こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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でも綺麗…。

雪!
良いことはないなあと思っていたんですが、雪景色はやっぱり綺麗。
木に雪が積もり、真っ白な風景は情緒があります。

観光地なら、温泉なら、すごく楽しい。
地元の方には「いい気なもの」と思われても、「綺麗…」と言ってたと思います。
今だって今日はあったかくして、ココア作って、シチュー作って雪景色見てたら楽しいと思う!

ある作家さんも「締め切りが終わって、好きな食べ物がたくさんあって、雪が降っているのをあったかい部屋から見てる、幸せ」と書いていた。
わかる。
今日は電車の停車前「○○大学受験生は、ここで降りてください」とアナウンスがあるんだ。
入試の方たち、頑張れ!


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あの世でお女郎さんたちが呼んでます 「助け人走る」第7話

第7話、「営業大妨害」。


顔色がひどく悪い女郎が、突然背後から首を絞められて殺される。
死体は井戸に投げ込まれ、井戸の側には下駄が置かれた。
また1人、寝ているところを濡れた紙を顔に覆われ、窒息した女郎がいた。

さらに1人は必死に廊下に逃げたが、部屋に引きずり込まれ、手首を切られた。
そして、水を張った桶に手首を浸された。
女郎の口には、「かきおきのこと」と書いた手紙がくわえさせられていた。

助け人仕事で掃除に来ていた平内を、為吉が裏の仕事で呼びに来た。
しかし平内は吉原、箱根、御蔵島と命が縮まるような仕事ばかりなのでお断りと言う。
為吉はそんなことを言って、後悔しないかと、平内さんの奥方の話を出しても平内は断る。
そこで頼み人は飛び切りのいい女と言うと、一度引っ込んだ平内が顔を出す。

清兵衛は文十郎と平内に、今までは立て続けにキツイ仕事だったので、今度はお膝元で赤子の手をひねるような仕事を用意したのだと言う。
根津権現の裏の岡場所と聞いて、文十郎は自分は芸者が専門、それは平内と言う。
しかし平内はたった一人の芸者の尻に引かれて、手も足も出ないくせにと憎まれ口を叩く。
今度の依頼は、巴屋という岡場所にお浜と言う女郎がいるから、付きまとっているヒモと縁を切らせてやってくれという。

相手が武士でもなく、簡単な仕事に思えた。
文十郎と平内が行くと、岡場所がひっそりしている。
相手が武士でもなく、簡単な仕事に思えた。
平内は「警動だ」と言う。

非公式の売春窟である岡場所を、奉行所が取り締まる日なのだ。
一応、奉行所が岡場所を調べに来るので、女郎たちは一晩中、外に逃げている。
要するに形ばかりの取り締まりであるのは確かだが、残っているのは年寄りと病人ばかりなのだ。

平内が巴屋に行くと、1人の年取った女郎が酒を飲んでいた。
お浜と言ういい女のことを話すと、見りゃわかるだろと言った。
年を取って咳き込んでいるこの女郎が、お浜だった。
平内は為吉の言葉を思いだし、忌々しく思った。

助け人だと名乗ると、お浜は喜んだ。
お浜は勘次に5度も玉ころがしにあって、ひどい目にあったと訴える。
だが勘次はちょっとした力持ちで、下手に近寄れないのだという。

文十郎と平内が向かうのを見て、お浜はまさか斬るんじゃないだろうねと言いだした。
殺してくれなんて頼んでいない、お浜を泣かしたなと言って5~6発殴ってくれればいいのだとお浜は言う。
勘次を殺したら、今度はおまえたちを承知しないと言って、お浜は咳き込んだ。

車坂へ向かった文十郎と平内は、勘次が大勢の子供に芋を持って来たのを見た。
口は悪そうだが、子供たちは勘次に懐いて楽しそうだった。
平内が勘次を呼び出し、2度と女郎には近づくなと言った。
勘次はそんなことを言われる筋合いはないと言って、平内と争いになった。

平内は文十郎の手を煩わせることもないと言って、勘次と向かい合いに腕を押し合ったが、怪力の平内が押されてしまう。
これには文十郎も驚いた。
平内も大概の者には負けない怪力だが、勘次には驚く。
機転を利かせた平内が勘次の気をよくして、その隙に勘次を組み伏せるのに成功した。

「だいたい玄人のやり方ってのは、こういうことになってんだ」と言った文十郎がお浜には近づかないか聞くと、勘次は首を縦に振らない。
あんまりなことをすれば、お浜が怒るだろうとぼやく文十郎の言葉を聞いた勘次は、お浜に頼まれてきたのかと聞く。
途端に勘次は笑い出し、逆にお浜を食い物にしようとやってきた男たちだと思ったと言う。
確かに勘次は女衒だが、あくどいことは一切しない。

並みの女衒は女郎から半分は取るが、勘次はそんなに取ったりしない。
嘘だと思ったら、女郎たちに聞いてみるといい。
どうもお浜は最近、勘次がお駒という女郎に惚れてご無沙汰なので、頭に来たらしい。
では、自分たちは痴話ゲンカのお先棒を担がされたのか。

その頃、1人残っていたお浜の元に女郎たちを殺害した男たちがやってきていた。
この体ではもう使い物にはならないし、売り飛ばすこともできない。
そう言うとお浜が抵抗する中、男たちはお浜を吊るしてしまった。
男たちの首領は、古物商で裏で女郎屋を営む唐津屋の喜平だった。

文十郎と平内は、昨夜、勘次を説得するのに、飲食代がかかったと言って、為吉から1両、計3両ずつせしめてご機嫌だった。
お浜に報告に向かった平内は、お浜が夕べ、首を吊って死んだことを知る。
かきおきと書かれた手紙が見つかって、同心たちもお浜は自殺と断定した。
文十郎が女郎絡みの仕事をしてきたと聞いて、お吉は女郎の様子を聞き、店の名を追求していた。

「やっぱし夕べ、その女となんかあったんだね?大体ね、岡場所に仕事に来て、まっすぐ帰るタマじゃないもんね!」とお吉は言う。
そして「悔しいよ、ほんとに!あたしがこんだけ操立てしてるっていうのに、小汚い女郎なんかと…、くやしーっ!」と文十郎の鼻をつねり上げる。
やってきた平内は笑い、本当に文十郎はまっすぐに帰ったと言ってくれるが、お吉は仕事料を持って出て行ってしまう。
平内はお浜が労咳を苦に首をくくったと言うと、文十郎は確かに妙な咳をしていたと納得する。

だが平内は、お浜があれから首をくくったのを不審に思う。
文十郎は普段はにぎやかな岡場所が、夕べのように静かだと急にカッとなったりするのだろうと言う。
今もお吉が最初は仲良くやっていたのに、金を見つけた途端、あの状態になったと言って、お吉が平内のお金も持って行ってしまったことに気づく。

しんみりと酒を飲みながら、平内は岡場所で、自分たちで夕べのような困りごとを引き受けたら儲けになるのではないかと言った。
だが文十郎は岡場所に行くにも金がいるし、女郎たちに信頼してもらうまでとても無理だと言った。
しかし平内は考えがあると言って飛び出して行った。
文十郎は平内が行ってしまって、支払いができないことに気づく。

その平内は派手に近所の者を誘って、巴屋で遊ぶ。
お浜が首を吊って厄払いしたのか、景気の良い客が大勢来たと女将は上機嫌だったが、翌朝、平内が600文しか持ってないことに怒り狂う。
地回りの富造がやってきて、桶伏せにすると言う。
金が届くまで、岡場所で、ちょっと窮屈に暮らしてもらう。

何のことかと思えば、岡場所とその近辺の住人がはやし立てる中、大きな桶が運ばれる。
桶が伏せられ、その上に大石が乗せられて、平内が中に閉じ込められる。
文十郎が布団をかぶり、クシャミをしていると、しのが文十郎の着物を引き取ってくる。
支払いができず、着物を置いてきたらしい。

平内に半分貰ってくると言うしのだったが、文十郎は平内はいないと教える。
その頃、平内は桶の中から外を見ていると、身なりの良い武家の妻女らしき姿が見える。
酔っ払いにぶつかられたその女性に、桶の中から平内が声をかけると、それは長屋の者に平内の居場所を聞いてやってきた元の妻の綾だった。
「今日は八の日か!」

綾は桶の隣に立ち、息子の新吾が論語や道場の試合で素晴らしい成績を収めたと誇らしげに語った。
平内が自分がなぜ、こんなところにいるのか不思議に思わないのか尋ねると、「そういえば、おもしろいところにお入りで。新吾が見たら、さぞおもしろがって」と言った。
「また新吾の話か」と言う平内に、綾は当然、と言った。
平内が辻家を出て、無頼のやからと成り下がったからには、新吾だけが生きがいだと言う。

お約束の養育料をと手を出すと、今日はないと平内は言う。
すると、綾の口調が変わる。
「それではお約束が違いましょう。八、十八、二十八と月に3回、八の日に新吾の養育料を払うというお約束、お忘れでございますか!」

平内はこの次の八の日にまとめて払うと言うが、綾は怒る。
ないものはないのだから、嫌なら勝手にしろと平内が言うと、綾はでは次の八の日にまたここに来ると去って行った。
平内は、いつまでここにいると思ってるんだろうと笑う。

勘次が惚れたお駒の元に行くと、お駒はけいどうの晩に女郎の自殺が相次いだと怖がる。
お駒はもしかして、女郎たちは殺されたのではないかと言う疑問を持っていた。
翌朝、富造の合図で桶が開けられた。
今日は警動の日なので、一日出て行っていいと言われる。

巴屋の女将が、周りを気にしながら、古道具屋の唐津屋に入っていく。
唐津屋の主人、喜平が巴屋の女将に売り上げで文句を言い、「金を増やせない奴は人間のくずだ」と叱り飛ばす。
誰もいなくなったけいどうの夜、巴屋に文十郎と平内が留守番をしているところに、勘次が通りかかる。
2人は勘次を座敷に上げ、あの大勢の子供たちは何かと聞くと、火事で親を失った子供たちなのだと言う。

自分もそうだったのだが、1人をかわいそうに思って引き取ったら、次々引き取ってしまったのだと言った。
文十郎と平内が勘次を見る目が穏やかになり、酒を勧める。
勘次は酒が進むと、お駒がお浜たちは殺されたのではないかと疑問に思っていると伝えた。
そして自分はお駒の考えすぎだと思っていたが、そうでもないかもしれないと思い始めたと言う。

どうしてそんなことをする必要があるのかと平内は聞くが、勘次は稼ぎにもならない足手まといだからだと教える。
それに、死人が出た店は、全部同じ男が経営しているはずだ。
さらにここの女将が雇われ女将だし、お駒の店もそうだ。
文十郎はこの話が本当なら、ただ事ではないと言った。

その直後、お駒が首吊りした姿で見つかる。
勘次は、不審な男たちが逃げていくのを追う。
1人を捕まえて問い詰めると、お駒が感付いたからだと白状する。
怒りの勘次が首を絞めていると、背後から浪人に刺される。

文十郎と平内が駆けつけ、文十郎が逃げていく影を追う。
瀕死の勘次が平内に、「お駒の話…、本当だ」と告げる。
「わかった、もう喋るんじゃねえ」。

「くやしい」。
そう言うと勘次は懐に手を入れる。
戻ってきた文十郎が「おい、何だよ!何が言いてえんだ!」と叫ぶが、勘次は死んでしまう。

平内は「見なよ、文さん。これだよ、これが言いたかったんだよ」と受け取った小判を見せる。
「この金で奴らを頼むと、そう言いたかったんだよ」。
文十郎と平内が1両ずつ持って、立ち上がる。

男たちは唐津屋に戻ったおり、浪人が喜平に「何も心配はいらない。肩先からあばらまでしかも三太刀だ、万が一にも生き返る気遣いはない」と言う。
喜平は「それなら、よろしい」と言い、男たちはこんなヘマをしたのは初めてで、冷や汗をかいたと笑った。
その時、「こんばんは」という声がする。

「こんばんは」。
「誰だ!」
ふすまを開けると、文十郎が座っている。

「おめえさんがたをな、呼んできてくれって頼まれたんだ」。
「誰に頼まれたんです」と喜平が聞く。
「お浜、お駒。おめえさんがたが、その手であの世へ送ったお女郎さんたちだよ」。

浪人が刀を抜いて文十郎に斬りかかる。
男たちも腕まくりをし、手に刃物を持っている。
「ああ、ここは手狭だな。庭へ出ろよ、庭へ」。

男たちが襲い掛かる。
文十郎はヒラヒラとかわしながら、庭に下り、振り向きざま、上から下へ、一太刀で1人を斬る。
喜平が驚いて、屋敷の中へ引っ込んでいく。

1人、また1人、文十郎がかかってきた男を斬る。
浪人が刀を構え、前に出る。
文十郎が刀を刃を下にして、血を振り落とすように縦に振る。
向かい合い、にらみあう。

浪人が斬りこんでくる。
文十郎が交わし、地面に伏せる。
地面に仰向けになった文十郎は兜割りを抜き、それで太刀を受け止めた。

浪人の刀をはじくと、片手に持った刀で胴を払う。
斬られた浪人は、よろめいた。
文十郎は深く、さらに深く、浪人を刺す。

怯えた喜平は蔵の奥に逃げ込む。
冷や汗をかいている。
蔵に並んだ仏像の背後から、煙が立ち昇る。

ギョッとした喜平の前に、平内が立ち上がる。
キセルから針を出し、近づいていく。
悲鳴をあげて逃げる喜平を捉える。
喜平が平内のいる柱の反対側に顔を出すと、平内は喜平を刺した。

清兵衛が文十郎と平内を呼び出し、仕事を請けてくれるかと聞いていた。
今度は表の仕事だ。
為吉を呼ぶと、為吉が「はいはい」と返事をして、大勢の子供たちを連れてくる。

この子供たちは父親代わりの男をなくしたので、奉行所が行き場を見つけるまで親代わりに面倒を見るように言われる。
「どのぐれえで…」と聞く平内に、役所仕事なので1年になるか、2年になるかわかりかねると答えられた。
「2年!」

清兵衛は笑い、「あんたたちもこれに懲りたら、今後はこそこそしねえで、助け人の仕事は全部、あっしに任せたほうが無難なようですよ」と言った。
為吉は「さあ、あのお2人が今日からみんなのおとうちゃんですよ」と言って子供たちを押し出した。
しのが清兵衛の店の前を通りかかると、文十郎と平内が子供を背負い、大勢を引き連れて出ていく。
そのあまりの格好に、清兵衛も為吉もしのも、大笑いした。


警動。
「新・仕置人」の名作・8話「裏切無用」でも、出てきますね。
この日は岡場所のお調べで、お女郎さんたちがみんな、外に逃げている。
ひっそりとした岡場所で、風邪と称して残ったなじみのお女郎さん目当てに鉄が通う…というお話でした。

警動とは、吉原と違って、幕府非公認の私娼窟の取り締まり。
もちろん、警動の日のように毎日ひっそりしているわけじゃない。
まあ、幕府のほうでもある程度のこういう場所はあった方が治安も安定するからと、非公式ではあるが認めていたらしいです。
だいたい、江戸の町方では女性が圧倒的に、男性に比べて3分の1以上は少なかったらしいですから。

しかし、吉原には「営業大妨害」でもあるから、幕府に取締りをお願いする。
ここでお女郎さんたちが違反でとっ捕まると、今度は吉原で最長で3年間、無償で働かなきゃいけなかったそう。
本当は3ヶ月ぐらいで済むケースが多かったみたいですが、それにしても貧しくて売られてくるお女郎さんが無給で働くって相当なこと。

だから、形ばかりの取り締まりでも、一応はお女郎さんたちは避難して岡場所がカラッポになる。
岡場所にとっては「営業大妨害」ですね。
それで実際、警動の夜は吉原にお客さんが多かったりしたらしいです。

警動の日というのは知らされているから、あんまり意味がなかったりしたらしいですが、たまに本気の警動があった。
不意打ちでやられたりすると、ものすごい数が検挙されたとか。
現代でもあんまり、このあたりの事情は変わらなかったりするようなので、人間と言うのはいつの時代もあんまり変わらないのかなと思ったり。

話はこの警動の日から始まる。
この日も残っているお女郎さんたちということは、たいがい病気か年を取った人たち。
彼女たちが、次々殺されていく。
しかも自殺を偽装されている。

影には人を人とも思わない、金儲けの道具にする経営者がいた。
ちょっと1話の「女郎大脱走」の、女郎地獄編を思い出す話ですね。
違うのは、ちゃんと女郎の身の振り方を考えてやっている女衒が関わるところ。

この女衒・勘助は一見、ひどい悪人に見える商売だし、お浜が言うにはひどい男らしい。
そこで助け人が懲らしめる為に登場。
だが、この勘助、平内も驚く怪力で、しかも身寄りのない子供たちを面倒見ている気のいい男だった。
依頼はお浜のヤキモチだった。

この辺りが1話と違う点で、展開が楽しい。
文十郎と平内が一度で勘助を気に入ってしまうところも、いかにも助け人らしくていい。
さらに楽しいのは、豪遊して女将もご機嫌になったところ、お金を持っていない平内。

するとやってきたのは、富造親分。
富造親分が、江幡高志さん!
さすが、お似合いです。
てっきり最後に殺されちゃうのかと思ったら、ここでは岡場所の用心棒で特に悪事を働いてなかったので、殺されませんでした。

お金を払えなかったらどうなるのかと思ったら、ただ働きさせられるんじゃなくて、桶をかぶせられて晒し者にされるんですね。
ちゃんとご飯は差し入れてもらってましたが、不自由だし、情けないことには変わりない。
みんな見に来るし。

ここでもう1人登場するのは、平内の奥方、いや元奥方・綾!
小山明子さんです。
美しく、気位が高く、いかにも武家の奥方らしい。
毎月、八のつく日に平内から養育費を貰いに参上。

家を出た平内のことなど、今は歯牙にもかけていないよう。
なぜなら桶をかぶせられている異常事態を前に、何も気にしないで一方的に息子の成績の話をし始めているから。
ところが養育料がないと聞くと、口調が変わる。
うーん、この家庭は身分を越えた人情味溢れる平内には、さぞかし味気ない武家の家だったことでしょう。

さて、お浜が殺され、勘助と一緒になるはずだったお駒もからくりに気づきそうになった為、殺され、それを追った勘助も殺されてしまう。
コミカルだからうっかりするけど、この話、人が良く殺される。
事切れる前の勘助の「くやしい」と言う言葉が、とてもリアル。
そして勘助からお金を受け取って、仇を取る文十郎と平内。

殺しのシーンは、文さんの「おめえさんがたが、その手であの世へ送ったお女郎さんたちだよ」という言い方が粋。
「ああ、ここは手狭だな。庭へ出ろよ、庭へ」とか。
文さんの立ち回りを見ると、「助け人」は田村高廣さんという出演者あってできた殺陣が一杯だなあと思います。

なんて言っても阪妻さんの息子さんだから、昔ながらの正統派の殺陣ができる。
それに現代風のアレンジを加えて、軽妙で豪快な田村さん流の殺陣になっている。
あれ?清兵衛さん通さなくていいの?と思ったら、最後にちゃんとそのオチがつく。
しかも勘助が預かっていた子供たちがどうなるのかの心配も、ちゃんと解決。

こういうところが、「仕事人2009」で源太が預かっていた子供がどうなったかわからなかったでしょう。
ああいうの、余談に思えるけど、視聴者って結構、気になるもんなんですよ。
勘助が預かっていた身寄りのない子たち、どうなっちゃうのかなあと。
だからこうやって示してくれると、安心。

あんなにカッコよかった文さんと平さんが、最後に子供を背負ってしまらない姿になる。
この落差がまた、笑いとカッコよさも引き立てる。
見たら監督、三隅研二監督ですもんねー。
タイトルの「営業大妨害」、警動の意味を知ると、いろんなところが妨害されているという話なんだなと思えます。


歌謡コンサートでジェロくん

NHKで「歌謡コンサート」聴いてたんですが、ジェロくん!
なぜか、「くん」付けにしてしまうジェロくん。
そのジェロくんが「夜明けの風」という曲を歌ったんですが、これ、作詞作曲が平尾昌晃先生。

平尾先生だからですか?
イントロから「あ、必殺っぽい」と思いました。
それとも、必殺を含めて、これが平尾メロディってものでしょうか?

