悪役の頃

月曜日は「沈黙のアリバイ」が昼間に再放送。
しっかり録画。
渡辺謙さんの熱演はもちろん、北村一輝さんの犯人役がすごい。

本当はなかった対決シーンを渡辺謙さんが作ってもらったというほどの、悪党っぷり。
これを見た時、本当に一片の情けもいらないなと思いました。
そして、北村さんは、人に嫌われることを恐れない俳優魂を持っていると思いました。

年齢の行った方だと、石橋蓮司さんとか、綿引勝彦さんなど、70年代80年代にたくさん悪役を演じた俳優さん。
岸田森さんも、ご存命だったら今は縦横無尽に活躍されてると思います。
内藤剛志さん、大杉漣さんとか松重豊さんや遠藤憲一さんなんかもそうだと思うんですけど、そういう俳優さんって結果としてすごく息が長くなる。

例えば大杉漣さんなんか「豆腐屋直次郎の裏の顔」では3話、悪徳不動産会社の社長で本当に典型的な悪い社長で、派手な女性秘書はべらせて老人ホームを取り上げようとしていた。
でもこの前の「JOKER 許されざる捜査官」では、同じ裏の制裁ものだったけど、単純に悪とも正義とも言えない存在だった。

彼の背負った背景は、とても複雑なものだった。
年齢と共に今度は悪役でも複雑なものを感じさせる役になったり、ひょうきんな役や、今度は良い側の役やったりと役の幅が広がってくるんですね。

松重豊さんで思い出したんですけど、ある映画の役ではヒロインにひどいことする役でしたが、ヒロインを連行して行く時、肩にかけた手がどことなく優しい。
乱暴なんですけど、どこか、労わるような雰囲気がある。
そういえば、このヒロイン、まだ売出し中だった。
きっといろいろフォローして、思いやっていたんだろうなと思いました。

そうそう、堺さんがあえて、「JOKER」で、わかりやすい演技をしていなかったことは、この映画でわかります。
こんな表情ができるんだから、裏の顔をもっと単純に変えることはできたはず。
だってこれ、見たら、「やってるな」としか思えなかったんですもん。

「チーム・バチスタの栄光」の続編、「ジェネラル・ルージュの凱旋」です。
堺さんは救命救急の天才医師、通称「ジェネラル・ルージュ」。
血まみれ将軍です。



この映画、おもしろかった!

北村一輝さんも、堺雅人さんみたいに、裏方のスタッフさんから「好きな俳優さん」で名前が挙がっていましたっけ。
この「好きな俳優」とは、容姿とかイメージではなく、実際に一緒に仕事をした人が選んでいるわけですから、選ぶ基準はほとんど「性格」だと思うんですよね。

そんなことは想像も及ばないほど怖い、そして情け無用の悪役を演じている「沈黙のアリバイ」。
「逃亡弁護士」の役を考えると、ずいぶん、役柄が変化したなあと思います。
そういえば、「逃亡弁護士」で気になったんですが、あの、蛇のタトゥーの実行犯、捕まる場面がなかったですよね。

悪役は派手に散ってくれないと!
盛り上がりませんよー。
悪役が上手い俳優さんには、ほんと、感謝したいです。
彼らがどんな風に破滅するか、最後まで見たい!と思わせてくれますもん。

地味でも悪役やら脇役やらで物語を支えている俳優さん、支えてきた俳優さんは味のある良い演技しますよね。
こういう俳優さんは、やっぱり好きです。


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池内淳子さん

池内淳子さんがお亡くなりになりました。
76歳でした。

去年、「任侠ヘルパー」で草さん演じる彦一を自分の息子と思い込む「タイヨウ」の入居者、チヨさん役でした。
「お年を召されたなあ…」と少し寂しさを感じましたが、しっかりした演技で第1話を盛り上げてくれました。

冷たくされても、一途に息子を思う母親。
そのチヨに接し、弱い者を助ける任侠に憧れていた気持ちを取り戻す彦一。
今まで金づると思っていた彦一がチヨをバカにした鷲津組のチンピラに対し、怒る。
そして、「ばあさん頼む!ばあさん頼む!」と言って、鷲津組のチンピラに連行される。

自分の為には怒らなかったが、チヨの為には怒った。
彦一がチヨに気持ちが入っていくのが自然に感じられる、池内さんの演技。
さすがでしたね。
「必殺」のSPにも出演されていましたが「松風の佐和」でしたか、品と貫禄のある仕事人でした。

私がテレビや映画を見始めた頃にはもう、ご活躍なさっていました。
そんな女優さんがまた1人、鬼籍に入られました。
寂しいです。

池内さんのご冥福をお祈りします。


さ、始めましょうか 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (5/5)

冴子の部屋から出た久遠とあすかが、並んで歩く。
「伊達さんに会わなくていいの?」
「会っても…、何話していいかわかりませんから」。

「そう。じゃあ、俺とはまた会ってくれる?」
「考えときます」。
「おお、一歩前進じゃん!」

あすかは足を止めると、久遠を見る。
「久遠さん。必ず作って見せますから。『JOKER』なんて必要のない世の中を」。
久遠は笑った。

「楽しみにしてるよ。あ、もちろん、チューの方ね」。
いつものように、あすかは言う。
「そんな約束、してませんから」。

久遠は笑って、「じゃあ、また」と言って歩いて行った。
あすかは、ずっと見ていた。
久遠と初めて会った日のことを、思い出す。

あすかの肩を抱いて、久遠は自己紹介した。
警察に泊まった伊達に、あすかは頭を下げていた。
伊達が、あすかに手品を見せる。
あすかの目が丸くなる。

老人ホーム放火殺人の時は、病院で去っていく伊達の背中にあすかが食い下がっていた。
椎名の事件では、ライブハウスの前で殺した娘の父親の慟哭に、椎名が嘲笑していたのを見たあすかは、どうしたら被害者家族を救えるのかとやりきれない気持ちで伊達に言った。

伊達はそれには答えなかったが、椎名に殺された娘の父親が椎名を殺そうとしたのを阻止した時の傷を見せ、料理をしていて切ったと言った。
その為、父親は罪に問われなかった。

虐待殺人事件と、自分の過去を重ね合わせて落ち込む久遠の横に、あすかが座った。
入院した伊達、そして見舞いに来ていた久遠の前にあすかが報告に来る。
伊達のおかげであすかが事件を解決したと聞いて、満足そうに伊達が微笑んだ。

夏樹の事件で、夏樹の携帯のメールを久遠が復元し、伊達とあすかがそれを見る。
また、別の時、あすかと久遠は、向き合って話をしていた。
久遠は笑っていた。

去っていく久遠の後姿を見て、あすかは思い出していた。
「また」。
あすかはそうつぶやくと、歩き出す。

伊達は東京拘置所で、三上と面会していた。
「そろそろ、時間です」。
促されて立ち上がった三上は、伊達に言った。

「これからどうするんだ」。
「自分の決めた道を行くだけです」。
伊達は三上をまっすぐに見て、言った。

「そうか」。
伊達が「JOKER」を続けることを三上は確信した。
だが、突如、空気が不安になる。

「一つだけ、忠告しておく」と三上が言う。
「組織を、探るな」。
三上の目が、伊達を捕えていた。

伊達が、まばたきをする。
三上の目が優しくなる。
子供に言い聞かせるように三上は伊達に、「いいな」と言った。

伊達はそれには答えなかった。
「また来ます」と言って伊達は頭を下げ、出て行く。
三上が少し微笑んだ目で、伊達を見送る。

休業中のバーMIKAMIに、伊達と久遠がいた。
久遠は、赤と黒に染め分けしたCD-Rを見せる。
組織について、調べてみたと久遠は言った。
「アンダーグラウンドファイブ」。

