「必殺」は、娯楽である。
でもそれだけじゃない。
そう思わせる「必殺からくり人」最終回。

「終わりに殺陣をどうぞ」。


仇吉が料亭にやってくる。
もういらっしゃってますと言われ、草履を脱ぐと、女将らしき女性にすぐに帰るかもしれないからそのままでいいと言う。
それから、迎えが勝手口の方から来るから、勝手口に置いておいてくれ、と。

座敷にいたのは、曇りだった。
「俺たちは同じ仲間だってのに、どういう具合か近頃しっくりといかねえな」。
「行かなくしたのは、誰です」。

先代の元締め、蘭兵衛が殺されたことはみな、曇りの仕業と知っている。
「証拠でもあるのか」。
「あたしたちの世界に、証拠は要りません」。

曇りが、火鉢に向かってキセルの煙をふうっと吐く。
「俺は最近、鉄砲で狙われた」。
曇りの頭に、あの日、鳥居が狙われた日のことが思い出される。
狙った相手は、木っ端微塵で身元がわからないと言う。

「時次郎、あの日以来ぷつりと姿を見せやがらねえ。俺はな名、会いてえんだよ、時次郎に」。
「自分で探せばいいでしょう」。
仇吉の言葉に曇りは「探したさ」と答える。
時次郎の片付いた部屋に、曇りの配下が押し入っている。

「時次郎が俺や幕府のお偉方を狙ったとしたら、ちいとばかり話は面倒になるな」。
「どういう風に面倒に?」
「あんたたち、潰さなきゃならねえ」。
もっとも、仇吉たちが曇りの配下になるなら話は別だ。

「お断りします」。
仇吉はキッパリ、断る。
「あたしたちの仕事は人殺し。死んだ元締めが言っていた通り、あたしたちは涙以外とは手を組みません」。
「涙のこぼれるような依頼しか、引き受けない」。

曇りがあざける。
「涙?涙だってよ」。
相変わらず、甘いことを言う。
だから、先代の蘭兵衛も殺されたのだ。

仇吉は言い返す
「お上と結びつく殺し屋は、臆病者」。
「何い」。
「あんたたちが考えているほど花乃屋の連中、甘っちょろくて弱いかどうか」。

「試してみろ、というんだ」。
仇吉と曇りは真正面から向き合う。
「勝負!」と仇吉が言う。
「勝負!」と曇りも言う。

仇吉を迎えに、籐兵衛が向かうところだった。
留守を1人きりで守るとんぼに、懐の匕首を渡す。
籐兵衛さんは、と言うとんぼに、腕を叩いて自分にはこれがあると言った。
誰も入れてはいけない。

籐兵衛が船を進めていくと、赤い襦袢を着た女が流れてきた。
死んでいると思ったが、女は生きていた。
突然、籐兵衛は水中に引き込まれる。

水中に落ちた籐兵衛は、何人もの黒装束の男が向かってくるのを見た。
自分に向かってくる匕首を、籐兵衛は水中で受け止める。
もがく女の腰巻を解き、刺客の首を絞める。
1人、また1人と刺す。

やっとのことで逃れ、船に上がる籐兵衛。
背後から銃声が響き、障子に穴が開く。
「曇りの配下か」。
また1発、籐兵衛に向かって弾丸が撃たれる。

相手を捕まえ、籐兵衛は首を絞める。
至近距離から、籐兵衛は撃たれた。
だが相手の首を絞め、刺客は動かなくなった。
すると、表から2人が走りこみ、次々籐兵衛を刺した。

籐兵衛が水中に崩れ落ちるのを見て、刺客は引き上げて行く。
だが籐兵衛は顔を上げて、船を押す。
「迎えに行きますから。姐さん、きっと行きますから。待っててくだせえ」。

仇吉は堀の上で待っていた。
花乃屋の屋形船が到着する。
「籐兵衛」。
だが答えはなかった。

ふと、船の後ろを見る。
籐兵衛が浮かんでいる。
「籐兵衛!」

とんぼは1人、匕首を握り締めて待っていた。
表の戸が叩かれる。
「仇吉さんからの伝言を持ってきました」。

とんぼは土間に下りていく。
「伝言ならそこで言ってください」。
「私は籠屋です。天平さんの小屋に送るように言われてきました」。
だが、とんぼは開けない。

「おかしいわねえ。天平ちゃんならここにいるんですけど」。
すると、声はふっつりしなくなり、戸を叩く音もしなくなる。
とんぼは奥に走り、匕首を握り締め、灯りを消す。
上から音がする。

