こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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忘れます忘れます 大島弓子「ダリアの帯」

主人公は、只野一郎というサラリーマン。
妻は黄菜(きいな)。
「奇異名(奇異な名前)でしょう」。

3年前、一郎は18歳の黄菜と電撃結婚をした。
しかしそれから3年、そろそろ倦怠期…、一郎には会社で気になる女性がいる。
その女性・雪子もなにやら一郎に優しく、一郎はときめいている。
雪子が作ってきたクッキー、いろんな形があるがハートは一郎のところだった。
「ハートはここだぜ!」と浮かれる一郎。

そんなある日、黄菜は階段から落ちた。
お腹に子供がいたことを知らなかった黄菜は、自分の不注意から子供を産んでやれなかったことで自分を責め、罪悪感から精神を病んでいく。
生まれなかった子に「ニイナ」という名前をつけた黄菜は、ニイナの葬式に締める為、ダリアの刺繍の帯を探して1日中デパートを回っていたと言う。

ダリアの帯?といぶかしげな一郎に黄菜は、もしなかったら、ダリアを育てて自分で縫うよ、と言った。
黄菜の行動は常軌を逸して来る。
ついに家に帰る道を忘れた黄菜はさすがに怯え、迎えに来た一郎に震えながら、「一郎くん、脳の病院へ行こう」と言った。

しかし、その後も黄菜は一郎の会社に行こうとしたり、部屋でダリアを育てようとしたりと、誰の手にも負えなくなっていく。
胃に穴が開きそうなストレスを感じていた一郎だが、「一郎君をとらないで」と書いた文字を見つける。
黄菜は一郎が雪子に惹かれていることを、気づいていた…?

一郎はついにストレス性の胃潰瘍で倒れる。
黄菜は、精神病院のベッドにいる。
親戚中は、離婚を勧める。
入院した一郎は、ベッドの上で初めて、黄菜に思いを巡らせる。

黄菜は気づいていた。
だが、黄菜は一郎を責めるのではなく、全てを忘れていく方を取った。
それは黄菜の一郎への限りない愛だ。
そうわかった一郎は、黄菜の為に、黄菜とともに生きていく決心をする。

夜中に病院を抜け出し、黄菜のいる精神病院に忍び込み、手に手を取って逃げる。
追われているうち、患者は黄菜なのか自分なのか、一郎はわからなくなってくる。
結局捕まった一郎は、こんなことをしなくても話をしてくれれば退院させます、と言われ、親戚たちの反対を押し切って黄菜と2人だけで暮らし始める。

会社も辞めた。
雪子とも、それっきりになった。

山奥で一郎は、農業を始める。
たまに来る登山者に黄菜は「助けて、あの人に誘拐されているの」などと言って騒ぎを起こしたりもした。
だが、一郎は黄菜と暮らして、60歳になったある日、畑で倒れた。
一郎はそのままなくなり、黄菜は一郎を埋めた。

肉体を失った一郎は、「自由です」と風の中で思う。
すると何と、黄菜は一郎に向かって話しかけるのだった。
一郎には黄菜の言葉がわかる。

「今日は、青菜を摘んだ方がいいかしら」と聞く黄菜。
「うん、うん、摘んでくれ」と答える一郎。
そこで一郎は気づいた。
黄菜は花や草や風、そして「ニイナ」、雲や霧や雨、森羅万象に向かって話をしていたのだと。
今、黄菜は一郎に向かって話をする。

一郎の死は誰も知らない、ずいぶん後に気づかれるだろう。
しかし、一郎は思う。
いつまでも気がつかない方が良いかもしれない、と。
黄菜は一郎とずっと一緒にと生きているのだから。

年を取らない黄菜の後姿が映る。
彼女の着るリンネルは、森の中でいつまでも白い。


最初に、すごい話だなーと思いました。
「ゾッとする話」と友人は言いました。

他の人に惹かれていく夫、発狂する妻。
ドロドロになる話なんですが、ドロドロにしない展開。
いや、こんな話をよくこんな展開にしたなと思います。
この童話のような展開を助けるのが、大島弓子の絵柄と黄菜という名前じゃないでしょうか。

一郎が言うように、奇異な名前でしょう。
かたや、一郎の方は「ただのいちろう」です。
この対比がいかにも!な感じがなくていい。
そして、黄菜という名前がこの話をリアルでつらいものから、ギリギリ、ファンタジーにさせているのだと思います。

そんなわけない、普通は離婚だ!とか、雪子に傾く!とか思わせないで、全ての良い選択を捨てて黄菜とともに生きていくという展開が許される。
さらには狂っていたと思われた黄菜は、狂っていたというより、別世界のものを見ていたのだ、というラストに結びつく。
現実として描いたら、狂った妻と山奥で暮らし、ついに誰にも気づかれることなくこの世を去り、一人狂気の妻は山奥で暮らしていく…という恐怖の展開なのに、救われる。

自分の為に狂気を選択した妻の為、生きていく一郎が、最後に得た暖かい世界。
一郎が別の世界を選んだとしたら、行き着かなかった世界。
彼らの世界とは、世間は全く違うことを、たまに登ってきた登山者によって表す。

もし、相手が自分のことを忘れていたら、同じような愛情を持って接することができるだろうか?
そんなことまで考えさせてくれた、「マンガなんて」とは、とても言えない作品でした。


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