こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2010年09月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2010年11月
TOP ≫ ARCHIVE ≫ 2010年10月

「フリーター、家を買う。」 2回目

「フリーター、家を買う。」が先週で2回目でした。

以前、会社で前の席に座っている子が、会社に不満ばかり言っていたんですね。
こういう仕事やここは自分にあわない、他にあう会社があるはずだとか何とか。
それで上司ははっきり、そんな事を言っている人にあう会社なんてあるわけないと言ってました。
そんなこと言ってるようじゃ、ない、と。

ただ、不満だけ言って動いていないのが明白だって言うんですね。
あう仕事に向かって動いている人間は、そんなこと言ってないって。
文句なんか言ってないで、やることやって着々と準備して、やめていくと。

ドラマでも、ハローワークの職員が、誠治に言ってました。
相手が自分を欲しいと思ってくれるか、誠治にそれだけの価値があると相手が思ってくれるのか。
そこに行けるだけの才能とか能力とかスキル、そういうものがあるのか、と、そんなこと言ってました。

相手が欲しいと思ってくれるものを身につけるには、忍耐やら努力やら経験やら、積み重ねが必要。
今回、主人公・誠治にはそれがないと、まず、そういうものを身につける根性がないと、まあ、そんなようなことを、言われてしまうわけですね。
いや、誠治は自分で身を持ってそう判断されることを、既に思い知らされてはいるんですが。

理想言うのは勝手だけど、それに見合うものが誠治にあるのか、っていうと、今のところない!と言われる。
今なんて、あっても職に就けないような、そんな状況なんだから、希望なんか言うな、と。

誠治が以前からの友人や建設事務所の事務員の女性に、言い訳めいた見栄言ってました。
何か夢があって、その為にフリーターやっているなら、あんな言い訳なんてしなくていいんですよね。
その点で、家を買う!という目標ができるっていうことは、大転換になるのではないか。

さて、「人生一丁上がり!」みたいに見える姉も、姑といい、病院の看護師といい、学校の父兄といい、なかなか厳しい人間関係の中にいるんですよね。
そして、「稼いでいる」「食わせている」ことが全てで、家族の問題から全て人の責任だ!と威圧しながら逃げているような父親。
ああいう人って、定年退職しちゃうと煙たがられるんじゃないでしょうかね~。

救いは、ゼネコンから来ている女性社員が誠治の理解者みたいな感じであること、社長とおじちゃんたちがいい人っぽいことですね。
納期に間に合って、車に乗っている時、給料手にした時、誠治の充実感達成感が伝わって来ました。
あの仕事発注するゼネコンも、良心的かな。

ドキュメント見ているわけじゃないので、その辺は良いと思います。
そういうのないと、逆に見るのつらい。
次も見ます。


スポンサーサイト

おしま頑張る 「必殺仕事人」79話

テレビ埼玉で放送された「必殺仕事人」79話。
「暗闇仕留人」の妙心尼も演じた、三島ゆり子さんの熱演。

常々、年増扱いされて「許せないわぁ~」というおしまが大ピンチ。
三島さんの演じるキャラクターって、どこか暖かみがあって、コミカルで笑いを誘うものが多い。
この、おしまも加代と良いコンビ。
それが、それが、火付け盗賊改めに捕縛されてしまった。

火付け盗賊改め、「鬼平犯科帳」で知られる通称、火盗改め。
放火、盗賊、博奕を主に取り締まり、奉行所とは違って機動性を重視しているので、奉行所では管轄外の僧侶や旗本も取り調べられる。
つまり、手順を踏まないで取調べができる。

その取調べは相当に厳しく、奉行所では禁止されている拷問もやったそうです。
だから火盗にかかると、大概の者は白状するらしい。
もちろん、やってなくても白状してしまったりもするし、死んじゃったりもする。

でもここは奉行所と違って裁判やったり、治安守ったりもしないで、犯罪者を減らせばいいので、これもありだったらしい。
とにかく恐れられることも、犯罪を減らす手段のひとつ…というわけでしょうか。
しかし、これ、迷惑だったりもするんじゃないですかね。

強盗とか、紙と木でできている江戸の町に放火とか、今だってとんでもない凶悪犯罪なので、恐れられて取り締まることは絶対必要なのはわかるんですけど。
鬼平みたいな火盗より、悪役の方が多いせいかもしれませんが。
「江戸を斬る」という時代劇で、西郷輝彦さん演じる遠山金四郎と対立する火盗改めを演じた成田三樹夫さんは、カッコよかったですけど。

それで、ここは町奉行所とは違う組織の為、取調べは役宅で行うんですね。
ここに送られたら、生きて出られないと言われる恐怖の屋敷。
そこにおしまが、捕まっちゃったんですね。

おしまも普段のおしまを知っていると、心が痛むほど過酷な拷問を受けます。
それでも仕事人のことは話さないおしま、根性あります。
それだけでもう、只者じゃないです。
おしまを助けに、潜入する仕事人たち。

そしておしま、これ以上責められるなら、斬られた方がいいだろう、もしかしたら喋ってしまうかもしれないし、と思ったのか、逃げ出そうとする。
斬られそうになったおしまを、仕事人たちが助ける。
瀕死のおしまの足に、綺麗だと言ってむしゃぶりつく外道は、秀さんが仕留めてくれました。
いやー、おしま頑張った!

