こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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2012年最後の買い物はウィスキーボンボン

天ぷらそばも用意して、紅白の前にテレビ東京で放送される「年忘れ日本の歌」を聴きます。
宮路オサムちゃんの「女の操」とかね、聴かないと。
こういうの聴かないと、今年が終わらない。

今年最後の買い物は、ウィスキーボンボンでした。
子供の頃食べておいしかったけど、いつの間にかどこにも見当たらなくなってしまった。
さて、2012年、このブログを訪問して読んでくださった方、本当にありがとうございました。
趣味に偏ったブログですが、来年もよければお付き合いください。

来る2013年がみなさまにとって、良い年になりますよう、良いことがたくさんありますよう、心からお祈りします。
みなさま、良いお年をお迎えください。
ありがとうございました。


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母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね 「人間の証明」

この年末、日本映画専門チャンネルで、「人間の証明」を放送してくれると知りました。
原作・森村誠一氏の1977年の角川映画です。
担任の若い女性の先生が、原作を持ってきて、生徒たちに話のあらすじを説明してくれました。

当時、原作を読んでも理解できるような年齢じゃなかった。
この女性の先生が時にはヒステリックで、たぶん、生徒になめられないようにしていたんだと思いますが、すごく気が強くて、えこひいきもあった。
だから決して好きな先生じゃなかったし、今も思い出すと大人としての目で「ああいうところ、やっぱり良くなかったな…」と思うところがあります。
しかしこの先生の説明で、この小説の話の展開とか、言いたいことは何となくでも理解できました。

映画は改めてキャスト見ると、今から思うとすごい。
松田優作さんが、棟末刑事。
当時、仲が良かった友人が大ファンで、それで一緒に見に行ったんだな。
同僚の刑事にハナ肇さん。

そして覚えがないんですが、鶴田浩二さんも出ている。
さらに、三船敏郎さん。
これは覚えてます。
八杉代議士役ですね。

妻であり、ヒロインに岡田茉莉子さん。
綺麗で華やかで、そして熱演でした。
その息子役に、岩城滉一さん。
当時は権力者を親に持つ、ろくでなし息子が良く似合った。

さらに被害者に、先ごろお亡くなりになったジョー山中さん。
テーマ曲も歌っていますが、このテーマ曲は心にしみた。
麦わら帽子がクルクルと落ちていく緑の渓谷にかかるクライマックスが、これのおかげですばらしいものになった泣けた!

アメリカ側の出演者に、ジョージ・ケネディーさん。
他には夏八木勲さんや地井武男さんもいる!
いや、脇役に至るまですごい。
角川映画って、こういうことができたんですね。

今よりもひどかったと思われるアメリカの差別、今では信じられないほどの敗戦した直後の日本への差別と、その日本における差別。
ひどいな…と思った記憶があります。
そして、戦後の日本の発展などが、ここに表現されている。
この辺りを感じることができれば、今も見ることができるんじゃないかと思います。

ジョー山中氏の「ママァー、ドゥユーリメンバー」の歌声に松田優作氏の声で西条八十氏の詩の「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね」という一節が流れる。
これがCMとして、大量に流れた。
もう、流行語にもなったほど。

「ええ、夏、碓氷から霧積へゆく道で、谷底に落としたあの麦わら帽子ですよ」。
この詩を読まれたら、被害者が冒頭、弾みながら「キスミー、キスミー、ママ、ハレルヤ!」と言った姿を思えば、犯人じゃなくても涙が出る。
要するに…、あ、ネタバレになります。
読んでいない方、見ていない方は注意。

このフレーズが原作では最後、鉄壁と思われた犯人の心を崩した。
つまり、決定的な証拠がなく、犯人の親としての心に訴えるしかなかった。
犯人にはわかっていたはずの被害者の生い立ち、背景、心情、それを冷血に切り捨てなければならなかった犯人の人生、今の立場。
しかし被害者の心そのもののこの西条八十氏の詩を読まれた犯人は「もうやめて…」と、涙とともに声を絞り出す。

犯人は人間として、自分のしたことを認め、悔いて、そして被害者に詫びるしかなかった。
そう、犯人は心がある人間の証明をすることと引き換えに、罪を認め、築いてきたすべてを失うことになった。
たったひとつ、冷血でない証拠。
人間の証明だけは手にして、そして破滅した。

しかし映画はそういった心情を描くというより、当時の人気俳優たちが豪華出演し、アクションも入った派手な映画になっていると言われていた気がします。
当時は、大量生産の軽薄な映画とか、金に飽かして作った映画だとか酷評の嵐でした。
そこまで行かなかったかもしれないけど、原作とはギャップを感じた人が多かったらしい。
しかし、大ヒットした。

でもこの「人間の証明」とか「復活の日」なんかは当時の私たちだと、結構、泣いてました。
そういうの、きっと映画ファンにはバカにされちゃったんだろうな。
まだまだ人間の奥深さや、人生の重みもつらさも悲しさも真には知らない層は、そういう層にしか通用しない作りだと言われても、楽しんで見てたんですよ。

「人間の証明」は森村誠一シリーズとして、テレビでも放送されました。
こちらの主演は、林隆三さん。
ヒロインは、高峰三枝子さん。
娘役に、岸本加代子さん。

こちらも娘の存在がクローズアップされるなど、原作とは違ったアレンジがされていました。
しかし、こちらはまた、2時間しかない映画では描けなかった、いろんな展開をじっくり描いてはいたと思います。
テーマ曲が流れている間に出てくる映像に戦中、敗戦直後、そして当時の日本が流れていました。
終戦が、まだまだ生々しく感じられる時代だったんですね。

そうそう、わからないなりにも森村誠一シリーズも見て、いくつか原作も読みましたっけ。
「腐食の構造」とかね。
原作も「こ、これで終わってしまうの?!」とその無情なラストにびっくりでした。
ドラマの方も期待どおり「こんな終わり方してくれて、この気持ちの持って行き場がない!どうしたらいいの!」だった気がします。

今思うと、「あああ、70年代だ~!」と思います。
「腐食の構造」のラストに畳み掛けるように流れるテーマ曲は、小椋桂さんの「心のひだ」。
く、暗い。
暗いの。

そう思ったんですよ!
だから最近、藤あや子さんがこの曲を歌っているけど、聴くとどうしてもあの時の暗さを思い出してしまう。
最初の刷り込みって、怖いですね。

この「腐食の構造」には、大町(町田)役で松田優作さんが出てました。
島田陽子さんを助けに現れた初登場シーンでは、「おおっ!」と思うようなカッコ良さ。
そしてラストのあっけなさ。

記憶によると、大町が猛吹雪の中、島田陽子演じるヒロインの名を叫び、立ち上がる。
そして…。
「ぎょーえー」「嘘っ!」「これで終わり?!」と思いましたよ。
なんか、こういうところも70年代っぽいというか、松田優作氏が好んだ役柄な気がします。

隣にいる梶芽衣子さんは、吹雪で目も開けられなかったはず。
いや、70年代に一回見ただけなんで、違っているかもしれない。
そこのところ、違ってたら許してください。

でも島田陽子さん、梶芽衣子さんの2人とも、とっても綺麗でした。
岸田森さんも出ていたんだな。
こっちも、もう一度見たい。
なんにせよ、角川映画「人間の証明」の放送が楽しみな年末です。


やらない言い訳

29日から休みに入って、さっさと大掃除して窓拭いて…、と動かなくてはいけないところを今日一日、ダレてました。
そうしたら明日は雨だというじゃありませんか。
窓も拭けないし、買い物にも行けない。

