「龍馬伝」。
お龍登場だったんですけど、新撰組で燃えてしまいました。

いや、無言で「斬る」以外の意志を見せない新撰組、怖かったですね。
あの、新撰組の以蔵の追い詰め方が、「狼」って感じでした。

大きな熊にも次々、襲い掛かる。
一匹払っても、別方向から噛まれる。
サッと噛んでは離れ、あちこちから攻撃される。
どんな大きな熊も逃れられない。

そんな相手を前に、龍馬が初めて本気で剣を抜いて向き合う。
おそらく殺気というか、これは抜かなければならない。
いや、以蔵も自分も斬られる!と感じたんだと思いました。

龍馬・北辰一刀流。
近藤勇・天然理心流 。

龍馬が強いのはわかりますが、新撰組は実戦。
もう、実際に何人も人を斬ってますから。
果し合いではなく、いろんな要素が入ってくる実戦ではこの勝負、どうなるかわからなかった。

「お前は次だ!」
おお、遺恨を残したか!

という感じで、今日も「龍馬伝」非常におもしろかったです。
いや、去年の今頃はもう、完全に大河を見てませんでしたから。
北村一輝さんは見たかったものの…。
今年の大河は、いいなー。

そう言いながら、今日、ちょっとドライアイが進んでいるみたいなので、後でちゃんと書きます。
すみませ~ん…。


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2010.05.31 / Top↑
90年代の前半、ロバート・K・レスラーという人の「FBI心理分析官」という本が流行りました。
文字通り、大量・異常殺人鬼についてFBI心理分析官だった著者が記した本。
大ヒットしたので後に2冊目が出ました。

1冊目はかなり衝撃で、最初の章なんかは「やめようかな」なんて思いながら読んでいました。
もう、石鹸の底がぬるぬるしているとエイリアンに乗っ取られていると判断して殺してしまうとか、犯人の思考と残虐さが理解の範疇越えてましたね。
理解できなくて怖い。

「あー、気分悪い」と思いながら、途中でやめるのも怖い。
でも、最後のほうは平常心で読んでたんですねー、これが。

最初が一番凄惨だからか?と思ったら、そうでもない。
内容は同じようにむごいシリアルキラーたちの話。

…そう、慣れちゃったんです!
2冊目が出て、2冊目も読めましたから。

1冊目に犯行の白黒写真が載っていましたが、カラーだったら耐え切れない!という感じ。
最初に見た時は「うわ、ページ真っ黒…!」と。
そんな風に衝撃受けてたのに、2冊目はこれがカラーに。

カラーなんて、とんでもないはず。
それが、それに耐えちゃってた。
見ていられたんです。

この本を基にした映画「羊たちの沈黙」も見た後、「食欲ないわー…」だったのに今は平気だし。
これをきっかけにこの手の映画がいっぱいできましたが、どんどん刺激は強くなったけど、耐性も上がって来ましたね。

まあ、それでも昔の「サスペリア」とか、古くてもゾクゾクするものはあるんですけど。
自分も振り返って、そういう慣れって、時にはやっぱり怖いものになるなあと思いました。
「慣れる」ということは、人間には「耐える」力がある、とも言えるのでしょうが。


2010.05.30 / Top↑
マン・レイ(Man Ray)。
アメリカの画家、彫刻家、写真家。
シュルレアリストとして、シュルレアリストの作家たちと交流があり、様々な作品を作りました。
1890年生まれ、1976年没。

私は最初、ポストカードでマン・レイの作品に触れました。
「おしゃれ~」にも感じます。

なみだ


見事なまつげ。

唇モチーフもあります。

景観

カラーがついているのもありますが、モノクロというのも、時代を感じさせる雰囲気があって結構好きです。
これを見ていると、モノクロの怪奇映画が見たくなったりします。
ベティ・デイビスの「何がジェーンに起こったか?」や「震えて眠れ」、「回転」とか。
う、結局、怪奇趣味に落ち着くのか。

いやいや、マン・レイ、好きですよ。
そして、「マン・レイ展」が東京国立新美術館で開かれます。
7月14日から9月13日まで。

ぎえ~、うれしい!
行かなくては。

大阪国際美術館では、9月28日から11月14日まで。
詳細は、http://www.man-ray.com/にて見られます。


2010.05.29 / Top↑
うわ、木曜日は藤田まことさんの「必殺」の時のエピソードが語られる番組があったのに、見逃してしまった。
ガックリ。
今朝はちゃんとチェックしてたんですけどね。
あ~、残念!

時代劇専門チャンネルで「新・必殺仕置人」を放送しているのですが、その後、5分番組をやっているんですね。
その中で「座頭市 THE LAST」について、香取慎吾さんがインタビュー受けてました。


私は「座頭市」って、実はあんまり見たことがないんですね。
親があんまり見なかったんですよ。
「必殺」や「子連れ狼」は、見ていた記憶があるんですけどね。
逆にちょっと年上の友人は、親が「木枯し紋次郎」を見せなかったとぼやいていました。

子供には残酷だ、って思ってたらしいんですね。
それで、当時はビデオなんかなかったから、親戚の家に泊まるとか、そういうことがないと見られなかったと。
当時は子供だったから、やっぱり親が何の番組を見るかっていうのを決める力を持ってるわけです。

そんな、どうでもいい時に思ってました。
自分でやりたいこと、見たいもの、自分で自分のことを決められるのが、大人って思ってました。
働くようになって、自分で自分のことを決めて動ける自由を持っているってことは、いろんな意味で力を持っているってことなんだな、と思いましたけど。

いや、たかが見たい番組のことで、おおげさですね。
まあ、そんなこんなで私は「座頭市」ってあんまり、見てないんです。
だけど、勝新太郎さんの座頭の演技ってすごいと思ってました。
それから、あの殺陣ですね。


香取さんは、時代劇は「今の時代でないことをしているから難しい。例えば表参道で撮影していて、ちょっとここダメだから青山行こうか?なんてことはないし。作法もあるし」と言ってました。
抜いた刀を左に置くか、右に置くかなんてことにも意味があったり。
今の時代を生きている自分にはわからないことがたくさんあるけど、そういうところまで知っていくとさらに魅力があったりするそうです。


これを機会に時代劇専門チャンネルでは、映画「座頭市」を放送するらしいですが、こういう時、昔の作品が放送される。
「必殺」の時も感じましたけど、昔の作品を見られる、良い時代になったな~と思います。

「座頭市」で、ふと思い出したことでした。
全然「座頭市」の話じゃなくて、すみません。
でも、縁がなかった「座頭市」のラスト、ということなので、見ようと思います。


2010.05.28 / Top↑
第9話、「非行の黒い館は蟻地獄」。


「親バカは微笑ましいけれど、バカ親は迷惑」という友人の言葉を思い出した一編。
やっぱり、裏稼業の人間に子供、というと、こんな話もできる。
今度の「必殺仕事人2010」で東山紀之さん演じる渡辺小五郎に子供ができる、ということなので、それはどんな展開になるのかと思っても見ていました。

主水はある夜、「ふうてん横丁」でお加代という少女に声をかけられ、金を取られる。
「ふうてん横丁」は根津の芸者たちも入るな、と言い渡されているような場所。
1分という金を渡し、宿を探してくると言われて待っていたが少女は帰って来ない。

少女は金を大蔵屋の利兵エの息子・幸太郎に会っていた。
幸太郎は利兵エから小判を貰って来ては、この界隈で遊んでいた。
戻ってこない少女に騙されたと悟った主水。

同じ同心の神谷仙之助が見回りに来ているのに出くわす。
神谷はこの辺りをうろついている少年少女に、アヘンが売られていると言う噂を聞いて見回っていたというのだ。
その通り、おせいの知り合いの少女・お袖は女形の秀之丞にそそのかされ、お加代や幸太郎が待つ場所に連れて行かれると無理やり、アヘンを吸わされて死んでしまった。

お袖を行き倒れに装って始末したのは、虎河豚の権次だった。
だが神谷はあれはアヘンのせいだ、と見抜く。
アヘン追求に意欲を燃やす神谷だが、主水は面倒なことになったなあとつぶやく。

正八は足力屋の商売で、幸太郎の治療に行った。
母親にぞんざいな態度をし、何か甘いものが食いたいから羊羹でも買って来いと突き飛ばす幸太郎に、正八は「坊ちゃん、母親と言うものはもう少し大事にした方が」と言う。

「うるせえ」と言う幸太郎を乱暴にもんだ正八は追い出され、その際に幸太郎は父親は奉行所に顔が利く、正八をこの辺りで商売できないようにしてやると言う。
その通り、大蔵屋から奉行所にたくさんの道具の寄進がされていた。

神谷はお袖の調べから、東座の秀之丞に会うと言っていたことを突き止める。
アヘンの件で、神谷は秀之丞を捕えた。
瓦版は次は「たの次の役者ではないか」などと大々的に書きたてた為、世間は大騒ぎになる。

焦った幸太郎は秀之丞が自分のことを話したらどうしよう、と悩んでいた。
権次とお加代は父親が奉行所に顔が利くんだから、泣きつけと言う。
勘当される…と躊躇した幸太郎だが、しかたなく父親に打ち明ける。

「友達に誘われて…つい」と小さくなる幸太郎を殴りつける利兵エ。
出来心だから許してやってくれと言う母親。
このままでは大蔵屋の看板にも傷がつく。
利兵エは、秀之丞を釈放させなければと考える。

主水は神谷のことを正八に「まるで融通の利かない男で、何であんなにムキになるんだろう。律儀というか、生真面目というか、俺とはまるで生き方が違う人間だ」と言う。
神谷の熱心な捜査に主水は、「あんまり突っ走りすぎて、蹴つまづかなきゃいいけどなあ…」とつぶやく。
秀之丞を白状させようとしていた神谷だが、証拠不十分で秀之丞は釈放と決まった。

釈放された秀之丞にファンの女性は群がり、瓦版屋は殺到した。
気落ちしている神谷を、主水は蕎麦に誘った。
そして今度の一件は大蔵屋から圧力がかかった、と教える。

何であんなにムキになるんですか?と聞く主水に、あんたはアヘンの恐ろしさを知らんのですよ、と神谷は言う。
若い連中の間で流行っているが、放置しておけばどうなるか。
「まあ、あんたも子供ができるそうですが、いずれ子供を持てばわかるでしょう」。
神谷の言葉に複雑な気持ちになる主水。

大蔵屋に行った神谷は、自分はどんなことがあっても手を引かない、「必ず秀之丞のしっぽをつかまえて仲間の名前を吐かせてやる。おめえの倅にも首を洗って待っているよう、ようく因果を含めておくことだな」と言った。
神谷が帰った後、利兵エは「下っ端役人が」と吐き捨て、おろおろする幸太郎に「心配しなさんな。どんなことがあってもお前を町方の手に渡すようなことはしないから」と言う。

