同志!

帰宅前に本屋さんにGO!
ディアゴスティーニの大映特撮映画コレクション3、「ガメラ 大怪獣空中決戦」買いにGO。
もう、どこに置いてあるか、把握してるもんね。
迷わないで行ける。

ちゃんとたどり着く。
あったあった、あります。
すると先客?

ブックレットを真剣に見ている男性。
私より年上でしょう。
ガメラに手を伸ばした私に気付いて、足元に置いていたカバンが、私の邪魔だと思ったんでしょう。
「すみません」と言って、どかしました。

「大丈夫です!」
同志よ!
取れますよ。

昭和にガメラ見てた世代ですね?!
買いですか?
お買い上げですか?
私はガメラとギャオス、連れて帰ります。

レジが並んでるので、別の本を見て待ちます。
あ~、ほんとは、こういう本を読んで考えなきゃダメなんだよねとか、バッグが付録かあ、とか見てました。
レジが空いたなと思ったら、一人、お会計してる男性がいる。

あ、さっき、カバンどかしてくれた人。
お、ガメラとギャオス、連れて帰るんですね。
同志よ!
もう良い歳した大人にだって、ファンタジーが必要なのだ。



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明日

見ててごらん。
このお調子者は、明日、ディアゴスティーニの大映特撮映画コレクションを買うよ。
…っていうわけで、明日はディアゴスティーニの大映特撮映画コレクションの第3弾、ガメラ対ギャオス発売なのね。
昭和版だと思ってたんですが、平成ガメラ第1作の方でした。

この時のガメラ、目がクリクリ丸くて愛嬌がある。
しかし、この3部作の構成も見事ですね。
この順番、見事。

明日、ささやかなる楽しみにしてる自分がいる。
やーね、子供じゃないんだから。
いやいや、特撮映画は人を子供の頃に戻す力がある。




うその鳥

以前、書きましたが、子供の時、睦月とみさんという漫画家さんのマンガを読みました。
睦月さんは蝶々をテーマに何作も描いていて、その中に、「うその鳥」というのがありました。
時代は、おそらく江戸時代より前。
京都が都、首都だった時代でしょう。


山里にある村、そこではなぜか鳥というものがいなかった。
だが村には蝶が豊富に飛び、人々は蝶を「鳥」と呼んでいた。
里の娘、ぬいは恋人の清二にいつも「清ど(清二どん)、あの鳥、取ってくれろ」と言って、蝶を取ってもらっていた。
「清どやあ、あの鳥、取ってくれろ」。

清二はやがて、里から都に行商に行くようになった。
その方が儲けが多かったからだ。
行商から戻った清二と会ったぬいは、いつものように「あの綺麗な鳥を取ってくれろ」と言う。

ところが清二は「あれは鳥ではない」と教えた。
自分は初めて、都で「鳥」というものを見た。
「鳥」は、ここで呼んでいる「鳥」とは全く違うものだった。

しかしそんな話は、ぬいにはわからない。
飛んで行く蝶を見て、「ほれ、逃げてしまうに」と言う。
清二はぬいに、鳥の説明をする。

鳥は翼を持って、飛ぶもの。
ぬいは「あの鳥だって飛んでいる」と言う。
さらに清二は説明する。

鳥とは、雛を育てるもの。
ぬいは「あの鳥だってどこかで子供を育てているのかもしれない、探せば巣というものも見つかろう」と言う。
あれは鳥ではないと、どうやったらわかるのか。
清二は考えた。

「そうだ」。
清二は言う。
「鳥というのは声を出して鳴くものだ」。

「声を?」
「それは美しい声で鳴くものだ。あの鳥の声など聞いたことがあるか」。
「あの鳥は、うその鳥じゃ」。

困惑して蝶を見送るぬい。
その様子を見た清二は「お前に無理強いをするようで、心が苦しい」と言う。
清二は、それからも都に行く。

ある日、清二を見た村の年寄りは、「清二には都におなごがおる」と言う。
それを聞いた女性は、「じゃあ、おばば、おぬいさんは…」と聞くと、年寄りは「それが清二の気がかりよ。悩ましさよ」と言った。
「しっ、おぬいさんが…」。

女性たちはあわてて話をやめたが、すでにぬいは話を聞いてしまっていた。
悲しい目をして、清二が帰ってくるのを迎えるぬい。
ぬいがすべてを知ったのを察した清二。
「ぬい」と言って、ぬいを抱きしめる。

その夜だった。
ぬいの家に言った清二は、戸の向こうで自分は都に行き、都で暮らすと告げた。
村の暮らしは、もはや清二には耐えられなくなっていたのだった。

「いつまで待てば良い?」
「俺を待つか。それはならねえ」。
「いいえ。言っておくれ。それを頼りに、ぬいは生きていくゆえ」。
言葉に詰まった清二の目に、蝶が飛ぶのが見える。

「俺が帰るのは…」。
「あの鳥が鳴いた時だ!」
そう言うと、清二は一目散に山を駆け下りていく。

ぬいが、戸を開ける。
蝶を手にしたぬいは言う。
「清ど、この鳥はうその鳥。鳴きはせぬ」。

だが、ぬいは思う。
うその鳥だって、百年に一度、千年に一度は鳴き声をあげる時があるかもしれない。
清二のためなら、鳴かない鳥も鳴く。
運命も変えよう。

私は待とう。
その時を待っていよう。
「清ど、やあ」。

それからぬいは、村のはずれで毎日、清二が山を登って帰ってくるのを待っていた。
清二は、帰っては来なかった。
だが、年寄りたちは、あれほど優しかった清二が何の気がかりもなく、都で暮らせたとも思わなかった。
それでもああ言って出てきた手前、里には戻れなかっただろう。

鳴けよ、うその鳥よ、鳴けよ。
清二もそう思って、暮らしたのではないか。
村人は、そう言った。

時は流れて、現代。
相変わらず、蝶が豊富なこの地方に、1人の青年がやってきていた。
村の年寄りから、前の晩、この話を聞いた青年は、言い伝えにある清二と首のところに同じようなほくろがあった。
青年は蝶を採ることに、新鮮さと情熱をなくしていた。

かつて、蝶は彼の情熱をかきたてた。
しかし、それを職業にしてからはたちまち、蝶は輝きを失った。
今の自分にあるのは、蝶の魅力に魅入られた情熱ではなく、ただお金と名誉のために蝶を追う日々だった。

その日、霧が出そうだから、あまり山に入らないほうが良いと青年は言われた。
旅館の娘も、そう言った。
おぬいさんが連れて行くと、娘は心配した。
この前、来たお客さんも山で事故にあった。

