こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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越後から出てこねばえがった 「津軽じょんがら節に涙をどうぞ」

第2話、「津軽じょんがら節に涙をどうぞ」。
前にも書いたんですが、これはすごい。

ある夜、仇吉の三味線の音に突如合わせて三味線を弾いてきた娘。
その匕首を突きつけるような音に、仇吉は驚く。
だがこの娘、津軽言葉を話す侍の声を聞いて、いきなり斬りつけてきた。
しかし目が悪いことにすぐに気づかれ、取り押さえられてしまう。

娘は無念の絶叫をあげ、枕を売りながら船で流していた時次郎の目前に飛び込む。
時次郎は娘を助け、仇吉ととんぼと籐兵衛のいる花乃屋に連れてきた。
目を覚ました娘に食事をさせると、娘はおゆうといって、涙をこぼしながら箸を動かす。
そして、とんぼに本当にここは江戸かと何度も繰り返し尋ねる。

とんぼが涙を拭く為の紙を求めて、仇吉たちのいる座敷に手を伸ばす。
おゆうは親切な人が江戸に連れて行ってやるというので信じたら、そこは菊山の女郎屋だったと言った。
籐兵衛が「ひでえ奴がいるもんだ」と、視線を落としてつぶやく。
そんなことが一度や二度じゃない。

あっちに連れて行かれ、こっちに飛ばされ…。
7年もかけて、ここまで来た。
一体何だって、そこまでして江戸に来たのか。
「恨みだね」。

翌日、おゆうと仇吉は三味を弾く。
おゆうは瞽女だった母親と弾いているみたいだったと、喜ぶ。
そして仇吉に聞かれるまま、母親の話をする。

母親は越後高田の瞽女。
子連れの瞽女は良く稼げたので、母親はおゆうを連れて稼ぎに出た。
ある夜、母親のおえいは1人の男と共にいた。

その男は、我が身の貧しさを嘆いていた。
おえいはその男・弥三にじょんがらを弾かせていたという。
小金を溜めていたおえいを見て、弥三はおえいを殴った。

泣き叫ぶおゆうの声を聞いたおえいは、娘は目が悪いので弥三の顔は見ていない。
弥三の顔はわからない。
だから、殺さないでくれと叫んだ。

だが、弥三はおゆうの目をつぶし、おえいの金を持って逃げた。
聞いたところによると、弥三は三国峠を越える時、どう見てもどこかの若旦那のようだったという。
おえいの金で揃えたものだった。
それっきり、弥三の行方は知れない。

弥三の顔は覚えているか。
仇吉に聞かれたおゆうは涙ながらに、忘れられないと答える。
夕べは津軽の言葉を聞いて、弥三だと見定めて斬り付けてしまった。
それを聞いた仇吉は、座敷に急ぐ。

座敷では、籐兵衛が茶漬けをかきこんでいた。
「行ってくれるかい?」
「そう思いまして」。
籐兵衛はすぐに弥三を探して、旅立っていった。

その頃、天平は江戸の夏の名物、菩薩花火大会に参加する一人に選ばれていた。
時次郎はというと、ちょうど、波枕というものを作っていた。
それを注文してきたのは、大蔵屋の番頭。

菩薩花火のスポンサーであり、出所がわからない大金持ちだ。
江戸に7年前、大金を持って現れ、今では武家が裏口から金を借りに来るという。
だがなぜか不眠に悩まされ、時次郎に注文をしてきたのだ。

それも、波の音は越後の海の波が良いという。
時次郎は注文の枕を届ける際、巧妙に大蔵屋の顔を見ることに成功した。
その帰り、時次郎は天平と共に襲撃される。
何とか逃げ、花乃屋にからくり人たちは集合する。

とんぼと天平がもめた時、おゆうの杖が倒れる。
杖には、菩薩の文字があった。
菩薩は、瞽女の守り神らしい。
大蔵屋の開催する花火大会は、菩薩花火。

籐兵衛が弥三の行方をつかんで、戻ってきていた。
おえいを殺した弥三は、ある商家の後家をたぶらかした。
ある夜、その商家は火事になった。
遺体の中に、弥三はいなかった。

その後、弥三らしき男は三国峠で女郎屋を開いた。
越後から江戸に出稼ぎに来た男は、三国峠で女郎を買うらしい。
また、ある夜、その女郎屋は男たちの大金を預かっている間、火事になった。

