ご気分、よろしいですか 「必殺仕事人V 激闘編」第28話

第28話、「何でも屋の加代、求婚される」。


夏も近いある日、風鈴を売って歩く加代は、様子がおかしい男に行く手を遮られる。
子犬を抱いたまだ少年の面影が残るような若い男が、男から加代をかばってくれる。
騒動の最中、見回りの主水に行き当たった為、男を追い払うことが出来た。
「そこまで飲むこたあ、ねえだろ」と主水が言う程、男は酔っているように見えた。

野良の子犬を抱いた若い男は真吉といって、加代を食事に誘って、車を引いてくれた。
その後があると思っていた真吉だが、加代は男を引っぱたいて車を引いて去る。
加代の様子に真吉は、本気で惹かれてしまったようだった。

主水は死体が見つかったと呼ばれたが、その死体は先ほど加代ともめた男だった。
小間物問屋の紅屋の弥七で、アヘン中毒を疑った主水は医師の矢沢玄斉に診てもらう。
だが、玄斉はアヘン中毒ではないと言う。

加代に本気になった真吉は、竜のところで組紐を買って加代の元へ行こうとしていた。
昨日、弥七が真吉ともめたのを見ていた主水は真吉を呼び止めるが、そこに和泉堂から迎えが来る。
宿などないと言った真吉だが、実は紙問屋の和泉堂の若旦那だったのだ。

真吉を送って行った主水は、昨日、紅屋の主人ともめていたことを話し、それを聞いた母親のお甲は顔色を帰る。
紅屋と和泉堂は知り合いだったのだ。
だが、主人の甚兵衛は主水にもっと話を聞こうと思ったお甲をたしなめる。

真吉が加代を訪ねた時、加代は政と一緒にいた。
政に食事はしていかないかと聞くが、政は出て行く。
真吉が食べると言って、加代に組紐を渡すが、加代は相手にしない。
しかし、真吉が抱いている子犬が食べるのを見て、思わず加代も微笑んでしまう。

加代は風鈴売りに出た途中、神社の境内で2人の男に脅される。
体なら諦めるが命は助けてと口走る加代は、人を見つけて逃げる。
助けを求めた男は甚兵衛で、2人の男は番頭の伊十と、手代の丈八だった。
甚兵衛は加代に名乗ると、真吉に近寄らないように忠告する。

真吉とあわよくば一緒になって、和泉堂に入り込む魂胆か、と甚兵衛は言った。
加代は、付きまとっているのは真吉の方だと言った。
だが伊十に顔に匕首の刃を突きつけられ、もう真吉には会わないと叫ぶ。
それを聞いた甚兵衛は、お前は真吉が好きになりそうな女だと言う。

さらに意外なことに金を出して、真吉と付き合うのは勝手だが、和泉堂の嫁にはできない。
この金で一緒に江戸を出ろと言った。
大事な息子ではなかったのか、と加代が言うと、いいから江戸を出ろと言って3人は引き上げていく。
金を見つめていぶかしげな加代が振り返ると、加代の車を壱が引いてやってくる。

「壱!」
「驚いたね、無理やりせがれを駆け落ちさせようなんて、変わった親だよ」。
「あんた、見てたの」。
「うん。端っから」。

「ばか!どうして助けてくれないのよ!この薄情もん!」
「ほれ、姐さんの綺麗な顔を傷つけちゃいけないと思ってよ」。
「何て男なんだい!いいよ、いいよ。命は取り留めたし、大金は入ったし」。
加代はじっと金を見つめる。

壱は車から離れながら、「じゃあ、少しまわしてくれよ」と手を出す。
加代は壱の手を叩いて、「ふん!どいて!」と車に戻る。
「そんなに喜んでいいのかよ。おめえさん、駆け落ちしなきゃいけねんだよ。江戸に居たら、殺されちまうんだよ」。
ハッとした加代は「どうしよう…」と言う。

その頃、主水は和泉堂について調べていた。
和泉堂の先代の主人で、お甲の夫であり、真吉の父は数年前、急死していた。
養生所の玄斉によって心臓発作と診断されていたが、なぜ玄斉が出てくるのか、主水は疑問に思う。

後家になったお甲と番頭だった甚兵衛が、一緒になったのだ。
だから加代を利用して真吉を追い払えば、身代は真吉に譲らなくていいのだ。
主水は、加代にそれを告げた。

和泉堂では甚兵衛がお甲に、加代はどうしようもない女で、金をやって追い払ったから安心していいと言った。
本当は真吉を心配してくれていたのだ、とお甲は甚兵衛に礼を言う。
その時、和泉堂に女が駆け込んできて、アヘンをまけてくれと頼み込む。
番頭はとぼけるが、女はお前たちがアヘンの売人なのは知っていると言って2部差し出す。

甚兵衛が出て来て、アヘンは1両と言う。
どんどん値を吊り上げて…と女が言い、店先でもめ出した。
アヘンをくれないなら、出るところに出てやると女は言って飛び出す。
夜道で女は玄斉にいきなり、刺される。

追ってきた伊十たちを見て、不用意な事態を玄斉は責める。
だが、奥に見えた壱を見て逃げ出す。
壱はとっさに伊十たちを追い、倒れた女のところに戻って来る。
女は完全に息絶えていた。

翌日、甚兵衛は玄斉の養生所を訪ね、夕べのことを報告する。
玄斉はアヘンを製造し、甚兵衛がそれを流していたのだ。
その頃、お甲が加代を訪ねて来た。
駆け落ちもそんなに簡単にはできない、と加代は言う。

加代の言葉に驚いたお甲は、加代と話をする。
甚兵衛に駆け落ちを勧められたと知ったお甲は、加代に気にしないように言った。
ちょうどその時、真吉がやってきた。

母親と話すのを拒否する真吉に加代は、「聞きなさい」と諭す。
年上の貧乏ったしい女と付き合うな、と言うんだろうと言われ、加代は顔を伏せた。
立ち上がったお甲に真吉は、本気で加代が好きだと言う。
「わかったら帰って、あんたの亭主にも聞かせてやれよ」と真吉が言った時だった。

「こら!母親に対して、何て口の利き方すんのよ!」
真吉は飛び出して行ってしまった。
お甲は言った。
「真吉は本当は心の優しい子なんです。あんな風になったのは、みんな私のせいなんです」。

お甲は5年前、主人にしなれて、今の夫と一緒になったと加代に話す。
それが真吉には気に入らなかったのだろう、と。
ずっと後家を通せばよかったのかもしれない。

「奥様、そんなことおっしゃらないで、元気出してくださいよ。そのうち、あの子もわかってくれますよ」。
加代の思いやり深い言葉に、お甲は「ありがとう」と言った。
そして、「加代さん、お願いがあります」と言う。

真吉が加代が好きなのを知ったお甲は、加代さえ良ければ一緒になってやってくれと頼む。
和泉堂の嫁として、お甲は加代を迎えたいと言う。
それを聞いた加代は、その夜、屋台で飲んでいる真吉を探し出した。

お甲だって女性だ、女性の幸せを求めて亭主を求めたって悪い事はないじゃないか、と加代は言う。
先代の主人にしなれて、意気消沈していたお甲に甚兵衛が近づいた。
仏壇の前でお甲が押し倒されるのを、真吉は庭から見ていたのだった。

翌朝、お甲は加代に会ったことを甚兵衛に話した。
真吉は和泉堂の跡取り、加代と一緒にさせてこの店を継がせるとお甲はきっぱり言い渡した。
すると、甚兵衛はもうお甲も真吉もいらないと豹変する。

5年前から、2人にはいつ消えてもらおうか考えていた。
世間ももう、疑わないだろう。
そう言うと、甚兵衛はお甲の首を絞めた。

加代は酔っ払った真吉を担ぎながら歩くと、真吉は加代に一緒になってほしいと頼む。
「そうはいかないのよ…、お前さん」。
加代が呼ぶと、壱が現れる。
壱の背中に加代が回る。

「あたしのいい人」。
真吉が息を呑む。
「俺の女に、手を出すんじゃねえ」。

「こんの野郎」と壱に飛びかかった真吉だが、壱に殴り飛ばされてしまう。
「わかったかい?つきまとうんじゃないよ」。
そう言って子犬を真吉に返した加代の手を、壱が引いて去っていく。

倒れている真吉を見つけた丈八が、お甲が倒れたと知らせに走ってくる。
真吉は急いで、和泉堂へ向かう。
それを見た壱と加代が、出てくる。

「これでいいのさ…」。
加代の前に、壱が手を出す。
「はい、ご苦労さん」と加代が財布から金を出して、手に乗せる。
「ほい」と壱が首をかしげる。

だが、壱は真吉がいなくなった方を見て、動かない。
振り返った加代に「俺、ちょっと気になるわ。行ってくらあ」と真吉の後を追う。
丈八に連れられた真吉は、家に帰る道が違うと立ち止まった。

「お前の帰る家は、もうねえんだ」という声がして、甚兵衛が現れる。
「それはどういう意味でえ」。
「お甲はもう、いねえよ」。

「あの世へ行っちまった」。
「まさか。お前が…」。
「5年前も、お前のおとっつあんをわしが…」。

甚兵衛は5年前の主人殺しも告白する。
「てめえ!」
子犬を放り出した真吉は、「殺してやる」と飛び掛る。
もめている足元で、子犬が吠える。

だが真吉は甚兵衛に刺されてしまう。
子犬がかなしそうな声をあげる。
壱が走ってくる。
誰もいないと思ったが、子犬が鳴く声が聞こえる。

壱が子犬に気づき、抱き上げた時、「いてえよ」と這っている真吉に気づく。
「しっかりしろ!」と壱が駆け寄る。
真吉は「殺してやる、殺してやる」と壱の胸倉を懸命につかむ。

「死ぬんじゃねえ、この野郎!」と壱が抱きかかえる。
しかし、真吉の手は力なく、垂れ下がってしまった。
「ついてねえなあ、おい…」。
壱が顔をしかめる。

翌日、加代は真吉が抱いていた子犬に、貰った組紐をかけてやっていた。
「坊や、悪い気はしなかったよ。あたしだって女だからね」。
「掟どおり、闇の会通さなきゃならねえぜ」と主水が言う。

「あたしだってね、甚兵衛から貰ったお金、ネコババする気ないよ」。
「金にゃあ、縁がねえ女だなあ」。
闇の会が開かれる。

相手は、玄斉、甚兵衛、番頭・伊十、手代・丈八。
仕事料は20両。
依頼人の面通しには、組紐をかんでいる子犬がいた。
驚く闇の会の仕事人たちを前に、「お引き受けします」と加代が言う。

加代は仕事人たちに仕事料を配って歩く。
帰り道、路地から手が差し出される。
壱を見た加代は「こんにちは、いいお天気ですねえ」と言って小走りに去って行こうとする。

「おい、おい。そりゃ、ねえだろ」。
壱は加代を路地に引っ張る。
「死に水取ったのは、俺なんだよ」。
そう言って懐から手を出した壱に、加代は金を渡すと「あーあ、またからっけつだ」と言った。

