こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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てめえには、がまんならねえ 「長谷川伸シリーズ3」 中山七里

「長谷川伸シリーズ」の3回目は、「中山七里」。
私はこれは、市川雷蔵さんの映画で見ていました。
共演は、中村玉緒さんでした。
こちらで、主人公の政吉を演じるのは竹脇無我さん。

政吉は材木問屋の江差屋の木場で働く人足の若者。
明日、祝言を挙げるおさんは、近くの料亭で働く仲居であった。
昼休みの間、2人は明日の祝言のための支度金を出し合うが、どうしても足りない。
しかし親兄弟、親類もいない2人は頼る相手がいない。

おさんは借金を、料亭の女将に頼んでみると言う。
どうしても、花嫁衣裳が着たい。
それには、あと5両がほしいところだった。

もう普段着でいいじゃないかと言う政吉におさんは泣きべそをかきながら、「あたしだって女よ…」と言う。
政吉はあわてて謝り、店の江差屋の旦那に自分も借金を頼んでみると言った。
木場の仲間も頼んでくれるが、江差屋の主人は政吉がこの前、酒を飲んで茶屋で喧嘩をしたことを持ち出して断る。

断られた政吉が、しょんぼりと帰るのと入れ違いにやってきたのは、亀久橋の文太と呼ばれる十手持ちだった。
文太に旦那は、明日祝言だと言うが承知させられるか?と聞くと、文太は自分は亀久橋の文太だと豪語する。
つまり、借金をさせる代わりに、おさんに一晩付き合えと旦那が言って、文太と料亭の女将が取り囲んだ。

逃げ出そうとするおさんを文太がとらえ、張り倒す。
それでもおさんは、政吉に心底惚れているので、勘弁してくれと懇願する。
すると文太は今度は、この前の政吉の茶屋でのケンカはまだ後始末がついていないと言い出した。
旦那と自分で何とか収めただけで、その気になれば政吉はいつでもお縄にできる。

さらに料亭の女将も、このままだと政吉が木場で勤められなくなると脅す。
おさんは政吉のために、従うしかなかった。
泣き崩れながらおさんは、旦那に奥の座敷に連れられていく。

その頃、政吉の長屋には木場の仲間や長屋の住人がお金を持ち寄ってやってきてくれていた。
みんなの気持ちに頭が下がりっぱなしの政吉だが、その夜、おさんは帰ってこなかった。
翌朝、仕事をしている政吉のところに、文太がわざわざやってきて、変わりはないかと聞いてきた。
妙な気持ちになった政吉は、おさんが帰ってこなかったことが気になる。

仲間が材木を運んでいったとき、旦那がおさんを手篭めにした話を聞いてくる。
政吉は家に走ると、家ではおさんが、食事の仕度をしていた。
おさんは花嫁衣裳を見せ、お金を見せる。
これでもう…と言いかけたおさんの手から金を叩き落とし、政吉はおさんを問いただし始める。

夕べは、何をしていた。
これは、どういう金だ。
「女将さんに話して…」と言ったおさんを、政吉は張り倒す。

政吉はこれは旦那のおもちゃになってもらってきた、「汚い金だ」と言った。
「ちくしょう」と言って、政吉は仕事道具の鳶口を持ち、立ち上がる。
必死に、おさんは止める。

文太を味方につけた旦那には、脅されたり、嫌がらせされたりするのだ。
すがるおさんに向かって、政吉は手篭めにされた手で!と言ってしまう。
おさんは、それじゃあ、お前さんが私だったらどうするのと聞く。
「おまえさんが私だったら、どう、おしだい?」

だが政吉は言った。
「命がけで守る。相手を殺してでも守ってみせる」。
「そう考えるのは男だけ。女じゃそうは考えもつかないし、できもしない」。

おさんの言葉に政吉は言った。
「なら、なぜ死なないんだ」。
旦那の情けを受けておいて、知らん顔をして自分のところに来た了見が憎い。

憎いより哀しい。
なぜ死なない。
すると、政吉に未練があって、政吉が好きで死ねない!と、おさんは泣いた。
泣き伏せた。

その時、心配して仲間がやってきた。
戸を叩く音で、政吉は裏口から飛び出していった。
ふらふらと戻ってきたおさんは、花嫁衣裳を握り締め、そしてカミソリを首筋に当てた。

政吉はそのまま、江差屋へ走ると、商売道具の鳶口で旦那を殺した。
旦那は斬りつけられながら、店の奥に逃げ込み、政吉に金を差し出したが、政吉は斬り殺した。
返り血を浴びて戻った政吉の家では、仲間がおさんを囲んで泣いていた。

おさんは顔に白い布を乗せて、横たわっていた。
愕然とする政吉。
おさんは花嫁衣裳と、政吉の紋付を抱いて死んでいたらしい。

「お前の仇を討ってきてやったんだぞ」と言う政吉に、仲間は「バカ!」と言った。
一体出て行く時、何て言ったんだ。
かわいそうな女を、ほったらかしにして出て行ったんだろう。
せめて、政吉だけはおさんの身になってやらなければならなかった。

政吉はおさんを抱きしめ、号泣した。
そこに文太がやってきた。
仲間は何とか、文太を抑え、政吉を逃がした。

そして3年。
政吉はその身ひとつを元手にした、博徒暮らしで生きてきた。
そして今日、バッタリ、木曽路で文太を見たのだ。

文太は人相書きを手に、人を探していた。
てっきり、自分を探していると思った政吉は、密かに飯屋を出た。
政吉が足を向けた飛騨高山から下呂温泉に向かう道は、中山七里である。

飛騨高山の宿屋でも文太を見かけた政吉は、そこも密かに出ようとする。
宿屋の客には、三味線の流しの夫婦が話題になっていた。
政吉がそっと宿屋を出ようとした時、話題の流しの夫婦が表にやってきた。
夫の徳之助が水を一杯もらおうと宿屋の中に入った時、目を丸くする。

徳之助と、女房のおなかが逃げようとするが、文太にとっつかまってしまう。
実は文太が探していたのは、おなかであった。
おなかは火付けの凶悪犯として、指名手配されていた。

しかしそれは文太がおなかを料亭に呼び出し手篭めにしようとしたときに、行灯を投げつけられて火事になったものだった。
文太にとらえられ、責められるおなかを階段の上から見ていた政吉は驚きに目を見張る。
おなかは、おさんに瓜二つだった。
思わず、おなかが連れられて行った後なのに、「おさん!」と叫んでしまう。

おさんは中山七里を、唐丸籠に入れられて連れて行かれる。
後ろから徳之助がしょんぼりと、追っていく。
獣道からそれを、政吉も追う。
そして政吉は目潰しを投げ、唐丸籠を破り、おなかを連れ出す。

ふらふらしながら、徳之助は追いかけてくる。
「あんた!」と叫ぶおなかをつれ、政吉は途中でおなかの縄を切る。
政吉は今、ここで徳之助にかまえば、つかまってしまうがそれでもいいのかと言うと、おなかはそれでもいいと言う。

おなかに政吉は、自分の女房同然だった女と瓜二つだと教えた。
「似ているどころじゃない。そのままだ」。
山小屋の近くまで来た政吉は、おなかに亭主を捨てて、自分と一緒に逃げてくれと言う。
「お前さんはあっしのおさんなんだ!」

政吉がおなかを助けたのは、文太にはめられた事情でもない。
男気のためでもない。
「おさんに似ていたからに過ぎない。それがあっしのきたねえ本心なんだ」。

だがおなかは言う。
「お気の毒ですが、私はそのおさんさんじゃありません」と。
しかし、政吉はおなかの肩をゆすり叫ぶ。
「おさんなんだ。おさんなんだ!」

そこに、徳之助が走ってくる。
おさんと徳之助は、しっかりと抱き合う。
「早く逃げましょう」と言うおさんだが、徳之助は「助けてくれたお方に」と言って、政吉のほうを振り向く。

