こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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志賀さんが最高 「吉宗評判記 暴れん坊将軍」

「吉宗評判記 暴れん坊将軍」第142話「俺は天下の鼻つまみ」。
寄せ場帰りのならず者・車坂の権九郎を、志賀勝さんが演じました。
これがもう、最高。

相棒のうえだ竣さんと一緒になって、お女郎さんを足抜けさせる。
待っていた恋人と駆け落ちさせ、翌日はカモになりそうな人を物色。
大店のお嬢さんに目をつけたうえださんを、あんな娘から金取って平気か?!と叱り飛ばす。
うえださんからは、年寄りから金取って平気か?!と怒られるんですが。

そこで目をつけたのが、お金持ちそうな、徳田新之助こと上様。
新さんに絡み、ぶっ飛ばされるかと思ったら、前の夜、駆け落ちさせた廓の忘八たちに見つかってしまう。
半殺しに遭うところを、今度は新さんに助けられる。
ついでにご飯をご馳走してもらい、新さんを「兄弟」認定。

その時、表を通りかかった女を見て、権九郎の相棒が顔色を変えた。
相棒は女性の後をついていく。
何とその女性は、金で殺しを請け負う殺し屋だった。

権九郎は、め組の頭の辰五郎とも知り合いのようだった。
だが、まともにならない権九郎に腹を立てた辰五郎と大ゲンカになる。
そこに割って入った新さんを、権九郎が兄弟と呼んだため、辰五郎はビックリする。

しかし権九郎は、孤児たちを稼いだ金で養っていたのだった。
孤児たちに腹いっぱい食べさせ、慕われる権九郎を見て、新さんは権九郎の優しい心を知る。
一方、権九郎の相棒は、殺し屋の女性にカマをかけ、金を百両出させることに成功する。

てっきり自分の殺しを知っていると思った殺し屋だったが、相棒は何も知らず、ただカマをかけただけと口走る。
相棒は、百両もの大金を出すところを見ると、本当に殺していたのだろうと言って去っていく。
殺し屋の目が光る。

権九郎の相棒は、川原で死体となって発見された。
相棒の仇を討つ。
権九郎は、殺し屋たちが殺しの依頼主の屋敷に入ったところを殴り込みをかける。



当然、この依頼主は殺し屋を使って邪魔者を消し、自分が幕府の要職に就こうとしていたワルです。
そして当然、この所業は上様の知るところとなり、権九郎が危機一髪のところ、上様の扇子が飛んで来る。
駆けつけた上様に権九郎が、「きょうでえ!」と叫ぶ。
上様とわかった悪者たちが、へへーっ!と平伏している。

ところが事情が良くわかっていない、あまりのことに理解の外の権九郎。
平伏する悪者たちの横で突っ立って、「へっ」と言う顔で吐き捨てるように顔をしかめて横を向く。
これが、おかしい。
もう、全然、事態がわかっていない。

マイペースの権九郎は、女殺し屋と格闘。
見事、匕首で相棒の仇を討つ。
悪党たちを成敗した上様に、ひざまずくお庭番たち。

「おい、きょうでえ」と声をかける権九郎を「これっ!」とたしなめ、将軍であることを話す。
「ふーん」と言う顔をしている権九郎。
事態をやっと、理解する。

たちまち、「ひゃああああ」という感じで平伏。
体を小さく、小さくして恐縮。
上様に笑いかけられても、ものすご~く弱々しい声で「…ひゃい(はい)」とお返事。
もう、爆笑。

志賀さんが、ほんとに良い味出してる。
うまいなあ。
志賀さんといえば、「助け人走る」で金を詰まれてどんどん表情が変わっていくシーンなんか、本当にうまかった。
ついに自分の頭領を裏切り、殺すに至るシーンの緊張感といったらない。

さて、元気をなくしたような権九郎は、僧侶の姿になって、孤児たちと寺に行くことになる。
辰五郎の前でも、新さんがいるとおとな~しく、「はい」と返事している。
しかしえばる辰五郎には、反発。
たちまちケンカになりかかる。

笑ってみている上様。
上様は、本当は心根が優しい権九郎が大好きなのであった。
このおかしさ、いじらしさは志賀さんならではですね。
本当に「吉宗評判記」は、悪役さんの使い方がうまいです。


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食欲減退映画 「フェノミナ」

前に「フェノミナ」を観るのを断念した話を書きました。
虫と交信できて、虫に好かれる美少女が、連続殺人事件に巻き込まれる設定なんて勘弁して、って思いました。
虫嫌い…。

しかし、サスペンスとしてなかなかおもしろいと聞いたので、おそるおそる見ました。
ギャー?!
あーっ!

ぎゃああああ!
嫌あああ!
だからどうして!
とか言いながらも、最後まで観ました。

それで、日曜日に見たけど、夜は何となく食欲なかった…。
食べたい!って気持ちがなかった。
翌日は月曜日だけど、月曜日も明らかに食欲なかった…。

おもしろかったけど、監督…。
美少女にあの仕打ちは、趣味ですか…。
あの撮影ができた出演者の方々の根性が、私にはすばらしく思える。

サスペンスとしては悪くなかったと思いますが、私はもう、犯人とか謎解きとか、どーでも良かった…。
監督ぅ~…。
娘さんが出演してたけど、娘さんもえらいが、監督、あれで良いんですか~?

