こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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今年1年

2016年。
平成28年。
今年は自分にとって、大変な動きがあった年でした。


まず、何と言っても猫との別れです。
19年一緒にいた猫が6月に、天に召されました。
いなくなって、どんなにこの猫に救われていたか改めて愕然としました。

部屋に体温が高くて、重くて、柔らかくて、
手触りが良くて、目が合うと目を細めて。
ニャーと返事して。

夜になると、布団に入って待っている。
朝は人の額にあごを乗せていたり、ほおを寄せあっていたり。
人の顔の上を通過して起きる。
休みの日は、猫と朝寝坊をするのが至福の時間でした。

最期まで、猫の瞳に自分が映っていました。
ありがとう、ありがとう。
大好きだよ、かわいいね。
助けてもらったよ、ありがとう。

猫ががんばって、少しでも一緒にいてくれようとしていたのがわかりました。
ありがとう。
19年一緒の、愛する者との別れでした。


仕事も一区切りつきました。
帰宅すると何もできず、土日も平日にできない家事をやって終わってしまう。
余裕がなく、常に時間に追われていたような仕事。
おかげで、猫を見取れて、その後、抜け殻になることができました。


それとは違いますが、10月にテレビが壊れました。
DVDレコーダーも壊れました。
その後、パソコンも買い換えざるを得なくなりました。
古かったので、いずれはと思っていましたが、買い換えとなりました。

さらにメガネが壊れました。
調べると9年目でした。
度数も合わなくなっていたので、いずれとは思っていましたが、否応なしにこれも買い換えになりました。

そしてこの年末、最後に給湯器が壊れました。
完全に使えなくなったわけじゃないですが、見ると電源が落ちている。
このままではいずれ、使えなくなる。

年内に付け替え工事ができないと、年明けて仕事が始まると今度は三連休。
すると付け替え工事が、1月半ばになる可能性が大きい。
その間にお湯が止まったら、年末年始にお風呂にも入れなくなる。

…ということで、クリスマスに工事してくれました。
業者さん、ありがとう。
クリスマスケーキとコーヒーをお出ししました。

断捨離をして、家の中のものを3分の1ぐらいに減らすことができました。
年明けにさらに処分するものがあるので、もっと空間が増えると思います。
よく言われていることですが、そうやっているうちにいろんなことを考えました。

「シン・ゴジラ」も見て、何を持って避難するかも考えました。
これを残すこと、捨てることによって考える、自分にとって大切なもの、優先すべきもの。
それを大切にするため、優先するため、どうやって生活していくか。
いろんな区切りになった1年でした。


さて今年、このブログに来てくださった方。
記事を読んでくださった方。
拍手をしてくださった方。
本当に、ありがとうございます。

みなさまにとって、来年が良い年になりますよう。
今年一年間、ありがとうございました。
みなさま、良いお年をお迎えください。


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小悪党世界一 江幡高志さん

チャンバラジオ、何だかんだで気がついたら、ぎゃあー!
始まっているー!
あわててラジオをつけると、中尾彬さんのインタビューでした。

さすが、長く活躍している中尾さん。
時代劇についても、なるほど…とうなづけるようなお話。
俳優についても、深い話が聞けました。
時代劇、継承していってほしいですね。

そして11時5分からは、いよいよ、江幡高志さんの登場です。
小悪党と言えば、江幡さんは世界一。
江幡さん大好きという方多し。
春日さんの紹介で、江幡さん登場。

江幡さん、衣装は勝手に選んで良いと言われるとこれ、幸いと選びに行ったそうです。
派手なのを選んだり、それがピッタリだったりする時もあれば、監督には「うーん」と言う感じの時もあったそう。
ですが、自分で選べと言った手間、文句が言えないようだった。

春日太一さんが「江幡さんの悪役と言えば、途中で仲間に殺されたり、主人公やヒロインと逆襲されたりすることが多い」と言いました。
「自分はなぜなのかなと思いました。どうしてなのかな」と江幡さん。
江幡さんは、悪役さんの中で一番小さいそうです。
そういうのも、影響しているのかな。

悪役をやっていて切なかったこと。
天保水滸伝というドラマがありました。
江幡さん「大竹しのぶさんが、肥やしを頭からぶっかけるわけです」。

「あの頃、フィルムが敏感で、曇りになると撮れないんです」。
「この肥やしが、リアルなんですよね。においがないだけ、誰が見ても肥に見える」。
「小道具さんはえらい!作るんです、リアルなんです」。

「ぶっかけたら曇ってきちゃって、休憩になった。それで中止」。
「何回やっても雲が出てきちゃって」。
「それでお昼になって、弁当食べるんだけど、それが髪にくっついちゃって」。
「小道具なんだけど、臭いはないんだけど、誰も寄ってこないんです」。

「その時だけは、みんな向こう、行っちゃって。(リアルで)食欲わきませんもんね」。
「その日、終わらないんです。ついに今日は中止でございますって」。
「次にまたその衣装着て。嫌な色なんですね。それでまた、ダメなんです」。
「何遍も何遍もやって。ずっと大竹さんにかけられっぱなし」。

春日さん「うわー。きついですね」。
江幡さん「悪役ってのは、こういうもんなのかなって。…切ない。汚い話で」。
「大立ち回りをやってみたいなと思うんですけど、京都の撮影所に行ってチャンバラってどんなもんなんかなって」。
「殺陣師は殺陣をつけてくれないんですよ。僕の顔を見て『あっちいけあっちいけ』みたいに」。

「実を申しますと、ほんとの話なんですけど『江幡さんあなたは日本一、チャンバラが下手な人です』って言われたんです」。
「(立ち回り)やらしてくれないから、興味もわかなくなりますよね」。
「どこ行っても、どこの殺陣師さんも殺陣つけてくれないんです。やって終わりなんです」。

