う勝。

翌日から龍馬は、勝とともに海軍操練所の為、奔走し始める。
微妙に各藩の藩主を、ヨイショする勝。
龍馬が地球儀を持って江戸・田原藩邸、佐賀藩邸、鳥取藩邸と回る。

自分の道が開けて行く実感、そして勝の手伝いに夢中になる龍馬。
3日後に大坂へ向かうことになり、そのことを千葉道場に話をする。
江戸には、もう戻ってこないだろう。

ショックを受ける重太郎、だが佐那は「わたくし、夕餉の支度を…、あと3日しかいらっしゃらないのでしょう。それまでに精をつけていただかねば」と立ち上がって言う。
申し訳ありません…、としか言いようがない龍馬。
やっと勝の元で「自分の道を見つけたじゃきに」と言う龍馬の影で、佐那が声を殺して泣いている。

その頃、土佐勤王党は京都の先斗町で飲み明かしていた。
今、土佐勤王党は、絶頂期にあった。
しかし、三条実美さまは幕府は帝に対して、攘夷の返事をのらりくらりとやり過ごすつもりだと言っている。

土佐勤王党でも、武市ばかりが出世している、と不満を漏らす者もいた。
以蔵が、つかみかかる。
その時、相手が言った。

「今日は誰を斬りに行くがな、以蔵。影でなんて呼ばれゆうか、知っちゅうがか?人斬り以蔵やぞ!ざまあみいや!」
その言葉は、以蔵の胸を貫いた。
だが、今日も以蔵は人を斬る。

「それは褒美じゃ」と、銀4枚を半平太から与えられる以蔵。
違う。
わしはこういうものが欲しいんじゃない。
そう言いたげな以蔵。

「どういた?」
半平太に聞かれてうつむいた以蔵は「わしは…、いつまで人斬りを…」とつぶやき、「いや、何ちゃあ、ないがです!」と立ち去った。

ここですね、いや、この以蔵の切なさ、すごい良くわかる。
ひどいよ、半平太さん!

褒美が少なすぎるし、あのね、会社でも何でも確かにみんな、道具なんだけど、道具に道具と感じさせるのって管理者として失格だと思いますよ。
「役に立ってる」「必要な人間」と感じさせるのって、大切でしょ?

素晴らしい指導者の下で働ける、しかもその人に必要とされている、認められているって感じるのと、自分は道具って思うのと、全然、機動力とか気力とか違ってくるでしょ?
それは最後、組織を、人を守ろうとするかどうかに関わってくるでしょ!と言いたくなりました、はい。

そして、明日は龍馬が江戸を立つ日。
勝とともに、土佐藩邸に行く。
土佐藩邸と聞いて仰天する龍馬。

容堂公とは会ったことがあるのかと聞かれ、龍馬は「わしら下士にとっては雲の上の人じゃきに」と答える。
「じゃあ、いい機会だ。とくとツラ拝んどきな」と勝が言う。
「来た」。

「これはこれは勝どの」と容堂公が現れる。
龍馬は、初めて容堂を見た。
土佐では酒を出すのがもてなしじゃ、と言って勝を呼ぶ容堂。

弥太郎が回想する。
「龍馬は土佐では下士じゃった。散々、しいたげられちゃったがじゃ。きっと、容堂の顔は、心穏やかには見れんかったじゃろうのう…」。

容堂はもう、日本は今までのようにはいかんと言い、土佐からも喜んで人は出しましょうと言ってくれた。
勝は「自分のところに弟子になりたいと言って来たのがいる」と、言い出した。
龍馬のことだ。

なかなかおもしろい奴でして、しかし、身元を調べたら土佐の脱藩者だった。
でも、そいつだけ脱藩の罪を許してはくれないか、と勝は申し出た。
だが、容堂は言う。

「脱藩は藩に対する裏切り。つまりはわしに対する裏切りじゃきのう、勝どのの頼みとはいえども許すわけにはいかんのう!」
この迫力。
龍馬の肝が、冷える。

東洋さまもすごかったけれど、容堂さまはなんて言うか、もう、殿だから当たり前なんですけど格が違う。
世が世なら、龍馬は一生会えなかった人ですから。
いや、この2人が実際に対面したことはあったんでしょうか。

今と違いますからねー。
時代劇は娯楽ですから、気軽に姫や殿がお忍びで町に出たり、花魁姿になってみたりしてますけど、実際はもう、大変なもんでしょ?

