続きが読みたい柴田昌弘氏

「ブルー・ソネット」。
主人公以外の登場人物が魅力的で、主人公がいなくても話が成立するのは優れた話である証拠ではあります。
でも途中、いろんな登場人物の話にそれすぎかなとは思いました。
ゲシュペンストはまだ必要なエピソードですが、ソネットとバードのバンド、安曇ヴィラあたりではもう、この話はずっと終わらないんじゃないかと思いました。

憎悪に支配されたランが超古代人類に意識を飲み込まれ、都市ひとつ破壊ですもん。
奈留の呼びかけで正気に戻った。
しかし奈留はそのために身を捧げてしまった。

ソネットがサイボーグ化されたのは、病に侵された体を長持ちさせるためだった。
病巣を取り除くこともしてやらず、必要だったのはその特殊な病気によってもたらされた超能力だけ。
実の母親に体を売らされ、ろくな教育を受けなかったソネット。

信じていた組織に利用されつくしただけということを知ったソネットは、自分の使命として呼び覚ましてしまったランの中の超古代人類を止めようとした。
しかしその強大さに力尽き、命が尽きる前にバードに自分の生命をつかさどる電池を差し出した。
ランを思い続けていたバードは、そんなソネットの手を取って一緒に消滅した。

ソネットに対して、バードは人間として手を取ったと見ています。
それでもソネットは幸せと感じた、最後に歓喜の中にいたと思います。
それぐらいが救いでしょうか。

最後は、イワンしか生き残ってない。
ランはイワンの前から姿を消しましたが、ソネットは命を失い、生き残ったランは恋人も友達も帰る場所もすべてを失った終わり方。
柴田先生は厳しい。
この続き、ランが救われる続きが読みたかった。

「ハリアー」のコピーに「小松崎ラン、新たな戦い」ってあったような気がしたので、期待していました。
でもランも出てこなかった。
独立した話として進んでいて、それはそれでおもしろかった。

しかし主人公の青年が老人にされたところで、終わっている。
掲載誌との大人の事情でしょうか(笑)。
その後がどこかに掲載されることはありませんでした。

「グリーン・ブラッド」も、人間を攻撃できるようになったグリーンブラッドが出た。
その3人が去っていく。
この後の続きも、読みたかったです。

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とっくの昔になくしたもの・主水編 「暗闇仕留人」第20話

第20話、「一途にて候」。


加納一平という若い同心が、北町奉行所にやってきた。
一平は一刻者だった父に反発し、京都で焼き物などを焼く生活をしていたが、父が亡くなって同心の後を継いだ。
父の頼母は浪人たちと斬りあって、後ろから斬られて殺されたとのことだった。

主水がそう説明していたところ、与力の平田玄一郎がやってきて、頼母は本当に立派だったと誉める。
頼母の最期は、平田が見届けたのだと言う。
その夜、賭場に手入れがあり、親分の勘八が捕えられそうになるが、平田に袖の下を渡して事なきを得る。
だがまじめに手入れしていた一平は納得がいかず、そのまま奉行所に連行する。

それを見た主水は、顔を曇らせる。
同じ北町の同心・水上や佐山は一平にも賄賂をつかませようとするが、一平は毅然と拒否する。
水上と佐山はこのことを平田に報告し、主水は憤然と奉行所を1人で歩く一平の姿に不安を感じる。

一平には同心の叔父・笠井新兵衛がおり、その娘に美しい百江という娘がいた。
百江と一平は幼なじみで、お互い、密かに子供の頃から想いあっていた。
墓参りをしながら、一平は新兵衛から、実は自分とは違った道を行く息子を頼母は頼もしく思っていたと聞く。

本当は、自分の後を継がせたかったには違いない。
今の一平を見たら喜ぶだろうと言う新兵衛に、一平は本当に父は盗賊に斬られたのかという疑問をぶつける。
背中から斬られたというが、頼母は相当の使い手だった。

よほど油断していなければ、考えられないことだ。
すると、新兵衛は「要領よくやることだ」と言う。
その言葉にひっかかった一平だが、百江を非番の一平に預けて、新兵衛は奉行所に向かう。

奉行所の書庫で主水は平田から、一平になんとしてもつかませろと命ぜられて、賄賂として5両を渡された。
平田が出て行く時、入れ違いに新兵衛がやってきた。
新兵衛は平田の与力部屋に呼び出されると「この間の一件のことだ」と言って、またしても財布から1両出して渡そうとする。

「大したことはしていないので」と新兵衛が辞退すると、平田は「いらんというのなら」とアッサリと金をしまいながら「叔父上から何か聞かなかったか?」と訊ねる。
平田の叔父は奉行で、今は病に臥せっていて、あまり奉行所には出所できない。
奉行からの話というのは、新兵衛の娘の百江のことだった。

平田は叔父である奉行から早く身を固めろと言われているが、それならば百江を嫁にしたいと考えていた。
それは光栄だが…と新兵衛は口ごもるが、平田は奉行に媒酌を頼んでもいいと言って黙らせる。
主水はそれを、通りかかった廊下で聞いていた。

勘八と平田と水上と佐山は完全に結託しており、勘八は金はもちろん、自分の情婦のおしまさえ平田に差し出していた。
その勘八の賭場に、一平が踏み込んできた。
勘八を連行しようとする一平を、平田が止める。
だが一平は、無理やり勘八を連行して行った。

しかし、勘八は、すぐに解き放しになった。
主水は「そのうちにわかるだろうが、いろいろと裏があってな」と言うが、一平は「それはお奉行が平田様の叔父であるですか」と聞く。
「長いものには巻かれろ、だ。見ざる、言わざる、聞かざる」と言って主水は、平田から預かったと4両を握らせようとする。

だが一平は受け取るどころか、「中村さん、あんたは汚い!」と怒った。
「汚い?」
「これでは正しい道理は通らない。私は戦う。私はこの不正と戦います」。

「あんたの父上も、それを口癖のように言っておられたが」。
「父上も?」
一平のまっすぐな視線に、主水が視線を落とす。

主水は仕留人たちに、このままでは一平が危ないと相談する。
「町方が町方に始末されるというのかい?」と、全員が驚く。
主水はそもそも、一平の父・頼母が斬られたことにも疑惑を持っていた。

なぜ、そんなことになるのか。
主水は、自分の口から言うのもなんだが、今の奉行所では悪い事をしていない者はほんの一握りだと言う。
扶持高は低いし、懐は寒い。
正直、綺麗事は言っていられない。

だがそれも、程度によりけりだ。
おひねり程度の袖の下なら、かわいいものだ。
しかしいくらなんでも、御定法を破っている連中に悪事を見逃す代わりに金を絞るのは、泥棒の上前をはねているようなものだ。
そしてその企みに乗らないまじめな者は、目の上のこぶだ。

「それで八丁堀、俺たちにどうしろって言うんだ?」と貢が言う。
「つまりだ。その、加納一平という男を、守ってやりてえんだ」。
「守る?」
「このままだとな、必ず、あの男は親父の二の舞で始末される」。

主水は一拍置いて言う。
「俺はな、あのくそまじめな野郎が何となくかわいくてな。俺が…、とっくの昔になくしちまったものを…、まざまざと見せ付けられたような気がするんだ」。
だが貢は、「甘いよ、八丁堀は」と言った。

「甘い?」
「俺たちは仕留人なんだよ。人助けをするほど、立派なもんじゃない」。
主水は言い返せなかった。

おきんは、金はどうなってるんだと言い、大吉も町方の命を守るという話に難色を示した。
ことによると、命取りになるかもしれない。
結局、誰も賛同しなかった。

家に戻ると、せんとりつが隣の田口家に貢物が来ているのを見ていた。
何を見ているのかと伸びをして見る主水に、せんとりつが「覗き見などみっともない」とたしなめる。
田口にはあのように次々と貢物が来るのに、中村家には何も来ないとせんとりつが愚痴る。

