も~、今さら書くなんて、と自分でもあきれるほど、「必殺仕舞人」です。
第10話です。
秋田です。


今回、秀逸なのは直次郎の表情。
怒りから悲しみ。
そして、「必殺」らしい、事件の結末はつけたけど人の心が救えたわけじゃないことを思い知る苦いラスト。

前回、沖縄から今度は秋田へ。
津軽から秋田へ、じゃないんですね、すごい移動ですね。
日本中、飛び回ってますね。
これ、見ている方は1週間だけど、何か月もかけてるんでしょうね。


山中、農民が数人、斬り捨てられている。
村人たちが走って行く。
その中に夫の遺体にすがって泣く村娘・さとの姿があった。

さとの夫は直訴状を握り締めており、兄の冶三郎がその遺体から血に染まった直訴状を取る。
その様子を一座より一足早く寺に向かう為、通りかかったおはなが見ていた。
兄が止めるのも聞かず、さとは寺に駆け込む。

夫の仇を討ってほしい、誰が村人を殺しているのか突き止めてほしいと訴える。
寺にやってきた川越藩の侍は、庵主に何を訴えてきたのか話せとせまる。
しかし庵主は、それは殿の命令と言えど話すわけにいかないと突っぱねる。

夜道を行く一座の前に、行庵寺という提灯を持ったおはなが迎えに来る。
おはなは晋松からの伝言だと言って、京山に行庵寺でひとつ舞うことになったのを知らせた。
が、しかし寺に庵主がいない。
直次郎がおはなに合図すると、鎌倉から早飛脚で来た文を持って晋松がやってくる。

用心深く見張りをする直次郎。
文には秋田の行庵寺に立ち寄って、訴えを聞いてほしいとあったのだが、今、庵主がいないことにはどうにもならない。
おはなはここに来る途中、直訴に出た者たちがむごい殺され方をしたのを目撃したと話す。

秋田藩は、長岡にお国替えになる。
代わりにやってくるのは、川越藩。
秋田の佐竹の殿様は、名君。

百姓は国替えだからといって、殿についていかれない。
国替えを嫌がった百姓たちが佐竹様に秋田を去らないでくれ、直訴しようと騒いでいる。
直訴と言っても、窮状を訴えるだけではない。
「ふむ、そういう直訴もあんのか」と、つぶやく直次郎。

だがこれが、将軍の耳にでも入れば、今度やってくる川越殿や藩の立場がなくなる。
くれぐれも騒ぐ女たちに同調したりしないよう、庵主は川越藩の侍に釘を刺されていた。
一方、秋田に国替えになる川越藩の殿は喜び、森藤左エ門に国替えの件を一任した。
森は「何としても自分は秋田へ行かねば、もうすぐこの川越にもいられなくなる」と、よねという女と竹田、儀右衛門を秋田の百姓たちに潜入させる。

京山は晋松に誰がこの直訴状を書いたのか、誰が百姓を殺しているのか調べて欲しいと言う。
その夜、寺におさとがやってきた。
直次郎は夜道、確かに誰かが自分たちにくっついてきたと言い、「男の癖にと言われるかもしれないけど、ほんと、俺、怖いの」と言う。

「こういうのが出てくんじゃねえかなあ」と、直次郎がおどけて着物をかぶった時だった。
そのシルエットが、外から見てまるで庵主のように見えた。
「庵主さま」と、おさとが話しかける。
京山は直次郎にそのままでいるよう指示し、自分はさとの姿を見る為に庭にこっそり出た。

おさとは「直訴人の夫を殺された、さとです」と言い、「誰が殺したのかまだわからないのでしょうか」と聞いた。
庵主がいなかったのは「江戸に訴えに行ってくれたからですか」と言い、兄がまだ江戸にいる殿に直訴状を出すと言っていると話す。
何度でも、何人殺されても。

殿に自分たちの気持ちをわかってもらえるまで、決してあきらめない。
「お願いです。助けてください」。
寺の明かりが消え、庵主の姿が見えなくなると、おさとは出て行く。
「おいらを庵主と間違えてやんの」と言う直次郎に「あれじゃあ、庵主が逃げ出すわけだ」と京山は言う。

直次郎は何だかこの土地は験が悪いから早く江戸に行こうと言うが、京山は放置できない。
晋松が宿場町にいると、2人の男女が顔を見合わせながら一軒の宿に入って行った。
森から命令を受けたよねと竹田であり、他所の土地から逃げ出してきた逃散者として2人は百姓たちの中に入り込んだ。
いわば、民衆を惑わす為の工作員。

盛りに2人は見て来たことを報告する。
報告によると、百姓たちは直訴はあきらめない。
森は不穏な噂を振りまいて、彼らを疑心暗鬼にさせろと命令した。

中から瓦解させる、仲間割れをさせる。
そして山越えするものは、絶対に叩き斬って直訴を阻止する。
京山一座は町で興行のチラシを配るが、土地の者はまったく相手にしてくれない。

誰も来ない舞台では、一座の娘たちもやる気が出ない。
京山はおさとが気になるので、おはなを様子見にやった。
墓参りをしているおさとに、よねと竹田が逃散者と言って近づき、ここに来る途中、侍が百姓を斬るのを見たと話した。

その侍は城に入って行った。
つまり、秋田藩、佐竹の殿様が斬らせているのではないか。
「城の侍に斬られたのか」とおさとは夫の墓に話しかけ、兄の冶三郎にこのことを話した。

