こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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自分以外の他者を押しつぶす冷酷 「大都会Part2」 「別件逮捕」

「大都会Part2」で見た19話、「別件逮捕」。
俳優さんたちの共演、ストーリーが見所一杯でした。
「大都会Part2」って本当におもしろい。

黒岩が所属する城西署に、男がライフルを手に乱入した。
男の名は、瀬田。
一番偉い人間を出せと言って、瀬田は発砲した。
なぜ、こんなことが起きたのか。

それは3日前のことだった。
瀬田は高価なペアのワイングラスを買って、店の外に出た。
すると、駐車違反を取られた。

瀬田は勘弁してくださいよ、ちょっとの時間だったじゃないですかと泣き言を言う。
もう点数がない。
免停になったら、仕事ができない。

だが婦人警官は冷たいを通り越して、横柄で高圧的だった。
つい、瀬田は車を発進して逃げてしまった。
婦人警官の無線は、パトロール中の大内刑事こと坊さんと、神刑事ことジンが聞きつけて瀬田の車を追いかけた。
「道路交通法違反」。

逃げ込んだ路地で、瀬田は子供を轢きそうになって急ブレーキをかけて停車する。
坊とジンが瀬田を引きずり降ろした。
その際、ワイングラスの入っている箱にジンが目を留める。
瀬田が関係ないので、やめてくれと言ってジンともみ合う。

ジンが箱を落とし、グラスが割れた音がした。
カッとなった瀬田は、ジンに殴りかかった。
罪状が一つ、増えた。
「公務執行妨害」。

城西署に連行された瀬田に、課長は目と鼻の先の渋谷で起きた質屋強盗の嫌疑をかけた。
瀬田に傷害の前科があったからだ。
だが質屋強盗は現在、黒岩が捜査をしている。

瀬田は取調室で、一昨日の晩の質屋強盗が起きた夜のアリバイを聞かれるが、ワイングラスを弁償しろと怒った。
質屋強盗を捜査している黒岩は、質屋の息子を見張れと上条刑事こと、サルに言うと城西署に戻ってきた。
話を聞いた黒岩は瀬田を交通科に戻せと主張するが、課長は聞かない。

果たして、質屋強盗はその家の息子が小遣いほしさにやった狂言だったことが判明する。
サルが息子を逮捕し、瀬田の容疑は晴れた。
だが坊とジンは、瀬田をまだおとといのアリバイで責めた。
黒岩は割れたワイングラスを見て、瀬田に結婚前の兄弟がいないか調べろと言う。

非番になって戻った黒岩だが、妹の恵子が出かける。
どうやら、BFとデートのようだが、恵子は兄の黒岩にBFを紹介しない。
宗方医師と食事をした黒岩は、妹が自分を紹介しないのは、なぜだと言う。
すると、宗方医師は前科者ってわけじゃないのになあと笑った。

その言葉がヒントになり、黒岩は瀬田に結婚間近の妹がいるのを突き止める。
だが妹と瀬田は、瀬田が傷害の前科を負った時、縁切り状態になっていた。
そして瀬田は城西署から逃亡してしまった。
「加重逃走罪」。

瀬田の逃亡を聞いたマスコミが押しかけるが、深町次長は無視する。
黒岩の課へ来た深町は、なぜ瀬田が脱走したのかと聞く。
たかだか数千円の罰金で済む、道交法違反だ。

なのになぜ、罪を重ねる。
黒岩は「自分は脱走ではないと思います」と答えた。
「復讐だと思います」。

人権を無視した取調官への、復讐だ。
それを聞いた課長は、違法だと言うのかと怒った
だが、深町は「じゃあ、瀬田は何をしていると思っているのだ。駐車違反の罪で海外逃亡か?」と冷たく責める。

そこに瀬田が銃砲店で強盗が入り、ライフル銃を奪ったという知らせが入る。
「窃盗罪」。
「銃砲刀剣類不法所持」。

彼は逃げ回り、一軒の家に押し入る。
子供と母親を銃で脅し、静かにするんだと言う。
「脅迫罪」。
「逮捕監禁罪」。

瀬田は城西署に電話をかけてきた。
神という刑事を出せと言う。
黒岩が電話に出て、瀬田は金曜日の夜は妹の光子といたことを知っていると言う。
「今自首すれば大した罪にならん」と黒岩は言うが、瀬田は「てめえら刑事の言うことなんか信じるか!」と怒鳴る。

そして自分を取り調べた大内と神という刑事が謝ったら、自首すると言う。
ただし、テレビで謝ること。
「テレビで我々は、ひどいことをしましたと謝れ」。
「強要罪」。

坊は謝っても良いと言ったが、深町は「できん」と言う。
「君はできるが、警察はできない。凶器の前に屈したら警察の権威が傷つく」。
ジンは「権威より人命です」と言った。

だが深町は「警察に権威がなくなったら多くの人命が失われる」と、突っぱねる。
「それは警察の思い上がりです」と口走ったジンに深町は「青二才は黙ってろ!」と鋭く言った。
深町は、瀬田の妹の光子に、テレビで説得してもらおうと提案した。

黒岩は、妹は事件に関係ないと主張。
「ほう、兄弟なのに?」と深町がバカにしたように言う。
「彼女は承知しない」と言う黒岩に深町は「それを説得するのが君の仕事だよ!」と怒った。
坊もジンも目を伏せる。

黒岩の主張に深町は不愉快さを隠せず、「もういい、出て行きたまえ。出て行け!」と怒鳴る。
深町はマスコミの前で、記者会見に応じる。
記者たちは、「ことの起こりは駐車違反。警察のミスじゃないの?」と追求する。

だが深町は瀬田には前科があると言った。
「前科がある、駐車違反をする、脱走する、人質をとって立てこもる。こういう犯罪を未然に防ぐ方法がありますか?」
そして妹の勤め先を教えると、マスコミはそちらに走って行ってしまった。

マスコミが光子の勤め先に殺到し、やむを得ずテレビに出た光子は涙ながらに訴える。
それを宗方と見ていた恵子は、光子の兄への思いに自分をダブらせ、涙ぐむ。
光子は言う。

小さい頃、自分が転ぶと兄は抱き起こし、家までおぶって帰ってくれた。
テレビを見ていた瀬田は、「光子、やめろ」と叫ぶ。
思わずやめろと言うと、皿を割ってしまう。
「器物破損罪」。

「お兄ちゃんが事件を起こしたり、いろんなことを警察の人が悪いことを言っても、ずっとお兄ちゃんを信じてきた」。
「ちょっと怒りっぽいけど、お兄ちゃんは悪い人じゃない」。
見ていられず、瀬田が窓を開けるとライフルを構えた狙撃隊が見える。

窓から瀬田は脱出。
タクシーを止めて、城西署に向かわせる。
非常線を張っている徳吉の横を、瀬田が運転手に強要させ、タクシーは突破していく。

城西署に到着した瀬田は発砲し、署で一番えらい奴を呼べと叫ぶ。
テレビでは、光子の自首の呼びかけが続いている。
黒岩の課まで、銃声が響く。

瀬田は駐車違反を取った婦人警官を見つけると羽交い絞めに拉致して、一室に連れ込む。
徳吉が拳銃を構えながら階段を登り、角を曲がる。
「そこか、そこにいるのか!」と瀬田が叫び、発砲する。
「殺人未遂罪」。

瀬田はライフルを発砲し、婦人警官を連れて一室にこもる。
街で黒岩がテレビを見ていると、臨時ニュースが流れる。
光子の涙の訴えが中断し、瀬田が城西署に立てこもったニュースが流れた。
黒岩が走る。

城西署では、人質が危険だとして、身動きが取れなかった。
黒岩が窓から、課内に上がってくる。
立てこもった資料室の中から、瀬田が怒鳴る。

「一番偉い人出て来い!」
それを聞いた深町が、向かおうとする。
「深町だ!私が責任を取る!」
「ようし」。

瀬田は廊下に面した壁の棚の上に、婦人警官を上がらせる。
壁の上には小さな窓があり、廊下を見下ろせた。
そこに瀬田は婦人警官と並んで上がり、ライフル銃を廊下に向けた。