和泉堂で、玄斉が甚兵衛とアヘンの売り上げを分けていた。
伊十と丈八に見送られて、玄斉が帰って行く。
向かいの屋根の上に、竜がいる。

玄斉が帰り、伊十が中に入った時、竜が狙いを定めて紐を投げ、丈八の首をとらえる。
丈八が引きずられていくのを、入りかけた伊十が見る。
政が走ってくる。

丈八が政の前を、竜に引っ張られていく。
走りながら、政が手槍を組む。
丈八を追って外に出た伊十が振り向くと、政がジャンプする。

一撃で伊十の胸元に、手槍を叩き込む。
伊十が倒れる。
向かいの壁では、宙吊りになった丈八の首ががくりと下がる。

和泉堂では上機嫌の甚兵衛が、廊下を歩き、厠に入る。
壱が廊下を歩き、手水に手を浸す。
厠の窓の外に立ち、「ご気分、よろしいですか」と聞く。
「…お前は。誰だ」。

「ちょいと用事がありましてね。町の噂」。
甚兵衛は逃げる。
それを見た壱が戸の前に走る。
戸を開けた甚兵衛の前に、手をかざした壱が立っている。

正面から甚兵衛の首をつかむ。
グキッという音がする。
壱はそのまま、甚兵衛を厠に突き飛ばす。

夜道を歩く玄斉を、「先生ー!ちょっと来てください!」と捕まえる。
「夜間の往診は…」とあわてる玄斉を、加代は引っ張っていく。
町外れの塀で、男がうずくまっていた。
加代が「診てやってください」と叫ぶ。

しかたなく玄斉が近寄る。
すると、男ではなく、かかしだった。
驚く玄斉に「アヘンが切れて苦しんでるんだ。恵んでやんなよ、玄斉先生」という声が響く。

思わず、玄斉が刀に手をやる。
側にある、横倒しになっている大きな樽から、主水が出てくる。
「お前はいつかの町方の…」。
斬りかかってくる玄斉を抑え、主水が腹を刺す。

仕事を終えて戻った主水を、りつが迎える。
風呂にするか、食事にするかと、聞かれた主水は食事にした。
隣の部屋では、せんが寝ている。

ご飯を茶碗からかき込む主水に、りつが「あなた、もっとゆっくり」と言う。
すると主水は、ゆっくりゆっくり食べ始める。
突然、せんが「ムコ殿!さっさと召し上がれ!何時だと思ってらっしゃるんですか!」とうるさそうに布団をかぶる。

しかたなく、再び茶碗からご飯をかき込みだす主水の横で、りつがうとうと寝始める。
主水がりつをじっと見つめる。
りつの首ががくり、と下がり、主水は1人、急いでご飯をかき込む。



久々の激闘編です。
加代が若い男性に、求婚されるお話。
結構、いや、この真吉、すごく本気。
加代ちゃん、何度か若い男性に求愛されますよね。

あのたくましさが、いいんでしょうか。
綺麗だし。
根性も悪い、性悪じゃないし。

順之助も加代がしっかり、担当してましたよね。
一人ぼっちで生きてきた仕事人らしく、真吉のお甲に対する態度をたしなめる。
加代のこういうところが、好き。

お甲は加代の本質を見抜いて、加代を正式に嫁にすると言い出す。
ところが、お甲も、真吉も殺されてしまう。
主水じゃないけど、加代はつくづく、玉の輿に乗りかけては縁がなくなるんですね。

真吉は当時、人気だった若手タレントの新田純一さん。
友達がファンでした。
最期がすごくかわいそうで、無念そうで。
いつも子犬を抱いているところから、優しい子なんだなとわかります。

この連れている野良犬ちゃんが、すごーくかわいい。
ちゃんと吠えて、その後、寂しそうに立ち尽くして演技してました。
あのぐらいの子犬があんな風に立ち尽くしていると、かわいそうでたまらない。

悪党に蹴っ飛ばされたりしないかと、ドキドキしました。
加代にプレゼントの組紐をかけられて、最後に頼み人になってました。
それだけしてくれるんだから、あの子、加代が手伝って、どこかに引き取られたんだと思ってます。

政と竜は、ほとんど関わりません。
それでも政は、加代が魚を焼くのを手伝って、それで加代がご飯食べていけばなんて言ってます。
この2人は、お姉さんと弟みたいなんでしょうか。

それで今回も加代と一緒になって出てくるのが、壱。
順ちゃんより、加代といいコンビな気がします。
連れ込まれた加代が助けてくれなかったと怒ってますが、いざという時は出て来てくれたはず。
加代の男の振りをして、真吉を追い払う時に大人の余裕を感じさせます。

真吉を追い払った後、加代以上にしっかりしていて、ちゃんと報酬を要求してますけど。
しかし、先日、和泉堂絡みで女が殺されたのを見ているし、仕事人の勘が働くのか、真吉に不穏なものを感じて戻っていく。
「死ぬんじゃねえ、この野郎!」というのが、壱らしい激励。

「ついてねえなあ」は、自分が関わった青年を助けられなかった、やりきれなさから出た言葉だと思います。
甚兵衛に話しかけるかる~い感じが皮肉に響く、「ご気分、よろしいですか」。
お金で動いているようでいて、青年を殺した甚兵衛に対して、怒りが感じられました。
分け前とかは口実で、きっと真吉の恨みを晴らしてやりたかったんですよね。

玄斉を刺した後、家でお腹空いたとご飯食べる主水って、考えたらすごい。
せんに叱られて、ものすごくゆっくりになるところがおかしい。
怒られてまた急いで、りつが見てなくて、何だかヤケになって食べているのがまた、おかしい。
中村家は、主水が血なまぐさい世界から戻ってくるのに必要なんですね。


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『嘘はいけないよ』 「嘘の戦争」第3話

第3回。


仁科の娘、楓と着実に距離を縮め、恋愛を仕掛けていく浩一。
六反田弁護士が破滅したことを知った仁科興三と次男の隆は、30年前に生き残った千葉陽一だと確信する。
30年前の事件がお手も沙汰になれば、今の仁科コーポレーションにたえるたいかはない。
次の標的は、30年前の事件の担当刑事、三輪だ。

浩一は爆弾騒ぎを仕掛け、未然に防いだ三輪刑事をヒーローに仕立てる。
ハルカは三輪の近辺を探ったが、「どうなってんの、あの刑事」と浩一に言う。
とにかく、悪い評判がない。
つけいる隙はない。

だが浩一は言う。
「傷のない人生なんて、ない」。
だからこうして、三輪が住んでいた昔の家の近所を聞いて回っている。

その時、浩一が公園にある木に目を留めた。
浩一の足も止まる。
「昔、住んでた。俺もこの街に」。

子供の頃の浩一が、弟と一緒に走って行く。
木の周りで、はしゃぐ2人。
楽しかった。

思い出の中の父親が言う。
『お父さん、嘘は嫌いだ』。
『だから陽一にも、嘘だけはつかないでほしい』。

『うん、約束する』。
父親は微笑んだ。
『良い子だ!』

事件の後、ベッドに横たわっている浩一。
必死に、父親を黒づくめの男たちが押さえつけていたと訴える。
しかし、三輪刑事は鋭い口調で行為地に言った。

『嘘はいけないよ、陽一君!』
陽一はついに屈した。
『お父さんです…』。

母親を刺し、弟を刺したのは父親だと言わされた。
無力な、子供の浩一。
目から一筋の涙が伝って流れる。

思い出した浩一は言う。
「一番、憎いかもな」。
「え?」とハルカが聞き返す。

「あいつが9歳の僕に、心中だと嘘の証言をさせた」。
「直接、破滅させたい」。
「惨めに、泣き叫ぶ姿をこの目で見たい」。

浩一の目が憎悪に燃えている。
「清廉潔白なわけはない」。
「絶対につけいる隙がある!」

浩一が、三輪家の墓を見ている。
墓に、「沙織 昭和63年 享年1歳」と刻まれていた。
「使えるな、これ」。

三輪の子供だろう。
わずか1歳で亡くなっている。
「今度はあんたが地獄を見る番だ、刑事さん」。

五十嵐、六反田と破滅させられたのを見て、仁科興三も隆も気づいた。
千葉陽一ではないか。
30年前の復讐なのではないか。

だが千葉陽一は、オーストラリアで農業をしている。
なのだが、今度は三輪に子供の盗撮の疑いが持ち上がった。
事件の関係者が次々、破滅させられているのだ。

浩一は、三輪に接近をはかる。
ハルカと夫婦げんかを演じて見せた。
去って行く妻を、力尽くで留めようとして、浩一は三輪に押さえられた。

「沙織は私が引き取るわ!」
ハルカが叫んで去って行く。
利用するのは、三輪の亡くなった子供・沙織だ。

三輪は、浩一には三輪の娘とと同じ名前の、しかも同じ年齢の娘がいることを知った。
そして、失業した浩一は娘と離れて暮らさなくてはならない。
三輪はこの話に、同情した。

浩一はさらに巧みに、三輪の心に入り込んでいく。
そこに、三輪の盗撮疑惑が起きた。
爆弾騒ぎで持ち上げられただけに、落ちる穴は深い。

三輪刑事を仁科隆が訪ねてくる。
「お話ししたいことが」と隆が切り出すと三輪刑事は、「帰ってくれ!」と激しい拒絶をする。
「今回の騒動に関係があること」と隆は言うが、三輪は「仁科家とは、もう二度と関わりたくない」と言う。
深い苦悩の影。

「わかりました。いずれまた改めて」と言った隆は、玄関に三輪のものではない靴があるのに気づく。
外に出た隆に秘書が話しかけるが、隆は「一瞬、一ノ瀬が来ているかと思った」と言う。
だが、「一ノ瀬は薄汚れた靴を履く男じゃない。人違いだ」と言った。

ハルカは浩一とのなれそめを、百田に語っていた。
最初、ハルカは浩一に騙されたのだ。
騙されたとわかったハルカは、タイ中のホテルを探した。
見つけた浩一に「騙した」と詰め寄った。

だが浩一は、この程度のことで警察は動かないと笑った。
去って行く浩一の背中に、ハルカは叫んだ。
「警察なんてどうでもいい!お金も返さなくていい!」
浩一は「お前、詐欺師になりたいの?やめとけよ」とバカにした。