信じられないと言う兄だが、逃散者の夫婦が見ないことを言うはずはないとおさとは主張する。
佐竹の殿様たちは自分たち百姓は一揆を起こそうとしている、と思っているのだろうか。
このことをおはなが京山に報告すると、晋松はこの逃散者は、おそらく川越藩の者とつるんでいるのだろうと言う。
晋松は一軒の宿屋に川越藩の侍が何人も出入りしているのを見ていたが、その中に逃散者を名乗っている2人がいるのも見ていた。

秋田は豊かな土地だ。
川越藩としては、無理してもほしいのだろう。
今度の仕事、藩が相手では、娘たちは一足先に発たせた方がいい。

だが、おはなには残って手伝ってもらわなければならない。
直次郎は、一座がおはなを残して旅立たせるように娘たちを言いくるめるように言われる。
京山は直次郎と一緒に、娘たちを秋田から出したら戻ってくる。

直次郎と京山は山を越えて、秋田を出ようとするが、鋤や鍬を持った百姓たちに途中で囲まれる。
京山は、自分たちは手踊り一座のものと紹介したが、百姓たちは一座を連れて行ってしまった。
閉じ込められた家に、無愛想ながらも、おさとがちゃんと握り飯を持ってくる。

森の命令を受けた竹田たちは領内で、あることないこと、不穏な噂や佐竹の殿様の中傷をふれあるいた。
おはなは、それを聞いていた。
佐竹の殿が、城から金を運び出すという噂を聞いた百姓たちは、一座を装った娘たちがそれを隠して持ち出しているのではないかと京山一座の荷物を改め始める。

娘たちの荷物を調べていた冶三郎が手にしたものを見て、直次郎が目を見開き「やめろ、この野郎。さわるな!」と詰め寄る。
丁寧に巻かれて包まれ、赤いヒモで結ばれた長細いものを、冶三郎はまじまじと見る。
それは直次郎の長ドスだった。

詰め寄ろうとした直次郎は京山に「ケンカはおよし」と頬を張られ、渋々と引き下がった。
直次郎の長ドスを見つめた冶三郎は、「これは…、俺が預かっておく」と言った。
その夜、直次郎はこっそり小屋を抜け出そうとしたが、見つかった。

直次郎が連れて行かれそうになった時、「勝手なことをするんじゃないよ」と京山が出て来て直次郎を叱った。
その時、城に詰め切りになっていた庄屋が帰って来た。
庄屋は京山に非礼を詫び、しかし今は物騒なので領内で成り行きを見た方が良い、と忠告し、京山はそうしますと応えた。
一座はまた寺に戻ってきたことをぼやいたが、直次郎は娘たちに何か買ってくると言って、影に潜んでいるおはなのところに行く。

おはなが庄屋の家に百姓が集まっていると言うと、直次郎はそのまま走る。
庄屋の家には、逃散者を装った2人もいた。
冶三郎は「もう一度、直訴する、誰か一緒についてくるものはいないか」と聞くが、茂吉たちを斬ったのも誰かはっきりしないうちに無茶だと言われる。

だが、冶三郎は佐竹の殿を信じる。
みんなも信じないことには、この先、何もできないのではないか。
いっそのこと、長岡についていくというのはどうだろうと提案した。

しかし、おさとは長岡にも自分たちのような百姓がいる、と言う。
第一、10人が行くと言えば、みんな行くと言うだろう、百姓全部の移動はできないと答える。
その時、逃散者を装った2人が口を挟んだ。

みんなはちょっと、人が良すぎるのではないか。
城にいる人間は、ここにいる人間とは違う。
腹の中はよくわからない。
だから、自分たちは逃げ出してきたのだ、と。

庄屋は自分も直訴に行くと言った。
佐竹の殿に、どうしても国替えしてほしくない。
今の暮らしを壊したくない者は、ついて来いと言った。
その会話を、直次郎は床下に忍び込んで聞いていた。

よねと竹田は、早速、森に庄屋が直訴に江戸に行くと報告する。
百姓たちの代表であるこの集団を殺せば、しばらく直訴はあるまいと森は踏んだ。
早く秋田へ行かねば。
川越で自分がやってきたことがばれたら、森は切腹だ。

その日、庄屋と冶三郎を含む集団が山を越えようとしていた。
冶三郎の手には、直次郎の長ドスがしっかり握られていた。
直次郎は京山にこのことを話し、「一揆だ直訴だと騒ぐ割りには、コロッと心変わりしやがって、よう」と寝転がる。
「人間だもの。迷わないほうがおかしいよ」と、京山は百姓たちに理解を示す。

「あいつら、ちゃんと行けんのかな」。
つぶやく直次郎に「心配ならひと走り、様子を見ておいでな」と囲炉裏の前の京山は言う。
直次郎は起き上がり、走っていく。

よね、竹田、儀右衛門の3人が峠で、刀を抜いて待っている。
庄屋たちがやってくる。
道の下に潜んでいた3人が、庄屋たちを挟み撃ちにして、次々斬り殺す。
直次郎の長ドスを抱えて、冶三郎は1人、道をはずれて山中に逃げ込む。

振り返り、振り返り、冶三郎は逃げる。
だが、竹林で儀右衛門に追い詰められた。
刃から逃げながら、冶三郎は手にしている長ドスを見つめる。

冶三郎は切羽詰って、長ドスを抜く。
悲鳴をあげながら、長ドスを手に儀右衛門に向かっていく。
だが、振り上げたドスは儀右衛門にかすりもせず、冶三郎は斬られる。
仰向けに倒れた冶三郎に、儀右衛門がトドメを刺す。

