こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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一筆啓上松平右近が見えた

時代劇専門チャンネルで、里見浩太朗さん主演の「松平右近事件帳」も見てます。
第11代将軍・徳川家斉の弟、松平右近。
つまり、将軍の御落胤です。
これが里見浩太朗さん。

ところがこの右近、将軍の弟という身分を捨てて、浮世小路の藪太郎と名乗る、町医者となった。
奉行所の捜査だけでは解決できない事件が起きると、右近が活躍。
右近の右腕は、老中・青山下野守の隠密で、よろずやを営む清太郎。

老中・青山は、芦田伸介さん。
清太郎は、松山英太郎さん。
悪党と対峙した時の決めセリフは、「俺は殺生はきれえだ。だが、はむかう奴ぁ容赦しねえ!」です。

なかなかこれはこれで、楽しく見てます。
そこで先日見た、第19話「生きていた夫」。
話は、お盆。
ある大店の主人は、弟と商売での旅先で死んだ。

だが、迎え火の焚かれる中、この未亡人は死んだはずの夫の存在をあちこちで感じるようになる。
もしかして、夫は生きているのでは?
やがてこの話には右近が関わって、怖ろしい事実が発覚していく。

結論から言うと、この夫は弟に殺されていたんですね。
弟はお店の跡継ぎの座もほしかったけど、兄嫁が好きだったんです。
兄を殺したのは、弟の雇った浪人たち。
この浪人たちが弟から金を手に入れるために、兄が生きているように見せかけ、みんなを怯えさせていたわけです。

さらにこの浪人たちは、兄の子を誘拐。
荒れ寺に呼び出します。
そこで弟は自業自得のように、浪人たちの刃にかかって落命します。
でもこのあとは右近が、浪人たちを始末します。

この回、見ていて、あれ?と思いました。
旅先で殺された大店の主人。
殺したのは、弟。
弟は跡継ぎの座も手に入れたかったが、何よりも兄嫁が好きだった。

時は、お盆。
位牌を前に、弟が兄嫁に「姉さん!好きなんだよ!」と迫る。
あれ、これ、「仕置屋稼業」の6話「一筆啓上怨霊が見えた」を思い出すな、と思いました。

さて、弟に迫られた兄嫁ですが、松平右近はお女中が呼びに来て、危機一髪、逃れる。
しかし、「仕置屋稼業」はダメ。
この辺りは「必殺」の特長が出ますね。

そして一味の浪人に誘拐される、兄の子供。
場所は荒れた寺。
助けに走るのは、町医者右近を慕う梅吉、演じるは渡辺篤史さん。
何と、「仕置屋」では子供の元へ走るのは、同じ渡辺さん演じる捨三。

クライマックス、松平右近は浪人たちを斬り、弟は浪人に斬られて死んでしまう。
「仕置屋稼業」のクライマックスは当然、弟と浪人の仕置。
人殺しが出た店とあっては、兄嫁もその子も路頭に迷うはめになる。
傷ひとつつけずに、自然死のように見せかけて葬るのは、市松にしかできない。

そこで、弟を葬るのは市松の竹串の鮮やかな技。
この後は精霊流しにその竹串を乗せて送る、粋な場面があります。
「仕置屋稼業」は父親の供養を1人、竹串を削って供える市松とか、それぞれのお盆も描かれ、季節感満点の回でもあります。

ラストは、送り火を焚いて、涙で見送る兄嫁。
子供は無邪気に、父親が帰ってくるのかと聞くところも似ている。
違う場面もたくさんあるんですけどね。

渡辺篤史さんは、「仕置屋」を思い出したりしなかったのかなと思いました。
それとも、これはちょっとした遊びで、渡辺さんも楽しくやったのかな、とか。
でも松平右近は1982年、「仕置屋稼業」は1976年なので忘れていたかもしれませんね。
見ている作品に、自分が知っている別の作品の影みたいなものを感じるのもまた、楽しいものです。


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リアルタイムで見るカリスマ プーチン大統領

ロシアを訪問している安倍総理と、プーチン大統領の共同記者会見を見ました。
プーチンって、カリスマだと思う。
それもそのはず、だってこんなにすごいんだもの。





プーチン大統領から送られたシベリア猫は、検疫所で180日過ごしたそうです。
子猫はすっかり、成長した…、って、その180日は、かわいい時期だったんだろうな~。
ちょっとそこが残念。



そういえば、プーチン大統領がヒョウの檻の前にいて、ヒョウがいきなりガンッ!とプーチン大統領の手元に突進した画像を見たことがあります。
誰だって反射的に手を引っ込める、体を後ろに避けると思うんだけど、プーチン大統領は微動もしなかった…。
コノヒト、スゴイ…。



日本の秋田県知事から送られた「ゆめ」ちゃんと、戯れるプーチン大統領。
ああ、ゆめちゃん、幸せなんだ。
大統領、大切にしてくれてるんだ。
良かった!



犬たちが、プーチン大統領を信頼しきってる。
いい光景ですね。


見つめ続ける 「新宿の目」

新宿の西口へ、高層ビルに向かって久しぶりに歩いて行って見ました。
「新宿の目」。
これは、私が新宿に買い物や遊びに行く年齢になった頃にはもう、ありました。

スバルビルというビルの、地下なんですね、これは。
1階じゃない、地下1階にある巨大なオブジェ。
西口に下りて、都庁方面に向かって歩いていくとあるんです。
見た時、あー、これ、まだあったんだ!とうれしくなりました。



1969年の作品なんですね。
宮下芳子さんという方の作品。
怪物のようなエネルギーを持つ街・新宿。
成長していく日本のエネルギーと、それを体現している新宿。

そこに作られた、時代を見つめる目。
いやー、あまだってうれしい。
実際にこの「目」は時代を、変わる新宿を見つめていた。

高校生の時、あの場所に、ああいうカッコで行く私も見ていた。
その後、あの場所に、あんなカッコで行った私も見ていた。
今、こんなカッコで歩いていく私も見ている。

そう思うと、何だか愛しい。
これからも、見ていてもらいたいものです。
どこ歩いている人も見つめられている気になる、不思議なオブジェ。
スバルビルさん、こんな芸術を見せてくれて、ありがとー!