「テレビに出て、謝るか!」と叫んだ瀬田に深町は「それはできない!」と答えた。
「警察は悪くない。だから私は君に謝らない。しかし、人質を返してほしい。引き換えに渡しをどうとでもしてくれ。これから手を上げて出て行く」。
深町の言葉に瀬田は「おもしろい、約束しよう」と言った。

出て行こうとした深町は、黒岩の課、全員に止められる。
黒岩は「絶対出すな」と言って、資料室に向かった。
円山刑事の応援を得て、徳吉が外の壁で、資料室の表に回る。
近づく黒岩に、瀬田は神経を集中させた。

その隙に、徳吉は背後の窓から突入した。
黒岩に向かって発砲していた瀬田は振り向いて抵抗しようとするが、徳吉に取り押さえられる。
丸さんはジンたちに黒岩の行動を「次長を助けたかったんじゃない。瀬田にこれ以上罪を犯させたくなかったんだよ」と言った。
瀬田は多くの罪を犯し、逮捕されることになった。

だが、次の日、黒岩は瀬田が最初に駐車違反を取られた時の店に恵子と一緒にいた。
瀬田が買ったのと同じ、ペアのワイングラスを買う。
少し足りなくて、恵子に借金を申し込む。
恵子が、あきれる。


瀬田は、斉藤晴彦さん。
理不尽にもどんどん、罪が重なり、ついに凶悪犯へと追い込まれてしまう瀬田をもどかしく演じてます。
でも「偉い人出て来い」の「偉い人」という言い方がかわいかった。
さて、この回で私は、ハリウッド映画の「フォーリングダウン」を思い出しました。

「フォーリングダウン」は、マイケルダグラスが主人公。
普通のビジネスマンだった。
その彼が、些細なことがきっかけとなり、苛立った彼はついに日ごろの鬱憤を爆発させる。
いくつもの苛立ちが重なり、それを我慢せずに爆発させていった彼はついに、凶悪犯となって追われることになる。

この男がホームレスにねだられて、上質なかばんをくれてやる。
ところがそのかばんには、何も入っていない。
ホームレスが罵倒するがダグラスは、さっさと歩いていく。

家では、警察に母親が言う。
息子は、勤めに行っています、と。
ところが彼はもう、勤めていなかった。

彼は毎日、勤めに行く振りをしてどこに行っていたのか。
誰も知らなかった。
彼がもう、勤めていないことも、どこに行っているのかも。

さも、仕事に行っているかのように彼は毎日、出かけていた。
この時、彼の爆弾の芽は密かに育っていたのだとわかる。
狂気は密かに、進行中だったのだと。

こうやって書くと、2つの話は別に似てないですね。
主人公にあるきっかけがあって、そこから些細なことが重なって、本来する気がなかった犯罪をいくつも重ねる。
そしてついに主人公は、凶悪犯となって追われる。
こんなストーリーが、この映画を思い出させたのでした。

途中から徳吉が出てくるけど、前半は忙しかったんでしょうか。
あともう1人、見ごたえがある人がいました。
深町次長役の、佐藤慶さんです。

佐藤慶さんといえば、「新・仕置人」の辰蔵。
必殺シリーズ史上に残る名作と言われる、「新・仕置人」の最終回。
佐藤慶さんは、その最終回の悪役です。

「新・必殺仕置人」のブックレットに、佐藤慶さんのことはこう書いてありました。
この人の最大の魅力は、悪役を演じた時の倣岸さ、冷酷さにある。
体制側に立つ権力者の悪を表現するのに、最適の資質。

政治家、官僚、財界要人。
時代劇では家老、目付、幕閣要人を演じるのが似合う。
いや、似合うどころの存在感ではない。

「大都会 闘いの日々」では、渡哲也演じる黒岩刑事ら現場の人々を圧殺する、体制の非情さを象徴する役だった。
「他者への酷薄さ。エリートの非情。自己保身のエゴイズム。野心と虚栄。これが佐藤慶の無表情に、集約されている。あの目つきの不遜さは、ただ事ではない」。
「一匹狼ではなく、集団組織の中にあって、佐藤慶の悪は輝く」と。
もう、まさにそれです。

マスコミの目をそらすために、黒岩が表に出すことを反対していた光子の勤め先をリークする。
光子はもう、協力するしかない。
彼女の思いも、瀬田の思いも、彼の前では何の拘束力にもならない。
「他者への酷薄さ。エリートの非情。自己保身のエゴイズム」。

現場で肉体労働で走り回る刑事たちに、官僚の理屈でしか対処しない。
しかし、命の危険があっても、官僚の理屈を通そうとするところはあっぱれ。
それだけに彼を変えることは、到底無理だ、できないと感じる。

佐藤慶さん、最高。
素顔の佐藤慶さんはみんなを笑わせて、笑いをこらえて撮影にのぞむのが大変なのに1人、澄ました顔で悪役演技に入っちゃう方だったようですね。
もうお会いできないのが、寂しい…と深町次長を見て、改めて思いました。

自分の妹と瀬田の妹がだぶる、黒岩刑事。
黒岩刑事の妹の恵子も、兄への光子の言葉が自分の感情と重なるのか。
光子の言葉に、涙している。
瀬田の妹・光子に永島えい(日へんに英)子さん。

最後に割ってしまった瀬田のワイングラスを弁償する黒岩の姿が、ホッとさせる。
瀬田があんまり、重い罪にならないよう。
妹さんが結婚して、幸せになりますよう。


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今年は、どうなんでしょ

毎年、この時期になると梅雨明けが気になります。
何年か前は、6月末の晴天を最後に、8月の初めまで雨ばっかり!という年が2年ぐらい続きました。
日本は雨季に入っちゃったのかってぐらい、雨ばっかりだった。

毎日毎日、傘持って、雨でぬれて、街も人もみんな湿っていく…。
うんざり、という年がありました。
あれはやですね~!

毎日、天気予報見て、晴れマークを心待ちにしていると、先へ先へと伸びていく。
雨マークが毎日、つくようになる。
天気予報の人は悪くないのに、「何で晴れないのだ!」とか怒りたくなってしまう。
さて、今年はどうなのか。

すると、今夏は猛暑という記事を読みました。
各地に大雨をもたらしている原因として、何だかんだ言われている偏西風。
これが分けて流れるので、背の高いチベット高気圧が張り出すらしいんですね。

乾いた空気のチベット高気圧が日本付近まで勢力を伸ばすと、今度は湿った空気の太平洋高気圧の張り出しを押さえつけてくる。
こうなると、今年は全国的にかなりの渇水型猛暑になるとのこと。
雨もかなりの少雨になるらしい。

1994年型…というと、覚えてます。
前年の93年が冷夏で、米騒動が起きた。
行きつけのとんかつ屋さんには、「付け合せのキャベツの方が豚肉より高いんですよ」と言われて、キャベツ残せなくなっちゃった。
多すぎるので、ちっと残そうと思ってたんだけど。

8月に長袖着たのは、あの年が初めてだった。
「暑いなあ」と江口寿史氏が描いた女の子が部屋でばてていて、「そうだ!デニーズに行こう!」と言っているCMがありました。
でも8月入っても夏らしく暑くならないから、このCMも止めちゃった。

この翌年が、94年。
「2年分の夏が来たのかーっ!」と言うぐらい、暑くなった。
夜になっても気温が25度以下に下がらない、熱帯夜が続く。
日本の夏が、そういう夏がになったのがこの年からだったと思います。

93年の5年後、98年。
東北が梅雨明けしないし、全体的に不安定な夏でした。
実家が東北の人が、農作物がダメになると言ってました。

そして2003年も海の家ががっくりくるような、冷夏でした。
2008年は北京オリンピックがあって、後半が雨続きの夏になってしまった。
そうか、近年は西暦で3の年は冷夏なのか?

