テレビ東京の2時間ドラマ、松本清張3作もついにラスト。
ラストは「聞かなかった場所」。
名取裕子さん主演。
全部、ネタバレしてますので、注意!


厚生省の福祉局に勤める浅井恒子は、子育て支援局の次長。
恒子の講演は笑えて、それでいて為になると評判がいい。
ある日、講演を終えた出張先に、夫の英夫が心筋梗塞で急死したとの連絡が入る。

夫の英夫は若い頃、文学賞を貰ったが、その後はこれと言った作品が書けない作家だった。
いつかまた世間が注目するような作品が書けるだろうと、キャリアウーマンの恒子は英夫に書斎を与え、食べさせていた。
まるで一人前の作家のようだ、と思いながらも。

英夫は俳句教室の講師をしており、生徒の主婦たちにはかなり好かれていた。
酒が強くないはずの英夫は、そこでは楽しそうに飲み、饒舌に語っていたらしい。
恒子の知らない英夫が、そこにはいた。
英夫の追悼句集を出したいと言われて、恒子は英夫のノートを貸したことがあった。

葬儀の後、恒子は英夫の妹の博美は、兄は元々心臓が弱かったとつぶやく。
そして恒子は、兄を介抱し、救急車を呼んでくれた人にお礼を言わなくてはと言われる。
大塚の坂の手前で、英夫は発作を起こしたのだという。
だが大塚には知り合いもおらず、行く理由が見当たらない。

博美と共に救急車を呼んでくれた高橋を訪ねると、高橋は古く、狭い漢方薬の店を営んでいた。
店は坂の始まる手前にあり、坂を見上げるとそこはホテル街だった。
恒子の中に、女と連れ添って坂を下りてくる夫の姿が浮かぶ。

それから恒子は、大塚を頻繁に訪れ、周囲を探った。
黒いコートを着て、坂にいる恒子を、店の中から高橋が見る。
だが手がかりはつかめず、恒子は次第に仕事に打ち込むようになる。

英夫の追悼句集が出たと、生徒たちが恒子に持って来た。
恒子は関心がなかったが、それによると恒夫はずいぶん、日本各地を回っている。
博美に英夫の旅行について知っているか聞くと、英夫はあまり外出するタイプではなく、取材旅行にも行かないので全部想像ではないかと言われる。
英夫は句集の中で、熊本県の灯篭の灯りに自分の思慕の念を込めた句を残していた。

何も手がかりはなく、大塚について調べるのを諦めかけた恒子だが、ある夜ふと大塚に行ってみる。
すると高橋が店を閉め、新たに駅前に今までの4倍もの面積の60坪の土地で人を雇って薬局を開いたことを知る。
あの潰れかけたような店で、1人、冴えない男に見えた高橋。

一体、どうして、そんなことができたのだろう?
恒子が登記を調べるとそこは、表舞台にこそ出てこないが、多くの会社の大株主で政財界にも影響力が強い久保という老人の土地だったことがわかる。
そして、久保の一人娘はかつて、恒子の部下でもあった久保孝子だった。
恒子は職場で、孝子と接触を図る。

しかし、孝子の顔色からは何も伺うことはできなかった。
さらに恒子は退社後の孝子を尾行する。
すると、孝子の家は大塚にあった。

数日後、偶然を装い、恒子は孝子の家を訪れた。
孝子の家には家政婦がいた。
父親が孝子の男性関係を警戒し、見張りにおいているようなものだと言った。
恒子は自分も家政婦を雇いたいと言い、その家政婦紹介所を教えてもらう。

孝子が家政婦に聞きに行っている間、恒子は飾られている灯篭を見つける。
それは英夫の句に書かれていた灯篭だった。
間違いない、夫は孝子と通じていたのだ。

家政婦紹介所を通じて家政婦に連絡を取った恒子に、孝子の家の家政婦は守秘義務を守ろうとした。
しかし、孝子の男性関係について訪ね、もしかしたら彼女の恋人は自分の夫かもしれないと言われると、自身も夫の浮気が原因で離婚した家政婦が口を開いた。
孝子の恋人は見たことがなかったが、恒子の夫が亡くなった翌日、家政婦が出勤すると孝子の家の応接間が水浸しになっていたという。