もう、なんか、全然、年末と言う感じがしない。
それは自分がダレているせいなんだけど、こんなんで新鮮な気持ちで新年なんて迎えられるのだろうか。
しっかりしろ、自分~。

来年の干支は、へび。
しかし最近のへびがデザインされているものは、とってもかわいらしいものが多い。
今年の干支の辰も、なかなかかわいいものが多かった。
子供ドラゴンみたいなデザインだったり。

今まで辰や、へびは勇猛だったり、神秘的だったりするものはあっても、かわいいものはないとあきらめていた。
かわいらしく作るのに、デザイナーさんは苦労したな~と思うけど、かわいくて楽しい。
ふたを開けると、干支の動物が出てくるオルゴールがあって、そのへびが特にかわいらしかった。
感激。

今年は寒いので、掃除が本当につらい。
毎年、季節の良い5月ごろに大掃除、特に窓拭きをしておけばいいのにと思う。
そして、梅雨が来るからダメだと思い、その後は暑いのでやめて、秋になるとやっぱり大雨が降るからやめておいた方が良いと自分に言い訳してそして年末を迎える。

今やらない人が、別の機会にやるかというと、やらない。
やらない人は今もやらないし、時間が経ってもやらないのだ。
逆にやる人はいつだろうと、やるのだ。
大掃除の季節になると、この原則を思い出して、自分のダメさ加減を知るのだった。


そんな気がしない

携帯に届いたメール、「○○さんから『Fecebook』にお友達申請」とありました。
「F『e』cebook」?
「F『a』cebook」じゃなくて?

これは、あれですか。
うっかりクリックすると、料金が発生するとかいうやつですか?
送られてくるのは、2度目なんですが。
いずれにしよ「Fecebook」とか書いてくる者は、疑ってかかるに限る。

もう12月29日。
今朝はビルに窓拭きの人が来ていた。
怒涛のような12月で、28日で休みに入ったけれど、今年も終わりなんて信じられない。
自分が年末の大掃除をちゃんとできる…、いや、やれる気が全然しない。
どーしよう。


須貝、死んでくれ 「暗闇仕留人」第2話

第2話、「試して候」。

貢が三味線を弾いている芝居小屋に、知り合いの老人・弥三郎が来た。
弥三郎の息子の与之吉は大工の「木場辰」で働いており、もうすぐそこの親方の娘・おつゆと祝言をあげる。
その時、芝居小屋で爆発事件が起きた。
幼い子供が犠牲となり、爆発の現場を見ていた貢は、不審者として奉行所に連行されてしまった。

高野長英を匿った貢が奉行所に捕まれば、非常にまずいことになる。
さりげなく尋問の係を自分にして、主水は何とか貢を守ろうと画策する。
縛られた貢を前に、「まずいことしてくれたな」と言うと、貢もじっと主水を見る。

だが、なぜか、連行された者の中から貢がいなくなった。
貢がいないので主水は「あの男は?」と聞くと、釈放されたと言われる。
主水は同僚に貢の釈放の理由を聞いたが、同僚の伊織は上の方のお達しとしか言わない。

奉行所を出た貢は「おい、吉岡!吉岡伊蔵!」と、本名で呼び止められる。
貢が立ち止まると、かつて、高野の元で一緒に蘭学を学んだ須貝内記が立っている。
「須貝!」
貢の釈放は今、幕府奨励の講武所の助教をやっている須貝が、貢が奉行所に調べられるとまずいだろうと、奉行所に捕手を回した為だった。

須貝は貢を見て「お前、大した暮らしはしてないようだな」と言い、高野長英門下の中でも、ずば抜けていた貢なのだから、と自分のところで働くよう誘う。
幕府の為に貢の才を発揮してくれるなら、貢の身分は保証すると言うのだ。
学友は、師を弾圧した幕府の側の人間になっていたのだ。
誘いに黙っている貢に須貝は、あやの事を「どうしてる?元気か?」聞くが、貢は返事をせず立ち去る。

貢が家に戻ると、おつゆがあやに婚礼の衣装の仕立てを頼んでいた。
すると恋人の与之吉が、おつゆを縁日に迎えに来た。
外に出たおつゆは与之吉と歩きながら、貢とあやが祝言もあげていないこと、あやが胸を患っているのが心配だと話す。

壁にかけた、もうすぐ出来上がるおつゆの婚礼衣装を、貢はじっと見る。
「おい、あや、このおつゆちゃんの晴れ着借りて、羽織ってみないか?」
「でも」。
「いや、いいじゃないか」。

貢はそう言うと、婚礼衣装をあやに羽織らせてみた。
「やあ、綺麗だ。綺麗だぞ!」
そう言われて、あやはうれしそうに微笑む。

売りつけた相手が役人とは知らず、町で怪しげな媚薬を売っていた半次はつかまってしまった。
牢に入れられた半次は主水を見て、出してくれると期待したが、半次を捕えたのは堅物だから主水にはどうにもできない。
「大した罪にはならないから、ここでしばらく冷や飯を食ってろ」と、主水は言う。

貢があやの為、買い物をしていると、須貝が貢を見つけてやってきた。
須貝はあやの具合を尋ね、金が要ること、貢が捕えられたらそのあやがどうなるかと言う。
その言葉に反応した貢を見て、須貝は貢を自分の管理する講武所へ連れて行った。

講武所では生徒たちが、ペリーたちアメリカ人を相手に見立てた人形相手に武芸に励み、須貝は「異国の舟を追い払うべし!」と檄を飛ばした。
須貝はその為に講武所の地下室で、兵四郎という男に強力な爆弾を作らせていた。
実験をさせていると言う須貝に貢は、芝居小屋に爆弾を仕掛けたのは須貝だと知る。

「全ては大事を生かすための小事に過ぎん。日本を異敵から守る為だ」と言って、まったく罪悪感のない須貝は逆に幕府の意気地のなさを怒る。
須貝は貢にこれこそが「日のあたる場所に出る近道だ」と言うが、かつての学友に失望と怒りの貢は「あやが待ってる」とだけ答えて、講武所を出た。
貢が出て行くと、須貝は数人の男に貢の後を追わせた。

追ってきた男たちは貢を襲ってきた。
貢は男たちの攻撃をかわすと、貢はあやの待つ長屋に走った。
後には、あやの為に買った卵が割れて落ちていた。

長屋に帰った貢を、あやが走って迎えた。
「そんなにかけちゃいかん」と心配する貢にあやは、「おつゆさんの縁談が…」と言った。
与之吉の父親の弥三郎が島帰りとわかり、おつゆと与之吉との婚礼は白紙になったのだ。

さらにそれを知って怒り狂った弥三郎が「木場辰」で暴れ、「これが島者の本性なんだ!」と言われている。
与之吉が暴れる弥三郎を殴りつけ、正気に戻った弥三郎は木場辰の親方とおつゆの前で土下座し、自分はどこかに去るから、息子とおつゆを一緒にさせてやってくれと泣いた。
与之吉も父親のしたことを泣きながら詫びるが、親方としては身内に前科者を入れることはできない。

今日限り、与之吉にも店は辞めてもらうと言う。
抗議するおつゆに親方は、「この縁談はなかったんだ!」と、おつゆの手を引いて店の中に入ってしまった。
懇願する弥三郎も、外に叩き出されてしまった。

奉行所に連行された弥三郎だが、こんな不自由な体の父親を寄せ場に送るわけにはいかない。
与之吉は、父親の身代わりを申し出た。
御定法に従って与之吉が代わりに寄せ場送りとなり、主水の同僚の伊織は忌々しそうに調書を閉じた。
伊織は「囚人1人あたり2両、10人で20両」で、講武所の須貝に囚人を連れてくる約束をしていたのだ。