利兵エは秀之丞なんか信用できない、拷問にでもかけられれば口を割るに決まっている、と、秀之丞の口を封じることを考える。
「秀之丞を?」と言う幸太郎に、「何もお前が手を下すわけじゃないんだから」と権次にやらせるつもりで利兵エは言う。
ついでに神谷も、二度と動けないようにしてやる、と。

お袖の死に疑惑を抱くおせいは、正八に小遣いをやって秀之丞を呼んできてくれるよう、頼んでいた。
正八とおせいが金額のことでもめている間、神谷が秀之丞の後をつけて「伊呂波」という宿に入って行った。
いつものように部屋に入った秀之丞は、無防備に後ろから権次に殴り殺された。

「さあ、逃げよう」と潜んでいたお加代が飛び出してくるが、幸太郎は「おめえもなんだよ!」とお加代を押さえつける。
悲鳴を聞きつけた神谷は2階に上がり、逃げていく権次と幸太郎を見た。
死んでいるお加代を確認した神谷の顔色が変わる。
「か、加代!」

ふうてん横丁に溜まっていた人間が集まってきた。
アヘンを吸っていた人間がいる、と言う神谷に、ふうてん横丁の人間はそんなもの何も知らないと言う。
番屋では幸太郎を見た人間はおらず、神谷が飛び込んできたのを見た人間しかいなかった。

神谷が殺したのではないか?
そんな疑惑が持ち上がってくる。
そこに大蔵屋が倅を人殺し呼ばわりされたのでは黙っていられない、神谷のやり方は強引だと訴えてきた。
「きさまっ!」と神谷は憤慨するが、状況は神谷に不利になるばかりだった。

結局、2人を殺したのは神谷ということになってしまった。
だが、ひょっとして、アヘンでお袖も殺されたのではないか、とおせいは気にする。
主水は神谷を伝馬町に送るよう、言われる。
神谷の死罪が決まったのだ。

「とんだことになりましたな」と主水は牢の中の神谷に声をかける。
神谷は、自分は無実だが、信じてもらえるかと言う。
主水は「信じていないわけじゃないが」と言うと、神谷は言った。
「やったのは私じゃありません。実の娘を殺せるわけないでしょう」。
「実の娘?」

牢の中の神谷を見た主水に、神谷は「1年前に家出した私の娘、加代です」と言った。
主水に声をかけて金を騙し取った加代の姿が思い出される。
うなづく主水は、「じゃあ、あの子が」と言った。

「親不孝な娘でした。私の意見などには耳も貸さず、ろくでもない男たちと遊び呆け、揚句の果てにアヘンに手を出しました。父1人、娘1人の暮らしだったので厳しくしつけたつもりでしたが、それがかえっていけなかったんでしょう。
結局、娘は家を飛び出てしまいました。それから私は必死になって娘の行方を捜しまわりましたが、まさか…あんな姿で巡りあうとは」。

「神谷さん。あんた、それ、何でもっと早く言わなかったんだ。それさえ言ってりゃ、あんたの無実が証明できたはずじゃないか!」
「親として娘の恥じをさらすわけにいきません。それに…今さらそんなことを言ってみても誰も相手にしなかったでしょう。まして大蔵屋が一枚噛んでいる以上」。

神谷は言う。
「中村さん、私はもう命は惜しくはありません。ただ、ただ、一つだけ無念なことは、町方としての意地を通すことができなかったことです」。
「意地を?」

「何としても、大蔵屋の息子を獄門に送りたかった。それを果たせずに死んでいくことが無念でなりません」。
沈黙した主水。
じっと神谷を見つめる。

処刑の時。
両脇を押さえられた神谷の前に、首斬り役人が刀をかざす。
目隠しもしていない神谷が目を閉じる。
見つめる主水。

「中村さん、お願いがあるんですが」。
夜道を歩く主水に、神谷の声が蘇る。
八丁堀の組屋敷に加代が昔、大切にしていた人形があるので、それを自分と一緒に墓に埋めて欲しいと神谷は主水に頼んだ。
主水が暗い神谷の屋敷に入ると、人形が飾ってあった。

主水が人形を手に取ると、人形から小判や小銭が落ちた。
それを拾い集めると、主水は正八の灯台に向かう。
しかしおせいは、仕事はきっちりやるが、自分たちにお役人の敵を討てというのか、と言う。

何か不服があるのかと言う主水に、役人の敵討ちをするつもりはないと言う。
ある娘の為に、この仕事を引き受ける、とおせいは言った。
お袖も幸太郎にやられたのだろう。

誰の為だろうが仕事の相手は同じだ、「師匠やってくれるな」と主水が言うと、おせいはうなづいた。
仕事の相手は大蔵屋、息子の幸太郎、権次に間違いない。

正八は女形に化け、権次に会いに来た。
市川座の正之助と名乗り、出てきた権次に「あたしもあれ、やりたいのよね」と話を持ちかけた。
今はやばいと引っ込む権次に正八は、「お金ならあるのよ」と小判を見せると。権次は「来な」と言って正八を連れて行った。

権次は夜鳴き蕎麦の屋台に正八を連れて行った。
「どうしてお蕎麦なんて食べるの?」と言う正八を座らせようとした権次を「あたし、右の方が好きなの」と権次を暗い、道の端の席に追いやった。

「お望みならいくらでも用意するからよ」と言う権次の背後、すだれに隠れた暗闇に新次が潜んでいる。
正八は権次に、「あら、ちょっと顔見せて…」と言って、「わあ、好き!」と迫った。
身をそらし、すだれに近づいた権次の首筋を、新次の櫛が捕える。

首筋を刺された権次は絶命し、新次は密かに闇に消える。
それを確認した正八の前に、蕎麦が2つ出される。
「さあ、できたわよ、いただかなくっちゃ。どうしたの、食べないの?病気?」と言って1人、答えない権次を前に食べ始めた。

その頃、大蔵屋は幸太郎を連れて、お座敷遊びをしていた。
芸者に囲まれて、幸太郎はご機嫌だった。
もうくだらない遊びはやめて、お座敷遊びを覚えなさいという利兵エに「うん、こっちの方がおもしろいよ」と幸太郎は答える。
酒を勧められ、幸太郎は酔ったようだった。

酔い覚ましに外に出た幸太郎をおせいが見ている。
物陰にいるおせいは、人が通ると顔を隠す。
大蔵屋と幸太郎がやってくる。

出てきたおせいは大蔵屋に挨拶し、だらしなくおせいに抱きついた幸太郎を「あら、あたしが送りましょうか?」と言った。
「そんなお手数かけさせてよろしいんですか」と言いながら先を歩く大蔵屋。
その後を幸太郎を支えながら、おせいは歩く。
「いい息子さんになられて」と言うおせい。

息子に今度、端唄のひとつも教えてやってくださいよと言う大蔵屋は先に角を曲がり、おせいは酔っ払った幸太郎と川のほとりで立ち止まった。
ゆらゆらと揺れ、輝く水面がおせいと幸太郎を照らす。

うつむいている幸太郎を、おせいは脇から刺し貫く。
酔っ払っている幸太郎が身を起こす。
おせいが、幸太郎を突き飛ばす。

幸太郎がいないことに気づいた大蔵屋が、「幸太郎?お師匠さん?」と呼んでいる。
その時、幸太郎がフラフラとやってきた。
「幸太郎」と安心した大蔵屋だが幸太郎は大蔵屋に寄りかかる。
「しっかりしなさい」と言った大蔵屋だが、幸太郎はそのまま、倒れる。

幸太郎が死んでいるのに気づいた大蔵屋は幸太郎の名を呼びながら「誰か!誰か!」と悲鳴をあげた。
腰を抜かしている大蔵屋の前に、主水が現れた。
「中村様!」
大蔵屋が「幸太郎が」と言った途端、主水は刀を振りかざす。

横に払い、大蔵屋の足に斬りつける。
「ひえっ」と言って大蔵屋はひざまづく。
「あっ、あっ」と声が出ず、大蔵屋は川の方へ這っていく。

川を前に座り込んだ大蔵屋の前で、主水は刀を川に、水しぶきを上げる。
頭を川の前に伏せた大蔵屋の目の前に、刀をかざす。
大蔵屋の首に刀を当て、大蔵屋を上に向かせると主水は言う。

「大蔵屋。神谷さんの恨みを俺が晴らしてやる」。
刀をかざされる神谷。
神谷は毅然としている。

身を縮ませた大蔵屋の上に、主水は刀を振り上げる。
大きな水音がした。
川面がゆがみ、映っていた主水の姿も歪む。

おせいが物陰からじっと見つめている。
水の輝きと揺れが、おせいを照らしている。
大きな水音が収まる。
おせいが立ち去り、主水も無言で立ち去る。



この話は1978年当時、芸能界の麻薬汚染が話題になった時の話だそうです。

大蔵屋は藤岡重慶さん。
この方も濃い悪役を演じてくれた、名優さんですよねー。
どすの利いた役から、今回みたいなちょっと品の良い悪党まで、悪役の幅が広い!

そして、権次役は必殺の各シリーズで一回は出番があるんじゃないか?というぐらいの悪役さん、江幡高志さんです。
「仕置人」では天神の小六の側近役なんかやっていましたが、その後は、も~、よく仕置きされてくれて。
大好き。
素顔はゴキブリも殺せないほどの、気の優しい方だそうです。
大河ドラマ「新選組!」では、日野時代の土方さんと一緒に薬売って歩いてる役でした。

いい味出してましたね~。
今度は殴られる役でしたけど、殴られている間、女のことを思っていたと語る。
それで、殴っている奴に対して「ざまあみろ!」と言う。
江幡さん、もっと見たいーと思いました。

この2人がはめる、真面目な同心は滝田祐介さん。
きりっとしていて、いかにも自分にも娘にも厳しいだろうな、という同心。
主水は「生き方が違う」と言いつつ、どこか心配している様子。

何度も真面目な捜査を打ち切られた主水が、神谷を蕎麦に誘う。
かつて、お役目に真面目に燃えていた、そして挫折した主水ならではの気遣いが見えます。
主水は別の道を見つけられましたけど、神谷は見つけられない。

そこでまた神谷に「あなたも子供を持てばわかる」と言われ、裏稼業の人間としても、表稼業の人間としても複雑な主水。
神谷が譲れなかった理由を主水が知るのは、最後の最後。
自分と同じ挫折を味わい、ついに殺されてしまった神谷、主水にわかるその無念。

いいかげんな同僚である主水に人形の件を託す神谷。
それは最後に会話するのが主水だから、という理由だけではなく、どこかに、ギリギリになった時、この人には大切なことを頼めると思わせるものが主水にはあるんでしょうね。
人間味を感じるんじゃないでしょうか。

でも、このお加代という娘、どうしようもないまでの深みにはまってましたね。
一時の遊びではすまない、一生ダメにするところまで…。
きっと真面目な父親に反発していたんでしょうけど、秀之丞を殺害した時なんか思い出すと、悪にはまっていたな、と。