年増女とか何だとか、いろいろ言われて、どちらかというと笑われるキャラクターだけど、根性は普通じゃないところを見せた。
やっぱり、仕事人だ。
おしま、お疲れ様。
誰も、おしまをバカにはできない。


「バースディプレゼント」を読んで

長くなっちゃったので、感想は別に、3つに分けました。
いつもながら、ほんと、まとめられませんね。


初めて読んだ時、やっぱりどこか不条理な気がしました。
狙われる大輔はもちろんのこと、奪われる穂波も何にも悪いことしてないのに、と思いました。
いや、そういう不条理な恐怖を味わう話なんでしょうけど。

でも同時に、甲田さんの気持ちもわかるんですよね。
何で自分なんだ。
他の、自分と同じ人間はあんなに元気なのに。

思うようにならない体で、自分と同じ年齢の輝くばかりに元気な14歳を前にしたら、恨みたくもなる。
どこにぶつけていいかわからない、悲しみと怒り。
それを抑えられるほど、14歳の少女の心は強くない。

何か、せめて自分の苦しみや悲しみを味あわせてやりたい。
自分のことを印象付けてやりたい。
だけど、ひどいこと言ってしまった…と自己嫌悪に陥り、同時に感謝もしていた。
これを知った時、そんな気持ちになっても、無理はなかったな…と思いました。

元気なら、普通に友達になれる子だったと思ったらかわいそうで。
彼女は、覚えていたのかな。
幼稚園で一緒の男の子が、両親を事故でなくしたことを。
それが、大輔だったことを。

彼なら、自分の気持ちをわかってくれる。
自分こそ、彼の気持ちをわかってやれる。
なのに、自分は側にいない。

それで、やっぱりその通り、つらい経験をしている大輔は、甲田さんの気持ちがわかるんですね。
他の人より、そういった気持ちに理解が及ぶ。
自分にとっては大変なことも所詮は他人事ということもわかっているし、みんなすぐに目の前のことで一杯になるってことも。
その残酷さも。

大人になって、自分もいろいろ経験するとわかっていくことですけど、彼はもう中学3年生にして、いろんなことが見えちゃうんですね。
そうなる前にどれほどのことを乗り越えてきたのかと思うと、大輔もかわいそう。

でも、大人になっても、まだそんな感じに思いやれない人はいますね。
誰かが病気になると、冷静に「あんな食生活しているからよ」とか、正しい指摘にしても、あまりにも冷酷なものの言い方したりね。
そうかもしれない、でもそうじゃないかもしれない。

だとしても、本人が一番、傷ついてつらいことは確か。
その辺がわかっていると、言ってることが正しくとも、不幸に見舞われた人に恨みでもない限りは、あんまりな言い方はしない。
自分の痛みを人の痛みに置き換えられるのが大人としたら、そういう思いやりが、大人になってもまだ、向けられない人っているんですね。

私の同僚はそういう人に対して、「あの人には、慈悲の心がない」と言いましたが、その人はまだコドモである、未熟である、と言ってもいいかもしれない。
14歳と違うのは、まだ子供だから…と許されないことで。

そういう人に対して、周りがどうかというと、みんな何も言わない。
でも、認めてくれているわけじゃないんですね。
相手にしてないだけ。

黙って、心の中で「いい大人が」「その年齢にもなって」と思っていたりする。
何も言わないから本人は「これでいいんだ」と思ってるけど、そうじゃない。
ここが、全部表に出しちゃう14歳とはまた違う、大人の怖いところでしょうか。
大人になって、14歳と同じことしちゃいけないのは、こういうことなんですね。

14歳なんて残酷なものだと、自分もきっとそうだったのだと思います。
意識していなくても、今も、人はどこかで人を傷つけているかもしれない。
存在自体が傷つけてしまう場合も、きっとあるに違いない。
そんな影響力は、自分にはないだろうとは思いますが。


話は戻りますが、気にも止めなかった甲田さんだったけど自分に降りかかる事態とわかったら、今度は一転してみんな、怯え始める。
まるで悪霊のように。
とことん、信用ないというか、愛情がない扱い。
それこそ残酷だ、と大人の心を持つ大輔は指摘する。

そして、最後の最後、またしても大輔に、「人とは何なのか」という問いかけるような事件が起きる。
実の子供のように育ててくれていた叔母。
本当の母親のように思っていた人が、実の子の為に引き取った大輔を殺そうとする。

やっぱり、自分は本当の子供ではないんだ。
「兄」ほどには、愛してもらえないんだ。
思い知らされた大輔の心の傷は、どれほどのものか。

「何かに取り憑かれたように」と、叔母は語っていました。
これはやっぱり、呪いだったのか。
いや、そうではなく、私は甲田さんが大輔を守ってくれたと思いたい。
刑事さんに大輔の家に注目させ、穂波に注意させることで。

だけど、最後、穂波には疑惑が起きる。
彩香と文香という名前、そして誕生日、容姿。
さらに、大輔の母親までが関わっている不気味さ。

これはあの事件と同じ、偶然なのか…。
全部、偶然なのか。
そうとは思えない、その心こそが怖い…ということなのか。

でもね、文香ちゃんも大輔はもちろん、穂波のことも好きな、普通の子ではあると思います。
事情を知れば、自分についていろいろ悩むと思います。
そんなことを信じたくなるラスト。
作者はいずれ、この子を題材に続編を機会があれば描いてみたいとのことでした。

宮脇明子さんは、「本当はどうだったんでしょう?」という、奇妙なクエスチョンマークをつけるようなラストが、本当に上手なマンガ家さんです。
うれしいはずの「バースディプレゼント」が、恐怖に変わる。
この「バースディプレゼント」は、人の心というものをいろいろ考えさせる作品だと思います。


バースディプレゼント 宮脇明子サスペンス・ホラー名作選 (2) (宮脇明子サスペンス・ホラー名作選) (集英社文庫―コミック版)バースディプレゼント 宮脇明子サスペンス・ホラー名作選 (2) (宮脇明子サスペンス・ホラー名作選) (集英社文庫―コミック版)
(2002/02/15)
宮脇 明子

商品詳細を見る



「林葉くんをもらって、植田さんの幸せを」  バースディプレゼント (2/2)

以下、ネタバレ、注意です。



登校した穂波たちは刑事に呼ばれた。
高樹さんの事件を捜査しているのだ、と刑事は言う。
事件?

