気がついたんですが、これから15年後ぐらいに、本田さんは悪党の盗賊を演じている。
ひえー。
なんてことなのよ、直次郎。
死んでからも人に迷惑をかけ続ける盗賊って、どうなのよ。


一座が寝静まったところ、地震が起きた…と思ったら噴火だった。
そうとわかると珍しく表を眺める、ここは鹿児島。
翌日、一座とすれ違ったのは、まるで鳥を運ぶように運ばれる籠、それは難波の辰蔵という盗賊を護送する籠だった。
喉が渇いてたまらないという辰蔵の搾り出すような「水をくだせえ、お願いしますだ」という声に、しかたなく同心も止まった。

京山がよろしければ、と言うので、同心が止まる。
「直」と京山の一言で直次郎が「へいっ」と水筒を差し出して、「ささ、飲みねえ飲みねえ」と囚人に飲ませようとした時だった。
「お助けください」と囚人が小声で哀願する。
だが同心にうながされ、直次郎は急いで水を飲ませた。

籠が去った後、もじもじしている直次郎に京山がどうかしたのかいと聞くと、「あの咎人、何か変なんだ…」と言う。
「おいらに小さな声で、助けてくれ、ってよ」。
「助けててくれ?ずいぶん虫のいい咎人だねえ」と京山が笑う。
晋松と合流し、寺に着いた京山を庵主に引き継いだのは、おしんという女だった。

娘たちが京山の洗濯もすると来たのに、片付け物をしているおはなが自分が後でやると言う。
実はおはなは、庵主と京山の話を聞かれまいと表で見張っていたのだった。
庵主が言うには、おしのは半月前、自分は「浪花の辰蔵」の愛人だが逃げてきたと駆け込んできた。
辰蔵は、人の命など思わない凶賊だった。

その押し込み振りは残虐そのもので、女子供まで皆殺しにする。
おしのは引き込み役をしながら何度もやめるよう説得していたが、耐えられず逃げ込んで、依頼に来たのだった。
辰蔵は盗人宿を転々としているので、行方がつかめないが、それを聞いた晋松は鹿児島にはもういないと言った。
晋松は夕べ、大阪の与力によって辰蔵がお縄になり、籠に乗せられて大阪送りになったのを見た。
直次郎が水をやった籠が、それだった。

「まさかあ。ありゃそんな悪党じゃねえよ。そんな目つきしてなかったもん。ありゃ人のいいおやっさんって感じだ」。
晋松が見た与力は、京山が見た与力だった。
だが直次郎は「違うよ、あんな人殺しいねえよ」と言い張る。
晋松は追いかけて確かめてみろと言うので、直次郎は確かめに走る。

夜、晋松が入った軍鶏鍋屋に、おしんがいた。
寺にはまだ尼僧になったわけじゃなから、酒を飲むのも勝手だと言ったおしんは寂しいから一緒に飲もうと誘った。
この鹿児島で男と別れたと、おしんは言う。
キッパリ別れたつもりでも、未練が残る。

晋松はわかる、わかると言ってやる。
「寂しいのはお前さんだけじゃないよ、生きるってのは、寂しいもんなんだよ」と晋松。
夜道を連れ立って歩く2人を見ている不審な男がいて、その夜、おしんは寝ていて匕首を突きつけられる。

姉さんと呼んだ留吉に、「尼寺に逃げ込むとは考えたが、おかしらのところに来てもらえないなら殺す」と言われたおしんは外に出る。
おかしらと呼ばれた男は辰蔵で、おさとと呼ばれた女を既に囲っていたが、おしんに逃げないように言う。
晋松と飲んだ軍鶏鍋屋の2階におしんは連れてこられ、そこで辰蔵が軍鶏鍋屋の主人の妻のおさとを目の前で蹂躙するのを見る。

翌日、おしんがいなくなったことで、京山は辰蔵は鹿児島にいるのかもしれないと言い出す。
なるほど、直のお目目が冴えてたかと晋松は言う。
その頃、直次郎は辰蔵を運ぶ籠に追いつく。

おさとの5つになる子供をおしんは見て、おさとがどうやって辰蔵と知り合ったのか聞く。
昔、亭主の茂吉が仲間としての仁義を欠いた時、殺されずに済んだのは辰蔵のおかげだとおさとは言った。
だがその辰蔵とくっついてしまって、亭主はどうなったんだ、とおしんは聞く。
おしんと一緒になってから、辰蔵は一度も浮気なんぞしたことがないのに。

