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「今度の仕事は煙詰めだ」 新・必殺仕置人 第5話

少し前になりますが、将棋にすごく注目が集まりましたね。
必殺には、将棋を扱ったお話がいくつかあります。
それも印象に残る話でした。

「新・必殺仕置人」第5話、「王手無用」。

正八の絵草子屋に、三番町の疋田兵庫という旗本がやってくる。
将棋の本を真剣に立ち読みしていたので、正八はいくつか将棋の本を紹介する。
すると疋田は本を持って、後で代金は取りに来るように命じた。

「困ります、うちは現金商売なんですよ」と言う正八だが、兵庫は自分を信用しないのかと言い、ついには旗本を愚弄するかと脅して、2朱の支払いをせずに戻ってしまった。
正八ともめている時、おていが兵庫にぶつかった。
見事、財布をすったおていに、自分は代金だけもらえればいいと飛びついた正八だったが、おていいわく、「大げさな財布」の割りには中身は代金にも満たなかった。

屋敷に戻った兵庫の元に、女の将棋士・初津が訪ねてきた。
「来たか!」と喜ぶ疋田は、同じ旗本の小出と横地、神尾も呼べと言う。
日も落ちて、疋田は女将棋士の初津と将棋を打っていたが、負けてしまう。
「詰みでございます」と言われ、「もう一番!」と言うが、「無駄でございます」と言われてしまう。

「大駒を落とせばまだしも、平手ではとても将棋にはなりませぬ。今夜はこれにて失礼します」と言う初津。
兵庫は「聞こえんのか!もう一番、させと申しておる!」と食い下がる。
自分の駒を片付け始めてしまった初津に兵庫は逆上し、初津を刺してしまった。
悲鳴をあげる初津を、旗本たちは次々刺す。

翌朝、河原に初津の死体があがった。
「相当やられている、これはかなりの恨みだな」と、主水は見た。
ふと見ると、初津は何か握っている。

手を開いてみると、将棋の駒をにぎりしめていた。
「将棋との駒と女か。こりゃまた妙な取り合わせだ」と主水は言った。
女の素性さえあがれば、後は居眠りしてても犯人はあがると見た主水だが、女の遺体を確認しに来て、「初津!」と駆け寄った男に、大きな態度で出てしまった。

だがそれは将軍にも将棋の指南をする伊藤宗看(棋士4段・伊藤果)だった。
主水は上司から怒られ、必ず下手人をあげるように言い渡された。
殺された初津は、正式な一門ではないが、宗看の弟子だったのだ。

寅の会。
三番町の疋田兵庫の仕置きが、かけられた。
他の3人も付け加えられた。

「旗本か…」。
「付け句が3人もあったんじゃねえ…」と仕置人たちが渋る中、鉄は「おもしろそうじゃありませんか。やりがいがある」と意欲を示した。
その結果、鉄が40両で落札してきた。

しかし主水は、奉行所の表の仕事で兵庫を追いかけている。
それを知っている鉄は、今度の仕事は主水を外す、と言った。
主水は、表の仕事で手柄を立てる必要がある。

だから、裏の仕事より表の仕事を優先するだろう。
主水が兵庫たちを捕縛してしまうと、仕事がフイになるからだ。
そのため、今度は主水を出し抜く、と鉄は言った。
主水が怒るぞ、と言う己代松に鉄は「あのやろうが2足の草鞋を履く以上、これからも起こることだ」と言った。

正八は絵草子の恨みもあって、兵庫はとんでもなく悪い奴だと報告した。
兵庫たちの一派はとにかく評判の悪い乱暴者で、岡場所でもしたい放題だった。
彼らの狼藉に女郎たちが逃げ惑う中、1人ずつ、順番にやっつける、と鉄は言った。

一方、岡っ引きの銀次の的確な捜査支持にも関わらず、主水の捜査は難航した。
主水の仕事の重要さは中村家にも伝わり、出世への道と勘違いしたせんとりつの主水への態度が変わった。
ますますプレッシャーを感じる主水だった。