三枝くんの家の火事は、タバコの火の不始末だった。
大本さんは、成績が下がった。
だが、この2つが重なることは、ありえる。
問題は、誰かがこの偶然を利用して、高樹さんの顔を切ったのではないか?ということだった。

確かに高樹さんは長い髪と赤いガウンは見たかもしれない、だが、暗がりでパニックを起こしていたのかもしれない。
誰かが成りすますことは、可能だ。
そしてドサクサに紛れて洗面所の個室でガウンを脱ぎ、人ごみに紛れることはできる。

では、諫早くんの足は?
実は諫早くんはかなり前から無理な練習を重ね、足に疲労がたまっていた。
そういえば、N大付属に推薦が決まった時、大輔は諫早くんが足をひねったことを心配していた。
あの事故は起こるべくして起こった。

じゃあ、あの暴走車も、石灯篭も偶然だったのか?
穂波が思った時、大本さんが泣きながら、叫ぶ。
高樹さんの顔を切ったのは、自分だ、と。

バカにされて、許せなかった。
そこへきて、成績が下がった。
すると、成績が下がったのも、何もかも自分をバカにした高樹さんが悪いような気がしたのだ、と。

驚く担任、そして泣きじゃくる大本さん。
あわてて外に出された穂波たちだが、それが彼女が大本さんを見た最後の姿だった。
大本さんは、署に連行されて行った。

帰宅した穂波に、甲田さんの両親から手紙が来ていた。
お見舞いのお礼と、それと…。
甲田さんは穂波たちが帰った後、つぶやいていたという。
悪い事をしてしまった、と。

3年になってすぐに入院したので、思い出はない。
「だけど、あのお見舞いは確かに、自分の3年生の思い出だね」と言った甲田さんは微笑んでいたという。
その翌日、彼女の容態は急変した。
手紙は、娘に中学3年生の思い出をありがとうございました…、と結ばれていた。

読んだ穂波は泣いた。
ごめんね、ごめんね、甲田さん。
呪いだなんて思ったのは、後ろめたさの裏返しだった。
お見舞いぐらい、何度でも行ってあげればよかった。

そして、大本さん、ごめんね。
高樹さんだけじゃない、私もきっとどこかであなたを傷つけていたのね…と。
中学3年生のその出来事は、穂波に人の心の美しさと醜さ、人生の煌めきと残酷さを胸に刻んで行った。
そう、最後の最後まで…。

大本さんは転校し、遠くで心の療養生活を送ることになった。
高樹さんの顔は元に戻り、登校してきた。
しかも、ニュースを知ったあるプロダクションが連絡を取り、アイドルとしてデビューの話がまとまったということだった。
家に帰った大輔を、「母親」が「兄」が電気技師試験に通ったと、豪華な夕食を用意して待っていた。

町の本屋で穂波は、高樹さんの事件を担当した刑事に会った。
諫早くんのケガも治り、呪いなんて考えた自分がおかしいと穂波は言った。
あの暴走車も、石灯籠も思い過ごしだった。
穂波がそう言った時、刑事の足が止まった。

ああ、刑事さんには話してなかった…、と穂波はあの暴走車と石灯籠の話をした。
話を聞いた刑事は、何だか嫌な話だなあと言った。
特に、車がもう一度、引き返して来そうだった辺りが…。

刑事は事件に際して、彼らの家庭環境も調べていた。
大輔の事情が、少々複雑なことも知っていた。
「じゃあ刑事さんは誰か、林葉くんの家の人が、って言うんですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけどね」。
穂波の頭の中に、大輔の「兄」の陰険そうな姿が蘇る。
「あのお兄さんだわ!」

夕食を食べた大輔は、風呂に入ろうとして足を止める。
「兄」が買ったばかりの大きな包丁を、丁寧に研いでいた。
包丁を研ぐ音が響く。

大輔が風呂に入った後、「父親」が「兄」に何をしているのか聞いた。
すると「兄」は、明日、友人と釣りに行くので包丁を研いでいるのだと言った。
大輔の入っている風呂の戸が、すっと開く。

「母親」だった。
大輔は戸惑いながら、「あのさ、おふくろ、よしてくれないかな。俺が入っている時に来るの」と言った。
「小学生のガキじゃないんだから」と言った大輔だが、「母親」が何か持っているのに気づいた。
「おふくろ、何持ってるんだ?」

ドライヤーだった。
コードが繋がっていた。
「母親」がスイッチを入れ、ドライヤーが作動する。

大輔は「風呂場でそんなもん、振り回しちゃ危ねーよ。感電するぜ。湯船にでも落としたら死ぬんだぜ」と注意した。
その時、「母親」の形相が変わった。
「…大輔」。
スイッチが入ったままのドライヤーを振り上げた「母親」は、「死んでちょうだい!」と言った。

穂波は大輔の家の人間に事情を聞いてくれ、と刑事を大輔の家に連れて行こうとしていた。
事件でもないのに行けない、と言う刑事だったが、穂波は友達の自分が呼び出すからと言ってきかなかった。
…嫌な予感がする。

大輔の家の近くまで刑事を連れてきた時、大輔の家の中から悲鳴が上がった。
刑事が大輔の家のベルを鳴らす。
「出ないな」。
ドアに手をかけた刑事は、ドアが開くことを確認して、中に入る。

家の中に駆け込むと、廊下にガウンを着て、大輔が立っていた。
呆然とした大輔は、穂波を見て、「おふくろが…」と言った。
ドアから、横たわった女性の足が見える。
刑事が飛び込むと、意識のない「母親」を「父親」と「兄」が囲んでいた。

「母親」の瞳孔を見た刑事は、人工呼吸を始めた。
ゴホッと咳をして、「母親」の意識が戻る。
どうして、こんなことに?

