こたつねこカフェ

癖のある俳優さん、悪役さんが大好きです。時代劇、ドラマ、映画、俳優さんのことを好きに書いています。
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痛いわ、つらいわ、見ていられないわ 映画「切腹」

大阪夏の陣から15年。
戦国の世は、やっと安定してきた。
だが、主家が幕府の取り潰しにあい、多くの武士が浪人となっていた。

生活に困った浪人は、やがて切腹の場を借りたいと言って屋敷を回るようになった。
すると、面倒を避けたい屋敷側は、お金を払って浪人を引き上げさせた。
つまりこれは浪人たちの間に流行った、一種のタカリだったのだ。

ある日、井伊家上屋敷に、津雲半四郎と名乗る浪人が現れた。
この浪人は、「切腹のためにお庭を拝借したい」と言う。
家老の勘解由は、半年ほど前の春になった頃、同じことを願い出た浪人のことを思い出し、そのことを半四郎に話し出す。

浪人の求女という男だった、
その男は半四郎と同じく、切腹のために庭を借りたいと言って、この屋敷を訪ねてきた。
勘解由はこのような浪人に金を与えて追い払うのは、良くないと思った。

藩主に会わせると言われた求女は、仕官が叶うかもしれないと期待しただろう。
実際、その心意気に感心し、仕官が叶った浪人がいたという話もあったらしい。
だが置いてあった死に装束を見て、求女は自分は本当に切腹させられるのだと知った。

あきらかに狼狽した求女は「必ず戻るので、一度家に帰らせて欲しい」と頼んだ。
すると求女は「切腹するつもりもないくせに、武士の風上にも置けぬ卑怯者」だと罵倒された。
求女はどうあっても、切腹するように追い込まれる。

だが既に、求女の刀は竹光になっていた。
せめて真剣をくれるよう、求女は頼んだが、それは聞き入れてもらえなかった。
求女は、竹光での切腹を強要された。

竹光では、腹には刺さらない。
求女は竹光の上に倒れて、腹に突き刺す。
苦しさのあまり介錯を頼むも、井伊家の使い手である介錯人の彦九郎たち3人は嘲笑う。

「まだまだ!」
「もっともっと、引かないと切れないぞ」という声が飛ぶ。
求女は苦しみ抜き、やがて苦しさのあまり、舌を噛みきって自害した。
実に凄惨で、無惨な死に様であった。

勘解由は半四郎を戒める為に、この話をした。
だが聞き終わった半四郎は、「今度は拙者の身の上話を」と、話し出す。
半四郎の主家は、断絶になった。

娘婿の父であり、半四郎の親友でもあった男は主君に殉じて死んでしまった。
浪人となった娘婿一家だが、慎ましくも幸せに暮らしてきた。
やがて孫が生まれた。

一家は貧しいが、幸せそうだった。
孫は本当に、かわいらしかった。
だが半四郎の娘の美穂が、労咳にかかった。

治療代は、かさむ。
そして、生まれたばかりの子供までが高熱を出した。
切羽詰った娘婿は「あてがある」と言うと、家を飛び出して行った。

最初に行ったのは、高利貸しだった。
そこでは金は貸せないと、断られた。
時は経つ。
だが娘婿は、いつまで経っても戻らなかった。

やがて夜更けになった。
すると、娘婿は腹を切った遺体になって返ってきた。
娘婿を運んできた大名の家臣たちは一応の口上は述べたが、その態度は軽蔑に満ちていた…。

そこまで聞いていた勘解由は、ふと気がつく。
あの浪人の介錯に関わった彦九郎たち3人の家臣が、今日は登城していない。
なぜだろう?
そして、なぜ、この男はそんな話をするのだろう?

