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目は口ほどにものを言い 「右門捕物帖」

杉良太郎さん主演の「右門捕物帖」。
40話「右門の愛」では、右門に身の上を打ち明けるのが浜美枝さんでした。
女は追求を逃れるため、右門を騙すと仲間に約束していた。
暖かいものが通ったと思ったが、右門は全てに気づき、乗り込んでくる。

全てが暴かれ、女は右門にすがりつくも拒絶され、泣き崩れる。
だが右門は彼女に縄は打たなかった。
それが右門の情けだった。

ところが、奉行所への道の途中、彼女は用心棒の浪人たちのところに駆け込む。
自分に縄を打ってくれなかった、これが右門への答えだ。
「てめえ…」と、つぶやく右門。

右門を見つめる彼女の目。
それは「してやったり」の目ではなかった。
哀しみ、そして右門への想いが溢れる目だった。

右門の目。
怒り、そして哀れみ、悲しさ、愛おしさが溢れる目。
この感情の移り変わりが、目だけで表現される見事さ!
目は口ほどにものを言い…、とは、このことと言いたい!

2人の交わす視線は、同心と下手人のそれではない。
騙そうとした女性と、騙されそうになった男性の視線でもない。
それは悲しい、切ない、好きあった者同士が、どうしようもない運命によって引き裂かれていく時に交わす視線。

用心棒たちを斬り捨てた右門にむかって、女は匕首を手に突進していく。
とてもその手つきは、殺意に満ちたものではなかった。
そして女は、アッサリ斬られる。

右門に向かって、涙を流し、手を伸ばす女。
それには応えない右門。
息絶えた女を、右門が見下ろす。

彼女は、本当に悪女だったのだろうか。
「私を斬ってくれ」。
彼女の目は、確かにそう言っていたと右門は思った。
そう、右門にも、こちらにも見えた。

彼女は、何を考えていたのだろう。
心底好きになった男に同情される、哀れみをかけられるなんてごめんだ。
そんな惨めな目にあうならば、悪女として憎まれた方がましだと思ったのか。

彼女の唯一の希望は、好きな男に斬ってもらうことだったのか。
もう後戻りできない悪事に溢れた人生を、右門によって終わらせてほしかったのか。
そうやって、自分は右門への愛を貫くしかない。
女の右門への気持ちに、嘘はなかったのだ…。

右門の彼女を見つめる目を見るためだけに視聴しても、後悔はない。
この回は、言えるほどの杉さんの名演が光る。
「右門捕物帖」は、すばらしい人間ドラマです。


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