26話「ゆきおんな」。


雪深い山奥の温泉宿に、小竹和夫という青年が、ぜんそくの為に滞在していた。
その温泉宿に足の悪い男はいないかという電話が、かかってくる。
小竹は「いない。客は自分しかいない」と答えた。

だが、その宿にはもう1人、角田彦次郎という男が滞在していた。
小竹は角田に「親父さん。またかかってきたよ。だいぶ探されているらしいな。一体何をやったんだ?」と声をかけていた。
毎日絵を描いているその男は、人が来れば逃げ回る。

小竹の質問に対し、角田の答えはなかったが、温泉で角田は小竹に頼みがあると言う。
娘に会いたい。
会ってきたらいいと言う小竹に角田は、そんなに簡単に会えるなら頼みはしないと言った。
「礼は十分にする」と言う角田に、小竹は「何かよっぽどのことをやったらしいな」と返す。

その頃、SRIのさおりは、友人の井上秋子から、差出人の書いていない招待状を受け取ったという相談を受けていた。
この招待状はもしかして、ずいぶん前になくなった父からではないかと秋子は言う。
父はずいぶん前になくなったと聞いていたのだが、最近、知らない人から電話がかかり、ずいぶんしつこく父のことを聞かれていた。
そこで秋子はもしかして、父は生きているのではないかと言う思いにとらわれていた。

さおりは秋子の付き添いに行くことに決め、SRIに協力を頼んだ。
秋子は招待状に書いてあった、那須ハイツへ向かった。
そのホテルには電話で秋子が泊まる部屋の予約があって、5日分の滞在費が送られてきたのだった。
ホテルでは、既にボーイとして野村が待っている。

到着した秋子とさおりは、いきなり「おめでとうございます。あなたがたが当ホテルの1万人目のお客様になりました」と祝福される。
だが記念品を渡したのは、三沢であり、カメラマンは的矢所長。
エレベーターをいじっている修理工は牧で、町田警部も来ていた。

秋子とさおりが通された部屋には、壁に絵がかかっていた。
野村は思わず、その絵に注目する。
絵は、山を背景に大きく浮かび上がった白い女性の絵だった。

黒メガネをかけて、ビリヤードをしている男がいた。
そこにもう1人、男が秋子の到着を知らせに来た。
報告を受けた男は「奴の娘が?」と聞き返す。

「そうだ、奴はこの那須に隠れている」と、もう1人が言う。
「娘から目を離すな。向こうから出てくるのを待つんだ」。
どうやら、秋子を見張っているようだった。

野村は、的矢所長たちに、秋子の部屋にかけられていた絵が盗まれたと報告する。
なぜなら、このホテルの部屋には全部同じ絵がかけられている。
なのに、秋子の部屋だけ、あの白い女性の絵なのだ。

立ち話しているSRIのメンバーに、従業員に扮した町田警部が「目立つ」と言って部屋に招きいれた。
町田警部に絵の話をするが、三沢にも盗まれた絵は大して価値があるものには見えない。
野村は雪女の絵が飾ってあったと言うと、町田警部はそれは犯人が絵を盗み、その雪女の絵を飾ったのだと言う。

的矢所長は秋子とさおりに電話をして、部屋に閉じこもらず、外にスケートに行くように言った。
スケートをしている秋子に小竹が近づき、さおりから引き離して連れて行く。
あわてるさおりに、的矢所長は1人で泳がせるのも手だと言いに来る。

「雪女の絵は見たかい?親父さんからのプレゼントなんだ」と小竹は言う。
驚いた秋子は「お父さんはどこにいるの」と聞いた。
「会いたいかい。でも出てくるわけにいかないんだ」。
そう言って小竹は去っていく。

ホテルの喫茶店にいる秋子に「お父さんにはもう、お会いになりましたか?」とビリヤードの男が近づく。
「そう、15年前に我々の前から姿を消した、あなたのお父さんに、ですよ」。
秋子が「知りません、父は死んでしまったはずです」と言うと男は、「それが生きている。だからあなたも会いに来たんだ」と言った。

黒ずくめの男はいきなり口調を変え、「どこにいるんだ。奴が那須に入っていることはもう、つかんでいるんだぜ」と凄む。
「あなた、父とどういう関係があるんですか」。
秋子の問いに男は「15年前から、切っても切れない縁ができているんだ。知らなきゃ教えてやろうか。おめえの親父さんはな」と言いかける。

そこまで男が言った時、修理工に扮した牧が植木鉢を割ってしまう。
ホテルの従業員に扮してやってきた三沢に、牧が「すみません」と頭を下げる。
三沢はさおりと男に近づき、「お騒がせしてすみません」と謝る。
すると、男は無言で立ち去った。