悪意に形が与えられた時、人は犯罪に走る 「留守宅の事件」

松本清張原作「留守宅の事件」を、見ました。
これは以前、私の好きな余貴美子さんが、このドラマに出演したことがあると思います。
以下、全部ネタバレしてます。
ご注意ください。


冒頭、暴れる犯人を取り押さえようとする刑事たち。
この暴れている犯人は、平凡な男だった。
親友の保証人となり、その親友が失踪したため、背負いきれないような借金が彼の肩にのしかかった。
彼は男気を見せたため、破滅した。

そして彼は飲み屋の主人を、殴り殺した。
きっかけは、たまっている飲み代を請求されたことだった。
飲み屋の主人には、何の恨みもなかった。
彼が持っていた親友への怒りが、形を変えて飲み屋の主人に向かっただけだった。

そう。
誰でも、一つや二つ、不満や怒り、悪意を抱えて生きている。
多くの場合、人は自らの悪意に気づかない。
しかし、何かのきっかけで、その悪意に形が与えられた時、犯罪が生まれる…。

男が振り回した鉄パイプが、若い刑事の口元に当たった。
若い刑事の口の中が切れ、血が流れる。
その途端、若い刑事の怒りに火がつき、男は殴り飛ばされる。

男は逮捕されたが、主人公の定年間近の老刑事は怒る。
それは若い刑事が、自分の怒りで犯人を殴りつけたからだった。
男が落とした上着の中に、家族の写真があった。

子供2人と、妻と、そしてこの男が写っていた。
笑っていた。
普通の男だった。
家族がいた。

老刑事は上着を、男にかけてやる。
「大事なものがあるだろう?」
目を血走らせ、鉄パイプを振り回していた男の顔がゆがんだ…。

定年間近の石子刑事は、新人の槙原刑事と組んでいる。
ある夜、瀟洒な住宅で、誕生日パーティが開かれていた。
パーティが開かれていたのは、栗山夫妻の家で、妻の恭子の誕生日だった。

出席者は、恭子の妹・高瀬昌子とその夫と子供。
恭子の夫の敏夫の親友の荻野光治とその妻、あさみ。
全員は笑顔で写真に収まったが、それぞれの表情は良く見ると微妙なものであった。

栗山敏夫が出張から帰ると、妻の恭子の姿がない。
妹の昌子が心配してやって来る。
暖房の効きが悪く、部屋の中は寒かった。
昌子は石油ストーブを使おうと、石油を補給しに外に出る。

ふと、物置が目に留まる。
なぜか、不吉な予感がする。
恐る恐る開いた物置の戸の向こうには、姉の恭子の、赤いガウンを着た絞殺死体があった。

石子たちがやってきて調査したところ、敏夫が出張に行っている留守宅を狙った事件であると思われた。
明日から有給をとって沖縄旅行に行くつもりだった槙原だが、田中刑事に叱られてふてくされる。
刑事は、プライベートがないというのか。
自分は進路を誤った…。

叱り飛ばされた槙原が聞き込みをしてきたところ、栗山の家から男が出てきたのを目撃した近所の住民がいた。
住民に写真を見せると、その男は荻野だった。
留守宅に荻野がやってくるということは、荻野と恭子はただならぬ関係だったということだ。
そういえば、例の写真で恭子を見る荻野の妻の目は、鋭かった。

石子が荻野の家に行くと、荻野は携帯電話も置いて、家にはもどっていなかった。
妻の応対は冷たく、夫婦の仲は崩壊していることがわかる。
事件のある直前、敏夫は荻野の家を訪ねており、その際に敏夫が出張で家には恭子しかいないことを荻野は知っていた。
疑いは一気に、荻野にかかる。

やがて、荻野は逮捕された。
取調べで荻野は、恭子に誘惑され、関係が始まったことは認めた。
恭子は海が見えるあるホテルがお気に入りで、2人はいつもそこで密会をしていた。

しかし、恭子は荻野に別れを切り出した。
その態度から、荻野は恭子は荻野も、夫の敏夫も適当にあしらっていることに気づく。
したたかな女だとわかった荻野は、関係を終わりにしたはずだった。
だが敏夫が留守だと知ると、荻野はもう一度、恭子に会いに行った。

何度、インターフォンを押しても恭子は出なかった。
なのに、窓には明かりがともっている。
居留守を使っていると思った荻野は頭に血が上り、鍵をこじあけ、侵入したが、恭子はいなかった。
恭子がこんなにもきちんと片づけをしていることが意外なほど、部屋の中は片付いていた。

荻野は不法侵入は認めたが、恭子は殺害していないと主張した。
槙原は荻野が犯人と確信していたが、石子は否定した。
なぜなら、荻野は恭子に会いに行き、しかも頭に血が上った状態だったのに、恭子に暴行を加えていない。

さらには、荻野の指紋は荻野が侵入した場所にはあったが、恭子の遺体が置かれていた物置にはなかった。
布か何か使って、物置を開けたのだろうと槙原は言うが、それならばなぜ、他の場所には指紋を残したのか。
物置には、妹の昌子の指紋しかなかった。

敏夫が恭子の遺品を整理し、たくさん買い与えていた宝石を妹の昌子に渡そうとする。
それは敏夫が恭子を甘やかしていた証明でも、あった。
恭子は自分のために料理をし、洗濯をしていたのだからと言う敏夫だが、昌子は主婦ならば当たり前にやることだと言う。
敏夫は結婚指輪だけあれば良いと言ったが、昌子は結局、姉の宝石はひとつ以外はもらわずに帰った。

しかし、遺品の中に誕生日パーティの夜に着ていた、姉のお気に入りのワンピースがなかった。
それは昌子が気に入っていたのに、姉が先に試着し、買ってしまったものだったから、昌子は覚えていたのだ。
姉はいつも、そうだった。
昌子もまた、姉に対してわだかまりを持っていた。

