こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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ハイヒールで痛む足とマリリンとバルドー

久しぶりに履いた靴が華奢なハイヒールで、足が痛い。
ハイヒール履いて姿勢が悪くなるなら、履かない方が良いなあ。
そんなことを考えていたら、昔読んだ橋本治氏の「虹のヲルゴオル」に、マリリン・モンロー(MM)やブリジット・バルドー(BB)といった昔の「グラマー女優」「セクシー女優」は姿勢がすばらしく良かったと書いてあったのを思い出しました。

ハイヒール履いて、姿勢良く歩く。
すると、緊張感を漂う。
これだけだと見ている周りが疲れる。
だから、柔らかい動きをした。

それがマリリン・モンロー。
ハイヒールに象徴される人工美の、ハリウッドのグラマー女優。
そういえば、「ナイアガラ」でのモンローウォークは、左右のヒールの高さを変えることによって生まれたというのは、有名ですね。

同時期に活躍したもう一人のセクシーなフランスの女優、ブリジット・バルドーは、裸足やペタンコの靴で歩く。
バレエをやっていたバルドーは、バレエシューズのようなペタンコ靴でハイヒール同様に綺麗に歩く。
ヨーロッパは靴の文化だから、裸足というのは裸に通じる。
だから映画「素直な悪女」でバルドーが演じた「身持ちの悪い」娘は、裸足なのだと、「虹のヲルゴオル」にはありました。

「素直な悪女」のジュリエットは男性の誘いにすぐに乗っちゃうけど、人を利用して自分の利益を謀っているわけじゃない。
身寄りがない孤児だから、誰かが愛してくれるんじゃないかと思っている。
この人が愛してくれるんじゃないかと思っているから、すぐ誘いに乗っちゃう。

するとジュリエットをアントワーヌという都会で暮らす男が誘い、ジュリエットを都会に連れていってやると言う。
アントワーヌを信じたジュリエットは、自分のウサギを都会に連れて行けないからと、藪に放す。
そしてジュリエットはアントワーヌの乗ったバスを待っていた。
だが、バスは止まらないし、アントワーヌも降りて来ない。

都会で一旗挙げるつもりのアントワーヌに、ジュリエットを連れて行く気はなかった。
迎えが来ないと知ったジュリエットは藪を振り返り、逃がしてしまったウサギの名を呼びながら捜し始める。
ジュリエットのことを男を翻弄する小悪魔、悪女とする解説も聞きますが、悪女どころか、悲しい娘じゃないですか。

引退して、動物愛護活動しているバルドーを見たことがありますが、迫力と当時を思い出させるだけの情熱が目に宿ってました。
まなざしが衰えていなかった。
一歩間違えると、妖気漂っているように見える。
さすが、ひとつの時代を作ったスターだと思いました。

そしてマリリン・モンローに話を戻すと、モンローという人は、実にうまい受け答えをする女優さんだったんですね。
「夜寝る時、身につけているものは?」
「シャネルの5番よ」。

有名になったヌードカレンダーの写真撮影のことを、「本当に何もつけていなかったんですか?」と聞かれ、「あら、ラジオをつけていたわ」と答えたとも言われています。
いろんな人が言っていることだけど、こんな機転が利く女性であるマリリン。
お色気だけがとりえの頭悪い女!というイメージと、そういう扱いにとても苦しんだんでしょう。

実像との差。
グラマー女優が、年齢を重ねて活躍することの難しさ。
セクシー以外で、評価を得られない苛立ち。
マリリンの訃報を聞いたバルドーは、大変ショックを受けたそうです。

悲しかった、そして寂しかった。
彼女の気持ちが、わかる気がする。
もう一人の自分がいなくなってしまった気がするというような、そんな意味の話をしたらしいです。
バルドーはマリリンの苦悩、孤独感をわが身に置き換えることができたんでしょう。

マリリンには遺体の引き取り手がしばらく、現れなかった。
ある時、マリリンは人が連れている犬に手を出して、「危ないよ」と注意されたことがあったとか。
するとマリリンは「動物に傷つけられたことなんかない。傷つけるのは人間よ」と答えたらしい。
この話を聞いて、同じタイプの女優のバルドーが動物愛護活動に引退後の人生を捧げたのを見ると、グラマー女優と呼ばれた彼女たちの深い苦悩と孤独が見えるような気がします。


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んもっ!

水曜日はすごく、寒かった。
だいたい、このところ、12月になってもコートは着ないですむ冬が続いたので、11月なんか余裕!だったのに。
寒かった。

これで雪が猛烈に降っていて、電気が来なかったら命に関わると思う。
大震災の後の停電、そして計画停電ではコートを着て、大判ストールを巻いてしのぎました。
北海道の停電が、早く復旧しますよう。

そしてまたしてもフリーズするパソコン。
どうもあるサイトを開くと、フリーズするらしい。
ええいっ、いつまで止まっているのだ!
時計の針は止まってはくれないのに、君はいつまで止まっているのだ。

いくら自分が焦っても急いでも、まったくどうにもならないもの。
開かない踏み切り。
延々となり続ける遮断機の音。

遅れる、または止まりそうな速度で走る電車。
電車の中、進行方向に向かって走りたくなる。
友人は「自分ではどうにもならないもの?渋滞!」と言った。

私は、この中に、フリーズするパソコン。
いつまでたっても表示されないパソコンを入れたいと思います。
んもっ、早くっ!