寄せ場送りになる囚人たちの中には、半次もいた。
引き立てられていく与之吉に向かって、半次は与之吉に「おい、親父の身代わりなんだってな」と声をかけた。
「こんなてめえだけが後生大事ってご時世によ、バカもそこまでくりゃあご立派だよ」と鼻で笑った。

その時、囚人の見送りにおきんが来ていて、半次に向かって叫ぶ。
弥三郎も来ていた。
その後ろに貢も見える。
「許してくれ」と叫ぶ弥三郎に向かって、与之吉が「三月経ったら戻って来る」と応えると、伊織に殴られる。

おつゆも来ている。
「家を飛び出してきた」と、おつゆは叫んだ。
与之吉が戻るまで、弥三郎の面倒は自分が見ると言う。
こうして、囚人たちは寄せ場へ送られた。

しかし囚人たちを乗せた船は、寄せ場へは行かなかった。
一人一人、荒野に木の杭にくくりつけられた囚人の前に須貝が現れて言った。
「お前たちは世の中のクズだ。だがそのクズも立派にお国の為に役立たせてやる」。
囚人たちで大砲の威力を試すのだ。

半次は、「待ってくれよ!この中にはな、親の身代わりで来た、罪のねえ男がいるんだ!その男だけでも何とかしてくれ!」と叫んだ。
「てめえら、それでも人間か!人の皮を被ったケダモノだ!」と半次は叫び、与之吉は身をよじって何とか逃げようとしていたが、兵四郎が大筒に点火してしまった。
大筒が火を噴き、半次たちのいた場所に煙が上がった。

囚人たちが横たわっている中で、着物をボロボロにしながら半次は立っていたが、すぐに倒れると今度は這って与之吉の近くに行った。
与之吉は死んでいた。
須貝たちが近づいてくるのを見た半次は、仰向けに倒れた。

死んでいる囚人たちを見た兵四郎は、大砲の威力に満足そうだった。
伊織に須貝は、「この次は囚人30人を回してもらいたい」と言い、伊織は今度は1人5両と言う。
須貝たちが立ち去ったのを見て半次は、起き上がる。

長屋でおきんのいる部屋の障子を破って、血まみれの腕が出てくる。
そして血まみれになった半次が、転がり込んできた。
おきんは家にいる主水に、半次が大筒の試し撃ちにあったことを知らせに走った。
それを聞いた主水も、与之吉の事を聞いて驚いた。

与之吉の死を聞いたおつゆは、貢とあやの家で、床に落ちた衣装を握り締めた。
それを見ていた、あやが涙ぐむ。
貢は無言で、戸の影に座っていた。
おつゆは突如立ち上がると、はだしで婚礼の衣装を抱きしめて夜の町を走って行ってしまう。

貢の表情は硬かった。
この後、貢が弥三郎の家に行く。
すると、夫婦茶碗が並んでいた。

弥三郎は「見てくだせえ。夫婦茶碗だ。親から縁を切られたおつゆさんがどこへ行っちまったもんか。おつゆさんはもう帰ってこねえ。誰か。誰かこの恨みを」と言うと貢に金を渡した。
「決して汚ねえ金じゃねえ。糸さん、誰でもかまわねえ。与之吉の恨みを晴らしてくれるなら、こ、この金で…!」
貢の表情は、やはり硬かった。

その金を持って、貢は主水たちと会った。
仕留め仕事が決まって、貢は1人、夜の町を歩く。
主水は夜鳴き蕎麦を食べている。
大吉が主水と合流し、再び別れていく。

金を手にして伊織は夜の街を、にやけながら歩いていた。
後ろから主水が声をかけた。
「よお、伊織!」
「何だ、中村か」。

「あれっ、何だかうめえ儲け口の匂いがしてきたな。いい話ならひとつ乗せろよ」と、主水は伊織と肩を並べて歩いた。
「バカかも休み休み言えよ。どうだい、そこらで一杯」。
「おお、結構」と言った途端、主水は、ひそかに抜いていた刀で伊織を刺した。

伊織と飲みに行く相談をした主水は、伊織を刺したまま「それじゃあ俺の顔が利くところへ行こうか」と伊織を支えて歩く。
暗がりに来たところで、主水が伊織を突き放すと、伊織は倒れた。
主水は伊織を打ち捨てて歩いていく。
道行く数人が倒れている伊織に、不思議そうに近寄ってくる。

兵四郎が講武所の地下室で、火薬の研究をしている。
胡桃をこすり合わせる音をさせながら、大吉が階段を降りてくる。
「何者だ」と逃げようとした兵四郎を、大吉が捕える。

胡桃が大吉の手の中で、割れる。
大吉が心臓をつかむと火薬の粉末が飛び散り、火薬が花火のように散る。
壁に押し付けられていた兵四郎が、崩れ落ちる。

講武所の部屋で書を書いていた須貝は、戸が開いたのに気がついた。
「誰だ」と言ったが、貢だとわかると、「何だ吉岡。どうしたんだ?」と言った。
須貝の前に立った貢は、いきなり須貝の顔をバチで斬った。

「何をするんだ!」と須貝は顔を押さえて立ち上がると、拳銃を手にした。
一発、弾は発射されたが、転がった貢には当たらなかった。
「須貝、死んでくれ!」
もう一発、須貝は撃つが、当たらない。

ついに須貝は、刀を手にした。
バチを握り締める貢。
数滴、畳みに須貝の血が落ちる。
須貝は貢に突進してきた。

貢は落ちていた須貝の羽織を、走ってきた須貝にかぶせる。
走ってきた須貝が戸の向こうに消えると、貢はバチを閃かせた。
後姿の須貝が、ガックリと膝を落として座り込んだ。
貢が灯りを吹き消して戸を閉めて出て行くと、座っていた須貝の体が崩れる。

1人、夜の町を帰っていく貢に、しどけない襦袢姿の女たちが声をかける。
貢の足が、止まった。
店の格子越しに見えた女は、おつゆだった。
襦袢姿のおつゆが、男の口に酒を流し込み、嬌声をあげていた。

やがて、人がいなくなると、おつゆはだらしなくあくびをした。
そして1人になると、暗い部屋の隅で肩をはだけてぼんやりしていた。
貢は何か言おうとしたが、言葉が出ない。
やがて、そのまま顔を背けるように目を逸らし、夜の町を帰って行く。



貢の背景と、人物像が描かれる第2話。
これから貢に対して感情を入れさせる描写がたくさん、あります。
「私がやろう」などと、体の弱いあやさんを労わる優しさで女性視聴者がかなり、貢に好感を持つ作り。

貢の本名って「吉岡」なんですね。
前回、せんは「貢どの」って読んでましたが、貢は追われてから改名した名前で、そっちの方が通りがいい。
ということは、「吉岡」を知る人は高野長英門下で学んでいた人が多くて、そういう人は今は息を潜めて暮らしているってことでしょうか。

「うどんの味、落ちたな」と言う貢は、まだまだエリート門下生が抜けてないところ。
でも別に、芝居小屋の人と衝突を起こしたりはしていない。
むしろ、「この字、何て読む?」なんて聞かれたりして、頼りにされている。
物腰が柔らかいし、優しいから。

そして、あやさんにはとことん優しい。
仕立物をするあやに、「どうだ、一休みしたら?」と声をかけてお茶を持ってくる。
婚礼衣装を羽織ったあやに、「綺麗だぞ」と言うのがとてもうれしそう。
あやさんもうれしそうで、とっても良い夫婦。