でも93年以前では、3のつく年で、ものすごい猛暑の年もあったらしい。
だから今年、2013年はどうかなと思っていたんですが…。
普通に梅雨明けして、普通の夏が来ておくれ。
最近の「普通」がよくわからないといえばわからないんだけど、とにかく「普通」の夏にしてください。


強くなったぞ 「暴れ九庵」

「暴れ九庵」、見たことがないと思っていましたが、見てました。
覚えがある場面がありました、思い出しました。
途中から見たので、放送は終わりに近づいていたんですが、再放送がありました。
今度は最初から見ます。

最終回のひとつ前、24話「汚れはしたものの」に田中美佐子さんがゲスト出演していました。
父親と暮らしてきた娘が、自分たち親子を陥れた男を刺し殺した罪で、獄門になる。
これが田中さんの役。

田中さんが牢に入れられて、早速、牢名主たちの洗礼を受けそうになる。
だがこの一見可憐な娘は牢名主にもつかみかかり、地獄の道連れだ誰が相手になるんだ、かかって来いとすごむ。
同じ房の5人と、取っ組み合いの大喧嘩。

どう見てもかわいらしい、田中美佐子さんの暴れっぷりにハラハラ。
田中さん演じる可憐な娘が無残な境遇に追いやられ、獄門と決まって捨て鉢になる様子が痛々しい。
同心が飛んでくると、牢内の女性たちは一斉に田中さんをいきなり名主さんに殴りかかったりして、どうしようもないと責める。
すると同心は、この娘は獄門になるというのに、全然おとなしくならないとあきれる。

その言葉で、牢内はシーンとなってしまう。
こんなに若いのに、この娘は獄門なのか。
今まで生意気な小娘だ、締めてやるといった雰囲気の牢内は静まり返る。

みんなの目が優しくなる。
この牢内は、比較的、良い人が集まっていたのかな。
それとも、みんな、何かやむにやまれぬ事情があってこんな境遇に堕ちたわけだから、彼女の境遇に察しをつけたのかな。

極悪人とは思えない娘が、若くして獄門になるまでの罪を犯したんだから。
みんなの凶暴な目が、変わる。
優しく、いたわりの目になる。

私だって、「かわいそうだなあ…」「そりゃ、獄門になるんだから、牢の掟なんか守ってられないだろうな」とか考えていたんですから。
こんな境遇に追いやられたこの娘を、助けてやってほしい。
悪人じゃないんだから。

しかし、彼女は刑にかけられることなく、病で亡くなってしまった。
牢内ではみんな、最初とはうって変わって良くしてくれたみたいだった。
病に倒れた彼女を見守っている牢内のみんなの目は、優しかった。
田中さんも、牢内のみんなを名前で呼んで、「どうしてみんな、そんな悲しそうな顔をするの…」と言っていた。

不幸の連続の一生で、最後は牢内だとしても、そこで彼女は安らぎを得られたんだ。
良かった。
九庵が、首が離れないで綺麗なままだと言っていたのが、泣けました。
田中美佐子さんは大暴れしても、蓮っ葉な口を利いても、どこか儚げで愛らしかった。

一緒のシーンはなかったけど、このドラマには古尾谷雅人さんが出演している。
おおっ、「丑三つの村」の「継男」と「やすよ」じゃないか!
「俺が貰うたる。俺の子供生め。村一番の子供や!天才と別嬪さんのガキや!俺の血や!立派な…肺病病みの子や!」 の2人です。

「丑三つの村」の方が、撮影が先かな。
共演後だったのかな。
田中さんはあの映画でも、清らかだった。

あの映画は全てが陰惨で、暗かった。
救いがなかった。
村の人間は、全てが利己的だった。
その中で、彼女の存在だけが安らぎだった。

しかし、後に浅野ゆう子さんと、数人で旅行する番組で見た田中さんは、非常に男っぽかった。
レストランで何を食べさせられるかわからなかった田中さんは、店の人に「てめー、ほんとだろーなー!」と、言っていた。
落差に、ちょっとビックリは…、しました。

「女優は肉体労働者だから、みんな男らしい」と言ったのは、中村敦夫さんでした。
この田中さんを見て、その言葉が頭に浮かびました。
同時に素顔の男らしさを微塵も感じさせず、可憐な役を演じきる田中さんってやっぱり演技派だと思いました。

でも最終回前の回は、九庵先生は強くなっていた。
自分で敵を倒してた。
いつも殴りこみでピンチに陥る九庵先生を助けて、敵のボスを倒すのは古尾谷さんが演じる役なのです。

主人公が弱くて、ボスは助っ人が倒す。
「暴れ九庵」は、珍しい時代劇かもしれない。
でもこれが九庵先生の成長物語なら、九庵先生は見事に成長しておりました。


子供には関係ねえんだ! 「太陽にほえろ」

「太陽にほえろ」ジーパン刑事編を見ています。
そして、石橋蓮司さんが指名手配の強盗犯・市川勝の役でゲスト出演する回を見ました。
タイトルは「その子に罪はない」。

一家4人惨殺事件が発生した。
夫婦と子供、手伝いの女性の4人が殺され、家を売った際に作った4千万円が奪われていた。
事件は本庁に本部が置かれることになり、七曲署には本庁から島田という警部が来ることになった。

島田警部はジーパン刑事を相棒に指名し、ジーパンも反感を持ちながらコンビを組むことになる。
犯行現場になった家の庭に落ちていたタバコの吸殻から、犯人は千葉で起きた質屋の強盗で指名手配中の市川勝と判明する。
質屋の老夫婦を半殺しにして金品を奪い、逃亡してから3ヶ月後の犯罪だった。

市川は13歳の時、育ててもらった叔父を殺害している。
「まるでけだものだ」と、ジーパンは言う。
信じられないと、シンコも言う。
再びジーパンが「どうかしてんだよ」と言う。

島田警部は指名手配の市川の写真にアフロパーマをかけた髪を描き、ヒゲを付け足して、ジーパンに渡し、こいつを頭に叩き込んでおけと言う。
山村刑事こと山さんとシンコは、市川の幼なじみの女性で幼稚園に勤務している今寺良子を見張る。
子供と遊ぶ涼子の姿を見たシンコには、良子と凶悪犯の市川がどうも結びつかず、「信じられないわ」と言う。
だが良子だけが一度、誰にも顧みられなかった市川の服役中に見舞いのはがきを出している。

市川は子供の頃から、ムショ生まれと呼ばれていた。
母親はスリの常習で、父親は不明。
服役中に母親は刑務所の中で市川を生み、そして死んだ。
市川はたった一人の身内である叔父に引き取られたが、その叔父を13歳の時、殺していた。

路地裏で張り込みしているジーパンの前に、市川が現れる。
だが髪をアフロにし、ヒゲをはやして容貌が変わっている市川に、ジーパンは気づかない。
島田警部は市川に気づき、市川を追った。
逃げる市川だったが、手錠をかけられてしまう。

凶悪犯逮捕の報に、マスコミは七曲署に押しかけた。
島田警部の取調べに対し、市川は千葉の強盗は自分だと言った。
だが、夕べの殺しは自分ではない。

「俺じゃねえ」。
「お前だよ」。
「俺じゃねえ」。
「お前だよ!」

声を荒げる島田警部は市川に「皆殺しとは、手際が良くなったじゃねえか」と言った。
「違うよ!俺にはアリバイがあるんだ!」
しかし市川はそう言った瞬間に顔を曇らせ、口をつぐんだ。

山さんは市川のその変化を、見過ごさなかった。
「アリバイだと?」
市川はアリバイのことを言うことなく、「とにかく俺じゃねえよ」と目を伏せた。

「言ってみろ。アリバイがあるんだろう?」
「…そんなものはねえよ」。
アリバイを翻した市川を、山さんは不審に思った。

普通、死刑になるような犯罪を犯して逃げている犯人なら、ないアリバイさえも無理にでっちあげるものだ。
それなのに市川は、言いかけたアリバイを打ち消した…。
連行される為、立たされた市川は安産のお守りを落とした。
外にはマスコミが写真を撮ろうと、待ち構えている。

「何だい、これは?」
山さんがそう聞いたが市川は「行こうぜ、記念写真撮ってもらいによ!」と不敵に笑った。
お守りはまだ、新しいものだった。
「自分は何人も殺しておいて」と、ジーパンは言う。

市川の逮捕に繋がったのは、何者かの密告電話による情報だった。
山さんは市川のムショ仲間に聞き込みをしたが、市川は女性には縁がなかったらしい。
シンコが山さんに、電話してきた。

市川が叔父を殺した時、今寺良子は一緒にいたのだと言う。
では市川が育ててくれた叔父を殺したのは、なぜだったのか。
市川は当時、ほとんど学校を休んでいた。
働かされていたのだ。