酔わない、酔えない

そろそろ始まる、お酒の季節。
飲み会、忘年会帰りの楽しそうなみなさん。
楽しいならいいんですけどね、人に迷惑をかけちゃいけません。
酔わない、酔えない冷静な私にこれからの季節はキビシイ。

ちょっと前になりますけど、電車の中、飲み会帰りらしき男女2人が話していました。
どうやら男性の方は、家庭があるみたいでした。
「早く帰らないと、奥さん待ってますよ~」みたいなことを女性が言ってましたから。

すると男性は「うーん、そんなこともないよ。あんまり待っててくれないんだ」とか何とか。
「またまたぁ」。
「いや、ほんとだよ」。

部外者の悲しい冷静な目は、男性がこの女性を誘いたがっているのを感じてしまう。
おじょーさん、いけません。
嘘に決まっちょる。

そう言いたい私は、しかし部外者。
2人の世界には、私はとことん部外者。
邪魔者。

そのうち、女性が降りる駅に着いたらしい。
女性が降りて、「じゃあ」と手を振る。
男性も手を振る。

めでたし、めでたし…と思った時、男性が駅に降りた!
さらに女性の手をとって、「ちょっともう一軒行かない?」
女性が、「えっ」という顔をする。
ピーッ!

そこで電車はドアが閉まった!
発車ああー!
私、内心、「えー!」

ドラマじゃないんだから、そんなところで終わりなんて。
「次回に続く」じゃないのよ、私に続きはわからない。
彼女の幸せを祈らずにいられない、帰り道だった。
酔わない、酔えない冷静な私にこれからの季節はキビシイ。


ほんとだもん、ほんとだよ

あははは…、思わず聞いて笑ってしまった。
夕刊紙で「東京スポーツ」というのがありますよね。
「○○○○←有名人の名前、挑戦状叩きつける」。

ここまでの見出しが、新聞が折りたたまれて表に見えている。
そして新聞を開くと「○○○○、挑戦状叩きつける」の下に「夢を見た」とある。
何だよ、事実じゃないかよっ!と怒る人もいそうだけど、「東スポらしいな~」と笑ってしまうご人徳の新聞。
終電近くで酔っ払った人が開いているページには、あられもない姿の女性の写真やなまめかしいイラストがあったりする。

それで笑ってしまったのは、この東スポさんがツイッターで15日の衆議院の解散を告げた時の話。
「衆議院が解散しました」に、「嘘に聞こえる」だの「東スポが言うと、解散がなかったことのように思えてくる」とか、「東スポさんの正しい情報は日付と曜日だけ」とか反応されちゃったらしい。
それだけでもちょっと笑っちゃうのに、これを読んだ東スポさんの返事。
「何で嘘だと言われるの。衆議院が解散したんだもん、本当なんだもん」。

悲しんでる~、すねてる~!
そしてさらに「政治だって取り扱ってるよ。本当だよ。日本のこと、心配だもん」とコメント。
あははは、かわいい。

そうか、東スポさんは日本のこと、心配してるんだ。
日本が平和じゃなきゃ、東スポさんみたいなシャレの利いた新聞はやっていけない。
そしてさらにさらに地震があったことも伝え、「地震もほんとだよ!」と。
あははは、そうだよね。

東スポさんは、愛されてる!
「広島J1の優勝のニュースは信じられてるみたい。よかったあ!」って。
いやいや、見出しに続きがあっても、なまめかしい女性が出てても、東スポさん、好きよ。
日本のこと、心配してくれるんだもん、そういう人は好きだもん、ほんとだよ!


斬九郎の、計算外のもう1人の主役

時代劇専門チャンネルのオリジナル番組「オニワバン」。
番組で放送する時代劇を中心にその番組の情報、見る上でもっと楽しくなる情報を紹介する番組です。
その時の時代背景やしきたり、そして番組の裏話、思い出話まであるらしい。
11月23日から放送される「御家人斬九郎」についての話では、斬九郎のもう1人の主役についてでした。

プロデューサーの能村さんが、まさに当事者として語る。
さて、もう1人の主役と言うと、蔦吉姉さんかな?と思うでしょう。
ところが、その主役とは、白猫のミャアちゃんなんです。
斬九郎の中に、出てくる白い猫。

「誰かいる!」と居酒屋「東八」で飲む浪人に緊張感が走った場面、正体はミャアちゃんとわかってホッとする。
殺気あふれる場面を、一気に変える。
張り詰めた緊張と緩和が、人をひきつける。

ミャアちゃんに母上を見立てて、なぜながら話しかける斬九郎。
グルメな母親の要求に応えようとお金を稼ぐ斬九郎は、母上には頭が上がらない。
しかし時には母上に言いたいことが言えずに、鬱屈とした気持ちで家を出ていくこともある。

そんな斬九郎は、ミャアちゃんに何かあげながら言う。
「母上、うまいか~?」
うにゃうにゃと、斬九郎の手からご飯をもらって食べているミャアちゃん。
斬九郎の心情があふれる。

またある時は、暗い気持ちでいる斬九郎の足元で猫の鳴き声。
ふと下を見ると、ミャアちゃんがいる。
暗い表情だった斬九郎に、微笑が浮かぶ。
見事な癒し。

ミャアちゃんは撮影所のプレハブの下に入り込んでいた子猫で、スタッフさんがおびき出した。
真っ白な子猫は、スタッフさんたちが撮影所でご飯をやり、子猫もスタッフさんたちに懐いてきた。
そこで撮影所で飼うこととなり、ご飯をやっているうちに