このシーンがあるから、貢があやの為に買った卵が、須貝の襲撃で割れているのが何とも哀しい。
まるで、貢のあやさんへの思いが踏みにじられたようで。
同じように、与之吉とおつゆの夫婦…、には、まだなっていなかったけど、この2人は貢とあや以上に踏みにじられる。

町では、怪しげなシガレットを売りつけるおきん。
明治が近くまで来ているのは、「日本橋の三井さん、大阪の鴻池さん」という名前でも感じます。
今回の売り物はシガレットらしく、半次がボロボロになって戻ってきた時も、おきんは長屋の部屋でシガレットを巻いてるんですね。

寄せ場に送られるときの音楽が、後の幕末必殺「必殺からくり人 血風編」のオープニング音楽ですね。
仕留人の音楽というより、こちらで記憶してしまっているんですが、幕末の不穏な空気にピッタリ。
この寄せ場に送られる時、見送りにおきんが来ていて「元気かー?」と聞く。

「元気だー!」と半次が返事すると、伊織が半次を殴る。
おきんが「こらあ、バカ、殴るな!」と怒るのが、おかしい。
なのに半死半生の半次に対して、おきんがお金を「あたいが預かっておくからね」って言うのに、半次は納得しない。
抵抗して、手を伸ばして小判握り締める。

おきんが「何だよ!」と呆れる。
半次だけが半死半生になりながらも生き残るって、悪運が強い。
裏稼業をやる上で、この、悪運が強いって運勢は大きい。
この執着心の強さも、運の強さかもしれない。

父親の身代わりになって寄せ場送りになる親孝行な与之吉に対して、主水は「おめでたい」と言う。
「ばか」と言う。
半次も寄せ場に送られる時、親の身代わりになった与之吉に憎まれ口を叩いている。

でも実験台にされる間際、半次は「この中には父親の身代わりで来た、罪もない男がいるんだ。こいつだけは勘弁してやってくれ」と与之吉だけは勘弁してやってくれと叫ぶ。
おきんから親の身代わりになった男も殺されたと聞くと、主水も「与之吉が?」とすぐに名前を言う。
主水も半次も、口は悪いけど、与之吉のことは気にかけていた。

最初の爆発で、子供が殺されるのも悲惨。
何度見ても、嫌な気分になる。
この頃は、子供が犠牲になる話がわりと出てくるんですね。

子供といい、寄せ場送りの囚人といい、人の命を奪っておいて、「大事の前の小事だ」と言い放つ須貝。
罪もない人の人生を変えても、何とも思わない歪んだエリート意識への怒り。
うどんの味に文句を言う貢と、どこか共通したもの。
しかし、貢は須貝のような歪み方はできない。

貢の「須貝、死んでくれ!」は、もう、後戻りできない違う道を歩んだ2人を感じた貢の悲痛な叫び。
高野長英門下だった自分たち、自分たちの夢、理想に決別しなければならない、貢の叫び。
須貝の殺しのシーンは、貢のバチに映る須貝と貢を見せる凝った演出。

鏡のように光る刃に、悲痛な表情の貢が映る。
刃の向こうの須貝の顔も、透けて見える。
大吉の殺しは、花火のように火花が散る。

そして帰り道。
貢は初々しいおつゆさんの、変わり果てた姿を見る。
嬌声をあげて男とバカ騒ぎした後、おつゆは、ぽつんと座っている。
いたたまれないように、貢が去っていく。

去っていく貢の背に流れる、口笛のメロディ。
かつての学友を仕留めたのは学友が「許せぬ悪」「見過ごせない非道」な人間だったから。
しかし、その帰り、貢は誰も何も救えていない現実を見せつけられた。
仕留め稼業の厳しさ、空しさを思い知らされ、貢は1人、去っていく。


その十手持ちに恨みがあるんだ! 「暗闇仕留人」第1話

第1話、「集まりて候」。


ペリーの黒船が浦賀に来た。
糸井貢と妻のあやは、それを見ている。
「あれがアメリカの船なんですね」と、あやは言う。
新しい時代が来ている。

何もかも、夫の言ったようになる。
これからだってきっと、夫の言うように世の中は変わっていく。
だが、誇らしげに言ったあやは倒れそうになる。
幕府はあやの夫の貢を、高野長英を匿った罪で3年もの間、追った。

その夜、夜鷹と遊んでいた男・大吉だが、その途端、夜鷹狩りが行われた。
追われる夜鷹たちは、同心・中村主水に小銭を渡すと主水は次々と、夜鷹たちを通らせて逃がしてやる。
嘉永6年6月15日、本所にて夜鷹狩りが行われたが、その中に女髪結いのおそのという女が混ざっていた。

大吉はおそのが同心に駕籠に乗せられ、連れて行かれるのを見て、後をつけた。
気づいた同心が襲い掛かってくる。
「見られちゃよっぽど、まずいものだったらしいな」。

大吉は側の木の幹を握るとそれを潰し、木を倒した。
主水の同心仲間は、木の下敷きになって大吉にトドメを刺された。
「坊主!」と声をかけた主水に対して、大吉はくるみを握って殺気立つが、意外なことに主水は愉快そうだった。
「こいつは上役の尻にへばりついて、阿漕なことをやり過ぎた男だ。気にしなくていいんだぜ」と言った。

その時、霧雨の中、1人の男が近づいてくる。
大吉はそれを見て、立ち去る。
笠を目深にかぶった男は、主水に「捕り物ですか?」と聞いた。
昼間、黒船を見ていた貢だった。

「少し話を聞いてもらいたい」と貢は言う。
「実は少々、金の無心を願いたいんだ」。
「金?」と主水はビックリする。

「家内が長く患っていて、医者に診せているんだが、なかなかその費用が追いつかなくてね」。
「そりゃ気の毒だな。俺んとこはその反対で、かかあが丈夫過ぎて困ってるんだ。オマケに俺は養子だから小遣いなんて一銭ももらえねえし、人様にくれてやるような金は、びた一文、持ち合わせていねえ」。

すると、笠を深くかぶった貢は言った。
「いやあ、私はそうは思わんな。与力や同心というのは、賊を追って、とっさの旅に出ることがあると聞き及ぶ。だから5両や10両の金は、常に持っているはずだ」。
「そりゃあ要領の良い同心のことよ。不器用なこの俺には」。

主水は笑うが、貢は言った。
「私の目にはそうは。貸して…いただけるのか、いただけないのか」。
「何をぉ?」
主水の口調が変わる。

「それを伺いたい」。
貢の口調は丁寧だったが、主水は「てめえ、物盗りか!」と鋭く聞く。
「いや、そうはなりたくないんだが…。断られれば致し方ない」。
貢が構える姿勢を取る。

「おめえも物好きだなあ。俺は十手持ちだぜ」。
「その十手持ちに恨みがあるんだ!」
貢は鋭く叫ぶと、貢は三味線のバチを構え、主水に狙いをつける。

主水が刀を構える。
貢のバチと、主水の刀が交差する。
すれ違った瞬間、貢の顔を隠していた笠が切り裂かれいた。
中から見えた貢の顔が、驚愕に変わる。

刀を上段に構えた主水も、刀を構えた袖がスッパリと切られているのに気づき、驚く。
どちらも構えたまま、踏み込めない。
「中村さん!」
仲間の同心が駆けつけて来たのを見て、貢は逃げた。