そこで容堂さま、「最近は土佐にも威勢のええ若者がようけおるの」と言う。
「けんど、時世に乗じて調子に乗りすぎるやからもおる」。
ここで、ちらっと龍馬を見る。
龍馬がゾッとするのが、わかる。

勝先生は龍馬に、海軍操練所には藩士でなければ入れなくなるかもしれないから、今の内に龍馬の脱藩の罪を許してもらいたかったと言う。
そこで龍馬、容堂公を見てどうだったと聞かれて、「底知れん、恐ろしさを感じました」。

そう、土佐を動かしているのは今のお殿様でもなければ半平太でもない。
あの御仁よ、と勝先生。

その頃、以蔵は飯屋で飲んだくれていた。
お客さん、閉店ですという状態に。
以蔵、荒みましたね。

以蔵は飯屋の娘・なつに、つかの間の安らぎを得ている。
なつに何の仕事をしているのか聞かれても、おまんはバカじゃき、と言って教えない。
教えないのが、以蔵の優しさ。
でも「誰っちゃあできん仕事をしちゅうが」と、言う。

ほらね、やっぱりそう思わないと、こんな仕事はできないんです、よ!
だからもっとちゃんと、以蔵を扱ってあげてくださいよ、半平太さん!

しかし、以蔵は夢を見る。
人を斬る。
そして表に出た途端、今度は自分が数人の男にめった刺しにされる…。

自分の破滅が見えている、その恐怖、不安。
夜中に目を覚まし、窓の外に顔を出し、怯えきった以蔵はおどろくなつがいるのに叫ぶ。
「わしは、斬りとうて斬っているのではないがぜよ」と。

戦争でも、何でもそう。
大義がなくて、何かの、誰かを救うと信じられなくて、人が殺せるものか。
それはただの人殺し。
シリアルキラーじゃないんだから、それで自分の精神が保てるわけがない。

兵隊が精神を病むのは、戦場の過酷さもさることながら、ああやって残酷なことをするのに対して、大義を信じられないというのも大きいと思います。
逆にね、大義を掲げられるとすごく怖いですけど。

佐藤健さんが、いいです。
見ていて、かわいそうになります。
以蔵の心情が、手に取るように感じられます。

その頃、半平太は収二郎とお茶を飲んでいる。
半平太は酒も飲まない、女遊びもしない。
富に文を送る、夫としては良い夫。

そうです、嫌な上司だろうが、場所が違えば、そこでは良い人だったりするんです。
でもね、でも…、他でやってることがひどいと、それも許されなくなるんじゃないでしょうかね。
しかし、富もまた、乙女に文を見せてすごいねーと言われながらも、もうどこかに不安を抱えている。

坂本家では、食事中。
武市と龍馬を比べたらかわいそうと言うが、攘夷と言いつつ異人はちっとも追い返せていない。
何人ぐらい追い返したかのう、と言う言葉に対して、乙女は、龍馬はケンカが嫌いじゃきにと答える。
兄は、ケンカはせんでも異人は追い返せる、それが龍馬の攘夷よ!と言う。

その時、弥太郎がやってくる。
龍馬に大坂で会ったと話し、坂本家の人々は弥太郎を歓迎。
しかし、弥太郎の目的は別にあった。

材木を買うのに、お金がほしかった。
しかも、材木も売りたかった。
武士のおまんが商売を?には、弥太郎は人によって物の価値、そして値段が違ってくることを説く。

どうして坂本家に借金を?には、龍馬はわしの竹馬の友ですろう、と言うが、そう言えば龍馬の口から弥太郎の話が出たことはないと鋭い指摘がされる。
だが、兄は弥太郎の願いを聞いてくれる。
弥太郎は、平伏して感謝する。

頑張れ、弥太郎!
その調子良さが楽しいし。

そして、龍馬が江戸を発つ日。
戻ってきてくれ!と言う重太郎。
千葉道場の為に、佐那の為に…、「頼む」と頭を下げる重太郎に定吉が「坂本には坂本の生き方があるのだ」と止める。
「これは、誰も邪魔することはできん」。

そして佐那が「父上の言う通りです」と答える。
一番、去って欲しくないはずの佐那が…。
「坂本さんが選んだ道は、日本を守ることなのですから」。

凛とした佐那。
龍馬が改めて、佐那を見る。
「お佐那さま…」。

前へ、前へ、ひたすら前へ進め、試練の道だが、志したからには成し遂げろと定吉。
頭を下げた龍馬は、「最後にお佐那さまと、立ち合わせていただきとうございます」と申し出た。
驚く佐那、重太郎。

立ち合う2人。
激しく打ち合う。
剣を交わした龍馬が、叫ぶ。

「ありがとうございます。お佐那さまに教わった剣は、わしの宝ですきに!」
打ち込んでくる佐那。
「坂本さま…」とつぶやきながら。

再び、打ち合う2人。
定吉が見つめる。
向かい合った2人。
龍馬が、佐那の面を見事に打つ。
 
「それまで!」と重太郎の声がかかる。
佐那の顔が、龍馬の顔が、防具の下で歪む。
面を外した佐那が言う。
「本当に強くなられましたね」。

龍馬が回想する。
初めて千葉道場に来て、佐那に全く太刀打ちできなかった時のこと。
面を外した佐那を見て、「おなご…」と驚いたこと。
太鼓を叩いて、子供の稽古をした時のこと。
龍馬が佐那の笑顔に目を丸くし、「お佐那さまの笑顔」と笑った時のこと。