岡場所で朝帰りする兵庫たちを見た己代松は、鍋を叩いて中にいる鉄に合図する。
朝湯の為、銭湯に寄り、湯船の中で大きな態度をしている神尾に鉄が近づく。
「だんな、夕べはだいぶお楽しみで?だいぶ凝ってますよ、この辺りが」。

神尾、ご機嫌で鉄に背中を触らせていた。
背中を指でたどった鉄の指に、グッと力が入る。
鉄は、湯船の中、背骨を外した。
湯船の中に、神尾が沈んでいく。

一方、主水は宗看の屋敷に行く。
初津の殺された当日の行動がつかめないため、宗看の弟子に質問した主水だが、これと言った情報は得られなかった。
そして主水は宗看の奥の座敷に、虎がいるのを見た。

主水は鉄の家に行く。
宗看の屋敷に虎がいたことで、鉄を問い詰めた。
寝っ転がって煙管をふかしていた鉄は、主水に喉を締め上げられる。

鉄は、虎がどんな暮らしをしているかは死神しか知らないと言う。
「それを探ろうとして、殺された奴はいるがな」。
喉を締め上げられた鉄は咳き込みながら、「なあ、八丁堀、おめえ早くこの一件から足抜け!奉行所の手柄なんかいつだって…」と言う。

「…俺、外しやがったな」。
「ああ、外した」と鉄が答える。
「なぜだ。なぜ外した」。
「それを話したら掟破りだ。おめえも俺も殺されるぜ」。

鉄がそう答えた途端、患者がやってきた。
主水はこっそり、鉄の家を出て行く。
鉄もこっそり、出て行く主水をうかがっていた。

湯屋で、神尾が背骨を折られて死んでいた。
そのことを兵庫たちに教えた小普請組の老人は、兵庫たちを叱咤した。
悪い行いが重なれば、いずれこういうことになると言ったはずだ。
目付けも動いているし、これ以上、かばえない。

身を慎み、当分の間、自宅にて謹慎しろと言い渡す。
叱られた兵庫たちは、今度は町の飯屋で酒を飲み、荒れていた。
周りの客も、店の娘も怖ろしそうに遠ざかっていた。

その中に、鉄と己代松がいた。
刀を抜いた兵庫に、中にいた者は逃げ惑う。
兵庫は「こら、坊主!」と鉄に目をつけて、刀を向けた。

危険を感じて、パッと壁際まで下がる鉄と己代松。
みなが怯えるのを見て、満足した兵庫は刀を収めてまた飲み始めた。
飯屋の裏に来た己代松は、2間の距離を測って目印をつけていた。

そこに兵庫の仲間の小出が、路地裏に用足しに来た。
上から、己代松が狙いをつける。
己代松は、屋根の上から小出を撃った。
発射音に驚いた飯屋の者たちと、兵庫と横地が出てくる。

路地裏では、小出が倒れている。
「小出!相手は誰だ!」と、兵庫は倒れている小出をゆする。
反応しない小出を見た兵庫は、「医者呼んだか?医者呼べ!」と叫ぶ。
怖ろしそうに立ち尽くす横地の背後に、今度は鉄が近づく。

野次馬の中、鉄は誰にも気づかれないよう、すばやく横地の背骨を外す。
声もなく、横地は目を剥いた。
「ちくしょう、小出もやられたぞ」と言った兵庫の背中に、横地が倒れ掛かる。
「横地!?」

横地も死んでいることを知った兵庫は恐怖に駆られ、「どけ!」と野次馬をかきわけて逃げ帰った。
走っていく兵庫を、死神が見ていた。
主水は初津が握っていた将棋の駒の持ち主を、調べていた。
その中に、疋田兵庫の名があった。