「何かわかった?」
「俺、誰だと思ってんだよ」。
「イケてる鑑識員でしょ。友達がいない」。

その言葉を聞いた久遠は「ぜってー教えない」と言い、伊達は「うそ、うそ、うそ」となだめた。
「よう」。
そこに入ってきたのは、井筒元課長刑事だった。

「あー、来た。久しぶりっすね」と久遠が言うと「真打は遅れて登場するもんなんだよ」と言って、井筒が2人の席にやってくる。
「何がわかった?」
久遠が笑って、CD-Rをかざす。

伊達も微笑む。
「さ、始めましょうか」。
伊達が立ち上がり、久遠がパソコンにCD-Rを入れる。

井筒が久遠の隣で、パソコンを見つめる。
伊達が2人のいる席の後ろにやってくる。
3人はパソコンを見つめる…。


おおっ、何でしょうか、この続編が作れる終わり方は!
「JOKER」は書くのが遅かったので早足で書いていたんですが、その分、回想シーンがある特別編が長くなってしまいました。
1時間のドラマを何回に分けて書くんでしょうか、自分。
先週終わったドラマなのに。

もったいぶったように小出しにするのは嫌なので、全部書き終わったら1週間経ってました。
遅い~。
そんな遅い記事を読んでくださる方、お礼申し上げます、ありがとうございます。

特別編、期待以上におもしろかったです。
冴子の部屋を整理しに来た久遠、そしてあすかが過去を振り返ることで総集編として機能していましたし、伊達の最初の事件を取り上げてくれていたので、一層三上とのシーンや伊達の背景が深くなりました。

しかし、伊達さんは女心がわかってない。
冴子さんは引き止めて欲しいというか、一言欲しかったのに「そんな資格はないよ」って真面目すぎる。
でも、手品を取っておいたというのが、冴子さんがずっと伊達さんに心があった、ということみたいで。

冴子さん、あれを見て笑っていたこともあるんだな、と。
基本的に伊達さんは、優しい。
優しいから「JOKER」になったんだな、と思いました。

あすかちゃんは親戚に頼まれて整理に来たけど、久遠は誰に頼まれたか言葉を濁してました。
頼んだのは、やっぱり伊達さんですよね。
冴子さんの部屋を整理する資格は、「JOKER」である自分にはないと思ってそう。

それに冴子さんの部屋を整理することで、愛する人との本当の永遠の別れを思い知らされる。
愛する人と別れるのは、もうたくさん…って心境もあったかもしれません。
三上の罪を再度、意識してしまうかもしれないですし。

結果として伊達は「JOKER」であることを選んだんですが、それはラスト、組織を調べていることから組織を知る為であることもわかりました。
でも、それだけじゃないと思うんですよね。

井筒はそうかもしれないですけど、伊達は「JOKER」の存在意義を確かめたい気持ちが強いように思います。
いや、井筒もやっぱり、そして久遠も、「JOKER」を善か悪か決めかねているから知りたいのかも。
みんな、答えを見つけたい。

そして、最初の事件が描かれる。
相手は、息子の入院費の為に、違法行為をし始めた警察官。
動機としては責められないものがあるにしても、罪もない配達員を殺した辺りからはもう、かばいきれない。

家族を殺されて容疑者が裁かれなかった三上は、同じような被害者家族を救う為、これ以上の血を流させない為、「JOKER」となった。
しかし人を救う為に、今度は罪もない人を殺すに至った。

どこか2つの事件は、繋がっていると思えました。
人は何かを守ろうとする為に始めたことでも、いつしか変わってしまって、非道なこともできるようになってしまうという点で。
そして、犯人にだって家族はいただろうし、守りたいものだってあったかもしれないという視点。

三上は自分の罪を自覚して、裁いてもらおうとしてましたけど、中崎はもう、自分のしていることが誰を傷つけているのか、もうわからなくなっていた。
「人の明日を奪う」と三上は言ったけど、そういう痛みと視点を伊達は最初の事件で知った。
伊達が何故、いつも制裁前にラーメンを食べているのかも、わかりました。

「法で裁けるものは、法で裁く」を、肝に命じているわけも。
人の痛みを忘れて、万能感を持って暴走しない為だったんでしょう。
だから、伊達は三上が言う、泣く人間を作るかもしれない、人の明日を奪う「十字架」として、ラーメンを制裁前に食べる。
ここで既に「人を裁きながら、自分自身を裁いている」わけですね。

三上は伊達に、重いものを背負わせてしまった、と言う。
でも被害者の痛みを知り、被害者家族の悲しみを知り、犯人への憎悪も経験している伊達だから背負えると思っている。

柔らかい強さだからわかりにくいけど、伊達は、実はとても強い人なのかも。
そんな伊達を見て来たあすかもまた、伊達のしていることを完全否定はできない。
だから「必ず作ってみせますから。『JOKER』なんて必要のない世の中を」と言う。

これがあすかの出した、「JOKER」との戦い方。
そしてあすかは「さよなら」でなく、「また」と、別れじゃない言葉を口にした。
伊達のような優しい人間が、こんなことをしなくて済むようにしてみせる、という決意、それができた日を思っての「また」。

「JOKER」はそれぞれの登場人物の再出発のドラマでもあると思いましたが、「特別編」の後日談で、それぞれのスタートが描かれていたと思います。
さて、これで続編をやるとなると、今度は「アンダーグラウンドファイブ」の存在が善か悪か、はっきりしてくるのかも。

うーん、ネッシーのように?これ、永遠の謎でいい気がしますし…、でもドラマはもっと見たい気もしますし…。
このまま余韻を残して終わっても良いし、この後があっても不思議はない。
どっちでもいいように、綺麗に終わっていました。
でも伊達と久遠の活躍を描くSPなんかあったら、喜んで見ちゃいますね。


さて、改めてキャストを見て、錦戸さんですが、やっぱり実力と魅力があるから世に出て来たんだと思いました。
アイドルだとか重みがないとか決めないで、生かし方ですよね。
すごく良かったと思います。

あと、三上の伊達に対する厳しい表情、「組織を探るな」が緊張感あった。
危機感感じました。
これで続編というか、「JOKER」という組織の善悪で続編ができるのかな、と思ったぐらい。

でもその後は父親のような、穏やかな優しいまなざしになる。
あれを見て思ったんですが、彼は裁かれる身とはなりましたが、こうなってみて、やっと心の平穏を得たのではないか。
大杉さん、セリフ以外のもので語る演技、良かった~。

それから、堺さん。
叫んだり泣いたり、怒ったりとおおぶりの演技じゃないのでつい、表も裏も区別がないように思えるかもしれませんが、こうして改めて見ると、目が笑ってたり、笑ってなかったりします。
伊達の内面が自然に現れているし、インタビューにあったようなコーヒーに砂糖を入れないとか、何気ないシーンにこだわって繊細な演技してますね。

最近、登場人物に距離を持って見るようにしているのに、感情、入り込みましたから。
特にこの手の話は最後、悲しい結末になるのが普通なので、距離を置いて見ようとしていたのに、伊達に気持ち、入って見てましたから。
堺さん、それから大杉さん、良かったと思います。

犯罪者役の俳優さん、女優さんは、思い切った目一杯の演技をしてくれてました。
みなさん、上手かったけど、特に4話の椎名役の窪田正孝さん、狂気の表情からガラリと変わるのがすごかった。
そしてまた、正常な時から狂気の表情に。
前と後、同じ狂気なんですが、心神喪失と違う悪意に満ちた狂気の表情に変わるのが見事でした。

そうそう、この方、別のドラマで最近見ましたが、別人じゃないですか!
当たり前のようですけど、いい俳優さんですねえ~。

7話、8話の日向役の忍成さん。
この方はいつも思うんですが、見事に悪役をこなしてくれますよねー。
もうほんと、嫌な役をきちんとやって、見ている方を盛り上げてくれます。

このお2人が、若いのに本当にすごかった。
よかった。

6話の文弥の父親の広之役の高杉亘さんは、体は大きいけれど弱い父親を演じて、現実感を持たせてました。
5話の女性弁護士役の鈴木砂羽さんも、「相棒」の役とは全然違う、いや~なインテリが上手かった。
3話の山原役の黄川田さんはもう、若いのにベテランさん。

2話の春日役の鈴木浩介さんは取調室の緊張で盛り上げてくれました。
最後に勝ち誇ったように出て行くところなんか、もう。
第1話の木内役の細田さんは、最初に物語に引き付けてくれましたねえ。

9話の佐野さんの存在感は、言うまでもなし。
もう、ほんとに利己的で残酷で、反省の色がなくて、みなさん、良くぞ盛り上げてくれました!
犯人役が中途半端だと、説得力ないですから!