「要するに誰が見たって慎重151センチで小柄で、こんなのができるわけないだろって、やってくれないんです」。
「そういう苦労があるわけですね。」。
「それでも使っていただいてるんですから、ダメはダメなりに…」。

「チャンバラのところはダメなんだなあって。だからって、ダメにやってやろうってことはないんですけど」。
わざと目立つようなことはしなかったそうです。
春日さん「悪役の仕事って重労働だと思うんですけど、ずっと続けてこられた要因とか秘訣みたいなものは?」
江幡さん「すいません、秘訣なんてございません」。

春日さん「役者を辞めようと思われたことは?」
江幡さん(ございません!」キッパリ。
「役者辞めようとか一度も」。

「絞られたことも、いじめられたこともあんまりないですし」
「そういう点で、ご迷惑をかけたことはないです」。
「あんまり深く考えない」。

春日さん、江幡さんとのインタビューのことを「振り返ってみればま、こういう…、切ない話が多かったけど」。
「一回だけ江幡さんのパアッと顔がすごく、輝いたことがありました」。
「やりがいがあったのは、印象に残ったのは誰ですか?って聞いたんですね」。
すると江幡さん「勝新太郎さんですね」。

勝さんの撮影って、台本がない。
台本がなくて、その場でやっていく。
役者はアドリブで作っていく。
台本があると、パターンになってしまうわけです。

そうじゃなくて勝さんは「お前、じゃあ、好きにやってみろ、と」。
「演じがいがある」。
「勝さんはそれを、受け止めてくれる」。
「楽しかったなあ、と」。

やっぱり勝新太郎さんって、すごい俳優さんだったんですね。
本田博太郎さんも直次郎の殺陣は、勝さんに憧れての殺陣なんですって言っていたし。
俳優として、プロデューサーとしての勝さんの功績って、関わった人には忘れられないものなんだと思いました。

俳優になったきっかけっていうのは、「子供が好きだった」。
「幼稚園とか、児童劇団が回って行く。それで自分もやりたいな、となっていった」。
ラジオドラマで、クイズで犯人を当てるというのがあった。

江幡さんがやると、投票でみんな、江幡さんが犯人だという。
だから、悪役でいけるんじゃないかと思った。
江幡さんが犯人じゃない時も、江幡さんが犯人だという人が多かった。

時代劇に江幡さんが出てくると、不穏な雰囲気になる。
これから何かが起きるぞ、という江幡さんは合図のようなものなんですね。
春日さんは江幡さんのことを「凶悪犯じゃないんだけど」。

「競馬場とかにいそうな小悪党」。
「強い相手には下手に出て、弱い者には強く出る小悪党」。
「自分の中にもこういう面があるんじゃないかって、思わせるような悪党なんです」。

そうなんですね。
山形勲さんなんかだと、巨悪って感じです。
江幡さんの悪は、とても身近。

でもお会いした江幡さんは、恐縮しきり。
小さくなっているのが、印象的でしたね。
ラジオを聞いている人のお便りは、悪役と言えば江幡さんという声があった。
「『あの!』という感じでしたね」。

リスナーさんから好きな、悪役さんの名前で寄せられたメールでは、菅貫太郎さんの名前が多かったそうです。
管貫太郎さん、神田隆さんなどが出た。
中にはどんな悪役俳優さんが出るかで、今度の話はどんなだろうって楽しみに想像するリスナーも。

確かにそうです。
この悪役さんなら、こういう役かな。
だとすると、こんな話かも。
こういう楽しみもありますね。

江幡さんは、俺はこんな人間だって、視聴者に見せる。
名優です。
悪役俳優がわかってくると、時代劇は相当おもしろい。

切ない目にあって、殺陣師は殺陣をつけてくれなくて。
それで下手な人だと言われる。
だけどそれでも辞めようと思ったことがない、とキッパリ言える江幡さん。

いじめられなかったし、良かったと言えるポジティブさ。
心の強さ、穏やかさ。
好きだな~。

そして、名優・江幡さんが出てくる時代劇は、おもしろいはずです!
ありがとう江幡さん。
ばんざーい、江幡高志さん!
今年は自分にとって激動の年だったけど、最後に良いものが聞けました。


「腕におぼえあり第3シリーズ」の見所は近藤正臣さん

時代劇専門チャンネルで放送されている「腕におぼえあり」。
平成4年から放送を開始し、シリーズとして3まで作られました。
村上弘明さん主演。
藤沢周平原作で、何度かドラマになっていますが、自分としてはこの作品が一番好きです。

「3」の見所は何と言っても、敵となる隠密組織嗅足組(かぎあしぐみ)の頭領・石森左門でしょう。
近藤正臣さんが演じています。
これが、もう、本当にさすが。
最終回の決闘は、長時間に渡ります。

黒幕と思われた谷口が、病死している。
その原因は、本当に病なのか。
隠密の佐知が尋ねると、「毒殺…」と左門が言う。
怖い。

ついに又八郎と左門の戦いが始まります。
雷鳴轟く中、戦いは石森左門優勢となります。
又八郎を愛する隠密の佐知が、手裏剣でサポートに入りますが左門には無力。

すると、近くの桜の木に落雷。
左門に当たったかと思うような衝撃と叫び声。
起き上がった左門と又八郎。

左門の髪の髷が解け、落ち武者のような風貌になっている。
ここから左門が妖怪じみてきます。
開いた口からは、真っ赤な舌が見える。
「俺は嗅足組を、日の当たる場所に出したかったのだ!胸を張りたかった!」

汚い仕事を請け負わされ、日の当たる場所に出ることもなかった左門の怨念。
執念が吹き出してきます。
村上さんの青江又八郎だって、無敵の使い手です。
これまでにいろんなライバルを倒してきています。