主水が調べている最中、捕り方たちが飛んでいく。
「何だ?」と外に出た主水は、旗本が2人殺されたと聞かされる。
現場に行った主水は、「えらい騒ぎですな。鉄砲でやられましたか」と言う。

すると、上司は「鉄砲じゃない!」と言う。
「は?」
「竹だ!」

「竹?」
「ああ、そうだ。竹鉄砲だ」。
「竹鉄砲…」。

正八の地下室では、「今夜は表歩けないよ、捕り方だらけだ」と正八が言っていた。
表では、捕り方たちが走り回っている。
町方は、きりきり舞いだと鉄は笑う。

己代松は、主水は手柄をほしがっていると言った。
いざとなったら、自分たちを売るかもしれない。
すると、鉄は言う。

「奴が売ったら俺が殺す」。
「それだけのことだ」。
解散して帰ろうとした時、誰かが階段を下りてくる。

思わず鉄と己代松が隠れる。
頭を隠していた鉄の背中を「おい」と言って、蹴飛ばしたのは主水だった。
「お、おうっ、しばらくだったな」。
「そんなに俺のツラ、見たくねえか」。

「え!」
「いや~、びっくりした~」。
「全然わかんなかった。ごめん」。

鉄はそう言って、壁際のイスに座った。
笑う鉄をよそに、次に主水は鉄の横にしゃがんでいた正八を「正八!」と言って引っ張り出した。
鉄と正八と鉄を並んで座らせると、主水は鉄の前に顔を突き出しながら、「おめえら、ずいぶん派手にやってくれたな」と言った。

「え?やってくれたって何を?」と鉄はとぼける。
正八と顔を見合わせる鉄。
今度は主水は階段の裏に隠れていた己代松を「松!」と言って、引っ張り出した。

主水は「残るのはただ1人、三番町の疋田兵庫か」と聞いた。
「追いかけていたのは同じ男とは、皮肉なもんだ」。
すると己代松は、「捕まえたらどうだ」と言った。

だが相手が旗本では、町方には手が出ないのだ。
上手く行ったとしても、初津は無礼討ちということになれば、大した罪にもならない。
将棋処の宗看もそれがわかっていた。
だから、寅のところに依頼したんだろう。

それを聞いた鉄がつぶやく。
「将棋どころ?」
主水は言う。

「伊藤宗看ってのは、ただもんじゃねえぞ。町のもんが言ってるだろう、あいつは鬼だ、鬼宗看だって」。
主水は、「ほい」と鉄の前に手を出す。
「分け前いくらだ」と聞く主水に、「…金は、…ない」と鉄がボソッと答える。

「ねえ?」
「ねえ」。
鉄がボソッと「前金、みんなで分けちまった」と言う。

「そうか、それじゃしょうがねえなあ」と手を引っ込めた主水だが、正八を引きずり出し、放り投げる。
「行って来い、てめえら!疋田の屋敷へ!屋敷の周りは町方のもんがうろうろしてるぞ」。
「町方?!」

正八も鉄も己代松も、一気に起き上がる。
「何だ、おめえら、何にも知らねえのか」。
当分の間、兵庫の屋敷は町方が守ることになった。
それを聞いた鉄は、頭を抱えてしまった。

翌日、主水たちが守る兵庫の屋敷に、本屋の掛け取りだと言って正八がやってきた。
屋敷に入る正八に、主水は足をかけ、正八は派手に転んだ。
主水の横で起き上がりながら、正八は「あのね、あれからみんな気にしてね」とささやく。

「やっぱり旦那外すのはまずいんじゃないかって」。
「分け前のことはさ、鉄つぁん、後で考えてるっていうからさ。頼むよぉ」。
それを聞いて主水は、「おい、通してやれ」と言い、下っ引きたちは正八に道を空けてやった。

詰め将棋をしている兵庫は正八をじろりと見ると、代金を廊下に放り投げた。
正八は「ありがとうございます」と、小銭を拾いながら言う。
そして、自分のところは、麻布の将棋どころにも本を納めていると話し出した。
宗看先生とも顔なじみにしてもらっている。

