こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
2017年06月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年08月
TOP ≫ ARCHIVE ≫ 2017年07月
ARCHIVE ≫ 2017年07月
      

≪ 前月 |  2017年07月  | 翌月 ≫

中年女性だってハードボイルドできる 「グロリア」

ジョン・カサベティス監督「グロリア」。
主演ジーナ・ローランズ。
1980年の作品。


グロリアと言う、みるからにあばずれの中年女がアパートに住んでいる。
彼女は、隣の部屋にコーヒーを借りに行く。
隣にいるのは、グロリアの友人の一家。
会計士のジャックと言う男の一家だ。

グロリアは元・マフィアのボスの情婦だった。
ジャックは末息子・フィルに、聖書だと言って手帳を託した。
さらにグロリアの友人は、フィルをグロリアに預ける。

子供は嫌いと言うグロリア。
あんたの子供は、中でもとりわけ嫌いと言う。
だがジャック一家の部屋は爆発し、皆殺しにされてしまう。

たった一人の生存者であるフィルを連れたグロリアは、騒然とするアパートを脱出する。
フィルを狙うマフィア、警察。
四方から追われる身となったグロリアはフィルの手を引いて、実家に帰る。

全くグロリアになつかず、可愛げのないフィル。
平凡な家庭にも結婚にも子供にも縁のないグロリアは、子供だって大嫌い。
ましてや生意気なフィルなんか、もっと嫌いだ。

グロリアはフィルを見離したくなる。
しかし見離せない。
生意気な口を利くとはいえ、フィルはまだ子供。
そして家族全員を殺されているのだ。

フィルは、グロリアの家から出て行ってしまう。
しかしフィルは新聞記事で、自分の家族が殺されたことを知った。
どこにも行けないと悟ったフィルは、グロリアの元へ戻ってくる。

やがて、マフィアはグロリアの存在に気付いた。
フィルを寄こせと言う、昔の仲間に向かってグロリアは拳銃をぶっ放す。
地下鉄、バス、タクシーを駆使し、グロリアはフィルの手を引いて逃げる。
そして、グロリアとフィルに心の交流が生まれ始める。

フィルを連れてホテルを出たグロリアは、ピッツバーグに行くと言う。
その途中、墓地に寄ったグロリアは、死んだ人の魂は同じところに集うとフィルに教える。
ピッツバーグ行きの電車を待つ間、グロリアとフィルが入ったレストランにマフィアがやって来た。

グロリアはマフィアたちと渡り合い、フィルを連れて逃げる。
しかしグロリアは自分が元マフィアのボスの情婦で、前科持ちであることから警察にも頼れない。
フィルのことを考えたら、自分と一緒にはいない方が良いのではないかと思い始める。
だがもう、フィルはグロリアから離れなくなっていた。

ところがグロリアとフィルは、ケンカになってしまう。
グロリアがバーにいる間に行方不明になったフィルを探し、グロリアはタクシーを使う。
そしてフィルがマフィアに捕らえられたことを知る。
グロリアはマフィアのアジトから、フィルを奪還する。

その夜、グロリアはフィルと語る。
グロリアはフィルに託された「聖書」が手帳であり、マフィアはそれを狙っていることを知った。
翌日、グロリアはボスのタンジーニに連絡を取る。

フィルには3時間経って、自分が戻らない時はピッツバーグに行くように言ってお金を渡した。
グロリアは、タンジーニのアジトに向かう。
手帳は会計士であったジャックが、マフィアの金の流れを記してあったものだった。

ジャックはその情報を、警察に流していた。
だから家族全員、殺したのだとタンジーニは言った。
グロリアは手帳を渡すから、フィルは助けてほしいと言う。

元々フィルは何も知らないし、マフィアの殺しの現場も見ていない。
そう言ってグロリアは、手帳を置いて出て行く。
帰りのエレベーター。
上からグロリアめがけて、銃弾が降って来る。