「きっと、おぬいさんが連れて行ったんだ」と娘は言った。
「あんたも連れてく。
きっと連れてく。
おぬいさんは、欲張りだもん」。

だが青年は蝶を追って、山に入った。
美しい蝶が、止まっている。
霧が出た。

蝶に、霧が降りる。
羽根がぬれる。
まるで、蝶が泣いているみたいだ。

こう思って、青年はぎくりとした。
泣いている。
泣く。
鳴く…。

その時だった。
『清ど、やあ…』。
かすかな声が響いた。
『あの鳥、取ってくれろ…』。

背後に、誰かいる。
影のようだが、それは確かに着物を着た女性の姿に思えた。
『取ってくれろ…』。

青年はやっとのことで、声を絞り出した。
「僕はもう、蝶は取らな…」。
だが声は響く。
『ほれ、逃げてしまうに』。

自分は、清二の生まれ変わりだと言うのか?
いや、違う。
蝶の泣く日に、この山に入って蝶を追った男はみんな、ぬいに会うのだ。

『取ってくれろ…』。
青年は憑かれたように、蝶を追う。
『ほら、ほら…』。
蝶は飛んで行く。

青年は夢中で追う。
ぱっと、蝶を捕まえた瞬間、青年の目は輝いた。
それは、久しく忘れていた感動だった。
だが次の瞬間、青年の姿は消えた。

「おとう!こっちだ!」
旅館の娘が大声を出して、父親たちを呼んでいた。
「木の根っこに足が絡まって、引っかかってるだ!」

青年は山道から、崖に落ちていた。
しかし運が良く、木の根っこに足が引っかかってぶら下がっていたのだった。
青年は引き上げられ、旅館で手当てされた。

娘が言った。
「あたし、おぬいさんにこの人、取られたくなかっただよ」。
父親は娘に「この娘っ子が、年寄りの昔話に、すっかり当てられやがって」と言った。

それでも青年には「あんたも。度を越すと妙なもんに魅入られっだぞ。気をつけな」と釘を刺した。
青年は娘に「ありがとう」と微笑んだ。
娘の頬が赤くなった。

それから、青年は蝶への情熱を取り戻した。
色あせていた蝶は再び、鮮やかな色彩を持って映るようになっていた。
青年は思う。
僕は蝶を追うのを、やめない、と。

魅入られることを、恐れはしない。
だって、僕はもう、すでに魅入られたのだから。
蝶が泣く日のできごとに。
青年が手の中につかまえ、再び離した蝶が、日の光で輝いていた。


子供の自分には、ちょっと大人の、不思議な話でした。
嫌いになった以外の理由で別れてしまうという。
好きだけどいなくなってしまうというのが、理解しにくかった。

あんなに可憐なおぬいさんが、亡霊になってしまった。
こうして、土地の幽霊話は生まれるんだと思って。
それもショック。

あの時の、新しい世界を知った清二には、古く狭い村が耐えられなくなった。
一度、広い世界を見て、知識を得た若い清二には、純粋だが無知なぬいに愛しさと同時に苛立ちを感じてた。
蝶を鳥と言って、信じて暮らしている村の生活。
ぬい。

蝶に象徴される村の暮らしは、清二には耐え難くなっていたんだと思う。
でも私も、清二はおぬいさんのことを忘れなかったと思う。
月日が経つに連れ、そして、つらいことがあると思い出したはず。

だけど、戻れなかったんだと思う。
今なら、ああ、哀しい話だなあと思います。
蝶の美しさとともに、印象に残っています。





一殺多生 「影同心II」第1話

東映が、必殺作ってみました!?
書いてみました、「影同心」。
第1話、「影の裁きは菊一輪」。


貧しく、家を失ったものや、その日の食事にもありつけない人々に施餓鬼を行う尼寺の香泉寺。
その美しい庵主・香月尼。
施餓鬼の米を盗む、こそ泥・留吉。

お久という女が、幼い子供を連れ、どぶ川を必死で逃げている。
そこにかかった追っ手の男3人は、お久を突き飛ばし、子供を抱えて逃げ出す。
必死に追いすがるお久。
その前に一人の侍が現れる。

「女子供じゃねえか、許してやんなよ」。
しかし男たちは侍にも殴りかかる。
侍は、寺社奉行配下の同心・堀田源八郎だった。
源八郎は、3人の男を追い払った。

どぶ川から子供とお久をあげてやると、お久は源八郎にすがってくる。
また襲われるから、助けてくれと言うお久に源八郎は、これ以上は自分にはできないから奉行所に行けと言う。
2人には目をくれず、すたすたと歩き出そうとした源八郎の背中に子供の「おじちゃん!」と言う声が追ってくる。

しかたなく源八郎は、香泉寺の戸を叩いた。
ここは源八郎の管轄の寺だった。
源八郎は香月尼に、2人を頼んだ。

香月尼にお久が語ったことによると、お久は水茶屋で働いていたところを蝋燭問屋の越前屋の主人に囲われ、やがて子供ができた。
すると子供がいなかった越前屋は手切れ金もよこさずにお久を追い出し、子供だけを取り上げようとした。
だから、お久は子供とともに逃げたのだ。

香月尼は越前屋に、手切れ金と子供の養育費を掛け合いに行く。
だが越前屋はまったく取り合わず、香月尼は源八郎に越前屋から3百両巻き上げてくるように頼む。
条件は、これまでの源八郎の借金、18両あまりの帳消し。
源八郎は承知し、さっそく留吉を探し出す。

香月尼に顔を見られた留吉は、いつかの泥棒だと気づかれ、恐れ入るしかなかった。
3百両などという大金を盗れば、確実に死罪になる。
留吉は断るが、罪の目こぼしのため、これまた承知せざるを得ない。
一人では無理だと判断した留吉は、昔の兄貴分の平七を探し出す。

元・錠前破りだった平七は、今は牢番をしている。
女房をもらい、足は洗ったが、無類の博打好きだ。
最初は留吉を追い払った平七だが、源八郎から話を聞き、越前屋の錠前を破ることにする。

平七はまず、越前屋に忍び込み、錠前を狂わせてしまう。
蔵の鍵が開かなくなった越前屋は、錠前屋に鍵を直すように飛んでくる。
そこに錠前屋を装って、店の前を掃除していた平七と留吉が越前屋に向かった。
いかにも錠前を修理する振りをして、平七と留吉は3百両を手にする。

香月尼はお久に3百両を渡してやり、お久はこの金で小さな店が持てると喜んだ。
ちょうど寺男を捜していた香月尼に源八郎は留吉を紹介し、留吉は嫌がりながらも寺男になった。
源八郎も平七も留吉も、これで赤の他人に戻ったはずだった。

しかし、越前屋は3百両がなくなったことに気づき、錠前屋が怪しいと訴え出る。
寺社に蝋燭を納入していることから、寺社奉行の稲葉の元にも話が来る。
それを知った源八郎は、留吉に江戸を出て行くように言う。
江戸を離れる前に留吉は、仲良くなったお久の子供と浅草に遊びに出かけた。

だがそれを知らないお久は子供が奪われたと思い、越前屋に駆け込む。
どうしても行方がつかめなかったお久が、自分から越前屋にやって来た。
このチャンスを、越前屋が見逃すはずはなかった。
子供が見つからず、とぼとぼと帰るお久の後を、越前屋は尾行させ、お久親子の居所をつかんだ。

その夜、留吉が子供を連れて戻った後、香泉寺の使いだと言う声に騙されたお久は戸を開けてしまう。
たちまち男たちがなだれ込み、子供を奪い、お久にのしかかった。
翌朝、お久の遺体があがった。