そう言って、正八は一枚の紙を取り出した。
「今度作った奇想天外の煙詰め」。
「ご存知ですか?盤の上の将棋の駒が一手進むごとに、煙のように消えていく奇想天外煙詰め」。

正八は兵庫に紙を見せると「どう?旦那さんだったらこんなの、すらすらと?」と聞いた。
だが兵庫はもう、正八の言葉を聞いていなかった。
煙詰めに夢中になった兵庫は、夜も将棋盤と向かい合い、他のことは何も気に留めずひたすら考え込んでいた。

おていは正八の家で、「ほんとに来るのお?」と言っていた。
「来るよ、絶対来るよ」。
鉄は「バカに自信があるな」と言った。

正八は「うん。あのね。将棋狂いってのはそういうもんなの。詰め将棋が解けないとさ、二晩でも三晩でも眠れないの」。
「解けるまで気が休まんないの。だから絶対来る」と答えた。
その時、誰かが来た。
兵庫だ!

しかし、店にいる正八の正面に現れたのは、死神だった。
思わず正八は顔を伏せ、後ろにいた鉄に応対させる。
死神は「今夜中にカタをつけてもらう。虎がそう言っている」と告げて戻った。

おていは「あたし、帰る。死神に殺されるの、嫌だもん」と言った。
「待て!」
その時、駆け足の音が響いた。
あわてておていと鉄が隠れると、戸が開いて、兵庫が顔を出した。

「この図に間違いがないか」。
聞いた兵庫は、正八が「間違いなんかございません」と答えると、「どうしても解けん」と紙を出した。
情けない顔をして、紙を正八の目の前に広げると、「答えを言え」と言う。

「答えを言え!」
「これは答えがないんです」。
「ない?ないはずはない!答えを言え!」
兵庫は、正八の胸倉をつかんだ。

「ないものはないんです」。
「ある!ある!」
「言え!言ってくれ。答えを教えてくれ、これ、このとおりだ」。

兵庫は泣きそうになりながら、頭を下げて哀願し始めた。
「宗看先生が近所までお稽古に来ているので、宗看先生が答えを教えてくださいます」。
その言葉に興奮した兵庫は、「どこだ!どこだ!案内せい!」と迫る。

正八は、兵庫を荒れ寺に連れて行った。
荒れ寺を前に兵庫は「おい、どこへ行く!」といぶかしんだ。
だが、寺の中で宗看が将棋盤を前にしているのを見る。
将棋を打つ音がする。

「疋田兵庫どのか」。
聞かれた兵庫は、「…はい」と言って座る。
「煙詰め!」

兵庫は、身を乗り出して息を呑み、盤を見つめる。
駒が、次々消えていく。
『この煙詰めは、宝暦5年、宗看の弟に看寿より完成されたが、幕府はそのあまりの精妙さに恐怖を抱き、看寿に閉門を言いつけたという。
人間の知恵の限界に挑んだ煙詰めは、その後2百年の長きにおいて、一人としてこれを作りうるものがいなかった』。

宗看と兵庫のいる、その影で鉄がバキバキと指を鳴らす。
障子に己代松の影が映り、己代松がそっと障子を開けて中を見る。
鉄の指が鳴る。

次々消えていく盤の上の駒。
最後の4駒。
3駒。
紙と見比べる兵庫。

最後の2つになった時、宗看が「このぎょくは、あなたの命だ」と言って立ち上がる。
夢から覚めたように兵庫は「何?」とボンヤリして言った。
宗看が出て行く。
その後姿に兵庫が、「先生、今一度!今一度だけ!」と声をかける。

宗看が去った後、兵庫は将棋盤の前に座り始める。
駒を並べた時、ハッと気配に気づく。
「何奴だ!」
2本の指を立てた鉄が迫っていく。

「何奴だ!」
兵庫は斬りかかるが、鉄は押さえつけ、障子の前に連れて行く。
主水の影が映る。
「疋田さん、あんたを守るのが私の役目だ。だがちょっとあんたは、やりすぎたみたいだな。…死んでもらうぜ」。