顔を寄せ合うスタッフさんと猫。
万歳ポーズで写るミャアちゃんとスタッフさん。
斬九郎のなごみは、スタッフさんのなごみでもあったのでしょう。

そしてある日、台本に白い猫と書いてあったのか。
この猫がいたら…、と、この猫を撮影してみた。
するとミャアちゃんは、見事に期待通りの動きをしてくれた。

以後、この猫は、女優の生まれ変わりじゃないかというほどの動きをしてくれる。
後ろで役者さんたちが演技している前で、大あくび。
それがまた絶妙のタイミングで、いい画になった。

ミャアちゃんの方も、若村さんと女優同士のつもりでいたのでは?と言います。
張り合っている!と感じるところもあったとか。
本当に良い動きで、画面に味を加えてくれたそう。

撮影終了の2年ぐらいして、ミャアちゃんはなくなってしまいましたが、スタッフ一同、お通夜として飲み明かした。
ミャアちゃんの思い出を語り、翌日はお葬式もした。
俳優さんたちからも花束が届き、ミャアちゃんのお墓の前には猫缶が供えられていました。

幸せな猫ちゃんだ。
みんなに愛されているのが、画面から伝わってくる。
能村さんも「愛されてましたね~!」と、きっぱりした口調で言いますから。
スタッフさんは、ミャアちゃんの通行証まで作っていたとか。

斬九郎のもう1人の主役、ミャアちゃん。
名作に味を添えた存在。
名優の一人としてその存在は見た人に、ずっと残っていくことでしょう。


ぎえー、怖い

土曜日の夕方、久々にガツンと怖い地震がありましたね。
あ、揺れてる…と思ったら、下から突き上げるような衝撃と揺れ。
震源近いなと思いました。
今日の地震の震源だと、東京や神奈川が揺れるらしい。

あれで震度4。
震源近いって怖い。
ガタガタガタと、地鳴りのような音が聞こえたという人もいました。

ぎえー、怖い。
今、目の前に迫る怖さ。
超自然現象どころか、これは超現実。

依然、書きましたが、地震、特に夜中に地震があると、今頃片思いのあの人も地震でおきたんだろうなと思ってしまう子がいました。
恋する女は怖いもの知らずだなあ、と。
しかし、最近の地震ではそんなこと考える余裕がない。
うーん、余裕がなくなったのは私なのか、地震なのか。


タジマヨシオに頼まれたのね… 「怖がる人々 箱の中」

「怖がる人々」で、もうひとつ、思い出すのが、椎名誠さん原作の「箱の中」。
これは小説のほうを読んでいました。
「胃袋を買いに。」の中にあった1本です。
「箱の中」は「世にも奇妙な物語」でも放送されたらしく、ショートホラーとしてはかなりおもしろいんじゃないかと思います。


ある夜、男がタクシーに乗って自宅のマンションに戻ってきた。
深夜で、閉まりかけたエレベーターの戸を無理やり開いて、男は乗り込んだ。
誰もいないと思ったエレベーターの中の、表示板の前には女性が立っていた。
髪の長い、後姿のきれいな女性だった。

男は「すみません」と言うと、階数を押した。
エレベーターがあがっていく。
そう思った時、ガタンという音とともにエレベーターが停止ししてしまった。

「…止まっちゃったみたいですね」。
男がそう言うと、女性はこちらを向いた。
美しい、若い女性だった。
「故障でしょうか」。

女性は不安そうに、男を見つめた。
「こういう時は」と男は、表示板の階数のボタンを全部押した。
だが、ボタンの灯りはつかなかった。
「こういう時のために」と男は、外部と連絡がつくボタンを押した。

「大丈夫ですよ、こういうのには詳しくないけど、これで管理人とか外部の警備システムとかと連絡がつく」。
しかし、反応はなかった。
「大丈夫でしょうか…」。
女性が不安そうに言う。

「大丈夫ですよ」。
男はボタンを片っ端から、ガチャガチャ押し始めた。
途端にバシンという音がして、エレベーターの灯りまで消えてしまった。

「きゃっ」と女性が声をあげた。
薄暗い、非常灯だけがついた。
「弱ったな」。

男は時計を見る。
誰か、他にエレベーターを利用しようとした人間がいて、止まっているのに気づいてくれるといいのだが、時間はもうすぐ2時。
とても他の利用者がいるとは思えない。

「エレベーターは2台あり、もしもう1台が動いているのなら、このエレベーターが止まっているのには気づかないかもしれない」。
女性はじっと、男を見つめている。
警戒されている…、そう思った男は「もしそうだとしても、もうすぐ2時だから朝まですぐですよ」と明るく言った。
薄暗い中で、女性が男を凝視している。

男はバンバンと、エレベーターの壁やドアを叩き始めた。
こうすれば外部に聞こえるかもしれない。
もっとも、エレベーターが開いた時、マンション中の人間がドアの前にいるかもしれない。
男はそう言って笑うが、女性は無表情に男を見つめている。

「タジマヨシオに頼まれたのね」。
女性が突然、そう言った。
「え?」
「そうでしょう、そうなんでしょう。はっきり言いなさいよ。あんた、タジマの何なの?証券転売所のシマダイゾウとかいう人?」

女性の詰問調の言い方に、男は思わずたじろいだ。
「あ、あの」。
「しらばっくれないでしょ。タジマの言うことは電話で何度も聞いたわよ。あたしだってタジマの言うこと、わかってあげようと思ってたんだから」

「いいわよ、タジマが仕組んだんだか、あんたが勝手に考えたんだかしらないけど、あたしはタジマに会うわ。明日になったってタジマに会うから」。
「タジマはどこにいるの?」
この女、おかしい…と男は思った。