しかし、その怨念が左門を強くしている。
何か、邪悪なものが左門に力を貸しているのではないか。
そんな風にまで思える。

命のやりとりの中、左門が笑っている。
笑っていると思うが、顔を見ると笑っているわけではない。
でもやっぱり、笑っているように見える。

左門の髪の一部が白髪になって、メッシュが入っているように見える。
そこがまた、迫力。
ほとんど妖怪。

勝負は左門の刀が、又八郎の刀を弾く。
飛んでいく又八郎の刀。
小刀を抜き、対抗する。
さらに両手に小刀を持ち、対抗する。

しかし又八郎、顔を斬られる。
かつてない傷を負い、追い詰められていく又八郎。
ついに尻餅をつき、ジリジリと後退していく。

刀を振り上げる左門。
するともう一度、落雷が起きる。
左門の刀は、又八郎を貫いていると思われた。

又八郎の眼にもはっきり、死の恐怖が浮かんでいた。
佐知が悲鳴をあげ、又八郎にしがみついた。
だが左門の表情が固まっている。

動かない。
やがて左門が倒れる。
左門の体には、折れた桜の枝が突き刺さっている。

これですね、又八郎の側から枝は左門に突き刺さっているんです。
絶体絶命の又八郎が、折れた枝を手にして刺した。
そう理解してますが、落雷によって枝が折れて刺さったんでしょうか。
又八郎にとどめを刺そうとしていた背中に刺さっていたなら、雷で折れて刺さったんだなって思ったんですが。

仰向けに倒れる左門。
左門の様子をうかがう。
目をカッと見開き、起き上がろうとする左門。

しかし息絶える。
ホラーです。
近藤さんの熱演です。

原作は前作から10年以上経っている設定で話が展開します。
そのため、老いてきた主人公と登場人物が描かれ、ちょっと寂しい。
「用心棒日月抄」のシリーズなんですが、用心棒稼業をする状態ではない。

そこを曲げてドラマにしているので、ちょっと違和感がある。
二度と交わることがない道を行く者もいれば、老後に立ち寄る楽しみができた人物もいる。
原作では謎解きがメインで、躍動感ある場面はほとんどなし。

しかしドラマでは、近藤さんが見せ場を作ってくれました!
決闘の結末の解釈は、違うのかな。
桜の枝で刺すって、まるで「必殺仕事人」の政ですもんねえ。


チャンバラジオ!

年の瀬に、こんなうれしいラジオ番組発見。
http://www.nhk.or.jp/radios
「光があれば陰がある」
まるで「忍法カムイ外伝」のオープニングみたいですが、その通り。

12月31日10時05分からラジオ第一で放送する「チャンバラジオ」。
今回は悪役俳優さん特集ー!
時代劇研究家の春日太一さんが、ゲストに尾張大納言様こと中尾彬さんを迎えて放送。
しかも語りは江幡高志さん!

番組HPには「小悪党を演じ、時代劇を支えてきた江幡高志さん」とあります。
いやいやいや、なんてうれしい。
番組では中尾彬への質問・メッセージ、春日太一さんへの質問・メッセージを受け付けていますとのこと。
江幡高志さんへのラブコールはOK?


やっぱり魅力的なキャラクター・勇次

「新・必殺仕事人」を見ていますが、中条きよしさん演じる勇次。
ヴィジュアルにとても力を入れていると思います。
クールな色男で、最初は主水とことあるごとに衝突していました。
幼なじみを巡って、直接対決しかかったことも。

しかし、次第にお互いの力量と器を認め合うようになりました。
性格も魅力的に描かれています。
主水がある女性の声を奪ったんじゃないか。
秀が疑い、感情に走った時は、かつては対決で使った糸を勇次は制止に使いました。

うまく家の中に逃げた主水を見て、秀に「ホッとしたんじゃないか」と言う。
何故なら、秀のかんざしも主水の首筋に触れていましたが、秀の体には主水の刀が今にも突き刺さる状態だったからです。
「仕置屋稼業」の市松のような体勢ですね。

引くに引けない秀が引くための状況を、勇次が作ってやった感じです。
勇次と主水、大人の分別。
主水に対して不信感いっぱいの秀に対して、勇次は主水を信じています。
大人です。

仕事の最中に、子供が猫を探して表に出てきてしまうシーンがありました。
すると勇次は、ふわりと子供に着物をかぶせます。
その間に子供に見せないように仕事を遂行し、屋根の上にいる子猫を糸で捕らえます。

仕事を済ませ、子供から上着を取ってやると、猫を渡してやります。
「ありがとう!」という子供に勇次。
「ごめんな」。

もちろん、子供が来たのは予想外でどうにかなることではない。
でも何の罪もない子供が、猫を探しに来て、仕事に巻き込まれるところだった。
子供の命に関わる事態になったかもしれない。

だから勇次はそうならないようにしてやった上で、「ごめんな」と詫びた。
良い男ですよね。
優しい。
すごく魅力的に描いていると思います。

女性を騙して心中を持ちかけ、金を巻き上げる青年をぶん殴ったこともあります。
口では勇次に自分の正当性を訴えた青年ですが、やがて勇次を正統派色男の先輩として「アニキ」と呼ぶようになるんです。
勇次も本気で女性を好きになった彼を、守り切ります。

「必殺」としては2人とも犠牲になる危険性が大きかったんですが、さすがです。
勇次のところに逃げてきた青年の判断も、生死を分けたのでしょう。
頼れる男です。

勇次の母は、山田五十鈴さんが演じるおりくさん。
ところが、本当の親子ではありません。
仲間を裏切った勇次の父親を、おりくは手にかけているのです。
自分が殺した男の息子を、育てるおりく。

そして結局、勇次にも同じ道を歩ませてしまった。
だからおりくは、常に勇次にすまないという気持ちを持っている。
しかし勇次は育て、愛情を与えてくれたおりくを芯から母親だと思っている。