「父は投資話で騙された。母は何度も男に騙された」。
「人の身の上話に、興味ないよ」。
事実、浩一は何の興味もなさそうに去って行くところだった。

「嫌なの。私!」
ハルカは叫んだ。
「騙される人生なんて!」
「そっちに連れて行って私を」。

「騙す側の人生に」。
その時、浩一は振り向いた。
振り向いて、ふっと笑った。

「今は相棒。この関係がベストで、変えるつもりはない」。
ハルカは言った。
自分に言い聞かせるようだった。

どんどん、追い詰められていく三輪。
三輪に罪をかぶせた男を追うのに、浩一も協力を申し出る。
だが三輪の背中に浩一が浴びせる視線は、憎しみそのもの。

ふと、三輪がつぶやく。
「私も昔罪を犯したことがある」。
「それは…?」

浩一が三輪を、じっと見つめる。
「捜査上のことだ。捜査を妨害して、証拠を隠蔽した」。
「これはその報いなのかもしれないな」。

浩一が、三輪を凝視している。
瞳孔が細くなる。
残酷な視線。

「そろそろ、仕事に行かないと」。
三輪の言葉に、浩一がはっとする。
憎しみの視線を消す。

三輪刑事を陥れたのは、三輪が逮捕した男であると考えた。
最近、この犯人が出所してきている。
夜の街を三輪に付き合って歩く浩一が「1日も早く犯人を見つけて、報いを受けさせないと」と言う。

「報い?」
「俺、子供の頃、ひどい嘘をついたことがあるんです」。
「絶対についちゃいけない嘘だった」。

「今、妻子に逃げられて一人なのは、あの時の報いなんじゃないかなーって、時々思うんですよね」。
「どんな嘘を?失礼ですが」。
聞きかけた三輪は、でも「いや、良い」と否定した。
「言いたくないことも、あるよな」。

「ですよね」。
「報いかあ」と、三輪が繰り返す。
何かを思い出しているように見える。

盗撮騒ぎのとどめに、ハルカが三輪に盗撮されたと騒ぐ。
ハルカを見た三輪は、浩一の妻のはずだと驚いた。
なぜ、なぜハルカが自分にそんなことをするのだ。

盗撮を否定する三輪に警備員が詰め寄る。
「嘘はいけないよあんた」。
その口調には、覚えがあった。

『嘘はいけないよ、陽一君』。
30年前、自分が陽一という少年に言ったのだ。
三輪が走る。

手すりから1階を見下ろす。
好奇の目を向ける人々がいた。
三輪は探す。
浩一を。

柱の影に、浩一がいた。
こっちを見ている。
その目。
『ひどい嘘をついたことがある』。

浩一の言葉がよみがえる。
「まさか」。
三輪が愕然とする。

憎しみの視線で、三輪を見る浩一。
三輪の破滅を見た浩一の目からは、一筋の涙が流れる。
あの時と同じように。

涙を流す、子供の陽一。
「お父さんです」。
家族を刺したのは、父親だと言わざるを得なかった陽一。

浩一は憎悪の目で、三輪を見つめる。
「あの時の…!」と三輪は浩一があの時の子供だと、気がついた。
浩一の目に、憎しみの炎が燃えている。
涙が流れる。

隆は三輪刑事を呼び、浩一と対面させる方法に出た。
楓も呼んでいた。
三輪刑事の前に、浩一がやってくる。

浩一は無表情だ。
三輪が浩一を見つめて言う。
「長年刑事の仕事をしてきた。人の顔は忘れない」。
「たとえ服装を変え、名を変えようとも」。

「ではやはり」。
隆が確信した。
だがその時。

「いや、違う」。
隆が驚く。
「この人には会ったこともない」。
「この人とは今、初めて会った」。

「なぜそんな!あなたがこんな騒動に巻き込まれたのは、全てこの男の嘘のせいなんじゃないですか!」
「いや。この騒動は、私自身が招いたことだ」。
隆は驚いた。

「認めるんですか、盗撮を!」
「やっていない」。
三輪はキッパリ言った。

「報いだ」。
「過去に犯した罪の」。
三輪は語り始めた。

「娘の沙織は生まれながら心臓に問題があって、心臓移植しか選択肢がなかった」。
「ある人がアメリカで移植できるように手配してくれることがあって、私はそのために罪を犯して」。
「結局、手術は間に合わなくてな、沙織はたった1歳で…」。
「私は罪を犯した。取り返しのつかない罪を」。

「だからこれは、報いなんだよ」。
そして三輪は浩一の方を向くと「悪かったね。人違いで呼び出されて」と言った。
「いえ」。
浩一の目には、何の感情も浮かんでいない。

「ほんとに申し訳なかった」。
三輪はそう言うと、深々と頭を下げた。
目を閉じ、下げ続けた。
「誤解が解けて、良かったです」。

浩一は三輪の両肩に、手をかけた。
しっかり手をかけると、三輪の目を見る。
「嘘つきって言われるのが、大っ嫌いだから」。
三輪は、涙が止まらない。

浩一は隆の方を見ると「良いですか、仕事があるので」と言って出て行く。
「これで終わりだと思うな」。
隆が言う。
楓はポカンとして見ている。

慌てて浩一の後を追いかけてくる。
「ほんとにごめん」。
隆のしたことを謝り、「家族の縁なんか切りたい」と言ってしまう。

「縁を切る?」
「元々、父や兄の仕事のやり方には、納得できないことが多くて」。
「簡単に言うなよ!」

浩一の声は、鋭かった。
「会いたくても、家族の誰にも会えない。ずっと一人。誰にも頼れない」。
「それがどういうことが、わかるか。縁を切るなんて簡単に言うな」。

声にはすごみがあった。
だがすぐ浩一は明るく「ごめん。つい、妹のことを思い出しちゃって」と言った。
「たった5歳で死んじゃったけど、かわいかった」。
「だからわかる気もするんだ。隆さんの気持ち」。

時間をかけて、わかってもらうと浩一は言った。
「時間、ある?」
浩一は楓と、どんどん接近していく…。



今回は切なかった。
相手に不足なし。
存分にやってください!って感じに見えた、三輪刑事だったのに。
六平直政さんです。

公園で、弟と遊んだ木を見に行く時、浩一の靴がクローズアップされるんです。
綺麗な、高そうな靴。
三輪に近づいた浩一は、失業している男という設定だった。

だから靴も薄汚れている。
これを見て、隆は三輪の家にいる男は浩一ではないと判断したのだ。
良い演出ですね。

お墓を見た時、三輪の子供の沙織が亡くなったのが30年前。
事件が30年前。
もしかして、三輪は沙織の治療のため、仁科興三に協力したのかもと思いました。

だが刑事としてのあり方を曲げてまで守ろうとした、沙織は亡くなってしまった。
そして、三輪には、罪悪感と後悔が残っている。
一番、憎むべきはずの男が、哀しい男だとわかった時。

見ているこちらは、とても切なくなりました。
悪い奴、悪徳警官だったら良かった。
これはつらいなーと。
晃と楓の兄妹も同じく、切ない。

三輪刑事は30年前のことを、後悔している様子がうかがえました。
隆の訪問も拒絶し、二度と関わりたくないと言っている。
陽一を傷つけ、陽一の父親に罪をなすりつけた。
どんなに後悔してももう、それを正すことも、できない。

忘れたくて、後悔して、善人として生きてきたんでしょうね。
誰も三輪を悪く言わないわけですから。
子供の空手教室を指導しながら、どんなことを思っていたのか。
奥さんもわかっているのだろうか。

今回、草なぎさんの表情の変化がすごいです。
木を見ている時、「もしかしたら一番憎いかもしれない」と言った時。
全身から憎しみが漂っている。

1歳で亡くなった子供の名前を利用しようと考えたとき。
浩一の口調は軽く、罪悪感のかけらもなかった。
三輪の後ろ姿を見る目が、すごい。
抑えきれない憎しみ。

だんだん、三輪が後悔していることがわかってくる。
悪い男ではないことが、わかってくる。
破滅させたら、復讐は完了する。

だけどその本人が後悔しているとしたら。
でも、良い人になって、それで終わったわけじゃない。
思い知らせるには、自分と同じ目に遭わせるしかない。

同じ思いをさせるしかない。
自分がしたことを、されるしかない。
柱の影から三輪を見上げたと時、すごい目をしてました。
三輪が後悔しているのは、わかっている。

「でも、赦さない」。
「それでも、赦せない」。
目が、そう言っている。
そして、こんなことしなきゃいけない、自分も哀しい。

わかったから、三輪は全てを受け入れた。
隆に知らないと言い切り、浩一に頭を下げた。
深く、深く。

それに対しての浩一は無表情だった。
だったけど、三輪の肩に手を置いた。
まっすぐ、三輪の目を見た。

「あなたを憎んで生きてきました。でももう、良いです」。
そう言っているように見えました。
無言の、一瞬の表情が、そう言っていました。
三輪を見上げた時の顔と、全然違っていました。

ハルカに対して振り向いて笑った時も、その笑顔が答えでした。
浩一のハルカに対する気持ちは、戦友なんだなと思いました。
同じ、傷つけられる側から傷つける側に行きたい同士、同志なんだと。

「そっち側に行きたい」。
あの言葉が、浩一を動かしたんですね。
ハルカは自分に相棒だと言い聞かせているけど、嫉妬が抑えきれなくなってくる。
こっちもどうなっていくか、見物です。

すごく良いですね、草なぎさん。
六平さんという、個性が強い俳優さんとの絡み、すごく良かったです。
グループ解散して、それをバネに羽ばたいているように見えます。
今まではできなかったことに、どんどん挑戦していくのではないでしょうか。

今回は切なくて、どうなることかと思いました。
でも、良い決着となりました。
晃と楓、隆もそうなると良いなと思います。

楓が家族と縁を切りたいと言った時の浩一の、草なぎさんも良かった。
あれが本心なのか。
楓の気を引くためなのか。
よくわからないけど、浩一にもわからないのかもしれませんね。

この後、三輪はどうなるのでしょう。
奥さんと2人。
これまでの30年間、嘘つきと呼ばれたままの少年に対する贖罪としてどんなことも受け入れていくのでは。

心の安らぎは得られたかもしれませんね。
三輪はこれで、少しは救われたんじゃないでしょうか。
同時に、浩一も救われた。

仲の良かった晃と隆の仲違いの原因は、30年前の事件かもしれませんね。
晃がそれに関わっているかはわかりませんが、隆はそう思っているのかも。
そして晃は晃で、その処理に対して父親とそれを肯定している隆が嫌になったのかも。
次はいよいよ、政治家登場?!



火曜日は嫌い

火曜日が嫌い!という会社の同僚がいました。
月曜日は休みの時の体力がまだ、ある。
しかし火曜日にはそれも切れてしまう。
週末はまだ、遠い。

だから火曜日が嫌い!って。
わかる、自分も「まだ火曜日か~」と思いますから。
だけど「嘘の戦争」がある!