アロマオイルを焚いていて、絨毯を焦がしてしまい、バケツで消火したと孝子は説明した。
しかし、バケツは3つあった。
1人で消火したなら、1つのバケツで水を運ぶはずだ。
3つあるのは、誰かが手伝ったからではないのか。

恒子は想像する。
あれは風の強い日だった。
英夫と孝子の逢瀬の間、何かの拍子で窓が開く。
アロマオイルを焚いていた火が、風に煽られた何かに燃え移る。

必死に消火活動をする夫と孝子。
夫は帰り道、発作を起こす。
違う!
夫は孝子の家で、発作を起こしたのだ。

医者を呼ぶわけには行かない孝子は、漢方の店を営んでいた高橋を呼んできた。
高橋が来た時、英夫はもう死んでいた。
孝子に頼まれて、高橋は夫を背負い、自分の店に行き、救急車を呼ぶ。
高橋の沈黙への代金として、駅前の土地を譲る…。

恒子は孝子を呼び出し、ランチをとりながらこの予測を自分の友人の話としてしてみる。
孝子は食欲がなかったが、それについて意見を求められても黙っていた。
その後、返事もない。

恒子はついに八王子の病院に父親を見舞う孝子を待ち伏せし、どう思うのか返事を迫った。
人気のない山の方に連れられてきた孝子は、恒子の追及に対し「そんなバカな女の話はする気がない」と答える。
夫を取られるような、バカな女。
さらに孝子は、何がしたいのか聞くと、恒子は土下座して謝れという。

だが開き直った孝子は恒子を嘲笑う。
自分の家で発作など起こして、迷惑なのはこちらだった。
父はもう、意識がない。
恒子が父親にばらすという脅しはきかない。

マスコミに話すというが、孝子は自分より痛手を食らうのは、女性初の局長に決まった恒子の方だと言う。
これが原因で左遷されたら、親の莫大な財産を継ぐ自分が少し用立ててやってもいい。
それに英夫は恒子について、孝子に話していたことがあった。

「下手なんですってね」。
そう言って笑って去っていく孝子。
孝子の隣に、夫がいるのが見える。
思わず恒子は側にあった石をつかみ、後ろから孝子を殴りつける。

「痛い」。
苦痛に顔をゆがめて、孝子は絶命。
その場を逃げ出した恒子だが、雨が降ってきて、さらにケガをしてしまう。

恒子を助けたのは、通りがかりの八王子病院の訪問医療をしている看護師だった。
手当てをしてもらい、駅まで送ってもらった。
半月後、恒子は厚生福祉省初の女性局長に任命され、注目の的となる。
週刊誌の取材を受けた恒子は、孝子の記事を見る。

孝子の遺体は発見されたが、犯人はつかめていなかった。
だが、高橋が恒子を訪ねてやってくる。
高橋は恒子と孝子を結び付けており、孝子を殺したのは恒子だと見当をつけていた。
恒子に付きまとい始めた高橋を、恒子はおぞましく思う。

さらに講演会の参加者リストの中に、八王子病院のあの看護師の名前があった。
なんとしても、あの看護師と顔を合わせてはいけない。
恒子は口からでまかせだったが、八王子病院の訪問医療の取り組みは素晴らしいと表彰させることにする。

表彰式は講演会と同じ日だから、表彰式には恒子は出られない。
また、講演に八王子病院の看護師が出ることもできない。
恒子の計画通り、講演と表彰式は無事、終了。
ホッとして上機嫌の恒子の前に、再び高橋が現れる。

殺すしかない。
恒子は決心した。
高橋を家に呼んだ恒子は、昼休み、包丁を買い求めた。

恒子は高橋を殺害する自分を想像する。
それは確実に、実行に移されるはずだった。
包丁の紙袋を提げて戻ってきた恒子に、来客があった。

部下に案内されて、八王子病院の看護師たちが、表彰のお礼に現れた。
先頭に、あの日の看護師の顔があった。
看護師は恒子を見て、「どこかで…、お会いしましたよね」と言う。