捕り方を自分に引きつけて逃げる、ギリギリの時におりくが主水に頼んだのは、勇次のことでした。
勇次をお願いします。
おりくの頭にあるのは、勇次の無事と幸せだけ。
この2人のお互いを思いやる気持ちは、特に親子関係が絡んだ話しに深みを持たせます。

勇次の殺しの技は、丁寧にコーティングし、強化した三味線の糸で標的を狙います。
三味線の糸を口でくわえ、ツーッと長さを調節します。
標的に向かって投げると、糸はクルリと首に絡みつきます。

するとどこかに支点を作って、標的を宙に吊り上げる。
勇次は吊された方に、しばらく宙づりの苦しみを味合わせます。
そして後に描写されますが、ピン、と糸を弾いて、息の根を止めます。

これが確認できると、プツッと指で糸を切って、相手を字面に落として終わります。
相手はしばらく、悶絶します。
秀や主水だって、刺さった瞬間は「ヒッ!」となるでしょう。
さらに刺された時の痛みと恐怖は、相当なものだと思います。

しかし勇次の殺しは、苦しみの時間が長い。
これを悪党とは言え、苦しみを長引かせて殺すのはどうか。
そう、思ってしまう人もいるかもしれません。

ただ、これは、頼み人には溜飲が下がる殺しだと思います。
「仕事人」の後半は、こうして作ったキャラクターの魅力に寄りかかったような作りになっているものもありました。
でもそれだけ、「新・仕事人」では魅力的に作り上げたんだなあと思って見ています。
やはり勇次は、「仕事人」シリーズを代表し、作った名キャラクターだと思います。


「生き方を変えなさい」って思えたら

「僕と彼女と彼女の生きる道」を今、放送しているんですね。
この作品について記事を書いたことがありますが、それも5年前。
もっと最近の気がしていました。

あの時も良いドラマだなあと思って見ていましたが、現在見るとまた違った感想も出てくるんです。
自分の状況が5年前とはまた変わっているため、見る角度が違ってるんでしょう。
つまり、何年経っても考えさせられるドラマであると思います。

今日は第7回で、井上部長が飛び降り自殺をした後でした。
徹朗が凜ちゃんに「銀行辞めることにしたんだ」と言う。
自分のせいじゃないかと思ってしまう凜ちゃんに「もっと一緒にいたいんだ」と言う。

徹朗が言うと、凛はうつむいたままだった。
すると徹朗は言った。
「凛ともっと一緒にいたいんだ」。
「今までとは違う生き方をしたいんだ」。

今、徹朗の選択肢はあり得る選択肢だと、最初に見た時より強く思います。
自分の自由な時間と社会的地位と収入を秤にかけて、時間を取る。
そういう考えの人は、あの頃より増えているかもしれません。

ある有名人が言っていたんです。
人生相談で「月これだけの額がないとやっていけないから、つらくてもやるしかないなんて、それは思い込みだよ」と。
この人は、かなりお金儲けにシビアで優れている人だと思っていました。
私が知らなかっただけかもしれないですが、物欲名誉欲金銭欲、とにかく欲望が強い人だと思っていました。

それが自分は人が持っているもの、やっていることができなくて良い。
豪邸に住みたいと思わないし、ブランドの時計も車もいらない。
だったらそんなに稼がなくて良いし、必死に働かなくて良い。
自由な時間がある方が良いって言うんです。

そんなことできないって思うのは、それは周りにそういう選択肢を取った人がいないだけだよ、と言う。
怖いだけ、不安なだけだよ、と。
人生はもっと楽に生きていけるって、言うんです。
今のやり方がつらいなら、無理があるなら、それやめたっていいじゃないかって。

欲望が強くて、それに正直な行動を取る人だと思っていたので、この言葉にビックリしました。
そしてそういう人だと思っていた彼から、この言葉が出るとすごく説得力がありました。
徹朗の選択肢ってこの人が言っていたことになる、と、ドラマ見ながら思ったんです。
もちろん、これから徹朗は大変なわけですが、自分が納得するところに行き着きます。

井上課長が常務になれなかったということは、どこかから、誰かから「生き方を変えなさい」って言われたことではないか。
そう思えるのと、思えないのとでは人生は天と地ほども違ってくる。
楽に生きていく人生が、彼にはあったかもしれない。
亡くなってしまったことは、本当に残念だった。

「お前も負け組か」って徹朗に言った上司だって、年を取る。
人は年を取る。
誰かの介護をしなければいけなくなっているかもしれない。

自分と違う生き方を取った人を、負け組と言えるような人生ではなくなっている可能性がある。
傲慢でいられなくなる時が、彼にも来る。
その時、この人は何を思うだろう。
こんなことも思いながら、見ました。

徹朗が寄り添ってきた凜に、しみじみ「ありがとう」と言う。
カラオケのトイレで、糸が切れたように泣く徹朗。
不器用な演技だと言う人もいましたが、私は不器用にしか泣けない男の泣き方をしてると思いました。
今見るとまた、違った見方ができるこれは本当に良いドラマです。


元締おきん

時代劇専門チャンネルで「桃太郎侍」を見ていました。
終わって、次は「長七郎江戸日記」。
ところが終わった「桃太郎侍」が、なぜか続いているような錯覚を起こしました。

「あれ?桃太郎侍、さっき終わったよね?」って。
どうしてつながっているような気持ちになったんだろう?
そう思ったら、どちらにも野川由美子さんが出てたんですねー!

