こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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アメリカンニューシネマのような「河あきら」さん

私が買っていた「別冊マーガレット」には、70年代、河あきらさんというマンガ家さんが作品を描いていた、と前に描きました。
当時、定期的に「バッドエイジシリーズ」という不良少年・少女を主人公にしたシリーズを描いてました。
これが「この方にしか描けない!」という世界を形成してました。

この方の描く主人公はどちらかというとアウトローというか、世間的にはダメと言われているような少年少女だった。
不良というけれど、本質は純粋さゆえに大人の合理的な世界や理屈と合わず、はみだしてしまった少年少女。
大人でもなければ子供でもない、不器用にしか生きられない少年少女でした。

彼らは周囲の無理解と孤独に苦しみ、ちょっとしたきっかけで歯車が狂い、犯罪の中に取り込まれ、破滅する。
しかし、みんな愛すべきところがあって、非常に魅力的。
彼らの良さを知っている読者には哀しい結末となる話が、得意でした。
「バッドエイジシリーズ」は「これはアメリカンニューシネマか!」って悲劇で終わるものがあり、印象深かったです。

「バッドエイジ」ではないけれど、「5つのゆびの歌」というマンガがありまして、これも唐突と思われるような、悲劇で終わる作品。
5つの指を、自分の家族に見立てた童謡を歌っている幼稚園児の子。
だが、この子を末っ子にした家族は崩壊寸前。
しかしやがて、この子のけなげな願い通り、家族は再生していく。

やり直そう、やり直せる。
少し不良だった高校生の兄が、そう思った時だった。
野良犬の子供と遊んでいた弟が、一緒に遊んでいた子犬を見せようと走って来た。
背後でうなる大きな犬。

「まずい!母犬だ」と、兄が気づくも遅かった。
兄は「子犬を放せ!」と叫んだが、既に弟は母犬にがっぷりと首を噛まれてしまう。
病院で息を引き取る弟の周りに立ち尽くす家族。
5つの指を仲が良い家族に見立てた童謡が、虚しく流れる。

愛らしい子犬と子供のシーンから、突然、一転して吹き出る血。
弟の驚愕の表情。
残酷。

ショッキングでしたよ。
今思い出しても、むごい。
後味悪いし、怖かった。

この野良犬親子もどうなっちゃったのか、気になった。
野良犬にはうかつに触ってはいけないという、教訓にもなります…って、野良犬がいる時代だったんですね。
暗い結末については「傷だらけの天使」風味というか、当時のドラマや映画はそんなでしたしね。
最後の最後まで悲劇が襲うかもしれないから、気が抜けない。

今思うと、アメリカンニューシネマの影響が、あったんだなと思います。
ドラマも映画も、そしてマンガも、今にして思うとそういう時代だった。
軽くて楽しい80年代になると、何でこんな結末にしなきゃいけなかったのかと思ったのか。
そういう時代を超えてアメリカも日本も、この唐突に破滅して終わる、救いのない結末のものは、徐々になくなっていった。

だからか、河あきらさんのバッドエンドものも、徐々に見なくなりました。
そんな理由があるのか、この方の作品のほとんどが絶版だし、今手元にないのでなかなか読めない。
今はこの方のほとんど過去の作品を知る人がいないのかもしれませんが、すごくうまく話を作るし、人物は魅力的に描いていました。
もっともっと評価されていいマンガ家さんだと、思います。

ところで、河あきらさんって、私、ずっと男性だと思ってました。
それとこの方、コメディも上手いんですよね。
この落差にも驚きます。
考えると、コメディがうまいなら、シリアスはうまいはずでした。


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痛いわ、つらいわ、見ていられないわ 映画「切腹」

大阪夏の陣から15年。
戦国の世は、やっと安定してきた。
だが、主家が幕府の取り潰しにあい、多くの武士が浪人となっていた。

生活に困った浪人は、やがて切腹の場を借りたいと言って屋敷を回るようになった。
すると、面倒を避けたい屋敷側は、お金を払って浪人を引き上げさせた。
つまりこれは浪人たちの間に流行った、一種のタカリだったのだ。

ある日、井伊家上屋敷に、津雲半四郎と名乗る浪人が現れた。
この浪人は、「切腹のためにお庭を拝借したい」と言う。
家老の勘解由は、半年ほど前の春になった頃、同じことを願い出た浪人のことを思い出し、そのことを半四郎に話し出す。

浪人の求女という男だった、
その男は半四郎と同じく、切腹のために庭を借りたいと言って、この屋敷を訪ねてきた。
勘解由はこのような浪人に金を与えて追い払うのは、良くないと思った。

藩主に会わせると言われた求女は、仕官が叶うかもしれないと期待しただろう。
実際、その心意気に感心し、仕官が叶った浪人がいたという話もあったらしい。
だが置いてあった死に装束を見て、求女は自分は本当に切腹させられるのだと知った。

あきらかに狼狽した求女は「必ず戻るので、一度家に帰らせて欲しい」と頼んだ。
すると求女は「切腹するつもりもないくせに、武士の風上にも置けぬ卑怯者」だと罵倒された。
求女はどうあっても、切腹するように追い込まれる。

だが既に、求女の刀は竹光になっていた。
せめて真剣をくれるよう、求女は頼んだが、それは聞き入れてもらえなかった。
求女は、竹光での切腹を強要された。

竹光では、腹には刺さらない。
求女は竹光の上に倒れて、腹に突き刺す。
苦しさのあまり介錯を頼むも、井伊家の使い手である介錯人の彦九郎たち3人は嘲笑う。

「まだまだ!」
「もっともっと、引かないと切れないぞ」という声が飛ぶ。
求女は苦しみ抜き、やがて苦しさのあまり、舌を噛みきって自害した。
実に凄惨で、無惨な死に様であった。