何かカッコイイ!
夜に疾走するイメージが浮かぶ。
お願い、これで殺しのテーマ作ってください!
「仕事人」以外の新シリーズでもいい、これをテーマに作ってください!


雪?

傷口が痛い。
明日は雪?
どうもシクシクすると思ったら。
いつのまにか私は、天気予報になってしまった。

明日は2月29日。
うるう年ですもんね~。
オリンピックとアメリカ大統領選は、うるう年なのだ!

うるう年生まれの知り合いは、12才だと言い張る。
じゃあ、バースデープレゼントはいらないね…。
いいんだね?

助け人が助けられなくて  「助け人走る」第6話

第6話、「上意大悲恋」。


夜の闇の中、手に手を取り合って逃げる若い男女。
そこに気持ちよく酒の徳利を持った文十郎が通りかかり、2人にぶつかって「痛い痛い痛い」と言う。
2人には追っ手がかかり、追いつかれた若侍は刀を抜いた。
女性を連れて行こうとした侍を蹴散らし、必死に逃げようとする。

徳利を持って見ていた文十郎の側に来た女性は、「お願いでございます、何とかご助成を」と言う。
その女性を再び連れて行こうとした侍を、文十郎は「待て!」と突き飛ばした。
「何だか知らんがな、こんなに嫌がってるもんを」と言った文十郎に、侍たちは「黙れ!邪魔だ素浪人!」「尾羽打ち枯らしたおのれなどが出る幕ではないわ!」と怒る。

「それはそうだけど」と言った文十郎に向かって、刀を振り上げるので、文十郎は応戦した。
刀を振り上げた男を抑え、頭をしたたかに打つ。
徳利を持ったまま、くるくると回転し、刀を構える。

若侍は1人斬り、「梓殿!」と女性の手を取り、2人して文十郎の陰に隠れた。
文十郎は斬りかかる1人をかわし、「あわてるなよ、みねうちだよ」とつぶやく。
向かっていく文十郎に、後ずさりしていく2人の侍。

すれ違いざまに文十郎は1人に太刀を浴びせ、もう1人も叩きのめす。
向かってくる1人、そして最後の1人を打ち、塀の上に置いた徳利を取る。
そして振り向くと、「あっ」と指を指し、梓と呼ばれた女性の側に駆け寄った。
梓は自害しようとしていた。

文十郎は懐剣を叩き落とすと、男が「梓殿!」と駆け寄る。
「いきなり人の前で命のやり取りを始めやがって…、ばぁか!」と文十郎は怒る。
泣き崩れる梓をなだめる男を「立て」と引っ張り上げ、梓と一緒に来るように言う。

若侍は津島小一郎と名乗った。
文十郎はひどい言葉を言ったことを詫び、一杯勧めた。
小一郎が腕を少し斬られているのを見て、酒で消毒し、しのに綺麗な布を持ってくるように言いつける。
2人の間柄を聞くと、小一郎は頭を下げて礼を言ったが、わけは言えないと言った。

「たってお許しをいただきたい」。
「そうかい。気をつけてな」と送り出そうとした時、平内と為吉が入ってきた。
「やめたほうがいいよ。表には侍たちがうようよしている」。
文十郎の忘れ物を届けに来たという2人だが、表はだいぶ殺気だって大勢いるらしい。

為吉が清兵衛のところに急ぐ。
南無妙法蓮華経と染め抜いた着物を着ている文十郎のことは、近所で聞けばすぐにわかってしまう。
居場所はすぐに突き止められるだろう。
清兵衛は為吉にどこの家中か聞くが、わからないと言うと、「子供の使いじゃあるめえし」と怒る。

そして、だいたい、わけも聴かずに助け仕事を引き受ける文十郎と平内に文句を言う。
さらに最近、ちょっと仕事がつらいと文句を言い、首を横に振ると文十郎と平内にも怒りの言葉を吐く。
そう文句を言いながらも清兵衛は、火の用心の夜回りに扮して、侍たちが集まっている長屋の前にやってきた。
それから利吉が蕎麦屋に話をつけて屋台を借りて来て、為吉には乞食の格好をするように調達してきた。

文十郎としのは、小一郎と梓を見ながら、あれは駆け落ちだと言った。
しかも、女のほうが身分が高い。
髪形、飾り物、衣装、それに…、「懐刀」と平内が言う。
梓の持っている懐剣の袋、そこには丸に三つ葉葵があった。

将軍家ゆかりの紋所だ。
とんでもない揉め事を背負い込んだ。
「私たちが生き延びるには、これしかないのだ」と小一郎が外に出ようとした時、「ばかなことをするもんじゃありませんぜ」と夜回りの格好をした清兵衛が入ってきた。
表には30人はいる。

清兵衛が夜回りに扮したので、怪しいものではないと言って、身分を明かした。
それによると、侍たちは浜田藩、松平直康の家中の者だった。
ここまで来たらわけを話してくれと言う清兵衛だが、小一郎は沈黙する。
清兵衛はそれなら、何の関わりもない自分たちが迷惑をするのだから、まったく話ができないなら出て行ってくれと言う。

文十郎は抗議しかけるが、清兵衛は余計な侍出入りに関われば、困るのはこちらだと言った。
しのが悪人には見えない2人だし、力になると言うが、小一郎は頭を下げて共に死出の旅に出るしかないと言い張る。
イライラした平内は、わけを聞けば何とかしてやると言っているんだと言う。
その時、表で気配がして、文十郎も平内も清兵衛も立ち上がる。

するとそれは利吉で、表の侍たちが業を煮やして一軒一軒当たり始めたという知らせだった。
清兵衛は利吉にもう少し見張れと言った。
しのが梓を説得するが、平内は「どうしても死にてえというのなら、肩入れなんかすることはない」と怒り始める。

2人で逃げてきたのは、2人で生きたいからではないのか。
どうでも死にたいと言うなら、帰る。
「そんな」と言う文十郎に平内は続ける。

「文さん、やめろよ、やめときな。だいたい侍ってのはな、みんなこの人みたいに頭がかてえんだ。自分たちが気が済みゃあ、それで良いと思ってる。それに、命を粗末にするのも侍の特長だ。なぁに、死にてえって言うんだから、死なせてやりゃあいいじゃねえか」。
しのが「平内さん、そんな言い方ってある」と言う。
しかし平内は、しのはまだ若いからこういう2人を見ると奇麗事に見えるかもしれないが、この2人はできあっている。

1人は若侍、もう1人は殿様の持ち物だ。
「はっきり言えば不義密通ってやつよ」。
それで追われている。

姦夫姦婦は町奉行でさえ、死罪だ。
ましてや侍なら、切腹など赦されない。
耳をそがれ、鼻をそがれてのた打ち回る。

「おお、その通りだ!しかし私たち…、私たちは!」
たまらず小一郎が口をきく。
「親が許し合った仲だった!」

小一郎は語り始める。
それは2年前だった。
小一郎と梓は、婚儀を前にしていた。
あの時、梓と会う約束をしなければよかった。

城内の仕事で、小一郎は約束の時間に遅れた。
遅れなければ…よかった。
梓は小一郎を待っていた。
その時、松平直康の駕籠が通りかかり、梓は道の脇に避け、頭を下げた。

梓を駕籠から見た直康は駕籠を止めた。
直康は三毛猫を膝に抱き、梓のことを尋ねた。
藩内でも相思相愛と噂の、小一郎の婚約者、梓だと説明がされる。
うつむく梓をじっと直康が見て、茶を一服たてるよう申し渡す。

茶室に入った直康は、梓に小一郎とは相愛なのかと聞いた。
それは体も寄せ合わぬうちから、慈しみあっているのかと。
予には信じれんと言った。

梓は身分の低い私どもに、言葉をかけるのが畏れ多いのだから、これ以上は勘弁してほしいと訴えた。
「身分が低い。身分か。身分が違うからこそ、聞きたいのだ。言いたくないと申せば、余計に尋ねてみたいのう、おたま」と猫に話しかける。
手を合わせ、頭を下げている梓の前に猫が落ちる。
ビクッとした梓に直康は「猫が嫌いか」と聞く。

「いいえ」。
「嘘を申せ!その方も、奥と同じだのう。それほどまでにこの直康がおぞましいか!」
「お殿様」
「ならばなぜ、体を引く!なぜこの直康を恐れる!それほどまでにこの直康が!」

お許しをと叫ぶ梓だが、小一郎が来た時には梓は既にその場から側室の住む奥御殿に移されてしまっていた。
小一郎は梓の名を叫びながら、直康に一言申し上げたいと駆け込んだが、家臣たちに止められた。
家老の矢崎には殴られ、梓が上がったのは家からも申し出があったのであり、小一郎の妻にするなど勝手に小一郎が言っていることだと言った。

小一郎は、蟄居を申し付けられた。
古川という侍が、梓の家が小一郎に顔が向けられないと言っていると伝えに来た。
だが直康からは、梓の家の者、小一郎と小一郎の家の者、そして梓自身、誰一人としてこの関係者が自害することは赦さないと言うきつい命令が下っていた。
面当てがましく1人でも自害した者がおれば、一族郎党、全て断罪すると矢崎からの通達があった。

小一郎がこらえたのは、今は亡き母親が生きていたからだった。
そして、小一郎には御加増があった。
さらに奥の間、梓と直康の寝所がある屋敷の不寝番にしたのだ。
「おのれ」と小一郎は怒りに震えたが、葵の紋の戸をきつく叩くのが精一杯だった。

矢崎はお役御免を願い出てやろうと言ったが、小一郎は「何の不服もございません。主君の命に従うは武士の道」と言って承知した。
「呆けたか!」と矢崎が言うが、小一郎は「呆けました」と答える。
だが小一郎を見た矢崎は、「何か策することがあるのだな」と察した。
お役御免を願い出ろと言う矢崎に、小一郎は沈黙した。

矢崎は「おのれが万一、短慮に走るならば、例えそれが殿の無体な取り扱いにあったとしても逆臣として斬る。良いな!そのことしかと、おぬしに伝えたぞ」と言って下がった。
だがその時、小一郎は直康を殺害するつもりでいた。
梓が殿の寝所に上がる為、廊下を歩いてくる。

廊下の先には、控えた小一郎がいた。
梓の足が止まる。
2人は見詰め合った。
梓の目が哀しみに溢れ、踵を返そうとした。

だが「梓殿」という声がして、梓は止まらざるを得なかった。
その時、小一郎は梓を何としても殺してはならないと思った。
梓には何も罪科はない。

直康を討ち、梓と共に死ぬ。
それが何の意味があるだろう。
梓と生きよう。
小一郎は、そう決心した。

やがて小一郎は、江戸詰めになった。
直康に梓も同行した。
小一郎は、機会を待った。
そして今夜、能役者が舞台を勤めたその時を狙って、小一郎は梓と手を取って逃げたのだ。

話を聞き終わったしのは、文十郎に何とかしてやってくれと懇願する。
「わかってるよ!」と言うが、このあたりはすっかり囲まれている。
しかし、清兵衛は話を聞いておいて、助けられないとは言えないと言い始める。
道は塞がれているが、屋根は塞がれていない。

力任せに囲みを破るか、いずれにしても命がけの仕事になる。
まずは梓の目立つ着物を、しのに替えさせてくれと頼む。
平内は小一郎に、不義密通と言ったことを詫びた。

しのは自分の着物を梓に着せて、髪を結いなおした。
これから先を心配するしのに、梓は例えつかの間でも小一郎と一緒になれたので、もういいのだと言う。
そして母の形見のかんざしをしのに差し出す。

もうすぐこのようなものも、要らなくなる。
母親は愛しい方に嫁ぐ時、これを差せと言ったのだ。
だから今夜、このかんざしをしてきた。
「今日の日がわたくしにとって、あの方の元に嫁ぐ、女としてのうれしい日だったのでございます」。

「でももう、それも終わろうとしています」と梓は目を伏せた。
「いいえ、そんなこと!」。
しのは2人はきっと、追っ手から逃れることができる。
そうでなければ、あんまりだ。

だから、そんなことは言ってくれるなと言う。
せっかく、ここまで2人で来たのに、そんな気の弱いことでどうしますと言うしのに、梓は強くなりたいと言う。
その時、清兵衛が入ってくる。

まず、清兵衛が天井に登り、後から2人を引き上げる。
しのが文十郎を呼びに行くと、梓が自分たちに万一のことがあったらと言って金子を渡した。
小一郎と生き延びたい、でも…。
受け取り願いたいと小一郎も言った。

その時、梓が突然、うつむいた。
気分が悪くなって、土間にうつむく。
平内が「大丈夫、大丈夫、女にはよくあることだ。こりゃおめでた…」と言って、ハッとする。

「まことか!」
小一郎の顔色が変わる。
「小一郎様、どうか、お許しを」。
梓が泣き崩れる。

誰もが見ていられず、背を向けていた。
小一郎が外に走り出ようとする。
清兵衛と文十郎、平内が押さえつける。
その時、梓が外に出る。

「梓!」
表に出た小一郎を、弥崎の拳銃が狙う。
梓を追ってしのも外に出ようとするが、利吉が必死に止めた。
矢崎は梓の方は連れて行くから、屋敷に来いと言った。

平内は「やめろ!向こうには飛び道具があるんだ」と言ったが、小一郎は屋敷に向かって走っていく。
梓の名を呼びながら走る。
文十郎と平内が押さえつけようとしたが、小一郎は振り切って走っていく。
「罠だよ!」と言うが、開いた門の中に小一郎が走って行く。

梓は座敷の前の階段の上で、直康に押さえつけられていた。
「不義を犯したものがどのような目に遭うか、覚悟の上であるな」。
家臣たちが庭に控える中、小一郎が走ってくる。

「梓ーっ!」という声を聞くと、直康は高らかに笑った。
「良いか、小一郎。生かすも殺すも、この直康の心次第!だがわしは殺しはせぬ。生かしておくほうが楽しいのじゃ!」
小一郎の腕に抱かれた梓を再び、この手で好きにする。
そう言って直康は笑った。

「俺の妻を迎えに来た!」
「欲しくば、取り戻して見よ!」
そう言って直康は笑いながら、梓の懐に手を入れる。

梓がもがき、悲鳴をあげる。
直康は高らかに笑い、梓の足を露わにする。
もがく梓の髪を引っ張り、笑い続ける。
物陰から文十郎が飛び出そうとするのを、平内が「止めるんだ、文さん」と必死に抑える。

「おのれー!」
飛び込んだ小一郎は居並ぶ家臣たちに、一太刀ずつ浴びた。
小一郎が進む度、並んでいる家臣が斬っていく。
総勢、20名以上、全員が小一郎に太刀を浴びせる。

小一郎は進みながら、すれ違いざま、全員に斬られる。
ずたずたにされながらも小一郎は、梓の足元までたどり着いた。
血まみれの小一郎を「おのれ、不義者め」と言って、直康は短筒で一撃の元に殺した。

「小一郎さま!」
呆然とする梓の前に、笑う直康の刀があった。
直康の刀の白い柄を手にすると、梓は一気に胸につきたてた。
梓の目が見開かれ、倒れる。

「いけねえ、文さん」。
文十郎が憤りの余り、飛び出そうとしていたのを、平内は必死に連れ帰る。
軽蔑しきった顔をして、直康は屋敷内に入る。
後には無残な2人のなきがらが残った。

文十郎としのは、2人の墓を作り、花を上げ、線香を炊いた。
しのはどうして助けてあげられなかったのかと泣いた。
「あんなに強く結び合おうとすることが、男にも女にもあるのね。あんなに…」。

墓参りを終えた文十郎を、竹林で利吉と為吉が待っていた。
「あのね、棟梁が『どうするんだ』って言ってますよ」。
「助け人が助けられなかった。このまま引っ込んでるつもりか、って」。
利吉が梓から預かった金を見せる。

このままでは2人は浮かばれない。
2人の気の済むようにしてやるのも、助け人の仕事じゃねえのか、と。
しかし「平内は助ける為に人を殺しても、殺すために人を殺したりしない。あの2人を浮かばれるようにするのは、坊主の仕事だ」と言ったらしい。
利吉はそっぽを向きながら、「俺ぁ、そうは思わねんだ」と言う。

闇に紛れて、黒装束の文十郎が歩く。
直康の屋敷の前で、平内がタバコを吸って待っていた。
「来たな。やっぱりあの2人を成仏させるのは、坊主の仕事だよ。でも良く考えたら」と平内は自分の坊主頭に手をやり「俺も坊主だったんだな」と言う。
「行こうか」。

平内は天井裏に忍び込み、直康の寝所に向かって縄を降ろす。
それをつたわって直康の枕元に行くと、キセルの針を振り下ろそうとする。
だがその時、平内の目に、直康が吸うタバコが目に入る。
平内の顔色が変わる。

試さずにはいられない。
平内はキセルを収めると、枕元に座り、タバコを吸い始めた。
プカプカと煙が立ち、直康が目を覚ます。
隣にいる平内を見ると、直康は突然起き上がり、刀を手にした。

直康が振り下ろした刀は、立てた畳を斬った。
畳に刀が刺さって、抜けない。
刀の下では、平内が目を丸くしていた。
斬った畳の口の間から、文十郎が見える。

文十郎が立ち上がり、直康をにらんで小判を構える。
刀が抜けず、直康は後ろに倒れる。
「出会え!狼藉者じゃ!」と直康が声をあげる。

文十郎が直康に小判を投げた。
小判は直康の額の真ん中に刺さる。
「直康どの、あんたは3人の命を奪った。津島小一郎、その妻、梓。そしてあんたの」。
文十郎が、直康を指差す。