でもチンパンジーくんは、健気でえらい。
良く演技してる。
この映画を「フェノミナン」と間違えて見た人は、すごいショックだと思います。
日曜の夜に、ステキな映画の話でした、ぐぇっ。



犯罪再現ドラマ 「ホテル日本閣連続殺人事件」

Mr.サンデーで放送した、2つ目の事件。
ホテル日本閣連続殺人事件。
犯人は、小林カウ(読みでは「コウ」)。
戦後、初めて死刑が執行された女性の犯人。


1908年、コウは埼玉の貧しい農家の8人兄弟の1人に生まれた。
コウのことを聞かれた当時の担任教師は、他者に対して愛情を向けることがなく、人情味に欠けると言った。
そのうち、コウは結婚したが夫は病弱で物足りない男だった。
闇米を扱っていたコウは、ある日、調査にやってきた若い巡査・関口を座敷にあげた。

そして、関口と関係を持った。
17歳年下であった。
「今度、取締りがあるときは、教えて…」とコウは言った。

ある日、コウは体に良いからと夫にクスリを飲ませた。
夫はたちまち、喉を押さえ、のた打ち回って、死んだ。
だが死因は、脳出血と判断された。

コウは関口と暮らし始めた。
警察を辞めた関口のため、コウは必死に働いた。
だが2年後、関口は出て行ってしまった。

何でも買ってあげたのに。
だが関口は、「うんざりなんだよ」と言った。
尽くした自分をなぜ、捨てるのか。
恨みと未練がコウに渦巻いた。

コウは後に、関口への女心をしたためている。
何でも良いなり。
免許取れたから車買って。
関口がその車に女の子を乗せて遊んでいたのも知っていたが、それでもかわいくて、食事を作って待っていた。

コウは栃木県の塩原に移り、土産物屋を開いた。
当時の様子を知っている人が、コウの様子を教えてくれた。
奥でしたくして、色っぽい格好をしておいでおいでと誘う。

コウは金は持っているという、評判はあったらしい。
土産物屋の店のすぐ奥の部屋には、コタツがあった。
そこにコウはすぐに男をあげ、誘った。

コタツに入れて、コウは足を伸ばして誘う。
すると、その男の家に行く。
妻が後ろにいる男たちは、驚いてコウを返すのに金を握らせたと言う。

コウについてルポを書いた作家・吉田和正さんは、コウは関口で愛することに懲り懲りしたのだろうと語る。
のめりこむことに、懲り懲りした。
金に対する欲望が激しくなったのだろう、と。
信じられるのは、金だけ。

那須塩原で土産物屋を営む小林コウに、ホテル日本閣の主人・鎌助は妻と別れるから一緒になってくれと迫る。
東京にオリンピックが来る。
そのニュースを聞いた時のコウは、好景気が来ると目を輝かせた。
コウにとっても旅館の女将は念願のステイタスある地位だった。

しかし妻のウメは、50万程度の手切れ金では説得できなかった。
もっと金を積まなければダメだろう。
それを聞いたコウは、びた一文払いたくないと思った。
流れ者で、下働きをしている大貫と言う男がいた。

コウは「あんたに仕事を頼みたい」と酒を飲ませ、しなだれかかった。
着物のすそをあげて見せると、太ももに一万円札が数枚、はさんであった。
「こ・れ・で、日本閣の女将さん、片付けて…」と甘い声で囁く。
「え?」

「人間だとは思わずに、犬か猫をやるような気持ちになれば、できるから」。
「だいじょうぶ…」。
声は甘かった。
おぞましい言葉を言ったのに、コウは嫣然と微笑んでいた。

大貫は忠実に、コウの依頼を実行した。
絞め殺した後にコウは、「ご苦労さん」と声をかけた。
鎌助は「女房の死に顔だけは勘弁してくれ」と言った。
コウは死体の始末を大貫に命じ、「祝い酒、持ってきたけん」と笑って、湯飲みに酒を注いだ。

乾杯と、妻の死体を前にコウは大貫と酒を酌み交わす。
そしてコウは、後にコウの運命を決めた、妻・ウメのべっ甲の上等な櫛を見つけた。
「これ、もらってもいいわよね」。

「使わんものは使わんともったいない」と言って、コウは櫛をうれしそうに髪にさした。
「埋めてしまえば、完全犯罪だ」。
コウは笑った。

やり手の女将として、コウは売り上げを伸ばした。
だが名義の書き換えに行ったコウは、すでに日本閣は借金まみれで、抵当に入っていたことを知る。
コウは鎌助に「だましたのね」と詰め寄った。

新館増築に、コウは溜め込んだ300万を使っていたのだ。
許せなかった。
しかし鎌助はうるさいと怒り、コウに出て行けと叫んだ。
「早いとこ、あのオヤジを何とかしてしまわなければしようがない」とコウは考えるようになった。

「あの男さえいなくなれば、あんたがこの旅館の主人になれるかもしれないんだよ」。
コウは大貫に話しかける。
「俺が、旅館の主人に?」

「根無し草のあんたが、温泉旅館の主人だよ。大出世だよ」。
女の力で絞め殺すのは無理だ。あんたは止める振りをして、一緒に…」。
そして1960年12月31日。
晦日そばを作って、コウは座敷に運んだ。

座敷には鎌助と大貫がいた。
コウは鎌助の背後に回り、帯紐を手にする。
鎌助の首に回す。
「何やってんだ!」

大貫は止める振りをして、一緒に締め付ける。
だが鎌助も暴れる。
紐が切れた。

鎌助は「許さねえ」とコウに向かっていく。
大貫が鎌助を抑え、コウが包丁を手にする。
包丁を大貫に渡すと、大貫は包丁を振りかざした。

1961年。
元旦の朝。
訪問客に着物を着たコウは、微笑みながら、「おめでとうございます」と頭を下げた。

念願の日本閣を手に入れたと思ったコウだが、ここは俺のものだと大貫が言い出す。
「何が主人だよ、風来坊の癖に。頭に乗りやがって」。
コウは毒づくが、日本閣夫婦の失踪事件は人々の噂になっていた。