そして井筒課長…、いえ、元課長。
今、何してるんでしょう。
ちょっとの出番でも、気になる鹿賀さんでした。

終わってしまって火曜の夜が寂しいですね、って、火曜の夜にはなかなか見られなかったくせに、自分。
エンディングに流れる主題歌、RIP SLYMEの「SCAR」にまで馴染んで、この夏は良く聴いてました。
この暑い夏がしみこんだ曲は、これになりました。
あ~、特別編でまでこんなにも楽しませてくれるなんて、ありがとうございました!です。


テーマ : ジョーカー 許されざる捜査官
ジャンル : テレビ・ラジオ

お前に明日は来ない! 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (4/5)

冴子の部屋でファイルを見ながら、あすかは冴子が追いきれなかった時効事件も「JOKER」なら解決できたと言う。
認めながらも、あすかは「でもそんなやり方しかないなんて…、悲し過ぎます」と言った。
イスに座った久遠は「『JOKER』の連中だって、みんなそう思ってるはずだよ」と言う。
「だから苦しんでる」。


久遠の脳裏に、日向との対決した時のことが蘇る。
「あなたは今、迷ってるはずだ。自分がやってる行いが、正義なのか、どうなのか」。
美代子に銃を向けながら、やってきた伊達と久遠に向かって日向は言った。

「俺がやってることを、正義だとは言わない」。
伊達が日向に言う。
「人は人を裁けない。だが、それでも裁かなくてはいけない現実がある」。

次々、日向は人を撃ち、「悪人に制裁を」という文字が書かれた紙を血まみれの遺体の上に置いていった。
その光景に、伊達の声が響く。
「その重みもわからずに、人の命を奪うお前のやり方は間違っている」。
殺人が終わると、日向は仮面を外していた。

伊達が日向に、銃を向ける。
「お前は、ただの人殺しだ」。
「社会のクズを始末するのが、僕たちの役目だろう!だったら片っ端から殺せばいい」と日向がわめく。

伊達の隣にいた、久遠が言う。
「俺も一歩間違えれば、お前みたいになってた。でも、伊達さん見てわかったよ。人の明日を奪うってことが、人を裁くってことが、どんなに痛みを伴なうものか。お前は伊達さんとは違う」。
伊達が言う。
「法から逃れた者を裁きながら、俺はずっと自分自身を裁いてきた。これからもそれは変わらない」。


久遠の意識が、あすかといる冴子の部屋に戻る。
あすかが久遠を振り返る。
「いや、俺は『JOKER』なんて知らないけどね」と久遠が笑う。
「いつから…、そんな苦しみを味わうようになったんでしょうね」とあすかが考える。

久遠が「いつから…、って」と言い、あすかの持つファイルの「2007年、11月10日」と書いたページの中崎を見る。
プロフィールの「ラーメン店 大王」と書かれた文字を、久遠が驚きを持って読み上げる。
久遠の様子にあすかが、「どうかしました?」と聞く。
「このラーメン屋…」。


3年前。
「はい、おまたせしました」という声がして、ラーメンが置かれる。
三上と伊達がテーブル席にいる。
「あれが中崎の女房か?」と三上が尋ねる。

中崎由里、38歳。
夫の中崎道彦との間には9歳の子供がいて、5歳の頃から病気で入院生活を送っている。
中崎は警察の情報を流しているだけではなく、違法カジノや臓器売買に目をつぶって金を受け取っている。
息子の入院費用の為に始めたことだったが、いつのまにか押さえが聞かなくなっていたってことか?と、三上が聞く。
伊達が小さく何度もうなづく。

既に伊達は中崎に何度も自首するよう、説得していた。
「法で裁けるなら、それに越したことはありませんから」。
「でも、だめだった」。
三上の言葉に伊達はうなづいた。

中崎がラーメン店に入ってきて、カウンター越しに厨房にいる妻に封筒に入った金を渡す。
振り向いた中崎は、三上と伊達に気づき、「こんなとこまで、何しに来たんだよ」と声を荒げた。
周りの客がいっせいに中崎を見、妻が「ちょっと、お客さんいるんだから」と制止した。

「どうやって作ったお金ですか」と言う伊達に「うるせえな。お前には関係ねえだろう」と言うと中崎はポケットに手を入れて店を出て行く。
厨房の人間も、客も見ていた。
「すみません」と妻が取り繕うように頭を下げると、みんな元のように視線を戻した。

テーブル席にいる伊達は「中崎がいなくなったら、奥さんが1人で子供の面倒を見るんですね」と三上に言う。
「そうだな。今のあいつは完全に自分を見失っちまってる」。
その夜、レインボーブリッジが見える公園。

中崎の前に、黒尽くめの伊達が現れる。
「またお前か」。
「これで最後だ。自首して罪を償え」。

「しつけえな。何度も言ってるだろ。俺は警察に守られてるんだ。誰も俺を裁けねえ」。
「だったら俺が裁く」。
銃を向ける伊達。
だが、伊達はそのまま固まっている。

伊達の動揺を見た中崎は、「怖いか。そんなもん、こっちは慣れっこなんだよ」と言った。
中崎が近づいていく。
だが、伊達は撃てない。

中崎は銃をそらすと、伊達を張り飛ばした。
伊達が地面に手をつきながら、中崎に銃を向ける。
中崎が銃を払い、銃が飛んでいく。

伊達に中崎が飛びつくと「今くたばるわけにはいかねえんだよ!」と叫び、伊達を殴ろうとする。
中崎の拳をブロックした伊達は口から血を流しながら、「自首しろ。息子を悲しませるな」と言った。
拳をブロックされながら中崎は「悲しませてるのは、お前の方だろう」と言う。

伊達は、自分の上に覆いかぶさっている中崎を振り払った。
離れたところに転がった銃を、伊達は拾いに行く。
中崎がそれを追う。
伊達が銃を拾い、地面に倒れたまま中崎に向ける。

中崎が、足を止める。
伊達は銃を向けたままだった。
「俺を撃てば、傷が残るのはお前の方だぞ」。
向かい合って中崎が言う。

伊達は中崎に照準を合わせたまま、動かない。
「わかってんのか!」
伊達はそのまま、動かない。
中崎が近づいてくる。

伊達は、麻酔銃を撃った。
中崎が胸を押さえ、驚いたように胸を押さえた手を見る。
伊達を見て、あえいだ中崎は両手で撃たれた場所を押さえ、倒れた。

少し離れたところに横たわった中崎を、伊達は見た。
中崎は、伊達を見ていた。
伊達は中崎の目を見ていたが、やがて中崎は目を閉じた。
隠れていた三上が近づいてくる。

立ち上がった伊達に「お前はコイツの明日を奪った。だが代わりに多くの人間が救われた」と三上が言う。
2人は中崎を見下ろしていた。
「運ぶぞ」と、三上がうながす。
伊達はまだ平常には収まらない息をしながら、中崎を見ていた。


中崎の妻の店で、ラーメンが伊達の前に運ばれる。
「はい、お待たせしました」と言った妻は伊達に、「刑事さん、主人の行方はまだわかりませんか?」と聞いた。
伊達は「すいません、まだ捜査中です」と穏やかに答えた。
妻は微笑むと、「そうですか。ごゆっくり」と言って戻った。

