怪談 「新撰組 呪いの血しぶき」

怪談では何と、新撰組まで題材になっています。
9話は「新撰組 呪いの血しぶき」で、土方歳三は菅貫太郎さんが演じています。
菅さんの土方は、狂気を感じさせてなかなか良かったです。

新撰組の最初からのメンバーであった山南敬助が脱走し、切腹に至るまでを土方との確執を中心に描きます。
山南はインテリであり、新撰組が殺戮集団になっていくのは決して新撰組にとって良くないと思っていた。
そんな集団は必ず、潰れる。

だが、土方は今は力でのし上がる時なのだと思っている。
それに山南は最初から武士としての身分があったが、自分たちは武士としての身分を力で得なければならない。
武士として生きてこられた山南は、甘い。
自分たちの気持ちなど、わからない。

所詮、相容れないのだ。
こんな風に、山南が新撰組と主に土方と、考え方が徐々に違っていく様子が描かれました。
沖田は山南を信頼し、慕っている。
だからこそ、山南が外れていくのが沖田は怖い。

結局、この話の土方は私怨を晴らすような形で、山南を切腹させる。
私怨と言うより、ずっと持っていた恨みを晴らすというべきか。
ここでの土方は、自分たちの上に君臨していた武士という身分に勝とうとしている。
そして、自分こそが武士になる。

山南を憎いと言うより、自分がコンプレックスを感じ、常に君臨されていたものの象徴だった気がします。
最初に芹沢鴨暗殺が出てきますが、この時も芹沢は武士なので、ここでの土方は芹沢が、というよりももともとの武士が嫌いで邪魔であった印象を受けます。
芹沢を殺したとき、芹沢の猫が土方や沖田を見ている。
土方は沖田に猫を斬れ、と命じる。

沖田は嫌々ながら、猫に向かって斬りつける。
だが猫は思った以上に身軽に交わし、去っていく。
そして、芹沢の葬儀の時の棺の上にもいる。
新撰組をにらむ。

そして、土方はついに山南をも切腹させた。
土方は権力闘争にも、生まれながらの武士にも勝利したのだ。
しかし山南の残像は、土方を怯えさせ始める。

芹沢と一緒に斬った、お梅の怨念も見える。
それに山南の明里太夫も加わる。
明里を斬った薩摩の間者にも、亡霊が見える。
いろんな人の恨みが、新撰組にのしかかってくる。

土方は、徐々に狂気を帯びてくる。
さらに沖田も、芹沢の飼っていた猫に怨念を感じ始める。
血を吐き、寝込んだ沖田は庭に来る猫を見る。
芹沢の猫に見える。

自分が死ぬのを、自分たちが殺した人間が、恨みを抱いて自分が来るのを待っている気がする。
沖田は、猫を斬ろうとする。
だが猫はやはり沖田の剣を交わし、斬れない。

戦いに敗れ、敗走する幕府軍。
そして新撰組。
沖田はつぶやく。
山南さんの言ったとおりになりました。

近藤勇が処刑された日、官軍は新撰組が屯所にしていた場所に入ってくる。
そこで見つけたのは、山南の持っていた扇だった。
山南、あの男がいたら、新撰組は違っていたのかもしれない。
その頃、土方は、明日のない戦いの函館に赴いていたのだった。

…というような展開です。
怪談じゃなくて、菅貫太郎さんの土方歳三も見たかったなと思いました。
やっぱり姿勢が綺麗ですしね。

沖田総司は、松橋登さん。
峠シリーズの最終話でも主演しています。
この頃の松橋さんは、本当に美青年。

それから、山南敬助は、中村敦夫さんです。
インテリの山南が、とってもお似合い。
さらに亡霊になった時は白塗りで、白装束で正座してくれます。
妖気漂っていて、中村さんの亡霊姿もなかなかの見ものです。

新撰組に怪談とは、斬新な発想。
でも人を斬っているから、恨みの話は作れるかもしれませんね。
この話は、私にとっては豪華キャストでうれしい話でした。


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めらめらとともる怨念の目 「半沢直樹」

半沢直樹、第2部突入しましたね。
堺さんこと、半沢直樹。
うまいですね。

大和田常務の香川照之さんを見る時の、半沢の目。
決して笑わない。
隠しても隠し切れない敵意。

奥で、めらめらと怨念の灯火がともっているようでしたね。
あの怨念が、ともる目。
それを向けられる人間が気がつかなきゃ、嘘のような気もします。
「怒ってるよ」「恨んでるよ」って指摘したくなる目してましたもん。

ねちこく、自分の立場でできる小さな権力を駆使して人をいじめるのに悦楽を感じている京橋支店の古里。
いざとなると、全部自分は悪くないという論理を展開する。
非常に小物っぽい。
それだけに嫌らしい。

手塚とおるさんが、実にうまく演じてくれましたね。
ああいう嫌らしさをわかりやすく、演じてくれたなあと思います。
古里の、変質者的な快感を感じている表情に見覚えがありました。
「世にも奇妙な物語」の「懲役30日」で、受刑者に注射を施す科学者です。

近藤の追い詰められる様子を、どす黒くなっていく画面で表現したのも不気味に怖くてよかった。
もう、一杯一杯になってどうにもならなくなっていうのがわかる。
一喝し、画面が晴れていくので、ホッとしました。

半沢は、昔、これ以上ないという大切な人と、むごい別れ方をしている。
喪失感というものを知っている。
だから今、自分の回りにいる家族、友人、部下の大切さを知っている。
そして、それを傷つけるものが許せない。

半沢を見て、あんな強さがあったらいいなあと友人が言いました。
彼は中学生で、強くならなければならない状況に置かれたんですね。
中学生で普通より強くなってしまうような、そんなことがあってしまったわけです。
もちろんそれで強くなったのは半沢の、それこそ強さであり、同時に優しさを失わなかったところがすばらしいんですが。

「倍返しだ!」の言葉もいいけど、香川さんの「はい、わかりました!」も笑っちゃう。
実際に自分がやられたら傷つきますけどね。
うまいなあ、あの言い方。
達者な俳優さんたちが一杯で、ドラマはいいなあと久々に思わせてくれる作品です。


末路は似たり寄ったりよ 「峠シリーズ3 暮坂峠への疾走」

第3回は、「暮坂峠への疾走」。

ある男が、茶店の娘から、代金を踏み倒した浪人崩れの綱五郎から、代金を徴収しようとした父親を助けてくれと頼まれた。
綱五郎はこの辺りでは、悪名高い無法者。
父親はきっと、殺されてしまう。