今度はコウは、大貫を片付けることを考え始めた。
裏の竹やぶを通っていく大貫に、迫る影。
2月20日、これからの好景気にほくそえむコウの元に、逮捕状を持った刑事がやってきた。
大貫が全面自供したと言う。

竹やぶで大貫に迫った影は、警察だった。
警察は日本閣経営者夫婦の失踪について、調査していたのだ。
取調室で大貫は、コウが自分を殺そうとしていたことを知り、自供した。
「署まで来てもらおう」。

手錠をかけられたコウはそれを見つめ、「しかたない」「うん」と言って、連行された。
コウ逮捕の決め手となってのは、あのウメの櫛だった。
ウメが肌身離さず身につけていた、母親の形見の櫛だった。

そして日本閣経営者夫婦の死体が、発見された。
増築しようとしていた、新館の廊下の床下だった。
玄関横の部屋、帳場は鎌助刺殺の犯行現場であり、血まみれだった。
床下の遺体と血まみれの部屋で、コウは未来の輝かしい夢を見ていたのだ。

「悪いことしたとは思ってるけど、泣いたってしかたないし。出る涙もない」。
「女だてらに男なら誰でもやってみたいと思うことを、やってみただけ」。
「捕まったのは、事業に失敗したのと同じことです」。

取調室で、そう、コウは語った。
そしてコウは前の夫を青酸カリで殺したことまで、自供した。
青酸カリは、関口が「亭主が邪魔だ」と聞くと「薬でも殺すことができるよ」と言って用意したと言う。
黙っていればわからないことを、なぜコウは自供したのだろう?

「刑事さん」。
取調室でもデスクの下で、コウは刑事の足に手を這わせ、しなを作って微笑んでいた。
だから今度もコウは微笑み、小首を傾げて、しなを作った。
「死刑だけは、堪忍してね」。

法廷にはひたすら尽くした、年下の男・関口がいた。
コウの供述で、共犯として逮捕されていたのだ。
「俺が渡したというのか」。

「胸に手を当てて、考えてみなさい」。
「俺を恨んでいるのか」。
「いえ。今でもあなたのことは、好きです」。

コウの上申書には、このように書いてあった。
「くやしまぎれに貯めたお金が、今度の事件を起こしたのです」。
「関口が私の面倒を一生面倒見れば、何事もなかったと思うと、関口がやったことを認めていただかなければ死んでも死にきれません」。
「商売を熱心にやれば、金には困らないものです」。

人を信用しては口車に乗ってしまい、くやしい、くやしいで終わった女ですから、少しは良いところを見ていただいて、ご勘弁をお願いします」。
判決の日、コウはいつものようにきちんと着物を身にまとい、化粧をして臨んだ。
しかし判決は、死刑であった。
瞬間、コウは両手で顔を覆った。

判決の翌年、東京オリンピックが開催された。
日本中がわきかえっていた。
その頃、コウは…。

独房を回ってきた女性看守が、ぼんやりしているコウに声をかけた。
「小林さん。もう、お化粧しないの?」
「ええ。もう必要ありませんから」。

「だってえ、ここには女しかいないじゃない」。
「ふふふ」。
コウは力なく、笑った。

1970年6月11日。
小菅刑務所。
僧侶が観音像を前に、読経している。
その後ろに、着物姿のコウがいた。

「目をつぶりなさい」と看守が言う。
目隠しがされた。
後手に手錠がされる。

読経の声が響く。
カーテンが開けられると、そこには輪になった縄が下がっている。
コウは連れて行かれ、首に縄がかかる。
「もう、2,3日待ってもらえませんか?」が、コウの最後の言葉だった。


自分がこんな境遇になったのは、男が悪い。
みんなが悪い。
「嫌われ松子の一生」の松子も、そんなこと言ってました。

確かに関口がコウのターニングポイントだったと思うけど、いずれはコウは何かやらかしたと思うんですよね…。
欲望が強すぎて。
それが商売に生かされて、普通はそれで満足するんですけど。
当時、女性は家庭、働くのは男性っていうのが常識の時代、コウはものすごい成功者だったと思うんです。

欲望の女というと、「欲望という名の電車」のブランチ。
私はコウもまた、欲望の女だったと思います。
ブランチも破滅しましたが、コウも破滅しました。
しかし、周囲にいたら、こんな迷惑で怖い女、いませんよね。

コウを美保純さんが演じました。
すごい、良い女優なんですね。
まさに「昭和の毒婦」そのもの。
色っぽく、怖ろしく。

美保さんの20代の頃を知ってますが、かわいらしい色気のある人だった。
おすぎとピーコが、美保さんのことを「バカで、バカで、こんなバカがよく○○(美保さんが女優になる前の職業のこと)に勤めてたと思うぐらい、バカ!でもあれは大物になっちゃうかもよ」って失礼な誉め方してました。
コケティッシュというのか。

あっけらかんと脱いで、明るくて、楽しくて。
私は美保さんは、頭の良い人だと思いました。
実際にこの芸能界、生き抜いちゃってますもんね。
頭が良くて、良い女優さんなんだと思います。


大群獣ネズラ

ディアゴスティーニの大映得撮影がコレクションの4号「ガメラ2 レギオン襲来」のブックレットを読んでいたら、「ネズラ」という映画の名前が出ていました。
「ネズラ」、正しくは「大群獣ネズラ」って言うんですね。
1964年陽春公開予定ながら、諸事情によって中止と書いてありました。
これ、どーいうわけか、私、ワンシーンを覚えているんです。