主水は田口は上役にゴマをするのが上手いと言うが、せんは主水のふがいなさを責め、あのように貢物があるならいいではないかと言う。
おまけに、懐妊していると思っていたりつは懐妊していないことがわかり、「種無しカボチャ」などと言われて主水はため息をついた。
「今日は三隣亡だなあ」。

その夜は茶屋で一平の歓迎会が開かれ、主水は仮装してドジョウすくいを踊り、大いに受けていた。
座敷のにぎやかさに、茶屋に居候している貢が何かと女将に訊ねる。
加納一平の歓迎会だと聞いて、貢がその名前に気に留めた。

その時、仮装した主水がやってきて、女将に女物の襦袢を貸してくれと言いに来た。
頬かむりした主水と貢の目が合うが、お互いに視線をそらした。
女将が笑って用意しに行くと、主水は貢に「何だおめえ、こんなとこで、しけこんでたのかい」と言う。

「おめえあんまりこの話には乗らねえだろうと思うけどな、今日の集まりには何か企みがあるに違げえねえんだ。加納の身辺を俺が気にしてりゃあ良いが、まあとにかくおめえら冷てえよな」。
貢は主水を振り返って見るが、すっと立ち上がって、部屋を出て行ってしまう。

主水の危惧した通り、勘八が別部屋に来ていて、平田を廊下から部屋に呼ぶ。
それを、廊下で貢が見ていた。
部屋では勘八の情婦のおしまが、紅を塗っていた。

もうすぐ一平は酔いつぶれるので、そうしたらこの部屋に運ぶ。
気がついたときには、おしまとひとつ布団に寝ている。
そこに勘八がねじこむ…、という、平田と勘八の計画だった。

主水が女装して踊っている時、一平が酔いつぶれてしまった。
一平は計画通り、部屋で少し休めと連れ込まれた。
少しして、勘八がやってくる。
部屋の前で立ち止まり、中に入って来る。

暗い部屋の中で勘八は「やいやいやいやい!人の女、寝取りやがって!」と大声を出して凄む。
「どこのどいつでえ!」と言って、布団をはぐ。
だが布団の下から現れたのは、貢だった。
「だっ…、誰だい、てめえは!」

「あ、いや、どうも、部屋を間違えたらしいな」。
隣では、おしまが手足を縛られ、口には猿轡をされてもがいていた。
「いや、この人がね、無理やり私をここに引きずりこむので。はあ、危ないところだった」と言うと、「ごめん」と貢は首を振って立ち去る。
おしまはもがいていた。

廊下を歩いていく貢を勘八が見ており、廊下には平田たち3人が立っていた。
女装した主水が、暖簾の下から顔をのぞかせた。
「何かあったんですか?」と平田たちに声をかけると、平田たちは無言で散っていく。

そしてまた次の夜、大吉が妙心尼のところに行っている時だった。
捕り方の笛の音が響き、大吉が耳を澄ます。
「やけに騒々しいな」と言って、気になった大吉は妙心尼を置いて外に出る。

手分けして賊を追うと平田が指示し、一平だけを別方向に行かせた。
主水はそれを、じっと見ているしかない。
大勢の捕り方が散っていく中、一平は浪人者を見つけた。
斬り合いになるのを、平田が離れたところから見ている。

一平が構えている背後に、平田がそっと近づく。
刀を振り上げ、一平に向かって振り下ろそうとした。
影から見ていた大吉は「どうなってんだ、こりゃあ」とつぶやく。
おきんの「町方が町方に始末される」という言葉が、思い出される。

ハッとした大吉は、一平に向かって刀を振り下ろそうとした平田の手に向かって、胡桃を投げた。
一平は、「おっ」と驚いて声をあげた平田に気づいた。
平田は刀を収めながら、背後から襲いかかろうとした者がいたと言って去っていくが、一平は平田に疑惑を持つ。
後には、胡桃が落ちているだけだった。

一平は新兵衛に父の頼母は、もしかしたら平田に斬られたのではないかと疑問をぶつける。
「私は近頃、いろいろなことがわかってきました。奉行所の中は腐りきっている。叔父さん、あなたまで汚い金を?父はその汚い金をとらなかったばかりに、殺された。そうでしょう、叔父さん」。
一平の言葉に、新兵衛が傍らで花を生けている百江を気にする。
百江も、ちらりと座敷に目を向けるが、花を生け続ける。

新兵衛は、平田は奉行の甥だと言う。
めったなことを言うものではないと言う新兵衛に、一平は「それは自分も父と同じ目に遇うと言うのか」と聞いた。
だが、一平は、奉行が私情に流されるとは思えないと言い、自分は父の死を無駄にしないためにも戦うと言う。

帰り道、百江は「お父様」と新兵衛を呼び止めた。
「わたくし、一平さんについていきます」。
そのキッパリとした口調に、新兵衛も覚悟を決めた。

奉行所に戻った新兵衛は同僚の田口に、今日、奉行は出てこられるのかと確かめた。
だいぶ具合が良いので、今日は出てくると田口は言う。
新兵衛が奉行の部屋に向かうのを、水上と佐山が見ている。

廊下をこわばった表情で歩く新兵衛を、主水が呼び止めた。
だが、新兵衛は返事をせず、歩いていく。
新兵衛は訴状を前に、陰腹を斬り、座っていた。
そこに平田が入って来て、「叔父上は具合が悪くて、来られんそうだ」と言う。

驚く新兵衛の前から訴状を取りあげ、「陰腹を斬っての訴状か。よほどのことが書いてあるらしいな」と言って読み始める。
新兵衛の訴状には、奉行の甥という立場、与力と言う立場を利用しての平田の悪事が書いてあった。
平田はそれを新兵衛の前で、燃やしてしまった。
新兵衛は燃える訴状に手を伸ばしながら、息絶えた。

すると水上と佐山がやってきて、新兵衛に切腹の形を取らせた。
一平が走ってくるが、平田は「役人にあるまじきことをしたというので、自ら腹を斬った」とだけ言って出て行く。
新兵衛の屋敷では、新兵衛のなきがらを前に、百江は気丈に耐えていた。
主水がただ1人だけ、焼香に見えた。

その翌日、一平が奉行所に向かって走っていた。
目安箱に一平の悪事の数々を書いた訴状が、投げ込まれていたというのだ。
人の女房を取り、金を強請る、やくざの情婦と通じ、賭場の手入れを見逃したなどだった。
どれも身に覚えがないと言う一平に、「だろうな。それを書いたのは、この俺だよ」と平田は言った。

「あなたが」。
全てを平田の仕業と確信した一平は思わず、刀に手をやる。
それを見た平田は「おい、加納。奉行所内で刃物沙汰を起こしたら、どうなるかわかってるのか。家名断絶、お前は切腹だぞ」と言う。

ハッとした一平は、一旦は手を収めた。
だが平田はいくら一平が正義を通そうとしても無駄だ、言う通り賄賂を受け取れと言う。
「お固いばかりが能じゃないぞ」と言われても、一平はキッと平田をにらんでいた。

「どうしても俺の言うことが聞けないってのか。それじゃあ、言ってやろう。貴様の親父も、コチコチの堅物でな。それがゆえに死んだんだ」。
平田は一平の前に立ち、一平を見下ろす。
そして「新兵衛が忠義面して、お奉行に何か言いたかったらしいが、そいつも無駄だったな!」と吐き捨てるように言った。
「叔父さんまで」。

うつむいた一平は平田に向き直ると「きさまぁ!」と叫び、刀を手にする。
平田は「乱心者だ。出会え、出会え、出会えー!」と叫びながら廊下を走る。
一平が刀を手に振り上げながら、「平田ーっ!」と走ってくる。
「あっ」と出てきた主水が、一平を抑えようとする。