政吉が、刀を手に近寄ってくる。
殺気に徳之助は、腰を抜かす。
おさんは政吉に「助けてください。私はどうなってもかまいません」と懇願する。

「その身を汚してもか」。
「お好きなようになさってください」。
「それで男が喜ぶと思うか!」と、政吉は怒った。
「そうなりゃ、ご亭主は一生恨むぜ」。

すると、おなかは言った。
「じゃあ、じゃあ。あなたが私だったら、どうなさいます」。
「それじゃ、お前さんが私だったら、どう、おしだい?」と言った、あの日のおさんの姿が重なる。

政吉は、刀を下に下げた。
「さっき言ったことは、全部忘れてくれ。そしてどこへでも行ってくれ。俺の気が変わらぬうちに、2人、手に手を取って、消えちまってくれ」。
戸惑う2人に政吉は「正気でいるうちに行ってくれ」と言った。

そこに、文太たちが「あそこだ」と叫んで、こちらに向かってきた。
「早く逃げてくれ」。
おなかと徳之助は、逃げていく。

後には政吉が1人、残った。
政吉は、うつむいていた。
文太たちがやってきた。

すると政吉は振り向き、代官所の役人たちに向かって「待ってくれ、お役人!」と叫んだ。
刀を背後に持ち、膝を折って政吉は、役人たちに敵意のないことを示した。
政吉は、文太に向かった。
「やい、文太!この顔を見忘れたか。てめえらのために、かわいい女房のおさんを殺された政吉だよ」。

政吉を見た文太は、「てめえ、こんなところにいやがったのか…」と、うなった。
「そうか、おなかが、おさんそっくりだから…、それでてめえ、助けやがったな!」
「…俺は、おさんに会いたい」。
政吉の顔は、悲しそうだった。

「なにい?!」
「本当のおさんに。俺を正気にしてくれた」。
「どう正気にしてくれた?観念してお縄にかかれとか?神妙にしろ!」
「ふざけるな!」

政吉の顔が、怒りに紅潮する。
「てめえには、がまんならねえ」。
政吉は役人に向かって、再び刀を背中に隠し、膝を追って、頭を下げた。

「こいつはお前さんがたとは関係ねえ。よけいなことをしてケガをしてくれるな」。
役人が後ずさりする。
政吉に向かって十手を振り上げた文太は、役人に抑えられた。
「何だよ!」

文太が、役人たちに食って掛かる。
だが代官所の役人は、文太に加勢しようとした部下を抑えて、後ずさりする。
自分の味方をしない役人たちに、文太の目が怒りに燃える。

次の瞬間、文太は「このやろう!」と言って、お辞儀をしている政吉に十手を振り下ろした。
文太の十手は、政吉の笠を切った。
破れた笠の間から、政吉の恨みに燃えた顔がのぞく。

政吉が、ゆっくりと顔を上げる。
刀を抜く。
文太を蹴り飛ばす。
そして斬る。

文太がはいずって、逃げようとするところを、政吉は蹴る。
逃げ出す文太の、背中を斬る。
逃げる文太を、政吉は刺し貫く。

立ち上がった文太の背中に向かって、政吉は刀を振り下ろした。
全てが止まる。
「政吉自身はすでに死んでいた。おさんが、自ら命を絶ったあの悪夢の日に…」。



若いわけ脇無我さんが、清廉な印象を残す「中山七里」。
おなかとおさんの二役は、梓英子さん。
あれ、このお2人は、「次郎長三国志」の次郎長とお蝶さんじゃないですか?
今度は幸せに添い遂げられて、良かったですねえ。

江差屋の旦那は、戸浦六宏さん。
祝言の前の日に、って、すんごい嫌だ。
文太は、菅貫太郎さん!
いやー、いいですよ。

おさんを脅し、政吉をお縄にしようと立ち上がった文太の裾におさんがすがった時、「何だよ」「離せよ」と言う言い方が実にいやらしい。
役人たちに食って掛かる時の口調も、いかにも「性格が悪い人」らしい。
木曽路で、人相書きを手に、じろじろ人を見る鋭い目もいいです。
こういう表現力が、菅さんは本当にすばらしいです。

さてもともと、渡世人の素質があったのか。
政吉は身ひとつで、裏街道で3年を過ごして生きていた。
旦那を殺して逃げたんだから、表通りを歩いて正業につけるわけがござんせん。

文太が自分を追っているのかと思い、密かに店を出る政吉が川で顔を洗っていると、隣にいるのは何と文太。
ここも顔を見られないように去っていく。
しかし、文太は政吉のことなんか、忘れていた。
あんなにひどいことをしたのに。

文太が追っていたのは、おさんとそっくりの「おなか」。
こいつ~、旦那がいたから手出ししなかったけど、おさんも狙っていたに違いない。
江差屋がおさんを追い詰めたのと同じ手を使って、おなかを追い詰めようとしたが、おなかは火事の中逃げたらしい。
それで追っているというわけ。

自分の思い通りにならなかった女を凶悪犯に仕立て、御上の代理として誰はばかることなく、思う存分痛めつけようというわけですね。
やりそうだ。
政吉にやってやろうとしたことだ。

おなかが唐丸籠、ニワトリでも運ぶみたいな、罪人を乗せる籠ですね。
あれに乗せられて、運ばれていく。
後ろをしょんぼり、時折、こづかれながらついていくのは、夫の徳之助こと、島田順司さんです。
このしょぼくれ加減が、おなかにかばわれる一方という感じでいい。

政吉はおなかを救い出すが、それは正直に言って「自分の汚い気持ち」のため。
「俺と一緒になってくれ」と言うが、おなかはおさんじゃない。
文太にはつかまるわ、助けてくれたと思った男はわけのわからないことを言うわ。
おなかさんは、散々です。

いい人なんだか、悪い人なんだか。
よくわからないが、この人の女房に自分がそっくりだということはわかった。
わかったけど、自分には徳之助がいる。

逃がしてくれたことは感謝するが、政吉に「はい」とは言えない。
何も知らない徳之助は、お礼言わなきゃみたいに振り返る。
すると、政吉は殺気満々。
恩人が突然、犯罪者になっちゃって、徳之助もわけわからなくて、もうビックリ。

抱き合うおなかと徳之助。
それでも諦めきれない政吉。
絶体絶命状態に追い詰められたおなかは、身を汚されても徳之助を守るつもりでいた。

身を汚すことを承知するおなかに、おさんを見た政吉は怒る。
だが、それなら、あなたならどうすると言うのだ。
おさんと同じことを言われ、政吉は正気に返る。

これでは自分は、文太や江差屋のようになってしまう。
そして政吉は、これはおさんじゃない。
自分を愛しているおさんじゃない、と思い知らされる。

おさんは、たった一人。
身を汚しても自分を愛してくれた女は、おなかだけだったのだ。
そのおなかを、自分はいたわらずに死なせてしまった。

あの時、政吉は哀しくて、悔しくて、どうしようもなかった。
政吉のどうしていいかわからない気持ちがしたことは、江差屋を殺すことだった。
それは、おさんの仇をとったわけじゃない。
ただ、自分の鬱憤を晴らしただけだった。

おさんにしなければならなかったことは、そんなことじゃなかった。
本当におさんのことを一番思いやらなければならなかったのは、自分だった。
自分の心の狭量さ、子供っぽさが、おさんを殺してしまったのだ。
あの時の悔恨の思いが、政吉を正気に戻した。

