圧巻の対決 「嘘の戦争」第6話

第6回。

浩一はついに楓との交際するため、二科家に行く。
興三は表面的には穏やかに話すが、浩一の狙いを探ろうとする。
そのために浩一に楓との結婚を約束させた。

これにはさすがに晃も驚くが、帰り際、隆の子がやってきた。
隆の子にコアラの伝説の話をした時だった。
ニヤリと隆が笑った。
その笑みに不穏なものを感じた浩一は、コアラの伝説に出て来る妖精の名を間違えていたことに気付く。

間違えは、千葉陽一のブログにあった間違いと同じだった。
同じ間違えをしているということは、浩一と千葉陽一が同日人物であることの証明だ。
浩一はこの間違いに気づき、大失態だったと言う。
この間違いを挽回しなくてはならない。

浩一が三瓶の施設を訪ねた時、隆もまた、三瓶を訪ねて来る。
千葉陽一の話が聞きたい。
そう言われた三瓶は、本人が帰国していると言って隆に会わせる。

千葉陽一の後姿を見て、隆はひそかに勝利を確信した。
しかし…、振り向いた男は浩一ではなかった。
それはブログで見た千葉陽一、その人だった。

愕然とする隆は、それでも問いかける。
「30年前の事件」と言いかけた隆に陽一は「忘れたいんです」と話を遮った。
「だから僕は日本を捨てたんです」。
隆は帰っていった。

千葉陽一は昔、詐欺師だった男で浩一の知り合いだったのだ。
「ご苦労さん、もう帰っていいよ」と浩一は笑う。
浩一に協力した三瓶だが、こういうことはこれ1度きりだと言う。
その口調と表情が、何かを感じさせる…。


このドラマ、草なぎさんの演技の迫力にうならされますが、今回はさらもすごかったです。
ストーリーもですが、今回はとにかく草なぎさんの演技に圧倒されました。
草なぎさんの進路は、彼の演技にとって完全に良い方向に進んでいると思います。
制約が外れたかのように、いろんな顔を見せています。


冒頭の食事会から、名優・市村正親さんとの演技対決でした。
浩一と興三の対決はそのまま、俳優同士の火花散る対決。
どちらも一歩も引かぬ。

今回は楓を完全にはまるために、浩一の元カノとして楓と話をつけるハルカの複雑な心境も見ることができました。
浩一を信じていると言う楓のまっすぐさに、元カノが浩一をあきらめるというシナリオだった。
それは見事に演じたハルカだが、心は晴れるどころか暗くなる一方。
女優さんたちも草なぎさんとともに、光っている。

今回は千葉陽一の登場といい、晃に追い詰められるかと思ったら、逆転勝ちのストーリー。
そしてラスト。
自分の貧しい故郷と、貧しかった頃を語る二科興三。
何としても成功するしかなかった彼の生涯。

手に入れた成功と、愛する愛娘。
それを奪う者は排除する。
浩一へ心情を吐露する興三。
市村さんの迫力の演技。

それにガッツリ、応える草なぎさん。
またしても、一歩も引かぬ。
だが気持ちを高ぶらせた興三は、心臓の発作を起こす。

救急車…。
悶絶し、倒れ、意識を失う興三。
それを浩一は、冷徹に見下ろす。

浩一は千葉陽一に戻り、興三に自分の思いをぶつける。
抑えきれない憎悪。
燃え上がる怒り。
阿修羅の微笑み。

こんな奴、ここで死ねばいい。
誰も来ないところで、誰も知らないところで。
蔑んだ目で興三を見下ろして、去っていく浩一。

助けを呼ぶ気など、微塵もない。
晴れ晴れと、せいせいしたと、ざまあみろと言っている顔。
だが…。

浩一は立ち止まる。
振り向く。
悪魔のような微笑みが消える。

もう、興三は動かない。
突然、何かがはじけたように浩一は走る。
こんな、死に方させてたまるか。

お前は俺の罠にはまり、苦しんで、後悔して、地獄を味わって死ななければならない。
病気でなんか、死なせてたまるものか。
骨も折れんばかりの心臓マッサージを施しながら、浩一は叫ぶ。

その表情にはもう、先ほどの残忍な笑みはない。
あるのは、ただ、1人の瀕死の人間を生かそうと必死な、真摯な男の表情。
いつのまにか、浩一の目からは涙が流れている。

怒りなのか悲しみなのか、わからない。
この時、誰かの顔が浩一の脳裏にあったのか、なかったのか。
生きろ、生きろ、生き返れ!

圧巻の演技。
対決。
市村さん、興三、ともに本気。
本気にさせ、食らいつく浩一、草なぎさん。

復讐に生きる浩一、いや、陽一の人生を生きている。
その復讐に影を落とすのは誰か。
動き出した六車なのか。

裏切りをにおわせ始めた、百田なのか。
浩一への揺らがない愛を感じさせる楓なのか。
浩一の闇は、晴れる時が来るのだろうか。
彼の心は、どうやったら救われるのか。



スポンサーサイト

実写だったら見られない 「妖獣アダル 人形作戦」

人形というと、それだけでホラーの話ができます。
好きな人には申し訳ないんですが、人の形をしているのに人ではないというところが怖いんです。
学生時代にバイトしていたお店に、精巧な人形がありましたが、反応は二通り。
「綺麗!」という人と、「ぎゃー、怖い」という人。

その人形を題材に「デビルマン」を作るんですから、怖くないはずがない。
「デビルマン」でまず、人形の話と言うと、人形使いズールがあります。
そして同じ、人形を操る妖獣の話で「妖獣アダル」があります。
ゴミ捨て場に片手をつられてブラブラしている人形が映り、不気味な感じがして始まります。

タレちゃんが、今日はついていなかったと言う。
ミヨちゃんは風邪ひいて休むし、先生には怒られるし、テストの点は悪かった。
夕焼けの中、タレちゃんは1人でこの廃棄物置き場にいる。

突然、タレちゃんが「裸の女の人が」と驚く。
トラックに裸の女性がたくさん、乗っている。
でもそれは人間ではなくて、マネキンを捨てに来ていたのだった。

「かわいそうだなあ」と言うタレちゃんが人形に近づくと、人形の目が光り、腕が動く。
人形に腕を取られたタレちゃんは、気絶。
明と美樹が探しに来る。
タレちゃんはマネキンが動いたと悲鳴を上げるが、明が触ったところ、普通のマネキンだ。

しかしその夜、タレちゃんは目を覚ます。
「やだなあ、目がさえちゃった」。
この感じ、わかります。
子供の頃、大人も起きていない夜中にふと目がさえて眠れなくなるということが、とても怖かった。

そう言ったタレちゃんの目に、壊れたマネキンたちが歩いている映像が映る。
マネキンが歩いている。
生きているんだ。
うちを探しているんだ。

廊下を、誰かが歩く音がする。
ドアの前で止まる。
ノブが動く。

テレちゃんは恐怖のあまり、近くにあったものを投げてしまう。
投げたのは、金づちだった。
悲鳴が上がる。
だが倒れたのは、マネキンではなかった。

頭から血を流して倒れたのは、美樹だった。
ドアを開けたのはマネキンではなく、美樹お姉ちゃんだったのだ。
タレちゃんが投げた金づちは、美樹に当たったのだ。
「お姉ちゃん、死んじゃった…」。

トイレに起きた明は、タレちゃんの部屋の様子がおかしいことに気付く。
ドアを開けると、タレちゃんはいなかった。
代わりに、頭部が壊れたマネキンが転がっている。
部屋には置手紙があった。

美樹お姉ちゃんを殺してしまったので、もう二度と戻らない。
そう、手紙には書いてあった。
手紙を読んだ明は、タレちゃんを探して夜の街を走る。
あちこちからマネキンがやってきて、明の邪魔をする。

明はマネキンを壊していくが、次々と街角からマネキンが集まって来る。
壊したはずの人形は直っている。
空を見上げると、雲の上が光っている。

蜘蛛の糸のようなものが、見える。
明はデビルマンに変身し、雲の上に急ぐ。
そこには妖獣アダルがいたが、逃げられてしまう。

風邪で休んでいたミヨちゃんが夜中、トイレに起きる。
するとドアが開く音がする。
カギかけてないのでしょうか。
不用心ですね…、ってもしかしたらデーモンが開けたのかな?