すると半四郎は勘解由に向かい、3つの髷を懐から出して見せる。
髷には彦九郎たち、彦久郎たち3人の家臣の名があった。
そうだ。
あの竹光で切腹させられた求女こそ、夜更けに運ばれてきた竹光で切腹させられた半四郎の娘婿だったのだ。

半四郎は言う。
なぜ、竹光と知って、それで腹を切らせたのか。
武士として、最大の侮辱である。

確かに武士として、どんな事情があるにせよ、人様の家に押しかけて腹を切るから場所を貸してくれなどということはしてはならなかった。
だが切腹をしに来た者が、今度は卑怯者と罵られても、一両日だけ待ってくれと言うなどは、よほどの理由があったと思わなかったのか。
これほどの家臣がいる、これほどの家で、せめて一言、一人ぐらい理由を聞いてくれる者はいなかったのか。

だが、勘解由は言った。
それは確かだ。
武士がそこまでするには、何か相当の事情があったのだろう。

だが武士たる者。
切腹を申し出た以上、それが自分の思惑と違ったからと言って、待ってくれというのは、卑怯でしかないのではないか。
侍ならば覚悟し、切腹し果てるものではないか。

半四郎もまた、言う。
その通りだ。
しかし、主家が幕府によって取り潰され、路頭に迷い、追いつめられ、どん底にあえぐ者の気持ちが、井伊家のような家の者や、その家臣たちにわかるか。
われわれ武士が頼りにしている誇りなど、実は上辺だけのもの。

ならば、明日は我が身…、とは思わぬのか。
半四郎は、井伊家の使い手、介錯人の3人を襲った。
そして結局、井伊家の使い手だという介錯人の3人は、半四郎の相手ではなかった。

何しろ、半四郎は戦という実戦を経験しているのだから。
娘婿を卑怯者と嘲笑った人間は、髷を切られた。
武士のプライドを、めちゃくちゃにされたわけだ。

髷を切られたら、登城できないか?
さあ、ではどうするのだ?
一介の浪人に恥辱を受けた立派な藩の武士は、切腹して果てないのか?

半四郎は嘲笑うと、井伊家の鎧兜を蹴り倒した。
家臣たちが次々現れ、半四郎を囲む。
井伊家の鎧を背に半四郎は、家臣たちを相手に暴れまくる。

求女は家族を守る為に、武士の魂の刀を竹光に替えていた。
だが半四郎はそれを、刀を手放さなかった。
半四郎は言う。
自分だって、武士の最後のプライドにしがみついていたのだと。

半四郎は家臣数名を斬り、そして最後に切腹して果てた。
勘解由は斬られた家臣は病死、この浪人は切腹したことにすると命令した。
結果、井伊家の対面は守られた。
そして井伊家の家名は、この後、ますます上がっていったのだった。


…と、映画「切腹」はこんな話でした。
半四郎は、仲代達矢さん。
勘解由は、三國連太郎さん。

求女は、石浜朗さん。
美穂は、岩下志麻さん。
3人の家臣は、それぞれ丹波哲郎さん、中谷一郎さん、青木義朗さん。
時代劇では、おなじみの方たち。

佐藤慶さんも、ご出演です。
この俳優さんたちの姿勢が、実に美しい。
特に仲代さん。
「武士は食わねど、高楊枝」じゃないけど、例え浪人になったとしても武士とはこういうものだ、と言っているようです。

もちろん仲代さんの殺陣も、見もの。
仲代さんと問答するうちに変わっていく三國さんの表情も、見ものです。
1962年の作品で、仲代さんはちょうど30歳、三國さんは39歳。
もう、嘘でしょ?!というぐらいの完成度の高さ。

カンヌ国際映画祭で、審査員特別賞を受賞。
いや、納得。
いやー、素晴らしい映画でした。

でも最初に言ったように、人には勧めません。
痛いし、救いがない。
話は謎解きのように始まります。

切腹した若い浪人の話を聞く半四郎の顔つきを見たこちらは、少しおかしいと思う。
異様さを感じます。
そして、半四郎は身の上を淡々と語り出す。

この男は、一体何をしたいのだろう?と、三国さんとともにこちらは思う。
それが徐々に明らかになる。
緊迫していく。

書きましたが、とにかく采女の切腹シーンは残酷。
求女の痛み、肉体の痛みはもちろん、心の痛みがキリキリ、ギリギリ伝わってくる。
しかもあざ笑っている相手は、主家を取り潰した側の家臣たちなんですよ。
半四郎たちの主家って、福島正則だったんです。