今回、解説にもありますが、親の気持ちというのがテーマでもありましたね。
大蔵屋もバカ親だけど、幸太郎がかわいい。
神谷は毅然として対処するけど、娘への愛は深い。
そして、親となる主水は、神谷の親としての気持ちを思わずにいられない。
で、全然それをわからないのが幸太郎とお加代の2人の子供。

いつもは調べを念入りにする主水だけど、神谷への信頼も、親としての気持ちもあったのか、あっさり仕事決めるし。
そんな個人的な思いにとらわれたような主水に何となく反発を感じたおせいは、仕事に際して一言言わずにはいられない。
「あんたの為じゃないからね」って。

仕事は正八のサポートが何とも楽しい。
白塗りの正ちゃん、どこかかわいい。
席を向こうに追いやったり、迫ったり、新次をちゃんとサポートする。
さすが、「仕置人」。

しかし、権次が死んだ後、1人で食べて、1人で立ち去ったんでしょうかねえ。
「どうしたの、食べないの、病気なの」っておかしい。
そういえば、潜入捜査してくれと言われたおせいと金額でもめてるのがおかしい。
「足力屋の方が実入りがいい!」
「わかった、わかった」って。

それから、正八の、幸太郎への「母親は大事にするもんだ」という言葉。
継母が嫌いだったと「仕置人」で言っていましたからね、やっぱり何かいろいろと、ドラマには描かれないけれど、正八の生い立ちというものを考えてしまいます。
描かれない部分まで思わせるってことは、やっぱりいいドラマ、いい登場人物なんですよね。

幸太郎を仕置きして、主水の仕置きを見ているおせい。
主水の仕置きが凄まじい。
大蔵屋の足を斬りつけ、立てないようにする。
昼行灯として、怒られている主水しか知らない大蔵屋はもう仰天。

這っていく大蔵屋の前で、川の水で刀を洗う。
大蔵屋の首に刃を向けて、上を向かせる。
「神谷さんの恨み」と、はっきり教えてやる。
はっきり、これは処刑だと教えてやる。

まさに神谷がされた処刑の姿勢にして、主水は大蔵屋を仕置きする。
この時、神谷の姿の映像が入ってくるのがうまい。
毅然とした神谷の姿が。

大蔵屋を斬ったのは、川面が乱れることでわかる。
そして、大きな水音。
おせいが黙って見ているけど、あの後、新次に「中村主水ってのは怖ろしい奴だね」とでも言いそうな顔をしてます。

結局、「親不孝」の果ての結果となった今回の仕置きで、これから親になる主水は何を思ったのか…。
父親として、役人として、恨みを晴らした主水の姿でエンディングです。
これも見る方に余韻を残すと思います。


2010.05.27 / Top↑
恨みをはたすと生まれけむ 復讐せんとや生まれけむ
をんるの道は遠けれど恨みの川に棹差して 因果の渦に身をゆだね
その名は朱菊 恨みの子


第8話、「夢売ります 手折れ花」。
藤村志保さんの演じる菊の悲しい美しさ、おせいの女仕置人としての腕、主水の強さが楽しめる一編。


江戸で大評判の絵草子、美しい女性・菊の復讐談。
元・絵草子屋の正八も夢中。
しかし、正八はある夜、岡っ引きのまむしの六助と呼ばれる男が、北岡菊という美しい女性に斬り殺されるのを目撃する。
無実の罪を着せられた父母の恨みを晴らす菊の話は、実話だったのだ。
叔父に育てられて20年、菊は父母の復讐の為、生きてきた。

20年前、菊の父母を陥れたのは、父と同じ北町奉行所の同心・谷口弥三郎。
父の徹之進は弥三郎と豪商・大和屋儀兵衛の不正を暴こうとして殺された。
それに当時、大和屋の女中だったおしのが悪事に加わっている。

絵草子を恐れた彼らは、六助を使って絵草子の版元と著者を調べていたところだった。
菊に惚れこんだ正八は主水に調べてもらったところによると、菊の叔父は足立竜人といって、寺で住職をしている。
元・絵草子屋だった正八は、闇のご禁制の絵草子のつてで、この叔父が作者であり、版元であることを突き止める。
そして、菊もそこに密かに住んでいた。

しかし、弥三郎たちの追求は迫ってくる。
お菊を守ってやってくれと仲間に訴える正八だが、新次は菊よりも先に、足立竜人が危ないと言う。
それを聞いた正八は寺に走る。
叔父は自分が突き止められたことから絵草子の最後の巻を菊に託すと、菊を逃がす。

これで最後だ。
菊の復讐はこれで終わるのだ。
絵草子には、菊が親の仇を討つ場面が描かれていた。
一時、避難した菊は寺に戻ってくるが、そこには竜人の死体があった。

自分を育ててくれた叔父さえも、弥三郎に斬殺された。
追っ手も迫ってきた。
叔父も殺された。
もはや、これまで。

弥三郎たちがいる屋敷へ乗り込もうとする菊。
「ダメだよ!俺、あんたに死んで欲しくないんだ」と止める正八。
しかし菊は毅然として、「誰にも邪魔はさせません」と正八さえも斬る構えを見せる。

そして正八に「殺されはしません。私が殺すのです。長い間、そのことだけを思い、その為に私は生きてきました。それしか私にはないのです。私が死んだら父上と母上のお墓に…」と正八を振り切り、屋敷へ向かう。
仇をとろうとする菊を、正八は止められなかった。
銃声と共に菊の花が散り、血に染まる。

弥三郎、儀兵衛、おしののいる屋敷に乗り込んだ菊は待ち受けていた弥三郎の銃の前に倒れた。
そして、弥三郎が不届き者を斬ったということで終わってしまった。
卒塔婆を立て、正八は菊を弔ってやる。

「みすみす俺が殺しちゃったようなもんだ」と言う正八におせいは、「誰も止められなかったよ。長い間、燃えたぎらせてきた恨みだもの」と慰めた。
「この話もとうとう未完のまま、おしめえってことか」と言う主水だが、正八は「冗談じゃねえよ、さっそく仕事の段取りにかかってもらうぜ」と言う。
「仕事?」
「そうだよ、やるんだ!金のことだったら心配いらねえぞ。お菊さんがちゃんと仕事料残しておいてくれた!」と言う。

「お菊が?仕事料を?!」
「最後の巻の下書きだよ!」
みんな読みたがっている、結末を知りたがっている。
絶対売れる!と正八は言う。

だが、問題は挿絵だ。
おせいは春洋という、かねてからおせいの絵姿を描きたいという下心一杯の絵師を知っているが、ずっと袖にしていた。
しかし正八に懇願され、モデルになることを承知する。
主水が最近はこの手の本に対して取締りが厳しいと言うことから、地にもぐっての闇文庫だ。
「ようし、こうなったら最後まで台本どおりやってやろうじゃねえか」。

元・絵草子屋の技術を生かし、正八は絵草子を刷る。
おせいをモデルに匕首を手にした菊の姿を描いて挿絵を入れ、正八は最終巻を完成させた。
街角で密かに絵草子を売る正八に江戸の庶民は待っていたと飛びつき、絵草子は飛ぶように売れた。
弥三郎たちは庶民たちから絵草子を取り上げ、回収にかかる。

回収した絵草子は燃やされていた。
「景気よく燃えてくれますな」。
「これでやっと、あの頃のことも灰になって消えてくれるわ」。
そう言って屋敷内に入った3人。

庭から火のついた絵草子が、障子に投げつけられる。
絵草子は音をたてて、廊下に落ちる。
「なにものだ!」
廊下に出て庭を見る3人に、おせいの声が聞こえてくる。

「恨みをはたすと生まれけむ 復讐せんとや生まれけむ。
をんるの道は遠けれど恨みの川に棹差して 因果の渦に身をゆだね
その名は朱菊 恨みの子…」。

庭におせいがいる。
菊と同じ扮装をしたおせいの姿に、同心・谷口弥三郎が「お菊!」と声をあげる。
おしのが悲鳴をあげる。
大和屋儀兵衛が「ああ」とうろたえて、部屋に逃げ込む。

弥三郎が銃を発射し、おせいの刺していた傘の柄が折れる。
傘が舞う。
銃声がもう一つ、二つ。
同時におせいがすばやく、縁側に走りあがる。

用心棒たちが、廊下を走ってくる。
その先にうつむき加減の主水の横顔。
主水が振り向く。
燃える菊の絵草子。

剣を抜いた主水が、横になぎ払い、1人。
縦に振り下ろし、2人。
すれ違いざま、3人。
刀を合わせる合間もなく、倒れる用心棒。
一瞬、ひるみ、襲い掛かってくる4人目を横に払った刀で斬り、やってきた5人目を抜いた刀で斬り払う。
トドメに背後からもう一撃。

逃げるおしのの首を、飛んできた新次の帯が捕える。
喉をかきむしるおしのが引き寄せられると、おせいが匕首で刺す。

弥三郎が銃を発射する。
おせいがふすまを閉めて姿を消し、弥三郎を惑わす。
新次の櫛が飛んできて、弥三郎の銃の撃鉄を抑える。

匕首を手に切りつけようとする儀兵衛を、おせいが横から斬る。
反転した儀兵衛の首筋を斬り、さらにおせいに背を向けたところを上から刺し貫く。

儀兵衛から匕首を抜き、弥三郎に向き合ったおせいは言う。
「北岡菊。仇敵を倒すまでは不死身!」
おののいた弥三郎が櫛を払い、銃を構える。

「誰だ、貴様たちは!」
おせいは答えず「谷口弥三郎。お前を殺す」と言った。
「バカな」と言いながら撃鉄を起こす弥三郎。
後ろに下がっていく弥三郎の手を、障子を破った新次の手がつかむ。

銃を発射できないまま、弥三郎はおせいの方へ投げ出される。
絵草子の絵のまま、おせいは弥三郎を上から斬る。
悲鳴をあげた弥三郎を、再び下から斬る。

お菊の絵が燃えていく。
すっかり燃えて、灰になった絵草子が風に舞う。
それを見たおせいが出て行く。

仕置きが終わったおせいは汚れを洗い流すかのように手を洗い、新次に明日、髪を結いなおしてくれるよう頼む。
新次は帰って行く。

主水が家に戻ると、せんとりつがお菊の復讐談の最終巻を読んでいた。
「天下泰平の世なれど悪徳不正の数々、留まるところを知らず、然れどもここに1人正義の士あり。北町奉行所与力・北岡徹之進なり…」。

美しい菊の復讐話にうっとりするせん。
菊はまるで、自分の若い頃のよう…。
それを聞いた主水は思わず笑い、せんに鋭く「さっさと召し上がって早くお休みなさい!」と冷えた夕飯を食べさせられる。
「この欝し世に忽然と現れ出でたる修羅の女ありき。舞い降りたる天女か、地獄の死者か、類稀なる美形な、お菊という…」。
黙って冷えた夕餉を前に、それを聞いている主水。