綺麗に着飾った女性に向かって、巨大ネズミが四方八方から押し寄せているんです。
床から、頭上から、右左。
当然女性は、きゃあああああ!って悲鳴を上げている様相。

ネズミが巨大化しているんですね。
体長2メートルらしい。
これがネズラ。

何で巨大化したかは、このブックレットで知りました。
宇宙食を食べたせいらしい。
子牛大だそうです。

私が知っている情報によると、巨大化したネズミのネズラは天敵の猫を食べる。
巨大化の理由は宇宙線、宇宙からの光線だったかな。
ネズラの好きな物は、女性。
危害を加えるんじゃなく、女性が好きで寄って行くらしい。

そりゃ恐怖だ。
迷惑だ。
ネズラが何のネズミか知りませんが、恐怖のドブネズミだったら嫌過ぎる。

さらに私が知っている情報によると、ネズラは撮影中止になってました。
たくさんのネズミを撮影に使ったため、近隣から苦情が殺到したからです。
ううっ、それは…、確かに…。

そのネズミをどうしたかというと…、…不愉快ですね、やめましょう。
撮影よりすごかったらしいですよ、現場は。
ブックレットには「レギオン襲来」には「ネズラ」へのオマージュも感じられたと書いてあります。

そうか、そうだったのか。
今だったら、たくさんのネズミ用意しなくても撮影できたかもしれないですね。
巨大化したハムスターならどうだ、かわいくてダメか。


魔神変化

ディアゴスティーニ発売の大映特撮映画コレクション、第2弾は「大魔神」。

戦国の世だが、このr丹波の地方は平和に暮らしていた。
この地方には荒ぶる魔神が封じ込められている仏の像があり、人々の信仰の対象だった。
その夜もこの像に不穏な兆しがあると言うことで、巫女の信夫を中心に祈祷が行われていた。
しかし突然、主君花房に対し、家老の大舘左馬之助が反乱を起こす。

忠文と小笹の兄妹は、忠臣・猿丸小源太に連れられ、城を出る。
厩に潜んだ3人を逃がすため、花房に従う家来たちが身を捨てて大館たちをひきつける。
その間に小源太は燃え上がる厩を脱出し、叔母の信夫の下へ向かう。
大館の追っ手がかかるが、信夫は追い返す。

信夫の守る魔神の山・魔神阿羅羯磨(あらかつま)には、あの仏像があった。
山深く、信夫の案内でなければそこにはたどり着けない。
そのため、人は来ない。
信夫は必要なものは自分が届けると約束し、小源太と忠文、小笹は仏像が目の高さに見える崖の上の岩場に潜むことにする。

10年の月日が流れた。
小笹は美しく成長し、忠文はたくましい若者となっていた。
大館が権力を握ると暴政が始まり、民百姓たち領民は砦の建設のために借り出された。
鞭打たれ、苦しい作業を強いられ、働き手を取られた農民たちの生活も困窮した。

人々の希望は、魔神の信仰であった。
だが常々、それをよく思わない大舘は仏像を破壊することを宣言する。
大館の暴政と監視は、厳しさを増していく。

父親が使役で苦しめられ、母親の死に目にも会いに来られなかったため、領民の子供の竹坊は大館を恨む。
魔神の山に向かった竹坊は、小笹と遭遇。
里におりた小源太は大館の家老となった犬上軍十郎に正体を見破られ、捕らえられる。
小源太を助けようと、忠文も里に降りる。

だが逆さづりにされていた男は、小源太ではなかった。
竹坊の父親だったのだ。
わなにかかった忠文は捕らえられ、翌朝処刑されることになる。
その時、忠文を助けに来るであろう、家臣たちもまとめて始末ができると大館は笑った。

意を決した信夫は大館に会うと、このまま領民を苦しめれば必ずたたりがあると忠告した。
しかし大館は「今たたってみよ!」と言うと、信夫を斬り捨てた。
雷鳴が鳴り響き、辺りは一瞬、暗くなり、大館もおののく。
だがそのおののきに一層、腹を立てた大館は犬上たちに命じ、魔神の山に向かわせる。

山奥にふさわしくない、守り袋が落ちているのを見つけた犬上は小笹の存在を確信する。
竹坊が捕らえられ、小笹は竹坊を助けるために現れる。
小笹に魔神の像に案内させた犬上は、魔神像の額に杭を打ち込んだ。

その時、額から鮮血が流れる。
さらに地響きが起き、大地が割れ、犬上も、家来たちもみな、崩れてきた山に飲まれ、岩の下敷きになり、地割れに飲み込まれていった。
明日の朝には、兄と小源太が処刑される。
それを聞いた小笹は、涙を流し、魔神に祈る。

魔神の手が、ゆっくりと上がっていく。
その手が顔を通過した後、仏像の穏やかな顔は怒りの魔神の顔に変わっていた。
魔神は光の玉となり、空を飛んでいく。

忠文と小源太が領民たちの前に引き出されると、領民たちは手を合わせ「若様!」と祈った。
大館たちはその領民たちも、殴りつける。
獄門台に乗せられた忠文を助けようと、潜んでいた家臣たちが飛び出してくる。

「出てはならぬ!」
忠文の声もむなしく、家臣たちは大舘たちにたちまち、斬られてしまう。
無念の表情で、目を閉じる忠文。

その時だった。
火の玉が空から飛んできて、落下した。
それはたちまち、怖ろしい形相の魔神となった。

助け出された忠文たちを通り過ぎた魔神は、大館の城に迫る。
魔神に向かって鎖をかけ、阻止しようとする家来たち。
だがみな、引きずられ、踏み殺される。
魔神の拳の一振りで砦も城壁も破壊され、家来たちは下敷きになる。

天守閣に潜んでいた大館だが、魔神の伸びてきた手に捕らえられる。
魔神は大館を門に押し付けると、額に打ちつけられた杭を抜く。
そして大館の胸に、杭を打った。
信夫の予言どおり、大館は怖ろしくむごい死を迎えたのだった。