それがちょうど7年前。
だが、弥三は火事を起こした時に、火傷を負ったらしい。
大蔵屋の額にも、火傷があった。
「まっすぐ江戸に来てるね…」。

大蔵屋は、弥三だ。
明日、弥三はどこかで菩薩花火を見ているはずだ。
自分の主催した花火だ。
明日、弥三を殺ろう。

菩薩花火の夜、屈強なボディガード4人に囲まれ、大蔵屋は屋形船に乗り込む。
運河で時次郎と籐兵衛が、その船をを待ち伏せしていた。
前に2人、後ろに2人。
水中を進む2人は、闇に紛れて男たちを水に引きずり込む。

花火が上がる。
屋形船の戸を開けた大蔵屋、いや、弥三は、数珠を手に、その花火に向かって合掌する。
弥三の顔が赤や緑の炎を反射して、染まる。

天平もまた、その頃、大蔵屋の番頭に襲われていた。
だが天平は匕首を交わし、番頭を花火の大筒に放り込む。
花火があがる。

弥三がふと、陸に目をやると瞽女が歩いてくる。
「瞽女…!」
弥三の手に力が入り、数珠が飛び散る。

「津軽じょんがら、やらせておくんなさい」。
とんぼの声で、じょんがら節が奏でられる。
船が時次郎と籐兵衛によって、岸に向かっている。

「やめろ!」と弥三は叫んだが仇吉が言う。
「私はあなたに三国峠越えのお金をあげた、越後高田の瞽女、おえい」。
「う、うそだ!」
おゆうが口を開く。

「私はその娘、おえい。弥三はんの顔がこの世の見納めだったはんで、よぅく覚えておりやす…」。
弥三が悲鳴をあげて、後ずさりする。
それを背後からがっちり、時次郎と籐兵衛が抑える。
「今夜から、ゆっくり寝られますよ」。

ぼろぼろの笠からのぞく、おゆうの頬に涙が流れる。
「さあ、これを持って」。
仇吉が匕首を持たせる。
ゆっくり、おゆうが前に進む。

弥三は時次郎と籐兵衛に捕まり、逃げられない。
「助けてくれ、金ならいくらでも出す!」
叫んだ弥三だが、次の瞬間、悲鳴をあげる。
誰もいなくなった船の中。

弥三が1人、仰向けに倒れている。
「越後から、出てこねばえがった…。越後から、出てこねばえがった…」。
弥三がつぶやく。
江戸の菩薩花火は天保5年、夏で終わっている。



こんな話をよく描いたと思いますし、今じゃこれまた放送禁止でしょう。
おゆうの話を聞き終わって、すっくと立ち上がる仇吉。
座敷では籐兵衛が茶漬けをかっこんでいる。
2人のツーカーぶり。

「籐兵衛」と仇吉。
「全部聞きました」。
「行ってくれるかい」。
「だと思いまして」。

弥三を演じた岡田英次さんがまた、熱演。
今では罪の意識に不眠に陥った男。
自分の犯した罪の影に、怯え続ける。
それがきっかけで、過去の悪事がばれる。

花火を見上げる、弥三の顔。
赤や緑の光が反射する。
しっかり、合掌する弥三。
そして、瞽女を見て恐怖する弥三の目。
数珠が飛び散る。

屈強なボディガード、金を運ぶ際に強盗を何度も撃破してきたつわものども。
花火があがり、暗闇になると、船の前に腰掛けていたそのつわものたちが消えている…。
殺しのシーンなのに、演出が情緒的。

花乃屋に連れてきた娘、おゆうの復讐が果たされる。
おゆうのボロボロの笠が、7年という月日を物語っている。
ラストの弥三のつぶやき。

結局、弥三に安眠は訪れなかった。
彼はきっと、何年もロクに眠っていない。
怯え、怯え続けた日々。

最高に残虐なことをしていながら、罪の意識に怯え、供養を行う男。
その姿を見ていると、憎むべき男も人間らしくあることがわかる。
結果、誰を、何を恨んでいいかわからなくなってくる。
確実に言えることは、人間には欲があること、極貧は犯罪を生むということかもしれない。

もちろん、弥三のしたことは許されない。
やられた方にしたら、絶対に許せない。
外道の所業。

「越後から、出てこねばえがった…」。
弥三の人生を感じさせ、彼の内面を感じさせる。
短いが見事なつぶやき。
岡田英次さん、弥三と大蔵屋の演じ分けも、最後の同一化も見事。