勘解由は半四郎を戒める為に、この話をした。
だが聞き終わった半四郎は、「今度は拙者の身の上話を」と、話し出す。
半四郎の主家は、断絶になった。

娘婿の父であり、半四郎の親友でもあった男は主君に殉じて死んでしまった。
浪人となった娘婿一家だが、慎ましくも幸せに暮らしてきた。
やがて孫が生まれた。

一家は貧しいが、幸せそうだった。
孫は本当に、かわいらしかった。
だが半四郎の娘の美穂が、労咳にかかった。

治療代は、かさむ。
そして、生まれたばかりの子供までが高熱を出した。
切羽詰った娘婿は「あてがある」と言うと、家を飛び出して行った。

最初に行ったのは、高利貸しだった。
そこでは金は貸せないと、断られた。
時は経つ。
だが娘婿は、いつまで経っても戻らなかった。

やがて夜更けになった。
すると、娘婿は腹を切った遺体になって返ってきた。
娘婿を運んできた大名の家臣たちは一応の口上は述べたが、その態度は軽蔑に満ちていた…。

そこまで聞いていた勘解由は、ふと気がつく。
あの浪人の介錯に関わった彦九郎たち3人の家臣が、今日は登城していない。
なぜだろう?
そして、なぜ、この男はそんな話をするのだろう?

すると半四郎は勘解由に向かい、3つの髷を懐から出して見せる。
髷には彦九郎たち、彦久郎たち3人の家臣の名があった。
そうだ。
あの竹光で切腹させられた求女こそ、夜更けに運ばれてきた竹光で切腹させられた半四郎の娘婿だったのだ。

半四郎は言う。
なぜ、竹光と知って、それで腹を切らせたのか。
武士として、最大の侮辱である。

確かに武士として、どんな事情があるにせよ、人様の家に押しかけて腹を切るから場所を貸してくれなどということはしてはならなかった。
だが切腹をしに来た者が、今度は卑怯者と罵られても、一両日だけ待ってくれと言うなどは、よほどの理由があったと思わなかったのか。
これほどの家臣がいる、これほどの家で、せめて一言、一人ぐらい理由を聞いてくれる者はいなかったのか。

だが、勘解由は言った。
それは確かだ。
武士がそこまでするには、何か相当の事情があったのだろう。

だが武士たる者。
切腹を申し出た以上、それが自分の思惑と違ったからと言って、待ってくれというのは、卑怯でしかないのではないか。
侍ならば覚悟し、切腹し果てるものではないか。

半四郎もまた、言う。
その通りだ。
しかし、主家が幕府によって取り潰され、路頭に迷い、追いつめられ、どん底にあえぐ者の気持ちが、井伊家のような家の者や、その家臣たちにわかるか。
われわれ武士が頼りにしている誇りなど、実は上辺だけのもの。

ならば、明日は我が身…、とは思わぬのか。
半四郎は、井伊家の使い手、介錯人の3人を襲った。
そして結局、井伊家の使い手だという介錯人の3人は、半四郎の相手ではなかった。

何しろ、半四郎は戦という実戦を経験しているのだから。
娘婿を卑怯者と嘲笑った人間は、髷を切られた。
武士のプライドを、めちゃくちゃにされたわけだ。

髷を切られたら、登城できないか?
さあ、ではどうするのだ?
一介の浪人に恥辱を受けた立派な藩の武士は、切腹して果てないのか?

半四郎は嘲笑うと、井伊家の鎧兜を蹴り倒した。
家臣たちが次々現れ、半四郎を囲む。
井伊家の鎧を背に半四郎は、家臣たちを相手に暴れまくる。

求女は家族を守る為に、武士の魂の刀を竹光に替えていた。
だが半四郎はそれを、刀を手放さなかった。
半四郎は言う。
自分だって、武士の最後のプライドにしがみついていたのだと。

半四郎は家臣数名を斬り、そして最後に切腹して果てた。
勘解由は斬られた家臣は病死、この浪人は切腹したことにすると命令した。
結果、井伊家の対面は守られた。
そして井伊家の家名は、この後、ますます上がっていったのだった。


…と、映画「切腹」はこんな話でした。
半四郎は、仲代達矢さん。
勘解由は、三國連太郎さん。

求女は、石浜朗さん。
美穂は、岩下志麻さん。
3人の家臣は、それぞれ丹波哲郎さん、中谷一郎さん、青木義朗さん。
時代劇では、おなじみの方たち。

佐藤慶さんも、ご出演です。
この俳優さんたちの姿勢が、実に美しい。
特に仲代さん。
「武士は食わねど、高楊枝」じゃないけど、例え浪人になったとしても武士とはこういうものだ、と言っているようです。

もちろん仲代さんの殺陣も、見もの。
仲代さんと問答するうちに変わっていく三國さんの表情も、見ものです。
1962年の作品で、仲代さんはちょうど30歳、三國さんは39歳。
もう、嘘でしょ?!というぐらいの完成度の高さ。

カンヌ国際映画祭で、審査員特別賞を受賞。
いや、納得。
いやー、素晴らしい映画でした。

でも最初に言ったように、人には勧めません。
痛いし、救いがない。
話は謎解きのように始まります。

切腹した若い浪人の話を聞く半四郎の顔つきを見たこちらは、少しおかしいと思う。
異様さを感じます。
そして、半四郎は身の上を淡々と語り出す。

この男は、一体何をしたいのだろう?と、三国さんとともにこちらは思う。
それが徐々に明らかになる。
緊迫していく。

書きましたが、とにかく采女の切腹シーンは残酷。
求女の痛み、肉体の痛みはもちろん、心の痛みがキリキリ、ギリギリ伝わってくる。
しかもあざ笑っている相手は、主家を取り潰した側の家臣たちなんですよ。
半四郎たちの主家って、福島正則だったんです。

