「凛ちゃん、言ってました。『お父さん、凛のこと迷惑に思ってる』って」。
「本当はほっとしてるんじゃないですか」。
ゆらの指摘と凛の言葉に多少ショックを受けた徹朗だったが、すぐに自分のペースを取り戻していた。

銀行では、このところのらしからぬ仕事振りを部長に指摘されたが、もう大丈夫ですと答えていた。
仕事に集中できます、と。
原因は何だ、奥さんだけでは対処できなかったのかと聞く部長に、娘が入院しまして、と答えた。
「でも大丈夫です、今日退院しましたから」。

凛の退院には、美奈子が付き添っていた。
美奈子に凛を預けることにして、本当にホッとした徹朗。
部長は「今月の目標、新規法人10件獲得。東日本の1位を狙うぞ!」と檄を飛ばした。

そして、徹朗の母の3回忌があった。
徹朗は父の義朗には、可奈子のことを話せず、どうしてもぬけられない町内会の用があって来ないと言った。
可奈子を当てにしていた義朗は何もしていないと怒り、女房を甘やかすなと言う。

帰宅すると美奈子がきちんと家事をこなしていてくれて、本当に便利だった。
だが、美奈子は今週、温泉旅行に行く予定になっていると言う。
今週までなら、がまんできる。
徹朗は明るく、美奈子に行って来てくださいと言えた。

徹朗は、アッサリと小学校に転校の話をした。
担任は凛の気持ちはどうなのかと言ったが、徹朗はいいに決まっていますと言う。
しかし、凛は音楽界でハーモニカを演奏するのを、とても楽しみにしていたと担任は言った。

徹朗が帰宅すると、ゆらがいた。
ゆらに徹朗は、確かに慣れない家事で凛のことを見てやれなかったと言い、でも自分たち2人の間柄はあなたが思うより大丈夫なのだと言った。
徹朗の開放感と逆に、ゆらは素直に言葉を受け止められない。

凛の転校を伝えると、ゆらもまた、音楽界のことを口にする。
しかし、徹朗は音楽界なら他所の学校にもあるでしょう、と言った。
翌日から凛には、自分は早く出勤するから凛には戸締りをして、後からゆっくり出るように言う。
夜も戸締りをして、寝ているように。

開放感でいっぱいの徹朗は、会社で宮林が妹の愚痴をきっかけに、一家団欒の話をした。
徹朗は一家団欒で、夕食を一緒に食べて、その日あった出来事を話すなんてこと、テレビの中だけだと言った。
普通はそんなこと、しているわけがない。

ところが、宮林はしていたと言う。
休みの日に父親とキャッチボールなんかもしていたのか?と、おもしろそうに聞く徹朗に、宮林はしていたと言う。
やってきた岸本にも聞くと、岸本は父親が喜んで、自分はいい父親だと満足するから付き合っていたと言った。
珍しそうに話を聞く徹朗。

凛は1人、夕方の土手に座ってハーモニカを練習していた。
そこにゆらが通りかかる。
徹朗が帰ると、家には、またしてもゆらがいた。

この人のレッスンも、あと1回だ。
徹朗は凛がいなくなることで、レッスンも終わりだ。
豪華な寿司を出前してもらった徹朗は、凛とゆらが「何が好き?」「うに!」という会話をしているのを尻目に、テレビの経済ニュースを見始めた。

さらに凛とゆらを残して、リビングに移動し、テレビに没頭する。
ゆらが困り顔で、見る。
いつしか、眠ってしまった徹朗。
ゆらは洗い物をしていた。

徹朗はゆらに、寿司桶を帰る際に外に出してくれと頼む。
ゆらは凛が母親が集めていたスタンプを、スタンプカードに貼っていると言った。
自分のせいで母親が出て行ってしまったと思い、スタンプを全部カードに貼れば母親が帰って来ると思っているのだ、とゆらは語った。
だから、母親が出て行ったのは、凛のせいではないということを言ってやってほしいと、ゆらは言った。

徹朗は、かったるそうに聞いていた。
ゆらが帰った後、凛に話しかけたが、凛は答えなかった。
「無視かよ」と徹朗は吐き捨てるように言って、凛の子供部屋から出て行く。

その「してもらって当然」という態度を、ゆらは友人に顔をしかめて報告した。
食事の途中で、帰ったはずの友人が戻ってきた。
外はひどい雨で、雷も鳴っていると言う。
その時、ゆらの携帯に凛から電話が来た。