留吉は香月尼と源八郎に、お久がなぶりものにされ、めった刺しにされたことを訴える。
子供を連れ出した自分のせいだということも…。
この事件に関わった3人は、このまま見逃せなくなる。

源八郎は、奉行所の友人・石井に事件の捜査について聞くが、石井はお久の捜査はならず者の行きずりの犯行として打ち切りとなったと言う。
寺社奉行の稲葉に話を聞いてみても、どうにもならない。
越前屋が金に物を言わせ、事件を闇から闇に葬り去ろうしているのは明白だった。

源八郎は、なじみの娘・おいねの料理屋で、酒をあおる。
もてあましたおいねは源八郎に、「いっそのこと、役所勤めなんか辞めたら?」と言う。
源八郎が顔を上げ、黙り込む。
誰もやらないなら、自分がやればいいのだ。

お久が葬られた墓の前で、香月尼、源八郎、平七、留吉が集まる。
役人の源八郎が?
あわてて止める平七に、意外にも香月尼が言うのだった。
「一殺多生。浮かばれぬ哀れな人たちを成仏させるためなら、私は喜んで地獄に堕ちます…」。

人々が行きかい、女性たちが客を引いている道。
平七が越前屋から依頼を受けてお久を殺した岩吉の子分の首に縄をかけ、縊り殺す。
留吉が女郎と部屋にいた岩吉が、ふすまを覗き込んだ際に額に向かって鋭い釘を飛ばし、鎚でその釘を打ち込んで仕留める。

岩吉が死んでいるのを見て仰天した子分が、越前屋の番頭の下に走る。
そこに源八郎が現れ、2人とも斬る。
最後は越前屋を、香月尼が蔵におびき寄せ、菊の花の茎を首筋に刺す。

お久の墓の前に再び集まった4人。
香月尼は言う。
「私たちはもう、影の刺客。2度と戻れない道に踏み込んでしまったのです」。



豪華なキャスティングです。
香月尼は、浜木綿子さん。
香川照之さんのお母様ですが、尼僧姿が何と美しいこと。

堀田源八郎は、黒沢年男さん。
「女子供じゃねえか。見逃してやんなよ」の登場の仕方が男っぽく、かっこいい。
助けたものの揉め事はごめんだと、振り返らずに歩いていく源八郎。

それでも優しい人はわかるのか、子供の「おじちゃん!」と叫ぶ声。
子供の声を聞いた源八郎は、もう放置できない。
あ~あ…、と言ったように、目を閉じる。
損な性格。

香月尼に預けたが、越前屋は寺社に蝋燭を納めている関係で、稲葉奉行も動かざるを得ない。
稲葉様は、岡田英二さん。
この方が出てくると黒幕っぽいんですが、ここではまじめなやり手のお奉行様らしい。

留吉は、若い若い水谷豊さんです。
気が小さいようで、小悪党なんだけど、悪党じゃない。
それどころか優しくて、人が良い。

お久の子供と仲良くなってしまうところなんか、さすが。
江戸を去らなきゃいけないと言われて、話が違うよ~と泣き言を言うが、仲良くなった子供と思い出に遊びに行く。
だけど攫われたと思ったお久は、半狂乱。
一言言うべきでしたね…。

お久が子供を抱きしめるのを見た留吉の、泣きそうな表情。
留吉の半生を物語っているような、表情。
おっかさんかあ、良いなあ…、と言っているよう。
水谷さんの、細やかな演技だと思います。

結果として、それがお久の居場所が突き止められて殺されることになってしまうんですから、留吉の罪悪感は深い。
一人でも越前屋をやりかねかった。
木槌で木の釘を打ち込む殺し方には、ビックリでした。
そうでしたっけ?って。

お久は、吉行和子さん。
源八郎の恋人、おいねは、私も好きな片桐夕子さん。
平七の女房のお勝は、森みつるさん。

「必殺」シリーズでも見かける方々です。
片桐さんは被害者も、悪女も演じました。
森みつるさんは、声に特長があって、「新仕置人」では鉄のおなじみのお女郎さんなんかやってました。

ここでうれしかったのは、源八郎の奉行所の友人・石井が早川保さんだったことです。
「必殺」でも悪役常連さん。
「仕事屋」でも、「新・仕置人」でも女性にずいぶん、ひどいことをしてました。

この早川さんが、人が良さそうで、それでいて役所の限界を承知している同心。
新鮮で良いです。
もっと出番が増えてくれると良いな、と思います。

殺しは最初から皆さん、結構手馴れてるなって感じです。
源八郎は武士だし、平七は元錠前破りだし、留吉もこそ泥。
もともと、下地はあったということでしょうか。

留吉が殺しに手を染めてたとは思いませんが、激情型ではある。
なので、殺しに走るだけの原動力となる怒りは十分感じるひどい事件があればOKでしょうか。
実際、ひどい事件ですし。

ここで謎なのは、仏に仕える香月尼があっさり殺しに走るところ。
あっさり、「もう私たちは影の刺客」って言ったのも気になる。
それはそうなんですけど。
ワケありそうな香月尼の過去は、これから明らかになることでしょう。

「影同心」にはなかった、結成編が第1回でした。
やっぱり、結成編があると感情の入り方が違うと思います。
芸達者さんたちがそろってるドラマは、やっぱり楽しいです。


疲れるんです。ただ、もう。 「大都会 闘いの日々」

第15話、「前科者」。
室田日出男さんゲスト回です。
話が飛んで、すみません。


東南アジア製のST3型と呼ばれる拳銃が見つかり、関東連合系の暴力団が所持しているものと見られた。
関西系の暴力団が東上してくるための、本格的に武闘の準備だと思われた。
そんなある朝、黒岩の妹の恵子が腹痛を訴えていた。

医者に行くことを勧めて出勤してきた黒岩だが、恵子が会社を休んでいることを知った。
恵子は医者に行くことを渋ったが、黒岩は急遽、病院に電話をした。
あいにく、知り合いの白川医師はいなかったが、黒岩は診療の予約をして電話を切った。
黒岩が電話をした白川医師は、何と、天然痘の発生で走り回っていた。

発症まで3日あったので、患者は3日間、結構な行動範囲でいろんな人間と接触していた。
消毒に向かった保健所は、患者の部屋で拳銃を発見した。
東南アジア製のST3型だった。

患者の名前は菊池。
菊池は、拳銃の密輸に関わっていたのだ。
黒岩からの電話を受けた白川は、恵子の診療どころではない状態を説明し、患者の部屋から拳銃が発見されたことを知らせる。
それを知った黒岩は恵子からの連絡の電話も受けずに急遽、患者の部屋に向かった。

一色と加賀見が菊池に話を聞きに向かったが、菊池の容態は急変。
菊池と接触したと判明した者は隔離したが、リストの中の「津山順吉」という名前に黒岩は目を留めた。
白川に話を聞いたが、この男は患者の勘違いで、津山は患者とは会っていないと言ったらしい。