頼まれたのは、「竜舞の銀次」という渡世人。
銀次は浪人を見つけ、刃を交える。
途端に一目散に駆けていく銀次。

あぜ道を走ったかと思うと、くるりと方向を変え、逆方向に走っていく。
綱五郎が刀を手に追いかける。
その足の速さに翻弄された綱五郎は、銀次に右腕を斬りつけられ、刀を落とした。
「てめえのツラ、忘れねえからな!」と言って、綱五郎は逃げていく。

だが主人からは渡世人はいいが、自分たちはずっとここにいる、半端にやられたんじゃ…とぼやかれる。
娘は父親の言い草に怒るが、「こっちも体を張ったんだぜ」とだけ言って銀次は去っていく。
一緒にいるのは、兄貴兄貴と慕う小合羽の小三郎。
それをお店の番頭風の男と手代風の男が、じっと見ていた。

信州の善光寺から須坂を経て東に向かう、信州街道は冬には往来も稀。
銀次は今度は、清吉という小作人のせがれから、途中、貫禄を買われて地主の老人の妾にされた姉を救い出してほしいと懇願される。
だがそれは清吉の嘘で、清吉は遊び人になってしまい、自分の情婦を預け前借に5両得て消えてしまったのだった。
清吉の情婦は今ではまじめに働き、清吉を嫌っているのだった。

それを聞いた銀次はおとなしく引き下がる。
今どき、珍しい話のわかるお人だと地主は感心した。
だが清吉のために地主が殺されると見た百姓たちは、銀次たちを追い払おうとした。
百姓たちがそれほど必死になって地主のために動くということが、地主の人格を表している。

しかしその為に小三郎は傷を負い、瀕死の状態で銀次が背負っていく。
途中で、小三郎は苦しさに、銀次にとどめを刺してくれと頼んだ。
渡世を渡っているというのに、人が良くて騙されてばかり。
小三郎をこんな目にあわせるのも、自分が人を見る目がないからだ。

「すまねえな、小三郎」。
「とんでもねえ兄貴。早く楽にしてもらうんだ、恩に着るぜ。兄貴のことは忘れねえ。兄貴とは冥土で会ってもきっと馬が合うぜ」。
小三郎はそう言って、息絶えた。

1人、街道を行く銀次。
その前に、先ほど綱五郎とのやり取りを見ていた男が現れる。
男は商人で久兵衛と言い、弱いものいじめをしている綱五郎を斬ったと評判になった銀次に30両で、国定忠治の首を盗んでくれと頼んだ。

あさって、国定忠治が処刑される。
忠治の首を盗んで手厚く葬りたい。
だがいくらなんでも、そんな依頼は考えにくい。
それにもう、人様に関わって騙されるのはたくさんだと思った銀次は断る。

一軒の農家に宿を求めた銀次は、忠治親分の回向かと聞かれる。
忠治の評判は、農家にまで届いているのだった。
そこにもう1人、信州から来た、しずという女性もやってくる。
女性を野宿させるわけにも行かず、銀次のいる納屋へ、おしずも泊まることになる。

「大変な人手でございますね」と言うおしずに銀次は「娘さんも、国定忠治の仕置きを見物しに来なすったんですかい」と聞く。
娘は答えないが、様子がおかしい。
その夜、寒さに娘に合羽をかけてやった銀次は、娘が地図を持っているのを見つける。
娘は、忠治を追って来ているのだ。

仕置きにされる忠治を若い娘が見物しに来るなんて、酔狂な話だ。
そういえば、忠治の首を盗み出してくれといった男が昼間いたと銀次は言う。
まさか…。

忠治親分の首をほしがっているものは、何人もいると、おしずは話した。
信州にいた女性も、上州で親分が囲っていたお徳という女性も、腕1本でもいいからとあちこちに頼んでいるらしい。
だがおしずは、首だけは絶対に他の人には渡せないと言った。

自分が、信州に持って帰る。
それが父親の遺言でもあったのだ。
おしずの家は代々材木屋だったが、小諸の悪党高利貸しに陥れられ、心中寸前まで追い詰められた。

国定忠治は、上州から信州に旅する時、おしずの家に泊まることがあった。
忠治は、それを縁に思って、この大事なときに自分たちを救ってくれたのだ。
おしずはまだ子供だが、自分たちと店が助かった時のうれしさは忘れていない。

父親は死ぬ直前まで、その恩が忘れられなかったのだろう。
もし、忠治がお仕置きになる時があったら、持ち帰って立派な墓を作るように。
それが、父親の遺言だった。

翌日、刑場に忠治が唐丸籠に乗せられて入ってきた。
ずらりと人々が見ている。
口々に人々は忠治を賞賛した。

手を合わせ、拝んでいる者もいた。
同じ渡世人が言う。
「さすが忠治よ。すげえお人よ。自分たちが思い切った悪事を働いて仕置き場に来ても、誰もこうして来ないだろう」。
「せいぜい、街道の肥やしよ」。

その言葉で銀次のまぶたに、小三郎の墓が蘇る。
自分が埋めた小さな土饅頭の下に眠っている小三郎。
土の上には小三郎が着ていた合羽と、銀次がそばの枝を折った花が一厘、供えられただけ。
誰も顧みない。

おしずも来ていた。
「国定忠治だけを目の仇にして、こうしてむごいお仕置きにするなんて」と、おしずは言った。
「御上はただ、国定忠治を殺したいだけなんです。親分の勢いが怖ろしかったのと、二束のわらじをはかなかったから」。

二束のわらじを履いて、十手・捕り縄を扱っていれば、こんなことにはならなかった。
でなければ関所破りなどで、お仕置きになどなるはずがない。
おしずは、そう言った。

首は3日2晩、さらされる。
今夜は監視は厳しいだろう。
一度、おしずはここを離れたほうがいい。
ここは自分を任せてくれと、銀次は言った。

首などを持って、関所を越えられるわけがない。
裏街道を行くしかないが、それはおしずには無理だ。
取締りの目の届かない場所に行っててもらって、そこで落ち合おう。

銀次が首を盗んでくれると知って、おしずは驚いた。
「世の中ってのは皮肉なもんだ。30両出すからと頼まれたのに断ったあっしが、今度は自分からその気になっちまった」。
「どうして…。あたしのために」。

「あっしに頼んだ男は、供養とか何とか言いながら、穢れた仕事は渡世人に任せるるってわけだ。だが素人のおめえさんが危ねえ仕事に体を張っている」。
「それに正直、あっしは忠治の貫禄に頭が下がってきました。同じ渡世人のあっしが、おめえさんに手を貸したところで、おかしいところはねえでしょう」。
おしずは、でも自分には5両という金さえもないと言った。
「そんな心配は、しねえでいいんだよ」。

「縁もゆかりもないあたしに、報われることもなく力を貸して、万が一命を落とすことになったら」。
「おしずさんみてえな人のために、何かやりてえ。忠治のような渡世人を手厚く葬ってやりてえ」。
「吹けば飛ぶような、名のねえ旅烏の気まぐれで。あっしの悪い癖かも知れねえが、まあ、気にしねえでくだせえ」と銀次は笑った。

