第4話、「息子には花婿をどうぞ」。


仇吉のもとに、赤ん坊を盗られたと訴えてきた女・おけい。
先月、昼日中に赤ん坊を持ち逃げされ、その男は旗本三千石の安斉利正の屋敷に逃げ込んだらしい。
7年目にやっとできた赤ん坊で、亭主が屋敷に行ったが追い払われ、奉行所に訴えた。
ところが、亭主は因縁をつけたと江戸ところ払いとなってしまった。

安斉といえば、先の奥方は老中から嫁に来ている。
旗本では5本の指に入る、名門中の名門。
相手が悪い。

門の外から赤ん坊の声がするが、一昨日からその声がやんだ。
おけい親は心配でしかたがない。
大金を持って仇吉のところに頼みに来たのだが、どうやってこんな大金を作ったのだろう。
察した仇吉はこの金は要らない、その代わり体を売ったりしないように言い渡す。

その後、仇吉の屋形船に紫茶屋の夢三郎と言う女が飛び込んできた。
男のヤキモチに閉口している…と言ったその女は、実は女装した男だった。
役者ではない。
陰間茶屋の男だ。

籐兵衛から男が男を買いに来るところだ、と聞いたとんぼは興味津々。
夢三郎は仇吉に三味線を習う約束を取り付け、仇吉は女のお手本だ、どんどん仇吉から女を参考にさせてもらうと喜ぶ。
帰り際に天平がやってきて、夢三郎は天平に興味を示し、とんぼはあわてて天平を連れて外に出る。
翌日、天平がへろ松といるところに夢三郎がやってきて、天平は夢三郎に迫られる。

花乃屋に時次郎が帰ってきて、仇吉に安斉の家のことを聞く。
とたんに時次郎は仇吉にそんなことまで知られて…、と照れるが、どうも枕を売っている時、安斉の奥方に連れ込まれたらしい。
安斉の家に今いるのは、2人目の妻の邦江だ。
1人目には子供ができず、早死にしたという。

だが、邦江には子供ができたらしい。
しかし、時次郎が会った時には、邦江に子供がいるように見えなかった。
安斉家では、子供が欲しいのだと仇吉は察する。
夢三郎が帰った後、夜中に天平とへろ松は何者かに小屋を燃やされる。

安斉の家では翌日、赤ん坊の葬儀が行われた。
葬列をおけいが追いかけようとして、時次郎が抑える。
天平は仇吉に聞いて、紫茶屋の夢三郎を訪ねる。

葬式の夜、安斉家の当主・利正はでかけてしまった。
邦江はやってきた母の久に、本当に前の奥方は病死だったのかと聞いた。
久は邦江が自分を恨んでいるのか、と聞く。
いいえと答えた邦江に久は、邦江はもう恐れる者は何もない怖い女になったはずだと言う。

久は邦江が時次郎を引き込んだことを知っていた。
子供が出来るのもよかろう、と思っていたが、邦江には子供ができていなかった。
久は部下の村上を呼ぼうとしたが、邦江は拒否する。

毎日顔を合わせるのは嫌だし、何より…。
だが久は、村上と利正が恋仲だったのは昔のことだと平然と言い放つ。
夢三郎に自分の小屋を燃やした者は誰か、尋ねている天平の元に嫉妬に狂った利正がやってきた。
このような薄汚い男と…!と言う利正を見て、夢三郎は「あんた悪く言われてるわよ、どうする?」と聞く。

自分の小屋を燃やしたのは、利正と確信した天平は向き合う。
夢三郎が言う。
「ねえ、どっちが強いの。見せてよ」。
天平が襲い掛かってきた利正を撃退すると、「あんたが勝った!」と夢三郎は狂喜する。

その夜、仇吉は依頼人に安斉家の墓に、赤ん坊の骨はなかったと言う。
残念だが、赤ん坊は死んでいる。
安斉家の子ではないので、葬式は形だけ。
墓には入れてやらなかったのだろう。

再び、安斉家の奥方の元に忍び込んだ時次郎は取り乱した邦江から、赤ん坊を殺したことを打ち明けられる。
邦江はもう、眠れない。
毎晩、子供の泣き声がする、と言う邦江。
だが、自分とはまったく関係ない子供を連れてこられて育てろと命令されたのが耐えられなかったと泣く。

眠れないのは当たり前…と怒った時次郎だが、邦江の話を聞いて、鈴虫の声がする枕を置いて行く。
それでも眠れなければ、これをどうぞと薬の包みを渡す。
長くて深い眠りに陥ることでしょう…、と言って去っていく時次郎だが、庭に下りた時、邦江の悲鳴が聞こえる。

村上が久の命令で、邦江を刺したのだ。
駆け寄る時次郎に村上たちが襲い掛かる。
時次郎が去った後、久は冷たい声で邦江にまだ息があると言って村上にトドメを刺させる。
翌日、天平は夢三郎を、おもしろいものを見せると連れ出した。

その頃、安斉家では3人目の嫁を取ろうとしていた。
茶室で対面している時、柄杓が壊れた。
代わりの柄杓を持って来たのは、仇吉だった。
仇吉は30石の娘を2千石の旗本がもらうこと自体、おかしいと思わないかと指摘。