「木枯し紋次郎」4話の「女人講の闇を裂く」では、紋次郎に密かな恋心を抱いたと思われる藤村さんです。
ここでは凛として美しいです。

NHKの朝のドラマで、元・芸者さんの役をしていましたが、藤村さんを本物の踊りの名取りと言っても通る…というぐらい、お年を召しても背筋が伸びて美しいです。
今でも凛としてお綺麗です。

菊の復讐は、これは解説にもあり、私は後で実感したのですが、梶芽衣子さんの「修羅雪姫」ですね。
ただ、やっぱり菊の復讐は無理だった…。
菊を止められなかった正八が、昔取った杵柄で、絵草子を作っちゃう。
「新・仕置人」で正八が絵草子屋を営んでいた設定を知っていると、余計楽しいです。

懐かしいですね、正八が一生懸命、絵草子を刷る姿。
自分の為にがまんしてモデルをしてくれたおせいの姿に、「師匠、綺麗、綺麗、きれーい!」って。
かわいい。
結局、正八の為に動いてくれるのはこのかわいらしさのせい、と思うほど。

仕置きシーンは、情緒たっぷりに始まります。
投げつけられ、音を立てて落ちる絵草子。
燃える絵草子に廊下に出た3人に、おせいの声が重なる。

銃声と共におせいが走り、殺しのテーマの音楽が始まる。
このテーマは音楽だけ聞くとピンと来ないかも知れないですが、迫力ある仕置きシーンの始まりと共に流れると、すごくいい。

おせいが走りこんだ部屋に向かって、走ってくる用心棒たち。
主水登場。

横顔から正面を向くと、走ってくる用心棒たちをすれ違いざま、あっという間に次々斬り伏せる主水。
強い。
ものすごく強い!
鬼神のよう。
無敵。

おしのをやるのかと思わせて、サポートに徹する新次。
恐怖にかられた儀兵衛も、おせいが見事に斬る。
おせいさんも強い。
戦闘能力、相当高い。

「江戸プロフェッショナル」というタイトルどおり、菊さんも復讐に頑張ったけれど、やっぱりおせいはプロなんだなと実感。
弥三郎の目をふすまで惑わせ、銃弾をかわす。
いや、そこらの男じゃ、勝てません。

銃を向ける弥三郎の撃鉄を、櫛で止めるって新次の技もすごい。
追い詰められた弥三郎が誰だと叫ぶと、返すおせいの言葉がいい。
「北岡菊、仇敵を倒すまでは不死身!」

かっこいいですよー。
恨みは死にませんよー。
それで弥三郎も、菊を名乗ったおせいに殺させる。

新次の殺しがなかったり、主水の殺しがなかったり、殺しの順番はその時によって違う。
でもすごい満足度高い。
1人1人、それから順番などの「お約束」の楽しさもありますけど、そうではなくても十分楽しめる。

「商売人」って大人っぽくて、しっとりしているのに、仕置きがものすごくスピーディーで、躍動的。
まさに「江戸プロフェッショナル」。

エンディングは尺の関係で「夢ん中」のイントロが流れるらしいんですが、これが物語の終わりを告げるのが時に楽しく、時に切ない。
地味な印象の「商売人」ですが、みなさん、なかなかカッコイイ。
「新・仕置人」とは、また違った良さがあります。
この違った味を作れる当時のスタッフさん、俳優さんたちを、本当にすごいと思うばかりです。


2010.05.26 / Top↑
第21回、「故郷の友よ」。


収二郎、切腹。
海軍養成所で頑張っているように見える龍馬、しかし惣之丞や長次郎には土佐の出来事が龍馬に、自分たちに重くのしかかっているのを知っている。

勝先生をマッサージしながら、この前まで勢いを持っていた攘夷が弾圧されている状況に、一体何が日本を動かしているのかと質問。
天子様が攘夷攘夷と世間が騒いだのは、帝を取り囲んでいる連中が攘夷派の長州だったからだ。
だが今は、攘夷をよしとしない薩摩が割り込んできた。

「我ら薩摩は異国と戦なんぞせずとも、日本国を守る手立てを考えております!」
全ては帝が長州と薩摩、どちらの考えをとるかにかかっている。
では半平太や以蔵はどうなるのか、と言う龍馬に、今龍馬は何をするべきか、余計なことを考えている暇はないんじゃないか?と言う勝先生。

その頃、土佐では半平太は絵ばかり描いていて、坂本家を訪問している富もこの状況に不安を隠せない。
そこに弥太郎が、材木が一向に売れないとやってくる。
何でいちいち来るんだと言われても、出資してくれたのは坂本家なんだから来るのが当然、と弥太郎。
売れてから来いと言われても、平気なんですね。
いや、心の拠りどころ。

そして坂本家にいるのは半平太の奥方と聞いて、いやいや、あの堅物がこんな綺麗な奥方を…ってそりゃお宅もですわ。
半平太は京都では肩で風を切って歩いていたが、今はすっかりしおれたホオズキみたいらしいのう、侍なんかやめて、わしと一緒に材木売らんかーと言う弥太郎。

「どういてそんな嫌味を言うが!」と坂本家の女性たちは憤慨。
弥太郎はこれは思いやりじゃ、と言い張る。

お茶くれと言った弥太郎にお茶を持って来た姪っ子に、「大人になったらわしの優しさがわかるがぜよ」と言ったが、お茶があっつ、あっつーい!
ええ、ぬるいのはいかんぜよと言ったので、思いっきり熱くしておきました、って。

今日は雀の絵を描いていたと言う半平太、以蔵のことを心配する。
そういえば、都会で雀が減っているんですってね。
今や追われる身となった以蔵の行方を捜す龍馬は、飯屋のなつのところへ。
しかし、以蔵はなつのところから逃げたまま。

そしてついに御上の決断の時。
御上はかようおおせになられました、と。
「確かに攘夷実行の勅命を出した。しかし、御上はただ、犬猫が嫌いなように異人がお嫌いなだけ。ほんまに戦をしかけてほしいとは思うていなかった、と」。
この瞬間に朝廷の攘夷派、三条実美様たちは失脚。

文久3年8月18日。御所堺町門に1千の長州兵平が押し寄せ、薩摩他、6千の兵とにらみ合った。
これが8月18日の政変。
「長州はもう、用済み。」と薩摩兵に言われる長州の兵たち。

頭に血が上った長州の兵を「どこに向かって撃つ。御所に向かって撃てば、お前らは朝敵!」と桂小五郎は止める。
久坂玄瑞は歯軋りして、攻撃を諦めるしかない。
京都を追われた攘夷派の公家たち7人は、長州に落ち延びるしかなかった。

自分たちの心情を歌に詠みながら、雨の中、長州に落ち延びて行く三条実美様たち。
薩摩と長州は憎みあい、殺しあうほどの関係となった。

まあ、ざっとの描写ですけど、これでこのドラマでは良いってことで。
帝の言葉も、何だか「えーっ、それってあり?!」みたいな感じですが、はい、ドラマはさっさと前に進みます、ということで。

この状況を聞いた山内容堂様は、高知城で高笑い。
「やっと、時が来たがじゃ」。
「大殿様は、攘夷が廃れることをわかっちゅうがですか?!」と言う御側近にさっそく「土佐を出ちゅう勤皇党の者どもに伝えや。ただちに帰国せい!と」。

さすがの象二郎も「お、怖ろしいお方…」と息を詰めて見つめる一方、これから憎き土佐勤皇党を叩き潰せる!と口元が笑ってしまうのを抑えきれない。
命令に従わないものは、脱藩者と見なす!ということ。
この報せは半平太にも届き、土佐勤皇党はどうなってしまうがですか!と言われる。

戻ってきた勤皇党の者を前に、半平太は「攘夷の火は消えてはおらんぜよ!わしらは何も間違えちょらん。大殿様を信じや。わしら土佐勤皇党は山内容堂公の為に命を捨てても、異国を叩き潰すがじゃ!」と檄を飛ばす。
勝新太郎は「国許から帰国命令が来ている者がいるだろうが、帰ることは許さない!日本の為に海軍を作ろうとしてる、藩の為じゃない!だから…帰るな!」と勝塾で言う。
「今は負けるが勝ちじゃ!」。

若者を、みすみす死なせるとわかっていて、帰すわけにはいかない!という勝先生の思いがひしひしと伝わってくる。しかし、勝先生も幕府の要人に、勝塾にも攘夷派の者がいるが、帰した方が身の為では?と言われているんですね。
だけど、帰らなくては脱藩者となる。
悩む長次郎に龍馬は、確かに横井小楠の言う通りなんだ。
でも、攘夷派が失脚したからって、何で武市たちが罪人になるんだと言う。

長次郎は日本の為に働きたいと思って、勝のところに来た。
そして侍にしてもらった。
だからもう、土佐には戻らない。

半平太たちは元から侍だ。
「何があろうと覚悟はできちょったじゃ、ないですろうか」との長次郎の言葉に、龍馬は「その通りじゃ。おまんの言う通りじゃ。けんど…、そうじゃけんど…!」と行き場のない思いを抱えるばかりだった。
そう、長次郎でさえ、戻れない道だと覚悟して来ている。
だったら武士の半平太なんて、もっとわかってたことじゃないか…と思っても。

その頃、弥太郎は穴が開いている家に材木を売ろうとして断られていた。
オマケの仏像も断られ、「もういかん…、もういかん」と座り込んでしまう弥太郎。
弥太郎の目に牛が、ニワトリが入ってくる。
頭がクリアになり、立ち上がった弥太郎は「家の修繕はわしがやっちゃる!材木代だけでええぜよ!これならどうぜよ!」と叫んで、再び材木を売り込みに行く。

その帰り、弥太郎は、城を見上げる半平太を見た。
「さっすがじゃ。お城を見上げて忠義を誓っちょったか~」と嫌味を言う弥太郎。
材木を乗せた車を引きながら、「これを売りゆうがじゃ。わしゃ、商売で、身を立てると決めたがじゃきにのう」。

そして、手を前にストップ!の形にして、「言わんでもわかるが、『弥太郎!おまんには侍の誇りはないがか!』そう言うて、説教する気じゃろう。そんなものわしにはないぜよ」と言う。
「わしは刀よりそろばんを信じちゅう。商売で出世するがじゃ」。
遠い目をしている半平太は、「そうか、わしは…今までおまんのことをばかにしちょった」と本音を言う。
「けんど、おまんのような人間がおっても、ええがかもしれん」。

初めて、半平太が武士以外の道を、弥太郎を認めた。
もう、それは破滅を自覚した、死を前にした人間の言葉だった。
「おまんの女房は気立てが優しいらしいのう、早う子供を作りや」と言って去って行こうとする半平太。
すると、弥太郎が言う。
「今日、やっと材木が売れたがじゃきに。初めて60文稼いだがぜよ」と。