その夜、おしずは何もできないからと言って、銀次の布団にもぐりこんだ。
銀次は思わず、おしずを抱きしめる。
だが、自分のようなヤクザ者はおしずのような女性には手を出せないと言って、背を向けた。


ここから先は、ネタバレです。


見張りを峰打ちにして誰も殺さず、見事、さらし首になった忠治の首を盗むことに成功する銀次。
同じく、忠治の首を盗みに来たのは、自分たちに嘘の依頼をして小三郎を死なせる原因になった清吉だった。
それを見た銀次は、清吉を叩き斬る。

首を持ち、銀次は疾走する。
だが峠で銀次を待ち受けていたのは、最初に銀次に首を盗むことを頼んだ久兵衛だった。
大勢の助っ人を連れていた。

材木人足を仕切っている久兵衛の集めた男は、10人ほど。
みな、腕に覚えがある。
身を明かして仕事を頼んだ銀次に、首だけもらうのは後々の面倒になる。
だから銀次には死んでもらう。

久兵衛はそう言うが、銀次は「おめえに頼まれてやったことじゃねえ。横取りされてたまるけえ」と言った。
襲い掛かってくる人足たち。
だが銀次の速い足に追いつけず、翻弄された人足たちは次々斬られる。

最後には久兵衛が匕首を抜くが、そこに「銀次さん、許してください」と言う声が響く。
おしずが現れ、頭を下げる。
久兵衛は、おしずの父親の代からの番頭だった。
最初から、銀次に首を盗ませるための嘘だったのだ。

「おとっつぁんの遺言とやらも、嘘だったのかい」。
「いいえ!嘘ではありません!」
おしずは叫んだ。

久兵衛も言う。
先代や、忠治の回向がしたくてやったことには嘘はない。
「回向が聞いてあきれるぜ」。

こんなにも腕に覚えがある人足がいたのに、なぜ銀次を選んだのか。
久兵衛は「お前さんのその足だ」と言った。
「龍舞と呼ばれている、その速い足に用事がありましたのさ」。

その途端、手裏剣が飛んできて、銀次の左の太ももに刺さった。
「借りを返しに来た」。
姿を見せたのは、綱五郎だった。

銀次に腕を切られた後、綱五郎の右腕は不自由になった。
綱五郎は銀次をずっと追っていた。
そして、久兵衛に雇われたのだ。

自分の右腕が不自由になったのだから、銀次の自慢の足もつかえねえようにしてやると綱五郎は言った。
銀次は言った。
声には自嘲の響きがあった。
「だがな、綱五郎。首をほしがられる大親分の忠治も所詮、磔台の露。ヤクザ者の末路は似たり寄ったりよ。おめえもせいぜ、堅気の人間に騙されないようにしな」。

すると突然、おしずが銀次の前に出た。
忠治の首を盗んだのだから、銀次も凶状持ち。
役人に密告などするはずがない。

「殺すことは、ないじゃありませんか!」
「お嬢様、それでは手はずが違います」と、久兵衛が叫ぶ。
だが綱五郎は「どけ、俺は金勘定を抜きにしても、銀次を生かしてはおけねえんだ!」と引かない。

おしずは「銀次さんの真心に、私は借りがあります。私を代わりに!」と叫んだ。
「最後の最後まで、人を騙したおめえさんが…」。
銀次がつぶやく。

「やめてください!」
叫んだ久兵衛が綱五郎に斬られる。
おしずが、支える。

それにはかまわず、綱五郎は「忠治の首はこの浪人崩れにとっては出世の手づるだ」と言う。
国定忠治を回向したとあっては、上州だって信州だって自分への扱いが違うだろう。
「初めから、ど素人に手渡す気なんかなかったのよ!」

綱五郎は「だてには鍛えてねえ日本差しだ。首を奪う前に死んでもらう」と言って、銀次に斬りかかる。
太ももに傷を負っている銀次は、足がうまく使えない。
綱五郎が銀次を追い詰めるが、銀次は刀を何とか受け止めて交わす。

銀次が倒れこむ。
だが一瞬早く、銀次の長ドスが綱五郎を貫いていた。
斬りかかろうとする綱五郎を斬り、なおもかかってこようとする綱五郎を刺す。

忠治の首を持ち、銀次が言う。
「おしずさん、忠治を手厚く葬るために龍舞の銀次という渡世人が、こんな無駄骨だ。見られたざまじゃねえ。…こりゃ、忠治とあっしの差というものでござんすかね」。
「後生です。お願いします」と言って、おしずは涙ながらにお金を差し出す。
「これで傷の養生をしてください」。

銀次は、それを後ろに、寂しそうに言った。
「人の心って奴は、金じゃ元に戻らねえものもあるんですよ」。
銀次は忠治の首を持ち、足を痛めながらふらふらと歩き出す。

おしずが叫ぶ。
「あの夜のことだけは信じて。私は銀次さんの真心に…」。
銀次の足が止まる。

そして戻ってきて、首を置く。
首は、小三郎の合羽で包まれていた。
「あっしの亡くなった身内が着ていた合羽でござんす。首と一緒に弔ってやっておくんなせい」。

それだけ言うと銀次は足を引きずり、引きずり、去っていく。
「後日、信州の北部で処刑3日後の、嘉永3年12月24日という日付が入った国定忠治の像が発見されたそうだが、その像とこの一件に関連があるかどうかは、わからない」。
「そして銀次のその後の消息については、誰も知らない」。



「頼まれると嫌とは言えねえもんで。何度騙されて裏切られたか、わからねえ。何のために長げえ間、裏街道を歩いて人の心の裏を見てきたのか…」。
銀次は、自分が騙されたために命を落とすはめになった小三郎を背負ってつぶやく。
自分のことを兄貴兄貴と慕う、見るからにちょろちょろした小三郎だが、銀次にはかわいい弟分だったに違いない。

しかしそんなことがあっても、やはり銀次はおしずのために命をかけてしまう。
あの愛想のなさの裏には、人一倍、人情に厚く、優しい顔が隠れているから…。
そんな人間が渡世を、旅をして生き延びていくには、あまり人と関わらないことが知恵なのだとわかっていても。

銀次は、天知茂さん。
おしずは、梶芽衣子さん。
納屋に来た瞬間から、ものすごく美しい。

ものすごい美人だから、彼女だけでも見る価値ありというぐらい、美しい。
その彼女の美しい、堅気の娘のけなげな思いを、銀次が放置しておけるわけもない。
いや、こうして利用する側は利用できる側を見分けるものです。