異常事態を察した親子は退散した。
おのれ、何の恨みが!と言う久に、赤ん坊の骨はどこにやったか仇吉は問い詰める。
その時、天平が夢三郎を連れて現れた。
この人にふさわしい婿は、この男、と仇吉は言う。

久は表に向かって、村上を呼んだ。
庭を走る村上たちを池にかかった橋の裏で、時次郎が待ち伏せている。
侍たちの足をつかんだ時次郎は、次々池に侍を放り込む。
村上の刀を体の正面で受け止めた時次郎は、懐から長ドスを取り出す。

そして次々、侍を斬って捨てる。
籐兵衛も駆けつけ、侍の首の骨を折って応戦する。
夢三郎に拒否され、天平に抱きつくさまを見た利正は刀を抜いて突進してくる。
だが、利正が刺したのはこちらに背を向けている夢三郎だった。

夢三郎が悲鳴を上げ、倒れる。
天平が利正を殴り倒し、夢三郎を抱えて外に走る。
絶望した利正は、自害して果てた。

安斉家はどうなるのですと座り込む久に、息子さんには花婿だったと言う仇吉。
すごい形相の久が匕首を抜いて、仇吉に迫ってくる。
仇吉は匕首を押さえ、久が追い詰められる。

夢三郎を抱えて走る天平に、安斉家の侍が迫る。
天平は侍の口に花火を放り込み、池に沈める。
池で小さな爆発が起き、花火の音がする。

夢三郎と利正がしっかり手を結び、墨田川に浮いている姿が発見された。
人々はこれを天保・紫心中と名付けた。
枕を売りながら流す時次郎。が、ぼんやりした天平に声をかける。

「あの女はいい女だったと思ってるんだろう」。
「俺、どうかしてんのかな」。
「いや、あの女はいい女だったんだよ」。

仇吉はおけいに、赤ん坊の骨は川に流してしまったことを告げる。
おけいは流した場所だけでも、わかってよかったと言う。
船が流れる中、おけいは川に向かって乳を絞る。
仇吉はそれを悲壮な表情で見る。



これまた、再放送もできないようなお話。
毎週、テレビで放送していたんだから、いい時代ですね。
夢三郎と利正の愛憎のもつれ、なら話は簡単だった。
でも、利正には立派なお家と怖ろしい母上がついていたから、そうはいかなかった。

邦江もやったことは怖ろしいが、邦江を鬼にしたのは安斉親子。
特に久。
久役が「仕舞人」の情け深い庵主様なんて、信じられない。
原泉さんです。

いや、怖い怖い。
この方のお婆さん役の怖いことと迫力と言ったら、菅井きんさんはユーモラス!
最後に口にするのは安斉家のこと。
武家の名門の高慢さ、勝手さ、古い因習そのもの。

横溝正史シリーズ「悪魔が来たりて笛を吹く」では、警部さんたちが「俺、あそこのばあさん苦手なんだよなあ」とぼやく。
ぴしっと背筋を伸ばし、考えることはお嬢様のことだけ。
そんな乳母が「お下がりなさい!お嬢様はもう、お休みになられています!」と一喝。

役職を越えて、警部さんたちにも無力な子供の頃見た、怖いお婆さんの記憶が蘇るんでしょう。
昔は身分の高い人には、ほんとにあんな乳母いたんだろうなと思ってしまう。
声がまた、迫力なんですよね。
きっと、直次郎なんか、あんな風に怒られたらビビって逃げたと思う。

怖い姑というと、誰よりも怖いタイプだと思う。
鏡に向かって紅を塗っているところなんか、見てはいけないものを見た気分満点。
最後に仇吉に仕置されたんだろうけど、その描写はなし。
うなされそうだから、いいか。

女性に一切興味がなく、母上が気に入ったならいいですと言う利正は、佐々木いさおさん。
夢三郎は、これがまた妖艶なんだ。
グロテスクと妖艶の間にいて、怖ろしいことにはまりそう。

天平に向き合い、脱いだ背中には鮮やかな花と蛇の入れ墨。
実は怖いところがあるのか?
あんたのこと悪く言ってるわよ、どうする?と挑発。
どっちが強いの、見せて!

まさに魔性の女。
夢三郎置いておいても、男のプライドをかけて勝負してしまいそう。
でも天平に誘われて、うれしい、ほんと?待っててと言うしぐさがカワイイ。

意地っ張りのとんぼもかわいいけど、ストレートに来る夢三郎は結構、ほっとけないかも。
刺されて痛がっているのも、何だか甘い口調だし。
考えて見たら、夢三郎に狂わされた安斉家なのかな。

最後に天平がぼんやりしているのも、昔はわからなかったけど、今見るとわかる気がする。
夢三郎をいい女と思ってしまった自分に、きっと当惑してる。
でもそんな夢三郎が見ても、仇吉って魅力的らしい。

そうそう、照れる時次郎がおもしろい。
「いや、まいったなー。元締めにそんなことまで知られてるって」と照れまくる。
最後の天平に言ったいい女は、時次郎は邦江のことを言っている気がする。
それぞれに心に残った人たちがいる。

男と女、男と男、子供。
うまくそれぞれの情をからめた、哀しい結末。
誰一人、幸せにならなかったのがまた、からくり人らしい。
そして、原泉さんの怖さを、堪能しましょう…。


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2011.06.29 / Top↑
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