ミヨちゃんが誰?!と驚くと、タレちゃんがいる。
タレちゃんだった。
ミヨちゃんにお別れを言いに来たのだ。

夜が明けてきた。
美樹の父親も母親も、美樹もタレちゃんを探して、憔悴していた。
だが警察からの電話を取った母親の顔は、明るくなる。

少なくとも、子供の事故の知らせは入っていない。
ではタレちゃんは生きているんだと、父親も母親もホッとした。
その頃、ミヨちゃんはタレちゃんを匿っていた。

美樹お姉ちゃんがなくなったというニュースは、どこもやっていない。
ミヨちゃんはそう言って、牧村家に電話をしてきた。
電話に美樹が出るのを確認したミヨちゃんは、美樹が生きているのがわかって喜んだ。

そして美樹に、タレちゃんを迎えに来てくれるように言った。
だがタレちゃんが待つ部屋に入ってきたミヨちゃんは、暗い顔をしている。
ミヨちゃんはタレちゃんに、「美樹お姉ちゃんは死んでたわ」と言う。

やっぱり、そうだった。
お姉ちゃんを殺してしまった僕は、死ぬほかない。
タレちゃん1人を死なせないと、ミヨちゃんは言う。

ミヨちゃんの家に、牧村家の人がやってくる。
だがミヨちゃんが祖母に泣きついているだけで、タレちゃんはいなかった。
遅かったか。

明は走り出す。
踏切を列車が通過していく。
明がふと向かいを見ると、ホームの屋根の上にタレちゃんとミヨちゃんがいる。
たった今、家にいたミヨちゃんがいるなんて。

タレちゃんもは風邪で休んでいて、今も咳込んでいたミヨちゃんの咳がいつのまにか止まっていることを不思議に思った。
「さあ、一番楽に死ねるのよ」と、ミヨちゃんが電車に飛び込むことを促す。
映っている影を見たタレちゃんが叫ぶ。

「ち、違う」。
「ミヨちゃんじゃない!」
「だから私は太陽が嫌いなんだ」。

そう言うと、ミヨちゃん、マネキンに変わった。
電車が来る。
もみ合う2人。

間一髪、線路に落ちてバラバラになるマネキン。
この辺り、悪夢のようです。
実写だったら、子供泣きますね。
「悪魔くん」とか「怪奇大作戦」の人形の回も怖いですが、これもかなり怖い。

デビルマンは雲の上から人形を操る、クモのような妖獣アダルに気が付く。
アダルを退治すると、タレちゃんは迎えに来た牧村家の人とミヨちゃんと再会できた。
ここでミヨちゃんを最優先する、ちゃっかりしたタレちゃん。
でもみんな、一安心。

アダルが退治されたために、そこらじゅうで、人間に成りすましていたマネキンが火を噴いて消えていく。
lこの人たちが実在した人間なら、マネキンに取って代わられていた本体は無事なんでしょうか…。
最期まで怖いエピソードで、アダルの回は終わります。


青いパンツのデビルマン

アニメの「デビルマン」を見ています。
今の技術や絵柄で見ると、やっぱり昔のアニメなんですが、すごくおもしろい。
でも、アニメ版の評価って低いんでしょうか。

マンガの「デビルマン」では、かなり重要な存在であるシレーヌ。
そのルックスから、男性ファンもかなり多いと思われます。
私は物体のデザインとしても、シレーヌは素晴らしいと思います。
シレーヌのようなマンガで重要なキャラクターが、1話限りの妖獣になっている。

そんなマンガのファンの不満はあると思いますが、キャラクターの作り方はかなりうまいと思います。
子供が見るアニメではあるけど、残酷で怖いシーンもある。
デビルマン自身、例えば女性であってもデーモンには容赦がありません。
でも女性デーモンはみんな、すごい美女です。

それでもデビルマンはキックはするわ、目にチョップもします。
デーモンが女性であっても気が抜けない攻撃力と魔力、精神の持ち主だから仕方ないんですが。
ララのような例外はいましたが、女性デーモンは平気で人を殺します。
ラフレールが美しいのはデーモンである本来の姿があまりに醜怪だからなのだとわかって、子供には衝撃でした。

確か、土曜日の夜8時30分からの放送だったこともあって、大人が見ても興味を持つような話になっていたのでしょうか。
また、声優さんたちがうまい。
特にデーモンの声優さんたち、すごく良いです。

主題歌も良かったです。
さすが、阿久悠さん。
歌詞が良いです。

特にエンディングに流れる「今日もどこかでデビルマン」。
♪もうこれで帰れない さすらいの旅路だけ♪
この歌詞、名作です。
当時の視聴者であった子供は、この切なさ、哀愁漂う歌詞にかなりやられたと思います。

結構怖かったアニメ「デビルマン」。
でもアニメ版は、女の子のファンが多かったとも聞きました。
やはり、明くん・デビルマンのキャラクターが良かったのでしょうか。

愛する美樹のためにたった一人戦い、その気持ちが揺るがない。
悪魔だから人間の姿の時も不良ではあるが、純情。
こんなギャップが、女の子にはたまらなかったのかもしれません。

アニメ版のデビルマンのパンツがダメ、という意見もあるとか。
逆にマンガのデビルマンの下半身に、ビックリしてた友達はいました。
私は青いパンツでも、アニメのデビルマン好きです。


闇に潜む妖獣ジェニー

なーなーじゅうにーねんー、じゅうがつー♪
松任谷由実さんも歌っておりました。
ジャゴビニ流星群。

松任谷さんは♪シーベーリアかーらもー見-えなかーったとー♪と歌っていたので、ほとんど見えなかったのでしょう。
しかしデビルマン世界では流星がやってきて、みんなはそれを観察する宿題に取り掛かります。
やってきたのは流星だけではなく、デーモンも来ていたのでした。

美樹たちが空を見上げて、あの赤い星がきれいと言う。
だが父親にも母親にも、赤い星は見えない。
友達のチャコも、東大寺くんも、みんな一層大きな赤い星がきれいだと言う。
しかし大人には見えない。

この夜、赤い星を見ていた子供たちの夢に、美しい女性が現れる。
怖くて綺麗な女性が現れ、今夜ここに来いと川のほとりの場所を告げる。
このことは誰にも言うな、言えば殺す!
そこで夢を見ていた子供たちは悲鳴を上げて起きるが、またすぐに眠ってしまう。

翌朝、子供たちはみんな寝不足だ。
宿題をやってきた東大寺が赤い星のことを発表するが、アルフォンヌ先生は嘘はいけないと言う。
そんな星はどこにもなかった。

流星に乗ってやってきたのは、妖獣サイコジェニー。
子供たちの夢に入り込み、マインドコントロールをしていたのだ。
ジェニーは子供たちを川に誘い込み、大量に溺れさせようとしていた。

これも気づいたデビルマンに阻止されるわけですが、この子供にしか見えない赤い星というのも不気味。
星が見えた子供が全員、同じ夢を見るのが怖い。
夢の内容も怖い。

綺麗な女性が出て来る。
美しいが怖い。
夢のことを話せば殺すと脅すところも、怖い。

サイコジェニーというデーモンを原作で見た時は、軽いショックを受けました。
大きな頭部から、手足が生えているような女性の姿。
原作ではサイコジェニーさん、大活躍でした。


第6話、見てます!