冶三郎が悶絶して、長ドスを握り締める。
辺りを見回して、儀右衛門が去っていく。
少し遅れて、直次郎が走ってくる。
竹林を降りて、まだわずかに唇が動いている冶三郎に近寄る。

長ドスを握り締めている冶三郎の手を取ると、直次郎は丁寧に冶三郎の手をはがしていく。
なかなか手が離れない。
直次郎は顔をゆがめて、1本1本指を開かせる。

今度は直次郎が、長ドスを握り締める。
ギリギリと言う音をさせて握り締めて、目を閉じる。
目を開けると長ドスの刃を見上げて、小さく「ちきしょう…」と目を血走らせる。

庄屋の家に、直訴の集団の遺体が運び込まれる。
おさとが「ひどい!」と悲鳴をあげる。
百姓たちは背を向け、うつむいていた。

日が沈む中、京山が戸を閉める。
真っ赤な日が刺している中、京山が仕事料を置く。
立っている晋松が拝むようにして、それを受け取り、出て行く。

晋松が出て行くと、直次郎が動く。
腰を低くして小判を受け取ると、手の中に入れて何かを決心したように出て行く。
おはなも一枚、京山に手渡される。
京山の顔を見て、おはなは両手で受ける。

夜、黒尽くめの京山が3人が潜んでいる小屋に向かって、細い渡しを歩いていく。
闇に紛れて、屋根の上を直次郎が動く。
口元を隠し、道中合羽の中に顔を隠す。

戸が開き、よねが水汲みにやってくる。
水の向こうに京山がいる。
よねの桶の水面に京山が映った瞬間、よねが刺される。
声も出さず、よねが倒れ、水桶が引っくり返って音を立てる。

「おい」。
異変に気づいた竹田が出てくる。
戸口の上の直次郎が、ゆっくりと立ち上がる。
竹田が刃を抜いて、辺りを見回す。

直次郎が一気に道中合羽を翻して、飛び降りてくる。
真上に構えた長ドスを、竹田に向かって振り下ろす。
竹田が倒れる。
直次郎が長ドスを収めた時、背後から儀右衛門が襲いかかってくる。

刃をかわしながら、直次郎は姿勢を低くして小屋の中に逃げる。
囲炉裏の鍋が揺れ、煙が立ち昇る。
儀右衛門が気合とともに直次郎に刃を振り下ろし、直次郎がさらに奥に姿勢を低くして走りこむ。
長ドスに手をやり、儀右衛門と向き合って直次郎も構える。

少しずつ、直次郎が横に握ったドスを頭上に上げていく。
儀右衛門の背後で、京山が長かんざしを手にする。
掛け声とともに直次郎が斬り付け、避けた儀右衛門がかわす。

儀右衛門が刀を振り回し、直次郎が再び姿勢を低くして避ける。
仰向けになった直次郎が、長ドスを横にして儀右衛門の刀を受ける。
じりじりと儀右衛門が直次郎に刃をつけようとする。

直次郎が、儀右衛門を蹴飛ばす。
障子まではじかれた儀右衛門の背後から、京山が首を刺す。
ふらふらと歩き出した儀右衛門を、直次郎が横に払って斬る。
儀右衛門が倒れる。

晋松は1人、眠っている森の寝所に忍び込む。
静かに戸を開け、眠っている森の横で縄を用意する。
縄を手繰り寄せるように構えると、森の呼吸を手をかざして確かめる。

突然、晋松が布団の上から森に当身を食らわせる。
おどろいた森が跳ね起きると、その首に縄がかけられる。
一気に縄をまわすと、金具を引き抜く。
倒れた森に、晋松が布団をかける。

翌日、やっと江戸に帰れるよと一座の娘たちが弾んでいる。
そして、一度で良いから地元で踊っていこうとおはなが言う。
「そうだねえ」と京山が同意すると、一座は町に出る。

1人、うつむいて歩くおさとの耳に秋田音頭の旋律が入ってくる。
町の者が走っていくのを見て、おさとも広い通りに出て行く。
京山たちが踊っている。
「みなさんもご一緒に。嫌なことは忘れて」という京山の声で、群集が踊りに加わる。

音頭を取っていた直次郎が、おさとに気づき、手を引いて踊りの輪に連れてくる。
だが、輪の中でおさとは耳を塞いでしゃがんでしまう。
踊る輪の中でおさとは立ち上がると、直次郎を見る。
後ずさりしながら、輪の外に出て行く。

うつむいて背を向けるおさとを、直次郎が見ている。
おさとが直次郎を振り返って見る。
唇を噛み締め、怒りと悲しみの表情のおさとが背を向けて走り去る。
直次郎は、おさとの背を見ている。
去って行ったおさとの後を数歩、追いかけようとしたが、そのまま音頭を取って踊りの輪に戻っていく。



いや~、ラスト、やるせない。
このやるせなさが、必殺!
それで、私、なぜかこのシーン、昔に見たのを覚えている。

夜道を行く直次郎は、娘たちに「出るよ。確か2年前も出たんだよ」と言う。
なのに、おはなが迎えに来た提灯見て一番怯えてる。
そして、庵主がいない寺で鍋作りながらまた、「花の都お江戸で2年ほど板前をしてたことがあんのよーん」と言ってみる。
殺しの時と、ギャップが大きい。
なのに、不自然さがない。