とんぼは座敷の奥に、たんすの影に身を潜める。
刺客は瓦をはがしていた。
とんぼは押入れに隠れる。
刺客が飛び降りてくる。

とんぼのいる押入れに、刃が隙間から差し込まれる。
ふすまに向けて、とんぼが両手で思い切り、匕首を刺す。
悲鳴がし、ふすまを倒して刺客が倒れる。

とんぼが走り出る。
また1人、刺客が襲ってくる。
外に逃げるとんぼが戸を開けると、仇吉がいた。
思わず悲鳴をあげたとんぼに仇吉は「出ておいで」と声をかけ、外に出す。

外でとんぼは息を大きく吐く。
目の前に灯りの消えた屋形船がある。
中をのぞくと、暗い中、うつぶせで籐兵衛が倒れていた。
「籐兵衛さん!」

仇吉は、敵と斬り結び、これを倒した。
桶でバチを洗う。
「とんぼ、出るよ!三味線以外、何も持たなくていい」。
とんぼが天平を気遣うと、「あっちの方も襲われてるよ」と仇吉は言う。

「側を離れるんじゃないよ」。
仇吉は、位牌を持って火を消す。
戸を閉める一瞬、座敷を見て動きを止める。
しかし、静かに戸を閉めて仇吉は外に行く。

天平の小屋で、うなされているへろ松。
籐兵衛が刺されるのを、夢に見る。
へろ松は「おとっつぁんが死んだ」と起き上がる。
いつものように寝ぼけていると思った天平は怒って、「眠れよ!」と言う。

だが、表に数人の気配を感じる。
天平は、へろ松を置いて外へ出る。
地面を這って近づく刺客。

天平は相手の匕首を奪い、1人を刺す。
1人は花火を口に放り込んで、トドメを刺した。
「へろ松、逃げろ!」

叫びながら、もう1人も刺す。
表から1人が火を投げ込んだ。
火薬に引火して、大爆発を起こし、小屋は潰れた。
表に逃げていたへろ松が、立ち上がった天平に駆け寄る。

「しっかりして」。
「目が見えない。見えねえよ!」と目を見開いた天平が叫ぶ。
刺客が走ってくる。
「危ない!」とへろ松が叫ぶ。

倒れている刺客から、刀を取り、天平に握らせる。
天平の背後を支えるようにして、へろ松は「これ持って」と言った。
敵が斬りかかるのに「右だ!左だ!」と叫ぶ。
天平が見事に刺す。

「ようし、やった!」とへろ松が言う。
その頃、仇吉はとんぼと夜の町を走っていた。
逃げる仇吉を、屋根の上から追ってくる刺客。

2人が飛び降りてくる。
仇吉がとんぼに、物陰に行くように突き放す。
襲ってきた2人を、仇吉が仕留める。

朝、仇吉ととんぼが行くと、天平の小屋はなかった。
倒れている刺客。
潰れた小屋の中で、泣くとんぼ。

「ひどい…」。
仇吉は言う。
「大丈夫。しんじゃいないさ。生きてるよ」。

盆栽の手入れをしながら、側近の喜十郎から曇りは報告を受ける。
籐兵衛は仕留めたが、他は逃げられたと聞くと、曇りが言う。
「必ず探せ」。
そして曇りは、両替商の備前屋に向かう。

仇吉が影から見ている。
曇りは、備前屋の主人にある大名の借金の返済を後2年待ってやれと言う。
利子をつけて15万両、もう待てないと主人は言った。
すると、曇りは備前屋の妾のお久のことを持ち出す。

「お久さんは死にましたね」。
備前屋はそんなバカな、と笑う。
「いや、死にましたね。誰かに殺されてね」。

お久は今朝まで、備前屋と一緒だった。
「備前屋さん、あんたってことになりませんかね。女は、あんたのタバコ盆をつかんで死んでたんですよ」。
「そんなバカな!」

「でも、そうなんですよ」。
曇りの前で、借用書が破られていた。
「あなたは利口な人だ。お久殺しは、私がもみ消しますよ。町奉行の鳥居さまとは、お近づきになっているのでね」。