自分が死んでも、誰も泣かない。
それは綱五郎とて、同じこと。
忠治でさえ、死んでしまえば物言わぬ首。
だが忠治は違う。

死んだ後、女性が腕一本でもかまわないからとほしがる。
博徒の英雄。
百姓も手を合わせる。
死ぬ間際も大勢の人が来て慕い、死んだ後も慕われる。

そんな風に自分は、なれない。
ならないだろう。
誰も形見をほしがるどころか、泣いてもくれないだろう。

小三郎の墓は誰も顧みず、いずれはなくなってしまうだろう。
思い出す人間もいないだろう。
あれは自分の未来だ。

だったら、自分は何の腹黒さもない、けなげなこの娘の頼みを聞いてやって死んだほうが花が咲くというもの…。
銀次のそんな思いが、ひしひしとこちらに伝わってくる。
おしずに思いを寄せても、自分にはそんな資格はないと背を向ける銀次。
自分たち渡世人にはやってはいけないことが3つあるが、そのうちのひとつが堅気の娘に惚れることなのだと。

何か、ストイックで泣けてきます。
それに比べて、出てくる堅気さんが凶悪だ。
綱五郎を斬った評判を聞いたと言っていましたが、あの時点ではもう、綱五郎と通じてたんですね。

銀次に言わせると、自分も綱五郎も同じ、穢れた仕事をさせるだけの道具。
悪党でいるつもりのお前も、それに気づけ。
俺を斬ったとしても、お前もいずれ、そういう人間に騙されて殺されるんだよと銀次は言いたい。

最後の最後に信じてみようと思ったおしずに裏切られ、何もかも嫌になった銀次。
だけどおしずの銀次への思いは、実は本物だった。
銀次はこれで、救われたと思います。

最後におしずの言葉に心が動かなかったら、銀次はあのまま、忠治の首は渡さなかったでしょう。
自分と忠治の差を嘲笑いながら、銀次は去っていく。
やはりこの渡世人の行方も、誰も知らない。

でもきっと、おしずの中ではずっと生きていた。
小三郎の墓とともに、ずっと残ったと信じたい。
どこでどうなったかわからないけれど、銀次の魂の故郷をおしずが作ったと思いたい。
空しさ、切なさが胸に迫って、この話も終わりです。


空中キャッチ! 「大都会Part2」

「大都会Part2」の第42回は、「赤い命を奪還せよ」。

あるヨーロッパの国の駐日大使館の娘が事故に遭い、輸血が必要となる。
しかし彼女は、世界に101人しかいないと言う血液型の持ち主だった。
急遽、外国から輸血用の血液が到着した。
だが金に困った3人の男がそれを強奪し、金を要求した。

タイムリミットは、夕方5時。
それまでに手術ができないと、女の子の命が危ない。
日本の警察も非難され、国際問題に発展しかねない。
黒岩たちの必死の捜査が、始まる。

やがて黒岩たちは犯人を追い詰め、逮捕する。
最後に残り、抵抗した主犯の男は屋上の鉄棒にしがみついて血液を落とすぞと脅し、逃走用の車を要求した。
しかし、黒岩は犯人の手を狙って撃った。
血液ボックスを人質にした犯人の手が、開いた。

丸さんと徳吉が、下で血液ボックスの落下に備える。
上を見ていた徳吉が、丸さんを置いて走る。
落下してくる、血液の入った赤十字マークの金属製のボックス。
宗方医師いわく、「命と同じ」もの。

徳吉がジャンプする。
ボックスをジャンプして、空中でキャッチする。
スローモーション。

ボックスを空中キャッチした徳吉が顔をゆがめて、転がる。
血液は無事だった。
黒岩が走ってくる。
徳吉に声をかける。

だが徳吉は両手を硬直させたまま、転がっている。
手は、ボックスをキャッチした時の形のまま、動かない。
タイムリミットが迫る中、黒岩がボックスを手に取る。

「丸さん、トクを頼みます!」
黒岩は丸山刑事に声をかけると宗方が待つ病院に、車を走らせる。
手術は間に合った。

徳吉の入院している病室に、笑顔の黒岩が入ってくる。
手術は成功、女の子は元気。
白い包帯で両手をグルグルに巻かれ、ギプスで固定された両腕を前に突き出したまま固定されている徳吉。

せっかく、柔道大会で負った捻挫も治ったのに。
恋の病も治ったのに。
そうぼやく徳吉の包帯には、「早く元気になってね!」などというメッセージが書かれている。

おもしろくない徳吉に、黒岩は徳吉は看護師さんたちにカッコいいと評判だよ、と教えてくれる。
黒岩も、徳吉の包帯にメッセージを書き始める。
看護師さんたちに人気だと聞いて気を良くした徳吉は「あの子がいいな」などと看護師の好みを言い出す。
でも結局は、誰にもピンと来くるものがないらしい。

「今日子さんは黒さんの女だし」と徳吉が言った途端、黒岩が「ばか!」と徳吉の手を叩く。
ぎゃーっ。
徳吉が悲鳴を上げ、黒岩が笑う。



これも、覚えてましたね~。
クライマックスの徳吉刑事の、ビルの屋上から落下する血液の入ったボックスをキャッチする姿。
徳吉刑事はその優れた身体能力と、長い足、高い身長を使ったアクションが人を魅了した。

前回、徳吉が愛する女性との別れを選んでも、進んだ刑事の道。
それは徳吉が、悪を許さず、犯人を逮捕するのが自分の生き方だと思ったから。
徳吉は刑事でよかった。

この人が、刑事でいてくれてよかったんだ。
だって彼が刑事でいることで、人が、命が助かるのだから。
彼の優れた能力は、このために存在しているのだ。

そう思える瞬間。
犯人を逮捕する徳吉も良いけど、私はこのシーンの徳吉が一番かっこよかったと思う。
黒岩の「手術は成功!」という言葉に「そりゃ良かったですね、しかし俺はどうなるんですか?」と言う徳吉がおかしい。

恋の病も治った。
徳吉がそう言うところからすると、曜子さんとの別れもやっと口にできるぐらいにまで癒されたらしい。
これは一回一回終了するストーリーのドラマですが、松田優作氏はちゃんと通した演技をやっているんですね。

徳吉の包帯に「早く元気になってね!」などというメッセージがたくさん書かれているのが、おかしい。
黒岩と徳吉の先輩後輩、いや、男と男の付き合いが良い。
信頼しきっている相棒というのは、これだなと思います。

以前、松田優作氏と似ていると言われた古尾谷雅人さんについて私は、松田氏にはないナイーブさがあると書きました。
今もそういう印象です。
しかし今度は、松田氏には他のアクションスターにない、軽妙なおもしろさがあると、徳吉刑事を見て私は思いました。