「加納さん!」
「どいてください!」と一平は主水を突き飛ばす。
一平の反対側から走ってきた水上と佐山が、すれ違いざま、一平の両側から2人して一平を斬る。

倒れる一平を見て、主水が目を見開く。
駆け寄った主水を水上たちは突き飛ばし、一平にトドメを刺した。
刺される一平を前に、主水が思わず目を閉じる。
絶望の面持ちで、うつむく。

「片付けい」。
平田の一言で仰向けに死んだ一平が、引きずられていく。
同心たちが何事かと、出てくる。
主水は怒りの表情で、平田たちを振り返る。

仕留人たちに、主水が、百江が一平の後を追って死んだことを話す。
主水が、4両を投げる。
平田が加納一平につかませるつもりだった金だ。
「薄汚れた銭だけど、別にこの小判には綺麗、汚ねえって書いてあるわけじゃねえよな!」

大吉は、平田は自分で自分の仕留料を出したということになると笑った。
おきんも、平田は賢いつもりだろうが、間の抜けた話だと笑う。
主水はちょっとやそっとのやり方じゃ、気がすまないと言った。

その夜、勘八の賭場にどこかの商家の女将にしか見えない風を装ったおきんが博打をしていた。
負けが込み、ブツブツ言うおきんに、勘八が目を留める。
すると大吉がやってきて、「日本橋の飛脚屋の女将さん!」と言って、挨拶をする。
大吉との話によると、おきん扮する女将は旦那があちこちに妾を作るので、頭に来て遊んでいるように思えた。

つかないと言うおきんは、ついに店で預かった封筒の封を切る。
大吉が「そんなことをしたら手が後ろに回る」と言って止めるが、おきんは構わずに中から小判を出す。
しかし、それは表面の数枚だけが本物で、あとは木でできていた。
おきんは、その数枚を次の博打に賭けた。

勘八が鋭く目をつける。
次におきんは勝って、取り戻せたと言って、上機嫌で帰る。
勘八がおきんが残して行った、飛脚の封筒を水上と佐山に持ってやってくる。
すぐにおきんの後を、2人が追って行く。

夜道を行くおきんを、水上と佐山が呼び止めた。
「ちょっと待て」。
「何でございましょう?」

「今、勘八の賭場で、持ち主の封印のある金に手をつけたな?」
「お役人様が、どうしてそれをご存知で?あの賭場にいらしたんですか?!」
「飛脚屋のご新造が、御定法を破ったらどうなるか…」。
十手を突き出されたおきんは「お許しくださいまし。あまりの主人のやり口に、ついカッとなって…、怖ろしいこととは知りながら、でも、この通り!お金は取り戻しましたゆえ」と言う。

「金を取り戻して、済むことではない」。
「では、どうすればよろしいんでございましょう」。
このことが知られれば、店は潰れると言われたおきんは、「どうか、お見逃しくださいまし!」と青くなった。

すると2人は「何なら、俺たちが相談に乗ってやってもいいぞ」と言った。
まず、見逃し料として3百両を2人は要求した。
「店が潰れることを思えば、安いものだ」。
「はい…、3百両出せば、見逃していただけるんですね」。

おきんの言葉が終わると、「はははは」と笑い声がする。
「上手い話ですなあ」と言うのは、主水の声だった。
闇の向こうから、主水が歩いてくる。
「なんだ、貴公か」と、水上も佐山も侮った。

おきんを捕まえても、一文にもならない。
ならば絞り上げて、銭を出させる。
上手い儲け口だ。
「私もちょいと、おこぼれを頂戴したいんですがな」。

「平田様に言って、目こぼし料を貰ってやる」。
2人は主水を軽蔑したように言う。
「目こぼし料か。いや、私はね、その3百両、そっくりそのまま頂戴したいんですがね」。
「何?」

2人の真ん中を歩いて行った主水が振り返り、刀を抜く。
反射的に水上と佐山も刀を抜くが、主水はあっという間に一太刀で2人を斬る。
主水が2人の真ん中から外に出ると、水上と佐山は刀を抜いて向かい合って座り込んだ。
お互いの方に刀を押し付けあって、固まる。

「ふふふふ」と、おきんが笑う。
「おきん。おめえのご新造も、なかなか板についてるな」。
「惚れたってダメよ」と、おきんは襟を合わせながら去っていく。
主水は去り際に座り込んでいる1人を蹴ると、2人は倒れる。

その頃、勘八は賭場の奥の部屋で、平田と酒を飲んでいた。
さきほどのおきんを金づると見て、2人は笑う。
平田が十手を打ち出の小槌と言った時、胡桃をすり合わせる音がする。

何の音かと勘八が廊下に出てきた時、大吉が胡桃を砕く。
勘八を捕え、心臓をつかむ。
手を抜くと、勘八の懐から匕首を取り出し、握らせる。

「勘八、どうした」と平田が立ち上がってくるのを見て、大吉は勘八の体を押して平田に振り向かせる。
平田は勘八の手に匕首があるのを見て、驚いて刀を構えながら後ずさりする。
背後には貢がいる。

下がってくる平田の首筋に矢立が当たった時、貢は矢立を押す。
平田が小さく叫ぶ。
貢が平田を見つめながら、矢立の針を抜く。

大吉に向かって小さくうなづくと、大吉もうなづく。
2人は平田と勘八を勢い良く、突き飛ばした。
平田と勘八は、互いに持っていた刃で相手を刺して、座敷にひざをつく。

貢と大吉が賭場から出て行くと、主水がやってくる。
合図をすると、捕り方が踏み込む。
客や壷振りが刺し合っている平田と勘八を取り囲み、そっと見ていた。
主水がやってきて、2人を見て「どうやら相打ちのようだな」と言う。

その夜、平田が勘八とつるみ、悪事をした揚句、仲間割れをして相打ちとなった調書を書いていた。
「まことに御定法をつかさどる身に、あるまじき振る舞いなり」。
書き終わった主水は、満足そうにまんじゅうを頬張る。



新兵衛役は「仮面ライダー」のおやっさんこと、小林昭二さん。
一平役は「ミラーマン」の石田信之さん。
どちらも無念を抱えて、殺される。
当時、このヒーローものを見ていた子供には、ショッキングな映像です。

主水が平田に、つかませろと命じられたのは5両。
しかし、一平に渡す時に4両になっている~!
「中村さん、あんたは汚い!」と言われたら、いろんな意味でギョッとする。

主水のドジョウすくいが、すばらしい。
顔を白塗り、頬を赤くして、女物の襦袢を来て、シナを作る。
この仕草が最高。

昼行灯の役立たずが輝くのは、こういった宴会場所という説得力がある!
こういう芝居が、堂々とできる人だから、中村主水ができるんだろうと。
表から裏に変わった凄みや、カッコよさが引き立つんだろうと。

表では「長いものには巻かれろ、だ。見ざる、言わざる、聞かざる」が、身についてしまってるといえば身についてしまってる。
13話で家庭教師をしている子供に、自分がなくした純粋さや未来を見た貢が、子供のお家を守ってやろうとした気持ちと同じ。
主水は一平の感性をうらやましく、そしてかわいく思って守ってやろうとする。
仕留め稼業に堕ちた者だからこそ、抱く思い。

しかし、達観しちゃったような貢は拒絶。
主水が表立って動くには、限界がある。
今回、貢が居候している場所を、主水が初めて知ったのも驚き。

関わりたくないはずの貢は、企みを前にしてつい、一平を助けてしまう。
その助け方が貢らしくて、微笑ましい。
勘八が踏み込むと、情婦の声が聞こえる。

そのくぐもった声に、すっかり一平が罠にかかったと思ったら、貢。
貢がおしまと?と思ったら、おしまが見事に縛られて身動きできなくなっている。
「あー、危なかった」と貢に、おしまの迫りっぷりが目に浮かんでおかしい。