しかし魔神の怒りは収まらない。
逃げ惑う領民たちにも、魔神の怒りによる被害は及ぶ。
このままでは城下一帯、滅びてしまう。
忠文が阻止しようとする。

小笹が飛び出し、魔神に祈る。
自分の命と引き換えに、怒りを鎮めてください。
小笹の涙が、魔神の足に落ちる。
すると、魔神は動きを止めた。

ゆっくりと腕が上がり、その腕が顔を通過すると、魔神の表情は穏やかな仏像に代わっていた。
そして仏像は土に変わると、ボロボロと崩れていく。
崩れた土は風に吹かれ、消えていく。
人々は平和になった城下で、それをジッと見つめていた…。


小笹は、高田美和さん。
美しい~。
忠文は、青山良彦さん。
忠臣・小源太は藤巻潤さんです。

みなさん、当たり前のようですがお若い。
大館は、五味龍太郎さん。
大映時代劇には欠かせない悪役さんですね。
実にふてぶてしく、暴君を演じてくれて、物語が盛り上がります。

犬上は、遠藤辰雄さん。
そう、遠藤太津郎さんですね。
花房の残党、これが伊達三郎さんです。
若君を助けに飛び出してくる、良い役なんですね。

雰囲気がたっぷりの巫女・信夫は月宮於登女さんという女優さんです。
大映の時代劇を見ていると、お見掛けする女優さん。
魔神が出てくる前も、普通に時代劇として楽しめました。
さすが、大映さん。

大魔神シリーズには、子供たちが圧制に苦しみ、祈りを捧げる作品もありましたね。
確か、鷹が魔神のお使いで出てきた。
子供たちを守ろうとする鷹まで殺すから、魔神怒る。
でも鷹も復活するので、安心です。

魔神は最後、土となって風に消えました。
他にも、雪になって舞って行ったり、水滴となって消えたりします。
この消え方もなかなかおもしろいんです。

普通に勧善懲悪の時代劇としても、楽しめます。
懐かしくていいな、この感じ。
好きです。


遠藤周作著 「怪奇小説集 3つの幽霊」

もう、すごい前に読んだ遠藤周作先生の「怪奇小説集」という本。
引っ張り出して読んでみました。
あの頃はこわかったけど…となるかと思ったら、いや!
すごい怖い。

まず、最初の「3つの幽霊」が怖い。
これは遠藤先生の体験談。
遠藤先生がフランス留学した時の体験から、始まります。

学生の遠藤先生は、ルーアンを訪ねた。
理由は、ジャンヌ・ダルクが魔女として火炙りになった街、ルーアンを見たかったから。
遠藤先生は、粗末な料理屋に入る。
そこではルーアンの港で働く水夫が数人、トランプをしていた。

こういう小さな料理屋は、2階からワンルームの小さいホテルになっていることが多かった。
ここも同じで、遠藤先生は主人に部屋はあるかと聞いてみた。
すると、トランプに興じていた水夫たちが顔をこちらに向けた。

料理屋の主人が鍵を渡し、遠藤先生が2階に上がる。
水夫たちが何か言う。
その言葉がわかったなら、危険を察知できたかもしれない。
しかし当時の遠藤先生は、彼らの俗語が理解できるほどまでまだフランス語はできなかった。

遠藤先生が部屋に行ってみると、粗末なベッドに部屋備え付けのタンス、枕元に小さなタンスとその上に、はげちょろの水差しがあるだけの部屋だった。
窓があり、下は夏草が茂る空き地で、空き地の向こうは工場の灰色の塀。
ホテルは静まりかえっていて、他に泊まり客はいないようだった。

遠藤先生は下に降り、チーズとオムレツの食事をとった。
水夫たちは、チラチラこちらを見ている。
当時は珍しい、東洋人に対する好奇の視線だと、遠藤先生は思った。

食事の後、遠藤先生は部屋に帰った。
蒸し暑く、それでも遠藤先生は眠りについた。
数時間後、遠藤先生は息苦しくて目を覚ました。
何かに押さえつけられるような苦しさだった。

後に遠藤先生は、幽霊話で良く言う胸の苦しさは、これなんじゃないかと思った。
得体の知れない恐怖感に襲われ、遠藤先生は飛び起きた。
部屋に何かいる。

人間か動物か、わからない。
だがそれは、開け放しにした窓の外に立っていると思った。

遠藤先生は飛び起きて、灯りをつけた。
誰もいない。
タンスと、はげちょろの水差しがあるだけ。

灯りに誘われて、蛾が飛んできた。
蛾は遠藤先生の顔をかすめて飛び、また窓の外の闇の中に消えた。
窓に近寄ってみた。

その時、悪寒がひどくなった。
昼間の空き地の熱気が、工場の塀に当たって嫌な空気がこの部屋に入るのだろう。
遠藤先生は、そう思った。

夏の日差しが強い、朝になっていた。
帰る時、料理屋の主人は何も言わなかった。
水夫たちは、働きに出たのかいなかった。
外から空き地を見ると、夏草が茂り、その先に灰色の塀があった。

遠藤先生はパリに帰ってから、知人にルーアンは見たかと聞かれた。
なので、この不快な部屋の話もした。
すると知人は、そのホテルは新聞にも載ったホテルだと教えてくれた。

大戦時、ルーアンはアメリカ軍とドイツ軍が戦い、どちらにも空襲された。
あの空き地で、工場の労働者が多数死んだ。
以来、この辺りには不思議な話が聞かれるようになった。