「ちょ、ちょっと待って」。
「待ってどうするの!苦しんですべてを始末してきたわ!死ぬほど苦しんで、きっぱり片付けてきたのよ。シマダさん!どうしてあたしの顔見られないの!」
女性が大声で叫んだ。
男はなんと対処していいかわからず、下を向いた。

「もういいわ。早く動かしてよ」。
「は?」
「決まってるじゃない、これよ」。
女性はガンガン、とエレベーターをヒールで叩いた。

「だから」。
「わかってるのよ、あんたが止めたこと。さっきと逆のことして、さっさと動かしなさいよ!」
男は落ち着こうとして、タバコに火をつけた。
たちまち、中は煙で充満し、女性が咳き込んだ。

「や、すまん、すまん」。
男はそう言うと、エレベーターの天井の排気口を開けようとした。
「何をしてるの?」

「タバコの煙を追い出そうと…」。
「勝手なまねはさせないわ…」。
「何だと」。

男はいい加減、腹が立ち、言い返した。
「何が勝手なまねだ!そっちこそいい加減にしろ!」
すると女性はポケットからなんと、カミソリを出してきた。
床屋が使うような、大きな折りたたみ式のカミソリだった。

「早く動かしてよ。あの女と一緒にいるところでないと、また言い訳されて逃げられるわ。早く言うとおりにしなさいよ!」
「あの、ちょっと待ってください」。
「もう十分待ったわ。何度も同じこと言わせないでよ」。
「俺はシマダじゃない。タジマという男だって知らない。このエレベーターだって勝手に止まったんだ!」

「じゃあ誰のせいなのよ!」
「だから誰のせいでも!」
「言い訳は嫌いだよ!それじゃあ、まるで、タジマヨシオじゃないか!それともお前はタジマヨシオなのか!」

女性がカミソリを振り回した。
男はとっさにかばんを顔の前に出して、遮った。
かばんを斜めに、カミソリが切り裂いた跡がついた。

その時、スピーカーから「もしもし、誰かいますか」という声が聞こえてきた。
「もしもし!もしもし!」
男が叫んだが、「誰もいねえみてえだよ、足立さん」という声がしてスピーカーは切れた。

「もしもし!います!ここにいます!」
男が絶叫した。
女性がカミソリで、背後から男の顔をなでた。
男は飛びのいた。

「大丈夫よ。一生、こんなところに閉じ込められているわけじゃないわ。うるさくてかなわないから、静かにしてよ」。
そう言って、女性は腕組みをした。
男はハンカチを出して、冷や汗をぬぐった。

「花のつぼみを数えましょうね、秋は木の実を数えましょうね…」と、女性が歌いだした。
そして持っていたバッグを大切そうに、胸に抱えた。
「あんた、子供はいるの?」
男は首を左右に振った。

「そう、あたしはいるのよ。まだ小さいけれど、今日はここに連れてきたのよ。とってもかわいいの」。
女性はそう言うと、子供を抱えるようにバッグを抱えた。
「ここにね、この中にいるの」。

女性が微笑む。
「子供はね、ばらばらになった子供をタジマヨシオに届けに来たの。あの人に見せてあげるの」。
その時また、「おーい、誰か、おりますか?」という声がスピーカーから流れてきた。

「はい、ここです。ここですー!」
男は叫び、エレベーターを叩き始めた。
「誰かいるみたいだよ。まずいな、こりゃあ」とスピーカーの声が言う。

するとまもなく、エレベーターの灯りがつき、ガクンと動き始めた。
エレベーターが、どこかの階についた。
扉が開いた。

「やっとついたわ」。
女性は笑顔になると、軽快な足取りでエレベーターを降り、廊下を歩いていった。
突き当りを曲がって、女性の姿は見えなくなった。

呆然としている男の前に、男性が乗り込んできた。
「あ、降りたかったんです」。
我に返った男は、ボタンを押した。

途端に、またエレベーターが止まった。
「また…」。
乗ってきた男は、黙っている。
やがて、男はポケットに手を入れた。

男が取り出したのは、口紅だった。
口紅を男は丁寧に口に塗り始めた。
唖然としている男を、口紅を塗り終わった男はじっと見つめる…。
エレベーターは止まったままだ…。



男は、真田広之さん。
女性は、原田美枝子さん。
薄紫の上品なスーツ、ハイヒール、長いきれいな髪。
深夜、マンションのエレベーターに乗っているのが不思議なような雰囲気でした。

最初は男も女性の後姿をじっと見つめたりしていましたが、エレベーターが止まってからは相手をおびえさせないようにいろいろ対処する。
それが突然、女性が「タジマヨシオに頼まれたのね」と意味不明のことを言った途端、おびえていたように見えた女性から狂気が漂い始める。
「証券転売所のシマダイゾウって人?」と、自分だけにわかる世界の話をし始めたとき、「これはおかしいな」とわかる。

勝手にストーリーを組み立て、相手が自分を陥れたと怒る。
それだけでも怖いけど、一応相手は女性…、こちらは男性…と思った時、女性がカミソリを持ち出す。
ぎゃーあー。
このカミソリの一撃、よく避けました。

斜めに一直線が記されたかばんを見て、当たらなくて本当に良かったとゾッとしました。
痛みが想像つくだけに、ものすごく生理的に嫌。
怖い。
これ、女性だったらアウトだったんじゃないか。

パニックになったところに、天の助けのようなスピーカーからの声。
しかし、相手には聞こえてない!
のんびりと「誰もいねえみてえだよ、足立さん」という声が絶望感を増幅させる。

男が最初に自分は独身だから、気づく人もいないだろうと言っているのに、「あんた子供は?」と質問する女性。
精根尽きたように、首を振る男。
女性が子守唄のようなメロディを歌いだし、持っていた大き目のバッグが、いや~な雰囲気をかもし出す。