それを聞いた石子は、クリーニング店を回った。
槙原はワンピースなど、何の意味もないと言う。
すると石子は、槙原にとって捜査は何だと問う。

めんどうくさいのか。
だが、自分たちの捜査が、被害者、被害者家族、容疑者と容疑者家族の一生を左右するのだ。
よく考えろと言われて、槙原は部屋に残される。

やってきた部長が、石子は同期の出世頭であったことを教える。
しかしある事件で、石子が犯人だと確信した男が、裁判の直前で自殺した。
その直後、真犯人が発覚した。

石子は一時は、警察を辞めることを考えた。
結局、石子は刑事を辞めなかった。
辞めることは簡単だった。
石子は刑事を辞めず、彼のような人間を作らないことで償っていく道を選んだのだ。

それを聞いた槙原は、石子が飲んでいる小料理屋に走る。
酒を2人前頼む。
石子は槙原の酌を受け入れ、槙原はまた聞き込みに行くと言った。

再度の調査の結果、出張中の敏夫にアリバイのない時間があることがわかった。
同行していた部下だが、家が浦和のため、新幹線が大宮に到着した時点で敏夫を置いて降りていた。
石子は考えた。
恭子が留守宅で殺されたのではなく、別の場所で殺されて運ばれたのではないか?

昌子が言っていた。
姉は、1千万もする車を買ってもらって運転していた。
石子は槙原に、高速道路の料金所に設置されている監視カメラ「Nシステム」を調べるように言う。

その日、石子は敏夫に会いに行った。
仕事を辞めてしまった敏夫は公園でベンチに座って、石子の話を聞いた。
「Nシステム」には、恭子を横に乗せ、運転する敏夫が映っていた。
それを聞いた敏夫は、語り始めた。

石子の推理どおり、敏夫は1日早く出張が終わり、自由な時間ができたと言って恭子を呼び出した。
恭子好みの店があると言われ、恭子はやってきた。
途中、敏夫は恭子と合流し、敏夫が運転した。
恭子はあのワンピースを着てきた。

雪深い場所で車を止めると、恭子はいぶかしげだった。
敏夫が恭子の不貞を知ったのは、会社に送られて来た恭子と荻野の密会写真からだった。
本当は何度も、恭子に問いただそうと思ったが、恭子の笑顔を前にすると敏夫は聞けなかった。

昌子は、敏夫は恭子を理想化していると言った。
確かにそうだった。
だが今、不貞を問いただした時の恭子の態度は、敏夫の気持ちを砕いた。

恭子は敏夫も、荻野も愛してはいない。
敏夫と結婚したのはただ、敏夫が恭子を自由にさせてくれる男だったからだ。
恭子は敏夫にかけている1億円の保険だって、最低限の保障だと言った。

敏夫はとっさに、恭子の首を絞めた。
驚愕の表情を浮かべ、やがて恭子は動かなくなった。
敏夫は恭子を車のトランクに入れ、出張のために借りていた駐車場に置いた。

3日経ち、敏夫は部下と離れた時、車を動かして恭子の遺体とともに帰ってきた。
車のトランクに入れていたため、恭子のワンピースは汚れた。
敏夫は恭子をガウンに着替えさせ、物置に入れた。

知りたくなかった妻の不貞、正体。
写真さえなかったら、知らなくて済んだ。
あの写真で、敏夫の妻への殺意がわいた。

荻野は妻から離婚され、敏夫は恭子を殺害した犯人として逮捕された。
あの写真が、全てを引き起こした。
敏夫逮捕の報を昌子に知らせた石子は、あの写真を送ったのは昌子であることを指摘した。

いつもいつも、自分のほしい物をアッサリ手に入れてしまう姉。
姉への嫉妬、憎しみ。
人はひとつぐらい、悪意を持っている。
だが、それが何かのきっかけで形になったとき、犯罪が起きる。

妹は姉の密会を目撃してしまった。
幼い頃より、自分のほしいものをちゃっかり横から手に入れるような姉。
自分より、恵まれた生活を自由に送っているような姉。

妹はとっさに写真を撮り、義兄に送った。
それが犯罪に結びついてしまった。
昌子は、泣いた。
背後で無邪気に、夫が子供と遊んでいた。



松本清張原作のドラマは、一応見てしまいます。
当然、原作は携帯電話やパソコンがない時代の犯罪なのですが、うまく現代に持ってきて作っている。
原作で敏夫が犯行時刻に恭子と会っていたことを証明する決め手になった証拠は「Nシステム」じゃなくて、妻を呼び出す電話を旅館の仲居さんが聞いていた…証言じゃなかったかな?
松本清張原作は、時代をこうやって現代に移しても作りたい作品なんでしょうね。

もちろん、その時代のまま、作る作品もある。
いろんな形にしても、作りたい原作なんだなと、清張ものを見るたび思います。
それはよく言われるように、利用する道具は違っても、その根本の人間の感情は共通だからでしょう。
人を犯罪に走らせる動機となる、感情。

今回は冒頭に出てきた言葉がキーワードであり、このキーワードは現在にも生きているから、すんなりと話に入っていける。
誰でも、一つや二つ、不満や怒り、悪意を抱えて生きている。
だが多くの場合、人はその悪意を現実に行動に移すようなことはしない。
でも何かのきっかけで、その悪意に形が与えられた時、人は犯罪に走る、と。

これは犯人になってしまった夫の敏夫のことでもあり、荻野のことでもある。
昌子は、犯罪を起こそうとは思わなかった。
でも、ずっとずっと持っていた姉へのわだかまりが密会を目撃したことで、姉への悪意を行動に移してしまった。

しかし結局、悪意を行動に移したところで、誰も幸せにはならない。
妹は姉に対する憎しみを晴らして、幸せになっただろうか。
いや、これからは自分がやったことによって犯罪が起きてしまったことで、一生、深い後悔と悲しみを背負って生きていくに違いない。