ホテルの一室で、町田警部はイライラと歩き回る。
そこへ的矢所長が、秋子に近づいた男の写真を持ってやってくる。
町田警部は、さっそく本庁に照会してみると言った。

ホテルのショーを見ている秋子とさおりに、昼間の男から飲み物が送られてくる。
2人が男のほうを向くと、SRIが仕込んでいたカメラが男をとらえる。
別室でカメラの画面を見ている的や所長の元に、町田警部が男の正体がわかったと言って来る。
15年前のダイヤ盗難事件で指名手配になっている一味の1人、野田だった。

野田、坂本、中村。
盗難事件の犯人たちの写真が見せられる。
その、最後の1人がボスと見られる角田だった。

ざっと見積もっても、盗んだダイヤの金額は4千万になる。
秋子は、実は角田の娘だった。
5歳の時、叔父に引き取られたのだ。

秋子とさおりがいるテーブルに、野田が近づく。
2人が退席しようとすると、野田は秋子にピストルを向けた。
見ていた町田警部が助けに入ると、野田は逃げた。

だが外に逃げた野田は、撃たれて倒れる。
中村が撃ったのだ。
坂本に向かって中村は、「野田がヘマをやったからだ」と言って逃げる。

混乱の中、小竹が秋子に近づき、「雪女から目を離すな。そう言ってるんだ」と言う。
的矢所長が中村を取り押さえようとしたが、中村に殴り倒されてしまう。
駆けつけた三沢が中村を追い詰めるが、的矢所長に気を取られた瞬間、フラフラしながらも中村が逃げ出す。

部屋で壁に掛けられた絵を見つめていた秋子は、絵の雪女が母親の顔であることに気づく。
どうしてこんなことをしなければならないのか?
15年前の秋子の記憶は家にお客が来て、奥の部屋で怒鳴りあう声と破裂するような音がした後、母親がなくなったこと、そしてお葬式だけだった。

温泉宿で小竹が角田に、「『そいつ』を見せてもらいたい」と言う。
しかし、角田は「残念だが『それ』はここにない」と言った。
自分を狙っている男の目的は、数千万円はするダイヤだ。
それを娘に渡してやりたい。

謝礼を心配する小竹に角田は、秘密の鍵は娘に渡してあると言う。
だから、娘がそれを見つけ出すまで、守ってやってほしい。
謝礼はその中から、娘がするだろう。
「ようし、一割もらうか」と笑う小竹の後姿を、角田が苦々しい顔で見つめていた。

夜明け、ホテルの部屋で、秋子はふと目覚める。
すると、雪女の絵が溶けていくのが見える。
絵が溶けてはがれると、その裏には地図が描いてあった。
秋子は驚きながらも、地図を手に部屋を出た。

温泉の源泉の湯が流れる沢で、秋子は小さな袋を引き上げる。
袋の中には、ダイヤがぎっしり入っていた。
だが秋子に中村が近づいていた。
気づいた秋子が後ずさりした時、小竹が現れ、中村を殴り、「父親には後で必ず会わせてやるから早く逃げろ」と叫ぶ。

逃げていく秋子の姿を、影から角田が見ていた。
中村から秋子を逃がした小竹が、角田に「親父さん」と近づくと、角田はいきなり小竹を撃った。
小竹は「親父…、俺が信じられねえのか」と言う。
「当たり前だ。15年前、わしもあの宝石を見て、仲間を裏切った。お前だってきっと、あれを見りゃ」。

「ばかやろう。もう1人、てめえの仲間が…。もう1人」。
「えっ」。
そう言うと小竹は倒れた。

角田は秋子を追う。
雪原の中、秋子は今度は坂本に追われていた。
かけつけたさおりとSRIが秋子の行方を聞くと、小竹は「教えるもんか…」と言って事切れた。

秋子は追ってくる坂本に向かって、ダイヤを投げつけながら逃げた。
「ああっ、よせ!」
秋子は母の名を呼びながら、雪原を逃げる。
その時、女の笑い声が響き、空一杯に白装束の雪女が現れる。

空一杯に浮かび上がった女を見て、坂本は悲鳴をあげながら逃げる。
だが今度は女の目が空一杯に浮かび、坂本を追ってくる。
パニックを起こした坂本に向かって、長い黒髪が伸び、笑う口元が空一面に浮かぶ。
女の笑い声はどこまでも追いかけてきて、坂本は空一杯に広がった女から逃れられない。

逃げる坂本は、ついに滝の上から転落してしまう。
雪女はそれを冷たい目で見届けると振り返り、秋子が倒れている草原に戻る。
そして優しく秋子を見下ろすと、消えてしまった。

滝の下で倒れている坂本の元に、町田警部と的矢所長がやって来る。
坂本を見た町田警部は、「やられた!拳銃だ」と言う。
その時、銃声が鳴り響く。

雪原を走った町田警部は、倒れている角田を見つける。
角田の手から少し離れて、拳銃があった。
自分で自分を撃ったようだった。

さおりたちに発見された秋子は「雪女」と言った。
「雪女が私を助けてくれたのよ。見えたでしょう?」と秋子は言う。
さおりが「しっかりしてよ、秋ちゃん!」と言った。
しかし秋子は言う。