「賊ですか!」
主水は驚愕の表情のまま、「バチだ」と言う。
「え?」
「バチが当たりやがった」。

翌朝、主水は中村家で足軽だった先祖の鎧兜を目の前に出され、せんとりつに嫌味を言われ、不愉快な思いをした。
そして昨夜、主水を襲った貢は場末の芝居小屋で三味線を弾いていた。
黒船騒ぎで客の入りが悪いとぼやく小屋の人間に貢は「こんな薄汚い小屋、客が入るだけ不思議じゃないか」と言って、小さないさかいを起こす。

寺の境内では「この西洋写真機はイスパーニア、ロンドンの言葉で、きゃはーめーらと言う」と、半次がカメラで撮った写真を披露していた。
助手は、おきんだった。
ある侍の顔を白塗りにし、撮影に支障があると言って刀と財布を取り上げる。

きょとんとした主水が、影から見物している。
その時、けたたましい声がして、襦袢姿の女が乱入してくる。
一騒動あった後、半次もおきんも消えていた。
刀も財布も持ち逃げされたと気づいた侍は、刀に手をかけるが、それも撮影用の竹光だった。

半次とおきんが持ち逃げして逃げる中、後ろから主水が「おうい、俺だ!」と追ってくる。
「八丁堀!」
半次が「お前は誰だ!俺は知らねえ!」と言いながら走る。
「俺だよ!」

一通り逃げおおせた半次とおきんに追いついた主水が、「久しぶりだったな」と言う。
だが半次は「俺たちは人相書きがまわったお手配組みだ。もう2度と会わねえようにしようって言ったじゃねえか!」と言う。
「そりゃそうだ。でもよ、水臭えこというなよ。このご時世だ。俺はまた、始めたっていいんだぜ」。

見れば、半次もおきんもあんまり景気の良さそうな仕事はしていなさそうだ。
「八丁堀。そんな優しいこと言ってくれるの、あんただけだよ」と、おきんは涙ぐむ。
2人は仕置人解散の後、あちこちを逃げ回ったが、やっぱり江戸が恋しい。

どうせ捕まるんなら、お江戸にしようと言って、帰ってきたばかりなのだった。
「鉄も錠も、どこかに潜んでるんだろうな」と半次が言う。
「八丁堀、あんたまた始める気かい?」と、おきんが言う。

「でもなあ」と口ごもる主水に、半次が答える。
「わかってんだ。俺とおきんじゃ、腕が足らない。鉄や錠みたいな奴がいなけりゃあの仕事はできねえ。無理なんだ。八丁堀。会わねえ方が良かったんだ!」
肩を落とす半次の前に、先ほど騒動を起こした女がやってきて、手を出す。
半次は女の手に、小銭を置く。

主水が「何だありゃあ」と尋ねる。
「知らねえ。その辺に巣食ってる女で手先に使った。俺は知らねえ」。
半次の答えに、主水がおもしろそうに笑う。

その頃、夜鷹狩りで一緒に捕えれた髪結いの娘・おそのは、髪結いを装って売春していたという疑いをかけられていた。
父親の必死の頼みで主水が牢内を見るが、捕えられた夜鷹たちの中に、おそのはいなかった。
すると、おそのはどこにいるのか。
おそのが引っ張られた理由は、別にあるのではないか。

外を歩く主水に近江屋が声をかけて、上司の高畑に菓子箱を渡すように頼む。
「昨夜は大変お手数をおかけしました」と近江屋は言うが、昨夜あったことといえば、夜鷹狩りだ。
近江屋は主水にも、袖の下を渡す。

主水が高畑に菓子箱を渡し、近江屋の伝言を伝えるが、高畑は「そうか」とだけ答えた。
繰り返し、夕べの髪結いと夜鷹狩りのことをもう一度、主水が持ち出して言う。
要するに主水も袖の下の分け前を狙って繰り返したのだが、高畑は態度を崩さず、「わかったと言ったではないか」と、うるさそうに答える。

主水は夜鷹狩りに乗じて高畑がおそのをさらい、近江屋に差し出したと察しをつけた。
「昔ならなあ、これで5両がとこになるんだが…」。
ボヤく主水は、半次とおきんに会った。

そして、仕事仲間になりそうなのが「2人いる」と伝えた。
主水は半次とおきんに、あの夜に出会った2人の行方と、おそのの行方を探し始めるように言う。
「八丁堀、おめえ本当にやる気だな!」と半次が言う。
「ここんとこ、金には不自由してるしなあ。それに奉行所の奴らがああ汚く絡んでるんじゃ、ほっとくわけにもいかねえ」。

主水は半次とおきんに手付けと言って、小判を渡す。
「ようし!」と、半次が元気になる。
おきんも「半公、やる?あたいもやるよ!」と言う。

その頃、芝居小屋では、おそのの父親の弥助が包丁を持ち出して、自分でおそのを助けに行こうとしていた。
奉行所はグルだ、ならば自分が助けるしかない。
だがそんなことはできるわけがないと、貢が包丁を取り上げて止める。

すると弥助は貢に「何とかしてくだせえよ。お願いしますよ。あんた、お武家さまじゃありませんか。近江屋に掛け合って、おそのを返してもらってくださいよ」と懇願した。
だが父親にすがられても、貢にも何もできない。
「どいつもこいつも、奉行所がそんなに怖いのか」。
弥助の悲痛な叫びに唇を噛み締め、立ち尽くす貢のところに、外から見ていた大吉がやってくる。

大吉は夜鷹狩りの夜、おそのが連れられて行くのを見ていたと言って、弥助に近づく。
誰だって、十手持ちと関わるのは嫌だ。
金を出さなきゃ、誰も引き受けてくれない。

大吉は、おそのが連れ去られるのを見た。
「5両ばかり出してくれたら…」と大吉が弥助に持ちかけた時、主水がやってきた。
主水は、「村雨の大吉!」と怒鳴って、十手を振りかざし、芝居小屋に入ってくる。
そして貢と、大吉を外に連れ出した。

人気のない橋の下で、主水は裏の仕事の話を持ちかけた。
大吉はおもしろそうに乗ったが、貢の反応は違った。
「私は気が進まんな。いや、あんたの言ってることもわかる。どこもかしこも奉行所の中も、腐りきっている」と貢は言った。

「その奉行所に、どれだけ苦しめられてきたか。あんたにその苦しみはわかるまい。あんた、奉行所の禄を食んでいる。その十手持ちと手を組むことは…!」
そう言って、貢は去る。
大吉が呼び止めようとするが、主水はやめさせる。

「あのままにしておいていいのかい。あんた、今、大変なことを言ったんだぜ」。
もし、貢が奉行所に駆け込んだら…。
だが主水は「そんな奴に見えるか?」と、言って笑う。
「所詮は同じ穴の狢さ」。

貢は家に戻ると明るく振舞い、病弱な妻・あやを労わる。
「本当に今日は顔色がいいぞ!」
そして、大吉は寺の近くで石屋を営んでいた。
大吉の家にいる主水だったが、夜の寺の鐘が鳴ると、大吉はちょっと用があると言って、いそいそと出かけていく。

主水は大吉の後をつける。
大吉は妙心尼という、比丘尼のもとへ通っていたのだった。
その時、おきんが主水に声をかけた。
おそのはどこにもいないが、水口藩の屋敷に高畑が出入りしていることを突き止めてきた。

こっそりと主水は、大吉と妙心尼の密会を目撃する。
半次は水口藩の屋敷に忍び込み、そこでおそのが高畑に折檻されているのを見る。
おそのは髪結いを装って春をひさいでいたことにされると脅され、近江屋の妾になるよう強要されていた。