「桃太郎侍」では高橋英樹さんに「もーもさーん!」って叫んでいる。
「長七郎江戸日記」でも「長さん!」って叫んでいる。
この後、「必殺」アワーなんです。

前期のシリーズだったら、野川さんをまた見られたかもしれない。
すごいな、野川由美子さん。
主人公のことが好きで、キップが良くて、ちょっと早とちり。

スリだったり泥棒だったり、ちょっと裏の顔がある。
それを生かして、主人公をサポートする。
基本的に善人であり、世話好き、人が良い。
おきゃん、という言葉がピッタリ。

野川さんが演じるのは、こんなキャラクターです。
じゃあ、全部同じ人物に見えるかというと、そうじゃない。
つばめは、鉄砲玉のおきんじゃない。

おきんがするであろうことを、つばめはやらないってわかるんです。
つばめは裏街道を行く女性じゃない。
演じ分けてますねえ。

それで、野川さんがいるとやっぱり賑やかなんですよ。
すごいアクセントになっている。
主人公に絡んでほしい。
コメディ部分の担当だったりしますが、美貌は相当なもの。

「仕留人」で最後、雪降る中、江戸を離れていき、これでおきんの出番は終わりです。
この後、おきんはどうしたんでしょうね。
野川さんは、インタビューでおきんのことを「あの気性ですからね~」とおっしゃってます。
私も思いますが、おきんは元締になってるかも。

野川さん、演じてみたいそうです。
楚々とお茶なんかたてたりして、それでもたまにあの啖呵が飛び出す。
周りを屈強な用心棒に囲まれ、若い衆に慕われている。
男性も女性も。

壮絶な仕置人、鉄と錠を見て、哀しい恋を経たおきんの元締姿。
それはそこらの駆け出しでは対抗できない存在感でしょう。
どうです、想像ができるじゃないですか。
野川さんも演じたいとおっしゃってますが、私も見たいです。

長七郎で火野さんと絡んでいるのを見た時は、「必殺」シリーズ見ている気分になりました。
そういえば、「必殺」シリーズでは野川さんと火野さんは共演してませんでしたね?
おきんと正八のコンビ、有能にして楽しい。

誰が主人公でも野川さんは、近くにいる。
主人公が誰であっても、野川さんは合う。
あの頃の時代劇に、野川さんは欠かせない存在です。
野川さんのインタビュー記事があったと思うので、探してみようと思います。


仕置屋ですよ殺し屋じゃない 第2話「一筆啓上罠が見えた」

何度見てもゾクゾクするのは、「必殺仕置屋稼業」第1話の市松登場シーン。
一発で市松という男に惹き付けられる名シーン。
沖雅也さんです。

あの横顔。
音もなく、後ろにつく姿。
優雅な扇を扱う手つき。
蒸し暑そうな夜、彼の周囲だけ温度が低いような空気感が出ている。

そしてあっという間に標的の首筋を竹串で刺す。
次の瞬間、主水と扇越しに目が合う。
かき消すようにいなくなり、主水が見失ったと確認すると立ち上がり、竹串を折る。
息を呑むような数分間です。

「必殺」には名シーンが数多くありますが、その中でもベストに入るのではないでしょうか。
第1話はこの後も、中村玉緒さんのおこうが一瞬でその個性を見せつけます。
市松は優雅で危険な猫科の動物を思わせます。

おこうは、主水に薄笑いを浮かべながら仕置人であったことを知っていると告げる。
そして、一遍、、お仕置きをした人間は一生、その首かせから抜け出せんのと違いますか?と言う。
この時のおこうの目は、笑っていない。
やはり、隙の無い猫科の動物の目です。

この10分ぐらいの間、たたみかけるように次々と重要人物が現れる。
そして雪崩れ込む仕置シーン。
少女に仕置を見られたと思った市松が飛んでくる。

主水が息を呑む。
少女の目が見えていないことを知った市松が、優しく微笑み、少女を船に乗せるために連れて行く。
構成の見事さ。
この前の作品「仕事屋」は名作ですが、「仕置屋」もそうなのだと思わせるのに十分。


そして「一筆啓上罠が見えた」。
この第2話は、この市松の生い立ちが明らかになる。
親代わりに市松を育てた男は、鳶辰。
裏稼業は、殺し屋。

市松の実の父親を、密告によって死に追いやった男だった。
自分が手配した殺し屋が、標的を狙っていることを標的自身に教えてやる。
その謝礼を受け取る。

殺し屋に狙われるような人間には、何か後ろ暗いことがある。
鳶辰はさらにそれを探り、大金を脅し取る。
市松を育てたのは、そういう男だった。

だが市松は、それを知らない。
この男に市松がかわいがられていることは、鳶の面々がやってくる市松を見るシーンでわかる。
「市松さんだ」と言って鳶たちが立ち上がり、そそくさと出て行く。

やってきた市松は友人・源次とすれ違う。
この友人は、市松同様、鳶辰に使われていた殺し屋だった。
しかし足を洗ったはずだ。
それが復帰しようとしている。

市松の話によると、おみつは裏稼業を嫌っていた。
それなのに、なぜ。
源次は妻のおみつに子供が生まれるためにお金が必要となり、殺し屋に復帰したのだ。

だが源次が向かった相手は、用心棒を用意して待ち受けていた。
源次は返り討ちに遭う。
瀕死の源次が逃げ出すのを、用心棒が追う。

どこからか、竹串が飛んでくる。
用心棒が身を隠す。
出て行こうとすると、竹串が自分を狙って飛んでくる。
その間に源次は逃げおおせた。

おみつの元まで逃げ帰った源次は、10両をおみつに残すと死んだ。
仕置屋に、源次の仇討ちとして鳶辰の仕置が持ち込まれる。
仕事の話を持ってきた印玄だが、市松は断る。