大輔は「母親」が自分が入っている湯船に、電源が入ってモーターが回転しているドライヤーを突っ込もうとしたのだと言った。
とっさに大輔が風呂の蓋で防いだら、誤って自分が感電してしまったのだった。
「おふくろが、何故、こんな真似を」と、「兄」がつぶやく。

刑事が言う。
「大輔くんが相続した財産を使い込んだ為ですね、林葉さん」。
刑事が大輔を調べた際、「父親」と「母親」が文書を偽造し、大輔が相続した財産を使い込んだ疑いが出てきた。

「父親」は会社を拡張したが、思うように業績は伸びなかった。
その為、大輔が相続するはずの遺産に手をつけてしまった。
だが大輔が中学を卒業する時には、弁護士と3人で今後の協議をすることになっていた。

その時には全て、ばれるだろう。
会社は整理しなければならなくなり、大きな負債を抱えるだろうと「父親」は言っていた。
それもしかたのないことだ、と「母親」も覚悟していた。

しかし、「兄」である息子が帰って来た。
やっと家業を継ぐ気になり、真面目になって帰って来た息子。
今、会社をつぶしたら、今度こそ犯罪者になってしまうかもしれない。
会社をたたむわけには、いかない…。

大輔が死ねば、財産は大輔の父の兄である主人が継ぐ。
使い込みもうまく、カムフラージュできるだろう。
自分は大輔を実の子のようにかわいがっていたから、誰も不審には思わないだろう。

9月の終わりに「母親」はキーのついたままの車を見て、ついふらふらとそれに乗って大輔をひこうとした。
それには失敗し、またその後、何度も思い悩んだが、息子が電気技師の試験に合格した。
今度こそ、と、「母親」は決心した。

「私は今まで、大輔を我が子のように育ててきました。信じてはもらえないでしょうけど…、本当に」。
そう言って「母親」は泣いた。
「でも、大輔が死ねば全てが丸く収まるような気がしてしまった。今思うと、どうしてだかわからない。まるで、何かに取り憑かれたように…」。

全てが明るみになり、大輔の後見人には叔父夫婦の代わりに、本当の父親と親しかった弁護士がなった。
大輔は言った。
会社が苦しいことも、遺産のことも、自分は全然知らなかった、と。
そんなもん、どうでもよかった。

事故直後によく思った。
どうして、自分だけ、あの車に乗っていなかったのか。
今また、考える。
乗っていれば、自分もここにいなくて、今度みたいなことにはならなかった…。

「ダメ、そんなこと言っちゃ!」
穂波は思わず、大輔に抱きついていた。
甲田さんの呪いだと思った時も言った、林葉くんが死んだら自分は不幸だって。
だからそんなことは、言わないでほしい…。

月日は流れた。
アイドルになるはずだった高樹さんは、スカウトしてきたプロダクションが倒産。
年賀状には、3人目の子供ができ、またまた太ってしまったと書いて来た。
もう美少女の面影は、あとかたもない、と書いてあり、どっしりとした重量級の彼女の写真があったが、何だかんだで幸せそうだと穂波は思った。

諫早くんは、体育の教師をしている。
結果的にあの時のケガが原因で、選手としては大成しなかった。
三枝くんは二浪して入った医学部を1年残して、神様を探しにインドに行ったまま、音信不通になったとのことだった。

大本さんには、あれから会っていない。
療養先で自殺したとか、大学に数年遅れて入り、今はそういった施設で教師をしているとかの、風の噂をいくつか聞いた。
穂波は大本さんはきっと、いい教師になっていると信じた。

そして、穂波と大輔は大学を卒業した後、結婚した。
女の子が1人、生まれた。
大輔はなくなった母親と同じ、「文香」という名をつけた。

ある日、穂波はアルバムを整理していた。
すると、大輔の幼稚園の時の写真が出てきた。
大輔と並んでいる女の子に、穂波は見覚えがあった。

名前の欄には、「甲田彩華」とあった。
大輔は全然、覚えがなかった。
甲田さんと大輔は、幼稚園で一緒だったのだ。

穂波は、今になって思う。
あの一連の出来事には、確かにそれぞれ原因があった。
だが、結果的に甲田さんの言う通りになったのだ。

あの4人の自慢の持ち物は、やっぱり甲田さんがあちらの世界へ、持って行ってしまったのではないか?
自分が見た白い顔は、本当に幻だったのか?
あの時、自分は大輔が殺されるということばかり考えていたが、別の意味はなかっただろうか?
…甲田さんは大輔が好きだったのではないかという、15歳の少女の勘はやはり正しかったのではないか?

穂波は親子で、遊園地に遊びに来ていた。
2人の子供の文香は、遊園地でハンカチを落とし、拾ってもらっていた。
大輔はアイスを買いに行き、疲れた穂波は、文香が見える少し離れたベンチで休んでいた。

「文香」と刺繍されたハンカチを見て、拾ってくれた人は「フミカちゃん?それともアヤカちゃんかしら?」と聞いた。
「フミカ、でも私はアヤカの方がよかったな」と、文香は答える。
穂波は、少し離れたところで、文香をボンヤリ見ていて思う。

大輔は、気づかなかっただろうか。
母親と同じ名前だといってつけた娘の名前、「文香」が、「アヤカ」とも読めることに。
以前、文香と同じ誕生日の人がいたことに。
そして、文香は自分たちのどちらにも似ていないが、知っているある人にはとてもよく似ていることに。

そこまで考えて、穂波は首を振る。
きっとそんなことを考えるのは、疲れているせいだ、と。
大輔がアイスを買って、文香のところに戻ってくる。

文香が大輔に抱きつく。
「パパ、文香のことが好き?」
「大好きだよ」。
「誰よりも?」
「誰よりも、だよ」。

文香は大輔を見上げて言う。
「ママよりも?」
甲田さんの言った言葉が、蘇ってくる。
「林葉くんをもらって、植田さんの幸せを…」。


「次の誕生日なんて来ない」 バースディプレゼント (1/2)