「お前にとってこのラーメンは、十字架みたいなものか」。
三上が言った。
伊達は箸を取ると、三上に渡した。
三上と伊達は黙って、ラーメンをすすっていた。


そして、今現在。
久遠とあすかは、冴子の部屋の片づけを終えた。
また、久遠は思い出す。


夜明けの青い光の中、銃を持った三上に伊達が歩み寄っていく。
2人は向き合った。
そこは子供の頃の伊達と三上が出会った、埠頭だった。

三上が伊達を見つめる。
伊達も三上を見つめる。
三上は銃、伊達は麻酔銃を手にしていた。

そこへ向かう車で伊達は久遠に「三上さんは『JOKER』を守る為、より多くの人を救いたかっただけなんだ」と言った。
だが刺された久遠に、そんな理由はわからない。
「でも、そうだとしても」。

夏樹が刺された時のことが蘇る。
「罪もない人間殺していいことには、なんねえだろ」。
夏樹を刺した三上の顔は、苦しそうに歪んでいた。

さらに、冴子に向かって三上のナイフが光る。
冴子の目が見開き、三上が正面から冴子を刺す。
三上の顔が悲しそうに、冴子の頭に寄り添うように傾く。


「だから裁かれたいんだよ」と埠頭に向かう車の中、伊達は久遠に言った。
「死よりも重い罰を受ける為に」。
久遠が伊達を見ると、伊達は前を向いたまま、つぶやく。
「あの人は…、俺だ」。

埠頭で、向かい合う伊達と三上。
三上がこめかみに銃が押し付ける。
すばやく、伊達の銃が発射される。
伊達は、まっすぐに三上を見ていた。

三上のこめかみに銃を押し当てた手が、離れていく。
かすかに微笑んで、三上は膝をついた。
伊達は三上を、まっすぐに見ていた。

連行される三上は、伊達に言った。
「伊達。俺がしたことは、組織とは関係ない。夏樹も冴子も小僧も、全て俺の独断でやった。だから…、やめるなよ。やめないでくれ。法から逃れた悪を闇に葬れるのは…、お前しかいない」。

パトカーに向かって、三上は進んでいった。
三上の手に、あすかが手錠をかける。
あすかが立っている伊達と、久遠を見る。

「ひとつだけ…、聞いてもいいですか」。
事件の後、夏樹の墓の前で、あすかが伊達に聞いていた。
「あなたも『JOKER』の1人だったんですか」。

伊達は、答えなかった。
墓地から海が見えていた。
伊達は、墓地の前に広がる海を、黙って見ていた。


テーマ : ジョーカー 許されざる捜査官
ジャンル : テレビ・ラジオ

正義だとは言わない 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (3/5)

冴子の部屋で、あすかは「でも不思議ですよね。どうして怪しいと思った時点で制裁しないんでしょうか」と言った。
「普通、容疑者が特定できたら裁こうとするはずです。でも『あの人』は、どの事件も必死で捜査して解決しようとしていた」。
あすかは思い出す。

春日に取調室で伊達は、「自首してもらえませんか」と言っていた。
だが、春日は「終わりにしましょう」と言って出て行こうとした。
「春日さん、本当に罪を償う気がないんですね」。

「償うも何もやってませんから。全部あのマヌケな医者がやったことですよ。医者って本当に身勝手ですからね」。
伊達は見つめる。
春日は勝ち誇ったように、伊達を見る。

「私を疑ってるんですか?」と、ストーカー殺人事件を装って婚約者を殺した山原も言っていた。
「はい」と伊達は言う。
「何か証拠でも?」

「証拠はありません。だからお話を伺いに来たんです」。
山原の前に、伊達は座る。
「できれば、正直に話していただきたい」。

しかし山原は「部活の指導があります。お引取りください」と去っていこうとする。
伊達は、殺された晴香の母親が、山原は晴香がやっとつかんだ幸せだったと言ったことを話す。
山原は顔色一つ変えず、出て行った。

久遠は、文弥という男の子が虐待を受けていると文弥の同級生の女の子から相談された事件があった。
だが、結局文弥は父親にころれて閉まった。
久遠は自分ひとりで父親を眠らせ、埠頭に連れて行った。

車のトランクの中で、文弥の父親に銃を向ける久遠。
しかし、町を荒らしていた連続窃盗団の見張りが、ベランダから文弥を落とす父親を目撃していた。
逮捕できる。
法で裁けると伊達は言った。

だが、久遠は納得しない。
「ダメだよ」。
三上が「久遠!」と叱咤する。

「ぱくってムショに入れたところで、いつか出てくる。人、殺してんのに」。
久遠が苦しそうな表情をする。
「あんなひどい仕打ちしてんのに。こんなクズ、いなくなったほうがいいんだよ」。

「それは君が決めることじゃない」と伊達が言う。
「法で裁ける人間は、法で償わせる!俺たちがやっているのは、復讐じゃない!」
久遠は結局、銃を父親に向けて撃たなかった。

「ねえ、もし、日向のアリバイが崩れたら、どうするの」。
日向という刑事が、「JOKER」を模倣して次々人を殺していた事件。
伊達は「もちろん、法で裁く。それが俺たちのやり方だ」と言った。


冴子の部屋で、久遠があすかに言う。
「あすかちゃんの言う『あの人』が誰だか知らないけど、本当は法で裁きたいんじゃないかな。『JOKER』は…」。
「なのに、制裁を続けている。どうして…」。


あすかは思い出す。
テレビの画面を見て、来栖が悔しそうに叫んでいたことがあった。
2年前、横浜で起きた無差別殺人。
椎名という犯人の少年が心神喪失を認められ、無罪になった。

久遠は椎名は正常だというが、一度「無罪」と判決が出た裁判は、後で容疑者に不利な証拠が見つかっても判決は覆らない。
だから、伊達は無駄だと言った。
わかってると久遠は言う、では何故。
久遠は椎名が正常なら、法から逃れた犯罪者だと言う。

コインを投げ、裏か表か当てるのが椎名の癖だった。
突然、深夜に精神病院を退院させられた椎名。
コインをかざしながら、椎名は「言ったろ?俺は選ばれた人間なんだよ。俺を裁くことなんてできないの」と楽しそうに笑った。

伊達は椎名に向かって銃を向け、「だから俺が裁く」と言った。
椎名の顔色が変わる。
「ふざけんな」。
凶暴な目をして、椎名はブロックの塊を手に伊達に近づいていく。

久遠が息を呑んで見守る。
「ふざけんな。ふざけんな!」
伊達に近寄った椎名が、ブロックを振り上げる。

「お前に明日は来ない」。
伊達が麻酔銃を撃つ。
椎名が崩れ落ち、その向こうに久遠が立っている。

久遠が椎名を運ぼうとした時、突然椎名が久遠の手をつかみ、「俺が精神鑑定で心神喪失を装えたって本気で思ってんのか」と言った。
「お前らは何にもわかっちゃいねえよ」と嘲笑った椎名だが、久遠に蹴飛ばされ、今度は本当に眠りについた。

伊達は椎名の事件を担当した女性・人権弁護士の氷川成美に、会った。
椎名の精神鑑定をした医師の幸田が、精神鑑定を偽ったという遺書を残して姿を消していた。
成美は、自責の念から自殺を思い立ったのだろうと言うが、伊達は違うと言った。

幸田には、妻の京香との間に過失で死なせた3歳の息子がいた。
そのことを、成美はセンセーショナルにまるで京香が殺したような記事をマスコミに発表すると示唆した。
成美はそれを盾に、幸田に自殺をほのめかしたのだった。

「こんな記事を預かりました。これが世間に出たらどうなることか」。
眉をひそめ、いかにも心配そうな表情を成美は装った。
「ふざけるな。こんなの出鱈目だ」と幸田は怒りで震えた。
「真実なんて、どうでもいいんですよ。それを書いた記者は早く掲載したくてしょうがないらしいんで」。