見栄や強がりを言っていた弥太郎が、初めて半平太を前に、自分の苦しい境遇を口にする…。
「おまけいうがは物ではのうて、人の気持ちや言うことも知ったがやきに」。
順調になんてやっていない。
だけど、前に進める日もある。
そんな日が来るんだ。

そんな思いがこもっているような弥太郎の言葉。
「平井収二郎に腹を切らせたが、大殿様じゃろう。くやしゅうないがか?理不尽とは思わんがか?それでもまだ大殿様を慕とうちゅうちゅうがか?」
そうだ、弥太郎は、龍馬暗殺に使われた時、下士への理不尽さ、武士というものに、ほとほと、愛想が尽きたんだっけ。
「武市さんは今、つらそうな目えであれを見ちょったがぜよ!」と城を、天守閣を指す弥太郎。

後姿の半平太を振り向かせて、弥太郎は叫ぶ。
「わしのような人間がおっても良いと思うなら、武市さんも好きに生きてみいや。正直に生きたらええがじゃきに!」
しかし、半平太はもう、こう言うしかない。
「わしは正直にいきちゅう」と。
「忠義を尽くすがは、侍にとって当たり前のことぜよ」。

もう、自分は変われないのだ。
土佐勤皇党の人間をそのままに、自分だけ変わることはできない。
上に立ち、そして藩を動かす夢を見た自分に残された道はない…。

半平太を待つ運命を知っている弥太郎は、もう、助けてやれないことを感じる。
「おまんのことなんぞ、わしゃどうでもいいがやき、勝手にしいや!」と言うしかない。
半平太のエールを感じた弥太郎の顔が歪む。
前に進むしかない半平太を見送る。
たぶん、これが憎まれ口をききながら、子供の頃から同じ土地で過ごしてきた同士の最後の別れとなることを、2人知りつつ…。

さて、龍馬は勝先生に以蔵を探しに行きたいと申し出る。
以蔵は助けを求めている、わしにはあいつの声が聞こえるがです!
「わしには鐘の音しか聞こねえな。もうすぐ、そこここで殺し合いが始まる。京都の町は、血に染まるぜ」と勝。
しかし、山内容堂公は必ず、半平太を投獄する。
土佐に戻りたい、故郷の友をただ見ているわけにいかない…と龍馬。

すると、勝先生は「土佐に帰ってお前さんに何ができるね!」と一喝。
武市に土佐から逃げろというのか、それとも容堂公に「私が間違っていました」とでも言わせるのか!
そう、それは半平太の人生の否定。
死んだ収二郎への冒涜…。
そんなこと、そんな恥辱を友人に味合わせるな!って。

でも、でも!自分だけ安全にここにいて、何もしないなんてそんなことできない!と言う龍馬。
あの、ルバングから帰って来た小野田さんもおっしゃいましたね。
逃げたっていいけど、でもそうすると、その後の人生に胸が張れなくなるんですよ、そんなのつらいでしょう、嫌でしょうって。

だが、勝は、「武市はもう覚悟してるよ。友達と言うなら、あいつの生き様をみとどけるしかねえ!」と言う。
たとえ罪人になろうとも、龍馬と道は違っても、彼らの熱い思いや、日本や土佐を思う気持ちだけは知ってやろう。
そして、認めてやるんだ。

龍馬の顔を見つめて、「坂本龍馬は俺が見込んだ男だ!日本の為、日本の将来の為、大いに働いてもらうため、弟子にしたんだ。かわいい弟子をここで殺されてたまるか!」と言う。
「待ってるよ。待ってるよ!」と。
半平太への友情、勝先生の師弟愛に涙するしかない龍馬。

その日の朝。
富と朝餉の最中、半平太はふと、龍馬のことを思い出したと言う。
あいつがおったら、どう言うかと思った、と。

勤皇党のみんなに、わしは攘夷の火は消えてない、と言った。
自分を信じるみんなに。
そこに龍馬がいたら、何て言ったか。
まだ言いよるか、と叱っただろう、と。

「わかっちゅう…。いつの間にやら、何もかにもが変わってしもうた。けんど、みんなぁには言えんぜよ。みんな…わしを信じてついてきてくれたがじゃきに。今…、わしが泣き言を言うたら…」。
半平太の声が詰まる。
「わしらは何の為に生きてきたがじゃき。みんなあ、思うぜよ」。
そう、だから言えなかったんですよね…。
弥太郎にも、龍馬にも。

でも龍馬がいたら、とめてくれたかもしれない。
止まる口実ができたかもしれない。
「わしは己の生き方を貫くことしかできん。龍馬や…、弥太郎のようには…。生きられんがぜよ」。

「それでええがです。それが私の旦那様やきに」と富は言う。
「富…。おまんにだけは、謝らんといかん。子もおらん、2人きりの家に、わしはおまんをいつも1人にしちょった。寂しい思いをさせちょった。申し訳なかったのう」。

初めてそんなことを言う半平太。
「何を言われます。子ができん嫁は、追い出されるのが当たり前じゃきに、おまさんはいつも私に優しゅうしてくれました。私は一遍も寂しい思いをしたことはありませんきに」。

富さんて、良い奥さん…。
つまり、半平太だって良いだんなさんだったんですよね。
「私はおまさんの妻です。おまさんを支えるがが役目です。外で泣き言が言えんかったら、どうぞ私に言うてつかあさい。私に本当のおまさんを見せてつかあさい」。
2人の、最後の時が近づいている…。

半平太は「これからは2人で過ごすがぜよ。夏が終わる前に桂浜へ行こう」と言い始める。
秋になったら…と言いかけた時、ついに捕縛の役人が戸を叩く。
その呼び声には答えず、「紅葉狩りじゃのう」と続ける半平太。
まるで、富との幸せな時間を邪魔されたくないように…。

「温泉に行ってもええ」と言う半平太。
「大殿様の命である、神妙に出てまいれ」と言う大きな声が響く。
「冬になったら」と続ける半平太。

「どこにも行かんとここで2人で過ごしたいがです」と富さんが言い、「そうか、そんならそうしよう」と半平太が言った途端、戸が破られ、捕り方が入ってくる。
「聞こえんかったのか」と言う役人に、半平太「聞こえちょりました。けんど、妻と朝餉をしておりました」と。

向かい合っている朝のお膳。
静かな風景。
刀は預かると言われ、「ちくと出かけてくるきに」と立ち上がる半平太。
「はい」と答える富。
いつものように夫に羽織を着せ、送り出す富さん…。

ぐっとこらえて、出て行く半平太に「行ってらっしゃいませ」と指をついて送り出す。
振り向く半平太。
「さっさと歩きや!」と役人が声をかける。
富は玄関で、見ている。

振り向けば、主人のいない朝の前。
文久3年9月21日、武市半平太捕縛。
土佐勤皇党は全員、捕縛された。
芸者の踊りを見て、お酒を傾けている容堂公。

地べたを這いずり回り、逃げている以蔵。
路地に逃げ込んだ以蔵は、子供の落し物を拾って追いかける龍馬を見た。
龍馬は以蔵を探しに来たのだ。

その頃、弥太郎は、材木が全部売れた!とお金を家に投げ出していた。
「でかした!」
歓声があがる岩崎家。

「りょうまあ!りょうまあ!」と叫んだ以蔵の目に、浅葱色の羽織を来た男たちが映る。
刀を抜いて迫ってくる男、その後ろにもう1人。
逃げようとした以蔵だが、反対側からも1人、やってくる。
逃げる以蔵はまるで野良犬のように、追い詰められようとしていた。




いや、今回は半平太の、身近な人たちとの最後の別れというのがあったので、切ない、そして今までのまとめ的な良いシーンがありましたね。
まとめざるを得ない、最後が近づいて来ているんですけど、龍馬とは対照的な人が、ああいう去り方をしていく。

「武市はもう覚悟してるよ。友達と言うなら、あいつの生き様をみとどけるしかねえ」。
たとえ罪人になろうとも、道は違っても、彼らの熱い思いや、日本や土佐を思う気持ちだけは龍馬たちと同じだった。
だから、友達なら、生き方が交差した相手なら、それを見つめて、それを認めてやるんだ。

日本を守る気概気がない政治家と違って、日本を守ろうとしていたことには違いない。
ただ、やり方が時流にそぐわなくなってしまっただけで…。

互いを認めた時が別れ、というか、半平太は弥太郎と永遠の別れに直面して、初めて彼の存在を素直に認められた。
龍馬や弥太郎の柔軟さ、そして打たれ強さ。
プライドを横に置いておける弥太郎のようには、生きられなかった。

常に人の上にたち、尊敬され、人を導いていくような存在になる、そんな生き方しかできなかった自分。
香川さんと大朋さん、良い俳優さん同士の、良い演技でしたね。
弥太郎の優しさが悲しい。

いつも完璧な指導者であり、完璧な夫であった。
そんな、完璧じゃなくていい、完璧だから好きなんじゃない。
人柄が好きだったんだ。
みんなそうだったんですよ、半平太さん。

初めて弱音を吐く夫に、富は言う。
泣き言をいえなかった…、今まで…。
そんなことも含めて、支えるのが私の務め、と言う武家の妻らしい富さん。
いつものように羽織を着せ、「行ってらっしゃいませ」と送り出す、麗しさ。
振り向いた膳の前に半平太がいない、何たる喪失感。

前回の収二郎との別れが号泣のうちの感情が爆発した激しい涙の別れとしたら、今回の弥太郎、そして富との別れは静かな、半平太の人生が収束していくような別れ。
そして弥太郎は、商人としてついに一歩を踏み出した。
それから、武士になった長次郎のその後を知っていると、これもまた切ない。

さらに、新撰組登場!
いや、こんな感じで出てくると思わなかった。
「もうすぐ殺し合いが始まる。京都の町は、血に染まるぜ」と勝先生の予言どおり、やってきました新撰組。

原田泰造さん、意外にも、って言ったら失礼、何かカッコよかった。
新撰組って敵方としてみると、相当怖い存在ですね。
しかし、長次郎も新撰組も、そして龍馬も、この時代を生き抜くって本当に過酷なことだったんだなあと思います。

次回、龍馬と新撰組が立ち合いするのか?!
おりょう、登場。
さて、ますます目が離せない次回です。


2010.05.25 / Top↑
第20回、「収二郎無念」。

書けないかと思ったんですが。
全く当てにならないですね。
いいかげんです。

我ながら、信用できませんね。
すみません。


海軍養成所では土佐出身の3人が、故郷の土佐勤皇党への不穏な動きに不安を隠せないでいる。
彼らを励ます龍馬。
そんな時、龍馬をお兄ちゃんの権平が訪ねてきました。
しかしちょうど入れ違いに龍馬は勝先生に会いに、京都へ。