おさんに、会いたい。
自分が会いたいのは、「おさん」の顔をした「おなか」じゃない。
おさんに、会いたい。

だがもう、会えない。
おさんに会える方法が、ひとつある。
自分も死ぬことだ。

そして政吉はおさん、おなかの幸せを壊した文太に怒りを燃やす。
自分が最後にすることは、この男を殺すことだ。
殺して、おなかたちを追わせない。
今度こそ、おさんの仇をとる。

そうして自分も仕置になって、おさんの元へ行く…。
もう、政吉は死んでいたと語りが言う。
あの時、もう死んでいたのだと。
この後、政吉はとらえられ、仕置になるのかもしれない。

もともとの文太の胡散臭さと、政吉の挨拶に何かを感じたのか、役人たちは文太を助けない。
だから、政吉も捕らえられないかもしれない。
でももう、そんなこと、きっと政吉にはどうでもいいんだ。
政吉が文太に向かって、刀を振り下ろして、シーンは止まる。

おなかたちと別れて、音楽が止まる。
そして再び、文太と対峙した時、じわじわと音楽が盛り上がっていく。
最後に文太を斬り伏せるまで、どんどん盛り上がっていく。

「沓掛時次郎」も「雪の渡り鳥」も、主人公は愛する女性のため、殺されるかもしれない死地に赴く。
彼らの行動は、無償。
渡世人と言われるヤクザを、長谷川伸シリーズはこんな風に描いているんですね。


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百鬼夜行のどれもが人である… 1973年版「剣客商売」第5話

第5話の「妖怪小雨坊」。
これは藤田まことさんの小兵衛では、遠藤憲一さんが演じたんですよ~!
おかげで遠藤さんのことを家ではしばらく出てくると、「あっ、小雨坊!」と失礼な呼び方をしていました。
それだけ、良かったってことですよ!


小兵衛が絵草子屋で買ってきた、妖怪絵図。
こんなものは絵空事だから、少しも怖くないとおはるは笑った。
怖いのは、小兵衛が斬りあう時だ。

そこに梅屋のおかよも蛤ご飯を持って来たので、おはるとおかよは食事の仕度を始めた。
ふと、庭を見たおはるの目に入ってきたのは、異様な風貌の男。
男は外から、小兵衛の家をのぞきこんでいた。

その姿はさきほどの絵草子にあった、まさに妖怪小雨坊。
おはるは、気絶する。
その様子を見たおかよもまた、小雨坊を目撃し、悲鳴を上げる。

やってきた小兵衛は、おはるを気づかせると、おはるは泣き出す。
怖い物などないと言ったばかりなのに…、と言う小兵衛におはるは、あれは人じゃない。
化け物ですようと言って、小兵衛にしがみついた。

そして大治郎のところには、伊藤三弥の父・伊藤彦太夫が訪ねてくる。
伊藤三弥の右腕は、大治郎が斬り落とした。
大治郎の師・嶋岡と柿本が、真剣勝負に挑んだ時だった。

剣客同士が10年ごとに行っていた勝負で、今回は20年越しに持ち越された勝負だった。
そして、2人にはこの勝負がおそらく、最後であった。
命を賭けていた。

伊藤三弥は自分の師・柿本を勝たせたくて、矢によって嶋岡殺害を図った。
そこで大治郎は、三弥と対決し、彼の右腕を斬りおとすことになったのだった。
彦太夫は、大治郎に自分の息子の所業を詫びた。
三弥はその後、出奔したらしい。

彦太夫は小判が入った菓子折りを差し出し、三弥が再び現れ、武士としてあるまじき所業に走るかもしれない。
三弥が現れたら、斬ってくれるように頼む。
だが大治郎は事の顛末によって人を斬ることはあっても、あらかじめ金をもらって人を斬ることは拒否した。
大治郎は、菓子折りを受け取らなかった。

そして小雨坊が、大治郎の道場にも現れた。
大治郎と大治郎のところにいる弟の太吉を訪ねてきたおかよの妹、おぬいがやはり家をのぞきこんでいる異様な男に気づいた。
男はおぬいに向かって、ニヤリと笑った。
おぬいは思わず、徳利を落とす。

その音で大治郎が出てくる。
やってきたおはるが絵草子を見せると、まさしくこの小雨坊だとうなづく。
男が武士の格好をしていたこと、小兵衛と大治郎のところに現れたことから、2人は男は自分たちに恨みを抱いていると考えた。
もしかしたら、小雨坊は三弥の成れの果てではないか。

夕暮れ、小兵衛が道を歩いていると道端に誰か座っている。
異様な容貌。
これがおはるたちが目撃した男だとわかった大治郎は、何か用かと聞くが、小雨坊はニヤリと笑って答えなかった。

大治郎は、小雨坊の腕は相当できるとにらんだ。
あの座り方も、ただうずくまって人を怖がらせているというよりも、あの男の構えだ。
腕は互角だろう。

だがあの、憎しみと恨みと呪いがこもったあの目。
大治郎は、あの目が怖ろしかったと言う。
あの目で射すくめられたら、大治郎は自分が斬られるだろうと言った。

父親の懸念通り、三弥は近くに来ていた。
近くには、あの小雨坊がいた。
三弥は小雨坊に向かって、「兄上」と呼びかけた。
小雨坊は、三弥の兄だったのだ。

彼はかわいい三弥の腕を斬った秋山親子が、許せない。
2人を最も苦しめる方法は、彼らの愛する者を殺すことだ。
小兵衛のところにいる女と、大治郎のところに来た女だと、小雨坊はおはるとおぬいを斬ることを提案した。

茶店で話す三弥と小雨坊に、茶店の主人も恐る恐る近づいては引っ込んでいく。
表にいる2人を見て、農作業から帰る夫婦2人が怯え「化け物だ」と口走ってしまう。
小雨坊は少しして2人を追いかけた。
女房を斬り、怯えきった夫が鎌を持つと、切り刻む。

翌朝、夫婦の遺体を弥七たちが調べている。
どうしてこんなむごいことができるんだ…、と弥七も絶句する。
おときも、こんなことをするなんてと言う。

怯えきった2人がなぶり殺しにされたことを、遺体のむごさが物語っていた。
小兵衛は「ことの起こりはどうでも良いのだろう。こやつは、人を斬るのが好きなのだ…」と言う。
弥七が調べたところによると、伊藤彦太夫には三弥の他に兄と姉がいた。

さらには奇妙なことに、かつて伊藤家には、赤ん坊の幽霊の話があったらしい。
赤ん坊がいるはずのない伊藤の家で、赤ん坊の泣き声がしたのだ。
やがてその声は聞こえなくなり、彦太夫はこの話にを取り合わなかったため、噂はいつの間にか消えた。
そしてその後、彦太夫は正式に祝言を挙げた。

これが27~8年前。
もし、赤ん坊が本当にいたなら、小雨坊の年齢だ。
小兵衛は、大治郎を話を聞きに彦太夫の家に行かせた。

小雨坊のような毒虫は、一刻も早く片付けねばならない。
だが大治郎はまだ若い。
あいつが、剣の世界の悪に慣れるのは一日でも遅くしてやりたい。

小兵衛は弥七にそう説明し、小雨坊を自分が斬る気だと話す。
三弥が死んだ師匠の柿本の家にいるだろうと予測した小兵衛は、弥七とともに柿本の家に行く。
すると、やはり小雨坊と三弥が潜んでいた。