原稿を握りつぶした幸田は「どうすればいい」と聞いた。
「手は…汚したくありません」。
「死ねというのか」。
「私は何も言ってません」。

1人、夜中に事務所に残り、次の裁判の不正の相談をしていた成美は忍び込んできた伊達を前に不敵に笑う。
「私の言動は法に触れていない。法は犯さなくても人は殺せるのよ。法律はね、弱者を救う為にあるんじゃないの。元々、選ばれた人間の為にあるの。権力を持つものだけが得をするように作られてるのよ」。

ここまで言うと、成美は声を立てて笑った。
嘲笑った。
「利用できない人間がバカなのよ」。

伊達は、成美に銃を向けた。
一瞬、成美の表情が凍るがすぐに、「はっ、私を撃つつもり?」と不敵な表情に戻る。
「法の裁きを逃れても、お前の罪は消えない」。
「カッコつけないでよ。こんなことしてただで済むと思ってるの!」

「お前に明日は来ない!」
伊達は成美を撃った。
「うっ」と言って、成美はイスに崩れ落ちた。


冴子の部屋で、再び、あすかはファイルを見ていた。
あすかは「この時も妙だと思ったんですよ。無罪判決は引っくり返らないのに事件を洗いなおすだなんて…、でも、『JOKER』だったら裁ける」と言った。
久遠は黙っている。

「私は傷ついた人たちを守る為に、警察官になりました。自分のような被害者遺族を、1人でも作らないように」。
そう、あすかは言った。
あすかによって、回想される数々の事件。

椎名に娘を殺された父親が泣きながら、椎名に詰め寄る。
成美によって自殺に追い込まれた、幸田の妻の泣き顔。
子供が生まれるというのに、夫を殺された美代子。

鈴川に娘を殺され、時効を迎えた母親が娘の写真に謝ってくれと泣いていた。
あすかは伊達と一緒に、この光景を見て来た。
「でも、現実は解決できない事件がこんなにもある」。


あすかの知らないところで、黒尽くめの伊達が、これらの犯罪者に麻酔銃を向けていた。
「お前に明日は来ない」。
木内、春日、山原、椎名、成美、銃を持った日向。
それぞれ、撃たれて倒れた。

女子高生バラバラ殺人で、「俺が殺した」と鈴川は伊達に告白していた。
腕を組み、何ということはないことのように「しょうがなかったんだよ。女房と別れてくれってウルセエし、成績甘くしてやったら勘違いしちゃってさ。ほんと、迷惑なガキだったよな」と言う。

美咲が鈴川に刺される。
「どうすりゃいい?」
伊達が顔をあげる。
「どこにでも行くよ。どうせ時効は成立してるんだしさあ」。

夜のギャラリーで、女性を脅迫する電話を1人、かけていた鈴川。
黒尽くめの伊達を見ても、「残念だな。もう殺人罪じゃ問えない。俺は罪を清算したんだ」と言って立ち上がる。
伊達が麻酔銃を向ける。
鈴川が硬直する。

「今の自白で十分だ」。
「撃つな。待ってくれ、頼む」。
鈴川は伊達に向かってストップの形をした手を向けながら、後退していく。

「俺には家族がいるんだ。俺がいなくなったら、家族が悲しむ。いいのか?お前のせいで周りの人間が傷つくんだぞ。
「それでも、俺はお前を裁く」。
引き金に手がかかる。
「お前に明日は来ない」。


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こいつに明日は来ない 「JOKER 許されざる捜査官」特別編 (2/5)

あすかは思い出す。
ひどい運転のパトカーで現場に到着したあすかは遅刻し、来栖たちは渋い顔をしていた。
そのあすかを「かわいい」と言って久遠は前に出て来て、自分を「イケてる鑑識員」「イケ鑑」と紹介した。
2人きりで歓迎会をしようかと言う久遠を振り切ったあすかが見たのは、ジャージのズボンをはいた伊達だった。
「通称、仏の伊達。怒ったことがないから」と久遠が伊達を紹介する。

被害者は、8歳の満という子供だった。
子供は、改造銃の的にされていた。
頬に泣いた跡があった。

久遠は言った。
「こわかったろうな。どんなに泣いても誰も助けてくれなかったらしい」。
久遠は改造銃を手にすると、空のまま撃った。
「殺してやりてえ」。

「課長は殺したいほど、憎い相手っていますか」と伊達は井筒に聞いていた。
井筒は即答した。
「刑事部長」。
「即答ですね」。
井筒はふっと笑って「でも殺さない。それが人間ってもんだ」と、タバコをもみ消しながら言った。

「もし、殺したら?」
「そいつは人間じゃない。化け物だ」。
伊達は鏡の中の自分を見る。

容疑者の木内の家宅捜索をさせてくれ、と伊達は言ったが、木内の父親は検察の幹部だった。
簡単には手を出せない。
殺人現場の、今は廃屋になっているホテルに行った伊達は、文句を言うあすかには答えず、ソファに座った。

だが、木内以外に有力な容疑者がいた。
伊達は意味のないことをしているのではないか、そしてそれに自分は付き合わされているのではないか。
そう考えて苛ついたあすかは、近くにあった木を取り、壁を叩いた。

衝撃で窓をふさいでいた板が落ち、驚いた伊達は声をあげた。
「何でそんなことすんの!」
「聞こえてないかと思って」と、憤然としたあすかは伊達を見下ろしながら言った。

「ああ」という感じで、伊達はうなづいた。
木内はドアを開けたら、縛られている子供が見えたと言った。
伊達はあすかを木内が開けたというドアに立たせると、あすかが「あ」と声を出した。

「ね、そっからだと満くんの姿見えないよ」。
木内の記憶が、曖昧なだけかもしれない。
でも、そうじゃないかもしれない。

犯人は木内だった。
だが、父親が検察の幹部である木内には、手を出せない。
バーのカウンターで冴子がいちごミルクを飲む伊達に、木内ほんとにパクれないの?と聞いた。

「じゃあ、あとは神隠しを待つのみかあ…」と冴子がつぶやいた。
神隠し?と三上が聞く。
法の裁きを逃れた者のがある日、突然いなくなるのだ。

伊達は声紋を木内に見せ、銃声とタイミングから木内が子供を殺害した証拠だと突きつけた。
だが井筒が廊下で伊達に渡したものは、内容が違う供述調書だった。
「事実と反してますけど」と言う伊達に、井筒は「いいからやれよ!」と言った。

「決定事項だ」。
「圧力、ですか?」
「お前もわかってるはずだ。これも、俺たちの仕事」。

井筒がトイレでタバコを吸っているところを、あすかが怒って抗議しに来た。
この供述調書では、木内に非がないように見える。
納得できないと言うあすかに、あすかが納得しなくても関係ないと井筒は言う。

だったら上に掛け合う、このまま黙ってなんかいられないとあすかは言った。
目の前に犯人がいるのに。
弱きを守るのが警察じゃないのか。
「私は許せません、絶対に!」とあすかは猛抗議する。

あすかの前に井筒がドン、と音を立てて腕をつき、行く手を遮る。
「俺たちはね、特別な力を持ってるわけじゃない。所詮ただの人間だ。逆らえない相手だっているし…、限界だってある。な?」
口をとがらせたあすかは「じゃあ、木内は誰に裁かれるんですか」と言った。
「さあ、ねえ」と言った井筒はフフッと笑い、「正義のヒーロー…、じゃないかな」と言って出て行った。

「お前どう思う?こうして犯罪者が野放しにされる世の中を」と井筒は伊達に聞いた。
伊達は黙っていた。
「やりきれないね」と井筒。

被害者の母親が自殺未遂をした病院のロビーで、座っていた伊達が立ち上がる。
「どこ行くの」。
「帰るんだよ」。

「さすが仏の伊達さん、凶悪犯にも優しいんだね」と、久遠が個人で使っている部屋で、久遠が伊達に皮肉を言う。
伊達が足を止めて、久遠を見る。
「また犠牲者が出るかもしれないのに」。
「警察では木内を裁けない」。
久遠は、傍らのゴミ箱を思い切り蹴った。