その頃、投獄された収二郎のことで大殿様へ半平太がお目通りを願いたいとのお知らせが。
山内容堂様はそれを聞きながら、ところてんを楽しんでらっしゃいます。
お手ずから、ところてんを美しい切子の器に押し出して作ったりして。
楽しそうですね。
涼しそうですね。

あれは薩摩切子ですか?
容堂様のお義母さんが薩摩出身だった、ような気が、だからでしょうか?
この辺り、幕末の薩摩の影とでもいうものをちらつかせる、いい演出だったかも。

半平太が会えたのは、後藤象二郎。
東洋様の甥っ子です。
表をあげい、と言われて象二郎を見た半平太が、明らかにうろたえている。

象二郎はもう満面の笑みで、「久しぶりじゃなあ」と。
ニーッとしながら、東洋がいなくなってから自分は「ずうぅううっと冷や飯を食っていた」と言うんです。
笑顔、怖いですね。

それで、このたびは大殿様から呼ばれて、平井収二郎の一件は自分が担当しているって言うんですね。
ずっと悔しかったこの思いを、今こそ、生意気な土佐勤皇党にぶつけることができる!と明らかに楽しそう。

半平太さんは収二郎に私利私欲はなく、藩の為、大殿様の為にやったことだと、必死に訴える。
しかしもう、旗色が悪すぎる。
象二郎は「さすが土佐勤皇党!美しき師弟愛じゃのう」って。
「だけど収二郎には他の事も問い詰めちょるから、『吉田東洋様を殺したのは誰か』」と。

そこに半平太、「おんしが大嫌いじゃあ!」と足蹴にされた悪夢が蘇る。
後ろには、「ざまみろ」といわんばかり、嘲笑していた象二郎がいた。
突然、火がついた半平太、「吉田様は時世を読む目をお持ちではありませんでした。土佐藩は攘夷の動きから取り残されるばかり」と言ってしまう。

こちらも火がついた象二郎、「わしゃのう、叔父上を殺したのは土佐勤皇党と思っちょる」と言う。
「平井のことを心配する前に、おのれのことをしんぱいせえや」。
収二郎は吊るされ、滅多打ちにされるという拷問を受けている。
ああ、ひどい。
それでも東洋様の件では「知らん!」と言い張っている。

そして、弥太郎は材木が売れないと坂本家でぼやいている。
材木を買ってほしいから権平と話したいと言うけど、権平さんは留守!
その頃、龍馬を連れ戻しに来たんじゃないかって危惧した饅頭屋長次郎は、権平さんにただ待つのは退屈でしょうと言って海軍養成を体験することを勧める。
権平さん、何でこんなことせにゃならんの?というご苦労を。

そしてさらに同じ頃、龍馬は大坂の勝先生と会っている。
長州が異国に返り討ちにされたことで、幕府が喜んでいると嘆く勝。
同じ日本人が異国にやられて、何で喜ぶんだと龍馬。
バラバラなのさ、この国は、と勝。
しかしそれが異国が責めあぐねている理由かもしれない。

「一つにまとまっている国なら、てっぺんにいる奴が食われちまえばそれまでだが、この国は江戸には将軍がいて、京には帝がおわす。
諸藩も徳川の家来のようでいて、それぞれに殿様がいて、勝手なことをしている。
異国にすればやりづらいだろう」。

そうか、そういう考えもある、と龍馬。
マイナス面にしか見えないことも、見方を変えればそうなるか、と。
勝先生は、その通り、物事はあっちから見るのと、こっちから見るのと全然違うんだと教えてくれる。

さて、龍馬、平井収二郎を助けたいと勝先生に言う。
じゃ、悪いのは殺された吉田東洋だったんだと言われ、そうじゃないと言う。
さっき言った通り、物事はあっちとこっちから見るのと違うんだよ、と言われて黙ってしまう龍馬。

そして、上の連中は物には金を出すが、人には金を出さない、海軍養成所はともかくとして勝塾は勝の責任でしょって感じでお金が出ない。
塾を運営するのに千両必要!ということで、頼みは福井の松平春嶽様。
龍馬は、スポンサーのお願いに行く。

土佐では加尾が収二郎のことに心を痛めている。
何も悪いことはしていないと言う半平太に、じゃあ、どうして兄は牢にいるのだと言う。
半平太は勤皇党は何もわるいことはしていないと言うが、京では以蔵さんにたくさん、人を斬らせたでしょうと指摘。

奴らは日本が異国のものになってもかまわないというやつらだったからと言って、収二郎は必ずわしが助けちゃる!と言うが…、収二郎兄さんは拷問に耐える日々。
でも口を割らない。

弥太郎は牢獄にいた時、物の値段は人によって違うと聞いたのに…、自分でも情けないぐらい頭を下げて下手に出てるのに、何で売れないんじゃ!とぼやく、嘆く。
焦らないでね、と優しい喜勢に、さすがに弥太郎、何でうちに嫁に来てくれたのかと聞く。

こんなどうしようもない男、そして、嫁に来てから苦労ばっかりなのに!
唯一の幸せの喜勢に疑問を持つぐらいの、今の弥太郎の状態がよくわかります。
こんな自分に、こんなところに、何でこんな良い嫁が?!
いや、これ、ずっと見ている人、みんなが思ってたことではないか、と。

すると「占いやきに。よう当たる手相見に言われたきに」と喜勢さん。
はあ?!
う・ら・な・い?!
弥太郎もビックリ。

でもいくら占いに言われた通りの出会いがあって、それで幸せになれると言われたからって、やっぱりそれだけじゃこんな風にしていられない。
占い通りに一緒になってみたら、何だかいい人だった。
これが自分の幸せなんだ、って思えた喜勢さんの性格が最大の幸せの要因じゃないですか?

そして喜勢さん、材木に何かオマケをつけたら、売れるかもしれんと提案。
…喜勢の良い嫁っぷりに、それだけで幸せな弥太郎。
いや、この手相見さん、すごい当たるんじゃないですか?

資金が足りないと聞いて、動揺する勝塾。
でも龍馬なら、きっと、きっとお金を越前から借りてくる!とみんな期待してる。
権平兄さん、それを聞いて、龍馬って信頼されてるんだなあ、と感慨。
連れ戻しに来たけれど、龍馬って必要とされている、ここが龍馬のいるべき場所なのかな、と思ったんじゃないか、と。

松平春嶽様は自分に会いに来た龍馬を、いつか千葉先生と共に勝を紹介してくれと言いに来た男だと、気がつく。
春嶽様のおかげで、今、勝先生の弟子になりましたと言われて、春嶽様満足そう。
龍馬は「必ず、この千両、生き金にしてみせます!」と言う。
「生き金?」

「はい、死に金とは物と引き換えに払うだけの金。生き金は使った以上のものが何倍にも何十倍にもなって、返って来るというもの!」
「わしの千両を生き金にしてみせると?」
「はい!」。

龍馬は、「勝先生に物事は全然違う見え方があると教わった」と言う。
攘夷も正しかったのか、間違っていたのか、見方によって全く違う。
龍馬はつい、「でも土佐では今、大殿様の為と思って働いた勤皇党の人間が投獄されている」と言う。
やっぱり龍馬はおもしろいと春嶽様、優秀なので越前に招いたという熊本藩士・横井小楠が横にいるのを紹介する。

泰然とした横井小楠様。
「千両、必ず生き金にせよ」と春嶽様、千両出資を承知。
太っ腹だ。
いや、勝が、龍馬が好きなんでしょうね。

横井様、「デモクラチいう言葉を知っておるか?」とアメリカでもとっている、このデモクラチの仕組みを知っておるか?と質問。
それはプレジデントを民が決めるというのも、デモクラチですか?という龍馬の質問に、そうたい!と言って小楠様、大喜び。

小楠様は、「時代が変われば、人の考えも物の値打ちも変わる」と言う。
そして「物事には違う見え方があるとわかっているが、平井収二郎の投獄は納得できないのは、おかしな話」と言う。
驚く龍馬に「今まで値打ちのあったものが、古びて値打ちがなくなっただけのこと」と言う。

つまりデモクラチのように「世の流れを作っているのは人間だ。でも世の中の流れの前には、1人の人間など芥子粒ほどでしかない」ということ。
「平井収二郎も武市半平太もだ」と話す。
その言葉に衝撃を受ける龍馬。

収二郎への責めは、苛烈になって行く。
気絶した収二郎は「起きや!」と、水を浴びせられる。
どんなに責めても収二郎は、東洋暗殺のことを言わない。

容堂様にそう報告する象二郎、もう武市を捕えよという御側近。
クワガタムシと楽しそうな容堂様は、「いかんいかん、何の罪状もないものを捕まえるわけにはいかんろう。さて、どうするかのう…」と言う。

容堂様がそう言った時、どうしても大殿様とお目通りをお願いしたいと半平太がやってくると取次ぎが。
「どうか収二郎をご赦免くださりませ!」と必死の半平太に、「もうやめちゃれ、後藤。これ以上あの男を攻め立ててもしかたがないがじゃ」と意外な一言。

え?という感じの象二郎、「藩に内緒で朝廷に取り入った罪で裁けばいいだけじゃ」と、クワガタを乗せて楽しそうな容堂様。
しかし、その心の中では首筋にはわせたクワガタほどに、そのガラスの杯ほどに、収二郎の命のことなど思ってはいないはず…。
容堂様は、美しい切子の杯を口に運ぶ。

もう目も開けられず、足腰立たない収二郎に面会した半平太。
きついけど、昔の時代劇だと拷問描写、もっときつかったですね。
「よう、耐えてくれた…」と言う半平太。

心が痛まないわけがない。
すると「何を言うがですか、わしはがまんなんぞしちょりません、本当に東洋暗殺のことなど知らないのですから」と言う収二郎。
「わしはうちに帰れるがですか?」と言う収二郎の言葉が悲しい。

そんな収二郎に、半平太は大殿が切腹を命じたことを伝えなければならない。
そこで半平太が収二郎に初めて、「すまん」と謝る。
土佐勤皇党に自分が誘わなかったら、こんなことにはならなかった。
そういって頭を下げる半平太。

ここで謝ったら、収二郎の人生の否定にもなっちゃう。
でも、半平太は謝らずにはいられない。
しかし収二郎は「何を言われるがですか、先生。土佐勤皇党がなかったら、わしはどうなっちょったか。武市先生についていったけ、攘夷の旗頭になれたがです。帝の使いにもなれたがです」と泣く。

「まるで…、夢のようじゃった…。先生のおかげです」と。
「切腹は…、武士の誉れですろう。ありがたき幸せ」。
下士だった自分には敵わなかったことを思い浮かべ、精一杯、自分を幸せと思う収二郎。

収二郎は「加尾に伝えてつかあさい。兄は…、間違っちょらんと。兄は…、幸せじゃったと」と言う。
「収二郎…」としか言えない半平太と収二郎は、抱き合って泣く。
もう鼻水も一緒。
…昔、漢文でやりましたね、鼻水も一緒に流れるのが本当の涙って。