「子供の命もだ」。
額を押さえて直康が「何?子供?」と言う。
「ああ。梓はおめえの子供を身ごもっていた。子供まで殺しやがって!」と平内がにらむ。

「地獄へ行きやがれ!」
そう言うと平内は直康を抱え込み、背後から胸を一突きにする。
直康の顔が歪む。
平内がさらに針を握り締め、直康をにらむ。

「殿!」
矢崎が飛び込んでくる。
飛び込んできた矢崎を、すれ違いざま、文十郎が斬る。
続いて飛び込んできた侍も斬る。

最後に来た侍は、刀を受けると兜割りを抜き、腹を刺した。
深く、深く、刺して横に払う。
外に出た文十郎と平内は、闇の中を走った。



文十郎らしく、陽気にお酒を飲んで酔っ払って、またお酒を持って帰る時に出くわしたトラブルに巻き込まれて始まるお話。
「どけ、素浪人!」「尾羽打ち枯らした」と言われた素浪人が、誰よりも強いの。
死のうとした梓に「ばぁか!」と言いつつ、家に連れてきてしまう。
酔いがちょっと覚めれば、暴言だったと詫びる。

平内さんも頑なに口を閉ざす2人にイライラして、「死なせてやりゃあいいじゃないか」と言い放つんだけど、その後、事情を知って謝る。
みなさん、さっぱりしてますね。
文さんの家に忘れ物を届けに来て、たぶん一杯飲むつもりだった平内と、為吉が入って来て、ここから密室劇になる。

為吉から知らせを受けて、裏家業の事があるので余計なトラブルは御免だと清兵衛がブツブツ言う。
最近の文さんと平さんの、仕事の選り好みにも文句を言う。
そうか、最近、文さんと平さん、選り好みするんだ。

為吉が文十郎のことを「文十郎さん、例によって背中に『南無妙法蓮華経』と染め抜いた着物着ているわけでしょう、あれじゃ近所でちょっと聞き込みされたら、じきバレちゃいますよ」と言うのがおかしい。
目立ちますからね、あれ。
ずっと後に「仕事人」で三味線屋の勇次が「南無阿弥陀仏」って背中にある衣装を着るようになりますが、あれを見た時、この文さんの衣装を思い出しました。

あの着物は、田村さんがインタビューでおっしゃってましたが、お父様の阪妻さんが着ていた着物だそう。
田村さんの方がちょっと大きかったので、衣装さんが縫い直してくれたとか。
最初は父親と同じことを要求されるのが、とても嫌だったのに、この頃は余裕ができて、「お父ちゃん、ちょっと来て」と阪妻さんの真似をして監督さんが「もっとやってよ」と喜んだりしていたとか。
冒頭の軽やかな立ち回りを見て、「助け人」は田村さんがいるからこそ、一味違う殺陣が連続して登場できるんだなあと思いました。

小一郎と梓の悲恋は、あまりにかわいそう。
梓は田島令子さん。
しのとのシーンでは思わず、涙が出そうになる。

母親が好きな人のところに嫁ぐ時していけと言ったかんざしを、挿して逃げた梓の気持ちがいじらしい。
「今夜がその、うれしい日だった」。
「それももうすぐ、終わりになります」と言う表情が美しく、とても哀しい。

梓からは恋する女性の幸せオーラが出ていて、それが直康のひねくれた目に留まったんではないかと。
奥と同じ、ということは、直康は奥方にも嫌われてたらしい。
最初から嫌われてたのか、何かあったのかわからないけど、好かれないことが相当、直康をひねさせていたらしい。

それにしても婚約者を取っただけじゃなく、小一郎を不寝番にするところがもう、何でここまでやらないと気がすまないのか?
ご丁寧に誰もあてつけがましく自害しないよう、したら一族郎党罰するとかお達しまでする。
小一郎は母親がまだ生きている時は、抑えた。

そして、ある決意を胸に、それだけを支えに屈辱のお勤めをし続けたんでしょう。
しかし、つわりが訪れた梓は1人、飛び出していく。
一瞬、絶望した小一郎だが、梓を追っていく。

この一瞬の絶望が、梓を外に走らせてしまったのね。
小一郎とは添えない絶望、小一郎だけは助けようと思ったのかもしれない。
だが、やっぱり小一郎はやってくる。

直康は、梓は殺さないと言う。
その方が楽しいと言って、小一郎の前で梓を陵辱し始める。
泣き叫ぶ梓と憤怒の小一郎見て、こんなことして楽しいのか?
だとしたら、かわいそうなぐらい、歪んでいる。

この小一郎の斬られ方が、凄まじい。
平内が不義密通はひどい殺され方をするとは言ったけど、あそこまで斬るってひどい!
1人ずつ、順番に一太刀ずつ浴びせていく。
小一郎が進むたびに、1人、また1人。

だいたい、25回ぐらい斬られていると思います。
梓も2人して斬り捨てられることは覚悟だったでしょうが、あんな無惨な最期を見せられるとは思っても見なかっただろうに…。
直康の刀で自害した梓と横たわる小一郎の手が、互いを触れそうで触れられない。
最期までかわいそう。

でもね、こんなことして、祟られると思いません?
これでお家に凶事が続くと、「祟りだ」って噂が立ちますよ。
見ていて、怪談話っていうのは、生きている間はどうにもできなかった者の、最後の復讐の手段だなあとつくづく思いましたね。
そして、人間の良心の表れだと。

こんなことしたら、普通、怖いですよ。
そして「必殺」は「怪談」のフォーマットだと言われていましたが、まさにそうだと思いました。
生きている間は、表向きはどうにもできなかった怨念を晴らす。

「あのね、棟梁が『どうするんだ』って言ってますよ」と言うのが、「助け人」らしい。
「仕置人」じゃないから、「助け人」だから、殺しの請負はしないから。
助け人が助けられなかった。
意地もあるし、棟梁はきっと武士の横暴にまたまた怒っているに違いない。

平内さんは反対。
助け人の仕事から外れることに対して、理屈が通らないから。
すると利吉がきっぱり、「俺ぁ、そうは思わねんだ」。

この時の利吉が、とっても凛々しい。
梓を追ったしのを押し留める時、利吉は必死。
しのまで斬られたら、たまらないから。

直康の寝所に忍び込んで、思わずタバコを吸ってしまう平内さん。
殿のタバコなんて、庶民には手に入らない上等のもの。
めったに見られないとはいえ、ダメですよーと言いたくなる。

直康は岡崎二朗さんが、熱演。
二枚目風の濃いお顔に、くっきりメイクで、不気味に演じてくださってます。
あれで性格が歪んでちゃ、奥方も梓さんも嫌かも。
そう思わせてくれる岡崎さんは、徹底していて素晴らしい。

文さんが投げて額に刺さった小判は、梓が渡したものでしょう。
直康のつやつやした額に小判が刺さっているのが、とっても痛そう。
子供の存在を知らされて、仰天して、グイグイと針を叩き込まれる。

平内に刺されて痛そうなのが、溜飲を下げる。
ここまで演じてくれて、岡崎さん、ありがとう。
文十郎も走り込んできた家臣を、まるで小一郎にしたようにすれ違いざまに斬り捨てる。
そして、深く、深く、刺し直す。

こういうところ、小一郎が殺される執拗さが、明朗快活時代劇に思えて、やっぱり「助け人」は「必殺」だと思います。
今回、お吉はいなったけど、いたらとっても梓と小一郎に肩入れしたでしょう。
仕事の後、文十郎と平内が屋敷から走り去るところで、終わっています。

こんな事件があって、探索は行われなかったのかと思いますが、きっと奥が病死の届出も出したと勝手に予測。
夫の直康が死んで、せいせいしたのかもしれません。
そしてこの後、直康も側近も殺された浜田藩には、祟りの噂があったりして…。


一つ、殺さねえで生かす道がある 「助け人走る」第5話

第5話、「御生命大切」。


冒頭出てくる、荒んだ浪人風の津川雅彦さんを見て、「やったー」と言ってしまう。
さらにゲスト出演は、弓恵子さん。
それだけでもワクワクしてしまう話。


夜道を機嫌よく歌いながら歩く、信州高島藩の若い武士が2人。
その前に突然現れたのは、浪人・笹本虎之助が率いる辻斬り集団だった。
金を貸せと言われた小山内圭介たち2人は、笹本たちに向かうが小山内は背中を斬られて気絶。
同僚は斬り殺されてしまった。

笹本が斬りつけ、刀を受けたところを左右から2人が刺すという手口だった。
生き残った圭介には刀も抜かなかった腰抜け、死んだ振りをして逃れた卑怯者という噂が立つ。
圭介は切腹しようとするが、間一髪、女中のおこうが止める。
「いや、死んではいや、いや!」と、おこうは泣きながらすがる。

文十郎の本日の仕事は、道場破りが入った道場の助っ人だった。
強い道場破りに焦った道場主に代わり、駆け込んできた文十郎が相手をする。
相手の膝を蹴っ飛ばし、首筋に竹刀を突きつける。
文十郎は手当てとして1両2部を受け取った。

だが、清兵衛のところの為吉に出したのは1両。
「おかしいなあ、以前は1両2部だったのに」と為吉はいぶかしがる。
立ち去ろうとした文十郎は為吉に呼び止められ、1両2部出させられる。
そこに笑いながら清兵衛が来て、今夜、平内も来て仕事の打ち合わせをしたいと言われる。

裏の仕事だ。
清兵衛の話では、奉行所の手が入る前に辻斬りを始末して欲しいと言うことだった。
前金として平内は2両、文十郎は3両。

1両の差は、平内が囮になるからだ。
今度の件は、ぜひとも文十郎の刀でやってもらわなければならない。
その夜から大店の旦那に扮した平内と為吉が夜歩きして、文十郎が影から見張る仕事に出た。

やがて平内と為吉は、すれ違おうとした浪人に呼び止められた。
「寒いな」と言って、為吉のちょうちんに手をかざしたのは、笹本だった。
笹本ともう1人は、いきなり斬りかかってくる。

「いち、にい」と笹本が数を数えた時、「待て」という声がして文十郎がやってきた。
「お邪魔します。あんたがたかい?近頃この辺りで、物騒なものふりまわしているのは」。
「だったらどうだってんだ」。
「別にどうだっていうんじゃないけど、俺もな、できれば一生に一度ぐらい、生身の人間、斬ってみてえと思ってよ」。

「それで?」
「それでよ、もし良かったらそいつをその、あんたがたで試してみてえんだ」。
文十郎の言葉を聞いた浪人たちは斬りかかってきたが、文十郎はあっという間に笹本の連れを斬る。
笹本は怯えて逃げようとして、文十郎が追おうとしたが、為吉は止めた。

1人斬れば十分だと言う。
その後、同心がやってくると、為吉と、そして清兵衛、圭介がいた。
清兵衛が襲われ、圭介が助けて辻斬りを斬ってくれたのだと言った。
圭介が帰って来ると、おこうが心配そうに「圭介様。首尾よく参りましたか?」と聞いた。

「うん」と言った圭介は、後は清兵衛と町方に任せてきたと言う。
圭介はおこうに「本当に大丈夫か」と聞くと、おこうは自分が考えたことで大丈夫だと答える。
「圭介様、辻斬りはあなたがしとめたのですよ。あなたが」。
圭介はうなづくと、床に入った。

その頃、文十郎はお吉にこのところいつも居ないことを聞かれていた。
助け人の仕事には昼も夜もないと答えた文十郎にお吉は、不安を訴える。
何だか、文十郎がどんどん自分の知らないところへ行ってしまうようだ。
そのうち、いなくなってしまうのではないか。

「ねえ、言って。あたしが知らない間、どこで何してんだい?ほんとのこと言ってくれなきゃ、あたし死んじゃうよ」。
しかし、それはお吉が文十郎に甘えて見せただけだった。
そこに平内がやってくる。
あわてた文十郎は、お吉を押入れに隠す。

寝ていたという文十郎に平内も疲れたと言って、「辻斬りの囮なんてもんは、2度とやるもんじゃねえな」と言う。
平内の言葉に、文十郎はあわてる。
背後の押入れには、お吉がいるのだ。
平内は文十郎の家の台所を借りて、魚をさばこうとしていた。

お吉がその言葉に、押入れから顔を出す。
あわてた文十郎は、ふすまを閉めようとする。
だが、お吉は出て来てしまった。

お吉には気づかず、平内は続ける。
「しかし、ゆんべの仕事はどうもスッキリしねえなあ。辻斬りの片割れ殺して、何が人助けだか」。
平内の背中に向かって、お吉が「平内さん!」と叫ぶ。

「えっ?」
平内が初めて振り向き、お吉を見る。
「辻斬りだの、殺しだの、一体どういうことなんです?」

驚いた平内は「おい、文さん!」と声をかける。
文十郎はふすまの影に隠れてしまった。
お吉は文十郎を見ている。
平内は知らん振りして、魚のうろこを取り始めた。

高島藩では、圭介があれから辻斬りを待ち伏せしていて、ついに斬り捨てたと評判になっていた。
上司からは圭介が、なぜ黙っていたと言われるが、ともかく、大変な名誉だと言った。
国元からの沙汰を待てと言われて、圭介の顔が輝いた。

その頃、おこうが清兵衛に後金と礼に来ていた。
おこうによると、圭介の父親はこのことを知らないと言う。
このことは決して外には洩れない、だからこの稼業が成り立つのだという清兵衛におこうは、最後の奉公ができたと言った。

来月、故郷で後妻に行く。
この頼み料は国元から支度金として送ってきたものだと言った。
文十郎とお吉は、暗くなってきた部屋で向かい合っていた。
しのは何も知らないと言われ、お吉は帰ってきたしのに明るく振る舞ったが、文十郎は何事か思案していた。

だが、圭介を襲った笹本率いる辻斬り集団は、今度は押し込み強盗を働くようになっていた。
奪った金で女郎遊びをし、博打場に出入りしていた笹本は小山内圭介が辻斬りを斬った噂を耳にした。
翌日、圭介はおこうに家老から5人扶持加増の上、徒歩頭に取り立てられたと報告した。
下士から取り立てられたのは、30年ぶりだと言う。

何もかも、おこうのおかげだと圭介が言うと、おこうは辻斬りは圭介が斬ったのですよと言い聞かせる。
高島藩上屋敷の前には、笹本が様子を探っていた。
その夜、圭介の父は圭介と出世を祝い、早く嫁を取れと勧めた。
「女中に手をつけるだけが、侍ではないぞ」。

食事の後、おこうは圭介の背中を流していた。
「父上は知ってたんだ」。
「ご存知でした。ですから、国元へ帰るよりしかたがないのです。でも、これで思い残すことはございません。8年もの間、おこうは圭介様の側にいられただけで幸せでございました。例え、不義者と言われても誰もお恨み申し上げません」。

「だって…、圭介様はおこうのもの。おこうがあなたをお育て申し上げたんですよ」。
「おこう」。
圭介はおこうの手を取った。
その時、「こんばんわ」という門番の声が響いた。

浪人風の男が手紙を持って来たのだ。
不吉な予感がしたおこうは、手紙を開いて見る。
笹本からの辻斬りについて不審の点があるので、水道橋の宿まで来るようにという手紙だった。

おこうが1人、指定された宿に向かうと、笹本が杯を傾けていた。
小山内家の女中だと名乗ると、笹本は女中なんかに話はないと追い返そうとした。
「お前のところの圭介様が辻斬りをお斬りになったのは嘘だ」と、帰って圭介に言うように言った。

なぜ、そんなことがわかるかというと、自分があの夜の辻斬りだったからだ。
おこうは凍りつく。
笹本はおこうに、小山内家はどのぐらい出せるのか、出す気があるのか、酒を勧めながら聞いた。
そして、ふいにおこうを押し倒す。

おこうが気がついた時、4人の浪人がおこうを見下ろしていた。
帰ろうとしたおこうは再び笹本に捕まり、気絶した。
夜が明けると、こっそり、おこうは屋敷に戻った。
圭介がおこうにどこに行っていたのか尋ねると、おこうは「触らないで」と言って泣き出した。

お吉をしのが船着場まで、文十郎が呼んでいるので来てくれと言いに来た。
釣りの供かとお吉が言って向かうと、文十郎と平内がお吉を船に乗せ、身をかがめて橋の下をくぐっていく。
「こんなところ入っちゃって、どこ行くんですよ?」

文十郎と平内はお吉を清兵衛の隠し部屋まで連れて行く。
中では清兵衛が、ノミを使っていた。
お吉が目を丸くして引き返そうとするのを、後ろにいた平内が押し戻し、お吉は座り込む。

「お吉さんだね?」と清兵衛が聞く。
「はい」。
「おめえさん、気の毒だが、死んでもらいますよ」。
「死ぬって…、あたしが?!」

裏稼業を知られた以上、消えてもらわなければいけない。
それが自分たちの掟だと、清兵衛は言う。
「そ、そんな…」とお吉は後ろに座っている文十郎にすがり、「文さん。何とか言っとくれ」と言う。
だが文十郎は黙って立ち上がってしまった。

「平内さん、ねえ、助けて」。
だが平内も腕組みしたまま、何も言わない。
「嫌だよ!そんな、べらぼうな話ってあるかい!あたしはね、知ろうと思って知ったんじゃないんだ、聞こえちゃったんですよ」。

「ね、そうだよね、そうだよね、文さん!」
お吉が叫ぶように言っている間、清兵衛は壁に置いてあった槍を手に取る。
「きゃあっ!」とお吉が文十郎の後ろに隠れる。
「怖い、怖い!」

文十郎にしがみつくが、文十郎は静かに「お吉。すまんが大人しく死んでくれ」と言って、お吉を突き飛ばす。
お吉の前に、槍の刃が突きつけられる。
平内を見ても、黙って前を見たまま動かない。

「そうかい。あんたってそんな男だったのかい。あたしがバカだったんだ。そんな男と知らずに惚れたあたしが、バカだったんだ」。
お吉が涙声になる。
「何が助け人だい!何が世の為、人の為だ!女1人の命も助けられないで」。
そしてキッと文十郎を見据えると「化けて出てやるからね。毎晩毎晩、化けて出てやるから!覚えてろ!」と言う。

言い終わるとお吉は清兵衛の前に背中を見せて座ったと思うと、「さーあ、殺せーっ!」と大の字に寝転んだ。
「煮るなと切るなと、好きにやっとくれ!」と言った。
はっはっはっはと、清兵衛が笑う。

お吉がギョッとして起き上がる。
「いいねえ。この人は、使えるよ」。
文十郎が「使えますか」と言うと、清兵衛は「ああ。立派なもんだ。立派な助け人になれるよ」と答える。