小兵衛は小雨坊たちを、煙でいぶりだす。
三弥と小雨坊が家から走り出ると、小兵衛が迎え撃つ。
小兵衛は三弥を一刀の元に斬り捨てる。

「よくも、俺の三弥を…」。
恨みに燃えた目で小兵衛をにらんだ小雨坊が、小兵衛をにらむ。
だが次の瞬間、襲い掛かってくると思った小雨坊は宙を飛び、逃げた。

まさか、逃げるとは思わなかったと小兵衛は小雨坊を逃がしたことを悔やんだ。
必ず、あの男は小兵衛と大治郎だけではない。
他の人間に災いをもたらすであろう。
うかつだった。

小雨坊はその足で、おぬいを拉致した。
その頃、彦太夫はやっと、大治郎に重い口を開いた。
28年前、彦太夫は下働きの女との間に子供を作ったが、側用人として下女との間の子供は家に入れるわけにはいかなかった。

その子供は育太郎と名付けられたが、容貌は異様で、たいそう怖ろしかった。
彦太夫の叔父が育太郎を引き取ったが、叔父は育太郎を地下の座敷牢に閉じ込めた。
しかしどういうわけか、三弥だけが育太郎になつき、兄と慕った。

育太郎に食事を運んでいた三弥は、育太郎が15歳になった時、育太郎を逃がした。
以来、育太郎には三弥を通じて金を渡していたが、やがて育太郎は山伏に拾われて剣を習ったらしい。
以後の消息は知れず、育太郎のことを知っているものは彦太夫や三弥を残してすでに死去した。
このことをどうするかは、大治郎にゆだねられた。

戻ってきた大治郎に小兵衛は、おぬいは自分たちをおびき寄せるために拉致されたと告げた。
おぬいの居場所を突き止めた2人は、家に向かう。
そこにいたのは柱に縛られ、周りには逃げられないようにずらりと火のついたろうそくで囲まれたおぬいだった。

家に入ろうとする大治郎に小兵衛は、「お前にはあの化け物が、いや、あの伊藤育太郎が斬れるのか?」と聞く。
話を知れば、育太郎も哀れな男だ。
「哀れなあの男を殺せるのか?」
「わかりません。しかし私は、おぬいちゃんを救いたい。それを遮るものは誰であろうと斬ります」。

大治郎は、おぬいに近づく。
だがおぬいは目を上に向け、来てはいけないと首を振る。
しかし大治郎はおぬいに、近づく。

その時、育太郎が上から音もなく、飛び降りて襲い掛かる。
風で、ふーっとろうそくの炎が消える。
育太郎が飛び、着地する。

大治郎を見て、ニヤリと笑った。
にらみ合い、2人とも動かない。
だが育太郎はやがて、前のめりに倒れる。
育太郎には、大治郎の剣が刺さっていた。

大治郎はおぬいの縄を解くと、おぬいは大治郎にしがみついた。
怖かっただろう…。
小兵衛は育太郎を見て、言う。
「この男を小雨坊と呼んだのは、間違いだったのかな」。

大治郎も、弥七も聞いていた。
「あるいはあの、百鬼夜行のどれもこれもが、実は人であると思った方が良いのか…。どっちかな、大治郎」。
大治郎は答えられなかった。



大治郎と伊藤三弥との因縁は3話、「剣の誓い」で描かれています。
師に勝ってほしいために、相手に矢をいった三弥の右腕を、大治郎は斬った。
双方老いて、心臓が悪い柿本と、胸に矢が刺さったままの嶋岡は勝負に臨む。

しかし、決着はつかず、2人とも剣を交えることなく、絶命。
剣の道に生きてきた男の、哀しくも壮絶な最期でした。
小兵衛が嶋岡と同じ道場の門弟だったんですね。

そして、大治郎の母である小兵衛の妻となったおていさんを巡って、勝負したことがある。
結果は小兵衛さんが勝って、大治郎の母を獲得。
負けた嶋岡は、剣の道を1人、生きていったわけです。
小兵衛さんって、ずるいとかそういう意味じゃなくて、生きるのが上手なんだなと思いました。

その因縁が続くこの回。
「小雨坊」は、寺田農さん。
頭にアザというか、生まれつきであろうヤケド跡のようなものがあるんですが、このために小雨坊は髪が結えない。

だからザンバラの髪をしていて、これがまた落ち武者的で、妖怪っぽいんです。
しかしそれより怖ろしいのが、大治郎もひるんだ憎しみと恨みに満ちた目ですね。
だけど育太郎は、最初から妖怪だったわけじゃなかった。

まずは生まれからして、日の目を見なかった。
次に容貌のため、何と地下に閉じ込められて育った。
彼が妖怪化したのは、この辺りでしょう。

その彼になついていたのが、三弥だった。
育太郎にとって、三弥が唯一、人間らしい気持ちで接することができる相手だったんでしょうね。
三弥の右腕を斬った小兵衛と大治郎を許せない気持ちが、育太郎の人間らしさとの裏返し。
彼が三弥をどれほど大切に思っているか、その口調でわかる。

実際、夜暗いところにいた、目つきが怖ろしい、雰囲気が只者じゃない…とはいえ、夫婦が「化け物」って言っちゃうのはあんまりかも。
だからと言って、痛めつけるだけじゃなくて、なぶり殺しにしてしまうことはない。
おはるやおぬいを殺して、その痛みを小兵衛や大治郎に味合わせようというのももう、まともじゃない。

最後がどう、決着をつけたのかがあまりの早業でわからない。
ニヤ~と笑うから、まだなんでもないのかと思いましたよ。
一瞬早く、大治郎の刀が刺さっていたんですね。

三冬に心の傷を残すことになった、「勘助」もまた、身分の低さと醜さで虐げられていた。
その世の中への恨みを彼は、邪剣にこめていた。
最後にその邪道を爆発させたのは、今まで身を挺して仕えてきた家の裏切りだった。
育太郎もまた、同じ境遇だった。

「毒虫」と言って、大治郎には斬らせたくないとまで言っていた小兵衛。
それが最後に、育太郎について語った言葉。
「この男を小雨坊と呼んだのは、間違いだったのかな」。

あの百鬼夜行の、どれもこれもが実は人である、人だった。
そう思った方が良いのか。
育太郎への深い同情と悲しみが、この言葉にこめられている。

元はみんな、人間だった。
彼らを妖怪にしてしまうのは、自分も含めた人間だ。
三弥と育太郎と、両方の息子をおかしくしてる彦太夫が一番の悪かもしれない。
そう思わせるに十分な、哀しい余韻を残して「小雨坊」は終わりです。


もう1年経った? だましゑ歌麿III

今夜は「だましゑ歌麿」の第3弾が放送されました。
年に一度、って感じなんですが、本田博太郎さん出演のIIからもう1年経ちましたっけ。
去年はもうちょっと先でしたよね。

IIIでは歌麿が若い頃、恋仲だった娘がひそかに子供を生んでいた?!
ということで、歌麿の娘じゃないかと思われる少女が登場。
しかし時の老中・松平定信は、歌麿を快く思っていない。
そして歌麿は吉原からの帰り、何者かに命を狙われる。

今回もやはり歌麿はクライマックスではみんな斬っちゃう活躍を見せるんですが、あれ、娘はどうなっちゃったんだろう。
私が見逃しているだけだろうか?
そして歌麿は切ない思いを抱きながら、絵を描いていくというラスト。

IやIIと違い、牢獄での狂気とも思える笑いで終わるラストではありませんでした。
これは、IVもありそうな終わり方。
定期的に時代劇を作ってくれるのは、うれしいです。

明日の日曜は、「半沢直樹」を見てます。
最近、自分は堺雅人さんのドラマにはハマるな~と思います。
先週は選挙開票速報でお休みだったので、今週が楽しみ。
「倍返し」は、いつでしょう!?