さらに大吉は、妙心尼と「なりませぬ」の最中。
捕り方の笛に気を取られて駆けつけ、胡桃を投げて助けてやるというのも、やっぱり微笑ましい。
後には胡桃だけが落ちていて、誰も知らないけど助けてくれていたというのが良い。

新兵衛のお焼香に、主水以外誰も来ていない。
ここに、奉行所の現状が語られている。
しかし、一平にはどんどん罠がかけられていく。

ついに平田は、一平を挑発することに成功。
平田が百江を好いているという伏線が張られていたし、一平と百江がとっても微笑ましかったので、その関係で一平を追い詰めてくるかと思いました。
そして平田が嫁にと狙ってた百江は、父親と恋人と両方失って後を追うという、哀しい結末。
一平が刀を持って奉行所内を走っているのを見た時の、主水の止め方。

「あっ」と言って、必死に止めようとする。
それも空しく、目の前で斬られたのを見た時の主水の絶望的な、悲愴な顔。
「ああああ…」と声にならない声が出ている。
その後に平田を振り返る時の、怒りの形相。

怒りの主水は、平田たちを仕留め仕事にかける。
貢は「まあ、八丁堀にすれば無理のない話だよ」と言う。
大吉とおきんは、「十手持ちを仕留めるなんて、ゾクゾクする」と言う。

どんな料理で仕留めてやるか、考えながら主水が1両を懐に入れた時、チャリンという音がする。
おきんが主水の懐を叩くと、金の音がする。
手を差し出されて、「うん、そ、そうか、ご、5両だったんだぜ」。

そうです、平田が渡したのは5両でした。
「後で4人で分けようぜ」と言って主水が1両を投げる。
うーん、みんな、お金にはシビアだ。

その後、おきんが賭場で仕掛ける小判が笑えます。
上の1~2枚だけが本物。
後は木で、小判の形をしているものがあるだけ。

主水じゃないけど、なかなか、どこか良いとこのご新造さんぶりも板についている。
おきんが封を切るのを他の客は、「あーあ」という顔。
博打場では見慣れた風景なのかな。

おきんを脅す水上と佐山が主水に見られても、ドジョウすくいなんかやっている昼行灯なんかどうってことない。
それをあっという間に斬っちゃうから、カッコいいんですねえ~。
主水に「惚れたってダメよ」と言って、しゃなりしゃなりと帰って行くおきん。
「なぁに言ってやんでえ、タコ!」と言う主水。

平田は、後ずさりしたところを貢が待っていて、首筋に矢立を当てると自動的に針が出るという省エネの仕留め。
十手持ちが相手なので、平田と勘八も、水上と佐山も相打ちにする。
しかも、不正を働いての仲間割れなので、あんまり追及されない。
一平がやりたかった平田の罪を暴いて、最後の調書で満足そうな主水で終わりました。


どこまでもどこまでも追ってくる 「悪魔の追跡」

深夜の放送、または昼間の放送で何度か見た覚えがある映画「悪魔の追跡」。
ピーター・フォンダが出ています。
70年代に作られた映画。

ある2組の夫婦が新車の豪華なキャンピングカーを手に入れ、旅行に出る。
そしてある夜、夫たちは山の中の滞在地で妙な儀式を目撃する。
男女が集まり、女性が裸になる。
夫たちは興味深いものが見られる好奇心とスケベ心で、儀式を見続けた。

しかし儀式が佳境に入った時、1人の女性が胸を剣で貫かれて殺された。
殺人の目撃だ。
見たことがわかったら、危ない。

そう思った時、妻の1人が夫たちを呼び戻しに来た。
「まだ帰ってこないの~?」
「声を出すな!」

「灯りを落とせ!」
「何?」
気が付かない妻は、無神経に声を立てる。
灯りも消さない。

イライラするシーンなんだろうけど、これはしかたない。
まさか、そんなことが起きているなんて思わないから。
そもそも、好奇心でのぞいていた夫も悪いんだから。

もう遅い。
相手はこちらに気づいてしまった。
それは悪魔崇拝の儀式であり、女性はいけにえだった。
この時から2組の夫婦の旅は、得体の知れない団体に追いかけられる恐怖の旅行になってしまった。

事件を通報したが、保安官も怪しいと主張する、ピーター・フォンダのロジャー。
だって道を教えないうちから、右に曲がって現場にたどり着いている。
考えすぎだと言われても。

彼の妻はプールで泳いでいても、こちらを見ている人たちの視線が怖ろしくなる。
考えすぎだと思っても、誰も彼もが追跡者に見える。
やがて、ペットの犬のジンジャーが殺され、キャンピングカーのドアに吊るされる。

ロジャーたちが「ドアが壊されている!誰か音を聞かなかったか!」と叫んでも、キャンプ場の人間は反応がない。
誰も彼もが敵に見える。
泣く妻に、「死んだものはしかたがない、明日埋葬しよう」と言うロジャー。
しかしキャビネットを開けると、そこにはガラガラヘビがいる。

ピンチの連続。
しかたがないと言ったロジャーだけど、犬のジンジャーを埋めると、首輪と自分のペンダントを置く。
妻には見せなかった涙を、サングラスを外してぬぐう。
うう、かわいそうだ。

途中のガソリンスタンドで、警察に連絡をしようとするが、電話が通じなくなる。
最後は前と後ろ、横を車で固められて事故を起こさせられそうになる。
そしてカーチェイス。

天窓からガソリンが入れられ、火をつけられたら…という事態にもなる。
最初はためらっていたロジャーにも、火がつく。
ショットガンで撃退しながら、逃げる。

一度目の襲撃を振り切った後、事故かと思って止まろうとするが、日曜日にスクールバスが事故を起こすはずがない。
あれもこれも、全部、敵なのだ!
ボロボロになりながらも、追跡は振り切った。

ほっとした4人は、空腹を抱えながらも乾杯をしようとする。
その時…。
キャンピングカーの外が、炎に包まれる。

近づいてくる人たち。
キャンプ場で陽気に話しかけてきた夫婦が、無表情で近づいてくる。
保安官もいる。
あちこちで見かけた人たち、全部がそこにいた…。


全員が、追跡者だったんだという衝撃。
途中のスタンドで、車の修理を頼んだ男までがカーチェイスの時にいた。
その怖さもあるけど、アメリカの田舎町の怖さも感じました。

よそ者に対して敵意がある。
ここで何かされても、町全部で隠されて、おそらく事件にもならない。
殺されてもわからないかもしれないという恐怖を感じます。

閉鎖的なのは、「八つ墓村」だけじゃないんだな。
アメリカの田舎町もなかなか、怖い舞台になる。
いや、閉鎖的な場所って、心って恐怖の舞台になるんですね。

ロジャーたちはさっさと都会に、家に帰れば良かったのにと思う。
妻はそう主張した。
でも「3万6000ドルしたキャンピングカー」で、「5年モーテル勤めをしてやっともらった休暇」で旅行に出た。
「今さら、引き返せない!」思いがあったんでしょうね。

結局、「道迷い遭難」という本に書かれていたように「窮地に陥らないために、変だと思ったら引き返せ」ができなかった。
それで最悪の結末に至った。
一流俳優のピーター・フォンダも、ウォーレン・オーツが出演している、いわゆるB級ホラー映画。
誰も助からないのが衝撃。

ピーター・フォンダの「イージー・ライダー」は最後、通りかかった田舎町の住民に友人が「おい、髪を切れ」と言われる。
中指を突き立てて返事をした彼に向かって、農民のおっちゃんはショットガンをぶっ放した。
倒れる友人。