「ちょ、ちょっと、何の真似?!」
文十郎が「実は棟梁がな、ぜひ一度、おめえさんに会ってみてえって言うんでな」と言った。
清兵衛がお吉の前にひざをついて話す。

「お吉さん、助け人ってのは裏稼業を知られると、すぐに仲間内で始末する。それが掟なんだよ。でもたった一つ、殺さねえで生かす道がある。それはおめえさんが仲間内に入ることだ」。
「仲間に?」
「ああ、あんたならやれる。あんたなら立派な助け人になれるよ。どうだい、平内さんや文十郎さんと一緒に、働いてみる気はありませんかな?」

お吉の後ろで、平内も文十郎も微笑んでいる。
立ち上がったお吉が笑顔になると、為吉が階段を降りてくる。
「棟梁、ちょいと」。
清兵衛に耳打ちをする。

お吉は文十郎に連れられて、離れたところの影からおこうを見る。
「へえ、あの人が…」。
「ああ、頼み人の1人だ」。
「だいたい、俺たちの仕事はな、前金が5両、後金が5両。それが相場だ」。

「それで文さん、ぶらぶらしている割りには懐があったかいんだね?」
「いや、それをまた、平さんたちと分けるんだ。なあ、平さん」。
「だけどね、お吉さん、大体において文さんの方が取り分が多いんだ。だからあっしの方はいつだって、ピーピーですからね」。
為吉が来て、今夜これから一仕事してもらうので、帰らないようにと言うと、お吉にも仕事をしてもらうと言う。

この前の宿で、おこうの膝枕で笹本は50両出せば忘れてやると言った。
おこうは頑なな顔をしていたが、笹本はそうでなければ訴えると言う。
「私が作ります」とおこうが言う。
「おめえが?」

すると戸が開き、「ああ、悪かったね、遅くなっちゃって」とお吉が入ってくる。
風体がまるで違う。
髪を解き、櫛を挿している。

「何だ、てめえは」と言う笹本に、「あたしですか?あたしは深川で口入屋をやっている、お吉ってもんですよ」と答える。
おこうが奉公先を変えたいと言うので、手付金を持って来たのだと言う。
「おや、あんた、夜の方が映えるね。岡場所にはもってこいだ」。
笹本は「おめえ、身を売るのか」と驚いた。

お吉は座りながら、「今さら何を驚いてんですよ。50両だよ、50両。女がまとまった金を手に入れるには、身を売るより他にないじゃないか」と言って、「請け人はこの人1人かい?」と聞きながら、証文を出す。
「いいえ、4人です」とおこうが言う。
笹本が黙らせようとするが、お吉は後でもめるのは困ると言って、後の3人はどこにいるんですと聞く。

「案内してやろうか」。
「参りましょ」とお吉は言う。
笹本に連れられたお吉とおこうの後を、為吉がつける。
4人、確実に揃わなければならない。

笹本とお吉とおこうは、荒れ寺に着いた。
待ち受けていた3人を見て、お吉は「あんた、こんな薄汚いのが4人もついていたのかい?」と呆れる。
「まあ、人は見かけによらないねえ」。
金を出せと言う笹本に、50両はありませんよとお吉が言う。

為吉が破れた障子からのぞいていて、文十郎と平内を呼びに走る。
今持っているのは、手付けの5両。
お吉は顔をしかめ、わけがありそうで嫌だと言って、おこうに本当に良いのか確認をすると、おこうは黙ってうなづいた。
それなら50両は、明日にでも支払う。

水を飲んでいる笹本を、浪人の1人が連れて行き、よく見ればお吉もまんざらじゃないと言い始めた。
「待て、待て」と笹本が言い、お吉は50両の金づるだから、自分がうまくやると言った。
証文を貰い、5両を渡すとお吉は、明日、深川の店に誰か来いと言って、おこうを預かろうとした。
すると、浪人が待ちなと言って前に立ちはだかる。

「余計なことをすると、後の45両は手に入らないんだよ!」
「金は他の奴に、持ってこさせるさ」。
笹本の言葉を聞いたお吉は不敵な笑みを浮かべ、「そうかい。金をふんだくった上で、ただ遊ぼうってんだね?てめえらのやりそうなことだい!」とあたりを見渡す。

「こう見えたってあたしは、世の中の泥水飲み通してきた女だ」と頭の後ろに手を伸ばす。
「なめるんじゃないよ!」と言うと、お吉はかんざしを手に笹本に向かってくる。
笹本はお吉の手を取ると、「興奮するなあ」と突き飛ばした。
「いち、にいの」と言って、お吉を組み伏せる。

闇の中、文十郎が走る。
「この野郎!」
「おい、手を押さえろ!」
お吉が激しく抵抗する隣で、おこうは目を閉じ、横たわっていた。

浪人たちが笑う中、石が飛んで来て、りんを鳴らした。
4人の浪人が手を止め、振り向く。
文十郎が現れ、1人を瞬く間に斬る。
もう1人を相手にしていると、笹本が火を消して逃げる。

為吉が「野郎!待ちやがれ!」と叫ぶ。
「きゃあっ」というお吉の悲鳴で振り返った文十郎は、お吉に襲いかかろうとした浪人目掛けて、刀を投げる。
文十郎が刀をなくしたと見た2人の浪人は、笑いを浮かべながら近づいてきた。
2人が一度に左右から、文十郎に向かって刀を振り下ろした。

お吉が悲鳴を上げ、顔を伏せる。
だが浪人2人は倒れた。
文十郎の右手に兜割り、左手に小刀があった。
小刀を文十郎は、後ろに放り投げる。

笹本は逃げていた。
「ちくしょおお、騙しやがったな。卑怯な奴らだ」と言いながら走る。
「覚えてろ!死ぬ気になれば、なんだってできるんだ!」と言って、高島藩上屋敷の前に行く。

「開けろ」と戸を叩く。
「へいへい、何か御用で」と門番の羽織を着た肩が見える。
「小山内圭介が辻斬りを仕留めた申しておるが、あれは真っ赤な偽りであるぞ!」
笹本の顔にタバコの煙がかかり、激しく咳き込む。

「でたらめの大嘘でござるぞ」。
「ほ~ぅ、どうしてそれをご存知なんで?」
「何?」

木戸が開いたが、暗闇で顔は見えない。
「ああ、あなたは」。
そう言われて笹本は「どうも」とお辞儀をした。
タバコの煙を吐きながら、その影は「あの時の辻斬りの、もう1人の方ですな」と言った。

笹本が飛びのき、顔を確認しようとする。
平内が進み出て、顔が月明かりに照らされた。
笹本が口をあんぐりと開ける。
「貴様っ!」

笹本が刀を抜いた途端、平内が着ていた羽織を笹本にかぶせる。
前が見えなくなった笹本は、やたらに刀を振り回した。
笹本がもがいている間、平内がキセルから針を出す。
羽織をかぶったまま、笹本は刀を振り回していた。

しりもちをついて、羽織をやっと頭から引き剥がしたが、平内がいない。
不思議そうにあたりを見回している笹本の後ろから、平内が近づく。
「もしもし、一服いかがです?」
声をかけられて肩を叩かれ、振り向いた笹本は仰天した。

上を向いた笹本にキセルをくわえさせ、平内はそのまま針を刺す。
「ひいーいい」と声をあげて、笹本は目を丸くした。
笹本の口元には、キセルがくわえられている。

隠し部屋で清兵衛が小判を出し、「後金だ。受け取ってもらいましょう」と言った。
「この金、おこうさんが?」
「もちろんだよ。金は頼み人が払う。あっしはみなさんにそいつをお取次ぎするだけなんだから」。

「どうやってこの金を作ったんです?え?まさかあの人、ほんとに身売りして…」とお吉が聞く。
「そいつはあっしにもわからねえなあ。ただね、おこうさんがこう言ってましたよ。『何一つ、悔いはない』とね」。
供を連れて、圭介は向島の下屋敷に向かう。
夕暮れだった。

供と圭介を駕籠が追い越していく。
圭介の前で駕籠が止まった。
「小山内様」。
「おお、清兵衛殿か」と圭介が言う。

「何か私に用か?」
「実はその、おこうさんの手紙を預かっていますので」。
「何、おこうから」。
「はい」。

圭介が手紙を読む。
「圭介さま おこうはお別れします。2度とお目にはかかりません。おこうは幸せでございました。あなたのお側にいた毎日が今さらのように、懐かしく思い出されます。でもおこうは参ります。もう心残りはございません」。
「倖」という文字が、圭介の目に入ってくる。

「あとはただ、ふさわしい奥方様をお迎えして立派なお侍になられますよう、影ながらお祈り申し上げております」。
おこうの笑顔が、思い出される。
「どうぞおこうのことはご心配くださりませぬよう。おこうは何事にもめげず、生きて行きます。さようなら」。

夕暮れにおこうが立っている。
その顔は満足そうに輝いて微笑んでいる。
「さようなら」。
おこうの姿が遠ざかっていく。

圭介は夕陽を見つめる。
呆然としている圭介を、夕陽に照らされて清兵衛も見つめる。
「おこう!おこうーっ!」と圭介が夕陽に叫ぶ。


冒頭出てくる、荒んだ浪人風の津川雅彦さんを見て、「やったー」と言ってしまう。
さらにゲスト出演は、弓恵子さん。
それだけでもワクワクしてしまう話。

津川さんの悪役はもう、おもしろくて怖い。
言葉遣いは軽妙だけど、それは人の命をまったく重く見ていない証拠。
だからおもしろいけど、怖い。

最後にやられるのがまた、リアルにおかしい。
自分が一番、卑怯なのに、それを棚に上げて文句を言いながら逃げてる。
平内の煙に、げっほ、ごっほと咳き込む。

何もそこまでーと言いたくなるほど、目の前をふさがれて刀を振り回す。
仕留められた後、タバコを吸っている格好になっている。
卑怯者が滑稽にやられればやられるほど、見ているほうはスッキリするというもの。
津川さん、毎度毎度、楽しませてくれてありがとう!

今回は津川さんに、ひどい目に遭わされる弓恵子さんこと、おこう。
おこうにとって圭介は息子というか、弟のように育ててきた男性なのでしょう。
事件さえ起きなければおこうはおとなしく、故郷で後妻になっていたのでは。
笹本たちに狼藉を働かれるシーンは、おこうを浪人たちが見下ろすことで、上手い描写になっています。

圭介の父親が「女中に手を出す」と言っても、おこうは顔色1つ変えずにお給仕している。
そりゃ身分ってものがあるんでしょうが、おこうの前で嫁を取れとか、女中に手を出すばかりが、とかひどいわー。
人間ができてない私は、息子さんは、おこうさんに、何から何までやってもらわないと破滅するところだったんですよ!と言いたい。

殺陣の前、まるでおこうは悟ったように浪人たちに抵抗しない。
お吉が大暴れしている横でされるがまま、無抵抗でいる。
もう何か、覚悟してしまったよう。

そして今回、為吉が登場。
文さんも平さんも、為吉に囮などして辻斬りを誘うする理由を尋ねた。
ところが、為吉は利吉の兄貴と違って口が固いと言う。
今回、利吉は出ませんでした。

為吉はかつて、小伝馬町の牢に捕らわれたことがあるようです。
しかし口を一言も利かず、「口無しの為吉」と呼ばれたほどだと言う。
その割りには良く喋る、と文十郎と平内は言うんですが、後の展開を知っていると哀しいものがあります。

本当にそうだったんだ。
為吉は軽く見えて、実はすごく芯が強い男だった。
そして覚悟を背負って、生きていた。
これは本当に、後で生きてくる設定なんですね。

そして、今回はお吉が助け人の仲間入り。
お吉を呼び出した時の2人が怖い。
無言であまり動かないし、表情はない。

あれが裏の顔なんですね。
お吉が初めて見る文十郎と、平内の裏の顔。
ビビリますよねー。
普段と落差が激しければ激しいほど、ショックですよ。

そこに泣き喚かず、「化けて出てやる!」「こんな男に惚れた自分がバカ」と言う。
激しい気性だけど、文十郎を罵倒したりしない。
こんな時まで、惚れてるんだなー。

「さーあ、殺せーっ!」って大の字になってしまって、野川さん、似合うんです、またこれが。
お吉、さっそくお仕事をうまくこなす。
口入屋がまた、蓮っ葉で似合ってる。

しかし、危ない。
文十郎の仕事が、十分理解できたと思います。
だけど初回からこんな危ない仕事をこなしてくれるなんて、助け人になってもらって大正解。
いいお買い物ですよ、って。

文十郎の殺陣は、前半に辻斬りを斬るシーンと、クライマックスの2回。
お吉のピンチに、マフラーをなびかせて走る文さん。
あれはなびくとスピード感が出るので、身につけたとか聞いたことがあります。

お吉が襲われそうだと見ると、刀を投げつけて防ぐ。
だがその為、刀が、武器がないと見て、浪人たちがにやつく。
2対1で迫った時、文さんの大逆転。

そう、文十郎には兜割りという、心強い武器があるんです。
これは予想がつかない。
お吉、文十郎が斬られたかと思って、心底肝を冷やしたと思います。

そして最後は、お吉がおこうを心配している。
一途に1人の人を思う女性2人。
お吉とおこう、迎えた結末も、相手のタイプも違うけれど、どんな目に遭っても憎まない、憎めない思いは同じ。
だからお吉は心配する。

おこうは故郷に帰ることさえ諦めて、何一つ、見返りを求めず、どこかへ消えてしまった。
圭介が出世した後、何が起きているのか、一切言わなかったから、圭介はおこうの苦労を何も知らないまま。
おこうは消えてしまったことにより、圭介にとって永遠の女性になったかもしれません。

この後、おこうほど、圭介の心に残る女性はもう、現れないでしょう。
おこうはどこ行ってしまったんだろう。
それは知らない、突き放したような清兵衛の言葉に、ケジメと厳しさを感じさせます。
人を殺してまで助けるからには、依頼する側にも覚悟がいるんですね。

しかし、おこうの手紙を持って来ていた清兵衛は、常に哀しいものを見てきているなあと思いました。
安易に、棟梁は冷たいとか言えません。
無言で圭介を見詰める目に、深いものがある。
妖艶な悪女がお似合いの弓さんが、ここでは徹底して尽くす日陰の女性。

しかし、最後に出てくるおこうの笑顔は輝くように幸せそうだった。
まるで、菩薩様。
おこうの笑顔にも、弓恵子さんの、演技の幅にも感動します。
圭介さん、立派な武士にならなきゃね!


これは町人の意地 「助け人走る」第4話

第4話、「島抜大海原」。


これは哀しい話なんですよ。
とってもショッキングでもありました。
だから2度は見たくない…と感じるかと思ったんですが、名作なんですよ。


突然、ある夜に近江屋に捕り方がやってきて、夫婦とまだ幼い子供が寝ている座敷に踏み込んだ。
捕り方は妻のおりょうに向かって、「甲府勤番・佐山源三郎の娘、おりょう!」と言った。
おりょうは「違います!」と言ったが、「仮にも武士の娘たるもの、こともあろうに町人風情と情を通じ」と捕り方は軽蔑しきった様子で話す。

「何を申されます。わたくしたちはれっきとした夫婦でございます」。
「黙れ!役所に置いて調べる!引っ立て!」
子供が泣き叫ぶ中、おりょうは縄を打たれ、連れて行かれる。
いかなる理由があろうとも、武家と町人の通婚が禁じられている、武家諸法度を犯した罪だった。

近江屋には柵が立てられ、立ち入り禁止になった。
その柵の中、外で遊ぶ子供たちを見ている子供がいた。
「あの子かい?」と文十郎が清兵衛に尋ねる。
「かわいそうに、ててごの信吉さんは江戸お構い、近江屋はあの通り店を閉めさせられて」。

おりょうは八丈島の隣、御蔵島に遠島になった。
まさか、おりょうを助けに御蔵島に行くのだろうか。
文十郎は心配したが、平内はあっさり行くと言う。
「俺は行かなきゃいけねえことが、他にある。どうしてもな」。

さっそく家に戻る平内に、文十郎は船が無事に着くかもわからない流刑島には行きたくないと言った。
それはあの子はかわいそうだし、おりょうさんは気の毒だ。
だが…、と話す文十郎に平内は「あった!ここが俺たちの行く御蔵島だ」と地図を見せる。
「俺たち、じゃねえよ!」

7つの島のうち、御蔵島は船着場さえない。
岩場に囲まれて、船の着岸も容易ではないという。
だが、ここにも何十人と言う流人がいて、村人とともに暮らしているのだ。
なぜ、平内がそんなことを知っている、いや、なぜそんなものを持っているのだと文十郎は聞いた。

すると、平内は自分の本当の父親は流人だと言った。
それも人を殺した。
飢えた自分の母親と、平内を見かねて盗みに入って人を殺めてしまい、罪一等を減じられ、御蔵島に遠島となったのだ。

辻の家に養子に入ってから、平内は父親の行方を捜した。
だが、遠島になったものの行方は、奉行所でもよくわからないのだと言う。
その為、平内は一度、御蔵島には行きたかったのだ。
文十郎は平内のこともあり、行く気にはなったが、行く方法がわからない。

清兵衛は流人になってもらうと言う。
罪を犯せというのかと驚く文十郎に、清兵衛は流人には体の悪い者、年を取りすぎている者の代わりになって行くことがあると言う。
人別帳は作ってある。

平内は坊主の息子、文十郎は信濃の浪人の甥っ子として御蔵島に行く。
今回の仕事は、1人10両だ。
御蔵島まで行くのだからと、奮発してもらったのだ。

流人船が出る日、しのが近所の者が流人船に、文十郎が乗っていたと教えられ、パニックを起こしていた。
見に行こうとするしのを、流人と言ったら2度と帰って来られない重罪人だ、そんなはずがないと止める。
文十郎は助け仕事で四国の金毘羅様まで行っていると利吉は言うが、しのはそんなところまで行くはずがないと信じない。

利吉は平内は信心深いし、文十郎さんは武者修行で…と何とかごまかそうとする。
しかし、しのは「本当のことを言って!兄さんは清兵衛さんのところで何をしているの!清兵衛さんのところで何を!」と叫んだ。
そして、しのは戸口で泣き崩れた。

流人船の中、性質の悪そうな囚人が大人しい囚人をからかっている。
ムカムカした文十郎が立ち上がりかけるのを、平内が止める。
船は傾き、水が上から入ってくる。
海は荒れ、囚人たちは転がる。

おりょうの実家は、あまりに困窮していた。
こっそり、近江屋の次男坊に嫁に行ったが、武家社会ではそれはご法度だった。
おりょうは流罪。
信吉は江戸追放。

だからこそ近江屋は、お上が2人を罪だと言うなら、どうしても添い遂げさせてやりたいと言った。
これは町人の意地だ。
それを知った清兵衛は、自分が若かったら行ってやりたかったと利吉に言う。