いやいやいや、これ、すっごいおもしろいですね~。
草なぎさんの演技がすごみがあって、見応えたっぷり。
ラスト5分の演技は、これこれ、こういうのが見たかった!って感じです。
共演者もみんな良くて、ほんとにおもしろい。


もう一人増えた 「嘘の戦争」第5話

第5回。


五十嵐医師、六反田弁護士、三輪刑事、四条綾子と司。
30年前の事件にかかわった人物が、次々、破滅していく。
二科興三は30年前の事件の真相を語った録音テープがあることに気づき、六車と言う人物を再び使おうとしていた。
父に六車を使わせないため、隆は独自に千葉陽一について調べ始めた。

バー800で相談中の浩一のもとに、いきなり隆が出現した。
隆は浩一に千葉と言う人物を知っているか、聞いた。
とっさに繕う浩一と、話を合わせる百田。

だが隆が帰る間際に、ハルカが「あー、お腹すいた」と言いながら来てしまう。
ハルカもまた、とっさに常連を装い、不自然ではない会話をする。
しかし店を出た隆は、ハルカとどこかで会ったことがあると考え始めた。

浩一の次の標的は、大手銀行に勤めている九島亨であった。
九島の父は銀行の副頭取で、30年前、二科コーポレーションに融資をしていた。
興三が浩一の一家を殺害し、OL殺害事件をもみ消した見返りが、多額の融資だった。

浩一はパイロットを装い、キャビンアテンダントを装ったハルカとともに、九島の前に現れる。
ワインを九島が割ったのをきっかけとして、浩一とハルカは九島と飲むことになる。
九島は愛人の五十川芙美を連れてきて、4人で飲んだが芙美は機嫌が悪い。

どうやら九島と、うまくいっていないようだった。
ハルカは芙美に、一見、うまくいっていそうに見える浩一との関係に不安を持っていることを打ち明けた。
意外な共通点に芙美は、九島について語り始める。

九島と芙美はうまくいってはいないが、九島は芙美と別れることはできない。
なぜなら、九島の不正を芙美は知っているからだ。
それをつかんだハルカは、今度は九島に投資の相談があるのであってほしいと持ち掛けた。

九島への罠を張り巡らせる一方で、浩一は楓とさらに接近していく。
楓はもう、父親とは数年、打ち解けて話をしていなかった。
その話を聞いた浩一は「いつまでも怒りを持っていては、つらいだけ」と言う。
「忘れれば、楽になる」。

浩一の言葉は、楓を動かした。
楓がついに父の興三に、浩一と会ってほしいと言いに行く。
ダメかとあきらめかけていた楓だったが、興三は娘と数年ぶりの会話に心が揺さぶられた。

浩一は九島に、友人から頼まれた美術品を預かってほしいと言う。
すると九島のもとに、麻薬取締官になった百田とカズキが現れる。
逃げ出した九島に浩一は、すごみのある声で「もはや共犯」と告げる。
麻薬と思われた粉は、実は小麦粉なのだ。

ハルカは九島に、自分の先輩が転落した遺体となって発見された時の写真を見せる。
それは食堂のおばちゃんが、1万円で引き受けてくれた死体役なのだ。
ハルミは九島に、浩一の怖ろしさ、背後の組織の怖ろしさを訴える。
2人で逃げようと持ち掛けると、九島は承知した。

九島とハルカが、何もかも捨てて2人で逃げると知った芙美。
嫉妬に燃えた芙美は、九島の不正のすべて告発することを決意。
九島は限度額を超えた融資を妻のエステサロンにしており、マージンを受け取っていた。

逃走資金を山小屋に取りに来た九島の前に、浩一が現れた。
九島に猟銃を向ける浩一。
お前のために、30年前、何の関係もない家族が殺されたんだ。
浩一の言葉に九島は、知るかよ!と叫ぶ。

「殺してやろうか」。
浩一が、猟銃を九島に向ける。
ピタリと標準を、九島に合わせた。

九島は絶叫した。
「恨むなら、あの親子を恨め!」
その親子とは、二科興三とその長男・晃だった。
晃は九島たちに女を連れて来いと言われたら、晃は本当にOLをナンパして連れてきたのだと言う。

事件が起きた時も、晃は見張りをしていた。
二科興三は、九島たちのためだけにやったのではない。
自分の大事な長男を守るために、やったのだ。
「…そういうことか」。

浩一が消える。
九島は金と猟銃を持って、逃走しようとする。
外はもう、暗かった。

九島が外に出た途端、警察に囲まれる。
思わず、九島は猟銃を発砲してしまった。
怖ろしさに足がすくんだ九島を、取り囲んだ警察が逮捕する。
業務上横領、銃刀法違反の現行犯である。

戻った紘一は、ハルカに言う。
もう一人。
地獄を見せなきゃいけない人間が見つかった、と。

そして、ついに隆がハルカに気付いた。
二科会長のパーティーの礼状の見本を見て、隆はハルカに気付いた。
バーにいた女は、あのパーティーにいた女だ…。

浩一が、ついに興三に会いに行く。
隆は、楓と浩一の交際には反対だが、30年前の事件の関係者が次々破滅させられている。
残るのは、二科家だ。

「私と晃か」。
興三が言う。
隆はそれでも、六車を使いたくない。

そのためになぜ、浩一が自分たちに関わっているのか。
目的は何か、知らなければならない。
それを知るためにも、浩一とは離さなくて張らないと考える隆だった。
浩一がやってきた…。


いやいや、今回はパイロットに変身した浩一。
人を騙すにはまず、自分を騙す。
毎回の変身が、楽しみです。

人当たりの良さに見え隠れする憎悪。
いろんな顔を見せて、でも芯にあるのは浩一。
変わらない浩一。
巧みに人の心理を突き、利用していく。

楓に浩一と会ってくれと頼まれた興三は、それとは別に何年振りで楓と話をしたことに感動している。
何年ぶりだろう、お茶を飲むのは。
「もう一杯だけ、付き合ってくれないか」。
興三が楓を可愛がっているのがわかる。

だからこそ。
浩一の復讐は、楓に及ぶ。
しかし、今回は衝撃的な事実が判明。
晃はやはり、事件の関係者だった。

良い人だっただけに、浩一の憎しみは倍になる。
これで、自分を抑えるものはなくなった。
破滅させてやる。

晃は浩一を完全に信頼し、朝まで一緒に飲みたいと事務所にやって来るまでになっている。
将棋のソフトで晃が毎回、負けているのを知っている浩一は晃に勝たせてやる。
晃が、本当に楽しそう。
この人も、隆も、悪い人じゃないんだってわかってきて、つらい。

「いつまでも怒りを持っていては、
つらいだけ」。
「忘れれば、楽になる」。
これは本当は、自分に言いたいですよね。

赦せないということは、いつまでも地獄が続いているということ。
忘れられたら、忘れて前に進むことだけをしていられるなら、浩一の人生は楽になる。
本当は誰よりもそうしたい。

だけど、赦せない。
赦せたなら、みんなが幸せになれるのに。
でもそんなことはできない。
何の罪もないのに、殺された家族。

その犯人は追及されることもなく、自分たちは幸せな生活を送っている。
「殺してやろうか」と銃を向けた浩一は、まぎれもなく本気だった。
照準を合わせた目が、「殺してやりたい」と言っていた。

30年前のOL殺害事件の犯人とその家族は、社会的には成功している。
でも、幸せというわけじゃないんですよね。
ちゃんと罪を償っていないから、自分が何をしたかもわかっていない。
だから同じような過ちを繰り返している。

「復讐するは我にあり」。
浩一を見ていると、そんな言葉も浮かんできます。
晃が語る、幸せな未来。
絶対にありえない幸せな未来。

四条も九島も、俺だけじゃないって言う。
自分と同じような人間がいると、四条は九島を。
九島は晃のことを話した。

晃は、四条や九島とは違う人間に見えるんですけどね。
果たして、同じような罪を背負っているのか。
九島の言うことは、本当なのかと思ってしまう…。

隆は本当はジャスティス、正義の人なんでしょうね。
だから六車を使わせたくない。
浩一たちが危ない、とそうも思っている。

展開のさせ方がうまいなあ、と思います。
視聴者が期待しているものを、今のところ見せてくれてますよね。
しかしこれからは、六車によって、百田やカズキも危ないかもしれない。