今夜だ~!…と楽しみにしてましたが、今日は予想以上でした。
六平さんとの共演、大成功ですね。
良い切なさでした!
今週は、松方さんの訃報がつらかったのでね…。






松方弘樹さん

俳優の松方弘樹さんが21日、お亡くなりになりました。
74歳。
ああああ、お亡くなりになってしまいました。
心配していました。

最近容態が良くないという話は聞いていました。
復帰してくれるんじゃないか。
大丈夫じゃないか。
どこかでそう思っていたんですね。

「十三人の刺客」ではやはり、すごいと思いました。
殺陣の切れ味がすごかった。
他の俳優さんがダメというのではなくて、別次元でした。
この方の生まれ育ちを考えれば当たり前なのかもしれませんが、すごかった。

日曜夜「天才たけしの元気が出るテレビ」に、出ていました。
なぜ?と当時は不思議でした。
時代劇、やくざ映画の大スターでしたから。

聞いた話では、この枠は最初は松方さん主演のドラマが企画されていたとか。
結局「元気が出るテレビ」になってしまったが、松方さんのスケジュールは押さえてしまっていた。
だから「元気が出るテレビ」に出演してもらったと聞きました。
これが、おもしろかった!

たけしの話に、笑いすぎて声が裏返る。
独特な畳み方したハンカチで、額の汗をぬぐう。
嘘を楽しむ妖怪や超常現象を追ったコーナーでは、本気でビックリしていました。
わざとらしさを楽しむドラマでは、本気で笑ったり義憤に燃えたり。

意外なお茶目でかわいらしい「素」の部分が見えて、大ウケしたんでした。
CMも良かったな。
こういうことをしてくれる方でした。



私生活、その関連について何かと話題になりましたが、時代劇の未来、俳優の未来を考えている人でした。
池上季実子さんのインタビューでは、男気があって面倒見が良い人だと思いました。
大スターだし、魅力的な男性だと思います。
裏方さんにも、好かれていたんじゃないかな。

時代劇に出る松方さんを、また見たかった。
寂しいな…。
残念ですよ…。
時代劇が似合う俳優さんでした。

つらかったでしょうね。
きつかったと思います。
安らかにお休みください。

楽しいドラマを、思い出をありがとうございました。
インタビューを読むと、泣けてしまう。
ご冥福をお祈りいたします。


W主演ドラマ「相方」 バイプレイヤーズ

バイプレイヤーズの第2回。
もう、もう、堪能しました。
遠藤憲一さんと松重豊さん(表記はアイウエオ順)がメインの回ですよー。

2人が主演の刑事ドラマ「相方」!
松重さんが長い、難しい言葉の羅列のセリフを、見事に、よどみなく言っていました。
ベテラン2人の演技は、やっぱりさすが。
本当に作ってくれないかなあ、「相方」!

前回も笑いましたけど、今回も笑った笑った。
右京違いとか、紅茶飲んでる方だとか。
「かぶってる」が最後までキーワードでした。

テレビ東京ってすごい、器が大きなドラマ班がいるんだなあと思いました。
これをこなす俳優さん6人がまた、器が大きいというか、懐が深いというか。
誰も、埋没していかない。
さすが。

そして、目立とうとしなくても、発揮される存在感。
人生経験から大人の余裕や渋みを、ちゃんと身につけているからできる。
もちろん、実力があってのこと。

魅力的でないはずがない。
悪役や強烈な個性を持った役が多い人たちが見せる、ゆる~い日常が良い。
みなさん、すごくかわいらしい。

寝床の近くで、すぐに眠れる用意だけはして。
でも金曜日だし、、夜中だけどエスプレッソや濃い紅茶、そして甘いものを用意して見る。
冗談ではなく、本当に至福の時間となっています。
本当はビールとか、ワインとか、お酒とおつまみを用意して見るのが渋いのかもしれませんが…、飲めないもので。
  
ドラマが終わった後、出演者全員が揃って飲んでいるコタツトークがあるんですが、これがまた楽しい。
DVD、ブルーレイ発売時には特典でこのトーク、ロングバージョンでつけてください。
絶対買いますから。


運命だったと思わせる 「嘘の戦争」第2話

第2話!

五十嵐に刺された浩一は、救急車で病院に運ばれた。
浩一の脳裏には、父親が映っていた。
「陽一、お父さんは嘘は嫌いだ。だから陽一にも嘘だけはつかないでほしい」。

子供の陽一、いや、浩一は元気に答える。
「うん、約束する」。
「良い子だ!」

目を覚ますと、病室の仁科の兄・晃と妹の楓が並んでソファで眠っていた。
「同じ格好、さすが兄妹ですね」。
浩一の声に楓が「良かった!」と言う。

そして「どうかしてます!」と怒った。
「相手がナイフ持ってるの、見てたたでしょう。あと数センチずれていたら大変なことに!」
「心配かけてすみません」と浩一は謝った。

晃は「こちらこそ、いきなりすみません」と謝った。
目覚めていきなり怒られる浩一のことを、晃は気遣った。
ほほえましい兄と妹の会話。
浩一の顔にも、微笑みが浮かぶ。

仁科興三の屋敷。
隆の妻と子供が興三に「おじいちゃん、行ってきます」と挨拶した。
興三にも笑みがこぼれる。
隆と2人になると興三は、浩一のことを「会ってすぐに自分をかばって刺されるなど、何の魂胆があるんだ」と言う。

しかも楓にまで近づいている。
「気に入らんな…」。
隆は「私に任せてください」と言った。
今は仁科コーポレーションにも大切な時なのだ。

楓は浩一の胸の傷に気づいた。
「この傷は」。
「タイで仕事をしていたときに事故って」
だが、楓はそうは思わなかった。

浩一の病室に、仁科家の顧問弁護士の六反田健次が入ってきた。
ちらりと、浩一は六反田を見る。
時計、靴、スーツ。
高級品だ。

六反田健次。
この名前に覚えがあった。
「おはよう」。

新聞を子供の陽一に渡した新聞配達の青年。
「おはようございます」。
陽一も元気に答えた。
自転車には六反田と書いた、名前のシールが貼ってあった。

六反田によると、浩一を刺した五十嵐は、仁科家とは関係のない人間だ。
意味不明のことを口走っている。
だから浩一が会長に伝えたいことがあれば、自分が伝えると言う。
見舞金が封筒で渡される。

「こんなに」。
「足りなければ言ってください」。
「では今回のことは、事故と言うことに」。

病室を出て行く六反田に浩一が「六反田さん」と言う。
「変わった名前ですね」。
六反田はふっ、と笑うと「よく言われます」と答えた。

「嘘をついちゃいけないよ陽一君」。
30年前。
目を覚ました陽一に、刑事が言っていた。
「嘘じゃない、黒い服の人たちがお父さんを」。

「君のお父さんは朝方まで生きていた!そういう証言がある」。
刑事はそう言った。
「新聞配達のお兄さんがね、君のお父さんの声を聞いているんだ」。
「ごめんって、君たちの名前を!泣き叫ぶ声を!」

「新聞配達のお兄さん」。
「お父さんが一家心中を図ったことはわかっているんだよ。だからもう、嘘はやめなさい!」
30年前の陽一だった、浩一。

無力な、幼い子供だった。
抵抗する力も、方法もなかった。
涙が流れる。

「30年前、嘘の証言をしていた人間が見つかった」。
浩一の言葉にハルカが「はあ?」と言う。
「そいつは新聞配達のの苦学生から弁護士に大出世」。
「時計、靴、スーツ高いものばっかり身につけている」。

「30年前の嘘の見返りだ」。
「何の話?」
ハルカが眉をひそめる。

「あいつなら30年前の真相を知ってるかもしれない」。
「ねえ、どういうこと?その弁護士が次の標的ってこと?」
「そう、次の標的はあの弁護士だ」。

仁科コーポレーションの会議室。
隆が「時間がない。銀行は成功の確約のない開発プロジェクトに融資はできないそうだ」と言っている。
技術者が「あと半年」と言う。
だが隆は「2ヶ月だ!」と言った。

このプロジェクトが、仁科コーポレーションの命運を握っている。
表に出ると、晃がいた。
「大事な会議だよな、俺、呼ばれてないんだけど」。
「兄さんには関係ない」。

「はあ?俺も一応役員だよな。仁科コーポレーションの力になりたいと、俺なりにいろいろ考えているんだ」。
「何もしてくれないのが一番だ」。
隆の足が止まる。

「今は、問題を起こさずにいてくれればそれでいい」。
そう言われた晃の顔がゆがむ。
隆が去って行く。

浩一は、六反田の記事を読んでいた。
父親は酒ばかり飲んでいた。
母親は駆け落ち。
苦学生で新聞配達をして学費を稼いだ。

「それが30年前、突然パトロンが現れた」。
「その10年後に、仁科コーポレーションの顧問弁護士だ」。
「間違いない。あいつだ」。
新聞を配達していた少年。

浩一の病室に、八尋カズキが社員としてやってきた。
社会人として振る舞えと言ったのに、カズキは非常識な振る舞いをしてしまう。
楓にうまくごまかした浩一は、ため息をつく。

どんな職業にもなりすませるようにしろ。
「人を騙したきゃ賢くなれ」。
浩一はカズキに言う。
「詐欺師に必要なのは、幅広い知識と教養だ」。

浩一は、六反田に罠を仕掛ける。
ダイヤモンド鉱山開発出資金被害者の会が、開かれていた。
この担当弁護士が、六反田だった。

その中に、ハルカがいた。
六反田の助手の若い新米弁護士に、ハルカはにっこりと笑いかける。
新米弁護士がハルカに、一目で魅了されたのがわかった。

面会時間も終わった夜、隆が浩一を見舞いにやってきた。
「傷が軽くて何よりです」。
「悪運強くて」。

そう言った浩一に隆は「あの程度のナイフなら、運が悪くない限り大けがにはならない」と言い放った。
楓が「そんなことありません!」と言う。
隆は浩一が晃と、そして楓と知り合った経緯を問い詰めた。

「偶然?」
「助かりました、楓先生に治療していただけて」。
隆は浩一の会社のビルにも行っていた。
だが世界を股にかける会社のビルにしてはずいぶん、質素だった。

楓は帰国してすぐだからというが、帰国してすぐなのに晃とも楓とも縁がつながりすぎる。
「いいかげんにしてよ!」と楓が怒って、隆を帰した。
「人を疑うしかできないの、ほんと、変わったね」。

「晃兄さんのことも、仁科コーポレーションから追い出したいって本当みたいだね、がっかりだよ」。
「逆だ!追い出したくないから警戒している」。
隆が言うには、兄がこれ以上失敗したら、かばえない。

今は、会社が厳しい時なのだ。
「厳しいって…、うまくいってないの」。
隆は「一ノ瀬には気をつけろ」と言って歩いて行く。

だが楓も晃に「一ノ瀬さん、嘘ついてる」と打ち明けていた。
浩一の胸の傷。
タイで仕事しているときについた傷だと言うが、もっと古い傷だ。

「そりゃお前、話したくないこともあるんだろう」。
晃が言う。
「そういうのは、嘘と言わないの」。
「誰だってあるって。簡単に言えないことが一つぐらい」。

浩一が百田ユウジの経営するバーにいた。
カズキが、浩一の傷だが、もう少しずれていたら大変なことになっていたと言う。
だが浩一は「たまたま、ずれたんじゃない。内臓の位置がわかってるから刺される瞬間、致命傷を避けたんだ」と言った。