雷が怖くて、凛は縮こまっていた。
先生、来て…と、凛は泣き声で言った。
しかし、急にはゆらは行くことができないと言い、自分が行くまでに雷は止んでいるだろうし、と言う。
雷が止むまでこうして話をしていよう、と言っても、凛は泣き続ける。

銀行で残業している徹朗の携帯が、鳴った。
ゆらからだった。
徹朗が出ると、ゆらは凛が怯えて泣いているから帰ってやって欲しいと言う。
適当な返事をして、徹朗は携帯を切った。

徹朗が帰宅して洗面所に行き、浴室をのぞくと、浴室乾燥機で服が乾かされていた。
ゆらだった。
達郎は、腹立たしくなった。

家の中で、ゆらに遭遇した徹朗だが、ゆらに酒を飲んでいることを指摘される。
ほんの20、いや15分ほどの息抜きだと徹朗は言う。
そして冷蔵庫から、ビールを取り出す。

帰ってきてやらなかった徹朗を責める口調のゆらに、徹朗は娘が雷を怖がっているからと言って、仕事を抜けられるんだろうか?と聞く。
確かにそうだ、と、ゆらは「いいえ」と答える。
家庭教師やっている人には、わからない。
大きな組織で働いている自分のことは、わからないだろうと徹朗は言った。

大体なんで、ゆらに凛のことをとやかく言われなきゃいけないのだ。
徹朗とゆらは、正面から対立する。
今、ゆらが着ている妻の服も洗って返さなくていいから、と追い出したがっている徹朗に、ゆらは出て行こうとする。

玄関に向かう時、ゆらは徹朗の、ゆらは大きな組織で働いたことがないからわからないという指摘は間違いだと言った。
ゆらは、大きな外資の証券会社の名を口にした。
徹朗の職場よりはるかに人が多いそこで働いていた、と言ってゆらは帰って行く。

その翌日、可奈子から徹朗に連絡が入る。
驚いた徹朗は可奈子と喫茶店で話し合うことになった。
向かい合った可奈子に徹朗は、いつから離婚したかったのかと聞いた。
1年前だと、可奈子は言った。

スタンプをカードに、几帳面に貼っている時だった。
離婚したい、とはっきり思ったのだと。
可奈子は自分が絵画の勉強をしたかったのを覚えているかと聞く。
「だから、離婚してパリなのか?」

それには答えず、可奈子は凛を生んで、その話はいつかどこかへ行ってしまったと言った。
徹朗にとって自分は、母親代わりだったと可奈子は言った。
いや、母親代わりと思えていたうちはまだ、よかった。

「あなたにとって、私は家政婦だった」。
怒りと悲しみの可奈子の言葉に、徹朗は驚く。
うろたえた徹朗は、「凛は?凛を置いていけるのか?」と言った。

しかし、可奈子は言った。
「今の私は、それだけは責められてもしかたがないと思う」。
徹朗は可奈子の母親としての情に訴えた。
「愛してるんだろう」と。

だが、可奈子は言った。
「愛してない」。
徹朗は耳を疑った。
「どうしても考えてしまうの。凛がいなかったら、私の人生どうなっていただろう、って」。

可奈子は泣いていたが、はっきり「凛を愛してはいない」と言った。
徹朗は呆然としていた。
母親が、今まで凛を育てていた母親が、凛を愛してなかった。

夕闇迫る帰り道、徹朗は考えていた。
誰が言ったか、子供は何の為に生まれてくるのか、と。
愛される為だと。

徹朗は思った。
自分に可奈子を責める資格はない。
何故なら…。
自分も凛を愛していないからだ。

では凛は、何の為生まれてきたのだろう。
家に帰った徹朗は、凛の部屋に行った。
凛はスタンプを握り締めていた。
貼る途中で寝てしまったらしい。

徹朗はそっと、凛の手に触れる。
そして、スタンプを手から離させる。
凛が目を覚ますと、徹朗は取り繕うように明日の時間割の準備はしたのか?連絡帳は?と言った。
無言の凛を後に、徹朗は部屋を出た。

リビングに座ると、リモコンをさわってしまい、テレビがついた。
テレビでは、カルガモの親子のニュースを報道していた。
かわいらしい親子の姿。
それを、大勢の親子連れが見に来ています、と。