怪談なんて、後からいろんな話がついてくるもの。
遠藤先生はそう言った。
だが、あの夜の不快な気持ちは甦って来た。
…これが、1つめの話です。

フランスの異邦人である遠藤先生。
暗いルーアンの、真っ暗な闇が感じられるような描写。
ゾッとさせる、得体の知れない気配。
さすが、引き込まれます。


「懲役30日」 本日深夜26時20分放送

ビックリ。
本日、というか、昨日というか、これからの時間、26時20分から28時20分まで、「世にも奇妙な物語」の傑作編が放送され、その中に「懲役30日」が入っているそうです。
以前、ここにも書いたことがありますが、傑作。

今は「孤独のグルメ」で、深夜に人の食欲を刺激してくれる食べっぷりを見せてくれる松重豊さん。
肩の力が抜けている五郎さんですが、ここではナチス親衛隊のような看守長。
薄笑いの表情と、抑揚のない陽気な口調が怖い。
最後に本来の姿を見せる時は、本当に怖い。

凶悪凶暴犯の主人公は、三上博史さん。
本当に、言ったとおりに殺しそうな危なさ。
三上さんを迎えに来る情婦は、夏木ゆうなさん。
「幻想ミッドナイト」の「ゆきどまり」で、ヒロインの女優さんですね。

弁護士が、小日向さんでした。
あ、松重さんとは「ビッグマネー!」で総会屋の師弟?だった。
他にも、不気味な医師が手塚とおるさん。
今、活躍中の俳優さんが見られる点でも、おすすめです。

おすすめする割りに、情報が遅くてすみません。
こんな時間に記事書いて、ここを見てくださった方は、録画、視聴、間に合うでしょうか~?
しかし、ものすごい久しぶりの放送じゃないでしょうか。
初期の作品がこれからもちらちらと、放送されるとうれしいんですが。


憎くもない弱い人を殺せたのは人間じゃないから

「リミット 刑事の現場」

梅木という刑事が、道を歩いていた女性を突然、刺し殺した犯人に向かって言う。
犯人と被害者の女性に面識はなく、若い男性である犯人は、相手は誰でも良かったと言った。
この男には友人もなく、職業的に未来もないと思い、彼は社会、世の中を恨み、誰でも良いから殺してやろうと凶行に至ったのだった。

梅木刑事「だから何だ。自分が如何に孤独で虐げられてきたか泣きながら話したら、誰かが話をじっと聞いてくれるとでも思ったか!」

「お前はなあ、ただ、強い奴に向かっていくのが怖かった。だから弱い人を選んで刺し殺した。ただそれだけだ」。

「おめえの話なんか、わかってたまるか。てめえがいくらここで長いことくっちゃべっても、お前の気持ちなんかだーれもわかんねえ。みんな自分の人生背負って、精一杯忙しいんだよ。お前の人生に、その退屈な人生につきあってやってる暇はねえんだよ!」

梅木の言葉に、犯人が激昂し始める。
新人刑事が止めに入る。
「確かに今の世の中は、理不尽で不公平でどこに救いを求めれば良いのか、わからない。もしかしたら、一歩間違えれば、俺もこいつみたいになってたかもしれない」。
「もし、彼のSOSを受け止めてくれる奴がどこかにいたら、こんなことにはならなかった。そんな不幸な境遇があったとは梅木さん、思いませんか!」

梅木刑事「違う!それは違う!」
「人間は生きているうちに、殺したいほど憎い奴に出会うことがある。だが普通の人は殺さない殺せない」。

「こいつにも親がいる惚れた男か女かいる。そう思うとそいつが人間に見えて、だから人間は人間を殺さない!そして殺せない」。

「だがこいつは違う!こいつは憎くもない人を弱い人を選んで刺し殺した。なぜそんな事ができたか!それはこいつが人間じゃないからだ!」

「おめえもしっかり踏みとどまって戦え、人間なら!」

「…言ってもお前には遅いか。お前はよ、みんなの為に死んだ方がいい。ばあか」。

無差別殺人の犯人「お前、何言ってんだよ。人権侵害だぞ!」
梅木「お前に人権なんかねえ!」

このシーンを思い出す時が、度々あります。
最近起きた事件が、この事件と同じ類いの事件かはわかりません。
でも、再放送して欲しいと思ってしまうシーンです。


レギオンに思う

買って来ました、ディアゴスティーニの大映特撮映画コレクション。
第4号は「ガメラ2 レギオン襲来」。
いや、風邪引いて薬局行ったから、本屋さんに行くチャンスがあっただけで…。
みんな残業しているところ、休んで本屋さん行ったわけじゃないのよ~。

ブックレット読んで、レギオンの造形について知りました。
レギオンは宇宙怪獣。
宇宙から来た、理解できない生物感を出すのが大変だったんですね。

爬虫類、哺乳類、脊椎動物の亜種ではない生物。
はい、つまり、地球上には存在していないものを目指さなければいけなかったんですね。
これは難しい。

さらには、人間の意志が介在できない存在。
あー、確かに、コンタクト不可能な感じがします。
レギオンはしいて言えば蟲であるが、昆虫であってもいけないと考えたそうです。

一目見て『外敵』と本能で反応するような、嫌な感じ。
それでいて強そうで、かっこいい。
偉大なる「エイリアン」のギーガーとの差別化も、図らなくてはいけない。

いやいや、大変です。
これがあの、植物?いや、虫?みたいな、機械みたいな、強そうな、不吉な感じになったんですね。
あんなのが来るって、人類的に、地球的にすごくまずい!って感じが出てます。

それと戦うガメラが、ものすごく人間にはなじみのある造形なのがまた、良い。
ガメラは大地から、そして海から、いや、地球から来た存在って感じがします。
血が通ってるんですね。

そのせいか、昭和からガメラはよく流血する。
痛々しい。
懸命さが出る。
冷血、というか、血液があるのかって感じのものと、血の通ったものの対決は王道。

「エイリアン」でも最後は得体の知れない、冷たく強いエイリアンと、柔らかな肉体を持った女性の戦い。
爆破が迫りながらも、絶対に猫を手放さないリプリー。
血の通ったものには、一番心細い時には同じ血の通ったものが必要なんですよね。
一人ぼっちじゃないって、あの宇宙空間ではすごく大切なことに思える。