津山は元荒竜会の構成員だったが、黒岩が更生させた。
今は女房と子供を持ち、堅気な生活を送っているはずだ。
だがもし、津山とこの拳銃を持っていた男が接触していたなら、更生はしていなかったことになる。

黒岩に恵子が急性盲腸で入院した知らせが入ったが、津山を追う黒岩とは連絡が付かない。
津山の勤め先の自動車の中古販売店に、黒岩が向かった。
黒岩がいるのを見た津山は、一瞬、動きを止めた。

喫茶店で黒岩は津山と話をした。
津山は以前の工場は、首になってしまったのだと言う。
「連中今でもたかりに来るのかい?」
津山は、あきらめたように笑った。

「はあ、たまですけど」。
「言ってくれよ、いつでも。縛ってやるぜ」。
「ありがとうございます」。
「都の衛生局の、防疫課が来ただろう」。

津山の顔色が変わった。
「手帳かなんか、見て来たんじゃないですか。俺の名前、書いてあったはずですから」。
「どういう知り合いだい」。
「客ですよ、車の。この前、新車と取替えてくれたんで」。

「なるほど、誰に紹介されたんだい」。
「所長ですよ、ここの」。
「ビックリしたよ。都の衛生局でさ。接触者のリストに、あんたの名前があったんでな。まあ、良かったよ。で、奥さん元気かい?」
「ありがとうございます。なんとか」。

「孝子ちゃんは?」
「元気です」。
「大きくなったろう」。

「4年ですよもう」。
「4年か」。
「いやになりますよ」。

「今度の、ここではうまくいってるかい?」
「まあ」。
「連中、来んのかい?」
「…2度ほど来ました」。

「まあ、とにかく、会ってなくてよかったよ」。
「その、天然痘の…、菊池さんですか?」
「会ってたら今頃大変だよ。隔離されてなきゃなんないからな」。

「…怖いんでしょうね。天然痘ってのは」。
「怖いよ」。
「でも今は助かるんでしょう?」

「そりゃ早くわかればな。しかし遅れると…」。
「菊池さん、さっきなくなったよ」。
津山の顔が、こわばった。
「テレビでやってるよ。怖い話だよな。じゃあ」。

黒岩が去った後、丸山がすぐ近くの席で新聞を読んでいる。
丸山は黒岩たちが座っていた席に移り、黒岩と別れて去っていく津山の姿を見送っていた。
津山は呆然としたように前を向いて、歩いていく。
そのすぐ背後を、丸山が尾行していく。

津山は丸山に、気づかない。
電話ボックスに入る。
誰かに電話をした後、会社に戻るが、足を止め、1台の売り物の車の中に入る。
運転席に座ったまま、津山は思いつめたようにタバコを口にしていた。

黒岩と丸山は、岡医院の岡四郎に会いに行く。
津山の身元引受人だった。
岡は津山は、完全に更生していると言った。

ただ、生活は楽じゃない。
何をやってもうまくいかない。
「ま、ひとつには世間にも問題がありますね。前科者っていうともう、色(眼鏡)で見る」。

「一番最近はいつ、来ましたか」。
「先月ですかね」。
「電話は?」
「ないですよ。なぜ?」

津山は、どこか加減が悪い時は必ず、岡医師のところに来る。
なぜなら、アレルギー体質なので、岡の専門外については岡が他の医師を紹介をすることにしている。
丸山は岡に、津山が来るかもしれないと言った。
そして、もしかしたら、天然痘に感染しているかもしれないと言った。

「例のあれです」。
「患者に接触したんですか?」
「本人は否定しています。しかし患者は会ったと言っています。しかもその患者はさっき、死にました」。
「どうして本人と患者の言い分が?」
「わかりません、どっちかの記憶が違っているのか。どっちかが嘘をついているのか」。

もしかしたらその患者に接触したことを、津山は知られたくないのではないか。
それというのも、最近、関東の暴力団に流れている拳銃が患者の部屋から見つかったからだ。
津山は、その拳銃の密輸に関わっているのかもしれない。
それならば、会ったのに会っていないと言い張るだろう。

「自分は津山を信じています。ただ…、そういう疑いが、一方にもあるわけです」。
黒岩は、そう言うしかなかった。
帰りのバスを待ちながら、黒岩は丸山に「丸さん。津山のことですがね」と話しかけた。

「うん?」
「自分はまだあいつを、…信じてるんですがね」。
「うん」。

「そりゃ確かに疑われる要素はあるけど、あれがもし、前科のない男だったら…、疑ってますかね?ぼくたち、あいつを」。
「うん…」。
「もしもですよ、本当に患者に会ったんなら、あいつだって病気の方が怖いんじゃないですかね?ぱくられることより、病気で死ぬほうが」。

その後、黒岩が恵子の入院した病室に急ぐと、バクさんと九条がいた。
黒岩はバクに、津山順吉のところに行ったのかと、聞かれる。
津山のことが、既に新聞社にわかっているのか?

更正した津山が、マスコミに追い回され、報道されてしまったら…。
津山は、津山の家族は…。
顔色を変えた黒岩にバクは、このことはまだ、自分の東洋新聞しか知らないと言った。

バクの情報によると、津山は夕方、家に電話してしばらく帰らないと伝えたらしい。
もし患者と接触していたなら、自分もそうするだろうと言う。
家族に感染させる危険があるなら、家には帰らない。
では津山はやはり、菊池と接触しているのか。

黒岩はその夜、恵子の病室で夜を明かした。
丸山が朝方、黒岩を起こしに来た。
「寝てらっしゃんないんでしょ?」と、丸山の妻が聞いた。
丸山の妻が今日は1日、恵子についてくれると言う。

廊下に出た丸山は黒岩に、深町課長は津山をはっきり、クロと断定したと話した。
すでに津山には、尾行がついている。
加賀見もまた、津山の身辺を洗い出した。

だが加賀見は津山の方は、シロだと言う。
津山の会社での信用は、非常に良い。
まじめで裏表がない。
「裏表なしか」。

津山は、セールスの成績は良くはないが、コツコツやっている。
会社は津山に前科があるのは社長が知っているし、チンピラがたかりにきたのも2度ほどあるが、追い返している。
確かに津山は昨夜は、会社に泊まっている。

だがそれは天然痘を家族に感染させるのを怖れたのではなく、セールスの成績が良くないので当直手当目当てだろうと大内は言った。
さらに大内は、毎朝新聞がこの件をかぎつけたことを伝えてきた。
「ちょっとまずいんじゃないんですか。前があるってだけで疑われてんのは。我々はともかく、新聞まで動くと、彼ここに居づらいですからね」。

恵子の病室に、津山の妻が見舞いにやってきた。
黒岩は恵子を丸山の妻に頼んで、向かいの喫茶店に行った。
「あの人、何を調べられているんですか?」と、津山の妻が聞いた。

犯罪ではなくて、車を売った客が天然痘で死んだ患者だった。
それと接触したかもしれないことだろうと黒岩は言うが、津山の妻はその患者が拳銃の密輸に関わっていたことを知っていた。
「どうしてあの人、そんなことで疑われなくてはならないんでしょうか。あの人、あんまりかわいそうです」。