それを聞いたカズキは、仰天した。
浩一は、隆の言葉を思い出していた。
「あのナイフなら大けがにはならない、か。まさか見抜かれるなんて」。

ハルカは「30年前の話って何」と聞いた。
「言ったろう、俺の家族、殺されたって」。
「だから、嘘じゃなくてさ、本当のことが聞きたいの!」

「俺も聞きたいねえ。なんで仁科家に狙いを定めたのか」と百田も言う。
ハルカは、あの新米弁護士が六反田はとにかくケチだと言っていたと教える。
「自分は高いものばっかり身につけている癖に」と浩一が言う。

ダイヤモンド鉱山の詐欺事件は、着手金として1人5万円が必要だった。
全国に何千人という被害者がいる。
1000人から集めれば、5千万。
良いビジネスだ。

百田が「そのダイヤ詐欺やってる連中、俺、知ってるぞ」と言う。
年寄りを相手にしたネズミ講をやった残党だ。
その事件は、訴訟準備をやっているうちに資産が移されて、被害者にほとんど金は戻らなかった。

六反田が担当している事件だった。
無能な弁護士だと思っていたが、違うかもしれない。
六反田と詐欺師たちは、グルってことだ。
時間稼ぎをして逃げる時間を稼ぐ。

わかば園の庭で、浩一は六反田に電話をした。
「六反田さん、赤松金融って言うんですけど。五十嵐先生の弁護、引き受けてるんですってね」。
「彼に何か」。

「貸してんだよ、金」。
「どうせ違法な利子とってるんだろ。法的な返済義務はない」。
「法的にはね。でも…、五十嵐からいざとなればあんた頼れって言われてんだ」。

「…」。
「30年前、同じ罪に荷担した仲間だから」。
六反田は、椅子から身を起こした。
「…何の話だ?」

「30年前の嘘の証言って、五十嵐先生言ってたけど」。
六反田の顔色が変わった。
「利子含めて2千万。耳そろって払ってもらえれば聞いたこと忘れるよ」。

浩一は電話を切った。
振り返ると、宮森わかばの家の園長の三瓶守が、子供たちと浩一を待っている。
笑顔の浩一。

六反田は、興三に面会に行った。
錯乱した五十嵐とは、まともな対応ができない。
五十嵐は、六反田の偽証は知らないはずだ。

だが、電話の男は、はっきりと言った。
「動揺するな。こちらで対処する。七尾、五十嵐に金を貸した連中を調べろ」。
興三は秘書に命令した。
「お前はお前の仕事をしろ」。

「オレオレ詐欺で使う手だ」。
カズキが、隆を装ったメールを六反田に送る。
一文字違いでわかるように、本当は隆ではない。

別人のアドレスなのだが、冷静さを欠いている六反田が事件の核心に迫るメールを受けたなら、アドレスなど細かく確認する余裕はない。
落ち着かない様子の六反田に、カズキが操作したメールが届く。
「30年前の偽証の軒ですが、仁科家では一切責任を持てません。」
この軒は極秘案件ですので、以後、このアドレスのみでのやりとりで願います。仁科隆」。

六反田は返信してきた。
「そちらが私を着る捨てる気なら、私にも考えがある」。
「会長との会話を録音したものがある。30年前の罪を、会長自らが語ったものだ」。

百田は「思うつぼだな。悪い奴らほど仲間割れが早い」とあざ笑う。
会話を録音したもの。
「作戦変更だ」と浩一は言った。
「そんなもんあるなら、仲間割れさせて聞き出す必要ない」。

喫茶店で、ハルカは六反田の助手の新米弁護士に、5万円払った。
「頼りにして良いんですよね?」
そう言うとハルカは、新米弁護士の隣に座った。
新米弁護士の手を取って、見つめる。

その隙に、法律事務所のパスをかすめ取る。
喫茶店を出ると、そこにやってきた浩一がハルカからパスを受け取る。
夜、浩一はそのパスを使って事務所に入る。

そこに忘れ物をした六反田が戻ってきた。
浩一はあわてて、倉庫になっている部屋に隠れる。
事務所が荒らされているのを見た六反田は、仰天した。

奥に隠れた浩一は、火災報知器に火のついた紙を近づけ、作動させた。
六反田は、カセットを持って逃げていく。
夜道を歩きながら、隆に電話をする。

「私だ。事務所を家捜しさせたのは君か」。
「何の話です?」
「とぼけるな、カセットテープを盗み出すつもりか」。

隆には、何の話かわからない。
「あれを表に出せば仁科コーポレーションはおしまいだよ」。
「先生は何をお望みですか」。
「身の安全の保障。五十嵐のように見捨てられては困るからな」。

「明日、朝10時。ヒルトンホテルのラウンジ」と六反田は待ち合わせの場所を告げた。
隆は「私の部屋に来てもらえれば」と言うが、六反田は人目のないところは信用できないと断った。
会話を、浩一が聞いていた。

六反田は、銀行の貸金庫からカセットテープを出してきた。
封筒に入れ、手にしっかり持つ。
「会社の名前入り封筒」。

浩一がハルカに教える。
道でハルカが六反田に、ダイヤモンド鉱山の詐欺事件の被害者を装って声をかけた。
「困るんです、、私!お金戻ってこないと」。

ハルカは、封筒を持つ六反田の手を握りしめる。
だが六反田から封筒を奪うことはできなかった。
六反田はタクシーを拾い、ホテルに到着した。

エレベーターに入った。
扉が閉まる直前、大勢のツアー客が入ってくる。
エレベーターは、ぎゅう詰めになった。

だが降りたときは、1人だった。
六反田は、ラウンジで隆に会った。
隆が言う。

「会長が残念がっていました。こちらで処理するつもりだったのに。まさか、あなたがこんな形で裏切るとは」。
「元はそっちが裏切ったんだ」。
2人は、カセットテープを聴き始める。

だが…。
会話ではなく、音楽が流れ始める。
六反田が、ぎょっとして取り上げる。

「すり替えられた…」。
絶望的な声だった。
「いつの間に」。
「あの時か!」

エレベーターで六反田は、痴漢に間違われた。
「バカなこと言うな!」
手を上にひねりあげられた時、封筒が落ちた。
それを添乗員らしき男が、拾って渡した。

カズキだった。
あの時だ。
「あれも君たちか!」

隆は「なぜ君は俺たちを疑いだした」と聞いた。
「それはあなたが…、隆君のメールが」。

「出したでしょ」。
「いいや」。
「ええ?!」

その時、六反田の事務所に警察が操作に入ったと秘書の四谷果歩が言いに来た。
携帯に連絡がはいっているはずだ。
六反田は、携帯の電源を切っていた。

慌ててみると、たくさん着信が来ている。
「詐欺集団と共謀」と、警察は言った。
「証拠は挙がってるんだよ」。
六反田が詐欺師の首謀者から、金を受け取っている写真があった。

「どっから情報が…」。
呆然とした六反田だが、すぐに隆に「助けてくれ!」と叫んだ。
「頼む助けてくれ」。

「詐欺集団から金を受け取ってたんですか」。
「十分な報酬は得ていたでしょう」。
「いくらあってもだめだ…。増えることで不安になるんだよ。つらさを思い出すから」。

隆は立ち上がった。
「頼むよ」。
「弁護士資格を剥奪されるでしょう。もう救えない」。

「誰かが俺を!」
「俺ははめられたんだ!」
六反田は床に膝をついた。

絶望の叫びを上げる。
ラウンジの客が、六反田を見る。
その後ろに、浩一が座っていた。

戻ってきた浩一は、テープを聴き始めた。
「仁科家の顧問弁護士を引き受けるに当たって、知っておきたいんですが」。
六反田の声だ。
相手は仁科興三だ。

「12年前。まだ若い学生たちが、ある事件を起こした」。
「若いOLを無理矢理連れ込もうとして、頭を打ったOLが死亡した」。
「バカ息子の親たちに頼まれ、私がもみ消しを」。

「転倒事故として処理するために、警察と解剖を担当した老医師に手を回した」。
「計算外だったのは、解剖に助手としてついた若い医師。千葉だ」。
「彼はOLの遺体に、抵抗の跡を複数発見。事件性があると判断し、警察に伝えようとした」。

「あらゆる手を使って千葉を説得しようとしたが、無駄だった」。
「やむを得ず、殺害しようとした夜」。
浩一の記憶。
「ただいまー」と言って、子供の陽一が帰ってきた。

「お父さん、だたいま」。
部屋の奥で、父親は口から血を流していた。
2人の黒装束の男が、父親を押さえつけていた。

「お父さん」。
男が、押さえつける…。
五十嵐の腕にあったアザが見える。
母親が部屋に入ってくる。

いきなり、男に刺された。
「お母さん」。
母親は言葉を発する間もなく、倒れた。
男は、隣の弟を刺した。

興三の声が響く。
「結局妻子を殺害した」。
「一家心中に見せかけた」。
「知っているのは、あなたと私の他に誰が」。

「大学生の親たち」。
「当塔の息子たちは、彼らの罪をもみ消すために人が死んだことは、何も知らん」。
「それと、千葉殺害を担当した三輪刑事」。

浩一の記憶がよみがえる。
「嘘をついちゃいけないよ陽一君」。
それを言っているのは、三輪刑事だった。
「お父さんです」と一家心中を認めるしかなかった陽一。

浩一は、手を握りしめた。。
「全部あなたの指示だったんですか」と言う、六反田の声。
「そうだ。私の指示だ」。

浩一の顔がゆがむ。
部屋に積んであった、段ボールを放り出す。
壁をたたく。

笑顔の家族。
浩一の小さい弟。
家族の笑顔。

浩一は手を激しく叩き続ける。
「何の騒ぎ?」とハルカがやってきた。
手を振り上げ、叩き続ける浩一を見て「浩一!やめて!」と止めに入る。

「どうしたの」。
浩一は、カセットをつかむ。
「浩一!浩一?!」

浩一は、道を歩いて行く。
橋の上にたどり着く。
日が傾き始める。
浩一は、いつまでもいつまでもそこにいる。

夜。
わかば園。
浩一は、明日の晃の野球の試合の審判のためのルールを本で読んでいる。
晃との約束だ。

わかば園に、人が訪ねてきていると三瓶が言いに来た。
ハルカだった。
「どうしてここが」。

「尾行、得意だし」。
「あのさ、もしかして、ほんと?30年前の親の敵って話」。
「俺、何度も言ったよな。本当のことだって」。

ハルカが遊具に座る。
浩一も座る。
そして、あのカセットを聴かせる。

三瓶が園の中から、見守っている。
「12年前」。
「そうだ、私の指示だ」。

「やっぱり首謀者は仁科興三だ」。
浩一は言う。
串本という奴も探し出す。

そして、あの時の刑事。
「全員に30年分の借りを返す」。
「手伝うよ、私も」。
「だからこれからは、本当のことだけ教えて。私には」。

「信じないくせに」。
ふっ、と2人が笑う。
「そうだ、会長に近づく方法があるじゃん。身内になっちゃう。ちょうど独身の娘もいることだし」とハルカが言った。
「冗談」とすぐに取り消す。