うらめしや

あ~あ~あ~あ~、友人が浴衣を選び、練習してきた盆踊りの夜に、この雨。
遠い、雲の中で、稲光が光って綺麗と言えば綺麗だけど、被害を考えればそんなことは言っていられない。
最近の集中豪雨は、すごすぎる。
どうか、被害が出ませんよう…。

隅田川の花火大会も、テレビ中継だけど、綺麗だなあと思って見ていました。
オリンピックをイメージしたとかで、盛大にあがった色とりどりの花火。
本当に綺麗だと思ってました。

雨を見越して、あんなにあげてたわけじゃないよね?
いや、やっぱりそう?
中止は本当に、残念。
こんな夜に降る雨が、うらめしい。


心が躍った

ボーッと、本当にボーッと電車に乗っていました。
この日はボーッとしすぎて、携帯電話も忘れてきたほど。
それで、困ったなと思いながらも、まあ大丈夫かなと気を取り直しながら次で降りるので、ドアの方に行きました。
すると、ガラスにウルトラセブンの横顔が貼ってある。

「アイスラッガーの衝撃。エメリウム光線の電撃。」というコピー。
あれっ?!と思ったら、次の駅。
何でウルトラセブンだけなの、ウルトラマンとかはいないの?と思いつつ、目的地に向かいました。

帰りにまた、ウルトラセブンの横顔が貼ってあるドア発見。
今度はわざわざ、寄って行きました。
するとウルトラセブン生誕45周年で、日本橋三越で、う、「ウルトラセブン展」!?
ちょー!

家に帰ってから、検索してみました。
http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/ultra/
おおお、楽しそう!

でも、期間が短い。
7月24日(水)から8月5日(月)まで。
うわ、これ、行けるかな?と思いながら、心が躍ってしまったのでした。
同じような大人は、絶対に多いはずだ!


移り変わり くらもちふさこ 「A-Girl」

くらもちふさこさんが、1984年7月から12月まで「別冊マーガレット」に連載した「A-Girl」。
久々に読み返してみました。
もちろん、当時の流行やオシャレも、恋愛ドラマの楽しさも蘇ってきましたが、巧みだなと思ったのは風景の描写。
それと、季節の移り変わりの描写のうまさです。

階下の火事で、コーポの自分たちの部屋が焼かれ、大家の息子である夏目くんの部屋に居候するマユ子とマリ子の姉妹。
夏目と訪れた夜の夏の海、夜のレストランの空気を感じます。
ちょっとひんやりした夏の夜の海、夜のレストランのエアコン。

そして夏目とマリ子が一緒に歩く、夜の街の暑くてよどんだ、それでもウキウキした空気。
部屋が直って、マユ子とマリ子が夏目の部屋を出て行く日。
3人の服装もですが、白く夏目がかすんでいて、セミの声が「ミーン、ミーン」と細く描かれている。

ここが夏の、そろそろ夏休みも終わりかなという季節を感じるんです。
荷物を運んできた夏目に、マリ子が麦茶を入れる。
新しい畳の匂いがすると夏目が言って、3人が床に座る。

次のページでは、マリ子が以前、彼の五島と会っていた時の街灯。
夜の空、まばらな星の光。
そこに寂しく差し込んでいる街灯の光。

ああ、秋になったんだ…、とわかる。
マリ子が長袖を着て、家庭科の宿題をやっている。
そこで、夏目が来なくなった時間の経過も感じる。
昔は9月も半ばになればこうやって長袖を着たな、そんなことも思い出しました。

次のページはマリ子がジャケットを着ている、学園祭の準備が始まっているので、おそらく、10月ごろ。
さらに次のページになると、学園祭で、時期としては11月が近いのではないかと思わされます。
こうして夏目と会えないマリ子の時間と広がる距離、夏目という人物の掴まえ所のなさが、わかるんですね。
懐かしいなと思うのと、あらためて、くらもちふさこという作家のうまさを感じました。


地獄は佐渡に限るめえ 「峠シリーズ1 中山峠に地獄を見た」

「木枯し紋次郎」主演の中村敦夫がシリーズ放送中に負ったケガのため、復帰までの間に急遽作られた全4作からなるオムニバス形式の股旅時代劇。
その第1回は、「中山峠に地獄を見た」。
これは原作を読んでいないので、手元にないんです。
なので登場人物の漢字など、詳細がわからないのですが、ドラマを見ただけで書いてみました。



渡世人の長次郎は、ある日、数人のヤクザに命を狙われる。
彼らが賭場の売り上げ3千両を運ぶ時、騙されて痺れ薬を飲まされ、その間に盗まれたのだと言う。
痺れ薬を飲んだ仲間の中には、死んでしまった者もいた。
盗賊の名は、天狗の勘八を頭領にした一味だと言う。

仲間の仇と、盗まれた金を返せと言われる長次郎だが、彼に覚えはない。
やむなく刀を交えたが、長次郎は全員を峰打ちにして去る。
それを見ていた宿屋の主人・源兵衛が、ぜひ家に泊まってほしいと願い出た。
長次郎は、ある女性に巡り会いたいと思って、旅をしているらしい。

左腕に、長次郎は布を巻いている。
それは何かと源兵衛が聞くと、古傷が痛むのだと長次郎は言った。
長次郎は宿屋に向かうが、そこではヤクザ者が、泊り客の女性を手篭めにしようとしていた。

源兵衛が止めに入るが、男は辞めようとしない。
からくも逃れた女性の顔を見て、長次郎の顔色が変わった。
だが女性は長次郎に気づくこともなく、横をすり抜けていく。

そこで源兵衛が自分は今でこそ、宿屋「十文字屋」を営んではいるが、10年前までは源兵衛というヤクザでちょっとは名前が知られていたとすごんだ。
するとヤクザ者は腕まくりをして、右腕の刺青を見せた。
そこには「さ」と、書かれた刺青があった。

俺は佐渡帰りだと、男はすごむ。
男の子分も、得意げだった。
生きては帰れぬという、佐渡。
そこから戻ってきた男の佐渡帰りの刺青は、渡世人や無宿者の間では最高の勲章だった。

源兵衛も、番頭の新造も思わず、平伏するしかない。
だが部屋に入った長次郎は、じっとヤクザ者たちを見据える。
「やけに落ち着いてるじゃねえか、こじき野郎」と言われた長次郎は、「ドサ帰りに会うのは初めてだ」と近づいた。
腕の刺青を見て、座敷に座り込む。

そこに先ほどの女性が入ってきて、佐渡の話を聞かせてくれと言った。
自分は武州熊谷の織物問屋、増井屋のお美代と女性は名乗った。
主人が佐渡送りになるので、話を聞きたいと言った。

当時、佐渡の金掘り、水汲み人足はいつでも不足していた。
その為、時折、幕府は無宿人狩りを行い、現代で言えば戸籍のない無宿人を捕らえて、大した罪もないのに佐渡送りにすることがあった。
だが増井屋の主人が無宿人とは、解せない。
佐渡送りになるのは、無宿人なのに。

するとお美代は語り始めた。
先代の主人の妾が後添いに昇格し、義理の母親になったが、義理の母は自分の生んだ子供を跡継ぎにしたくて、邪魔な本妻の子供である主人を陥れた。
結果、主人は勘当にあい、無宿者となった。
そこで勘当を解くまでの間、一時的に江戸に避難していたところを、無宿人狩りにあってしまい、佐渡送りとなってしまったのだった。

後添えの狙い通り、店は後添いの息子が継ぐ。
お店乗っ取りは成功だ。
意外なことにその話に、ヤクザ者2人は道理が通らないと言ってひどく憤った。

佐渡送りの唐丸籠に乗せられてしまえば、もう帰ってくるのは無理だ。
籠を破り、奪還するしかない。
長次郎とヤクザ者2人、そして十文字屋の主人の源兵衛と番頭の新造はお美代に協力して、唐丸籠破りを企てる。