「あの人、今はほんとにまじめです。それを…。刑を終えたということことは、償いをしたってことじゃないでしょうか。そうでしょう?本当は。そういうことでしょう」。
「でも世間は全然違いますね。昔の仲間がたかりに来ても、あの人、絶対受け付けませんよ。おいしい話持ってきても、あの人決して乗りませんよ。徹底的に避けとおしてます」。
「生活は…ほんっとに苦しいですけど」。

「みなさん。少しひどいと思います。あの人、かわいそうです…」。
妻はそう言うと、目頭を押さえた。
「奥さん」。
「すみません」。

「コーヒー冷めますよ」と、黒岩は暖かい声で妻にコーヒーを勧めた。
「はい」。
「黒岩さん。あたし人間ってほんとに汚いと思いました」。

黒岩が、妻の顔を見る。
「私も含めてです。夕べ、新聞社の方が訪ねてみえて、漠然と事情が私にもわかって…。ほんとは私。ほんとは私までもしかしたら、って。そう思いました」。
「…」。

黒岩は黙っていた。
「…」。
妻も、黙っていた。

「つまり、私も主人を疑ったの…」。
「…」。
「…」。

「ですけどね。私、思いました。もしもそうとしたら、しかたのないことだって」。
「主人が。あの人がいくら懸命にまじめにやろうとしても、世間は前科者に本当に冷たくて。それだけでまともな職にもつけず、何かが起こるとすぐに疑われて」。
「そしてまた職を変えなければならず。そうやって6年間一生懸命やってそれでもダメで、何かをしたのなら、それは私、もう責められない」。

もう、妻は黒岩に話しているというより、自分に話しているようだった。
「それどころか私、一緒に罪を背負ってあげる」。
「ほんとに、ほんとに苦しいんですからね」。

「6年。我慢してそれでもダメで。あたしたちのために罪を犯したなら、それで…」。
「あるいは天然痘背負って、それでもそれは私たちにうつすまいと家に帰ってこられないんだったら、私」。
「奥さん」。
黒岩の声で、妻はハッと我にかえった。

「何を言おうとしたんでしょうね、私。あの人、何もしてませんよね」。
「信じてますよ!」
黒岩は力強く言った。
妻がうなづく。

「実は…ついさっき、署から電話がありましてね。話が良い方に動いているんです。彼の嫌疑は晴れつつあります。だから奥さん、心配しないで。本当にみんな、見直しつつありますからね」。
その時、丸山から電話があった。

岡医師から、連絡があったらしい。
津山が、診察してほしいと言ってきた…。
席に戻った黒岩は、タバコを口に押し込むようにして吸った。
言葉がなかった。

岡医師に紹介された医者の診療室で、医師が津山と向かい合っていた。
「どうなさいました?」
「実はお願いがあるんです。岡先生には伏せていただけませんでしょうか。実は…天然痘の予防注射をしてほしいんです」。
黒岩は丸山と、隣の部屋から会話を聞いていた。

「種痘ですか」。
「はい」。
「どなたか、そういう方と接触なさいましたか」。

「はい。最近、バンコクから帰ってきた人です」。
「その人は発病したんですか」。
「はい」。

黒岩の耳に、妻の言葉が響いてくる。
『ほんとに苦しいんですからね。それはもう責められない。それどころかあたし、一緒に罪を背負ってあげる』。
医者に種痘なら保健所に連絡すると言われ、津山は「ここではダメなんですか」と聞いていた。
「ここには、ないんです」。

黒岩の耳に、妻の言葉が響く。
『昔の仲間がたかりに来ても、あの人、絶対受け付けませんよ。おいしい話持ってきても、あの人決して乗りませんよ。徹底的に避けとおしてます」。
『生活は…ほんっとに苦しいですけど』。

「で、今何か自覚症状は」。
「別にありません」。
「熱とか、頭痛とか、腹の痛みとか」。
「頭痛はしょっちゅうです」。

「疲れますか」。
「疲れます。最近特に」。
「いえ、ずっとです。2、3年前からどういうわけかずっと」。
赤ん坊の泣き声が、どこからか聞こえてくる。

「どんな具合の疲れですか」。
マジックミラーから黒岩が津山を見ている。
津山が顔を上げる。

「疲れるんです。ただもう、何もかも。疲れ果てて」。
津山がまっすぐ、黒岩を見る。
見えないはずの黒岩の姿を、津山がはっきりと捉える。

『あの人、何もしてませんよね?』
『信じてます』。
黒岩と妻の会話が蘇る。

津山の目が、うつろになった。
黒岩が手錠を手にする。
診察室に、黒岩と丸山が入ってくる。

津山は、うつむいている。
黒岩は黙っている。
辺りが、すうっと暗くなる…。



ああ~。
つらい話。
私は最後まで、津山が無実を証明される展開を待っていました。

やっていたなんて…。
ほんとに、接触していたなんて…。
むごい展開。

室田さんの、見事な演技。
黒岩を見て、ギョッとする。
あきらめたように、昔の仲間のことを聞かれると笑う。

その様子が、後ろ暗いのか、世間に痛めつけられてしまったからなのか、見ているこちらにはわからない。
やましさなのか、打ちのめされているのか。
わからない程度に目を伏せた室田さんの、微妙なる演技。

奥さんは、春川ますみさん。
肝っ玉かあさんみたいな役を演じると、非常にハマった女優さんでした。
ここでは出番は短いながら、夫を支え、信じ、それでも疑った自分に嫌気が差している様子がうかがえた。
だけど、それも無理はないと夫に理解を示し、自分たちを傷つけまいとする夫に寄り添う決意も伺えた。

春川さんの演技の後だから、津山の罪を見る黒岩がつらい。
見ているこちらも、つらい。
ぽつり、ぽつりと話す津山の魂が抜けたような、憔悴しきったような様子がすごい。

最後の、見えないはずの黒岩を見る津山の視線。
すまないような、もう人生あきらめきったような視線。
何ももう、残っていないような、空っぽな視線。

最後の診察室が、まるで拘置所か、取調室に見える。
灯りが暗くなり、黒岩と津山と丸山に光が当たっている。
その先に、黒く、縄が下がっているようにさえ見える。
まるで、津山の行く末を暗示しているような…。

これから彼はどうなるのか。
家族は…。
重い気持ちで、物語は終わる。

犯罪を犯すということは、被害者と被害者家族、関係者の人生を狂わせること。
それだけでは済まない。
加害者の家族や、関係者を苦しめるという罰もついてくるのだ。

加害者は、被害者や被害者家族はもちろん、加害者の家族、みんなを不幸にするという罪も背負うのだ。
きつい展開は、見てる視聴者に、それを知らせているように思える。
重い回。

唯一の救いは、丸山刑事の黒岩刑事に対する暖かさ。
妻を寄越して、黒岩に休みを勧める。
休まないと言い張る黒岩を少々叱るところが、年長者、苦労人の刑事と言う感じがする。
彼はたまに、非情に見えるけど、いろんなもの、いろんな人を見てきてしまっているんだろうなあ…。

しかし、室田さんはすばらしい俳優さん。
どんな夫で、どんな父親だったのか。
彼の人生がどんなだったのか。
彼の6年が、どんな6年だったのか。
津山の今までが伝わって来て、つらい。

物語の世界に、見ている者をしっかり入り込ませる。
主役の引き立て役じゃない。
そういうドラマは、すばらしい。


お外堂さんよ、あれ!