だが浩一は「なくはないなあ」と答えた。
「地獄を見せる」。
「罪を告白させ、土下座させて、必ず全てを奪う」。

翌日、野球で浩一のアドバイスで、晃はホームランを打った。
百田のバーで、ハルカは六反田と詐欺師の写真を見て「良く撮れてる」と感心する。
「俺は昔、こいつにカモを横取りされた恨みがある」と百田は言った。

ハルカが渡した、浩一からの謝礼には札束が2つ、入っていた。
百田が満足する。
ハルカの胸に不安がふと、よぎる。

夜。
浩一と楓が歩いている。
「あんな楽しそうな兄さん、久しぶりだった」。
楓が笑う。

「あのさ、この傷のこと」。
浩一が胸を押さえる。
「本当は子供の時、家族旅行中に事故で。ここに金属片が」。
「2週間意識不明で、目覚めたら助かったのは俺だけ」。

「思い出したくなくてさ。こないだはつい嘘を」。
「もういい!」
楓が遮った。

「ごめん。私こそ、変なこと聞いて」。
「何でだろう。嘘は嫌いなのに嘘ばっかり」。
「もういいから」。

「信用できるはずないよ、こんな男。隆さんじゃなくても、こんな嘘つき」。
「信じるから!」
「晃兄さん、あんな楽しそうに…。負けてばっかりの野球だって、勝てる」。
「仕事もきっとうまくいく。そした、お願い事もかなう」。

浩一が言う。
「家族が、また、ひとつに?」
楓がうなづく。
「かなうと良いね、そのお願い」。

「じゃあ」。
楓が帰ろうとする。
浩一が楓の手を取った。
楓が振り向く。

百田のバーでは、ハルカがつぶやいていた。
浩一が言っていた。
「浩一が言ってた。詐欺師は、偶然も必然だと思わせる。優秀な詐欺師は、これが運命だったと思わせる」。
浩一と楓の、唇が重なった…。



浩一の父親、そして浩一を除く家族が殺された理由。
早くも明らかになりました。
テンポ速くて、良いですね。
余計な引き延ばしがない。

浩一が目覚めた病室にいた晃と楓。
2人が並んで寝ているのが微笑ましくて、思わず笑顔になる。
こういうのが積み重なっていくと、憎もうとしても憎めなくなりますよねえ。
特に晃さんが良い人で、つらくなってきました。

親はともかく、この人たちは良い人。
見ていると、よく言われることだけど「子供に罪はないよねえ…」って思ってしまう。
そう思ってしまうと、復讐の手が鈍る。

鼻持ちならない、嫌な人だと気が楽ですけどね。
今のところ、隆だったら良心がとがめないかも。
手強そうなだけに、ファイトがわくのでは。
しかし、そこに最強の燃料投下。

殺された理由。
それは殺人を犯した息子たちを助けるための買収に、浩一の父親が応じなかったから。
指示したのは興三。
これによって興三は便宜を図ってもらって会社を立て直し、大きくしている。

全て嘘だった。
少し芽生えたかに見えた、微笑ましい思いは消え去った。
残るのはただ、憎しみと憎悪、憤怒のみ。

ラウンジで隆と六反田の会話を聞いていた時の表情もすごかった。
目に恨みが、こもってるじゃないですかー。
静かなだけに、怖かった。

目の奥に、チラチラ。
恨みの炎が燃えてました。
そしてこのやり場のない怒りを込めて、暴れる浩一がすごい。
草なぎさん、手を痛めなかったでしょうか。

その後、淡々と野球のルールブックを見ている浩一。
わかば園にいるのが、わかる気がする。
子供たちの顔を見て、落ち着くしかない。

わかば園から、六反田に電話しているときの表情の変化もすごい。
「金貸してんだよ」と言う草なぎさんは、ヤミ金業者の顔。
子供たちに向けた時は、あどけない笑顔。

このドラマの草なぎさんはもう、何か憑いてんじゃないかと思うような演技ですね。
いろんな引き出しを持っているけれど、それがフルに発揮されている感じです。
その熱気が、ドラマも共演者も引っ張ってる。

草なぎさんについて、演技は良いかと聞かれました。
良いと答えたら、それはアイドルの範疇で良いのかと聞かれました。
いや、普通に俳優として良いと答えました。

でも気になるのが、会議に呼ばれなかったことについて答えた隆の言葉。
「問題を起こさずにいてくれれば、それでいい」。
この言葉と、晃の反応。

前に問題を起こしたんだなということが、予想がつく。
その問題とは、仕事上のミスなのか。
兄弟の仲がギクシャクする原因になった、何かなのか。

若気の至りで、何かとんでもないことをしたのか。
話したくないことの一つぐらい、あるという言葉。
まさか、浩一の父親が殺される原因になった事件と関わりなんて、ないよね?

年齢的にないか。
あってほしくない。
それから、大杉漣さんが敵側であってほしくない。
老医師というから、解剖に当たった医師が大杉さんではないと思いますが。

そして、赤松金融。
「銭の戦争」の渡部篤郎さんの会社。
こういう風に世界がちょっとつながっているのが見えると、楽しい。

六反田健次は、飯田基祐さん。
ガッタガタになっていく様子が、うまかったです。
いくらあってもだめ。
不安になる。

五十嵐もそうですが、自滅していく様子が似ている。
社会的に成功しているのに、それでは満たされない。
そうして自滅していく。

ハルカ役、水原希子さん、似合ってますね。
浩一の復讐に、仕事を超えて協力するつもり。
楓に接近する浩一に、嫉妬の炎を燃やすかも。

今回は浩一の名言が聞けました。
リアリティとユーティリティがそろえば、人はそれを信じたくなる。
偶然も必然だと思わせる。
優秀な詐欺師は、これが運命だったと思わせる。

運命と思わせて、楓に恋の罠を仕掛ける。
楓との恋を喜ぶであろう晃。
つらいですねえ。
賢くなれ、と言う浩一。

浩一を見ていると「復讐するは我にあり」という言葉が浮かんできます。
阿修羅のようだと言いましたが、ますますそんな感じがしてきます。
正義は浩一にある、阿修羅と同じ。
だけど、赦す心を失ってしまい、天界から追われて阿修羅は修羅道に落ちる。

でももしかしたら、興三さえも何者かに使われているのでは。
ということは、これからの標的はどんどん大きく、困難になっていくのでしょうか。
どんどん、おもしろくなっていきそうで次回が待ちきれません。
「銭の戦争」も良かったけど、これも良い。

ドラマの合間に入るCMで、翌日の「おじゃMAP」を見てしまった私。
草なぎさんが楽しそうにツアーに参加していて、ホッとしてしまった。
安田顕さんと、菊池風磨さんも別ツアーに参加。
こっちも楽しかった!


ますます!

「嘘の戦争」。
本日は15分拡大版。
初回は2時間でも飽きなかったけど、今回もポンポン、重大な展開が!
だいたい、1話でいろんなことが起きて、2話は謎を引っ張るんですが、早くも疑惑の中枢に話が及ぶ。

でも大丈夫。
相手は相当、大物かも。
話が進めば進むほど、敵が増えていく気がします。

そして、草なぎさんの演技は迫力を増してきました。
良い人役も良いけど、ダークな部分がある役をやると二つの顔のギャップがすごいですね。
ますますおもしろそうな展開になってきました。


う、嘘みたい

テレビ東京で本日24時15分より放送の「バイプレーヤーズ」。
信じられない…。
自分には信じられない豪華なキャスト。
この俳優さんたちが同じシーンに集まってるとか、クラクラしそう。

テレビ東京さん、ありがとう!
いやー、濃い。
北村一輝さんと猫、時代劇と聞いた時以来の衝撃でした。

金曜日の夜の和みだ。
すんごい濃いエスプレッソに、甘いもの食べながら、待ちました。
…この時間に。
この俳優さんたち、ほんとにみんな良い俳優さんですねえ。

役所広司さんがここで脇役って、マジですか…。
すばらしい俳優さんたち、すばらしい企画!
このシェアハウスで働きたい。

そして「ぷっすま」に移動。
良い金曜日の夜だ。
何だか、誰かに「お疲れさま」と言ってもらってる気がする。

阿修羅が降りたかのごとく 「嘘の戦争」第1話(2/2)

バラエティ番組に出ていた草なぎさんが疲れているように見えて、ちょっと心配していました。
それは疲れるだろうとは思っていたんですが。
ところが、この演技を見て納得しました。

疲れるのも当たり前!
そのぐらい、魂が入ってました。
家族を殺害され、心中で解決済みとされた心の痛み。
憎しみ、哀しみ、怒り。

NHKで未解決事件の番組を放送した時に、草なぎさんがナビゲートしました。
あの時に見た家族の思いを、草なぎさんが自分のものにして伝えてきている気がしました。
そのぐらい、未解決事件の犯罪者への怒りと哀しみを表現していましたね。
こんなにもくやしい、こんなにも哀しい。

本当に草なぎさんは俳優として、すごいんじゃないか。
この方は「俳優」として十分、やっていけます。
心配無用というか、こういう人は使いたいよねえ。


1の、一ノ瀬浩一が主人公。
2が二科一族。
3が大杉漣さん演じる三瓶守。

4が野村麻純さんが演じる社長の隆の秘書、四谷果歩。
7が姜暢雄さんが演じる会長の興三の秘書、七尾伸二。
8が詐欺師見習い、菊池風磨さんの八尋カズキ。

10が浩一の相棒、十倉ハルカ
マギーさん演じる浩一の仲間が、百田ユウジ。
100ですよ!