だから良子は、学校の授業や様子を話しに、時々市川を訪ねていた。
その日、市川はいなかった。
叔父が隣の部屋で、酒を飲んでいた。
風鈴が鳴っている、暑い夜だった。

ふと、叔父は酒を飲むのをやめ、後ろを向いている良子に近づいた。
良子が振り向き、後ずさっていく。
部屋の隅に追い詰められた良子は、恐怖の表情を浮かべた。

そして、叔父は市川に刺された。
良子が目に涙をためて、市川を見つめていた。
このことがあるまで、市川はムショ生まれと呼ばれても気弱に笑っているようなおとなしい男だったらしい。
だがこれをきっかけに、市川は変わった。

「もし、自分のために人を殺した人間が、それを境に『けだもの』と呼ばれるほどになってしまったら、シンコならどうだ?」
「わからない」。
忘れるか…。
それとも。

まさか、良子が市川を3ヶ月かばっていたのだろうか?
山さんはシンコに、良子から目を離さないように言うと、良子のアパートを再び訪ねた。
管理人は困った顔をして、入り口からだけならと部屋を空けた。

山さんは管理人に、良子の男性関係を聞いた。
管理人が言うには、良子は今頃むしろめずらしいぐらいの、きちんとした娘らしかった。
その時、管理人を呼ぶ声がして、管理人は席を外した。

凶器の刺身包丁が発見され、それで5歳の子供が怪我をして重態になった。
これで市川は死刑になってもお釣りが来る…。
ゴリさんも市川がホンボシだと言うが、山さんは納得していない。
市川が言いかけたアリバイを打ち消したのが、どうしても気になる。

最初は些細なことだと思ったが、山さんの経験からして、犯人が言いかけたアリバイを打ち消すのはひとつしか考えられない。
アリバイを証明できる人間との関係を、打ち消したい場合だ。
たぶん、それは女性だろう。

しかもその女性は、安産のお守りが必要なのだ。
つまり、お腹に子供がいる。
おそらく、市川の子供だろう。

シンコから電話が来て、山さんの勘が当たったようだと言う。
良子はずっと、何件も病院の前に来て、入る勇気がなくて立ち止まっているらしい。
山さんはシンコに、良子がもし病院に入ろうとしたら止めろと言ったう。
「いいか、止めるんだぞ」。

夜中だが、山さんは市川を取り調べに呼び出す。
良子の名前を出すが、市川は聞く耳を持たないと言った風に、手錠をちゃらちゃらさせていた。
市川は良子のために、叔父を殺した。
「今度は何のために彼女をかばう?」

市川は、3ヶ月良子に匿われていたのではないか?
そして殺しのあった晩、市川は良子と一緒にいたのでは?
山さんの推理を聞いた市川はせせら笑い「あんた、俺の弁護士になってくれよ」と言った。

「今度の殺しが加われば、お前は助からんぞ」。
つまり、今までの罪に今度の殺しが重なれば、市川は間違いなく死刑になるということだ。
市川の前に凶器の包丁が置かれ、島田警部は市川の髪をつかんだ。
包丁を市川の目の前に突き出し、そして、「盗んだ金はどこだ」と責めた。

それを見ていた山さんは言う。
「なぜ言わん」。
「お前がやったんじゃないと、なぜ言わん」。

「今寺良子と一緒だったと、どうして言わん」。
市川は黙っていた。
「今寺良子は、お前の子供を身ごもっている」。

「でたらめ言うなよ!」
市川が初めて、気色ばんだ。
それを見た山さんはさらに言う。
「お前にも、人並みの親の気持ちがあると言うのか」。

「自分が何人も人を殺して、今さら自分の子供の安産を願うのは、虫が良すぎる!お前にそんな資格はないんだ!」
突然、市川は感情を爆発させ、立ち上がり、山さんに詰め寄った。
「子供には関係ねえんだ!」

「てめえ、殺してやる!」
しかし市川はすぐに引き剥がされ、壁に追い詰められた。
「子供には関係ねえんだ!」

市川の顔がゆがむ。
「親が人殺しだろうがなんだろうが、子供には関係ねえんだ」。
そう言って、市川は泣き崩れる。

こんな男に、4人も殺す人殺しができるだろうか…?
島田警部も絶句する。
廊下で島田警部は、山さんの顔を見る。
「狙いは、そっちのほうが確からしい…」と言った。

山さんは、今寺良子のアパートに向かう。
管理人室の戸を叩くと、返事がない。
中を見ると、管理人はヘッドフォンをつけて薄笑いを浮かべていた。
山さんに肩を叩かれて、管理人は飛び上がる。

ヘッドフォンからは、女性の笑い声が聞こえていた。
「良子の部屋を調べさせてくれ。令状は後から」と山さんが言うと、管理人は困ると言った。
だが、「令状ならここにあるよ」と言って、島田がやってくる。

山さんが島田警部と管理人と廊下を歩いているとき、女性の笑い声が聞こえる。
その声に山さんが足を止める。
聞き覚えのある笑い声だった。

再び良子の部屋を調べるが、男性のいた気配はない。
だが押入れの前に積み上げられた新聞紙を手に取ると、その下には畳が焦げた跡があった。
「今寺さんはタバコを吸ってましたか?」
「いいえ、とんでもない」と管理人が答える。

山さんが「ふうん」と言って焼け焦げを見ると、「不思議ですねえ」と管理人は首をひねった。
焼け焦げはまだ、新しい。
だがこんなところに、市川が隠れていられるだろうか。
隣の住人の目だってある。

山さんが押入れを空けると、壁に紙が張ってある。
紙をはがすと、壁一面に落書きがあった。
階段を上がる男。
その階段の先で、首を吊られてぶら下がる男。

長く伸びた、葉の一枚もない枯れ木の絵。
壁一面に書かれた数字。
数字は市川が、数えていた日にちだろう。

市川はここに3ヶ月、潜んでいたのだ。
落書きには「ムショ生まれ」という言葉もあった。
市川はここで、息を潜めていたのだ。

暗くなった七曲署の前では、良子がたたずんでいた。
山さんは、彼女が入っていくのを待つ。
やがて良子は、七曲署に入っていった。
良子は取調室で、市川を匿ってことを認めた。

雨の日、良子が帰ってくると、「よっこ」と声がする。
離れたところに、破れた傘を持って市川が立っていた。
「かっちゃん」。
「俺、俺」。

「あたし、知ってる。強盗したんでしょ。ねえ、かっちゃん、逃げられやしないわ」。
良子は自首を勧めた。
「自首か。やっぱりな。よっこなら、そう言うと思ったよ。だけど、一晩だけ、ゆっくり休みてえんだ。どうせ一生、ムショ暮らしだしな」。

市川の声は、寂しそうだった。
「一晩だけ、ゆっくり眠りてえんだ。頼む。ゆっくり眠りてえんだ」。
良子は市川を見つめた。

山さんに、良子は言った。
「こうなったのは、私のせいです。あの人は私のために、人を殺しました」。
「それにあの人は、誰も救ってくれない。誰もが、同じ目で見るんです。ああ、やっぱりムショ生まれの子だって。でも私だって、何もしてやれなかった」。

「私、あの人から、一生刑務所で暮らすって言葉を聞いた時、もう自首を勧める気持ちは、ありませんでした。一日でも多く休ませてあげたい、そう決めたんです。刑事さん、一生って長いですね」。
「あれはあの人じゃ、ありません。あの日、私たちは一緒に、明け方まで歩き続けていたんです。最後の日だったんです。最後の」。

「最後?」
良子は、お腹の中の市川の子供を生むと言い張った。
すると市川は、部屋を出て行くといった。

生まれてくる子供が凶悪犯の子供だと言うことは、どうしても知らせたくない。
子供に、自分のことを知らせたくない。
どんなことがあっても。

「確かにどんな子供でも、刑務所で生まれた子供であっても、あなたから生まれる子供であっても子供に罪はない」。
山さんはそう言うと、安産のお守りを出す。
市川が持っていたと聞くと、良子は泣いた。

良子と別れた後で、手に入れたのだろう。
市川には守ってくれる人が誰もいなかったが、彼の子供には良子のような母親がいる。
「私には何も言う資格はないが、もし君の気持ちがぐらついているとしたら、そのことをよく考えてほしい」。