姉は、伊藤裕子さん。
妹は、戸田菜穂さん。
どちらかというと、戸田さんの方が年上に見えるんですが、そこは浮世のつらさを味あわずに遊んでいる姉は若く見えるということですか。
戸田さんは演技力はあるし、伊藤さんも自分の華やかな特長を生かした役でした。

妹はもしかしたら、義兄のことも好きだったのかな…?と思わせるところがありました。
でも幼い頃からの「癖」で、姉が義兄をかっさらった…、というようなところがあったのかな、と。
そんな、描かれていないところまで想像させてくれました。

敏夫役は、野村宏伸さん。
若い頃は美青年でしたが、この役はうまかったと思います。
刑事役は、若い槙原が柄本祐さん。
なかなか、演技派でこれからも期待されます。

石子刑事は、寺尾聡さん。
若い頃から渋い人でしたが、今、実年齢が渋さに追いついた感じがします。
影を背負って刑事をやっているところが、容貌にぴったりでした。
石子の奥さん役が、高橋恵子さん。

最後に、沖縄旅行にいけなくてくさっていた槙原が、階段をあがっていく石子に挨拶をする。
石子が、自分のマフラーを槙原にやる。
槙原の顔が輝く。

それは、石子に一人前の刑事として認められたといううれしさ。
もう、槙原は旅行に行けないからといって、くさることもしないだろう。
面倒に捜査をやりすごすこともないだろう。
進路を間違えたと、こぼすこともない。

1人の刑事が成長し、階段を駆け上がっていく。
荻野を追った時、槙原が捕らえた。
自分はもう、ついていけなかった。

定年の刑事は今度は自分を奮い立たせるように、階段を登っていく。
いいコンビだなと思いました。
松本清張ものの、うまくアレンジされているドラマを見るのは楽しいです。
冒頭の、平凡な男が犯罪に走る様は、男と家族のこれからを思うと哀れでした…。


柳ジョージ&レイニーウッド 「Weeping in the rain 雨に泣いてる…」

たまに、ものすごく聴きたくなる。



あの時代の空気がいっぱい。
しかし、雨はキライだ。


くちなしの白い花 「右門捕物帖」

右門捕物帖ですが、主人公の右門は同心。
ですから、武家相手ではやれることが限られてきます。
そういう「壁」にぶつかる話も、出てきます。

右門の後輩に当たる若い同心は、子供の頃、父親を辻斬りで失っている。
そのせいか、悪人に対して憎悪を燃やし、取調べの拷問もきつい。
右門に対抗意識一杯の、あばたの敬四郎も恐れをなすほど。

ある日、起きた殺人事件でこの若い同心は容疑者を捕まえ、白状させる。
だが右門は、当てにならないと言う。
人は誰でもああすれば「白状」する。
反発する青年に、右門は別の男に自白させると言った。

右門の厳しい取調べに、ついにその男は自白した。
そのように、人は自白に追い込まれるのだ。
だが右門の白状させた男は、確かにその事件の片棒を担いでいた。
真犯人は普段からの遊び仲間の、旗本の息子の屋敷に逃げ込んでいたのだ。

旗本が相手では、手が出せない。
いきり立つ若い同心は、その旗本の息子の印籠を見た。
その印籠は、辻斬りにあった父のそばに落ちていたものと同じ家紋だった。
この息子と取り巻きが、面白半分に人を斬っていたのだ。

右門が止めるのも聞かず、青年は暴走し、旗本屋敷で惨殺される。
遺体を引き取れと笑う旗本の息子と取り巻きに、右門は怒りに燃えながらも遺体を引き取った。
バカ息子たちはわからなかったが、父親の、元奉行まで勤めた男は事の重大さに気づいた。
こんなことが目付筋にわかったら、三河以来のこの家は取り潰しに合う。

父親は息子を叱り飛ばし、側近の1人に暇をやった。
追い出される側近を、右門が待ち構えていた。
旗本屋敷の家来でもなんでもない、一介の浪人であればしょっ引くのも自由だ。
側近は息子に泣きついたが、必ず自分が跡目を継げば迎えに行くと言っていた息子は屋敷に逃げ込んだ。

パニックを起こした側近は、屋敷に乱入。
それを追って右門も屋敷に入る。
右門を、家来たちが取り囲む。
敬四郎たちも、右門とともに死ぬ覚悟でやってくる。

その様子を見た父親は息子に向かって、見苦しいと一喝。
尋常に勝負をしろと言う父親にやむなく従った息子は、右門に一刀の元に斬り伏せられる。
お咎めを覚悟した右門だが、父親は当方に不浄役人に斬り捨てられる様な息子はいないと言い放った。

家来たちは泣いた。
だが、右門に手出しはならない。
今度は自分たちが路頭に迷うことになるからだ。
父親の去っていく後姿に、右門は深く礼をする。

若い同心には、姉がいた。
同心の暴走を危惧した右門に向かって、「あなたのような犬にはなりたくない」とまで言った姉。
弟の仇を討ってくれた右門に、今、姉もまた、深く礼をする。
くちなしの花を見た右門は、その白い穢れない花に、青年を重ねて偲ぶ。



若い同心は、志垣太郎さん。
きっとこの青年は、立派な同心だった父を殺されて、憎しみを燃やして生きてきたんだろうな。
そんな目つきをしてます。

また、その危うさが悲劇を予感させます。
見ているこちらが予感してしまうんだから、右門にはその危険がわかっていた。
ああ、やっぱり…という感じに、めった斬りにされる青年。

嘲笑う旗本の息子は、何と、蜷川幸雄さんです。
バカ息子振りが、すばらしい。
最期は目を見開いて、間抜けとも思える表情で斬られてます。
父親じゃなくても、こりゃ情けない。

この父親がまた、立派。
息子の不祥事を隠蔽するのに奔走するかと思ったら、潔く斬られて果てる道を選ばせる。
さらに不浄役人に斬られるような息子はいないと、息子を無縁仏にするまで筋を通す。