凛は録画で、いつもライオンの親子を見ていた。
カルガモの親子。
それを見に来た、大勢の親子連れ。

親子、連れ。
暗いリビングで座っている徹朗の背後に、最後のレッスンに来たとゆらが言った。
徹朗は振り向かなかった。

ゆらが帰ろうとした時だった。
徹朗が口を開いた。
「教えてくれ」。
ゆらが立ち止まる。

「俺は何をしたらいい?」
「え?」
「凛の父親として、最初に何をしたらいい?」
言葉の意味を理解したゆらが言う。
「ハーモニカを買ってください」。

それはこの前も、ゆらが徹朗にお願いしたことだった。
しかし、凛は既にハーモニカを持っている。
徹朗が言うと、ゆらは「違うんです」と言った。

翌日、凛とゆらが並んで土手に座っている。
凛がハーモニカを吹く。
途中、つかえながらも吹く。

終わったところで、徹朗が背後の、少し離れたところに座る。
おもむろにハーモニカを取り出すと、徹朗が凛と同じ曲を吹き始める。
凛が驚いて振り向く。
ゆらが微笑む。

もう一度、徹朗が吹く。
戸惑っていた凛もまた、もう一度吹く。
凛の顔がわずかに、ほんのわずかに微笑む。



すぐに立ち直った徹朗、ゆらにはレッスン以外で来ないでくれと言わなくっちゃと思いながら、いつも忘れる。
まー、いいや、あと1回だと思っていた。
あと1回残っていて良かった。
レッスンの日で、良かった。

前半は徹朗の冷酷っぷりの描写に、磨きがかかります。
浮気相手さえ、事務的に扱っている。
明らかに厄介払いして、せいせいしている。

開放感に浸っている。
この、岸本も相当嫌な男だなあ。
まあ、そのうちに挫折なさい。

そこで為された、一家団欒についての会話。
ここでわかる、そうか、徹朗はあのお父さんと一家団欒とか、休みの日に一緒に遊ぶという接し方をしたことがないのか、と。
あのお父さんも、極端な人だったのね。

だから今、とっても寂しいじゃないですか。
あれが未来の徹朗の姿。
徹朗も、父親との交流がなかった子なんですね。

ちゃんと、親から愛情を与えられてない。
与えられてないものは、持ってない、とある女流作家が書いていました。
自分の子供に与えたくても、持ち合わせがない、と。
それで、虐待と同じ、図らずも同じことを自分の子にしてしまってるんだ、と見ているこちらは気づく。

さらに思っても見ない時に、可奈子から徹朗に連絡が入る。
何が不満だと思っていた徹朗、母親代わりだったと言われて呆然。
いや、それ以下、家政婦だったと言われて、衝撃。
否定できないから、余計、衝撃。

何とか可奈子に凛の愛情で訴えかけようとした徹朗、さらに「愛してない」と言われる。
すごいショックで、可奈子がいなくなった後もずっと、徹朗は席に座っていたのだと思われます。
可奈子は2人の間に、生まれた凛を愛してなかった。

では可奈子は、徹朗のことも愛してなかったのではないか。
凛は何の為に生まれてきたのだろう?は、自分は何で生まれたんだろう?という問いかけに思えました。
自分って、誰にも愛されてなかったのではないか。

ここで、宮林たちとの会話が鮮やかに見ているこちらには、蘇る。
そうだ、だって、自分も誰も愛してなかった。
親が愛してなかった子。

そんな子には何にもなかったんだ、何にも。
徹朗は始めて、凛に目を向ける。
それは同じ、愛されてなかった者として。

初めて、おそらく初めて、「良い父親を演じて」ではなく、生身の凛に触れてみる。
誰にも愛されなかった、自分の子。
悲しさと哀れさが、一気にこみあげてくる。

徹朗の耳に、「親子」というフレーズが入ってくる。
当たり前のようにあるものが、自分にはない。
そこでゆらがいたことなんかもう、咎める気もなくて、徹朗は聞く。
どうしたらいいのか、と。

この辺りの草なぎさんの演技が、すごくいい!
すごく上手い!
もう、見ていて、感情が伝わってきました。

そして最後の、ハーモニカのシーン。
セリフなんて一切ないんですが、音が、ハーモニカを吹く徹朗が全てを語っている。
言葉じゃないんですが。

凛ちゃんがビックリしながらも、それを感じ取る。
初めて、自分に寄り添ってくれた父親に、凛が微笑む。
ゆらも微笑む。

いや~!
かなりジンと来てしまった。
危うく、泣くところだった。

寒々とした中、わずかに、ほんのわずかに、暖かいものが通いはじめる。
凛ちゃん、これから徹朗と心が通い出す。
お互い、どう変わっていくのか。

ああ~、いいドラマです!
見てなかった私のバカ!


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2011.01.14 / Top↑
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