背筋を伸ばした佐那が「いざという時には、きっとその腕が、あなたを守ってくれることでしょう」と言う。
「お佐那さま…」。
龍馬が頭を下げる。
「お佐那さまのことは、生涯忘れませんきに!ありがとうございました!」
涙の佐那が、うなづく。

良かったですね、このシーン。
言葉で語るより、ぶつかり合った剣が、お互い、誰よりも尊敬していると、特別なのだと、語っていました。
今まで物足りなかった佐那とのシーンですが、ここは本当に良かった。
佐那と、龍馬の魂のぶつかり合い。

これ見て思ったんですが、やっぱり佐那は龍馬にとって別格の存在だと思います。
高嶺の花っていうんじゃないですが、龍馬にとって佐那は恋愛というより、神聖にして冒すべからずという存在だったのではないかな、と。
そう考えると、龍馬が佐那の恋愛感情から逃げていたのがわかる気がするんですね。

あ~、もっとじっくり、龍馬と佐那は見たかった。
だけど、まだまだ描いてないんじゃないですか?
まだ、ありますよね?
ない?

「この9年、坂本さんのことをずっと待っていた」と、佐那。
定吉の持って来た縁談相手は、きっと自分を幸せにしてくれただろう。
「でもわたくしは、坂本さんが好きだったんです」と言う佐那。
そんなことはわかっていたと、定吉。

本当は定吉だって佐那と龍馬が夫婦になって、千葉道場を継いでほしかった。
親なら誰でも子供の思いをかなえてやりたい…。
定吉先生の、親としての思い。

しかし、佐那は言う。
「私はもう、誰の嫁にもなりません。これからも剣一筋に生きてまいります。心配しないでください、父上、兄上。私は幸せです」。
そう言った佐那は、道場の龍馬の名前を書いた札を見上げる。
「だって坂本さんはここにいるのですから」。

ああ、何て凛としている佐那。
佐那ちゃん、出番終わり?
終わりじゃないですよね?
そう信じたい。

一方、船の上の龍馬は、容堂公の言葉を思い出している。
「調子に乗りすぎるやからもおる。その男はこう言いゆう。わしが日本の為、帝の為、大殿さま、山内容堂公の為に働きゆう、と」。

勝が、武市半平太のことかと尋ねる。
「さすが、勝どの。ようご存知!」と言う容堂公に、勝、半平太は忠義一途なのだ、と擁護。
そこで容堂公。
「土佐ではのう、下士は犬猫同然ながじゃが。下士の分際で藩を動かそうなぞ…、虫唾が走るわ!」

下士なんぞに、忠義はいらんわ!ということか。
いや、やっぱり土佐の成り立ちから続く、この溝は根深いんですね。
しつこいけど、そこの描写がなかったから、「何で?」になっちゃうけど。

龍馬の目が泳ぐ。
容堂公は続ける。
半平太は自分の為と言いながら、土佐で自分の支えだった吉田東洋を闇討ちにした、と。
「そんなやからを許してもええと思うが?おんし!」

容堂公の目が、まっすぐに龍馬を見る。
見る、というより、射抜く。
勝が、ちらっと後ろを見る。
「怖れながら」と龍馬が言う。

武市半平太殿が作られた土佐勤王党は、大殿様を守るのが大義のひとつと龍馬が言う。
半平太は大殿に忠義を尽くしているのだ、と言ってると、容堂がおもしろそうに、でも笑ってはいない目で龍馬を見る。
「よ~う、知っちゅうのう~」。

そして、「まるで土佐もんのようじゃ!」。
勝がそこで止めに入る。
容堂は忘れたように笑って、勝の杯を受ける。

う、知ってる!
きっと、最初からわかってた。
龍馬が土佐からの脱藩者だってこと。
勝先生の元にいるから無事だけど、この方が本気になったら今の龍馬も食い殺す…。

その頃、半平太は上士に取り立てられる。
江戸の容堂公が承知したのだ、と言われ、感激する半平太。
「上り坂もここまでじゃ…、武市」と杯を傾ける容堂さま。
「大殿さま…」と、感激する半平太。

そう、突き落とすなら、なるべく高いところから。
高ければ高いほど、落ちた時のケガが大きい。
うわ…。

しかしこの容堂公、もっと見たいですねえ。
いや~、楽しみにしていましたけど、今回もおもしろかった~。
今回も見応えありました。

場面と登場人物によって、空気が変わりますね。
容堂さまは空気を冷やす、佐那ちゃんは空気を澄ませる。
そして、覚醒した龍馬もいい。
やっぱ、天然だなあと思いますけどね。

来週はゴールデンウィーク真っ只中、書けるかな~って感じですが、また楽しみに待ちたいと思います。


忘れます忘れます 大島弓子「ダリアの帯」

主人公は、只野一郎というサラリーマン。
妻は黄菜(きいな)。
「奇異名(奇異な名前)でしょう」。

3年前、一郎は18歳の黄菜と電撃結婚をした。
しかしそれから3年、そろそろ倦怠期…、一郎には会社で気になる女性がいる。
その女性・雪子もなにやら一郎に優しく、一郎はときめいている。
雪子が作ってきたクッキー、いろんな形があるがハートは一郎のところだった。
「ハートはここだぜ!」と浮かれる一郎。