フィルはグロリアを待っていた。
だが3時間経っても、グロリアは来なかった。
仕方なくフィルは、ピッツバーグに向かう。

途中、墓地に寄ったフィルは見知らぬ墓に向かって、グロリアのことを祈る。
そこにタクシーが到着する。
中から降りてきたのは、老婦人だった。
老婦人が近づいて来る。

フィルは気づいた。
グロリアだ!
フィルが駆け寄る。
グロリアが両手を広げ、フィルを抱きしめる。



グロリアは、ジーナ・ローランズ。
これがだらしなさそうな、しかも、中年。
スタイリッシュな女ギャングじゃないですよ。

かつては凄みのある美人だったんでしょう。
でも今は、生活が、体にも顔にも出ている。
「鬼龍院花子の生涯」で、侠客の鬼政の女房を演じる岩下志麻さんが、鬼政の仲代さんに聞いたそうです。
この鬼政の女房って、どういう女だったんでしょうね?

仲代さんは映画「用心棒」で、ヤクザの女房を演じた山田五十鈴さんのことを思い出した。
あの女房は、女郎屋の女将だった。
元は女郎だろう。
そう言うと、岩下さんは納得した。

グロリアはおそらく、元は娼婦。
そして、マフィアのボスの情婦となっていた。
タバコの吸い方が、いかにもあばずれ。

料理はまるっきり、できない。
焦がしちゃって、フライパンごと捨ててる。
しかし、これが衝撃的にカッコいい!

中村主水は、風采の上がらない中年男。
しかし、裏の仕事をする中村主水はものすごくカッコいい。
だが、だらしなさそうな中年女性がカッコいいと言う映画は、かつて見たことがなかった!
グロリアがカッコいいと言うのは、衝撃でした。

マフィアのボスの情婦であったグロリアは、どちらかというとマフィア側に立っているはず。
さらにグロリアは子供が嫌い、フィルみたいな子供はもっと嫌い。
マフィアの怖さも知っているグロリアが、子どもを連れて逃げる理由はないはず。
では、なぜ。

無残に家族を殺され、たった一人で放り出された子供。
それを寄ってたかって、マフィアの大の男たちが追って来る。
この状況がただ、グロリアの奥底にある庇護欲、正義感が許せないと言う。

正義感だなんて、グロリアは否定するだろうけど。
放置するなんて。
この子の家族を殺したマフィアに、一枚嚙むなんてできないわよ。

ショルダーバッグを肩にかけ、タイトスカートの足を広げて拳銃を構える。
昔の仲間に向けて、撃って来る。
そのまなざし、睨み。
子連れの虎が一番怖いというが、それはまさにグロリア。

グロリアにフィルを預けたいと言う、グロリアの友人の女性もおそらく元は娼婦。
しかし、生き方は全く違ったんだと思います。
マフィアのボスの情婦であったけれど、グロリアは自分の力で生きてきた女。
自分の身は自分で守ってきたと、構える拳銃、睨む目力が言っている。

「レオン」を見た時、「ああ、これは『グロリア』だ」と思いました。
フィルが女の子に、グロリアが男になった。
だけど、中年女性のハードボイルド映画ってすごい衝撃的だった。

カッコよかった。
当時の日本では、考えられないものでした。
女性、しかも中年がハードボイルドしちゃう。

ハリウッドってやっぱり、懐が深いんだなあと思いました。
本当に多種多様なんだな。
個性豊かなんだ、と感心しました。

ラスト、グロリアは生還する。
そしてフィルに微笑む。
優しい、優しい笑顔。
おそらく、グロリアの人生で初めて見せる母性の笑顔。

監督はジョン・カサヴェデス。
グロリア役のジーナ・ローランズの旦那さん。
いや~、ここまで中年女性さらけ出させてカッコよく作るって、監督、惚れぬいてるでしょ!

「グロリア」は、シャロン・ストーン主演でリメイクされています。
「氷の微笑」の悪女キャサリンが非常に魅力的だったので、期待できる映画だったんですけどね。
ジーナとは違った、カッコいいグロリアにできたと思うのに、…な映画で残念でした。

ちょっと前に放送された市原悦子さんが刑事・乙女を演じたシリーズの最終作が、グロリア風味でした。
悪くはなかったけど、グロリアが生きるような話になってなかったと思いました。
日本でグロリアをやるなら、私はぜひ、余貴美子さんにやってほしいです。


スポンサーサイト