さて、ブックレットには、2014年公開の「ゴジラ」に出てくるムートーは、レギオンを彷彿とさせると書いてあります。
そうなんです、ムートーも本能的に「これはまずいだろう」って思わせるんです。
飛んでくるオスのムートーは、何となくゴジラに絡む様子がギャオスっぽいと思いましたが。
全体的に「監督、ガメラ、見てるでしょ?」って聞きたくなりました。

撮影の様子を見ると、ガメラに羽根レギオンがくっつくシーンなんか、ガメラにレギオン取り付けるの大変そう。
いや、全部大変そうなんですが。
ガメラがレギオンに放った一撃必殺の武器は、ウルティメイト・プラズマっていうそうですね。
あれは、ガメラのお腹をくりぬいて鏡入れて演出したとか。

そうそう、「ガメラ2」は、仮想敵に対する自衛隊のシュミレーションが見られる。
こんなところでも「ガメラ2」は、すごく興味深い映画になってます。
昭和ガメラも、早く観たい。


犯罪再現ドラマ 「吉展ちゃん事件」

Mr.サンデー特別編。
1964年に、東京にオリンピックが来る事が決まった時。
その時に起きた事件。

オリンピックに湧く日本中とはまた別の顔のように、継続し、解決した3つの事件を取り上げていました。
全部の事件で当時、事件に関係した人のインタビューも放送。
なかなか、興味深い特集でした。

まず、吉展ちゃん誘拐事件。
これは渡辺謙さんが演じた平塚八兵衛のドラマでも、メインで取り上げられた事件でした。
文化放送のインタビューによる小原の声と、脅迫電話の声を流して聞かせました。

犯人・小原保。
日本中を敵に回した男。
彼は貧しい福島の農家の出身であり、1時間も歩いて学校に通っていた。

その時履いていたわらぞうりと、あかぎれが原因で菌が入り、足が不自由になった。
足を引きずって歩く小原保は、子供たちにからかわれた。
からかわれている小原をいつもかばったのは、母親だった。

1963年3月31日。
その日、吉展ちゃんが良い靴を履いていたのは偶然に過ぎなかった。
だがその良い靴がすべてを狂わせた。

小原は後に、高そうな靴を見て、誘拐する子を決めたと語った。
その日、吉展ちゃんは帰ってこなかった。
身代金を要求する電話が、吉展ちゃんの家にかかった。

両親は当時、高額だった録音機を買った。
それを見た警察は、まだ誘拐と決まったわけじゃないと言った。
しかし父親は4歳の子が、2日も家に帰らず遊ぶわけがないと反論した。

やがて、脅迫電話がかかってきた。
50万円。
現在の800万に相当するが、なまりがひどい音声だった。

子供は無事かと聞く母親に、犯人は「ああ」と答えた。
身代金と子供を交換できないかと、切羽詰った声で聞く母親に小原は「できない」と答えた。
だが本当に、子供の居場所を知っているのはこの電話の男なのか。
母親は聞いた。

「間違いない?」
「まつがいねえ」。
「まつがいねえ」。
間違いない、が、なまっていた。

「子供は無事に帰すことは、約束しますからね」。
小原は何度も身代金を受け渡す場所をうかがっては、警察を確認していた。
犯人は身代金を取りに来なかった。

脅迫電話に出た母親は「坊やは元気ですか?」と聞いた。
「元気です」。
「子供、好きなんでしょ?おたくさん」。
「ええ、好きです」。

何度も、身代金の受け渡し場所の指定はされたが、小原は現れなかった。
そしてついに、最後の脅迫電話がかかってきた。
「もしもし」と出た母親の声は弱々しく、憔悴しきっていることがわかる。
受け渡し場所の「品川自動車」という場所が、「スナガワ自動車」に聞こえた。

警察は中が新聞紙の50万を用意したが、両親は本物を持って生きたいと懇願した。
偽物とわかれば、吉展ちゃんの命がないと思ったのだ。
その場所に、吉展ちゃんのものを置いておくと小原は伝えた。
指定された場所に行った母親の目に、あの、吉展ちゃんのぴかぴかの靴が入って来た。

「吉展」と、母親は靴を抱きしめる。
警察は身代金引渡しに3分送れて到着した。
すべては終わっていた。
小原は身代金を奪って、逃げていた。

受け渡し場所に近い飲み屋で飲んでいて、少し席を外し、身代金を取ってきたのだ。
そして良い儲け話があったからと言って、金をつかむと女将にすぐにツケを払った。
残りの金も、あっという間に借金を返して消えた。

吉展ちゃんは、戻ってこなかった。
戻ってきたのは、あの靴だけだった。
母親は子供には罪がないから、わからないところに子供を置いていってくれと訴えた。

日本中で、母親たちが吉展ちゃんについての情報を提供してくれるよう、街角に立って呼びかけた。
当時の人気双子デュエットは、「かえしておくれ」と言う曲を発表して訴えた。
脅迫電話は、全国に公開された。

街角で、ラジオで、テレビで、脅迫電話の声は繰り返し流された。
「この声、あんたに似てるね」。
小原は行きつけの飲み屋の女将に言われた。
全国から、声の主について警察に情報がもたらされていた。

その中には、小原の情報も入っていた。
だが警察は、足の悪い小原には3分で身代金を奪って逃げるようなことは無理だと判断した。
小原は、捜査対象から外れていた。

文化放送は小原の情報を手に入れ、小原を待ち伏せし、インタビューすることに成功した。
刑事と間違えて、文化放送の社員から逃げた小原の足の速さ。
とんでもない、すばやさであった。

Mr.サンデーで、このインタビューを聞いた小原の知人は小原がまったく方言を出していない、なまっていないことを指摘した。
だが、無理をしているのだろう。
小原は咳き込んでいると、知人は指摘している。

インタビューをした文化放送の社員たちは、小原に違和感を持った。
「ああいった残酷な」と、吉展ちゃん事件のことを小原は語った。
「残酷なこと」?