あと、「大都会Part2」を見ていて、黒岩刑事の渡哲也さんに、並々ならぬカリスマ性を感じました。
石原裕次郎さんはもちろんなんですが、渡さんが際立ってカッコいい。
当時、まだ子供ながら渡さんの渋さの大ファンだった子がいましたが、私なんかダメな人だから今になってこの渋さがわかります。
そして私はやっぱり、松田優作氏の演じた役の中では、「探偵物語」の工藤ちゃんより、この徳吉が好きです。

困るけど楽しい

やっと見られる、「半沢直樹」。
先週お休みがつらくて、思わず原作読んでしまおうかと思ってしまいましたよ~。
我慢我慢。

相変わらず盛り上がりました。
いつも倍返しするシーンがあるので、モヤモヤしなくて済むのも良いようです。
日曜の夜、これ見て終わると楽しい。
もったいぶらない展開が好きです。

2部も濃い面々ですね~。
今回はずっと、お休み無しで行ってほしいです。
しかしテンションあがってしまって、日曜の夜は早く寝なきゃいけないのに寝付けない。
困るけど楽しい。


実は地獄を見ている男

終戦記念日の時にも、ちょっと書きましたが、70年代のドラマは戦争経験者に関する描写がとてもリアルです。
「大都会Part2」でもそんな描写が出てきます。
戦争経験者が、過去の亡霊に取り付かれたように当時の服装をし、装備をして人を襲う。

この犯人が戦争経験者だから、強い。
動きがいい。
定時閉店後のデパートで、ゲリラ戦となります。

次々、物陰から発せられる銃撃に、現役の刑事たちもなかなか動けない。
実際に、戦闘に参加していた、殺し合いをしていた者の経験。
凄みでしょう。
彼を一番におかしいと気づいたのもまた、定年間近の戦争経験者の丸山刑事でした。

丸山刑事はもうひとつ、病院で治療中で口が聞けない目撃者から証言を得るのに戦争経験を生かしています。
トントントン、と指を叩く患者。
丸さんは、正確にその信号を受け取り、犯人に行き当たる。

こんな風に、戦争経験が身近といえば身近。
自然に取り入れられている。
終戦から30年とはいえ、あれだけの大戦ですから、戦争はまだ生々しい経験として生きていたんですね。

戦争経験者の丸山刑事は、地味で穏やかだけど、芯が強い。
それはやはり、戦争を経験しての強さではないかと思います。
何も語らないけれど、地獄を見ている男。
だから強さ、しぶとさが違うんです。

管理職である課長は、時に時代遅れの年寄りとして、丸山刑事を軽んじる。
だが黒岩と聞けば、その辺のチンピラは震え上がると言われる黒岩刑事は常に丸山を立てる。
それは年上への礼儀だけじゃない。
人生の先輩としての尊敬が、にじみ出ている。

これは渡哲也さんの、お人柄が出ているような気がします。
高品格さんに対して、俳優の先輩、人生の先輩として礼儀を尽くして、尊敬していたのではないかと思えるんです。
戦闘力破壊力がずば抜けている徳吉刑事も、丸山に対しては尊敬の態度が見えます。
丸山を心配したりはしますが、決して失礼な態度は示さないし、課長に対してよくやるおちょくりもやりません。

「大都会Part2」の、この人間関係も私は好きです。
丸山刑事も頼りがいがあって、人情があって、好きなキャラクターです。
こんなキャラクターの初老の男性がいると、ドラマにも味が出るなあと改めて思いました。
渡さんの人柄もさりげなく出ていて、すごくいいです。


怪談 「大奥 あかずの間」

五代将軍・綱吉の頃。
女ばかりの世界、大奥に妙という新しい奥女中が入ってきた。
横山町の呉服問屋の娘だと言うことだった。
表使い滝山に連れられて妙は御正室・信子の方さま、続いて大奥総取り締まり・右衛門佐(えもんのすけ)の局に挨拶に向かった。

お妙はじっと、右衛門佐を見つめると、右衛門の佐は元道場家の姫君ということだった。
正室・信子の方の顔を拝むことは、できなかった。
途中に鍵のかかった部屋があり、あれは何かと訪ねるとあれはあかずの間、足早に立ち去るがよいと言われる。

ところがその前を通りかかると、戸の上から血が一筋、流れてくる。
これには滝山も、腰元たちもおののいた。
妙が他の奥女中にあかずの間の謂れを聞くと、上様の寵愛を受けた鼓の名手・お雪の方という女性がいた。

そのお雪がなぜか、上様のご不興を買った結果、自害した部屋だと言うことだった。
他のものは、自害ではなく、上様にお手打ちになったと言う。
ともかくも、大奥を血で汚したということで、お雪の遺体は不浄門から運ばれたらしい。
以来、お雪の部屋は誰も使わず、あかずの間として恐れられていた。

その夜、火の用心に奥女中が回っていると、盲目の僧侶・浦野が廊下に立ち尽くしている。
驚いた滝山がどうしたのか訪ねると、浦野はあかずの間の前に立った。
するとまた戸から血が流れてきて、お雪の「ここから出して」という哀しい声が響いた。
滝山は倒れてしまう。

その夜から滝山はお雪への詫びの言葉を口にしながら寝込んでしまい、起き上がれなくなった。
これはお雪の亡霊ではないかと、妙はあの夜に見たことを話す。
「出しておくれ、出しておくれ」とささやく声。
滝山は思い出す。

右衛門の佐は、わら人形を手に、「お雪死ね」とお雪の死を願いながら釘を刺していた。
背後には滝山が、見張りについていた。
「お雪の方様、私ではありません」。
滝山は言い続ける。

この話を聞いた信子の方は、一笑に付す。
大奥ではまだ、綱吉に世継ぎが生まれないことを憂いていた。
信子の方には、子供がなかった。
親戚である綱豊に、六代将軍に世継ぎになってもらうしかない。

信子の方はそう思っていたが、綱吉は側用人の柳沢に与えた拝領妻・染子から生まれた子・吉里が、いまだに自分の子ではないかと思っている。
もし柳沢の子供が世継ぎにでもなれば、天下は柳沢の思うがままになってしまう。
それは何としても、阻止したいことだった。

だが、綱吉とお伝の方との間に生まれた鶴松も亡くなってしまったし、京都から信子の方が呼び寄せた右衛門の佐と綱吉の間の子供も生まれることはなかった。
本来なら綱豊が世継ぎであるが、綱吉としてはもし柳沢の子供が自分の子であれば、実子を世継ぎとしたい。
しかし確証は持てず、結局、綱吉は綱豊を六代将軍として世継ぎにし、自らは引退を決意する。

大奥で恒例の井戸浚いが行われ、井戸のそこからお雪が綱吉からもらったかんざしが出てくる。
お雪のものは、全て処分したはずなのに、なぜ。
滝山も右衛門の佐もうろたえ、お雪の墓を暴くことにする。