宮脇明子さんの「バースディプレゼント」。
ちょっといろいろと、考えさせられるホラー作品でした。


植田穂波と林葉大輔は、中学3年で同級生。
美少女で勝気な高樹さん、家が病院経営で近所では有名な洋館の三枝くん、将来はオリンピックの短距離選手かという諫早くん、秀才の大本さん。
この4人とは班も同じで、よく一緒に行動していた。

だがこの班には、もう1人、女の子がいた。
中学3年になってすぐに入院してしまったクラスメートで同じ班の、甲田彩華。
彼女が入院している病院で、従兄弟が看護師をしているという諫早くんは甲田さんの病状が思わしくないという話を聞いてきた。
3年になってすぐに入院した為、彼女とはほとんど交流のない4人だったが、それを聞いて甲田さんを見舞いに行く。

甲田彩香は、長い髪に青白い顔をして赤いバラ模様のガウンを着て、個室に入院していた。
4人が見舞いに行くと、甲田さんは「1人部屋がいいって言ったら、変えてくれたの。最近、みんなどんなワガママも聞いてくれるの。どうしてかしらね…」と暗い顔をして言った。
雰囲気を変えようと高樹さんが、星占いで甲田さんの誕生日を聞いた。

すると、来月、8月だという。
じゃあ、バースディプレゼントは何がいい?と聞いた4人に、甲田さんは言う。
「…誕生日プレゼントをくれるの?」
甲田さんは、4人を指差して言った。

「じゃあ…。大きな家の三枝さん、あなたからは大きな家を。綺麗な顔が自慢の高樹さんからは、顔を。諫早くんからは、速い足を。大本さんから、成績を」。
さらに、穂波と大輔を指して、「植田さんと林葉くん、あなたたち仲がいいんですってね。そうね、あなたたちからは…、植田さんから林葉くんをもらって、そして植田さんからは幸せを」と言う。

「あなたたちを幸せになんかさせない!」
そう言った甲田さんは、発作を起こし、ベッドの上に突っ伏した。
廊下にいた母親が、あわててかけつける。

だが、甲田さんは「何しに来たの。自分たちはこんなに元気です、って見せ付けに来たの?」と叫ぶ。
そして、ベッドに横たわった彼女は悲しそうに、「次の誕生日なんて来ない…、来ないのよ」と言った。
帰り道、勝気な高樹さんは「何かむかついてきた」と言う。
「かわいそうな病気の人、って、同情してたのにさ」。

三枝くんも同意した。
しかし、帰り道の関係で、穂波と2人になった時、大輔だけは言う。
「でも俺、甲田の気持ち、わかるような気がする」。

穂波が驚いて大輔を見ると、大輔は「甲田、あれ気づいてるぜ。自分がもう、長くないってことを」と言った。
「それが俺たちの元気な姿見て、どうして自分だけ死んでいかなきゃならないのか。みんなはあんなに元気なのに。何百人に1人かは14歳で死ぬ者はあるとしても、それが何故、自分でなくてはならないのか、って」。

大輔は普段と違う、とても思いつめた様子だった。
「やり場のない気持ちを俺たちにぶつけるしか、なかったんだと思う。こんなの、不公平だ、って」と言った。
それを聞いた穂波は、大輔のしみじみとした言葉に思わず涙をこぼす。

本当にそうだ。
自分は、そこまで考えていなかった。
でも、本当にそうだ。

そんなに深く考えず、見舞いに行こうだなんて、自分は浅はかだった。
涙をこぼす穂波に、大輔はそんなつもりで言ったんじゃないとあわてた。
その時、大輔の母親が通りかかり、泣いている穂波を見て、大輔が女の子を泣かしていると責めた。

大輔の母親は、ふっくらと太った、優しそうな女性だった。
翌日、穂波がそのことを大本さんに話すと、大本さんは意外なことを話す。
やっぱり、あんなことがあると、林葉くんには甲田さんの気持ちがわかるのかもしれない、と。

大輔は幼い頃、自分以外の家族全員を交通事故で亡くしていた。
では、昨日会ったのは…。
母親ではなく、それは大輔の叔母だった。

そんなことがあった3年生の夏休み、穂波に大輔から電話がかかってくる。
甲田さんがなくなった、という知らせだった。
なくなったのは、8月の29日だった。

もうお見舞いになんて、行かない方がいいのだろうか。
あれからそんなことを考えて気にしていながら、一度も会いに行っていなかった…と穂波は思う。
葬儀の日は暑く、甲田さんのことより、流れ出る汗を気にしていることがかえって、申し訳なく、悲しかった。

2学期が始まると、花が供えられた甲田さんの机を見て、クラスではほんの少しの間、話題にはなった。
しかし、教師が学力テストの話をすると、みんなすぐにそちらに気を取られた。
中学3年生の生活が、みんなを追い立てた。

そんなある秋の日、穂波は大輔と一緒の帰り道、車にひかれそうになる。
間一髪、避けた2人だが、穂波は走り去る車の背後の席に、こちらを見ている白い顔を見る。
その顔は、甲田さんだった。

凍りついた穂波。
さらにひこうとした車は、Uターンして戻ってくるかに思えた。
自分たちをひこうとしている…!

だが自転車が通りかかると、車はそのまま去って行った。
家に戻った穂波は、その日が9月29日。
甲田さんの月命日であることを知った。

翌日、その話をした高樹さんは笑い飛ばした。
そして、苦手な教科の宿題を、大本さんに見せてくれるように頼むが、大本さんは宿題は自分でやらなければ意味がないと、冷たく断る。
大本さんの態度と言葉に怒った高樹さんは、大本さんを成績が良くてもあの顔じゃ、自分なら自殺ものだと影口を叩く。

しかし、去ったと思った大本さんがドアを開けると立っていた。
忘れ物をしたのだと言う。
焦りながらもきっと聞こえてなかっただろうと、高樹さんは言った。

その日の帰り道、たくさんの消防自動車が走っていくのを穂波は見る。
火事だった。
しかも、火事の元は、三枝くんの家だった。
見物人の中に、甲田さんそっくりの長い髪の女性の後姿があるのを、穂波は見た。

翌日、、学力テストが返される。
うっかり足を組んだ高樹さんにつまづき、大本さんは転んでしまう。
わざとじゃないと謝った高樹さんだが、その拍子に大本さんは点数の悪かったテストを見られてしまう。
あれで成績も悪けりゃ、どこにもとりえないじゃない…、と高樹さんは嘲笑う。

家が火事にあい、父親の経営する病院で寝泊りしていた三枝くんの下に、1本の電話がかかる。
電話は「バースディプレゼント、どうもありがとう」とだけ言って、切れた。
この話を4人にした三枝くんに、大本さんは自分にも同じ電話がかかってきたと話す。

火事にあった三枝くん。
成績が落ちた大本さん。
もしかして、甲田さんが自分たちの一番大事なものを持っていこうとしているのではないか?