偶数が復讐する相手側で、奇数が仲間なのかっていうと、そんなことないみたいですし。
まだ6と9が出てないですね。
1000がいるのかな。
「任侠ヘルパー」みたいに「0」「零」が気になります。


バンコクの街を行く草なぎさんは、失礼ながら一匹の野良犬にしか見えなかった。
飢えて、満たされなくて、しかし相手に食らいつくために卑屈に笑う野良犬。
それががらりと変わる。
してやったりと笑う詐欺師の顔になる。

次には恐怖と、悪夢にうなされる子供のような顔になる。
五十嵐を見た浩一が、我を失う。
もう少しで殺すかと思ったほどの目。

ギリギリで自分を取り戻し、相手を見る。
見つけた。
苦痛と、憎悪と、歓喜が入り交じった顔。
すごいですね。

日本への帰国と決心を語る浩一は、憎悪と憤怒に満ちている。
自分が預けられていた園の子供と、対等に遊ぶ浩一。
その顔はまるで子供。
慈悲の心と愛情に満ちている顔。

「嘘は嫌いだ」。
この言葉が時に白々しく、時に悲しく、時につらく響く。
複雑な心の内を存分に見せてくれる。
こちらに浩一の心情を想像させる。

楓を待つ時、雨に濡れるというのはあまりに計算通りです。
ですが、それとわかっても引っかかるにはそれなりの魅力が必要。
人の良さそうな笑顔で待っていられた時より、楓が惹かれたのはその後ではないでしょうか。

「嘘つきって言われた」と言った時の浩一。
寝言なのか、わざとなのか、こちらにもわからない。
「本当の話をするたびに」。

「どうすれば良かった?俺は」。
「嘘をつく以外」。
あんな、孤独感をにじませて言われたら、それは気になってしまうでしょう。

幸せな家族の記憶。
遠い目。
幸せであったからこそ、痛いのだと、目が言っている。
この人は父母への反抗期さえ、持てなかった。

五十嵐を追い詰める時の顔は、「阿修羅が降りたかのごとく」。
相手にも子供がいて、罪がない。
自分と同じような、家庭を失わせる目に遭わせる。
そんなことを考えていたら、相手を破滅させることはできない。

おそらく、五十嵐の妻も娘もこの上ない心に傷を負った。
だが「自分と同じ地獄に落とす」とは、そういうことなのだ。
人の心を持っていたら、できない。
相手は人じゃない。

だから相手に感情を入れることは、絶対にしない。
相手にも事情があるなんて、思いたくない。
知りたくない。

もしもそれを知ってもなんとも思わない。
そう思わないとできない。
氷のような冷たい心と、鉄の強さが必要。

しかし仁科の兄弟にも、それぞれに傷がありそう。
それを知った時、浩一は彼らを地獄に落とすことができるのか。
この葛藤も見物になりそう。

隆は藤木直人さん。
なかなか手強そう。
ですが、この人、嘘は嫌いと言う。

だけど、兄には嘘つき呼ばわりされている。
浩一に通じる哀しみを背負っていそう。
一度理解し合えたら、心からの親友になりそうな予感がします。

兄の晃は、安田顕さん。
微妙にプライドが高くて、微妙に人が良さそう。
地獄に落とされそうで、そうすると一転して、ものすごく恨みそう。

楓が浩一の復讐の手を鈍らせるかもしれない。
山本美月さん、かわいい。
罪のない感じが良い。

「先生、腕良いよね。こないだ処置早かったし」。
「それが何か」。
「ううん、別に。ただ、そばにいてくれたら心強いなと思って」。

これ、刺されても楓が助けると確信しての言葉でしょうか?
そして、五十嵐のナイフが刺さった場所は、かつて、五十嵐が刺した胸?
あの時は、自分は全てを失った。

今度は自分を刺した男を、破滅させる。
もしかしたら、30年前に浩一を刺しきれなかった五十嵐の性格を見込んで、致命傷にはならないと踏んでいた?
だとすれば、すごすぎる。

もう一人の女性キャストは、良き相棒のハルカ。
水原希子さんが悪い女が似合って、見ていて楽しい!
楓が絡んできて、彼女との関係も微妙になりそう。

オープニング、浩一以外は全員、赤というのはどういう意味だろう。
赤と黒。
文字が出るんですが、読み取れなかった。
何だろう、気になる。

そして、大杉漣さんも出ましたよ。
君のお父さんを救えなかった…というのが、どうとでも取れるんですよ。
知っていて助けられなかったのか、つまり彼は黒幕側の人間なのか。
単に医者として救えなかったということなのか。

刑事も明らかに、態度がおかしい。
もみ消したのが、明らか。
だとすると、刑事を動かせる、あの時点で相当な大物では。

仁科興三の上に、誰か居そうですね。
企業のトップよりすごいとなると…、政治家?
大物俳優さんが、やってくれるのかしらん。

北大路欣也さんとか、中村敦夫さんでも良い。
松平健さんでも良い。
そうだ、ここで火野正平さんなんかどうでしょう!

五十嵐に「やれ」と命じた男は、誰なんだろう?
この男がかなり、凶悪そうなんですよね。
あの会長秘書も相当、くせ者みたいです。
来週は興三の弁護士が、ターゲットらしい。

いやいや、敵がいっぱいで見ていて楽しい!?
刑事、仁科一族、まだ出ていない黒幕?と相手に不足なし。
しかし、草なぎさんのドラマって、自分は好きなものが多いなあ。
2時間、ノンストップで楽しみました!

それにしても、草なぎさんの水に落ちる演技は気合い入っていましたねえ。
息してない、息吐いてないじゃないですか。
目は見開いたまま、水に落ちて沈んでいく。

最後の笑み。
阿修羅が笑った…と思いました。
藤木さんのなぜだ…と相まって、相当な迫力。
このドラマの草なぎさんは、阿修羅の化身ですね。

ドラマがあっても、ドラマチックではないという言葉を最近聞きました。
これはまさに、ドラマチックなドラマでしょう。
来週が、楽しみ!


破滅させてやるよ 「嘘の戦争」第1話(1/1)

プールサイドのパーティー。
仁科コーポレーションのパーティーだ。
顔面蒼白の我を失った五十嵐という男が、会長の興三に刃物を抜く。
左右にいる長男と次男が、父親である会長をかばおうとする。

だが五十嵐は、突進してきた。
そこに一人の男が立ちはだかった。
五十嵐のナイフは、その男に突き刺さった。
悲鳴が上がる。

事の起こりは1ヶ月前。
タイ、バンコクの夜。
ネオンの中、一ノ瀬浩一という男が歩いてくる。
女たちが笑いかけてくる。

猥雑さを漂わせる街の中、浩一は三枝という男を迎えに行く。
浩一は三枝を一軒の店に連れて行き、ここが今日から三枝の店になると言った。
店の中では、最小限の衣装を身にまとった女たちが腰をくねらせている。
その中の一人が三枝をじっと見つめている。

三枝に惚れたのではないかと、浩一が言う。
否定しながらも三枝は、ほおに浮かんでくる笑みを押さえられない。
浩一はキッパリと言い切った。
「俺、嘘は嫌いなんで」。

三枝はその女性を隣に座らせ、上機嫌で飲んでいた。
そこに警察が乱入してきた。
手入れだ!

警官は女たち、従業員を押さえつける。
浩一は三枝を裏口に連れ、走る。
公然と営業はしているが、一応、この店は非合法の売春をやっている。

三枝のことは絶対守ると言って、浩一は窓から三枝を逃がした。
後ろを振り返った三枝が見たのは、警察官に押さえつけられる浩一だった。
浩一は連行されていく。

レストランで三枝に「大変な目に遭いましたね」と言ったのは十倉ハルカという女性だった。
ハルカは、三枝が詐欺に遭ったのではないかと忠告する。
だが三枝は強く否定する。
浩一は良い人だと言う。

正直、800万円は痛かったが、良い投資をしたと思っている。
捕まったであろう浩一を三枝は心配している。
先ほどの店で、浩一が警察官たちといる。

そこに入ってきたのはハルカだった。
「成功!」
その言葉に、警察官も従業員も女性たちも歓声を上げる。

札束を警察官、女性たち、従業員に分ける。
そして「もっとおもしろそうなカモを探す」と言って、浩一は出て行った。
毒々しいネオンの中、浮かび上がる浩一瀬の顔。

突然、画面は青みを帯びたものに変わる。
「お父さん」。
子供が部屋に入ってくる。

お父さん、と呼ばれた男性は、口から血を流している。
目は宙を見つめたまま、動かない。
父親を押さえつけていたのは、黒装束に身を固めた2人の男だった。

1人は子供を押さえつけた。
その手には変わったアザがあった。
「ああああーっ!」
ナイフが、子供の胸の下に刺さる。

響き渡る悲鳴。
カッと見開いた目。
荒い息づかい。
浩一は、部屋で目を覚ました。

その胸の下には、傷があった。
窓に駆け寄る。
外はバンコクの街。
車の警笛が響く。

浩一はあるホテルのロビーにいた。
ハルカからLINEが入る。
「カモは、いた?」

浩一は辺りを見回す。
「カモだらけだ」。
そうLINEを返す。

一人の男とすれ違う。
何かが、浩一の足を止めた。
信じられないと言った表情で、振り返る。

たった今、歩いて行った男の手。
アザがあった。
変わったアザだった。
浩一が凝視する。

何かが浩一の中で、動き出す。
我を忘れ、まっすぐに男の方へ歩き出す。
「すみません」。
その男が立ち上がって歩いたので、浩一とぶつかった。

浩一は我を取り戻すことができた。
そして、男が落としたボールペンを拾って渡した。
すばやく、そのボールペンを見る。
ボールペンには慶明大学病院と、印字されていた。

「カモは見つけたの」。
ハルカのLINEに浩一は「ああ、見つけた」と返した。
外に出る。

たった今、自分とぶつかった男の背中を見送る。
男は雑踏の中、歩いて行く。
戻った浩一はハルカに「タイには戻らない」と日本に行くことを告げる。

日本は、捨てたつもりだった。
ハルカは驚く。
浩一は言う。

「全部忘れて、捨てたつもりだった」。
「でも違った」。
「30年たっても、はっきりと」。

押さえつけられる子供の浩一。
「あいつの手」。
「あいつの声」。
「楽しそうな顔して」。

ハルカが「誰の話?」と言う。
浩一は言う。
絞り出すような声で。

「取り返す」。
目に憎悪が満ちてくる。
「30年分の利息つけて」。
「あいつらにも地獄、見せてやる」。

一ノ瀬浩一、旧姓・千葉陽一。
子供の時、自分を除く家族、父母、弟を何者かに殺害され、本人も刺されて重傷を負った。
だが警察は一家心中と断定。
犯人を見て、刺されたという陽一に刑事は「嘘はいけないよ!」と言った。

陽一は30年後、一ノ瀬浩一という凄腕の詐欺師となっていた。
相棒は十倉ハルカという、妖艶な美女。
日本に戻った浩一には仲間に百田ユウジという詐欺師仲間がいた。
そして百田に紹介された、詐欺師修行中の八尋カズキという青年がいる。