留吉の「何も喋るな」という制止も聞かず、おさとは亭主は辰蔵の身代わりになったと言う。
あの籠は、やはり身代わり。
辰蔵の身代わりにさえなれば、途中で逃がしてやる約束だった。

その時、辰蔵が軍鶏鍋屋屋に入ってくる。
子供を早く寝かせるよう言い渡す。
おしんは、悲壮な表情で、階段を登った辰蔵を見送る。

その夜、直次郎が見張っている前で、辰蔵の身代わりになった茂吉が引き立てられていく。
山奥で茂吉は、与力・高倉軍兵衛に斬り殺された。
谷底に放り込んでおけと言う軍兵衛に、息を呑む直次郎。

直次郎は京山一座に取って返し、籠の男は辰蔵かどうか調べる間もなく、バッサリ殺されて、谷底へ放り込まれたと話す。
晋松が斬られる前、何か言っていたか聞くと直次郎は、一言、計ったなとそう言っていたと言う。
やはり、替え玉だ。
辰蔵と与力・軍兵衛が百両ほど払われて、替え玉を立てて鹿児島を出発したのかもしれないと京山は推理する。

「直、おっきなお目目も伊達じゃなかったな」。
「あったぼうよ、こちとら、この目で持ってんのよん」。
早く辰蔵を見つけなければならない。
翌日から晋松と直次郎は、町に探索に出た。

軍兵衛は途中の山中で辰蔵の仲間に襲われた為、辰蔵はやむなく斬って捨てたと報告していた。
証明する手立てがないので、確かに辰蔵を捕縛した書付を頼むと、役人は1年近くかけて辰蔵を探して捕縛した軍兵衛を信用し、書付を書いてくれた。
留吉は茂吉は始末したと辰蔵に報告、さらに今夜、軍兵衛が話があると宿に来てくれと言っていたことを伝える。

聞いていたおしんは辰蔵が役人と手を組み、茂吉を殺害したことを知った。
何てことするんだと飛びかかったおしんは、辰蔵に組み伏せられる。
おしんの前でおさとを蹂躙したのもおしんへの仕置きだと辰蔵はいい、おしんにはこれが一番堪えると笑った。

直次郎が軍鶏鍋屋に辰蔵がいるか確認できなかったので、今夜晋松が軍鶏鍋屋に行くことになった。
軍鶏鍋を食べられると思った直次郎は喜ぶが、直次郎は与力が泊まっている宿屋へ行かされることになってむくれる。
夜、直次郎が宿の前で見張っていると、軍兵衛を訪ねて辰蔵がやってきた。
それを見た直次郎は密かに部屋まで行き、確かに軍兵衛が茂吉を斬り捨てたと言う。

前金とあわせて2百両。
命が助かったと思えば安いものだし、軍兵衛は手柄も立てた。
軍兵衛と辰蔵は完全に手を組み、大阪で仕事をする時は軍兵衛に一報することにもなっていた。
宿を出た軍兵衛を尾行した直次郎は軍鶏鍋屋に行きつき、軍鶏鍋屋の前の屋台で飲んでいた晋松と連絡を取る。

やはりあれは替え玉で、今帰ってきたのが盗賊「浪花の辰蔵」だ。
しかも殺されたのは、あの軍鶏鍋屋の主人だ。
「ちっきしょう、許せねえ」と直次郎は怒りに震える。

軍鶏鍋屋の2階の外に潜んだ直次郎は、辰蔵に茂吉はどうしたのだと詰め寄るおさとを見る。
だが辰蔵は替え玉を知っている奴は生かしてはおけないと言って、おさとを刺し殺してしまった。
驚愕するおしんの前に、母親を求めて子供がやってきた。

子供を抱きしめたおさとは、怒りと軽蔑のまなざしを辰蔵に向けた。
「なぁんでえ、その目は」。
そこまで見ると直次郎は、2階から下りて走る。

軍鶏鍋屋の前で見張っていた京山と晋松は、手下の音松が戻ってきたのを見て、今夜押し込みに入るのではないかと予測した。
店の中では、留吉がいい加減、おしんは辰蔵と仲直りすべきだと言ったが、おしんはいっそ殺された方がさっぱりする。
だが、この子供だけはそうはさせないと言った。

子供を抱きしめているおしんに、2階の外にこっそり上がった晋松の目が合う。
気がついたおしんに、晋松は留吉を誘惑してくれと合図を送る。
子供を寝かせたおしんは、留吉に擦り寄ると酒をねだった。
階下には辰蔵を含む4人がいる。