確かに誘拐は、残酷だ。
だがどうして今、吉展ちゃんの生死がまだわからない時点で、「残酷」とこの男は言い切ったのだろう?
しかしこのインタビューは、小原が犯人でなかったときのことを考え、放送に至らなかった。

事件から1年。
声を頼りの捜査は行き詰まり、やがて半年後。
国家の威信をかけて、東京オリンピックが開幕された。
警察は、オリンピックの警護に総動員された。

人々の記憶から、誘拐事件は消えていった。
だがインタビューをした文化放送の社員には、小原への違和感が残っていた。
もうひとつ、電話越しの小原の録音した声を、刑事たちに聞かせた。

「さんじゅう、ご、ろく」と、小原の電話の声は言った。
「ごじゅうまんー」と、脅迫電話の声は言った。
「さんじゅう、ご、ろく」「ごじゅうまんー」。
二つの声は重なった。

警察は、小原逮捕に踏み切った。
小原は逮捕されてからも、自供しなかった。
それは故郷の母や兄弟を思うと、できなかったのだと後に小原は語った。
だが刑事が福島の実家に行った時、小原の母が言った言葉は小原に突き刺さった。

帰っていく刑事を、裏山まで小原の母親は追いかけてきた。
そして、言った。
「保を悪いことする子に育てた覚えはねえ。でももし、犯人なら」。
刑事は、体を小さく折りたたんで、土下座の格好をした。

「なんとも申し訳ねえ」。
刑事は床に額をこすりつけた。
「何度も、何度も申し訳ねえと言っていたんだ」。
母親は何度も、地面に額を押し付けて土下座した。

「母ちゃん」。
小原が目を閉じた。
「こっちをようく見ろ!」

小原の顔が、ゆがんだ。
「うううっ」と、声が漏れる。
小原は自供した。
日本中の願いもむなしく、吉展ちゃんの遺体は発見された。

小原が福島を出て、東京に来た。
世間は冷たかった。
時計職人になった小原だが、オリンピックの好景気からは取り残されていた。

これは、好景気から取り残された男が犯した犯罪だった。
時計を修理する小原を「この仕事は足が悪くてもできるもんな」と、同僚が笑った。
小原の生活は、荒れた。

ギャンブルに溺れた。
借金ができた。
そして借金取りに追われた。

1人、公園でぼんやりしている小原の目に遊んでいる子供が目に入った。
子供の1人は、綺麗な子供靴を履いていた。
履いていた綺麗な靴に、心が奪われた。
小原が履けなかった、ぴかぴかの子供靴。

金持ちの子に見えた。
小原はその子供に声をかけた。
それが、吉展ちゃんだった。
借金を返せれば、それで良かったはずだった。

水鉄砲を直してあげる。
おじちゃんのところに、道具があるよ。
小原はそう言うと、「ほんとう?」と目を輝かせた吉展ちゃんを連れて行く。

途中で、吉展ちゃんにキャラメルを買ってやった。
子供は、うれしそうだった。
「おじちゃん、ありがとう」。
「ちゃんとお礼を言えて、坊やは良い子だな」。

手をつないで歩いた。
だが、吉展ちゃんの一言が、小原の心に突き刺さった。
「おじちゃんは、足が痛いんだね?」

小原は足を引きずって歩いていたのだ。
「…そうだね」。
小原の顔は、ひきつった。

やがて吉展ちゃんは夕方になると、家に帰りたいと泣いた。
泣いて、泣き疲れて眠った。
おそらく、小原をいたわってのことだろう。
優しい、吉展ちゃんの一言だった。

これが小原を本物の、鬼にした。
「おじちゃん、足が痛いの?」
…この子は、自分の特長を記憶した。
もう、返すに返せない。

小原はベルトをズボンから抜き、手に取った。
吉展ちゃんを、地面に横たえる。
…827日後、1965年7月5日、事件は最悪の展開となって、解決を見た。
告別式の朝、小原の母親は遺体発見現場で手を合わせ、記者になけなしの2百円(今で言う320万円ほどか?)という貯金を渡した。

「保よ。吉展ちゃんのお母さんが吉展ちゃんをかわいがっていたように、お前をかわいがったつもりだ。
お前は、それを考えたことがなかったのか。
保よ、お前は地獄へ行け。
わしも一緒に、行ってやるから」。

貧しさと豊かさの狭間で、自分を見失った男。
死刑確定。
独房で、ひたすら手を合わせている小原。
その朝、看守の足音が小原の房の前で止まった。

「小原保。出房だ」。
出房が何を意味するか。
死刑執行の朝なのだ。

「今度生まれてくる時は、真人間になって生まれてくるって」。
小原は看守に伝えてくれと言った。
看守はうなづいた。
1971年、12月23日、小原の刑は執行された。

やったことは絶対に許されないことだけど、今回も見ていて小原の境遇も悲惨だと思いました。
それでも、母親の愛情はあったのに。
小原の母親の愛情に、胸がつらくなります。
さぞ、肩身が狭かったでありましょう。

今回の小原保役は、柄本時生さん。
なかなか良かったです。
上等な靴に目が釘付けになり、吸い寄せられるように近づいていく視線。
大きな感情の動きはもちろんですが、そういう小さな細かい演技までなりきっているところが良かったです。