以下、ネタバレです。
どんでん返しがあるので、未見の方、原作をまだ読んでいない方は注意してくださいね。


長次郎たちは無事、唐丸籠を破り、主人を奪還することに成功した。
だが様子がおかしい。
主人とお美代が揃って現れ、長次郎に向かって高らかに笑った。
集合したヤクザ者2人、源兵衛、新造も不敵に笑った。

彼らこそ、お美代の主人を頭領にした盗賊一味だった。
たった今、長次郎にも死んでもらう。
そう言うと一味は、次々本当の名を名乗った。

「さ」の字の刺青が入った男は、鬼坊主のヤサ五郎。
子分は、州走りの亀吉。
十文字屋の主人は、盗人宿・十文字屋を預かる源兵衛。

番頭は、弁天の新造。
頭領は、お美代の主人で、その正体は賭場の売り上げの3千両を盗んだ天狗の勘八。
だが勘八は盗賊としてではなく、無宿人狩りにひっかかった。

お美代はこの勘八の、情婦だった。
「そこにいる女は、天狗の勘八の情婦(いろ)というわけか…」と長次郎は言った。
「私の芝居が一番じゃなかったかい?」と、お美代は笑った。

盗賊たちはヤクザたちを峰打ちにした長次郎の腕が、お頭奪還には必要と考えて、芝居をうった。
だが長次郎は、芝居だと言うことには最初から気づいていたと言う。
「まんまと騙されたくせに、負け惜しみを言うんじゃないよ」とお美代が笑う。

ヤサ五郎に近づく長次郎は、まず、ヤサ五郎の刺青が嘘だと気づいていたと言う。
佐渡の刺青は長さ三寸、幅二寸。
「さ」の字も違う。
「しかも(刺青される腕は)右腕じゃねえ!」

そう言うと長次郎は、ずっと隠していた左腕の布を取り、「サ」という刺青を見せる。
これこそが、佐渡送りになった証だった。
「12年間、佐渡の暮らしは長かったぜ」。

盗賊たちは恐れながらも、次々、長次郎に斬りかかってくる。
ヤサ五郎は逃げるが、長次郎に刀を奪われ、2本の刀で斬られた。
「やろう!」と叫んだ源兵衛だが、長次郎は2本の刀を手に近づく。

逃げる源兵衛に刀を投げると、刀は扉越しに源兵衛に刺さった。
亀吉は「助けてくれ」と叫びながら逃げようとするが、アッサリと斬られる。
新造は恐怖で、四方八方に向かって刀を振り回した。
その背後に勘八がいる。

竹林で、新造は長次郎に刺される。
「佐渡行きの籠は破っても、おめえの地獄行きはまぬがれねえぜ」。
長次郎はそう言って、勘八と向かい合う。

途端に勘八は「勘弁してくれ!この通りだ!」と刀を放り投げ、ひれ伏した。
「金なら、ほしいだけ出す!」
お美代も長次郎に「見逃しておくれ!お願い」と、土下座した。
すると長次郎が言う。

「もうひとつ下手な芝居と見抜いたのは、武州熊谷に増井屋なんて織物問屋はない。そうだろう?酒巻の石屋のお美代さん。おめえさんとは15年ぶりだな」。
驚いたお美代は「おめえさんは一体誰なんだい」と聞く。
「十文字屋の離れにいるおめえさんを一目見て、俺にはすぐ、あのお美代さんだとわかったぜ」。
「…あたしには、わからない」。

「薄情だと責めやしねえ。佐渡に送られて10年もすりゃ、別人のように人相が変わっちまうからな」。
「長次郎と言う名前を聞いても、わからねえかい?長次郎の『郎』が余計なだけさ」。
お美代が、何かを思い出そうとする。

「長次郎…。長次…。!お前さんがあの、酒巻の長次さんかい?!」
18の時だった。
長次郎は、お美代とは夫婦になろうと、誓詞を書いたりもした。
もう、遠い思い出だった。

長次郎が故郷を出たのは、お美代の父親が利根川で溺れ死んで、まもなくだった。
この翌年、江戸の無宿人狩りで長次郎は佐渡送りになったのだ。
それから12年。
長次郎は、地獄のような佐渡で過ごした。

「巡り会いたいと探していた女は、あたしのことだったのかい。とんだ茶番だね」。
「そうかもしれねえ」。
何もかも最初からお見通しだったら、長次郎はなぜ、唐丸籠破りに手を貸したのか。
すると長次郎は、盗人とは知らなかったから、お美代の亭主を佐渡送りから救ってやりたかったと言った。

「昔の女のために、ってわけ?12年も地獄で暮らしてきたのに、男って甘いね」。
お美代の声に、嘲笑が混ざった。
だが次にお美代の声は「とにかく助けてくれるつもりなら、助けてくれるね」とすがりつくような調子に変わった。

その途端、勘八は長次郎に斬りかかってきた。
長次郎は、一刀の元に斬り捨てた。
「ああっ」と言って、お美代がうずくまる。
ふらふらと立ち上がるお美代に長次郎は、お美代の父親は利根川に自分で落ちて溺れ死んだんじゃないと言う。

「俺が突き落としたんだ」。
お美代の父親は長次郎に、「お美代を傷物にするつもりか、お前なんぞにお美代をくれてやるもんか。一切近づくな」と言われた。
酔っていた長次郎は、カッとなった。
そして気がついた時は、お美代の父親を激流の中に突き落としていた。

だがそれを聞いても「もういいじゃないか。お互いに昔のことは忘れようよ」と、平然とお美代は言った。
「おめえ、それで気が済むのかい?!」と、長次郎が驚く。
「済むも済まないもないじゃないか。今さら死んだおとっつぁんが生き返ってくるわけじゃなし。それに今のお前さんとあたしは、赤の他人なのさ。これからも、何の関わりもない他人同士。それでいいだろう?何もなかったふりして、別れればいいじゃないか」。

そう言うとお美代は「あばよ」と言って、去ろうとした。
「待ちな、お美代!」
長次郎が呼び止める。
「俺が佐渡の12年を、死に物狂いで生き続けたのは、『喜作さんを殺したのは俺だ』と、たった一言、おめえに言いたかったからだ」。

長次郎がそう言った時、背後からお美代が長次郎を刺した。
振り向きながら、長次郎は「おとっつぁんの…、仇をとったのか?」と聞いた。
「とんでもない!」

「じゃあ、勘八の恨みを晴らしたのか?」
「何言ってんだい!」
お美代が笑う。
「3千両手に入れるのに、お前さんが生きてちゃ、都合が悪いじゃないか!」

お美代が長次郎から、離れて去っていく。
長次郎が、持っていた長ドスを投げた。
悲鳴がひびく。
長次郎が投げた長ドスは、お美代の背中に刺さっていた。

お美代が、倒れている。
長次郎が近づき、長ドスを抜く。
うつぶせになって動かないお美代を、長次郎はじっと見つめる。
「お美代。まるっきり別の人間みてえに変わっちまったのは、俺よりもおめえの方だったな」。

『天狗の勘八とその一味は、仲間割れがもとで、殺し合いを演じ、残らず死亡したと、嘉永4年夏、7月の記録にある』。
ふらふらしながら、街道を行く長次郎。
『武州無宿・長次。『サ』の刺青。佐渡乗り逃げお手配中と、佐渡文書にある人物の、その後の消息については誰も知らない…』。