「私、…、私、…、ぐらついてたんです」。
良子が嗚咽を漏らす。
「ぐらついていた…」。

七曲署は、シーンとしていた。
どうやらけだもののような男にも、人間らしい気持ちが残っていたようだ。
だが決め手のタバコの吸殻はなぜ、あそこに落ちていたのか。
「真犯人はうまい決め手を残していてくれたよ」と、山さんが言った。

翌日、山さんとゴリさん、ジーパンが良子のアパートに向かった。
管理人室の戸を叩く。
返事はない。
中に入ると、ヘッドホンが置かれている。

ジーパンが、2人の後ろからのぞきこむ。
ヘッドホンからは「あんた、ハンカチは?」という声が聞こえていた。
「ああ持った」。

生活している音がする。
別のチャンネルに回す。
今度は「早く食べて頂戴」と言う声が聞こえてきた。

「盗聴器か!」
管理人の高田は、アパートの部屋の様子を盗聴器で聞いていたのだ。
高田はこれで、市川のことを知ったのだろう。
しかも管理人なら、市川のタバコも手に入れられる。

高田が家賃が遅れたことで、住人に文句を言っている声が聞こえる。
向かいの別棟に、高田がいるのが見える。
山さんとゴリさん、ジーパンが階段を下りてくる。
管理人室に戻ってきた高田が、3人を見上げる。

何かを察した高田が、逃げた。
3人が追う。
少し離れた空き地で、高田は捕まった。
手錠をかけられた高田は、暴れた。

山さんは、市川に会いに行った。
留置場の中で市川は、山さんに言った。
「山村さん、頼みがあるんだ。良子に伝えてくれねえかな。子供生んじゃいけねえって」。

だが、山さんは言った。
「子供には関係ねえって、お前の口から言ったんだ」。
すると市川は、ポツリと言った。
「嘘だよ。そんなこと嘘だ」。

山さんは、出て行く。
ガシャンという音がして、留置場の戸が閉まる。
鉄格子の中で、市川はうつろな目をして立っていた。

外では、島田警部が山さんを待っていた。
「山村君、見事に顔をつぶしてくれたな。二度とこんな真似はさせんと、君のボスに言っておいてくれ」。
そう島田警部は言ったが、顔は晴れやかだった。

七曲署に戻ってきた山さんに、シンコが良子が昨日、「お腹が大きくなっても面会に行く」と言ったことを教えた。
もしそのことで市川が文句を言ったら、どやしつけてやるとも言ったらしい。
「ほんとにそう言ったんですよ」と、シンコが言う。

大丈夫だ。
良子はきっと、立派な強い母親になるだろう。
山さんがそう確信した時、ボスが山さんの妻も元気になったことだし、今度は山さんだなと笑った。
照れた山さんが、頭をかく。



おおっ、蓮司さんだ!と思って見たのですが、濃い1時間でした。
2時間ドラマでやってもおかしくないほど、内容が濃かった。
刑事アクションドラマかと思うと、こんな濃密な人間ドラマが用意されているから油断できない。

これ、途中から見て覚えているのに気づきました。
壁一面に描かれた、暗い、おどろおどろしい絵。
市川の人生の、生い立ちの、怨念と悲しみがこもった絵。

これを覚えていました。
あっ、この回だったのか~と思いました。
良子がおそらく、叔父に乱暴されそうになったシーンなんかは一切描かない。
あと、4人が殺された遺体も部屋も映さない。

ただ、叔父の飲んでいる酒の入った湯のみ、それがちゃぶ台に置かれるシーン。
良子に影が近づき、後ずさりしていく様子。
ふすまに映った影が、刺されたらしいシーン。
殺害現場でも、布がかけられた担架が運ばれていくシーンが映るだけです。

「太陽にほえろ」は放送時間が夜8時ということもあり、子供も見ることも考慮し、表現はずいぶん抑えていたのだと聞きました。
それでもこれで、何が起きたのか、視聴者にはなんとなくでもわかるように表現している。
すばらしいと思います。
レベル高い。

今回の主役は山さんなんですが、やっぱり市川の石橋蓮司さんがもう1人の主役ですね。
当時、石橋さんはその落ち着きなく動く目で、偏執狂とか演じるとシャレにならないぐらいはまった。
しかし、当たり前だけど当時からすばらしい表現力をお持ちでしたね。
この話を覆うのは、ムショ生まれと言われ、小さい頃から虐げられて来た市川の人生。

彼がどういう風に子供たちに、どう扱われたのか。
叔父には、どういう扱いをされたのか。
13歳で叔父を殺した後、彼が大人たちにどういう扱いを受けたのか。
どういう風に、凶悪犯にまで堕ちて行ったのか。

石橋さんの卑屈な、凶暴な、哀しい表情でそれが透けて見えるんです。
市川の人生を感じさせる。
そこにあるのは、凶暴な市川の怒りというより、哀しみ。

圧巻は「子供には関係ねえんだ!」で、グシャグシャにゆがむ市川の顔。
この男に子供は殺せないよ…。
山さんじゃなくても、思いますよ、これは。
市川にあるのはどうやっても、普通に生きることを許されなかった男の哀しさが胸に迫ります。

ああ、良子がかばうはずだ。
本当は気弱な優しい男なんだ。
必死にまっとうに生きようとしてきたはずなんだ。
その彼が、凶悪犯にまで追い詰められる人生って…。

管理人の高田が、盗聴しているのに気づいた時、ああ、こいつだー!と。
しかしあんな狭い押入れに3ヶ月って、つらいな。
これまでの人生と自分のこれからの運命を壁に描いた市川は、本当に暗くつらかったんだと思う。
そんな押入れの日々でも、良子と一緒に暮らせた市川には、今までで一番幸せな日々だったのかもしれない。

嘘のように穏やかになった市川が、「山村さん」と呼ぶラスト。
「頼みがあるんだ。良子に伝えてくれねえかな。子供生んじゃいけねえって」。
世の中の全てとのつながりを断ち切る、市川の言葉。

「子供には関係ねえって、お前の口から言ったんだ」。
山さんの言葉に答える石橋さんの口調。
関係ないって信じたかったんだよね。
そして、ついにそうじゃないと思い知るだけだったんだ。

「嘘だよ。そんなこと嘘だ」。
うつろな目。
もう、ね、石橋さんがかわいそうでかわいそうで。

凶悪犯になった時はすごい怖かったんだろうけど、こんな目されちゃあね…。
何とかしてやりたいと思っちゃうよね。
子供を失った時の状況がオーバーラップしていた山さんもきっと、良子は支えてくれる。

意外にも自分の間違いを認め、山さんの捜査も妨害せず、徹底して市川を目の仇にすることもなかった島田警部。
こういう人はきっと、市川の力になってくれるんじゃないかな。
演じたのは「暗闇仕留人」で、おきんの悲恋の相手にもなった伊藤孝雄さん。

強盗はしたし、これまで余罪もあるのかもしれないけど、一生、刑務所暮らしになるかどうかはわからないよね。
こういう時こそがんばってくれ、弁護士!と言いたくなってこの話は終わります。
しかし石橋蓮司さんって、昔から良い演技してましたねえ…。
堪能しましたよ。


UFOは世界をつなぐ

6月24日は、「空飛ぶ円盤記念日」だったんですね~!
この前、「ネッシー記念日」がありましたが、最初にこの「空飛ぶUFO記念日」の記述を見た時、「何?!」と思ったんでした。
これは、1947年に実業家・ケネス・アーノルド氏が自家用機で!
飛行中、UFOに遭遇した日なんですね。

場所はワシントン州。
空飛ぶ謎の飛行物体は9機いたそうで、ケネス氏は尾翼もないので新型の飛行機かと思ったらしい。
ところがそんなものは、軍隊にも存在してなかった。

この飛行物体はまるで、お皿を水平に飛ばしたような飛び方をしていたとか。
それで空飛ぶ円盤、と新聞記者が称した。
正式にはUFOというのは後でできた言葉なので、「空飛ぶ円盤記念日」と言う方が正確みたいです。
UFO、地球外知的生命体なんでしょうかね!