おはなは残らなきゃいけなくなって、案の定、娘たちは何故おはながいないのか、一緒に旅立たないで残るのか、直次郎に聞いて来る。
上手い理由が見つからず、「違うのよ、コレなのよ、コレ!」と直次郎は苦し紛れに、親指を立ててみる。
一座の娘たちは「え~!う~そぉ!」と騒いだけど、京山が「ほんとだよ。直の言う通り」と言う。
「こちとらフラレちゃったよ」と出て行く直次郎を引っ張った京山は「下手な言い訳だねえ」と呆れる。

「だってすぐに考えつかねえもんよ」。
あの後、おはなは相当、娘たちに問い詰められたと見た。
直次郎の言い訳の下手さは、百姓たちに捕えられて、抜け出そうとした時も同じ。

「どこへ行く!」
「いや、おいらずっと、旅してきたわけだよね」。
「旅がどうした」。
「だから…、わかんねえかな」と言って小指を立てた直次郎は「コレ買いに行きたいの、たのんます」と言った。

理由は「コレ」しか、思い浮かばないらしい。
「女なら小屋にいんじゃねえか!」と言われて、「身内は気が乗らねえの」と答える。
これは何となくわかるんだけど、やっぱり、「何だか、くせえな」と言われてしまう。
「よし、連れて行くか」と言われて、京山が助けに入る。

だけどお百姓たちが、娘たちの荷物を引っ掻き回した時は怒った。
そして、自分の長ドスを持った時はもっと怒った。
3話で京山に長ドスがないと何もできないんだろと言われて、まるで子供の毛布みたいにうろたえて取り戻して抱きしめてたけど。
あの時は臆病な直次郎の、いわば毛布みたいなお守りみたいなものだと思ったけど。

考えてみると、命を預け、人様の命をいただく長ドスなんだから安易に触れて欲しくない気持ちはわかる。
そんな軋轢があっても、彼らが無事か気にかかってしかたがない。
前回の琉球を同じく、百姓たちに理解を示すのは京山。

そしてちょっとひと走り行って見つけたのは、自分の長ドスを握り締めている冶三郎の死体。
ふと思い出したのが、包丁を洗っていて、指を傷つけたこと。
感覚的にわかる人には、嫌な話でしょう。
前、「切っちゃったー!」と写メ送ってきて、私を「ギャー」と言わせた人がいましたしね。

フードプロセッサーかなんか洗っていて、手を切って、出血が止まらないので救急車呼んじゃったのもいた。
病院行くまでもなく、救急隊員には「止まりますよ」と言われたそうですが。
こういう人間がいるからいけないんだよねと、しょんぼりしてました。
いや、とっても常識的な人なので、ビックリするほど出血したんだろうと思いましたけどね。

自分もドラマでは物騒なもの見るし、書くけど、実際には指切っただけで「ギャー、コワイ」とか言ってる。
包丁でもこれなんだから、日本刀とか長ドスとか匕首とか、ほんとーに!すごい殺傷能力あると思う。
武器だ、危ないよ、痛いよ。
当たり前?

だから長ドスを持ったものの、何も出来ない冶三郎がよくわかる。
怖くて震えて、一気に自分を追い込むしかない直次郎の気持ちもわかる、ような、気がする。
ドスなんかと縁がない生活をしていた冶三郎がおそらく、追い詰められて必死に抜いたであろう直次郎の長ドス。
何度も自分を守ってくれたドスを握り締めて、虫の息の冶三郎。

これを見た時の、直次郎の表情がすさまじい。
閉じた目を開くと、一気に目が血走っている。
ドスの刃を見上げて歯を食いしばり、震える。
怒りが抑えられない。

仕事料を受け取るシーンの、夕焼けに照らされ、オレンジに染まる部屋が美しい。
殺しの時、静かに怒りを充満させている直次郎。
冶三郎が斬られたのと同じ、真上から振り下ろした刃で相手を斬る。
相手は3人、1人は京山に始末されたが、残る1人が直次郎の背後から襲いかかる。

一発勝負の直次郎の殺し。
斬った後は、もう一度、長ドスは収めて仕切り直し。
奥に、奥に逃げ込んでいきながら、相手と対峙し、長ドスを構えなおす。
ちゃんとした剣術を習ったであろう相手の刃を受け止めて、京山との連携プレー。

晋松の殺しも相手の眠っている息遣いを確かめて、当身を食らわせて起こして縄をかけるなんて凝ってる。
そして、ラスト。
夫を失い、兄を失ったおさとには、事件が解決しても笑顔がない。
直次郎が輪に誘うが、楽しそうな群集の輪には入れない。

悲しみと怒りの表情で直次郎を見て、おさとは逃げて行く。
おさとの気持ちを晴らそうとした直次郎が、それを見送る。
数歩、追いそうになる。

だけど、しかたない。
救えないのだと悟ったように、笑顔で音頭を取り続ける。
このラストの苦さ。

「水戸黄門」などにはないラスト。
仕舞の仕事の、これがやるせなさなのだと悟ったように明るく振る舞う直次郎。
この仕事を重ねていくと、段々わかってきてしまう。

確かに自分たちは恨みを晴らす。
そうしないと浮かばれない人たちがいる。
でもそれだから、救えるというものではないのだと。

こういう苦さが、自分が必殺が好きの理由の一つかも。
そういえば味覚で、苦さをうまいと思えるのは大人。
子供は苦さをうまさとは、認識しないと言われたことがあります。