最初に長次郎の左腕に布があって隠されていた時に、この人は佐渡帰りなんだろうなと思いましたが、それ以上のどんでん返し。
「サ」の刺青は、「必殺仕置人」の「生木をさかれ、生地獄」で、仕置人が佐渡送りにしてやった悪党の腕に鉄がこの刺青入れてました。
これを見た人なら「さ」のひらがなは違うんじゃないか?と思うんじゃないでしょうか。

佐渡の話は「からくり人」の「佐渡からお中元をどうぞ」でも、語られていました。
ここでも人足が足りないとなると、幕府は無宿人狩りを行うと依頼人が言っていました。
または大した罪でもないのにとらえて、佐渡送りにしてしまうことがあったと語っていました。
酔っ払っただけで送られてしまった、非常に不運な、納得できないような人までいたとか。

「からくり人」の依頼主もこれで、佐渡送りになってしまった。
依頼人が言うには、500人いた中で、生還したのは17人。
その17人もまともな生活が送れないほど、健康や精神を害した人ばかりだと語られていました。
「仕置人」の「罪を憎んで人憎む」でも鉄と錠が無宿人狩りにあって、佐渡送りのピンチにあう話がありました。

こんな地獄から帰ってきたら、それだけで格が違ってしまう。
だとすると、怪物的だったから佐渡から健康なまま帰れたのか、怪物みたいになったのかわからないですが、とにかく鉄ちゃんはすごいんですね。
源兵衛がすごんだのに、ヤサ五郎の刺青を見て、お芝居とはいえ平伏してましたから。

得意げなヤサ五郎と亀吉の様子を見ると、かなりあちこちで威張ってきたのではないか。
しかしそれにしちゃあ、女性を手篭めにしようとするとか、やることが小物っぽいなあと思いました。
こんなところから生還してきたら悟りのようなもの、少なくとも只者じゃない雰囲気が漂うのにやってることが小悪党。
逆に雰囲気があるのは長次郎ですから、この時点でもこの人は本当の佐渡帰りだなと予測がつく。

さらにお美代の話を聞いて、小悪党そのものだった2人が憤るのも妙。
この人たちは怒る側じゃなくて、やる方に手を貸す側じゃないか?って。
そして最後に、みーんな、十文字屋の主人も番頭もグルだったとわかる衝撃。

だけど長次郎は、わかっていたと言う。
本物の佐渡帰りだったら、わかりますね。
さらにビックリは、お美代と長次郎が昔、恋人同士だったということ。

お美代は全然気づいていないんですが、仮にも夫婦の約束をした男性がわからないものでしょうか。
そんな面影も残っていないほど、人相が変わっちゃったんでしょうか。
これほど、佐渡は地獄ということだと長次郎は納得していた。

だけど本当は、お美代が変わっていたんですね。
長次郎どころか、いずれはヤサ五郎も亀吉も殺しそうだった。
さらには新造も源兵衛にも、油断ならなそうだった。

あっちもお美代たちを殺しそうな雰囲気ありますけど、お美代はひょっとしたら、勘八だって殺したかもしれない…。
勘八もお美代を殺したかもしれない。
そんな殺伐とした世界で、平気で生きている女になってしまっていたお美代。

最後に長次郎は、お美代が父親の仇だと言ったなら、黙って殺されたでしょう。
または勘八の恨みを晴らしたと言ったなら、そのまま見逃したでしょう。
しかし、お美代は誰も愛してなかった。
誰も信じていなかった。

誰も愛さない、信じない世界。
お美代は、そんな世界に生きる女になってしまった。
せめて詫びようという一心で、地獄から生き延びて戻ってきた長次郎。
だが、詫びるべきお美代はもう、どこにも存在していなかった。

お美代にとって、父親も勘八もお金以上の価値は持っていなかった。
ならばお美代に詫びるために生きてきた長次郎の思いは、人生はどうなってしまうのか。
何のために自分は地獄から生き延びてまで、今まで生きようとしてきたのか。

しかしあれほどの悪女になるなんて、お美代に何があったんだ。
な~んで、あんなになっちゃったんだ?
もともとの素質なのか?。
あのまま野放しにしたら、どこかでもっと人を不幸にしたような女。

長次郎は、高橋悦史さん。
お美代は、弓恵子さん。
さすがの悪女っぷり。
弓さんなんだから最後に「おおっ」と言わせる悪女ぶりを見せてくれなきゃつまらないと思っていたんですが、期待通り。

新造は村井国夫さんで、礼儀正しさと根性の悪さが表裏一体のうまさです。
盗賊たちはそれぞれ吉田輝雄さん、大森義夫さん、草薙幸二郎さん、木村元さん。
みなさん、すばらしい悪党ぶり。

この「峠シリーズ」は「木枯らし紋次郎」が、中村敦夫さんのケガで放送できない時に作られた作品なんですね。
中村さんはこの時のケガのことを自著で語っていますが、人気のドラマだっただけに中断するのも、ケガが完治しないうちに復帰するのもなかなか大変だったようです。
でもこの「峠シリーズ」は、予定外に作られたなんて考えられないほど、うまくできた作品です。

地獄の佐渡を越えて、戻ってきた長次郎。
しかし中山峠で彼が見たのは、やはりこの世の地獄だった。
だけど「仕業人」の中村主水が「牢屋なんか地獄だよ!」と言われて、「地獄は牢屋にゃ限るめえ」と言ったことがあります。

これも、カッコいいラストシーンだった。
中山峠で長次郎が見た地獄。
さしずめ「地獄は佐渡に限るめえ」というところでしょう。


そういうことってある

アップしようと思っていた記事があったんです。
映画の記事で、結構な長編になりました。
しかしその映画の題材となった事件を連想させる事件が起きたので、不謹慎に思えてやめることにしました。
そういうことって、あるんだなあと思いました。


天罰だ!斬れ! 1973年版「剣客商売」第4話

1973年の「剣客商売」も楽しく見ています。
小兵衛は、山形勲さん。
大治郎は、加藤剛さん。
三冬さんは、音無美紀子さんです。

音無さんは綺麗だけど、私はホームドラマのかわいらしい妹役というイメージが強かった。
ところが、さすが。三冬さんを見事に演じてます。
その三冬さんの魅力が堪能できたのは、この第4話「井関道場・四天王」。
タイトルからして、三冬さんの話だな!とわかります。


三冬の父の老中・田沼意次も庇護している井関道場は、道場主が死亡した後は、道場主不在のまま、4人の師範代が稽古をつける状態が続いていた。
この4人を人は、四天王と呼び、その中に三冬も入っていた。
そろそろ後継者を決めなくてはならない。

三冬から大治郎の話を聞いた四天王の1人、渋谷寅三郎が大治郎に手合わせを願う。
しぶしぶ手合わせにのぞむ大治郎だが、勝負は大治郎の気迫にすでに自分の負けを悟った寅三郎の降参に終わった。
ところが寅三郎は気持ちの良い男で、大治郎と酒を酌み交わし、上機嫌で帰っていった。
だがその帰り、材木が倒れてきて寅三郎は下敷きになり、身動きが取れないところを刺されて絶命した。

道場の後継者争いであることを見抜いた小兵衛は、芝居を打つことを考えた。
大治郎を田舎から出てきた侍に仕立て、道場で三冬に勝負を挑ませる。
そこで三冬に勝たせ、大治郎を弟子入りさせる計画だ。
まずは誰にも見破られないよう、三冬が見事に大治郎に勝たなければならない。

本来なら、自分など足元にも及ばない大治郎を弟子にするなど、芝居でも心苦しい。
できないと弱音を吐く三冬を、そんなことでどうする!と小兵衛は一喝。
稽古を重ねた結果、誰の目にも不自然ではないように勝負ができるようになった。

