「幻想ミッドナイト」、赤川次郎原作「見果てぬ夢」。


平凡なサラリーマンの佐伯二郎(筧 利夫)は、ある夜、夢を見た。
会社からの帰り道。
家への帰り道、曲がり角を曲がると、セーラー服の少女が自宅へ向かう階段に座っている。
風鈴の音がする。

「絵里…」。
二郎はその少女に見覚えが会った。
絵里と呼ばれた少女は髪からしずくを垂らし、寒そうにずぶぬれだった。
リズムを取るように、足を踏む。

「僕は、もう…」。
「あなたは乾いたものね」。
絵里は少し恨めしそうに言う。

二郎に絵里が口づけする。
すると、絵里の口から大量に水が流れてきて、二郎はおぼれそうになる。
苦しくて、うなされ、妻に起こされた。

翌日、学校に向かう娘が、自分の制服がセーラー服だったら良かったと言う。
なぜなら、夕べ、セーラー服の女の子が夢に出て来て、それが印象的だったから。
でもその子、ずぶぬれだった…と娘は言う。
奇妙な感じを受けながら、出勤した二郎。

会社では新しく入ったOLの永井かね子が、やっと慣れてきたところだった。
二郎はかね子と昼休み、食事に行くが、かね子はセーラー服の少女の夢を見た話をする。
全身びしょぬれで、何かいいたそうにこちらを見ていた。
そして、こんな風に座っていて、足を踏んでいた…とかね子は二郎が見た夢の少女そのままのポーズを見せた。

その夜、二郎はまた同じように夢を見た。
夢の中で、角を曲がる。
階段に座っている女性。
だがそれは、かね子だった。

「永井くん…」。
かね子も全身、びしょぬれだった。
「そのままでいると、かぜ、引くぞ」。
そう言って、二郎は階段を登った。

翌日、かね子は熱を出して、会社を休んだ。
気になった二郎は、かね子のアパートをたずねた。
かね子は二郎に紅茶をいれながら、ふと、頭の中に風鈴の音が響くのを聞く。

出勤した二郎に、客が来た。
二郎はその初老の男と、喫茶店で話をする。
男は、娘に心中で先に逝かれた親の気持ちが君にわかるか、といまだ当時のままであろう怒りをぶつけた。
しかし男は、最近、娘の絵里の写真が全部なくなってしまった、消えてしまったと話した。

呆然と会社に戻る二郎を、エレベーターでかね子が待っていた。
ドアが閉まると、かね子は二郎に抱きついてきた。
「ま、まずいよ、永井くん!」
ふりほどこうとした二郎に、かね子は「今夜、来てください」と告げ、ドアが開くとサッと外に飛び出した。

その夜、二郎はかね子の部屋をたずねた。
かね子は二郎に「私、あなたを愛してもいいの…?」と聞いた。
「もう、そうなんだろう」と二郎は答えた。

かね子と抱き合った二郎だが、キスをしたかね子の口から二郎の口に水が注がれる。
大量の水に二郎は思わず、かね子を必死に突き放した。
苦しそうに息をして二郎がかね子を見上げると、かね子だと思った女性は絵里に変わっていた。

部屋中に水が降りてくる。
壁がみるみる水で色が変わってくる。
水が天井から滴り落ちる。

ものすごい恨みの形相で爪を噛みながら、絵里は「一緒だって言ったのに…!」と睨んだ。
絵里の傷口が腐って、虫が這っている。
二郎は恐怖のあまり、絵里の首に手をかけた。

絵里がぐったりするまで、二郎は首を絞め続けた。
そして、絵里の体から力が抜けた時、絵里はかね子の姿にもどっていた。
部屋からは、水が消えている。
かね子は目を見開いたまま、動かない。

殺してしまった…!
フラフラと部屋を出て、家に向かった二郎に、娘が突然の高熱で病院に運ばれたと妻が告げた。
あわてて病院に向かった二郎だが、娘はうつろな目でうわごとを言うばかり。
深夜、無人のロビーに出て、二郎は疲労のあまり、イスに座って眠り込んでしまう。

夢の中で、二郎はまた、曲がり角を曲がった。
今度は階段に、娘が座っていた。
娘も頭から水を滴らせていた。

帰ろう。
二郎は娘の手を取るが、背後から娘の肩に手が伸びる。
「ダメよ」。
絵里だった。

「お父さん、ダメよ。私、この人と一緒に行かなきゃ」。
絵里は二郎を見つめて言う。
「あなたがあんまり来てくれないから」。

二郎は叫ぶ。
「俺がここに残る!」
そして娘を立たせて、「行け!」と言う。
娘は二郎を振り返り、躊躇していたが、二郎は「早く行け!」と促す。

二郎に促され、娘はためらいながら走っていく。
絵里が二郎を抱きしめる。
二郎が目を閉じる。
やっと…。

病院のロビーに、二郎の妻が走ってくる。
娘の熱が下がって、目が覚めたのだ。
「あなた、あなた!」

妻が眠ってしまった二郎を揺り起こす。
だが、二郎の体はそのままロビーに倒れた。
体から、大量の水が湧き出て、床を這っていく。

驚いた妻は、医者を呼びに走る。
誰もいない、深夜のロビー。
全身、びしょぬれになりながら、二郎はもう、目を覚まさなかった。




赤川次郎さん原作です。
原作とは、設定がちょっと違っているようです。
でも、キーワードは「水」。

絵里の制服がぬれて重そうだし、髪から水が滴り落ちて、とても寒そう。
二郎はかつてはおそらく、絵里と大恋愛をし、心中にまで至った情熱の持ち主。
しかし彼だけ生き残り、挫折を味わい、今は情熱はどこへ。
乾いた日々を送るサラリーマン。

しかも、1人、生き残り、心中をはかった絵里のことは忘れかけている。
いつまでたっても来ないし!
人の事は忘れているし!
生きていかなければならないとはいえ、心中までした相手にあんまりじゃあないですか…。

おそらく、絵里ちゃんのお墓参りにも行ってないでしょ!
心中した頃の自分と同じ年頃の、いや、ちょっと年下かな。
そんな娘まで持っちゃって…と思ったら、やっぱり絵里の方もそう考えていたのか。
両親の写真からは消えて、二郎の夢に出て来た。

かね子がケトルに水を注いでいると、水音に混じって重い風鈴の音がする。
現実に夢が入り込む描写。
彼女は、絵里さんだったのか。
そうでなければ、全くの巻き添え。


二郎役の筧さんは、クールな大人の男ですが、「踊る大捜査線」とも違って、平凡な毎日を生きるサラリーマン。
妖しく色っぽい、かね子役は馬淵英里何さん。
二郎を振り返る時の目つきが、とっても妖しい。
原作では二郎はかね子に一緒に死んでくれと殺されそうになり、逃げてくると娘が熱で入院している。

娘が絵里に捕まっている夢を見て、自分が残るから娘を返してくれと言うと、目が覚める。
そこへ娘の熱が下がったという知らせ。
誰も死なないみたいです。
でもこれは、日常に忍び寄る恐怖を描いたドラマだから二郎は連れて行かれてしまった、でいいんでしょう。

最後は満足そうな絵里、目を閉じる二郎。
絵里は待っていたわけでもなく、連れて行くつもりもなかった。
でも、二郎が忘れたからやってきた。
あと、娘は目覚めた後、どう思ったかなあ。

…自分を思ってくれたまま、別れたものを、忘れちゃダメ!
それは一番、残酷なこと。
忘れたくなるようなことでもなければ。
確かに作品はホラーであるけれど、そんな風に思いました。


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2011.05.26 / Top↑
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