自分でいえばコーヒーをうまいと思ったのは、学生ではなくなってからでした。
それが今では、ブラックですから。
エスプレッソ大好きだったりしますから。
大人になったどころか、人生後半のことを真剣に考えなくてはいけない年齢ですけど。

さて、やっと江戸に帰れる!
そう言ってますけど、次回は江戸ではなく、紀伊なのだった。
何故。


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2016.11.29 / Top↑
11月26日の土曜日、「途中下車の旅」では木下ほうかさんを見ました。
そして夜にはテレビ東京「路線バスの旅」で、田中要次さんが出演。
ひゃー、私には楽しいテレビの日。

「途中下車の旅」の木下さんが、なんだか乙女っぽかったのも楽しい。
そして「路線バスの旅」では田中要次さんがボケてくれて、楽しい。
田中要次さんは今年のお正月、BSで「猫とコワモテ」というドラマをやってくれましたが、あれ、また見たい。

元・国鉄職員という田中さん。
その経験からしっかり旅をリードするのかと思いました。
しかし電車は行けても、これはバスの旅。
意外にも田中さんは、蛭子さんポジションなのだった…。

これで松重豊さんの「孤独のグルメ」を見る。
または北村一輝さんの「猫侍」を見る。
そういえば「孤独のグルメお正月スペシャル 真冬の北海道・旭川出張編」で本田さんを見た時はうれしかった。
自分としては松重さんと本田さんの共演なんて、最高でした。

本田さんは時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇「鬼平外伝・四度目の女房」にご出演。
製作を追った番組では、本田さんのシナリオ部分は監督との綿密な打ち合わせの結果、かなりの部分が書き換えられたとか。
本田さん自身、櫛を自分で買って用意して撮影に臨んだそうです。
そのおかげでこの人物に深みが出て、物語がおもしろくなったよう。4年の放送。

「雲霧仁左衛門」でもお頭と裏切り者の三次について話したシーンで、本田さんはおにぎりを用意して行ったとか。
それで山崎努さんが本田さんの熊五郎の心情を「うん、そういうことだな」と納得されたらしい。
このドラマも楽しみ。
土曜日、自分には楽しいテレビの日でした。



2016.11.28 / Top↑
11月26日の土曜日、起床していろんなことを済ませて、朝食を摂って一段落。
テレビをつけると日本テレビでは「途中下車の旅」をやっていました。
横浜線の旅で、旅人は木下ほうかさん。

おおー!
木下ほうかさんは最近、バラエティ番組の中のドラマで嫌味な課長を演じたりしている。
ついにこういう番組にも出るようになったんですね。
何か、うれしい。

ドラマでは犯人を脅迫したりして、途中で殺されてしまうことも多い木下さん。
犯人ではなくても嫌な態度を取るので、殺されてもあまり同情されない役なども得意です。
しかし旅人となった木下さんは、緊張もあってかとても控えめな態度とコメント。
まじめにやっていこうとしているのがわかって、私には楽しい番組となりました。

ちょっとかわいかった。
出てくる一般の人の方が、カメラ慣れしているような場面もありました。
今後に期待!

2016.11.27 / Top↑
時代劇専門チャンネルで村上弘明さん主演の「腕におぼえあり」を見ています。
ちょうど第1シリーズが終了し、第2シリーズに入ったところです。
この第1シリーズは、平成4年の放送。

見ていると、主人公・青江又八郎の許嫁・由亀の弟・平沼麟之丞に見覚えがある。
あっ、香取慎吾さん!
今から24年前の香取慎吾さんです。

姉の許嫁の又八郎を、父の仇として討たねばならない。
又八郎は藩主毒殺の陰謀を知ったため、由亀の父に襲いかかられる。
そのため由亀をやむなく斬ってしまい、由亀とは仇同士となってしまう。

脱藩し江戸で「腕におぼえあり」と用心棒稼業をして暮らす又八郎。
その任務遂行と同時に、藩からの追っ手も、かわさねばならない。
やがて又八郎は赤穂の浪人たちと知り合い、仇討ちに関わっていく。
そしてついに赤穂浪士の仇討ちを見届けた又八郎は、自らの事件にも決着をつける決心をする。

香取さんの麟之丞は内面では悩んでいるが、青年らしいまっすぐさで又八郎に向かってくる。
しかし元々は又八郎を慕っていた麟之丞。
真相がわかり、又八郎の人柄を改めて知り、仇ではないと認識し行動を共にする。

香取さんは「沙粧妙子・最後の事件」の犯人、谷口役よりも前ですね。
やっぱり光ってます。
まだ子供の面影があるけれど、しっかりした演技している。
こうして見ると、本当にすごいキャリア長いんですね。

いや~、思わぬものを見せてもらいました。
意外な人を見た気持ち。
「腕におぼえあり」もかなり、良いドラマ。
「用心棒日月抄」を原作とするドラマの中では、自分は一番好きです。


2016.11.26 / Top↑
「シン・ゴジラ」の中で、総理大臣と総理大臣代理が、ぼやいてました。
「無茶言ってくる、あの国は」。
「本当に無茶言ってくるんだな~、かの国は」。
…だったかな。

「ロス大統領」が、日本の政府に言って来てるみたいでしたけど。
何処の国とか言ってませんでしたよ、たぶん。
だけどこのセリフを聞いた時、わいてきたイメージは何故か、ブッシュ大統領でした。
ブッシュ大統領が攻撃的な大統領だとは、思わなかったんですけどね。

だとするとこれ、来年からはトランプ大統領なんだ。
ううむ。
う~ん…。
(考え込んでしまう)。

そうか…。
何故か、納得する。
(するな、自分)。
でもこの感じ、わかってもらえます?