そんなある日、黄菜は階段から落ちた。
お腹に子供がいたことを知らなかった黄菜は、自分の不注意から子供を産んでやれなかったことで自分を責め、罪悪感から精神を病んでいく。
生まれなかった子に「ニイナ」という名前をつけた黄菜は、ニイナの葬式に締める為、ダリアの刺繍の帯を探して1日中デパートを回っていたと言う。

ダリアの帯?といぶかしげな一郎に黄菜は、もしなかったら、ダリアを育てて自分で縫うよ、と言った。
黄菜の行動は常軌を逸して来る。
ついに家に帰る道を忘れた黄菜はさすがに怯え、迎えに来た一郎に震えながら、「一郎くん、脳の病院へ行こう」と言った。

しかし、その後も黄菜は一郎の会社に行こうとしたり、部屋でダリアを育てようとしたりと、誰の手にも負えなくなっていく。
胃に穴が開きそうなストレスを感じていた一郎だが、「一郎君をとらないで」と書いた文字を見つける。
黄菜は一郎が雪子に惹かれていることを、気づいていた…?

一郎はついにストレス性の胃潰瘍で倒れる。
黄菜は、精神病院のベッドにいる。
親戚中は、離婚を勧める。
入院した一郎は、ベッドの上で初めて、黄菜に思いを巡らせる。

黄菜は気づいていた。
だが、黄菜は一郎を責めるのではなく、全てを忘れていく方を取った。
それは黄菜の一郎への限りない愛だ。
そうわかった一郎は、黄菜の為に、黄菜とともに生きていく決心をする。

夜中に病院を抜け出し、黄菜のいる精神病院に忍び込み、手に手を取って逃げる。
追われているうち、患者は黄菜なのか自分なのか、一郎はわからなくなってくる。
結局捕まった一郎は、こんなことをしなくても話をしてくれれば退院させます、と言われ、親戚たちの反対を押し切って黄菜と2人だけで暮らし始める。

会社も辞めた。
雪子とも、それっきりになった。

山奥で一郎は、農業を始める。
たまに来る登山者に黄菜は「助けて、あの人に誘拐されているの」などと言って騒ぎを起こしたりもした。
だが、一郎は黄菜と暮らして、60歳になったある日、畑で倒れた。
一郎はそのままなくなり、黄菜は一郎を埋めた。

肉体を失った一郎は、「自由です」と風の中で思う。
すると何と、黄菜は一郎に向かって話しかけるのだった。
一郎には黄菜の言葉がわかる。

「今日は、青菜を摘んだ方がいいかしら」と聞く黄菜。
「うん、うん、摘んでくれ」と答える一郎。
そこで一郎は気づいた。
黄菜は花や草や風、そして「ニイナ」、雲や霧や雨、森羅万象に向かって話をしていたのだと。
今、黄菜は一郎に向かって話をする。

一郎の死は誰も知らない、ずいぶん後に気づかれるだろう。
しかし、一郎は思う。
いつまでも気がつかない方が良いかもしれない、と。
黄菜は一郎とずっと一緒にと生きているのだから。

年を取らない黄菜の後姿が映る。
彼女の着るリンネルは、森の中でいつまでも白い。


最初に、すごい話だなーと思いました。
「ゾッとする話」と友人は言いました。

他の人に惹かれていく夫、発狂する妻。
ドロドロになる話なんですが、ドロドロにしない展開。
いや、こんな話をよくこんな展開にしたなと思います。
この童話のような展開を助けるのが、大島弓子の絵柄と黄菜という名前じゃないでしょうか。

一郎が言うように、奇異な名前でしょう。
かたや、一郎の方は「ただのいちろう」です。
この対比がいかにも!な感じがなくていい。
そして、黄菜という名前がこの話をリアルでつらいものから、ギリギリ、ファンタジーにさせているのだと思います。

そんなわけない、普通は離婚だ!とか、雪子に傾く!とか思わせないで、全ての良い選択を捨てて黄菜とともに生きていくという展開が許される。
さらには狂っていたと思われた黄菜は、狂っていたというより、別世界のものを見ていたのだ、というラストに結びつく。
現実として描いたら、狂った妻と山奥で暮らし、ついに誰にも気づかれることなくこの世を去り、一人狂気の妻は山奥で暮らしていく…という恐怖の展開なのに、救われる。

自分の為に狂気を選択した妻の為、生きていく一郎が、最後に得た暖かい世界。
一郎が別の世界を選んだとしたら、行き着かなかった世界。
彼らの世界とは、世間は全く違うことを、たまに登ってきた登山者によって表す。

もし、相手が自分のことを忘れていたら、同じような愛情を持って接することができるだろうか?
そんなことまで考えさせてくれた、「マンガなんて」とは、とても言えない作品でした。