当然、右門たちは不問。
早々に立ち去れと言って、引っ込む。
息子の乱行を武士として筋を通して償わせ、また、家を守ったその誇り高い姿に、右門もさすが、南町奉行まで勤めた堀田様と深く礼をする。

普段は右門の邪魔になるようなことばっかりしている敬四郎までが、死を覚悟してやってくる。
この話は、いろんな人たちの思いや、それぞれがそれぞれの立場から精一杯、生きている。
筋を通そうとする。
その姿が描かれていて、感動します。

藤田まことさんも、髪結い床「床政」の主人で、昔は凄腕の錠前破りで登場していました。
娘を人質に、もう一度悪の道に引きずり込もうとした盗賊たちから、娘と自分を救ってくれた右門を影から支える。
残念ながら、20話で田舎に引き上げてしまいました。
娘のおみつの、右門に対するほのかな恋心にも泣けました。

今は元・スリで右門に助けられたおけいが、右門を影からサポートしてます。
おけいもやっぱり、右門に惚れてしまってます。
見ていると、無理もないと納得してしまう、杉良太郎さんの魅力炸裂の右門捕物帖なのでした。


杉良太郎さんがカッコいい 「右門捕物帖」

時代劇専門チャンネルで、杉良太郎さん主演の「右門捕物帖」を見ています。
人並みはずれて無口のため、「むっつり右門」というあだ名があるという割りには今はしゃべってくれてます。
しかし、杉良太郎さんって、やっぱり二枚目スターなんだ。
何をやってもカッコいい。

だけど、当たり前だけど、二枚目なだけじゃない。
身のこなしがすごく綺麗。
数回前からタイトルが変わって、右門が捕物に出かけるシーンと、捕物に使う道具の説明が書かれた帳面が交互に出るようになりました。

右門がその道具を、使ってみせてる。
この道具も、罪人の縛り方なんかも興味深い。
ちょっと怖いけど、市中を守るため、犯罪者と戦うための人間の知恵の結集だなと思います。

捕物で暴れる浪人を囲む捕り方も、よく考えて、よく訓練されてる。
刀を振り回す相手に、自分たちは傷つかないよう、それでいて相手をうまく追い込んで捕らえる知恵だと感心します。
「必殺」などのアウトロー主人公のドラマでは、この捕り方と同心、与力などは怖い相手なんですが、それもそのはずだと思います。

それから、右門が正面から走ってくる場面があるんですが、この姿勢が綺麗!
肩が動かないんですね。
綺麗な走り方、見せる走り方。
それでいて綺麗なだけじゃない、右門が敏捷でやり手だっていうことが伝わってくる。

杉さんは全身で、右門を演じていましたね。
右門が始まる前に「時代劇ニュース番組 オニワバン」で、右門を演じるに当たって、杉さんは合気道を習ったというエピソードが紹介されていました。
そこの師範は型だけ覚えればいいんだろうなと思ったら、杉さんはものすごくまじめに会得した。
この人なら師範までやれる!と思ったほどで、スターというのはそこまでやるのかと師範は感心したとか。

「右門」の話のおもしろさは、言うまでもない。
こんなにもカッコいい右門だけど、杉良太郎さんが1人でおいしいところ持って行く時代劇って感じは全然しない。
むしろ、楽しい。
いや、きっと、右門が何とかしてくれる!と思ってしまう。

そんなこと思うなんて、杉良太郎さんは、やっぱりスターなんだな。
時代劇専門チャンネルさん、♪江戸の黒ヒョウ~♪の「新五捕物帖」もお願いします。
見たいです。


妖怪たちの宴 「必殺仕掛人」「消す顔消される顔」

三國連太郎さんの出演作で記憶に残っているものは、と言われると、たくさんあります。
「復讐するは我にあり」だったら三國さんも緒形拳さんも、気のいいおじいさんになってからの2人しか知らないとビックリするかもしれませんね。
三國さんと緒形さんの共演だったら、「必殺仕掛人」の6話、「消す顔消される顔」もすごいですね。
これには何と、西沢利明さんも三國さんの番頭格の音次郎役でご出演!

緒形さんは針医者にして、闇の仕掛人・梅安。
三國さんは梅安が関わった、盲目の夫を支える美しく気立ての良い娘の父親・文珠屋多左衛門。
最初はお妙のけなげさと美しさに目を留めた梅安だが、夫の直吉の目が気になる。
直吉の目が見えなくなったのは、病のせいではなく、刺し傷の影響によるものだった。

お妙の父親の文珠屋多左衛門は、豪商だが仏のようだと評判の材木問屋だった。
そして、この男の「仕掛け」が梅安に来る。
梅安には納得がいかない。
だが、元締めはこの男がいる限り、今、江戸でたびたび発生している火災は終わらないと言う。

はたして、文珠屋多左衛門には、裏の顔があった。
江戸の火事は、多左衛門の放火によるものだった。
火事を起こして町が燃えれば燃えるたび、多左衛門は材木によって利益を得ていたのだ。

さらに多左衛門は娘のお妙に対して、病的な執着を見せた。
そして、娘の夫・直吉に対しては憎悪を燃やす。
直吉は、たびたび命の危険にさらされた。

それらは全て、多左衛門の差し金だった。
ある夜、直吉が襲われるが、梅安たちが捕らえたその女の殺し屋は青い目をしていた。
殺し屋は自害して果てる。

仕掛けに備えて、梅安は針を研ぐ。
そこに千蔵がやってくる。
梅安の全身から漂う、異様な気配。

針を手に、梅安が千蔵に言う。
「こいつで今、お前さんの息の根を止めようとしたら、息を吐いた時の方がいいと思うかい?吸った時の方がいいと思うかい?」
千蔵の声が震える。
「冗談はよしてくださいよ」。

梅安の目に、尋常ならざる光が宿っている。
声が、低く響く。
「直吉を襲った殺し屋は、叫び声を立てないように手ぬぐいを使った」。
あの殺し屋は、手ぬぐいを直吉の口に押し込めたのだ。