アメリカの人たちが自分たちで選んだ、自分たちの国のトップ。
私が文句を言えるものか。
大きなお世話というものでしょう。

こちらでも、連日、あんまりな言われ方してました。
そんなに…、ひどいかぁ?と、つい思っていたところ、このシーンを思い出したのでした。
何故だろう…?
なぜかしら。


2016.11.24 / Top↑
CM
外がとっても寒いことを、この子たちは知らない!





知らなくって良い!


2016.11.23 / Top↑
平幹二朗さんが10月22日に、お亡くなりになりました。
時代劇、現代劇と縦横無尽に活躍。
すごい存在感。

大河ドラマでも印象的な役ばかり。
武田信玄の武田信虎役も、すごかったです。
しかし「信長 KING OF ZIPANGU」の加納随天は、今でも忘れられません。

加納随天は架空の人物。
信長の祖父の代から仕える「神頼み」という、予知や占い、まじないなどを行う男。
高橋恵子さんが演じる信長の母・るいに恋慕の情を抱いており、後にその関係を信長に知られ、成敗される。
しかし随天は信長を恨みながら、生き延びていた。

追放された随天は、るいの侍女とともに暮らしていた。
それを知ったるいは、随天に嫌悪感を示す。
かつて惹かれた反動で、この嫌悪感、軽蔑は激しい。

随天は後に許され、織田家に復帰。
だが、るいは随天をもう寄せ付けない。
その後の随天は、信長に仕えるが信長は随天の予知や助言にあえて逆らう。

城を作った時、随天はこれ以上の階数は神の領域と言って反対する。
しかし信長は随天が意見した階数を建設するのだった。
信長は随天に逆らうことで力をつけ、成長していくようだった。
だが信長が神に逆い、成功するたびに随天は体の機能を失っていく。

そしてついに、運命の本能寺。
随天は、本能寺にも同行していた。
夜半、本能寺の変が起きる。
明智の兵が迫る中、信長は自害のため、奥の座敷に向かう。

随天は信長の自害を守ろうとする。
「では、止めて参ります…」。
「うむ」。
信長がうなづく。

杖をついた随天が、明智の兵の前に現れる。
その鬼気迫る様子に、明智の兵は身動きできない。
気持ちを奮い立たせた兵が随天を刺すが、随天は倒れない。

「来ると…」。
「祟るぞ」。
何かに取り憑かれたかのように、明智の兵は立ち尽くす。

これは、すごかった。
これは、動けませんよ。
本当に祟ると思う。

杖をつきながら、随天が去って行く。
呆然と見送る明智の兵たち。
まるで悪霊を見たような気持ちになる。

悪夢だ。
あの随天は悪夢だ。
見た者はきっと、後々、恐怖で語ったことでしょう。
夢に見て、心にこびりついたに違いない。

だが信長の元に戻ると、随天は気力が尽きたように崩れる。
本当に、本当に気力のみだったのだ。
自害する寸前の信長を見て、意識を失う随天。
それを見届けた信長。

憎み、反発し、それでもいつも重大な人生の転機には互いがいた。
愛情が深い分、憎しみも強かった。
カリスマ化し、魔王となっていく信長が人間的な感情で接するのが随天であった。
まさに愛憎に彩られた2人だった。

信長は炎の中、自害して果てた。
後は混乱が残るのみだった…。
そこで「信長」は終わる。

「義経」の後白河法皇も、すごかったです。
「新選組始末記」では 近藤勇。
当時、草刈正雄さんの沖田総司が人気でした。

でも、この近藤勇と古谷一行さんの土方歳三がまた良かった。
私は夏八木勲さんの永倉新八が好きだったんですけどね。
当時の自分の年齢からすると、遅い放送時間だったのでたまに寝てしまって見逃しました。
その時はすごく悲しかったですねえ…。

平さんのすごさは、やっぱり舞台なんでしょう。
私の好きな本田博太郎さんは、平さんの代役をつとめたんですね。
その重さに、食事ができなくなったと言います。

最近では昔の出演作「三匹の侍」「幡随院長兵衛 お待ちなせえ」も見ることができました。
映画「他人の顔」も見ることができました。
主人公は仲代達矢さん、妻が京マチ子さん、平さんは医者でした。

十分なキャリアの持ち主なので、若い俳優さんを育てる側に回ってくれたり、怪演でサポートしてくれていました。
でも平さんが熱演すると、陰の主人公となってしまうんですよね。
平さんがいないと、本当に成り立たない強烈な個性を発揮してくれました。

「剣客商売」の田沼意次は、大物感漂わせていました。
貫禄はもちろん、品格がある。
田沼意次の権力者以外の顔、人間的な面を感じさせました。
おそらく家族や日常生活では、こんな顔を見せていたんだろうと思わせる。

日本の陰の首領や、妖怪のような役。
人生を重ねてきた人間だけが出せる、複雑な感情。
そう言った演技で、まだまだすごさを見せつけてくれると思っていました。

長い間、楽しませていただきました。
ありがとうございます。
平幹二朗さんのご冥福をお祈りいたします。

2016.11.20 / Top↑
「鬼平犯科帳」SP「引き込み女」。
大店の質屋が盗賊に狙われている。
奉公人の中にいる引き込み女は、誰か。
平蔵は密偵のおまさを質屋に奉公させ、探らせる。