子供を抱っこするようにバッグを抱え、「ここにいるのよ」というのが怖い。
本当にいるのか、いると思っているのかはわからない。
いないでほしい、いたら怖すぎる。
ばらばらになった人形とかであってほしい。

タジマという男と、シマダという男に、この女性はだまされておかしくなったのか。
最初はそう思いました。
タジマに裏切られ、つらい思いをして、すべてを処分してきてそれでおかしくなったのかと。
しかしこうなると、タジマヨシオが悪いのか。

もしかしたら、タジマヨシオも彼女の妄想の被害者なんじゃないか。
いや、そもそも本当にタジマヨシオなんて男がいるのかも怪しくなってくる。
全部、彼女の頭の中で作られた世界なんじゃないのか。
これ、乗り合わせたのが女性だったら、タジマヨシオが一緒にいると彼女が思い込んでいる?女性にされちゃったのかな。

エレベーターが動き、どこかの階につくと、彼女は打って変わったような笑顔になる。
音楽まで、コミカルなものになる。
だからひょっとして、エレベーターの中で男と2人になったから、おびえた彼女が男を寄せ付けないために一芝居うったんじゃないか。
そんな風に思えてくる。

しかし、それにしてはかばんをスッパリ、切り裂くなど、そこまでしなくていい。
やっぱり、彼女は普通じゃなかったんだ。
タジマヨシオという男が、このマンションにいるのか。
いないんじゃないか。

かつてはいたけど、もういないんじゃないのか。
だとしたら、彼女はどこの部屋に行くんだろう。
いや、彼女はこのマンションだと思ったこと自体が、おかしいんじゃないか。

男が乗り込んだ時、彼女は中にいた。
いったい、いつからいたんだろう?
そしてカミソリを持った彼女は、これから何をするんだろう。

こんな風に、いろんな想像が次々浮かんでくる。
やっぱり、ゾッとしてしまう。
女性がカミソリを出した時、「殺しのドレス」を思い出しました。
話が通じない相手がこんなもの持っている、まさしく恐怖。

最後に乗ってくる男は、佐野史郎さん。
いやー、そんなオチ、小説にあったかな?
あの後、止まったエレベーターで何があったんだろう。
「世にも奇妙な物語」は、こんなオチがあったんでしょうか。

誰が乗っているか、乗ってくるかわからない。
おまけに密室。
だからエレベーターは怖いんだ。

あの映画を見た時から、そう思って怖かったんだ。
エレベーターなんか、止まってしまうだけで怖いのに。
なるべく、行ける階は階段で行くぞ、私は。


松重豊さんが「VS嵐」で

昨夜はパソコンがよくフリーズして、記事を何度も投稿失敗しました。
最後にはもういいや!と眠ってしまったのですが、やっぱり投稿できてなかった。
自分のほうの問題ですけどね。

木曜日の夜、「VS嵐」という番組に、松重豊さんが出てました。
この番組はチームを組んで、嵐チームとゲーム対戦する番組なのですが、松重さんは今放送中のドラマのチームの一員でした。
松重さんが、こういう番組に出るのってすごく珍しい。
やっぱり相当、背が高いと思いました。

とっても楽しそうで、ニコニコしてました。
残念ながら、ボーリングもキックもあんまり得点につながらなかったですが、見ていて楽しかった。
もっとこういう番組での松重さんも見たい。
テレビ東京の水曜日深夜から放送の、「孤独のグルメ」といい、今週は松重さんがいっぱい見られてうれしかった~。

ここのところ寒いのですが、そのせいか防寒に効果的な服装というのをテレビでやっていました。
体にぴったりフィットするニットと、余裕のあるニットとどっちが暖かいか。
ワンサイズ上のニットと、ぴったりサイズとどっちが暖かいのだろう。

サーモグラフィーを使って、実験してました。
私はニットはちょっと大き目が好きというか、ぴったりめのニットが苦手です。
すると、空気の層を作るということが、暖かい服装のポイントということで、余裕のあるサイズの方が暖かいということがわかりました。
大きめサイズが好きで、寒がりの私としては良かった良かった。


血液型まで聞かれたのよ… 「怖がる人々 吉備津の釜」

「怖がる人々」という映画がありました。
オムニバスで、4話ぐらいエピソードがあって、そのすべてが「人が怖がる」。
普通の日常を送っている人がある日、ぞっとすることに遭遇するというもの。
その中に「吉備津の釜」という話がありました。


悦子は父親が大病をして店をたたんだため、毎日、就職活動をしていた。
会社に面接に行っては、断られることが続いた。
父親を心配して公衆電話から電話をかけたが、目の前に前に電話をかけていた女性が忘れていった財布があった。
思わず、手を伸ばしてしまった悦子だが、女性は急いで戻ってきた。

悦子が手に取った財布を渡されて、女性は礼を言って帰っていった。
だが悦子は、一瞬、よからぬ思いにとらわれていたのだった。
この後、悦子はもう1社、面接に行ったが、そこでも求人広告は確かに出したが、会社の方針が変わったと断られた。

当てにしていたこの会社に断られた悦子は、一人、夜の街を歩いていた。
頼りなげに見えたのか、一人のサラリーマン風の男が声をかけてきて、食事、または酒を付き合わないかと誘った。
その先は悦子次第で小遣い稼ぎになる、男はそう言った。
自分の浅ましさを感じ取られたような気がした悦子は、約束があるからと言って急いで一軒の店に入った。