驚いたピーター・フォンダがバイクを降りて、彼の最期の言葉を聞く。
友人に革ジャンをかけてやり、おっちゃんたちのトラックを追ってくる。
すると、トラックがUターンして近づいてくる。

そしてピーターに向かって、もう一発、ショットガンが発射される。
ピーターのハーレーが宙を飛び、炎上する。
上空からの映像。
ピーターの姿は見えないが、バイクは炎上し、壊れて道端に転がっていく…。

この時、閉鎖的なアメリカの田舎の怖さを感じました。
地元の人間が全部口裏を合わせるし、保安官も味方なんだろうな。
きっとこれは事件にもならないんだろう。

相手はよそ者だし、ましてや当時のヒッピーなんだから。
そう思って、一層、ゾッとしました。
もちろん、「悪魔」は儀式で崇拝した「悪魔」ではなくて、追ってくる人間ですね。

だってあんなにかわいい、ジンジャーが…。
これで自分は、敵側が嫌いになりました。
「イージー・ライダー」の怖さを倍増したような、ピーター・フォンダの「悪魔の追跡」。
♪すっごいしつこい すっごいしつこい どこまでもどこまでもついてくる あ~♪の「爪水虫」並みのしつこさでした。


磐城の土を殺してはならぬ 「超高速!参勤交代」

参勤交代。
「下に~、下に!」の声がかかり、大名行列が通る。
庶民は殿に顔を向ける失礼をしないよう、顔を下に向け、行列が去るまで、お辞儀をし続ける。
土下座し続ける。

長い行列なら、通り過ぎるまで時間が掛かる。
顔を上げようものなら、「頭(ず)が高い!」と言われ、行列を横切ろうものなら無礼討ちにされる。
またはお駕籠に向かって「おねげえでごぜえますだ~!」と直訴に走ってくる人がいる。
時代劇ではおなじみのシーンであります。

徳川幕府は、大名の妻子を江戸に住まわせた。
いうなれば、謀反を起こさないための人質。
そのため大名は1年おきに江戸と、故郷を行き来する。
参勤交代ですね。

江戸と故郷を旅するのには何日も、何十日もかかった。
そうなるとこの日数に行列を形成する人々を連れての旅の費用は、莫大なもの。
経費節減のため、1日のうち、相当な距離を歩いたらしい。

2つの家に家来を滞在させるのにも、かなりの費用が掛かる。
これは大名の力をそぐのに、かなり有効な手立てだったのでしょう。
徳川幕府の政策は、もちろん今はこんなの無理だけど、施政者にとってはかなり効果的なものだったんだなと思います。

参勤交代の人数は、石高によって決められていたらしいですね。
20万石以上の大名は、馬上20騎、足軽130人、仲間・人足300人、全部で450人。
馬の面倒を見る人間も必要だったでしょうし、相当な人数が移動する。
おかげでこの道中も栄えたし、交通網も整備されたみたいですけど、大人数だから、これに遭遇した旅の庶民はろくに宿も食事も取れなかったでしょうね。


無敵の徳川幕府対たった7人の弱小藩。
「超高速!参勤交代」。
享保20年。
8代将軍・徳川吉宗の世。

磐城国の湯長谷藩の藩主・内藤政醇は、1年間の江戸の滞在を終え、参勤交代して帰国。
湯長谷藩は石高わずか、1万5千石。
しかも、天候による飢饉もあった。
さらに内藤本家の磐城平藩が飢饉にあったため、備蓄米を送ってしまっていたため、蔵は空っぽだった。

だが藩主の政醇は、年貢の引き上げをしない。
すれば民が死んでしまう。
政醇は百姓に慕われており、百姓も殿の姿を見ると収穫された大根を持って駆け寄る。
すると政醇は大根の泥を落としてかぶりつき、そのうまさを誉めるのだった。

ところが老中・松平信祝が隠密からの報告で、湯長谷藩で金山が見つかったことを知った。
信祝はそれを我が物にするため、湯長谷藩の取り潰しを謀る。
それは帰ったばかりの湯長谷藩をもう一度、江戸に出仕させることだった。

しかも8日から10日かかる道中を、5日で江戸に来いというものだった。
参勤交代で江戸に期限どおり来ないということは、徳川幕府に対して忠誠心がないということになる。
藩は取り潰し、藩主は切腹ものである。

だがもはや、湯長谷藩には参勤するための費用がない。
「幕府に直訴」「賄賂を贈って勘弁してもらう」
家臣たちの意見もさまざまであった。

江戸では信祝に参勤交代を考え直してもらうため、家臣が信祝が差し出した鳥の餌を食べていた。
この姿を信祝は大笑いし、もはや決まったことだとはねつけた。
それを知った政醇は家臣と民を守り、弱小藩の意地のため、参勤交代を決行する決心をする。
家老の知恵者・相馬兼嗣の策は、少人数で山中を走り抜け、幕府の役人のいる宿場だけは渡りの中間を雇って行列の体裁を整えるというものだった。

策を話し合っている政醇と相馬の屋敷の屋根裏に、雲隠段蔵という忍びが現れた。
素人に山道を行くのは、無理だ。
段蔵はかつて日本一と言われた忍びだったが、今は抜け忍となっていた。
10両と酒飲み放題を条件に、段蔵は道案内を買って出た。

金なし
人なし
時間なし
湯長谷藩の、必死の超高速!参勤交代が始まった。

政醇の参勤交代を知った信祝は、湯長谷藩が江戸にたどり着けないよう、忍びを使って妨害する。
忍びの頭領は、夜叉丸。
宿場には、政醇の家紋をお尋ね者として配布した。

山中で野宿する政醇に忍びが襲い掛かる。
忍びと退治した段蔵は、礼金を受け取ったら政醇を放り出す計画であることを告げ、自分が離れた後は政醇を好きにするが良いと言う。
そんなことを知らない政醇は段蔵に感謝し、家宝の小刀を与える。

1人、浪人姿となった政醇は、牛久の宿に到着する。
そこでは客の取り合いでもめた宿場女郎のお咲が、折檻のために縛り付けられていた。
政醇はお咲を解放するために指名し、お咲が部屋にやってくる。

まだ子供のお咲は人買いに手篭めにされ、この宿屋に売られた。
苦労をしたんだな…と、政醇がつぶやく。
その思いやりのこもった言い方に、お咲の心が開く。

政醇もまた、自分の子供の頃の境遇を話す。
幼い頃の乳母の折檻で蔵に閉じ込められたことが原因で、政醇は用を足すにも扉を開けなくてはならない閉所恐怖症になったのだった。
まだ子供に、バカなことをするとお咲はつぶやく。

お咲のけがを見た政醇は、持っている薬を塗ってやる。
初めて、人の優しさに触れたお咲は、役人の調べから政醇を匿ってしまう。
布団の入った押入れに、2人がこもる。

閉所恐怖症の政醇は、平気なのかと指摘されて「あっ」と気づく。
お咲と一緒なら、閉所も怖くない。
政醇を逃がしたことを知られたお咲は、再び折檻されそうになる。
そこに政醇が現れ、お咲を奪って逃げた。

家臣の荒木源八郎たちは廃寺に滞在しているところを、夜叉丸たちに襲われる。
武芸の達人である荒木源八郎たちであったが、走るために少しでも負担を軽くしようと、刀は竹光になっていた。
段蔵も逃げた後で荒木源八郎たちは、大ピンチ。

逃げた先で、谷から転落。
川に流されるが、全員無事であった。
唯一、相馬が見当たらなく、水死したと思われたが、相馬はうたた寝をして井戸に落ちていた。

段蔵は礼金の10両で芸者を呼び、派手に遊んでいた。
その様子に不安を持った宿の者が会計を頼んだので、段蔵は礼金の巾着を取り出す。
巾着から出した銭は、古銭。
そんな銭はいつのものだと笑った芸者が、さらに金をさわって泥がついたと言う。