読経の中、お雪の墓が掘り返されるが、棺の中には鼓が入っているだけで、お雪の遺骸はなかった。
雨の中、滝山は悲鳴とともに倒れ、そのまま滝山は亡くなる。
信子の方は右衛門の佐とあかずの間に向かうが、そこには浦野が座っている。

浦野はお雪についていた者だが、現在は盲目で口もきけなくなっていた。
もしや、浦野はお雪について何か言いたいことがあるのでは?
そんなことが続いたある夜、妙が綱吉の湯殿の世話をしていると、手を踏まれる。
これは寝所にあがれという、綱吉の合図なのだった。

妙が、綱吉の寵愛を受ける。
噂はたちまち、大奥を駆け巡った。
信子の方は嫉妬と怒りと悲しみで、一杯になる。

妙は「おめでとう」という声に送られながら、仕度をされるが、右衛門の佐は嫌味を言う。
だが自分の部屋の子から、お手つきが生まれるとあれば祝わなければならない。
上様のお手つきとなれば、今日からは妙は御中臈である。
まずは内掛けをしんぜようと、右衛門の佐は言う。

しかし寝所に入った妙に綱吉は、お雪を重ねて怯える。
綱吉は右衛門の佐を連れて、あかずの間に入った。
あかずの間に鼓があり、その鼓にぬくもりがある。
誰かが打っているのだと言った綱吉は刀を抜き、狂いまわる。

綱吉はその夜から、床に伏せるようになった。
将軍が病であるという話は、諸国に伝わった。
綱吉は右衛門の佐に、お雪の供養をするように言い渡すと、綱吉は元気になったら柳沢に七代将軍に柳沢の息子・吉里を指名する誓詞を書くと言う。

吉里は自分の子であり、次は綱豊であってもやはり吉里を将軍職につけたい。
柳沢吉保には、後見人として百万石を与えると約束した。
お雪の供養が始まった。

白く濁った目で、じっと仏様を見つめる浦野。
信子の方にそっと、右衛門の佐が耳打ちをして出て行くのも、浦野はにごった目で追っていた。
綱吉が七代に吉里を決めたと聞いて、信子も右衛門の佐も憤った。

その夜、寝所で妙を相手に綱吉は、お雪は哀れな女であったと言う。
どこかの寺の坊主と密通したお雪を、綱吉は責めた。
愛するがゆえに、責めた。

お雪は相手の名前を言わなかった。
結果、お雪は自害してしまったのだ。
だが妙は、それは違うと言う。

まるで、お雪を知っているかのような否定に、綱吉は妙に理由を聞く。
お雪に深い同情を寄せる妙の様子を見て、綱吉は心の優しい娘だと言った。
だが、妙は自分の心にも悪い虫が棲んでいると言う。
悪い虫か、と綱吉はつぶやく。

信子の方と、右衛門の佐が話している。
右衛門の佐は、お雪の子供が生きていればもう7歳。
生ませて、それで自分たちの味方につけて置けばよかったという。

それを聞いた信子の方は、自分はずっと1人であったと言う。
将軍の妻でありながら、妻であることは一度もなかった。
自分にとって、上様はたった一人の男性。

右衛門の佐でさえ、信子の方は憎いと思ったことがある。
北の丸も、お伝も、綱吉に寵愛を受けた女性はみな憎かった。
お雪も、そして今は妙も憎い。

その時、大奥に鼓の音が響く。
何かに取り付かれたように綱吉が立ち上がり、お雪はやっぱり生きているといって、刀を持ち、あかずの間に走る。
妙が後を追おうとするが、足を取られて転倒する。

あかずの間に入った綱吉は、鼓がないことに気づき、お雪はいる。
「どこかにいる!」と叫ぶ。
お雪の内掛けを羽織り、誰かが座っている。
綱吉はそう思ったが、誰もいなかった。

信子の方は1人、部屋で懐剣を握りしめ、抜く。
「上様はわたくし、1人の上様。もうどこにもやらぬ…」。
あかずの間にかかっていた内掛けが落ち、お雪の姿が見える。

「お雪、血迷うたな!」
綱吉は斬りつけたが、お雪は信子の方の姿に変わった。
「上様」。
「信子!」

「上様。上様には多くのにょしょうがおりました。だが誰一人として、心から上様を押したいしたものは、おりませんでした。全てのにょしょうに裏切られました。あれほど寵愛されましたお雪にも裏切られました。上様!」
だが、綱吉はすがりつく信子を払い、「離せ!お雪はどこかに生きている。俺はお雪に聞く。もう一度聞く!」と叫んだ。
「上様、あれほど望まれた世継ぎにも恵まれず」。

信子の言葉に綱吉は、「吉里がいる」と答えた。
「吉里は吉保の子。上様のお子などでは、ございませぬ」。
そう言って信子の方は、吉保の言葉に乗らないように懇願する。

「上様、わたくしは上様に斬られて、本望でございます。でも、上様1人をやりません。上様」。
信子の方は隠し持っていた懐剣で、綱吉を刺した。
驚いた綱吉は、信子の方を刺し貫く。
倒れそうになりながら綱吉は「お雪。わしはそなたを許す。わしを、わしを助けてくれ」と言う。

すると、内掛けを羽織ってお雪が現れた。
だが次に、お雪は妙の姿に変わった。
妙は、自分は上様に殺されたお雪の妹だと打ち明けた。
近くに浦野が立っていた。

浦野は目に手をやると、白く濁った目を覆っていた膜を取り去る。
そしてお雪が自害などとは嘘だ、短刀は背中に刺さっていたのだと言う。
綱吉の子を身ごもっていたお雪を、無残にも綱吉は見捨てた。

浦野はお雪について城に入り、ずっと娘のように育ててきた。
だから浦野は妙を呉服屋の養女にするよう尽力し、こうして大奥に入り込ませたのだ。
綱吉は、お雪を殺したのは自分ではないと叫ぶ。

「それは私じゃ」。
声とともに、右衛門の佐が入って来る。
お雪が世継ぎを身ごもったと聞いて、憎かった右衛門の佐は、それは綱吉の子ではなく、不義密通した谷中の僧侶の子供だと綱吉に吹き込んだ。

「右衛門の佐!そなた…!」
「私はお雪などには、負けとうなかった。浦野、妙、そなたたちもあの世に送ってしんぜよう」。
右衛門の佐は斬りかかって来る。
浦野が何とか、防ごうとする。

しかし右衛門の佐には、浦野がお雪に見えた。
動揺した右衛門の佐は、自分で自分の懐剣の上に転ぶ。
お雪の墓を暴いたのは、浦野だった。

全てが終わった。
浦野はお雪の内掛けに向かって、「いつの世になってもお雪はこの部屋の主。ここにおられるのが、一番良いのでございます。お雪さま、聞いておられますか」と呼びかけた。
内掛けに、お雪の姿がだぶった。