その言葉が終わると、障子から刀が突き出され、兵庫に刺さる。
鉄が手を離す。
主水が顔を出す。
障子が閉まる。

翌朝、屋敷の中では、兵庫の切腹している姿が発見された。
「さすが直参の旗本。立派な最期だ」という声がする。
「腹を切ったか」と主水の上司が言う。
主水が「もはや逃れぬものと覚悟したようで」と答える。

「女将棋さしを殺したのもこの男か」。
「はっ、確かな証拠がございます、間違いございません」。
「そうか、貴様も一つ手柄を落としたな」。

「ツイてない時は何やってもダメですね」。
「まだ旗本殺しが未解決だ!今度はそっちに全力を尽くせ!」と言って上司は出て行く。
「はい」と返事をした主水の後ろで、旗本たちが囁く。

「死んでよかったな」。
「俺も疋田さんが死んでくれて、ホッとしたよ」。
「そうでなくとも旗本の評判が悪かったからな」。
「これでよかったんだ…、これで」。

鉄と鍋を突付きながら、主水が聞く。
「あの初津ってのは、宗看の一体、何だったんだ」。
「旦那もにぶいね、たかが女弟子にあんな高い銭使うかよ」。
「そうか、それじゃおめえ、あれは宗看のこれだったのか」と主水が小指を立てる。

「だから寅に頼んだのよ、50両の大枚を使ってな」。
「なるほど」と納得した主水だが、「おい、後金はちゃんと出たんだろうな」と聞く。
「出た」と鉄が言う。
「一人頭10両だったな」と言う主水に鉄は、「お前5両だ」と言う。

「ええ!」
「今度の仕事は煙詰めだ」。
「1人ずつ順繰りに消してって、おまえさんがやったのは最後の詰めだけだ。5両でも多すぎるくれえだ」。
鉄は紙に包んだ5両を置く。

それを取りながら、主水は「こりゃねえだろ、おい」と抗議した。
しかし鉄は「これはねえだろって、おい、おめえ、障子の間から、おまえは刀突き出しただけじゃねえか!」
「あんなもんはバカでもできる!」と小声だが強い口調で言った。

後ろの客と従業員をチラッと気にした主水に、鉄は立ち上がると、「どうもごちそうさん、うまかったあ、今日のふぐ!」と言った。
さっさと下りていくと、「勘定頼むぜ」と言って出て行く。
残された主水は「ちくしょう」とつぶやき、鍋をつつく。

「なんだこりゃあ」。
主水は、菜っ葉をつまみあげる。
「あの野郎、菜っ葉だけ残してきやがった!
「…やっぱ、あんこうにするんだったな」と、ぼやく。


4話が軽快に見せながらも、平家の末裔、血筋を守る村、代々続く人身売買…というものすごく重い話。
今回は、仕置人たちのやりとりがとことんおもしろい「王手無用」。
この緩急のつけ方、当時のスタッフさん、見事です。

悪役も最高!
菅貫太郎さんって、ほんと、バカ殿とか、バカ旗本演じたら世界で一番。
誉め言葉ですよ、もう、最高。
目が狂ってるんです、目が!