これは高畑と、水口藩の家老の湯川に頼んで近江屋が仕組んだことだった。
逃げようとしたおそのが思わず、隣の間の戸を開ける。
半次が巧みに、ひらりと身を引き、暗闇に潜む。
おそのは、3人に部屋の隅に追い詰められた。

翌日、おそのは川で死体となってあがった。
弥助は、おそのの死体に取りすがって泣き叫ぶ。
貢がその姿を見つめる。
その足で弥助は、芝居小屋の入り口で木戸銭をいきなり手の中に握り締めて、盗んだ。

追われながら弥助は、貢が三味線を弾いている裏方に逃げてきた。
三味線を弾いている貢の袖に、その金を押し込むと、弥助は連行されていった。
貢が神社の御輿をしまっている祠で、小判を5両、並べていた。

そこには主水と大吉、半次とおきんがいた。
弥助は娘の髪結い道具を売り払い、嫁入りの為に貯めていた金を集めた。
だが、それでも大吉の言った5両に満たなかったので、盗みをして5両を作ったのだ。
「ちくしょう…。俺はやるぜ!」と大吉が言う。

主水が「あんたもやるんだな」と言うが、貢は「断る!」と言う。
怒った大吉が貢につかみかかる。
「じいさんが、これほどまでにしてでも!」
だが貢は「俺は前にも言ったはずだ。俺は奉行所の奴は信用できん!」と言う。

大吉を止める主水に貢は「しかし、あんたが本当にやるんなら話は別だ。それを見るまでは信用できん!」と言った。
怒る大吉に、主水は「まあ、いいや」と言う。
表に半次が来て、格子窓越しに主水から金を受け取る。

その夜、貢は、仕事に向かう主水と大吉の後ろを歩く。
大吉がブツブツ、文句を言う。
主水は「あいつは確かめてえんだ。俺たちが仲間だという証拠がな」と言う。

高畑と近江屋、湯川の3人が料理屋の離れに案内される。
案内したのは、おきんだった。
そこで料理屋の半纏を着た半次が、近江屋に「店から使いが来た」と言って呼び出した。

半次は近江屋を誰もいない部屋に案内すると、突き飛ばす。
突き飛ばされた近江屋が顔をあげると、異様な音がする。
部屋の向こうには、胡桃を手に大吉が立っていた。
それは大吉が胡桃を握り、こすり合わせる音だったのだ。

大吉が胡桃を粉々にした。
助けを呼ぼうとする近江屋を押さえつけ、大吉が腕を振り上げる。
腕は近江屋のあばらにめり込み、近江屋は「心臓つかみ」の技で殺される。

高畑と湯川は、座敷で酒を飲んでいた。
だが、背後のふすまに異様な音を聞きつけて、開ける。
するとそこには、正座した近江屋がいる。

近江屋は、座ったまま死んでいた。
「どうしたんだ、近江屋!」
外の障子に、影が映る。

障子を開けた高畑を、主水がグッサリ刺す。
「中村っ!」
高畑を刺したたまま、主水は「死んでください」と言い、高畑を上から下に斬る。

湯川が外に逃げる。
「八丁堀!見たぞ、証拠は」と言う声と共に、貢のバチがうなる。
普通のバチを取り去ると、その下には刃が仕込んであった。
逃げる湯川を押さえつけ、貢は喉を切り裂く。

湯川は倒れる。
鮮やかな手腕だった。
だが貢は呆然としている。
主水と大吉、半次とおきんが見ているのに気づいて貢は我に帰り、うろたえるように部屋を出た。

帰り道、主水は大吉と貢と歩きながら、「明日野暮用があるので、これで失礼するぜ」と言う。
「へえ、俺もなんだ」と、大吉が言う。
3人は強い風の吹く中、別れて行く。

翌日は、中村家の先代当主、主水の義理の父の13回忌の法要があった。
りつには2人には妹がいて、1人は仏門に入った。
しかし、末の妹は父親に反対された相手と駆け落ちした。
その末娘のあやの夫には、「主水が目をつぶってくれないといけないことがたくさんある」とりつが言う。

その時「母上!」という声がする。
あやだった。
しかし、うれしそうなあやは同心の主水を見て、一瞬足を止め、顔色を変えた。
だが主水は、あやではなく、あやの後ろから笠をかぶってやってくる男を見ていた。

「心配は要りません、りつから話はしてあります」とせんが言う。
そして、「貢どの、良く来てくれました」とあやの後ろの男に声をかける。
男が笠を取り、主水がまじまじと貢の顔を見る。
貢も主水を見ていた。

「母上!」と声が響き、せんとりつが「妙!」と喜ぶ。
それは、妙心尼だった。
後ろから、男が1人来ている。
その男のことは、後で話をすると妙心尼は言う。

「こちの人」。
呼ばれた男、それは大吉だった。
へらへらと笑って、大吉が頭を下げる。

「貢どの。りつの婿殿です。あなたの兄上」。
せんが貢に主水を紹介する。
「兄上?」と貢が驚く。

法要が始まった。
僧侶が経を読み、その背後の親戚の列の先頭に主水がいる。
その後ろの列で大吉と貢が並んで、手を合わせている。

後ろを主水が気にする。
すると、そっと、背後から大吉が近づいて囁いた。
「にーさん」。

主水の目が丸く見開かれ、口がポカンと開く。
その途端、主水が経を唱え始める。
お経に一層身が入った主水をちらりとせんが見て、満足そうに手を合わせる。



近江屋は浜田寅吉さん。
高畑は、今井健二さん。
被害者は今出川西紀さん。
どうです、「必殺」、悪役、被害者、鉄壁の布陣です。

「仕置人」の音楽は流れるし、半次とおきんと再会する会話から、仕置人のその後から話が始まっているのがわかります。
あの最終回で人相書きが流れ、江戸を脱出したはずの半次とおきんが、どうせ捕まるなら江戸がいいと戻ってきていた。
鉄も錠も、どこかに潜んでいると言う。

黒船騒動で大騒ぎの江戸は、もはやお尋ね者どころではないのか。
この幕末の世に、あの鉄と錠が存在している…。
それって、どんなんだろう?と思ってしまう。

主水はもう、相変わらずのせんとりつの侮辱、不愉快な家と奉行所の日常にウンザリしている。
昨晩の捕り物は夜鷹狩りと夜鷹の存在を説明する時、「ちょいと、おにいさ~んと呼び止める、あれですな」と言うのが、とっても女性っぽい言い方でうまい。
しかし、主水は家に帰るなり、嫌味をビシバシと言われる。
その苛立ちを「何だ、こんな汚いものを置いて!」と座敷に置いてある古い箱にぶつけて、蹴っ飛ばす。

だがそれは、ご先祖の鎧だった。
ご先祖の鎧を見て、せんに足軽だったと説明されると主水、笑って♪鉄砲持たせりゃ重たがる~、弁当持たせりゃ食いたがる~♪の足軽ですか!と歌う。
見ているこちらも笑ってしまう歌だが、当然、せんに怒られる。
この第1話に出てきた鎧が、最終回に出てくるんですね。

しかし主水、夜鷹狩りでも、しっかり小銭を稼いでいる。
そこに大吉を目撃。
御用どころか、かつての自分と同類を見てとっても楽しそうになってしまう。

そこに霧雨の中、口笛のBGMに乗って、笠をかぶった貢の黒い姿が現れる。
ものすごく、雰囲気がある。
主水も大吉も、思わず注目してしまう。

何というか、殺気みたいなものもあるかもしれない。
「実は少々、金の無心を願いたいんだ」。
「貸していただけるのか、いただけないのか」と口調は丁寧だけど、やろうとしていることは強盗。