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Comment

マイベスト
編集
早坂脚本、蔵原演出、俳優たちの演技、非の打ちどころのないエピソード。
硬派でシンプルな復讐譚を軸に、江戸の夏情緒と越後の冬景色を纏わせ、連続ドラマ2回目として主役たちのキャラ紹介とチームワークの呼吸まで見せきっています。
その時間わずか45分。エンタティメントの完成度とはこういうものかと思います。

冒頭の現代描写も凄く効いてます。帝劇楽屋で山田五十鈴が語る瞽女レクチャーが効率よい前説になってます。
ちゃーすけさんも仰ってるように、名優岡田英次の存在感が敵役の悪と哀れさを醸し出し、頼み人に仕置きさせるという必殺シリーズとしては異色のクライマックスに説得力を与えます。末期のつぶやき、よくぞこの台詞を書いたものです。

時次郎の枕、天平の花火がメインストーリーにきちんと噛んでいる見事さ。
とんぼの優しさと親近感と仇吉の三味線の腕がおゆうの心をほぐす説得力。
藤兵衛の仕事のできる忠臣ぶりが、謎解きの飛躍にリアリティを与えてる。
それらがおゆうの、瞽女の、越後の貧しさが産んだ悲劇と恨みを一直線に盛り上げていて、もう完璧な出来栄え。必殺シリーズのマイベストのひとつです。

確かこの年のギャラクシー大賞を受賞しているエピソードです。必殺シリーズで表彰されたのはこれだけじゃないでしょうか、芸術祭参加はしてないはずですし。
2015年11月28日(Sat) 07:54
kaoru1107さん
編集
>kaoru1107さん

まず、私、kaoru1107さんにお詫びしないといけないことがあります。
お名前を間違えてコメントの返信をしておりました。
大変申し訳ありませんでした。
基本の基本です。
本当に申し訳ありません。

>早坂脚本、蔵原演出、俳優たちの演技、非の打ちどころのないエピソード。
>硬派でシンプルな復讐譚を軸に、江戸の夏情緒と越後の冬景色を纏わせ、連続ドラマ2回目として主役たちのキャラ紹介とチームワークの呼吸まで見せきっています。

もう、見れば見るほど、完璧です。
演技も演出も。
寒い越後の冬、寝苦しそうな夏の江戸。
この2つを対比して映すことで、おゆうが過ごしてきた時間の長さ、旅の距離まで感じられるんですね。

>その時間わずか45分。エンタティメントの完成度とはこういうものかと思います。

まさに。
今だったら2時間、いえ3時間ドラマにして放送するのではないでしょうか。
そのため、無駄な場面がひとつもありません。
どれも必要で、目が離せない。
よくぞ、ここまで濃密に凝縮したと思います。

>冒頭の現代描写も凄く効いてます。帝劇楽屋で山田五十鈴が語る瞽女レクチャーが効率よい前説になってます。

ここ、今見るとすごく貴重な山田さんの語りのシーンですね!

>ちゃーすけさんも仰ってるように、名優岡田英次の存在感が敵役の悪と哀れさを醸し出し、頼み人に仕置きさせるという必殺シリーズとしては異色のクライマックスに説得力を与えます。末期のつぶやき、よくぞこの台詞を書いたものです。

岡田さんの名演あっての話ですね。
憎むべき極悪人が、怯える1人の男になる…。
誰が悪かったのか。
何が人を狂わせるのかと、見ているこちらに思わせる、なまりのあるポツリとした一言。

>時次郎の枕、天平の花火がメインストーリーにきちんと噛んでいる見事さ。

この構成も見事ですね。
罪に怯える不眠症。
供養の菩薩花火。

>とんぼの優しさと親近感と仇吉の三味線の腕がおゆうの心をほぐす説得力。

おっかあと思って…。
だから…。

>藤兵衛の仕事のできる忠臣ぶりが、謎解きの飛躍にリアリティを与えてる。

もう、ご飯をかきこんでますからね。
藤兵衛の話が始まって、やがて暗闇になる。
火事の赤いシルエットと闇。
こういうところまで本当にセンスがすごい。

>それらがおゆうの、瞽女の、越後の貧しさが産んだ悲劇と恨みを一直線に盛り上げていて、もう完璧な出来栄え。必殺シリーズのマイベストのひとつです。

私もです。
これほどの完成度高い話、数ある時代劇の中でも屈指の出来ではないかと思います。

>確かこの年のギャラクシー大賞を受賞しているエピソードです。必殺シリーズで表彰されたのはこれだけじゃないでしょうか、芸術祭参加はしてないはずですし。

さすが…、受賞も納得です。
いつもコメントありがとうございます。
本当にすみませんでした。
2015年11月29日(Sun) 16:55












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