竹光で腹を斬る、肉体の想像を絶する痛み。
主家を取り潰され、取り潰した相手の前で悶絶する精神的な痛み。
武士として見下されている、心の痛み。
家で待っているであろう、残された病の妻と高熱を出している赤ん坊を心配する痛み。

全てが痛いんですよ、この映画。
見ちゃいられない。
そんな風に思わせる為に残酷さを知らせるために、この切腹シーンはこれほどまでに凄惨なのか。

介錯する側からすると、相手は切腹を盾に金品を要求した武士の風上にも置けない卑怯者。
罵倒していい。
何をしてもいい。
だって、自分たちは正しいのだから。

軽蔑して良い弱い相手を前にして、正しい側に立った者とはこうして、どんどん残酷になるのか。
普段はしないであろう残酷な面が、現れていく。
誰も止めてやろうと言わない。

こうして娘婿も、娘の美穂も、孫である赤ん坊も死んでしまった、浪人の半四郎に残された道。
それは命をかけて、武士のプライドを持って、井伊家へ斬りこむことだけだった。
主家を失って迷う浪人の苦しさ、悲しさ、屈辱が、人の痛みが、わからない相手への、いわば殴りこみ。

そして半四郎は言う。
お前たちが守る武士のプライドなど、切腹もできないお前たちのプライドなど、上辺だけのものにすぎないではないか。
切腹など、明日は我が身だとは思わぬか。

この半四郎の訴えは、勘解由にもわかっているんです。
流れ落ちる汗。
動揺する目が、それを語る。

だが、半四郎の言い分を認めてしまえば、それは井伊家の落ち度。
半四郎がこうして来た以上、討つしかない。
それが武士の面子というものか。

しかしそんな半四郎だって結局、武士を捨てられなかった。
采女のように、刀を竹光にできなかった。
あの竹光は、家族を守ろうとした采女の気持ちだった。
それで切腹させられた娘婿のため、半四郎は斬りこみをする。

だが、つまらないプライドにしがみついたことは、自分自身が一番わかっていた。
自分は刀を、家族のために竹光にできなかったのだから。
だからこそ、一介の浪人・半四郎は命をかけなければならない。
武士のプライドを捨ててまで娘たちを守ろうとした娘婿を嘲笑い、美穂さえも哂った立派なお家に斬りこまなければならない。

見直してないので、間違っているところもあるかもしれません。
もう見られないほど、痛い映画だけど、人には勧められないけど、すばらしい映画だと思います。
武士って、つらいのね。
そう思いました、はい。


娯楽の「暴れん坊将軍」で思い出した凄惨な映画

「暴れん坊将軍」を見ていたら、大名や旗本屋敷の玄関先を借りて切腹したいと言う男が出てきました。
大名や旗本の屋敷の玄関先で切腹したいと言うと、館では困るから金をやって追い払う。
男はこうして、日銭を稼ぐ。

そんな無頼の男だが、この男、実はかつてはとても正義感が強い男だった。
しかし勇気を持って不正を正そうとして、不義密通の濡れ衣を着せられそうになり、額を斬られた。
正義に絶望した男は脱藩し、江戸でこういう無頼の輩となり、お金を稼いでるのだった。

だがもって生まれた正義感は、生きていた。
再び、藩の不正に触れた男は立ち上がる。
それを見守り、ついに正義を貫かせる吉宗なのであった。

ストーリーとしては、こんな感じ。
大名や旗本屋敷で切腹したいと言うのは、ストーリーのごく一部のシーン。
吉宗の側用人・田之倉孫兵衛だけは、切腹を許すと言うので、男は逃げ出す。

これ、「一命」、元は「切腹」という映画ですね。
「暴れん坊将軍」のこの部分はとてもコミカルで、笑えるシーンだったのですが、この映画はとても笑えない。
笑えるシーンなんて、あったかな、というぐらいの映画。
私が見たのは、最近リメイクされた「一命」じゃなくて、元の「切腹」でした。

この映画、何と言っても切腹シーンが見ていて痛い。
映画は、すばらしい。
俳優さんもまた、すばらしい。
でも後味は決して、良くなかった。


大阪夏の陣から15年。
戦国の世は、やっと安定してきたが、主家が幕府の取り潰しにあった多くの武士が浪人となっていた。
この、生活に困った浪人の間で、切腹の場を借りたいと言って屋敷を回り、面倒を避けたい屋敷側からお金を貰って引き上げるタカリ行為が流行るようになる。

しかし、この映画に登場する浪人は、止められなかった。
庭先には死に装束が用意され、本当に切腹させられる。
しかも、男の刀は竹光になっていた。
男は、竹光で切腹させられることとなる。

…もう、書いているだけで痛い。
いや、痛いんですよ。
その長引く痛みがなんとなくでも想像つくから、たまらない。

この映画は別に後で書きたいと思いますが、体はもちろんのこと、精神の痛みも激痛なんですね。
竹光での切腹など、武士として、最大の侮辱。
切腹をネタにする卑怯者。
その男の刀は竹光。

なぜ、竹光なのか。
そこからわかる武士の意地、プライド。
どこまでそれは、本物なのか。

正義を理由にした、卑怯者への態度。
人はどこまで、残酷になれるのか。
凄惨な映画でした。
勧善懲悪な娯楽ドラマの「暴れん坊将軍」で、この凄惨な映画を思い出し、ちょっと複雑な気持ちになったのでした。


東京マラソン 「マラソンマン」

うっかり忘れていたけど、日曜日は東京マラソンの日だった。
自分は参加しないけど、見ているだけでも楽しい。
そういえば、ダスティン・ホフマン主演で「マラソンマン」という映画がありました。