大本さんはそんな不安を訴える。
そして、穂波はあの暴走車に襲われた日、あの日は甲田さんの月命日だったと大輔に訴える。
だが、大輔は、「甲田はちょっと前まで、一緒に机並べていたんだぜ」と言う。

「それが死んだ途端、悪霊扱い。うまくいえないけど、残酷だぜ」。
残酷。
机の上の花を見て、改めて穂波はその言葉を噛み締めていた。
大輔はふと、とても深いようなことを言う、と穂波は思った。

その頃、諫早くんのN大付属高校への、スポーツ推薦入学が決まる。
しかし、大輔は練習に励む諫早くんの足を心配する。
少し前に、足をねじった、と言っていたのだ。

帰宅途中、私服に着替えて遊びに行こうとしていた高樹さんだが、突然、デパートの洗面所の電気が消える。
そして、顔が熱くなったので、触ると、ぬるりとした感触があった。
ポタポタと血が落ちる。

鏡には、甲田さんの白い顔が映る。
長い髪、赤いバラ模様のガウン。
顔を切られた高樹さんは、絶叫する。

学校で高樹さんの事件は話題になり、ちょっと勝気で綺麗な高樹さんを良く思っていない人たちは高樹さんの顔は元に戻らないと噂していた。
放課後、穂波たちは教師に視聴覚室に呼ばれた。
そこには、顔をガーゼで覆った高樹さんがいた。
事件として捜査がされているが、これは甲田さんのしわざだと高樹さんは言った。

高樹さんの言葉を聞いた諫早くんは、自分は足を、と言われたことを思い出す。
せっかく、N大付属に推薦入学が決まったのに、足を取られるなんてとんでもないと叫び、諫早くんは飛び出していく。
だが、その途端、諫早くんは階段を踏み外し、転んだ。

足が妙な方向に曲がる。
諫早くんは、足首を骨折していた…。
甲田さんの言葉が蘇る。

「林葉くんをもらって、植田さんの幸せを」。
次は林葉くん。
そう思った穂波は、帰宅する大輔の寄り道に心配でついていく。

だが大輔の寄り道は、実の両親の墓参りだった。
ふと、穂波は甲田さんは、大輔が好きだったのではないかと思った。
だから「林葉くんをもらって…」と言ったのではないか。

墓を見て、自分はここにまもなく入るんだろうか?そう言った大輔に穂波は、「林葉くんが死んだら、私は不幸だわ」と口走る。
そうだ、大輔がいなくなったら、穂波の幸せはなくなる。
「林葉くんがいなくなったら、私は不幸なんだから」。

大輔が驚く。
「大好きだから。好きな人が死んだら、不幸のどん底だわ」。
突然の穂波の言葉に、驚いた大輔たちの横を墓石を積んだ車が通る。
その時、石灯篭が崩れてきた。

もう少し、体がずれていたら危なかった。
頭が直撃されていた。
甲田さんだ、と穂波は確信した。

どうやって、大輔を助けたらいいんだろう?
思い余った穂波は、五寸釘を買いにホームセンターに行く。
そこで穂波はいつか会った、ちょっと怖い感じのする大輔の「兄」と会う。

大輔の兄は包丁を手にしており、これなら人間でもぶつ切りにできるだろうと穂波に言った。
近所の人間は「林葉のところのドラ息子が帰って来た」「あそこの会社も、今は厳しいだろうに」と噂した。
五寸釘を買ったものの、甲田さん相手にどうやって呪い返したらいいのだろうと穂波は途方にくれた。

その朝、穂波は学校の席に甲田さんが座っている夢を見た。
目覚めた穂波は、自分の部屋に甲田さんが来る夢をまたしても見る。
「もらいに来たわ。林葉くんを」。

悲鳴をあげて目を覚ました穂波の部屋に、母親がやってきた。
そして、大輔が兄に刺された…と話した。
泣きながら、穂波は目を覚ます。
もう、自分が夢を見ているのか、現実なのか、穂波にはわからなくなった。


水虫 暴れん坊将軍

「暴れん坊将軍」の、生真面目なイメージを笑いにしている。
上手い!



松平健さん、やっぱりこのスタイル、一番お似合い!
しかし、水虫のCMっておもしろいの多かったですね~。


「どこかで…」 山崎努さんのアウスレーゼ

この声、この調子、どこか「仕置人」の鉄ちゃんを思わせる。
鉄ちゃんも山崎さんなんだから、当たり前といえば当たり前なんですけど。
何だか鉄ちゃんが、女の人をひっかける時みたいな錯角を起こします。
でもこちらは、インテリの先生ですね。

だから微妙に鉄ちゃんとは違う、生真面目さがただよう。
草食系、肉食系なんて妙な分け方と思いつつ、この方はどう考えても肉食系だなあと思います。
だからインテリでも、何気ないセリフでもどこかに危ない香りが漂う。
ああ、考えたら、それゆえの山崎さん出演なんですね。



セリフ一言で、人を惹きつける。
山崎さんの引力の強さを、思います。


タコに噛まれた人、いますか?

