阿刀田高さんが、一般から募集した中で選んだ話が集まっている「奇妙にこわい話」。
この何作目かの「ますます奇妙にこわい話」に、ある家の話が載っていました。
話は地名がわからないように、人物名を伏せるとありました。
ただ、この選集は募集する作品が体験談であるか、フィクションであるかは問わなかったはずなので、事実かフィクションかはわかりません。

都心のベッドタウンとして、開発が進むある地方都市。
この話を筆者にしてくれた女性は、この地方都市の区画が進む方ではなく旧市街に住んでいた。
商店街が並ぶ中、その古い屋敷はあった。
今にして思えば、それほど広大な屋敷ではなかったけれど、それでも造りが立派だったので、やっぱりお屋敷というにふさわしい家だった。

この女性が小学生の頃、学校に行くのに商店街を通り、このお屋敷の前を通るのですが、一度も誰かが出入りしているのを見たことがない。
門も雨戸もピタリと閉じているので、この家は空き家なんだと思っていたある日、2階の雨戸が開いて、人が窓辺に座って空を見上げていた。
珍しかったのでこの女性は「人がいるよー」と、友達に声をかけた。

すると商店街のある商店の女将さんが飛んで来て、「人がいるのは当たり前でしょう」と言う。
そして、「寄り道してると先生に言いつけるよ。早く帰りなさい」と子供たちを追い払った。
家に帰っておばあちゃんにその話をすると、「人の家をのぞくもんじゃない」と怒られた。

それからは2ヶ月に一度ぐらい、その家の雨戸が開き、窓辺に人がいるのが見えた。
窓辺に何人か座り、ずっと空を見上げている。
男の人が2人、女の人が1人という時や、男の人ばかり3人の時もあり、2人の時もあった。

前見た人と同じ人かどうかもちょっとわからず、窓辺にいる時はその人たちは話もせず、ずっと空を見ているだけ。
だから、何人がその家にいるのか、よくわからない。
年齢はというと、中学生ぐらいにも見えるし、もっとずっと年上のようにも見える。
やがて話をしてくれた女性は、父親の仕事の関係で、その町を離れてしまったので、小学校の半ばでお屋敷を見ることはなくなった。

大人になって、思い出す。
あのお屋敷が、何だったか。
どうして、大人たちは何も教えてくれなかったのか。
常識的な答えが、いくつか見つかる。

しかし、やっぱりわからないことがある。
あの空を見上げていた人たちは、貧しそうな身なりでもなかった。
ひもじそうな感じも、なかった。
だけど、あんな感じの人たちだけで生活しているとは考えられない。

庭も考えてみれば、草ぼうぼうではなく、きちんと手入れがされていた。
つまり、誰か、面倒を見る人がいたはず。
しかし、子供たちは誰一人として、このお屋敷に人が出入りしているのを見たことがない。

それに物音が聞こえていた、ということもなかった。
あの人たちは、どうやって暮らしていたのだろう?
それともあれは、子供の頃の幻想と現実が混ざった単なる勘違いの記憶なのか。

ある日、社会人になって働いていたその女性は、バスに乗って都内に出ていた。
その時、偶然にも小学校の時、同級生だった女性に声をかけられた。
彼女もたまたま、このバスになったのだと言って、2人は1本違っていたら会いはしなかった偶然に驚き、声を弾ませて再会を喜んだ。

ひとしきり思い出話に花が咲いて、ふと、相手の彼女が「ねえ、あの家、覚えてる?」と言う。
「あの家?」
「商店街にお屋敷があったじゃない。いつもシーンとしていて、閉めっぱなしで。たまに開いていると思ったら、大人か子供かわからない人たちが何人かで、ずっと空を見ていたじゃない」。

あっ、あれはやっぱり、自分の幻想じゃなかったんだ!
そう思った女性は、かつての同級生にあのお屋敷が自分が引っ越した後、どうなったか聞いた。
すると、あのお屋敷は彼女が引っ越してすぐ、再開発の地域に入って、取り壊されてしまったのだという。
今は、そのあたりは、ショッピングビルが建っているらしい。

あの人たちは、どこに行ったんだろう。
同級生も「あの頃、親にあの家の話聞くのって、タブーだったよね」と言う。
2人は子供だったから、「今だったらあの家の登記でも調べちゃうのにね」と笑いあった。
その時、バスがバス停に着き、止まった。

後ろから小さな子供を連れた女性がやってきて、降りようとするので、2人は通路から体をよけた。
小さな子供を連れた女性が、2人の後ろを通る。
そして通りながら、小声で、しかしはっきりした声で言った。
「あの家の話は、しちゃいけないのよ」。

2人は、呆然としてしまった。
ハッとした時、バスはもう動き始めていた。
女性はバス停に降りており、外を見ても、夕闇の雑踏の中に、女性の姿は見えなくなっていた。



うーん、このぐらいの不思議が、実は一番心に引っかかったりするなあと思って、とても印象に残りました。
私が引っ越す前、駅に向かう途中にも立派なお屋敷がありました。
とっても立派な造りのお屋敷だけど、誰も住んでいない。
たまに男性が、庭の草むしりなどをしている。

しかし、段々荒れてきてしまった。
なぜ、この屋敷が無人なのか。
私は財産相続の問題で、誰も立ち入れないのだと聞いていました。

それがいつしか…、近くの中学校の学生さんあたりかな。
事件のあった家だという噂が流れて、いわゆるお化け屋敷として語られるようになりましたよ。
そうか、お化け屋敷とはこうして生まれるのかと思いました。

友人の実家でも、有名なお化け屋敷があったそうです。
しかし、友人はこの家のことを、あるお金持ちが別荘として持っていた家だと言ってました。
それが大きな道路が反対側にできて、すっかりこちらの旧道が寂れてしまった。
不便になり、利用しにくくなったので放置されてしまったそう。

これがいつしか、事件のあった家として噂になり、お化け屋敷になってしまった。
たまに取材の記者が来る、野次馬は常に来る。
今は取り壊されたそうですが、これを聞いて、お化け屋敷の作り方を知ってしまった気分になりました。

そして、やはり、駅に向かう道で、今度は反対側ですが、こちらは古いアパートがありました。
人が住んでいるように見えなくて、いつも庭にものが積み上げてある。
ここもいつしか「あれは何?」と言われるようになりました。

すると、「知ってはいけない」という答えが返って来るように。
何か、まずい人が関わっているのか?!みたいな感じの返され方。
まずい人たちが集っているのか?!

想像は膨らみましたが、知ってはいけないことは知らない方がいいだろう。
ところが、去年、近所に住んでいる叔父が「別に建て替えしてないただの古い物件」と教えてくれました。
「だってあそこのオーナー、草野球の友だから」。

え~、天気の良い日、一緒に野球なんかしてたんですかぁー!
訳ありじゃなかったんですか~!
叔父はそんな噂も知らなかったようで、私のコケ方のほうを不思議がってました。

というわけで私の知ってるお化け屋敷は、こんなもんでしたが、「奇妙な話」の家は何だったんでしょうね。
うーん、後日談がかなり不気味だし。
とても気になります。
フィクションだとしたら、かなり上手いと思います。


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2012.02.15 / Top↑
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