今まさに押し込みに出ようとしていた時、京山が手踊り一座の座長と名乗り軍兵衛を訪ねてやってくる。
その時、子供を保護した晋松が背後から留吉の首を絞める。
不審そうな辰蔵たちに京山は、与力がいないなら良いと言って、引き上げる。
逃げ出したおさとと子供は、京山一座のいる小屋にかくまわれた。
おさとの子供は、京山の楽屋でおはなが寝かせていた。

晋松はさっきのは土壇場の度胸で、震えが止まらないと言いながら、舞台でおしんと話をしていた。
何でおしんのような女が辰蔵の仲間になったのかと晋松が聞くと、おしんの家が辰蔵に押し込まれたのだと言う。
夫も、5歳になる子まで辰蔵は殺した。
おしんだけが連れ去られ、辰蔵の情婦にされた。

何度も辰蔵を殺して自分も死のうと思ったが、いつしか辰蔵と離れられなくなった。
しかし、人を殺して盗みから戻ってくる辰蔵は許せない。
だから依頼をした。

そこまで聞いた京山は、寺で晋松たちを仕事料を前に並べた。
京山の前に並べられた小判を1両、晋松が取っていく。
次に来た直次郎が2枚取り、1枚を京山の後ろに座っているおはなのところに持っていく。
おはなの手を取り、その中に1両を置くと、しっかり握らせる。

京山をおはなが見ると、かすかに京山がうなづく。
それを合図にしたかのように、直次郎が出て行く。
続いておはなが出て行く。

霧雨の中、おはなが宿屋「木津屋」に軍兵衛を訪ねていく。
「わしに、何か?」
出てきた軍兵衛が訪ねると、おはなは一礼し、傘を渡して「軍鶏鍋屋から来たんですが、辰蔵さんがお待ちです。ご案内いたします」と言った。

「辰蔵が?」
「はい」。
おはなはそう言うと、歩き始める。

霧雨の中、ぐっしょりぬれた直次郎が見ている。
長ドスをしっかり握り締める。
前を歩いていたおはなが立ち止まり、鼻緒に手をやる。

見ていた軍兵衛は、おはなを置いて先に歩き始める。
おはなが傘を背に、軍兵衛から体をそらす。
霧雨で白くけぶる中、直次郎のシルエットが走ってくる。
振り向いた軍兵衛の目に、直次郎の姿が浮かび上がる。

道中合羽をまくりあげ、直次郎が長ドスを抜く。
驚いた軍兵衛が傘を高く放り投げ、刀の柄に手をかけたが、直次郎はそのまま走って軍兵衛を斬り払う。
直次郎は軍兵衛を斬って行き過ぎて、止まる。

軍兵衛が刀に手をかけたまま、よろよろと倒れる。
直次郎が長ドスを収める。
正面を向いたまま、柄に収める寸前、少し手が震える。

軍鶏鍋屋では、辰蔵と手下2人がいた。
外では霧雨にぬれて、晋松がいた。
縄を構え、晋松が階下に突入する。
1人を仕留め、もう1人の首に縄をかけて、すれ違い、金具を抜く。

階下で何が起きているか、押し込み装束に身を固めている辰蔵は気づかない。
黒尽くめの京山がそっと、辰蔵のいる座敷の外に立つ。
姿を現すと、長かんざしを口にくわえる。

座敷に入ってきた京山に、辰蔵が気づく。
ハッとして、刀を手にするが、京山は辰蔵を投げ飛ばした。
辰蔵を倒し、仰向けにすると額を長かんざしで刺す。
辰蔵が目を見開く。

おしんは寺で、髪を下ろして二層になった。
晋松が庭から密かに見ている。
おしんの髪が落ちると、晋松が姿を消す。
京山一座は浜辺を行く。


なんと!
これから約15年後、「鬼平犯科帳」の第6シーズン8話「男の毒」で、本田さんは非常に気味の悪い盗賊を演じてるんですね!
「人の人生狂わせておいて、お前は獄門じゃあ!」と言いたくなるような盗賊。
というか、普通の娘さんは絶対かかわっちゃいけない類の人間です。

さて、一気に南国っぽくなりました。
おしんは赤座美代子さん。
「仕業人」に続き、替え玉話。
そして「仕留人」に続き、悪い男と知っていながら別れられない女性。

こういうキャラクターなのか。
おさとの子供は、寺が何とかしてくれるのかな。
あんまり出番なかったけど、この子、かわいそう。

直次郎、囚人に同情して、一瞬でおかしいと見抜く。
なかなか、鋭くなってきた。
ひらひらと籠を追いかけて、それで殺人を目撃してしまう。

晋松が一座の女の子に、もててる。
町で先乗りの晋松を見た一座の子たちが、「晋さーん」とキャアキャア騒ぐ。
「暴れん坊将軍」で、徳田新之助が「新さーん」と騒がれるのと似ている。