何もそこまでしなくても、って程の斬り殺し方。
無役の旗本のうっぷんを、これで晴らしてるんじゃないのってぐらいの斬り殺し方。
居酒屋で旗本同士で話してる時、「先祖伝来の借金を抱えて、たったの5百石だ。お役目一つ頂戴するわけじゃない」って言ってます。

おていが冒頭で兵庫からすった財布も、中身なかった。
初津が来た時、酒持って来いって言うと、屋敷の小間使いのおじいさんに「伊勢屋はダメだ、あそこはもう3年も払ってないから貸してくれない」と言われる。
居酒屋で兵庫は、「武士の魂をどうしてくれるか~!」と言って、刀を抜いてる。

徳田新之助と違って、本当の貧乏旗本なんだ!
あんな風に優雅じゃない、これが本当の貧乏旗本の姿なんだ?!
それで、すごく荒れてるわけです。

すごい迷惑なんだけど、どこか憎めない。
何かコミカル。
「仕事屋稼業」では、菅貫太郎さんは2回出演。

1回目では、許婚と間もなく結婚するっていうジュディ・オングを連れ込み、引っぱたいて手篭めにする。
そこを奥方に見つかっても、俺悪くないも~ん、女が悪いんだも~んって感じの最低ぶりでした。
さらに世継ぎができたと言って子供を奪い取るわ、だんなさんを殺すわ…。

ほんとに本領発揮してました。
まだまだ素人っぽい仕事屋・政吉を馬に乗って追い、鞭をふるって、最後は半兵衛にやられる。
完璧!なバカ殿でした。

2回目は、悪女に道を狂わされて使い捨てにされる、博打打ち。
潜入した半兵衛に、かつての自分を見る。
同じように狂わされると思った半兵衛を嫉妬の余り殺すかに見えたが、逃げてくれと訴える。

自分のようになるな、と。
それでも自分はもう抜けられないと言い、最後は悪女の策謀によって用済みと殺される。
とても哀しく切ない悪党だった。

「仕業人」では、市原悦子さんにたかって生きているしょうがないヒモ。
でしたが、根っからの悪党にはバッサリやられる。
市原さんが悲鳴をあげて、そして主水に仕事を依頼する。

どこかいいとこがあったんだろうな、と思わせる調子のいい小悪党ぶりが哀しかった。
仕業人たちにも「どこか憎めない奴だった」と言われる。
今回は鉄を見て「何奴!」と怯えるところが、「仕置人」1話で鉄に仕置きされる奉行を思い出しました。

本当にうまい俳優さんです。
ああ、今、いらっしゃったら…。
つくづく、残念です。

さて、鉄と己代松、旗本2人を居酒屋の路地で殺した後、正八の地下室にいる。
それで、何してるかと言うと、絵草子を刷る道具使って、何か刷ってるんですね。
鉄の家にある衝立の文字みたいなの、作ってる。

それで、出来上がった紙を見せると、己代松が「ああ!」とその出来に声をあげる。
「どうだ正八、いいだろう!」と見せる鉄ちゃん。
でも正八は、「この商売甘く見ちゃいけないよ」と言って、破いちゃう。
ガッカリした2人。

鉄は「明日も仕事だ早く寝ましょう」と、何だか健全なこと言って解散。
…と思ったら主水が登場。
この時の鉄のとぼけっぷりが、ほんとにおかしい。

己代松が主水は自分たちを裏切るかもって言う。
まだ、イマイチ、主水に信用がないらしい。
鉄はさらっと、そしたら殺すだけって言う。
この辺りに、かえって妙な信頼関係を感じましたね。

そんな会話の後なのに、鉄ちゃん、怒りの主水から逃げ回る。
主水が、「松!」って呼ぶと一緒になって「松!」って呼んで怒ってる。
しかも、引っ張り出した己代松を主水の方に放り投げて。
調子いい。

ここで、怒ってる主水と対峙したくなくて、鉄は絵草子刷り始めるし、己代松は一緒になって手伝ってるし。
主水は主水で、正八に紙ぶつけて、正八が「あっ!もうヤ!」ってすねて壁際に引っ込んじゃう。
「分け前いくらだ」と聞く主水に、「…金は、…ない」って鉄が答えると、主水が正八を引きずり出し、放り投げる。