「賢者の贈り物」地獄変 必殺仕掛人「地獄花」

もう10年ほど前にもなりますが、WOWOWで京極夏彦さん原作の「怪」がドラマ化されました。
原作の「巷説百物語」というよりも、必殺のスタッフが集まった、必殺へのオマージュのような4部に渡る作品でした。

この第4部「福神ながし」に、ターゲットとなる側に雇われた用心棒として風見一学という男が出てきます。
杉本哲太さんが演じていて、なかなかというより、かなり良かった。

ストーリーは原作なしのオリジナルで、福の入っている箱を奪われた商人・叶屋幸左衛門(岸部一徳)がどんどん没落した為、最後のお金をかき集めて又一(田辺誠一)に箱を取り戻してくれるよう、依頼する。
箱を奪ったのは叶屋の元奉公人・福乃屋富蔵(船越英一郎)で、今や江戸一番の商人。

又一は仲間の山猫廻しのおぎん(遠山景織子)や、算盤の徳次郎(火野正平)、事触れの治平(谷啓)といった仲間とともに箱を取り戻す為、動き出すが、福乃屋は箱を守る為に用心棒を雇っており、また、箱には七福神をなぞった謎の7人がついている。

やがて、又一たちの仕掛けで、富蔵の周りに妖怪が現れるようになり、妖怪を見た用心棒たちは逃げ出していくが、風見一学(杉本哲太)は恐れず、妖怪が目くらましであることを見抜く。
だが風見はおぎんを見て、驚きの声をあげた。

…という展開なのですが、この用心棒・風見一学の設定が「必殺仕掛人」の「地獄花」です。

田村高廣さんが演じた浪人・神谷兵十郎。
梅安の仕掛けを見たと言って口止め料を要求し、梅安に命を狙われるも互角に立ち会う。
その腕を見込まれ、半右衛門は兵十郎を仕掛人に誘う。

口止め料は要求したが、自分は侍。
金の為に殺しはしない、と断った兵十郎。
だが妻が困窮する生活に苦労している姿を見て、承諾。
殺しの相手は、仕官を餌に人を食い物にするある藩の上役だった。

仕掛けの夜。
梅安が仕掛けを終え、初仕事の兵十郎が見たものは、上役の床の相手をする妻だった。
兵十郎に見られた妻は愕然。

仕掛けの後、兵十郎は妻を斬り、そのまま姿を消した。
全てを見ていた梅安も、半右衛門も兵十郎を追わなかった。
兵十郎の消息は、それっきりわからなくなった。


この「地獄花」は再放送では放送禁止になった3つの話のうちの1つだったそうで、でも今は普通に再放送で流れているとか。
「仕掛人」の解説によると放送禁止の理由は、妻を斬る理由に対するフォローがない為、だそうです。

オリジナルのストーリーはO・ヘンリーの「賢者の贈り物」で、これをベースに考えたとか。
「賢者の贈り物」って、夫は妻の美しい髪に飾る髪飾りを買う為に大事な懐中時計を売り、妻は夫の時計につける金の鎖を買う為に美しい髪を切って売ってお金にした話ですね。

お互いがお互いを思う気持ちがすれ違いのプレゼントとなってしまったが、その愛はどんなプレゼントにも優る贈り物になった…という心温まるお話。
これが「必殺」になると、悲劇に変わる。

まあ「必殺」の性格上、しかたのないことかもしれませんが、秀逸にして残酷。
地獄変起こした「賢者の贈り物」です。
「賢者の贈り物」地獄変。

「地獄花」の神谷兵十郎は、後に再び「仕掛人」に登場。
もはや死に場所を求めているだけの神谷。
かつて素晴らしい腕を持っていた神谷に、梅安は悲しそうに言います。
「(殺すまでもない)。あんた、もう死んでるよ」。

これ、梅安は緒形拳さんでした。
田村高廣さんとの、後には考えられないような名優2人の共演でもありました。
当然のことながら、壮絶な名演2人。
これをテレビで見られたなんて、贅沢な時代だったんだな~と、「地獄花」には別のところでも感激してしまいました。


カードギャラリー 「一方通行」

ドイツのカード会社のカード、タイトルは「一方通行」。

一方通行

関心はそれほどないような目で、しっかり見ている。
見逃さない。

お月様が綺麗で幻想的。
どこかの屋根の上でしょうか。
怖いけど、良い雰囲気。

ひとこまのドラマみたいというか、切り取られたワンシーン見ているみたいなカードは楽しい。


人魚の歌を聞くと船は沈むのよ 「人魚伝説 1916」

「人魚伝説2」。

人魚伝説」で、さと子が相沢家で見た肖像画の人、ニコライ、相沢遥のご先祖さま。
革命児にこの地にやってきて、この相沢家を建てた。
血は16分の1しか流れていないのに遥が似ていると、遥の母親が話した人のお話です。