段蔵が受け取った礼金は、小銭や古銭が丁寧にまとめてある束だった。
そしてその銭には、泥がついていた。
段蔵は絶句する。

お咲を連れて道中を急いでいた政醇だが、山中で忍びに囲まれる。
政醇は居合いの達人であったが、忍びたちはお咲を人質に取った。
自ら刀に身を投げ出そうとしたお咲のため、政醇は刀を捨てる。

お咲もろとも政醇を斬ろうとした忍びの小太郎が倒れた。
ぎょっとする虎之助の前に、段蔵が現れる。
段蔵と政醇の前に、忍びは全滅する。


途中、伊達藩の行列に遭遇する相馬たち。
伊達55万石の前に、自分たち1万5千石は道を譲らなくてはならない。
さらには伊達の行列は壮大であり、これを避けていたら取手宿に到着するのが遅れる。

そこに相馬が知恵を出した。
産婆と飛脚は行列を前にしても、通過が許される。
相馬たちは着物を脱ぎ、ふんどしになって飛脚として走りぬけた。

取手宿に到着した相馬たちだったが、渡りの中間たちは約束の期日を過ぎたと言って帰ってしまった。
行列を維持できない相馬たちは途方にくれた。
相馬は切腹の体勢を取るが、刀は竹光であった。
情けなさに相馬が泣いていると、またしても行列がやってくる。

内藤本家の磐城平藩・内藤政樹の行列だった。
理由を聞いた内藤政樹は「飢饉の時に援助してもらった」と言って、行列を貸してくれた。
取手宿を通り抜けた相馬たちに内藤政樹は、言った。
「磐岩の気骨、見せてやれ!」

江戸に入った相馬たちは、湯長谷藩江戸屋敷に向かう。
だがまだ、政醇が来ていない。
刻限は暮れ六つ。

相馬たちはとりあえず、江戸城に向かった。
お咲を連れた政醇が追いつき、江戸城に向かう。
だが橋では、信祝の「全員斬れ」との命令を受けた隠密たちが待ち受けていた。

武芸の達人たちの湯長谷藩の藩士たちと、忍び達が斬りあう。
段蔵と夜叉丸も、因縁の対決となる。
暮れ六つの鐘が鳴り終わり、間に合わなかったと信祝が笑う。
しかしその時、鐘がまた鳴り響いた。

ばかな!と信祝は言うが、老中首座の松平輝貞は鐘が鳴り終わるまでは有効と判断。
実は鐘は家臣の鈴木吉之丞が、弓を当てて鳴らしていた。
行列は無事、江戸城大手門に滑り込んだ。

輝貞の前で、政醇は金山から出た金を見せる。
それは金ではなく、黒い塊、石炭であった。
発見された時は表面が光っているので、良くわからない隠密が金だ、隠し金山だと報告したのであろう。

隠し金山を我が物にしようとしていた信祝の策略が発覚。
以前から賂を受け取り、私服を肥やしていた信祝の尻尾をつかもうとしていた輝貞によって、信祝は失脚した。
実は吉宗と輝貞は以前より信祝を疑っており、今度の湯長谷藩の参勤交代によりそれを暴こうとしたのだった。

「このたびの参勤は、上様の策でありましたか」。
「ずいぶんと襲われたであろう。不服か?余は弱い家来などいらぬ」。
「いえ、我らは良いのです。しかし…民のことを考えると肝が冷えました」。

「どういうことじゃ?」
「もし、上様がまごとに、愚かであれば、民が苦しみますゆえ」。
吉宗の顔色が変わった。
ぱちん、と扇を締める。

「はははは、そちの申す通りじゃ」。
「なぜ上様、我が藩が金山をごまかしておらぬと信じられましたか。ご老中が正しい思われたのでは」。
吉宗は、皿の上の大根の漬物を出した。

「おぬしの大根の漬物じゃ。先の参勤で、大根の漬物を献上したであろう」。
「あれは良かった。良く耕した土の味がした。あのような大根を持ってくるものに、悪い奴はおらん」。
「はっ!それがしもこの、大根が大好物なのでございます!」

政醇が笑顔になった。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに、いたしまする!」

政醇が頭を下げる。
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」
「ははっ!」

こうして、湯長谷藩の超高速!参勤交代は終わった。
お咲は何と、側室に迎えられた。
『今さらながら、参勤交代の効果で幕府は長く安泰であった。
平和を維持するための仕組みだったのかなあ…』。



いやいや、おもしろかった。
最初から、大根。
参勤交代の始まりに、水戸の幼君にバッタリ遭遇しますが、かわいい幼君も大根の漬物のおいしさに礼を言う。

内藤政醇に佐々木蔵之介さん。
なまるところがまた、温かみがあって良い。
民と大根を齧って話すお殿様は、実は居合いの達人!

殿に従う7人の藩士たち。
7人ってところが、「七人の侍」のオマージュっぽくて良い。
知恵者の家老に西村雅彦さん。

荒木源八郎は、寺脇康文さん。
剣の達人。
秋山平吾は上地雄輔さん。
上地さんを、初めて良いと思いました…、ってすみません。

弓の達人・鈴木吉之丞を知念侑李さん。
良かったですよ。
増田弘忠を柄本時生さん。
とぼけているようで、彼も強い。

今村清右衛門を六角精児さん。
槍の達人。
徳川吉宗を市川猿之助さん。

松平輝貞は石橋蓮司さん。
もう、この重厚感ったらないです。
すばらしい。

松平信祝を陣内孝則さん。
「とどのつまりは、生まれがすべてよ」。
嫌ですね~。
傲慢ですね~。

何、この選民意識。
徹底して嫌な官僚って感じを出してくれます。
これがひっくり返される快感。
時代劇の悪は、こうでなくちゃ!

知恵者の家老・相馬兼嗣は西村雅彦さん。
もう、落ち武者のような姿になって熱演。
西村さんの熱演で、本当に見ごたえある映画になってます。

内藤政樹を甲本雅裕さん。
情けは人のためならず、のエピソードが泣けます。
磐城の意地、見せたれ!の言葉が、カッコいい。

夜叉丸は忍成修吾さん。
この俳優さん、どんどん良くなりますね。
夜叉丸、良かったなあ。
好きな俳優さん。

雲隠段蔵は、伊原剛志さん。
見せ場がたっぷりの役でした。
小銭の束を見た時の、後悔。
最後は去って行きましたが、一生、政醇に仕えてしまいそう。

政醇の人柄。
本家の飢饉に備蓄米を差し出す。
案内役の忍びに、家宝の小刀を惜しみなく与える。
お咲の手当てをする。

政醇の人柄が、結局は藩を救うという設定も良かった。
閉所恐怖症で気さくな殿さまという設定は、昼行灯の中村主水が剣の達人であるような設定で、非常に魅力的。

伊達藩も出てくる。
大藩らしい、壮大な行列。
その横をふんどしで、飛脚を装って走る。
時代劇好きなら、この設定には笑わずにはいられません。

男ばかりで展開する中、すれた飯盛り女・お咲は深田恭子さん。
いくらなんでも、側室になるというのはありえないでしょうが、そこはもう、いいじゃないですか~。
徹底した時代考証のもと、作られる文芸作品も良いけど、こういうところも許せないとチャンバラ楽しくない。
側室になったときは、さすがに美しい。

そして、この藩は東北にある。
「政(まつりごと)をおろそかにして、磐城の土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」。
「だいぜつに(この訛りが良い)、いたしまする!」
「湯長谷半の参勤、しかと見届けた!その心意気、値千金なるぞ!」