木内に黒尽くめの伊達が「満くんを殺したのは、君だね」と言っていた。
「俺が殺した。ガキ相手に的撃ちは楽しかったなあ」と笑う。
「ちょっと当たっただけでギャアギャア泣くくんだもん、俺、興奮しちゃったよ!」と改造銃を見て、木内が歪んだ笑みを浮かべる。

無表情で近づく伊達に焦りを見せた木内が、「何だよ」と言う。
「満くんの痛みを、家族の哀しみを、今度はお前が味わう番だ」。
伊達が歩み寄っていく。
怯えた木内が後退していく。

「何言ってんだ、てめえ。うぜえんだよ!」と木内が銃を向ける。
木内が、銃を発射する。
伊達の右腕を、弾丸がかすめる。

しかし、歩み寄っていく伊達は、少しも怯まない。
表情も変えない。
木内の改造銃をつかむと、あっさりと奪い取る。
「わ」と声をあげ、木内はおびえて逃げ出す。

木内が子供を殺した時の光景が、蘇る。
泣き叫ぶ子供に向けて、木内は銃を発射する。
子供の声を聞いた木内は、口を開けて、狂気の笑いを見せた。

伊達から逃げてフェンスに行き当たった木内は「おとうさん助けて」とつぶやきながら、携帯を取り出し、ダイヤルボタンを押し始める。
だが後ろから、伊達が携帯を取り上げた。
伊達は木内に銃を向けた。

「何だよ、俺を殺して英雄気取りかよ!刑事がそんなことしていいと思ってんのかよ!」
木内が叫んだ。
「法から逃れた者を裁く。それだけだ」。

伊達の声には、何の感情もこもっていなかった。
「頼む、撃たないでよ、助けてよ」と木内が叫ぶ。
「お前に明日は来ない」。
伊達はそう言うと、木内に向かって発砲した。


冴子の部屋であすかは、「久遠さんはいつ『JOKER』に気づいたんですか」と聞いていた。
「『JOKER』って何?」と久遠はとぼけた。
あすかは「じゃあ、仮に久遠さんの知り合いに『JOKER』がいたとして、どうやって気づいたと思いますか?」と質問を変える。

「知り合いねえ。例えば…『JOKER』の犯行現場に何か落ちてたとか」。
あすかが久遠を見る。
久遠が「仮の話ね」と言う。
そして、久遠は思い出す。

木内の事件の時、久遠は「ボタン取れそうだよ」と伊達のシャツのボタンが取れそうなことを指摘した。
そのボタンはあすかがつけた、ピンクのドットのボタンだった。
伊達はそれをあすかに、「変わったシャツにしてくれて、ありがとう」と言ったのだった。

木内が次に犯行を行うはずだと予測した現場に、木内はいなかった。
ターゲットとなるはずのホームレスが、久遠の背後で洗濯物を干していた。
地面に、ピンクのボタンが落ちていたのを久遠が拾った。

次の制裁現場で伊達が制裁した後、後ろから「だーてさん」という声がした。
振り向くと「やっぱあんたの仕業だったんだ」と久遠が立っていた。
木内の現場で、久遠が拾ったボタンを放って寄越す。

制裁の後、久遠を始めて埠頭に連れて行った時のこと。
アイスキャンデーを食べながら、犯罪者を運ぶ車を持って来た三上が待っていた。
「あ」と驚く久遠。

「何考えてんだよ。こんな奴勝手に引き入れて」とバーで三上は伊達に怒った。
いちごミルクを作りながら、伊達は言った。
「似てたんですよ。昔の俺に」。

火傷の跡が痛々しく残る、久遠の背中。
子供の頃の虐待を受けていた久遠。
「伊達さん。あんたは俺と違うって行ってたけど、俺も普通じゃねえんだよ。苦しいんだよ。自分がどうにかなっちゃいそうで」。

伊達をまっすぐに見つめて、久遠は言った。
「あなたが手を差し伸べてくれなかったら、俺は路頭に迷っていた」。
伊達の両親が殺された事件の雨の中、並ぶ三上と子供の伊達を思い出す。

三上は言う。
「人が増えるということは、それだけリスクを伴うって事なんだぞ。わかってんのか」。
いちごミルクを3杯、作り終えた伊達は「覚悟してます」と言って、それをカウンターに置いた。
それが久遠の「JOKER」加入だった。


冴子の部屋で久遠がイスに座り、あすかが冴子のファイルをめくっている。
老人ホーム放火殺人事件も、ストーカー殺人事件も、被疑者は行方不明になっている。

木内の事件の後、老人ホーム放火殺人事件が起きた。
容疑者は経営者の春日だったが、証拠がない。
保険金欲しさに春日は、医者の羽鳥を脅し、今回の計画を実行した。
久遠は思い出す。


焼け跡で、「証拠はない、法は俺を裁けない」と春日は言っていた。
伊達は言う。
「だから俺が裁く」。

春日は医者の羽鳥に注射をさせて入居者のスズエを眠らせ、天ぷら鍋が発火するようにした。
炎に気づいた時には、スズエは動けなかった。
「お前は多くの命を奪った。それだけじゃない、残された家族の未来も奪ったんだ」。

伊達に銃を向けられた春日は、パニックを起こしながら叫ぶ。
「ふざけんなよ、騙されるほうが悪いんだろ!どっちにしろ残り少ない命だろう、少しぐらい早く死んだって別にいいじゃねえかよ!」
わめく春日に向かって、伊達は言った。

「お前に明日は来ない」。
銃を向ける伊達に春日は、「ちょっ、ちょっと待ってくれ」と叫ぶ。
「頼む助けてくれよ!」と。

その事件の後、ストーカー殺人事件が起きた。
「僕は悪くない」と、ストーカー殺人事件の山原は言った。
山原は暴走した久遠に拉致され、自白を強要されていた。
だが、山原が自白した中に、真犯人しか知りえない凶器が指定されていた。

「罪を償う気はないんだな」。
「あるわけないだろ、貸した金返せってビービーわめくから殺しただけじゃないか!」と山原は言う。
山原が、婚約者である晴香の首をベルトで絞めていた。
それを聞いた久遠が「ふざけやがって」、と銃を手にして、山原に迫る。

「やめろ、撃つな!」と伊達が叫ぶ。
「お前に殴られても蹴られても耐えてた…、彼女の気持ちわかるか?わかるわけねえよなあ?」
久遠が引き金を引く瞬間、伊達が銃に飛びつき、弾道がそれた。
実験室のビーカーのガラスが割れる。

「殺しちゃいけない!」
銃を持つ久遠の手を抑えたまま、伊達が言う。
「終わりのない苦しみを味あわせるんだ。被害者達のように」。

伊達は怯えて逃げる山原を押さえつけると、首を後ろから羽交い絞めにした。
山原は気絶する。
「こいつに明日は来ない」。


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この頃からJOKERは存在していたんですね 「JOKER  許されざる捜査官」特別編 (1/5)

「『JOKER』は、ある計画の名称です。『JOKER』とは、神隠しのことだったんです」。
伊達は井筒にそう言っていた。

あすかを拉致した三上は、あすかを前に言った。
「これ以上余計な血を流させない為に、この『JOKER』」を守らなきゃいけなかったんだ」。
三上の顔は悲しそうだった。
「これが悪と思われてもいい。だが、動機がなくても人が殺せる今の世の中には必要な悪なんだよ」。

三上を睨みつけて、あすかは言う。
「そんなの、私は認めない」。
「やるしかなかったんだよ…」。

あの事件の後、伊達は三上の身上書を見ていた。
三上が神隠しだったのではないか、と噂はあったが、三上は夏樹と冴子の事件以外完全黙秘していた。
伊達は、捜査会議に出ない。