これについて麻生副総理は、お母上が目撃して興奮していたことがあると、おっしゃってました。
おお、反応がみんな同じだ?!
楽しい!
さらに麻生副総理は、この広い宇宙の中、地球だけが知的生命体が存在していると考えるのは想像力に欠ける気がするとおっしゃってました。

そうね~、宇宙なんて想像もつかないところだし。
始まりはどこで、終わりはどこで、その外はどうなってるか。
わからない。

始まりとか終わりとか外とか、そういう概念の場所じゃないと言われると、じゃあどういう場所なんだろうと思う。
もうね、全っ然、わかんない。
しかしケネス氏の証言はむなしく、アメリカ軍だか政府は「目の錯覚!」と結論付けて終わったらしいです。
残念。

私、昔、聞いたんですけど、警察の公的な文書には、超自然現象的なことは書けないらしいですね。
たとえば、犯人が自首してきた理由が「殺した人の亡霊が毎晩出て責めたから」とか、そういうこと。
事件に関する証拠がどこにあるか教えた人が、なぜそれを知っているかと聞かれて、死んだ人が教えてくれたとかそんなことですね。
ごくたまに、捜査員がどう考えても説明がつかないことがあるらしいんですが、そういう超常現象的なことは公的な文書には書けないと聞いたことがあります。

ケネス氏の証言も、そんな扱いなんでしょうかね。
わかんないものは、こうやって扱うしかないというか。
UFOというものを、公式に認めるのができないとか何とか。

この空飛ぶUFO記念日には、世界中のUFO愛好家?は観測を行うんだそうです。
世界中がひとつになったみたいで、楽しい。
愛は地球をつなぐ!
ならぬ、UFOへの探究心は地球をつなぐ!


か、かったるい

月曜日はだいたい、かったるいものですが、今日は特にかったるい。
確かに土曜日は夜更かししてましたが、日曜の夜はちゃんと寝たんです。
疲れが1日遅れで来たのか!?
だとしたら、年だわ~。

しかし今日は、かったるい。
天気とか、気圧が悪いんでしょうか。
私が貧血だか、低血圧なんですかねえ。
用事があるというのに、困ったもんだ。

友人も、すっごいかったるいと言って、伸びている。
あ、かったるい。
かったるい。
かったるい。

言葉に出したほうが、いいのか。
うんざりさせてしまうのか。
でも、かったるい。
言ったって言わなくたって、かったるい。


ジュピターには何時につくんだ? 「蘇る金狼」

松田優作氏の映画、「蘇る金狼」を見ました。
気がついたんですが、スタッフで「トビー門口」さんって方の名前がクレジットされてる。
この方の名前、この前に見た「丑三つの村」にも出てきてました。

「金狼」は、角川映画。
「丑三つの村」は、松竹映画。
偶然ですね。
何の担当者かな。

以下、全部、映画のネタバレになっていますので、ご注意ください。



さてこの映画、松田優作氏じゃなかったら、できない映画でしたね。
この映画で優作氏は、男が憧れるワイルドな男を演じていた。
ところがこのワイルドさ、主人公の朝倉のタフさは優作氏じゃないと説得力が出ない。

もう、朝倉はこの時の優作氏しかできない。
優作氏の魅力炸裂の映画でしょう。
映画のラスト近くに朝倉が転ぶシーンがあるんですが、足が長いから転んでもいちいち、かっこいい。

みんな、そう思ったんでしょうね。
当時の人気ナンバーワンの方ですが、この転び方を真似たなと思うシーンを、90年代のドラマで見たことがある。
ランボルギーニを届けに来たディーラーさんに、「いいよ、帰って。帰れ」と朝倉が言うんですが、この主演の方はおそらくこの口調も真似ている。
日常的にやってる気がします。

でもこの映画で良いのは、優作氏だけじゃないんですよ。
私としては脇役の成田三樹夫さん。
岸田森さんもすばらしいと思う。

浅倉に愛人の京子を取られた成田さん演じる重役が、京子の家に男がいると思う。
家捜ししながら、へっぴり腰で叫ぶ。
「泥棒猫っ!出てきなさい!」
このセリフのおかしさ。

日本語に妙なイントネーションがある殺し屋の岸田さん。
殺しを頼まれて、「ギャラ、高いよ」。
「恨み、深いよ」。
この不気味さ、おかしさ。

浅倉に殺されるヤクザの今井健二さんの、命乞いの仕方。
奥さんと子供は?と朝倉に銃を向けられて聞かれて、「いるいる、いっぱいいる!」
千葉真一さんの、「朝倉」になれなかった男。
俳優さんたちの演技も、生かし方もすばらしい。

話自体は銃撃戦あり、殺し合いありで、朝倉が野望を達成していく話。
当然、「こんなことできるか~い!」「こんなことあるか~い!」なんだけど、この映画見てると、そういうありえない夢を見せるのも映画だよね。
夢を見せるのも、俳優の力だよねと思ってしまう。

もういいの。
これは優作氏の、優作氏を堪能するための映画だから、いいの!
カウンタックというスポーツカーを手に入れて疾走するのに、道路に人も1台の車もなくて、信号もないみたいなのもいいの!
猛スピードで走ってる途中、笑いが止まらなくて、両手を離しているみたいだけど、それもいいの!

これほどのパワーが、この映画の優作氏にはある。
今はありえない映画だけど、楽しい。
朝倉なんて男には女性の「女にできない職業はない!」なんて男と対等に張り合う女も、通用しない。
「男を利用して、最後に笑うのはワ・タ・シ」なんて、峰不二子的なものも通じない。

女性はあくまで、朝倉に食われる存在。
…というわけで、狼・朝倉に食われ尽くされるウサギさんか、鹿さんといった風情の女性が京子。
成田三樹夫さん演じる重役の愛人です。

彼女、京子は朝倉に、会社の情報を得るために麻薬を仕掛けられる。
きっかけは朝倉が京子のゴルフの練習の隣で、お茶目なことをしたこと。
朝倉はこのお茶目さで、京子の警戒心を解くのに成功。
体の大きな優作氏が、ぺこっと頭を下げて走る様子は確かに愛らしい。

このシーンで流れる音楽を聴いて、なぜかこの時代を感じました。
そして京子は麻薬と言うより、朝倉のとりことなってしまう。
何かこれって、男の夢っぽいですね。

しかし朝倉が麻薬を重役に譲ったことを知り、自分は用済みとしてを捨てる気だと確信した京子は朝倉を刺す。
演じる風吹ジュンさんが可憐で、良いです。
今でもかわいらしくて素敵で好きな女優さんですが、朝倉のことを笑う時の笑顔なんか最高に素敵です。
だから京子が、かわいそうでしょうがない。

朝倉は絶対に自分の手の内にあると思っていた相手から、思いもかけぬ逆襲を食らう。
あれほど手ごわくタフだった朝倉が、致命傷を負う。
朝倉が京子の首を絞めると、京子は弱々しくすぐに息絶える。
まるでもう、生きていることを放棄しているように見える。

京子が白い服を着てるから、血の赤が鮮やか。
2人がいる廃屋に、教会の鐘が鳴り響く。
朝倉が手を合わせる。

許しを請うかのように。
京子を生き返らせたいかのように。
もしくはただ、錯乱しているかのように。
朝倉が息絶えた京子の心臓をさすり、「死ぬな…」と聞こえないほどの声でつぶやいたように聞こえる。

死んだ京子を前に、朝倉は初めて動揺した姿を見せる。
嗚咽らしき声を漏らす。
ぐったりとして動かなくなった京子を抱きかかえ、朝倉は京子を廃屋の下の部屋に落とす。
深い奈落。

ここで、前野曜子さんのテーマ曲が流れる。
京子を見つめたまま、ポケットから航空券を2枚出す。
朝倉は京子を連れて行くつもりだったのだ…。

必要のなくなったチケットを、朝倉は京子の死体に投げる。
「お前の席だ」。
無言の言葉が聞こえてくる。

「バカな女だ」?
いや、京子との出会いで言った「かわいい女だ」だと私は思いたい。
そして、その赤いチケットを粉々にした紙ふぶきを、京子に向かって降らせる。

あれ、チケット1枚は京子に投げたとして、ちぎっちゃったらダメじゃないの?
なんて思ってんですけど、私、何か間違ってますか。
まあ、そんなことは初見の時は思わなかった。

キラキラ、紙ふぶきが舞って落ちていく。
何度もかける。
小さなチケットにしては、量が多いなあ。
しかも赤いもんね。

何か別のものを破ってるのかな。
でも絵になるから、いいや。
朝倉だけの、京子を送る儀式。

テーマ曲が流れる中、朝倉は1人、空港を行く。
この時、歩いていく朝倉の後姿を、遠く、空港の上の階からカメラが追っていくんですね。
平然と歩いているから、たいしたダメージじゃなかったのか?と思ってしまう。

いや、結構ぐっさり刺さってたぞ。
すると朝倉が、よろける。
あ、やっぱり。
突然、長い足をもつれさせて派手に転ぶ。

あ、死んだ。
そう思ったら朝倉は起き上がると、ハンカチで優雅に膝を払い、歩いていく。
余計なことを考えると、朝倉は血に染まった服や手はどうしたんだろう。
手は洗ったとして、服にも血がついてなかったか?