「晴れれば、それは良い日」。
絶体絶命の中にあって、そう言える強さ。
「よく耕した土の味がする」。
この映画、東北への応援のように感じました。

決してエリートではないし、良い血統ではないけれど、意地とプライドと義を通す武士たち。
その彼らが上の理不尽な命令に、金なし、人なし、時間なしのピンチを乗り越える。
天下無敵の徳川幕府の幕僚に、対抗する。
時代劇のこの世界に、自分の世界を重ね合わせて見て、つかの間の夢を見て、希望を持つ。

良い時代劇。
良い脚本。
悪は徹底して悪。
最後に悪が滅ぶ。

やっぱり、こういうチャンバラおもしろい。
好き。
俳優さんたちも良かった。

隠密が「我ら、死して屍、拾う者なし!」と何度か言うのも爆笑!
時代劇好きなら、クスッとはしてしまうはず。
あっという間に見てしまった。

とんでも時代劇、笑える映画と思わせて、実は深いメッセージがこめられている。
強さと優しさに満ちている。
いやいや、作れるじゃないですか、こういう時代劇。

「磐城の気骨、見せてやれ!」
このセリフ、心に残りました。
磐城だけじゃなくて、日本人の、という感じに受け取りました。
良い映画、見ました。

幸せなシャコーグレイド

映画「超特急!参勤交代」。
時代劇なので、当たり前ですが、馬が出ます。
最後の出演者のクレジットに、馬の名前もありました。

シャコーグレイド。
えっ、シャコーグレイド?!
あのシャコーグレイドだよね?!

トウカイテイオーが、父親のシンボリルドルフと同じく、無敗でダービーを勝った。
その時、8着に来たのが、シャコーグレイド。

シンボリルドルフは、クラシックレース3つを全て勝ち、3冠馬となっている。
しかも無敗。
今も日本競馬の最強馬と言う人がいます。

シャコーグレイドの父親も、シンボリルドルフの前の年にやはりダービーを勝ち、3冠馬になったミスターシービー。
この最強馬同士の対決は、話題になったはずです。
この子供同士がダービーで、ワンツー。
競馬は血の繋がりというのが、納得です。

トウカイテイオーの引退の日。
シャコーグレイドはレースを勝ちました。
自分たち世代の強さを見せて、同期の引退を送ったように感じました。

そのシャコーグレイドの名前が、映画のクレジットにあったんです。
シャコーグレイドは、引退後、誘導馬になっていたと思いました。
誘導馬引退していたんですね。
それで、元気だったんですね。

この映画は私には、シャコーグレイドとのうれしい再会となりました。
このあと、シャコーグレイドは老衰で亡くなったらしい。
老衰で亡くなることを、幸せの条件にあげている人もいる。
シャコーグレイドは、幸せな馬生だったと思います。


腰痛

いやいや、三連休の最後の日に、ちょっとした作業をしてから腰が痛くなって。
火曜日、水曜日と過ぎても治っていかない。
木曜日には仕事をしながらも痛いと思うようになりました。

金曜日は、ちょっとは良くなったかなと思ったら全然。
走ると痛いんです。
というか、痛くて走れない。

これはもうダメだと思い、マッサージに行って、それでも土曜日の朝には痛い。
これはもう一度行かないとダメかな、と思ったんですが、午後からすうっと痛みが引きました。
おおお、良かった。
腰痛、つらいですね。


追悼山行 「赤いヤッケの男」

安曇潤平氏の著書「山の霊異記 赤いヤッケの男」。
メディアファクトリーから出版されている実話集です。
怖くて、怖いだけではない怪異談の数々。


「追悼山行」。
語り部の友人が、学生時代に属していた山岳部で代々伝わるお話。
3月、その山岳部はリーダーと副リーダーが新人3人を連れて山岳訓練を行った。
副リーダーが先頭で、間に新人3人を挟み、最後をリーダーが歩く。

新人といえど、山岳経験は豊か。
順調に進むかと思った登山だが、途中から雪がちらつき始めた。
地上では3月は春だが、山では冬。

この先、どうするかリーダーと副リーダーは話し合ったが、リーダーはこのまま山頂を目指す決定をした。
だが雪は予想を超えて降り始め、8合目辺りでは前が見えないホワイトアウト状態となった。
リーダーは後悔しながらも山小屋を目指し、やっとのことで山小屋に到着した。

午後も4時となり、あたりはもう暗い。
そこで新人の1人、Kがいないことに気づく。
確かに間に挟まって歩いていたのだが。
はぐれたか!

副リーダーが探しに外に出ようとする。
だがリーダーはそれを止め、一緒に行こうとする副リーダーには、残ったメンバーの面倒を見るように言った。
そんなに遠くにはいないはずだ。
すぐに連れて戻ってくる。

残った3人が息を潜めて、待つ。
20分ほどして、小屋の戸にドーンという衝撃があった。
あわてて戸を開けると、Kが転がり込んできた。

いつの間にか道を外れてしまったが、何とかたどり着けたと言う。
「お前、リーダーに会わなかったか?」
「いいえ」。

「お前を探しに行ったんだ」。
「えっ!」
仰天したK。

副リーダーが外に出ようとしたが、外はすでに人が歩けるような天候ではなくなっていた。
リーダーは戻ってこなかった。
救助隊が出動し、捜索隊が出動し、春には山岳部のOBまでが加わって探した。

それでも、リーダーの遺体は見つからなかった。
捜索が打ち切りになった1年後の3月。
山岳部はリーダーの追悼登山をすることにした。

天気は良く、晴れ渡っていたが、一行はリーダーを最後に見た山小屋に宿泊することにした。
思い出話に花が咲いた。
みんな、車座になって座って、話した。

その時、天候が変わった。
外が吹雪になったのだ。
しばらく天気は良かったはずなのに。

こんな状態では明日は登頂を目指すことを、あきらめなければならないかもしれない。
その時。
「おい…、誰かこっちに来るぞ」。

1人が言った。
ザッ、ザッ、ザッ。
雪を踏みしめ、外を歩いてくる音がする。

みんな、口を閉ざした。
確かに登山靴が雪を踏みしめながら、こちらに近づいてくる音がする。
夜の10時だ。
この時間に、山を目指して登ってくる者がいるだろうか?


…怖いです。
夜の闇。
雪の音。
静寂。

その静寂の中、こちらに向かってくる足音が感じられます。
みんなの緊張。
恐怖も伝わってきます。

都会でも怖いでしょうが、周りに家も灯りもない山の中。
こんなことがあったら、とても平常心ではいられません。
逃げ場もない。
どうしたらいいか、考えてもわからない。

山の大きさ、自然の驚異。
自分の無力さを感じる話です。
ちょっとしたことが命に関わってしまうんだと思う。
生死が隣り合わせにある山なら、こんなことは起きるだろうと思ってしまう。

そして、山に登る人たちの絆が固いわけもわかる。
戦友ですよね。
もう、極限状況を力を合わせて越える、戦友なんじゃないかと。

その友情は固いでしょう。
こんな友情を得られるだけでも、山に登る意味ってあるんじゃないかと思ってしまう。
そしてこの恐怖の後、人の思いが胸に迫る出来事が続きます。
こういう話を知ると、人間の思いって肉体がなくなっても残るんじゃないか?と思いますね。

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最終回が見たい

続きが読みたいマンガ。
…というより、もう、最終回が読みたいマンガがあります。
私が子供の頃から連載されていた、「ガラスの仮面」。

最初はマヤを引き立てるためだけに存在していたような、ライバル亜弓さん。
監督の父親、女優の母親を持ち、小さい頃から美少女として有名。
女優として、サラブレッドと呼ばれる。

しかし実は亜弓さんは、自分の評価はいつも実力で勝ち取ったものではないと悩んでいた。
それは自分の父母に対してのもの。
だがある日、亜弓さんは泥だらけになりながら競争で勝った。

この時、亜弓さんは、誰にも文句を言わせないこと。
それは自分で勝ち、実力を認めさせることだということを覚えた。
いつも難なく華やかな活躍をしていると思われた亜弓さんの苦悩と葛藤を描いた辺りから、亜弓さんはただのライバル役ではなくなった。