「だが相手が息を吐ききった、その瞬間を狙えば、声は出ねえ。手ぬぐいを使うなんざ、仕掛人としては下の下だ」。
「舌を噛み切って死ななきゃならなかったのも、腕相応の報いってもんだよ」。
その凄みに、千蔵は縮み上がる。

「千蔵!たらいの水替えてくれ」と梅安の声が飛ぶ。
すっかり怯えきった千蔵の声が、「へ、へい」とうわずる。
手にしたたらいの水が、こぼれる。
千蔵の手は震え、腰は抜けそうだった…。

火事の起こった夜、梅安は多左衛門の背後に忍び寄る。
差配を見せながら、目が異様に輝いている多左衛門。
標的を定める梅安の目もまた、獲物を狙う獣のようだった。

しかし、多左衛門は首に鎖帷子を巻いていた。
普通の針では仕掛けるのは、無理であった。
梅安はあきらめるが、目は燃え上がった。
その夜から、梅安は針を鍛え上げる。

風の強い夜だった。
梅安は、文珠屋へ忍び込む。
多左衛門が「音次郎」と、鳶の音次郎を呼ぶ。

「へい」と言って、音次郎がやってくる。
ごうごうと、風がうなる
「強くなってきたようだな、風が」。
「乾ききっておりますし、今夜辺りチャーンと鳴ったら、江戸の半分は灰になりましょう」と音次郎が言う。

「やりますか」。
多左衛門が言う。
「今夜は何もかもみんな、片付けてしまおう」。

さらに多左衛門が言う。
「安いものは買うものじゃないね。10両では安いと思って話をつけた女殺し屋が、しくじった」。
「直吉さえ殺せば、お妙は帰ってくると思った」。

「じゃあ、あれは旦那が…」。
女殺し屋が自害してくれたからいいようなものの、白状したらどうなったか。
音次郎が言う。
「そういう危ないことは。他人に任せるのではありません」。

音次郎を見る多左衛門。
多左衛門と、音次郎は同じ類の人間だ。
「音次郎、お前はやっぱり、私の跡目…」。

音次郎が直吉を殺しに、そして多左衛門が火をつけに向かう。
梅安が屋根の上から、ついていく。
誰もいない路地で、火をつけにかかる多左衛門。

はあ…あああ…という呼吸音が響く。
火がともされる。
はああ…、はあ…。

梅安は、計っている。
息を吐ききった瞬間に仕掛ければ、声も上げられない。
はああ…、と響いていた呼吸が、止んだ。

闇の中から、梅安が下りてくる。
一瞬で、多左衛門を梅安の針が仕留める。
火が燃える。
もし、多左衛門が放火しているのがわかったら、娘のお妙まで火あぶりにされると言って、梅安は火を消す。

梅安たちの目の前の暗躍も、多左衛門の正体も知らない直吉。
多左衛門は卒中でなくなったということで、葬式に梅安がやってくる。
本当に惜しい人をなくした、だんなの善行でこれからは江戸の火事は少なくなるだろうと皮肉で、笑える言葉を述べる梅安。

あれから鳶の音次郎もいなくなったが、一体どうしたんだろうと言う。
左内が仕掛けてくれたのは承知の上だが、金ももらわないのに仕事をする仕掛人なんかいるわけがないと笑う。
そして、鍋を食べたら、吉原に行こうといって笑い、誘いに決して乗らない左内をからかう。


三國さんが演じる父親が、娘に対して異常な執着を見せる。
そして、娘の夫には尋常ならざる憎悪を抱く。
これだけで、他は何の描写もない。
でも三國さんは、この父親…、娘かわいさにしてはちょっとおかしくないか?とこちらをゾッとさせる演技を見せる。

そして放火を申し出る、西沢さん演じる音次郎。
三國さんが言う。
「音次郎、お前はやっぱり、私の跡目…」。

この2人は同じ、妖怪。
人の姿はしているが、中身は妖怪。
心が、人としての心がない。

その凄みのある顔。
2人ともすごい。
「妖怪たちの宴」状態。

そしてその妖怪を仕留める執念を見せる梅安の、緒形さんの目力もすごい。
三國さんたちが妖怪なら、それを仕留める梅安もまた、尋常な人間じゃない。
だが梅安は妖怪ではない。
2人と梅安は危うい、紙一重のところにいながら、決して交わらない。

怯えてみせる秋野大作さんこと、津坂まさあきさんの演技もすばらしい。
みんな、すごいんですよ。
目の見えない演技を見せる、石山律さんもすごい。
俳優というのは、演技のプロなんだと感嘆しますよ。

結局、梅安は妖怪を仕留める。
梅安が言った殺しの極意。
そのおそろしいが名セリフが、ここに効いてくる。
呼吸音を響かせる演出も、緊張感を高める。

燃え上がる炎を消す梅安。
そして、直吉の目が治ると知らされたお妙が梅安に感謝する。
本当はお妙みたいな女性と、一緒になったらいいなあと言っていた梅安。
そんな平凡な生活は望んでもいないし、手に入るわけがないのは知っているのに。

鍋をつつき、吉原に行こうと話がまとまる梅安と千蔵。
自分はお妙がいいな、と言っていたのにアッサリと。
妖気を漂わせることはあっても、梅安には明るい顔がある。

実に人間くさい。
梅安はやっぱり、人間なのだった。
俳優、ストーリー、演出。
この記事を読んでくださった方で未見の方、全てがすばらしいので、機会があったらぜひ、ご覧ください。


三國連太郎さんの「なおこ」 山口百恵ちゃんとの「赤い」シリーズ

三國連太郎さんといえば、山口百恵さんの「赤い」シリーズにも出演してました。
タイトルは赤い…、赤い…、なんだったっけかな、「赤い運命」?!
百恵ちゃんの父親役なんですよ。
しかし、父親っていっても実の父親じゃないんです。