そして独自に、おみつの元へ行く。
おみつに、市松は、金なんか払わなくても俺がやってやった。
なぜ、自分に頼みに来ないと言う。

すると彼女は言う。
自分は、市松に裏稼業から足を洗ってくれと言ったはずだ。
その気持ちは今も変わらない。

おみつの目と市松の様子から、おみつが遊女であったこと。
その店に市松と源次が行ったこと。
最終的におみつは、市松ではなくて源次の方を選んだことがわかる。

理由はおそらく、市松は根っからの裏稼業の人間だからだった。
おみつは市松のことは好きだったのだろうが、市松は裏稼業をやめないことがわかっていた。
だからおみつは、市松を選ばなかったのだ。

源次は、市松の父親同様、鳶辰の密告によって、死ぬ。
市松の父親が、回想の中に現れる。
彼同様、涼しげな容貌の黒ずくめの男。

おこうに仕置を頼んで、おみつは自らの命を絶つ。
鳶辰の正体を知った市松。
「すぐにけえってくるからな」と言って出かけた父親は、それっきり帰ってこなかった…。
源次同様、鳶辰の罠にはまって落命したのだ。

父親が市松に折ってやった鶴。
市松は折り鶴を見る度、帰ってこなかった父親を思い出す。
本当の父親、そして「オヤジ」と呼んでいる鳶辰。

鳶辰は、いったい、何を思って自分が死に追いやった兄貴分の子供を育てたのだろう。
決して、贖罪のために市松を育てたのではないと思う。
市松の殺し屋としての素質に、惹きつけられたのだろう。

しかしそれにしても、子供だった市松が成長するまでの時間があった。
誰にもわからない、市松と鳶辰の心の交流だってきっとあったのだ。
だがそれは、偽りの絆。
市松はそれを、断ち切らなければならない。

第1話では得体の知れない、人間らしさがない冷酷な殺し屋に思えた市松。
捨三は、「あっしらは仕置屋ですよ」と主水に言う。
市松は殺し屋だ、殺し屋と仕置屋では全然違うと言う。
信用できない。

それほど捨三に言わせる市松だが、殺人機械どころか人間だった。
人間らしいどころか、誰にも触れられない傷を一人で抱えている青年だったのだ。
そして今、彼はその傷口をさらに深くし、血を流すのだ。

折り鶴を残して、帰ってこなかった父親。
夕日を浴びながら、市松は折り鶴を折る。
その夜、仕置屋は鳶辰を狙った。
仕留めたと思った鳶辰は、影武者だった。

主水を影武者の罠にはめ、鳶辰は短筒を向けた。
捨三がかばおうとするが、とてもではないが守れない。
するとその背後に、折り鶴が飛んでくる。
主水がそれに気づき、笑う。

竹串に仕掛けられた折り鶴は、勝ち誇っていた鳶辰の首筋に深く刺さった。
白い折り鶴が、鳶辰の血で赤く染まっていく。
「ん?」と鳶辰が首筋に手をやる。

血の気が引いていく。
鳶辰は倒れた。
彼にはわかっただろうか。

自分のやったことが。
これが市松からのものだということが。
市松の彼に対する別れだということが。

そしてこの折り鶴が市松にとって、父親の象徴だったことは誰にもわからない。
父の象徴である折り鶴を、自分の父親を殺した義理の父に投げる意味を。
心の痛みを。

目に涙をため、去って行く市松。
これが自分の運命か。
なぜ、こんな呪われたような運命なのだろう。
自分には人間らしい生き方は、赦されないのか。

市松の心は張り裂けそうだ。
背後の主水たちに、もう市松の目は向いていない。
そこに主水が声をかける。

「助かったぜ」と笑う主水に市松は振り向く。
さっきまでの表情は、嘘のように消えている。
不敵で冷酷な市松が、そこにいる。

無表情に、手を差し出す。
仕置料、寄越せ、ということだ。
しかし主水は、おこうから市松の分までは受け取っていない。

そう言うと市松は「そんなことは知ったことか」と言う。
助けてやったんだから、金を払えと。
「おめえの命料だ」。
主水は渋々、自分の分を差し出す。

2両を受け取った市松はバカに仕切ったように、「2両か」と言う。
「安い命だな」。
これには主水もカッとなった。

聞いていた印玄も、露骨に顔をしかめた。
捨三に至っては、吐き捨てるような表情だ。
嫌な奴。
そこにいた全員が、そう思った。

「危ねえ時ゃ、またな」。
そう言うと、市松は去って行く。
後ろ姿が泣いている。
だがそれに気づく仕置屋の人間は、いない。

市松は感情がない冷酷な殺し屋なんかじゃない。
しかし市松は声も出さず、涙も見せない。
自分に対する運命の悪意を受け止め、負けないぐらいの悪意で返す。

だから誰も気がつかないだけだ…。
一皮むけば、そこには痛いほどの心の傷を抱えている、繊細な青年がいる。
実に痛々しく、哀しい…。
第2話は市松の人となりを掘り下げる、痛々しい話でした。


鬼平って良い 「兇賊 鬼平犯科帳スペシャル」

久々に「鬼平犯科帳スペシャル 兇賊」を見ました。
数ある鬼平スペシャルの中でも大好きな話。
2006年2月放送って、もう10年も前になるんですね。

粂八の友人である与吉が、網切りの甚五郎に殺された。
俺のせいだと無く粂八に、平蔵はお前のせいではないと言う。
1人働きの盗賊で、未だにあげられたことがない初老の男・九平。
旅の途中、くりから峠で雨宿りをしていたあばら屋の表に、男が3人やってきた。

男たちは火付盗賊改方長谷川平蔵の暗殺の相談をしている。
九平は息を潜めていると、甚五郎たちは雨がやんで出て行く。
長谷川平蔵といえば、盗賊は震え上がる鬼の平蔵だ。
九平はえらい話を聞いてしまったと思った。

その夜、長谷川平蔵は小さな芋酒屋で酒を飲んでいた。
親父の九平の作る酒とつまみを、平蔵は大層気に入った。
九平は平蔵のことをただの浪人ではないと思った。
その品格、立ち居振る舞い。