人魚は不思議な歌を歌う。
それを聞いた船乗りの船は、沈没するのよ。

あるひなびた海辺の村にやってきた、ニコライ・セルゲイビッチ・ヴィスコンスキイという亡命ロシア人青年。
高台に洋館を建てて住んでいるが、先日、海に入水自殺をして助けられ、医者の診断を受けていた。
ニコライは医者に自分の名を聞かれるが、「それは私が姿を借りた男の名です。私は人魚です」と言う。
ではまず、ニコライの話からしてくれないかと言われた彼は話し始める。

「ニコライ、ニコライ」。
うたた寝をしているニコライ。
従姉妹のヴェロニカの声がする。

「やーね、ニコライったら」と言ってヴェロニカが「罰にこれ、もらうわ」と十字架を取り上げて、走っていく。
追いかけっこになる。
それを父母たちが、優雅に笑いながら見ている。

ニコライはロシアの地方貴族の家に1901年に生まれた。
同じ名前のロシア・最後の皇帝になるニコライは76年前に即位。
しかし戴冠式では多数の死者が出て、不吉な前兆と噂されていた。
父のセルゲイ、母のエレーヌ、双子の弟のミハイル、そしてマリア。

その夏、ドイツとの戦争はもう2年に長引いていた。
各地でストライキは頻発していたが、翌年にあんなことが起きようとは誰もまだ予測をつけていなかった。
ニコライのところにはペトログラードから従姉妹のヴェロニカが来ており、その相手は夏休みで寄宿舎から戻ってきたニコライの役回りだった。

船曳き人夫を見たニコライはつぶやく。
「これからはあの人たちの時代、労働者の時代が来る…」。
ヴェロニカは「違うわ。これからはブルジョワジーの時代よ」と言う。

いつもミハイルとともにいるのは、黒髪のマリアという娘。
ヴェロニカが使用人なのか家族なのかと聞くと、ニコライは「人魚だよ」と答えていた。
ニコライとミハイルの区別はつきにくいぐらいそっくりだったが、体が弱いミハイルの車椅子を引いて面倒を見るのはマリアの役目だった。

いつもいつも「マリアはいつも僕の傍にいてくれるよね。僕が死ぬまででいいんだ」とミハイルは言い、マリアは「はい」と答えていた。
双子のミハイルは幼い頃のある日、残念ながら成人することはできないだろう、あと10年持てば、と宣告されていた。

「その日からお館様の双子は、平等でなくなった。ミハイルには望む物全てが与えられるようになった」。
ニコライはそう思っていた。

冬のある吹雪の日、使用人が母のところにジプシーの母娘が裏口に来ていると伝えてきた。
「変ね、連中は集団で居るんじゃないの?」という母に使用人は、「おそらく集団の中にいられないようなことをしたんでございますよ」と言いながら、今夜一晩の宿を与えてやらないと死んでしまいますと言った。

それを聞いてニコライとミハイルは親子を見に、飛んで行った。
マリアを見たのは、その時だった。
あんな黒い瞳を見たのは、初めてだった。

子供の手前、母親はジプシー親子に寛大な措置をした。
母娘は、キッチンの片隅に一晩宿を取ることを許されたが、夜中にニコライとミハイルはマリアを部屋に連れてきた。
マリアは2人の見分けがつかないと言い、自分が今まで行ったいろんな場所の話をしてくれた。
それは長い退屈なロシアの冬には刺激的な、残酷で情熱的な異教徒たちの話だった。

「こんな夜には人魚が歌っているわ」と、マリアは言った。
「人魚の歌を聞くとその船は沈没するのよ」と言って、マリアは人魚の歌を歌った。
ニコライとミハイルには、不思議な歌に思えた。

翌朝、マリアの母親はいなくなっていた。
迷惑顔の母親だったが、ミハイルが「僕が具合が悪くなった時、この子が面倒を見てくれるよ」と言うと、母親はマリアを屋敷に置くのを承知した。
自分の願いには顔色一つ変えなかったのに…、とニコライは思った。

ミハイルの汗を拭き忘れたことで、マリアはエレーヌに叩かれた。
熱が出るたび、ミハイルの命は縮まっていく。
子供と思っていたヴェロニカは、マリアとミハイルに苛立つニコライを笑う。
ニコライの持っている十字架は、マリアのものだった。

マリアへの純情を指摘されたニコライに、ヴェロニカはさらに言う。
「あたしはニコライじゃなくてもいいのよ、あたしじゃなきゃ困るのはニコライなのよ」。
そしてヴェロニカたちは休暇が終わり、ニコライの家から帰って行く。

ニコライの耳に、土手から白骨死体が出たという話が入る。
死体の手のブレスレットから、それはマリアの母親とわかった。
ニコライの両親は、マリアの母を手厚く葬った。
村の者は「あの女はキリスト教徒だったのかい?」「おやさしいこった」「まったく、俺たちへの取立ては厳しいくせによ」と陰口を叩いた。

その夜、ニコライは夢を見た。
イワノフという老人の息子が、間男が猟銃で射殺された話をした夜。
夢の中で、幼いミハイルが猟銃を持って立っていた。
うなされ、水を飲みにキッチンに下りてきたニコライは、父母のヒソヒソ話を聞いてしまった。