ニューヨークで、アベベを尊敬する青年がマラソンの練習をしている。
その時、彼は事故を目撃した。
これがきっかけで彼は、とんでもない陰謀を知り、巻き込まれてしまう。
彼は逃げる。

マラソンランナーの彼は、走る。
走って逃げる。
マラソンの成果で、彼は逃げ切る。

見直してないからちゃんと書けないけど、そういう映画でした。
もっともっと走って逃げるのを追うのかと思ってましたが、思ったより、マラソンのシーンがなかったはず。
でも主演はダスティン・ホフマン。
彼が出てると、その熱演だけでも、見る価値あるという映画が多い。

彼を追い詰めるのもまた、名優・ローレンス・オリヴィエ。
何をやってもうまいから、怖い役やると怖い怖い。
そうしてこの怖い相手と組織から逃げ切った彼は、マラソンが大嫌いになるのだった!
…東京マラソンの天気が良くて、よかったと思う。


桜と梅とニワトリと

梅の木を見ていたら「梅折っていいですよ」「差し上げましょうか」と言われた。
おお、「桜斬るバカ 梅斬らぬバカ」とは言うけど。
桜の枝は素人が剪定すると、切り口から腐敗菌が入って木を腐らせてしまうとか。
だから斬らず伸びるに任せた桜は、美しく花を咲かせる。

さらに桜は、折ったところが腐ってしまう。
花見で酔っぱらって、桜の枝を折るのはいけないというのは、こういうことなんですわね。
桜を折る人を戒める、道徳的な意味もあるんでしょうが。

逆に梅の枝は、太い枝を切っても大丈夫らしい。
逆にきちんと剪定しないと、混み過ぎて花や実をつけなくなってしまう。
手入れの行き届いた梅は、見事な花を咲かせ、実をつける。

「桜斬るバカ 梅斬らぬバカ」とは、剪定の選択の大切なことを言うと教えられた。
「余計なことして、肝心なことをしない」という意味もあるらしい。
…なるほどと、うなづく。

自分も反省しよう、すぐ忘れるけど。
ニワトリか。
三歩歩いたら忘れる。

「酒なくて 何の己れが桜かな」。
花見に、酒が欠かせないということらしい。
梅は咲いてきた。
桜はまだかいな。


は~るよ、来いっ

♪も~すぐは~るですねえ♪
全然春じゃない、寒気団がやってきているのですが、早くも花粉は飛んでいる。
私は私の周りでは一番早く、花粉に反応するんです。
ぐずぐず、へくしょいやっていると、「おっ、花粉飛び始めたな」と言われる。

しかし、今回は若干、目がかゆいな、ぐらいで、まだそこまでは、いっていない。
ところが金曜日、最近一緒に仕事をやるようになった仲間に会ったところ、くしゃみ連発。
鼻ばっかりかんでいる。

もしかして、花粉症?!
「花粉、飛んでるよね」。
飛んでるどころか、私よりひどい。

小さい頃、春になると目がかゆいなあと思っていたけど、私はおそらくあの頃から花粉に反応していた。
思い返すと、幼稚園児の頃からだから、これはもう体質だったんだろうと思う。
だけど、だ~れも、世の中も医者も花粉症なんて言葉は知らなかった。

学生になると、どうも春になるといつまでも風邪が治らないなあと思っていた。
その頃でもまだ、花粉症なんて言葉はなかった。
思えば、クラスでくしゃみを何連発もしていたクラスメートがいたが、あの人も花粉症だったんだ。
花粉症なんて言葉が出てきたのは、これより、もうずっと後のことだ。

どうしたらいいですか?と医者に聞いたら、「外に出ない」と言われたことがある。
暮らしていけまへんが。
冬が珍しく寒く、長く、厳しかった今年は春を待ちわびている。

春は、やっぱりいいな。
ガーデニングが趣味の人はとにかく花が咲く春が一番好きな季節だと言う。
私も春は好きだし、梅、桃、桜と来ると気持ちが明るくなってくる。

しかし今年は何か、花粉に加えてえらい有害物質が、どこぞから流れてくるとか。
それに最近は夏と冬の間の春と秋が、どんどん短くなっている気がする。
花粉症の私だけど、この冬の後は春を存分に愛でたい。
♪は~るよ、来いっ♪


鬼同心・主水

「暴れん坊将軍VI」を見ていたら、闇の殺し屋がテーマの回がありました。
ここに出てくる殺し屋は、非道な集団。
その殺し屋に父親を殺され、ショックのあまり言葉を失った娘。
娘の面倒を見るうち、いつしか夫婦になった鬼同心。

本当は誰よりも優しく、正義感に溢れた同心は、娘の言葉を奪うことになった闇の殺し屋を憎んだ。
同心は一見、優しくたおやかに見える女の正体を見破り、追い詰めようとする。
その厳しい追及のため、同心は鬼同心と呼ばれるようになった。

だが徳田新之助こと、名君・吉宗は同心の心を見抜いた。
2人はやがて、友情で結ばれるが、闇の殺し屋は同心の妻を誘拐し、同心を刺し殺す。
怒りの吉宗は殺し屋とその背後にいる黒幕を暴き、成敗するのだった。


こんな感じのストーリーですが、この殺し屋の手口がまず、同心を殺すことになる女がかんざしで人の首筋を刺すんですね。
それから怪力で人の首の骨やら、あばらやらを折る殺し屋もいる。
首を絞める糸系というか、吊るし系の殺し屋もいる。