これまでは浩一のペースで進んできましたが、六車の登場によって立場が変わるのでしょうか。
何だかもう、最終回を迎えてもおかしくないほどの盛り上がり。
話も、いろんな顔を見せる草なぎさんも楽しみです。
今回、九島役の平岳大さんのクズっぷりも、とっても良かったですよ。


綺麗なお姉さんが鏡の中に 「妖獣エバイン 千本の腕」

妖獣エバイン。
鏡に見知らぬ女性が、映る。
するとそれを見た人間の腕は、意志に関係なく動き出す。
それで運転手は事故を起こし、人々は殺し合う。

この、鏡にいないはずの綺麗な女性が映るっていうのが、怖い。
それを見た人たちが、次々、事故を起こすというのも怖い。
タレちゃんも鏡の中に、綺麗な女性を見る。
同時にタレちゃんのガールフレンドのミヨちゃんも、同じ女性を鏡の中に見る。

綺麗なお姉さんが鏡にいたと驚く2人は、お互いに首を絞め合って気絶する。
これは妖獣エバインだと気づいたデビルマンは、エバインを追い詰める。
鏡を壊せば、エバインは別の鏡に逃げ込むしかない。
その弱点を突かれたエバインは、妖将軍ムザンに助けを求める。

「よしよし、ムザンが助けてやろう」。
ムザンはエバインに、鏡に人間を閉じ込めることができるカギを渡した。
これでデビルマンも閉じ込めることができる。
鏡の中なら、エバインの世界。

エバインは再び、デビルマンの前に現れる。
この出現がかっこいい。
エバインは馬の体を持っている。

だからエバインが来る時は、鏡の中から蹄の音がする。
それが違づいてくる。
エバインの姿が鏡の中に現れ、それが近づいてくる。

逃げて行く時も同じ。
エバインは蹄の音を響かせながら、鏡を探し、鏡に向かって走っていく。
そして飛び込む。
蹄の音が遠ざかり、エバインの姿も遠くなっていく。

ムザンに鏡の国のカギをもらったエバインは、再びデビルマンの前に現れる。
カギをくわえて返事ができないエバインを、デビルマンは「今度は泥棒でもするのか」と笑う。
だが次の瞬間、閃光が走る。

物音に気付いた美樹が心配して、明の部屋にやってくる。
扉を開けて、驚きのあまり、声も出ない。
部屋には、何もなかった。
美樹は驚いて父母を呼ぶが、父親も母親も泥棒かと言う。

そうではないのだ。
「部屋」がない。
泥棒が、部屋まで持っていくわけがない。
そう訴えるが、父親にも母親にも意味が分からない。

この、明の部屋がいきなり薄暗くなって、ドア口に立つ美樹の影が長く伸びるシーン。
部屋に何もなくて、明もいない。
あるのは、割れた鏡だけ。
何だか、ダリの絵を見ているような気分になります。

エバインの最期は、デビルマンに角を折られたエバインは集めた人間の腕のコントロールを失う。
操っていた腕に襲われたエバインは、鏡の世界の中で絶命する。
「あばよ、エバイン。鏡の中がお前の墓場だ」。
「妖獣らしい、最期だったな」とデビルマンが言うが、エバインの最期はちょっとかっこいいのでした。


俺の標的だ 「嘘の戦争」第4話

第4回。


隆は五十嵐に面会に行ったが、五十嵐は話ができるような状態ではなかった。
ただ、隆が見せた浩一の写真を見た五十嵐は、ひどく興奮した。
しかし千葉陽一はオーストラリアに在住していて、HPも存在している。

隆は千葉陽一がいた病院を訪ね、三瓶の名を聞き出していた。
陽一の面倒をよく見ていた医師だ。
千葉の後輩だが今は病院を辞め、養護施設をしている。

その三瓶は浩一とハルカが結婚するものと思い込んでいる。
何でも離婚した妻との間に娘がいるが、離婚後は会えていない。
だから結婚式にも出られない。
なので、浩一の結婚式が楽しみなのだそうだ。

浩一は楓の母の葬儀の時の写真を見ていた。
子供の頃からかわいいと八尋カズキが言う。
「俺の標的だ。汚すな」。
浩一のすごみある言葉にカズキは反射的に「ういっす」と返事する。

1人の妻は事故死。
楓の母である2人目の妻は病死。
葬式の写真中に必ず、仁科興三がもみ消した事件の親の名前があるはずだ。

「いた…」。
花輪の中に浩一は「四条綾子」の名前を見つけた。
衆議院議員で、19歳の時、結婚して子供を産むが離婚。
その息子を溺愛している。

百田は綾子がよく見てもらって頼っていた占い師と知り合いだった。
この占い師は詐欺師ではないが、詐欺師と占い師は似ていると百田は思っている。
だが占い師は最近、亡くなっていた。
浩一はそこに目をつける。

綾子が再開発事業推進のイベントに出ていたが、そこにドローンが飛んできた。
ドローンは綾子の息子に水をかけたが、綾子は無事だった。
ハルカが危険を知らせたため、難を逃れたのだった。
感謝する綾子にハルカは、占い師の十津川の弟子だと名乗った。

十津川は最期まで、綾子のことを案じていたとハルカは言う。
綾子はあっさり、ハルカを信用し、打ち明け話をする。
こうして浩一は綾子を罠にかけていく…。

一方、晃と隆の会社を巡っての軋みも本格化していた。
仁科家の中で、誰にも期待されていない人間だ。
慰める浩一に晃は「もう良いよ、そんな見え透いた嘘は!」と口走る。
「嘘」。

浩一がつぶやく。
苛立つ晃に浩一は、仁科コーポレーションの経営を分析し、今後の戦略についてまとめたUSBメモリを置いてきた。
隆の役に立つはずだ。
晃は「いつのまに」と、驚く。

楓の気持ちも浩一は、確実につかみ始めていた。
目標は1ヶ月内にプロポーズ。
そして、会長の仁科興三に近づく。
順調に進んでいる。

「結婚詐欺の才能もあったんだ」。
ハルカの言葉に浩一は「俺も知らなかった」と答える。
今回の標的は、四条綾子と息子だ。
「親子ともども、地獄を見せてやる」。

今回の標的は、衆議院議員の四条綾子とその息子・司。
占い師の言葉に綾子は見事に騙され、5億円を奪われた。
息子は出資法違反で、逮捕。

追い詰められた司は「主犯は九島亨だ。俺はただ、見ていただけだ」と浩一に口走る。
「知っていて何もしないことは、殺したことと同じだ」。
怒りを込めて、告げる浩一。

四条から、六反田が録音したテープがあることを知った二科興三は「六車を呼べ」と言う。
それを聞いた興三の秘書・七尾伸二も、隆も顔色を変える。
「暴力を使わなくても解決するはずです!」
「甘いな」。

「30年前の過ちを、もう一度繰り返すつもりですか」。
六車が動く以上、隆はもう関わらせない。
興三はそう言って、隆に1週間の猶予を与えた。
それですべてが明らかになれば、六車は必要ない。

隆は悩んでいた。
妻がどうしたのかと、心配するほどに。
隆は、USBをパソコンで見た。
USBには、ウイルスが仕込んであった。

綾子から強奪した5億円を、全額寄付したことに百田は納得していなかった。
「俺は納得いってないからな」。
そしてやっと、これが浩一の復讐であることを本気にした。

浩一が出て行った後、百田は「冗談じゃねえ。復讐なんかに協力できっかよ」と言った。
だが二科は金になる。
百田はカズキに、だから浩一に協力するふりをしてどこかで金をとると言う。
カズキは戸惑いながら、うなづく。

その頃、ハルカは楓の前に現れていた。
自分の姉も医師だと話しかけたハルカは、楓に「お幸せに」と言った。
浩一からプレゼントされた指輪を「でも気を付けてくださいね。そんなもので気を引くような男」と言った。

「それ、ネットでも数百円で買える安物ですから」。
そう告げて去っていくハルカ。
歩きながら、「何やってんだろう私」と、当惑したようにつぶやく。
浩一は「九島亨。お前が終われば次は二科興三だ」と言っていた。