同じ頃、戻ってきた龍馬は権平兄さんと会えました。
権平兄さんは脱藩が許されたんだし、1年も龍馬の顔を見ていないから、と、龍馬を連れ戻しに来たんだけど、土佐に戻るのはもういつでもいい、自分の決めた道を進んで行きやと言ってくれる。
しかし、乙女に書く手紙には「戻って来い!」と言われた、と書いてくれと言ってくれる。

10年後には堂々と土佐に帰れる男になりますと約束する龍馬に、決して道半ばで命を落としたらいかん!と言う兄さん。
歴史を知っているこちらからは、何と暗示的な言葉だと思ってしまいますね。
10年は、ね…。
わかってるとつらいですね。

半平太に加尾は、収二郎は何も間違ったことはしてない、兄を誇りに思っていいと言われた。
でも間違ったことをしていないのなら、どうして兄は切腹させられたのか、と加尾。
この質問に、半平太の理想論は空しく響くだけ。

切腹の日。
「みんな、達者での」と言い残した収二郎。
切腹は武士の誉れ。
収二郎はそう言ったけど、庭先の筵の上で、後ろの幕なんて横に切れてる。
そんな場所で収二郎は切腹。

いや、でも、収二郎さん、宮迫さん熱演でした。
お疲れ様!
いろいろとやってきていたとはいえ、そうでも言わないとつらい。
強気だった収二郎さんの、あまりにも悲しい姿でした。

兄さんが土佐に戻って少しして、加尾から龍馬に手紙が来る。
収二郎が切腹したとあって、龍馬は絶句。
こんな理不尽がまかり通ってええがか!と龍馬。

小楠様の言葉が蘇る。
「今まで値打ちのあったものが古びて値打ちがなくなっただけのこと」。
わかってる、わかるけど、でも人の命ってそんなもんでいいのか!と龍馬。
収二郎は自分だったかもしれない、と思うと、とても割り切れない。
「世の中の流れの前には、1人の人間など芥子粒ほどでしかない」。

人ひとりは歴史の前では確かに芥子粒なんだろうけど、でも芥子粒じゃない。
それぞれに家族がいて、生い立ちがある、命なんだと思うと、とてもやりきれない龍馬だった。
小楠様の言葉は正しい。
でもそこには感情とか、個人が入っていない上で言えること。

あくまで「学者」とか第三者という立場で言うことで、そこに感情はないですよね。
いや、それが大事だし、だから言えることなんですけど。
それが自分だったり、自分の大切な人だったら、それは言えない。

龍馬は感情入ってますから…。
そんな風に割り切って先に進めない。
しかし、幕末の嵐はまだまだ、一層の激しさを増して、龍馬たちの上を通り過ぎようとしていくのでした。


2010.05.25 / Top↑
「龍馬伝」の感想が少なくとも木曜日以降になりそうです。
1回遅れてるのにー。
しかし、先週は宮迫さんが渾身の演技でしたね。

今週、「おおっ、新撰組が登場!」でした。
しかも、近藤勇が原田泰造さん。

私、この方の演技って2002年かな?「ビッグマネー!」というドラマで見たんですけど、敵役、うまかったですよ。
心の中では全ての人を見下している、卑怯なことも平気でするエリート銀行員。
また、これが似合ってたんだな~。


昨日、ルチオ・フルチ監督の1980年の作品「恐怖!黒猫」を見ました。
猫はなかなか不気味に撮れてましたが、どちらかというとやっぱり黒猫、かわいいと思ってしまう。

ネタバレですが…、ネタバレですよ、いいですか?
途中、「やめなさい!」と止めたくなる場面もありました。
でも大丈夫。
猫、元気。

エドガー・アラン・ポーの「黒猫」が元らしいですが、それらしかったのは最後の方だけ。
全体として、監督は何がしたかったのかわからないといえばわからない、黒猫撮りたかっただけかもしれません。
残酷なシーンもありますので、その点で鑑賞には気をつけましょう。

黒猫を怖い存在にしているのですが、やっぱり不気味なんだろうか。
トラネコとか、三毛猫とか、白猫とか、ぶち猫とか、ハート柄とか、麻呂眉毛とかじゃ、あの不気味さはかもし出せないかな。



さて、これは黒猫が狙う、ドイツのカード会社のカード、タイトルは「サンドイッチ」。

サンドイッチ

町並みに対して猫が大きい。
これはネズミの街?
ミニチュアのおもちゃか何か?

ネズミが持っているのは、どこからか失敬してきたビスケットかクッキーでしょうか。
これこれ、そんなのんきに歩いている場合じゃないですって。
文字通り、猫にとってはサンドイッチ。
…ムゴいわー。


2010.05.24 / Top↑
異色の必殺シリーズ。

「先生」と呼ばれる不思議な力を持つ、密教の行者のような男(中村敦夫)と、その「先生」について旅をすることになった3人。
記憶を一切失っている、「おばさん」(市原悦子)。

怪力と高い身長を持った為、女性として認識されずついに男装して男性として振舞っているが、本当は誰よりも優しく細やかな心を持ち、裁縫なども得意な「若」(和田アキ子)。

「先生」の不思議な力をマネジメントする、と言う「正十」(火野正平)。
この正十、もしや、「新・必殺仕置人」や「必殺商売人」の正八?

この一行に熊野権現の御札を売り歩き、しょっちゅう、眠くなって眠っているおねむ(鮎川いずみ)という女性がつかず離れずの距離でいる。
「先生」は旅の先々で、超常現象に出会う。

動く人形、泣く絵、ささやく鐘…。
先生はそこに隠された恨みを突き止め、その恨みを晴らしてやる。
しかし、頼み人はおらず、しいて言えばそれは既に死んだ人。

これはその8話、「家具が暴れる恐怖の一夜」。
そう、ポルターガイスト現象が出てきます。


いつものように空腹な上に眠くなってしまったおねむの横を、役人と役人に追われる男たち3人が走っていく。
おねむに追いついた正十は、座り込んでいたおねむを連れて近くの小屋に入った。
そこは無人で、正十とおねむがいるところに茂作という、ここの主人が出稼ぎから帰ってきた。

おかよという茂作の女房が1人で住んでいたはずだが、おかよの姿は見当たらなかった。
出稼ぎしなければ生きていけなかったと言う茂作、山奥の一軒屋の1人の暮らしに耐えられず家出したのではないかと正十は言う。

囲炉裏の火は消えているし、中の飯粒はカチカチに固まっている。
どう考えても2~3日は留守なはずだ。
おかよの行方を捜すのに先生を紹介しようとした正十だが、いきなり家中が震動し、中の物が動き出す。

タンスが開き、着物が宙を飛び、手鏡は割れる。
家は不気味に鳴り始める。
仰天した正十は家を飛び出すが、茂作はおかよの身に何かあったと感じる。

雷鳴轟く中、先生は天の怒りを感じながら祈っていた。
おばさんを既に山を下ろさせており、若が先生を迎えに来るが、正十が自分が経験したことを知らせに走ってきた。
ポルターガイスト現象を聞いた先生は、正十、若とともに家に向かう。

家に戻るとおねむと茂作の他に、3人の岡っ引き、それに同心・宮本と、捕縛された2人の男、辰次と鬼吉がいた。
町の米屋に押し込み強盗をしたらしく、千両盗ったが、千両は行方不明。
一味の勘太は手傷を負ったが、逃げたようだった。
その1人が親父に知らせるだろう、そうすればお前ら全員、ただではすまないと男たちは言ってあざけった。

先生は気になることがあると言うし、千両と聞いた正十は、今夜はこの家に留まるように若に話をする。
その頃、おばさんは近道をしようとして道に迷い、傷を負ってあばら家に逃げ込む男を見た。
勘太と呼ばれた男は、迎えに出た老人に兄貴達を頼むと言って息絶え、老人はナタを手に大事な息子を殺した相手に復讐を誓った。

驚いたおばさんは思わず声を上げ、老人はおばさんを探しに外に出た。
「先生に知らせなきゃ」と言ったおばさんの近くで落雷があり、おばさんは気を失った。

夜更け、化け物屋敷に盲目の巡礼の若い女性・お春が難儀していると言って入ってきた。
若は女性を労わるが、男たちは若を下心があるんだろうと言い、その背の大きさを笑った。
それを聞いた正十が男たちに向かって、唾を吐く。
怒る男たちをよそに、正十はすぐに明るく振舞う。

その時、土地の炭焼き小屋の男だと松造という男が入ってきた。
若同様、正十は年寄りの松造を労わってやる。
その頃、先生は女の手を霊視していた。

囚われている男たちに食事を持って行ってやりながら、正十は逃がしてやる代わりに千両の行方を聞いたが、男たちはやがて親父が来ると笑うばかりだった。
そこに茂作が帰って来る。

茂作は気絶したおばさんを背負っていた。
別の部屋におばさんは寝かされ、村では医者の代わりをすることもある、と言う松造が介抱することになった。

茂作は盗賊の2人が、自分が去年、女房のおかよに買ってやった着物の切れ端を持っているのに気づく。
押し込みの後、盗賊たちはここに寄り、腹ごしらえをしているところ、千両箱を見られておかよを殺したのだろう。
宮本はそう推理した。

お春が外で水をくんでいるところ、岡っ引きの1人がやってきて、お春の口を塞いだ。
「静かにしろ」と岡っ引きは言った。
松造に言われて、正十は水を汲みに外に行ったが、その時、離れからお春の足がのぞいているのを見た。

気絶したお春に近寄った正十の上から、血が滴り落ちる。
上を見ると、先ほどの岡っ引きが殺されて吊るされていた。
一体、誰が…、この中に刃物を持っているのは宮本だけのはずだ。

先生に薬草を調合されてお春は眠り、別部屋にいるおばさんは松造が見ることになった。
殺しがあった時、松造はおばさんの側にいたのか?と、聞く先生。
若はそうだと言うが、先生はちょっと気になることがあると言う。

夜中、犬の遠吠えが響き、盗賊たちはあれは仲間の合図だ、次に殺されるのはもう一人の岡っ引きだと笑う。
怯えた岡っ引きは外に逃げるが、次の瞬間、悲鳴が響き、岡っ引きは死体になっていた。
次は宮本か、もう1人の岡っ引きか…と笑う盗賊たちに、正十はすっかり囲まれたようだと言う。
しかし、先生は外には誰もいないと断言する。

悲しみの底にいる茂作に先生が、おかよのことを聞きに行く。
いや、やはりおかよはこんな生活に嫌気がさしたのだと泣く茂作。
その時、おかよの着物が宙に舞い、柄の蝶が着物から抜け出た。