「うしおととら」というマンガが週刊少年マンガ雑誌に連載されていまして、しかし私はコミックスで読みました。
妖怪たちも怖れる怪物、白面の者。
そして、妖怪を消滅させることができる槍に選ばれし少年・うしお。
うしおが、とらという、これまた妖怪も怖れる妖怪と一緒に戦う物語でした。

水木しげる氏のマンガが好きなら、ハマると思います。
たくさん、おもしろい妖怪は出てくるんですが、中でもおもしろいというか、怖いと思ったのは、お外堂さん。
もちろん、国家レベルで破壊される白面の者は一番怖いですが。

お外堂さんは、九州のある地方の妖怪。
この地方の家では、お外堂さんが棲んでいる箱があって、お外堂さんは龍のような、頭が複数ある妖怪。
ちょっと、キングギドラみたいな容貌です。

箱から出す時は、お外堂さんを操る方法を訓練されたものが、「お外堂さんよ、あれ!」と言って呼ぶ。
もちろん、箱は持ち出すことができない。
しかし戦争中、華やかな都会に憧れた1人の村娘がお外堂さんがいる箱を持って、上京してしまう。

操る人がいないお外堂さんは、人に憑依し、人の欲望を吸い取って成長する。
行方不明になったお外堂さんは、今はきっと強大になり、怖ろしい妖怪となっているだろう。
1人の少女が、お外堂さんを退治するため、自分の箱とお外堂さんを持って東京に、うしおのいる学校にやってくる。

少女はうしおと、その背後に憑いているとらを見抜く。
お外堂さんとは姿が違うが、人の欲望を吸い取って成長していれば姿も変わるだろう。
少女はうしおととらを、ターゲットと勘違いし、とらを退治しようとする。
とらを退治することに失敗した少女の前に、教師にとりついたお外堂さんが現れる。

お外堂さんを退治したが、お外堂さんは箱に棲むはず。
この教師は、箱を持っていなかった。
つまり、本体ではない。
お外堂さんの本体は、どこに?

少女のことを、クラスメートが家に誘う。
お外堂さんについて知っていると言われた少女は、家に行くことにする。
クラスメートは、お外堂さんを連れ出した娘のことを語りだした。

憧れた都会だが、村娘の暮らしは困窮し、ついに病に倒れた。
粗末な部屋で粗末な布団に寝ていた娘は、死にかけていた。
髪は抜け落ち、骨と皮になった娘は思った。

ほしいなあ…。
綺麗な着物。
おいしいご飯。
ほしい…。

私にはもう、これしか、ない。
恨みか、哀しみか、村娘の頬を涙がつたう。
娘は、箱を手に取った。
お外堂さんよ、あれ!

その夜、空襲があった。
娘のいたアパートも燃えた。
だが焼け跡からは、骨ひとつ見つからなかった…。

この話を聞いた少女は、なぜ、貴方がそんな話を知っているのかと聞いた。
すると、クラスメートは言った。
「お外堂さんよ、あれ!」

このクラスメートも、お外堂さんに乗っ取られていたのだった。
人一倍、金持ちで恵まれた生活をしているクラスメートだったが、常に自分が持っていないものを持っている人をうらやんでいた。
お外堂さんは、そんなクラスメートの欲望を吸って、大きくなった。

死闘の果て、少女はお外堂さんの箱にたどり着き、何とか自分のお外堂さんで倒すことができた。
だが、このお外堂さんも箱を持っていなかった。
一体、お外堂さんの本体は…。


結局、本体は学校の人当たりの良い、穏やかな女教師の中にいた。
先生の笑顔から、出てくるお外堂さん。
お外堂さんは、先生の光るピアス、箱型のピアスの中にいた。
お外堂さんが、言う。

「この先生はなあ、いつも思っていたんだよ。
自分より綺麗な奴。成績の良い奴。人気のある奴。
死ね、死ね、死ね」。

先生は自分の同僚の話を、にこやかに聞いている。
そして、家に帰ってその同僚の写真を、切り刻む。
歯を食いしばり、目を見開き、憎しみに満ちて。

お外堂さんは、この先生のいた部屋の下の住民にとりついていた。
しかし、この男は部屋の中、仰向けに倒れ、死にかけていた。
男から抜け出たお外堂さんは、今度はこの先生にとりついたのだ。
お外堂さんは、この先生は住み心地が良いと言う。

「この、きらきら光る箱も気に入ったしな」。
かくして、お外堂さんと少女、少女の箱のお外堂さんの戦いは始まる。
長年に渡って人の欲望を吸い続けたお外堂さんは、強かった。
うしおが助けに入る。

悪のお外堂さんは一瞬の隙をついて、少女の口から中に入ってしまう。
「入ってみると、この女もなかなか住み心地が良いぞ~。
お外堂さんを操る家系に生まれた自分を呪い、運命を呪い、人を恨んで生きてきた女だからなあ~」。

確かに少女は、近隣の学校の不良たちの上に立っていた。
うしおにも強気を崩さなかった。
そして、お外堂さんを操る家に生まれた運命を恨んでいた。

しかし今、自分の欲望が、お外堂さんを強くしようとしている。
お外堂さんは、自分の恨みでさらに大きく、凶悪になるだろう。
自分が、人に害を成す。
世の中をめちゃくちゃにする。

「助けて…」。
少女はお外堂さんの自分の欲望を餌にするのを感じて、うしおに助けを求める。
うしおが、少女の言葉を思い出す。

ついてすぐのお外堂さんなら、口から引っ張り出せると言っていた。
少女が助けを求めた口からは、黒い、お外堂さんの頭が見えていた。
うしおが少女に「口開けろ!」と叫んだ。


そしてうしおは、お外堂さんを自分の中に誘い込む。
お外堂さんが、うしおの中に入る。
少女と同じように、自分が望まないのに、戦う運命を義務付けられたうしお。
お外堂さんは、うしおにも囁く。

お前も、人をうらんだことがあるだろお~?
自分だけ、なんでこんな目にあうんだって思っただろう~?
気楽な奴らが、憎かっただろう~?