「お礼なんて…。私の方が言いたいわ」。
恒子が紙袋を落とす。
「罪を重ねることを、阻止してくれて…」。
恒子の落とした紙袋から、包丁が見える。



これは原作では、主人公は男性のはず。
この3作は女性を中心に展開させて、出てくる女性の罪深さ、愚かさ、哀しさ、恐ろしさを描いたわけですね。
だけど、男女逆転とは思い切ったことを。

心筋梗塞を起こした妻は、全く繋がりのない場所でなくなっていた。
夫は妻には恋人がいたのではないか、と疑い始める。
…という話だったのでは。
死因も、消火活動の負担ではなかったんじゃないかな。

いやー、ラスト、恒子の新しい犯罪を予感させて終わるのかと思いましたよ。
エンディングテーマが流れ始めたので。
おそらく、高橋殺害は行われ、恒子はこうして闇の中へ堕ちて行くのだ、と思いました。
そしていずれ、破滅するのだろうと。

ところが、最後に見下していた部下が看護師たちを案内してきてしまっていたというオチが待っていた。
今までの2作はラストを変えなければ良かったのに、と思いましたが、これは効いてましたね。
上手いどんでん返しでした。

「新たな犯罪を起こさないで済んだ」と言えた恒子は、やはり見事な女性。
恒子はプライドから、夫と孝子が自分を笑っていたと思い込んでいる。
その想像に怒り、謝罪を要求する。

孝子も開き直って、かなり攻撃的な言葉を投げかけたけど、恒子がしつこくしなければ、黙ったままでいたのに。
恒子は部下も、英夫の生徒も、義妹さえどこか見下していましたっけ。
たぶん、夫さえ。
そんな人が孝子の存在なんて、許せるわけはなかったんですが。

夫に愛人がいたと知った恒子はお骨も位牌も、ぜーんぶ物置に放り込む。
見ていて、確かにああいう人が側にいたら、書けないかもしれないとは思いました。
恒子は英夫にインスピレーションは、与えられないかもしれないと。

でも孝子だって恒子に知られるのが怖かったんだろうし、父に知られるのが怖いから高橋に土地をあげちゃったんですよね。
1億もの土地をあげてしまったんだから、孝子だって相当怯えたはず。
莫大な財産があるとはいえ、結構ひどい目には遭ってると思うんですよね。

あの時の孝子は、窮鼠猫を噛む状態。
恒子のプライドが、相手を攻撃的にした。
知らない方がいいことって、このことだった。

もし夫と孝子が恒子を悪く言っていたとしても、知らなかったら、何も起きなかったことと同じだったのに。
そうしたら、誰も犯罪になど巻き込まれなかったのに。
出世を約束された恒子の居場所は、揺らがないのに。
そこをやりすごせないのが人間、ってことですが。

渡辺いっけいさん演じる刑事さんは、3本全部ご出演。
そういえば、連続ドラマで名取さんに振り回される部下役。
このドラマでの名取さんは、真実を求めて暴走はするが、人を見下したりはしない役。
2人の対面がなかったのは、ちょっと残念なような、あざといからこれでいいような。

孝子役の酒井美紀さんは、最近2時間サスペンスで悲しい役でも悪役でも良くお見かけするようになりました。
いいですねー。
こういう役は、川上麻衣子さんだった気がするのですが、こちらは何でもない義妹さんでした。

高橋千代吉は、大杉漣さん。
名取さんにつきまといながらも、少々自信がなく、ついに名取さんからお誘いがあった時はうれしそうでした。
冴えない薬局のオヤジさんだった時と、大きな薬局の主人になった時のギャップはさすがです。

この3作、いずれも女性が感情のままに犯罪を犯してしまったり、加担してしまって、日常を失う結末だった。
そうならずにはいられなかった女性の弱さ、愚かさを描いていたんですね。
3作終わって、言いたいことはありましたが、いい俳優さんたちのドラマは、やっぱり見応えあります。


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2011.11.22 / Top↑
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