竹光で腹を斬る、肉体の想像を絶する痛み。
主家を取り潰され、取り潰した相手の前で悶絶する精神的な痛み。
武士として見下されている、心の痛み。
家で待っているであろう、残された病の妻と高熱を出している赤ん坊を心配する痛み。

全てが痛いんですよ、この映画。
見ちゃいられない。
そんな風に思わせる為に残酷さを知らせるために、この切腹シーンはこれほどまでに凄惨なのか。

介錯する側からすると、相手は切腹を盾に金品を要求した武士の風上にも置けない卑怯者。
罵倒していい。
何をしてもいい。
だって、自分たちは正しいのだから。

軽蔑して良い弱い相手を前にして、正しい側に立った者とはこうして、どんどん残酷になるのか。
普段はしないであろう残酷な面が、現れていく。
誰も止めてやろうと言わない。

こうして娘婿も、娘の美穂も、孫である赤ん坊も死んでしまった、浪人の半四郎に残された道。
それは命をかけて、武士のプライドを持って、井伊家へ斬りこむことだけだった。
主家を失って迷う浪人の苦しさ、悲しさ、屈辱が、人の痛みが、わからない相手への、いわば殴りこみ。

そして半四郎は言う。
お前たちが守る武士のプライドなど、切腹もできないお前たちのプライドなど、上辺だけのものにすぎないではないか。
切腹など、明日は我が身だとは思わぬか。

この半四郎の訴えは、勘解由にもわかっているんです。
流れ落ちる汗。
動揺する目が、それを語る。

だが、半四郎の言い分を認めてしまえば、それは井伊家の落ち度。
半四郎がこうして来た以上、討つしかない。
それが武士の面子というものか。

しかしそんな半四郎だって結局、武士を捨てられなかった。
采女のように、刀を竹光にできなかった。
あの竹光は、家族を守ろうとした采女の気持ちだった。
それで切腹させられた娘婿のため、半四郎は斬りこみをする。

だが、つまらないプライドにしがみついたことは、自分自身が一番わかっていた。
自分は刀を、家族のために竹光にできなかったのだから。
だからこそ、一介の浪人・半四郎は命をかけなければならない。
武士のプライドを捨ててまで娘たちを守ろうとした娘婿を嘲笑い、美穂さえも哂った立派なお家に斬りこまなければならない。

見直してないので、間違っているところもあるかもしれません。
もう見られないほど、痛い映画だけど、人には勧められないけど、すばらしい映画だと思います。
武士って、つらいのね。
そう思いました、はい。


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Comment

No title
編集
>仲代さんはちょうど30歳
丹波さんとの対決シーンは終盤の山場の一つですが同世代には思えません。
でも「二百三高地」の時には乃木と児玉で同期の桜~。
「鬼龍院花子の生涯」では親分の仲代さんが、大親分の丹波さんにヘコヘコしてる(笑。
2013年03月06日(Wed) 13:24
巨炎さん
編集
>巨炎さん

こんばんは。

>丹波さんとの対決シーンは終盤の山場の一つですが同世代には思えません。

信じられないほどの完成度というか、味わいがありますね。
今あんな30歳がいるかと思うと、本当にビックリ。

>でも「二百三高地」の時には乃木と児玉で同期の桜~。

そうでしたね。
あの仲代さんも印象的。

>「鬼龍院花子の生涯」では親分の仲代さんが、大親分の丹波さんにヘコヘコしてる(笑。

最後は決裂しますけど、その時にも礼儀は欠かさなかったですもんね。
あの時の夏木マリさんも、なかなかに好きです。
2013年03月07日(Thu) 00:37












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