堀に止められている小船の中で、天平は目を冷やしている。
誰かの気配で、天平は起き上がる。
へろ松だった。
花乃屋は荒らされて、誰もいなかった。

「みんな、殺されたんだろうか」。
曇りに違いない。
へろ松は泣いた。
天平は「泣くんじゃねえ!」と怒鳴る。

夜の町を走る、黒装束の曇りの配下。
小船の中、ムシロをかぶせて潜んでいる仇吉ととんぼ。
仇吉は、とんぼに位牌を渡す。

「元締め、時次郎。籐兵衛のは作ってやって」。
そして、江戸を離れろと言う。
「無駄にしぬこたあないよ。これはあたし1人の敵討ちだ」。
とんぼが拒否する。

「みんなしんじまったら、からくり人がいたこと、誰も知ってくれないじゃないか」。
「どうしても曇りだけは殺す。殺さなくちゃならない」。
「無理よ!」
「無理でも生かしちゃおけない」。

仇吉は言う。
この堀をまっすぐ行けば、江戸湾に出る。
右に沿っていけば、江戸から出ることが出来る。
「大阪の曽根崎に清元の師匠がいる。この三味線を見せれば、お前の面倒を見てもらえる」。

仇吉は、とんぼの顔を見る。
「悪いおっかさんだったねえ」。
そして、向かい合って仇吉が「黒髪」を歌う。
とんぼが三味を引く。

やがて、仇吉が岸に上がり船を押す。
流れていく船からとんぼが「お母さん」と叫ぶ。
右へ行けと示す仇吉。
とんぼの声が遠ざかっていく。

見送る仇吉。
顔を目を伏せるが、やがて去っていく。
曇りの屋敷へ仇吉は向かう。

天平はへろ松に支えられ、夜の町を行く。
「大丈夫、天平さん、もうすぐだよ」。
屋敷の門の前に到着すると、天平はへろ松に「ここから何歩だ」と聞いた。
「20歩ぐらい」。

聞いた天平は、火のついたたいまつを手に「お前は向こうへ行け」と言う。
「だって」。
「早く行くんだ。お前は行くんだよ!」

宙を見据えたまま、天平は火薬に火をつける。
大きな曇りの屋敷の戸が壊れる。
「曇りを出せー!」と天平が叫ぶ。
へろ松が逃げる。

夜の町を仇吉が走る。
屋敷に入った天平の背後から、何人も刺客がやってくる。
天平は縁側から庭に落ちる。
だが、火薬を手にたいまつを持っている天平に、誰も手が出せない。

匕首を手に、遠巻きに囲むだけだった。
「曇を出せー!」と天平が叫ぶ。
座敷に向かった天平は、火薬に火をつける。
曇りの刺客たちが、奥に逃げ込む。

火薬は大爆発し、曇りの屋敷は煙を上げた。
一気に、障子が破れてボロボロになる。
仇吉は天平の名を呼びながら、やってくる。

襲ってくる刺客。
1人2人。
背後から1人。
次々、仇吉は刺す。

曇りの屋敷は、あばら家と化していた。
喜十郎が出て来て、仇吉に斬りつける。
仇吉の笠が切れる。
だが、相手も手傷を負う。

喜十郎の背後に曇りが現れる。
「曇りさん、一緒に死んでもらいますよ」。
腕を押さえた喜十郎が、突進してくるが仇吉に斬られる。

ふすまの影で仇吉は、バチを構える。
廊下に出ると、端と端で曇りと仇吉は向かい合った。
曇りは仇吉に、撃鉄を起こした銃を向ける。
仇吉は、顔の横でバチを構える。

銃声が響いた。
同時にバチが投げられた。
曇が悲鳴をあげる。
胸には、ぐっさりバチが刺さっている。

曇りが倒れる。
そして、仇吉が倒れる。
風の音がする。
もう、屋敷では動いている者は誰もいない。

倒れている曇り。
風に障子紙が舞う。
倒れている仇吉。

嵐の小船。
時次郎がこぐ。
蘭兵衛がいる。
籐兵衛が、子供へろ松を抱きしめる。

天平の笑顔。
ヘラを収めて、笑う時次郎。
心の中、仇吉は歌う。
風が吹く。

小船の上にとんぼがいる。
バチを握り締めている。
「とんぼさーん」とへろ松が走ってくる。
「へろ松っちゃん!」

へろ松は泣きながら「天平さんが死んじゃった。死んじゃったよ。俺これからどないしたらええんじゃ」と目をこする。
とんぼは、呆然とする。
朝になった船の上。
とんぼは、泣いているへろ松を隣に置いて三味線を弾いている。

明治の初め、上方で清元の名手として名をはせた延寿はとんぼのこと。
その姿といい、そのバチさばきといい、仇吉そっくりだったといいます。
歌っているとんぼ。
その姿は、仇吉そのものだった。


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2011.07.08 / Top↑
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