その時の体勢が座ってる己代松、己代松の膝に鉄、その鉄の背中に正八って…。
主水に「行って来い、てめえら!疋田の屋敷へ!屋敷の周りは町方のもんがうろうろしてるぞ」と言われて、「町方?!」って一気に跳ね起きる。
「行ってみろ、おっかねえぞ」って、主水もすねて、ふんぞり返ってる。
「行って来いよ、これからすぐ。銭もらっちまったんだろう、行って来いよ」。

困りきっちゃった鉄がキレてみんなに「行って来いよ!」。
「行って来いよばかやろう」って、正八に紙を投げつけちゃう。
正ちゃん、踏んだり蹴ったり。
さらに鼻をかんでいる己代松の頭をこずいて、「行って来いよ!」。

その後、正八が来て囁くけど、鉄も困っちゃったんでしょうね。
いや、主水って彼ら仕置人には仕置きを遂行する上で、ものすごく重要な存在です。
それを再確認。

兵庫の仕置きは、鉄との連携プレー。
これがまた、プロ同士、鮮やかな手口なんですね。
息もピッタリ、安定感。

だけど、最後は5両。
しかもその理由に、今度は主水がケチつけられないでお願い。
「仕置人」を思わせる、鉄と鍋をつつく主水。

ちゃっかりした鉄。
菜っ葉を前に後悔する主水。
…こんな、仲間とのやりとりする主水、「仕事人」の後の方ではなかなか見られませんよね。

やっぱり、鉄の存在は大きい。
鉄と主水の仲良しケンカも見応え、あり。
仕置きは主水が最後で、鉄と己代松が中盤という、ちょっと変則的な回。
それもまた、おもしろい、徹底した娯楽編と言える回では。

宗看先生は、本当の4段の伊藤果さんの出演。
詰将棋作家としても知られ、『詰め将棋の鬼』と呼ばれることもある方だそうです。
この煙詰めは、本当の話。

幕府はそのあまりの精妙さに恐怖を抱き、閉門を言いつけた…、って相当な戦略家と見られたんでしょうね。
その後2百年の長きにおいて、一人としてこれを作りうるものがいなかった。
ここもまた、すごい。

宗看先生は、主水の言うように、指し将棋、詰め将棋ともに優れ、「鬼宗看」と呼ばれたそうです。
御城将棋では、18勝6敗1持将棋と、圧倒的に強かったとか。
「象戯作物」(俗称:「将棋無双」)は、詰め将棋史上の傑作と言われているそうです。

残っている「中将棊作物」の中には2000手を超えると推定される図もあり、いまだ解かれていないものも多いとか。
江戸の将棋文化の、最大の謎の一つになっているんだそうです。
弟の看寿さんもすごかったらしいです。
「仕置人」世界もすごいけど、この事実もまた、すごい回です。



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Comment

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軽快で面白い話ですよね。
新仕置のカラーが良く出ていたと思います。

ちゃーすけさんが書かれている様に菅貫太郎さんの
チンピラ旗本が最高でした。
やはりバカ殿系の役柄ではこの人の右に出る物は居ないですね。

今回も形振り構わないごろつきっぷりでしたが
菅さんが演じるとどこか品があって
ここまで落ちぶれるまでに色々あったのかなあと
何となく思ってしまいます。

鉄と主水のやり取りも最高でしたね。
主水の殺しを馬鹿でも出来るってこき下ろせるのは
鉄だけなんじゃないでしょうかw
2017年10月08日(Sun) 22:55
古畑さん
編集
>古畑!さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