でも、ここは最高にかっこいいシーンだから、やっぱりどうでもいいや。
空港になぜ、誰もいないのかとかも、ちょっと思ってしまったけど、良く見ると、自動車が展示されている前のベンチに1人、座っている。
画面右上にも、足だけしか見えないけどこれは誰か立ってるのかもしれない。
そして飛行機が離陸するカット。

機内では、外国人の客室乗務員が朝倉に「ムッシュウ」「ムッシュウ」と声をかけてる。
どうも様子がおかしいといった風で、中島ゆたかさんの客室乗務員に耳打ちする。
中島ゆたかさん。
70年代から80年代初頭のアクションドラマには、いてほしい女優さん。

日本語がわかる中島ゆたかさんの乗務員が、朝倉に声をかける。
「お客様、どこかご気分でもお悪いんですか」。
朝倉が首を振る。

ゆたかさんがにっこりして「何かお飲み物でも、お持ちいたしましょうか」と言う。
すると朝倉が「ワイン」と、ぽっつりと言う。
安心したゆたかさんが「何がよろしいですか」と聞く。

「ジュブレ・シャンベルタン。2001年の。僕の友人のナポレオンが愛用してたやつ」。
「はぁ?」
「ねえ、ジュピターには何時につくんだ?木星には何時につくんだよ。木星には何時につくんだ。木星には」。

ゆたかさんが、怯えた表情で離れる。
顔色の悪い朝倉が目を見開いて、カクンと首を妙な感じに横に傾ける。
それきり朝倉が動かなくなる。

客室乗務員の2人が、後ろで話している。
画面が白くなる。
朝倉が部屋に飾っていた仮面が2つ、その白い画面の両側に浮かぶ。
その中心に「終」の文字と、じゃじゃーんと終焉の音楽。

原作は読んだことないんですが、原作だと朝倉は勝ったまま、日本から旅立つらしいんですね。
それで京子は殺されて、祈りをひとつだけされて、終わりらしい。
原作がどこにもないんで、確かめようがございません、すみません。

でも優作氏なら、この映画のラストになるだろうなあ。
いや、カウンタックで笑って調子に乗っている時点で、これは朝倉、死ぬなと思いましたけどね。
松田優作氏の美学からいっても、これは死ぬだろうと。

全てを手に入れた時、女性に刺されるっていうあっけなさ。
またその女性を、彼は利用するだけのつもりが、愛してしまっていたという悲劇。
女性は女性で、朝倉の本心を知らずに死んでいくむなしさ。

優作氏の、滅びの美学が凝縮されている。
だけど今、このラストも真似て、意味なく最後に主人公を死なせても違和感だけがあるだろうなと思ってしまう。
それほどこの映画の優作氏は、破滅する説得力を持っている。

なぜ「蘇る金狼」なのか、わかんなかったですけど…。
今の世の中に、昔はいたはずの金狼のような男がいなくなった。
そこに朝倉という男が現れ、狼のような男が蘇った、ということでしょうか。
原作読めば、わかるのかな?

しかしこれは何と言っても、優作氏を見るための映画と言ってもいい。
こういうのも含めて、本当に朝倉は当時の優作氏にしかできなかったなあと思います。
彼を好きか嫌いかは、人それぞれ。

私生活について、前夫人が書いていた著書を読んで、思うことはある。
でも優作氏について言いたいことがあってもこの映画の、この時の優作氏は輝いている。
永遠にこの姿は、スクリーンに残り、魅了される人がいるのでしょう。


助けてあげたい 「暴れ九庵」

見たことなかったのですが、現在「暴れ九庵」という時代劇を見ています。
しかも途中から。
風間杜夫さんの時代劇初主演作だそうです。

九庵は漢方医。
漢方医と見せて、実は裏の仕事人…ということもなく、本当に漢方医さんです。
熱い正義の心をたぎらせ、事件に遭遇すると怒りに燃えて殴りこむ。

萬屋錦之介さんの「おめえたっちゃ、人間じゃねえ!たたっ斬ってやる!」の先生を思い出しますが、全然違う。
だって、九庵先生、弱いんだもーん!
武器は、自分が愛用している高下駄。
それで悪党のところに殴りこんじゃうって、無茶。

だから、正義の味方なのに無残に出血はするわ、髪振り乱しちゃって結構、ひどくやられる。
しかしこれが、風間杜夫さんの持ち味を生かしていて、おもしろい!
風間さんは「スチュワーデス物語」で、一躍スターになりましたが、それはこのドラマの少し前らしい。
「スチュワーデス物語」の「教官!」を受けて、この役ができたと言うわけですね。

そう考えるとこの、弱い正義の味方も納得してしまう。
なんというか、助けてやりたくなるキャラクターなんですね。
実際、九庵はいろんな人に助けられてる。
殴りこみも、本業の医者でも助けてもらう。

後半から見たんですが、風間さんの出番が少ない回もあるんですね。
忙しかったのかな。
変り種の時代劇で、楽しくて好きですよ。
途中から見たので、今度は最初から見るつもりです。


鵺の鳴く夜は怖ろしい… 「悪霊島」

CATVで2006年版の「犬神家の一族」を見ました。
そして今度は「悪霊島」を見ました。
「犬神家の一族」は横溝正史作品の映画化で、これで角川映画は一気に乗りました。

横溝正史ブームも起きました。
「悪霊島」も横溝正史の晩年の作品で、こちらも映画としては当時のブームの最後のほうに映画となりました。
「犬神家」は、市川崑監督。
「悪霊島」は、篠田正浩監督です。

だから、タッチが違います。
主演の金田一耕介だって市川監督は石坂浩二さんで、篠田監督は鹿賀丈史さんなんですから、違って当たり前なんですが。
でも鹿賀さんの金田一耕助も、もう何作か見てみたかったなという気持ちになりました。

1980年、冬。
放送局に勤めている三津木五郎は、同僚のジェスチャーで呼ばれます。
「何?」
五郎が中に入ると、ジョン・レノンが射殺されたニュースが放送されてました。

ニュースのビートルズの映像を見て、五郎は思い出す。
ビートルズが日本に来た1960年代。
五郎は旅の真っ只中だった。
青春と言う旅の真っ只中だった。

そのたびの頂点で出会った、ひとつの事件。
あれで否応なく、五郎も変わらなくてはえなくなった。
五郎は思う。

「それにしてもあの事件は僕にとって、何だったのか。
そしてあの島は。
確かに血なまぐさい風が島を襲い、荒れ狂ったけど。
今思うに、あの島での10日の日々こそ、もう二度と足を踏み入れることが叶わぬ、魂の聖域だったのかもしれない」。

ここでビートルズの「レットイットビー」が、流れたはずなんです!
流れません。
やっぱりダメなのか~。
流れないのか~。


話としては、島で起きる連続殺人で「獄門島」。
平家の落人という、戦に負けて落ち延びた者がたどり着いた土地という点で「八つ墓村」を思い出します。
断崖絶壁の海へと男が落ちていく。
男は虫の息で引き上げられ、「あの島には怖ろしい悪霊が…。鵺の鳴く夜には気をつけろ」と言って息絶えます。

ヒッピースタイルで、旅行して歩いている、若き日の五郎が向こうからやってくる。
その頃の五郎は、電車はただ乗りに決めていた…、ということで、ある単線のローカル電車から五郎は降りて、線路を走る。
電車の中で知り合った、ぼさぼさ髪の着物スタイルの「おっさん」を誘って。

ところがこのおっさん、鈍い!
つかまるかと思ったところ、おっさんも五郎もちゃんと逃げられた。
このおっさんが、金田一探偵なのでした。
フェリーの乗り場では、引き上げられた男の死体が検分されている。

そこにいるのは、磯川警部。
この顔じゃ、全然わからんと言うほど、男の遺体の損傷は激しく、唯一の手がかりはスーツの「青木」のネームだけ。
つまりそこで磯川警部に発見されてしまった金田一は、一連の殺人事件を任されてしまうわけです。

磯川警部の担当している事件に、老婆殺害事件があった。
この老婆・浅井ハルはもぐりの産婆をしており、24年前、ある暗い秘密に関わり、つい脅迫などもしてお金を得たりしたのですが、身の危険を感じ始めた。
そこで磯川警部に手紙を書いたのですが、一足違いで殺害されてしまっていたのでした。

老婆のところで見つかったのは、刑部神社の「大吉」のおみくじだったが、そのことに詳しい母親を持つ部下によると、この神社はもうおみくじを作っていない。
おみくじは20年以上も前のものだ。
なぜ、そんなものを老婆は持っているのだろう。

すると、金田一も話し始める。
実は金田一が依頼を受けた仕事も、刑部島に関係があるのだが、5月に青木と言う人物が刑部島に渡ったきり、消息が知れなくなった。
青木と言えば、さきほどの死体ではないか!?