このシーンは後の「仕業人」の第1回、中村敦夫さん演じる剣之介が主水に「あのう…、金貸せ」というシーンで繰り返されていますね。
主水が金はないと言うと、いや、役人は持っているはずだと言うところも同じ。
貢と剣之介。
どっちも追われる身で、背負っているものも重い。

だけど、貢の思いつめ方の方が深刻な感じがするのは、連れ合いの違いでしょうか。
剣之介の妻といえるお歌は、患っていない。
どちらかというと、剣之介より大道芸の世界では、たくましい感じがする。

しかし、剣之介は顔を白塗りにし、相当の身分の武士を捨てているから、貢よりかなり、プライドが保てない、堕ちた感じがする。
反対に貢は、プライドは捨てていない。
自分が働いている小屋なのに、「こんな小屋」と言い放ち、小競り合いを起こすほど。
剣之介もつらかっただろうけど、プライドを捨てられない秀才の貢もまたつらそう。

それもあってか、「その十手持ちに恨みがあるんだ!」で爆発。
三味線のバチを構える貢。
最初に悪人にバチを刺したのは「仕置人」の鉄でしょうが、貢は後に山田五十鈴さんが得意とするバチを武器にしてる最初の殺し屋?

すれ違った瞬間、貢の顔を隠していた笠が切り裂かれて、予想以上の腕に貢の顔が驚愕している。
主水も、袖がザックリと切られているのに気づいてビックリ。
「バチだ」「バチが当たりやがった」。
三味線のバチのことを言ったんですが、小銭を稼いでいたバチが当たった…と言う意味にも受け取れてしまう。

半次とおきんに会ってうれしそうに、仕事の再開を持ち出す主水。
ふと、「助け人」にも「俺にもやらせろよ!」とかなり積極的に売り込んでいたなあと思い出してしまう。
もう、つくづく、つまらない毎日にウンザリしていたんですね。

大吉は貢の小屋で、弥助に話をもちかけたところを見ると、フリーで裏の仕事をしている男ではないか。
裏稼業への誘いを断る貢に、怒る大吉。
だけど、主水は「同じ穴の狢さ」と言う。
かつての仕置人やっていた余裕。

そして大吉が言った5両という言葉が、弥助を盗みに走らせる。
弥助が盗みまでして作った金なのに、断る貢に憤慨する大吉。
貢の役人への不信感は、当たり前だけどすごいものがある。
主水が人を殺すのを見るまで自分は仲間に入らない!と言うが、しっかり後はついてくる。

ここでも主水は貢を責めず、ちゃんと目の前で仕事をしてみせる。
大吉が仕留め仕事を終えた後、オープニングの音楽が流れる。
近江屋が座敷で倒れる。

主水が仕留め仕事を終えると、音楽が止まる。
「死んでください!」と言うのは、「仕置人」の第1話と同じかな。
「八丁堀!見たぞ、証拠は!」で、貢がバチを構えると「旅愁」が流れる。

この貢のバチですが、表面のカバーを取り去ると、刃が仕込んであるんですね。
そんなもの、作ってたんですね。
高野長英を匿った罪で3年間、追われていたというから、その間に役人に見つからない武器を携帯していたし、元々御家人で武術の心得はあるだろうし、逃亡生活でさらに腕が磨かれたのかも。

そのバチの刃の部分に、貢の顔が映る。
すごく凝っている映像。
主水と互角に渡り合った貢の腕は確かで、湯川をアッサリ仕留める。

でもその後、貢は我に帰ると、うろたえたように部屋を出る。
このうろたえ方がすごい。
金で人を殺せる自分の暗い部分に気づかされて、うろたえたように見える。
この最初の殺しって、実に貢を良く表していたんですね。

中村家の先代当主の13回忌で会った、りつの末の妹・あや。
あやが連れてきた貢が笠を取ると、主水がしげしげと貢を見る。
せんにりつの婿殿、あなたの兄上を言われた時の「兄上?!」という貢の顔がおかしい。

ラスト、こっそりと、でも威圧感ある明るい声で「にーさん」と主水につぶやく大吉。
もう、その途端、主水がゾオーッとするのがわかっておかしい!
唇まで、ワナワナしている。

最後の大吉の「義兄さん」にゾーッとした理由。
主水は大吉みたいなタイプは、鉄で慣れてるんだと思うんです。
だけど、貢みたいなタイプと組むのは初めて。

貢の不信感もわかるし、鉄や錠といった治外法権と組んでいたんだから、貢のような要求に対する寛容なんて深い、大きい。
だけど、大吉とこれから義理の兄弟と言う関係で、どんな迷惑、難儀が降りかかることか。
考えたらゾッとする。

そりゃ、鉄から「義兄さん」なんて呼ばれたらゾッとするわ~と思うと、おかしい。
この大吉の言い方がまた、うまいんだ。
主水がガクガクブルブルになり、思わずお経に身が入るのが笑えるラストでした。


三連休明けの今日

目覚まし時計、今朝はあやうく布団をかぶって聞こえるほうの耳を下にして、無視しようとしていた…。
3日間の朝寝坊は、怖ろしい。
25日、10時近くなっているというのに、ケーキを食べてしまった。
まあ、年に一度やるかやらないかのことだから良いか…。

昔、賞味期限が近いのか、ケーキを見て食べるか食べないか迷っているCMがありました。
眠る前に食べてはいけない…。
葛藤する女性。
これは確か、京野ことみさんでした。

そして突然、ひらめいて出した結論。
「寝なきゃいいんじゃん!」
安心して、ケーキにかぶりつく女性。
…違う、それは違うって展開。

年明けは1月4日から出勤だと思っていたら、4日に休みたいということでこの前の土曜日に出勤した人が多かったらしい。
急遽、1月4日は休みですと言われました。
9連休!
やっほ~い。

みんなそう言って喜んだけど、その分、確かに1月の予定はきつくなった。
でもいいよ、いいよ。
いつも三が日明けてすぐ、4日に出勤ってきついなあと思ってた。

でも年明けの挨拶の時にいないのって嫌だ…と思って、出ていた。
課長さんがね、5日に競馬の金杯には絶対に行くので、4日は休まない人だったから余計にね。
競馬のために競馬場近くに住み、競馬のために働いていると言う。
課長さんは痴漢に絶対に間違われないように、ショルダーバッグで、万歳して満員電車に乗り込んでたなあと思い出した三連休明けの今日。


怒涛のように

12月、怒涛のように過ぎて、クリスマスイブ。
3連休最後の夜。
明日から4日間、寒い朝に起きて電車に乗れば今年も暮れる。
今年は寒い~。

全然関係ないですが、本田博太郎さんが出演していた「恋するハエ女」を見逃したことがショック。
怪演っぽかったのに~。
再放送しないでしょうか…。
本田さんに関しては、NHK正月時代劇「御鑓拝借~酔いどれ小籐次留書~」を楽しみにしよう。

では、おやすみなさい…。


ここは鮨屋じゃない! 「小僧の神様」

「小僧の神様」。

仙吉は、神田のある秤屋に丁稚奉公している小僧。
ある秋の日、番頭ふたりが話をしている。
「そろそろ、鮪の脂身が食べられる頃だね」。
「今夜あたりどうだね」。

鮨の話です。
お店の名前は、仙吉もよく使いによく行くところだったので知ってはいた。
しかし、鮨は仙吉の手の届く食べ物ではない。
仙吉は早く番頭になって、自分も鮨を食べられるようになりたいと思っていた。