うしおの中の恨み、妬みがわき上がる。
だがうしおは、その声を振り切り、槍を自分の体に突き刺した。
槍は、妖怪だけを消滅させる。
悪のお外堂さんが、悲鳴をあげた。

その時、少女の放ったお外堂さんもまた、悪のお外堂さんに噛み付いた。
「ああ~、食われる~。食われてしまう~」。
断末魔をあげ、悪のお外堂さんは消滅した。
箱に戻った自分のお外堂さんをねぎらう少女の顔は、穏やかになっていた。


ハッピーエンドなんですが、このお外堂さんがかなり、気持ち悪いんです。
容貌はキングギドラみたいなので、それほどグロテスクじゃない。
人の欲望の描写が、すごくグロテスクなんですね。

戦争中にお外堂さんを持ち出した娘が、最後にお外堂さんを解放するところ。
娘の変わり果てた容貌。
変わらない強い欲望。
その夜、骨も見つからなかったという言葉が、禍々しい。

語る同級生もまた、人をうらやましいと言ってばかりいる。
そこで壁一面にこびりついた、退治されたお外堂さんの欠片が血の飛沫に見える。
欲望の描写とともに、禍々しい。

そして、人の良さそうな先生が、同僚の写真を切り裂いている様子。
さらにその部屋の下、元の宿り主が死に掛けている光景。
ひゅー、ひゅー、ひゅーという呼吸音だけが部屋に響いている。

娘、この宿り主の、誰にも省みられない最期。
写真を切り刻む教師。
すべてが、すごく陰惨。
人の欲望を吸って大きく、邪悪になるお外堂さんだから、人の欲望、醜い面が強調されているんでしょうね。

誰もが持っている、暗い感情。
だから最後に、そのお外堂さんに打ち勝って帰っていく少女の顔が、すがすがしいんですけどね。
この話で明るさって、ほんとに大事なんだな~って思いました。
「うしおととら」、うまいマンガでした。




五味さん

ディアゴスティーニの「大魔神」。
まずはブックレットを見ていたら、五味龍太郎さんが載っている。
時代劇の悪役に、五味さんは欠かせない。
いらっしゃるだけで画面が引き締まる。

少し前、成田山の節分の豆まきに参加されている五味さんの写真を見ました。
素顔は豪快そうな、懐の深そうな素敵なおじ様って感じだなと思いました。
「大魔神」の紹介文を読んでいて…、えっ。

去年、お亡くなりになっていたなんて!
すごいショック。
知らなかったことがまた、ショック。
悲しくて涙が。

まだお元気でいらっしゃると思っていました。
ごめんなさい。
今度は貫禄を見せた長老の悪役も、首領役も、それから素敵なおじ様役なんかも見たかった。

五味さん、長い間楽しませていただきました。
お姿を拝見すると、あっ、五味さんだあー!って楽しかった。
私には欠かせない俳優さんの1人でした。
五味さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。



飛べ飛べラドン 「空の大怪獣ラドン」

今、毎週日本映画専門チャンネルで「ゴジラ」シリーズが見られるんです。
「ラドン」では炭鉱で、1人の坑夫が殺されて浮いているところから話が進む。
仲が悪かった男に疑いがかかり、その妹のキヨは、つらい思いをする。
その男が見つからないため、2人の道案内を連れて警官が坑にはいると怪しい物音がする。

道案内の1人が水の中に引きずり込まれ、続いて警官も引きずり込まれる。
逃げた1人も、電話をかけようとしたところで、何かに捕まった。
4人も男があっという間に、殺されている。

しかも日本刀でも使ったかのような、鋭利な刃物でスッパリ切られていた。
とても、1人の男にできるようなことではない。
一体何が起きているのか。

キヨの家に、殺された男の妻が怒鳴り込もうとして、みんなに止められる。
心配してきた川村技師とキヨの前に、怪物が現れた。

警官たちもやってきて、怪物に発砲するが、犠牲者が増える。
この怪物は古代にいた、巨大トンボ・メガヌロンの幼虫だった。
今、そのメガヌロンが蘇ったのだ。
しかしそれは、更なる脅威が目覚める予兆でしかなかった…。

やがて地震が起きる。
火山と坑山の中間地点の地表付近で、地殻変動していることがわかる。
震度的には1だが、破壊力はすさまじかった。

そしてメガヌロンの復活は、ラドンの復活の前触れだったことがわかった。
ラドンは、プテラノドンが核実験の影響により巨大化したものだった。
巨大にして敏捷、ハイスピードなラドンの飛行能力に航空自衛隊も苦戦する。

地上に降り立ったラドンを陸上自衛隊が攻撃するが、通用しない。
翼が起こす風により、建物も人間も車も、戦車も吹き飛ばされ、崩れた建物の下敷きになり、火災が発生する。
あまりにも圧倒的な力。
炎上する街から、ラドンは飛び立って行く。

ラドンはもう、どこかに行ったのではないかと言われた。
だがラドンは必ず阿蘇に戻る。
動物の帰巣本能で、ラドンは巣のある阿蘇に戻るはずなのだ。

もうもうと、噴煙が上がる阿蘇。
ヘリコプターが調査に行くと、やはりラドンはいた。
阿蘇の火口に火力を集結し、ラドンを封じ込める作戦が提案される。
そんなことをすれば阿蘇は噴火し、被害は甚大になるという主張もされるが、現在の被害の前にはこの作戦しかない。

攻撃が開始された。
阿蘇に撃たれるミサイル。
大噴火の予兆が報告され、作戦本部も草千里の尾根までの退避を余儀なくされた。
第2攻撃が開始され、容赦なく、阿蘇山にミサイルが撃ち込まれる。

山が崩れていくと、ラドンが現れる。
飛び立つラドン。
その時、阿蘇が大噴火した。

火柱が高く上がり、溶岩流が流れる。
ラドンの1頭が、噴火にあおられ、落下した。
溶岩流の中に落ちたラドンが燃える。

見ていた1頭だが、やはり噴火に巻き込まれる。
落ちていくラドン。
鳴き声があがる。

翼を大きく動かしてラドンが、落ちていく。
ラドンが燃えていく。
鳴き声が響く。

もちろん、映画自体もおもしろいですけど、その時の日本が見られて楽しい。
ネオンサイン一杯の街とか。

「空の大怪獣ラドン」は、九州・阿蘇の炭鉱の町が舞台。
この風景。
家。

人々の服装。
炭鉱。
田舎。

自分の記憶にも少しある、というか、バブル前は残っていた。
垢抜けない、ちょっと貧乏、まさに昭和、でも懐かしい日本が見える。

坑の暗闇で何かがうごめき、人がいなくなっていく様子はなかなかの恐怖。
人の家の座敷、庭から畳にメガヌロンがキュキュキュキュキュと言いながら上がってくる恐怖。
昔はもっと、家にいたはずの人がいなくなったとか、サスペンス部分が多かったような記憶があります。

炭鉱町を襲う、姿なき殺人犯。
そんな印象があったんですが、それだけ怖かったんでしょうね。
メガヌロンの怖さは引き付けられましたが、その後の川上技師が記憶喪失になって見つかって、キヨが一生懸命看病する辺りは、子供には退屈な恋愛パートでした。
ラドンが出てくるまでが長かった。

ラドンが現れてからは、この2人の主人公の影は全然薄くなります。
ラドン対自衛隊の空中戦。
最初はラドンは飛んでいる姿を現さず、飛行機雲がラドンを連想させる作り。
ラドンが出てくるまでが長かった。

退避を余儀なくされた時は、攻撃しているみなさんも、退避させてください!って思ってしまった。
でも大丈夫です。
退避しながら、攻撃したみたいです。

ラドンは巨大なので、飛んでいるだけで被害甚大なんですが、もともと人間を狙ってやってきたわけでもない。
その点で明確な人間の敵、脅威となるギャオスとラドンは違うんです。
だけど、人間とは共存できない。
その1点で、ラドンは排除するべき存在。