そして、鬼と呼ばれる同心、最後は殺し屋の手にかかって殺されるこの同心の名前が「主水」。
鬼同心役は、誠直也さん。
中村主水さんとは、イメージが違いましたけどね。

何かを意識してませんか!
意識して、狙って作ったでしょう!
いや、皮肉でも嫌味でもなく、遊んでると思う。

他の時代劇にも「必殺」は、いいネタを提供してると思います。
もう一人の主水。
いや、「暴れん坊将軍」版「主水」でした。


帰して

友人から仕事の話があると言われて、出かけていった私。
仕事の話だと言うが、ある立派なマンションに連れて行かれた。
オートロック。
まあ、最近はみんなそうだけど、中庭が立派だな。

そしてたどり着いたマンションで待っていたのは、感じの良さそうなご主人さん。
ニコニコしながら、コーヒーを淹れてくれる。
自分の職業についてお話してくれる。

普段の私には縁がなさそうな業界の人だなと思いながら、話を聞いて、私の方の話も聞いてくれる。
愛想のいい人、感じのいい人ではある。
そうして紹介したい仕事について、話が向かった。
この感じの良いご主人の口から出た単語を聞いて、瞬間思い浮かべたのは「マルチ?」という言葉だった。

しかし、これはマルチじゃない。
世間には誤解があるんだと、誤解が生まれた経緯を話し始める。
そしてマルチではない理由、この会社のシステムについて話し始める。

立派なテレビで、会社の会合のDVDを見せてくれる。
さらに、この会社のパーティやらなにやらに来る有名人、中には日本じゃないけど有名な政治家がいる。
そんな人が怪しい会社のために来ますか?と言う。

政治活動のためには来るだろう~。
この人たちは信用できるかもしれないが、この人たちの名前を出す人が信用できるかは別だろう~。
有名人を使って信用を得るって、それはおかしいだろう~。
そんな言葉が次々、胸に浮かぶ。

次にはこの会社の商品の説明。
どれほど体に良いもので作っているか、アレルギーやアトピーの人が大丈夫だったか。
市販のものが、どれほど体に悪いか。
宣伝や、中間に業者を入れることで、原価よりどれだけ高くなっているかを話す。

今度はこの会社の商品はちょっと高いが、その理由を話す。
要するに他の市販のものとは違い、宣伝費や中間業者が入っていない。
なので、高いけどそれは純粋に製品の品質なのだと説明する。

この会社の洗剤と、市販のものを比べるために、蓋のついた水入りのボトルを用意し、洗剤を水の中に入れる。
油をたらし、シャカシャカ振る。
市販のものが油を分解していないこと、この商品は分解してなおかつ水が澄んでいることを見せる。

次に歯磨き粉をアルミフォイルに塗り、市販のものがエナメル質を削っていること。
この会社の商品は削らないことを見せる。
次は化粧品…、とまあ、延々3時間。

お腹すいたよ。
8時過ぎたよ。
私はお腹がすいてきただけで、集中力が落ちる。
大体、この会社が怪しい会社じゃないってことがわかっていただけたのではないでしょうかと言われても。

そしてこの会社が貸してもらったホテルや会場が、とても良いところだと言う。
そんなところが怪しい会社に場所を提供しますか?と言う。
このご夫婦が成績が良くて招待されたという、旅行のDVDを見せてくれる。
ゴーカなフルコース、ゴーカなお部屋、飛行機はビジネスクラス。

さらにこの会社の人たちが利用しているホテルや、旅行について紹介した雑誌を見せる。
有名人の身内という人の名前が次々出てくる。
「この人は○○さんの弟さんのお嫁さん、この人は○○氏の旦那さんの妹さんで会社をやっている人」などなど。

そして少なくとも、この会社にかかわっている人の暮らしとかその人たちに興味を持ったのではと聞かれる。
いや、別に…。
人がどんなセレブな暮らししてても、私には関係ないし。

この会社の商品を買うには、カードを作ってもらうのだと言う。
来ましたね。
そこで安く買ってポイントを貯め、人に紹介した時に私にもポイントが入ると言う。

こうして良いものを人に勧めると、その人も幸せになるし、私にもポイントが入って、みんな幸せになるのだ。
それがこの会社のシステムなのだ、と言う。
ノルマもないし、マルチじゃない。
分配は上の人間だけにじゃない、みんなに来るんだから、下の人間が損をするなんてことはないと言う。

わかったわかった。
6時からもう9時半まで説明を聞いて、お腹もすいたし、時間も遅くなるので帰してくれ。
いや、マンションの一室だから、もしかしてこのカードを作るまで帰してもらえないのかっ?!
不安がふと、胸をよぎる。

だが、残念でした。
今日、私はお財布に笑ってしまうほどのお金しか入ってない。
社会人がそんなお金でどうしようというのだというほどしか、入ってない。
それで友人と会うなんて、一体お前は何を食べるつもりだったのかと責められてもしかたがないほどの金額しか入ってないのだー!

もはや集中力が切れて眠そうな私に、相手は一体私は何に興味があるのか、と聞く。
お料理ですか?
なら、今度の日曜日にはこの会社の、性能の良い、おいしく短時間で料理ができる鍋を使っての料理教室があると言う。

時間がないと言うと、時間というのは作らなければできないと言う。
作る気がないんですが、察してはいただけないんでしょーか。
それとも、そんなことはゆるさないんでしょーか。

私は今、会社に対して「そんなこと、相手があることなんだから無理でしょうに!相手が決めることでしょうが!」と思っていることがある。
だからそういう、相手のためを思っているようでいて、自分のためという、一方的なやり方はいい加減、嫌になっているところなんだよね。
何でアフターファイブにまで、そんなことされなきゃいけないんだ。
こうなるともー、絶対やるもんかという気になってくる。

今、9時半…。
このままうんと言わないと、一体何時間まで説得するんだろう。
10時になっても、11時になっても、12時近くになってもDVDを見せたり、雑誌を見せたりしているのだろうか。
朝までやるんだろうか。