「気にすることはない。遺体を見ても何も思い出さなかったじゃないか。あの子は何も覚えていないんだ」。
「幼い子供だったんだ。死の意味すら理解していない。ただ、マリアを連れて行かれたくない、それだけだ」。
「手伝ってくれたイワノフは口の堅い老人だった。そのイワノフも死んだ。知っているのは我々だけだ。我々が忘れればいいんだ」。

あの子とは?
あの子は何をした?
もしかしたら、マリアの母親を殺したのは子供のミハイルではないのか?という疑念がニコライの中で膨らむ。

ミハイルはニコライに対し、ますます、マリアは自分のものだと見せ付けるようになる。
ニコライはミハイルの悪意とマリアの母を殺したのはミハイルだということ、ミハイルはそれを覚えていると確信した。
マリアが真実を知ったら、今までどおりミハイルの世話ができるだろうか?

苛立つニコライが馬に乗って生垣を越えるところを、微笑みながら見つめるマリア。
ミハイルもマリアの微妙な気持ちを警戒し、3人の感情のもつれを敏感に察知したエレーヌはヴェロニカとの婚約話をニコライに話す。
ヴェロニカの家は、バクー油田の採掘権を持っており、この話はニコライの家にとって願ったりかなったりの話なのだった。

動揺したニコライは、ついにマリアに気持ちを打ち明ける。
そしてこの家を出てモスクワかペトログラードで、新しく2人で暮らそうと離す。
もうすぐ新しい時代も来る。
みんな平等で、皇帝もいなくなると言うニコライ。

しかしマリアは「皇帝がいなくなれば、誰かがその後に座るでしょう?と言う。
ニコライのことは好きだけど、ミハイルを置いてはいけない、と。
それを聞いたニコライは言う。
「マリアの母さんを殺したのが、ミハイルだとしても?」

大人になったニコライは、この時のことを回想する。
「私はこの時、どれほど残酷なことをマリアに言ったのか。ただのエゴイズムから発せられたものだった。何もわからぬまま」。

その夜、学校が始まるのでニコライは寄宿舎へ戻る為、荷造りを終えていた。
ミハイルは、自分の手を思わず払いのけたマリアの変化に気づいていた。
ニコライの父母は、使用人たちも早めに休んで良いと言って、断り続けたパーティに出かけた。

馬車の中、エレーヌは川岸の道を通るのに怯え、何だかとても嫌な予感がすると言った。
あの女の魂は今もさまよっていて、自分たちを破滅に引きずりこむのではないか、と。

ニコライはマリアに、この機会に一緒に家を出ようと言った。
ためらうマリアとニコライの前に、猟銃を持ったミハイルが現れた。
「まだ、引き金を引くぐらいの力は残っている」と言うミハイルに、ニコライは「また同じことを繰り返す気か?」と叫ぶ。

「何のことだ?」とミハイルは言った。
同じだった。
記憶の底にある幼い頃のミハイルと。

だが何かが違った。
猟銃を持つ手が反対なのだ…。

ミハイルが引き金を引いた時、「だめ!」とニコライの前にマリアが走り出た。
弾丸はマリアに当たった。
ちょうど、パーティから戻った父母は、その音に屋敷に走りこんできた。

「やっぱり無理だったのよ。夢を見ただけ。私は息が詰まるような生活の中で夢を見たんだわ。ミハイルがあなたのようだったら、と。初めて会った時から2人の見分けがつかなかったんだわ」と瀕死のマリアが言う。
これは夢だ、悪夢だ。
ニコライはそう思いながら、はるか前に聞いた言葉を思い出す。

父親が自分を抱きしめながら、「夢だ。お前は夢を見たんだ」と言い聞かせていた。
イワノフという老人が自分のバカ息子が、猟銃による間男殺しの話なんてしたからだと言っていた。
「河原の護岸工事の土の中に埋めましょう、このイワノフ、秘密は墓場に持って入りやす」。

あれはミハイルに言い聞かせていた、父の言葉だったのか?
いや、もしかしたら…、ミハイルではなく、階段の大きな鏡に映った自分の、ニコライの姿だったのではないだろうか?

何故、ミハイルがやったことだと思ったんだろう?
…わからない。
わかっているのは、マリアはもういないということだけだ。

ミハイルはそのまま寝たきりになり、間もなく亡くなった。
真相はわからない。
父母に聞いたら、「殺したのはミハイルだ」と言ったが、昏睡状態のミハイルに罪をかぶせるほうが良いと判断したのかもしれなかった。

そして、いろんなことが起きた。
国が引っくり返った。
父や母、何が起きたのか最後まで理解しないまま、皇帝までもが革命の嵐に飲み込まれていった…。
流れる、おびただしい血。

ニコライは回想する。
「自分だけは出口があると思い込んでいた。自分こそが、抜け出すことが許されない人間だったのかもしれないのに」。

革命から逃れたニコライは日本にたどり着き、この海辺の村にやってきた。
ここに人魚の伝説があると聞いたからかも、しれない。
少女たちの口ずさんでいた歌が、マリアの歌に似ていたからかも、しれない。