おお、今日が第5回、放送。
遅れてしまった。
先週は六平さんとのシーンにジーンとしました。

今週は、再び冷酷なる復讐モードに。
そして微妙なさざ波が起きていました。
四条綾子は、ジュディ・オングさんです。

「知っていて何もしないことは、殺したことと同じだ」。
最初にカズキに「俺の標的だ。汚すな」と言った時と同様の、すごみがありました。
一瞬に鋭さとすごみを込める。
楓に見せる笑顔との裏表の落差。

六車って、「任侠ヘルパー」に出てきたインテリさんと同じ名前ですね。
しかし隆の顔色が変わるほど、怖い人物らしい。
隆が止めに入り、興三が六車が出て来るなら隆はもう関わるなと言うほどに。
妻が隆に、どうかしたのかと聞くほどに。

これを見ると、隆は本当に悪い人じゃないみたいなんですよね。
どんどんわかってくると、どんどんつらくなります。
今回の標的の綾子と司は、あんまり同情できる人物じゃなかったですが。

奪った5億円を、浩一は全額寄付してしまう。
綾子が以前、町の募金活動を「偽善よね。私、こういうの大嫌い」って言っていたから。
しかしそれが、百田との間に亀裂を入れる。

本当に浩一の目的が復讐だと知った百田は、復讐を利用して金を奪うとカズキに言う。
ハルカは嫉妬が抑えられず、ついに楓の前に現れてしまう。
これだから仕事に、恋愛は持ち込んじゃいけないんだと思う一方、ハルカの気持ちもわかってしまう。
浩一が知ったら、怒るぞ~、ハルカ!

自分と浩一は仕事のパートナー。
楓は標的。
わかっていても、抑えられない何かを感じてるのでしょうか。

それから隆が三瓶に会いに行きましたが、三瓶はすぐに追い返した。
追い返したけれど、名刺を見て考え込んでいる。
やっぱり、三瓶は30年前の事件に関係しているのかもしれない。

六車と言う人物。
浩一たちの間で、すれ違う気持ち。
三瓶のことを知った時、浩一がショックを受けるような事態になるのでしょうか…。
それはつらすぎる。


好きな話じゃないけれど

書いていて、とても疲れます。
つらくなります。
利一を東尋坊につれていく前で一度、書くの挫折してます。
ここで終わってどうするんだ、ってところですよね。


大好きな大好きなお父さん。
自分がしゃべったら、大好きなお父さんが困る。
大好きなお父さんのために、あんなに小さいのに。
あんなに、ひどいことされたのに。

こんな目にあわされてもかばうなんて、親子だなと言う刑事の言葉。
一瞬でも「似てないよ」と言われたことが、引っかかった宗吉には恥ずかしかったに違いない。
利一は大好きなお父さんのために、自分の存在を消し去るつもりだ。

ここに出てきた登場人物の誰より、利一は純粋で強く、人間らしい。
恨んでない。
憎んでない。

利一の足元にひざまずいて、号泣する宗吉。
いっそ、罵られたほうが楽だったでしょう。
何年も修行をして、それでもたどり着けない自己犠牲という、最も崇高な行為を利一は自分に対してやっているわけですから。

菊代に子供ができたと言われた時、うれしそうな宗吉。
後の話を知って見ると、とても残酷なシーンです。
「生んでくれ!」
「俺、子供欲しかったんだ」。

何という残酷な場面でしょうか。
お梅はひたすら怖いけど、最初から鬼畜だったわけじゃない。
言ってましたね。

あたしと一緒になったから店が持てたんじゃないか、一緒になってなかったら、渡りの職人じゃないかって。
銀行員も言っていました、奥さんは、やり手だって。
それが愛人を作られて、子供まで作られていた。

鬼のようになってもしかたがない。
また、菊代が逆上したとはいえ、人として品格を疑われることを言っている。
お梅が一生懸命働いてきて、宗吉はそれだけでも、お梅に頭が上がらない。
それなのに、外に愛人を作った。

子供ができた。
喜んで、生ませた。
ひどい。
さらにそれを愛人が、子供がいないお梅に向かって指摘し、最後には嘲笑した。

こんなことになった元凶は宗吉。
お梅に人として、やってはいけないことをやった自覚があるはず。
傷つけたことが、わかっているはず。
だから元々、頭が上がらなかったお梅が何をしても、止めることができない。

お梅に「子供を自分が生んだんで、頭にきているんだろう」と言った時の菊代の顔。
これもまた、鬼畜の顔。
「わかりました」と言った時点で菊代はもう、眠る前に子供を置き去りにすることを決心していたように見えます。

それは宗吉たちに対する復讐でもあり、菊代がこれから生きていくのに邪魔だと言う計算も見えます。
しかし、だとしても子供を、あそこに置いていくというのは、どうにも理解できない。
仕返しにはなるけど、お梅に子供を押し付け、宗吉の性格を知っていたら、子供がどうなるかなんてわかる。
鬼畜生!と叫んだ菊代もまた、鬼畜だったということでした。

岩下志麻さんと小川真由美さんの最初の対決は、極妻なんてもんじゃないです。
小川さんはこの後、全く出ませんが、強烈な印象を残します。
男性にとっては悪夢じゃないですか、この事態。
岩下さんはこの後、「疑惑」では桃井かおりさんとも今度は理性的ながら、バチバチの対決を見せてくれます。

庄二が殺され、良子が置き去りにされ、利一は自分はそうはいかないと示す。
そこで宗吉は、利一を連れて出る。
良子も利一も、あんまりそういうことがなかったんでしょうね。
それがわかる様子が見ていて、痛々しい。

能登に行った宗吉が酔って、利一に語る自分の生い立ち。
「六つの時、母ちゃんもどっかに行っちまった」って、まるで、利一たちと同じです。
「でも一番嫌だったのは、弁当持たずに学校行くのだったな」。
この時の宗吉の、声の崩れ方。

「人の、だぁれもおらん運動場」。
もう、本当に本当につらそうで。
1人、運動場にポツンといる少年が目に浮かぶような語り口。

「父ちゃんのこと、奉公に出したまんま。捨て猫みたいに置いてきぼりだ」。
哀れだった。
でも、宗吉は良子を、捨て猫みたいに置いて来た。

誰よりもつらさがわかっているはずなのに、同じことしてしまう。
宗吉は徹底して弱くて、情けなくてみっともない。
さすが緒形拳って感じです。
良子の行方を聞く利一を連れて行く時の顔は、これもまた鬼畜でした。

この人は、刑務所でも小さくなって、仲間はずれにされるんだろうなと思う。
腹が立つにしろ、同情するにしろ、宗吉という男がダイレクトに感じられる。
いや、岩下さんにしろ、蟹江敬三さんにしろ、本当にこの登場人物の今までの人生が感じられるように演じてます。

蟹江さん演じる阿久津は、あの家がもう、嫌で嫌でたまらなかったんでしょう。
晴れ晴れとして出て行く感じがしました。
刑事に呼び止められて、本当にかかわりにならなくて良かったと思うことでしょうね。
最後にちょっとだけの出演ですが、婦警役の大竹しのぶさんが存在感を示してくれます。

自分で自分のことを選べない者に対しての仕打ちは、見ていて本当に不愉快。
嫌いな人、多いでしょうね、この映画。
私も見ていて、書いていて疲れました。
後にビートたけしさんと黒木瞳さんでドラマになりましたが、私はもう、見なかったです。

でもこれ、もう、40年近く前の作品なんですよね。
初めて見た時は子供の側で、宗吉もお梅も菊代もひどい、と思いました。
今は自分も大人の側にいる。

だからお梅の気持ちも、宗吉の弱さも、菊代の意地も。
察しがつかないわけではないです。
良いとは思わないけど。

最後の児童相談所の男性の言葉が、まるで現在のことを語られているみたいで、切ない。
嫌な映画で、好きな話じゃないけど、一度は見ておいて良い映画なのかもしれません。
俳優さんたちの演技は素晴らしいですし。