しけの為、船着場のない御蔵島に船は寄せられないと役人たちは言う。
島に連絡は行っているので、海に飛び込めと役人は言った。
拒否した者は斬り殺された。
しかたなく、囚人たちは次々、しけの海に飛び込んだ。

やがて、文十郎は一軒の家で目が覚めた。
そこは治平とおとせという親子の家だった。
治平は文十郎が、病気の叔父の為に身代わりでやってきたことをちゃんと知っていた。
すると、巳之吉という島の若者がやってきて、文十郎を引っ立てて行った。

銃を構えた巳之吉は島の人間だって食べていくのが大変なのに、流人なんて送ってこられてと怒っている。
流人の集落に文十郎は送って行かれた。
迎えた流人は、送ってきた巳之吉に頭を下げろと文十郎にうながす。

江戸から来たと聞いて、文十郎の周りには囚人たちが群がり、自分の出身地と家族の名を言って、知っていることはないか問い詰めた。
だが、そこの長らしき初老の男は文十郎をみなから引き剥がし、流人の規則を話した。
まず、ねぐらは今夜は自分のところに寝るとして、食べるものは自分で採って来る。
誰も頼れず、自分ひとりで精一杯の生活だ。

文十郎は他の流人はどうしたか、気にしたが、夕べは島の人間総出で囚人を引き上げたが、土左衛門も多かった。
平内は別の割り当て場所に行ったんだろうと聞いた文十郎は行こうとするが、ここでは他の集落と行き来することは禁じられている。
一揆や暴動を怖れ、3人以上の者が集まることも禁じられている。
もし見つかったら、死罪か八丈島送りだ。

八丈島に送られたら、御赦免はない。
だから身を潜め、御赦免の知らせを待つ。
待って待って、待ち続ける。
文十郎は他の囚人に、平内の父の名を聞いてみる。

しかし、行方はわからない。
八丈に送られたのかもしれない。
とにかくここでは2年に一度ぐらい、騒動が起きる。

御赦免の知らせを持って来る船があるのだが、船がまったく途絶える時がある。
この島から逃げられないと知っていても、そんな年が続くと囚人は狂ったように島抜けを計るのだ。
それも赦免花の咲く時は、なおさらだ。
蘇鉄の花で、この花が咲くと御赦免の知らせが来るというのが島の言い伝えなのだが、この花が咲く時、本当に船がやってくるのだ。

許されて帰る者。
絶望する者。
この世の極楽と地獄を、一度に目の前で見るようだと男は言う。

山から水を汲んで運んでくるおとせに、文十郎は女の流人はいないかと聞く。
おとせは、そんなことは自分たちの仲間に聞いてみたらいいと答える。
文十郎はさらに流人の中におりょうという女性は居ないか、それは自分の知り合いなのだと聞く。

おとせは答えない。
すると文十郎は、平次郎という流人は知らないかと平内の父のことを聞いてみた。
おとせの顔色が変わった。

文十郎は、別の集落にいる平内を見つけることができた。
生きていたことと、再会を喜ぶ2人。
文十郎はその横を通りがかったおとせが、おりょうのこと、平次郎のことを知っているようだったと話す。

平内は名主にも聞いてみたが、知らないと答えられた。
だが、名主が知らないわけがない。
何か隠しているらしい。

そこに夫婦が通りかかった。
平内はあの男も流人なのだ、と教える。
流人にも小屋流人と、島の人間に信頼を得て島の女と夫婦になる家持り流人がいるのだという。

もちろん、島の人間から信頼されるのは並大抵のことではないが、島の男は大概、出稼ぎに外に行ってしまう。
しかし、女は決して島から出ることはできない。
男の数が足りなくなるので、こういうこともあるらしい。
おとせのことを冷やかす平内に文十郎が、そんなのではないと言いかけた時、下の海岸が騒がしくなった。

見ると数人の囚人が、手に食べ物を持って走っていく。
何なのか、叫んで聞いてみると「女だ、女だ。女の流人だ」と言って走っていく。
男たちが走っていく先には粗末な小屋が立っており、「何だ、来てたのか」「おめえこそ毎日よく、体が持つな」と言い合っていた。

先を争う男たちはやってきた文十郎に、「手ぶらじゃこの中には入れねえんだぞ!」という声が飛ぶ。
「何しろよ、おりょうさまは俺たちの弁天様だからよ!」
文十郎がむしろに隙間を空け、暗い小屋の中をのぞく。
「おりょう?!」

小屋の中に入る文十郎を止めようとする男たちを、平内が突き飛ばす。
「この野郎、ものには順序ってものがある!」
文十郎と平内が入った小屋の、ムシロを敷いた上におりょうは布団をかけて横たわっていた。

「おりょうさん?」と2人が呼びかけると、おりょうは起き上がった。
2人を見たおりょうは突然、悲鳴とも笑い声ともつかぬ声をあげて立ち上がる。
着物の前がはだけて、肌が見えている。
「何だ、てめえら、人が楽しんでるとこ、飛び込みやがって!」と男が怒る。

文十郎と平内はその男をぶっ飛ばし、外に並んでいる男たちと乱闘になる。
すると、文十郎に説明をした男がやってきて、「やめろ!」と文十郎を殴った。
「だからここには来るなと言っただろう!」

文十郎が男をにらむ。
「おりょうさんはな、島へ来た時から狂ってたんだ。たぶん亭主の名前だろう、信吉さんとしか言わねえ人になってたんだ!」
平内が「そのおりょうさんを、てめえたちは寄ってたかって慰み者にしてたな?!」とにらむ。

「慰み者?そりゃあ違うぜ!いいか新入り、良く考えてみろ!俺たち男だって、つれえ山仕事や畑仕事をやって、やっと命を繋いでるんだ!」
男が文十郎を見る。
「狂ったおりょうさんに、一体何ができるってんだよ!だからこうしてみんなが、食い物を運んでくる」。

「着るものだって、焚くものだって、みんな運んでくるんだ。だからこうして、おりょうさんは生きて来られたんじゃねえか」。
平内が沈黙する。
「それとも…、餓死させりゃよかったってのかよ!殺しちまえば良かったってのかい!」

2人が黙る。
「それに俺のような年寄りはもう女っ気なんてひえあがっちまって、そんなもんはどうでもいいが、他の者はそうはいかねえ。だからって島の女と、ちょっくらちょっとできあえるもんじゃねえ。うっかりそんなことやってみろ、命がいくらあったって足りねえぐれえの袋叩きだ」。

「そんな流人と、同じ流人のおりょうさんと、ねんごろになったってあたりめえじゃねえか!おりょうさんだけじゃねえ。今までの女流人はみんなそうだった。それが流人ってもんなんだよ!」。
おりょうが晴れやかな笑い声をたて、童女のような笑顔で外に出てくる。
考え込んでいた文十郎と平内に、治平が平次郎のことを聞いたのは平内かと話しかけてきた。

何でもないと去ろうとする治平に、平内が詰め寄った。
おとせが「やめて」と駆けて来る。
「平次郎と言う人は、昔、島抜けをしようとして殺されたんです!」

「殺された?誰にだ?!」
「島の人たちにです!島の人たちは、この人たちを殺してでも、島抜けを防がなければならないんです」
おとせが言うには、おとせの父の治平は、母のことを本当に好きだった。
だから一緒に逃げようとした平次郎を訴えたのだ。

では、治平も流人だったのか。
仲間を裏切ったのか。
平内は治平を殴りつける。
おとせが止めても、殴り続ける。

文十郎が止めに入った。
「この人を殴ったからって、どうなるもんでもねえ!死んだ人はな、帰ってこねえんだ。傷つけあうのは止めるんだ」。
その時、「御赦免船が来たぞー!」という声が響く。

文十郎に説明した男が、山寺に御赦免花が咲いているのを見つけたと、男ははしゃいでいた。
「やっぱり来た、やっぱり御赦免船は来ただろう!俺はな、15年、15年も待ち続けたんだ!」
寺に囚人たちが集まり、名主が御赦免になる者の名前を読み上げる。

「俺だ!」と喜ぶ者。
名前を呼ばれたが、返事がない者。
「ああ、岡谷平四郎はひと月前に…」と名主が言う。
「後で墓にでも知らせてやるんだな」。

最後に名主が名前を呼ぶのに、一瞬止まった。
その後、清一郎という名が、呼ばれた。
文十郎と平内がすれ違った、夫婦者の男が、おののいた声を上げ、逃げるように立ち去った。

「あんた!」と妻が叫ぶ。
15年待ったと言った男が、「それだけですか」とすがるように言う。
他にも名主が去った後、「そんな、俺はもう5年も」と地面に突っ伏して泣く者もいた。

今夜は御赦免になった囚人を乗せる為、船は一晩中、沖に止まっている。
「今夜、やろう」と文十郎と平内は相談した。
その時、「勘助!」という悲痛な叫び声がする。
見ると、首を吊って死んでしまった男がいる。

悲嘆に暮れる囚人たちは「島抜けだ」と言い始めた。
「15年待った、もう我慢がならない。抜けたい者は一緒に来い!名主のところに鉄砲がある」。
名主から鉄砲を奪い、島抜けをする相談と手はずを決める会合がまとまり始める。

何かあるのを察したおとせが文十郎を呼び止め、やめるようと懇願する。
島抜けを無事にできた者はいない。
それに島抜けの流人が出れば、島には今よりさらに重い年貢が課せられる。
だから島の人間も、囚人たちを殺しても島抜けさせまいと必死なのだ。

その頃、あの夫婦の夫が、船を持ち出しそうとしているところを捕まった。
妻が必死に止めるが、お前はやはり流人だと袋叩きにされる。
巳之吉が銃を構え、「逃げてみろ!」と笑う。
夫は必死に逃げるが、巳之吉は銃を構え、撃とうとした。

だが銃声が響き、倒れたのは巳之吉だった。
丘の上に文十郎たちと一緒に送られてきた囚人たちがいて、「お先に鉄砲はいただいたぜ」と言った。
島抜けを提案した男は、自分たちと一緒の者でないと気心が知れず、長旅の間、何をするかわからないと嘲笑われ、突き飛ばされた。
「だが女は別だ!」

囚人は、おりょうを抱き寄せた。
すがっていた男を撃ち殺し、文十郎様と駆け寄ろうとしたおとせを捕まえる。
名主は身代金を出すから、おとせを解放してくれと頼んだ。
囚人たちは本当に身代金を払うつもりなら、沖の御用船まで持って来いと言って船に渡った。

平内が針を研ぐ。
名主は小判を用意し、小船で御用船まで渡った。
文十郎と平内は、体に油を塗りたくっていた。

名主が御用船にたどり着き、梯子を上がっていく。
夜の海を、文十郎と平内が着物を頭の上に結わえ付け、泳いで行く。
金を出せと言った囚人に、名主は女は甲板に出せと行った。
もみ合った囚人は、名主から小判を奪い、その色を見て目の色を変える。

その時、船室に向かって、上から縄を持った手が下りてくる。
手は小判を持って狂喜している男に向かって、縄を投げた。
縄は男の首にかかる。
男は階上へ引きずられていく。

「兄貴!」
武器を手にした囚人たちが階段へ向かうと、階段の上の扉が閉められた。
「開けろお!」
天井に向かって、囚人たちは発砲する。

上ではそこから少し離れたところにいた文十郎が発砲を知り、床を探る。
弾が貫通した跡から狙いをつけて、銛を打ち込む。
天井から銛に刺されて、1人が悲鳴をあげる。

パニックを起こした1人がまた、天井に向かって撃つ。
するとその男の背中に、天井から銛が刺さる。
残った2人のいる船室に、文十郎と平内が降りてくる。

抵抗する1人を文十郎が刺す。
平内がキセルの筒を抜き、針を出す。
押さえつけた囚人の額を刺す。

おとせが「文十郎様!」と駆け寄ってくる。
名主がおとせの無事を確認すると、巳之吉たち、島の男たちがやってくる。
「島の掟を破って島抜けしようとした者を成敗したんだ。このことについて、お上からお咎めはあるまい」。
御赦免になった者以外を連れて、名主は島へ帰ろうとした。

おりょうを連れ、文十郎と平内も外へ行く。
御赦免になった男たちが、歓喜の声をあげている。
梯子を降ろし、おとせが降り、名主が降りた。
名主が下りると、平内が梯子を引き上げた。

「何をするんだ!」
「文十郎様!」
平内が「すまねえ、名主さん。俺たちはこの船の中で、死んだことにしてくれねえか」と言った。

「何!」
「俺たちは、この、おりょうさんを救い出すために来たんだ。だからおりょうさんは預かっていく。勘弁してくれ」。
おりょうは文十郎の隣に、ぼんやりと立っていた。

「それからおとせさん。親父さんに言ってくれねえか。俺はあんたの親父さんを恨んじゃいねえ、ってな」。
おとせが視線を落とす。
「平次郎が殺されたのは、しかたがなかったんだ。その代わり、治平さんが島へ残り、あんたみたいなかわいい人が生まれたんだ。…それでよかったのかもしれねえ」。
平内は引っ込むと「おうい、八丈島の衆!早いとこ、船を出してくれ」と声をかけた。

声をかけられた船頭は、名主に向かって「いいんだな?」と聞く。
名主は黙って船から離れていく。
「文十郎様!」とおとせが叫ぶ。
離れていく小船から、おとせは文十郎の名を呼び続けた。

川崎の宿場で、信吉が息子を背負って走る。
「おりょう!」
指定された場所では、おりょうがぼんやりと座っていた。

「おりょう!」と肩を抱かれても、おりょうはぼんやりと袖を折り、それを見ていた。
「おかあちゃーん」と、子供が呼ぶ。
反応のないおりょうに、信吉が「おりょう?おりょう!」と呼ぶ。
おりょうの傍らに信吉宛ての手紙が置いてあった。

「おりょう様のこと、さぞ驚きのことと存知あげそうらえども」と平内の声がした。
「長崎在の高名なる蘭方医にお診せすれば、快癒すると聞き及び」。
今度は文十郎の声がする。

おりょうの袖の先を折っていた手が、下がる。
膝の上に置いた手を、子供の手が握る。
「いかばかりか、その治療の足しにと存じ上げ、おりょう様に、金20両お預け申し上げ候」。

子供がおりょうの手を取り、明るく日が差す外に連れ出す。
おりょうの目が子供を凝視し、子供がおりょうの手を取って歩き出す。
一緒に、おりょうも歩き出す。

文十郎と平内が2人、山道を歩いていく。
「文さん、今度の仕事も金にならんかったな」。
「しかたあるまい。だいたい、元が安すぎるんだい!」
2人は顔を見合わせて笑った。



これは、誰もがかわいそうな哀しい話です。
凶悪な囚人は別にして。
貧しい島の人たちもかわいそうだし、特に島から出られない女性がかわいそう。
悪いことをしたとは言え、ひたすら赦免船を待ち続け、その日を生きている大人しそうな囚人もかわいそう。

細かいところを言えば、あの夫婦者もかわいそう。
夫婦になって島に馴染んだかと思ったら、やっぱり帰りたいんですね。
島抜けをして、捨てられそうになって、それでもかばう妻がかわいそう。

それから、何と言ってもおりょうさんがかわいそう。
仲を引き裂かれ、遠島にされ、狂ってしまって、島の囚人たちの慰み者になって餓死を免れている。
このおりょうさんの姿が、かなりショッキング。
おりょうさんをいかにも軽蔑しきっていた役人といい、狂う前に何もなかったら良いなと思いました…。

それで、あんまりおりょうさんの姿と境遇が悲惨だったので、二度は見られないかなと思ったんですが、これが名作なんですよ。
誰に対しても、気持ちがわかる。
何度も言いますが、最初の船の中から性質が悪かった囚人たちは別にして。

文十郎と平内は憤るが、ではここでおりょうさんが生き延びるには他に方法がなかったと言われると、これ以上怒れない。
みんな、苦しい。
必死なんだと。

そして、平内さんの生い立ちが語られる。
すると平内さんは、貧しさの余り、父親が罪を犯して罪人になった。
その後、どういうツテだったかわからないが、武家に養子に入って婿に行ったが、その家を出て武士を捨てたということになりますね。
弱者に対して、なぜ平内さんが情け深いか、判った気がします。

許せなかった平内さんが、島の現実を、御赦免を前にした地獄を目にして治平を理解する。
自然に赦す気持ちが出て、最後に船の上からおとせに言葉をかける。
良かった、おとせみたいな娘がいて、治平さんは良かったと。
おとせにしても、治平にしても、人生の一つの区切りができた。

そして、最初から思いを寄せられた文十郎。
お吉が見たら大変だ。
しかし、おとせを憎からず思っているようで、文十郎は最後まで彼女を抱きしめてやることはしない。
できないことは、期待させない。

最後に殺陣なる相手は、凶悪な囚人たち。
不穏な空気を漂わせていた囚人たち相手に、それまでの重苦しさを一掃する殺陣。
御赦免船が帰ってきて、文さんと平さんとおりょうさんは、清兵衛さんがちゃんと迎えたんでしょうね。
そのあたりは描かれていませんが、手筈はちゃんと整えていたんでしょう。

パニックを起こしたしのと、なだめる利吉も描かれませんが、あの後、だから人違いだって言ったじゃないですかで収まるんでしょうね。
金毘羅様のおみやげは、清兵衛さんがちゃんと用意してあるということで。
しかし、最初からしけの海に投げ出されるとか、危ない仕事だ。
帰ってこれなかったら、どうするんでしょ。

最後におりょうさんを届けて、添えた手紙の文面を平内さん、文十郎さんの声が代わる代わる読み上げるのは上手い演出。
言葉遣いに品の良さ、武家の矜持、教養と思いやりを感じます。
こういう文化も生きているから、時代劇はなくさないでほしいね…。

ひたひたと悲しみがしのび寄るように、始まる音楽。
おりょうの手を取る子供の手。
かすかにうごく、おりょうの表情、手。

子供がおりょうを連れて行く。
音楽が、癒しの声に変わっていく。
ああ、おりょうはきっと良くなる。

そんな希望を抱かせる音楽の力。
正しい音楽の使い方!
おりょうを演じた、川崎あかねさんの演技の素晴らしさ。

町人の意地を見せた、依頼人。
これだけの思いがあれば、おりょうはきっと良くなる。
幸せになる。

あんな危ない目に遭ったのに、おりょうの為に助け料を全て投げ出してしまった文さんと平さん。
カラッと笑って去っていく。
撤退して、最後まで助けようとする、本当の「助け人」だなあと思いました。

このラストがある為、悲惨な展開でも決して後味は悪くありません。
2話は武士の本懐から始まり、3話は盗人の心意気、と来て4話は町人の意地からの依頼という。
それぞれの階級にいる人たちが、精一杯に生きている。
彼らを徹底して助ける「助け人」、文十郎と平内の心意気もうれしい4話でした。