不思議に思った婦人警官に、やってきた鑑識員が伊達が捜査会議に出ると、その事件は迷宮入りになるというジンクスがあると教える。
だから伊達は班長だが、会議に出ない。

「こいつは署内全員から嫌われてんだよ」と来栖が言う。
「そこまで言わなくても」と、伊達がデスクにうなだれる。
出て行こうとする伊達を来栖が、どこに行くんだととがめる。

伊達は、アイスが当たったからもう1本貰ってくると言ってアイスの当たりの棒を見せると出て行く。
捜査一課にやってきた鑑識員は、久遠を探しに来たのだった。
その頃、久遠は冴子の暮らしていたマンションを訪ねてきていた。
久遠が部屋に入ると、そこには、あすかがいた。

冴子の部屋の片づけを親戚に頼まれたのだとあすかは、言った。
「久遠さんも、親戚の方に頼まれたんですか?」
「ん、まあ…」と久遠は言葉を濁した。

東京拘置所。
そこで、伊達は三上に面会していた。
「久しぶりだな」。
伊達を見た三上は、そう言った。

三上のバーは、休業中になっている。
「こんなに早く閉めることになるとは、思っていなかった」と三上は言う。
考えてみれば、三上が警察を辞めて3年しかたっていない…と伊達は言う。
「3年もだ。お前には、いろんなものを背負わしちまった」。


3年前、三上のバーを訪ねた伊達は「いいバーじゃないですか」と言った。
三上は「いらっしゃい、お前が最初の客だ」と言って、カウンター席のスツールに座らせた。
「客としてなら、もっと笑顔で来られたんですけどねえ」。
「まあ、そう言うな」。

三上は「これがお前が1人で裁く、最初のターゲットだ」と言って、書類を見せた。
そこには、顔写真と中崎道宏という男のプロフィールが記されていた。
神奈川県警、組織暴力対策4課の刑事。

「警察官…」。
「ああ」。
一週間前、ピザの配達員が、銃撃されて殺された。
若いチンピラが自首して解決したが、やったのは中崎だった。

住川興業という、暴力団の事務所で中崎が組織から裏金を受け取っていた。
中崎は、次のがさ入れの情報を住川興業に教えていた。
その時、中崎は背後のドアのガラスに映った人の影に気づついた。
ピザの配達員だった。

「今聞いていただろう」とピザの配達員は、中に引きずり込まれた。
中崎は、「持ってるんだろう」と言って傍らにいた若い男から拳銃を受け取り、配達員を口封じの為に撃った。
何発も、弾丸を打ち込んだ。
その拳銃を中崎は、横にいた若い構成員にあっさり渡した。

中崎は、チンピラに罪をかぶせた。
どうしてそこまでわかっていて、逮捕できないのかと伊達は聞く。
中崎は、上司にも甘い汁を吸わせていた。

上手く立ち回っている、ということだ、と三上は言った。
暴けば警察の不祥事だ。
警察が中崎を守っている限り、法では裁けない。

「三上さん」。
「まだ迷っているのか」。
「でもな、やんなきゃ傷つく人間がいるんだ。昔のお前みたいな思いを、誰にも味合わせたくないだろ」。

伊達は思い出す。
両親が殺されたこと。
そのヤクザを、まだ子供の自分が刺したこと。
三上は「俺たちがやるしかねえんだよ」と言った。

その時、伊達に冴子から電話が入った。
伊達が冴子のマンションの前まで行くと、冴子が待っていた。
部屋に入った伊達に、「はい、これカズの荷物。まとめといたからね」と冴子はショッピングバッグを手渡した。


冴子は、警察に辞表を提出していた。
退職した冴子は廊下で、伊達に理由を話した。
「夏樹の事件をもみ消しちゃうような現実を知っちゃうとね、人信じられなくなるの嫌だから」と答えた。
「引き止めてくんないんだね」。

「僕は君にふられたんだ。そんな資格はないよ」と伊達は言った。
「やっぱりカズは女心がわかってない。…あたし、そんなに強くないんだけどなあ」。
冴子は笑っていたが、伊達に背を向けて廊下を歩いて行く冴子の顔は歪んでいた。

冴子の部屋の中、伊達に冴子は「一週間前のピザ配達員の銃撃事件、あれは中崎がやったんでしょ」と言った。
「ノーコメント」。
「警察の不正を暴く。ルポライターに転職した最初のネタには最適だよね」。
「余計なこと書かない!」

伊達は手品の花を次々咲かせている。
「中崎、見逃すわけ?」
「俺は中崎がやったなんて、一言も言ってないよ」。
「警察のもみ消しは、絶対許さない。それじゃ夏樹の事件と一緒じゃない」。

だが伊達は、「もし中崎がやっていたとした、俺は自首を勧めるよ」と言う。
「それでも動かなかったら?」
「…その時は、…神頼みしかないのかもしれない」。

そう言った伊達はバッグを持ち、「これ、どうもありがとう」と言って立ち上がった。
だが、伊達はテーブルの上の手品のセットを忘れて言った。
伊達の残した花を、冴子は半分呆れ、半分笑いながら拾う。


久遠は冴子の部屋にあった手品のセットを見て、「見てよ、これこ、伊達さんのだったりして!」と笑った。
あすかは笑わなかった。
顔をそらした。
久遠は「ノリ、わりいなあ、1ヶ月ぶりの再会だって言うのに」と言った。

しかし、あすかは笑わないで「どうして、何も教えてくれなかったんですか?」と聞いた。
「何の話?」
「そうやってみんな、ごまかすんですね」。

荷物をまとめていくあすかが、黒いファイルを見て声を出す。
それは「神隠し」と書かれた文字の上に2本の線が引かれ、「JOKER」と書き直されていた。
冴子が「JOKER」について調べたことが保管されている、ファイルだった。

「これ…JOKER」。
黒い、「JOKER」に関する記録と書かれたファイル。
あすかはそれを見て、伊達と初めて会った時のこと、そして担当した事件を思い出す。
久遠もまた、それを見て、伊達との出会いを思い出す。

あすかはページをめくっていく。
改造銃殺人事件。
あすかが、捜査一課に配属された時の最初の事件。
「この頃から既に『JOKER』は存在していたんですね」。


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2002年藤田まことさんのインタビューから

2002年ですけど、手元にある「時代劇マガジン」に藤田まことさんのインタビューが載っていました。
「必殺」と中村主水に関する部分だけですが、ご紹介。

中村家のシーンはまず、「現場でよろしく」だったそうです。
台本がないというか、「中村主水の家、別紙」と書いてある。
現場で考えて、作っていくわけです。

「主水、りつ、せんの3人のトライアングルでやっていたことは、日常の四季にあった話題。それをいろいろ考えてやってくれ、こと。
ひとつ、あんなことは2度としないでくれ、おもしろすぎる、と言われたことがある。

5月に放送する作品で、中村主水が非番で、ボーッとしていて空を見ると、鯉のぼりが上がっていない。
それでりつに『何で節句なのに、鯉のぼりがあがっていなんだ?』と聞くと、『母上に聞いてください』って。
『母上、なんで鯉のぼりが、あがってないんですか?』と聞くと、『鯉のぼりというのは、元気な男の子が生まれるように、元気な女の子が生まれるように真鯉緋鯉をあげるのです。うちは、全然その気がない。だから今年から鯉のぼりをあげるのは、やめました』。

『そうですか、じゃあ、鯉のぼりは蔵の中で寂しがってるんですね』。
『いいえ、ちゃんとお役に立てるように、わたくし考えております』。
冒頭のシーンがそれで、ずーっと話が進んで事件が終わって、引きで中村主水の家がポンと映るわけですね。

するとくぐり戸から僕が顔を出して、キョロキョロと往来を見るわけですよ。それで人が通り過ぎるのを待って、ほうきを持って外に出ると、主水は鯉のぼりで作った浴衣を着ているという(笑)。
それも現場で考えたんですけど、朝日放送がえらいおもしろいアイデアやけど、あれやられると前がどういうストーリーだったか客が忘れちゃうから、ああいうのはもうやめてくれって(笑)」。