救いのない話の中、岩下さんが以前トーク番組で、言っていました。
あの、子供にご飯を詰めるシーン。
監督に本当にやるんですかと聞いたら、本当にやってくださいと言われて、すごく気が重かったそうです。

子役が怯えるのはわかっていたので、撮影にはいつもたくさんのお菓子を持って行った。
そして、おもちゃのプレゼントも持って行った。
休み時間には一緒に遊び、おばちゃんはいじめたりしないよ!あれはお芝居なんだよ!ということをわかってもらおうと必死だったそうです。

そのかいあってか、利一くんと良子ちゃんは、わかってくれた。
でも庄二くんはダメだったそうです。
岩下さんが来た途端、火が付いたように泣く。

そう言うと、その番組には庄二くん役だった子が来ていました。
中学生になっていました。
岩下さんは「ごめんねえ、ごめんね」と言っていました。

庄二くんは、全然覚えてないと言ってました。
司会は「俺、志麻に膝の上で飯食わせてもらったことがあるぜ!って自慢しなよ」と言ってました。
岩下さんは胸にずっとつかえていたものが下りたようで、とっても良かったとおっしゃっていました。
私も聞いていて、ほっとしましたよ。

「ママが迎えに来るまで良い子でいなきゃだめよ?わかった?」と言われる利一。
利一はずっと、良い子で我慢してましたよ…。
宗吉にもお梅が面倒見てくれるから、良い子でいろって言われてましたよ…。
この子は運が強い子だよっておそらく、派出所の奥さんだと思う女性が言ってました。

本当にそうだと信じたい。
良子とも会えて、そして利一は幸せになったと思いたい。
宗吉が利一にやってしまった不幸の連鎖を終わらせる強さが、利一にはあったと信じたい。
こんなきついお話にお付き合いくださった方、ありがとうございます…。


大好きな大好きな… 「鬼畜」(3/3)

翌日、利一は「よっこいないの」と言った。
「どこ行っちゃったんだよう、よっこ」。
宗吉は「表行って遊ぶんだ!」と叱った。

「よそで預かってもらったんだ」。
「言うこと聞かないと、お前もやっちゃうそ」。
利一が黙る。

「よっこいないの」。
今度は阿久津にしがみつく。
「もう帰ってこないの」。

阿久津が「どこ行ったんだ。ママんところか」と聞いた。
「ママんとこなんかじゃないね」。
「ん?ママんとこだろ」。
「違うね」。

宗吉とお梅の顔色が変わってくる。
「こら、仕事の邪魔すんじゃないよ」とお梅が言う。
「ねえ、よっこどこいったんだよ」とまた、阿久津に言う。

「ママんとこだろう」。
「違うね」。
「ねえ、どこ行ったんだよ」。
宗吉は利一を抱いて部屋につれ、放り出す。

お梅がビンを宗吉の前に置く。
「青酸カリ」。
銅板屋が置いて行ったものらしい。
少しずつ、だんだん弱るから、気づかれないとお梅は言う。

利一は、良子のようなわけにいかない。
年は6歳。
置き去りにしても、住所も言えるし、名前も言える。
気が進まない様子の宗吉にお梅は言う。

「あんたあいつの目、まともに見れる?」
「あいつの目は何もかも知ってる目だよ。庄二のことも、良子のことも」。
「あたしは今朝みたいなこと嫌だよ、心臓止まっちまうよ」とお梅は言った。
「あんただって、青い顔してたじゃないか」。

「でも庄二は俺じゃねえ」。
「あたしがやったっての。あたし一人に押し付ける気!」
「俺は何もしなかったし」。
「とぼけないでよ!」

お梅は宗吉を叩いた。
「あんた、片付いて助かったって顔してたじゃないか!「」
「あんただって、シートがずり落ちたら、って、そう考えてたじゃないか」。

「ちゃんとわかってんだから!いいよ、この際、チビのことはどうだって」。
「でもね、良子のことは、これっぽっちだってあたしゃ、知らないよ!あんたが一人で始末したんだから」。
そう言うとお梅は、「いやだいやだ!こんなのたくさんだ」と言った。

利一は一人で、商店街を歩いている。
駅に向かい、誰かの連れのようにくっついて改札を通る。
電車に乗り、男衾の駅に着く。

また、誰かの連れのような顔をして改札を通る。
元の家に戻る。
誰もいない。

利一は裏の山に上ると、隣の家の水浴びを見る。
親子の水遊び。
利一は、じっと見ている。
日が暮れて、橋を利一は一人で渡っている。

宗吉とお梅は、利一が暗くなっても戻らないので、パニックを起こしていた。
「冗談じゃないよ、あたし知らないよ。まさかあの女が連れ出したんじゃないだろうね」。
「そんな女じゃない」。
「ふん、あの女のこと、よくわかってんだね」。

「ほっとくの」。
「警察に届けるわけにいかないじゃないか」。
「しゃべりゃしないよ」。

2人は2階を探す。
はらり、と紙が落ちる。
「オニババ」と、お梅を描いた紙だった。

シートが落ちる。
宗吉が飛びのく。
シートが乗った背中を払う。
宗吉の肩から、紙が落ちる。

オルゴールの音がする。
凍り付く2人。
必死の形相で、オルゴールを探す。

庄二のオルゴールがある。
「ちきしょう!」
お梅がオルゴールを投げようとしたとき、パトカーが止まる。
「あんた…」。

利一は、パトカーに乗せられ、戻ってきた。
警官は、ちゃんと住所も言えたし、父親の名前も言えたと言う。
利一は自分を良子のように捨てるわけにはいかないことを、証明して見せたのだ。
殺すしか、ない…。

宗吉は上野動物園に行き、パンに青酸カリを混ぜる。
利一ははしゃいだ。
夕方になり、人気のない道路に宗吉は利一といた。
帰る前に、食べてしまおうと言って、宗吉は利一にパンを渡す。

利一が口にする。
しかし、「苦い」。
利一は吐き出してしまう。

「食えよ」。
「やだ」。
利一が顔をそむける。
「食べろよ!早く!食え!食え!」

宗吉が利一に食べさせようとして、もみ合っている。
横を、若い男女が通りかかる。
その異様さに、男女が立ち止まる。
我に返った宗吉は、座り込む。

利一が走って離れる。
男女は歩いていく。
離れていた利一が「帰ろうお父ちゃん」「帰ろう」と言ってくる。

宗吉は、泣き出した。
利一は宗吉の顔をのぞき込みながら「帰ろう」と言う。
宗吉は泣き続ける。

その晩、お梅は「熱海に錦ヶ浦ってあるだろう」と言う。
「飛び込んだら何日も死体が上がんないんだってさ」。
「うん、でもあの辺は車の量が多いからな」。
するとお梅は鋭い声で、「伊豆のあっち側だってどこだっていけるだろう!」と怒鳴った。

お梅は利一の服のメーカーのタグを、切っていた。
「こうやっときゃ、身元がわかんないからね」。
ぱちん。

翌日、宗吉は利一を連れて新幹線に乗った。
外を見ながら利一は「あ、駅止まんなかったよ」と言った。
「ああ、ケチな駅は止まんないんだよ」。

「あっ、東京タワーだ!」
利一が歓声をあげた。
「見える見えない」。
東京タワーが建物に隠れて、見えたり見えなかったりする。

「見える見えない」。
「見える見えない」。
「見える。ほら、見て見て!また見えた!」
うつむく宗吉。

お梅は汗を拭きながら、印刷機をかけていた。
新幹線が、一直線に進む。
「お父ちゃん、富士山!」とまた、利一が歓声を上げた。

車掌がやってくると宗吉は「あ、乗り越し」と声をかけた。
「この坊ちゃんは?坊やいくつ?」
「五つだよな」と、宗吉が言うと、利一はうなづく。

「父ちゃん、どこ行くの?よっこのとこ?」と利一は聞く。
着いたのは、福井だった。
利一の手を引いて宗吉は、東尋坊へ向かうバスに乗った。

「早く早く!海見ようよ!」
利一は、はしゃぐ。
海は、荒波だった。

利一は、崖の端の方まで行く。
海を見下ろす。
宗吉はその背中を、じっと見つめる。
海が光る。

その夜、居酒屋に宗吉は利一を連れて入った。
賑やかに太鼓が、たたかれている。
花火をしている親子を見ながら、利一は宗吉に手を引かれていく。

利一が立ち止まる。
「おい。行こう」と宗吉が声をかけるが、利一は動かない。
「行こうよ」。
利一は動かない。

夜の駅で利一は、宗吉の膝の上で眠っている。
能登のポスターが、宗吉の目に入る。
夜行で宗吉は、利一を連れて能登へ向かった。
宗吉は、夜の海を利一の手を引いて歩く。

