深夜、NHK-hiで「リミット 刑事の現場」を放送していました。


武田鉄也さん演じる、定年間近の梅木刑事。
通り魔事件を起こした青年を捕まえる際、首をぎゅうぎゅう、ギリギリ息ができないほど締め上げる。
たまりかねて止めたのは、翌日から東和警察署に赴任する為、挨拶に来た新人刑事・加藤啓吾(森山未來)。
この逮捕は早速、動画サイトに載り、「警察はやりすぎ」「人権蹂躙」との声が上がる。

逮捕された通り魔の青年は、梅木の逮捕時の暴力に抗議し、梅木が謝罪するまで一切の取調べに応じないと言った。
その為、本庁の取調べには黙秘、取調べは東和署にまわされた。
だが取調室で梅木はあやまるどころか、犯人を嘲笑する。

「何で俺だけこんな目に遭わなきゃ、いけないんだよ。間違ってるだろ、こんな世の中!」と半泣きの犯人に梅木は言う。
「だから何だ。自分が如何に孤独で虐げられてきたか泣きながら話したら、誰かが話をじっと聞いてくれるとでも思ったか!」
「何?」

「お前はなあ、ただ、強い奴に向かっていくのが怖かった。だから弱い人を選んで刺し殺した。ただそれだけだ」。
犯人が叫ぶ。
「お前らに俺の気持ちの、何がわかるんだよ!」

「わかるか、ばか!」
梅木が言う。
「おめえの話なんか、わかってたまるか。てめえがいくらここで長いことくっちゃべっても、お前の気持ちなんかだーれもわかんねえ。みんな自分の人生背負って、精一杯忙しいんだよ。お前の人生に、その退屈な人生につきあってやってる暇はねえんだよ!」

犯人が激昂し、立ち上がる。
「何だこのやろう、やんのかこのやろう!」と梅木が言う。
加藤は思わず、犯人の肩を抱きしめながら梅木に言う。
「やめてください、俺はこいつの気持ち、少しわかりますよ」。
「なにい!」

「確かに今の世の中は、理不尽で不公平でどこに救いを求めれば良いのか、わからない。もしかしたら、一歩間違えれば、俺もこいつみたいになってたかもしれない」。
犯人が沈黙する。
「もし、彼のSOSを受け止めてくれる奴がどこかにいたら、こんなことにはならなかった。そんな不幸な境遇があったとは梅木さん、思いませんか!」

「違う!それは違う!」
加藤が梅木を見る。
「人間は生きているうちに、殺したいほど憎い奴に出会うことがある。だが普通の人は殺さない殺せない」。

「こいつにも親がいる惚れた男か女かいる。そう思うとそいつが人間に見えて、だから人間は人間を殺さない!そして殺せない」。
梅木が犯人を見る。
「だがこいつは違う!こいつは憎くもない人を弱い人を選んで刺し殺した。なぜそんな事ができたか!それはこいつが人間じゃないからだ!」

「おめえもしっかり踏みとどまって戦え、人間なら!」
「…言ってもお前には遅いか。お前はよ、みんなの為に死んだ方がいい。ばあか」。
梅木は軽蔑しきった表情だった。

犯人が泣き顔になる。
「お前、何言ってんだよ。人権侵害だぞ!」
「お前に人権なんかねえ!」

犯人が暴れ、2人、警官が止めに入ってくる。
梅木が何か言ったのだとわかる。
「梅木…」。

そして、通り魔に娘を殺された母親が自殺を図ったという報が入る。
梅木と加藤は病院で父親に会うと、母親は意識がもう、戻らないらしい。
泣き崩れる父親。

警察は、犯人のことは何も教えてくれない。
規則ですから…と目を伏せる加藤。
だが梅木は、犯人は明日、護送される、今日しかないと言って、父親に自分を殴れと言う。
「今日しかねえ!」

ためらい、しかし、殴る父親。
「そんなんじゃダメだ」と梅木はさらに殴らせる。
呆然とする加藤に、梅木は公務執行妨害で逮捕しとうながす。

留置所。
梅木は看守を追い払うと、父親を犯人の獄に入れる。
目を丸くする犯人。

獄に入った父親は犯人に向かって言う。
娘は看護師を目指していたと。
まだ19歳だった。
一生懸命、勉強していた、小さい頃から優しい子だった。

仰天した犯人は、「こんなことしていいのか」と叫ぶが、梅木は口をタオルで塞ぐ。
「人の話は黙って聞け」。
犯人に向かって狂気の表情の父親が、迫っていく。

あの子、あんたが殺した時、花束持ってたでしょう…、あの日、私誕生日だったんですよぉ。
私たち、これからどうやって生きていけばいいですかぁ…?
私も殺してくださいぃ…。
父親にしがみつかれた犯人が、目を見開く。