海で遭難した人を真っ先に襲うのはタコ、という話を聞いたことがあります。
誰だったかが、お祖母さんから聞いた話だそうですが、私、海でタコに噛まれたことがあります。
「痛いな」と思って足を引き上げたら、なんか足についてきた。
それは、足に噛み付いていました。

周りの人がその軟体の形状に驚いて、「大丈夫?」と言いました。
本人、どうしていいかわからず、「平気!」と言って平然としてました。
というか、他に表情の浮かべようがなかったんですね。
人間、本当に当惑した時は、意味なく笑うもんだと身を持って知りました。

タコだ。
何で、タコに噛まれてるんだ。
タコって人を噛むの?

いや、何でここにタコがいたの?
きっとタコに近寄って行ったのは、こっちの方なんだろうけど。
…タコに噛まれた人、いますか?

他にも1回だけ、噛まれた男の人の話を聞いたことがありますが…。
噛んだタコはその晩、美味しく食卓にあがったそうです。
タコの口って、鋭いですよ。
グロテスクな光景です。


こんなことがあった何年か後に、こんな話を読みました。
その時、ふと、タコに噛まれた時のことを思い出しました。


ある水族館で忘れ去られた水槽があり、そこに一匹のタコが飼われていた。
誰も、水族館の人間も、岩が入ったタコの水槽のことは忘れていた。
しかし、タコは岩陰で生きていた。

タコは飢えていた。
その為、タコは自分の足を食べた。
1本、また1本、次々食べた。

そして次に体を食べた。
やがて、タコの姿はなくなった。
薄暗い水槽の中には、もう何もいないかに思われた。
しかし、姿はなかったが、その水槽の中には何かものすごいものが、飢餓と不満を持った目に見えないものがいた。


初めて読んだ時、すごい話だなと思っていましたが、これ、萩原朔太郎の『宿命』という詩集の中の、「死なない蛸」という一編だったんですね。
怖い話だと思いました。
そのうち、忘れられるということは何と悲しいことか、と思いました。

そんな風にマイナスの思いにとらわれましたが、でも今度は勝手に、違う解釈をしてみます。
思いは、死なない。
身を削るほどの思いは、生きる。
そしていつか、必ず、飢餓と不満は埋められるのだ、と。

しかし、それにしてもあの時のタコ。
どうして私を噛んだのだ、と。
何の不満があったのだ。
それを私に晴らして、どうするのだ。

うーん。
…タコに噛まれた人、いますか?


麻呂のものになれ!心しておじゃれ!

友人に教えてもらいました。
こんな動画があったんですね。
菅貫太郎さんが悪いお公家さんを演じる「水戸黄門」。

最高です!
まさに正しい悪役!



これはコミカルな悪役ですが、ほんとーに楽しい。
シリアスな悪役でも、とにかく出れば「こやつの最後を確認しないと気がすまない!」という気にさせる。
人を楽しませてくれる悪役です。

…本当に、今も菅さんがいてくださったらいいのになあ、と思います。
これ見たら、思いませんか?
他に悪いお公家さんを演じたら、故・成田三樹夫さんもすごかったです。



宮脇明子さん作品 「秘密」

宮脇明子さんの作品、「秘密」。

中学生3年生の女子、真棹(まさお)は親がアメリカに赴任となり、高校までの3ヶ月、叔父の家に下宿することになった。
到着当日から真棹は子供のいないはずの叔父の家で、子供が廊下を走る。
居眠りをしていた真棹は、目の前で立っている幼女の足を見て、「どこから入ってきたんだろう」と疑問に思う。

目を覚ますと、黄色の運動靴をはいたその子供はいなかった。
夢?
その頃、世間を騒がせていた連続幼女誘拐事件が解決していた。

叔父は小学校の校長であり、厳格で融通の利かない真面目な性格だった。
親を見送って戻った真棹は叔父の車の中に忘れ物をして、トランクの中を開ける。
その時、真棹はトランクの中に、叔父の車にそぐわない黄色いリボンを見つける。

何故か、不吉な気持ちがする真棹。
そんな真棹に対して、隣の家の息子はとんでもない不良だから付き合うなと警告する。
叔父とまるで違う、優しくて人当たりの良い叔母は、隣の息子の通っていた小学校と中学はかつて荒れており、いじめで自殺した子もいたと言う。

警戒する真棹だが、叔父の警告とは違い、高校1年の隣の家の息子の保は天真爛漫な性格で気さくな少年だった。
だが保は手を三角巾で吊っており、保の母親に言わせると保はケガが絶えないのだと言う。
隣の家の人はいい人のようだ、と思った真棹はますます、叔父に対して苦手な感情を抱く。

苦手な叔父と優しい叔母との生活が始まったが、ある日、真棹はこたつで勉強中、居眠りをしてしまう。
夢の中に幼い女の子が出てきた。
「この子、この前も夢で見た」。

ぼんやりとそう思う真棹に幼女は、真棹に「おねえちゃんに、あゆみの秘密を見せてあげる」と言う。
そして「これね、タイヤの跡なんだよ」と言い、お腹についたタイヤの跡を見せる。
「ひかれた時は痛かったよ」。

あまりのリアルな夢に、真棹は目を覚ました。
驚いて目を覚ました真棹の目に、連続幼女誘拐事件の報道が入ってきた。
あゆみという子はまだ見つかっておらず、捜索が続いているという。
(ここから先、ネタバレしています)。



自分が見ているのは、この子だ。
真棹は確信する。
翌日、隣の保に小学生を見て、ギョッとしている真棹は呼び止められる。

「私の言うこと、信じてくれる?」
真棹は保に相談し、図書館で行方不明のあゆみちゃんの記事を見る。
行方不明になった日の服装は、黄色のリボン、黄色の運動靴だった。
黄色の運動靴。

行方不明になった7月20日、近くで白い乗用車が目撃されていた。
叔父の車も白だ。
だが、犯人は4人も5人も同じといわんばかりに、あゆみちゃんについての供述をコロコロと変えているらしい。