すると、携帯電話が鳴った。
猫が騒いでしかたがないんで、早く帰ってこーい!と怒りの電話だった。
おお、天の助け。
猫よ、ありがとう。

これを機に、私は「帰ります」と言った。
じゃあ、3月の第一日曜にこういうイベントがあるから、ぜひと言われる。
はいはいと言って、玄関に行って、靴を履く。
もう二度とお会いすることはないでしょう。

友人が駅まで送ってくれる。
私に勧めた友人は、本当に良いものを勧めていると信じている。
だから余計、溝が深いと思った。
何だかとっても腹立たしく、哀しく、寂しくなった夜だった。


お雪さま 「暗闇仕留人」第7話

第7話、「食うて候」。


富士山から真夏に将軍様が食べる雪を運ぶ、「お雪さま」一行が走って行く。
雪が解けないうちに、運ばねばならない。
うっかり道を塞ぐと、一刀の元に無礼討ちとなる。

真夏の江戸はうだるような暑さで、中村家の井戸も枯れ気味。
井戸水さえ、ぬるま湯だ。
せんとりつは、貢があやに暑さは体に悪いだろうと箱根に連れ出したのを羨ましがり、妻思いの貢と主水と比べて嫌味を言う。
主水は梯子段を井戸に垂らし、井戸の中で過ごせばヒンヤリするのではないかと提案して、せんとりつを呆れさせる。

しかし、貢とあやが向かった宿では今夜はお雪の一行が来るということで、湯も沸かせなければ暖かい飯も用意されない。
お雪さまが溶けるというのだ。
部屋に戻ると、あやが役人に部屋から外を見下ろすなと言われたと話す。
貢も外を見ていると、女将があわてて止める。

将軍が夏に食べる雪を運ぶことは貢も知っているが、宿の湯も飯も炊かせないという話は聞いたことがない。
明日からは暑い昼間を避けて、夜に雪を運ぶと言う。
貢たちは冷たい夕食をとる。

しっかり主水はどろぼう市で小銭を稼いでいると、おきんがインチキな西洋の酒を売っていた。
だが、主水がやってくると集まっていた男たちは雲の子を散らすように逃げて行った。
おきんが文句を言っている時、大吉がやってきた。
半次はどこかと聞くと、長崎にネタを探しに行ったと言う。

旅先で半次に会ったという男が、何を間違ったか大吉に会いに来ているのだ。
大吉が同席して、おきんが男に聞いたところによると、男は藤沢宿で宿屋を営んでいた男だった。
藤沢宿の者がどれほど、あのお雪一行に泣かされているか、男は語り始めた。

去年はこの男の宿がお雪一行を泊める番になり、女房が部屋に通した。
その途端、一行の先頭を勤める米谷が屏風が逆さになっていると文句をつけた。
死人の部屋にお雪一行を通したと米谷は怒ったが、それは金と女を差し出すまで難癖をつけて許さない、米谷の手口だった。

女房のお咲は耐え切れず、舌を噛んで死んでしまった。
すると、お雪御用の宿から不浄の死人を出したと言って、男から取れるだけの金を取って行った。
だから男は報復の為に、短筒をここで買おうとしてやってきたのだった。
大吉とおきんは短筒を撃ったこともないのに無理だから、他人を頼んだほうが良いと勧める。

男は家も叩き売ってきた金だと言って、大金を出した。
短筒を手に入れて、米谷とその仲間の石田や山村を殺さなければ、一体何の為にこの1年、生きてきたのかわからない。
30両はあると見たおきんは短筒を売ろうとするが、大吉はおきんを外に連れ出す。

外から話を伺っていた主水は、半次が送ってきた短筒には弾丸がない。
そんなものを売って、万一の事があれば自分たちもタダではすまないと止めた。
しかし、お雪一行があれほどひどいとは思わなかった。
主水はおきんにあの男を何とか口説いて、1人頭10両の仕事にしようと言い、大吉と共にほくそえんだ。

その夜、貢とあやが泊まっている宿が騒がしくなった。
宿泊客の信助とおなつ夫婦の子の信吾が高熱を出したのだ。
貢が診たところ、まずい状態だということがわかる。
灯りをつけてくれと貢が言うと、信助はためらうが、貢の「人の命に関わることじゃありませんか」の言葉で、灯りだけはつけられた。

もしかしたら、胸を病んだかもしれない。
貢は湯を沸かしてほしいと言うが、灯りをつけただけで米谷たちは怒鳴り込んできた。
信助は石田や山村に湯を使わせてほしいと頼むが、お雪が熱気で溶けると米谷は許可しない。

貢はそれぐらいで溶けるなら、もう溶けているはずだと抗議した。
それに、お雪道中の間、灯りも火も使わせないなんて話は聞いたことがない。
しかし、お雪道中は全て、米谷が差配することになっていると言う。

宿の者も、何かあれば宿場全体が咎めを受けると言って、湯を出してくれない。
だが、湯を出す方法がないわけじゃないと、宿の主人は貢にそっと教える。
あの役人たちは口にこそ出さないがハッキリ、金を所望しているのだ。

貢がいかほどかと聞くと、どんなに安くても50両だと言う。
2年前までは、こんなことはなかった。
あの米谷、山村、石田がお雪道中の差配になってから、こんな無体が始まったのだ。

その時、あやが貢を呼びに来た。
子供の熱がひどくなった。
貢は熱さましの薬を渡し、一時ごとに飲ませるよう、そして手足をさするように言い、もう一度頼んでくると部屋を出る。
あやは貢の身の上がわかるのを怖れるが、何かせずにはいられない。