それから2、3日経ち、仙吉は電車賃を持たされて使いに出た。
仙吉はよく片道だけ切符を買って、帰りは歩いて帰っていたが、その日も片道だけ電車に乗って片道は歩いて懐に4銭残した。
「4銭あれば、鮨が一つ食べられる」と仙吉は思った。
鮨を一つだけ頼むにはなんて言っていいものかと思いながらも、やっぱり食べたいと思い、見つけた鮨屋に行く。

「海苔巻はありませんか?」
仙吉の問いに「今日は出来ないよ」と店主が言うので、小僧は思い切って鮪の鮨の1つに手を伸ばす。
「一つ6銭だよ」。
そう、鮨は米の価格が高騰していたので値上がりしていた。

それを聞いて仙吉は、手を引っ込めてしまう。
小僧が鮨を持ってしまった鮨はもう、売り物にならない。
店主は「しょうがねえな」と言って、自分でつまんで食べる。
仙吉は気落ちして帰る。

それを見ていたのは、貴族院議員Aだった。
貴族院議員Bに屋台のうまい鮨屋を教わって、その日、この店に来ていた。
すると、13~14歳の小僧が入ってきて、彼の前のわずかな隙間に立って鮨を食べようとした。
そして諦めて出て行く、その一部始終をAは見ていた。

Aはあの小僧に、鮨を食べさせてやりたいと思った。
その後、子供の為に秤を買おうとして偶然、仙吉を見かける。
彼は仙吉に秤を運んでくるように言い、届けさせるとその帰りに鮨屋に連れて行く。

訳がわからないまま仙吉は鮨屋の中に呼ばれ、店ではなく奥に通され、鮨が出される。
夢にまで見た鮨が、そこにあった。
仙吉は夢中で、3人前を一気に食べる。

おいしい。
本当においしい。
食べ終わった仙吉に、女将さんが茶を淹れてくれる。

何人前も平らげた仙吉は恥かしいと思いながら、急いで店を出る。
女将さんが言う。
まだ御代はいただいてるんだから、来て食べてくださいね、と。

でも仙吉は2度と、その店に行くことはなかった。
仙吉はどうしてあの人が、自分が鮨を食べたいと思っていたことを知っていたのだろうと思う。
しかもあそこは、番頭さんが言った、一番うまいと言われている鮨屋だった。

あれはきっと、神様だ。
Aのことを、仙吉はそう思った。
これ以上、神様に甘えてはいけない。

そう思って、仙吉は2度と店には行かなかった。
でも、仙吉はつらい時や悲しい時はいつも、神様のことを思い出した。
神様が自分を見ていてくれると思うと、仙吉は頑張っていけた。



昔に読んだ志賀直哉の小説です。
この物語の時、つまり大正の半ばからは「坂の上の雲」の明治と違って、世の中は景気が良かった。
だけどまだ、丁稚の小僧さんには鮨なんて無理だった。
ましてや、鮨は値上がりしていた。

以前ならひとつ、小遣いで食べられた鮨が食べられなくなっていた。
しょんぼりと出て行く小僧の姿が、Aにはたまらなかった。
でも小僧は、何でこの人が鮨のことを知っているんだろうと不思議だった。
あれはきっと、神様だ。

神様がいて、自分を助けてくれた。
こういうこと、つまり人と場合によっては、思いもかけないところから来る善意や悪意でその後、世界が敵になるか、そうでないかの違いまであるなあと思いました。
この小僧はその後、この不思議な出来事を思い出すだけで頑張っていけた…。
仙吉はAのことは神様だと思っているけど、Aを通して仙吉は世の中というもの、人というものが信じられたのだと思う。

そしてこの小説は良いことをしたAの、その後の戸惑いまで書いています。
この話をしたAはみんなに「良いことをしたね」と言われるが、戸惑いを感じる。
本当にそうだろうか、と。

自分は単に、優越感からの施しをしていい気になっているのではないだろうか。
小僧を見下していたのではないか。
彼を同じ人間として、見ていたのだろうかと思ってしまう。

仲間はそんなことないさと、今夜は自分たちも鮨を食べようかと言う。
偽善だとか何だとか言って批判し、何もやらない人より、たとえそうであろうと当事者にとってはやってくれた方がいいことがある。
少なくとも、1人の小僧が幸せになった、世の中を信じて生きていけた。

それはそうそう、できることじゃない。
言われてAはやっと、気を取り直す。
このAさん、小僧を同じ人間なのに上から目線じゃなかったのか、って思っている。

貴族院の人なんだけど、この人は本当の紳士なんだな、と思いました。
さらにAは、小僧が存分に食べられるよう、自分は一緒に鮨を食べずに置いていき、奥の座敷に通すようにしてやっている。
この気遣い。
やることに品格がある。

本当の貴族って、こうなのかも。
仙吉が希望を持ってがんばれたと知らせるラスト。
さらにAさんのその後の心情まで描くところが、志賀直哉、さすが。


さて、会社の係長さんが以前、娘さんの友達が何人も来ていたので、お鮨に連れて行った話をしてくれました。
しかも奮発して、回転寿司じゃないところに。
ちょっと高いところに。
だが娘さんが「ここ、お鮨屋さんじゃない!」と言う。

「どうしたの。お鮨、『いつもここで食べてる』でしょ」と係長は「いつもここで」を強調して言った。
しかし娘さんは言った。
「違う!」
「回ってない!」

うっ…。
小さい子は正直だから。
でも、誰でもお鮨が食べたいと思ったら食べられる、そんな世の中は良いんですよ、かかりちょー。


石破「せんせい」と猫のまーご

土曜日の午前11時30分から、テレビ東京で「週刊ニュース新書」を見てました。
これは、猫のまーごがレギュラー出演しているので、それでつい、見てしまうわけですが、今週のゲストは石破茂さんでした。
石破さんの話し方って、テストで点が取れない生徒に、辛抱強くテスト前に何とか理解させようと説明する数学や物理の先生を思い出すんですよねえ…、私。

「いいですか。今、表からサイレンが聞こえてきます」。
ぴーぽー、ぴーぽー。
「聞こえてきましたか」。
「はい」。

「あれがドップラー効果です」。
「はい」。
「わかりましたか」。
「はい」。

「ここは、試験に出ます。わかりましたね。覚えましたか」。
「はい」。
…こんな、言われているような気がする。


それで番組の終了間近、スタッフが猫のまーごにサンタクロースのコスチュームをさせました。
この時のまーごが、固まってました。
まあ…、やらせておこうか…。
これがあたくしの仕事だから…、みたいな感じにも見えました。

その後、画面には、石破さんがまだいるテーブルの前にごろーん!と寝転がって微動だにしないまーごが。
機嫌が悪いのか、身動きできないのか、リラックスしているのか。
何がどうだろうと、私はここから動きません!という強い意志があるようにも、もう何でもどうでもいいです、と思っているようにも見える。

まーごの後ろには、背中を向けてごろんとしているまーごを見つめる石破さんが見える。
今や、大幹事長となった石破さんに、堂々と背を向けて寝転がるまーご。
現在、石破さんにそんな態度をする人間は、少なくとも家族以外にはいるまい。

こういうのを見ると、独裁者が猫を嫌いなわけがわかるわ。
だって全然、誰のことも気にしないんですもん。
誰もがひれ伏すであろう人間に対しても、マイペース。
常に基準は、自分の機嫌。

そんなあなたが、人間はたまにうらやましいわ。
石破さんは、まーごを抱っこしていたみたいだけど、HPで番組の出演者紹介のまーごの欄に「ゲストのカップに顔を突っ込んだ」とあるのは麻生太郎さんの時でしょう。
まーごと政治家のセンセイたち。
土曜の午前中、お昼前の楽しい風景。