なけりゃねえで狂わせる。あればもっと狂わせる 「助け人走る」第3話

第3話、「裏表大泥棒」。


以前、一度書いてますね。

「美しい…、この世のものとは思えぬ美しさ」。
絡み合う男女。
女の肌。

「あの暖かい肌色。その肌色を真っ赤に染める赤。ほしい…」。
なまめかしさを見せるその女が、つぶやく。
「見なければ良かった。この目が見なければ、ここまで私を苦しめることはなかったのに」。

女の声が切羽詰ってくる。
「ほしい…」。
「私はあの赤井戸という茶碗がほしい…」。

「あなたには、おわかりになりますまい。金さえあればこの世の全てが、美しいものが全て手に入ると思っておられる」。
「そうではありません。例えどんなに大金を積んでも本当に美しいものは、手に入りません」。
「女の心と同じように」。

男は油問屋の大蔵屋・藤右衛門。
相手は、妾の志津だった。
籐右衛門は、どこで赤井戸を見たのか聞くと、「戸沢様のお屋敷です」と答える。

藩邸のお茶会の時、秘蔵の名器と言って遠くから見ただけだった。
だが、志津は、一瞬にして魅了されてしまったのだ。
それを聞いた籐右衛門は「金さえあれば私には何でもできる」と、豪語する。

清兵衛のところに、昔の盗賊時代からの友人の嘉平がやってくる。
武家に茶碗を貸したが、返してくれないと泣きつかれた嘉平が、その茶碗を武家屋敷から盗み出してほしいと言うのだ。
だが嘉平はもう年を取っている。
そこで、清兵衛のことを思い出してやってきたのだ。

引き受けた清兵衛だが、依頼に嘘があった場合は…と言いかける。
すると嘉平は、この白髪首をバッサリやってもらおうと言う。
大蔵屋からは25両預かってきたと言う嘉平に清兵衛は、「前金が5両。後金が5両。それが裏の助け人の決めでございます」と断る。

早速、清兵衛は戸沢家から茶碗を盗み出すことにした。
利助が忍び込み、屋敷内を探り、蔵にあると見て、蔵の鍵の型を取ってくる。
茶道具一覧の書を盗んできた利吉は、清兵衛に足がつくと言われるが、朝までにちゃんと戻しておくと言う。

利助には、文十郎か平内、どちらか連れて行けと言うが、文十郎は泥棒までしたくないと言った。
というのは、建前で、文十郎は今は仕事をやる気がないのだそうだ。
「そんなに貯めこんだんでございますか?」と言う利吉に、文十郎は指を3本見せた。

「30両!」
「3両だよ」。
「欲のないお方だ」。

翌日、しのの働く茶店に利吉が行くと、「またあのやろう!」と思わず声を出す。
しのの茶店には、ここのところ連日、若い侍が来ていた。
その侍は、団子を20本食べないと腹の虫が収まらないと言って、何度もしのに団子を頼む。
利吉は対抗して、団子を30本頼む。

結果、利吉はうなりながら平内の家にいることになった。
あんな小娘のどこがいいと言う平内だが、しのとの仲を聞かれると、文十郎に絞め殺されると言う。
平内が女遊びに誘うと、利吉は仕事だと言う。

清兵衛を前に、利吉から説明を受けた平内は言う。
「俺たちは助け人だ。人を助ける為には人殺しでも何でもやる口だ。だがね、棟梁。泥棒はほんとに人助けになるのかね」。
「平内さん、あっしの受けた仕事だよ。今さらこの年で、欲にくらんだ盗人仕事は引き受けませんよ」と清兵衛は笑った。

平内と利吉は、戸沢の屋敷が見える蕎麦屋の2階から様子を探る。
利吉は、盗賊はざっと12年やったという。
棟梁のところに弟子入りしてまもなく、どうやらおめえは、大工より盗人のほうが筋がいいみたいだと言われる。
それは本当だった。

あの屋敷から何を盗むのか。
千両箱かと平内は聞く。
「とんでもねえ。そんなけちなもんには、目もくれませんよ」。
利吉は今度の仕事は自分が頭領。平内は助っ人。助っ人は頭領の言う通り、動いてくれればいいんです」と言った。

その時、利吉がしのの茶店に通う侍が屋敷から出て行くのを見た。
誰だと聞かれると、あっしの色敵だと言う。
侍は、戸田藩の若い侍、岩切半次郎といった。
岩切は同僚と共に屋敷を出た。

その後、茶屋から戻ったしのは家の中に飛び込み、文十郎に変な人がつけてきたと怯える。
お店によく来る客だと聞いた文十郎は、表に飛び出していく。
しのの長屋の先では、岩切が同僚に家さえわかればこちらのものと言われていた。

後は暮らし向きを探って2、3両の金さえ積めば、茶屋娘などどうにでもなると同僚は言う。
ためらう岩切に同僚は、自分が話をつけてこようかと言うが、岩切は「俺は何も…」と口ごもる。
「相手はたかが町娘だ。遊び飽きたら、また金で綺麗さっぱり。それが江戸詰めの極意ってもんさ」。
2人の背後に、ものすごい形相の文十郎が立っている。

「おい!」
「誰だ、貴公は?」
「俺はな、お前たちが付け狙っている、茶屋娘の兄だ!」

それを聞いた2人は逃げ出した。
途中、二手に分かれた2人だったが、文十郎は道をまっすぐ逃げる岩切を追った。
岩切を捕まえた文十郎は、したたかに殴った。

やがて文十郎は、岩切と飯屋にいた。
岩切は「拙者はあなたが思っておられるるような、浮ついた気持ちはもうとう持っておりません」と言った。
国元から両親が来るので、しかるべき仲人を立て、正式にしのを貰いたいと申し込むつもりでいた。
それがこの始末…、と岩切は泣き始めた。

文十郎は居心地が悪くなり、岩切に酒を勧めるが、岩切は酒もタバコもやらないと言う。
では、女かと文十郎が言うと、それもとんでもないと言う。
ただ、しのが勤める茶店で団子を食べることが楽しみだった。
文十郎は団子はないが、芋団子を串に刺して、「ほら、芋団子」と差し出してやる。

茶店の影で、しのは文十郎がすっかり、岩切を気に入ってしまったと利吉に訴える。
困り果てる利吉だが、しのに、今夜、兄に付き合っていると言ってくれるかと聞かれると、「殺されちゃう」と言う。
それに今夜は仕事だ。
しのはすねる。

その夜、平内と利助は戸沢藩に忍び込む。
岩切が同僚と見回りながら、「本気だ。俺はあの女を嫁にする」と話している。
思わず、平内がキセルを構えるが、2人は蔵を照らすと戻っていく。

赤井戸は嘉平の手に渡った。
嘉平は清兵衛に「大名屋敷に泣き寝入りせず、赤井戸を取り返したんだから、胸がすいた」と笑った。
そして、こんな茶碗に金に糸目をつけず、取替えそうというのは不思議だと笑った。
清兵衛も笑った。

嘉平の弟子の伊太八が、後金の5両を持って来た。
平内は2両を貰ったが、本当にこの泥棒は人助けだったのかと聞いた。
すると利助は、実はあれは盗みではなく、取替えしたのだと言う。
理不尽に奪ったものを取り返されたのだから、訴えるわけにもいかないだろう。

その日、文十郎は機嫌が良かった。
文十郎は、しのに岩切の嫁になるように言う。
その為、今日は岩切がやってくるはずなのだ。

戸田藩で、岩切は身なりを整えていたが、その時、上司が呼びに来る。
昨夜、ちゃんと見回りをしたかと言われ、蔵に連れて行かれるとタバコを吸った跡がある。
誰かが昨夜、蔵でタバコを吸った。

何かなくなっていないか調べると、赤井戸がなかった。
同僚が「えらいことになった」と嘆く。
赤井戸は、藩祖が時の関白・秀忠公から拝領した家宝。

納戸役出仕の折り、他のものはともかく、赤井戸だけは命に替えても守れと言われていたほどだ。
やがて、岩切が席を立つ。
隣の部屋から「ぐうっ」という声がした。
同僚が走ってふすまを開けると、岩切が切腹して果てていた。

待っても来ない岩切に、文十郎はまじめだと思ったのだが…、と首をかしげる。
その時、玄関に来客があった。
藩邸からの使いで、岩切が来るはずだったと確認した。
岩切が腹を切ったことを聞いた文十郎は、愕然とした。

清兵衛は、娘夫婦と孫と出かけるところだった。
表で水をまいていた利吉が突然、背後から文十郎に押さえつけられた。
「おめえ、泥棒したはずだな?どこで何を盗んだ?」

「中山さん、裏の稼業についちゃね、例え親兄弟でも」。
利吉がそう言いかける。
「言わんとその首っぱね、へし折る!」
文十郎がすごむ。

利吉が出かける直前の清兵衛に、耳打ちする。
清兵衛は顔色を変え、外出を取り止めた。
文十郎と利吉を伴い、清兵衛は嘉平の下へ行く。

座敷に上がりこもうとする清兵衛を、嘉平の下にいる数人が止めようとする。
文十郎が「どかんと斬るぞ!」とはねのける。
座敷の奥にいる嘉平の前に、清兵衛が立つ。

清兵衛は前金と後金の10両を返すと、嘉平は「人助けなら金はいらないとでも言うのかい?」と言う。
「人助けが人助けにならねえから、そう申し上げているんで」。
嘉平はいきり立つ手下たちを叱り付けると、文十郎が部屋の外に押し出してふすまを閉める。

清兵衛はあの茶碗の、本当の持ち主を聞いた。
嘉平は大蔵屋の籐右衛門と言うが、清兵衛は今日、戸沢藩で若い侍が1人、腹を斬ったことを話す。
はたして、嘉平が騙されているのか、それとも清兵衛に嘘を言ったのか。

事と次第によっては、掟通り、死んでもらう。
清兵衛はそう言って、持って来た匕首を見せる。
嘉平の隣にいた伊太八が、刀に手をかける。

文十郎に殺気が走る。
嘉平は清兵衛をまっすぐに見据え、持って来た匕首を貸してくれ、と言った。
「助け人のおめえさんが、手を汚すこたあねえ。俺に任せてくれ」。

その頃、志津は赤井戸を見て、目を丸くしていた。
「赤井戸…」。
「そうだよ。お前のほしがっていた、赤井戸の茶碗だ」。

「どうしてこれを」。
「そこまでお前が知ることはない。ただね、いつか私が言ったろう?この世の中は金さえあれば何でもできる。ほしいものは何でも手に入る。私はそれができる男だ。このことはようく、心に留めておいて貰いたいものだな」。

志津は赤井戸を寝屋まで持ち込み、うっとりと見つめていた。
「こんな茶碗の、どこがいいのだ?」
「この…、肌の色」。
「肌の?」

「この茶碗は生きているのです」。
志津は手に持ち、「こうして手に持つと、この茶碗の暖かさが手に伝わってまいります。この白は、人の肌色。この赤は、人の赤い血」。
うっとりと手にとって志津は言う。
「そう…。この茶碗を砕いたら、きっと赤い血が」。

その時、籐右衛門を番頭が呼びに来る。
籐右衛門はかごで急ぎ、店に戻る。
天井裏に利助が潜み、嘉平と籐右衛門を見ている。

籐右衛門は茶碗の例を言う。
しかし嘉平は、「おめえさん、まさかこの年寄りを騙しちゃいねえな?」とすごむ。
自分の古いなじみの助け人が、取り戻してくれたのだ。
それなのに、万に一つ、仲間を裏切ったとあっては…。

「今戸の嘉平、後々までも物笑いだ。どうなんだい?あの茶碗は本当にお前さんのものか?それとも…。戸田様のものを俺に盗ませたのか?どうなんだ!」
籐右衛門は目を見開き、固まった。
「返事のねえところを見ると…」。
籐右衛門は目を白黒させながら、あれは自分のものだと言った。

近くで、伊太八がじっと見つめている。
その冷酷な目。
嘉平はならば、戸田藩に行こうと言う。
籐右衛門は、ツバを飲み込む。

嘉平が匕首を抜き「どうした、大蔵屋!」と怒鳴る。
籐右衛門は手を振って、嘉平を制して、「ま、待ってくれ」とあわてる。
「金なら出す。金で話をつけよう」。

そう言うと金庫を持ち出す。
「どうだ。50両」。
嘉平は匕首を納めない。
「百!」

「百両だぞ!」
嘉平の匕首の先と嘉平を見て、「だめか」と言う。
「150!い、いや2百両!」

嘉平の顔が怒りに歪んでいく。
「こんの野郎…」。
「さ、3百両!3百両出そう!」

小判の包みが並べられていく。
伊太八が、ツバを飲み込む。
「ダメか…。こ、これで!」

籐右衛門が金庫を差し出す。
「これで話をつけてくれ!」
金庫をひっくり返すと、小判が音を立てて落ちていく。

伊太八の目つきが、次第に取り付かれたようになる。
小判を凝視している。
「ご隠居…」。

「頼むぅ!」
籐右衛門が頭を下げると、嘉平は着ていた半纏を投げつけ「金の亡者め!」と叫んだ。
「ひいい。ゆ、許してくれ」と籐右衛門が後ずさりしていく。
その時、伊太八が置いてあった刀を手にした。

目にも留まらぬ速さで刀を抜くと、背後から嘉平を刺し貫く。
天井で見ていた利助が驚愕する。
籐右衛門もまた、口をパクパクと開けて絶句する。

「伊太八、てめえ」。
伊太八は刀を抜くと、もう一度、嘉平に突き立てる。
籐右衛門に振り向くと「大蔵屋さん。この金は、俺が貰っとくぜ」と言う。

腰を抜かした籐右衛門に向かい、「ご隠居のシマは俺が引き継ぐ」と言って金を金庫に入れ始める。
「子分ともども、またごひいきに願いますよ」。
「なるほど…。これだけの金を積まれちゃ、親分もヘチマもないってわけか」。
持ち直した籐右衛門は、「伊太八さん。お前さんの仕事はまだ終わったわけじゃない」と言う。

「茶碗を盗んだ助け人とやらを、後腐れのないよう始末してもらおう。金はいくらでも出す。嘉平のシマを継ぐなら、それなりの後ろ盾になろう。ただ、茶碗のことは世間にもれちゃまずい」と言った。
「俺たちは旦那あっての商売だ。嫌とも言えねえだろう」。
そう言うと、伊太八は抜き身の刀を見つめる。

このことはすぐに、利助が清兵衛と文十郎が飲んでいるところに知らせに走った。
立ち上がろうとする文十郎を制し、清兵衛は平内を呼ぶように言う。
「どうもなんともやりきれん気持ちだ。たった一つの茶碗の為に、バカ正直な侍が1人。後生安楽なご隠居が1人、何も命まで落とすことはなかったんだよ!」
鉄心を床に突き、文十郎が憤る。

「何と言っても、たかが茶碗じゃねえか!ただの!」。
「いや、茶碗じゃねえ、金だ」と清兵衛が言う。
「ええ?」
「金って奴はなけりゃねえで、人を狂わせる。ありゃああるで、もっと人を狂わせる」。

清兵衛は薄く笑う。
「そういうあっしだってまだ心のどこかに、金がほしいって気持ちは消えちゃあいませんからね」と言った。
隠し部屋の階段を、清兵衛がそう言いながら上がっていく。
続いて、文十郎が上がっていく。

土蔵に出た文十郎が隠し部屋の戸を締める細工を上に上げると、床が閉まって普通の床と見分けがつかなくなった。
清兵衛がふっと、土蔵の明かりを吹き消す。
外に出る為、清兵衛が土蔵の格子戸を開けた時だった。
暗闇の中、数人が刀を手に襲い掛かってくる。

とっさに文十郎は戸を閉めようとするが、その数人は土蔵内になだれ込んできた。
文十郎が刀を合わせ、兜割を抜いて、2人を叩く。
清兵衛は燭台を手に刀を避け、2人をそれで刺して倒した。

文十郎は2人を叩きのめし、2人を同時に叩く。
清兵衛は自分に飛びかかってきた1人を組み伏せ、「言えっ。伊太八はどこにいる」と問い詰めた。
平内がいるはずの女郎屋に、利吉が急ぐ。
機嫌よく女郎屋を出た平内を利吉が捕まえ、耳元で囁くと平内と利吉は走る。

その頃、志津はじっと茶碗を前にして座っていた。
籐右衛門が伊太八に話す。
「変わった女でね。気が向くと一晩中でも、ああして茶碗をにらんでる」。

志津の目つきが普通ではない。
「気位が高い。高慢だ。私のことなぞ、心の底から軽蔑しきっている」。
志津のことを語る籐右衛門の顔が歪む。
「そんな女を、私は思うままにする。それができるのも、金の力でね」。

籐右衛門は笑う。
だが籐右衛門の言葉に伊太八は答えず、「遅せえな…、もうそろそろ…」と言った。
「助け人の息の根を止めた頃だ」。

「浪人者には、いくら払うんだね?」
「一人頭、5両」と伊太八は手を上げる。
「もちろん、それはお前さんの方で払うんだろうね」。
「大蔵屋さん、命が助かれば金持ちってやつあ、けちになるもんですね」。

その時、「ごめんくださいまし」という声がする。
「誰だ」。
籐右衛門の座っている座敷の入り口に、清兵衛が立っている。
「助け人の清兵衛と申します」。

そう言うと、清兵衛は座った。
背後の部屋には、伊太八がいる。
「助け人?何の用だ」。
「へい。先ほどのお礼に」。

そこまで言うと、伊太八が斬りかかってくる。
清兵衛は前のめりになり、避けた。
伊太八の手を抑えると、突き飛ばし、懐からノミを手にする。
籐右衛門はハッとして、逃げた。

怯えながら廊下に出ると、そこには平内がキセルでタバコを吸っていた。
驚いた籐右衛門は、平内を見る。
目を丸くし、口を開けて、後ろに下がっていく。

背後の障子が開く。
平内がキセルから針を取り出す。
籐右衛門が、目を飛び出さんばかりにむく。

背後の障子が外れ、外から籐右衛門を平内が押さえ込むのが見えた。
籐右衛門を押さえ、障子の側に突き飛ばすと平内はキセルの針を籐右衛門に叩き込む。
平内の針が、籐右衛門の額の真ん中に刺さる。

キセルが刺さったまま、籐右衛門がずるずると崩れ落ちていく。
目を寄り目にし、籐右衛門は足を投げ出して座り込んだ形になっていく。
キセルから煙が出ている。

清兵衛から伊太八は逃げ、戸を外して庭に出る。
表に出ようとした時、文十郎の横顔が見えた。
あわてて逆方向に走ろうとした伊太八は、清兵衛と文十郎の挟み撃ちにあった。