百恵ちゃん一家は、17年前、百恵ちゃんが生まれたばかりの時、伊勢湾台風の被害にあい、離れ離れになってしまっていたんです。
伊勢湾台風というところに、時代を感じるでしょう。
当時の私でも感じたんですから。
台風で、それほどの被害が出る時代だったんだなあ、と。

それで百恵ちゃんは、孤児院に預けられている。
こういう設定が通るのも、時代ですねえ。
そこにはもう1人、同じ境遇の同じ歳の娘、こちらは秋野暢子さんが演じている娘がいる。
ある夜、孤児院が火事になり、救命に来た隊員は床に落ちた2人の箱の中身を拾った際、中身が入れ替わってしまった。

箱の中身は、2人が孤児院に来た時に身につけていたもので、2人の身元を証明する唯一のものだった。
この火事がきっかけで、百恵ちゃんと秋野さんの父親が判明する。
百恵ちゃんを迎えに来たのは、飲んだくれの三國さんだった。
そして秋野さんを迎えに来たのは、エリート検事の宇津井健さんだった。

しかし、視聴者にはわかっている。
本当の父親は、宇津井さんなんだ!って。
宇津井さんのところには見習いの若い検事士がいて、彼は苦労する百恵ちゃんに惹かれて行く。
だが、彼に憧れてしまった秋野さんは、百恵ちゃんに彼はふさわしくないと女の嫉妬を燃やして、百恵ちゃんをいびりはじめる。

血が呼ぶのか、なぜか宇津井さんは百恵ちゃんを放置できない。
そしてやはり血が呼ぶのか。
秋野さんは三国さんに対して、異常なほどの拒絶反応を示すのだった。
そして一体、何でみんなして娘の私より百恵ちゃんをかまうの!とますます、秋野さんは百恵ちゃんの邪魔をする。

三國さんは、「満蒙開拓青年団」の生き残りだった。
彼は自分たちを「この世の楽園だから」と騙して満州に連れて行き、ソ連が来るとさっさと見捨てて逃げた、今は大物代議士となっている男を付けねらっていた。
ソ連に抑留されたり、逃げる途中でほとんどの仲間は死んでいった。
そのため、彼の心はもう、折れてしまっていた。

酒に溺れ、百恵ちゃんに働かせる日々。
しかし、彼にはたった一つ、執念を燃やすことがあった。
彼は仲間に託されていた。
自分たちを騙して連れてきて、真っ先に逃げたあの男に恨みをぶつけてくれと。

そしてある夜、三國さんは殺人事件の容疑者として逮捕される。
裁判の検事の担当は、何と宇津井さんだった。
実の父親と娘は、法廷では敵同士なのだった。
百恵ちゃんを心配しながらも、彼は父親の三國さんを糾弾せざるを得ない。

殺人犯の娘なんて、ますますふさわしくないと秋野さんのいびりは激しくなる。
裁判で、散々父親に苦労をかけられた百恵ちゃんは言う。
父がやってないというのなら、私は父を信じます。

そのけなげな姿は、話題になる。
さすがの三國さんも、法廷で涙ぐんだ。
裁判の結果は、無罪。

喜びにわく百恵ちゃんと三國さん。
自分たち親子の、エリート親子への勝利だと三國さんは思う。
今まで粗末に扱っていた娘に向かって、報道陣が押しかけると、三國さんは報道陣をにらみつけ、娘を自分の背後にかばう。
その迫力に、報道陣が一瞬引く。

やがて、真相は明らかになっていく。
なぜなら、行方不明になっていた百恵ちゃんの母親であり、宇津井さんの妻、岸田今日子さんが見つかるからです。
しかし彼女は記憶を失っており、今はある大企業の社長の妻となっているのだった。

これがね、確か、百恵ちゃん、実の娘の腕にほくろが3つ並んでいるんですよ。
で、岸田さんは百恵ちゃんの腕を見て、思い出すような、思い出せないようなもどかしいものを感じるんです。
どこかで…、私はこれを見ている…って、具合に。

本当は百恵ちゃんが実の娘だと知った宇津井さんだが、三國さんはすっかり、生きる目的を百恵ちゃんとの生活に見出している。
真相を知っても、絶対にこの娘を手放したくないと思う。
逆に自分に対して嫌悪をあらわにする、あの娘が実の娘だなんて、三国さんのほうでも絶対嫌。
そう言いながらも、陰でこっそり見たりして、気にはなるんですけどね。

百恵ちゃんのほうでも、三國さんを見捨てられないとこのまま娘でいる決意をする。
さらに宇津井さんは妻の会社が危ないと見ると、自分の家を担保にして助けてやったりとこちらも百恵ちゃんに負けず劣らず、献身的。
やっぱりこの2人が、親子じゃー。
そして物語のクライマックス。

今は大物代議士として、壇上にあがり、演説を始める三國さんの恨むべき相手。
三國さんはついに、警備の目をかいくぐって、男に向かって刃物を突き出す。
しかし、彼を殺人犯にしてはいけないと宇津井さんは身をもって止める。
刺される宇津井さん。

娘として駆け寄ってしまう百恵ちゃん。
逮捕される三國さん。
代議士は戦時中のスキャンダルが明らかになり、失脚する。

全てが終わり、親子はそれぞれの形に戻っていく。
だが、岸田さんは今の生活があるので、それを続けていく。
会社をなくした夫には、彼女が支えだし。

秋野さんは、人気絶頂の百恵ちゃんをいびったので、大変だったらしい。
電車の中なんかでおばあちゃんに「あんたね、あんたの本当のお父さんはあっち。三國さんだよ」って言われたりしていたらしい。
「知ってるよー」と思ったけど、「えーっ?!」ってビックリして見せてたんですと。
大変でしたね。

意地悪はするが、百恵ちゃんほど芯が強くない秋野さんは、連行される父親を涙で見送るしかない。
百恵ちゃんを好きだった宇津井さんの弟子は、秋野さんを支えてやらなくてはいけないと秋野さんの肩を抱いた。
自分は父親との生活を手に入れたのだから、と、愛は秋野さんに譲る百恵ちゃん。
岸田さんといい、これ、単純なハッピーエンドじゃなかったんですよー。