たくさんの殺し屋が登場しましたが、その中でも印象に残っているのは?と、聞かれて。
「三田村邦彦くんと、山崎(努)さん」。
「いろんな方と芝居して、大きな財産になりました」。

中村主水の殺し文句っていうのも、いろいろありましたねとインタビュアー。
「この銭は、三途の川の渡し賃だ。大事にしろよ」。
「残るのは俺みたいな皺だらけの顔と、ひん曲がった背骨だけだ」。
「こんな稼業は、これっきりにしろよ」。
「今度会う時は、三途の川だ」。

一番印象的な監督さんは、というと。
「工藤栄一さんですね。あのエネルギーというか、妥協しないところ。それと三隅(研二)さん」。
「ある若い女優さんが、『金を払うんだったらさ、あたいのここをよーく見てからにしておくれ』と、長襦袢の裾をポーンとまくって言うシーン。

それを三隅監督は『あんたそれ、全然芝居になってないよ。ちょっとやめよ、みんな外に出て』と言って、『こういう風にやんねんで。こうしいや』と。それから午前中一杯、それだけを一生懸命教えている。午後になって、『もうあの子できるから、始めよか』。そういう時間を大切にしていける人でしたね」。

藤田さんは三隅監督にこう言われたそうです。
「おっさん、今まであんた何してたん?」
「ちょっと、テレビでいろいろやってました」。
「下手やなあ」。
「すみません」。

「ちょっと教えてもらって僕がセリフを言うと、『あんたそれは時代劇や。これは時代劇とは違うんや。現代劇のつもりでやらなあかんのや。『僕』『君』以外なら何喋ってもええねや。そういう役やろあんたの役は。そういう時代劇みたいなセリフしゃべんのやったら、東映行ってやってちょうだい」。

それでいろいろテストしていったら『だいぶようなったな』って、言われました。
シリーズが終わる頃、『おっさん、あんたやっと一人前になったな。この役、大事にしいや。まだまだこの役続くで。一生懸命やりや』と」。

本当にその通りになった。
三隅監督が最後に関わられた作品は、「仕置屋稼業」ですね、と。
「そうです。何本か撮っていただきました。一遍、中村主水が家に帰って夜遅い飯を食べる。その時、湯気のたったおつゆが出たことがあった。

そうしたら監督が『おい!吹いたら飛ぶような養子がな、帰ってきてこんな、あったかいおつゆなんか飲めることないやろ!あんた、よう考えて芝居しい!小道具おつゆ変えといで!中村主水、ふうふう言いながらおつゆ飲んでるがな。役者が役者なら小道具も小道具や!ほんなもん、夜中に帰ってきて養子にこんなあったかいもん出すかい!あんたよう考えて芝居しい!』って言われて、『すみません』(笑)」。

そして、松野宏軌監督の話に。
脚本を見た監督が「この本はできない」と言う。
すると次の監督に回る。

その監督もできない、そうすると松野監督に回ってくる。
どんな脚本でも脚本家「にはギャラ払ってしまっているから、そう簡単にお蔵入りでききないんですね、と。
松野監督は、松竹の昔からの子飼いの監督で、与えられた本を一生懸命考えて自分で直して現場に来る。

「それで『なんであんた、こんな本引き受けた?』と聞くと『しゃあないわ。俺んとこ回ってや。みんなやってぇや』と言う。
ですから、必殺では松野監督の作品が一番多い。最大の功労者ですね」。



中村家のシーン、いつの頃の話かわかりませんが、ああ慣れてきたらベテラン俳優さん女優さん同士だから、もう、台本がなくてもお任せできたんでしょうね。
すごい。

この鯉のぼりの話は、どのシリーズでしょうか?
「仕事人」であることは間違いないと思いますが、「IV」とか「V」でしょうか?
いや~、鯉のぼりの浴衣…、確かに強烈。
それが冒頭とラストにあったら、確かに何の話かは忘れてしまうかも。
これ3人で考えたんですか、だとしたらすごいですね。
役が体についてるというか、こうなると「もう一人の自分」ではないかと。

印象に残っているのは、三田村さんとのお答え。
これは、わかります。
長くシリーズを一緒にやって、それで三田村さんがほとんど無名な状態から一気に「秀」役で、ブレイクしてスターになるのを見ていたわけですから。

山崎努さんをあげていたのは、俳優として尊敬していたのももちろん、主水がこの稼業に足を踏み入れた最初の仲間の鉄を演じていたからではないかと思います。
まだ若い主水と、そして新しい試みの「仕置人」と喜劇役者だった藤田さんの新しい挑戦。
それを一緒にやった鉄は、山崎努さんでしたから。
主水にとって戦友、同士だった鉄こと山崎努さんの名前が出るのは、うれしい。

それから、中村主水の殺し文句、これは覚えているもんですねえとインタビュアーにも言われていました。
気の利いたセリフ、多かったですもんね。
工藤栄一さんは、土砂降りの雨の中、俳優さんを置いたりと結構過酷なことをする監督さんだったと読んだことがありました。

そういう風にして、そういう中でも人間が生きているという画が好きだったんだと。
リメイクされた1963年の映画、「十三人の刺客」の監督さんでもあります。
そう考えると、すごくこの言葉、実感します。

三隅研二監督。
さすがのエピソードですね。

おっさん下手やなあ、の言葉にも愛情が感じられたんでしょうね。
「必殺」は時代劇みたいなセリフを言わない、これは時代劇の形を借りた現代劇だ…と。
見事、「必殺」というドラマを言い当てている言葉ですね。

そして、中村主水という役について。
まさにその通りとなったわけで、役を育てたと同時に、この役の魅力をわかってたんでしょう。

「仕置屋稼業」で確か、主水が仕置きから帰ってきてかな、確かにご飯を食べるシーンとかあったように思います。
その時のこだわり!
こんなところに、というか、中村主水という役をよく理解してるんだなあ…と。

こだわる人は見ているというか、作る側の方が忘れてしまうことかもしれないんですが。
印玄の殺し技とか現実離れしてる面はあってもそれは娯楽としてで、こういう「主水の婿養子」とか、背景になる現実は押さえている。
さすがだと思いました。

それから松野監督。
前にも「変な本ばっかり僕には回ってくる」と言っていた…という話は聞いたことがありますが。
藤田さんから最大の賛辞が送られるだけのことは、あるんですね。

いやー、やっぱり、「必殺」の現場の裏話は相当におもしろいです。
「必殺」については、どの方の話もおもしろいんですけどね。
他の作品についての部分があったんですが、ここに出すのは「必殺」に関しての部分だけ。
非常に申し訳ありませんが、同時に非常におもしろかったです。



♪心も満タンに 「コスモ石油」のCM

コスモ石油のCM。

2002年ぐらいかな、金曜日に、コスモ石油提供の音楽のミニ番組がありました。
金曜日の夜、8時か9時の1時間番組が終わった後に流れていて、金曜日の夜の開放感を噛み締めながら見ていました。
だから印象深いのかも。

CM自体は石油がなくなる危機を訴えていて、「怖いよ」と言う人も確かにいました。
「ハッピーバースデ」のメロディと共に子供がろうそくを吹き消すと同時に、油田の炎が消える映像が重なります。




これも印象的。
オルゴールの中の出来事ですが、色褪せた地球を宇宙飛行士が石油の入ったバケツ?で拭いても、すぐに蒸発して青い色は褪せてしまう。



「宇宙飛行士の顔が怖い」とか、CM自体が何か怖いとか言われていましたが、危機感を感じさせる為でしょうね。


仕事きっちり 「引越しのサカイ」

これ、最初見た時、大爆笑しました。
今、大活躍している徳井優さんですよね。



女将、「おーい!」はないでしょ!ってもう大爆笑。
この若女将も上手いですよね。


第2弾。
ひかえめな美しさが要求されるもので、何と言う意地の張り合い。



すごいインパクトありました。
一回で覚えましたもん、このCM。
上手いと思います。


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Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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