その夜、大奥を出る妙と浦野だが、雷鳴が響く。
長かった。
姉の死を聞いてから7年。

信濃屋の養女となり、本懐を遂げたのに、心が晴れない。
なぜだろう。
妙がそう言う。

お雪が成仏すれば、妙の心も晴れるに違いない。
浦野の言葉に、妙がうなづいた時、雷鳴が響き、風が吹く。
落雷に打たれた妙と浦野は、お雪の成仏を念じいながら息絶えた。

お雪が招いたのかどうか、わからない。
綱吉ははしかのため、死す。
信子の方は、10日後、同じ病にて死すと公儀は天下に告げたと言う…。



これは「日本怪談名作劇場」でも見ました。
官軍が大奥に入ってくる。
その時、きらびやかな大奥を、1人残った女性が案内する。
官軍の兵士役は、藤田まことさん。

兵士は鍵のかかった部屋に、ここは何かと尋ねる。
奥女中は、あかずの間だと言って、その由来を話し始める。
その内容は、ここでの展開と同じです。

お雪と妙は、この案内した女性と同じ女優さんでした。
ただ、最後に妙と浦野は雷に打たれて死んだりしない。
見事、仇を討った妙。

最後に兵士は、それは五代将軍の頃の話でしょう?
あなたはなぜ、それを知っているのですか?
大奥にずっと語り継がれてきたのですか?と聞く。

すると今まで晴れていた空が曇り、雷鳴が響く。
稲光に官軍の兵士が目を閉じる。
目を開けた時、女性はいない。

「もし?どこに行かれた?」と言いながら、女性を探しに歩く兵士。
誰もいない大奥。
歩いて行った兵士の足元には、お雪のかんざしが落ちている…。

といった展開。
私は自分の好みでは、こちらの展開のほうが怖いし、情緒があって好きです。
綱吉は正室・鷹司信子の方に刺されたのだという噂があるので、こういう話ができたんでしょう。

スーパー時代劇と銘打って放送された「大奥」でも、夏に「怪談編」として、あかずの間の話がありました。
このあかずの間の前に、喪服を着た見慣れない女性が座っていることがある。
それを将軍が見ると、必ず将軍家や天下に悪いことが起きたのだという言い伝えがある。

時はお盆。
里帰りしない奥女中たちが肝試しで、あかずの間に行って帰ってくる。
だが本当の殺人が起きてしまう。
怪談というより、女性同士の間でもつれた愛情の末の犯罪の話でした。

しかし最後に、怪談が来ましたよ。
十二代将軍・家慶が大奥に入ってくる。
その時、あかずの間の前に、見慣れない喪服の女性が控えている。

「あの者は誰じゃ?」と家慶が聞く。
だが誰もいない。
確かに、喪服の女性が座っていた。

それを聞いた大奥の女性たちは、顔を見合わせる。
誰もが、聞いてはいけないことを聞いたように怖れ、言葉を発しない。
家慶が亡くなるのは、この直後だった。
こんなラストでした。

もともとの噂としては綱吉の母、桂昌院は綱吉が寵愛した染子を、なぜか不吉と言って嫌い、綱吉は柳沢吉保に染子を下げ渡したことから始まっている。
しかしたびたび、染子のもとには通ったし、吉保も綱吉の染子への執着はわかっていた。
結果、染子が子供を身ごもった時、綱吉はこの子・吉里を自分の子ではないかと思っており、将軍職を譲ろうとした。
そのため、綱吉の側室に目をつぶっていた信子の方がついに綱吉を刺した…という噂があったんですね。

綱吉が吉保の家に非常に足しげく通ったことや、桂昌院が吉里に目をかけたりしたことから流れた噂らしい。
だが実際の柳沢吉保の側室になった飯塚染子は大奥にあがったこともなく、綱吉の側室であったこともない。
したがって染子が綱吉からの拝領妻であったこと、その後も染子と通じていたこと。
その子供・吉里に将軍職を譲るつもりであった説は、現在では否定されているとか。

信子の方と綱吉が、相次いで亡くなったことも、噂の元になったんでしょうね。
つまりこの話は、綱吉が信子の方に刺殺されたことまで含めて、綱吉の当時の評判というものがどんなものか。
それをうかがい知る話だと、されているそうです。

でも実際に、大奥にこのあかずの間はあったらしい。
大奥女中たちに伝わる話では、この部屋は信子の方が綱吉を刺した部屋で、この部屋の前には信子の方付きの御年寄の亡霊が出ると言われていたらしい。
それはどうかわからないとしても、この部屋の前で大奥で見たことがない女性の姿が目撃された後は、必ず悪いことが起きたそうです。
ちゃんといろんな物が置かれていたので、本当に鍵がかかったあかずの間ではなかったようですが。

やはり大奥の女性たちには、怖れられていたという話。
夜など見回りでこの前を通るのは、相当に怖かったでしょうね。
家慶が京都に向かう前、大奥に来た時にこの部屋の前に女性がいるのを見たという噂は、本当に大奥に残っていたらしい。
この後、家慶は亡くなっていますね。

嘘かまことか。
わからないけど、大奥という場所の一面を想像させる話ではあります。
自分の身ひとつで、出世、しかも天下に君臨する将軍の生母となる。
女の頂点ともいえる出世、一族の浮沈がかかっているわけです。

この権力闘争は、男性に負けず劣らずすごいものがあったと思います。
ロンドン塔に幽霊の噂が絶えないように、そういう場にはやはり、人の念といったものがあっても不思議ではない。
古今東西、人はそう思うんでしょうね。
大奥にあかずの間の噂があっても、しかたがない。


怪談 「地獄へつづく甲州路」

時代劇専門チャンネルで見ている「怪談」。
幽霊が出てくるということは、人間が極限にいたる感情や状況があるわけで、予告の通り、濃密な人間ドラマです。
7話には「地獄へつづく甲州路」なんて、渡世人ドラマにありそうなタイトルの話もありました。
成田三樹夫さん主演で、ある渡世人が一宿一飯の義理で何の恨みもない5人の渡世人を斬るところから始まる怪談。

この5人は、水のことで代官に訴えに行くところだった。
悪いどころか、百姓たちの願いを背負っていた。
ところが主人公の政吉が世話になった親分に頼まれて、一宿一飯の渡世の義理で彼らを斬り殺す。
そこから政吉は、5人の亡霊に付きまとわれる。