引き込み女は「おもと」という、店前で倒れていた女だった。
店で介抱され、そのまま奉公するようになった。
気が利くし、頭は良いし、人柄も良い。

ところが元・引き込み女のおまさは、おもとが引き込み女であることを見抜く。
お互いの正体をさらして話を持ち込むおまさ。
本性をあらわにするおもと。

引き込み女のつらさは、お頭にはわからない。
正体がばれていないか、何かおかしなことはしなかったか。
誰かが疑っていないか。

気の休まる時がない。
夜も眠れない。
おまさには、おもとのつらさがわかる。

そして、おもとは店の主人との道ならぬ恋に悩んでいたのだ。
番頭上がりで婿養子の主人は、姑と妻に軽んじられている。
そんな毎日の中、優しいおもとに惹かれ、恋に落ちた。

だが、おもとはお頭の残酷さ、執拗さ、欲深さを知っている。
主人はおもととの駆け落ちを考えていた。
しかしそんなことをすれば、地の果てまでも追われ、2人とも殺される。
押し込みの日は迫ってきていた。


おもとは、余貴美子さん。
余さんとおまさ役の梶芽衣子さん。
素敵な女優さんのツーショットを堪能しました。

互いが盗賊であることを知ると、途端に体から凄みが立ち上る。
しかし同じ立場であることおまさを、あっさり足を洗わせると言うお頭。
このお頭には、平蔵が扮しています。

おまさのお頭の優しさを見たおもとは、おまさを心底うらやましがった。
凄みは消え、おまさへの共感と友情で一杯になる。
子供のように、無邪気におまさが一緒になるという男のことを聞く。
店に戻らなくて良いのかと言われても、あんたと一緒にいたいんだよと言う。

主人への思いと自分の罪深さで悩み、哀しみをにじませる余さん。
その横顔は寂しく、悲しく、美しい。
こんな瞳の余さんを見ていると、こちらも哀しい。
「シン・ゴジラ」の花森防衛大臣も良かったし、余さんは本当に良い女優さんだな~。


結局、おもとはお盗めを前に姿を消す。
駆け落ちするはずの主人さえ、遺して、一人で江戸を去る。
船に乗り、江戸を離れていくおもとが、振り返る。

その目には未練と哀しさと、愛おしさが満ちている。
おもとの胸中、いかばかりか。
去っていくおもとを、平蔵は追わない。
待ち構えていた平蔵率いる火盗改めに、盗賊は捕らえられる。

全てが終わったと思った時、おもとの水死体があがる。
おもとの遺体には傷がなく、身投げであった。
呆然とするおまさの目に、姑と妻と店の主人が映る。

店に傷がつくから、奉公人だったなんてことは名乗らない。
関係がない振り、知らない振りをして去ろうと言う姑と妻に主人は連れて行かれる。
主人もまた、魂が抜けたように立ち尽くしていた。
遺体が上がった岸辺は、おもとがおまさにもっと一緒にいたいとせがんだ岸辺だった。
何か愛着があった場所なのだろうと言う平蔵は、おまさにおもととの別れの時間を与える。

「ずっとここにいたいんだよ」。
「もう少し、いておくれ」。
うれしそうに、おまさと話すおもと。

引き込みとして心休まる日がなかったおもとにとって、おまさは唯一、心を許せた相手だったのだろう。
また、おまさにとっておもとは、もう一人の自分だったに違いない。
おもとの声が蘇り、おまさは泣いた。


2016.11.19 / Top↑
今、「必殺仕舞人」を見ていて、惚れ惚れするのは京マチ子さんの美しさです。
初めて見た時は、何といっても子供というか、あまりに未熟者だっただけにわからなかった。
遥か年上のため、その魅力は良くわからなかった。
しかしこの人は、若い頃、誰もが振り向くものすごい美女だっただろうということはわかった。

今見ると、この年齢でこの美しさを保つこと自体が、脅威であることが良くわかる。
加えて踊りの美しさ。
踊っている一座の娘たちもはつらつと踊っているが、群を抜いて踊りが綺麗。
京マチ子さんが中心にいると、本当に花が咲いたようになる。

あの山田五十鈴さんの仕草も美しいが、京マチ子さんも美しい。
山田さんがのれんをちらりとめくる時の、指先が艶めかしい。
京マチ子さんもまた、階段を上がる時、お座敷に呼ばれて手を揃えて挨拶する時。
指先がとても艶めかしい。

立ち姿、少し体を斜めに立つ姿が美しい。
肩先がとても華奢。
着物の裾に添えた手にまで、神経が行き届いている。

そう言えば、草笛光子さんも美しかった。
品格があった。
加えて彼女たちは厳しく、芯が強いが、人に対する優しさがある。
人生にいろんなことがあったことを思わせる。

それが糧になり、人に対する優しさになっていることを思わせる。
だから厳しくても、彼女たちは慕われる。
男性から見ても、女性から見ても魅力的。
どちらから見ても、「いい女」だなあという言葉がピッタリ。

「必殺」の殺し屋の女性たちの仕草の美しさ。
妖艶さ。
素敵な女っぷり。

市原悦子さんが「うらごろし」で「おばさん」と呼ばれる役を演じていますが、彼女だってたおやか。
決して、女性を捨てているわけじゃないということがわかる。
それらを的確にとらえ、表している撮影スタッフの力もすごい。