翌朝、光の中、利一は海で遊んだ。
後ろから虫かごと網を持った宗吉が歩く。
また、夜。
漁船が海に出ている。

利一はテーブルの上を這う、2匹のヤドカリを見ている。
酔った宗吉は、利一を前に話し始める。
「父ちゃん花、まじめに仕事一本。脇目も振らず、一生懸命働いた。とおの時から働いたんだ、印刷屋で」。

「小僧のうちは追まわしって言って、人間扱いじゃなかった。つらかったなあ、石版磨きは」。
「石版に使う石に、砥石をかけてつるっつるに磨くんだ。何年も何年も。朝から晩まで」。
宗吉は磨く仕草をする。

「だから見ろ、指だってつるっつる」。
「つるっつる」と言って、利一の顔を撫でる。
利一がくすぐったそうに笑う。

「ははは、へへへ」と、宗吉も笑う。
「父ちゃん、石版の印刷にかけちゃ日本一。名人だぞ」。
宗吉は胸を張った。

「父ちゃんの父ちゃんはもう、生まれた時はいなかったんだ。どんな顔してたかな。六つの時、母ちゃんもどこか行っちまった。それっきりだ。へへへ」。
「それから父ちゃんは、あちこちの親類知り合い、順繰りにたらい回しだ。どこのうちでも貧乏で。どこのうちでも厄介者で。だあれも構ってくれねえ」。
「ふふふ、へへっ」と宗吉は笑った。

「ああ、着るものだっておめえ、恥ずかしいみたいな格好して。でも一番嫌だったのは…、弁当持たずに学校行くの」。
宗吉は遠い目をした。
目に涙が浮かんでくる。

「父ちゃん、昼飯の時間になると、1人で外に出んだ」。
「あの景色…」。
「…忘れんな」。
宗吉の声が、涙声になる。

「人のだあれもおらん、運動場…」。
「へへへっ」。
泣き笑いをしながら、宗吉は酒を飲む。
利一は横になっていた。

「利一、ねみいのか。おい」。
声をかけられて、利一は起き上がる。
「よし、さ、これ食べな」。
宗吉は枝豆を利一の口に運ぶ。

「印刷屋に奉公出て2年目にな、やっとお給金がいただけんだ」。
「そうすりゃ、まんじゅうも買えるし、うどんも食える。たんのしみで楽しみで、もうふたつきもみつきも前から、わくわくしてたよ」。
声に笑いが含まれる。

「ところがお給金の日に、父ちゃんだけ出ねえんだ」。
利一は父親を見ている。
「父ちゃんのこと、奉公に出したおじさんが父ちゃんの給金、そっくり前借りしちまってたんだ」。
「向こう何年分も、そっくり」。

「ガックリしちまった…」。
「そのおじさん、あちこちに借金してて、二進も三進もいかなくなって夜逃げしちまった」。
「父ちゃんのこと、奉公に出したまま」。

「捨て猫みてえに置いてきぼりだ」。
「ひでえもんだ…」。
「へへへっ」。

宗吉は泣きながら笑っていた。
「ひでえもん」。
「へへへっ、へへへへ。ひでえもんだよ」。
その夜、お梅もまんじりともせず起きていた。

翌朝。
宗吉と利一は、宿を出る。
宿の主人が「どうも、上りですか、下りですか」と聞いてきた。
「え、ええ」と、宗吉は口ごもる。

「お父ちゃん、見て見て!」と利一が呼ぶ。
「じゃ、どうも」と言って、宗吉は外に出る。
「お船に乗ろう」と、利一が言う。
「う、うん」。

2人は、小さな遊覧船に乗る。
「ほら、灯台だ」。
「あっちに島が見えるぞ」。
「おーい」と、利一が叫ぶ。

船を下りると、利一は海の方へ走っていく。
岩場だった。
「父ちゃん、ほら、カニ!」
「おお、いたか」。

バスが来る。
宗吉と利一が、乗っている。
バスが関乃鼻という停留所で止まる。

「父ちゃん、早く早く」と利一が急かす。
「利一、おい利一。あぶねえぞ」。
宗吉がそう言った時、利一が転んだのか、姿が見えなくなった。

「どうした!」
宗吉は思わず、駆け寄る。
崖の下は波の荒い海だった。

宗吉は利一に駆け寄って、助け起こした。
利一は、絶壁の端まで走って行く。
「あぶねえぞ」。
「大丈夫だよ」と、利一が言う。

「見てみて、ほら」。
利一が、崖の下を指さす。
宗吉は息を詰めて、下を見る。

岩に、波が激しく打ち付ける。
夕日の中、断崖に2人の影が黒く浮かび上がっている。
利一を抱き、宗吉は後ろに下がる。

夕日で赤く染まる海。
薄暗い中、バスが停留所に止まっている。
バスが、出て行く。

そのバスから少し離れた木の下で、宗吉がバスを見ている。
利一は、宗吉の膝に頭を乗せ、眠っていた。
「利一、利一」と、宗吉が言う。

「もう行かなきゃ」。
「起きな」。
何の抑揚もない、平らな声だった。

利一は眠っている。
宗吉は利一を、じっと見つめる。
利一を抱きかかえて、立ち上がる。

宗吉は、ふらふらと海のほうへ歩く。
夕日が沈んでいくところだった。
下は海。
岩を波が洗っている。

宗吉のジャケットが、落ちる。
利一は寝ている。
その顔に夕日が映る。
宗吉の顔にも夕日が映っている。

利一を抱いた宗吉のシルエットは、夕日の海に向かって黒く浮かんでいる。
次の瞬間。
宗吉は力尽きたように、手を下に伸ばした。
利一の姿が消える。

夕日が、海に沈んで、半分になっている。
波が岩を洗っている。
ざぶん。

波の音だけが、響く。
宗吉は虫取り網を海に向かって、投げた。
利一のかぶっていた帽子も投げる。

うろうろと辺りを探し、ジャケットを持った。
宗吉は暗くなりかけた道を、1人、引き返していく。
海は暗くなっていた。

翌朝。
日の光の中、パトカーが走る。
地元の消防隊員が「おうい、何か見つかったか」と叫んでいる。
「もうちょっと手前!」

派出所に利一が、寝かされている。
「子供だけ突き落とされたんだ。心中じゃないね」。
地元の漁師が、利一が松の根元に引っかかってるのを見つけて通報したのだ。
昨日バスで、父親らしいのが一緒だったのが目撃されていると派出所の警官は言った。

傷だらけの利一が、「うーん、うーん」とうなされる。
「おっかねえ夢見ているんだ。かわいそうになあ」。
利一を仰いでいる女性が「良かったねえ。この子はきっと、運の強い子だよ」と言う。

利一の着ていたシャツも、メーカーのタグが切ってある。
どうやっても事故ではないと、判断された。
シャツも靴も傷んでいる。

石けりの石が、ポケットに入っていた。
利一は、それだけしゃべったらしい。
「誰かをかばってるのかな」。

はい、と婦警さんが利一に、お菓子を出した。
利一は黙っている。
「仲良くしてくれないの?仲良くして!名前…、忘れた?」
「あきひろくん?はるきくん?…じゃあ、まさやくん!」