そこは小さな小料理屋で、悦子はカウンター席にに座った。
「焼酎はいくらですか?」と聞くと、マスターは愛想よく「700円」と言う。
悦子は財布から小銭を出すと、「ここまでは飲んでいい。これは電車賃」とつぶやいて目の前に小銭を分けた。
その様子をコの字形のカウンターの、ちょうど悦子が座った向かい側にいる女性がじっと見ていた。

女性は悦子の隣に来ると、「一人?隣に来ていいかしら?」と言う。
「どうぞ」と悦子が答えると、女性は隣に来て座った。
そして「女性が一人で飲む酒は2つじゃない?とってもうれしい時と、とっても悲しい時。あなたは、うれしい酒ね。小銭なんか並べて、楽しそう」と言う。
だが悦子は「これだけしかないから、飲み過ぎないようにしているんです」と答えた。

すると女性は、それならと言ってマスターに、自分のボトルを出させる。
「お湯割りね?」と言うと、「そんな、悪いです」と辞退する悦子についだ。
「事情がありそうね」と言われ、悦子は父親が病気をして店をたたみ、自分は仕事を探していると話した。

「今、ないんですね、仕事って」。
「この景気ですもんねえ」と、女性は言う。
「でも、どんな時代でも、困っている人をほっておけない人はいるわ」。

「あなた、血液型何型?」
ふと、妙な気がした悦子は「どうして血液型なんて聞くんです?」と言った。
「性格判断をするには、血液型が手っ取り早いわ」。

「O型です」。
「私もOよ。気が合いそうね」。
そう言うと女性は、自分の知っている「山崎」という世話好きな女性なら仕事を世話してくれるだろうと言う。

「私は川村初恵」と、女性は名乗った。
そして明日の午後4時、この店の前で待っていると言うと、悦子の分も勘定を済ませて立ち上がった。
悦子は「あ、いけません」と言ったが女性は笑顔で立ち去った。

家に戻った悦子は父親に、「変な話よねえ」と言った。
しかし父親は、親切な人もいるかもしれないと言う。
「渡る世間に鬼はなし」とも言うよと言われた悦子は、翌日、約束どおりの時間に店の前に行った。

悦子が到着してすぐに、初恵はやってきた。
初恵は「紹介状を書いておいたから」と封筒を悦子に渡し、「山崎」という女性の家の地図を渡した。
この地図を見ながら行けば、女性の待つ家に行ける。

自分は仕事があっていけないのだが、一人で行けばしっかりした女性という印象にもなるからと言う。
山崎という女性は、その先から出ている水上バスに乗り、いくつか先の停留所で降りたところにいるらしかった。
「約束の時間は、7時よ」と、初恵は言った。

悦子は水上バスに乗り、2階の席で川風に吹かれながら、子供の時はよく、水上バスにも乗ったなと思い出していた。
下の席では、年配の女性が川を指差し、あのあたりには河童がいたのだと男性に話していた。
その男性に悦子は、見覚えがあるような気がした。
いや、その男性に会ったことがあるのではなく、その男性に似た人を知っているのだ。

その男性は、悦子が子供の頃、近所の子供を集めて、よくお話を聞かせてくれたおじさんだった。
おじさんは話がうまかった。
「吉備津の釜」の話も、おじさんから聞いた。

河童といえば、ある日のおじさんの話には、河童が出てきた。
昔のこと、村の力持ちの男が、相撲大会に出て勝ち抜いた。
優勝賞品の米俵がいよいよ男のもの…と思った時、河童がやってきて自分と勝負しろと言った。
男は河童と相撲を取ったが、男は河童に勝ち、米俵を手に入れた。

それから数日後、男は寺の和尚さんの話を聞きに行こうとして、途中の道で一人の初老の男に呼び止められた。
初老の男は山にいる知り合いにこの手紙を渡してほしいと言って、一通の手紙を男に頼んだ。
男は承知して寺に向かうと、もう和尚さんのお話は始まっていた。
本堂に入った途端、和尚さんは男の顔を見て、自分のそばに来るように言った。

「なんぞ、おかしなことがあったりはせんか?」と、和尚さんは聞いた。
男はおかしなことはなかったが、先ほど、一人の見知らぬ男に手紙を託された話をした。
すると和尚さんはその手紙を出すように言うと、出された手紙の中を開いてみた。

そして手紙を燃やすと、男に字が読めるかと聞いた。
男が読めないと言うと、和尚さんは新しく手紙を書き、男にこれを渡すように言った。
そして、このことは黙っているようにと。

男が山に向かうと、ふと、一人の男が目の前にある大きな岩の上に座っている。
言われたとおり、男が手紙を渡すと、その男は黙って山奥に消えるように去っていってしまった。
男は帰りに再び、和尚さんのところに行って、事の次第を話した。

すると和尚さんは、先ほど、寺に来た時、男の顔に死相が漂っているのに気づいたと言う。
そしてあの手紙には「川の仲間には手におえない。だから山の仲間が殺ってくれ」と書いてあったのだと教えた。
だから和尚さんは手紙を焼き、代わりに「この男は川の仲間の恩人だから、山の仲間は手を出すな」と書いて渡したのだった。
「お前さんの運が強い」と言われ、こうして男は無事、村に帰っていった。

そんな話を悦子が思い出していると、水上バスが停留所に止まった。
悦子は降りると、渡された地図を頼りに山崎という女性の家に向かっていく。
道の端には背の高い草が生い茂り、河童が描かれた立て看板に「キケン」という文字がある。

