20話「殺人回路」。


ある夜、神谷商事の社長室で社長の清五郎と息子で専務の清一郎が、口論となっていた。
清一郎が、コンピューターがはじき出した計算で、創業以来の系列子会社・林物産との契約を勝手に切ったのだ。
清五郎は清一郎に、音声化の機械を通して、コンピューターと直接話すことを勧めるが、清五郎は怒って息子を追い返した。
「あいつを専務にしたのが間違いだった」。

だが清五郎は、コンピューターに計算結果を聞いてみる。
コンピューターは林物産はもう助けられないと答える。
「わしの目の黒いうちは、絶対に潰させんぞ」。
しかしコンピューターは「アナタノ イノチハ アト 30ビョウデス」と答えた。

「何だと!」
社長室の電気が消え、席の後ろにあった大きなダイアナの絵画からダイアナが抜け出してきた。
ダイアナは絵の通り、弓矢を構えると、清五郎に向ける。
清五郎は心臓を抑えて、うずくまる。

その1週間後、SRIの的矢所長に、伊藤大助という男から電話が入った。
さおりとは話が通じなかったが、伊藤は的矢所長の柔道部での旧友だった。
伊藤は次期重役候補だったが、1週間前、社長がなくなって息子が社長になってから配置転換されてしまっていた。
電話を切った伊藤は、プログラマーの岡という若い社員に仕事を命ずる。

的矢所長が、伊藤に会いにやってきた。
屋上で、伊藤は電算室の計算課長に回されたことを嘆くが、その声は明るかった。
営業で18年勤めた俺も、コンピューター様の前では形無しさと笑う。
伊藤の的矢所長への相談は、夕べ、前社長の初七日の夜、業務を終えて外に出ると、何か白いものが見えたというところから始まった。

それは、白いドレスを着た金髪の女性だった。
不思議に思った伊藤が後をつけると、女性は社長室のドアの前で消えてしまった。
女性は社長室のダイアナの絵に、そっくりだったと言う。

話を聞いた牧は、慣れない部署で伊藤がノイローゼにでもなっているのではないかと言うが、そんな男ではない。
牧は、5日前に社長が死んだ新聞記事を覚えていた。
的矢所長は1人で何とかすると言うが、SRIも放置はできない。

その夜、岡は新社長となった清一郎に、伊藤がSRIに相談したと話をしていた。
「どうして夕べ、約束どおり、奴をやらなかった」と清一郎が言う。
「あの時は…、もちろん計算どおりにことを運ぶつもりでした」と岡が言う。

岡が残業していると、「やってるな」と言って伊藤が戻ってきた。
「食えよ」と言って岡に、焼き芋を包んだ新聞紙を放る。
「俺はな、5時を過ぎると無性に腹が減るんだ」と言って、伊藤は豪快に笑った。
その後、伊藤は鼻歌を歌っていた。

「課長は隣で帰り支度をしていました。あの時既に、ダイアナの矢先は、課長の心臓部を狙っていたんです」。
ダイアナの矢が、伊藤を射程に入れる。
だが岡は焼き芋とコンピューターを、交互に見た。

ダイアナが微笑んで、伊藤に向かって矢を構える。
その時、岡はコンピューターを止めた。
「要するに君は、伊藤のペースに呑まれたんだよ」と話を聞いた清一郎が言う。

岡は「そうかもしれませんが、課長のあのオンチな声が死んだ親父に似てたもんですから…、つい」と言った。
「君の個人的な感情で、命令にそむかれちゃ敵わないね。伊藤は俺にとって近いうちに、最強の敵になる。コンピューターがそう解析したじゃないか」。
「おまけにダイアナの幽霊まで見られた以上、絶対に生かしてはおけない。機会を見つけ次第、やりたまえ」。

清一郎は岡がコンピューターに精通していたからこそ、岡を引き立てたのだ。
将来は技師長の座を約束している。
岡は、清一郎にわかっております、と返事をした。

SRIで、さおりが野村に話をする。
「コンピューターって作曲したり、絵を描いたりもするんでしょう。恋占いまでするんですって。でも何か嫌な感じだなあ」。
「どうして?」
「だって、自分の恋人を計算機で決めちゃうなんて」。