蝶はしばらく先生と茂作の前を舞い、すっと畳みに消えて行った。
畳みを見つめた先生は、「灯りを持ってこい」と言った。
床をはいだ先生は土を掘り始める。

やがて人間の指が見えた。
「おかよ!」と叫ぶ茂作。
先生はその手をしっかりと握る。
目を閉じた先生の脳裏に、おかよの身に起きたことが見えてくる。

おばさんは目を覚ました。
暗い部屋の中にいる老人を見つめる。
倒れる勘太と呼ばれた男、その男を抱き起こし、ナタを手に復讐を誓う老人…、目の前の老人はその時の老人だった。
「思い出したようだな。皆殺しになりたくなかったらおとなしくしていろ」と老人は、おばさんに刃物をつきつけた。

おばさんはとっさに、自分の足元に覆いかぶさっているおねむを見る。
その時、若が入ってきて、おばさんが起きたのに気づく。
松造は若に重湯でも持ってきてくれと言い、若は廊下に出た。
しかし、若はそっと戻ってきた。
戸を開けると、松造がおばさんに刃物を向けていた。

「このやろう!」と若は松造を捕える。
松造が息子の仇をとると言っていたこと、その男は松造の胸の中で死んだことをおばさんは叫び、は松造を盗賊と確信した若は松造を、宮本がいる囲炉裏端に突き出した。

「ちくしょう、もう少しだったのに」と囚われている2人が言い、松造は2人は何もしていないから縄を解いてやってくれと言う。
千両の行方を宮本が聞いた時、目の前に小判が放り出される。
「床の下に埋めてあった」と先生が言う。

「おかよをよくも…!」と、茂作が2人の盗賊に飛びかかろうとする。
その茂作の背後から、巡礼のお春が匕首を持って飛びつく。
お春は、茂作の首筋に匕首を突きつけた。

「岡っ引き2人は、お前がやったんだな!」と若が叫ぶ。
「こいつはわしのかわいい娘さ!」と松造が叫び、驚いている宮本の刀を取る。
「そうだよ、あたしがやったんだよ!」とお春が叫び、岡っ引き2人の首筋を切ったように、茂作を切る。

逃げる岡っ引きを松造が斬り捨てる。
縄を切られ、自由になって「皆殺しだ」と叫ぶ盗賊たちに、宮本は自分を殺すと関所を抜けられないぞと叫ぶ。
関所を抜けるのを手伝ってやる代わりに、3百両寄越せと宮本は言う。

憤慨する若をよそに、松造は承知し、宮本はホッとするが次の瞬間、松造は「世の中を甘く見ちゃいけませんぜ、旦那」と言って刺し殺した。
見られた上には全員、焼き殺そうと言う盗賊たちに若は「やれるもんなら、やってみな」と匕首を構えるが、お春がおねむを人質にとっていた。

若はしかたなく、匕首を捨てた。
先生、おばさん、若、正十、おねむ全員を縛った盗賊は笑い、お春が「いいよ!」と言うと外から手を火をつけるんだと出て行った。
「先生、今度ばかりはダメかもしれないねえ」と言うおばさんだが、先生は呪文を唱え始めた。

太陽が上がってくる。
陽の光が先生を照らす。
家の周りに積み上げた藁に火をつけて、盗賊たちは笑って引き上げて行った。
しかし、次の瞬間、先生が叫び声と共に柱に縛られていた縄を切った。

炎を上げる家から先生は叫び声を上げて、戸を蹴破り脱出した。
凡字の書かれた旗を持ち、先生は走る。
盗賊4人の後姿が見える。

先生の旗を結び付けている木の先は鋭く、槍のようになっている。
「てめえ!」と気づいた鬼吉が振り向くが、先生は旗を槍のようにして鬼吉を刺した。
鬼吉が倒れる。
盗賊3人は逃げるが、先生は猛スピードで追ってくる。

「親父、先に逃げてくれ!」と辰次が言い、なたを構えて追ってくる先生を待つ。
しかしその時、辰次の背後から若が現れる。
辰次を若が殴り飛ばす。
次々パンチを食らわし、道の斜面を転がり落ちた辰次を若はなおも追う。

若は辰次を捕まえ、再び何度も殴り飛ばす。
吹っ飛ばされた辰次が立ち上がると、若は指を鳴らし、辰次に一撃を食らわす。
辰次の首が回転する。

お春と松造は分かれて逃げた。
すすきの背が高く、お春も松造も見えない。
先生は高く飛び上がると、周りを見回す。
逃げていく松造の姿が見えると、先生は旗を投げる。
旗は松造を背中から貫いた。

お春は1人、道を走って逃げる。
地蔵が並ぶ影で、おばさんが匕首を手にする。
振り向き、振り向き、お春がやってくる。

一息ついて後ろを見ているお春の後ろから、おばさんが飛び出してくる。
正面から、おばさんはお春を匕首で一気に刺す。
何が起きたのかわからない…、自分を抱きしめているおばさんが自分に何をしているかわからない…。
お春は目をぱちくりさせ、きょとんとしておばさんを見つめる。

やがて、お春の息が苦しそうに吐き出され、体から力が抜けてくる。
お春を抱きしめたおばさんが言う。
「悪い親を持ったねえ…」。

おばさんがさらにお春をえぐる。
前かがみになったお春から、おばさんが離れる。
胸を押さえて、お春が道端によろよろと倒れる。

「今度はまともに生まれておいでよ!」
おばさんが匕首を手ぬぐいで拭く。
「いいねぇ~?」

倒れているお春を見ながら、おばさんはそこを離れる。
動かないお春を振り返り、おばさんは歩いていく。

化け物屋敷が燃えていく…。
おかよの魂は、救われたのだろうか。
茂作と一緒になれたのだろうか。
先生と若、おばさんを支えながら正十はまた、旅を続ける。



「家具が暴れる恐怖の一夜」。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」というか、「仕置人」の鉄と錠が出張仕事をした際、雨宿りに一夜過ごした廃屋で、集まった人々が一人一人殺されていく「夜がキバむく一つ宿」みたいな密室劇。
そのオカルト版ですけど、話がしっかりしているし、俳優さんたちはうまいし。

何故、この話なのか、っていうと、いや、単に「悪い親を持ったねえ…」のおばさんを思わせるようなニュースを聞いたので、つい。
というか、ニュースを聞いて、この話、この場面を思い出したんですね。

お春がほんとにかわいらしくて、それだけに本性表した時が衝撃でした。
それで、松造たちの余裕もわかったんですね。
お春こそが切り札だったのか、と。

誰もわかりませんよ、あんな小さくてかわいらしい、盲目の巡礼が凶悪犯だなんて。
あっさり、男2人の喉元を切り裂くなんて。
おまけに、茂作まであっさりと殺してしまうんですから。
手馴れてるなんてもんじゃない。

しかし!
予想外の人が予想外のことをするという、上には上がおりました。
市原悦子さんの「おばさん」。
いや、どう見ても普通の、どちらかというと冴えないおばさんなんです。

現場見なけりゃ、絶対、殺し屋だなんて思わない!
誰も疑わない。
匕首を手にした途端、目の色が変わる。
動きがすばやい。
絶対、防げない、この攻撃。

お春が刺された時、「?」「?」「?」という表情なんですよ。
目の前で起きていることが、認識できない。
これがもう、リアルで。
おばさんが本当に通り魔みたい。

市原さんの「まんが日本むかしばなし」の、ちょっと懐かしい温かみのある声が、こんなに怖いとは~!
何か、普通に普通のことを言われているようで、だけど、していることが人を刺すということ。
それがまた、ギャップがあって猛烈に怖い。
狂気を感じさせて、すごく怖い!

狂気の「家政婦は見た」というか、「怖いまんが日本むかしばなし」というか。
「アキコ」さんや、昔話を語っているおばさんが突然、「今度はまともに生まれておいでよ!いいね?」なんて出刃包丁で刺すのを想像してくれたら、ちょっとはこの異様さと怖さがわかるかもしれません。
いや、この方、芸達者なんで、しゃれにならないぐらい、怖いですよ、ほんと。

「若」の和田さんはね、もう、これまたすごい。
殴る、殴る、いや、本当にひどい相手だけど、それにしてもすごい。
でも、「先生」の中村敦夫さんは当時の和田さんのことを、「背は高いけどやっぱり女の子らしいし、マネージャーにわがまま言うことはたまにあっても、礼儀正しかった。自分が芸能界しか知らず、世間の常識を知らないのではないかと思って、撮影の合間には本を読み、いろんなことを自分に質問したりしてきた」と言ってました。

中村さんは、この密教の行者さんみたいな「先生」をしっかり演じてます。
しっかり、というのは、このとんでもない超能力を持つ、とんでもない力を発揮する人間離れした先生を、あざとさもわざとらしさもなく、演じているんです。
だから見ているこちらは、冷笑しないで真面目に楽しめるんですね。
おそらく、中村さんは徹底して真面目に演じることで、楽しんでもらおうとしているんじゃないか…と言う感じがしました。

いや、この方、「必殺」シリーズでは「仕業人」の剣之介だったんですよね。
超現実的、超シリアスがまた、笑いを時に呼ぶ剣之介。
信じられません。
中村敦夫さんは何を演じても嫌味が無くて、力みがない。
楽しませてくれる、ほんと、良い俳優さんですよね。

正十は、もちろん、火野正平さん。
第1回、記憶をなくしているはずの「おばさん」に「この人、江戸で殺しの斡旋してた人だ」と言われる。
だけど、おばさんが何故、そんなことを知っているのだろう?
正十も「何でおばさん、そんなこと知ってんの?…気味悪りいなぁ」と言っていました。

彼が正八だということは、劇中、はっきりとは語られません。
だけど、火野さんの演技のプランだったのかもしれませんが、ところどころに正八を感じるんです。
何話かに、袖の下を貰う同心を見て、「どっかで見たな~、こんな役人」と言うセリフもありましたし。

今回だって、宮本という同心を見つめる正八の目が、どこか懐かしさを感じているような、親しみを持っているような目をしている。
宮本をじっと見つめて、それでちょっと切ない顔で表情をゆがめて、次の瞬間、かすかにニッと、笑ってるんです。
まるでどこかが痛んだような、いとおしいような。

実に演技が細かい!
主水を、鉄や己代松やおていを、仕置人だった時、江戸の日々を思い出したのか、と思う。
こういうところが、今までのシリーズを見ていた人も楽しませるんだと思います。

いや、でも、お春に手を出そうとした岡っ引き、取り引きを持ちかける宮本はともかくとして、茂作とおかよはかわいそうでした。
しかし、異色の必殺シリーズとしてあんまり当時は視聴率が良くなくて、「新・必殺仕置人」で世界が完結し、後日談として「商売人」があり、必殺が暗中模索していた時に作られた「翔べ!必殺うらごろし」。

必殺オカルト版ですけど、キャストはうまい、またはハマっていて、おもしろいですよ。
異色ですが、私は好きです。
特に、殺し屋に市原悦子さんという、意表をついたキャスティングと、そのほのぼのした怖さ、他では味わえないので、ぜひ、一度機会があれば見てほしいです。


2010.05.23 / Top↑