それから満蒙開拓青年団の悲劇と怨念なんて、子供の私にも三國さんは強烈に印象付けたんですね。
すごい演技だったんですよ、やっぱり。
それとこの作品、設定や話は時代を感じるものでしたが、戦中戦後の問題もまだ生々しく取り上げていたのかなと思います。

ラスト、2人は家で、百恵ちゃんがむいた、りんごを食べていました。
「お父さん」。
2人は微笑みあう。
やっと幸せの時が訪れたで、終わり。

何の資料もないし、見直してもないので、違うところはご容赦を。
あと、記憶によれば宇津井さんの役の苗字は、吉野…だった気がします。
百恵ちゃんの役名は「なおこ」だった気がします。

それは思い出すとやっぱり、三國さんの「なおこ」って声のおかげなんですね。
「なおこ、俺を見捨てないでくれ」とか言ってる声。
だとすると、あの頃は怖いと思いましたが、改めて俳優さんとしてはすごい方だったんだと思います。


楽しいな 長谷川明男さん

長谷川明男さん。
最近、お見かけしなくて、気になっています。
非情な悪役がうまいのですが、善人役、コミカルな役もうまいんです。

「必殺」シリーズの「暗闇仕留人」では、鉄砲鍛冶職人で銃を作ることに夢中になってしまう。
その腕を見込まれ、悪人に言われて接近してきた女性に引っかかる純情な男。
しかし女性もまた、彼の純で誠実な性格に惹かれ、2人はいつしか本当に愛し合う。

その女性が、悪人に肉体でつなぎとめられていることを見せ付けられても、彼の気持ちは変わらない。
手に手をとって、逃げる2人は、無残にも引き裂かれて殺される。
この鉄砲職人が長谷川さんですが、悪党と同じ人が演じてるとはとても思えない自然な演技で純情青年を演じています。

しかし次のシリーズの「仕事屋稼業」では、自分のかつての恋人を地獄に突き落とし、遊郭の3代目に収まろうとする野望家の男です。
夢が叶うかに見えた時、男は死を覚悟したかつての恋人に刺されます。
てっきり黒幕かと思ったのに、あっさり殺される長谷川さんでした。

「仕置屋稼業」では、主水に「根性が曲がった隠密」「やりすぎ!やりすぎだよ!」と言われる。
善人の顔をして、作家の妻を死に追いやった、根性曲がった男。
もう一本、このシリーズでは妹と結託して悪事を働く男を演じてます。

そして「仕業人」では200回記念の「あんたこの替え玉をどう思う」に、ご出演。
この回は歴代必殺シリーズを色どった俳優さんがずらり、出演しているのですが、長谷川さんも実は功労者じゃないかな。
この回の長谷川さんは、主水の後輩の若い同心。

これがね、すごく楽しい。
主水と夜勤なんですが、主水はこの夜勤の間に、女盗賊の替え玉として牢に入れられた女性と、この女盗賊を入れ替えなくてはならない。
翌朝、女盗賊は死罪になる。

ろうそくに時を刻む印が入っているのを見ながら、時間を計っている主水に対して、とってものんきなこの同心。
眠気覚ましにか、お茶ばっかりいれて飲んでる。
お歌があらかじめ気を失うよう、又右衛門に教えられたとおり、針を打ち込んだ女性が運ばれてくると、気になって伸びをして覗き込もうとしてる。
何か言われると、「お茶ですか」。

さて、いよいよ替え玉を入れ替える時間になり、長谷川さんは主水と見回りに出る。
夜の見回りで、どこかで音がしたと主水に言われ、音の先が拷問蔵とわかると、「拷問蔵ですよ」と怖そうに言う。
いつもは使う側?ひどいことしちゃってるのに!なんて思ってしまうのも楽しい。
恐る恐る、主水と蔵に入ると、今度は「いろんなものがありますねえ」と感心してしまう。

そこにひとつあった、首輪に興味を示し、「これ、何ですか」と聞く。
すると主水が「これはこうやって使うんだ」と、長谷川さんの首につけてくれる。
「苦しいですね」と言うと、主水が笑う。
「取ってくださいよ」と言うと、主水が何と鍵がないと言い出す。

「ええーっ!」と仰天。
ちょっとお!と、大慌て。
静かにしないと、輪がどんどん締まると言って、鍵を探しに行く主水に小さい声で長谷川さん、「早くしてくださいよ!」
「おしっこ、したいんだからっ」。

お茶の飲みすぎなんです。
その間に主水は、女性と盗賊の入れ替え。
当然、時間は遅くなる。

又右衛門に「あの若いの、どうした」と言われて、主水は拷問蔵に走る。
「遅いですよー!」と叫ぶ同心。
輪をはずしてもらうまでに、「早く」と、ごちゃごちゃ言う。

身は縮こまり、相当切羽詰ってる。
大変だ。
外すなり、長谷川さん、ダーッシュで走っていく。

その様子が、おかしいやら、かわいそうやら。
いや、身につまされるわ。
でもやっぱり、おかしい、ごめん。

戻ると長谷川さん、今度は女盗賊と入れ替わった女性を外に運ばされる。
主水に「おい!」と声をかけられると、先ほどあれほどお茶の飲みすぎで苦しんだのに「お茶ですか」。
違ーう!
この言い方が、とぼけていて、ぬけていて、それでいてかわいらしい。

ああ、楽しい。
もうね、立派な200回目のゲストです。
非情な悪役の長谷川さんを思い出しながら見ると、さらに楽しい。
やっぱり悪役をやる人って、うまいんだなあと思いますね。

この後も、長谷川さんはしれっと?悪役を演じてくれます。
ふと、この方にあの「田中様」やってもらっても楽しかったかも、と思ってしまう。
最近、お見かけしないんですが、お元気でいてほしいです。
長谷川明男さん、私は大好きです。