ただ、人間の核実験の影響で巨大化したものを、一方的に排除するというのは心が痛む。
人間との共存は無理かもしれない。
だが、ラドンは人間を滅ぼすためにやってきたわけじゃない。
ただ、現代に蘇ってしまっただけ。

ラドンがいなくなり、喜ぶはずの人間。
だが、みな、悲痛な面持ちとなった。
誰も歓声を上げる者は、いなかった…。
みんな、ただ、後味が悪かったと思います。
私も見ていて、飛べ飛べラドン、と思ってしまった。

今見ると、特撮の粗が見えたりするんですが、やはりこの頃の特撮映画にこめられたメッセージには考えさせられるところがあります。
この頃にもう、夏が暑くなったねなんて会話がある。
地球の温暖化か?
北極と南極の氷が解けると、水浸しになるんだよ。

この頃から、言われてたんですね。
今、まさにリアル。
地球温暖化の話が現実になっている今こそ、人間界のあり方について考えさせられるところがあります。

クライマックスが、実は何かの失敗でこんな風に撮られたと聞いたことがありますが、かえってその失敗で、ラドンに悲哀が出たとか。
落ちて炎上するラドン。
確かに悲しいです。


ユニーク、多々良純さん 「吉宗評判記 暴れん坊将軍」

「吉宗評判記 暴れん坊将軍」は、悪役さんたちの善い役演技が光るシリーズでもあるんですね。
大木実さんの次は、多々良純さん。
顔を見ればわかると思うんですが、この方、金貸しの因業ジジイ役なんかやるともう、天下一品です。

にひひひひと笑う笑顔。
必殺シリーズでは、殺される時に一瞬、妙な、インパクトのある表情をしてくれました。
ここでは、娘を武家屋敷・寺社奉行に方向に上がらせた大工の棟梁。

寺社奉行ともあろう男が、許婚がいるというこの棟梁の娘に妾奉公を言い渡し、拒否されると監禁した。
失礼があったので無礼討ちになるかもしれないと言われた棟梁は、悩む。
この棟梁に、娘の命と引き換えに、遊郭を作るのに邪魔な地域に火をつけさせ、焼き払った末に罪をすべて着せようという計画だった。


できない自分に代わって、火をつけようとした許婚。
上様に止められた許婚に涙し、棟梁は娘と一緒に死ぬ決心をする。
やめていた酒をめ組で煽り、棟梁は寺社奉行の屋敷に向かう。

あの、お侍さんにと手紙を預けて。
屋敷にはもうすでに、お庭番のお園がいて、棟梁を庭に通してくれる。
棟梁ともに娘を始末…、あわやの時に上様の扇子が飛んでくる。

上様だと知って、ひれ伏す棟梁。
実直で、素朴で、人の善い棟梁。
因業ジジイが得意な多々良さんの、もうひとつの当たり役。
初期の暴れん坊将軍は、西沢利明さんや大木実さんやこの多々良さんといった悪役俳優さんの使い方も、非常にうまいシリーズだったんですね。


人斬り島蔵 「吉宗評判記 暴れん坊将軍」

またまた「吉宗評判記 暴れん坊将軍」ですが、大木実さんが実に味のある役でゲスト出演されていました。
若い頃、極道をやって人を殺め、まだ赤ん坊の息子と妻を置いて家を出た男。
人斬り島蔵と人は呼んだ。

その島蔵が、30年近く経って江戸に帰ってきた。
江戸では将軍吉宗が決めた工事の材木調達を落札した木曽屋が、ライバルから嫌がらせを受けていた。
島蔵は行きがかり上、木曽屋のお嬢さんを助けることになったが、お嬢さんのそばにはいつも、小頭の佐吉がついていた。

そうです。
佐吉が島蔵の息子。
島蔵の息子は、木曽屋で立派に成人していたのです。

そこで島蔵は、密かに木曽屋を守る。
材木の下敷きになるはずの佐吉の袖を引っ張り、佐吉は捻挫ですむ。
まだ安静にと心配するお嬢さんの肩をかりながら、必死に歩く佐吉を影で見守りながら、島蔵は涙する。

立派になった。
こんな極道の息子が、立派な堅気になった。
だからこそ、こんな父親がいてはいけない。

飛び出していって、おぶってやりたい。
しかし、堅気の息子に人斬りの父親がいてはいけない。
だからこそ、江戸を出る前、守り袋に入れた迷子札の、父親の名前を自分は消したのだ。
涙する島蔵。

木曽屋襲撃の先で、島蔵は待ち構えている。
残った材木をダメにし、木曽屋が納入できないようにするために木曽屋に向かう悪党たちの前に島蔵が現れる。
死に花、咲かせる。

大勢を相手に切り結ぶ島蔵だが、劣勢に。
そこに上様の正義の扇子が、飛んでくる。
だが悪党の刃が、佐吉に向かって振り下ろされた。
島蔵は飛び出し、佐吉の代わりに斬られる。

すべてを察した上様の言葉。
苦しい息の下、佐吉が息子だと、うなづく島蔵。
言わねえでくだせえ。
おねげえだ。

わかった。
言わぬぞ。
島蔵は言う。
木曽屋と佐吉を助けてほしい。

わかった。
約束する。
それを聞き届けた島蔵は、目を閉じた。
木曽屋を追い詰めようとした悪徳商人と、結託した深川奉行を成敗した上様。

一件落着した木曽屋のお嬢さんと、佐吉は島蔵の墓をたてた。
花を手向けながら、佐吉はなぜ、島蔵が自分をかばってくれたのかと不思議がる。
上様は答えない。

「なぜかな…」。
そしてそっと、島蔵が持っていた守り袋を水に流す。
これで、いいのだな、島蔵…。


もう、仁侠映画見ている気持ちです。
この回の主役は、大木実さんです。
悪党を演じると怖すぎる迫力の大木さんの、父親であることを隠す切なさ。
暖かさ。
死に花を咲かせる悲壮な決意。

「必殺仕業人」で大木さんは、生き別れの息子を探す、島帰りを演じましたが、あの役も不器用な男の優しさ、悲しさが伝わって来た。
この話は、ほんとにひどい話でした。
「仕留人」では悪辣この上ない男。
この話もほんとにひどい話でした。

「新・仕置人」では半ば狂いかけている男。
狂気と残酷さが印象に残りましたが、こういう役も似合う!
すばらしい俳優さんなんですね。

そしてさすが、上様。
正体を明かさずとも、この人に託せば間違いないという雰囲気をかもし出しているのでしょう。
島蔵は、上様の正体を知らないけど、その確信で上様に木曽屋を託していった。

かくして、不正を働く奉行たちも一新され、改革は前に進んだ。
それは1人の、人斬りと呼ばれた男の献身が生んだものだった。
不思議がる佐吉に、上様は島蔵との約束を守った。
島蔵の笑顔が見えるような、ラストシーン。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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