しかしニコライは、診察している医者に言う。
「私は人魚です」。

人魚の自分が海辺を通りかかったニコライを引きずり込み、食べたら、ニコライの体に変わった。
記憶もニコライのものを受け継いだ。
ニコライになった今は、人魚だった自分は彼の心を代わりに背負って生きていかねばならない。

全てを聞いた医者は、彼が自分を人魚だと思っているのなら、それが生きる意欲になるのなら良いのではないかと診断を下した。
ここにたどり着くまでに、革命からずいぶんとつらいことがあったのだろうし。
だが世界中に人魚の伝説があるのは、不思議だねえと医者は言う。。

子守の少女たちが、興味深そうに洋館を覗いていく。
ニコライは退院し、戻ってきていた。
彼女たちを見たニコライは挨拶をし、私の話を少し聞いていきなさいと言った。

「これは君たちの子供、そのまた子供たちが君たちぐらいの年になる、何十年も先の幸せな時代。年老いた君たちがその子供に、私の話をするところから始まるんだよ」。
そう言ってニコライは、まだ10代のさと子の祖母に話し始める。

「ニコライ、ニコライ」。
うたた寝をしているニコライ。
ヴェロニカの声がする。

「やーね、ニコライったら」と言ってヴェロニカが「罰にこれ、もらうわ」と、マリアの十字架を取り上げて、走っていく。
追いかけっこになる。
それを父母たちが、優雅に笑いながら見ている。

遠くで海にしぶきが上がる。
魚の尾が見える。
あれは魚か…?
それとも…。



革命前のロシアのお話。
美しくて、なかなか好きです。
美しい、しかし内部はもう腐っている。
そんなものが滅び行く悲しさが、あります。

人は自分にないものにものすごく惹かれる。
長く退屈なロシアの冬。
金髪で青い目をした冬のロシアのような双子の兄弟が長い冬の間に出会った、情熱的な異教徒である黒髪に黒い瞳のマリア。

裕福だけど制約がある家にいる兄弟。
貧しいが、自由に旅をしてきたマリア。
兄弟がマリアに惹かれたのが、わかる気がします。

単に退屈な冬にやってきた外部からの訪問者を、子供らしい遊び相手を取られたくないという気持ちだった。
しかし、やったことは殺人だった。
この辺りの暗さ怖さがまた、冬のロシア、閉じた家にいる兄弟、という感じ。

結果、マリアはこの家に縛られることになる。
でも、マリアはミハイルのもの。
ミハイルは特別扱いで、何でも持っているとニコライは考えている。
マリアも、父母の愛情も。

実際、ミハイルはニコライにマリアは自分のものだと見せ付ける。
自分には何から何までないもの、できないことをニコライはするんだから。
健康なニコライにはわからないけれど、本当は、バラの生垣を馬で跳べるニコライが、自分もマリアもまぶしいんだから。

ニコライは、いつまでこんなことが続く?と思ってるけど、そんなに長くは続かない。
「僕が死ぬまででいいんだ」。
それはすごく、相手を束縛する言葉だけど、やがてマリアはニコライのものになるだろう。

ミハイルはたぶん、そんな事を思っている。
マリアがミハイルがニコライみたいだったらいいのに、と思っていることも感じている。
他に集中するものがないから、ミハイルはマリアの気持ちには敏感。

そして…。
ニコライはミハイルに父母の愛情が集中していると思っていたけど、そんなことはなかった。
父母は父母で、おそらくマリアの母を殺したニコライを必死にかばっていた。
最後はミハイルのせいにしてくれてた。

ミハイルは失意のうちに死んでしまったし、マリアは殺されてしまった。
それを引き起こしたのは、全部、自分の子供っぽいエゴ。
父母の愛情にも気づかず、そもそもの原因は自分だった。
子供のような、教養があるようでいて、何て愚かな自分。

そんな時、怒涛のように革命が起きる。
ニコライは、逃げるだけでおそらく精一杯の状態。
もう罪滅ぼしもできない。
祖国に戻ることもできない。

本当にニコライは人魚に食われてしまったのか、それとも入水自殺しようとして、そんな話を考えたのか、わからない。
「1」と同様、真相がはっきりしないまま残される結末。

最後にさと子の祖母の若い頃を登場させているのが、うまい。
祖母はニコライの言う通り、「君たちの子供、そのまた子供たちが君たちぐらいの年になる、何十年も先の幸せな時代」に「年老いた君たちがその子供に、私の話を」して、そこから「人魚伝説」は始まった。

最後にニコライが幸せだった頃が出て、父母たちが出て、最初に戻る。
遠くに水しぶきを上げて魚の尾が見える。
魚にも、人魚にも見える。

薄く、遠い、その描写。
余韻がすごい。
現代の連続猟奇殺人の「人魚伝説」から繋がっているものの、切ない、上手い構成だと思います。
日本とはまた違う、暗さと重さがあります。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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