主人公マヤは、恵まれた境遇ではない。
容姿も目立たない平凡なもの。
だから自分に自信がない。

それでも、演技をすると輝く。
彼女こそ、紅梅の化身である紅天女が演じられる女優になる。
天才。

そして天才と呼ばれた亜弓さんは、実は努力の人だった。
本物の天才を前にした亜弓さんは、人に知られないように苦悩する。
亜弓さんは確かに恵まれた環境にいる美少女。
でも悩みは、普通のひとのもの。

対するマヤは天才。
現代はマヤのわかりやすい悩みより、亜弓さんの苦悩の方が読者の共感を呼んだように思います。
おそらくマヤが紅天女を演じることになるんでしょうが、マヤは速水真澄という恋人も手に入れてしまうのか。
さすがにどれかは欠けるんじゃないか。

などといろいろ考えてしまうと、物語はどこに着地するかわからなくなります。
これ、完結するんでしょうか。
友人は「もう、私の頭の中では完結している」と言います。

ずいぶん前に連載は中断していましたが、今は再開しているんでしょうか。
だとしたら、どこで連載しているんだろう。
もう、そんなこともわかっていない私ですが、やはり、最終回は知りたいと思います。


暗示とはおそろしいもの 「ひとりぼっちの戦争」

「ひとりぼっちの戦争」。
まるで「ランボー」や「レオン」を思わせるタイトルです。
しかしここで取り上げる「ひとりぼっちの戦争」は、柴田昌弘氏のマンガ。

地球に来襲する侵略者たち。
そのまがまがしい飛行物体を迎撃するため、防衛軍のパイロットたちが飛び立つ。
パイロットたちは次々、敵を撃墜するが、敵の弾も当たる。

1機、また1機と戦闘から離脱していく。
だが、あるパイロットは違った。
確実に敵を撃墜して行く。
しかし、被弾した。

戦闘機が火を噴く。
脱出せよと、コンピューターの声が響く。
だが男は、脱出しない。
まだ、敵は残っているのだ。

「死んでもお前たちを地球に近づけさせやしねえ!」
パイロットは叫ぶ。
機は炎上し、男は炎に包まれる。
それでも男は操縦桿を握り締め、敵を撃つ。

地上でレーダーを見ていた司令官たちは、感嘆の声を上げる。
「やった!」
「仮想敵は1機残らず、撃墜したぞ!」

そう、これは訓練。
パイロットたちは、実際の戦闘機に載ってはいるが、飛行はしていない。
仮想の敵を相手に戦闘機に乗って戦う。

強い暗示をかけられて。
戦闘シュミレーションだった。
これまで、すべての敵を殲滅したパイロットはいなかった。

操縦席が開けられた。
全員が駆け寄り、パイロットを賞賛しようとした。
だが。

全員が絶句した。
操縦席のパイロットは、黒焦げだった。
「暗示と言うものは、怖ろしいものだ」。
「彼は地球を守るため、本当に戦争をしたのか…」。


おそらく、10ページか、それに満たないページ数の短編。
柴田昌弘氏は70年代、80年代に時代を先取りしている作品を発表しています。
これも戦闘シュミレーションは、暗示までかけないけど今は実現しているのでは。

長編もすごいですが、柴田氏のすごさは短編で発揮されていると思うんです。
これなんか、その際たるもの。
使命感を持ったパイロットにとって、戦争は本物だったのです…。
人の心を、操ろうとしてはならない。


名作ホラー「チェンジリング」

1968年。
アメリカのコロラド州デンバーで、作曲家は格安の豪邸に入居。
しかし屋敷には毎日、何かを叩くような音が響き、ドアが勝手に開閉する。

2階の衣装部屋の壁がおかしい。
壁を壊すと、階段が現れた。
その先の部屋には、9歳の少年の日記があった。

障害を持っていた少年は、この部屋に閉じ込められボールで遊んでいたらしい。
友人に勧められ、降霊術をすると少年の霊が現れる。
映画同様、少年の霊は自分が殺された経緯を語り、自分が埋められている場所を教え、メダルが埋められていることを伝えた。

しかし怪奇現象は収まらず、家を解体しようとしたブルドーザーは突然の爆発で崩れた壁に押し潰された。
作曲家は引っ越し先でも霊現象に悩み、お祓いしてやっと落ち着いた。
この話が元になって作られたのが「チェンジリング」だそうです。

いや、怖い。
スプラッタなシーンはなくても、すごく怖い。
気配の怖さでしょうか。
ジワジワ来て、姿を見せて、現象の理由がわかった時は、たまらなく怖い。

「リング」の監督、これ見てると思いました。
同じ監督が作った「幻想ミッドナイト」の「破壊する男」のワンシーンにも、階段から誰もいないのにボールが落ちて来る。
「ほの暗い水の底から」も思い出します。
というより、原作者が見てるのかな。

井戸に埋められている遺体。
アピールの仕方。
這い出てくる幽霊。

あれ?蛇口閉め忘れた?みたいなところから始まるところがうまい。
ドア開いた?風かな?たてつけ悪いのかしら?
そう思うような現象から始まる。
ジワジワ来る。

音に至って、住んでる人にはわかる。
おかしい。
でも外部の人には、そういうこともありますよ、ってところ。
そしてついに視覚に現れる。
水から浮かび上がる子供の、哀れにして無気味な姿。

音の正体が判明した時なんか、鳥肌もの。
あれは苦しがる少年がもがいて叩いた浴槽の壁の音。
殺された時間に始まり、苦しんだ間続いて、息絶えた時間で終了する。
怖い前半から、謎解きを経て、亡霊に同情する後半。

妻子をなくした心の痛みに、少年の幽霊が呼応する。
追い払っているのではない。
ちゃんと何かを伝えて来るんだ。
ラッセルがわかってやれるということは、彼の心が傷ついているから。

どれひとつとっても、普通なら、いや、自分なら震え上がって逃げる。
助けにならない。
音だけでも、ドアだけでもダメ。
水道なんてもっとダメ。

浴槽のシーンなんて、気絶する。
寝込む。
ボールは、その場で逃げる。

このボール、娘のボールなんですよね。
それを捨てる。
すると戻って来る。

怖いけど、後から考えると少年の「そんな風に忘れてしまわないで!」という叫びみたいですね。
考えてみたら、そういう方法で訴えるしかない。
議員にアプローチできなかったラッセルに、今や全力で文句を言う少年の霊。

ラッセルは、「ワガママ言うなー!」って怒りまで表す。
この霊は少年らしく、筋の通らない八つ当たりみたいなことをするから。
父親らしく。

でも少年の霊は、ラッセルに大ケガはさせない。
邪魔する警部には容赦ない。
霊は、明らかにラッセルの悲しみに呼応し力を増幅させて行く。

後半はホラーというより謎解きミステリー。
早く見つけてやれ。
復讐もやむなしという気持ちになる。

考えたら、取り替えられた議員もかわいそうなんだけど、自分を見つけるのを権力使って握りつぶそうとするからしかたない。
彼の魂が、館に呼ばれて焼かれるのがわかるクライマックス。
でもきっと、父親にも何か起きてたと思うよ、あれは。

主演は名優・ジョージ・C・スコット。
妻子をなくした心の痛み、寂寥を感じさせてくれます。
幽霊に同情する日本的な展開。

ホラーの枠に収まらない名作。
ラッセルみたいな、お父さんがほしかったよね。
こんなお父さんなら、良かったよね。

ラスト、燃えたチェスマンハウスで残っていた車椅子。
オルゴール。
寂しい。

少年の魂は、慰められたのだろうか。
彼は天国に行けるのだろうか。
ラッセルは何を思うのだろうか。


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Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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