課長刑事たちが飛んでくる。
見開いた犯人の目から、涙がこぼれる。
宙を見つめている。

翌日、犯人は護送されて行った。
うなだれたままだった。
加藤が「俺は話を聞くぞ、いつでも」と呼びかけたが、うなだれたまま、たいした反応はしなかった。

加藤は梅木のやり方に戸惑いながら、課長たちに問い詰められても、父親を留置する為、梅木が殴れと言ったとは言えなかった。
釈放されていく父親は、梅木に頭を下げる。
「ありがとうございました…!」

梅木は昔、人情刑事だったという噂だった。
加藤の父親も刑事で、昔、世話をした男に立てこもり事件で説得に向かって撃たれた。
自分は父親のような刑事になりたい。
そう思って、加藤は刑事になった。

それを聞いた梅木は、「お前のような奴がある日突然、残酷なことをするんだ」と言う。
警察は市民を守るか?
守りゃしない、と冷笑する梅木。
加藤は共感と反発を覚えながら、梅木と行動を共にさせられる。



うわぁ、すごい…。
よくこんなセリフ、今時、放送できましたね。

「弱い人を選んで殺した」。
誰でも良かった、と言いながら、犯人は19歳の女性を選んで刺している。
梅木は、犯人にそう言っている。

犯人は自分の人権を主張する。
だけど、梅木は何の恨みもない人の人生を奪った犯人には、人としての権利なんかないと言い切る。
人権は相手の権利も尊重してこそ、主張できるもの、と。

違う。
相手の境遇を理解することと、罪もない人を無差別に殺すことをかばうことは違う。
人が人として認められるには、守るべきこと。
人は人を殺さない。

だから、人間なんだ、と。
自分の感情で、都合で、人を殺した彼は人間ではない。
野獣だって、生きる為に殺しているとしたら、彼は野獣以下の存在だ。
人権なんかない。

こんなことを言う梅木は「JOKER」同様、もしかしたら必要な人間かもしれない。
無差別殺人を犯した犯人が人権を主張し、警察が気を遣う様を見ると、こういうことを誰かがいて、言ってくれなければ…という気になる。

殺した女性が自分の前に突然現れた登場人物なんかじゃない。
恨みをぶつけていい、自分を虐げてきた「敵」の1人ではなく、人生があった人間と実感した犯人。
おそらく、人格崩壊したかと…。

憎悪を向けられるより、絶望を見せられた方が怖い。
自分がしたことを見せられた方が。
もう、自分は人間ではないと気づく方が。

斎藤洋介さん演じる父親の、狂気の演技。
いや、みんな演技がすごい。
重い、迫力。

梅木に怒る本庁の監視員が、本田博太郎さん。
そうでなくても、警察の強引な態度が非難を浴びてると言う。
だから取調べの前、梅木には大声出したり、机蹴ったりするなと、梅木がやるであろう全てを「やるな」って言っておく。

犯人が梅木に罵倒され、暴れると止めに入ってくる。
梅木は「お前はのぞきが趣味だからな」と言う。
本田さんは「お前のせいで、我々がどれだけ迷惑をこうむるか」と言った後、梅木の顔をのぞきこみながら「もうすぐ、定年だよね?うん、静かにね、うん」とうなづく。

それに対して梅木、「お前、そんなチクリみたいな仕事して、楽しいのか」と言い放つ。
「何?」と顔色を変えた本田さん、「覚えてろよ!じじい!」と梅木のあだ名を叫ぶ。
加藤がうんざりして、顔をそむける。


この保身第一のお役人ぶり、うまいですよー。
好きよ、本田さん。
今週も、お会いできましたね。

嫌味な上司、伊武雅刀さんも実にやな感じ。
NHKは「どうかなあ…」と言いたくなることもあるけど、ドラマを本気で作るとまだまだすごい。
キャスティングといい、民放にはできないことをすると感心します。


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2011.03.20 / Top↑
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