悦子が道を進むと、舗装されていない道に出た。
背後のすすけた看板に「××シティ 予定地」とある。
目の前の茂みが、ガサガサと動き、悦子は思わず足を止めた。
中から一匹の黒い猫が出てくる。

悦子はさらに進むと、竹が生い茂っている林になった。
そこを通り抜けると、木がますます増えて、まるで森のようになっていく。
こんなところに家があって、人が住んでいるのだろうか?
ふと、悦子の耳に「川の仲間には手におえない。山の仲間がやってくれ」という声が聞こえてくる。

悦子は立ち止まった。
不安に耐えられなくなった悦子は、バッグの中の封筒を取り出す。
封筒を見つめていた悦子は、思い切ってその封を切った。

4つに折りたたまれた紙が出てきた。
悦子はその紙を広げて、目を見張った。
紙には何も書いていなかった。
白紙だった。

悦子は恐怖に襲われ、後ずさりしていく。
今来た道を、必死に走って帰っていく。
あたりはもう、薄暗くなっていた。
森の中、竹林の中、悦子は恐怖に顔を引きつらせながら走る。

数日後、悦子は小さな出版社の面接を受けていた。
面接した男性は、小さな会社なので、原稿取りからお茶くみまで全部やってもらうことになりますが…と話した。
人のよさそうなその男性に向かって、悦子は「はい!」と答え、男性は「じゃあ、来てください」と答えた。

悦子は喜んで家に戻り、父親に仕事が決まったと話した。
父親は新聞を読んでいたが、悦子に向かって「この人、お前が会うはずの人じゃなかったかい?」と言って、新聞を出した。
新聞には「女性経営者 失踪」という文字があった。

この女性には詐欺の疑いもあって、まもなく捜査の手が伸びるはずだったらしい。
「山崎初恵」と書かれた女性の顔写真は、悦子に声をかけた「川村初恵」だった。
崖近くで、この女性の衣服の切れ端が見つかったのだという。

「自殺じゃない…」と悦子は言った。
「どこかにいる…」。
「まさか」と父親は言った。

「ううん。だって血液型まで聞かれたのよ…」。
あの時、あのまま向かっていたら、自分はどうなっていたのだろう…?
「私の死体が、川に浮かんでいたのよ」。

悦子は初恵の写真を、もう一度見た。
「背格好もそっくり…」。
丸く囲まれた初恵の写真は、無表情にじっとこちらを見ていた。



公衆電話、女性のファッションからして、バブル終了直後ぐらいだと思います。
不景気といいますが、今見るとまだまだ余裕があります。
それでも悦子は切羽詰った感じなんですが、演じるのは熊谷真美さん。
熊谷さんを断る社員の2人目は、でんでんさんかな。

ねちっこく声をかけてくる男は、平田満さん。
お話おじさんは、フランキー堺さん。
髪の毛が黒くて、若い!
河童がいたと話しているのは、佐々木すみ江さん。

謎の女、初恵は清水ミチコさん。
コメディエンヌの明るいイメージなんですが、そういう人が怖い役をやると怖いんですよね。
切羽詰っている悦子は、初恵の話に乗ってしまう。

そんな、初対面の人間に、と思うけど、それほど悦子が切羽詰っていたのか。
詐欺師の初恵には、人の警戒心を解く気さくな雰囲気があったのか。
お酒が人の心をゆるませるのか。
悦子に目をつけたところを見ると、利用できそうな人間を嗅ぎ分ける嗅覚は、この初恵、詐欺師らしかったが、やっぱりたいしたものだったんじゃないか。

でも初恵は、詐欺より、もっと怖いことをやる女なんじゃないか。
血液型を聞くところからもう、どこか不気味な雰囲気が漂っていました。
カウンターに小銭を並べるなんて、治安が良かったんだな~とも思ってしまいます。

吉備津の釜というから、雨月物語のあの話に似た展開になるのかと思ったら、どちらかというと「河童の恩返し」でしたっけ。
あの話に途中まで似ている。
河童と相撲をとるのは、杉本哲太さん。
手紙を渡す男は、殿山泰司さん。

水上バスに乗っている時、河童の話が出てから連想が始まる。
なぜか、河童の手紙の話を思い出す。
見ているこちらは、悦子が歩いている道の脇に河童の「キケン」という看板があるところで、かなり怖い雰囲気を感じ始める。

こんなところに、そんな人の家があるの…と私でも思うほど、道から人気がなくなっていく。
知らない、寂れた道。
私なんか小心者だから、それだけでかなり引く。
夕方、7時。

だいたい、道が舗装されていないし、街灯も見当たらない。
こんな先に、人が住むような家があるのかと思うと、ゾクゾクしてくる。
服装からして、春ごろなのでしょうか。
冬だったら、もうあたりが見えないぐらい暗いでしょう。

悦子が立ち止まっても、無理はないと思うけど、悦子が感じたのは危険を感じる本能的な勘が働いたのか。
和尚さんが男に言っていた。
「お前さんの運が強いから」。

それは、悦子にも当てはまったのかも。
悦子が手紙を開いて見て白紙であった時、見ているこちらもゾッとしました。
何がこの先、悦子を待っているのか…。
薄暗い、人気のない道の向こうに、とてつもない悪意が透けて見える。

「怖がる人々」がテーマだけど、私なら腰が抜けてしまう。
この暗い一件から、打って変わって小さいけど明るい雰囲気の男性と仕事の話がまとまる悦子。
良かった~と帰ってくると、新聞を読んでいる父親から知らされる「山崎」の正体。

「川村初恵」は「山崎初恵」だった。
初恵には捜査の手が迫っており、そのために自殺したと思われていた。
そうだろうか…?