昔読んだマンガ「ガラスの仮面」で、なぜ、日舞を習うかと説明しているシーンがありました。
踊るわけじゃないんだ。
指先まで神経が行き届いた美しい姿、着物の時の動きを習う、と、そんなことを言っていたと思います。
まさにそれだと思います。

あまりに未熟な時はわからなかった、彼女たちの美しさ。
やっぱり、基礎がしっかりしているということは強いことなんだな。
こういうのが残っていて、本当に良かった。
彼女たちもまた、まさに日本の美だと、「必殺」を見て思ってしまうのでした。


2016.11.11 / Top↑
必殺シリーズでは、もらえる給料は決まっているし、それなら最小限の仕事しかしたくない熱意のない人たちの集まりとして描かれることが多い奉行所。
融通が利かず、人情がなく、庶民からは厄介で威張り散らす人たちと思われている。
つまり、あんまり機能していない。

機能してしまうと、裏の仕事する人たちが必要なくなってしまいますから、これで良いんでしょう。
それでもシリーズ中頃までは、結構怖い組織でもありました。
中村主水が市松に「おめえは組織の怖さを知らねえ」なんて言うぐらい。
汚職もはびこっており、熱意を持った清廉潔白な同心は、汚職まみれの同僚先輩上司に殺されたりもする。

しかし、当たり前のようですが、奉行所を主人公にしたドラマでは、みんな精一杯頑張って治安と秩序を守っている。
庶民が安心して暮らせるようにしてくれている。
「大岡越前」や「遠山の金さん」などのお奉行様は、部下に理解を示し、信頼して任せ、責任は自分が負う覚悟。
理想の上司です。

部下である与力、同心はその上司に認めてもらいたくて、さらに頑張る。
その上司のためにも頑張る。
良い循環です。

そのお奉行様が命をかけて、奉行では太刀打ちできないほどの地位の者に向かっていく時がある。
「大岡越前」では、越前が仕える吉宗の宿敵・尾張宗春の元に乗り込んでいきました。
その時、南町奉行所の与力・同心・岡っ引きは全員、尾張藩の門前に集合していました。
全員、死に装束です。

お奉行様が無礼者として成敗された時は、全員、後を追う覚悟です。
越前の言うことにカッとなった宗春を、家老が制します。
吉宗の信頼厚い片腕の越前を斬ったとあれば、それはただでさえ大変なことになる。

それに加えて、南町奉行所の与力・同心が全員、尾張藩の門前で腹を切ったとあれば、どうか。
天下の徳川御三家の尾張藩であろうとも、ただではすまない。
この男、尾張藩と心中する気だ。

門前では帰ってこない奉行に、いよいよ覚悟を決める。
その時、越前が姿を現す。
結局、越前の覚悟に宗春が折れたのだった。
越前と与力・同心・岡っ引きとの絆と信頼関係に、胸が熱くなるシーンです。

「遠山の金さん」では、遠山金四郎が薩摩藩の藩邸に乗り込んでいく。
島津藩主に向かって、彼のためにどれほどの命が失われたか、抗議する。
その中には金さんに惚れ込んだため、江戸を混乱に陥れる計略を実行せず死を選んだ、優秀な蘭学者もいた。

薩摩藩に対して北町奉行が意見するなど、とんでもない。
怒る藩主に向かい、金四郎は薩摩藩と心中すると言い切る。
藩主の目から怒りの炎が消え、反省と後悔と相手に対する尊敬が満ちてくる。

門前では普段は和ませるお笑い担当の伊東四朗始め、北町奉行所の与力・同心が揃っている。
みな、奉行が帰ってこない時は討ち入り、死ぬ覚悟だ。
「遅すぎます」。
「そろそろだな」。

死ぬ覚悟を固めた時、金四郎が出てくる。
この時の金四郎役は、杉良太郎さん。
ニッと笑う笑顔が伊達男というか、粋とというか、いなせというか。

「悲壮な顔して何してんだい?」みたいな奉行に対し、無事であることに涙する部下たち。
いつもは「お奉行~!」と困り果てている伊東四朗の、涙。
わかっている。

何を言っていても、お互いがお互いのために死ぬことができる間柄だということが。
彼らの信頼関係に、やはり胸が熱くなる。
ちょっとやそっとで、こんな関係は築けない。
この勝利は奉行の覚悟と、その奉行について行った彼らの勝利だ。

奉行はもちろん、彼らも全員、昨夜には家族に明日は戻ってこられないかもしれないことを告げているはず。
待っていた与力・同心・岡っ引きも生きた心地はしなかっただろうけど、彼らの家で待つ家族も同じ思いだったはず。
彼らと、彼らの家族の心の中はどれほどつらかっただろう。
どれほど、安堵したことだろう。


…うーん、この中に中村主水がいる想像がつかない。
こんな奉行の下で、こんな奉行所だったら、中村主水は本来の正義を屈折させることなく発揮しているはず。
昼行灯であることはまず、ないと思う。
華々しく活躍はしなくても、鋭い洞察力で同僚・上司に頼りにされ、庶民からは人情のわかる同心として慕われたと思う。

裏稼業の暗い宿命など背負わなくて良かった。
普通に家庭を持ち、何の屈託もなく仕事に邁進できた。
そう考えると、中村主水があの奉行所にいるって、結構な悲劇です。

せんとりつは、どうかな。
主水を待つ、せんとりつは想像ができるんだけど。
戻ってこないかもしれない覚悟の主水って、何度か見てますから。
何度か見ているけど殊勝な妻と姑として、主水を支えているだろうか。


2016.11.06 / Top↑