野村が「いっそコンピューターと結婚したらどうだ、さおりちゃん」と言う。
「ばかみたい」。
「コンピューターの亭主っていいぞ。嘘はつかない。浮気はしない。一度聞いたことは絶対に忘れない。こんな誠実なのって人間の男性にはいないぜ」。
「そんなの、つまんないわ」。

的矢所長と牧は、夜の神谷商事に向かう。
まだ誰か残業しているようだ。
的矢所長と牧が社長室に入ると、目の前でダイアナが絵から抜け出してきた。
ダイアナは2人には目もくれず、扉を通り抜けていく。

廊下を歩くダイアナの後を2人はつけていく。
階段を登り、ダイアナはある部屋の前で消えた。
「機械計算室」。
中では岡が作業をしていた。

振り向いた岡の前に、ダイアナがいた。
「しまった。社長の奴、俺を罠にかけやがったな!誰か!誰か来てくれ!」
「どうしたんだ」と牧が言うと岡は「助けてくれ」と言った。
矢を構えたダイアナが迫ってくる。

ダイアナから逃げ、的矢所長と牧と岡の3人は廊下でエレベーターが来るのを待った。
すんでのところでエレベーターがやってきて、3人は乗り込むことができた。
そこで初めて、岡は的矢所長と牧が誰なのか聞いた。
「SRIです」と言われると、岡の顔色が変わった。

「私、プログラマーの岡と申します。実はお話したいことが」。
そこまで言うと、今度はエレベーターがガクンという衝撃と共に止まった。
「しまった。パンチカードを抜くのを忘れた」と岡が叫ぶ。

「パンチカード?」
「ええ!それがダイアナを」。
そこまで言うと、岡が悲鳴をあげた。

ダイアナが、エレベーターの壁の中から現れた。
的矢所長と牧はダイアナを止めようとしたが、2人はダイアナをすり抜けてしまった。
ダイアナが岡に矢を放つと、岡は倒れた。

的矢所長は町田警部を呼んだ後、三沢に電話をかけてCRTディスプレイの設計図を届けてほしいと頼む。
CRTディスプレイとは何か、さおりが聞く。
コンピューターの答えを絵や文字に代える設計図だが、さおりはダイアナを見たいので自分が届けると言う。

翌日、社長室に清一郎が入ってきた。
するとサイレンが鳴り、ダイアナが絵から抜け出てくる。
「何だ、貴様。誰の指図で」。
後ずさりしながら、清一郎は受話器を取る。

「アナタハ シヌ」。
「何だって?お前を動かしているのは誰だ!」
「コンピューター。ワタシハ オマエヲ コロス」。
「そんなばかな」。

「ワタシハ オマエノ チチヲ コロシタトシテ プログラマーモコロシタ。ワタシノ サツジンノ ヒミツヲ シッテイルノハ オマエシカイナイ。ダカラ オマエヲ コロス」。
「やめてくれ!私は誰にもしゃべらない!」
「ワタシハ ニンゲンヲ シンヨウシナイ」。
「助けてくれ!」

清一郎は扉に飛びつく。
ダイアナが狙いを定める。
「誰か!だれもいないか!開けてくれ!」

ダイアナが微笑む。
弓矢が放たれる時、ダイアナが消えた。
清一郎が安堵する。

すると、的矢所長と牧が現れた。
「何だ、君たちは!」
「とうとう白状しましたね」。
「何を言っている。私は殺さん。誰も殺しちゃいない」。

「それも彼女に聞いてみますか」。
「バカなことを言うな。あれはただの油絵だ」。
「そう、おっしゃる通り、どう見ても油絵に違いない。その実は」と的矢所長がダイアナの絵を扉のように開ける。

「CRTディスプレイ。つまりコンピューターが送り出す、映像表示装置。殺人もずいぶん、科学的になったものですな」。
清一郎は逃げようとするが、町田警部たち警察に押さえられた。
町田警部が電話に「牧くん、電源切れ!」と言う。