計画は実行に移され、大治郎は井関道場に田舎者丸出しで勝負を挑み、三冬が勝つ。
三冬に弟子入りを懇願した大治郎は、井関道場で弟子生活を始める。
掃除をしている大治郎の前に立ちはだかり、自分の股をくぐって床を吹けと笑うのは旗本の息子の小澤だった。

御用聞きの弥七の捜査もあって、後継者争いで闇討ちをしているのはこの一派と見抜いた小平衛と大治郎。
闇討ちされた渋谷のためにも、この男たちに道場を任せるわけには行かない。
やがて、後継者を選ぶ立会いの日が来たが、三冬は女性であることから立会いを自分の弟子の大治郎を代理として任せると申し出る。
小澤と対決した大治郎は、小澤の竹刀を叩き落とすのだった。

後継者は、三冬と決まった。
だが三冬は、自分には道場を継ぐ器はないといって、道場を閉鎖した。
田沼意次も承知したらしい。

しかし小澤を闇討ちの犯人として突き出せば、井関道場にも闇討ちなどされた渋谷にも傷がつく。
小平衛は小澤を告発することは、止める。
だがその夜、飯屋の梅屋から帰る道で、小兵衛と大治郎親子を小澤の一派が闇討ちしてくる。

今度は斬って良い、いや、井関道場のため、この男たちは斬らねばならない!
「天罰だ!遠慮なく斬れ」。
小兵衛と大治郎は、小澤たちを斬る。

夜遅く、自分の道場に戻った大治郎を待っているのは、三冬だった。
思い上がった自分の剣を、大治郎に本気で叩きのめしてほしい。
三冬はそう言った。

今夜は酒も入っているしと断る大治郎に対し、三冬はそれまでは帰らないと正座し続ける。
では、と外に出た大治郎は、外で寝てしまう。
その姿を見た三冬は、どうしても微笑が浮かんできてしかたがないのだった。



この回は、三冬さんがかわいくって、しょうがありません。
剣を取っては四天王と呼ばれるほど、強く凛々しく美しい三冬さん。
だが、大治郎と立ち会う時に「この人と立ち会うなんて、できない…」と目が言っている。
それは剣士として、格上の相手に勝つ嘘の試合を演じるつらさだけじゃない。

大治郎を前にした三冬さんは女性剣士ではなく、恋する女性そのものなんです。
ついに涙ぐみ、「できません」と弱音を吐く。
すると、小兵衛さん「そんなことでどうする!」と鋭い一喝。
ああ、三冬さんのつらい女心を誰もわかってくれない…。

さらに田舎者と見て、いじめにかかる小澤とその取り巻き。
道場の床を拭き掃除する大治郎の前に立ち、股をくぐって拭けという性格の悪さ。
こんなのが道場を継いだら、井関道場の名声は地に落ちるでしょう。

大治郎がまた、ニコニコしている。
ついに小澤たちは、水桶を蹴飛ばす。
とても耐えられなかった三冬さん。
小澤たちの前に、飛び出していく。

三冬の目を見て、大治郎はかすかに首を振る。
「いいんです、三冬殿は出てきてはいけません」という大治郎の無言の声。
しかし三冬は我慢できず、小澤たちを追い払ってしまう。

三冬さんの一途な思いが、見ていて本当にかわいらしい。
大治郎の田舎侍も、なかなか楽しい。
抜けた男を演じていても、やっぱりどこかにできる男の雰囲気は漂ってしまっていますが。

弥七は、山田吾一さん。
その娘のおときは、関根恵子さん。
三冬さんのところへ大治郎が弟子入りした計画で、父親に向かって、えらくへそを曲げたらしい。

飯屋・梅屋の女将のおかよは、うつみみどりさんが演じてます。
こちらも大治郎が三冬に弟子入りする計画で、えらくご立腹。
大治郎が女性に弟子入りするなんて…という怒りより、2人とも三冬さんにやきもち焼いてるみたいに見えました。

モテモテの大治郎だが、本人は本当に堅物。
最後にやってきた三冬さんをおいて、外で寝ちゃうんですから。
大治郎を見た三冬さんの目が、「…だから好き」と言ってます。
以前の三冬さんと違い、今の三冬さんは剣士としてより、女性として行動してしまうんですね。

それが何より自分がよくわかっているから、三冬さんは自分には道場を継ぐ器はないと拒否したのかもしれません。
脚本や演出もいいけど、俳優さんたちの演技がいい。
各登場人物の性格や心情が、見ているこちらにグングン伝わって来る。
だからか、1973年の「剣客商売」は相当おもしろいです。


5千回斬られて生き続ける不死身の漢 福本清三さん

時代劇専門チャンネルで放送している、時代劇ニュース「オニワバン」。
これから放送される作品に関する裏話や、視聴者の質問に答えてくれる番組で、毎回楽しみにしています。
今回のテーマは、7月22日から放送される「よろずや平四郎活人剣」でした。

藤沢周平氏原作で、NHKでも放送されていましたっけ。
松重豊さんが出演していて、楽しかったなあ。
こちらでは山田純大さんが演じていて、この俳優さんも好きです。

まずは主人公・平四郎の兄である神名監物と対立する、鳥居耀蔵という人物について。
誹謗・中傷・裏切りで出世したと言われる、鳥居耀蔵。
耀蔵と甲斐守という名前から「耀」と「甲斐」を取って、「ようかい」。
つまり、妖怪と呼ばれたと紹介。

この鳥居の配下の剣豪を演じるのが、福本清三さんなんですね!
ということで、今回は福本清三さんに話を伺ってきてくれたんです。
うれしい!

「50年 斬られること5千回」。
「(5千回)斬られて、生き続ける不死身の漢(おとこ)」。
このように福本さんのことを紹介。

「時代劇界の宝と言われる」。
そんな福本さんですが、ご本人が語るには「使ってもらうまでが大変だった」。
萬屋錦之介さん、大川橋蔵さんなんて、最初はとてもじゃないけど主役と立ち回りなんかできない。
主役と立ち回りするまで、何十年!

死骸役をやりながら、薄目を開けて、主役や先輩の斬られるのを見て研究。
こうしたら、いいんじゃないか?と思いながら死骸役を続ける。
そして、そのうち、「あいつはえらい死に方するな」と思われるようになる。

「侍から浪人まで到達する」と、福本さん。
そして、その研究の末、編み出したのが、「エビ反り」!
斬られた瞬間、エビのように背中を反らし、のけぞって思い切って倒れる。

そんな倒れたら痛い!
怪我しないか?!
という勢いで、倒れる。

それがその倒れ方でも、うるさくない。
主役の邪魔をしてないんですね。
この独特の斬られ方が、福本さんの代名詞。

あの名優にも、認められたということで、誰に認められたかと言うと、萬屋錦之介さん!
錦之介さんとやらせてもらえるようになって、初めての時。
死んでいる福本さんに、萬屋さんが近づいてきた。

ここで福本さん、萬屋さんの真似をしながら「お前、死に方うまいな」と言葉を再現。
福本さんは、「ええっ!」とビックリ。
すごくうれしかったそうです。

一番、うれしかった。
「自分のやっていたことは、間違っていない」と思った。
自信に繋がった。

悪役の極意とは?との質問。
福本さん「主役が斬って解決するから、お客さんが安心する。そこまで持っていくのが悪(わる)!」
「悪を強調するのが、使命」。
「悪を、いかに悪くするか」が極意だそうです。

そんな福本さんが演じる鳥居の配下・奥田伝之丞が出演する「よろずや平四郎活人剣」。
鳥居は「からくり人」で岸田森さんが演じましたが、本当にこれだけしか演じていないのが惜しいほどハマってた。
「よろずや平四郎活人剣」では、本田博太郎さんが演じます。
いや~、これは楽しみですよ!