利一は、しゃべらない。
お年は?と聞かれると、指で7を示した。
「ねえ、坊やは五つじゃない。だってこないだ、お父さんと泊まった旅館、あそこで女中さんに五つって言ったじゃない。忘れちゃった?」

「良い子は嘘ついちゃ、だめじゃない」。
「お父さんと二人だったのね、どこから来たの?」
「汽車に乗ってきたんでしょ。お父さんの御用で?でなきゃ…、わかった!」

利一が、婦警を振り向いて見た。
「遊びに来たのね!そうでしょ!」
利一が、うなづく。

「ああ、やっぱりね。お船に乗ったでしょう」。
「海、綺麗だった?お船を下りて、そっからバスだったのよね?そしたら海の見える崖の上の原っぱに来たのよね?」
「そこで何して遊んだ?遊んだじゃない、何かして。教えて?」

婦警が、利一の肩に手をかける。
「ガッチャマン」。
初めて、利一が口を利く。
「ん?」

「ガッチャマン」。
「ああ、ガッチャマン。それから?」
「カニ、取ったの」。

「取ったカニは?」
利一が首を横に振る。
「それで?」
「眠くて」。

「ああ、眠っちゃったのね。それから?」
「落っこっちゃったの」。
そう言うと、利一は黙る。
刑事もため息をつく。

「おかしいじゃない、1人で落っこったなんて。眠ってる間に、ひとりでに歩いてったの?」
「そうじゃないわよね?起こしてくれなかった?お父さん」。
利一は黙っている。
「ねえ、思い出してよ」。

「眠ってる間にどうして、落っこちたか。お父さんどこ行ったのかな?」
利一は、正面を見ているだけだった。
「おうち帰っちゃったのかな?」
すると今度は、主任が厳しい口調で言い始める。

「坊や、なぜ黙ってんだ。今聞かれたこと、ほんとはみんな、知ってるんだろう?ん?」
「知っているのに黙っているのは、とってもいけないことなんだよ。うちのことだって、お父さんのことだって、言えるね?」
「坊やの知ってること、おじさんたち、ちゃんとわかってるんだぞ!言いなさい!」
だが利一は、じっと前を見たまま黙っている。

「いつも暑いすね」と、一人の男が刑事部屋に入って来る。
課長の名刺を持ってきた業者だ。
机の上に置いてってくれと言われた男が、別の机の上にあるものに、ふと、目を止める。

それを手に取る。
利一のポケットに入っていた石だった。
「どうかね」。
利一のそばにいた刑事が出てきたので、他の刑事が聞く。

「主任が頭にきてますよ」。
そう言った刑事が、男がいる机のそばにやってくる。
「おい、何見てるんだい」。

「お世話になってます。いやあ、珍しいものありますね」。
「ええ?珍しいものって?」
「かけらですけど、こりゃ石板に使う石材ですよ。今時珍しいなあ」。

そう言って男は「模様みたいなのが残ってますな」と言った。
「おい、これどんな模様か、印刷できるのか」。
刑事が色めきたつ。

「ええ?でも」。
「できるのかできないのか」。
「すいませんちょっと…、アラビア糊を敷いて、インキをかければどうかなあ」。

竹下印刷では、阿久津が挨拶をしていた。
お梅が「どうしても田舎に帰んなきゃいけないの」と、悲しそうに言う。
阿久津は、年寄りの面倒見なきゃいけないし、4つになる子供も喘息気味だしと言う。
今から出直しだと大変だが、やるしかないと言って、「お世話になりました」と挨拶をした。

道に出た阿久津を、刑事が呼び止めた。
宗吉が、階段下に座っている。
腑抜けたようだった。

「陽気のせいだね。気がつくと、あたしもボケーッとしてるよ…」。
お梅がしみじみ、言った。
水の音がする。

宗吉が顔をあげる。
立ち上がる。
「だけど、なんだな。みんな生きてくのに苦労してんだな」。
そう言って、機械を回し始める。

家の外に、刑事が立っている。
宗吉が見る。
目に恐怖の色が浮かぶ。

刑事が、2人になっている。
お梅が不思議そうに、宗吉を見る。
やって来る刑事。

今度はお梅が、刑事を見ている。
「竹下さんですね」。
宗吉が呆然としている。

新幹線の中。
刑事が「おかしな男だよ」と言う。
「自分が殺すところだったくせに、生きてたって聞いて本当に助かったって顔してやがる」。
トイレから出てきた宗吉が、手錠をかけられ、2人の刑事に挟まれて座る。

宗吉は能登南警察署に着いた。
「せがれを連れてきてやるからな」。
刑事が「チビはな、お前のことについちゃ完全黙秘。とにかく親の名前も住所も、どんな職業でどんな顔してるのか、どう脅してもだましてもすかしても絶対に口を割らなかったんだよ」。

「あんな目に遭いながらかばうなんて、やっぱり親子なんだよな」。
「おいっ、お前!良く罰が当たらなかったもんだな!」
「何て言って謝るんだ?」
「え?謝り切れないだろう!」

利一が婦警に、連れられてきた。
目に涙をためながら、微笑む宗吉。
利一が見ている。

「さあ、坊や。見てごらん。あの人」。
刑事が宗吉を指さす。
「知ってるよな?誰だか言ってごらん。ほらっ、さあ」。

利一は、黙っている。
「言いなさい。坊やのお父さんだろ」。
利一は、首を横に振る。
口を開ける宗吉。

「どうしたんだい坊や!もういいんだよ、ほんとのことを言っても。みんなわかったんだから」。
「な、坊やのお父さんだな」。
「違うよ父ちゃんじゃないよ」。

刑事は、利一の言葉に仰天した。
「坊や、何を言うんだ!え?どうしたんだよ、坊や!」
「父ちゃんなんかじゃないよ、知らない人」。

「父ちゃんじゃない」。
利一は、言いながら泣いていた。
「よその人だよ。知らないよ」。
「父ちゃんじゃないよ!」

利一は、泣きじゃくり始める。
立ち上がる宗吉。
利一の前に、膝まづく。

「勘弁してくれ利一」。
「勘弁してくれ利一」。
そう言うと、「おおおお」と泣き始める。

「利一」。
「うわああああ、利一、勘弁してくれ利一」。
宗吉は利一の足の上に頭を乗せ、這いつくばっていた。
「うわあああ、ああああああ」。

利一は、激しく泣きじゃくっていた。
「勘弁してくれ」。
「うう、ふううう」。
見ていた婦警も、刑事たちも沈黙していた。

「捨て子は今でも、多いですか」。
児童相談所の男に、刑事が聞いている。
「いや、多いと言うほどでは。それより若い親で、子を育てる能力と言うのか、育てる意思のないのが増えてねえ」。
男は仰ぎながら、言う。

そこに、利一が連れられてくる。
「どの養護施設も満員ですわ」。
「あ、もういいのかね」。
「ええ」。

涙を目にためた宗吉が、連行されてくる。
利一を見る。
立ち止まる。
笑いかける。

だが宗吉は、後ろから押されて歩き出す。
うなだれている。
留置所へ向かう扉が開かれる。

児童相談所の男は、利一に優しく話しかけた。
「坊や、坊やがこれから行くところにはね、坊やみたいな子が、何人もいるの。だから、すぐ友達ができるよ」。
児童相談所の、白い車が警察署の前に来る。

利一が中に入る。
婦警が優しく言う。
「男でしょ、元気出さなきゃだめよ!ママ、きっと見つかるわ。ママが迎えに来るまで良い子でいなきゃだめよ?わかった?」
利一が、うなづく。

児童相談所の車が、出て行く。
利一はその車の中で、じっと前を向いていた。
海沿いの道を、車は走っていく。
白い車は、利一を乗せて遠くなっていく…。


プロフィール

ちゃーすけ

Author:ちゃーすけ
癖の強い俳優さんや悪役さん大好き。
俳優さん、ドラマ、映画、CMその他、懐かしいもの、気になるものについて、長々と語っております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧

本も映画も文具も、いいものはいい!

LEVEL1 FX-BLOG
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード