7話「青い血の女」。

三沢は学生時代の友人の鬼島明の家を訪ねていた。
2年ぶりの交流で、鬼島明は学生結婚をして、幸せに暮らしていた。
父親の鬼島竹彦と「一緒に暮らすことになったんだなあ、先ほど、門のところで後姿をチラッと見た」と三沢が言うと、夫妻の顔色が変わった。
妻が「自分も夕べ、一昨日と父親の姿を見た」と言うが、明は父親は田園調布の家にいると言い張る。

だが、今夜も三沢が見ているのだ。
明は父親に電話をすると、父親の住む家では壁に子供の起き上がる影が映る。
「もしもし?」と明が言うと、電話は無言で切れた。

やっぱり父親は家にいる。
だが自分とは話もしたくないのだろうと、明は言った。
「老人は老人の世界。僕たちは僕たちの世界だ」。

三沢がどうしたのか聞いてみると、父親は息子を憎んでいるのだと言う。
父親は明をかわいがってくれた。
愛情が裏返しになった憎悪なんて、もう救いようがない。

三沢がバカなことを言うなと言うと、明は話を止めて飲もうと誘った。
そして三沢に今夜は家に泊まっていくように勧めた。
鬼島夫婦と三沢が飲みながらテレビを見ていると、突然、画面が乱れ、何も映らなくなった。
どのチャンネルも映らない。

それをきっかけに、3人は就寝することになった。
三沢が部屋で寝ていると、何かが飛びかかってきた。
妙な機械音とも言えない音がする。
三沢がスタンドの灯りをつけると、手の甲がスッパリと切れて血が滲み出ていた。

夜道を行くサラリーマンがふと、置いてある人形に気づく。
歩きかけて、振り向くと人形がこちらを向いている。
人形の表情が見る見る青白く、凶悪に変わる。
そして手の平にナイフが現れ、サラリーマン目掛けて切りつけた。

町田警部は、頚動脈を切られたサラリーマンの現場検証に当たっていた。
その時、三沢の手の傷が被害者と争った時の傷ではないかという情報が入り、三沢は任意同行された。
三沢は帰されたが、刑事の尾行がついていた。

腹を押すと音を出す人形が落ちており、思わずそれを踏んだ三沢が刑事に人形を渡す。
暗い夜道を歩く三沢に、またあの奇妙な音が迫る。
再び三沢は何者かに切りつけられた。

その夜、明は竹彦の家を訪ねる。
心配して様子を見に来たと言った明を竹彦は冷たくあしらうが、明は家に来ましたね?と聞く。
「誰が行くものか」と言った竹彦に明は、三沢が自分と間違われて刺されたと言う。

「お前と言う奴は…私がやったというのか」。
「お父さん、どうして僕がそんなに憎いんだ」。
すると竹彦は「お前は私を裏切った」と言う。

「裏切った?成長した子供が親から離れていくのを、あんたは裏切りだと言うのか。嫉妬だよ、老人の」。
「帰ってくれ」。
明を追い返した竹彦は、ある部屋に入る。

「どうしたんだよ。さあ、眠るんだよ」とベッドに向かって、優しい言葉をかける。
「さあ、オルゴールを聞かせてあげようかねえ」。
「こんにちは赤ちゃん」のメロディが響く。
オルゴール人形がクネクネと動く。

三沢が襲われたことは、町田警部の耳にも入った。
的矢所長は三沢を疑うのは見当違いだっただろうと言う。
三沢はSRIにはいなかった。

逮捕状が出ているなら探し出しますがね、と牧が言う。
野村は犯人は三沢に何かを知られた。
いや、知られたと思ったのではないかと予測する。

それで狙われた結果、三沢と間違えて通りかかったサラリーマンを殺してしまったのではないか。
顎に残された刃物の破片から、刃物は特殊なものだとわかる。
その時、さおりに遊びの誘いの電話がかかり、町田警部は出て行く。

実は電話は三沢からで、的矢所長に代わると、三沢は喜島親子が激しく仲たがいしていることを告げる。
だがいくらなんでも親子だと三沢が答えた時、町田警部が戻ってきた。
しかし、三沢の電話は切れた。
その夜、竹彦は家でカバンを開け、目を丸くし、「ない!どうしたんだ!おい、どうしたんだ!どこへやったんだよ、どこへ」と叫んでいた。

ベッドに横たわっている、小さな影が映る。
傍らに人形がいる。
「もうやめよう。頼む、もうやめるんだよ。お前は私の為に…、私に代わって…。お前は私のことだけを考えてくれている」。

竹彦は何者かに話しかけた。
「私だってお前だけが…。だからもうやめるんだよ。2人だけで、静かにここで暮らそう」。
「私だってあいつが憎い。しかし…」。
その言葉が部屋にある人形に届く。

三沢は、竹彦の家の近くに止めた車の中にいた。
車の中の三沢に、あの人形が近づく。
それはまるで、小さな子供が歩いているように見える。

タクシーが止まり、人形が影に隠れる。
若い女性と老人が降りてくる。
老人を支えきれない若い女性を見た三沢が、車から下りる。
酔っ払って倒れていたと女性は言う。

老人は竹彦だった。
三沢が家に竹彦を送ってくると言って、女性を車の中で待たせる。
しかし、三沢を待っている間、人形が女性に迫ってくる。
恐怖のあまり、女性は車を走らせた。

だが人形は車の上にしがみついていた。
マンションに戻った女性は急いでドアを閉めるが、部屋の中で何かが落ちて割れる音がする。
怯えた女性が見ると、人形が歩いてくる。
人形の手から、大きな刃物が突き出る。

三沢が車がないのに気づき、追ってきたが、女性のいる部屋からは絶叫が響く。
あわてて三沢がドアを破って部屋に入ると、既に女性は絶命していた。
管理人が第一発見者となり、三沢を見たという情報が入る。
町田警部に今度こそまずいと言われる三沢だが、女性は誰かに追われていたのだと言う。

三沢は犯人と断定される証拠もないが、シロと断定される証拠もない為、釈放される。
これは単純な事件ではない。
帰り際に三沢が最初の事件が起きた時、テレビの画面が乱れたと言う。
すると、町田警部は聞き込みによる、犯行時刻に周囲の家でもテレビの画面が乱れたと知らせた。

何かの強力な電波だろう。
SRIは今度、その電波が発信されたらわかるように、探知する。
さっそく野村と牧が見守る中、電波がキャッチされた。
発生地は竹彦の家だった。

町田警部は竹彦の家に急行。
奇妙な電気製品を使っているのではないか、と言った町田警部の背後に三沢がいた。
三沢に気づいた竹彦は、帰ってくれとドアを閉める。
しかたなく引き上げかける警察と三沢。

部屋の中を向いた竹彦の目に、あの人形が入る。
「うわああ!」
悲鳴を聞いた三沢と町田警部たちは、急いで引き返してきた。
ドアを開けると、そこには竹彦に刃物を向けている人形がいた。

「危ない!逃げるんだ!」
警官が人形に発砲する。
人形は破壊された。

人形の白い顔の上の頭の部分が割れて、中の機械が見える。
歯車の音が響く。
「殺人人形をコントロールしてたのは、あんたじゃないですね!」
うなだれている竹彦。

「誰だ。誰がこれを」。
突然、竹彦が立ち上がり、走っていく。
「待て!」

一つのドアの前に竹彦は張り付き、三沢たちの入室を拒む。
「入らないでくれ!ここは私たちの、私たちだけの部屋なんだよ!」
「おいっ、中には誰がいるんだ!」
町田警部にも竹彦は、首を振り続ける。

「あの子は4つなんだよ。4つの女の子なんだよ。そんな子供に何ができるんだ!」
竹彦を引き剥がし、三沢たちは中に入る。
するとベッドにはうつろな黒い目をした、大きな人形が横たわっている。
全員が見守る中、うつろな目が開き、人形に表情が現れる。

「老人を捨てた、老人の子供たちを殺さなきゃ」。
人形が話す。
全員が固唾を呑んで、見守る中、人形は話し続ける。

「あたしは大人よ。いつまでも子供扱いされちゃ、かなわないわ」。
竹彦の目が見開く。
「あたしも、老人を捨てて独立するの。だから、あたしも殺さなきゃ」。
人形が起き上がる。

「あっ」。
三沢たちが見ている前を、ふわりと人形が宙に浮く。
人形が窓を破る。
その拍子に、オルゴール人形が床に落ち、体をくねらせながら「こんにちは赤ちゃん」のメロディーが流れる。

屋根に登った人形が、「殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ」と言う。
そして「ギャー」という悲鳴をあげながら、屋根から窓の外に落下した。
外に駆けつけた三沢と警察を、竹彦は押しのけて人形を見る。

人形から青い血が流れていく。
「私が、あれほど言ったのに。私とお前だけだ。2人っきりの生活だ。これで…」。
竹彦が涙ぐむ。

SRIに入った町田警部は、三沢に詫びた。
「どうぞ」と言われた町田警部は、座る。
的矢所長が口を開く。

「今も話していたんだが、現代ほど老人にとって孤独な時代はなかったかもしれないよ。だから決して裏切らない、そんなつもりであの老人は、『あれ』を作って孤独を忘れようとしたんだ。結局は、『あれ』も老人を捨てたがね」。
三沢が「しかし忠実でしたよ。最後まで」と言った。

町田警部が言う。
「本当だ。老人が、ふっと抱いた殺意を、『あれ』は老人に代わって、最後まで実行し続けたんだからな」。
「ええ」と、三沢がうなづく。
「ところが、『あれ』自身も、いつのまにか老人を捨てようとしていた」。

さおりが「だから屋根から飛び降りて、自分を殺したの」と聞く。
「さあ…。『あれ』の心は誰にもわからない」。
「『あれ』は…一体なんだったんだ」と牧が言う。
「人形じゃないわ。もちろん、人間でもないし」とさおりが言う。

野村が「世の中が段々奇妙になると、みんな『あれ』になるんですよ」と言った。
「やめてよ!そんな冗談言うの!」
三沢がつぶやく。
「青い血の女…、か」。


「怪奇大作戦」の7話放送なんですが、最初だけ見ても人形怖い!
これは子供には、恐怖だわ。
夜道に人形があったら、それだけで私なら「ギャーッ」です。

それが振り返ったらこっちを向いてるとか、悲鳴、いや絶叫、猛ダッシュ?
いえいえ泣きますね。
失神するかもしれない。
しかも『あれ』も不気味ですから、もうちょっとかわいく作ってください、竹彦さん。

しかし、『あれ』は人間じゃない。
だから何回も人間違えをしてしまうし、その修正はなかなか利かなかったんでしょうか。
おかげでサラリーマンと女性が犠牲に。

見張っている三沢の前で、泥酔した竹彦が後に犠牲となる女性に送られてくる。
三沢が竹彦を、家まで送り届ける。
描写はありませんが、おそらく三沢はこの時竹彦に深い孤独を感じたでしょう。

独立してしまった明を竹彦は、憎んだ。
明が立ち去った後、竹彦に愛された『あれ』は、竹彦の憎悪を実行に移してやる。
だが意思を持ち、やがて自我を持った『あれ』もまた、竹彦から離れることを望んでしまう。

竹彦から離れた息子への憎悪から作られた自分。
離れることをしないから愛される自分。
それが竹彦から立ち去ることを望んだなら、存在する意味はない。

『あれ』は人間ではないから、赤い血は流れない。
でも無感情の無生物でもないから、血は流れる。
それは青い血。
なんと哀しい青い血。

『あれ』を失った竹彦は、もっと深い孤独に陥ったのではないでしょうか。
そして今度のことで、明は父親に対して何を思うでしょうか。
竹彦の孤独を軽蔑するか。
哀れに思うか。

若い明は前途しか目に入っていないけれど、この時から40年以上経った今はどうだろう。
「現代ほど老人にとって孤独な時代はなかったかもしれない」と言った、あの時よりはるかに孤独な今。
まさにその時代に、明は竹彦と同じ年齢になろうとしているのでは。

竹彦のようにならないと、固く決心したか。
もし、明が竹彦と同じ立場になったなら、この時の竹彦を思い出すでしょう。
その時、明は竹彦の孤独を理解し、共感するのか。


子供の頃これを見たら、怖いだけだったかもしれませんねー。
今は見た後、何とも言えない気持ちになってしまいました。
人の孤独さ、人形の忠実さに哀しくなります。

オリンピックも終わった、昭和40年代。
日本は高度成長期を迎え、都会がどんどん発達する一方で、取り残されていく村と人がいた。
戦争を過去にする人と、できない人が乖離して行く5話と同様。

進歩とともに、いろんなひずみが現れてきた時代。
それが進歩する科学と結びつき、犯罪が起きる。
背後には人間の欲望だけではない、科学は先取りしても心が取り残された人の哀しみがある。

現代に見ても、まったく違和感を感じない。
ということは、答えが出ない永遠のテーマを扱っているとも言えますね。
名作「怪奇大作戦」の中の、そのまた名作だと思います。

オルゴール人形を、あれほど不気味な演出に使うとは。
ホラーとしても、名作なのではないでしょうか。
哀しい名作です。


スポンサーサイト
2011.11.25 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://kotatuneco.blog59.fc2.com/tb.php/1986-7e5a1106