信助とおなつは、米谷に江戸に帰れば必ず金子は用意すると頭を下げた。
米谷は団扇で扇ぎながら、はした金で役目を棒に振るわけには行かないと断る。
命に代えても助けたいとおなつが訴えるが、米谷は命など貰っても何にもならないと言う。
「おなごの身なら、察しもつこう。金も要らぬ、命も要らぬ。その代わり、何を差し出せばよいかは、のう」。

おなつは意を決して米谷の下へ行こうとするが、信助が止める。
自分が何とかしようと言って、待つように指示すると、湯の元へ走る。
止めていた詮を開き、湯が流れ込んでいく。
しかし、その時、おなつは既に米谷の寝所に向かっていた。

湯が流れてくる。
信助は徳利を手に取ると、流れてくる湯を汲もうとした。
宿の者たちは仰天して、「おやめください」と止めた。

山村と石田が飛んで来て、「おのれ!」と信助を斬った。
徳利が落ちて割れ、湯が飛び散る。
貢とあやが宿からそれを見ている。
あやが「あなた」と貢を押し留める。

貢の目が怒りに燃える。
その時、おなつが「あなた、信吾が!信吾が!」と呼ぶ声がした。
しかし、信助は湯を頭に浴びたまま、倒れていた。

結局、信助も信吾も死んでしまった。
おなつは貢のおかげでほんのわずかな間であっても、命を永らえることができたと貢とあやに礼を言う。
でもあの役人たちは人でなしだ。

「鬼のようなことをしながら、何のお咎めもなく済まされるなんて」と、おなつは忍び泣いた。
あやに貢は、おなつにこれ以上不幸なことが起こらないように、江戸まで送ってくれないかと頼んだ。
貢は米谷たちに顔を見られすぎたので、先に1人で出る。

あやに気分が悪くなったらすぐに休むように言って、貢は宿を出る。
夜になり、暑い昼を避けた米谷たちが「出立」と言って宿を出て行く。
おなつが号泣する。

その頃、主水は大吉にお雪を運ぶ箱の仕組みを教えていた。
箱におがくずを詰め、木炭と塩で壁を作り、囲む。
その中に雪を入れ、さらにまた中に箱を作り、その中に将軍が食べる雪を詰める。
あの男は女房の命日があさってだから、その日までにやってくれないと金は払わないと言っているから、主水と大吉は六郷まで出張っていくことにする。

お雪道中は途中で運び手を交代しながら、夜明け前に次の宿まで走る。
その道中を貢が見つめる。
貢は影のように、道中を追っていく。

ひっそりとした昼間の宿場町に貢は到着した。
確かにお雪道中がいることを確かめる。
主水と大吉も、お雪道中を途中で捕えようと出かけていた。

おきんはおきんで、お雪道中を追う男を追いかけながら、金を払うように口説いていた。
だが、男は騙されるのではないかと危惧し、おきんを信用しない。
お雪道中は藤沢宿を出発し、戸塚、保土ヶ谷、神奈川と進んでいく。

夜に川崎に到着した米谷を、影から貢が見つめる。
「お雪、ご到着」の声がして、「灯りを消せ」という声がした。
本陣に着いた米谷を貢が見ていたが、突然肩を叩かれ、バチを抜いて振り向く。

「糸さん」。
そこにいたのは大吉だった。
「何だよ…」。
「何だってこんなところへ?まさか、あの役人どもを」。

「そっちこそ、何だってこんなとこにいるんだい」。
「たぶん、同じ穴の狢だろうぜ」。
大吉によると、お雪道中はしばらく休憩した後、これから渡し場へ行く。

渡し場には案内役に化けた主水がいた。
向こう岸に江戸までの護衛と人足が待ってると言うと、米谷は川崎宿の者は同席は許されないと言って、返した。
船に乗った米谷と山村、石田は笑いあった。
だが、船が出ない。

「どうした、船を出せ!」
「へえい」と低い声がして、胡桃が鳴った。
「船は出ねえぜ」。

山村が刀を抜くと、大吉が押さえつけ、刀を藁に刺す。
米谷と石田が外に逃げ出す。
山村が小刀を抜いて再びかかってくるが、大吉は押さえつけ、心臓をつかむ。

船着場を逃げていく米谷の前に、貢が現れた。
石田は船着場を離れて、川の中を走る。
だが行く手には主水がいた。
主水に向かって斬りかかるが、主水は後ろ手に石田を刺し、さらに前から斬り捨てる。

米谷は船着場を逆に逃げ、貢が追う。
刀を抜いて斬りかかってくるが、貢は抑えた。
米谷が力で貢を突き飛ばし、刀を振り下ろす。

貢はバチで受けた。
バチがバラバラになり、芯の針が残った。
貢は針で刀を受け続けると、米谷の額を刺した。
米谷が川へ落ちる。

頼み人の男が走ってくる。
誰もいない。
男の目には、大吉がこいだ舟が、お雪と主水と貢が乗せて遠ざかっていくのが映った。

翌朝、主水と大吉と貢が待っているところに、おきんが走ってきた。
おきんは撒かれたのと言って涙ぐんだが、主水と大吉は仕事は終わってしまったと怒る。
手を上げて拝む形になったおきんは、箱を見て「何あれ?お雪さん?!」と声をあげた。

大吉がお雪の箱を開けると、雪に包まれて又1つ、箱が見えた。
箱を取り出してあけると、おきんが「わっ」と歓声を上げる。
仕留人たちが手を伸ばし、お雪をさらう。
貢も大吉も主水も、おきんもお雪を手にして食べ始める。

主水が「今度の仕事は、一文にもならなかったなあ」とぼやく。
だがおきんが「だけどさあ、おかげでお雪さんにありつけたじゃない。こりゃ千両の値打ちだよ、将軍の上前はねたんだからね!」と言う。
貢がうなづく。