観念したように見えた伊太八は、ふいに文十郎に向かって刀を振り上げた。
だが、文十郎は伊太八を頭から一気に斬る。
うめきながら伊太八は転がり、文十郎をにらむ。

刀を収めた文十郎は、兜割りを取り出す。
立ち上がった伊太八を、正面から文十郎は刺した。
「ぎえええっ」と声をあげて、伊太八は倒れる。

座敷で志津は、ひたすら赤井戸に魅入っていた。
清兵衛たちが入ってきたのに気づくと、志津は赤井戸を抱きかかえ、「何者です!」と言った。
無言で清兵衛は志津に近寄り、しっかり抱きしめた赤井戸を志津の手から引き剥がすようにして奪う。
「あっ」と、志津の手が赤井戸を求めて、宙に浮いたままになる。

清兵衛は志津を見て、それから赤井戸を見る。
「惜しい茶碗だが、いつかまた、こいつのおかげで人が命を落とさねえとも限らねえ」。
赤井戸を人差し指で指して、「この肌の色が、そういう色なんだ」と言う。
清兵衛は赤井戸を片手に抱えると、庭に向かって投げた。

赤井戸は灯篭に当たって、砕け散る。
欠片を撒き散らして砕ける瞬間、「きゃあああ」という女の悲鳴のようなものが聞こえたような気がした。
清兵衛も、平内も、文十郎も黙っていた。
やがて清兵衛が座敷を出ると、文十郎も平内もその後に続く。

残った志津は、呆然と庭の方だけを見ていた。
1人きりになっても、志津は庭だけを見ていた。
やがて、志津は膝を折って、座敷にへたりこむ。



なまめかしいシーンから始まり、女性の肌と「赤井戸」が重なる。
「赤井戸」は気位が高く、容易に手に入らない女性のような茶碗。
志津は籐右衛門の妾ということですが、籐右衛門の本妻の影って全然感じない。
ただ、正妻として迎えられていないというだけで、正妻はいないのかもしれないです。

籐右衛門は、高木均さん。
ムーミンパパの声をやっていた方。
「新・仕置人」でも、奉公人を囲っていた卑怯な商人。
そういうのが得意なんでしょうが、「ムーミン」を見たことがあるこちらは最初見た時、ちょっとしたショックがありました。

志津のことを気位が高いと語る時の表情は、憎々しげ。
自分を心の底から軽蔑しきっている女を側に置き、そんな女を、私は思うままにするのが好き。
歪んでる…というか、金の力を使いたいだけでしょうか。

金の力=自分の力。
それを常に確認したいだけなのかもしれませんね。
自分にできないことはないと思いたいから、自分を嫌っているような女性を置いておく。
あ、やっぱり、歪んでる。

嘉平は、石山健二郎さん。
貫禄ある親分です。
岩切半次郎は、東野英心さんこと、東野孝彦さん。
田舎ものと茶店で噂になっているけれど、いかにも素朴で人が良さそうです。

そして圧巻は何と言っても、伊太八を演じた志賀勝さん!
こわ~いご面相でも、バラエティなんか出て楽しませてくれましたね。
お顔はこちらのサイトで、確認できます。
http://www.walkon.ne.jp/talent.html

夜道であちらから来たら、引き返す。
町ですれ違ったら、絶対ぶつからないようにする。
お客さんで来たら、メチャクチャ緊張して対応する。
だから、嘉平の横に控えているのは、すごい迫力で正解。

「前略おふくろ様」でも、新入りだけど、一目見て先輩の板前さんたちも飛びのいた。
それから、腫れ物に触るように扱ってました。
でも実はすっごく大人しい人なの。
笑っちゃう。

籐右衛門が「か、金で話をつけよう!」って金庫を持って来て、金を積み始める。
段々、金が増えていく。
この時の、徐々に変化していく表情がすごい!

目が釘付けになり、魅せられて行く。
赤井戸に魅せられた、志津の目と同じ。
ツバを飲み込む。

そして目にも留まらぬ速さで、親分に向かって刀を突き刺す。
非常にショッキングなシーンです。
人の心の動きを、手に取るように見せてくれるシーンです。
清兵衛の「金って奴はなけりゃねえで、人を狂わせる。ありゃああるで、もっと人を狂わせる」そのまま。

伊太八の寝返りで、籐右衛門はますます自分の力を確信する。
怯えるところから、再び自信を取り戻す、高木さんの演技も楽しいですよ。
最期は怯えまくって殺されるのも、上手い。
キセルから煙が出ているのと、高木さんの表情でちょっと笑ってしまえるユーモラスなシーンになってます。

暗闇での清兵衛と文十郎の乱闘もあり。
利吉の盗みのシーンもあり。
平内さんの見せ場もあり。
女郎屋から耳打ちされて、駆け出す平内さんもガラリと変わっていいです。

赤井戸は、魔性の茶碗。
またこのために、人が死ぬ。
人生の裏まで見尽くした清兵衛だから、わかるのかも。

赤井戸が砕け散る瞬間、女の悲鳴のようなものが聞こえるのは上手い演出。
最後に人を狂わせた茶碗を割るのは、予想できるかもしれないけど、悲鳴は考え付かなかった。
秀頼から拝領したというから、元からなんかあるのかも。
「ホープダイヤ」伝説みたいなことも、考えられそう。

あの悲鳴、清兵衛にも、文十郎や平内、そして志津にも聞こえたんでしょうか。
みんな、異様な緊張感を持って、息を詰めて見ていた。
もし、聞こえていたなら…、あれは…。

お金はないと人を狂わせ、あるともっと狂わせるという棟梁。
そこで、助け料はあの金額なのでしょうか。
狂わない適正価格と言うことで、よろしいですね!?


星が強かったのはどちらか 「助け人走る」第2話

第2話、「仇討大殺陣」。


江戸では、中山安兵衛の高田馬場の仇討ちが大評判。
瓦版を見たお吉は同じ中山姓なのに、と文十郎を見て嘆くが、文十郎はまったく気にしない。
そこに利助が呼びに来る。
助け人の仕事、しかも裏のだ。

平内も呼ばれたその依頼は、15人の侍を箱根・千石原に着く前に、片付けてほしいというものだった。
この話の元には、何と、お吉も言っていた高田馬場の仇討ちが影にあると言う。
大評判になったこの話を聞いて、1万2千石の小藩・田原藩の藩主・三宅備後守忠康は、自分の藩でも仇討ちで天下に名を知らそうとした。
ちょうどこの前の年、田原藩では元・勘定方組頭の大田原帯刀が、補佐役・稲葉主膳に果し合いで討った事件があった。

忠康は、主膳の息子2人に、父親の仇として帯刀を討たせようと考えた。
だが未熟な息子2人では、帯刀には到底敵わない。
そこで、藩から15人の助太刀が用意された。
しかし、帯刀と主膳の果し合いには、表沙汰にできない事情があったのだ。

補佐役・主膳とその部下15名は密かに藩の公金を横領していた。
それを知った帯刀は、主犯の主膳のみを果し合いの名目で討ち取り、その責任を取って謹慎し、職を退いた。
だから、息子の仇討ちは、完全に逆恨みということになる。
そして、帯刀を狙う15人の助太刀は、主膳の部下で横領に加担した者たちだったのである。

しかも、これは表の話としても、尋常な果し合いの上、主膳は討ち取られたのだ。
それを仇討ちとは、武家諸法度に照らしても筋が通らない。
だが、忠康は浅野が勅使の接待役にまで命ぜられたのも、このような評判が立ったせいだと言う。

忠康は、それなら、自分たちはそれ以上の仇討ちで評判をとれば、上様の目にも留まるのだと言って聞かない。
仇討ちの理由は、何とでも作る。
だから、主膳の息子たちに仇討ちをさせろと忠康は命じた。

仇討ちは、上様が通る仙石原で行う。
忠康自らも、出向く。
殿が自分を対して仇討ちを仕掛けていると知った帯刀は、事の真相を殿に話せという友人たちの勧めを断った。

帯刀は、これが公になれば、15人は断罪。
騒ぎになり公儀の耳にでも入れば、藩にも類が及ぶ。
だからこれも藩の為と、帯刀は、仇討ちされる覚悟を決めてしまった。
しかし殿をそそのかし、息子2人の助太刀を買って出たのは、公金横領の15人のうちの1人でもあった玄斎だった。

帯刀と旧知の仲である清兵衛は、この話に憤慨してしまった。
侍の世界はわからないが、理不尽なことだ。
あちらが助太刀なら、こちらも助太刀。
そこで文十郎と平内に、14両4部で、15人の助太刀を仕留めるように頼んだのだ。

引き受けたはいいが、助太刀を斬ろうにも、相手の顔を2人は知らない。
田原から三島まで、その手前で敵を捕えたい。
しのには、箱根に湯治と言って文十郎は出かけた。

利吉が家に来る。
しのを見ている利吉に、しのはちゃんとしたカタギの男と一緒にさせると文十郎が言う。
利吉だって清兵衛のところの番頭さんなのに、と、しのが言う。

翌朝、旅立つ文十郎は残していくしのに、もし自分が戻らなかったら…と言って湯治に行くのに大げさだとしのに笑われる。
しのはお吉も連れて言ってあげればいいのに、と言う。
いや、お吉を家に入れればいいのに、と言う。
しかし、文十郎はしのが幸せになるまで、嫁は娶らないと決めている。

清兵衛が持って来た縁談に乗ればよかったのに、と文十郎が言うと、しのが呆れる。
あんな呉服屋のなまっちろい男はダメだと言って、ぶち壊したのは文十郎だった。
要するに文十郎は、しのに言い寄る男は茶店に来る男だろうが、利吉だろうが、縁談だろうがすごい勢いで蹴ってしまうのだ。

「兄さんが気に入る人なんて、いるのかしら」と、しのが憂う。
「でも、私、決めたの」。
誰かと付き合っているのかと文十郎が焦った時、しのは「いってらっしゃーい」と明るく手を振って行ってしまった。

やがて、一足先に駕籠に乗った平内と利吉が、沼津に到着した。
宿帳を見た利吉は、侍が3人泊まっているのに目を留める。
田原からだった。
ずいぶん、遠くから客が来ているんだなあと平内は話をそらす。

宿で文十郎と合流した平内と利吉は、文十郎が向かいの宿の部屋の3人の侍がこちらを気にしていることを聞く。
つまり、こちらの宿に仲間がいるのだろう。
あわせて6人、顔を確認できるのは幸いだし、一気にやる時はやらなければダメだろうと言う文十郎の言うことを聞いて、ここは潜んでいることにした。

平内と利吉が、代わりばんこに一晩中、侍を見張った。
利吉が顔を洗っている時、裏口で見回りの岡っ引きに女中が、奇妙な客がいると話していた。
上様がここを通過する為、見回りが厳しくなっているのだ。
侍3人の客はまったく出歩かず、誰かを待っているようだと言う。

しかも別の部屋の客は障子を締め切り、外ばかりのぞいている。
その会話を聞いた利吉が、余計なことを…という表情になった時、侍が来た。
侍もまた、女中と岡っ引きの会話を聞き、自分たちを見張るものがいることを知った。

平内と利吉がいた部屋に、侍たちがやってくる。
だが、部屋には誰もいなかった。
その時、岡っ引きが人の部屋に入っている侍たちを咎める。
岡っ引きは、田原藩の侍があちこちの宿に散らばっているのを不審に思い、部屋にやってきたのだ。

自分たちの部屋で話を、と侍たちは、岡っ引きを部屋に連れて行く。
平内は屋根の上にいた。
その時、雨が降ってくる。

雷鳴が轟く中、3人の侍が部屋に入るなり、岡っ引きを締め殺した。
それを天井裏から利吉が目撃していた。
6人の侍が集まり、バカなことをしたと言いながら、とりあえず押し入れに死体を隠す。

3人は玄斎を待っているのだと言ったが、玄斎は既に来ているらしい。
岡っ引きの死体は、夜に始末するが、騒ぎになる前にここを立ち去ろうと、明日の朝、船で出立することになった。
平内と利吉は焦るが、文十郎がいない。

しかたなく、平内と利吉が船を流して、侍たちを足止めしようと夕立の中、外に向かうと文十郎が帰って来る。
文十郎が2人が急ぐ理由を聞くと、船を流しに行くのだと言う。
だが船は今、文十郎が流してきたところだった。
翌朝、次々と田原藩の侍らしき男たちが、あちこちの宿から出るのが見える。

全部で12人。
あと3人足りない。
だが、仇討ちの兄弟を入れたら、17人いなければならない。
何かある。

しかし、舟が流れてしまった以上、千石原に行くには裏街道の山道を歩くしかないと文十郎は言う。
その時、「わかった」と利吉の声がする。
「どうも宿の勘定が多いと思ったら、文さん、あんた2升も酒飲んだね!」
算盤はじいている利吉に、後にしろと言って文十郎が怒る。

平内と利吉が船着場を探っていると、侍たちが船頭のところにやってきた。
船頭が言うには、船は全部流されてしまった。
1艘だけ残っていたが、雨が上がると5人連れの侍が訪ねてきて、その船を出してしまったという。

玄斎たちは先に向かったのだ、と残りの12人も歩いて箱根に向かう。
途中、薪を拾ってでもいた風の老人に、山道の行き方を聞く。
道を聞き終わった侍は、老人を斬り捨てた。

その後を平内が着いていく。
追いついた平内を、侍たちが待っていた。
平内は、侍たちになぜ後をつけると聞かれた。

「あっしは別に」と言った平内に侍たちは「問答無用!」と斬りかかってくる。
2人を退治した平内が、斬りかかってきた侍の刀を人差し指と親指の間で受け止める。
平内の指には、鉄の板のようなものがはめられ、人差し指と親指で刀を受け止められるようになっていた。
刀を受け止められた侍を、平内が刺す。

平内を侍たちが取り囲む。
背後から1人の侍が、打たれる。
文十郎がやってきたのだ。

「平さん、こいつらここで片付けるか」。
文十郎が鉄心という、鉄でできた刀を振り回す。
1人が足に当たり、足が折れて悲鳴をあげる。
「4人!」

影で見ている利吉は、ヒモに結び目を作って、数を数えていく。
平内が渡り合う。
文十郎の鉄心が当たった侍の、骨が砕ける。
緑深い山の中、逃げる侍を文十郎が追うのが見える。

数を数えていた利吉が襲われ、戻ってきた文十郎が助ける。
「あと何人だ」。
「4人!」と利吉が教える。

4人は河原へ逃げた。
川の中で6人は、団子状態になってもみ合う。
文十郎と平内も疲れてくる。
侍の1人が川に浮いて、流れていく。

逃げる3人と、追う文十郎と平内。
道端にへたり込んで土をつけ、しりもちをつきながら向かい合い、1人をフラフラになった文十郎が鉄心で叩いて倒す。
2人の侍が刀を向けながら、這うようにして逃げていく。

「玄斎どの」と2人が叫ぶ。
千石原で、仇討ちの兄弟が立っていて、傍らに玄斎と呼ばれた男がいた。
「やはり、追っ手がかかっていたか」。
這うようにして逃げていた2人を、文十郎と平内が仕留める。

「行け!」
玄斎の声で、2人が斬りかかってくる。
よれよれになりながらも、文十郎と平内は2人を倒す。
玄斎が刀を抜いて、文十郎に近寄る。

体力の限界に来ていた文十郎だが、玄斎の刀を受け止めて倒れる。
文十郎に斬りかかる玄斎を、背後から平内が止める。
だが、平内も肘うちを食らって倒れる。

平内に向かって振り下ろした玄斎の刀を、文十郎が兜割りで受け止めた。
力任せに玄斎がそのまま、刀を下ろそうとする。
文十郎が必死に食い止める。
その時、キセルに手をやった平内が玄斎の口にキセルを持っていく。

力で押し切ろうと歯を食いしばった玄斎は、キセルの筒を思わずくわえた。
その時、平内が針を抜く。
刀を押し付けようとしている玄斎の首筋に、背後から手を回した平内が針を刺す。

玄斎の力が止まった時、文十郎の兜割りが玄斎を刺す。
結び目を作って数えていた利吉が、「15」と言って、へへへっと笑う。
兄弟がそれを見て、逃げて行く。
その先に、帯刀がいた。

「与一郎殿、与二郎殿も参られたか。この大田原帯刀、仇といわれるいわれはないが、殿のご下命とあればお相手いたそう。参られよ!」
その様子を文十郎と平内が見守る。
帯刀を見つめていた兄弟の元に、忠康がやってくる。
兄弟が、忠康に向かって土下座する。

「殿!我等稲葉兄弟は、帯刀殿に遺恨はなく!」
「何を言う!」
「父は尋常な果し合いにて、討たれたのでございます。なにとぞ仇討ちの儀、なにとぞお取り消しのこと!」
その時、脇に控えていた田島が、昨日、船が流されて上様はここ、千石原を通らないことになったと話す。

「おのれら、兄弟は…!」
殿は憤慨しながら去っていく。
帯刀が立ち上がり、田島が微笑む。

それを見ていた平内が、「くそーっ、もうどこにも行かねえぞ!女もいらねえ!」と言って倒れる。
「しかし安すぎる。これで7両2部の助けは…、安すぎる!」と文十郎も倒れる。
ああーと倒れた2人に、「どうもお疲れさんでございました。どうも。ありがとございやした」と利吉が頭を下げる。
ススキが日に光っていた。



冒頭、中山文十郎演じる田村高廣さんのお父様、大スター・阪妻さんの「血闘・高田馬場」の活動シーンが白黒で流れます。
文士の語りで、中山安兵衛が見事、仇討ちの助っ人で18人を倒し、浅野家の家臣に取り立てられた話が語られます。
すると、それはお吉が持って来た瓦版の話だった。

瓦版には中山安兵衛の似顔絵も書かれていて、それを見た文十郎が「どっかで見た顔だな」とつぶやく。
お父様です。
当時、阪妻さんを知っているファンへの、ニクイ演出。
お吉がこっちの中山さんは見事に出世して、こっちの中山さんが相変わらず。

助け人なんて、大の男がやるような仕事じゃない職についていると嘆く。
くやしくないの?!と言うお吉に、寝っ転がったまま、楊枝を口にした文さん「別に」。
この「別に」が本当に「どーでもいい」感いっぱいで、笑ってしまう。

「中山安兵衛みたいな助太刀を頼む叔父もいないし」、と。
それで「この安兵衛って言うのは強い星を持っているんだ」と言い出す。
同じ浪人で酒ばかり食らっていたが、叔父がいて、助っ人を頼んできて、あわやという時に現れて相手をなぎ倒した。
やんや、やんやの大喝采だ。

「じゃ、自分だったら?」と文十郎は言う。
「仇討ちに遅れたら、遅れっぱなし」。
「叔父はとっくの昔に殺されて、仇の姿も消えている」と。
親父もその親父の親父もれっきとした素浪人だから、と寝っ転がる。