なぜ、嘘をついたのだろう?
なぜ、あんなところにあんな時間に行かせたのだろう?
大体、なぜ、血液型なんか聞いたのだろう?
初恵の狙いが見えてくる、怖くなってくる。

「川に私の死体が浮かんでいたのよ」と、悦子は言う。
まだ、DNA鑑定などない頃。
横溝正史じゃないけど、損傷が激しければ本人とはわからないかもしれない時代…。
見る者をゾッとさせて、この話は終わります。

雰囲気といい、20分という短い時間でうまい展開を見せていると思います。
そんなに古くないと思っても、俳優さんが若かったり、やっぱりかなり前の作品なんだなあと思いました。
DVDになっていないようですが、「世にも奇妙な物語」や「ココだけの話」にもありそうな、もう一度見たい話です。
ひたひたと忍び寄る怖さといい、なかなかの作品です。


「任侠ヘルパー」もうちょっと

もう何年、十何年、さらに何十年前の作品と違って公開中の映画。
見ていない人に向かって、ネタバレしてはいけない。
でも語りたい。
ちょっと語ると「待って!連休に見る予定なんだから、言わないで!」と言われる。

う、ネタバレしそうな危うさがあるんだろうな。
…当然の反応ですよね。
なので見る予定の友人に、「早く見てくれ」とうるさい私です。
子供か、って。

平日の映画館で、私の隣はなんと、老夫婦でした。
旦那様の方が最初、飴をなめていて、ガサガサと袋を鳴らしたりしていたんですが、それも最初の20分ぐらいまで。
あとは静かに見入っていたようですが、ドラマのファンだった方でしょうか。

ドラマのキャストは、りこちゃん以外は出演しなかったんですが、それがかえってドラマを知らない人でも楽しめる要素になっていると思いました。
ここぞという場面でドラマでかかっていた「オーマイソー」。
あれが流れると、確かに盛り上がる。

でもそれをあえてしなかったことが、単に彦一・ダークヒーロー物語にしない、この映画の本気度に思えましたよ。
ドラマを見ていない人でも、見て、そして楽しんで考えてくださいというメッセージじゃないかと。
ただ、あれを流してほしかった人もいるはずで、そのあたりは賛否両論になると思います。

ここから先はちょっとネタバレ。
映画をまだ見ていない人、楽しみにしている人がいらっしゃるので、ご注意を。


なんていうんですかねえ…。
またしても、狼にたとえてみよう。
狼の群れの前に、力尽きた小動物がいる。

群れの中から鋭い目をした、精悍な狼が一匹、前に進んでくる。
目に殺気をたたえた、一匹の流れ者。
だがこの狼には、妙に子供がなついている。

その狼は小動物たちに襲い掛かるかと思った。
もう、終わりだと、誰もが思った。
しかしその狼はいきなり向きを変えると、群れの狼たちに噛み付いた。

たった一匹で群れと戦う狼は、傷だらけになった。
だが血まみれになり、肩で息をするその狼は、やってきた猟師に追われた。
傍目には同じ狼なのだから。

でも保安官は知っている、狼がやったことを。
今度は自分も戦わなければならないことを。
狼は、守ってもらった者たちと、彼の真実を知った者たちを背にまたどこかへ去っていく。
…寓話にしたら、こんな感じなんでしょうか。


「俺ら、戻んだぞ!…極道に!」
そうして弱い者を食い物にして生きていくんだ、それしかないんだ。
彦一はドラマでは、そう言った。

自分たちだってそうやって来たと言うのに、人がやっているのを見て、どうしようもなく心が痛む。
苦境に落とされている人たちを見て、やりすごせない。
だからといってどうにもできず、元の道に戻って、いや、現実に、自分にもっと心を荒ませて、酒と女で何とかしようと思うも、素直におぼれることができない。

水商売の女性が、自分をほめる。
その言葉に酔えばいいのに、それができない。
言葉はかえって刃のように、彦一を切り刻んでいく。
酔うどころか、心は冷えていく。


このあたりの草なぎさんの葛藤はやっぱり、よかった。
そうしていつものように彦一が考えて考えた末に取ったのが、身を捨てての大暴れ。
こうすることによって、世間の目が向く。

自分を捨てて、何かを変える。
そんなやり方しかできない彦一が、哀しいやら爽快やら。
映画は、撮り方よかったです。
カメラの枠の中で、暴れてる彦一が見えるというのが楽しい。


さて、ちょっとネタバレ。
本当に気をつけてください。


クライマックス、杉本さん演じる日吉が彦一の行動を見て、戦意を喪失する。
たとえ権力をバックにしていても、自分にはあの行動はとれない。
己はただ、優位な立場にいるだけ。
自分には絶対にできないことを目の前でやられたら、「負けたな…」と思ってしまう。

戦意喪失すると思います。
器の違いとでもいいましょうか。
大物感はない日吉ですが、それでも「侠」の器の違いは思い知ったと思いますよ。

何も完全解決はしていませんが、組長も組も無傷では終わらない。
事情聴取と立ち入り検査が入れば、ただでさえ叩けばほこりが出る身です。
余罪が出て、大変なことになるんじゃないですか。
SPのように。

人はみな、年をとる。
「元」の人も、「現」の人も。
誰もがいずれ、直面する話。
でも、りこちゃんの言うように、しんじゃだめだよ、彦一。

ちょっと思ったんですが「かかわりのねえことでござんす」と言いながら、思いっきり命のやり取りをする渡世人が好きな人にもこの映画、受け入れられるんじゃないですか。
彦一ロードムービーができそう。
ぜひ、作ってください!