「了解」。
電話の向こうで、さおりが牧に「どう?あたしのダイアナの声。ちょっとしたもんでしょ」と言った。
伊藤が的矢の手を取って、「ありがとう。お前のおかげで、俺は命拾いしたよ」と言った。

「お前みたいな奴に、先に死なれちゃ困るんだよ」
「何言ってるんだよ、俺の歌が聞けなくなると寂しいんだろ」。
「ちくしょう、銅版の化け物なんかにゃ殺されんぞお!」
屋上で的矢所長は伊藤と笑いあった。



伊藤大助役は、「必殺シリーズ」では貫禄ある悪役を演じることが多かった神田隆さん。
この方の「必殺仕置人」の、実は目が見える凶悪検校は忘れられない名演です。
「新・仕置人」では、正八の落語の口元を見ていて、自分がやった毒殺を思い出して冷や汗をにじませるところなんかも忘れられません。
ここでは豪快な課長さん。

今だったらなかなかパソコンもファックスも覚えなくて、内線電話の保留もできずに電話切っちゃいそうな人です。
でも部下の面倒見は良くて豪快で、人間味溢れるアドバイスなどもしてくれそうで、慕われそうです。
「かちょー、また切っちゃいましたね!」と言いながら、お昼ごはん一緒に食べたり、お茶なんかしたいです。
だから岡が殺せなかったんでしょうね。

2代目社長・清一郎役は、平田昭彦さん!
いやー、小さいころ見た特撮映画やドラマで、ずいぶんなじみがあります。
ここでは、コンピューターしか信じない冷たい男です。

しかし、ダイアナの矢で人が死ぬのが、よくわからない。
だって、牧さんたちはダイアナを通り抜けちゃったでしょう。
なぜダイアナの矢だけが実体化して、人を殺せたんでしょうか。
ダイアナの矢は、岡には残っていなかったし。

あれは光線か何かでしょうか。
このコンピューターは、光線も出せるという設定だったんでしょうか。
先代社長が心臓発作を起こす、というのはわかったんですけど。
でも当時は、コンピューターなら何でもできちゃうんじゃないかって納得させる力があったんでしょう。

パンチカードというのが、時代を感じさせてくれます。
コンピューターの形状とか、声とかも。
あの声は「ワレワレハ ウチュウジンダ」の声ですね。

コンピューターの計算、予測ばかりを信じて、人を信じない清一郎。
創業以来の子会社もコンピューターの計算でアッサリ切るつもりだったし、岡も信用しない。
コンピューターの言うように、伊藤が最大の敵になると信じて殺害を謀り、父親さえも邪魔にして殺してしまう。

それが最後、コンピューターに追い詰められてしまった…と思ったら、それは牧とさおりだったんですが。
コンピューターを操るのは、人間。
人間のように、コンピューターは清一郎を助けてはくれなかった。

「怪奇大作戦」は日本が高度成長するにつれてその変化についていけない人間と、先端をいきたがる人間との摩擦をよく描いていました。
12話の「霧の童話」などは、村を舞台にしていましたが、これは都会で起きる世代の摩擦。
前の世代と今の世代で対立が起き、それが事件に発展する。

12話は村で、事件を起こしたのは、前の世代。
こちらは都会で、事件を起こしたのは、今の世代。
根底に流れているテーマは同じ。

なのに、まったく違う作品のように雰囲気は違います。
「霧の童話」の日本独特の因習も湿っぽさもない、無機質で乾いた雰囲気。
さおりちゃんの「コンピューターみたいな男性なんてつまらない」の言葉が人間らしく、ここでの救いです。
現在は、世界的な大企業の社長がコンピューターで自分の子供を産む女性を選ぶ時代になりましたもんねー。

「ワタシハ ニンゲンヲ シンヨウシナイ」は、現在、コンピューターだけが言ってるセリフではないし。
「怪奇大作戦」の時代の先取りのすごさは変わらないんですが、「青い血の女」や「霧の童話」あたりを思い出すと、やや単調な作品が続いているような気がしてしまいます。
いや、クオリティは高いし、最初の頃がすごすぎて、あれをずっと維持するのは無理なのはわかっているんですが、最初の頃を思い出すとどうもそんな印象になってしまいますね。


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2012.01.10 / Top↑
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