しかし、ひとつだけ、自分はついている。
過ぎた女がいるから…、の言葉にお吉が「ほんと?誰のことか言って」と甘い声を出す。
そこへ利吉が訪ねてきて、「お邪魔かな~?入ろかな?入っちゃダメかな~?でもせっかく来たんだから、は~いろ」と言いながらも入ってくる。
利吉にぺらぺらうるさい!と怒るお吉。

お吉が助け人の仕事なら断ると言うと、お吉が文さんを丸抱えするのはきついと言う。
なんたって、この旦那は酒飲むしか能がない。
お吉は利吉とにらみ合ったまま、「お前みたいなのは豆腐の角に頭ぶつけてお死に!って言うんだ」と言う。
すると利吉も「姐さんみたいなのを、油揚げくわえて、コーンとお鳴きって言うんだ」と返す。

爆笑。
この2人は文十郎も言うように、そりがあわないらしい。
半次とおきんだったのに、まるで関係が違う。

文十郎がお吉に酒を頼むから、お吉はしかたなく出て行く。
すると、文十郎が「何だ?仕事か?」と言う。
利吉から笑顔が消える。

「へい。裏の」。
その一言で、文十郎の目が厳しく変わる。
笑いと緊張の、見事な導入です。

妹思いの文十郎。
利吉が裏の顔を持っているのを知っている。
自分も持っている。
だから妹に、同業者の利吉は近寄らせない。

忠康は、北村総一郎さん。
若い!
この方も、キャリア長いですね。
それで、凶悪じゃないですが、とってもバカ殿らしい。

帯刀は、名優・志村喬さん。
若くて、気が小さそうな殿よりどっしり構えていて、実に武士らしい。
絶対、この人に非はないとわかる。

忠康は、仇討ちがきっかけで、浅野は勅使まで…と運の良さを羨ましがる。
文十郎も、安兵衛は星が強いんだと言う。
しかし、歴史を知る者は知っている。

この後、浅野家に何が起きたか。
安兵衛が、どうなったか。
勅使の接待役が幸運だったと、言い切れたか。

最後はタイトル通り「大殺陣」。
しかし、さすがの文十郎と平内も12人を相手にして疲れてくる。
相手と力の差があっても、数が多い。
それにまがりなりにも相手は武士、刀を持っている。

平内さんは武士だったけど、今は武士じゃないから刀は使わないし。
そうそう、平内さんの指にあった鉄のカバー。
あれが力を発揮した時、ストップモーションでアップになる。
小さいけれど、カッコイイ場面。

河原ではもう、力任せの乱闘。
この辺りが、現実的。
文十郎が刀ではなく、鉄心を使うのも刀が15人も斬れないから?
だとしたら、ここもまた、現実的。

全部で15人、1人7人半倒す。
最後の玄斎が2人がかりだったから、ちょうどいい配分。
本来なら玄斎より、文十郎の方が全然強いはず。
今も強いけど、この先、文さんは暗殺者として磨かれて行きます。

助太刀は倒してどうなるのかと思ったら、兄弟の仇討ち放棄で収まった。
帯刀を前に、怯んだか。
もともと、やる気が無かったのか。
それとも、父親が悪かったのを知っていたのか。

大体、上様に見せる為に仕組まれた仇討ちだから、上様が通らない以上、仇討ちは無用。
そんな仇討ちを命じる殿の、理不尽。
従う家臣の理不尽も感じる。
文十郎が船を流したことが原因だとすると、文十郎ってものすごく貢献してる!

酒を飲むしか能がないとまで言われる文十郎、ものすごく頼りになる。
頭は切れるし、腕は立つ。
要するに、助け仕事なんかの非常事態でこそ、真価を発揮できる男なんですね。

果たして、小さな田原藩に比べて、浅野家は運が強かったのか。
酒を飲むしか能がないと言われる文十郎に比べて、安兵衛は運が強かったのか。
この先、起きる歴史、助け人たちに起きる出来事。

それを知って、この話を思い出した時…。
本当に強い星を持っていたのは、文十郎だったのではないか。
そう思えます。


どこかで誰かが泣いている… 「助け人走る」第1話

テレビ埼玉では今日から「助け人走る」。
「必殺」の第1回は、人を惹きつけるに十分な名作が多いんですが、これも見事ですね。

第1話、「女郎大脱走」。
「よろず助け口 引き受けところ」を営む清兵衛。
人助けならドブさらいから、用心棒まで引き受ける「何でも屋」の派遣業。
しかし、元は「幻の清兵衛」と言われる大盗賊の頭だったことは、世間の人は誰も知らない。

雇われているのは、腕は立つが宮遣いを嫌う自由な浪人・中山文十郎と元・武士の辻平内。
番頭は盗賊の頃から清兵衛に従っている、油紙の利吉。
文十郎は、芸者のお吉と良い仲。

お吉は鉄火肌の芸者で、焼きもち焼きの為、文十郎はたびたび怒られている。
今日も他の女性が文十郎に近寄っているのを見つけたお吉は、女性と取っ組み合いになった。
だが、基本的にはお吉はお人好しの文十郎にぞっこんである。

平内が、きよという娘と一緒に長屋のドブ掃除に向かう。
女将さんたちに、良い若いもんが情けないよとからかわれ、憎まれ口で返しながらも仕事をしていた時だった。
突然、きよを見つけて数人の男たちが連れ去ろうとした。

強引で乱暴な態度の男たちに対して、平内は男たちと乱闘になり、きよは逃げた。
平内に叩きのめされた男たちによると、きよは脱走した女郎だった。
やがて、文十郎と平内は「裏の助け仕事」で呼び出される。

清兵衛の持つからくり部屋に通された2人は、きよと対面する。
きよの依頼は、一緒に売られてきた姉・さとを吉原の女郎屋から救い出してほしいというものだった。
2人は地獄のような、最下層の女郎部屋から逃げ出そうとして、きよだけがさとの奮闘により逃げられたというのだ。
金を持たない、きよの必死の願い。

文十郎と平内は、さとがいる女郎部屋に向かう。
そこには華やかな吉原の街道から少し外れた、表に灯がついているだけの粗末な部屋があった。
文十郎は客としてさとを買い、その部屋に行く。

さとは何と10文という安値で客をとっていた。
妹に会わせてやると言われたさとは、きよが無事なことに喜ぶが、平内もいるのを見て一気に警戒した。
しかし、2人がさとの話を聞く姿勢を見せると、自分たちの境遇を語り始める。

とんでもない安値で客をとらされているが、一体誰がそんな値を決めたのだ。
全ては女郎屋の丁字屋・惣兵衛だと言う。
さとが布団をめくり、見てくれと言うと床に隠し穴が掘られていた。
これは、惣兵衛が考えたことで、火事の時、女郎を脱走させない為、この床下に潜んでいろということなのだった。

「何だとぉ?」
嘘ではない、火事の後、投げ込み寺には真っ黒に固まった女郎たちの遺体が、幾つも投げ込まれている、とさとは言う。
丁字屋の配下が、文十郎たちが遅いと文句を言いに来るが、文十郎は平内が今、いるからと言って、平内の分と自分の分を支払うと配下は笑いながら去っていく。
劣悪な環境、骨から血が出るほど、痛めつけてやると言う、女郎屋を仕切る仁造親分の折檻。

清兵衛はきよと話し合った結果、金は働いて徐々に送るということで、さとときよを逃がす仕事を引き受けた。
自分の昔の仲間と相談して船を手配し、上方へ、きよとさとを逃がすことに決めた。
江戸にいたのでは見つかるが、上方なら大丈夫だ。

しかも関所を越えることを考えたら、船で移動するのが一番いい。
逃がす手配には1人10両かかる。
まず、吉原の大門を無事くぐらせることが難しい。

すると、平内がもじもじしている。
実は、さとから同じように死んでもいいからここから脱走したいと言う、同じ境遇の女郎25人も逃がすと約束してきてしまったのだと言う。
利吉は「勝手なことを!」と怒るが、もう決めてきてしまったことだ。

10両で船を出してもらうのに、支払いが10両では割に合わない。
人には得手不得手がある、あんたの得手はドブさらい!と怒る利吉だが、清兵衛と共に吉原に潜入。
清兵衛は花魁のお客のお大尽として、座敷に上がる。

利吉は田舎から来た巡礼を率いて、吉原入り。
どんどこどんという太鼓の音に、吉原の大門の近くに陣取った忘八たちが「おーおー、金もねえくせに」「うるせーっ!」と怒鳴る。
この巡礼の衣装を利吉がヒモで結んでおくと、花魁の座敷で休んでいるはずの清兵衛が天井に忍び込んで吊り上げる。
すると、太鼓から衣装まで全部引っ張れるという寸法。

逃がしてやるという約束の日、さとたち女郎は今日1日は仕事をしないとさとの部屋に立てこもる。
数人ならともかく、25人全部が反抗しているが、新入りが入った日は女郎達が反抗するので、まあ、今日は良い。
その代わり、明日から骨から血が出るほど痛めつけてやることにする惣兵衛と、女郎屋を仕切る仁造親分。

死ぬか生きるかがかかっている、ここが正念場だと女郎たちに言い聞かせるさと。
しかし、遅い。
不安になって窓から外をのぞこうとすると、平内が「まだだ。待つんだ」と言う。
やがて利吉が巡礼の衣装を持って、天井からやってくる。

急いで着替えさせている間、平内の合図で今度は文十郎が仁造の忘八たちがいるところへやってくる。
「あの~、俺、雇わんかね?」
忘八たちは「食い詰めの痩せ犬に用はねえ、けえった、けえった!」と追い払おうとすると、文十郎は「ひい、ふう、みい」と数を数え出す。
7人、役立たずの7人より、自分1人雇ったほうが良いと言う文十郎に色めき立つ忘八たち。

湯飲みを割り、文十郎に詰め寄ろうとした時、奥から用心棒が出てくる。
「お前らの手に負える相手じゃなさそうだ」。
「試してみるかい?」
「表へ出ろ!」

すると文十郎が刀を途中まで抜き、またカシャン!と元に戻す。
それが合図で平内が「果し合いだ、果し合いだ~!」と叫ぶ。
「侍同士の本物の果し合いだ、木戸銭払ってもなかなか見られねえぞ~」の声で、野次馬が集まってくる。
そこに、巡礼のドンドコドン、という太鼓の音と、白装束の集団が近づいてくる。

ニヤリと笑う文十郎。
集団の先頭は利吉。
刀を抜き、「いやぁ~っ!」という掛け声と、軽やかでコミカルな足取りで用心棒と、殺気だって刃物を構えた忘八たちを逆方向へ導いていく。
1人、また1人、文十郎は叩きのめしていく。

その横を、利吉に率いられた巡礼の女郎たちが通り過ぎていく。
やや、急ぎ足で、しかし走らないで。
全員が門を出た時、文十郎が最後に残った用心棒の刀を兜割りでたたき折る。
ビックリする用心棒を気絶させて、終わった。

仁造と惣兵衛は、女郎屋に女郎たちが1人もいないので、あわてて探し出した。
その前に立ちはだかる平内。
反対側には文十郎。
2人は用心棒2人を、あっという間に叩きのめす。

平内は惣兵衛を、さとの部屋に引きずり込む。
怯える惣兵衛を前に、平内は悠々とキセルの掃除を始める。
そして、惣兵衛をつかむと、床下の穴に押し込める。

惣兵衛はギャアギャア騒ぎ、助けてくれと叫ぶ。
手を伸ばし、這い上がろうともがいた時、平内がキセルに仕込んだ針で、惣兵衛の額を一刺し。
惣兵衛は目を見開き、驚愕の表情になる。
平内が針を引き抜くと、惣兵衛の額の真ん中には赤い丸がついたように血がにじむ。

仁造は、文十郎に女郎屋を背に追い詰められていた。
だが、文十郎は刀を収める。
脅しか…、仁造の顔に黒い笑いが浮かんだ時、文十郎は兜割りで仁造に背を向けたまま、仁造を深く刺す。
仁造の笑いが凍りつく。

さとの部屋に仁造を連れて行った文十郎は、惣兵衛と同じ床下に放り込み、「2人で仲良く、金勘定でもしてろよ」と言った。
キセルの掃除を終えた平内のこよりが、さとたちの着物が散らばった床にあった。
文十郎と平内が立ち去っていく。
花魁が座敷に上がり、仕事を終えた清兵衛はずっと座敷にいたような顔で迎える。

夜明けの青い闇の中、浜辺できよが座り込む。
太鼓の音が近づいてくる。
「ねえちゃ!」
きよの顔が喜びで一杯になる。

「きよー!」と着物の裾をはだけさせ、さとが太鼓を放り出して走ってくる。
「ねえちゃー!」
利吉が笑顔で、「みんなー、船はあそこだー!走れー!」と叫んで指をさす。
「走れ、走れ!ぶっ倒れるまで走れよー!」

女郎たちが、走り出す。
笑顔でさとときよの姉妹が走る。



人物の背景、性格が紹介されている初回。
腕が立ち、自由を愛する文十郎。
祖父の代から浪人だけど、立身出世には興味がなく、お酒飲んでのんきにしている。
威勢の良い芸者のお吉という恋人がいて、文十郎に言い寄ってくる女性と取っ組み合いのケンカもする。

お吉は野川由美子さん。
おきんと気風の良さが似ているが、おきんはすりの姐御。
お吉は売れっ子芸者だから、ちょっと違う。

また、文十郎には、しのという茶店の看板娘になっているほど、かわいらしい妹がいて、この妹に言い寄ってくる男は全て手荒く追い払うことにしている。
そんな兄だが、家事全般をこなし、茶店で働く妹には頭が上がらない。
しのは、佐野厚子さん。
かわいいですね~。

平内は元武士で、武家の妻と子供がいて、妻がちゃんと養育費を取りに現れる。
女性好きで人が良い平内だが、こちらもいかにも武家らしいプライド高そうな、美しい妻には頭が上がらない。
この妻が、美しく、手強そうな、いかにも武家の妻女といった感じの小山明子さん。
ほんと、美人ですね~。

今見ると、棟梁と呼ばれている清兵衛の山村聡さん、あの頃思ったよりも全然若い。
なのに、すごい貫禄。
秋野大作さんがかつて元締めがやっていた盗賊の時から配下であり、今も番頭役の利吉。

清兵衛の、お金で仕事を引き受ける非情な横顔。
きよがどんなに懇願しても、お金がなければ動かない。
それが何とか、仕事になった。
いや、冷徹な顔の裏で、仕事にしてやろうと思っていたんでしょう。

と思ったら、平内が25人もの脱走を引き受けてきてしまった。
利吉は怒る。
あんたの得手はどぶさらいと、女!との利吉の怒りの言葉に横でまるで他人事のように、うんうんとうなづいている文十郎がおかしい。
文さんだって、黙って引き受けてきたんでしょうに~。

要するにこの2人、弱い者いじめを黙って見ていられる性分じゃないんですね。
しかし結局清兵衛だって仕事を引き受けてやるし、その方法も考えるし、文句を言った利吉は笑顔で女郎たちに船まで走れと言う。
何だ、みんな、人が良いんだ。

きよを演じた女優さんも、いかにも田舎娘といった風情。
しっかりもので虐げられても強く気を持つさとを演じる女優さんも、役にピッタリ。
今思うと、良く探してきてるなあ…と思うほど。

華やかな花魁もいる世界の裏側に、さとたち、最底辺に位置する女郎たちがいる。
さとが受ける、残酷な折檻。
今じゃ放送できないんじゃないですか、仕置人でもありましたけど、足の爪の間に針…、ブルブルブル。

仁造が、草薙幸二郎さん。
この方も、「必殺」で良く、人でなしを演じてくれましたね。
文十郎が背中を見せた途端、襲い掛かりそうな卑怯な表情を見せてくれます。

惣兵衛が、内田朝雄さん。
大物役も似合う、貫禄たっぷりの俳優さんです。
こちらも平内に捕まった時の騒ぎぶり、刺された時の寄り目が楽しい。
もう、悪役の正しいやられ方!

用心棒たちを引きつける文十郎が、コミカルでおかしい。
湯飲みが割れると、顔をしかめる。
忘八が詰め寄ると一瞬、手を合わせて「ごめーん、怒っちゃダメ」みたいなゼスチャー。

用心棒が登場し、彼らを巡礼と逆方向に誘導する時の走り方も楽しい。
聞こえてくる太鼓の音。
そこで、文十郎の表情がパッと明るくなる。
「果し合いだ~」の声をあげる平内と、息もバッチリ。

そうそう、お吉とケンカをする相手は、正司照江さん。
これだけでにぎやかなのが、わかるというもの。
このコミカルで明るい展開の後に、闇の中、浮かび上がる文十郎と平内の顔が殺し屋になっているからすごい。

一瞬で殺意を感じ取れる。
彼らが、何をしに来たのかがわかる。
だから、惣兵衛も仁造も怯える。

自分たちの利益の為、女郎を人間扱いせずに死に追いやった2人を床に入れる。
そして「そん中で、2人仲良く、金勘定でもしてろよ」と言う言い方が、皮肉とユーモアたっぷり。
光と闇の映像に、明るく「大の男がするには情けない助け人稼業」の2人が見せる表と闇の顔。

田村高廣さんが、お父様の阪妻さんの衣装を着て軽やかに振る舞っている。
当時の阪妻さんを知るファンへのサービスにもなっていたと、思います。
久々に見ると田村さんが、本当に良い俳優さんだということを実感します。
文十郎に惚れ抜いているお吉の気持ちが、よ~くわかります。

中谷一郎さんが女性が好きで、人がいい坊主・平内さん。
「水戸黄門」で風車の弥七を長く演じた為、このイメージが断然強い中谷さん。
ですが、実はこういう、弥七以外の役がまた、おもしろいんですよね。

助け人の仕事は、殺しではない。
あくまで女郎大脱走。
しかし、その為には悪の元である、惣兵衛と仁造の始末もする。

青い夜明けの中、待っているきよ。
走り出すさと。
笑顔の利吉と、走る女郎たち。

オープニングは、陰惨な音楽。
ここに、山崎努の「どこかで誰かが泣いている。誰が助けてくれようか。この世は人情紙風船。耳を澄ませた奴は誰。泣き声目指して走る影。この世は闇の…、助け人」というナレーションが入る。

エンディングは、哀愁と、明るさの混じった音楽。
山崎努の「助け人の存在を証明する記録は、何も現存していない。ただ、江戸の庶民たちは彼らを義賊という名で、あるいは世直しという名で密かに語り続けた。伝えられる闇の助け人の総数、26人」というナレーションが入る。

まさに光と闇、表と裏の「助け人」。
「必殺」や、中村主水が出ないシリーズしか知らない人も、一度見ると絶対おもしろいと思えるはず。
助け人稼業の冴えないはずのおじさまたちが、本当にものすごくカッコよく見えてきます。