>軽快で面白い話ですよね。
>新仕置のカラーが良く出ていたと思います。

仲間同士の新・仕置人ならではのやり取りがすごくおもしろかったです。

>ちゃーすけさんが書かれている様に菅貫太郎さんの
>チンピラ旗本が最高でした。
>やはりバカ殿系の役柄ではこの人の右に出る物は居ないですね。

もう、最高です。
悪いのに情けなくて。
笑っちゃうのに怖くて。

>今回も形振り構わないごろつきっぷりでしたが
>菅さんが演じるとどこか品があって
>ここまで落ちぶれるまでに色々あったのかなあと
>何となく思ってしまいます。

この人のバカ殿は、知性と品格が漂っているから、それらしく見えるんですね。
将棋をやっていられるような家に生まれたら、こんな風にはならなかったのかなと思わせます。

>鉄と主水のやり取りも最高でしたね。

もう、地下室から最後のふぐまで、最高でした。
魚だけ食べて「おいしかったー、勘定頼むわ」まで。

>主水の殺しを馬鹿でも出来るってこき下ろせるのは
>鉄だけなんじゃないでしょうかw

鉄だけですね(笑)!
そう言いながら、この2人が組むとすごく仕置がスムーズですし。
主水と鉄たちのやり取り見てるだけでも、新仕置人は楽しいです。

コメントありがとうございました。
2017年10月09日(Mon) 16:51
菜っ葉だけ残していった男。
編集
こんばんは、お邪魔します。
『王手無用』レビュー、読ませて頂きました。
本編中に湿っぽさは希薄、殺しのシーンを分散化させて、合間には仕置人たちのやり取りが愉しい彩りを加える(笑)。

鉄っつぁんの実にわかりやす~いトボケっぷり。
何かと“とばっちり”を食らう正八。
何故か?虎の顔を知っている主水。
そして“煙詰め”で追い込まれ、殺されてしまうのが何だか可哀想に思えてしまう疋田兵庫の“粗暴な厄介者”では終わらない妙な人間臭さ…。
菅貫太郎さんは、切なさとやるせなさを滲ませる演技が絶妙なんですよね。

ラスト、今回の事の顛末を主水に語る鉄っつぁん…しかし、目の前のフグ鍋の方に意識はすでに向いているようで(笑)美味そうに鍋をがっつきながら、主水の仕置料は半額値引きしてしまう(笑)。
鉄っつぁんだけだよ、主水相手にそんなこと出来るのは(笑)。

それでは、また…。



2017年10月09日(Mon) 23:46
キラさん
編集
>キラさん

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>『王手無用』レビュー、読ませて頂きました。

ありがとうございます。

>本編中に湿っぽさは希薄、殺しのシーンを分散化させて、合間には仕置人たちのやり取りが愉しい彩りを加える(笑)。

悪役に至るまで、楽しい一編です。

>鉄っつぁんの実にわかりやす~いトボケっぷり。
>何かと“とばっちり”を食らう正八。

ここ、正八が鉄にも主水にも当たられて、かわいそうやらかわいいやら。

>何故か?虎の顔を知っている主水。

あれが虎だと察してたのではなくて、完璧に虎だとわかっていた。
虎は最後まで、主水のことは知らなかったですよね。

>そして“煙詰め”で追い込まれ、殺されてしまうのが何だか可哀想に思えてしまう疋田兵庫の“粗暴な厄介者”では終わらない妙な人間臭さ…。
>菅貫太郎さんは、切なさとやるせなさを滲ませる演技が絶妙なんですよね。

殺し方とか、夜の街での暴れ方とか、やってることは凶悪なんですけど、何でかわいそうになってしまうのか。
菅貫太郎さんも狂気に満ちているのに、何で同情買っちゃうのか。
今も活躍していたら、さぞかし味のある演技を見せてくれたことでしょう。

>ラスト、今回の事の顛末を主水に語る鉄っつぁん…しかし、目の前のフグ鍋の方に意識はすでに向いているようで(笑)美味そうに鍋をがっつきながら、主水の仕置料は半額値引きしてしまう(笑)。
>鉄っつぁんだけだよ、主水相手にそんなこと出来るのは(笑)。

あんなもんはバカでもできる!って。
それで主水も引き下がるって、鉄だけですよね。
この2人の関係は、別格。
それを見るのがまた楽しい、新・仕置人です。

>葉っぱだけ残して行った男

最高ですね。

コメントありがとうございました。
2017年10月15日(Sun) 01:12












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