だが平蔵は笑って、九平こそただ者ではないと言った。
お互い、素性を明かさず、ただの客として扱ってほしいと言う平蔵に九平は好感を持った。
そこに夜鷹が酒を飲みに立ち寄る。

九平が武士がいると知らせると、夜鷹は遠慮して出て行こうとする。
しかし平蔵は夜鷹を留める。
さらには寒い席で身を縮ませるように飲もうとする夜鷹を、隣に呼ぶ。
酌をする平蔵に、夜鷹は自分を人間扱いしてくれたと感謝する。

すると平蔵は、夜鷹は人間ではないか。
自分も人間。
ここの酒屋の親父も人間。
人間扱いするのは当たり前と言う。

平蔵が去る時、夜鷹は深くお辞儀をして見送る。
九平もみやげを持たせて、送る。
夜鷹は言う。

罵倒や軽蔑には慣れている。
やり返して、場合によっては取っ組み合いのケンカもする。
だがああされたら、どうにもできない。
そこに数名の浪人が来て、平蔵の後を追っていった。

心配した九平が走ると、人々が走ってくる。
斬り合いだと聞いた九平もまた、走る。
浪人たちは平蔵を闇討ちにしようとしていた。
平蔵は浪人を返り討ちにすると、役宅へ戻る。

後をつけていた九平を振り返ると、ニヤリと笑って「親父、ご苦労」と声をかけた。
平蔵が入っていった屋敷を見て、九平は腰を抜かさんばかりに驚いた。
鬼の平蔵。
火付盗賊改め方、長谷川平蔵だ。

九平は1人働きをする盗賊で、未だにお縄にかかったことはなかった。
それでも平蔵の名前は知っている。
知っていて、恐れていた。
その恐れていた平蔵に、九平はすっかり魅了されてしまっていた。

しかしその翌日から、九平の店は閉まってしまった。
密偵のおまさはそのことを平蔵に告げる。
九平が耳にした話、平蔵の命を狙っていたのは兇賊・網切りの甚五郎であった。

甚五郎は押し込み先の人間を、一人残らず殺す兇賊。
だが甚五郎は平蔵が若い頃、斬った男の息子でもあった。
用意周到な罠を用意して、甚五郎は平蔵を殺そうとする。

大村という料亭の小女である少女が、野良猫の面倒を見ている。
それを九平が見つける。
この猫と少女が、後に平蔵の危機を救う。

旗本のもめ事を装った甚五郎は、平蔵を大村に呼び出す。
その前に甚五郎の手下は、大村の女中に取り入って、木戸を開けさせていた。
甚五郎たちは大村の者を皆殺しにした上で、店の者になりすまし、平蔵を待ち受けていた。

刀を預けた平蔵に、正体を明かす甚五郎。
大村の人間を皆殺しにした甚五郎に、怒りの炎を燃やす平蔵。
その頃、平蔵を罠にかけたことに気づいた九平と粂八は行方を捜す。
九平は猫の鳴き声に気づいた。

探すとそこには重傷を負った、大村の小女の少女が倒れていた。
明け方に大勢の人がやってきて、皆殺されてしまったと少女は言う。
粂八はおまさに少女の手当を頼むと、火付盗賊改方に走る。

その頃、平蔵は小刀だけで大人数の敵に立ち向かっていた。
平蔵の腕が切りつけられ、血が流れる。
間一髪、平蔵の危機に盗賊改方4人は間に合う。

九平に気づいた平蔵は、「親父、久しぶりだな」と笑う。
戸惑いながら、「ご無沙汰しております」と頭を下げる九平。
平蔵は豪快に笑った。
甚五郎たち3人は逃げ出した。

しかしくりから峠に差し掛かった時、甚五郎たちの前に現れたのは平蔵だった。
九平が甚五郎たちはここを通ることを、教えたのだった。
大村始め、押し込み先の人間を皆殺しにする甚五郎を平蔵は赦さない。
粂八、仇を取れ!

その声で、粂八が現れる。
与平の恨み!と粂八は与平が持っていた石を投げた。
甚五郎の額から、血が流れる。

うぬが殺した者の恨み、思い知れ!
平蔵は甚五郎たちを斬る。
全てが終わった時、九平もまた、平蔵の前にお縄を覚悟した。
だが平蔵は笑って、九平を見逃す。

再開した芋酒屋には、今夜もあの夜鷹が来ていた。
もう一度、会いたいねえ…。
夜鷹が言う。

お前さん、惚れなすったね。
まさか。
九平の言葉に夜鷹は、そんな恐れ多いこと、あるわけがないと言う。
ただ、もう一度会いたいだけ…。

あのお方は、いつかまた、おいでになることあるだろうか。
いつかまた、きっと、と言う九平。
「親父、ご苦労」。
九平の中の平蔵が、ニヤリと笑った。



これと「泥鰌の和助始末」「浅草御厨河岸」は、とても好きな話です。
レギュラー放送の1時間枠の時に、見ました。
これも「土壌の和助始末」も後に2時間スペシャルになりました。

1時間でまとめていた時はやはり、中身が濃かったです。
仕方が無いことですが、出演者の皆さんも若かった。
それを見ると、さすがにお年は召したと思いますが、やっぱりおもしろいですね。
1時間の時は良かったなあと思いながらも、引き込まれてしまう。

最初に出てくるのが、本田博太郎さんの与吉平ですし。
すぐに殺されてしまって、残念。
九平は小林稔侍さん。
ちょっと、窓辺太郎みたいです。

夜鷹は、若村麻由美さん。
こんな美しい夜鷹はいるだろうか。
かなり汚してはいますが、美しさは隠せない。
これは花魁だよねえ。

でも演技はさすがです。
平蔵の魅力を表すのに、この夜鷹エピソードはかなり利いてます。
酒をおごられて、しなを作って着物の襟を肩に落とし始めるところなんか、ちょっと悲しい。
この人は、こうして感謝を示すしか方法がないんだと哀れさを感じました。