叔母はそのニュースを見て、叔父の学校から被害者が出なくてよかったと言うが、叔父は不愉快そうにテレビを消した。
何一つ証拠はない。
しかし、真棹はあの、トランクで拾った黄色いリボンを調べれば良いことに気がつく。

家に戻った真棹は思い切って叔母に、「この前見た女の子、連続幼女誘拐事件の被害者のあゆみちゃんだった」と話す。
「まだそんなこと言ってるの」とアイロンをかけながら、叔母は取り合わなかった。
だが、真棹は、叔父があゆみちゃんをひいて、床下に遺体を隠したのではないかという疑問をぶつける。
叔父は、社会的な立場から、連続幼女誘拐事件に便乗して、事件を隠匿しているのではないか。

真棹は、黄色いリボンを見せてこのリボンが、あゆみちゃんのものかどうか調べればわかると言った。
そこまで聞いた叔母はニッコリと笑い、「いい子だから、このことはもうわすれましょうね」と答えた。
正直に言うことばかりが、いいことじゃない、と叔母は言う。
「みんなあの犯人がやったと思っているんだから、そうしておけばいいじゃないの、と。

叔母の言葉に驚いた真棹は、「何言ってるの、叔母さん。そんなことできるわけないじゃないの」と反論した。
「そうよね」と納得したように見えた叔母は、とりあえずアイロンは危ないからコンセントを抜くと言って立ち上がった。
そして、真棹の首に、抜いたコードを背後から巻きつけた。

「仕方なかったのよ。校長夫人が事故を起こすわけにいかなかったのよ!」
叔母は叫んだ。
その頃、保は母親からあゆみちゃんがいなくなった7月20日、夏休みが始まった日。
真棹の叔父は、夏休みが始まった日から視察旅行に行っていていなかったことを聞いていた。

ひいたのは、叔母だった。
首を絞められながら、もがいた真棹の足が障子を蹴り、廊下に体が出た。
すると、廊下の突き当たりの横の部屋の障子が開いていた。
そして、黄色いリボンをした女の子の顔が覗いていた。

真棹は、はっきり見た。
女の子の体が、廊下に出てくる。
叔母も見た。
恐怖に顔色が変わる。
コードを握る手が緩まる。

その時、何をしているんだと言って叔父が帰って来た。
「あの日、ここにいたのは…」と言って、保が駆け込んでくる。
叔母の手からコードが落ちる。
「校長夫人が事故を起こすわけには、いかなかったのよ…」。

叔母は逮捕された。
あゆみちゃんをひいた叔母は、そのまま遺体をトランクに乗せ、まだ改築中の家の床下に埋め、駐車場の為のコンクリートを上に乗せた。
その床の上で、真棹は暮らしていたのだ。
叔母はあんなにも、優しい笑顔で…。

話を聞いていた保の頬に、新しい傷がある。
どうしたのかと真棹が聞くと保は、昨日歩いていたら看板が落ちてきて、もう少しずれていたら大変なことになったのだと言う。
そして、保は真棹に交際を申し込んできた。

だが、真棹は返事をしなかった。
推薦入学が決まっていた高校は入学を取り止め、真棹は両親のいるアメリカに行くことにした。
もう会えなくなる、そううつむいて言った真棹に、保は諦めて、別れを告げた。

言葉とは裏腹に、真棹は保の後ろを見ていた。
そこには、女の子が恨めしい形相で、保を見つめていた。
真棹が見た女の子は、もう1人いたのだ、と。
もう1人は保の後ろにいて、じっと保を恨めしい目で見つめていた。

あの時、叔父が言った言葉。
隣の息子はとんでもない不良だ。
叔母は、保の通っていた小学校と中学はかつて荒れており、いじめで自殺した子もいた、と言った。

保のケガが絶えないのは、何故だろう?
一体、どんなことをして、この女の子に取り憑かれたのか。
それは真棹には、わからない。
だが、そんな保があんなにも天真爛漫な笑顔ができることが何より怖い…と真棹は感じていた。



凄みのある画を描く宮脇さんにしては、ソフトな画です。
でも怖い。
あゆみちゃんの描写が、すごくリアル。

いやー、まさか、タイヤの跡を見せるとは。
40ページほどの作品ですが、1時間…、いや2時間サスペンスかな。
そんなドラマにできそうです。

これを機会に、真棹さん、「見える人」になっちゃったようで。
事件が無事、解決したと思ったら、オチがまだついてた。
女の子は、もう1人いた。

それは保の背後で、保をじっと見ている。
この顔がとっても、暗い、怖い。
だからちょっと見ではわかりにくいけど、確かに女の子。

ランドセルを背負っている感じの、小さなおとなしそうな女の子。
感じからすると、小学校かな…。
そういえば、作品中、保はいつも、どこかしらケガをしていた。

このまま、保はケガが絶えず、いつか大きなケガをするのか。
女の子に取り憑かれるなんて、一体どんなひどいことをしたのか。
でも、忘れてるんだ。
いや、ひどいことしたと思ってないんだ?

だから罪悪感も危機感もない。
読み終わって、確かにそっちが怖かった。
叔母の優しそうな笑顔といい、保の天真爛漫そうな解放的な笑顔といい、笑顔が怖い作品です。

今日から「秘密」というドラマが始まりますが、こちらはゾッとする「秘密」が、実は2つあった作品でした。
いい人そうな人の怖い「秘密」。
この「秘密」は、宮脇明子さんのホラーマンガセレクションIIの「悪夢」に、収録されています。


宮脇明子 THE BEST2 悪夢~ホラー漫画セレクション~ (宮脇明子 THE BEST) (クイーンズコミックス)宮脇明子 THE BEST2 悪夢~ホラー漫画セレクション~ (宮脇明子 THE BEST) (クイーンズコミックス)
(2004/01/19)
宮脇 明子

商品詳細を見る