賭場では、お連れの若い方はどちらに?と言われる。
もちろん、政吉は1人。
特長を聞くと、背が高くて、目の上に傷があって…と、自分が斬り殺した男の特長と一致する。

宿屋に行けば、女中が膳を政吉以外に5つ持ってくる。
そうやって付きまとわれた政吉は、早く甲州から出なければと思う。
宿を出て、一軒の農家で老婆が泊めてくれる。
外の井戸で体を拭いていると、通りかかった百姓がビックリする。

聞くと、ここは息子を斬り殺されて絶望した老婆が首をくくってから、誰も住んでいない家だと言う。
しかも、老婆が目撃されるので、近隣の者は怖れて昼間でも近寄らない。
ぎょっとした政吉が出て行こうとすると、老婆の姿がない。

座敷の奥の柱には、わら人形。
人形には政吉の名前。
そして、両目には五寸釘が打たれている。

政吉の前に老婆が現れ、政吉の目に五寸釘を刺そうとする。
その力の強いこと。
人斬りの政吉が組み伏せられ、両目に釘を打たれて悲鳴を上げる。

すると、何もかもが消えている。
政吉の目も何でもない。
恐ろしさに政吉は出て行くが、行き先で追われている女性を逃がしたことから、土地のヤクザとやりあうことになる。
その際に相手の親分は斬り殺したが、振られた竹に目をやられてしまう。

老婆の呪いの通り、目が見えなくなった政吉は、助けた女性の家に転がり込むことになる。
やがて看病された政吉と女性は、心を通わせるようになる。
一刻も早く、甲州を出たいという政吉は女性を置いていこうとするが、もはや離れられないことを自覚。
ともに行こうと言う。

女性は両親と兄の墓に参ってくると行って家を出たが、何とその墓には政吉が斬った男と、五寸釘の老婆の名前があった。
彼女は母親と兄の仇の男と行こうとしているのだ。
その通りに、母親と兄の姿が現れ、女性の報告を聞いても祝福しない。

悲しみで一杯になった女性だが、ともに政吉と甲州を出ようとする。
しかし兄を斬った親分が政吉を追ってきて、もう一度頼みを聞いて人を斬ってくれと言う。
女性はそこで、政吉が仇と知った。

断る政吉の目には、親分たちがあの5人の渡世人に見える。
思わず親分たちを次々斬り殺した政吉は、我に返ると怖ろしさに川に向かう。
そこで喉を潤している政吉を、女性が背後から刺す。
兄さん、母さんの仇…。

それを聞いた政吉は、彼女に刺されてよかったと言って息絶えた。
政吉1人を行かせはしない。
自分も後を追う。
女性は自らの胸を刺した。

茶店で人斬りの政吉の壮絶なうわさ話を聞いている旅人の耳に、心中死体が浮いたという声が入ってくる。
同じ渡世人でも政吉と、女性と心中する渡世人とはえらい違いだと旅人はつぶやく。
政吉と女性の死体は、手をつないで川に浮いていた…。




宿屋で、政吉が膳を自分以外に5つ運んで来られる。
「これはなんでえ?」と聞くと女中さんが、「お連れ様が…」と言う。
単純で昔からある話だけど、実際にやられたらすご~く嫌。
すごく怖い。

渡世人というか、ヤクザだから斬ったり斬られたりが日常。
とはいえ、やっぱりこういうのって気が休まらない世界だなと改めて思いました。
人を斬っている、泣かしているわけだから、恨みも買うだろうな。

ぞっとするのは、百姓家に世話になったと思ったら、その家には誰もいないと言われるところ。
家に戻ると、人気はなく、奥の座敷に五寸釘が打たれたわら人形。
これだけでも腰抜かしそう。
それに自分の名前が書いてあるとか、気が狂いそう。

甲州から抜けたいのに、路に迷ったり、老婆の家に行ったりして、絶対に出られないのも怖い。
そして目を打たれて、やがて目を傷つけられて。
まるで、じわじわと追い詰められているよう。

さらに女性が斬った男の妹だったり、老婆の娘だったりするのが怖い。
因縁がすごい。
これ、前世からなんかないですか?って思いました。

成田三樹夫さんが、口数が少ない、感情をあまり出さない政吉役。
渋い。
後には悪役がはまっていた成田さんですが、端整でカッコいいです。
成田さんの魅力も、再認識。

女性は土田早苗さん。
綺麗ですね~。
兄は寺田農さん。
何度も斬られた姿で現れて、相当不気味です。

最後に政吉とは大違い…と、本人とは知らずにつぶやく旅人は品川隆二さん。
「素浪人」シリーズで、焼津の半次なんて渡世人を演じていましたね。
これを知って見ると、何だか楽しいです。

政吉は人を斬って、斬って、斬らずにはおかれない状況にされて、どんどん恨みが重なっていく。
所詮、人斬りはどんなにカッコいいと評判になってもこんなもの。
こんな最期を迎えて、人に良くは言われないもの。
最期の政吉の言葉にそんな、諦めが漂います。

2人が重なりあって死んだのに、浮いている死体は手をしっかりつないでいた。
誰かがつながせたんだろうか?
政吉が息を吹き返して、手を握ったんだろうか?
仇と知らずに愛した哀れな妹、哀れな娘のことを思い、兄か母親が最期に握らせてあげたと思いたいです。


ペット百科

土曜日のお昼前にほうそうしていた5分番組、「ペット百科」。
毎回、主に猫と飼い主さんのなれそめと現在を見せてくれていて、和みの番組でした。
それが3月で終わってしまったんですね。
今さらな話題ですが、寂しかった。

5分番組なので、見逃してしまう時もあるので、毎週録画していました。
マルハの提供。
合間に入るCMも楽しくて好きでした。
名作「民子」とか、ここで流れるCMは名作が多かった。

ずいぶん長いこと、見ていたのでとても寂しい。
いつの日かまた、放送してもらいたいものです。
マルハさん、良い番組をありがとうございました。


休日が終わる夜に

お盆も終わり、残暑の中、がんばって通勤、お仕事しないといけない季節。
こんな夜に何を見てしまうかというと、撮っておいた「孤独のグルメ」。
お腹すいちゃうんですけどね。
この脱力するような音楽、松重さんの肩の力が抜けたような演技で、こちらも緊張感無しで見られるんです。

昔、もしかしたら20年ぐらい前になるのかもしれない。
日曜日の夜、10時半から「ワーズワースの冒険」という番組をやっていました。
ワンテーマ、何かを取り上げる。
それは「庭」だったり、「鉛筆」だったりいろいろ。

ちょっとしたドラマ仕立てにしたり、猫のタマがナビゲートしていたり。
切り口は様々だったんですが、日曜の夜、肩の力を抜いて楽しめた。
あれは良かった。
今もサントラを持っています。

和みのCMというと、「いいちこ」。
これはポスターも大好きなんですが、CMも大好きです。
「いいちこ」、がんばってください。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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