「必殺からくり人」の「鳩に豆鉄砲をどうぞ」で時次郎が女郎・しぐれを身請けする時。
自由の身になれるとわかったしぐれが、全身に喜びをみなぎらせながら、帯を解こうとする。
彼女にとって、これ以上の感謝はない。
それを帯を解くことでしか、返せないのだと思った時と同じでした。

もちろん、平蔵は柔らかく断る。
それは夜鷹なんかいらないというのではなく、見返りはいらないということ。
俺はそっちの方はダメなんだという言い方が良い。

吉右衛門さんは、すごいですねえ。
鬼平の魅力を存分に感じさせる。
器の大きさとか、度量の大きさとか、いるだけで感じます。

甚五郎は大杉漣さん。
兇賊らしい冷酷さ、怖ろしさ。
手下の野尻の虎三は、徳井優さん。
最後に平蔵に追い詰められて、泥の中を這いずり回る思い切った演技。

もう一人の手下の文挟の友吉は、伊藤洋三郎さん。
大村の女中に「姐さんにはこれが似合うよ」と、かんざしを挿して籠絡する。
もちろん、ためらいもせずに殺したでありましょう。
1時間枠の時は、江幡高志さんが絶品です。

猫にご飯をやっているところを見つかった少女の、九平を見る怪訝そうな目。
用心深そうな表情も、うまかった。
助かって良かった。
おまさや五郎蔵の計らいで、どこかで猫と一緒に暮らせたと思います。

甚五郎の正体を知った時の、一瞬の平蔵の怒りの目。
罠にかかり、敵に囲まれ、刀を奪われたことを知っても、うろたえません。
小刀で畳を刺し、持ち上げて矢を防ぐ。

次々襲いかかってくる浪人、盗賊たちを斬り伏せる。
どこまでも冷静に、死地を脱しようとする。
追い詰められた時に、人間の本質が出るとしたら、これは相当なもの。

しかし多勢に無勢。
腕から流血し、絶体絶命!
こんなお頭を失うわけには行かないと、決死の火付盗賊改が馬で走る。
粂八はその後を走る。

ご苦労様です。
蟹江敬三さんは、この後、甚五郎に石を投げる見せ場がある。
いや、甚五郎を刺すのかと思いましたが。

最後、再び若村さんの夜鷹が出てくる。
もう一度会いたいの言葉と目が、切ない。
口では否定しても、惚れ抜いてしまったことがわかる。
10年前に見た時もこの作品は良かったけど、やっぱり良かった。

レギュラー放送では、第1シリーズで放送されました。
「泥鰌の和助始末」「浅草御厨河岸」も第1シリーズ。
やっぱりすごい第1シリーズ。
「泥鰌の和助始末」も「浅草御厨河岸」も2時間スペシャルになりました。

和助は2時間スペシャルの石橋蓮司さんも良いけど、財津一郎さんが良い。
「浅草御厨河岸」は、本田博太郎さんが良い。
直次郎みたいで、最後に明るく去って行く姿が微笑ましい。
本田さんは2時間スペシャルの「見張りの糸」では、中村嘉葎雄さんと笑っちゃう名コンビぶりを発揮。

2時間スペシャルの田辺誠一さんも、なかなか良いですけどね。
こちらはだいぶ、違うアレンジがされていたと思います。
「兇賊」の九平は米倉斉加年が素晴らしかった。
網切の甚五郎の青木義朗さんもさすが。

旧作では、今はいらっしゃらない、あまり出演されなくなった俳優さんたちの生き生きとした姿が見られました。
でも今回、2時間スペシャルで同じようなことが起きました。
この前、ファイナルを迎えた鬼平。
時間の経過を思い、それに負けない素晴らしい存在感を持つ俳優さんたちを思いました。


嘘の戦争

来年のドラマの話って、「バイプレーヤーズ」以外、知らなかったんですが、詳しく知りました。
草なぎ剛さんの主演ドラマもあるんですね。
「嘘の戦争」。

おお、「銭の戦争」がありましたもんね。
順風満帆だと思われた青年がある日を境に、地獄に叩き込まれ、そこから這い上がり、自分を陥れた者へ報復する話。
プライドと現実がせめぎあう表情など、第1回から見所がありました。
「ああ~、葛藤しているなぁ~」と思いましたよ。

今度のドラマは、復讐シリーズ第2弾だそうです。
しかもストーリーが興味深い。
草なぎさん演じる主人公は、幼い頃に殺人事件で家族を失った青年だそうです。

これ、「スペシャリスト」前に「未解決事件」のナビゲーターをやっていた経験が生かされるんじゃないでしょうか。
あの時、未解決事件の前に時間が止まったままの被害者関係者に、うまい言葉が見つからない…と言った表情でした。
何と言えば良いのか。
いや、何も言葉は見つからないという、胸の詰まったような様子がうかがえました。

犯罪被害者の主人公は、今では嘘のうまい天才的詐欺師。
真犯人を捜し出し、復讐を遂げる。
名前を変え、偽の経歴を手に入れる。

…うわ、好きな展開!
もともと、こういう「仕置人」テイストは大好きですから。
これは目が離せなくなりそう。

草なぎさんのドラマは、ストーリーがおもしろい。
私が好きなタイプのドラマが多いのでしょうか。
ドラマから入って、それで草なぎさんに興味を持ちましたから。
草なぎさんの主演ドラマの主人公は、表現力が要求されるものが多いと思います。

個人的に「この人は何なの?」という不気味な存在感を示す、超ベテラン俳優さんもいるといいなあ。
草なぎさん、ダークな面も、傷ついた繊細な面も見せてください。
複雑な心模様の表現に、期待してますよ!