女の子たちがさわぐので、車を引いている直次郎は「何でえ何でえ晋さん晋さんってよ。こっちにも男はいるんでえ!」と言う。
直ちゃん、落ち着きないが、いい人なんだけど。
やはり、渋い男がもてるのか。
うむ、やはりあのぐらいの年齢なら、渋くて落ち着いた大人の晋松がいいのかもしれない。

寺に着いたら、京山に「おいらもここ、泊まりてえなあ。ダメ?お師匠さん」と言ってみる。
「泊まりたきゃ女になるんだね」と言われて、「なれるもんならなりたいわん」と言う。
京山に対して、母親みたいな気持ちがあるんじゃないかなと。
3話なんかでも京山に怒られると、すごくシュンとしてるし。

でも、やっぱり泊まれないから町に泊まりに行く。
すると娘たちは洗濯をしながら、「直さんたちの宿にこっそり押しかけてみようか」と相談をする。
飯炊きのおまつが、「押しかけて何すんだい?」と聞く。
1人が「やあだ、変なこと考えて」と言う。

「あたしは別に…、やぁだなあ、変なこと考えてるよ」と、おまつさんがその子をからかう。
他の娘たちが「赤くなってる!図星でしょう」と言う。
言った娘、「みんなで行こうって言ったんじゃない。あたし別に、直さんを独り占めなんてしないわ」とか言ってる。
おお、直次郎、もててる!

「あたしは晋さんの方が好き」。
「そうねえ、渋いとこたまんない」と娘たちの会話は進む。
すると、おまつが「ああああ、先がもう、思いやられるなあ」と言う。
でも娘たちは仲が良くて、踊りの一座としての自覚があって、抜け駆けなんかしないから大丈夫。

いや、直次郎が意外にも、女好きじゃないせいか。
気が弱いと言うべきか。
でも今回も替え玉を知って、震えるほど怒ってます。
考えてみると、この人、めったに怒らないけど、絶対に怒らせてはいけないタイプかもしれない。

仕事料の受け取りは、まず晋松から。
いつも拝むようにして受け取る。
そして直次郎。

直次郎がおはなのところに、仕事料を持って行ってやってやる。
この時の直次郎の、ひたむきなこと。
やや、呆然としているおはな。
直次郎、頼み人の怨念を知らせるように握らせる。

霧雨の中、ぬれながら付け狙っている直次郎は絵になる。
仕置きは勢いで。
極限状態に自分を追い込んだ直次郎が、霖雨でしろくけぶっている中、シルエットだけが走ってくる。
光が当たって、血走った目の直次郎が浮かび上がる。

道中合羽が大きく翻り、長ドスを抜いた直次郎が走って来る。
背を向けて傘に隠れたおはなと、軍兵衛の間を直次郎が走る。
そして、すれ違いざま与力を斬る。
なかなか凝った画面だと思います。

京山は凶賊に対して、怒りの眉間刺し。
おしんが髪を下ろしたのを見て、晋松は去っていく。
いつも晋松は、その後の依頼人がどうなったか見届けて旅立つ。
毎回、切なさを感じさせます。

本田さんが約15年後に演じているのは、弥市という盗賊で、この男、拉致した娘・おきよの人生を狂わせる。
この男にしみこまされた毒の為、おきよは普通の気立ての良い娘なのに、普通の人生が送れなくなる。
どうしようもない悪女になってしまう。

そう、本田さんは、まさにここでおしんを縛り付けている辰蔵のような男を演じてるんですね。
しかもこやつ、辰蔵のように仕置きされるわけじゃない。
好き勝手して死んでいきおって、腹の立つ。

しかしさらに15年後の本田さんのすごいのは、辰蔵と瓜二つの実直な男も演じていること。
顔、当然同じなんだけど、表情とか言葉とか別人だった。
被害者をこんな状態に追い込むのも同じで、この話を見ていた人がキャスティングしたのかと思うほど。
あ、何だかこっちも見直したくなってきました。
何か、すごいわ。

いや、改めて思い出すと本田さんって息が長いし、変化も激しい。
でも、この変化が今も活躍している理由なんだと思う。
この見事な演じ分け。
実は相当、上手いし、引き出しの多い俳優さんなんですよね、って今さらだ。


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2011.02.06 / Top↑
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