大吉が「しかし何だな、こいつは蜜かなんかかけたほうがうめえんじゃねえのかな」と言い出す。
貢が「うん、甘く煮たあずきも合うんじゃないかね」と返事をする。
笑った大吉の懐に、おきんが雪を入れると、大吉が冷たさに「わっ」と言って立ち上がろうとする。



「からくり人」では、「佐渡からお中元をどうぞ」で真夏に将軍様が食べるお氷さま道中が描かれます。
ここで描かれるのは、真夏に将軍様が食べる雪のお雪さま道中。
冷凍技術がない時代に氷だの雪だのを食べる、真夏の最上級の贅沢ですね。
貢が避暑に向かった箱根で、その為の悲劇が起きる。

まず、この宿屋にお雪が到着すると言うことで、火が使えない。
だからご飯も冷たいし、おかずも冷たいし、お茶まで冷たい。
貢がひどいことになっちゃったとあやに謝り、あやはしかたありませんわと言うけど、これが主水だったら…。
せんとりつに、とんでもなく怒られることでしょう。

そして、泊り客の子供が病気になる。
蘭学者らしく、貢が病状を診てやる。
薬をやる。
しかし、灯りもともせない中では、湯も起こせず、どうにもできない。

やがて事態は、最悪の結末を迎える。
さらに夫まで斬り殺される。
バカンスの悲劇は、いつの時代でも悲惨で哀しい。

おなつにこれ以上、悲劇が起こらないよう、貢があやと一緒に帰す。
それは貢がお雪道中を追う為に、あやを返す理由でもあった。
相手はスピードが命で夏の街道を突っ走るので、貢は当然、裏道を行ってるんでしょうね。

この貢の追跡と、江戸で3人で仕事をしてたんまり儲けようとたくらんだ主水と大吉の道中が重なる展開が見事。
お雪を運ぶ荷車の車が回り、地図が進んでいく演出。
そこに流れる、仕留人のオープニングのBGM。
上手い演出。

お雪道中の後をつける貢は、まるで狼が得物を付け狙ってついていくよう。
裏稼業の人らしくない貢だけど、目の当たりにした役人の横暴が許せない。
だから殺意を持ってつける。
そこが既に、普通の人の感覚ではない。

だけど自分を、高野長英を思った権力側のああいう人間は、貢も恨んでいるからかもしれない。
しかし、主水と大吉は仕事だけど、貢は私情で追っている。
おなつが頼んだわけじゃない。
ここがまだ、徹底した裏の人間じゃないところ。

おきんが珍しく、依頼人から金をとりはぐれる。
大吉が船をこいでいたから、大吉の顔は見えなくて、大吉だということはわからなかっただろう。
復讐しようとしたら相手は殺されていた。
顔を上げると、お雪を乗せて船が離れていく。

そこのは役人の姿をした男と、黒ずくめで笠を目深にかぶった男が並んで、夜の川を遠ざかっていく。
これを見たら、得体の知れない怖さを感じませんでしたかねえ。
プロの殺し屋とは、こういう風に見事に人を殺すものなんだと。
お金払わなくておきんから逃げてきたけど、これ、相手が殺されてるのを見たら、怖くないだろうか。

仕留め仕事では、貢がバチで刀を受け止めて、バチが粉々になる。
芯だけが残ったと思ったら、それを針にしてトドメを刺す。
梅安さんと、おりくさんの、両方見ちゃった気分で、貢はいろんなことしてくれる。

確かに通常の仕留め料はもらえなかったけど、絶対に食べられなかった真夏の雪を食べた。
将軍の上前はねたということに、貢も満足そう。
雪を食べた主水が「うう~、来た~」と首の後ろを叩いているのが、リアルでおかしい。

「蜜かなんかかけたほうがうまいんじゃないか」という大吉、それはカキ氷。
でもうまいとこ、ついてる。
「甘く煮たあずきなんかも、あうんじゃないか」という貢、それもカキ氷。
でもうまいとこ、ついてる。

ラストは、「仕置人」のBGMでもあり、まるで「仕置人」でやりそうな明るいラスト。
おきんが大吉の懐に雪を入れて、大吉が冷たさに立ち上がっちゃうのが楽しい。
半次が見たら、食べたがっただろうな。


レーザー登場? 「必殺仕事人2013」ちらっと見

「必殺仕事人2013」が昨夜、放送されました。
しかし!
最初の方が見られなかったので、もう録画して別の機会に一気に見ることにしました。
と言いつつ、ちらちら見てたんですけどね。

中村獅堂さんの演じる仕事人の指先が赤く光り、レーザーポインターのように相手を照らす。
おおっ、これは京極夏彦氏原作でWOWOWで映像化され、田辺誠一さんが演じた「怪」の御行の又市の技では?!
あれはもう、「必殺だ!」って思いましたからね。
又市たちの出陣シーンで、「これは必殺シリーズなんだ!」って確信してしまいました。

「怪」での又市は標的に向かって指先を向けると、指先が赤く光る。
そこから発せられたレーザーポインターの光に、標的が捕らえられる。
ポイントが当てられた額に向かって、又市が指を刺す。
グキリという音がして、相手が倒れる。

この指がまるで額にめり込んでいるように見える、影の映像もありました。
うーん、これは指が刺さっているというより、相手のツボ、秘孔を突いているという方が正しいんでしょうね?
とりあえず、「必殺」の新作が作られるということがうれしい。
時代劇の大御所俳優が悪役というパターンが続きますが、これで行くと次はどなたでしょう。

「暴れん坊将軍」松平健さん?
北大路欣也さん?
中村敦夫さんとか、山崎努さんだったらすごい。
林与一さんなんかもありそう。

だけど、悪女の登場も期待したい。
悪女だとしたら、ジュディ・オングさんや、西崎緑さん?
まさか鮎川いずみさんというわけには…。
考えるだけで、楽しい。