金田一にこの仕事を依頼したのは、実力者として村会議員も頭を下げに来るような人物の越智竜平。
刑部島は代々、この網もとの越智家と平家の落人の生き残りが村の宮司の娘をもらった刑部家の2つの家が君臨している。
越智竜平はアメリカに渡り、事業で成功した男。
この巴と越智竜平は、若い頃、恋人同士だったらしい。

2つの権力者の家というと、「悪魔の手毬歌」みたいでもあります。
さて、瀕死の青木がつぶやいた言葉が、録音されていた。
その言葉を聞かされる金田一。
「あいつは、腰のところで骨と骨がくっついた双子なんだ。あの島には悪霊が…、あの島にはおそろしい悪霊が…。いいか。鵺の鳴く夜は気をつけろ」。

金田一は、刑部島に渡る。
さてこの刑部島には、五郎も渡っていた。
島には美しい双子の姉妹・真帆片帆と、姉妹よりもさらに凄みを感じるほどの美貌の母親・巴御寮人がいました。
3人の写真を撮っているのが、あの五郎だった。

…と言った具合に、話は進行していきます。
そして起きる連続殺人事件!
「犬神家の一族」に始まる横溝正史ものの映画は、大物女優が犯人役を演じることで話題にもなりましたが、ここでは岩下志麻さんが出演しています…。
ということは、ええ。

横溝映画は、女優たちが美しく、時に悲しく、怖ろしいのですが、この岩下さんもそうですね。
岸本加世子さんが演じる真帆に向かって、手を伸ばし、ペタリと触るしぐさが、初見のときとても怖ろしかった。
美しく、神秘的な巴と、淫奔で狂乱のふぶきの目の色の演じ分けがすばらしい。
そして本当に美しい。

さすが、篠田監督。
岩下さんの独壇場です。
それに対して、金田一も他の出演者も、いまいち影が薄い。
真帆も五郎も女中さんも、もっと動かせたなあと思うと惜しい。

去っていく連絡船を崖の上から見ている真帆のカットなんか良いので、彼女と五郎をもっと絡ませても良かった気がします。
というか、私はもっと絡んでると思ったんですけどね。
金田一と五郎も、もっと絡むかと思いました。

逢引していたのが片帆じゃなくて、真帆と五郎の方がおもしろかったな、などと思います。
事件の夜、五郎と会っていたのは真帆とすりかわってやってきた片帆。
それで片帆が殺されてしまったとかね。

去っていく連絡船を見ている、白装束の真帆。
磯川警部が写真を、五郎に渡す。
こんな風だったら、五郎への巴一家への思いの深さが違ってきた。
五郎が撮影した、磯川警部が渡して五郎が見直す巴と片帆真帆とのスリーショットの写真がもっと胸に迫ってきたと思います。

「血なまぐさい風が吹き荒れた。僕も深い心の傷を負った。でも金田一さん。あの島での日々はやはり僕にとって、二度と戻ってこないめくるめく無限の旅でもあった」。
この言葉が、ジーンと響いてきたかもしれない。
惜しいなあ。

警察の車が港に到着し、走っていく。
車の前を、金田一耕助が横切る。
磯川警部と五郎が、思わず走り去る車の中から金田一を目で追う。

五郎が、車のガラスの向こうで「金田一さん」と叫ぶ。
彼の声は、金田一には聞こえない。
流れていく金田一耕助の後姿。
後姿がストップして終わり。

もっと五郎と金田一耕助が繋がっていたら、このシーンも切なさが増したと思います。
これで金田一の消息は、わからなくなるわけですし。
ついでながら、そんな一言もあると良かったかな。

要するに五郎が金田一耕助に思いを寄せるほど、2人は関わりあったかな?
心が痛むほど、巴たちと五郎は関わりあったかな?
巴以外の場面が薄いんです。
だから、あんまりラストが胸に迫ってこないんです。

「獄門島」の鐘を突く大原麗子さん。
遠ざかっていく船。
船から見て、遠ざかっていく獄門島。
これは、なかなか余韻があったんですけどね。

一つ一つは良い画面なだけに、すご~く惜しい。
もっとドラマが見たかった。
時間が足らないのかな。

そして、ここで流れるのも、「ビートルズ」のレットイットビーじゃなかった。
「レットイットビー」と横溝正史の、意外な適合に驚いたんですけどね。
残念。
洋楽を使うのって、難しいんですね。

全体的にものすごく盛り上がりそうだったのに、盛り上がらなかった。
でも、岩下さんの巴は見ごたえありますよ。
篠田監督の責任じゃなくて、原作が映画化に向かないのかもしれないし、今までの横溝映画を見てた私が違った方向に期待しすぎたのかもしれませんね。


さよなら平さん こんにちは弁慶さん

現在、チャンネル銀河で見ている「大都会Part2」。
13回目の「俺の拳銃」で、粟津號さんが演じた平原春夫が殉職してしまいました。
私はこれ、見られなかったんですよ。

な~んだろう、遠足だか何だか、とにかくすごく疲れた日で、眠ってしまったんです。
起きたら、終わってた。
どうなったんだと聞いたら、平原が死んじゃって、徳吉は出張でいなくて、後で電話でそれを知って仇を討ちたいと言ってたと教えてもらいました。
すごい、何十年ぶりかで見ることができたんですね~。

話は、厳格な父親に反抗して家出した少女が自殺したことから始まりました。
原因は少女に寄生していたヤクザだった。
父親は平原を背後から襲い、拳銃を奪い、少女が勤めた風俗店の店長を初めに、反社会的だと思った人物を平原の拳銃で襲う。
一度は刑事を辞めようと思った平原だが、黒岩に辞めるのはいつでもできる!と言われ、拳銃を自分の責任で取り戻そうとして命を落とす。

前回は新しい課長が来て、歓迎会で腹踊りしてたんですけどね、平さん。
ころっと丸いけど、筋肉質の体型で、愛嬌がありました。
黒岩にもかわいがられていた。
明るいキャラクターだけに、殉職の非情さが泣けました。

そして14回目から神田正輝さんの神総太郎と、苅谷俊介さんの演じる宮本兵助が加入。
苅谷俊介さんのことを、「弁慶さん」と言っていたんですが、これだ、このドラマで宮本刑事が「弁慶」と呼ばれていたからでした。
今回は、徳吉刑事はお休み。

それで今回の話は、ごく普通のサラリーマンがビルの上から落ちたことから始まりました。
どうも自殺とは考えられない。
すると今度は別のサラリーマンが、刺殺された。

共通点は、同じ大学の山岳部に所属していたことだった。
その山岳部では、1人の部員がザイルが切れて死亡する事故が起きていた。
殺された男と死んだ部員とは、男の婚約者に関して因縁があったらしかった…。

こんな風に「大都会Part2」は刑事アクションドラマかと思ったら、ドラマ部分が記憶に残っていた以上に、作りこまれているんですね。
この頃の火曜夜9時の刑事ドラマは、すごく楽しかったんだ。
毎週、火曜日、昼間にも「今日はこのドラマがある」と思うと、わくわくしたものです。