子供の浩一、いや、陽一に、父親は言った。
「お父さん、嘘は嫌いだ」。
「だから陽一にも、嘘だけはつかないでほしい」。
「うん、約束する」。

父親は微笑んだ。
「良い子だ!」
「誕生日おめでとう」。

陽一の誕生日だった。
家族全員で、写真を撮った。
幸せな瞬間の写真。
それを見る陽一、いや、浩一。

ある日、浩一がまだ、陽一という子供だった時。
家に帰ってくると、家の中で父親が2人の黒装束の男に押さえつけられていた。
父親は口から血を流し、すでに目は宙を見つめたまま動かなくなっていた。
浩一が呆然としていると、男の1人が浩一を押さえつけた。

そこに「陽一、お父さんは」と言って母親が入ってきた。
「来ちゃダメだ!」
とっさに陽一は声を上げた。
部屋に入った母親は、声を上げるまもなく刺された。

続いて弟も。
「やれ!」
陽一を押さえている男に向かって、もう1人の男が命令した。
声にならない声を出しながら、五十嵐は浩一を刺した

30年前、浩一の家族を殺害した2人組の1人は手のアザから、間違いなく五十嵐だろう。
だがなぜ、浩一の家族は殺されなければならなかったのか。
五十嵐を調べていくと、仁科興三という男が浮かび上がってきた。

仁科興三は、30年前、瀕死の状態の会社を奇跡のように建て直し、今は仁科コーポレーションの会長となっている。
長男の二科晃は、子会社の社長。
本社を継いでいるのは、次男の二科隆。

母親が違う妹の二科楓は、慶明大学病院の医師だ。
浩一は、ハルカと組んだ芝居でケガをし、楓に近づく。
さらに病院の外から電話をし、楓を待っていると告げた。
だが楓はその時、患者の容態が急変したため、何時になるかわからないので浩一には会えないと言った。

患者の状態が安定した楓は、浩一が気になる。
雨が降っていた。
外を傘を持って出た楓は、浩一がぬれながら自分を待っていたことを知る。
慌てて病院に引き入れた浩一に、タオルを渡した。

このままでは、風邪を引く。
処置をされた浩一が、横になる。
浩一は眠ったように見えた。

その時、「嘘つきって言われた」と浩一が言う。
「一ノ瀬さん?」
楓が声をかける。

浩一は寝言を言っているのだろうか?
「本当の話をするたびに」。
浩一の顔は、悲しみに満ちていた。

楓は戸惑う。
「どうすれば良かった?俺は」。
「嘘をつく以外」。

浩一は経営コンサルタントとして、晃にも近づく。
そして300万円の儲けをさせてやった。
だが次男の隆だけは、浩一を信用しない。

ハーバード大学の卒業名簿を見て、一ノ瀬浩一という名があることを確認する。
一ノ瀬浩一とは、ハーバード大学の卒業生に実際にいる人物だったのだ。
陽一はその名前を名乗っているのだ。

しかし、それだけではまだ、隆の浩一への疑いは晴れない。
NYの浩一の会社に電話をして、会社が実際に存在することを確認する。
間一髪、その電話には渡米したハルカが出ることができた。
ペーパーカンパニーと疑っている弟に、兄は軽蔑のまなざしを送った。

浩一は手始めに、五十嵐を破滅させることにした。
病院に巧みに入り込み、五十嵐の部屋に忍び込む。
パソコンのデータを盗み、盗聴器を仕掛ける。
そこでわかったことは、五十嵐がタイで未成年を買春していることだった。

さらには業者からリベートの受け取りもあり、ヤミ金からの借金もあった。
五十嵐の自宅に、五十嵐が未成年を買春していると書かれたファックスが入る。
教授選に関わる嫌がらせだと、五十嵐はごまかした。
ついに浩一が、五十嵐の前に現れる。

浩一が現れたことに、五十嵐は動揺した。
30年前、五十嵐は仁科興三の言うとおりに動いた。
五十嵐は、興三の秘書の七尾伸二に浩一が現れたと知らせた。
だが七尾は、千葉陽一が今、オーストラリアにいる、証拠を突きつけてきた。

七尾は「教授選のために、資金が必要なようですね」と言う。
「昔のことを楯に、会長に…」。
「違う!」
興三は昔のことを楯に、五十嵐が脅してきたと思っているのだった。

五十嵐が病院の自分の執務室に戻ると、買春の写真が壁一面に貼ってあった。
追い詰められた五十嵐が浩一の呼び出しに応じて、屋上にやってきた。
「君は一体誰だ」。
隠し口座を含む、リベートの受け取りまで浩一は握っていた。

「何が望みなんだ!」
「この口座は何?」
隠し口座の証拠を突きつけられた五十嵐の顔色が変わる。

浩一の口調が変わる。
「認めろよ」。
ほとんど、凶悪犯のような口調だった。

「俺は嘘なんかついていなかった」。
「嘘で騙したのは、お前らの方だ」。
「認めて謝れ」。

「俺の親父に」。
「家族に!」
全身から憎悪と、憤怒と、残忍さが噴出してくる。

五十嵐は浩一の前に膝を折り、悪かったと詫びた。
「借金があったんだ」。
「全部チャラにしてくれるって言ったんだ」。

「仁科興三か。やっぱりあいつか」。
「何で俺の家族を」。
「知らない」。
「そんなはずないだろう」。

「ただ、君のお父さんは気づいてはいけないことに、気づいてしまったんだ」。
「気づいた。何に」。
「みんなにとって都合の悪いことだ」。
「みんなって誰だ」。

「わからないんだよ」。
「おとなしく彼らに従っていれば良かったんだ」。
「君のお父さんは」。
「だから、君たちがいない時を狙って僕がお父さんを訪ねて」。

陽一の父親に、ドアを開けさせたのは、同じ病院にいた五十嵐だった。
しかしそこに、浩一たちが帰ってきてしまった。
「だから殺したのか」。
「弟まで」。

「違う!殺したのは私じゃない!もう一人の男だ」。
「名前は!」
「仁科会長の部下としか」。

「すまない。本当にすまない」。
「嘘をついたのは君じゃない。我々の方だ」。
「許してくれ。頼む。この通りだ」。

五十嵐は土下座をしていた。
這いつくばって、浩一に許しを請う。
「もう、遅いよ」。
「業者からの不正献金の記録、病院と税務署に送った」。

五十嵐は絶望の叫びを上げた。
破滅だ。
次期教授どころか、全てを失うのだ。

「だからなんだ」。
浩一の声はあくまで冷徹だった。
「俺は30年前、嘘をつくまで病院からも出られなかった」。

「本当のことを言うたびに嘘つきと呼ばれて。
「何度も何度も刑事に呼ばれた」。
「親戚たちからも繰り返し、本当のことを言えって」。

「嘘はいけないよ、陽一君」と刑事は言った。
「君を刺したのはお父さんだよね」。
「そうなんだよね」。

子供の陽一は、ベッドに横たわっていた。
「はい」。
そう言うしか、なかった。
「お父さんでした」。

その時、彼の心の中で歯車が止まった。
「あの日、俺は悔しくて泣いた。泣きながら思った」。
「どうせ嘘ばかりつくのなら、騙す側の方になってやるって」。
「騙して騙して徹底的に騙し抜く」。

五十嵐に向かって、「お前は教授になれない」と浩一は言った。
「ヤミ金業者が金を回収に来るのも、時間の問題だ」。
「仁科に余計なことを言ったら」。

言わないと叫んだ五十嵐に浩一は言った。
「あの写真マスコミにばらまいてやるよ」。
「30年前何があったのか、仁科の口からじっくりと聞いてやる」。

「必ず、聞き出す。仁科興三本人の口からな」。
怒りと恨みが、浩一の瞳の奥に燃えていた。
「破滅させてやるよ」。

ゾッとするような、冷たく悪意に満ちた声だった。
「俺が味わった地獄を全員に見せてやる」。
感情が入れる隙間はなかった。
「お前らの地獄は、ここからだ」。

浩一を完全に信用した晃が、会長である父親の興三に紹介するため、浩一をパーティーに呼んだ。
パーティーで楓に挨拶する浩一を見て、隆は驚愕した。
妹の楓とも浩一は知り合いなのか。
巧みに兄の信用を得、妹にも近づいている浩一に対して、隆は警戒心をあらわにする。

浩一の耳元で、隆は囁く。
「いつか、お前の嘘を暴いてやる」。
すると浩一は、抑揚のない声でこう、返した。

「僕、嘘嫌いです」。
隆も言う。
「私もだ」。
2人は離れていく。

浩一は楓に向かって「先生、腕良いよね」と言った。
「こないだ処置早かったし」。
「それが何か」。

「ううん、別に。ただ、そばにいてくれたら心強いなと思って」。
「?」
楓が不思議そうな顔をする。

その時、弁護士を装ったハルカにつれられた五十嵐がやってくる。
このままでは、五十嵐は破滅させられる。
だが浩一が興三の前にいるのを見た五十嵐は、パニックを起こす。

「何であいつがここに」。
ハルカが眉をひそめる。
「嫌な予感がします。あの人、あなたに全ての罪を着せようとしている…」。

「あなたは完全に破滅する」。
「悪魔はこの世から消し去らないと…」。
「破滅」。

五十嵐が繰り返す。
「そう、破滅」。
ハルカの言葉に、五十嵐は錯乱した。
近くのテーブルにある果物ナイフを手に取る。

ハルカが、それを見つめる。
ふらふらと歩いて行く五十嵐。
ちらりと浩一が、周りを見る。

そして「一ノ瀬です」と興三に名刺を渡す。
「私はコンサルタントという連中に興味がない」。
興三が名刺を放り出すように置いた。
悲鳴が上がった。

魂が抜けたような、五十嵐がやってくる。
手にはナイフ。
楓が「五十嵐先生どうして」と驚く。

言葉にならない叫び声を上げて、五十嵐はナイフを振りかざした。
晃も隆も、興三の前に出て、かばおうとする。
その時、2人の前に浩一は出た。

五十嵐の突き出したナイフは、浩一に刺さった。
浩一は仰向けに、プールに落ちる。
水しぶきが上がる。

これには隆も、仰天した。
冷たい目をして、ハルカが去って行く。
浩一はプールに沈んでいく。
沈みながら、浩一は心の中でつぶやく。

「お前らにも」。
「見せてやる」。
「俺がいた地獄を」。
「今度は俺の嘘で」。

浩一は、目を見開いたまま沈んでいく。
その目には、何も映っていないようだった。
「俺の嘘で」。
「地獄を見せてやるよ」。

浩一の胸に、ナイフは刺さったままだ。
「誰か助けて!早く!」
楓の声で、人が助けに入る。

プールから浩一をあげる。
「一ノ瀬さん、わかります?」
意識がない浩一に、楓が呼びかける。

「救急車呼んで!早く!タオル持って来て!」
楓が叫ぶ。
興三が両脇を守られ、会場を出て行く。
「私をかばったのか」と言いながら。

浩一は意識を失っている。
だが、その時、隆は見た。
「なぜだ」。
隆は言う。

「なぜ笑う」。
浩一は、目を閉じていた。
そして、うっすらと笑みを浮かべていた。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

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