「お父様が言っていたのは、このことよ。雪女が私を守ってくれたの」。
そして、秋子は目に涙を溜めながら言った。
「私のお母さんよ!」
的矢所長が「そう。秋子さんを守ってくれたのは雪女だ。君とそっくりなお母さんだった」と言った。

牧は雪女の現象を、こう説明した。
ある気象条件が重なると、自分自身の影が雪のスクリーンに映し出されることがある。
「雪女の現象ってのは、だいたいそんなようなものなんだ」と言う。

「しかし現在は、この広い原っぱにばらまかれたダイヤモンドを探し出すことのほうが…、はるかに難しい」。
「その通りだ」。
三沢と野村と、牧が「ふう」とため息をつく。
3人は草原をダイヤを探しながら、歩いていた。



角田は、小松方正さん。
やっぱり、この方がやると味がある。
ええと、描写はなかったですが、最後は小竹を殺し、坂本を殺した後、自殺したと考えていいんでしょうね。

犯罪者の父親がいてはいけないと思って、娘にダイヤも渡したし、思い残すことはないと死んだのかな。
だけどあのダイヤ、返さなきゃいけないですよね。
秋子が貰うとも思えないし。
母親についてもちらっと秋子が語ってますけど、ダイヤの争奪で家で撃たれて殺されたと解釈していいんでしょうか。

角田は、あの雪女の絵に妻を描いていた。
秋子を守る為、出てきたとすると、最後に出てきたのは、雪女?
それとも秋子の母親?
秋子の母親が雪女だった?

牧のいう通り、ブロッケン現象っていうんですか?
あれが起きただけだったんでしょうか。
この話し、わからないことが結構あるんですが、雪の中の幻想的な物語という受け止め方をして、深く考えてはいけないんでしょうか。

しかし、温泉の描写はさすがに寒そうな雪景色でしたが、最後の草原では雪女が現れるほどの雪はなかったような。
あれ、本来はもっと雪景色の中で撮影するはずだったんでしょうね。
それから、さおりが秋子の相談に乗っている時、バックに「ブルーライトヨコハマ」が流れます。
時代を感じさせて、いいです。

さて、これで「怪奇大作戦」も終了。
これが最終回。
別に派手な事件を起こせとかいうんじゃないんですが、この話、途中にあったような、日活アクション風味の話に思えました。

これまであれだけの秀作、名作を出した「怪奇大作戦」の最終回がこれだと思うと、あんまり納得が行きません。
じゃあ、どの話が最終回なら良かったのかと聞かれると難しいんですが。
犯罪は起きても根底には愛情と不安があって、最後にやっぱり愛情は変わらなかったということで、かなり前ですが、3話みたいな話が良かったんじゃないか。
でも、あんまり後味が悪くないということで、やっぱりこれなのでしょうか。

1つ前の「京都売ります」が、あまりにも美しく哀しい一編だからかも知れませんが、どうも物足りない。
まあ、明るくエンドになりましたが、この最終回の後、もう1話、あってもいい気がしてしまう。
「京都売ります」が最終回では寂しい、という印象になるのかな?


それにしても「怪奇大作戦」が昭和40年代に放送されてから、40年の月日が流れたんですね。
科学はこの時とは比べ物にならない、いや、想像の上を行く発達さえしてます。
時代も、風景も変わりました。

でも「怪奇大作戦」は、時代を感じさせながらも、色褪せて見えない。
情念や哀しみや怒り、憎しみや愛情といった人間の感情は、今も変わらないから。
理由なき犯罪などもあったけど、ここで描いた闇は現代の方がより深くなっているようだから。

愛憎や欲望が起こす犯罪でも、理由なき犯罪でも、犯罪を起こしているのは人間。
その人間を描いているから、「怪奇大作戦」は今も鑑賞に堪えるドラマになっているのだとわかりました。
SFでも、時代劇でも、現代劇でも、人を描けているものは残りますよね。

そして、この番組がテーマにしたものは古くなるどころか、現在はまさにその通り。
いや、それ以上の現象が起きています。
すごい番組です。

岸田森さんも、ほんと、堪能させていただきました。
後に個性的で強烈な悪役で印象を残してくれた岸田さんですが、本当に素敵な良い俳優さんです。
ちゃんと悪役に回ってくれていたんだなあ、と思いました。
岸田さんに対して、悪役の印象が強い方には、ぜひ一度、見ていただきたい。

見られて良かった~!
最終回が「ゆきおんな」ですから、雪の季節に終わらせることができて良かった。
そして最終回は、「ダイヤモンドは永遠に」ではなく、「人の人を想う心は永遠に」でした。
「怪奇大作戦」も永遠に!


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2012.02.17 / Top↑
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